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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
管理番号 1371658
異議申立番号 異議2019-700723  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-12 
確定日 2020-12-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6480775号発明「ウレタン樹脂組成物、建材の耐火補強方法、および建材の耐火補強構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6480775号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3-6〕について訂正することを認める。 特許第6480775号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
(1)特許異議申立の経緯
特許第6480775号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、平成27年3月26日を出願日とする特許出願(特願2015-64352号)に係るものであって、平成31年2月15日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、平成31年3月13日である。)。
その後、令和1年9月12日に、本件特許の全請求項(請求項1?6)に係る特許に対して、特許異議申立人である佐藤彰芳(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年 9月12日 特許異議申立書
同年11月22日付け 取消理由通知書
令和2年 1月20日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 1月27日 通知書(申立人あて)
同年 2月28日 意見書(申立人)
同年 3月31日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 5月26日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 7月 9日 通知書(申立人あて)
同年 8月11日 意見書(申立人)

(2)証拠方法
ア 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
(ア)特許異議申立書に添付した証拠
・甲第1号証:特開2001-226661号公報
・甲第2号証:特開2004-131730号公報
・甲第3号証:特表2011-505481号公報
・甲第4号証:国際公開第2014/112394号(WO2014/112394)
・甲第5号証:今井嘉夫著「ポリウレタンフォーム」第5?第7頁及び第12?16頁
・甲第6号証:特開2006-225511号公報
・甲第7号証:特開2015-38190号公報
(以下、甲第1号証等を単に「甲1」等という。)

(イ)令和2年8月11日に提出した意見書に添付した証拠
・参考資料1:特開2002-167885号公報
・参考資料2:広辞苑の表紙
・参考資料2-1:新村出編、広辞苑、株式会社岩波書店、1998年11月11日 第5版発行、第2394頁
・参考資料2-2:新村出編、広辞苑、株式会社岩波書店、1998年11月11日 第5版発行、第2325頁
・参考資料2-3:新村出編、広辞苑、株式会社岩波書店、1998年11月11日 第5版発行、第2564頁

イ 特許権者が提出した証拠方法は以下のとおりである。
(ア)令和2年1月20日に提出した意見書に添付した証拠
・参考資料1:特許第5395386号
・参考資料2:特許第4890102号
・参考資料3:特許第5453336号
・参考資料4:特許第5135122号
・参考資料5:特許第5079486号
・参考資料6:特許第5135133号
・参考資料7:特許第6049458号
・参考資料8:特許第6049459号
・参考資料9:特許第5135132号

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和2年5月26日に提出した訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。
なお、令和2年1月20日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除く。)」とあるのを、前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除く。)」とあるのを、前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除く。)」とあるのを、前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除く。)」とあるのを、前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」に訂正する。

(5)一群の請求項
訂正事項3及び4に係る訂正前の請求項3及び4について、請求項5及び6はそれぞれ請求項3又は4を直接的に引用するものであって、訂正事項3及び4によって記載が訂正される請求項3及び4に連動して訂正されるものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

2 判断
(1)訂正事項1及び2について
ア 訂正の目的
訂正事項1及び2による訂正は、訂正前の請求項1及び2の「建築物の耐火補強構造」に係る「前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除く。)」との特定事項において、「(但し、膨張黒鉛を含有するものを除く。)」との記載を「(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」と訂正するものであり、難燃性ウレタン樹脂組成物から、さらに除くものを特定するものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1及び2による訂正は、訂正前の請求項1及び2に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物から、さらに水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、水性のポリマー分散剤を含有するものを除くことを特定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(2)訂正事項3及び4について
ア 訂正の目的
訂正事項3及び4による訂正は、訂正前の請求項3及び4の「建築物の耐火補強方法」に係る「前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除く。)」との特定事項において、「(但し、膨張黒鉛を含有するものを除く。)」との記載を「(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」と訂正するものであり、難燃性ウレタン樹脂組成物から、さらに除くものを特定するものである。してみると、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項3及び4による訂正は、訂正前の請求項3及び4に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物から、さらに水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、水性のポリマー分散剤を含有するものを除くことを特定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1?4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第3 特許請求の範囲の記載
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6480775号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?6に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1?6に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)

「【請求項1】
建築物の耐火補強構造であって、前記耐火補強構造は、建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように前記配線および/または配管の周囲に充填された難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体と、を含み、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、建築物の耐火補強構造。
【請求項2】
建築物の耐火補強構造であって、前記耐火補強構造は、建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように前記配線および/または配管の周囲に充填された難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体と、を含み、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤がリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、建築物の耐火補強構造。
【請求項3】
建築物の耐火補強方法であって、前記建築物の耐火補強方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程と、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填されており、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、建築物の耐火補強方法。
【請求項4】
建築物の耐火補強方法であって、前記建築物の耐火補強方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程と、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填されており、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし: 0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤がリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、建築物の耐火補強方法。
【請求項5】
前記難燃性ウレタン樹脂組成物を、コーキングガンまたはスプレー式容器を用いて充填することを特徴とする請求項3または4に記載の耐火補強方法。
【請求項6】
前記ウレタン樹脂組成物を袋に入れて、前記建築物の開口部に充填することを特徴とする請求項3または4に記載の建築物の耐火補強方法。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
(1)当審が令和1年11月22日付けの取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
ア 取消理由1-1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

請求項1及び2の「耐火補強構造」、請求項3?6の「耐火補強方法」という記載が明確でない。

イ 取消理由1-2
本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

ウ 取消理由1-3
本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物である甲1、6及び7に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

甲1:特開2001-226661号公報
甲4:国際公開第2014/112394号(WO2014/112394)
甲5:今井嘉夫著「ポリウレタンフォーム」第5?第7頁及び第12?16頁
甲6:特開2006-225511号公報
甲7:特開2015-38190号公報

(2)当審が令和2年3月31日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
ア 取消理由2-1
令和2年1月20日に提出した訂正請求書により訂正された請求項1?5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、令和2年1月20日に提出した訂正請求書により訂正された請求項1?5に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

イ 取消理由2-2
令和2年1月20日に提出した訂正請求書により訂正された請求項1?5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物である甲2、6及び7に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、令和2年1月20日に提出した訂正請求書により訂正された請求項1?5に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

甲1:特開2001-226661号公報
甲2:特開2004-131730号公報
甲4:国際公開第2014/112394号(WO2014/112394)
甲5:今井嘉夫著「ポリウレタンフォーム」第5?第7頁及び第12?16頁
甲6:特開2006-225511号公報
甲7:特開2015-38190号公報

2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書でした申立の理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)申立理由1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

(2)申立理由2
本件訂正前の明細書の発明の詳細な説明は、下記の点で、当業者が本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

(3)申立理由3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件の特許明細書には、本件発明の具体例である実施例が記載されておらず、如何なる作用・効果が奏され得るかが記載されていないので、本件発明の課題が解決することができたことを推認できない。このように、本件の特許明細書には、発明の技術上の意義が記載されていない。さらに、本件発明の課題が解決できることが明らかでないから、本件発明は不明確である。

(4)申立理由4
本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である甲1?甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(5)申立理由5
本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲1?甲4に記載された発明及び甲1?甲7に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

第5 当審の判断
当審は、当審が通知した取消理由1-1?2-2及び申立人がした申立理由1?5によっては、いずれも、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりであるが、取消理由1-2、取消理由1-3、取消理由2-1、申立理由4(甲1を主引用例とする場合)及び申立理由5(甲1を主引用例とする場合)は、いずれも甲1を主引用例としているので、併せて検討する。
また、取消理由2-2、申立理由4(甲2を主引用例とする場合)及び申立理由5(甲2を主引用例とする場合)は、いずれも甲2を主引用例としているので、併せて検討する。
さらに、申立理由4(甲3を主引用例とする場合)及び申立理由5(甲3を主引用例とする場合)は、併せて検討する。

1 取消理由通知の理由について
(1)取消理由1-2、取消理由1-3、取消理由2-1、申立理由4(甲1を主引用例とする場合)及び申立理由5(甲1を主引用例とする場合)について
ア 各甲号証の記載事項について
(ア)甲1
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 屋外と連通している建物の開口、特には壁または天井を貫通した引き込み口を密閉するため、水の存在下で膨張可能な充填材を少なくとも一種類含む、プラスチック発泡体系の使用方法。

【請求項7】 プラスチック発泡体系として、単成分発泡ポリウレタン、2成分発泡ポリウレタン、2成分発泡エポキシ樹脂および/または発泡シリコンを入れることを特徴とする、請求項1乃至6に記載の使用方法。

【請求項10】 前記プラスチック発泡体系の組成物を前記密閉する開口の中で発泡することを特徴とする、請求項1乃至9に記載の使用方法。」

(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、屋外と連通した、特には、壁、床または天井の開口を通って戸外から建物の内部まで走っている配管または配線を家へ引き込む、建物の開口を密閉するための、水分の存在下で膨張可能な充填材を少なくとも1つ含むプラスチック発泡体系(プラスチック発泡システム)の使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、配管、配線またはこれに類する物と、これらの配管または配線を通している壁、床または天井との間の環状の隙間を非常に様々な方法で密閉していた。これには、機械的密閉法、化学的密閉法およびこれらを組み合わせた密閉法があった。
【0003】機械的密閉法では、硬い封止部材を間隙に挿入し、形状を完全に一致させるか、または下地に弾性的に圧着して、密閉を行う。化学的密閉法では、配管および/または配線と壁または天井との間に残された開口に、硬化してその穴を閉鎖する反応系を充填して、密閉を行う。化学的密閉法には、無機系(例えばモルタル)および、例えばシール材、ポリマー材、発泡材等といった有機系を用いることができる。化学的/機械的密閉法を組み合わせる場合、最初に機械的型枠を取り付け、その中へ前述の系の化学的密閉材料を流し込んで、密閉を行う。
【0004】これらの従来技術は何れも、完全に満足のゆくものではない。その理由は、機械的解決法は費用が高く、据え付けに時間と労力を要し、かつ配管直径、配線厚さおよび穴の直径の制限があるからである。シール材、発泡材またはモルタルを用いて残され開口を充填することによる化学的密閉法には、このような欠点はないが、通常水の浸入に対する耐久性のある密閉は保証できない。戸外と連通し、かつ気象条件にさらされる、外壁および天井を通した処理の場合には、このことは特に問題となる。これは、例えば配管および/または配線のプラスチック表面といったさまざまな臨界的下地への、こうした化学的封着材の固着力不足と同様に、一つには材料(連続気泡発泡体)自体の通水性によるものである。
【0005】ドイツ国特許出願第A-197 48 631号は、系からまたは系への液体の排出または流入を阻止するための封着を開示しており、それによると、2つの系を相互に隔離している室の中にある、生分解されない、液体を吸収することにより膨張可能なポリマーまたは反応してこの種のポリマーを生成する少なくとも2つの成分を示している。特には、該ポリマーを生分解可能な管、例えば紙製の管の中に粉末で入れるたもの、または繊維に塗布し、その結果としてできるポリマーが固着した布地、ニットまたはフリースを封止物として使用することができる。このような封止物は、管継手用の従来のパッキンのように後から取り付けられるもの、または該膨張可能なポリマーをホイルの間に入れた、ゴミ捨て容器を密閉するための二重ホイル(Doppelfolie)の形状が好ましい。かかる封止物は、上述の化学的/機械的密閉の実施例に関連しており、据付の際に、密閉する下地に対し管継手またはホイルの密閉する部分が適合している必要があるので、時間と労力を要し、かつ好適に成形した封止製品の形状を通常維持して取り付けなければならない。
【0006】欧州特許第0 453 286号は、少なくとも1つの高分子高吸収材料のある発泡条件下で、少なくとも1つのポリオール類を少なくとも1つのポリイソシアネート類で置換して得られる、高吸収発泡体化合物を開示している。ここでは、該高吸収材料を発泡体の吸収性を高めるために用いている。しかし、この明細書には、該高吸収材料の植物栽培用の生育培地としての使用法が記載されるのみである。」

(1c)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、配管および/または配線と、建物の壁、床または天井の対応する引込み口との間にある環状の隙間に用いる、前述の従来の密閉法が抱えている問題点を解決することにある。」

(1d)「【0011】本発明において、好ましい膨張可能なポリマーとは、シーリング剤として使われるプラスチック発泡体系である。このプラスチック発泡体系は、建設業界において組み立て発泡体として用いられる通常の発泡体系であってもよい。特に好ましくは、単成分ポリウレタン発泡体、2成分ポリウレタン発泡体、2成分ポリウレタンのエアロゾル缶入り発泡体および2成分エポキシ樹脂発泡体である。単成分ポリウレタン発泡体は、イソシアネート基を含むプレポリマーの形でエアロゾル缶の中に入っていることが好ましく、単数および/または複数のエアロゾル缶からの噴霧剤の噴霧ガス圧の働きによりポリウレタン発泡体組成物が押し出される。2成分ポリウレタン発泡体または2成分エポキシ発泡体はカートリッジの中に入っていることが好ましく、その際、結合成分と硬化成分は別々のカートリッジに入っており、それらの組成物が他の諸組成物と一緒に、エアロゾル缶入り発泡体の場合には噴霧剤の圧力により、または機械的押出により搾り出され、スタティックミキサーで混合された後、該混合物は密閉する開口に充填され、そこで発泡および/または硬化して密閉する。本発明において、膨張可能なポリマーと共にシリコン発泡体系を同様に用意しておき、必要に応じて使用することも可能である。」

