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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05K
管理番号 1371659
異議申立番号 異議2019-700555  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-16 
確定日 2020-12-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6453295号発明「電磁波吸収体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6453295号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、10について訂正することを認める。 特許第6453295号の請求項1、5ないし10に係る特許を維持する。 特許第6453295号の請求項2ないし4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6453295号の請求項1ないし9に係る発明についての出願は、平成28年12月14日に出願され、平成30年12月21日にその特許権が設定登録され、平成31年1月16日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立での経緯は、次のとおりである。
令和 1年 7月16日:特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所による請求項1-9に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 1年 9月30日付け:取消理由通知書
令和 1年12月 6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年 1月31日付け:訂正拒絶理由通知書
令和 2年 3月 6日 :特許権者による意見書の提出
令和 2年 4月 8日 :特許権者による上申書の提出
令和 2年 5月26日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 2年 7月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和1年12月6日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げたものとみなす。

そして、令和2年7月27日の訂正請求に対して、特許異議申立人に意見を述べる機会を与えたが、特許異議申立人から意見書の提出はなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年7月27日の訂正請求の趣旨は、特許第6453295号の明細書、特許請求の範囲および図面を、訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲および図面のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、」とあるのを「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層が熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体からなり、上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5?9も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」とあるのを「請求項1記載の電磁波吸収体」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」とあるのを「請求項1または5記載の電磁波吸収体」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」とあるのを「請求項1、5、6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」とあるのを「請求項1、5、6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?8のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」とあるのを「請求項1、5?8のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項3に「上記誘電体層が、発泡体である請求項1または2記載の電磁波吸収体」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層が発泡体であり、上記誘電体層の比誘電率が1?5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100?1000μmの範囲にあり、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上であることを特徴とする電磁波吸収体。」として、新たに請求項10とする。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0059】、【0060】に記載された「熱可塑アクリル系エラストマー」を「熱可塑性アクリル系エラストマー」に訂正する。

(12)訂正事項12
明細書の段落【0050】-【0060】、【0062】-【0064】に記載された「実施例4」を「参考例1」に、「実施例5」を「実施例4」に、「実施例6」を「実施例5」に、「実施例7」を「参考例2」に、「実施例8」を「参考例3」に、「実施例9」を「実施例6」に、「実施例10」を「実施例7」に訂正する。

(13)訂正事項13
明細書の段落【0015】に記載された「【図4】本発明の他の実施の形態」を「【図4】本発明の参考の形態」に、「【図6】(a)?(f)はそれぞれ実施例1?6の反射吸収量」を「【図6】(a)?(f)はそれぞれ実施例1?5および参考例1の反射吸収量」に、「【図7】(a)?(f)はそれぞれ実施例7?10および比較例1,2の反射吸収量」を「【図7】(a)?(f)はそれぞれ実施例6,7、参考例2,3および比較例1,2の反射吸収量」に訂正する。

(14)訂正事項14
図6の(d)の「実施例4」を「参考例1」に、(e)の「実施例5」を「実施例4」に、(f)の「実施例6」を「実施例5」に訂正するとともに、図7の(a)の「実施例7」を「参考例2」に、(b)の「実施例8」を「参考例3」に、(c)の「実施例9」を「実施例6」に、(d)の「実施例10」を「実施例7」に訂正する。

(15)別の訂正単位とする求め
特許権者は、訂正後の請求項10については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
また、訂正後の請求項3については、訂正後の請求項10についての訂正が認められ、かつ、訂正後の請求項1?9について訂正が認められない場合には、一群の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1?9について、請求項2?9は訂正する請求項1を引用しているものであるから、請求項1?9は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。

(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「誘電体層」について、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体からなり」と限定し、さらに「電磁波吸収体」について、「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の明細書の段落【0059】及び【0060】の実施例9、10には「誘電体層Bをクラレ社製 熱可塑アクリル系エラストマー」とすること、同【0051】の実施例1には「三井デュポン社製EVA樹脂(エバフレックスEV250、比誘電率2.45)を120℃でプレス成形し、560μm厚シートに成形して誘電体層Bを作製した。」と記載されていることから、訂正事項1のうち「上記誘電体層が熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体からなり」は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」)に記載されている事項である。
また、同【0055】に実施例5として「誘電体層Bを日東電工社製のオレフィン系発泡体SCF100(比誘電率1.07)を厚み822μmにスライス成形したものに変更し、抵抗層Aおよび導電層Cをそれぞれ厚み30μmに形成したアクリル系粘着剤を介して誘電体層Bに貼り合せた以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。」と記載されていることから、
同【0051】に「この誘電体層Bの一方の面に、導電層Cとして表面抵抗が20Ω/□になるようにITOがスパッタ形成された38μm厚のPETフィルム(樹脂層D_(1))を、導電層Cを誘電体層Bに対峙するように貼り合せた。そして、上記誘電体層Bのもう一方の面に、抵抗層Aとして表面抵抗が380Ω/□になるようにITOがスパッタ形成された38μm厚のPETフィルム(樹脂層D_(2))を抵抗層Aが誘電体層Bに対峙するように貼り合せて、目的とする電磁波吸収体を得た。」と記載された実施例1、及び同【0059】には「誘電体層Bをクラレ社製 熱可塑アクリル系エラストマー(クラリティー2330、比誘電率2.55)を150℃でプレス成形し、厚み561μmのシートに成形したものに変更した以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。」と記載された実施例9の電磁波吸収体は、誘電体層の一方の面および他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに抵抗層または導電層に貼り合せられているとえる。 したがって、訂正事項1のうち「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており」は、本件特許明細書等に記載されている事項である。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

そして、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項2ないし4について
訂正事項2ないし4は、請求項2ないし4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1?4のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項2?4を削除する訂正に伴って削除した請求項を引用しないように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1?5のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項2?4を削除する訂正に伴って削除した請求項を引用しないように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項7が請求項1?6のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項2?4を削除する訂正に伴って削除した請求項を引用しないように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項8が請求項1?6のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項2?4を削除する訂正に伴って削除した請求項を引用しないように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項9が請求項1?8のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項2?4を削除する訂正に伴って削除した請求項を引用しないように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(9)訂正事項10について
訂正事項10は、訂正前の請求項3が請求項1または2のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めて請求項10とする訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(10)訂正事項11について
訂正事項11は、訂正前の明細書の段落【0059】及び【0060】に記載された「熱可塑アクリル系エラストマー」を、「熱可塑性アクリル系エラストマー」と明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。

(11)訂正事項12ないし14について
訂正事項12ないし14は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲と明細書及び図面の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。

3 小活
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
よって、明細書、特許請求の範囲及び図面を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、10について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし10に係る発明(以下「本件発明1ないし10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層が熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体からなり、上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており、上記誘電体層の比誘電率が1?5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100?1000μmの範囲にあり、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上であることを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
上記抵抗層が、酸化インジウムスズを含有する請求項1記載の電磁波吸収体。
【請求項6】
上記抵抗層のシート抵抗が、320?500Ω/□の範囲に設定された請求項1または5記載の電磁波吸収体。
【請求項7】
上記導電層が、酸化インジウムスズを含有する請求項1、5、6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【請求項8】
上記導電層が、アルミニウムおよびその合金の少なくとも一方を含有する請求項1、5、6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【請求項9】
さらに粘着層を備え、上記粘着層が上記導電層の外側に設けられた請求項1、5?8のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【請求項10】
誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層が発泡体であり、上記誘電体層の比誘電率が1?5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100?1000μmの範囲にあり、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上であることを特徴とする電磁波吸収体。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、4ないし9に係る特許に対して、当審が令和2年5月26日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1(新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

2(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

●理由1(新規性)について
・請求項 1、2、4、6
・刊行物 甲第1-3号証

・請求項 5
・刊行物 甲第1、2号証

・請求項 8
・刊行物 甲第2、3号証

・請求項 9
・刊行物 甲第2号証

●理由2(進歩性)について
・請求項 7
・刊行物 甲第1-3号証

刊行物一覧
甲第1号証:特開2005-85966号公報
甲第2号証:特開平8-307088号公報
甲第3号証:特開2000-59066号公報
甲第5号証:プラスチック・機能性高分子材料事典、「プラスチック・機能性高分子材料事典」編集委員会編、産業調査会事典出版センター、初版第1刷、2004年2月20日、pp.81、pp.251

2 当審の判断
(1)刊行物の記載事項・引用発明
ア 甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様)。
「【請求項1】
少なくとも、以下の(I)層?(IV)層をこの順に有する積層体からなり、JIS K 7105で規定される当該積層体の積層方向の透光率が60%以上である、透明電波吸収体。
(I)表面抵抗率が9?50Ω/□である層、
(II)厚みが0.13?0.26mmのポリカーボネート樹脂、
(III)表面抵抗率が250?450Ω/□である層、
(IV)厚みが0.13?0.26mmのポリカーボネート樹脂。」

