• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02M
管理番号 1371661
異議申立番号 異議2019-700690  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-03 
確定日 2020-12-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6478881号発明「直流電源装置および空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6478881号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-14〕、15について訂正することを認める。 特許第6478881号の請求項2ないし15に係る特許を維持する。 特許第6478881号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6478881号の請求項1-14に係る発明についての出願は、平成27年9月7日に出願され、平成31年2月15日にその特許権が設定登録され、平成31年3月6日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して2件の特許異議の申立てがあり、次の通りに手続が行われた。
令和 1年 9月 3日:特許異議申立人角田朗により請求項1に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 1年 9月 5日:特許異議申立人井澤幹により請求項1-14に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 1年11月 7日付け:取消理由通知
令和 2年 1月 8日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 2年 2月19日 :特許異議申立人井澤幹による意見書の提出
令和 2年 4月 7日付け:訂正拒絶理由通知
令和 2年 4月30日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 2年 7月 7日 :令和2年4月30日付け訂正請求に係る手続の却下
令和 2年 8月28日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 2年11月 4日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求

令和2年1月8日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げたものとみなす。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年11月4日付けの訂正請求の趣旨は、特許第6478881号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」、及び、特許請求の範囲の請求項10に「前記制御手段は、前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、ことを特徴とする請求項2ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、請求項2を引用する請求項10について、独立形式に改め、「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。」に訂正し、請求項2とする。
請求項2の記載を引用する請求項13、14も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」、及び、特許請求の範囲の請求項10に「前記制御手段は、前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、ことを特徴とする請求項2ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、請求項3を引用する請求項10について、独立形式に改め、「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記部分スイッチング制御とを除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。」に訂正し、請求項3とする。
請求項3の記載を引用する請求項13、14も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。」に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項10、12-14も同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。」に訂正する。
請求項5の記載を引用する請求項10、12-14も同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。」に訂正する。
請求項6の記載を引用する請求項10、12-14も同様に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。」に訂正する。
請求項7の記載を引用する請求項10-14も同様に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。」に訂正する。
請求項8の記載を引用する請求項10-14も同様に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。」に訂正する。
請求項9の記載を引用する請求項10-14も同様に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に「請求項2ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。」と記載されているのを「請求項4ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。」に訂正する。
請求項10の記載を引用する請求項12-14も同様に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11に「請求項2ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。」と記載されているのを「請求項7ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。」に訂正する。
請求項11の記載を引用する請求項12-14も同様に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1ないし請求項12の何れか1項に記載の直流電源装置。」と記載されているのを「請求項2ないし請求項12の何れか1項に記載の直流電源装置。」に訂正する。
請求項13の記載を引用する請求項14も同様に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14に「請求項1ないし請求項13の何れか1項に記載の直流電源装置」と記載されているのを「請求項2ないし請求項13の何れか1項に記載の直流電源装置」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項4に「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、 ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」、及び、特許請求の範囲の請求項11に「前記制御手段は、前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替え、若しくは前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替える、ことを特徴とする請求項2ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、請求項4を引用する請求項11について、独立形式に改め、「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替え、若しくは前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替え、前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替えの瞬間に、部分スイッチング動作時の電流に対して高速スイッチング動作時の電流のピークが小さくなるようにオン時間を調整して切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。」に訂正し、新たに請求項15とする。

(15)訂正事項15
明細書の段落【0005】に「制御手段と、を備えることを特徴とする。」と記載されているのを、「制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替えることを特徴とする。」に訂正する。

(16)一群の請求項
上記訂正事項1?14に係る本件訂正前の請求項1?14について、請求項2-14は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、本件訂正前の請求項1-14に対応する本件訂正後の請求項1-15は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。

(17)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項2-9、15については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、明細書の訂正に係る請求項の訂正請求の有無

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項10が請求項2ないし請求項9の何れか1項の記載を引用し、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用するものであったものを、訂正前の請求項10について、請求項3ないし請求項9の引用を削除し、請求項2の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めて請求項2とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項2のうち「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち」は、訂正前の請求項2に記載されていた「制御手段」の制御を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項2のうち、訂正前の請求項10について請求項3ないし請求項9の引用を削除し、請求項2の記載を引用するものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めて請求項2とする訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項2のうち「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」とする訂正は、明細書の段落【0074】に記載された「≪制御モードの切り替え≫ 本発明の直流電源装置1は、ダイオード整流制御と同期整流制御と部分スイッチング制御と高速スイッチング制御を実施可能である。・・・そこで、前述した4つの制御を実施するモードを、予め決められた閾値情報を基にして選択的に切り替えることで、より最適に高効率化と高調波電流の低減を両立可能となる。」、同【0075】に記載された「第1制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。」、及び訂正前の請求項2に基づく訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項10が請求項2ないし請求項9の何れか1項の記載を引用し、訂正前の請求項3が請求項1の記載を引用するものであったものを、訂正前の請求項10について、請求項2、請求項4ないし請求項9の引用を削除し、請求項3の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めて請求項3とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項3のうち「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記部分スイッチング制御とを除くもののうち」は、訂正前の請求項3に記載されていた「制御手段」の制御を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項3のうち、訂正前の請求項10について請求項2、請求項4ないし請求項9の引用を削除し、請求項3の記載を引用するものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めて請求項3とする訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項3のうち「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記部分スイッチング制御とを除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」とする訂正は、明細書の段落【0074】に記載された「≪制御モードの切り替え≫ 本発明の直流電源装置1は、ダイオード整流制御と同期整流制御と部分スイッチング制御と高速スイッチング制御を実施可能である。・・・そこで、前述した4つの制御を実施するモードを、予め決められた閾値情報を基にして選択的に切り替えることで、より最適に高効率化と高調波電流の低減を両立可能となる。」、同【0076】に記載された「第2制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。」、及び訂正前の請求項3に基づく訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改める訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項4のうち「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち」は、訂正前の請求項4に記載されていた「制御手段」の制御を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
さらに、訂正事項4のうち「前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替える」は、訂正前の請求項4に記載された「制御手段」の制御を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項4のうち、訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改める訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項4のうち「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」とする訂正は、明細書の段落【0074】に記載された「≪制御モードの切り替え≫ 本発明の直流電源装置1は、ダイオード整流制御と同期整流制御と部分スイッチング制御と高速スイッチング制御を実施可能である。・・・そこで、前述した4つの制御を実施するモードを、予め決められた閾値情報を基にして選択的に切り替えることで、より最適に高効率化と高調波電流の低減を両立可能となる。」、同【0077】に記載された「第3制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を行うモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードと、を切り替えるというものである。」、及び訂正前の請求項4に基づく訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項4のうち「前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替える」とする訂正は、同【0088】に記載された「図17は、部分スイッチングから高速スイッチングへ切り替える場合の電流波形を説明した図である。図17(a)は、部分スイッチング制御時の交流電源電圧の瞬時値vsと入力電流Isとを模式的に示している。図17(b)は、高速スイッチング制御に切り替えたときの交流電源電圧の瞬時値vsと入力電流isとを模式的に示している。このときの電流isのピークは、図17(a)に示した電流isのピークよりも小さくなっている。このようにオン時間を調整して切り替えることで直流電圧の変動を抑えることが可能である。これは、部分スイッチングに対して高速スイッチング時は力率が良いため電流は小さくなる。つまり、部分スイッチングの電流振幅と同じになるように切り替えてしまうと、直流電圧が昇圧されすぎてしまうためである。これにより、直流電圧Vdの変動を抑えることが可能である。」及び訂正前の請求項11の一部の記載に基づく訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改める訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項5のうち「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記高速スイッチング制御を除くもののうち」は、訂正前の請求項5に記載されていた「制御手段」の制御を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項5のうち、訂正前の請求項5が請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改める訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項5のうち「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える」とする訂正は、明細書の段落【0074】に記載された「≪制御モードの切り替え≫ 本発明の直流電源装置1は、ダイオード整流制御と同期整流制御と部分スイッチング制御と高速スイッチング制御を実施可能である。・・・そこで、前述した4つの制御を実施するモードを、予め決められた閾値情報を基にして選択的に切り替えることで、より最適に高効率化と高調波電流の低減を両立可能となる。」、同【0078】に記載された「第4制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。」、及び訂正前の請求項5に基づく訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改める訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項6のうち「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御を除くもののうち」は、訂正前の請求項6に記載されていた「制御手段」の制御を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項6のうち、訂正前の請求項6が請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改める訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項6のうち「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える」とする訂正は、明細書の段落【0074】に記載された「≪制御モードの切り替え≫ 本発明の直流電源装置1は、ダイオード整流制御と同期整流制御と部分スイッチング制御と高速スイッチング制御を実施可能である。・・・そこで、前述した4つの制御を実施するモードを、予め決められた閾値情報を基にして選択的に切り替えることで、より最適に高効率化と高調波電流の低減を両立可能となる。」、同【0079】に記載された「第5制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。」、及び訂正前の請求項6に基づく訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項7が請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項8が請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項9が請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(10)訂正事項10について
訂正事項10は、訂正前の請求項10が請求項2ないし請求項9の何れか1項を引用する記載であるところ、請求項2及び請求項3の引用を削除し、請求項4ないし請求項9の何れか1項を引用するようにしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(11)訂正事項11について
訂正事項11は、訂正前の請求項11が請求項2ないし請求項9の何れか1項を引用する記載であるところ、請求項2ないし請求項6の引用を削除し、請求項7ないし請求項9の何れか1項を引用するようにしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(12)訂正事項12について
訂正事項12は、訂正前の請求項13が請求項1ないし請求項12の何れか1項を引用する記載であるところ、請求項1の引用を削除し、請求項2ないし請求項12の何れか1項を引用するようにしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(13)訂正事項13について
訂正事項13は、訂正前の請求項14が請求項1ないし請求項13の何れか1項を引用する記載であるところ、請求項1の引用を削除し、請求項2ないし請求項13の何れか1項を引用するようにしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(14)訂正事項14について
ア 訂正の目的について
訂正事項14は、訂正前の請求項11が請求項2ないし請求項9の何れか1項の記載を引用し、訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用するものであったものを、訂正前の請求項11について、請求項2、請求項3、請求項5ないし請求項9の引用を削除し、請求項4の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めて、新たに請求項15とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項14のうち「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち」は、訂正前の請求項4に記載されていた「制御手段」の制御を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
さらに、訂正事項14のうち「前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替えの瞬間に、部分スイッチング動作時の電流に対して高速スイッチング動作時の電流のピークが小さくなるようにオン時間を調整して切り替える」は、訂正前の請求項4に記載された「制御手段」の制御を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項14のうち、訂正前の請求項11について請求項2、請求項3、請求項5ないし請求項9の引用を削除し、請求項4の記載を引用するものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めて請求項15とする訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項14のうち「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」とする訂正は、明細書の段落【0074】に記載された「≪制御モードの切り替え≫ 本発明の直流電源装置1は、ダイオード整流制御と同期整流制御と部分スイッチング制御と高速スイッチング制御を実施可能である。・・・そこで、前述した4つの制御を実施するモードを、予め決められた閾値情報を基にして選択的に切り替えることで、より最適に高効率化と高調波電流の低減を両立可能となる。」、同【0077】に記載された「第3制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を行うモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードと、を切り替えるというものである。」、及び訂正前の請求項4に基づく訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項14のうち「前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替えの瞬間に、部分スイッチング動作時の電流に対して高速スイッチング動作時の電流のピークが小さくなるようにオン時間を調整して切り替える」とする訂正は、明細書の段落【0087】に記載された「部分スイッチングの動作から高速スイッチングへの切り替えの瞬間に、部分スイッチング動作時の電流に対して高速スイッチング動作時の電流のピークが小さくなるようにオン時間を調整して切り替える。」に基づく訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項14は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(15)訂正事項15について
訂正事項15は、訂正事項1、2に基づき、特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
したがって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項15は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正事項15は明細書の記載を訂正するものであるところ、本件訂正は特許請求の範囲に記載された全ての請求項を対象とするものであるから、明細書の訂正に係る全ての請求項について訂正請求がなされている。したがって、訂正事項15は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