(1e)「【0014】本発明を実施する際、水の存在下で膨張可能な充填材を含む該プラスチック発泡体系の組成物は通常の方法で発泡させる。即ち、壁の開口は発泡体ディスペンサーを用い、または該発泡体系を用いる別の方法により、現場で発泡させる。発泡および硬化した発泡体は、同時にその開口部全体を満たし、その際、該プラスチック発泡体系の発泡により、その発泡体を密閉する表面に押し付ける。例えば環境湿度のような水分と接触した場合、水を含んだ充填材の膨張により、接触部分で著しい体積増加が起き、それによってプラスチック発泡体の接触表面と配管、配線または壁の表面との間の環状の隙間からの水分の侵入といった、水分が発泡体の組織構造にさらに侵入することを防ぐ。なぜならば、このような場合、発泡材が硬化していないことにより生じ得る、配管/配線表面の微細溝を押しつぶして、水の浸入を阻止することができるからである。欧州特許第0 453 286号の公開を基礎にして、本発明による水膨張可能な充填材の適切な量を用い、発泡体の連続気泡を密閉して、更なる水分の浸入を確実に防ぐことを誰一人思いつかなかったので、このことは驚きを持って受け入れられた。ドイツ国特許第197 46 631号により既知の充填材と比較して本用途で特に評価されている利点は、現在の技術水準とは異なり、本発明においては補足的な方法を用いず、本発明で適当に用いるプラスチック発泡体自体が固定の役目を備えているので、必要な密閉効果を達成するために、裏打ちまたは固定リングを通して、膨張材を含む布製の管を所定の位置に固定する必要がないという点である。ここで、膨張可能なポリマーを充填材としてプラスチック発泡体のマトリックスに直接組み込みながらも、必要な密閉効果も得られるということ、特には連続気泡の場合にも同様であることは、専門家にも予測できなかったであろうことは疑いがない。しかしながら、必要に迫られた使用法によって、予測外でかつ特に有用な技術効果が、このようにもたらされた。」

(1f)「【0016】
【実施例】以下の実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。

【0019】(実施例2)
2成分ポリウレタンエアロゾル缶入り発泡体
該エアロゾル缶入り発泡体の成分AおよびBはそれぞれ下記の成分を有する。
成分A:
91.7g ヒドロキシル数が56であるポリエチレングリコールジアジペート
33.4g グリセリンから作られる、ヒドロキシル数が400であるポリオキシプロピレンポリオール
30.6g グリセリンでから作られる、ヒドロキシル数が42であるポリオキシプロピレンポリオール
19.5g 分子量が600であるポリエチレングリコール
8.3g 気泡安定剤としてのポリオキシアルキレングリコールポリシロキサンコポリマー
2.8g ジ-(2-モルホリノエチル)-エーテル
91.7g トリクロロプロピルフォスフェート
403.1g ジフェニルメタンジイソシアネート(Roh-MDI)
73.7g テトラフルオロエタン
40.3g ジメチルエーテル
20.9g ブタン
4.2g プロパン
156.0g 膨張可能なポリマー(Cabloc CT)
成分B:
20g モノエチレングリコール
【0020】該成分Aをエアロゾル缶の中へ入れる。第2の成分Bは、場合によってはジメチルエーテルのような噴霧剤を含むことも可能で、主エアロゾル缶の内部容器として設けられている独立した室または独立した第2の缶の中に入れておく。
【0021】適用の際、成分B(架橋剤)と一緒に、容器の内容物を成分Aの入った主容器中へ空け、そこで攪拌して内容物を均一にするという方法で、該両成分を混合する。しかし、成分Aと成分Bのそれぞれの容器を組み付けた2成分分配器を使用することも可能であり、その場合、分配器の中で混合が行われる。
【0022】成分Bの架橋剤は、そこに含まれるヒドロキシル基と、成分Aのプレポリマー中に存在するイソシアネート基とが量的に釣り合うように配合されており、架橋成分として環境湿度を利用しなくてもよいようにしてある。
【0023】その他の実施例に記載されている通り、成分Bには同様にテトラフルオロエタン、ジメチルエーテル、ブタンおよび/またはプロパンといった噴霧剤が含まれる。
【0024】(実施例3)
単成分ポリウレタン発泡エアロゾル缶
この場合、唯一のエアロゾル缶の中に唯一の成分が入っており、その組成は下記の通りである。
91.7g ヒドロキシル数が56であるポリエチレングリコールジアジペート
33.4g グリセリンから作られる、ヒドロキシル数が400であるポリオキシプロピレンポリオール
30.6g グリセリンから作られる、ヒドロキシル数が42であるポリオキシプロピレンポリオール
19.5g 分子量が600であるポリエチレングリコール
8.3g 気泡安定剤としてのポリオキシアルキレングリコールポリシロキサンコポリマー
2.8g ジ-(2-モルホリノエチル)-エーテル
91.7g トリクロロプロピルフォスフェート
403.1g ジフェニルメタンジイソシアネート(Roh-MDI)
73.7g テトラフルオロエタン
40.3g ジメチルエーテル
20.9g ブタン
4.2g プロパン
156.0g 膨張可能なポリマー(Cabloc CT)
【0025】激しく攪拌してから発泡組成物を単成分スプレーから密閉する開口の中へ取り出して処理が行われる。」

(1g)「【0028】(実施例5)
比較試験
前記実施例1乃至4に記載の発泡体を外径100mm(ポリメチルメトアクリレートの配管)および内径40mm(ポリエチレンの配管)である環状の溝に深さ約10cmで差し込み、発泡させて24時間硬化させた。その後、0.5バールの圧力で、水を発泡体の1面に吹き付けて、その水密性の試験を行った。膨張可能なポリマーが入っていないこと以外は同じ発泡体を作成、適用して比較した。
【0029】本発明に係る、膨張可能なポリマーを用いて作った発泡体では完全に水密が保たれていたが、水の存在下で膨張可能な充填材を用いていない発泡体は全体的に水密でなかった。」

(イ)甲4
甲4には、以下の事項が記載されている。
(4a)「【請求項1】
ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み、
前記三量化触媒が、窒素含有芳香族化合物、カルボン酸アルカリ金属塩、3級アンモニウム塩および4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
前記添加剤が、赤リンを必須成分とし、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを組み合わせてなることを特徴とする、難燃性ウレタン樹脂組成物。」

(4b)「[0059] また本発明に使用する前記リン酸エステルは特に限定されないが、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用することが好ましい。
[0060] 前記モノリン酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスファフェナンスレン、トリス(β?クロロプロピル)ホスフェート等が挙げられる。
[0061] 前記縮合リン酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート(大八化学工業社製、商品名PX-200)、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステルを挙げられる。
市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(商品名CR-733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名CR-741)、芳香族縮合リン酸エステル(商品名CR747)、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(ADEKA社製、商品名アデカスタブPFR)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名FP-600、FP-700)等を挙げることができる。
[0062] 上記の中でも、硬化前の組成物中の粘度の低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いためモノリン酸エステルを使用することが好ましく、トリス(β?クロロプロピル)ホスフェートを使用することがより好ましい。
[0063] 前記リン酸エステルは一種もしくは二種以上を使用することができる。
[0064] また本発明に使用するリン酸エステルの添加量は、前記ウレタン樹脂100重量部に対して、1.5重量部?52重量部の範囲であることが好ましく、1.5重量部?20重量部の範囲であることがより好ましく、2.0重量部?15重量部の範囲であることが更に好ましく、2.0重量部?10重量部の範囲であることが最も好ましい。
前記リン酸エステルの範囲が1.5重量部以上の場合には本発明に係る難燃性ウレタン樹脂組成物からなる成形体が火災の熱により形成される緻密残渣が割れることを防止でき、52重量部以下の場合には本発明に係る難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。」

(ウ)甲5
甲5には、以下の事項が記載されている。
(5a)「

」(7頁)

(エ)甲6
甲6には、以下の事項が記載されている。
(6a)「「【請求項1】
缶体内に使用後残存している一液型硬化性組成物を、実質的に外気にさらすことなく、排出口を備えた容器に移し替えたのち、該排出口に栓を設置して密封し、一定期間維持すること、を特徴とする使用後残存一液型硬化性組成物の保存方法。
・・・
【請求項4】
前記排出口が、吸入型コーキングガンの吐出口に接続可能な排出口である、請求項1?3のいずれか一項に記載の保存方法。
・・・
【請求項8】
前記一液型硬化性組成物が、一液型湿気硬化性ポリウレタン系シーリング材又は一液型湿気硬化性変成シリコーン系シーリング材である、請求項1?7のいずれか一項に記載の保存方法。」

(6b)「【0034】
図13は、排気口などの壁貫通孔に配管した後の、管50と外壁51間の目地をシーリングする工事方法を示す断面図である。排気口などの壁貫通孔などが発生するのは、外壁のシーリング工事が終了した後工程の設備工事であることが多く、このような工事には本発明のシーリング方法が特に有用である。
本発明のシーリング工事は、具体的には例えば次の手順で行なう。
1.貫通孔、管50に付着している塵、屑を取り除き清掃する。
2.管50と外壁51の間にバックアップ材52を装填する。
3.目地の両サイド(管50側および外壁51側)にマスキングテープを貼る(図示せず)。
4.目地の管50側および外壁51側にプライマーを塗布する(図示せず)。
5.(詰め替え用の)容器4に移し替えて保存しておいた残存一液型硬化性組成物(シーリング材)2を、目地に充填する。
6.ヘラ押さえする。
7.速やかにマスキングテープを除去する。
工事が完了すると、使用した残存一液型硬化性組成物(シーリング材)は比較的短時間で反応硬化し、通常の外壁の目地のシーリング工事と同様に管と外壁間の隙間がシールされる。」

(6c)
「【図13】



(オ)甲7
甲7には、以下の事項が記載されている。
(7a)「【0002】
従来より、建築用シーリング材として、ウレタンプレポリマーを含有する第1液と、ポリオールを含有する第2液とからなる二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物が用いられている。この組成物においては、軽量化の観点から第2液に樹脂系中空体を配合することが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明によると、耐久性に優れ、かつ、比重が小さく軽量化も図ることができ、弾性復元率、モジュラス及び伸び率のいずれにも優れるシーリング材組成物を提供できる。
・・・
【0005】
ところで、シーリング材組成物を用いて各種目地等に施工する場合、まず、作業者は、上記第1液と上記第2液とを混合し、混合後のシーリング材組成物をコーキングガン等の器具に吸込み充填する。そして、作業者は、器具のレバーを操作し、シーリング材組成物を目地に充填する。そして、作業者がレバーの操作を止めると、シーリング材組成物の目地への充填が止まる。」

イ 甲1に記載された発明
甲1には、その特許請求の範囲の請求項1に、「屋外と連通している建物の開口、特には壁または天井を貫通した引き込み口を密閉するため、水の存在下で膨張可能な充填材を少なくとも一種類含む、プラスチック発泡体系の使用方法。」が記載され(摘記(1a))、その具体例として実施例2及び実施例3が記載され(摘記(1f))、実施例5として、実施例1乃至4に記載の発泡体を外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管の中に内径40mmのポリエチレンの配管を配置し、2つの配管の間にある環状の溝に深さ約10cmで差し込み、発泡させて硬化させ、その後、0.5バールの圧力で、水を発泡体の1面に吹き付けて、その水密性の試験を行ったこと、膨張可能なポリマーが入っていないこと以外は同じ発泡体を作成、適用して比較したことが記載されている(摘記(1g))。

(ア)上記した実施例5である実施例2の比較試験としての膨張可能なポリマーが入っていない組成物を環状の溝に差し込み発泡させたことに着目すると、実施例2において膨張可能なポリマーが入っていない発泡体で充填した構造と充填する方法である以下の2つの発明が記載されていると認められる。

「下記の成分AおよびBを有するエアロゾル缶入り2成分ポリウレタン発泡組成物を、外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管の中に内径40mmのポリエチレンの配管を配置し、2つの配管の間にある環状の溝に深さ約10cmで差し込み、発泡させて硬化させた、プラスチック発泡体で充填した構造。
成分A:
91.7g ヒドロキシル数が56であるポリエチレングリコールジアジペート
33.4g グリセリンから作られる、ヒドロキシル数が400であるポリオキシプロピレンポリオール
30.6g グリセリンでから作られる、ヒドロキシル数が42であるポリオキシプロピレンポリオール
19.5g 分子量が600であるポリエチレングリコール
8.3g 気泡安定剤としてのポリオキシアルキレングリコールポリシロキサンコポリマー
2.8g ジ-(2-モルホリノエチル)-エーテル
91.7g トリクロロプロピルフォスフェート
403.1g ジフェニルメタンジイソシアネート(Roh-MDI)
73.7g テトラフルオロエタン
40.3g ジメチルエーテル
20.9g ブタン
4.2g プロパン
成分B:
20g モノエチレングリコール」(以下、「甲1発明1a」という。)

「下記の成分AおよびBを有するエアロゾル缶入り2成分ポリウレタン発泡組成物を、外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管の中に内径40mmのポリエチレンの配管を配置し、2つの配管の間にある環状の溝に深さ約10cmで差し込み、発泡させて硬化させた、プラスチック発泡体で充填する方法。
成分A:
91.7g ヒドロキシル数が56であるポリエチレングリコールジアジペート
33.4g グリセリンから作られる、ヒドロキシル数が400であるポリオキシプロピレンポリオール
30.6g グリセリンでから作られる、ヒドロキシル数が42であるポリオキシプロピレンポリオール
19.5g 分子量が600であるポリエチレングリコール
8.3g 気泡安定剤としてのポリオキシアルキレングリコールポリシロキサンコポリマー
2.8g ジ-(2-モルホリノエチル)-エーテル
91.7g トリクロロプロピルフォスフェート
403.1g ジフェニルメタンジイソシアネート(Roh-MDI)
73.7g テトラフルオロエタン
40.3g ジメチルエーテル
20.9g ブタン
4.2g プロパン
成分B:
20g モノエチレングリコール」(以下、「甲1発明1b」という。)

(イ)上記した実施例5である実施例3の比較試験としての膨張可能なポリマーが入っていない組成物を環状の溝に差し込み発泡させたことに着目すると、実施例3において膨張可能なポリマーが入っていない発泡体で充填した構造と充填する方法である以下の2つの発明が記載されていると認められる。