「【請求項4】
上記(I)層と(II)層は粘着剤層を介して積層しており、上記(II)層と(III)層は粘着剤層およびポリエチレンテレフタレートフィルムを介して積層しており、上記(III)層と(IV)層は粘着剤層を介して積層している、請求項1?3のいずれかに記載の透明電波吸収体。
【請求項5】
道路に設置される表示板の表示面に貼り付けられ、周波数が76GHzの電波の吸収のために用いられる、請求項1?4のいずれかに記載の透明電波吸収体。」

「【0008】
表面抵抗率はJIS K 7194に規定される単位面積あたりの抵抗であって、Ω/□なる単位で表現される。層の表面抵抗率は前記JISに基いて測定することができる。本発明ではロレスタEP(ダイアインスツルメンツ社製)を用いて、室温で測定する。一般に層(特に薄膜)の表面抵抗率を上げるには、例えば層(薄膜)を形成する際のスパッタリングの時間、雰囲気等を調整して膜厚を薄くすればよく、逆に、膜厚を厚くすれば表面抵抗率を下げることができる。表面抵抗率により規定されるのは(I)層と(III)層である。
【0009】
(I)層の表面抵抗率は9?50Ω/□である。表面抵抗率が9Ω/□未満では透光率が低下し、表面抵抗率が50Ω/□を超えると透過減衰量が小さくなる。(I)層は、例えば銀等の薄膜により構成することができる。
(III)層の表面抵抗率は250?450Ω/□であり、好ましくは330?400Ω/□である。表面抵抗率が250?450Ω/□の範囲外であると、製造される電波吸収体の反射減衰量が15dB以上になり難い。反射減衰量が15dBであることは、入射電波の約97%を吸収することに相当し、一般的な電波吸収体として充分なる効果を奏しているといえる。なお、反射減衰量が20dBであることは、入射電波の約99%を吸収することに相当する。(III)層は、例えば酸化インジウム錫(以下、ITOともいう)等の薄膜により構成することができる。」

「【0011】
(第1態様)
この態様では、(II)層および(IV)層はポリカーボネート樹脂(以下PCともいう)からなり、その厚みは0.13?0.26mmである。」

「【0014】
(第2態様)
この態様では、(II)層および(IV)層はポリメタクリル酸メチル樹脂(以下PMMAともいう)からなり、その厚みは0.13?0.27mmである。」

「【0016】
上記第1、第2態様以外の材料系として、(II)層および(IV)層にポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)を適用することもできる。」

「【0028】
[実施例1]
PETフィルム15a(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.050mm)を基材として用い、その片面にスパッタリングにより、銀の薄膜11(表面抵抗率50Ω/□)を形成した。それとは別のPETフィルム15b(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.125mm)の片面にスパッタリングにより、ITOの薄膜13(表面抵抗率450Ω/□)を形成した。シート状のPC12(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.13mm)の両面にアクリル系粘着剤16(複素比誘電率2.60-j0.014、厚さ70μm)を塗布して、その片面に上記銀の薄膜11を、もう一方の面に上記ITOの薄膜13の基材としてのPETフィルム15bを、それぞれ貼り合わせて積層体を得た。これとは別に、シート状のPC14(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.13mm)の片面に上記と同じ粘着剤を厚さ70μmに塗布した。この粘着剤を塗布した面と、上記積層体を構成するITOの薄膜13とを貼り合わせて、透明電波吸収体を得た。得られた透明電波吸収体を模式的に表現すると、先に説明した図1のようになる。図1の符号15aの層から順に以下のように積層されている(以下の各実施例、比較例の記載における各行頭の数字は図1の符号を示す)。
15a PET(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.050mm、)、
11 銀(表面抵抗率50Ω/□)、
16 アクリル系粘着剤、
12 PC(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.13mm)
16 アクリル系粘着剤、
15b PET(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.125mm)、
13 ITO(表面抵抗率450Ω/□)、
16 アクリル系粘着剤、
14 PC(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.13mm)。」

「【0030】
[実施例3]
符号12および14で表されるシート状のPCの厚さと、銀の薄膜11とITOの薄膜13の表面抵抗率を変更して、実施例1と同様の操作により、以下の構成の透明電波吸収体を得た。
15a PET(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.050mm、)、
11 銀(表面抵抗率9Ω/□)、
16 アクリル系粘着剤、
12 PC(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.18mm)
16 アクリル系粘着剤、
15b PET(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.125mm)、
13 ITO(表面抵抗率330Ω/□)、
16 アクリル系粘着剤、
14 PC(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.18mm)。」

「【0039】
(電波吸収特性)
得られた電波吸収体に対し、周波数76GHzの電波を入射角0?20°の範囲から入射させた。そのときの反射減衰量が20dB以上であれば◎と評価し、15dB以上20dB未満であれば○と評価し、15dB未満であれば×と評価した。○と評価されたのは、実施例1(15.2dB)、実施例2(15.3dB)、実施例4(15.7dB)および実施例5(15.4dB)の各電波吸収体であった(カッコ内の数値は反射減衰量、以下同じ)。◎と評価されたのは、実施例3(32.6dB)および実施例6(33.3dB)の各電波吸収体であった。比較例の各電波吸収体は×と評価された。すなわち、各電波吸収体は、比較例1(14.7dB)、比較例2(14.6dB)、比較例3(14.1dB)および比較例4(14.7dB)なる反射減衰量であった。」

ここで、実施例3に着目すると、段落【0009】、【0011】、【0016】、【0028】、【0030】及び【0039】の記載より、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「ポリエチレンテレフタレートフィルム15aの基材と、
銀の薄膜11と、
アクリル系粘着剤16と、
シート状のポリカーボネート樹脂12と、
アクリル系粘着剤16と、
ポリエチレンテレフタレートフィルムフィルム15bと、
酸化インジウム錫の薄膜13と、
アクリル系粘着剤16と、
シート状のポリカーボネート樹脂14とが順に積層され、
シート状のポリカーボネート樹脂12の厚さが0.18mmであり、
周波数76GHzの電波を入射角0?20°の範囲から入射させたときの反射減衰量が20dB以上である透明電波吸収体。」

イ 甲第2号証には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 可視光線を透過する約377Ω/□の抵抗膜と、
可視光線が少なくとも一部透過すると共に、約λ/(4√εr)(λ:動作中心周波数の自由空間における波長、εr:比誘電率)に相当する厚みを有する誘電体と、
可視光線および電波を反射する電波反射膜と、
を順次重畳してなることを特徴とする電波吸収体。」

「【請求項3】 前記誘電体は、可視光線が少なくとも一部透過すると共に、約λ/4(λ:動作中心周波数の自由空間における波長)に相当する厚みを有する少なくとも一つのスペーサからなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電波吸収体。」

「【0003】
【従来の技術】従来の電波吸収体は、フェライト粉末をゴムに練り込んだゴム/フェライトシート、カーボン粉末をゴムに練り込んだゴム/カーボンシート、焼結フェライトタイル、導電性繊維マット、電波反射板から約377Ω/□の抵抗膜をλ/4(λ:動作中心周波数の自由空間における波長)離れた位置に固定するためのスペーサからなるλ/4型等がある。図10は従来のλ/4型電波吸収体を説明するための図である。図10において、抵抗膜101、スペーサ102、電波反射膜103が順次重畳されて電波吸収体を構成している。抵抗膜101は、たとえば、導電性繊維からなり、約377Ω/□の抵抗を有するものである。スペーサ102は、抵抗膜101と電波反射膜103とをλ/4(λ:動作中心周波数の自由空間における波長)だけ離した位置に固定するためのものである。また、従来他の電波吸収体の例として、たとえば、スチロール樹脂の発泡体、ウレタン樹脂の発泡体等がある。電波反射膜103は、たとえば、アルミニウム等電波を反射する金属箔が使用されている。
【0004】従来の抵抗膜101には、導電性繊維を格子状に形成し、その格子間隔を変えて入射する電波に対する吸収特性を向上させたものがある。また、従来のスペーサ102には、ポリスチロール等の発泡プラスチック等から構成されているものがあり、電波吸収体の軽量化を図っている。さらに、抵抗膜101と電波反射膜103との間を空間にして、その距離を任意に変えることによって、各種電波の周波数に対応できるものがある。」

「【0041】前記抵抗膜1は、後述する抵抗膜形成基材(透明膜)の片面に全面または格子状に金属酸化物(InO_(2) -SnO_(2) 、SnO_(2) -Sb、SnO_(2) -F、Cd_(2)SnO_(4) 、ZnO等)薄膜を、たとえば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングによって被覆される。同じく、抵抗膜1は、抵抗膜形成基材(透明膜)の片面に全面または格子状に、前記金属酸化物およびSnO_(2) の微粉末、カーボン微粉末等とバインダーよりなる組成物を塗布したものがある。さらに、抵抗膜1には、導電性繊維である炭素繊維、金属繊維、非導性繊維の表面に導電性の金属を蒸着、または無電解メッキ等を施した繊維、カーボンを塗布した繊維等からなる織布、炭化珪素や炭素繊維と合成繊維とからなる織布、導電性高分子(FeCl_(3) とポリビニルアルコールの溶解液を塗布乾燥後に、ピロール蒸気を反応させて得られるポリピロール膜等)が挙げられる。」