3 小活
本件訂正による訂正事項1ないし15は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。そして、特許権者から訂正後の請求項2-9、15について訂正が認められるときは、一群の他の請求項とは別途訂正することの求めがあった。
よって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-14〕、15について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし15に係る発明(以下「本件発明1ないし15」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、
前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項3】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記部分スイッチング制御とを除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、
前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項4】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、
前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項5】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項6】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、

ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項7】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項8】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項9】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、
ことを特徴とする請求項4ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替え、若しくは前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替える、
ことを特徴とする請求項7ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記閾値情報として、回路電流、モータ電流、モータ回転数、変調率、直流電圧のいずれかを用いる、
ことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の直流電源装置。
【請求項13】
前記第1,第2のスイッチング素子は、スーパージャンクションMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、SiC-MOSFET、またはGaN(Gallium nitride)を用いたスイッチング素子である、
ことを特徴とする請求項2ないし請求項12の何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項14】
請求項2ないし請求項13の何れか1項に記載の直流電源装置を備えた、
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項15】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、
前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替え、若しくは前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替え、
前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替えの瞬間に、部分スイッチング動作時の電流に対して高速スイッチング動作時の電流のピークが小さくなるようにオン時間を調整して切り替える、ことを特徴とする直流電源装置。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 当審が令和2年8月28日に特許権者に通知した取消理由(決定の予告)について
(1)取消理由の要旨は、次のとおりである。
(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

・本件発明6、10、12-14
請求項6に「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える」と記載されている。
しかしながら、「前記高速スイッチング制御を除くもののうち」としながら、「前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える」とすることは矛盾しており、請求項6の記載は不明確である。
よって、請求項6に係る発明、請求項6を引用する請求項10、12-14に係る発明は明確でない。

(2)当審の判断
訂正事項6により、請求項6に記載された「前記高速スイッチング制御を除くもののうち」を、「前記部分スイッチング制御を除くもののうち」と訂正することによって、請求項6に係る発明は明確になった。
したがって、令和2年8月28日に通知した取消理由で指摘した記載不備は解消されたから、請求項6、10、12ないし14に係る特許を取り消すことはできない。

2 当審が令和1年11月7日に特許権者に通知した取消理由について
(1)取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2.(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

●理由1(明確性)について
・請求項1-6、10-14
請求項1に「前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段」と記載されているが、「制御手段」が選択的に実施するモードとして、「ダイオード整流制御」、「同期整流制御」、「部分スイッチング制御」、「高速スイッチング制御」の4つのモード全てを備えている必要があるのか、又は、そのうち少なくとも2つのモードを備えていればよいのか明確ではない。
また、請求項1に記載された「いずれかを選択的に実施する」は、「ダイオード整流制御」、「同期整流制御」、「部分スイッチング制御」又は「高速スイッチング制御」の実施が、いずれか1を選択して実施することであるか、また、いづれかのうち複数を選択して同時に実施することも含まれるているのか明確でない。
よって、請求項1に係る発明、請求項1を引用する請求項2-6、10-14に係る発明は明確でない。

●理由2(進歩性)について
・請求項1-4、10-12
・引用文献等1、2

・請求項13、14
・引用文献等1-4

<引用文献一覧>
1.特許第3695382号公報(特許異議申立人井澤幹の甲第7号証)
2.特許第4984751号公報(特許異議申立人井澤幹の甲第6号証)
3.特開2015-61322号公報(特許異議申立人井澤幹の甲第2号証)
4.特許第4935251号公報(特許異議申立人井澤幹の甲第3号証)

(2)当審の判断
ア 理由1(明確性)について
(ア)本件発明2について
訂正事項2により、請求項2を「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」と訂正することによって、「制御手段」が選択的に実施するモードとして、「ダイオード整流制御」、「同期整流制御」、「部分スイッチング制御」、「高速スイッチング制御」の4つのモード全てを備えている必要があることが明確になった。
また、「いずれかを選択的に実施する」ことに、いづれかのうち複数を選択して同時に実施することも含まれるていることが明確になった。

(イ)本件発明3について
訂正事項3により、請求項3を「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記部分スイッチング制御とを除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」と訂正することによって、「制御手段」が選択的に実施するモードとして、「ダイオード整流制御」、「同期整流制御」、「部分スイッチング制御」、「高速スイッチング制御」の4つのモード全てを備えている必要があることが明確になった。
また、「いずれかを選択的に実施する」ことに、いづれかのうち複数を選択して同時に実施することも含まれるていることが明確になった。

(ウ)本件発明4について
訂正事項4により、請求項4を「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」と訂正することによって、「制御手段」が選択的に実施するモードとして、「ダイオード整流制御」、「同期整流制御」、「部分スイッチング制御」、「高速スイッチング制御」の4つのモード全てを備えている必要があることが明確になった。
また、「いずれかを選択的に実施する」ことに、いづれかのうち複数を選択して同時に実施することも含まれるていることが明確になった。

(エ)本件発明5について
訂正事項5により、請求項5を「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える」と訂正することによって、「制御手段」が選択的に実施するモードとして、「ダイオード整流制御」、「同期整流制御」、「部分スイッチング制御」、「高速スイッチング制御」の4つのモード全てを備えている必要があることが明確になった。
また、「いずれかを選択的に実施する」ことに、いづれかのうち複数を選択して同時に実施することも含まれるていることが明確になった。

(オ)本件発明6について
訂正事項6により、請求項6を「前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える」と訂正することによって、「制御手段」が選択的に実施するモードとして、「ダイオード整流制御」、「同期整流制御」、「部分スイッチング制御」、「高速スイッチング制御」の4つのモード全てを備えている必要があることが明確になった。
また、「いずれかを選択的に実施する」ことに、いづれかのうち複数を選択して同時に実施することも含まれるていることが明確になった。

(カ)本件発明10、12ないし14について
請求項2ないし6の記載が明確になったので、請求項2ないし6を直接または間接的に引用する請求項10、12ないし14も明確になった。

(キ)本件発明11について
訂正事項11により、請求項11は、請求項2ないし6を引用しないことになったので明確になった。

(ク)まとめ
したがって、令和1年11月7日に通知した取消理由の理由1で指摘した記載不備は解消されたから、請求項2ないし6、10ないし14に係る特許を取り消すことはできない。

イ 理由2(進歩性)について
(ア)引用文献の記載事項、引用発明
a 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、交流電源を短絡または開放する短絡手段の制御パターンを負荷に応じて変更し、広範囲の運転領域において力率を改善しながら、高い変換効率で交流電源を直流に変換し負荷に供給する電力供給装置やこの電力装置により駆動される電動機に関するものである。」

「【0034】
コントローラ10は、短絡素子9の動作パターンを高周波スイッチングモードと部分スイッチングモードとに切り換えが可能であり、短絡素子9を力率改善無しモード、或いは、部分スイッチングモード、或いは、高周波スイッチングモード、のいずれかに制御するものである。」

「【0036】
まず、力率改善無しモードとは、短絡素子9を全く動作させない、整流器3による通常のコンデンサインプット型整流モードである。図1における短絡素子9は開放されたままの状態で、即ち、入力電流は、交流電圧瞬時値Vstが直流出力電圧Vdcよりも高くなる区間のみを流れる為、波形歪みが大きく、高調波を多く含む。
【0037】
次に、部分スイッチングモードとは、電流オープンループ制御にて、短絡素子9を電源半周期に1回から複数回オン/オフ動作させるものである。この動作について図3を参照しつつ説明する。図において、(a)は短絡素子9のオン/オフ時での電流径路、(b)は電源半周期に1回スイッチング動作を行ったときの電源電圧、入力電流、スイッチ駆動信号を示す。まず、短絡素子9をオンさせると、図3(a)に示すように、交流電源1がリアクトル2を介して短絡され、交流電源1、リアクトル2、短絡素子9から成る回路に電流Iが流れ、リアクトル2に磁気エネルギー1/2LI2が蓄積される。この蓄積エネルギーは、短絡素子9をオフさせると同時に、整流器3を介して、平滑コンデンサ6に転送される。この一連の動作により、図3(b)に示すような入力電流が流れ、力率改善無し
モードよりも通電角を広げられ、ある程度まで力率を改善できる。図では電源半周期に1回のみスイッチング動作する場合を示したが、スイッチング回数は何回でも良い。但し、電流オープンループ制御の為、数kHz以上の高周波でスイッチングする場合には回路に電流が流れすぎて直流出力電圧を昇圧し過ぎ、回路の破壊につながる恐れがある。その為、一般に、部分スイッチングモードでのスイッチング動作は、電源半周期に1回もしくは周波数数kHzまでの複数回とする。なお、部分スイッチングモードでは、短絡素子9の短絡開始時間、短絡時間、及び短絡回数を制御することで、リアクトル2に蓄積するエネルギーを制御でき、直流出力電圧Vdcは、力率改善無しモードよりも高いある値まで無段階で昇圧させられる。
【0038】
また、高周波スイッチングモードとは、直流出力電圧、入力電流をフィードバック制御するもので、図4に示すように、前記部分スイッチングモードでのスイッチング周波数を数kHz以上として、直流出力電圧が所望の値となるように、また、入力電流が電源電圧に同期する正弦波に近づくように短絡素子9のオン/オフ時間を制御するものである。短絡素子9のオン/オフ時の電流径路は図3(a)に示す場合と同じであり、このスイッチングモードにより、力率をほぼ1まで改善できる。また、前記部分スイッチングモードよりも昇圧能力が高く、直流出力電圧Vdcは、力率改善無しモードでの電圧値よりも高い任意の値に無段階で制御することができる。」

「【0071】
前記コントローラ10の一連の制御シーケンスを図10のフローチャートを用いて説明すると以下のようである。まず、ステップ1として、負荷の消費電力量を得る。次に、ステップ2として、負荷状態にふさわしい直流出力電圧指令値Vdc^(※)が負荷制御手段或いは外部の人力等により入力される。更に、ステップ3として、入力された指令値Vdc^(※)が前回入力された値と異なるかを判断する。ここで、指令値Vdc^(※)が前回の値と異なる場合にはステップ4へ進み、指令値Vdc^(※)が前回の値と等しい場合には整流回路切換用スイッチ8の切り換えは行わず、前回の運転モードを維持する。ステップ4では、入力された直流出力電圧指令値Vdc^(※)が、電源系統によって予め定められる電源電圧実行値Vsの2√2倍以上かどうかを判断する。この判定結果が偽の場合には、ステップ5へ進み整流回路切換用スイッチ8をオフとし、全波整流モードを選択する。更に、ステップ6へ進み、ステップ1で得た消費電力量が負荷の許容電力量の何パーセントにあたるかを判断し、消費電力量が許容電力量の0?10%である極低負荷領域のときにはステップ7からステップ8へ進み、短絡素子9を力率改善無しモードにて制御する。なお、これは図9の運転モード1に相当する。また、消費電力量が許容電力量の10?30%である低負荷領域のときにはステップ7からステップ9へ進み、短絡素子9を部分スイッチングモードにて制御する。なお、これは図9の運転モード2に相当する。また、消費電力量が許容電力量の30?50%である中間負荷領域のときにはステップ10へ進み、短絡素子9を高周波スイッチングモードにて制御する。なお、これは図9の運転モード3に相当する。」