「下記の成分を有するエアロゾル缶入り単成分ポリウレタン発泡組成物を、外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管の中に内径40mmのポリエチレンの配管を配置し、2つの配管の間にある環状の溝に深さ約10cmで差し込み、発泡させて硬化させた、プラスチック発泡体で充填した構造。
91.7g ヒドロキシル数が56であるポリエチレングリコールジアジペート
33.4g グリセリンから作られる、ヒドロキシル数が400であるポリオキシプロピレンポリオール
30.6g グリセリンから作られる、ヒドロキシル数が42であるポリオキシプロピレンポリオール
19.5g 分子量が600であるポリエチレングリコール
8.3g 気泡安定剤としてのポリオキシアルキレングリコールポリシロキサンコポリマー
2.8g ジ-(2-モルホリノエチル)-エーテル
91.7g トリクロロプロピルフォスフェート
403.1g ジフェニルメタンジイソシアネート(Roh-MDI)
73.7g テトラフルオロエタン
40.3g ジメチルエーテル
20.9g ブタン
4.2g プロパン」(以下、「甲1発明2a」という。)

「下記の成分を有するエアロゾル缶入り単成分ポリウレタン発泡組成物を、外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管の中に内径40mmのポリエチレンの配管を配置し、2つの配管の間にある環状の溝に深さ約10cmで差し込み、発泡させて硬化させた、プラスチック発泡体で充填した方法。
91.7g ヒドロキシル数が56であるポリエチレングリコールジアジペート
33.4g グリセリンから作られる、ヒドロキシル数が400であるポリオキ
シプロピレンポリオール30.6g グリセリンから作られる、ヒドロキシル数が42であるポリオキシ
プロピレンポリオール
19.5g 分子量が600であるポリエチレングリコール
8.3g 気泡安定剤としてのポリオキシアルキレングリコールポリシロキサンコポリマー
2.8g ジ-(2-モルホリノエチル)-エーテル
91.7g トリクロロプロピルフォスフェート
403.1g ジフェニルメタンジイソシアネート(Roh-MDI)
73.7g テトラフルオロエタン
40.3g ジメチルエーテル
20.9g ブタン
4.2g プロパン」(以下、「甲1発明2b」という。)

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 甲1発明1aとの対比・判断
(a)対比
i まず、甲1発明1aの2成分ポリウレタン発泡組成物を発泡させて硬化させたプラスチック発泡体と本件発明1のウレタン樹脂組成物を発泡させたポリウレタン発泡体とを対比する。
(i)甲1発明1aの「2成分ポリウレタン発泡組成物」は、本件発明1の「ウレタン樹脂組成物」に相当する。

(ii)甲1発明1aの「ポリウレタン発泡組成物を」「発泡させて硬化させた、プラスチック発泡体」は、本件発明1の「ポリウレタン組成物を発泡させた」「ポリウレタン発泡体」に相当する。

(iii)本件発明1のポリオール化合物に関し検討する。
甲1発明1aの「ヒドロキシル数が56であるポリエチレングリコールジアジペート」(以下「ポリオール化合物a」という。)は、エチレングリコールとアジピン酸から製造したポリエステルジオールと解されるから、本件発明1の「ポリオール化合物」に相当し、また、甲1発明1aの「グリセリンから作られる、ヒドロキシル数が400であるポリオキシプロピレンポリオール」(以下「ポリオール化合物b」という。)、「グリセリンでから作られる、ヒドロキシル数が42であるポリオキシプロピレンポリオール」(以下「ポリオール化合物c」という。)及び「分子量が600であるポリエチレングリコール」(以下「ポリオール化合物d」という。)も、本件発明1の「ポリオール化合物」に相当する。さらに、「モノエチレングリコール」(以下「ポリオール化合物e」という。)はエチレングリコールが単体(モノ)であると解されることから「エチレングリコール」の意味であるといえ、本件発明1の「ポリオール化合物」に相当する。
ここで、甲1発明1aの上記ポリオール化合物a?eについて、「(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)」の値を以下で計算する。

まず、ポリオール化合物a?cについて計算する。
一般的に、甲1発明1aで特定されるヒドロキシル数は水酸基価と同義であり、また、ポリオール化合物a?cの重合可能な官能基がOH基であることからすると、「ポリオール化合物の分子量」、「ポリオール化合物の一分子あたりの重合可能な官能基の数」及び「ポリオール化合物の水酸基価」は、以下の関係式が成立することが明らかである。
(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)=(56.1(KOHの分子量))×1,000/(ポリオール化合物の水酸基価)
そうすると、ポリオール化合物a?cの値は、以下のとおりに計算される。
ポリオール化合物a:1001.8(=56.1×1000/56)
ポリオール化合物b:140.3(=56.1×1000/400)
ポリオール化合物c:1335.7(=56.1×1000/42)

次に、ポリオール化合物d及びeについて計算する。
ポリオール化合物dは、分子量が600であるポリエチレングリコールであり、一分子当たりのOH基の数は2であり、また、ポリオ-ル化合物eは、分子量が62.1であり、一分子当たりのOH基の数は2であるから、ポリオール化合物d及びeの値は、以下ように計算される。
ポリオール化合物d:300(=600/2)
ポリオール化合物e:31.1(=62.1/2)
以上のとおりであるから、甲1発明1aのポリオール化合物b、dおよびeは、本件発明1の「0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000」を満たすといえる。
そうすると、甲1発明1aは、「0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000」を満たすポリオール化合物を有するといえる。
また、ポリオール全体の平均値としても「0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000」を満たすとも解される。
さらに、甲1発明1aのポリオール化合物a、d及びeは、エチレングリコール単位を有することは明らかであり、これは、本件発明1の「メチレン基が2つ以上連結」に相当するから、本件発明1の「・・・ポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し」に相当する。

(iv)本件発明1のポリイソシアネート化合物に関し検討する。
甲1発明1aの「ジフェニルメタンジイソシアネート(Roh-MDI)」は、本件発明1のイソシアネート化合物に相当することは明らかであり、また、甲5の摘記(5a)からみて分子量が250.3であり、芳香環を有し、イソシアネート基を2個有するものであるから、本件発明1の「ポリイソシアネート化合物・・・の少なくとも一方が、芳香環を有し」に相当し、かつ「0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000」を満たすといえる。

(v)甲1発明1aの「気泡安定剤としてのポリオキシアルキレングリコールポリシロキサンコポリマー」、「ジ-(2-モルホリノエチル)-エーテル」、「トリクロロプロピルフォスフェート」は、それぞれ、本件発明1の「整泡剤」、「触媒」、「添加剤」である「リン酸エステル」に相当する。

(vi)甲1発明1aの「テトラフルオロエタン」、「ジメチルエーテル」、「ブタン」及び「プロパン」は、本件発明1の「発泡剤」に相当する。

(vii)上記(i)?(vi)によれば、甲1発明1aの2成分ポリウレタン発泡組成物を発泡させて硬化させたプラスチック発泡体は、本件発明1のウレタン樹脂組成物を発泡させたポリウレタン発泡体に相当する。

ii 次に、本件発明1の「耐火補強構造」に関し対比する。
(i)本件明細書の段落【0013】には、「「建材」は、・・・配管;などを含む」と記載されているから、甲1発明1aの「外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管」は、本件発明1の「建材」に相当し、この外径100mmの配管の内部は、本件発明1の「開口部」に相当する。そして、甲1発明1aの外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管の中に配置された「内径40mmのポリエチレンの配管」は、本件発明1の「開口部に挿通された・・・配管」に相当する。
(ii)甲1発明1aの「2つの配管の間にある環状の溝に」「差し込み、発泡させ」た「プラスチック発泡体」は、溝に差し込み発泡させたのは2成分ポリウレタン発泡組成物であることは明らかであるから、本件発明1の「前記建材と・・・前記配管との間の空間に充填されて・・・配管の周囲に充填されたウレタン樹脂組成物を発泡させたポリウレタン発泡体」に相当する。
(iii)上記(i)?(ii)によれば、甲1発明1aの「外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管の中に内径40mmのポリエチレンの配管を配置し、2つの配管の間にある環状の溝に深さ約10cmで差し込み、発泡させて硬化させた、プラスチック発泡体で充填した構造」は、本件発明1の「構造は、建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記配線および/または配管の周囲に充填されたウレタン樹脂組成物を発泡させたポリウレタン発泡体」に限り一致する。

iii 最後に、本件発明1の「(但し、・・・除く。)」に関し対比する。
甲1発明1aの「2成分ポリウレタン発泡組成物」は、その組成からみて、膨脹黒鉛、水の存在下で膨脹可能な充填剤及び水性のポリマー分散剤を含有するものではないから、本件発明1のポリウレタン樹脂組成物が「(但し、膨脹黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」ことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明1aは
「構造であって、前記構造は、建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記配線および/または配管の周囲に充填されたウレタン樹脂組成物を発泡させたポリウレタン発泡体、を含み、
前記ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤おび金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、構造。」の点で一致する。

そして、本件発明1と甲1発明1aは、以下の点で相違する。
<相違点1>
構造が、本件発明1は、「建築物の耐火補強構造」であるのに対し、甲1発明1aは、単なる「構造」である点。

<相違点2>
ウレタン樹脂組成物及びポリウレタン発泡体が、本件発明1は、「難燃性ウレタン樹脂組成物」及び「難燃性ポリウレタン発泡体」であるのに対し、甲1発明1aは、「2成分ポリウレタン発泡組成物」が難燃性であるか、また、「ポリウレタン発泡体」が難燃性であるかが不明である点。

<相違点3>
本件発明1は、ウレタン樹脂組成物を「開口部を閉塞するように」発泡させたのに対して、甲1発明1aは、開口部を閉塞するか否かが明らかでない点。

(b)判断
i まず、相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲1には、従来の技術として、配管、配線と、これらの配管または配線を通している壁、床または天井との間の環状の隙間を機械的密閉法、化学的密閉法などで密閉していたこと、化学的密閉法では、この隙間を、無機系(例えばモルタル)、シール材、ポリマー材、発泡材を用いて密閉できることが記載されているところ、化学的密閉法では、水の浸入に対し耐久性のある密閉は保証できないことが記載されており、このため、液体を吸収することにより膨張可能なポリマーを使用する方法が記載されているが、密閉する部分の封止物を適合させるため、時間と労力を要し、封止物の形状を維持して取り付けなければならないという課題があったことが記載されている(摘記(1b)の段落【0002】?【0005】を参照)。
そして、甲1には、配管、配線と、建物の壁、床または天井の対応する引込み口との間にある環状の隙間に対する従来の密閉法が抱えている問題点を解決することを課題とすることが記載されている(摘記(1c))。
この上で、甲1の特許請求の範囲の請求項1には、屋外と連通している建物の開口、特には壁または天井を貫通した引き込み口を密閉するため、水の存在下で膨張可能な充填材を少なくとも一種類含む、プラスチック発泡体系の使用方法が記載されているといえる(摘記(1a))。
また、甲1には、プラスチックを発泡させることにより、開口部を全体を満たし、水分と接触することにより水の存在下で膨張可能な充填材が膨張して、開口部である環状の隙間から水分の進入を防ぐ、という発明の効果が記載されている(摘記(1e))。
この発明の効果を具体的に確認するために、実施例1?4では、具体的な発泡成分や水の存在下で膨張可能な充填材を用いた発泡体が記載され、実施例5では、外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管の中に内径40mmのポリエチレンの配管を配置し、2つの配管の間にある環状の溝にプラスチック発泡体を充填した構造を作成し、この構造に対して、0.5バールの圧力で、水を発泡体の1面に吹き付けて、その水密性の試験を行い、その水密性を確認したことが記載されている(摘記(1f)(1g))。
このように、本件明細書の従来技術及び課題を参照して、甲1の特許請求の範囲の請求項1をみると、壁などの建築物に設けた開口部と配管の間の空間を発泡ポリウレタンにより密閉した構造が記載されているといえる。
しかしながら、実施例5で作成された構造は、発泡ポリウレタンにより密閉した溝の水密性を確認するために、あくまで、外径100mmの配管の内部の開口部と、この開口部に配置された外径40mmの配管の間の溝をポリウレタン発泡体で充填した構造だけであるといえ、壁などの建築物を含むものではない。
そして、上記イ(ア)で認定した甲1発明1aは、実施例5のうち、膨張可能なポリマーが入っていない組成物を使用した構造である。
そうすると、相違点1は、実質的な相違点である。

ii 次に、相違点1の容易想到性について検討する。
上記イ(ア)で認定した甲1発明1aは、実施例5のうち、膨張可能なポリマーが入っていない組成物を使用したものであり、効果として水密ではなく、すなわち所期の効果を奏さない、いわゆる比較例であって、あくまで、発泡ポリウレタンにより密閉した溝の水密性を確認するために作成した外径100mmの配管の内部の開口部と、この開口部に配置された外径40mmの配管の間の溝をポリウレタン発泡体で充填した構造であって、水密でなかったという甲1に記載された所期の効果を奏さないものである。
上記iで述べたように、甲1に記載された実施例5で作成された構造は、壁などの建築物を含むものではない。ここで、甲1に記載された所期の効果を奏する構造であれば、甲1の特許請求の範囲の記載に基づいて、建築物の構造とする動機づけはあるといえるものの、所期の効果を奏さない甲1発明1aについてまで、わざわざ壁などの建築物の構造とするとまではいえず、動機づけはあるとはいえない。
また、甲4?甲7をみても、このことを動機づける記載はない。
以上のとおりであるので、相違点1において、建築物の構造とすることは、当業者が容易に想到できたものということはできない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明1aに基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

b 甲1発明2aとの対比・判断
甲1発明1aと甲1発明2aとは、ポリウレタンエアロゾルが、甲1発明1aは2成分であるのに対し、甲1発明2aは単成分である点で相違するだけで、あとは同じ発明である。

この上で本件発明1と甲1発明2aとを対比すると、両者は、上記a(a)で述べた点で一致し、相違点1?3で相違する。
そして、相違点1は、上記a(b)で述べたとおり、実質的な相違点であり、また、当業者が容易に想到できたものということはできない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明2aに基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

c 申立人の主張
令和2年8月11日に提出した意見書では、上記相違点1については何も反論をしていない。

d 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(イ)本件発明2について
本件発明1と本件発明2とは、本件発明1が「前記添加剤が、リン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されているのに対して、本件発明2が「前記添加剤がリン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されている点で相違するだけで、あとは同じ発明である。