「【0043】・・・スペーサ2の材質は、アクリル樹脂、カーボネイト樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂、これらの樹脂と共重合できる樹脂との共重合体樹脂等、およびガラス類が使用出来る。」

「【0044】電波反射膜3は、一方の面より電波吸収体の内部が透視できるものと、電波吸収体を介して一方から他方、または他方から一方が透視できるものとに分けられる。一方の面より電波吸収体の内部が透視できる電波反射膜3には、銅系、アルミニウム系、鉄系等からなる金属箔、同金属板、同金属ネット、あるいはプラスチック、または板ガラスの表面に、たとえば、真空蒸着、無電解メッキ、スパッタリング、イオンプレーティング法等によって形成したアルミニウム、ニッケル、銀、金、パラジウム等からなる導電性金属膜を被覆したもの、あるいはフィルムまたは、板、金属化繊維織布の表面に無電解メッキ法で被覆したニッケル、銅等がある。」

「【0055】図7は本発明の実施例で、電波反射膜形成基材の背面に離型紙付き粘着剤層を施した電波吸収体を説明するための図である。図7において、電波吸収体は、電波反射膜形成基材13のスペーサ2側に電波反射膜14が形成されていると共に、スペーサ2側と反対側に、粘着剤層19を介して離型紙20が設けられている。上記電波吸収体は、建物の窓、壁、天井、ドア、部屋の間仕切り、あるいは事務所内に配置されているロッカー等の什器の表面に貼付ける場合、離型紙20を剥がし、上記表面に形成されている粘着剤層19によって貼付けられる。したがって、上記離型紙の付いた電波吸収体は、施工が簡単かつ迅速に取り付けられる。」

「【0058】次に、具体的な材料および周波数を使用した場合の実施例を説明する。
〔実施例-1〕〔実施例-1〕の電波吸収体は、動作中心周波数60GHzを目標に、一方の面からスペーサの内部を透視できるもので、下記の構成で作製される。
(1)〔抵抗膜基材〕 ポリエチレンテレフタレート125μm厚を使用する。
(2)〔抵抗膜〕 抵抗膜基材の内面に酸化インジウム錫を蒸着した表面抵抗値377±50Ω/□のものを使用する。
(3)〔スペーサ〕 ポリメチルメタアクリレート750μm厚を使用する。
(4)〔電波反射膜〕 アルミニウム箔20μmを使用する(内面に着色模様を印刷)
(2)と(3)、(3)と(4)の貼合せは、アクリル系接着剤を使用して接着する。」

「【0059】〔実施例-2〕〔実施例-2〕の電波吸収体は、動作中心周波数18GHzを目標に、一方の面から抵抗膜、スペーサ、および電波反射膜を介して、他方を、またはその逆方向をそれぞれ透視できるもので、下記の構成で作製する。
(1)〔抵抗膜基材〕 ポリエチレンテレフタレート125μm厚を使用する。
(2)〔抵抗膜〕 抵抗膜基材の内面に酸化インジウム錫を蒸着した表面抵抗値377±50Ω/□のものを使用する。
(3)〔スペーサ〕 ポリカーボネイト2.4mm厚を使用する。
(4)〔電波反射膜基材〕 ポリエチレンテレフタレート125μm厚を使用する。
(5)〔電波反射膜〕 電波反射膜基材の内面に、スルホン酸をドーパントとして含むポリピロール層を形成したもの(導電率230S・cm^(-1))を使用する。
(2)と(3)、(3)と(5)の貼合せは、アクリル系接着剤を使用して接着する。
【0060】〔実施例-3〕〔実施例-3〕の電波吸収体は、動作中心周波数2.4GHzを目標に一方の面から抵抗膜、スペーサ、および電波反射膜を介して、他方を、またはその逆方向をそれぞれ透視できるもので、下記の構成で作製する。
(1)〔抵抗膜基材〕 塩化ビニル樹脂500μm厚を使用する。
(2)〔抵抗膜〕 酸化インジウム錫/アクリル系樹脂塗布型処理剤(固形分中の酸化インジウム錫70重量%)にて、抵抗膜基材の内面に5.5mm間隔で格子状にスクリーン印刷法で塗布(塗布厚5μm×帯状中500μm)した表面抵抗値377±70Ω/□を使用する。
(3)〔スペーサ〕 塩化ビニル樹脂製中空板、肉厚600μm、中仕切・横方向200mm間隔、板厚30mmを使用する。
(4)〔電波反射膜〕 ポリエステルメッシュ織布に銅とニッケルを無電解メッキ後、カーボン/樹脂にて表面処理した金属化繊維織布(メッシュ密度250、表面抵抗値0.2Ω/□)を使用する。
(5)〔電波反射膜保護層〕 塩化ビニル樹脂150μm厚を使用する。
(1)、(2)と(3)、(3)と(4)、(4)と(5)の貼合せは、酢酸ビニル系接着剤にて接着する。」

「【0062】
〔比較例-1〕
従来公知のλ/4型電波吸収体は、動作中心周波数2.4GHzを目標にするもので、下記の構成で作製する。
(1)〔抵抗膜〕 ポリエステル系繊維の表面を第4級アンモニウム塩基を有する(銅イオン捕捉基)表面処理剤を付着結合させた後、その捕捉基を介して硫化銅を結合させる方法で70KΩ/mの導電性層を形成した導電性繊維を5.5mm間隔で格子状に織った表面抵抗値377±70Ω/□の抵抗織布を使用する。
(2)〔スペーサ〕 40倍発泡の発泡スチロール樹脂30mm厚を使用する。
(3)〔電波反射膜〕 アルミニウム板500μm厚を使用する。
(1)と(2)、(2)と(3)の貼合せは、弾性エポキシ系接着剤を使用し
て接着する。」



表1には、実施例1は、周波数60GHzでの電波反射減衰量が24dBであることが記載されている。

ここで、実施例1に着目すると、段落【0058】及び表1の記載より、甲第2号証には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「ポリエチレンテレフタレートと、
酸化インジウム錫と、
アクリル系接着剤と、
ポリメチルメタアクリレートと、
アクリル系接着剤と、
アルミニウム箔とが順に積層され、
ポリメチルメタアクリレートの厚さが750μmであり、
周波数60GHzにおいて、電波反射減衰量が24dBである電波吸収体。」

ウ 甲第3号証には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】抵抗膜層、スペーサ層および反射体層を順次積層してなる電波吸収体であって、抵抗膜層が溶融成形され、かつ誘電体中に導電性物質を分散させてなることを特徴とする電波吸収体。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電波吸収体、特に100MHz以上の高周波の電波吸収体に関する。」

「【0006】このタイプの電波吸収体の抵抗膜層として、ITO(酸化インジウム/酸化スズ)の蒸着膜を用いるもの(特開平5-114813号公報参照)や導電性糸を格子状に織り込んだ織布を用いるもの(特公平5-40480号公報参照)などが提案されている。」

「【0018】とすることにより、反射係数を零とすることができ、電波吸収性能が発現する。この時の面抵抗を整合インピーダンスと呼ぶ。さらに実際上は、面抵抗値が整合インピーダンスより20%増減した場合でも、反射率が10%以下となることが知られており、実使用上は問題がない。例えば入射角=0すなわち垂直入射の場合では、302Ω/□以上450Ω/□以下であれば反射率は10%以下になる。垂直入射以外の斜入射する電波を吸収させること、および整合インピーダンスからの20%の増減が許されることを勘案すれば、工業製品としての抵抗膜層の面抵抗値は100Ω/□以上450Ω/□以下であることが好ましい。」

「【0025】
スペーサ層には各種の無機質誘電体、有機質誘電体、これらの積層品を用いる。無機質誘電体としては例えば、石膏、珪酸カルシウム、セメント、コンクリートなどが挙げられる。有機質誘電体としては各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができ、好ましくは熱可塑性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変成ポリフェニレンエーテルを用い、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネートを用いる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレートを用いることが好ましい。」

「【0027】ここで、λは動作中心電波の波長、εはスペーサ層の誘電率、θは電波の入射角を表す。本発明においては、スペーサ厚みは、上記の値の通常±13%の範囲であれば、実用的な電波吸収性が得られる。反射体層には導電性が通常面抵抗20Ω/□以下の物質を用い、例えば各種鉄、アルミ、銅などの金属の板状体、金属箔、蒸着膜、金属酸化物の蒸着膜、炭素繊維プリプレグなどの炭素系物質の板状体、導電性塗料による塗膜を用いることができる。好ましくは各種金属の板状体、金属箔などが用いられる。」