「【0080】
図12は本発明の別の構成を示す回路構成図である。図12において、図1他と対応する部分には同一符号を付し、その重複説明を省略する。図12は図1他における双方向通電性の短絡素子9を、例えば、IGBT又はバイポーラトランジスタ又はMOSFET等の半導体素子を用いた1対のスイッチング素子20a及び20bを整流器3の1相に並列接続させて、代替させたものである。図12において、20a及び20bは図1他での短絡素子9を代替する1対のスイッチング素子であって、これらのスイッチング素子20a、20bは、それぞれ整流回路3のダイオード3a、3cに並列接続され、そのゲートにコントローラ10からの制御信号が印加されるように成されている。また、19は、整流器3と倍電圧コンデンサ4?5との間に挿入された逆流防止用整流素子であり、スイッチング素子20a、20bの短絡動作に伴う、倍電圧整流用コンデンサ4?5或いは平滑コンデンサ6から整流器3側への逆流を防止する為のものである。
【0081】
次に、動作について説明する。まず、コントローラ10の電源電圧検出手段11により交流電源1の電圧極性を検出する。このとき、交流電源1の一方の端子aの電位が他方の端子bの電位よりも高い(この状態を正極性とし、これと逆の状態を負極性とする)場合には、コントローラ10の制御手段14は、スイッチング素子20aをオフに制御し、スイッチング素子20bのみのスイッチング動作を許可する。また、交流電源1の電圧極性が負極性の場合には、コントローラ10は、スイッチング素子20bをオフに制御し、スイッチング素子20aのみのスイッチング動作を許可する。ここで、スイッチングの形態は先に説明したと同様、力率改善無しモード、部分スイッチングモード、高周波スイッチングモードにより行われるものとする。」





図4及び【0081】の記載より、高周波スイッチングモードは、交流全周期に亘って短絡素子のオン/オフ時間を制御することが読み取れる。

図12より、整流回路3は、交流電源1に接続された、ダイオード3a、ダイオード3b、ダイオード3c及びダイオード3dを有し、リアクトル2が交流電源1と整流回路3との間に設けられ、平滑コンデンサ6が整流回路3の出力側に接続されていることが見て取れる。

図12より、スイッチング素子20a又はスイッチング素子20bをオンすると、リアクトル2が交流電源1に短絡することが見て取れる。

上記記載より、特に図12に示される回路構成に係るものに着目すると引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「交流電源1に接続され、ダイオード3a、ダイオード3b、ダイオード3c及びダイオード3dを有する整流回路3と(図12)、
ダイオード3aに並列接続されたスイッチング素子20aと、
ダイオード3cに並列接続されたスイッチング素子20bと(【0080】)、
交流電源1と整流回路3との間に設けられリアクトル2と、
整流回路3の出力側に接続された平滑コンデンサ6と(図12)、
交流電源1が正極性の場合には、スイッチング素子20aをオフに制御し、スイッチング素子20bのみのスイッチング動作を許可し、負極性の場合には、スイッチング素子20bをオフに制御し、スイッチング素子20aのみのスイッチング動作を許可することにより、リアクトル2を交流電源1に短絡するものであって(【0081】、図12)、
スイッチング素子20a、20bを全く動作させない、整流回路3による力率改善無しモード、或いは、スイッチング素子20a、20bを電源半周期に1回から複数回オン/オフ動作させる部分スイッチングモード、或いは、部分スイッチングモードでのスイッチング周波数を数kHz以上として、交流全周期に亘ってスイッチング素子20a、20bのオン/オフ時間を制御する高周波スイッチングモード、のいずれかに制御する制御手段14とを備え(【0034】、【0036】-【0038】、【0080】、【0081】)、
制御手段14は、消費電力量が許容電力量の0?10%であるときに力率改善無しモードにて制御し、消費電力量が許容電力量の10?30%であるときには部分スイッチングモードにて制御し、消費電力量が許容電力量の30?50%であるときにはを高周波スイッチングモードにて制御する(【0071】)、
交流電源を直流に変換し負荷に供給する電力供給装置(【0001】)。」

b 引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0005】
また、空調機の圧縮機の場合、特に中間期において低出力域(低速回転域)で運転される頻度が高い。この低出力運転では、入力電流が減少するが、ダイオードの電圧降下は電流が減少しても一定値以下には下がらないため、効率が低くなるという問題があった。そのため、空調機の省エネ性が著しく損なわれるという問題があった。したがって、空調機の圧縮機を駆動するコンバータ装置の高効率化が強く望まれていた。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、同期整流を可能とし高効率な空調機のコンバータ装置を提供することである。」

c 引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【0021】
本実施形態においては、「メインスイッチング素子」に相当する、下アーム側のスイッチング素子34及び36は、スーパージャンクション構造を有するMOSFETである。」

d 引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【0032】
さらに、整流回路(2)およびインバータ回路(5)のMOS-FETの半導体素子には、SiC素子が用いられている。このSiC素子は、ワイドバンドギャップ半導体の一種であり、従来のSi素子よりも、高温・高電圧動作に優れ、低損失である。したがって、整流回路(2)およびインバータ回路(5)の双方における損失が著しく低減され、装置全体の運転効率の向上を確実に図ることができる。特に、インバータ回路(5)における二相結線動作時では、上述した二相結線動作による効果と併せて、損失がより一層低減される。また、MOS-FETやSiC素子は、IGBTやSi素子に比べて高価であるが、6つのうち4つのスイッチング素子(5a?5f)に用いるので、それ程コスト高にならない。なお、ワイドバンドギャップ半導体としては、SiCの他に、例えばGaN(窒化ガリウム)等のバンドギャップがSiよりも大きい素子であればよい。」

(イ)本件発明2について
a 対比
本件発明2と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
(a)引用発明の「ダイオード3b」、「ダイオード3d」、「ダイオード3a」、「ダイオード3c」は、それぞれ、本件発明2の「第1のダイオード」、「第2のダイオード」、「第3のダイオード」、「第4のダイオード」に相当する。
したがって、引用発明の「交流電源1に接続され、ダイオード3a、ダイオード3b、ダイオード3c及びダイオード3dを有する整流回路3」は、本件発明2の「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路」に相当する。

(b)引用発明の「ダイオード3aに並列接続されたスイッチング素子20a」は、ダイオードがオンする順バイアス方向には電圧が印加されず、ダイオードがオンしない逆バイアス方向に電圧が印加されるので、「スイッチング素子20a」が、並列接続された「ダイオード3a」がオフする方向に対して耐電圧特性を有していることは自明な事項である。
そうすると、引用発明の「スイッチング素子20a」は、本件発明2の「前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有」する「第1のスイッチング素子」に相当する。
但し、本件発明2は、「第1のスイッチング素子」が「第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い」のに対して、引用発明は、そのような特定がない。

(c)上記(b)と同様に、引用発明の「ダイオード3cに並列接続されたスイッチング素子20b」は、本件発明2の「前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有」する「第2のスイッチング素子」に相当する。
但し、本件発明2は、「第2のスイッチング素子」が「第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い」のに対して、引用発明は、そのような特定がない。

(d)引用発明の「交流電源1と整流回路3との間に設けられリアクトル2」は、本件発明2の「前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトル」に相当する。

(e)引用発明の「整流回路3の出力側に接続された平滑コンデンサ6」は、本件発明2の「前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサ」に相当する。

(f)引用発明の「スイッチング素子20a、20bを全く動作させない、整流回路3による力率改善無しモード」、「スイッチング素子20a、20bを電源半周期に1回から複数回オン/オフ動作させる部分スイッチングモード」、「部分スイッチングモードでのスイッチング周波数を数kHz以上として、交流全周期に亘ってスイッチング素子20a、20bのオン/オフ時間を制御する高周波スイッチングモード」は、それぞれ、本件発明2の「前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御」、「前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御」、「交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御」に相当する。
したがって、引用発明の「スイッチング素子20a、20bを全く動作させない、整流回路3による力率改善無しモード、或いは、スイッチング素子20a、20bを電源半周期に1回から複数回オン/オフ動作させる部分スイッチングモード、或いは、部分スイッチングモードでのスイッチング周波数を数kHz以上として、交流全周期に亘ってスイッチング素子20a、20bのオン/オフ時間を制御する高周波スイッチングモード、のいずれかに制御する制御手段14」は、本件発明2と「前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段」である点で共通する。
但し、本件発明2の制御手段は、さらに「前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御」「を選択的に実施するモードに切り替える」のに対して、引用発明は、そのような特定がない。

(g)引用発明の「制御手段14は、消費電力量が許容電力量の0?10%であるときに力率改善無しモードにて制御し、消費電力量が許容電力量の10?30%であるときには部分スイッチングモードにて制御し、消費電力量が許容電力量の30?50%であるときにはを高周波スイッチングモードにて制御する」は、本件発明2と「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、実施するモードとを切り替え」る点で共通する。
但し、本件発明2の制御手段は、「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」るのに対して、引用発明は、そのような特定がない。
さらに、本件発明2は、「前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える」のに対して、引用発明はそのような特定がない。

(h)引用発明の「交流電源を直流に変換し負荷に供給する電力供給装置」は、本件発明2の「直流電源装置」に相当する。

(i)したがって、本件発明2と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有する第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有する第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、実施するモードとを切り替える、
直流電源装置。」
(相違点1)
本件発明2は、「第1のスイッチング素子」及び「第2のスイッチング素子」が、「第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点2)
本件発明2の制御手段は、選択的に切り替え実施するモードとして、さらに「前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御」を備えるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点3)
本件発明2の制御手段は、「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」るのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点4)
本件発明2は、「前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。

b 判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。
引用文献2には、低出力運転では、入力電流が減少するが、ダイオードの電圧降下は電流が減少しても一定値以下には下がらないため、効率が低くなるという問題を解決するため、同期整流を可能とすることが記載されている(【0005】、【0006】)。
しかしながら、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、高速スイッチング制御のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段において、制御手段は、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、および、高速スイッチング制御からダイオード整流制御と高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えることは、引用文献2に記載されていない。
そうすると、上記相違点3に係る構成を得ることは、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易になし得たことではない。

したがって、本件発明2は、上記相違点1、2及び4について検討するまでもなく、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明できたものでない。

(ウ)本件発明3について
a 対比
本件発明2と引用発明との対比(上記「(ア) a」)を踏まえると、本件発明3と引用発明の相違点は、以下のとおりである。
(相違点5)
本件発明3は、「第1のスイッチング素子」及び「第2のスイッチング素子」が、「第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点6)
本件発明3の制御手段は、選択的に切り替え実施するモードとして、さらに「前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御」を備えるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点7)
本件発明3の制御手段は、「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記部分スイッチング制御とを除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」るのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点8)
本件発明3は、「前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。

b 判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、上記相違点7について検討する。
引用文献2には、低出力運転では、入力電流が減少するが、ダイオードの電圧降下は電流が減少しても一定値以下には下がらないため、効率が低くなるという問題を解決するため、同期整流を可能とすることが記載されている(【0005】、【0006】)。
しかしながら、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、高速スイッチング制御のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段において、制御手段は、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、および、高速スイッチング制御からダイオード整流制御と部分スイッチング制御とを除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えることは、引用文献2に記載されていない。
そうすると、上記相違点7に係る構成を得ることは、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易になし得たことではない。