そうすると、本件発明2と甲1発明1a及び甲1発明2aとの対比・判断は、上記(ア)で述べたとおりであり、本件発明2は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(ウ)本件発明3について
a 本件発明3と甲1発明1bについて
(a)本件発明3について
本件発明3は、「建築物の耐火補強方法」に係る発明であって、「建築物の耐火補強方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程と、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填され」ていることが特定されており、上記「難燃性ポリウレタン組成物」は、本件発明1の「難燃性ポリウレタン組成物」と同じである。

(b)甲1発明1bについて
甲1発明1bは、「プラスチック発泡体で充填する方法の発明」であって、プラスチック発泡体及びプラスチック発泡体で充填した構造は、甲1発明1aと同じである。

b 甲1発明1bとの対比・判断
(a)対比
i 上記aで検討したことを考慮した上で、甲1発明1bと本件発明3とを対比すると、甲1発明1bの「プラスチック発泡体で充填する方法」は、本件発明3の「建築物の耐火補強方法」と、「方法」の限りで一致する。

ii 甲1発明1bと本件発明3とは、上記(ア)a(a)i及びiiiで述べたように、甲1発明1bの2成分ポリウレタン発泡組成物を発泡させて硬化させたプラスチック発泡体は、本件発明3のウレタン樹脂組成物を発泡させたポリウレタン発泡体と一致し、「(但し、膨脹黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」の点も一致する。

iii 上記a(a)で述べた、本件発明3の「建築物の耐火補強方法」の点について、甲1発明1bと対比する。
(i)上記(ア)a(a)iiで述べたように、甲1発明1bの「外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管」は、本件発明3の「建材」に相当し、この外径100mmの配管の内部は、本件発明3の「開口部」に相当する。また、甲1発明1bの「内径40mmのポリエチレンの配管」は、本件発明3の「配管」に相当する。そうすると、甲1発明1bの「外径100mmのポリメチルメトアクリレートの配管の中に内径40mmのポリエチレンの配管を配置し」は、本件発明3の「建材の開口物に配線および/または配管を挿通する工程」に相当する。
(ii)甲1発明1bの「2つの配管の間にある環状の溝に」「差し込み、発泡させ」た「プラスチック発泡体で充填」は、溝に差し込み発泡させたのは2成分ポリウレタン発泡組成物であることは明らかであるから、本件発明3の「前記配線および/または配管の周囲にウレタン樹脂組成物を充填する工程」、「前記ポリウレタン組成物を発泡および硬化させてポリウレタン発泡体を形成する工程」及び「前記ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されており」に相当することは明らかである。

そうすると、本件発明3と甲1発明1bは
「方法であって、前記方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲にウレタン樹脂組成物を充填する工程と、
前記ポリウレタン組成物を発泡および硬化させてポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填されており、
前記ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、方法。」の点で一致する。

そして、本件発明3と甲1発明1bは、以下の点で相違する。
<相違点4>
方法が、本件発明3は、「建築物の耐火補強方法」であるのに対し、甲1発明1aは、「プラスチック発泡体で充填する方法」である点。

<相違点5>
ウレタン樹脂組成物及びポリウレタン発泡体が、本件発明3は、「難燃性ウレタン樹脂組成物」及び「難燃性ポリウレタン発泡体」であるのに対し、甲1発明1bは、「2成分ポリウレタン発泡組成物」が難燃性であるか、また、「ポリウレタン発泡体」が難燃性であるかが不明である点。

<相違点6>
本件発明3は、ウレタン樹脂組成物を「開口部を閉塞するように」発泡させたのに対して、甲1発明1bは、開口部を閉塞するか否かが明らかでない点。

(b)判断
i まず、相違点4が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
上記(ア)a(b)iで述べたように、甲1発明1bは、実施例5のうち、膨張可能なポリマーが入っていない組成物を発泡させてプラスチック発泡体で充填した方法であって、壁などの建築物を含むものではない。
そうすると、相違点4は、実質的な相違点である。

ii 次に、相違点4の容易想到性について検討する。
上記(ア)a(b)iiで述べたように、上記イ(ア)で認定した甲1発明1bは、実施例5のうち、膨張可能なポリマーが入っていない組成物を使用したものであり、効果として水密ではなく、すなわち所期の効果を奏さない、いわゆる比較例である。
そうすると、所期の効果を奏さない甲1発明1bについては、壁などの建築物の構造とする動機づけはあるとはいえない。
よって、相違点4を構成することは、当業者が容易に想到できたものということはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は甲1発明1bに基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

iii 小括
以上のとおりであるので、本件発明3は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

b 甲1発明2bとの対比・判断
甲1発明1bと甲1発明2bとは、ポリウレタンエアロゾルが、甲1発明1bは2成分であるのに対し、甲1発明2bは単成分である点で相違するだけで、あとは同じ発明である。

この上で本件発明3と甲1発明2bとを対比すると、両者は、上記a(a)で述べた点で一致し、相違点4?6で相違する。
そして、相違点4は、上記a(b)で述べたとおり、実質的な相違点であり、また、当業者が容易に想到できたものということはできない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は甲1発明2bに基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

c 小括
したがって、本件発明3は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(エ)本件発明4について
本件発明3と本件発明4とは、本件発明3が「前記添加剤が、リン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されているのに対して、本件発明4が「前記添加剤がリン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されている点で相違するだけで、あとは同じ発明である。

そうすると、本件発明4と甲1発明1b及び甲1発明2bとの対比・判断は、上記(ウ)で述べたとおりであり、本件発明4は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(オ)本件発明5について
本件発明5は、本件発明3または4を引用してさらに限定した発明であるから、上記(ウ)及び(エ)で述べた理由と同じ理由により、本件発明5は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、取消理由1-2、取消理由1-3、取消理由2-1、申立理由4(甲1を主引用例とする場合)及び申立理由5(甲1を主引用例とする場合)によっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由2-2、申立理由4(甲2を主引用例とする場合)及び申立理由5(甲2を主引用例とする場合)について
ア 各甲号証の記載事項について
(ア)甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】
少なくとも1つのポリオール、場合によってはポリオールとポリイソシアン酸塩を反応させるための触媒、水および/または発泡形成剤としての圧縮または液化されたガスを基剤とする噴射剤を有する、ポリオール成分(A)と、
少なくとも1つのポリイソシアン酸塩を有する、ポリイソシアン酸塩成分(B)と、
を有し、その場合に1つまたは複数のポリオールと1つまたは複数のポリイソシアン酸塩は、ポリオール成分(A)をポリイソシアン酸塩成分(B)と規定どおりに混合した場合に、1:5から10:1,好ましくは1:1から2:1の、ポリオールのOH-基に対するポリイソシアン酸塩のイソシアン酸塩基のモル比(NCO:OH-比)が得られるように、調整されている、建築目的のための泡を形成する2成分発泡システムにおいて、
ポリオール成分(A)が水性のポリマー分散剤を含んでいることを特徴とする建築目的のための泡を形成する2成分発泡システム。
・・・
【請求項7】
ポリオール成分(A)は、ポリオールとして、好ましくは200から10000の範囲の分子重量と2から6のヒドロキシ基を有する、直鎖と分岐、脂肪族、芳香族および/またはアル脂肪族、モノマーとポリマー、のポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、脂肪酸ポリエステルポリオール、アミノポリオールおよびハロゲン化されたポリオールを含むグループの少なくとも1つの代表、特に200から3000、好ましくは300から600の数平均分子重量を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコール、1,5から5の官能性と100から700のOH-数を有するポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールを含んでおり、ポリイソシアン酸塩成分(B)は、好ましくは2と等しいか、それより大きい官能性と20から40%のNCO-含有量を有するポリイソシアン酸塩を含んでいることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の2成分発泡システム。
【請求項8】
ポリオール成分(A)は、0.01から5重量%、好ましくは0.1から1,5重量%の量の少なくとも1つのセル安定剤を含んでいることを特徴とする請求項1から7の少なくとも1項に記載の2成分発泡システム。
【請求項9】
ポリオール成分(A)は、ポリシロキサン、ポリエーテル改質されたシロキサン、シロキサン-オキシアルキレン-コポリマー、シリコン、平均的な極性の非イオン系乳化剤および特にシリコン-グリコール-コポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレングリコール/アルキルシラン-コポリマー、アルコキシル化された脂肪酸、好ましくは脂肪酸残基内に14の炭素原子を有するエトキシル化またはプロポキシル化された脂肪酸、エトキシル化された(C_(1)-C_(18))-アルキルフェノールおよび/またはエトキシル化されたひまし油を含む群から選択されたセル安定剤を含んでいることを特徴とする請求項8に記載の2成分発泡システム。
・・・
【請求項13】
ポリイソシアン酸塩成分(B)は、脂肪族、環脂肪族、アル脂肪族、芳香族および異種環状のポリイソシアン酸塩を含む群から選択されたポリイソシアン酸塩、特に4,4’-メチレンジ(フェニルイソシアン酸塩)、トルイレンジイソシアン酸塩、イソプロピリデンジイソシアン酸塩、ヘキサメチレンジイソシアン酸塩および/またはこれらジイソシアン酸塩のプレポリマーまたはオリゴマーを含んでいることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の2成分発泡システム。
・・・
【請求項15】
ポリオール成分(A)および/またはポリイソシアン酸塩成分(B)は、有機または無機の難燃剤を含んでいることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の2成分発泡システム。
・・・
【請求項17】
難燃剤として、赤リン、リン化合物、特にトリエチルリン酸塩、トリフェニルリン酸塩および/またはトリクロルエチルリン酸塩、トリ(2-クロルイソプロピル)-リン酸塩あるいはトリ(2-クロルエチル)-リン酸塩のような、ハロゲン化されたリン酸エステル、金属水酸化物、特に水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウムおよび/または酸化アンチモンが含まれていることを特徴とする請求項15または16に記載の2成分発泡システム。
・・・
【請求項34】
壁、床および/または天井の開口部、ケーブルとパイプの挿通部、天井部分と壁部分の間、外壁開口部と、窓枠またはドア枠のような、組み込むべき構造部分との間、天井と壁の間、および建物の外壁と前に懸下されるファサードの間の継ぎ目を、固定、断熱および/または防火の目的で、泡で塞ぐための、請求項1から33に記載の2成分発泡システムの使用方法。」

(2b)「【0010】
従って本発明の課題は、冒頭で定義した種類の建築目的のための泡を形成する、2成分発泡システムを提供することにあり、その2成分発泡システムは簡単な方法で建物の壁と天井の開口部ないし継ぎ目またはケーブルやパイプの挿通部に投入することができ、かつ高い火炎抵抗長さにおいて改良された断熱特性と耐火特性を、しかも付加的な耐火添加剤の存在なしで、可能にし、かつその2成分発泡システムによって、建築箇所の現場で、繊維状の構造に基づいて驚くほど効果的な機械的特性を有する発泡材を形成することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1に記載の2成分発泡システムによって解決される。従属請求項は、この本発明対象の好ましい実施形態およびこの2成分発泡システムを壁、床および/または天井の開口部、ケーブルおよびパイプの挿通部、天井と壁部分の間、壁の開口部と窓やドア枠のような、組み込むべき構造部分との間、天井と壁の間、建物の外壁と前に懸下されるファサードとの間の継ぎ目を固定および/または防火のために泡で充填するために使用することに関する。」

(2c)「【0013】
驚くべきことに、この種の2成分発泡システムのポリオール成分内に水性のポリマー分散剤が存在することによって、ポリウレタン泡を形成するためにこの2成分発泡システムの取扱いに関しても、それに基づいて発泡により形成される発泡材の特性に関しても、特に効果的な結果が得られることが、明らかにされた。
【0014】
すなわち、イソシアン酸塩成分(B)を本発明に基づくポリオール成分(A)へ添加した後に、規定通りに使用した場合に、ポリマー分散剤のポリマーの凝固と沈殿が行われ、その結果、形成された泡は極めて迅速に十分な安定度を得て、滴らず、かつ消えることはない。このことは、本発明に基づく2成分発泡システムを、特にドア枠、窓枠あるいはファサードエレメントを固定する場合に、現場泡として使用する場合に特に効果的である。というのは、それによって迅速に必要な泡の強度が達成されるからである。
【0015】
さらに、発泡する泡内の水性のポリマー分散剤のポリマーが凝固し沈殿する場合に、水性の分散剤から抜け落ちたポリマーが泡膨張の方向に伸ばされることが明らかにされている。このことが泡の異方性の繊維状構造をもたらすので、種々の空間方向において泡の強度特性を異なるように調節することができる。このようにして、発泡システムがその中で発泡される、包囲する型の幾何学配置に従って、発泡材の安定性を所定の方向に増大させることが可能になる。すなわち、たとえば泡を細長い型内で発泡させることによって、細長い容器の長手方向に、横方向よりも高い強度を有する発泡材を得ることができる。
【0016】
他方で、火災の場合において焼けた泡が安定した灰外皮を残し、それが火炎がさらに広がることを阻止することによって、耐火性の驚くべき改良が得られ、一方で本発明に基づくような、水性のポリマー分散剤の添加なしで発泡されたポリウレタン発泡材は、同じ条件の元で残滓なしで燃焼した。
【0017】
出来上ったポリウレタン泡にカルボキシル基を含むアクリル酸エステルコポリマーまたはプラスチック分散剤のような結合材を含浸させ、あるいは浸み込ませる、上述した従来の技術の方法とは異なり、本発明に基づく2成分発泡システムを規定通りに発泡させた場合に、ポリオール成分内に存在する水性のポリマー分散剤のポリマーが、形成されたポリウレタン泡の構造内へ組み込まれ、それによってその、特に耐火作用に関する特性と機械的な特性が驚くほど改良される。
【0018】
すなわち、水性のポリマー分散剤内のポリマーがポリウレタン発泡システム内に組み込まれることによって、他の耐火添加剤または填料の添加なしで、極めて良好な燃焼特性が得られる。しかし、比較的わずかな量のこの種の添加剤の添加によって、従来存在していた耐火泡の耐火作用を著しく凌駕することができる。このようにして、本発明に基づく2成分発泡システムによれば、従来の耐火泡を使用する場合よりも、わずかな組込み深さにおいて、同じ耐火時間を達成することが可能になる。従って本発明に基づく2成分発泡システムの使用は、薄い防火壁および防火天井にも可能である。
【0019】
さらに、本発明に基づく2成分発泡システムは、硬化されたポリウレタン発泡材を生じることが明らかにされており、そのポリウレタン発泡材は明らかに発泡材構造内に組み込まれた、水性のポリマー分散剤のポリマーの存在に基づいて、火災の場合に極めて安定した灰外皮を供給し、それが改良された耐火特性の責任を果たしている。」