「【0030】抵抗膜層とスペーサ層と反射層をこの順に積層する方法として、各種接着剤、プレスやラミネータなどの積層装置を用いることができる。」

「【0032】
【実施例】本発明の効果を実施例を用いて説明する。
(実施例1)カーボンブラック(平均粒子径40nm、DBP吸収量190cm^(3)/100g、比表面積250m^(2) /g)30重量部をポリプロピレン樹脂70重量部に分散させ押出成形した導電性シートを熱プレスで厚み調整し、厚み50μmで面抵抗440Ω/□の膜を得た。この膜と厚み850μmのポリプロピレンと厚み0.2mmのアルミ板をこの順に積層し、シート状の積層体を得た。この積層体の電波吸収性能を周波数0.6GHz付近で導波管により測定したところ、良好な電波吸収性が得られた。」

「【0033】(実施例2)実施例1に使用した導電性シートをペレット状に粉砕したもの80重量部に対して、低密度ポリエチレン20重量部をミキサーにて混練後、熱プレスで厚み調整し、厚み110μmで面抵抗370Ω/□の膜を得た。この膜と厚み700μmのポリエチレンテレフタレートとアルミ板をこの順に積層し、シート状の積層体を得た。この積層体の電波吸収性能を周波数0.6GHz付近で導波管により測定したところ、良好な電波吸収性が得られた。」

ここで、実施例1に着目すると、段落【0001】、【0030】及び【0032】の記載より、甲第3号証には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
「面抵抗440Ω/□の膜と、
ポリプロピレンと、
アルミ板とを順に積層してプレスしたものであり、
ポリプロピレンの厚さが850μmである電波吸収体。」

(2)特許法第29条第1項について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明1との対比、判断
a 対比
本件発明1と引用発明1を対比する。
(a)引用発明1の「シート状のポリカーボネート樹脂12」、「酸化インジウム錫の薄膜13」、「銀の薄膜11」、「透明電波吸収体」は、それぞれ、本件発明1の「誘電体層」、「抵抗層」、「導電層」、「電磁波吸収体」に相当する。
そうすると、引用発明1の「銀の薄膜11と、」「シート状のポリカーボネート樹脂12と、」「酸化インジウム錫の薄膜13」「とが順に積層され」た「透明電波吸収体」は、本件発明1の「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体」に相当するといえる。
但し、誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明1は、「ポリカーボネート樹脂」である。
また、電磁波吸収体が、本件発明1は、「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられて」いるのに対して、引用発明1は、「シート状のポリカーボネート樹脂12」が、「アクリル系粘着剤16」を介して「銀の薄膜11」または「ポリエチレンテレフタレートフィルムフィルム15b」に貼り合せられている。

(b)ポリカーボネート樹脂の比誘電率は3.1であるから(甲第5号証、第251頁、表4、「ポリカーボネート(PC)樹脂の一般物性」における「電気的性質 比誘電率(100Hz)(1MHz)」の特性値を参照)、引用発明1の「厚さが0.18mm」である「シート状のポリカーボネート樹脂12」は、本件発明1の「比誘電率が1?5.19の範囲にあり、」「厚みが100?1000μmの範囲にあ」る「誘電体層」に含まれる。

(c)引用発明1の「周波数76GHzの電波を入射角0?20°の範囲から入射させたときの反射減衰量が20dB以上である」ことは、本件発明1の「60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である」ことに含まれる。
但し、本件発明1は、「電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明1は、そのような特定がない。

すると、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層の比誘電率が1?5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100?1000μmの範囲にあり、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である電磁波吸収体。」
(相違点1)
誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明1は、「ポリカーボネート樹脂」である点。
(相違点2)
電磁波吸収体が、本件発明1は、「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられて」いるのに対して、引用発明1は、「シート状のポリカーボネート樹脂12」が、「アクリル系粘着剤16」を介して「銀の薄膜11」または「ポリエチレンテレフタレートフィルムフィルム15b」に貼り合せられている点。
(相違点3)
本件発明1は、「電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明1は、そのような特定がない点。

b 判断
引用発明1は上記相違点1ないし3で本件発明1と相違するから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。

(イ)本件発明1と引用発明2との対比、判断
a 対比
本件発明1と引用発明2を対比する。
(a)引用発明2の「ポリメチルメタアクリレート」、「酸化インジウム錫」、「アルミニウム箔」、「電波吸収体」は、それぞれ、本件発明1の「誘電体層」、「抵抗層」、「導電層」、「電磁波吸収体」に相当する。
そうすると、引用発明2の「酸化インジウム錫と、」「ポリメチルメタアクリレートと、」「アルミニウム箔とが順に積層され」た「電波吸収体」は、本件発明1の「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体」に相当するといえる。
但し、誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明2は、「ポリメチルメタアクリレート」である。
また、電磁波吸収体が、本件発明1は、「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられて」いるのに対して、引用発明2は、「ポリメチルメタアクリレート」が、「アクリル系接着剤」を介して「酸化インジウム錫」または「アルミニウム箔」に貼り合せられている。

(b) ポリメチルメタアクリレートの比誘電率は2.2?3.2程度(https://www.kda1969.com/materials/pla_mate_pmma2.htm 参照)であるから、引用発明2の「厚さが750μm」である「ポリメチルメタアクリレート」は、本件発明1の「比誘電率が1?5.19の範囲にあり、」「厚みが100?1000μmの範囲にあ」る「誘電体層」に含まれる。

(c) 引用発明2の「周波数60GHzにおいて、電波反射減衰量が24dBである」ことは、本件発明1の「60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である」ことに含まれる。
但し、本件発明1は、「電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明2は、そのような特定がない。

すると、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層の比誘電率が1?5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100?1000μmの範囲にあり、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である電磁波吸収体。」
(相違点4)
誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明2は、「ポリメチルメタアクリレート」である点。
(相違点5)
電磁波吸収体が、本件発明1は、「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられて」いるのに対して、引用発明2は、「ポリメチルメタアクリレート」が、「アクリル系接着剤」を介して「酸化インジウム錫」または「アルミニウム箔」に貼り合せられている点。
(相違点6)
本件発明1は、「電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明2は、そのような特定がない点。

b 判断
引用発明2は上記相違点4ないし6で本件発明1と相違するから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではない。

(ウ)本件発明1と引用発明3との対比、判断
a 対比
本件発明1と引用発明3を対比する。
(a)引用発明3の「ポリプロピレン」、「面抵抗440Ω/□の膜」、「アルミ板」、「電波吸収体」は、それぞれ、本件発明1の「誘電体層」、「抵抗層」、「導電層」、「電磁波吸収体」に相当する。
そうすると、引用発明3の「面抵抗440Ω/□の膜と、ポリプロピレンと、アルミ板とを順に積層してプレスした」「電波吸収体」は、本件発明1の「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、」「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられて」いることに相当するといえる。
但し、誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明3は、「ポリプロピレン」である。

(b)ポリプロピレンの比誘電率は2.0?2.3程度(http://www.yei-jp.com/technology/hiyudenritu/hiyudenritu.html 参照)であるので、引用発明3の「厚さが850μmである」「ポリプロピレン」は、本件発明1の「比誘電率が1?5.19の範囲にあり、」「厚みが100?1000μmの範囲にあ」る「誘電体層」に含まれる。

(c)引用発明3の「電波吸収体」は、本件発明1の「電磁波吸収体」と電磁波を吸収することで共通する。
但し、本件発明1は、「60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明3は、そのような特定がない点。

すると、本件発明1と引用発明3とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており、上記誘電体層の比誘電率が1?5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100?1000μmの範囲である電磁波吸収体。」
(相違点7)
誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明3は、「ポリプロピレン」である点。
(相違点8)
本件発明1は、「60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明3は、そのような特定がない点。

b 判断
引用発明3は上記相違点7及び8で本件発明1と相違するから、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明ではない。

(エ)まとめ
本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。

イ 本件発明5、6、8及び9について
本件発明5、6、8及び9は、本件発明1をさらに限定したものであるから、上記アと同様の理由により甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、したがって、本件発明5、6、8及び9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。

(3)特許法第29条第2項について
本件発明7について
ア 引用発明1に基づく進歩性について
本件発明7は、本件発明1、5又は6をさらに限定した発明である。
したがって、上記「(2)ア (ア) a」で検討したように、本件発明7と引用発明1を対比すると、すくなくとも上記相違点1ないし3を有している。

まず、上記相違点1について検討する。
甲第1号証には、誘電体として、ポリカーボネート樹脂(段落【0011】)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(段落【0014】)、ポリエチレンテレフタレート(段落【0016】)を用いることが記載されている
甲第2号証には、誘電体層として、アクリル樹脂、カーボネイト樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂が例示されている(段落【0043】)。
甲第3号証には、スペーサ層として、各種の無機質誘電体、有機質誘電体、これらの積層品を用いることが記載され(段落【0025】)、具体的には、ポリプロピレン(段落【0032】)、ポリエチレンテレフタレート(段落【0033】)が記載されている。
しかしながら、甲第1号証ないし甲第3号証には、誘電体層として、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることは記載されていない。また、甲第1号証ないし甲第3号証には、誘電体層として、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることの示唆もない。
そうすると、引用発明1の誘電体層である「ポリカーボネート樹脂」を、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体とする理由はなく、上記相違点1に係る構成は、引用発明1、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明1、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明できたものでない。