したがって、本件発明3は、上記相違点5、6及び8について検討するまでもなく、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明できたものでない。

(エ)本件発明4について
a 対比
本件発明2と引用発明との対比(上記「(ア) a」)を踏まえると、本件発明4と引用発明の相違点は、以下のとおりである。
(相違点9)
本件発明4は、「第1のスイッチング素子」及び「第2のスイッチング素子」が、「第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点10)
本件発明4の制御手段は、選択的に切り替え実施するモードとして、さらに「前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御」を備えるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点11)
本件発明4の制御手段は、「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」るのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点12)
本件発明4は、「前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。

b 判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、上記相違点11について検討する。
引用文献2には、低出力運転では、入力電流が減少するが、ダイオードの電圧降下は電流が減少しても一定値以下には下がらないため、効率が低くなるという問題を解決するため、同期整流を可能とすることが記載されている(【0005】、【0006】)。
しかしながら、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、高速スイッチング制御のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段において、制御手段は、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、および、高速スイッチング制御からダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えることは、引用文献2に記載されていない。
そうすると、上記相違点11に係る構成を得ることは、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易になし得たことではない。

したがって、本件発明4は、上記相違点9、10及び12について検討するまでもなく、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明できたものでない。

(オ)本件発明10および12について
本件発明10及び12は、本件発明4を直接又は間接的に引用しているので、本件発明4をさらに限定する発明である。
そうすると、本件発明4と同様に、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明できたものでない。

(カ)本件発明10について
訂正事項11により、請求項11は、請求項2ないし6を引用しないことになったので、当該取消理由は解消した。

(キ)本件発明13について
a 本件発明2を引用する本件発明13
本件発明2と引用発明との対比(上記「(ア) a」)を踏まえると、本件発明13と引用発明は、少なくとも上記相違点1ないし4を有している。
事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。
引用文献2には、低出力運転では、入力電流が減少するが、ダイオードの電圧降下は電流が減少しても一定値以下には下がらないため、効率が低くなるという問題を解決するため、同期整流を可能とすることが記載されている(【0005】、【0006】)。
引用文献3には、電力変換装置に用いるスイッチング素子として、スーパージャンクションMOSFETを用いることが記載されている(【0021】)。
引用文献4には、電力変換装置に用いるスイッチング素子として、SiC-MOSFETまたはGaNを用いることが記載されている(【0032】)。
しかしながら、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、高速スイッチング制御のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段において、制御手段は、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、および、高速スイッチング制御からダイオード整流制御と高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えることは、引用文献2ないし4に記載されていない。
そうすると、上記相違点3に係る構成を得ることは、引用発明1及び引用文献2ないし4に記載された技術に基いて、当業者が容易になし得たことではない。

したがって、本件発明2を引用する本件発明13は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明1及び引用文献2ないし4に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明できたものでない。

b 本件発明3、4、10ないし12を引用する本件発明13
上記「a」で検討したのと同様に、本件発明3、4、10ないし12を引用する本件発明13は、引用発明1及び引用文献2ないし4に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明できたものでない。

(ク)本件発明14について
本件発明13で検討したのと同様に、本件発明14は、引用発明1及び引用文献2ないし4に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明できたものでない。

(ケ)まとめ
したがって、令和1年11月7日に通知した取消理由の理由2によっては、請求項2ないし4、10ないし14に係る特許を取り消すことはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人の主張
特許異議申立人井澤幹は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2ないし7号証を提出し、請求項1ないし14に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし14に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

<証拠方法>
甲第1号証:韓国公開特許第10-2007-0101476号公報
甲第2号証:特開2015-61322号公報
甲第3号証:特許第4935251号公報
甲第4号証:特許第5349636号公報
甲第5号証:特許第5743995号公報
甲第6号証:特許第4984751号公報
甲第7号証:特許第3695382号公報

2 引用文献の記載事項、引用発明
(1)甲第1号証の記載事項、甲1発明
甲第1号証には、次の事項が記載されている(記載事項の認定は、特許異議申立書の翻訳文に拠った。)。甲第1号証の原文は、特許異議申立書に添付した甲第1号証の写しを参照。
「<10> 最近の空気調和機は、その圧縮機の駆動電動機として三相電動機を使用する。前記三相電動機電源供給装置は、商用電源の交流を直流で変換した後、前記変換された直流をインバーターを用いて前記三相電動機に印加することで、前記三相電動機を駆動する。」

「<20> 図2に図示したように、前記従来技術による直流電源供給装置は、前記スイッチング半導体素子(Q1、Q2)を相互に半周期に1回駆動させることで、前記商用電源の交流電圧による前記平滑コンデンサへの入力電流の波形は、図示したように、入力電流はピーク値が大きくて、通電幅が狭いパルス形状の電流になる。
<21> しかしながら、前記従来技術による直流電源供給装置は、負荷変動を考慮せずに、前記アクティブフィルタ(111)を駆動するため、負荷が大きくなる場合、力率改善(PFC)規格を満足するのが難しい問題があった。また、前記従来技術による直流電源供給装置は、負荷が小さい場合、力率改善動作によって、スイッチング半導体素子が損失する問題点があった。
<22> また、前記従来技術による直流電源供給装置は、高調波除去及び力率改善のために、大容量のリアクトルを使用する必要があるため、材料費が増加するという問題点があった。
発明が解決しようとする課題
<23> 従って、前記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、検出された運転負荷の変化に応じた入力電流を制御することにより、スイッチング素子の損失を防止し、低容量のリアクトルを使用することができるようにすることで、製造コストを削減する目的を果たせるようにした直流電源供給装置及びその方法を提供することにある。
<24> また、本発明は、入力電流に基づいて、アクティブフィルタのスイッチング素子を駆動して、入力電流の波形を改善することにより、リアクトルから発生する騒音を減少させる別の目的を果たせるようにした直流電源供給装置を提供することにある。」

「<31> 図3に示すように、本発明の実施形態に係る直流電源供給装置は、電源電流の高調波を低減させ、電源電圧を整流し、そして平滑電圧を昇圧するアクティブフィルタ(310);モータの運転負荷を検出する運転負荷検出部(330);前記電源電圧のゼロ電圧交差点及び前記検出された運転負荷に基づいたPWM信号によってスイッチング手段を制御するスイッチング制御部(320);前記アクティブフィルタの出力電圧を直流電圧に平滑する平滑部(340);及び前記平滑された直流電圧を交流電圧に変換するインバーター(350)を含んで構成される。
<32> 前記アクティブフィルタ(310)は、前記電源電流の高調波を低減させ、前記平滑電圧を昇圧させるリアクトル(L);前記電源電圧を整流するダイオードブリッジ回路(311);及び前記スイッチング制御部(320)の信号によって直流リンク電流を調節するスイッチング手段(Q1、Q2)を含んで構成される。 」

「<37> 前記運転負荷検出部は(430)、前記平滑された直流電圧を検出する電圧検出部(431);及びモータの相電流を検出して運転負荷を検出する負荷検出部(432)を含んで構成される。
<38> 前記入力電流制御部(420)は、前記電源電圧のゼロ電圧交差時点を検出して、その検出された交差時点に基づいた同期信号を生成する同期信号生成部(421);前記運転負荷に対応されるPWMパターンを予め設定して格納するPWMパターン格納部(423);及び前記平滑電圧、前記運転負荷、前記同期信号及び前記PWMパターンに応じて、PWMdutyを可変にして、前記スイッチング手段(Q1、Q2)を制御するPWM制御部(424)を含んで構成される。 」

「<40> 前記スイッチング手段の制御過程(S530)は、前記電源電圧のゼロ電圧交差時点を検出し、その検出された交差時点に基づいた同期信号を生成する段階(S531);及び前記運転負荷及び前記同期信号に応じてPWM dutyを可変にして、スイッチング手段を制御する段階(S532)を含んでなる。
<41> 前記スイッチング手段の制御過程(S530)は、前記の運転負荷が既に設定された第1の負荷よりも小さい場合、前記スイッチング手段の制御を停止させる段階(S610、S611)。前記検出された負荷が所定の第2の負荷よりも大きい場合、所定の運転区間継続して前記スイッチング手段を制御する段階(S620、S621);及び前記検出された負荷が既に設定された第1の負荷以上であり、第2の負荷以下である場合、前記所定の運転区間の一部の間、前記スイッチング手段を制御する段階(S630)を含んでなる。」


図面3より、ダイオードブリッジ回路(311)は、第1ないし第4のダイオードを有することが見て取れる。

図面3より、ダイオードブリッジ回路(311)は、第1のダイオードと第3のダイオードが直列に接続し、第2のダイオードと第4のダイオードが直列に接続したものであり、第1のスイッチング手段(Q1)が第3のダイオードに並列接続され、第2のスイッチング手段(Q2)が第4のダイオードに並列接続されていることが見て取れる。

図面3より、リアクトル(L)が交流電源とダイオードブリッジ回路(311)の間に設けられていることが見て取れる。

上記記載より甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた甲第1号証の記載箇所を示す。)。
「電源電圧を整流するアクティブフィルタ(310)と、スイッチング手段を制御するスイッチング制御部(320)と、アクティブフィルタの出力電圧を直流電圧に平滑する平滑部(340)からなる直流電源供給装置であって(<31>)、
アクティブフィルター(310)はリアクトル(L)と、電源電圧を整流するダイオードブリッジ回路(311)と、スイッチング手段(Q1、Q2)を含んで構成され(<32>)、
ダイオードブリッジ回路(311)は、第1ないし第4のダイオードを有し、
第1のスイッチング手段(Q1)は第3のダイオードに並列接続され、
第2のスイッチング手段(Q2)は第4のダイオードに並列接続され、
リアクトル(L)は交流電源とダイオードブリッジ回路(311)の間に設けられており(図面3)、
スイッチング手段の制御過程(S530)は、
運転負荷が既に設定された第1の負荷より小さい場合、スイッチング手段の制御を停止させる段階(S610、S611)と、
検出された負荷が所定の第2の負荷より大きい場合、所定の運転区間継続してスイッチング手段を制御する段階(S620、S621)と、
検出された負荷が既に設定された第1の負荷以上であり、第2の負荷以下であるい場合、所定の運転区間の一部の間、スイッチング手段を制御する段階(S630)を含んでいる(<41>)、
直流電源供給装置。」

(2)甲第2号証の記載事項
「【請求項2】
前記メインスイッチング素子は、スーパージャンクション構造を有するMOSFETであることを特徴とする、請求項1に記載の電力変換装置。」