(2d)「【0027】
さらに、本発明によれば、ポリオール成分(A)は、0.01から5重量%、好ましくは0.1から1,5重量%の量の、形成すべき泡のための少なくとも1つのセル安定剤を有していると、効果的である。セル安定剤として特に、ポリシロキサン、ポリエーテル改質されたシロキサン、シロキサン-オキシアルキレン-コポリマー、シリコン、平均的な極性の非イオン系乳化剤および特にシリコン-グリコール-コポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレングリコール/アルキルシラン-コポリマー、アルコキシル化された脂肪酸、好ましくは脂肪酸残基内に14の炭素原子を有するエトキシル化またはプロポキシル化された脂肪酸、エトキシル化された(C_(1)-C_(18))-アルキルフェノールおよび/またはエトキシル化されたひまし油が適している。」

(2e)「【0029】
ポリオールをポリイソシアン酸塩と反応させるための触媒として、本発明に基づく発泡システムのポリオール成分(A)は、芳香族、異節芳香族および/または脂肪族、第2または第3アミンおよび/またはZn、Sn、Mn、Mg、Bi、Sb、PbおよびCaを含むグループからなる金属の金属有機化合物、特にこれらの金属の1つのオクタン酸塩、ナフテン酸塩またはアセチルアセトン酸塩を含むことができる。特に好ましい触媒は、ジメチルモノエタノールアミン、ジエチルモノエタノールアミン、メチルエチルモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリヘクサノールアミン、トリペンタノールアミン、トリシクロヘキサノールアミン、ジエタノールメチルアミン、ジエタノールエチルアミン、ジエタノールプロピルアミン、ジエタノールブチルアミン、ジエタノールペンチルアミン、ジエタノールヘキシルアミン、ジエタノールシクロヘキシルアミン、ジエタノールフェニルアミンおよびそのエトキシル化生成物とプロポキシル化生成物、ジアザビシクロオクタン、特に1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)-エーテル、テトラメチルグァニジン、ビス-ジメチルアミノメチル-フェノール、2,2-ジモルフォリノジエチルエーテル、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)-エタノール、2-ジメチルアミノエチル-3-ジメチルアミノプロピルエーテル、ビス(2-ジメチルアミノエチル)-エーテル、N,N-ジメチルピペラジン、N-(2-ヒドロキシエトキシエチル)-2-アザノルボナン、N,N,N,N-テトラメチルヘキサン-1,3-ジアミン、N、N、N、N-Tテトラエチルプロパン-1-3ジアミン、N,N,N,N-Tテトラメチルヘキサン-1,1ジアミン、1-メチルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、1-アリルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、1,2,4,5-テトラメチルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-イミダゾール、ピリミダゾール、4-ジメチルアミノ-ピリジン、4-ピロリジノピリジン、4-モルフォリノピリジン、4-メチルピリジン、N-ドキシル-2-メチル-イミダゾール並びにカルボン酸のスズ(II)-塩、強い塩基、およびアルカリ水酸化物、アルカリアルコラートおよびアルカリフェノラート、特にジ-n-オクチル-スズ-メルカプチド、ジブチルスズ-マイレン酸塩、-二酢酸塩、-二ラウリン酸塩、-二塩化物、-ビスドデシル-メルカプチド、スズ(II)-酢酸塩、-エチルヘキソートおよび-ジエチルヘキソート並びに鉛フェニル-エチル-ジチオカルバミナートである。」

(2f)「【0031】
好ましくはポリオール成分(A)および/またはポリイソシアン酸塩成分(B)は、ポリオール成分(A)内の水の存在によってすでに達成される発泡効果をさらに強化するために、空気、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素のような、圧縮または液化されたガス、1,1,1,2-テトラフルオロエタンまたは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンのような、フッ化炭化水素、ジメチルエーテル、ブタン、プロパンまたはそれらの混合物を基剤とする噴射剤を有している。
【0032】
さらに、本発明によれば、ポリオール成分(A)あるいはまたポリイソシアン酸塩成分(B)に、あるいは両方の成分に、通常の有機または無機の難燃剤を0.1から20重量%、好ましくは0.5から5重量%の全体量で添加することが可能である。
【0033】
この種の難燃剤として、赤リン、リン化合物、特にトリエチルリン酸塩および/またはトリクロルエチルリン酸塩、トリ(2-クロルイソピル)-リン酸塩またはトリ(2-クロルエチル)-リン酸塩のような、ハロゲン化されたリン酸塩エステル、金属水酸化物、特に水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウムおよび/または酸化アンチモンを添加することができる。」

(2g)「【0044】
他の好ましい実施形態によれば、本発明に基づく2成分発泡システムのポリオール成分(A)とポリイソシアン酸塩成分(B)は、2チャンバまたはマルチチャンバ装置内で反応を阻止するように分離されており、使用条件の下で1:5から10:1,好ましくは1:1から2:1の、1つないし複数のポリオールのOH-基に対する1つないし複数のポリイソシアン酸塩のNCO-基の比を維持しながら反応可能に保持されている。その後、2成分発泡システムを規定通りに使用した場合に、2チャンバまたはマルチチャンバ装置の分離された容器内にある成分が、機械的な力の作用を受けて、あるいは成分内に存在している噴射剤の作用を受けて、好ましくは混合ノズルを通して射出されて、型内へ押し出されて、そこで発泡するか、あるいは建築箇所の現場で閉鎖すべき開口部内へ投入されて、発泡し、硬化する。
【0045】
従って本発明はまた、壁、床および/または天井の開口部、ケーブルとパイプの挿通部、天井部分と壁部分の間、外壁開口部と、窓枠ドア枠のような、組み込むべき構造部分との間、天井と壁の間および建物の外壁と前に懸かるファサードの間の隙間を固定、断熱および/または防火のために泡で塞ぐために、上述した2成分発泡システムを使用することにも関する。」

(2h)「【0054】
ポリオール成分(A)とポリイソシアン酸塩成分(B)を形成するための成分が、以下の表2に記載されている:
【表2】

【0055】
ポリオール成分(A)の成分は、同様に上述した方法でまず、液状の成分の混合により、そしてその後固体の成分の撹拌によって形成された。
【0056】
2つの成分を混合する場合に、2チャンバ装置から押し出す場合か、あるいは2つの成分を撹拌することによって、極めて迅速に-約15秒のゲル時間に従って-粘性の著しい上昇が行われ、それはポリマー分散剤が沈殿してゲルを形成しながら凝固することを原因としている。
【0057】
このゲル形成に基づいて、発泡する泡材料は約15秒後にすでに、極めて高い安定度を示しており、滴らず、かつ消えない。
【0058】
この特性は、建築箇所の現場で、たとえばドア枠を固定する際に、2成分発泡システムを使用するのに極めて望ましい。この目的のために、泡は壁とドア枠の間に投入される。従来の2成分ポリウレタン泡は、押出しプロセスを著しく低速にし、それによって泡がミキサー内ですでに膨張してポリマー化することによってのみ十分な安定度を達成しており、それが比較的長い作業時間としばしば混合装置の詰まりをもたらしているが、本発明によれば、発泡システムのポリオール成分(A)に水性のポリマー分散剤を添加することによって極めて早期の安定度がもたらされるので、2成分泡の速やかな加工が可能である。
【0059】
それに加えて、水性のポリマー分散剤の、水性のポリマーから沈殿して凝固するポリマーが、泡膨張の方向へ広がり、それが泡の異方性の繊維状構造をもたらす。それにより包囲する型の幾何学配置に従って、様々な空間方向における様々な強度を所望に達成することができる。
【表3】

【0060】
この例2の2成分発泡システムの発泡によって得られる軟発泡材は、ゲル時間の後に55秒のスタート時間と450秒のストップ時間を示し、かつ140kg/m^(3)の密度を有する泡を供給する。上述したようにして測定された、15cmの組込み深さにおける耐火時間は、材料の外側で室温に対するわずか52Kの温度差において、120分である。従ってこの泡も、例1において記載された従来のフレキシブルな耐火泡を耐熱特性において著しく凌駕している。
【0061】
まず、ビーカー内でポリオール成分(A)の成分をよく撹拌することによって混合する。その後ポリイソシアン酸塩成分(B)を添加し、すぐによく混合する。25秒後に、混合物内にゲル形成が観察され、80秒後には材料の膨張が開始され、その膨張は6分後には完全に終了している。71g/lの比重を有するフレキシブルな泡が得られる。
【0062】
この配合において、混合物内に100重量部分のポリオール当たり39重量部分の水と64重量部分の分散されたポリマーが含まれている。水量は、泡100g当たり17lCO_(2)を形成するのに十分である。この反応に反応相手として必要とされるイソシアン酸成分を取り入れると、4,2lCO_(2)が発生することになる。従って水は、泡で塞ぐために必要な量を数倍上回って存在している。
【0063】
しかし、膨張後、泡100g当たり1,4lの泡の体積のみが観察される。比較的大きい割合のCO_(2)が泡の孔から逃げることを排除することができるので(別の実験においては逃げたCO_(2)が捕捉され、それは泡100g当たり0.5lでしかなかった)、この実験は、存在している水のわずかな割合、この場合においては約10重量%のみがCO_(2)に変換され、従って泡形成のために必要であることを示している。従って驚くべきことに、CO_(2)形成を調整するために、ポリオール成分の水含有量を減少させることは不要である。というのは、いずれの場合にも本発明によれば優れた特性を有するポリウレタン泡が得られるからである。
【0064】
燃焼テストにおいては、この材料は極めて安定した灰外皮を示し、同様な方法で形成された、アクリル酸エステルコポリマーの水性分散剤を添加しないポリウレタン発泡材は、残滓なしに燃焼した。」

(イ)甲6及び甲7
甲6及び甲7には、上記(1)ア(エ)及び(オ)で示した事項が記載されている。

イ 甲2に記載された発明
甲2の請求項34に記載された2成分発泡システムの使用方法は、請求項1?33に記載された2成分発泡システムを用いた2成分発泡システムの使用方法であり、該2成分発泡システムの使用方法とは、「建築目的の泡を形成する」、「泡で塞ぐ」、構造に使用するための使用方法であることが明らかであることから、「構造」を有する発明についても記載されているといえる。

してみると、甲2には、摘記(2a)の請求項1を引用する請求項7、8、9、13、15、17を順に引用する請求項34の記載によれば、次の発明が記載されているといえる。

「壁、床および/または天井の開口部、ケーブルとパイプの挿通部、天井部分と壁部分の間、外壁開口部と、窓枠またはドア枠のような、組み込むべき構造部分との間、天井と壁の間、および建物の外壁と前に懸下されるファサードの間の継ぎ目を、固定、断熱および/または防火の目的で、泡で塞ぐための、2成分発泡システムを有する構造であって、
2成分発泡システムが、少なくとも1つのポリオール、場合によってはポリオールとポリイソシアン酸塩を反応させるための触媒、水および/または発泡形成剤としての圧縮または液化されたガスを基剤とする噴射剤を有する、ポリオール成分(A)と、
少なくとも1つのポリイソシアン酸塩を有する、ポリイソシアン酸塩成分(B)と、
を有し、その場合に1つまたは複数のポリオールと1つまたは複数のポリイソシアン酸塩は、ポリオール成分(A)をポリイソシアン酸塩成分(B)と規定どおりに混合した場合に、1:5から10:1,好ましくは1:1から2:1の、ポリオールのOH-基に対するポリイソシアン酸塩のイソシアン酸塩基のモル比(NCO:OH-比)が得られるように、調整されている、建築目的のための泡を形成する2成分発泡システムにおいて、
ポリオール成分(A)が水性のポリマー分散剤を含んでおり、
ポリオール成分(A)は、ポリオールとして、好ましくは300から600の数平均分子重量を有するポリエチレングリコールを含んでおり、ポリイソシアン酸塩成分(B)は、好ましくは2と等しいか、それより大きい官能性と20から40%のNCO-含有量を有するポリイソシアン酸塩を含んでおり、
ポリオール成分(A)は、0.01?5重量%の量のポリシロキサン、ポリエーテル改質されたシロキサン、シロキサン-オキシアルキレン-コポリマー、シリコン、平均的な極性の非イオン系乳化剤および特にシリコン-グリコール-コポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレングリコール/アルキルシラン-コポリマー、アルコキシル化された脂肪酸、好ましくは脂肪酸残基内に14の炭素原子を有するエトキシル化またはプロポキシル化された脂肪酸、エトキシル化された(C_(1)-C_(18))-アルキルフェノールおよび/またはエトキシル化されたひまし油を含む群から選択されたセル安定剤を含んでおり、
ポリイソシアン酸塩成分(B)は、特に4,4’-メチレンジ(フェニルイソシアン酸塩)、トルイレンジイソシアン酸塩、イソプロピリデンジイソシアン酸塩、ヘキサメチレンジイソシアン酸塩および/またはこれらジイソシアン酸塩のプレポリマーまたはオリゴマーを含んでおり、
ポリオール成分(A)および/またはポリイソシアン酸塩成分(B)は、有機または無機の難燃剤として、赤リン、リン化合物、特にトリエチルリン酸塩、トリフェニルリン酸塩および/またはトリクロルエチルリン酸塩、トリ(2-クロルイソプロピル)-リン酸塩あるいはトリ(2-クロルエチル)-リン酸塩のような、ハロゲン化されたリン酸エステル、金属水酸化物、特に水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウムおよび/または酸化アンチモンが含まれている、構造。」(以下、「甲2発明1」という。)