イ 引用発明2に基づく進歩性について
本件発明7は、本件発明1、5又は6をさらに限定した発明である。
したがって、上記「(2)ア (イ) a」で検討したように、本件発明7と引用発明2を対比すると、すくなくとも上記相違点4ないし6を有している。
そして、甲第1号証ないし甲第3号証の記載事項は上記「ア」のとおりであるから、引用発明2の誘電体層である「ポリメチルメタアクリレート」を、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体とする理由はなく、上記相違点4に係る構成は、引用発明2、甲第1号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明2、甲第1号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明できたものでない。

ウ 引用発明3に基づく進歩性について
本件発明7は、本件発明1、5又は6をさらに限定した発明である。
したがって、上記「(2)ア (ウ) a」で検討したように、本件発明7と引用発明3を対比すると、すくなくとも上記相違点7及び8を有している。
そして、甲第1号証ないし甲第3号証の記載事項は上記「ア」のとおりであるから、引用発明3の誘電体層である「ポリプロピレン」を、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体とする理由はなく、上記相違点7に係る構成は、引用発明3、甲第1号証及び甲第2号証に記載された技術に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明3、甲第1号証及び甲第2号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明できたものでない。

エ まとめ
本件発明7は、甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件発明7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1、7に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基いて、請求項2、5、6に係る発明は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された技術に基いて、請求項3、4、9に係る発明は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、請求項8に係る発明は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している。

2 当審の判断
(1)請求項1に係る発明について
上記「第4 2 (2)ア (ア)a」で説示したとおり、本件発明1と引用発明1を対比すると、上記相違点1ないし3で相違する。

まず、相違点1について検討する。
引用発明1の誘電体層は、「ポリカーボネート樹脂」である。そして、甲第1号証には、誘電体層として、ポリメタクリル酸メチル樹脂(段落【0014】)、ポリエチレンテレフタレート(段落【0016】)を用いることが記載されているが、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることは記載されておらず、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることの示唆もない。
そうすると、引用発明1の誘電体層である「ポリカーボネート樹脂」を、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体とする理由はなく、上記相違点1に係る構成は、引用発明1に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。

ここで、誘電体層に関して、甲第2号証ないし甲第4号証には次の事項が記載されている。
甲第2号証及び甲第3号証の記載事項は上記「第4 2 (3)ア」のとおりであり、誘電体層として、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることは記載されていない。
そして、甲第4号証には「二次曲げ加工性を考慮すると、ガラスよりも熱可塑性合成樹脂で誘電体層1を形成することが望ましく、更に、屋外で使用する際の耐熱性や透視性を考慮すると、融点や光線透過率が高いアクリル系樹脂(メチルメタクリレート等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等)、ポリエステル系樹脂(ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等)などで誘電体層1を形成することが望ましい。これらの中で、ポリカーボネート樹脂は機械的強度に優れ、全光線透過率が85%以上(厚さ3mm)、ヘーズが1.0%以下と透明性に優れているので、屋外で使用する透視性ないし透明な電波吸収体の誘電体層1としては特に好ましく用いられる。」(段落【0029】)と記載されているが、誘電体層として、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることは記載されていない。
そして、甲第2号証ないし甲第4号証には、誘電体層として、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることの示唆もない。
そうすると、甲第2号証ないし甲第4号証の記載を参酌しても、引用発明1の誘電体層である「ポリカーボネート樹脂」を、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体とする理由はなく、上記相違点1に係る構成は、引用発明1、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。

したがって、上記相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでなく、さらに、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。
よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。

(2)請求項5ないし9に係る発明について、
本件発明5ないし9は、本件発明1をさらに限定した発明である。
上記のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術
に基いて当業者が容易に発明できたものでないのであるから、本件発明5ないし9についても同様に、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明できたものでない。

よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。

(3)請求項10に係る発明について
令和2年7月27日の訂正請求により、請求項1を引用する訂正前の請求項3は独立形式請求項となり、本件発明10に訂正された。

本件発明1と引用発明1の対比(上記「第4 2 (2)ア (ア)a」)を踏まえると、本件発明10と引用発明1は、上記相違点3に加えて次の相違点を有する。
(相違点9)
誘電体層が、本件発明10は「発泡体」であるに対して、引用発明1は「ポリカーボネート樹脂」である点。