「【0006】
本発明の電力変換装置は、電力変換回路と、制御部と、を備えている。前記電力変換回路は、半導体スイッチング素子である、メインスイッチング素子及びサブスイッチング素子を備えている。前記メインスイッチング素子は、ダイオード部分を有している。前記サブスイッチング素子は、前記メインスイッチング素子と相補的にオンオフされることで、同期整流動作を実現するように設けられている。前記制御部は、前記メインスイッチング素子及び前記サブスイッチング素子のオンオフ動作を制御するように設けられている。
【0007】
本発明の特徴は、前記制御部が、入出力電力に対応する特性値が所定値を超える(あるいは前記所定値以上である)場合に前記メインスイッチング素子と前記サブスイッチング素子とを相補的にオンオフさせることで前記同期整流動作を実行させ、前記特性値が前記所定値以下(あるいは未満)である場合に前記メインスイッチング素子又は前記サブスイッチング素子をオフに保持することで前記同期整流動作を停止させるようになっていることにある。」

「【0021】
本実施形態においては、「メインスイッチング素子」に相当する、下アーム側のスイッチング素子34及び36は、スーパージャンクション構造を有するMOSFETである。これらスイッチング素子34及び36は、一対の直流出力端子30c,30d間の出力電圧である直流電圧が所望値となるようなオンデューティ比でPWM制御されるように設けられている。一方、「サブスイッチング素子」に相当する、上アーム側のスイッチング素子33及び35は、スーパージャンクション構造を有さない通常型(シリコン型あるいはシリコンカーバイド型)のMOSFETである。これらスイッチング素子33及び35は、スイッチング素子34及び36と相補的にオンオフされることで、電力変換回路13にて同期整流動作を実現可能に設けられている。」

「【0045】
このため、図3における「Q2」のタイムチャートに示されているように、オアゲート421における他方の入力端子に「0」が入力されると、かかるオアゲート421の出力、すなわち、スイッチング素子34(スイッチング部分Q2)のゲート信号は、一方の入力端子への入力である上述のPWM信号に対応したものとなる。これに対し、オアゲート421における他方の入力端子に「1」が入力されると、かかるオアゲート421の出力、すなわち、スイッチング素子34(スイッチング部分Q2)のゲート信号は、一方の入力端子への入力である上述のPWM信号にかかわらず、「1」に張り付いたものとなる。
【0046】
オアゲート422の出力及びスイッチング素子36(スイッチング部分Q4)のゲート信号についても、上述と同様であるが、オアゲート421の出力及びスイッチング素子34(スイッチング部分Q2)のゲート信号と半周期ずれたものとなる(図3における「Q4」のタイムチャート参照)。このようにして、下アーム側のスイッチング素子34とスイッチング素子36とが、上述の極性信号に応じて、交互にPWM駆動される。」

「【0050】
一方、同期整流停止信号すなわち「0」が入力された場合、アンドゲート426の出力は、ノットゲート424からの出力値によらず、「0」に保持される。よって、上アーム側のスイッチング素子33は、オフに保持される。すなわち、この場合、同期整流動作は停止する。」

「【0067】
一方、スイッチング素子33?36は、上述の実施形態と同様に、入力電圧Vac(交流入力電圧センサ47による検出値)の絶対値が所定値Vrefを超える場合には、スイッチング素子37,38と相補的にオンオフ動作するように制御される。このとき、スイッチング素子33(スイッチング部分Q1)及びスイッチング素子36(スイッチング部分Q4)と、スイッチング素子34(スイッチング部分Q2)及びスイッチング素子35(スイッチング部分Q3)とが、入力電圧Vacの極性に応じて択一的に駆動される。これに対し、入力電圧Vacの絶対値が所定値Vref以下である場合には、スイッチング素子33?36がオフに保持される。これにより、同期整流動作が停止される。」

上記記載事項より、甲第2号証には、
「入出力電力に対応する特性値が所定値を超える場合に前記メインスイッチング素子と前記サブスイッチング素子とを相補的にオンオフさせることで前記同期整流動作を実行させ、前記特性値が前記所定値以下である場合に前記メインスイッチング素子又は前記サブスイッチング素子をオフに保持することで前記同期整流動作を停止させる電力変換装置」が記載されている。

(3)甲第3号証の記載事項
「【0032】
さらに、整流回路(2)およびインバータ回路(5)のMOS-FETの半導体素子には、SiC素子が用いられている。このSiC素子は、ワイドバンドギャップ半導体の一種であり、従来のSi素子よりも、高温・高電圧動作に優れ、低損失である。したがって、整流回路(2)およびインバータ回路(5)の双方における損失が著しく低減され、装置全体の運転効率の向上を確実に図ることができる。特に、インバータ回路(5)における二相結線動作時では、上述した二相結線動作による効果と併せて、損失がより一層低減される。また、MOS-FETやSiC素子は、IGBTやSi素子に比べて高価であるが、6つのうち4つのスイッチング素子(5a?5f)に用いるので、それ程コスト高にならない。なお、ワイドバンドギャップ半導体としては、SiCの他に、例えばGaN(窒化ガリウム)等のバンドギャップがSiよりも大きい素子であればよい。
【0033】
本実施形態の電力変換装置(1)は、空調機の冷媒回路に設けられる圧縮機の電動機(11)を駆動するものである。空調機の冷媒回路は、図示しないが、圧縮機と凝縮器と膨張機構と蒸発器とが閉回路に接続され、冷媒が可逆に循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルを行うものである。空調機では、一般に、夏期や冬期のように冷暖房負荷が大きい場合、圧縮機が高速回転域(高出力領域)で運転され、いわゆる中間期のように負荷が小さい場合、圧縮機が低速回転域(低出力領域)で運転される。したがって、空調機に用いられる圧縮機の電動機(11)は、定格出力より低い出力で運転される頻度が高いといえる。
【0034】
上記制御回路(8)は、電動機(11)の回転速度に基づいてスイッチ(4)のオンオフ切換を行うように構成されている。具体的に、制御回路(8)は、電動機(11)の高速回転域ではスイッチ(4)をオフにし、低速回転域ではスイッチ(4)をオンする。これにより、電動機(11)の低速回転域(低出力領域)において、二相結線動作でインバータ駆動されるので、損失が低減され、運転効率が向上する。
【0035】
また、制御回路(8)は、商用電源(10)の電源電圧の極性に応じて同期整流するように、整流回路(2)のスイッチング素子(2a,2b)をスイッチングする。例えば、電源電圧の極性が正に切り換わると同時に、スイッチングレグ(leg4)の上アーム側のスイッチング素子(2a)をオンし、電源電圧の極性が負に切り換わると同時に、下アーム側のスイッチング素子(2b)をオンする。ここで、MOS-FETは、スイッチング速度がIGBT等よりも速いため、確実に同期整流の制御を行うことができる。したがって、整流回路(2)における損失低下、且つ、電力変換効率の向上を図ることができる。その結果、電動機(11)の運転効率を一層向上させることができる。」

「【0037】
制御回路(8)は、商用電源(10)の電源半周期の間に、整流回路(2)を一回または複数回短絡させ(以下、短絡制御という。)、それ以外の期間は上述した同期整流の制御を行うようにする。ここでは、電源極性が正の半周期における制御について説明する。」

上記記載事項より、甲第3号証には、
「電源電圧の極性に応じて同期整流する整流回路(2)。」及び「電源半周期の間に、整流回路(2)を一回または複数回短絡させ、それ以外の期間は同期整流の制御を行うようにする整流回路(2)。」が記載されている。

(4)甲第4号証の記載事項
「【0015】
実施の形態1.
(直流電源装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る直流電源装置の回路ブロック図である。
図1で示されるように、本実施の形態に係る直流電源装置は、少なくとも、交流電源1、後述する整流器21の一方の入力端と交流電源1との間に挿入されたリアクター2、MOSFET3及びMOSFET4並びにダイオード5及びダイオード6によって構成された整流器21、この整流器21の出力端間に接続された平滑コンデンサー7、MOSFET3及びMOSFET4のON/OFF動作をさせる制御手段11、平滑コンデンサー7の両端電圧を検出する直流電圧検出手段12、並びに、交流電源1の電源電圧を検出する電源電圧検出手段13を備えている。また、平滑コンデンサー7の両端には負荷8が接続されている。」

「【0016】
整流器21は、MOSFET3のソース側とMOSFET4のドレイン側とが接続されたMOSFET3とMOSFET4との直列回路と、ダイオード5のアノード側とダイオード6のカソード側とが接続されたダイオード5とダイオード6との直列回路とが並列に接続されて構成されている。このとき、MOSFET3とMOSFET4との接続点、及び、ダイオード5とダイオード6との接続点を整流器21の入力端とし、ダイオード5とダイオード6との直列回路の両端が整流器21の出力端となる。また、図1で示されるように、寄生ダイオード3a及び寄生ダイオード4aは、それぞれMOSFET3及びMOSFET4において構造的に形成される内蔵ダイオードである。また、一般的に、MOSFETはそのゲートに電荷が供給されると、単方向通流素子としてではなく、逆方向にも電流を流す性質がある。ここでいう逆方向とは、MOSFETの内部に形成される寄生ダイオードに電流が流れた場合の方向とする。交流電源1から供給される交流電圧は、この整流器21によって全波整流され直流電圧に変換される。」

「【0024】
また、図2(b)は、MOSFETのゲートとソースとの間に電圧が印加されONとなっている状態(以下、この状態を「ゲートオン状態」という)を示している。このゲートオン状態においては、MOSFETのオン抵抗による電圧低下が寄生ダイオードの順方向電圧より低い場合、電流は寄生ダイオードではなくトランジスター側に流れる。この場合、ダイオードの導通損失よりもMOSFETのオン抵抗による導通損失の方が小さくなる。このような、MOSFETに対する逆電圧印加によって電流を逆方向に導通させることによって導通損失を低減させる技術は一般的に同期整流と呼ばれる公知の技術である。
【0025】
図1で示される回路構成において、MOSFET3及びMOSFET4がゲートオフ状態であれば、整流器21は、MOSFET3の寄生ダイオード3a、及びMOSFET4の寄生ダイオード4aを介した全波整流回路となり、この場合、MOSFET3及びMOSFET4の代わりにダイオードを使用しても同動作が可能である。ここで、ダイオードとせず、MOSFET3及びMOSFET4を使用しているのは、前述の同期整流を適用し、MOSFET3及びMOSFET4における導通損失を低減するためである。このMOSFET3及びMOSFET4における同期整流の動作の詳細は後述する。」

「【0027】
図3(a)は、交流電源1の電源電圧Vsの波形を示し、図1で示される電源電圧Vsの矢印の方向を正極とする。また、図3(b)は、交流電源1を流れる入力電流Isの波形を示し、図1で示される入力電流Isの矢印の方向を正方向とする。このとき、制御手段11は、図3(b)で示される入力電流Isに同期させて、MOSFET3を図3(c)で示されるような駆動信号によってON/OFF動作させる。すなわち、制御手段11は、入力電流Isが正方向に流れ始めるタイミングでMOSFET3をゲートオン状態にさせ、入力電流Isが正方向に流れた後、入力電流Isが0となるタイミングでゲートオフ状態にさせる。また、制御手段11は、図3(b)で示される入力電流Isに同期させて、MOSFET4を図3(d)で示されるような駆動信号によってON/OFF動作させる。すなわち、制御手段11は、入力電流Isが逆方向に流れ始めるタイミングでMOSFET4をゲートオン状態にさせ、入力電流Isが逆方向に流れた後、入力電流Isが0となるタイミングでゲートオフ状態にさせる。これによって、MOSFET3及びMOSFET4を流れる電流は、寄生ダイオード3a及び寄生ダイオード4aではなく、それぞれ、トランジスター側を流れるので、MOSFET3及びMOSFET4における導通損失を低減できる。」