また、甲2の請求項34に記載された2成分発泡システムの使用方法は、請求項1?33に記載された2成分発泡システムを用いた2成分発泡システムの使用方法であり、該2成分発泡システムの使用方法とは、該2成分システムを用いる「建築目的の泡を形成する」、「泡で塞ぐ」方法であることが明らかであることから、「方法」の発明についても記載されているといえる。

してみると、甲2には、甲2の摘記(2a)の請求項1を引用する請求項7、8、9、13、15、17を順に引用する請求項34の記載によれば、次の発明が記載されているといえる。

「壁、床および/または天井の開口部、ケーブルとパイプの挿通部、天井部分と壁部分の間、外壁開口部と、窓枠またはドア枠のような、組み込むべき構造部分との間、天井と壁の間、および建物の外壁と前に懸下されるファサードの間の継ぎ目を、固定、断熱および/または防火の目的で、泡で塞ぐための、2成分発泡システムを用いる方法であって、
2成分発泡システムが、少なくとも1つのポリオール、場合によってはポリオールとポリイソシアン酸塩を反応させるための触媒、水および/または発泡形成剤としての圧縮または液化されたガスを基剤とする噴射剤を有する、ポリオール成分(A)と、
少なくとも1つのポリイソシアン酸塩を有する、ポリイソシアン酸塩成分(B)と、
を有し、その場合に1つまたは複数のポリオールと1つまたは複数のポリイソシアン酸塩は、ポリオール成分(A)をポリイソシアン酸塩成分(B)と規定どおりに混合した場合に、1:5から10:1,好ましくは1:1から2:1の、ポリオールのOH-基に対するポリイソシアン酸塩のイソシアン酸塩基のモル比(NCO:OH-比)が得られるように、調整されている、建築目的のための泡を形成する2成分発泡システムにおいて、
ポリオール成分(A)が水性のポリマー分散剤を含んでおり、
ポリオール成分(A)は、ポリオールとして、好ましくは300から600の数平均分子重量を有するポリエチレングリコールを含んでおり、ポリイソシアン酸塩成分(B)は、好ましくは2と等しいか、それより大きい官能性と20から40%のNCO-含有量を有するポリイソシアン酸塩を含んでおり、
ポリオール成分(A)は、0.01?5重量%の量のポリシロキサン、ポリエーテル改質されたシロキサン、シロキサン-オキシアルキレン-コポリマー、シリコン、平均的な極性の非イオン系乳化剤および特にシリコン-グリコール-コポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレングリコール/アルキルシラン-コポリマー、アルコキシル化された脂肪酸、好ましくは脂肪酸残基内に14の炭素原子を有するエトキシル化またはプロポキシル化された脂肪酸、エトキシル化された(C_(1)-C_(18))-アルキルフェノールおよび/またはエトキシル化されたひまし油を含む群から選択されたセル安定剤を含んでおり、
ポリイソシアン酸塩成分(B)は、特に4,4’-メチレンジ(フェニルイソシアン酸塩)、トルイレンジイソシアン酸塩、イソプロピリデンジイソシアン酸塩、ヘキサメチレンジイソシアン酸塩および/またはこれらジイソシアン酸塩のプレポリマーまたはオリゴマーを含んでおり、
ポリオール成分(A)および/またはポリイソシアン酸塩成分(B)は、有機または無機の難燃剤として、赤リン、リン化合物、特にトリエチルリン酸塩、トリフェニルリン酸塩および/またはトリクロルエチルリン酸塩、トリ(2-クロルイソプロピル)-リン酸塩あるいはトリ(2-クロルエチル)-リン酸塩のような、ハロゲン化されたリン酸エステル、金属水酸化物、特に水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウムおよび/または酸化アンチモンが含まれている、 方法。」(以下、「甲2発明2」という。)

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
(a)まず、甲2発明1の2成分発泡システムと本件発明1のウレタン樹脂組成物を発泡させたポリウレタン発泡体とを対比する。
i 甲2発明1の「2成分発泡システム」は、「ポリオール成分(A)」と「ポリイソシアン酸成分(B)」を有するから、本件発明1の「ウレタン樹脂組成物」に相当することは明らかである。

ii 「2成分発泡システム」は、「泡で塞ぐため」のものであり、「泡」は、ポリオール成分(A)とポリイソシアン酸成分(B)とを反応させて発泡させた発泡体であることは明らかであるから、本件発明1の「ポリウレタン組成物を発泡させた」「ポリウレタン発泡体」に相当する。

iii 本件発明1のポリオール化合物に関し検討する。
甲2発明1の「ポリオール成分(A)」は、ポリオールとして「300から600の数平均分子重量を有するポリエチレングリコール」を含むものであり、ポリエチレングリコールは、エチレングリコール単位である「-(CH_(2)-CH_(2)-O)-」の構造を有するものであるから、本件発明1の「ポリオール化合物」であって、「メチレン基が2つ以上連結し」ている化合物に相当する。
また、甲2発明1の「300から600の数平均分子重量を有するポリエチレングリコール」は水酸基を2つ有するから、(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)を計算すると150?300となり、本件発明1の「0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000」を満たす。

iv 甲2発明1の「ポリイソシアン酸塩成分(B)」は、本件発明1の「ポリイソシアネート化合物」に相当することは明らかである。

v 甲2発明1の「触媒」、「水および/または発泡形成剤としての圧縮または液化されたガスを基剤とする噴射剤」は、それぞれ、本件発明1の「触媒」、「発泡剤」に相当する。

vi 甲2発明1の「ポリオール成分(A)」は、「ポリシロキサン、ポリエーテル改質されたシロキサン、シロキサン-オキシアルキレン-コポリマー、シリコン、平均的な極性の非イオン系乳化剤および特にシリコン-グリコール-コポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレングリコール/アルキルシラン-コポリマー、アルコキシル化された脂肪酸、好ましくは脂肪酸残基内に14の炭素原子を有するエトキシル化またはプロポキシル化された脂肪酸、エトキシル化された(C_(1)-C_(18))-アルキルフェノールおよび/またはエトキシル化されたひまし油を含む群から選択されたセル安定剤」を含んでおり、これは、本件発明1の「整泡剤」に相当する。

vii 甲2発明1の「ポリオール成分(A)および/またはポリイソシアン酸塩成分(B)」は、「有機または無機の難燃剤として、赤リン、リン化合物、特にトリエチルリン酸塩、トリフェニルリン酸塩および/またはトリクロルエチルリン酸塩、トリ(2-クロルイソプロピル)-リン酸塩あるいはトリ(2-クロルエチル)-リン酸塩のような、ハロゲン化されたリン酸エステル、金属水酸化物、特に水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウムおよび/または酸化アンチモン含まれて」おり、これは、本件発明1の「添加剤」に相当し、添加剤が、「リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」に相当する。そして、甲2発明1の2成分発泡システムは、難燃剤を含むから、難燃性であるといえる。

viii 上記i?viiによれば、甲2発明1の2成分発泡システムは、本件発明1の難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体に相当する。

(b)次に、本件発明1の「耐火補強構造」に関し対比する。
i 甲2発明1の「壁、床および/または天井の開口部、ケーブルとパイプの挿通部、天井部分と壁部分の間、外壁開口部と、窓枠またはドア枠のような、組み込むべき構造部分との間、天井と壁の間、および建物の外壁と前に懸下されるファサードの間の継ぎ目」のうち、「ケーブルとパイプの挿通部」に着目する。
(i)「ケーブルとパイプの挿通部」を、パイプの開口部にケーブルが挿通したものであるとすると、甲2発明1の「パイプ」、「ケーブル」、「挿通部」は、それぞれ、本件発明1の「建材」、「配線および/または配管」、「開口部」に相当する(本件明細書の段落【0013】参照)。
(ii)甲2発明1の「ケーブルとパイプの挿通部」を、壁、床および/または天井の開口部にケーブルやパイプを挿通する部分であるとすると、甲2発明1の「ケーブルとパイプ」は、本件発明1の「配線および/または配管」に相当し、甲2発明1の「挿通部」は、本件発明1の「建材の開口部」及び「前記開口部に挿通された」に相当する。
(iii)甲2発明1の「ケーブルとパイプの挿通部」について、上記(i)、(ii)の2つのいずれの場合にしても、甲2発明1の「壁、床および/または天井の開口部、ケーブルとパイプの挿通部、天井部分と壁部分の間、外壁開口部と、窓枠またはドア枠のような、組み込むべき構造部分との間、天井と壁の間、および建物の外壁と前に懸下されるファサードの間の継ぎ目」は、本件発明1の「建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間」に相当する。

ii 甲2発明1の「壁、床および/または天井の開口部・・・および建物の外壁と前に懸下されるファサードの間の継ぎ目」を「固定、断熱および/または防火の目的で、泡で塞ぐ」は、開口部などの空間を2成分発泡システムで充填して塞ぐものであるから、本件発明1の「充填されて前記開口部を閉塞するように前記配線および/または配管の周囲に充填された」に相当する。

iii 甲2発明1の「2成分発泡システムを有する構造」は、「壁、床および/または天井の開口部・・・および建物の外壁と前に懸下されるファサードの間の継ぎ目」を「固定、断熱および/または防火の目的で、泡で塞ぐ」構造であり、甲2には2成分発泡システムより生じた硬化されたポリウレタン発泡材は耐火特性を有すると記載されており(【0019】)、耐火性を有するものであるから、甲2発明1の「2成分発泡システムを有する構造」は「建築物の耐火補強構造」に相当する。

(c)最後に、本件発明1の「(但し、・・・除く。)」に関し対比する。
甲2発明1の「2成分発泡システム」は、その組成からみて、膨脹黒鉛及び水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものではないから、本件発明1のポリウレタン樹脂組成物が「(但し、膨脹黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除)」くことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明1は
「建築物の耐火補強構造であって、前記耐火補強構造は、建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように前記配線および/または配管の周囲に充填された難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体と、を含み、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、さらに、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、建築物の耐火補強構造。」 の点で一致する。

そして、本件発明1と甲2発明1は、以下の点で相違する。
<相違点7>
本件発明1は、「ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し」とあるのに対し、甲2発明1は、ポリオール成分(A)およびポリイソシアン酸塩成分(B)に芳香環を有する化合物を配合することが特定されていない点。

<相違点8>
本件発明1は、難燃性ウレタン樹脂組成物が、水性のポリマー分散剤を含有するものを除くのに対して、甲2発明1は、2成分発泡システムが、水性のポリマー分散剤を含む点。

b 判断
事案に鑑み、相違点8から検討する。
(a)まず、相違点8が実質的な相違点であるか否かについて検討するが、実質的な相違点であることは明らかである。

(b)次に、相違点8の容易想到性について検討する。
甲2には、建物の壁と天井の開口部ないし継ぎ目またはケーブルやパイプの挿通部に2成分発泡システムを簡単な方法で投入でき、しかも付加的な耐火添加剤の存在なしで改良された断熱特性と耐火特性を可能にし、繊維状の構造に基づいて驚くほど効果的な機械的特性を有する発泡材を形成することを目的とすることが記載され(摘記(2b))、ポリオール成分(A)に水性のポリマー分散剤を含むことにより、イソシアン酸塩成分(B)にポリオール成分(A)を添加することで、ポリマー分散剤の凝固と沈殿が生じることにより、繊維状構造の泡を形成することができ、高い強度を有する発泡材を得ることができること、また、火災の場合において焼けた泡が安定した灰外皮を残し、火災を広げることを阻止することが記載されている(摘記(2c))。そして、実施例においては、水性のポリマー分散剤であるアクリル酸エステルコポリマーを含む場合は、泡が繊維状構造をもたらし、強度を達成できたことが記載され(摘記(2h)の【0059】を参照)、燃焼テストにおいては、水性のアクリル酸エステルコポリマーの分散剤を有する材料は極めて安定した灰外皮を示し、水性分散剤を添加しないポリウレタン発泡材は、残滓なしに燃焼したことが記載されている(摘記(2h)の【0064】を参照)。
以上の記載によれば、甲2には、ポリオール成分(A)に水性のポリマー分散剤を含むことを前提として課題を解決した発明が記載され、効果も確認されている。そうすると、甲2発明1において、水性のポリマー分散剤を除くとするには、阻害要因があるといえ、相違点8を本件発明1とすることには、動機づけがあるとはいえない。
また、甲6及び甲7をみても、このことを動機づける記載はない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明1に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

c 申立人の主張
令和2年8月11日に提出した意見書において、申立人は、甲2には、難燃性を含有する2成分発泡システムが記載され、水性のポリマー分散剤の含有の有無に関わらず耐火性のポリウレタン発泡体を形成する旨の主張をしているだけで、上記相違点8の容易想到性については何も反論をしていない。

d 小括
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(イ)本件発明2について
本件発明1と本件発明2とは、本件発明1が「前記添加剤が、リン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されているのに対して、本件発明2が「前記添加剤がリン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されている点で相違するだけで、あとは同じ発明である。

そうすると、本件発明2と甲2発明1との対比・判断は、上記(ア)で述べたとおりであり、本件発明2は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(ウ)本件発明3について
a 本件発明3と甲2発明2について
(a)本件発明3について
本件発明3は、「建築物の耐火補強方法」に係る発明であって、「建築物の耐火補強方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程と、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填され」ていることが特定されており、上記「難燃性ポリウレタン組成物」は、本件発明1の「難燃性ポリウレタン組成物」と同じである。