上記相違点9について検討する。
甲第2号証には、比較例として、誘電体層に、40倍発泡の発泡スチロール樹脂30mm厚を使用することが記載されている(段落【0062】)。
しかしながら、該発泡スチロール樹脂は厚みが30mmであり、甲第2号証の表1によると、電磁波を吸収する周波数帯域が2.4GHzであるので、たとえ、引用発明1に該発泡スチロール樹脂を適用したとしても、本件発明10の「誘電体層が発泡体であり、」「誘電体層の厚みが100?1000μmの範囲にあり、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」「電磁波吸収体」を得ることはできない。
したがって、本件発明10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項1、5ないし10に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、5ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2ないし4は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所による特許異議の申立てについて、請求項2ないし4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電磁波吸収体
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波障害を防止するための電磁波吸収体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁波を情報通信媒体とした利用が進んでいる。このような電磁波の利用としては、例えば、自動車の技術分野において、レーダにより障害物を検知して自動でブレーキをかけたり、周辺車両の速度や車間距離を測定して自車の速度や車間距離を制御したりする、衝突予防システムがある。衝突予防システム等が正常に動作するには、誤認防止のため、不要な電磁波(ノイズ)をできるだけ受信しないようにすることが重要である。したがって、これらのシステム等には、ノイズを吸収する電磁波吸収体が用いられることがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
そして、上記衝突予防システム等において、より高い検知性能を実現するため、レーダ自体の性能が向上しており、従来の周波数(24GHz)よりも高い周波数(76.5GHz,79GHz)のレーダの利用が進められているため、高周波帯域においてノイズを高吸収する電磁波吸収体が求められている。また、レーダの分解能を向上させるため、使用周波数の広帯域化(76GHzの場合1GHz、79GHzの場合4GHz)も進んでおり、電磁波吸収体においても広帯域幅での吸収性能が求められている。しかし、特許文献1,2に示すように、従来の電磁波吸収体は、対象となる周波数近傍のごく限られた範囲にしか吸収能を発揮することができず、高い周波数帯域をカバーできないという問題がある。また、使用中の環境の変化や経時により、電磁波吸収体を構成する材料の特性が変化すると、それに応じて吸収することのできる周波数(吸収ピーク)も変動する可能性があり、設定した周波数において充分な吸収能を発揮できないことが懸念される。また、レーダの周波数が少しでも変動すると、吸収能を発揮できなくなるという問題もある。
【0004】
さらに、上記衝突予防システム等において、より一層の高い精度を実現するため、周波数の異なる複数のレーダが併用されることが考えられる。しかし、上記のとおり、通常、電磁波吸収体の吸収能は、対象とする周波数近傍のごく限られた範囲にしか発揮することができないため、周波数の異なるレーダごとに異なる電磁波吸収体を用意する必要があり、電磁波吸収体のコストが高くなるとともに、多数の電磁波吸収体を用いることにより総重量が重くなるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-120689号公報
【特許文献2】特開平10-13082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、高い分解能を有するレーダに対して用いることができる、広帯域幅において優れた吸収能を有する電磁波吸収体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が2GHz以上である電磁波吸収体を第1の要旨とする。
【0008】
なかでも、上記第1の要旨の電磁波吸収体のうち、誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層の比誘電率が1?10の範囲にある電磁波吸収体を第2の要旨とし、上記第1の要旨の電磁波吸収体のうち、誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層の比誘電率が1?10の範囲にある電磁波吸収体を第3の要旨とする。
【0009】
また、上記第2または3の要旨の電磁波吸収体のうち、上記誘電体層として、高分子フィルムを用いる電磁波吸収体を第4の要旨とし、上記第2?4の要旨の電磁波吸収体のうち、上記誘電体層が、発泡体である電磁波吸収体を第5の要旨とし、上記第2?5の要旨の電磁波吸収体のうち、上記誘電体層が、磁性体および誘電体の少なくとも一方を含有する電磁波吸収体を第6の要旨とする。そして、上記第2,4?6の要旨の電磁波吸収体のうち、上記抵抗層が、酸化インジウムスズを含有する電磁波吸収体を第7の要旨とし、上記第2,4?7の要旨の電磁波吸収体のうち、上記抵抗層のシート抵抗が、320?500Ω/□の範囲に設定された電磁波吸収体を第8の要旨とする。
【0010】
さらに、上記第2?8の要旨の電磁波吸収体のうち、上記導電層が、酸化インジウムスズを含有する電磁波吸収体を第9の要旨とし、上記第2?8の要旨の電磁波吸収体のうち、上記導電層が、アルミニウムおよびその合金の少なくとも一方を含有する電磁波吸収体を第10の要旨とし、上記第1?10の要旨の電磁波吸収体のうち、さらに粘着層を備え、上記粘着層が上記導電層の外側に設けられた電磁波吸収体を第11の要旨とする。
【0011】
本発明者らは、分解能が向上したレーダの周波数とその波動の振幅との関係に着目し、これらのレーダに対応することのできる優れた吸収能を有する電磁波吸収体を得ることを目的として鋭意研究を行った。その結果、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅を2GHz以上である電磁波吸収体とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達するに至った。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電磁波吸収体は、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が2GHz以上であり、広い周波数帯域においてノイズを排除することができる。
【0013】
なかでも、誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層の比誘電率が1?10の範囲にあるものは、吸収帯域幅を広くすることができるだけでなく、誘電体層を制御しやすい厚みに設定することができるため、電磁波吸収効果をより均一に有する電磁波吸収体とすることができる。
【0014】
また、誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層の比誘電率が1?10の範囲にあるものは、吸収帯域幅を広くすることができるだけでなく、設定および製造が容易であるため、低コストの電磁波吸収体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態の一つである電磁波吸収体の断面図である。
【図2】図1に示す電磁波吸収体に粘着層を設けた場合を説明する図である。
【図3】(a),(b)はいずれも図1に示す電磁波吸収体の製法を説明する図である。
【図4】本発明の参考の形態である電磁波吸収体の断面図である。
【図5】図4に示す電磁波吸収体に粘着層を設けた場合を説明する図である。
【図6】(a)?(f)はそれぞれ実施例1?5および参考例1の反射吸収量を測定し、周波数(GHz)と反射吸収量(dB)との関係を示したグラフ図である。
【図7】(a)?(f)はそれぞれ実施例6,7、参考例2,3および比較例1,2の反射吸収量を測定し、周波数(GHz)と反射吸収量(dB)との関係を示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明の電磁波吸収体は、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅を2GHz以上有しているものであり、好ましくは5GHz以上、より好ましくは10GHz以上有し、その上限は、通常、30GHzである。また、さらに好ましくは70?85GHzの周波数帯域において2GHz以上、より好ましくは5GHz以上、さらに好ましくは10GHz以上有し、その上限は、通常、30GHzである。
【0018】
上記電磁波吸収量および電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅は、例えば、反射電力法、導波管法等によって測定することができる。本発明においては、キーコム社製 電波吸収体(電波吸収材料)・反射減衰量 測定装置LAF-26.5Bを用いて、JIS R 1679(電波吸収体のミリ波帯における電波吸収特性測定方法)に準拠し、斜入射15°でサンプルに対して電磁波を照射して反射吸収量を測定し、電磁波吸収量としている。また、同測定において得られた反射吸収曲線より、反射吸収量が20dB以上となる周波数帯域を特定し、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅としている。
【0019】
この構成によれば、高い周波数の電磁波、例えば、76?81GHzの周波数帯域内にある特定の波長の電磁波を確実に排除することが可能になるため、より高い分解能を有するレーダとして、76?81GHz近傍の周波数のものが採用された場合であっても、発生するノイズを確実に排除することができる。また、環境変化や経時的変化により、電磁波吸収体を構成する材料の特性に変化が生じ、吸収することのできる周波数(吸収ピーク)が変動した場合であっても、排除対象として設定されたレーダの周波数において充分な吸収能を発揮することができる。また、レーダの周波数が変動した場合であっても、充分な吸収能を発揮することができる。さらに、上記周波数近傍において周波数の異なる複数のレーダを用いた場合であっても、複数のレーダからのノイズを確実に排除することができる。このため、従来のように周波数の異なるレーダごとに異なる性能の電磁波吸収体を用いる必要がなくなり、低コストを実現することができる。
【0020】
本発明の電磁波吸収体は、磁性損失を利用する磁性電磁波吸収体、誘電損失を利用する誘電性電磁波吸収体、抵抗損失を利用する導電性電磁波吸収体およびλ/4型電磁波吸収体のいずれの方式の電磁波吸収体であってもよいが、とりわけ耐久性、軽量性、薄膜化が容易である点でλ/4型電磁波吸収体が好ましく、加工性に優れる点で磁性電磁波吸収体、誘電性電磁波吸収体が好ましい。
【0021】
上記λ/4型電磁波吸収体である本発明の電磁波吸収体としては、例えば、図1に示すように、抵抗層Aと、誘電体層Bと、導電層Cとをこの順で有し、上記抵抗層Aの外側と、導電層Cの外側に、それぞれ樹脂層D_(1),D_(2)が設けられているものがあげられる。なお、図1において、各部分は模式的に示したものであり、実際の厚み、大きさ等とは異なっている(以下の図においても同じ)。また、抵抗層Aと、誘電体層Bと、導電層Cの構成で充分に効果を奏することができるため、樹脂層D_(1),D_(2)は、任意に設けられた構成である。
【0022】
上記抵抗層Aは、電磁波吸収体内部へ電磁波を透過させることが求められるため、空気に近い比誘電率を有していることが好ましく、通常、酸化インジウムスズ(以下「ITO」とする)が用いられる。なかでも、非晶質構造が極めて安定であり、高温多湿の環境下においても抵抗層Aのシート抵抗の変動を抑えることができる点から、20?40重量%のSnO_(2)、より好ましくは25?35重量%のSnO_(2)を含有するITOを主成分とするものが好ましく用いられる。なお、本発明において「主成分とする」とは、その材料の特性に影響を与える成分の意味であり、その成分の含有量は、通常、材料全体の50質量%以上であり、当然、その成分のみからなるものも含まれる。
【0023】
また、抵抗層Aのシート抵抗は320?500Ω/□の範囲に設定されることが好ましく、より好ましくは360?450Ω/□の範囲である。抵抗層Aのシート抵抗が上記範囲内であると、ミリ波レーダや準ミリ波レーダとして汎用される波長(周波)の電磁波を選択的に吸収しやすくなるためである。
【0024】
そして、抵抗層Aの厚みは、15?100nmの範囲であることが好ましく、25?50nmの範囲であることがより好ましい。厚みが厚すぎても、逆に薄すぎても、経時的あるいは環境的変化が加えられた際の、シート抵抗値の信頼性が低下する傾向がみられるためである。
【0025】
上記誘電体層Bは、吸収の対象とする電磁波の波長に合わせ、所定の比誘電率を有する樹脂組成物を、硬化後に所定の厚みとなるように形成し、硬化させることによって得られるものである。上記樹脂組成物としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル、ウレタン、アクリル、アクリルウレタン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、エポキシ等の合成樹脂や、ポリイソプレンゴム、ポリスチレン・ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴムおよびシリコーンゴム等の合成ゴム材料を樹脂成分として用いることが好ましい。とりわけ、成形性と比誘電率の点から、EVAまたはアクリル樹脂を用いることが好ましい。なお、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができ、誘電体層Bは、単層あるいは複層とすることもできる。
【0026】
また、誘電体層Bは比誘電率が小さいほど広帯域化しやすいことから、上記材料を発泡化した発泡体を使用してもよい。またこのような発泡体としては、柔軟性の高い発泡体が好ましく用いられる。
【0027】
誘電体層Bの比誘電率は、1?10の範囲にあることが好ましく、1?5の範囲にあることがより好ましく、1?3の範囲にあることがさらに好ましい。比誘電率が上記範囲内であると、誘電体層を制御しやすい厚みに設定することができ、かつ電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅をより広いものに設定することが可能となり、吸収能をより均一に有する電磁波吸収体を得ることができる。
【0028】
なお、上記誘電体層Bの比誘電率は、アジレント・テクノロジー社製 ネットワークアナライザーN5230C、関東電子応用開発社製 空洞共振器CP531等を用い、10GHzにおける比誘電率を空洞共振器摂動法により測定することができる。
【0029】
誘電体層Bの厚みは、50?2000μmであることが好ましく、100?1500μmであることがより好ましく、100?1000μmであることがさらに好ましい。薄すぎると厚み寸法精度の確保が困難となり、吸収性能の精度が低下する恐れがあり、厚すぎると重量も増すこともあり扱いにくくなったり、材料コストが高くなる傾向がある。
【0030】
上記導電層Cは、対象とする電磁波を電磁波吸収体の裏面近傍で反射させるために配置されるものであり、そのシート抵抗は、抵抗層Aのシート抵抗より充分に低く設定されている。これらのことから、導電層Cの材料としては、例えば、ITO、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、およびこれらの金属の合金があげられる。なかでも、導電層CにITOを用いることで、透明な電磁波吸収体を供することができ、透明性が必要とされる部位への適用が可能となるだけでなく、施工性の改善を図ることができるため、とりわけ5?15重量%のSnO_(2)を含有するITOが好ましく用いられる。導電層CにITOを用いた場合の厚みは、20?200nmであることが好ましく、50?150nmであることがより好ましい。厚みが厚すぎると導電層Cに応力によりクラックが入り易くなる傾向がみられ、薄すぎると所望の低い抵抗値が得られ難くなる傾向がみられるためである。一方、シート抵抗値をより容易に下げることができ、ノイズをより低減することができる点から、Alまたはその合金が好ましく用いられる。Alまたはその金属合金を用いた場合の導電層Cの厚みは、20nm?100μmであることが好ましく、50nm?50μmであることがより好ましい。厚みが厚すぎると電磁波吸収体が剛直となり扱いづらくなる傾向がみられ、薄すぎると所望の低い抵抗値が得られがたくなる傾向がみられるためである。また、導電層Cのシート抵抗は、1.0×10^(-7)Ω?100Ωであることが好ましく、1.0×10^(-7)Ω?20Ωであることが好ましい。