「【0053】
実施の形態2.
本実施の形態に係る直流電源装置について、実施の形態1に係る直流電源装置の動作と相違する点を中心に説明する。なお、本実施の形態に係る直流電源装置の回路構成は、図1で示される実施の形態1に係る直流電源装置の回路構成と同様である。
【0054】
(直流電源装置の同期整流動作)
図6は、本発明の実施の形態2に係る直流電源装置におけるMOSFETのON/OFF動作を示す図である。
図6(a)は、交流電源1の電源電圧Vsの波形を示し、図1で示される電源電圧Vsの矢印の方向を正極とする。また、図6(b)は、交流電源1を流れる入力電流Isの波形を示し、図1で示される入力電流Isの矢印の方向を正方向とする。このとき、制御手段11は、図6(b)で示される入力電流Isに同期させて、MOSFET3を図6(c)で示されるような駆動信号によってON/OFF動作させ、MOSFET4を図6(d)で示されるような駆動信号によってON/OFF動作させる。
【0055】
すなわち、まず、制御手段11は、電源電圧検出手段13によって検出される電源電圧Vsの極性が変化するタイミングを検出する。そして、制御手段11は、このタイミングにおいて、変化した極性において整流のためにゲートオン状態にさせるMOSFETとは異なる方のMOSFETをパルス状にゲートオン状態にさせる。このようにすることで、そのMOSFETがパルス状にゲートオン状態となっている間、交流電源1が短絡状態となり、短絡電流が強制的に流れる。このとき、制御手段11は、そのMOSFETがパルス状にゲートオン状態になっている間、他方のMOSFETはゲートオフ状態にしておく。これは、双方のMOSFETがゲートオン状態になっていると、平滑コンデンサー7が短絡状態となり破損する危険性があるからである。そして、制御手段11は、パルス状のゲートオン状態となっているMOSFETをゲートオフ状態にするのとほぼ同時に、他方のMOSFETをゲートオン状態にさせる。なお、制御手段11は、前述の理由により、双方のMOSFETがゲートオン状態となってしまう状態を回避するため、パルス状にゲートオン状態になっているMOSFETをゲートオフ状態としてから、双方のMOSFETがゲートオフ状態となっている状態(以下、「デッドオフ状態」という)の期間を経てから他方のMOSFETをゲートオン状態にさせる動作としてもよい。
【0056】
具体的には、制御手段11は、電源電圧検出手段13によって検出される電源電圧Vsが負極から正極に変化することを検出した場合、電源電圧Vsが正極側である場合に整流するためにゲートオン状態にさせるMOSFET3ではなく、MOSFET4をパルス状にゲートオン状態にさせる。これによって、MOSFET4がパルス状にゲートオン状態となっている間、交流電源1が短絡状態となり、交流電源1、リアクター2、MOSFET4、ダイオード6、そして交流電源1の順で短絡電流が流れる。そして、制御手段11は、MOSFET4をゲートオフ状態にさせるのとほぼ同時に、MOSFET3をゲートオン状態にさせる。なお、前述のように、MOSFET3をゲートオン状態にさせる前に、デッドオフ状態を設けてもよい。その後、短絡電流と同方向の入力電流Isが流れ続け、制御手段11は、この入力電流Isが0となるタイミングでMOSFET3をゲートオフ状態にさせる。」

上記記載事項より、甲第4号証には、
「MOSFET3のソース側とMOSFET4のドレイン側とが接続されたMOSFET3とMOSFET4との直列回路と、ダイオード5のアノード側とダイオード6のカソード側とが接続されたダイオード5とダイオード6との直列回路とが並列に接続されて構成されている整流器21において、入力電流Isに同期させて、MOSFET3及び4をON/OFF動作させる技術。」及び「MOSFET3のソース側とMOSFET4のドレイン側とが接続されたMOSFET3とMOSFET4との直列回路と、ダイオード5のアノード側とダイオード6のカソード側とが接続されたダイオード5とダイオード6との直列回路とが並列に接続されて構成されている整流器21において、電源電圧Vsが負極から正極に変化することを検出した場合、MOSFET4をパルス状にゲートオン状態にさせ、交流電源1を短絡状態にし、MOSFET4をゲートオフ状態にさせるのとほぼ同時に、MOSFET3をゲートオン状態にさせる技術。」

(5)甲第5号証の記載事項
「【0013】
整流回路50は、交流電源1から出力された交流電圧を直流電圧に変換する。整流回路50を形成している半導体スイッチ3および4は、例えばMOSFETである。これらの半導体スイッチ3および4と各々並列にダイオードを挿入した構成としてもよい。また、ダイオード5および6は周知の整流器である。半導体スイッチ3および4にMOSFETを用いた場合、素子内部に寄生ダイオードが存在するため、スイッチオフ状態では、半導体スイッチ3および4はダイオードとなり、これらの素子とダイオード5および6とをあわせた4素子でブリッジ整流器の構成となる。」

「【0021】
ここで、本実施の形態の半導体スイッチ3および4として用いることが可能なMOSFETの基本動作について説明する。一般的に、MOSFETはそのゲートに電荷が供給されると、単方向通流素子としてではなく、逆方向にも電流を流す性質がある。ここでいう逆方向とは、MOSFETの内部に形成される寄生ダイオードまたは寄生ダイオードと同一方向に並列に外付けしたダイオードがオンする電流の方向とする。以下、図2を用いて説明する。」

「【0025】
詳細については後述するが、本実施の形態の直流電源装置は、上記の同期整流を実施して交流電圧を直流電圧に変換する動作(第1の整流動作とする)と、同期整流を実施せずに、半導体スイッチ(MOSFET)3および4を常時オフ(ゲートオフ状態)とし、整流回路50をブリッジ整流器として使用して交流電圧を直流電圧に変換する動作(第2の整流動作とする)とを適宜切り替えることにより、半導体スイッチ3および4における損失を最小限に抑えて高効率化を実現する。
【0026】
ここでまず、本実施の形態の直流電源装置における第1の整流動作である同期整流動作について説明する。上述したように、本実施の形態の直流電源装置は、半導体スイッチ3および4を動作させる制御部13を備えている。制御部13は、電流検出素子10および電流検出部12を介して得られた電流検出値等に基づいて、各半導体スイッチをオンオフ制御する。この直流電源装置は、ハーフブリッジと呼ばれる公知の回路に、制御部13と、電流検出素子9および10と、電流検出部11および12と、電圧検出部14と、駆動部15とを付加した構成となっている。図1の回路構成で半導体スイッチ3および4が共にオフであれば、半導体スイッチ3および4の寄生ダイオードを介した全波整流回路となる(上記第2の整流動作を行う)。半導体スイッチ3および4をダイオードに置き換えた場合も同様に、全波整流動作が可能である。本実施の形態の直流電源装置において、ダイオードとせずに半導体スイッチ3および4を備えた構成としているのは、前述の同期整流を適用可能としてダイオードでの導通損失を低減するためである。
【0027】
図3は、MOSFETを利用して構成されている半導体スイッチ3および4のオン/オフ制御タイミングを示す図である。
【0028】
図3(a)は、交流電源1の電源電圧Vsの波形を示し、図1で示される電源電圧Vsの矢印の方向を正極とする。また、図3(b)は、交流電源1から整流回路50へ流れ込む電流Is(以下、電源電流Isとする)の波形を示し、図1で示される電源電流Isの矢印の方向を正方向とする。制御部13は、図3(b)で示される電源電流Is、すなわち、電流検出素子10および電流検出部12を介して得られた電流検出値に同期させて、半導体スイッチ3を図3(c)で示されるような駆動信号によってオン/オフさせる。より詳細には、制御部13は、電源電流Isが正方向に流れ始めるタイミングで半導体スイッチ3をオンさせ(ゲートオン状態にさせ)、その後、電源電流Isが0となるタイミングで半導体スイッチ3をオフさせる(ゲートオフ状態にさせる)。また、制御部13は、図3(b)で示される電源電流Isに同期させて、半導体スイッチ4を図3(d)で示されるような駆動信号によってオン/オフさせる。より詳細には、制御部13は、電源電流Isが逆方向に流れ始めるタイミングで半導体スイッチ4をオンさせ、その後、電源電流Isが0となるタイミングでオフさせる。これにより、半導体スイッチ3および4を流れる電流は、内部に形成されている寄生ダイオードではなく、それぞれ、トランジスタ側を流れるので、ダイオードの順方向電圧ではなくトランジスタでの電圧降下による損失となり、半導体スイッチ3および4における導通損失を低減できる。」

「【0031】
つづいて、本実施の形態の直流電源装置の動作を説明する。図4は、MOSFETの電流-導通損特性の一例を示す図である。図4は、半導体スイッチ3および4を構成しているMOSFETのゲートオン状態における電流-導通損特性の例(実線)と、ゲートオフ状態(すなわちMOSFETの寄生ダイオード)における電流-導通損特性の例(破線)とを表している。なお、寄生ダイオードと導通方向が同じになるように並列にダイオードを外付けした構成の場合、これら素子の分流等を考慮して定まる電流-導通損特性が破線で示されたものとなる。図4の特性の場合、電流がA点以下の領域では同期整流を行った方が導通損を小さくでき、A点を超えた領域では、全波整流を行った方が導通損を小さくできる。そのため、本実施の形態の直流電源装置は、電流がA点未満の領域では同期整流(第1の整流動作)を選択する。一方、電流がA点を超えている領域では、半導体スイッチ3および4の寄生ダイオードを使用して行う全波整流(第2の整流動作)を選択する。」

「【0041】
また、図12に示した回路にも応用が可能である。図12に示した回路は、図11の回路に対し、リアクタ2と電流検出素子10の整流回路50側の端子を短絡させることが可能なように半導体スイッチ22および整流ブリッジ回路23を追加し、電源半周期に少なくとも1回短絡させる制御を制御部13bおよび駆動部15bが行い(図13参照)、リアクタ2へのエネルギー授受も行うことで力率を改善できるとともに昇圧も可能な回路である。図13の(e)が半導体スイッチ22の制御信号である図12の駆動信号spに対応している。図12の回路では、短絡動作時(図13(e)参照)は、半導体スイッチ3および4、ダイオード5および6には電流が流れないため、同期整流効果が得られない。よって、同期整流動作は短絡動作を行う以外のタイミングで実施する。なお、図1や図9、図10の回路に対して半導体スイッチ22および整流ブリッジ回路23を追加するようにしてもよい。」

上記記載事項より、甲第5号証には、
「同期整流を実施して交流電圧を直流電圧に変換する動作と、同期整流を実施せずに、半導体スイッチ3および4を常時オフとし、整流回路50をブリッジ整流器として使用して交流電圧を直流電圧に変換する動作とを適宜切り替える直流電源装置。」が記載されている。

(6)甲第6号証の記載事項
「【0002】
従来より、商用電源に接続されて交流電圧を整流するコンバータ装置がある。例えば、特許文献1のコンバータ装置は、4つのダイオードからなるダイオードブリッジを備えて交流電圧を全波整流する。そして、整流した電圧をインバータ装置を通じて空調機の圧縮機へ供給して該圧縮機を駆動する。」