(b)甲2発明2について
甲2発明2は、泡で塞ぐための、2成分発泡システムを用いる方法の発明であって、2成分発泡システム及び2成分発泡システムの泡で継ぎ目等を塞いだ構造は、甲2発明1と同じである。

b 対比・判断
(a)対比
i 上記aで検討したことを考慮した上で、甲2発明2と本件発明3とを対比すると、甲2発明2の「2成分発泡システムを用いる方法」は、本件発明3の「建築物の耐火補強方法」と、「方法」の限りで一致する。

ii 甲2発明2と本件発明3とは、上記(ア)a(a)及び(c)で述べたように、甲2発明2の「2成分発泡システム」は、本件発明3の「難燃性ウレタン樹脂組成物」に相当し、また、甲2発明2の「2成分発泡システム」の「泡」は、本件発明3の「難燃性ポリウレタン発泡体」と一致し、「(但し、膨脹黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除)」くと一致する。

iii 上記a(a)で述べた、本件発明3の「建築物の耐火補強方法」の点について、甲2発明2と対比する。
(i)上記(ア)a(b)i(i)及び(ii)で述べたように、甲2発明2の「ケーブルとパイプの挿通部」は、本件発明3の「建材の開口物に配線および/または配管を挿通する工程」に相当することは明らかである。
(ii)甲2発明2の「壁、床および/または天井の開口部・・・および建物の外壁と前に懸下されるファサードの間の継ぎ目」を「固定、断熱および/または防火の目的で、泡で塞ぐ」は、継ぎ目等に2成分発泡システムを充填して泡で塞ぐものであるから、本件発明3の「前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程」、「前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程」及び「前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されており」に相当することは明らかである。

そうすると、本件発明3と甲2発明2は
「方法であって、前記方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程と、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填されており、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、方法。」の点で一致する。

そして、本件発明3と甲2発明2は、以下の点で相違する。
<相違点9>
方法が、本件発明3は、「建築物の耐火補強方法」であるのに対し、甲2発明2は、「2成分発泡システムを用いる方法」である点。

<相違点10>
本件発明3は、「ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し」とあるのに対し、甲2発明2は、ポリオール成分(A)およびポリイソシアン酸塩成分(B)に芳香環を有する化合物を配合することが特定されていない点。

<相違点11>
本件発明3は、難燃性ウレタン樹脂組成物が、水性のポリマー分散剤を含有するものを除くのに対して、甲2発明2は、2成分発泡システムが、水性のポリマー分散剤を含む点。

(b)判断
事案に鑑み、相違点11から検討する。
i まず、相違点11が実質的な相違点であるか否かについて検討するが、実質的な相違点であることは明らかである。

ii 次に、相違点11の容易想到性について検討する。
相違点11は、相違点8と同じであり、上記(ア)b(b)で述べた理由と同じ理由により相違点11を本件発明3とすることには動機づけがあるとはいえない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は甲2発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

c 小括
したがって、本件発明3は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(エ)本件発明4について
本件発明3と本件発明4とは、本件発明3が「前記添加剤が、リン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されているのに対して、本件発明4が「前記添加剤がリン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されている点で相違するだけで、あとは同じ発明である。

そうすると、本件発明4と甲2発明2との対比・判断は、上記(ウ)で述べたとおりであり、本件発明4は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(オ)本件発明5について
本件発明5は、本件発明3または4を引用してさらに限定した発明であるから、上記(ウ)及び(エ)で述べた理由と同じ理由により、本件発明5は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、取消理由2-2、申立理由4(甲2を主引用例とする場合)及び申立理由5(甲2を主引用例とする場合)によっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。

(3)取消理由1-1について
取消理由1-1は、上記第4 1(1)アで示したとおりであり、以下に具体的な理由を再掲する。
請求項1及び2の「耐火補強構造」、請求項3?6の「耐火補強方法」という記載が明確でない。

この点について、特許権者は、令和2年1月20日に提出した意見書において、耐火補強構造とは、耐火性を補強した構造であることを意味する旨の説明をしている。
そして、この説明は、特許明細書の記載に基づくものであり合理的であるといえ、この解釈をすれば、本件発明1及び2は明確であるといえる。また、同様に本件発明3?6も明確であるといえる。
よって、取消理由1-1が解消したことは明らかである。

したがって、取消理由1-1によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人がした申立理由について
(1)申立理由1?3について
申立理由1?3は、上記第4 2(1)?(3)で示したとおりであり、以下に具体的な理由を再掲する。
本件の特許明細書には、本件発明の具体例である実施例が記載されておらず、如何なる作用・効果が奏され得るかが記載されていないので、本件発明の課題が解決することができたことを推認できない。このように、本件の特許明細書には、発明の技術上の意義が記載されていない。さらに、本件発明の課題が解決できることが明らかでないから、本件発明は不明確である。
以下、この点について検討する。

本件発明は、従来、建材等には、配線または配管等の挿通物を敷設するための貫通孔が設けられ、かかる貫通部では挿通物と貫通孔との間の空間に耐火性を付与するために、かかる空間をガラスクロス等の不燃材で被覆したり、耐火充填材支持金具を用いて耐火充填材(パテ)で埋めたりしていたところ、耐火充填材(パテ)で貫通部等の建材の開口部を充填するには、作業者によってムラがあると共に、パテが硬いため開口部に隙間なく密に埋めることは困難であることや、耐火充填材支持金具を用いても、挿通物と貫通孔との間の空間を、依然として密に埋めることができない、という課題を解決するためになされた発明であって、概略、建材の開口部をよりきめ細かく充填できるウレタン樹脂組成物を用いた建材の耐火補強方法ならびに建材の耐火補強構造である(本件の特許明細書の段落【0002】?【0008】を参照)。

そして、本件発明で特定される難燃性ポリウレタン組成物を用いれば、建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞できることは明らかであり、開口部が閉塞されることにより、開口部に耐火性が付与されるという効果を奏することは理解され、本件発明の課題を解決できると認識することができるといえる。

よって、本件明細書に実施例が記載されていなくても、本件明細書の記載から、本件発明の効果は理解でき、当業者であれば本件発明の課題を解決できると認識できるといえ、発明は明確であるといえる。

以上のとおりであるので、申立理由1?3によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。

(2)申立理由4(甲3を主引用例とする場合)及び申立理由5(甲3を主引用例とする場合)について
ア 甲3の記載事項及び甲3に記載された発明
甲3の記載(特許請求の範囲、段落【0003】、【0009】、【0010】、【0018】、【0019】、【0026】、【0031】?【0036】)によれば、特に実施例に着目すると、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。

「グリセロールを出発物質とし、プロピレンオキシドとエチレンオキシドに基づいて製造されたポリエーテルオールであって、1000g/モルの数平均分子量を有するポリエーテルオール330gと、グリセロールを出発物質とし、プロピレンオキシドとエチレンオキシドに基づいて製造されたポリエーテルオールであって、4000g/モルの数平均分子量を有するポリエーテルオール147g/モルと、600g/モルの数平均分子量を有するポリエチレングリコール40gと、ほぼ31質量%の臭素含有量を有する臭素化ポリエーテルトリオール、Solvayの商品名「Ixol(登録商標)B251」60gと、発泡安定剤(Goldschmidtの商品名Tegostab(登録商標)B2219)としてのポリシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー25gと、BayerのBaysilone(登録商標)M100という商品名のポリジメチルシロキサン0.3gと、ジアセトンアルコール60gと、触媒として2,2-ジモルホリノジエチルエーテル8gと、トリクロロプロピルホスフェート330gとを混合したポリオール成分を、計286gと、25℃でほぼ200mPasの粘度を有するPMDI394gとをエアロゾール缶に充填、密封し、エアロゾール缶に43gのジメチルエーテル、30質量%のプロパンと70質量%のブタンとからなる工業ガス混合物27g、79gのテトラフロオロエタン(R134a)を投入し、エアロゾール缶に螺着したフォームガンを通して発生した発泡混合物を断熱板の表面に施し、断熱板をコンクリート壁に接着した構造」(以下「甲3発明1」という。)及び
「グリセロールを出発物質とし、プロピレンオキシドとエチレンオキシドに基づいて製造されたポリエーテルオールであって、1000g/モルの数平均分子量を有するポリエーテルオール330gと、グリセロールを出発物質とし、プロピレンオキシドとエチレンオキシドに基づいて製造されたポリエーテルオールであって、4000g/モルの数平均分子量を有するポリエーテルオール147g/モルと、600g/モルの数平均分子量を有するポリエチレングリコール40gと、ほぼ31質量%の臭素含有量を有する臭素化ポリエーテルトリオール、Solvayの商品名「Ixol(登録商標)B251」60gと、発泡安定剤(Goldschmidtの商品名Tegostab(登録商標)B2219)としてのポリシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー25gと、BayerのBaysilone(登録商標)M100という商品名のポリジメチルシロキサン0.3gと、ジアセトンアルコール60gと、触媒として2,2-ジモルホリノジエチルエーテル8gと、トリクロロプロピルホスフェート330gとを混合したポリオール成分を、計286gと、25℃でほぼ200mPasの粘度を有するPMDI394gとをエアロゾール缶に充填、密封し、エアロゾール缶に43gのジメチルエーテル、30質量%のプロパンと70質量%のブタンとからなる工業ガス混合物27g、79gのテトラフロオロエタン(R134a)を投入し、エアロゾール缶に螺着したフォームガンを通して発生した発泡混合物を断熱板の表面に施し、断熱板をコンクリート壁に接着する方法」(以下「甲3発明2」という。)

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 甲3発明1との対比
(a)まず、本件発明1の難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体に関し検討する。
i 甲3発明1のエアロゾール缶に充填した組成物のうち、「グリセロールを出発物質とし、プロピレンオキシドとエチレンオキシドに基づいて製造されたポリエーテルオールであって、1000g/モルの数平均分子量を有するポリエーテルオール」について検討する。
このポリエーテルオールは、本件発明1の「ポリオール化合物」に相当することは明らかであり、また、原料としてエチレンオキシドを用いているから、本件発明1の「ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し」に相当する。さらに、このポリエーテルオールは、出発物質がグリセロールであるからOH末端を3つ有するポリエーテルオールであるといえ、1000g/モルの数平均分子量を有するから、本件発明1の「0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000」を満たすといえる。

ii ポリイソシアネートについて検討すると、甲3発明1の「PMDI」は、甲3の【0010】には、「2以上の芳香族系を伴うポリフェニル-ポリメチレン-ポリイソシアネート(高分子のMDI、PMDI)」と記載されており、芳香環を有するといえるから、本件発明1の「ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し」に相当する。

iii 甲3発明1の「触媒として2,2-ジモルホリノジエチルエーテル」、「「ジメチルエーテル」、「プロパン」、「ブタン」及び「テトラフロオロエタン(R134a)」」、「発泡安定剤(Goldschmidtの商品名Tegostab(登録商標)B2219)としてのポリシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー」並びに「トリクロロプロピルホスフェート」は、それぞれ、本件発明1の「触媒」、「発泡剤」、「整泡剤」および「添加剤」に相当し、甲3発明1の「トリクロロプロピルホスフェート」は、本件発明1の「添加剤」のうちの「リン酸エステル」に相当し、この化合物が難燃剤であることは明らかである。

iv 甲3発明1のエアロゾール缶に充填した組成物は、難燃剤を含みポリオール成分とイソシアネート成分を含むから、難燃性ウレタン樹脂組成物であるといえ、本件発明1の難燃性ウレタン樹脂組成物に相当する。

v 甲3発明1の「エアロゾール缶に螺着したフォームガンを通して発生し断熱板の表面に施した発泡混合物」は、本件発明1の難燃性ウレタン樹脂成形体に相当することは明らかである。

(b)次に、本件発明1の「建築物の耐火補強構造」に関し対比する。
甲3発明1の「構造」は、本件発明1の「建築物の耐火補強構造」と構造に限り一致する。

(c)最後に、本件発明1の「(但し、・・・除く。)」に関し対比する。
甲3発明1のエアロゾール缶に充填した組成物は、その組成からみて、膨脹黒鉛、水の存在下で膨脹可能な充填剤及び水性のポリマー分散剤を含有するものではないから、本件発明1のポリウレタン樹脂組成物が「(但し、膨脹黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」ことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲3発明1は
「構造であって、難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体、を含み、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤おび金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、構造。」の点で一致する。

そして、本件発明1と甲3発明1は、以下の点で相違する。
<相違点12>
構造が、本件発明1は、「建築物の耐火補強構造であって、前記耐火補強構造は、建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように前記配線および/または配管の周囲に充填された難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体と、を含み」であるのに対し、甲3発明1は、「エアロゾール缶に螺着したフォームガンを通して発生した発泡混合物を断熱板の表面に施し、断熱板をコンクリート壁に接着した構造」である点。

b 判断
(a)まず、相違点12が実質的な相違点であるか否かについて検討するが、実質的な相違点であることは明らかである。

(b)次に、相違点12の容易想到性について検討する。
甲3には、エアロゾール容器からの一成分のポリウレタンフォームは、組立てフォームとして使用されること、組立てフォームは、スプレー接着剤として使用することができることが記載され(段落【0003】及び【0004】)、組立てフォームを接着剤として使用した際の課題として、後膨張すること、言い換えると接着された物品の位置が予め決められた位置にとどまらないことが記載され(同【0005】)、甲3の特許請求の範囲の請求項1に記載された方法とすることにより、上記課題を解決できることが記載されている(同【0008】、【0009】)。そして、実施例においては、上記した請求項1に記載した接着剤混合物の具体例をエアロゾールから断熱板に施しコンクリート壁に接着する方法が記載され、断熱板をコンクリート壁に固定した後は後膨張はなく断熱版は所定の場所にとどまることが記載されている(同【0030】?【0036】)。
以上の記載によれば、甲3発明1の発泡混合物は、断熱板とコンクリート壁とを接着する接着剤混合物であるといえ、これを本件発明1のように、建築物の耐火補強構造に適用しようとする動機づけはあるとはいえない。
また、甲3には、エアロゾール容器からの一成分ポリウレタンフォームをパイプ設置のための壁を通した建築物に関する空洞又は開口部のための充填材料に適用することの記載はあるが、この記載は、あくまで、甲3に記載された特許請求の範囲に記載された発明の背景技術としてエアロゾール容器からの一成分ポリウレタンフォームの使用例の記載であるだけであり、甲3発明1の発泡混合物を適用できる具体例であるとはいえないから、この記載があるからといって相違点12を本件発明1とすることに動機づけがあるとはいえない。
さらに、甲1及び甲2にポリウレタンフォームを建築物の耐火補強構造に使用することが記載されていたとしても、これは甲1及び甲2の記載における使用が記載されているだけであるから、甲3発明1の接着剤組成物を建築物の耐火補強構造に適用する動機づけにはならない。