【0031】
上記樹脂層D_(1),D_(2)は、抵抗層Aまたは導電層Cをスパッタ等により形成する際の基板となるものであり、電磁波吸収体に形成された後に、抵抗層Aおよび導電層Cを外部からの衝撃等から保護する等の役割を果たすものである。このような樹脂層D_(1),D_(2)の材料としては、抵抗層Aまたは導電層Cの形成に用いる蒸着やスパッタ等の高温に耐えうるものであることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)等があげられる。なかでも、耐熱性に優れ、寸法安定性とコストとのバランスがよいことからPETが好ましく用いられる。なお、樹脂層D_(1),D_(2)は、互いに同じ材料からなっていてもよいし、それぞれ異なる材料からなっていてもよい。また、単層にかぎらず複層であってもよいし、樹脂層D_(1),D_(2)を設けなくてもよい。
【0032】
樹脂層D_(1),D_(2)の厚みは、それぞれ10?125μmであることが好ましく、20?50μmであることがより好ましい。薄すぎると、抵抗層Aを形成する際にシワや変形が起こりやすい傾向がみられるためであり、厚すぎると、電磁波吸収体としての屈曲性が低下する傾向がみられるためである。また、樹脂層D_(1),D_(2)は互いに同じ厚みであってもよいし、それぞれ異なる厚みであってもよい。
【0033】
なお、上記実施の形態では、電磁波吸収体が、抵抗層A、誘電体層B、導電層C、樹脂層D_(1),D_(2)の積層体からなっているが、電磁波吸収体にはこれらの層以外の層を設けてもよい。すなわち、樹脂層D_(1)の外側、抵抗層Aと誘電体層Bの間、誘電体層Bと導電層Cの間、樹脂層D_(2)の外側等に他の層を設けるようにしてもよい。例えば、抵抗層Aと誘電体層Bの間にコート層(図示せず)を設けると、誘電体層B中の成分が抵抗層Aに拡散することを防止することができ、抵抗層Aの保護を図ることができる。同様に、導電層Cと誘電体層Bの間にコート層(図示せず)を設けると、誘電体層B中の成分が導電層Cに拡散することを防止することができ、導電層Cの保護を図ることができる。また、図2に示すように、樹脂層D_(2)の外側に粘着層Gを設けると他の部材(被取り付け部材)への取り付けが容易になる。
【0034】
上記コート層の材料としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO_(2))、窒化ケイ素(SiN)、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ニオブ(Nb_(2)O_(5))、スズ・シリコン酸化物(STO)、アルミニウム含有酸化亜鉛(AZO)、窒化シリコン(SiN)等を用いることができる。
【0035】
上記粘着層Gの材料としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等の粘着剤を用いることができる。また、エマルション系接着剤、ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリル系接着剤、ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤等の接着剤を用いることもでき、被取り付け部材の材質や形状によって適宜選択することができる。なかでも、長期間にわたる粘着力を発揮し、取り付けの信頼性が高い点から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0036】
このような電磁波吸収体(図1参照)は、例えば、つぎのようにして製造することができる。
【0037】
まず、図3(a)に示すように、フィルム状に成形された樹脂層D_(1)の上(図では下)に抵抗層Aを形成する。また、フィルム状に成形された樹脂層D_(2)の上に導電層Cを形成する。上記抵抗層Aおよび導電層Cは、スパッタ、蒸着等により形成することができる。なかでも、抵抗値や厚みを厳密に制御できる点から、いずれもスパッタを用いることが好ましい。
【0038】
つぎに、図3(b)に示すように、誘電体層Bを形成する樹脂組成物をシート状にプレス成形する。そして、上記誘電体層Bの一方の面に、樹脂層D_(1)の上に形成された抵抗層Aを重ね、もう一方の面に、樹脂層D_(2)の上に形成された導電層Cを重ねる。これにより、図1に示す、樹脂層D_(1)、抵抗層A、誘電体層B、導電層C、樹脂層D_(2)がこの順で積層された電磁波吸収体を得ることができる。
【0039】
これによれば、誘電体層Bの厚みの制御が容易であるため、対象とする波長(周波)の電磁波を効果的に吸収する電磁波吸収体とすることができる。また、抵抗層Aおよび導電層Cを別々に形成することができるため、電磁波吸収体の製造にかかる時間を短縮することができ、低コストで製造することができる。なお、樹脂層D_(1),D_(2)を設けない場合には、例えば、誘電体層Bに、抵抗層Aおよび導電層Cの材料を、直接、スパッタ、蒸着等することにより電磁波吸収体を製造することができる。
【0040】
つぎに、前記磁性電磁波吸収体または誘電性電磁波吸収体である本発明の電磁波吸収体としては、例えば、図4に示すように、誘電体層Eと導電層Fを有しているものがあげられる。磁性電磁波吸収体は、誘電体層Eの外側から照射された電磁波を、添加される磁性体の磁気モーメントの追従遅れを利用した磁性損失により吸収する電磁波吸収体である。一方、誘電性電磁波吸収体は、添加される誘電体の分極の追従遅れを利用した熱損失により吸収する電磁波吸収体である。なお、磁性体と誘電体とを組み合わせて添加した電磁波吸収体としてもよい。
【0041】
磁性電磁波吸収体の場合、上記誘電体層Eは、前記誘電体層Bと同様の材料からなる樹脂組成物に、磁性体を含有させたものを、硬化後に所定の厚みとなるように形成し、硬化させることによって得ることができる。上記磁性体としては、加えた電界により電磁波を吸収するものがあげられ、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの導電性カーボン、鉄、ニッケル、フェライトなどの磁性粉等を用いることができる。なかでも、樹脂組成物への分散性に優れる点から、錯体状のカルボニル金属を用いることが好ましく、とりわけカルボニル鉄粉が好ましく用いられる。
【0042】
誘電性電磁波吸収体の場合、上記誘電体層Eは、前記誘電体層Bと同様の材料からなる樹脂組成物に、誘電体を含有させたものを、硬化後に所定の厚みとなるように形成し、硬化させることによって得ることができる。上記誘電体としては、加えた磁界により電磁波を吸収するものがあげられ、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、膨張黒鉛などのカーボン、チタン酸バリウムやチタン酸ジルコン酸鉛等の強誘電体を用いることができる。なかでも、材料コストに優れる点からカーボン粉末が好ましく用いられる。
【0043】
そして、誘電体層Eの厚みは、50?2000μmであることが好ましく、100?1500μmであることがより好ましい。薄すぎると厚み寸法精度の確保が困難となる傾向がみられ、厚すぎると材料コストが高くなるだけでなく、重量が増加し過ぎる傾向がみられるためである。
【0044】
また、誘電体層Eの比誘電率は、1?10の範囲にあることが好ましく、1?5の範囲にあることがより好ましい。比誘電率が上記範囲内であると、誘電体層を制御しやすい厚みに設定することができ、かつ電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅をより広いものに設定することが可能となり、また、吸収能をより均一に有する電磁波吸収体を得ることができる。
【0045】
上記導電層Fは、対象とする波長(周波)の電磁波を電磁波吸収体の裏面近傍で反射させるために配置されるものであることから、導電層Fの材料としては、例えば、ITO、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、およびこれらの金属の合金があげられる。
【0046】
また、導電層Fの厚みは、20nm?100μmであることが好ましく、50nm?50μmであることがより好ましい。厚みが厚すぎると導電層Fに応力やクラックが入り易くなる傾向がみられ、薄すぎると所望の低い抵抗値が得られ難くなる傾向がみられるためである。そして、導電層Fのシート抵抗は、1.0×10^(-7)Ω?100Ωであることが好ましく、1.0×10^(-7)Ω?20Ωであることがより好ましい。
【0047】
このような電磁波吸収体(図4参照)は、例えば、プレス成形等によりシート状に形成された誘電体層Eに、導電層Fの材料をスパッタ、蒸着等することにより製造することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、電磁波吸収体が、誘電体層Eと導電層Fとの積層体からなっているが、電磁波吸収体にこれら以外の層を設けてもよい。すなわち、誘電体層Eの外側、誘電体層Eと導電層Fの間、導電層Fの外側等に他の層を設けるようにしてもよい。例えば、誘電体層Eと導電層Fの間にコート層(図示せず)を設けると、誘電体層E中の成分が導電層Fに拡散することを防止することができ、導電層Fの保護を図ることができる。また、図5に示すように、樹脂層Fの外側に粘着層Gを設けると他の部材(被取り付け部材)への取り付けが容易になる。上記コート層および粘着層Gの材料としては、図1に示す実施の形態と同様のものを用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
下記に示すとおり、実施例1?7、参考例1?3および比較例1,2の電磁波吸収体を作製し、これらについて、キーコム社製 電波吸収体(電波吸収材料)・反射減衰量 測定装置 LAF-26.5Bを用いて、JIS R 1679(電波吸収体のミリ波帯における電波吸収特性測定方法)に準拠し、斜入射15°で電磁波を照射し、それぞれ反射吸収量を測定した。結果を後記の表1および図6、図7に示す。
【0051】
<実施例1>
図1に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、三井デュポン社製EVA樹脂(エバフレックスEV250、比誘電率2.45)を120℃でプレス成形し、560μm厚シートに成形して誘電体層Bを作製した。この誘電体層Bの一方の面に、導電層Cとして表面抵抗が20Ω/□になるようにITOがスパッタ形成された38μm厚のPETフィルム(樹脂層D_(1))を、導電層Cを誘電体層Bに対峙するように貼り合せた。そして、上記誘電体層Bのもう一方の面に、抵抗層Aとして表面抵抗が380Ω/□になるようにITOがスパッタ形成された38μm厚のPETフィルム(樹脂層D_(2))を抵抗層Aが誘電体層Bに対峙するように貼り合せて、目的とする電磁波吸収体を得た。
【0052】
<実施例2>
図1に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、誘電体層Bを下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。
(誘電体層B)
三井デュポン社製EVA樹脂(エバフレックスEV250)100重量部に、堺化学工業社製チタン酸バリウム(BT-01)を50重量部添加し、ミキシングロールで混練した後、120℃でプレス成形し、458μm厚シートに成形して誘電体層Bを作製した。この誘電体層Bの比誘電率は3.90であった。
【0053】
<実施例3>
図1に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、誘電体層Bを下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。
(誘電体層B)
三井デュポン社製EVA樹脂(エバフレックスEV250)100重量部に、堺化学工業社製チタン酸バリウム(BT-01)を100重量部添加し、ミキシングロールで混練した後、120℃でプレス成形し、397μm厚シートに成形して誘電体層Bを作製した。この誘電体層Bの比誘電率は5.19であった。
【0054】
<参考例1>
図1に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、誘電体層Bを下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。
(誘電体層B)
三井デュポン社製EVA樹脂(エバフレックスEV250)100重量部に、堺化学工業社製チタン酸バリウム(BT-01)を200重量部添加し、ミキシングロールで混練した後、120℃でプレス成形し、336μm厚のシートに成形して誘電体層Bを作製した。この誘電体層Bの比誘電率は7.25であった。
【0055】
<実施例4>
図1に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、誘電体層Bを日東電工社製のオレフィン系発泡体SCF100(比誘電率1.07)を厚み822μmにスライス成形したものに変更し、抵抗層Aおよび導電層Cをそれぞれ厚み30μmに形成したアクリル系粘着剤を介して誘電体層Bに貼り合せた以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。
【0056】
<実施例5>
図1に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、誘電体層Bをポリエステル系発泡体SCF T100(比誘電率1.09)を厚み793μmにスライス成形したものに変更し、抵抗層Aおよび導電層Cをそれぞれ厚み30μmに形成したアクリル系粘着剤を介して誘電体層Bに貼り合せた以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。
【0057】
<参考例2>
図4に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、三井デュポン社製EVA樹脂(エバフレックスEV250)100重量部に、ニューメタルスエンドケミカルス社製 カルボニル鉄粉YW1を300重量部添加し、ミキシングロールで混練した後、120℃でプレス成形し、1200μm厚シートに成形して誘電体層Eを作製した。この誘電体層Eの比誘電率は6.60であった。上記誘電体層Eの一方の面に、導電層Fとして、ITOフィルム(表面抵抗20Ω/□)を貼り合せて、目的とする電磁波吸収体を得た。
【0058】
<参考例3>
図4に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、導電層Fとして、アルミ箔/PET複合フィルム(UACJ社製 アルミ箔7μm/PET9μm)を、アルミ箔面を誘電体層Eに対峙させて貼り合せた以外は、参考例2と同様にして、目的とする電磁波吸収体を得た。
【0059】
<実施例6>
図1に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、誘電体層Bをクラレ社製 熱可塑性アクリル系エラストマー(クラリティー2330、比誘電率2.55)を150℃でプレス成形し、厚み561μmのシートに成形したものに変更した以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。
【0060】
<実施例7>
図1に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、誘電体層Bをクラレ社製 熱可塑性アクリル系エラストマー(クラリティー2330、比誘電率2.55)を150℃でプレス成形し、厚み538μmのシートに成形したものに変更し、さらに、抵抗層Aとして、アルミ箔/PET複合フィルム(UACJ社製 アルミ箔7μm/PET9μm)を、アルミ箔面を誘電体層Bに対峙させて貼り合せた以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。
【0061】
<比較例1>
図1に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、誘電体層Bを下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。
(誘電体層B)
三井デュポン社製EVA樹脂(エバフレックスEV250)100重量部に、堺化学工業社製チタン酸バリウム(BT-01)を300重量部添加し、ミキシングロールで混練した後、120℃でプレス成形し、242μm厚シートに成形して誘電体層Bを作製した。この誘電体層Bの比誘電率は14.0であった。
【0062】
<比較例2>
図4に示す電磁波吸収体を得る方法に準じ、誘電体層Eを下記のように変更した以外は、参考例2と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。
(誘電体層E)
三井デュポン社製EVA樹脂(エバフレックスEV250)100重量部に、ニューメタルスエンドケミカルス社製カルボニル鉄粉YW1を400重量部添加し、ミキシングロールで混練した後、120℃でプレス成形し、1200μm厚シートに成形して誘電体層Eを作製した。この誘電体層Eの比誘電率は10.3であった。
【0063】
【表1】