「【0004】
一方、近年では、上記ダイオードブリッジの各ダイオードに対して、高速スイッチングが可能なIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のスイッチング素子を逆並列に接続したものが主流になっている。ところが、この場合、IGBTは、順電圧に対してはスイッチングできるが、逆電圧に対してはスイッチングができないため、やはり同期整流ができない。
【0005】
また、空調機の圧縮機の場合、特に中間期において低出力域(低速回転域)で運転される頻度が高い。この低出力運転では、入力電流が減少するが、ダイオードの電圧降下は電流が減少しても一定値以下には下がらないため、効率が低くなるという問題があった。そのため、空調機の省エネ性が著しく損なわれるという問題があった。したがって、空調機の圧縮機を駆動するコンバータ装置の高効率化が強く望まれていた。」

「【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、同期整流を可能とし高効率な空調機のコンバータ装置を提供することである。」

「【0008】
上記の発明では、例えば、図1に示すように、ダイオードブリッジ回路(2a)において交流電源の入力点に対する上アームおよび下アームの各ダイオード(D1,D2)にスイッチング素子(T1,T2)が並列接続される。そして、スイッチング素子(T1,T2)は、並列接続されたダイオード(D1,D2)の順方向電圧降下よりも飽和電圧が低く且つ双方向にオンオフ可能である。これにより、スイッチング素子(T1,T2)に逆電圧が作用するタイミングで、即ちダイオード(D1,D2)がオンするタイミングで該スイッチング素子(T1,T2)をオンすることで整流損失が削減され、確実に同期整流が行われる。したがって、コンバータ装置の高効率化が図れる。その結果、空調機としての省エネ化が図れる」

「【0023】
上記コンバータ回路(2)は、交流電源である商用電源(5)に接続され、交流電圧を整流する。このコンバータ回路(2)は、ブリッジ回路(2a)を備えると共に、リアクトル(L)およびコンデンサ(C)を各1つ備えている。
【0024】
上記ブリッジ回路(2a)は、交流電源である商用電源(5)に接続され、4つのダイオード(D1?D4)がブリッジ結線されている。つまり、このブリッジ回路(2a)は、本発明に係るダイオードブリッジ回路を構成している。リアクトル(L)は、商用電源(5)の一方の電極とブリッジ回路(2a)との間に接続されている。コンデンサ(C)は、ブリッジ回路(2a)の出力側に設けられ、ブリッジ回路(2a)の出力電圧を充放電する。
【0025】
上記ブリッジ回路(2a)において、リアクトル(L)が接続される側の商用電源(5)の入力点に対する上アームおよび下アームの各ダイオード(D1,D2)には、スイッチング素子(T1,T2)が並列接続されている。このスイッチング素子(T1,T2)は、MOS-FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成されている。このMOS-FETは、IGBTと異なり双方向にオンオフ可能(スイッチング可能)で、且つ、飽和電圧がダイオード(D1,D2)の順方向電圧降下より低い。さらに、このMOS-FETの半導体素子には、ワイドバンドギャップ半導体であるSiC(炭化珪素)が用いられている。このSiC素子は、従来のSi素子に比べ、耐圧性(耐電圧性)および耐熱性が高く、低損失である。つまり、本実施形態のスイッチング素子(T1,T2)は、ダイオード(D1,D2)がオフする方向に対して耐圧性(耐電圧性)が高い。なお、ワイドバンドギャップ半導体としては、SiCの他に、例えばGaN(窒化ガリウム)等のバンドギャップがSiよりも大きい素子であればよい。」

「【0027】
上記制御回路(4)は、ブリッジ回路(2a)のスイッチング制御を行う。具体的に、制御回路(4)は、スイッチング素子(T1,T2)に逆電圧が印可されるタイミングで該スイッチング素子(T1,T2)をオンし、同期整流させる。つまり、スイッチング素子(T1,T2)と並列に接続されたダイオード(D1,D2)がオンするタイミングで該スイッチング素子(T1,T2)がオンされる。これは、スイッチング素子(T1,T2)の飽和電圧がダイオード(D1,D2)の順方向電圧降下より低いため、ダイオード(D1,D2)と同じタイミングでスイッチング素子(T1,T2)をオンできる。なお、スイッチング素子(T1,T2)において、ドレイン側からソース側へ印可される電圧を順電圧(順方向電圧)、ソース側からドレイン側へ印可される電圧を逆電圧(逆方向電圧)とする。
【0028】
これにより、電流がスイッチング素子(T1,T2)を流れるので、ダイオード(D1,D2)を流れる場合よりも損失が低減される。つまり、同期整流により、電力変換効率が向上する。その結果、コンバータ回路(2)の高効率化を図ることができる。そして、コンバータ回路(2)の高効率化を図れるので、空調機の低速運転時の運転効率を向上させることができ、省エネ化を図ることができる。
【0029】
さらに、上記制御回路(4)は、図2に示すような制御を行う。
【0030】
先ず、商用電源(5)の前半の半周期(交流電圧が正の範囲)における制御を説明する。商用電源(5)の入力電圧(Vi)がブリッジ回路(2a)の出力電圧(Vo)より低い期間において、一定時間スイッチング素子(T2)をオンする。これにより、商用電源(5)の入力電圧(Vi)が短絡し、電源力率を向上させることができる。そして、一定時間経過後、スイッチング素子(T2)をオフすると同時に、スイッチング素子(T1)をオンする。その場合、スイッチング素子(T2)をオフすると同時に、スイッチング素子(T1)にリアクトル電流(IL)による逆電圧が作用する。そして、スイッチング素子(T1)は、リアクトル電流(IL)がゼロ、即ちスイッチング素子(T1)の両端がゼロ電圧になるまでオンされる。したがって、この制御では、同期整流による高効率化に加え、力率改善を行うことができる。
【0031】
次に、商用電源(5)の後半の半周期(交流電圧が負の範囲)における制御を説明する。この場合、入力電圧(Vi)が出力電圧(Vo)より高い期間において、一定時間スイッチング素子(T1)をオンする。そして、一定時間経過後、スイッチング素子(T1)をオフすると同時にスイッチング素子(T2)をオンし、そのスイッチング素子(T2)の両端がゼロ電圧になるまでオンされる。
【0032】
また、本実施形態では、ブリッジ回路(2a)における全て(4つ)のダイオード(D1?D4)に対してスイッチング素子を設けるようにしてもよい。この場合、コンバータ回路(2)の一層の高効率化を図ることができ、空調機の省エネ化を一層図ることができる。なお、本発明は、ブリッジ回路(2a)における少なくとも1つのダイオード(D1?D4)にスイッチング素子を設けることにより、同期整流が可能となり電源変換効率が向上する。
【0033】
また、本実施形態では、スイッチング素子(T1,T2)が接続されたダイオード(D1,D2)をスイッチング素子(T1,T2)の寄生ダイオードで構成するようにしてもよい。その場合、ダイオードを別途設ける必要がないため、低コスト化を図ることができる。
【0034】
-実施形態1の効果-
この実施形態1によれば、SiC素子を用いたMOS-FETのスイッチング素子(T1,T2)を2つのダイオード(D1,D2)のそれぞれに並列接続するようにした。スイッチング素子(T1,T2)において、逆電圧が印可されるタイミングでオンでき、電流を流すことができる。これにより、コンバータ回路(2)の効率を向上させることができる。したがって、空調機の省エネ化を図ることができる。
【0035】
また、商用電源(5)の半周期において、その商用電源(5)の入力電圧(Vi)を短絡させるようにスイッチング素子(T1,T2)をオンオフ制御すれば、力率改善を図ることができる。したがって、同期整流による高効率化と力率改善の双方を図ることができる。」

上記記載事項より、甲第6号証には、
「低出力運転では、入力電流が減少するが、ダイオードの電圧降下は電流が減少しても一定値以下には下がらないため、効率が低くなるという問題を解決するため、同期整流を可能とする技術。」が記載されている。

(7)甲第7号証の記載事項
甲第7号証の記載事項は、上記「第4 1 (2)イ (ア)a」に、引用文献1の記載事項として示したとおりである。

3 当審の判断
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明を対比すると、次のことがいえる。
(ア)甲1発明の「第1ないし第4のダイオードを有し」「電源電圧を整流するダイオードブリッジ回路(311)」は、本件発明2の「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路」に相当する。

(イ)甲1発明の「第3のダイオードに並列接続され」た「第1のスイッチング手段(Q1)」は、ダイオードがオンする順バイアス方向には電圧が印加されず、ダイオードがオンしない逆バイアス方向に電圧が印加されるので、「第1のスイッチング手段(Q1)」が、並列接続された「第3のダイオード」がオフする方向に対して耐電圧特性を有していることは自明な事項である。
そうすると、甲1発明の「第1のスイッチング手段(Q1)」は、本件発明2の「前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有」する「第1のスイッチング素子」に相当する。
但し、本件発明2は、「第1のスイッチング素子」が「第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い」のに対して、甲1発明は、そのような特定がない。

(ウ)上記(b)と同様に、甲1発明の「第4のダイオードに並列接続され」た「第2のスイッチング手段(Q2)」は、本件発明2の「前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有」する「第2のスイッチング素子」に相当する。
但し、本件発明2は、「第2のスイッチング素子」が「第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い」のに対して、甲1発明は、そのような特定がない。

(エ)甲1発明の「交流電源とダイオードブリッジ回路(311)の間に設けられ」た「リアクトル(L)」は、本件発明2の「前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトル」に相当する。

(オ)甲1発明の「電源電圧を整流するアクティブフィルタ(310)」「の出力電圧を直流電圧に平滑する平滑部(340)」は、本件発明2の「前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサ」に相当する。

(カ)甲1発明の「スイッチング手段の制御を停止させる段階(S610、S611)」は、本件発明2の「前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御」に相当する。
そして、図面9におけるQ1及びQ2のスイッチング期間より、甲1発明の「所定の運転区間」は、交流電源の半周期間のうち一部区間であることが見て取れるので、甲1発明の「所定の運転区間継続してスイッチング手段を制御する段階(S620、S621)」及び「所定の運転区間の一部の間、スイッチング手段を制御する段階(S630)」はともに、本件発明2の「前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御」に相当する。
したがって、甲1発明の「スイッチング手段の制御過程(S530)」が、「スイッチング手段の制御を停止させる段階(S610、S611)と、」「所定の運転区間継続してスイッチング手段を制御する段階(S620、S621)と、」「所定の運転区間の一部の間、スイッチング手段を制御する段階(S630)を含んでいる」「スイッチング制御部(320)」は、本件発明2と「前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、または、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段」である点で共通する。
但し、本件発明2の制御手段は、さらに「前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御」または「交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御」「を選択的に実施するモードに切り替える」のに対して、甲1発明は、そのような特定がない。

(キ)甲1発明の「スイッチング手段の制御過程(S530)は、運転負荷が既に設定された第1の負荷より小さい場合、スイッチング手段の制御を停止させる段階(S610、S611)と、検出された負荷が所定の第2の負荷より大きい場合、所定の運転区間継続してスイッチング手段を制御する段階(S620、S621)と、検出された負荷が既に設定された第1の負荷以上であり、第2の負荷以下であるい場合、所定の運転区間の一部の間、スイッチング手段を制御する段階(S630)を含んでい」ることは、本件発明2と「前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、実施するモードとを切り替え」る点で共通する。
但し、本件発明2の制御手段は、「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」るのに対して、甲1発明は、そのような特定がない。
さらに、本件発明2は、「前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える」のに対して、甲1発明はそのような特定がない。