よって、本件発明1は、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(イ)本件発明2について
本件発明1と本件発明2とは、本件発明1が「前記添加剤が、リン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されているのに対して、本件発明2が「前記添加剤がリン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されている点で相違するだけで、あとは同じ発明である。

そうすると、本件発明2と甲3発明1との対比・判断は、上記(ア)で述べたとおりであり、本件発明2は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(ウ)本件発明3について
a 本件発明3と甲3発明2について
(a)本件発明3について
本件発明3は、「建築物の耐火補強方法」に係る発明であって、「建築物の耐火補強方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程と、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填され」ていることが特定されており、上記「難燃性ポリウレタン組成物」は、本件発明1の「難燃性ポリウレタン組成物」と同じである。

(b)甲3発明2について
甲3発明2は、断熱板をコンクリート壁に接着する方法の発明であって、「エアロゾール缶に充填した組成物」及び「エアロゾール缶に螺着したフォームガンを通して発生した発泡混合物」は、甲3発明1と同じである。

b 対比・判断
(a)対比
i 上記aで検討したことを考慮した上で、甲3発明2と本件発明3とを対比すると、甲3発明2の「断熱板をコンクリート壁に接着する方法」は、本件発明3の「建築物の耐火補強方法」と、「方法」の限りで一致する。

ii 甲3発明2と本件発明3とは、上記(ア)a(a)及び(c)で述べたように、甲3発明2の「エアロゾール缶に充填した組成物」は、本件発明3の「難燃性ウレタン樹脂組成物」に相当し、また、甲3発明2の「エアロゾール缶に螺着したフォームガンを通して発生した発泡混合物」は、本件発明3の「難燃性ポリウレタン発泡体」と一致し、「(但し、膨脹黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」と一致する。

iii 甲3発明2は、「エアロゾール缶に充填した組成物」を「エアロゾール缶に螺着したフォームガンを通して」「発泡混合物」を発生させるから、これは、本件発明3の「前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、」に相当する。

そうすると、本件発明3と甲3発明2は
「方法であって、前記方法は、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤おび金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、方法。」の点で一致する。

そして、本件発明3と甲3発明2は、以下の点で相違する。
<相違点13>
方法が、本件発明3は、「建築物の耐火補強方法であって、前記建築物の耐火補強方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填されて」であるのに対して、甲3発明2は、「エアロゾール缶に螺着したフォームガンを通して発生した発泡混合物を断熱板の表面に施し、断熱板をコンクリート壁に接着する方法」である点。

(b)判断
i まず、相違点13が実質的な相違点であるか否かについて検討するが、実質的な相違点であることは明らかである。

ii 次に、相違点13の容易想到性について検討する。
上記(ア)b(b)で述べたように、甲3発明2の発泡混合物は、断熱板とコンクリート壁とを接着する接着剤混合物であるといえ、これを本件発明3のように、建築物の耐火補強方法に適用しようとする動機づけはあるとはいえない。

よって、本件発明3は甲3発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

c 小括
したがって、本件発明3は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(エ)本件発明4について
本件発明3と本件発明4とは、本件発明3が「前記添加剤が、リン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されているのに対して、本件発明4が「前記添加剤がリン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されている点で相違するだけで、あとは同じ発明である。

そうすると、本件発明4と甲3発明2との対比・判断は、上記(ウ)で述べたとおりであり、本件発明4は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(オ)本件発明5について
本件発明5は、本件発明3または4を引用してさらに限定した発明であるから、上記(ウ)及び(エ)で述べた理由と同じ理由により、本件発明5は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由4(甲3を主引用例とする場合)及び申立理由5(甲3を主引用例とする場合)によっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。

(3)申立理由5(甲4を主引用例とする場合)について
ア 甲4の記載事項及び甲4に記載された発明
甲4の記載(特許請求の範囲、段落[0033]、[0034]、[0038]、[0039]、[0043]、[0044]、[0099])によれば、特に特許請求の範囲の請求項1の記載に着目すると、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。
「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み、
前記三量化触媒が、窒素含有芳香族化合物、カルボン酸アルカリ金属塩、3級アンモニウム塩および4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
前記添加剤が、赤リンを必須成分とし、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを組み合わせてなることを特徴とする、難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ウレタン樹脂発泡体。」(以下「甲4発明1」という。)及び
「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み、
前記三量化触媒が、窒素含有芳香族化合物、カルボン酸アルカリ金属塩、3級アンモニウム塩および4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
前記添加剤が、赤リンを必須成分とし、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを組み合わせてなることを特徴とする、難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ウレタン樹脂発泡体の製造方法。」(以下「甲4発明2」という。)

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 甲4発明1との対比
(a)まず、本件発明1の難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体に関し検討する。
i 甲4発明1の難燃性ウレタン樹脂組成物のうち、「ポリイソシアネート化合物」、「ポリオール化合物」、「三量化触媒」、「発泡剤」、「整泡剤」および「添加剤」は、本件発明1の「ポリイソシアネート化合物」、「ポリオール化合物」、「触媒」、「発泡剤」、「整泡剤」および「添加剤」に相当し、甲4発明1の「難燃性ウレタン樹脂組成物」及び「難燃性ウレタン樹脂発泡体」は、本件発明1の「難燃性ウレタン樹脂組成物」及び「難燃性ウレタン発泡体」に相当する。
ii 甲4発明1の「添加剤」が「リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを」用いることは、本件発明1の「添加剤」のうちの「リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物」に相当し、これらの化合物が難燃剤であることは明らかである。

(b)次に、本件発明1の「建築物の耐火補強構造」に関し対比する。
甲4発明1の難燃性ウレタン樹脂発泡体は、何らかの構造を有するといえるから、本件発明1の「建築物の耐火補強構造」と構造に限り一致する。

そうすると、本件発明1と甲4発明1は
「構造であって、難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体、を含み、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、構造。」の点で一致する。

そして、本件発明1と甲4発明1は、以下の点で相違する。
<相違点14>
構造が、本件発明1は、「建築物の耐火補強構造であって、前記耐火補強構造は、建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように前記配線および/または配管の周囲に充填された難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体と、を含み」であるのに対し、甲4発明1は、単なる「構造」である点。

<相違点15>
ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物が、本件発明1は、「ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000」であるのに対して、甲4発明1では、明らかでない点。

<相違点16>
難燃性ウレタン樹脂組成物が、本件発明1は、「(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」のに対して、甲4発明1では、明らかでない点。

b 判断
まず、相違点14について検討する。
甲4には、発明の目的は、取り扱いが容易であり、難燃性に優れ、加熱されたときに一定の形状を保つ発泡体を形成することのできる難燃性ウレタン樹脂組成物を提供することであることが記載され(段落[0021])、甲4の特許請求の範囲の請求項1に記載された難燃性ウレタン樹脂組成物が上記目的に適うことが記載され(同[0022])、難燃性ウレタン樹脂組成物を構造物に吹き付けることにより発泡体層を形成することができることが応用例として記載され(同[0099])、そして、実施例においては、具体的な成分を使用した難燃性ウレタン樹脂組成物から形成した発泡体の効果が記載されている(同[0102]?[0217])。
以上の記載によれば、甲4発明1の難燃性ウレタン樹脂発泡体を本件発明1のように、建築物の耐火補強構造に適用しようとする動機づけはあるとはいえない。
また、甲1?甲3にポリウレタンフォームを建築物の耐火補強構造に使用することが記載されていたとしても、これは甲1?甲3の記載における使用が記載されているだけであるから、甲4発明1の難燃性ウレタン樹脂発泡体を建築物の耐火補強構造に適用する動機づけにはならない。

そうすると、甲4発明1において、相違点14を本件発明1で特定したものとすることは当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

c 小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲4に記載された発明及び甲1?甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(イ)本件発明2について
本件発明1と本件発明2とは、本件発明1が「前記添加剤が、リン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されているのに対して、本件発明2が「前記添加剤がリン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されている点で相違するだけで、あとは同じ発明である。

そうすると、本件発明2と甲4発明1との対比・判断は、上記(ア)で述べたとおりであり、本件発明2は、甲4に記載された発明及び甲1?甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(ウ)本件発明3について
a 本件発明3と甲4発明2について
(a)本件発明3について
本件発明3は、「建築物の耐火補強方法」に係る発明であって、「建築物の耐火補強方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程と、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填され」ていることが特定されており、上記「難燃性ポリウレタン組成物」は、本件発明1の「難燃性ポリウレタン組成物」と同じである。

(b)甲4発明2について
甲4発明2は、難燃性ウレタン樹脂発泡体の製造方法の発明であって、「難燃性ウレタン樹脂組成物」及び「難燃性ウレタン樹脂発泡体」は、甲4発明1と同じである。

b 対比・判断
(a)対比
i 上記aで検討したことを考慮した上で、甲4発明2と本件発明3とを対比すると、甲4発明2の「難燃性ウレタン樹脂発泡体の製造方法」は、本件発明3の「建築物の耐火補強方法」と、「方法」の限りで一致する。

ii 甲4発明2と本件発明3とは、上記(ア)a(a)及び(c)で述べたように、甲4発明2の「難燃性ウレタン樹脂組成物」は、本件発明3の「難燃性ウレタン樹脂組成物」に相当し、また、甲4発明2の「難燃性ウレタン樹脂発泡体」は、本件発明3の「難燃性ポリウレタン発泡体」と一致する。

iii 甲4発明2は、「難燃性ウレタン樹脂組成物」を発泡させ「難燃性ウレタン樹脂発泡体」を製造するから、これは、本件発明3の「前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、」に相当する。

そうすると、本件発明3と甲4発明2は
「方法であって、前記方法は、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、方法。」の点で一致する。

そして、本件発明1と甲4発明2は、以下の点で相違する。

<相違点17>
方法が、本件発明3は、「建築物の耐火補強方法であって、前記建築物の耐火補強方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填されて」いることを特定しているのに対して、甲4発明2は、「難燃性ウレタン樹脂発泡体の製造方法」である点。

<相違点18>
ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物が、本件発明3は、「ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000」であるのに対して、甲4発明2では、明らかでない点。

<相違点19>
難燃性ウレタン樹脂組成物が、本件発明3は、「(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨脹可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)」のに対して、甲4発明2では、明らかでない点。

(b)判断
まず、相違点17を検討する。
上記(ア)bで述べたように、甲4発明2の難燃性ウレタン樹脂発泡体を本件発明1のように、建築物の耐火補強方法に適用しようとする動機づけはあるとはいえない。
また、甲5には、相違点17に関する記載はない。

よって、本件発明4は甲4発明2並びに甲1?甲3及び甲5に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(エ)本件発明4について
本件発明3と本件発明4とは、本件発明3が「前記添加剤が、リン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されているのに対して、本件発明4が「前記添加剤がリン酸エステル・・・からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む」と特定されている点で相違するだけで、あとは同じ発明である。

そうすると、本件発明4と甲4発明2との対比・判断は、上記(ウ)で述べたとおりであり、本件発明4は、甲4発明2並びに甲1?甲3及び甲5に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(オ)本件発明5について
本件発明5は、本件発明3または4を引用してさらに限定した発明であるから、上記(ウ)及び(エ)で述べた理由と同じ理由により、本件発明5は、甲4発明2並びに甲1?甲3及び甲5に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

第6 むすび
特許第6480775号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、[3?6]について訂正することを認める。
当審が通知した取消理由及び特許異議申立人がした申立理由によっては、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の耐火補強構造であって、前記耐火補強構造は、建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように前記配線および/または配管の周囲に充填された難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体と、を含み、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨張可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、建築物の耐火補強構造。
【請求項2】
建築物の耐火補強構造であって、前記耐火補強構造は、建材の開口部と、前記開口部に挿通された配線および/または配管と、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように前記配線および/または配管の周囲に充填された難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡させた難燃性ポリウレタン発泡体と、を含み、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨張可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤がリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、建築物の耐火補強構造。
【請求項3】
建築物の耐火補強方法であって、前記建築物の耐火補強方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程と、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填されており、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨張可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、建築物の耐火補強方法。
【請求項4】
建築物の耐火補強方法であって、前記建築物の耐火補強方法は、
建材の開口部に配線および/または配管を挿通する工程と、
前記配線および/または配管の周囲に難燃性ウレタン樹脂組成物を充填する工程と、
前記難燃性ポリウレタン組成物を発泡および硬化させて難燃性ポリウレタン発泡体を形成する工程とを含み、
前記難燃性ポリウレタン発泡体は、前記建材と前記配線または配管との間の空間に充填されて前記開口部を閉塞するように充填されており、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み(但し、膨張黒鉛を含有するものを除き、水の存在下で膨張可能な充填剤を含有するものを除き、さらに、水性のポリマー分散剤を含有するものを除く。)、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が芳香環を有し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方にメチレン基が2つ以上連結し、
ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のうちの少なくとも一方が、下記の関係を満たし:
0<(ポリイソシアネート化合物の分子量)/(ポリイソシアネート化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、および/または
0<(ポリオール化合物の分子量)/(ポリオール化合物中の一分子当たりの重合可能な官能基の数)≦1000、
前記添加剤がリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする、建築物の耐火補強方法。
【請求項5】
前記難燃性ウレタン樹脂組成物を、コーキングガンまたはスプレー式容器を用いて充填することを特徴とする請求項3または4に記載の耐火補強方法。
【請求項6】
前記ウレタン樹脂組成物を袋に入れて、前記建築物の開口部に充填することを特徴とする請求項3または4に記載の建築物の耐火補強方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-12-03 
出願番号 特願2015-64352(P2015-64352)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08G)
P 1 651・ 537- YAA (C08G)
P 1 651・ 121- YAA (C08G)
P 1 651・ 113- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松浦 裕介  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 橋本 栄和
佐藤 健史
登録日 2019-02-15 
登録番号 特許第6480775号(P6480775)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 ウレタン樹脂組成物、建材の耐火補強方法、および建材の耐火補強構造  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 田口 昌浩  
代理人 田口 昌浩  
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