【0064】
上記表1および図6、図7の結果から、実施例1?7、参考例1?3は、60?90GHzの周波数帯域において、反射吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が2GHz以上あり、とりわけ実施例1?4、5、6、7は、同帯域幅が10.0GHz以上という広い幅を有することがわかる。また比誘電率が小さいほど20dB帯域幅が広くなる傾向にある。これに対し、比較例1、2は、60?90GHzの周波数帯域において、若干の吸収能を発揮するものの、反射吸収量が20dB以上となる吸収能をどの範囲においても実現することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、幅広い周波数帯域において、長期間にわたり不要な電磁波を吸収する性能を発揮することができるため、自動車衝突防止システムに用いるミリ波レーダの電磁波吸収体に好適に利用できる。また、その他の用途として自動車、道路、人の相互間で情報通信を行う高度道路交通システム(ITS)やミリ波を用いた次世代移動通信システム(5G)においても、電波干渉抑制やノイズ低減の目的で用いることができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層が熱可塑性アクリル系エラストマーまたはエチレン酢酸ビニル共重合体からなり、上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており、上記誘電体層の比誘電率が1?5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100?1000μmの範囲にあり、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上であることを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
上記抵抗層が、酸化インジウムスズを含有する請求項1記載の電磁波吸収体。
【請求項6】
上記抵抗層のシート抵抗が、320?500Ω/□の範囲に設定された請求項1または5記載の電磁波吸収体。
【請求項7】
上記導電層が、酸化インジウムスズを含有する請求項1、5、6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【請求項8】
上記導電層が、アルミニウムおよびその合金の少なくとも一方を含有する請求項1、5、6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【請求項9】
さらに粘着層を備え、上記粘着層が上記導電層の外側に設けられた請求項1、5?8のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【請求項10】
誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層が発泡体であり、上記誘電体層の比誘電率が1?5.19の範囲であり、上記誘電体層の厚みが100?1000μmの範囲にあり、60?90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上であることを特徴とする電磁波吸収体。
【図面】







 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-11-24 
出願番号 特願2016-241731(P2016-241731)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H05K)
P 1 651・ 121- YAA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石坂 博明  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 山田 正文
須原 宏光
登録日 2018-12-21 
登録番号 特許第6453295号(P6453295)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 電磁波吸収体  
代理人 西藤 征彦  
代理人 西藤 征彦  
代理人 西藤 優子  
代理人 井▲崎▼ 愛佳  
代理人 井▲崎▼ 愛佳  
代理人 西藤 優子  
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