(ク)甲1発明の「直流電源供給装置」は、本件発明2の「直流電源装置」に相当する。

(ケ)したがって、本件発明2と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有する第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有する第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、または、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、実施するモードとを切り替える、
直流電源装置。」
(相違点1)
本件発明2は、「第1のスイッチング素子」及び「第2のスイッチング素子」が、「第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い」のに対して、甲1発明は、そのような特定がない点。
(相違点2)
本件発明2の制御手段は、選択的に切り替え実施するモードとして、さらに「前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御」または「交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御」を備えるのに対して、甲1発明は、そのような特定がない点。
(相違点3)
本件発明2の制御手段は、「前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え」るのに対して、甲1発明は、そのような特定がない点。
(相違点4)
本件発明2は、「前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点。

イ 判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。
甲第2号証ないし甲第7号証には、いずれも、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、高速スイッチング制御のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段において、制御手段は、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、および、高速スイッチング制御からダイオード整流制御と高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードを切り替えることは記載されていない。
そうすると、上記相違点3に係る構成を得ることは、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術(上記「2 (2)」ないし「2 (7)」参照)に基いて、当業者が容易になし得たことではない。

したがって、本件発明2は、上記相違点1、2及び4について検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明できたものでない。

(2)本件発明3ないし本件発明14について
本件発明2と甲1発明の対比を踏まえると(上記「(1)ア」)、本件発明3ないし本件発明14は、少なくとも、制御手段は、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、および、高速スイッチング制御から、予め決められた閾値情報に基づいて、実施するモードを切り替えることで、甲1発明と相違する。
そして、甲第2号証にないし甲第7号証には、いずれも、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、高速スイッチング制御のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段であって、制御手段は、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、および、高速スイッチング制御から、予め決められた閾値情報に基づいて、実施するモードを切り替えることは記載されていない。

したがって、本件発明3ないし14は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明できたものでない。

(3)小活
以上のとおりであるから、特許異議申立人井澤幹の主張する特許異議申立て理由によっては、請求項2ないし14に係る特許を取り消すことはできない。

(4)意見書における特許異議申立人の主張について
令和2年2月19日の特許異議申立人井澤幹の意見書における主張
特許異議申立人井澤幹は意見書において、甲第8号証ないし甲第13号証を新たに提出し,請求項2ないし16に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項2ないし16に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

甲第8号証:特許第3747345号公報
甲第9号証:特許第3753823号公報
甲第10号証:特許第4784207号公報
甲第11号証:特開2012-70490号公報
甲第12号証:国際公開第2008/90917号
甲第13号証:特開平1-259758号公報

しかしながら、甲第8号証ないし甲第13号証には、いずれも、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、高速スイッチング制御のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段であって、制御手段は、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、および、高速スイッチング制御から、予め決められた閾値情報に基づいて、実施するモードを切り替えることは記載されていない。
そうすると、上記(1)、(2)で検討したように、本件発明2ないし15は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第13号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明できたものでない。

よって、意見書における特許異議申立人井澤幹の主張を採用することができない。

第6 むすび
本件発明2-15に係る特許については、特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明2-15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件発明1に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人角田朗及び井澤幹による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
直流電源装置および空気調和機
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧を直流電圧に変換する直流電源装置および、この直流電源装置を用いた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
電車、自動車、空気調和機などには、交流電圧を直流電圧に変換する直流電源装置が搭載されている。そして、直流電源装置から出力される直流電圧をインバータによって所定周波数の交流電圧に変換し、この交流電圧をモータなどの負荷に印加するようになっている。このような直流電源装置は、電力変換効率を高めて省エネルギ化を図ることが求められている。
そこで、特許文献1のように交流電源を直流電源に変換する直流電源装置において、回路にMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)を備えた同期整流回路が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2008-61412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直流電源装置には省エネルギ化の他に、電子機器や配電・受電設備の保護といった観点から高調波電流の低減が求められており、そのためには電源力率の改善が必要である。一般的に1次電源側を短絡させて、回路に短絡電流を通流することで力率を改善することが行われる。短絡回数が1回であると負荷が大きい領域では力率の改善には不十分であり、短絡回数を複数増やすことで力率を更に改善することが可能であるが、スイッチング損失は悪化してしまう。また、高出力領域ほど力率は悪化し、高調波電流の許容値に対して厳しくなるため、低出力領域以上に力率の改善が必要である。
しかし、前述したように短絡回数を増やすことでスイッチング損失の悪化に繋がるため、省エネルギ化と高調波電流の抑制を両立させるための最適な制御が求められる。
そこで、本発明は、高効率かつ高調波電流の抑制を両立可能な直流電源装置を提供し、この直流電源装置を用いた空気調和機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決するため、本発明の直流電源装置は、交流電源に接続され、第1?第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードに並列接続され、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1?第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードに並列接続され、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1?第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1?第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高効率かつ高調波電流の抑制を両立可能な直流電源装置および、この直流電源装置を用いた空気調和機を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態における直流電源装置を示す概略の構成図である。
【図2】交流電源電圧が正の極性の場合において、ダイオード整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
【図3】交流電源電圧が負の極性の場合において、ダイオード整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
【図4】交流電源電圧が正の極性の場合において、同期整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
【図5】交流電源電圧が負の極性の場合において、同期整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
【図6】同期整流時における、電源電圧と回路電流とMOSFETの駆動パルスの波形図である。
【図7】交流電源電圧が正の極性の場合において、力率改善動作を行った場合に回路に流れる電流経路を示した図である。
【図8】交流電源電圧が負の極性の場合において、力率改善動作を行った場合に回路に流れる電流経路を示した図である。
【図9】部分スイッチング(2ショット)を行った場合において、電源電圧と回路電流とMOSFETの駆動パルスの波形図である。
【図10】高速スイッチングを行った場合において、電源電圧と回路電流とMOSFETの駆動パルスの波形図である。
【図11】高速スイッチングを行った場合において、MOSFETのデューティの関係を示した図である。
【図12】高速スイッチングを行い、デッドタイムを考慮した場合のMOSFETのデューティの関係を示した図である。
【図13】高速スイッチングを行った場合において、交流電源電圧と回路電流の関係を示した図である。
【図14】交流電源電圧が正極性の場合に、リアクトルによる電流位相の遅れ分を考慮した場合のMOSFETのデューティを示した図である。
【図15】部分スイッチングの概要を説明した図である。
【図16】負荷の大きさに応じた直流電源装置の動作モードの切り替えを説明した図である。
【図17】部分スイッチングから高速スイッチングへ切り替える場合の電流波形を説明した図である。
【図18】本実施形態における空気調和機の室内機、室外機、およびリモコンの正面図である。
【図19】負荷の大きさに応じて直流電源装置の動作モードと空気調和機の運転領域を切り替える様子を説明した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る直流電源装置1の構成図である。
図1に示すように、直流電源装置1は、交流電源VSから供給される交流電源電圧Vsを直流電圧Vdに変換し、この直流電圧Vdを負荷H(インバータ、モータなど)に出力するコンバータである。直流電源装置1は、その入力側が交流電源VSに接続され、出力側が負荷Hに接続されている。
【0009】
直流電源装置1は、リアクトルL1と、平滑コンデンサC1と、ダイオードD1,D2,D3,D4、スイッチング素子であるMOSFET(Q1,Q2)およびシャント抵抗R1を備えている。ダイオードD1,D2,D3,D4と、MOSFET(Q1,Q2)とは、ブリッジ整流回路10を構成する。
なお、MOSFET(Q1,Q2)はスイッチング素子であり、ダイオードD3はMOSFET(Q1)の寄生ダイオードであり、ダイオードD4はMOSFET(Q2)の寄生ダイオードである。また、MOSFET(Q1)とMOSFET(Q2)の飽和電圧は、ダイオードD1、D2と寄生ダイオードD3、D4の順方向電圧降下よりも低い。
【0010】
この直流電源装置1は更に、電流検出部11と、ゲイン制御部12と、交流電圧検出部13と、ゼロクロス判定部14と、負荷検出部15と、昇圧比制御部16と、直流電圧検出部17と、コンバータ制御部18とを備えている。
【0011】
ダイオードD1,D2とMOSFET(Q1,Q2)は、ブリッジ接続されている。ダイオードD1のアノードは、ダイオードD2のカソードに接続され、その接続点N1は配線hbを介して交流電源VSの一端に接続されている。
【0012】
MOSFET(Q1)のソースは、MOSFET(Q2)のドレインに接続されている。MOSFET(Q1)のソースは、接続点N2と配線haとリアクトルL1を介して交流電源VSの一端に接続されている。
ダイオードD2のアノードは、MOSFET(Q2)のソースに接続されている。
MOSFET(Q1)のドレインは、ダイオードD1のカソードに接続されている。
【0013】
また、ダイオードD1のカソードとMOSFET(Q1)のドレインは、配線hcを介して平滑コンデンサC1の正極と負荷Hの一端に接続されている。更にダイオードD2とMOSFET(Q2)のソースはシャント抵抗R1と配線hdを介して、それぞれ平滑コンデンサC1の負極および負荷Hの他端に接続されている。
【0014】
リアクトルL1は、配線ha上に、つまり交流電源VSとブリッジ整流回路10との間に設けられている。このリアクトルL1は、交流電源VSから供給される電力をエネルギとして蓄え、更にこのエネルギを放出することで昇圧を行う。
【0015】
平滑コンデンサC1は、ダイオードD1やMOSFET(Q1)を通して整流された電圧を平滑化して、直流電圧Vdとする。この平滑コンデンサC1は、ブリッジ整流回路10の出力側に接続されており、正極側が配線hcに接続され、負極側が配線hdに接続される。
【0016】
スイッチング素子であるMOSFET(Q1,Q2)は、後記するコンバータ制御部18からの指令によってオン/オフ制御される。スイッチング素子としてMOSFET(Q1,Q2)を用いることで、スイッチングを高速で行うことができ、更に電圧ドロップの小さいMOSFETに電流を流すことで、いわゆる同期整流制御を行うことが可能であり、回路の導通損失を低減できる。
【0017】
このMOSFET(Q1,Q2)として、オン抵抗の小さいスーパージャンクションMOSFETを用いることで、導通損失を更に低減することが可能である。ここで、MOSFETの寄生ダイオードには、回路短絡動作時に逆回復電流が発生する。特にスーパージャンクションMOSFETの寄生ダイオードは、通常のMOSFETの寄生ダイオードに対して逆回復電流が大きく、スイッチング損失が大きいという課題がある。そこで、MOSFET(Q1,Q2)として、逆回復時間(trr:Reverse Recovery Time)が小さいMOSFETを使用することで、スイッチング損失を低減することができる。
【0018】
ダイオードD1,D2はアクティブ動作時においても逆回復電流が発生しないため、その順方向電圧小さいものを選定することが好ましい。例えば、一般的な整流ダイオードや交耐圧のショットキーバリアダイオードを使用することで、回路の導通損失を低減することが可能である。
シャント抵抗R1は、回路に通流する瞬時電流を検出する機能を有している。
電流検出部11は、回路に通流する平均電流を検出する機能を有している。
【0019】
ゲイン制御部12は、回路電流実効値Isと直流電圧昇圧比aから決定される電流制御ゲインKpを制御する機能を有している。このときKp×Isを所定値に制御することで、交流電源電圧Vsから直流電圧Vdをa倍に昇圧することができる。
【0020】
交流電圧検出部13は、交流電源VSから印加される交流電源電圧Vsを検出するものであり、配線ha,hbに接続されている。交流電圧検出部13は、その検出値をゼロクロス判定部14に出力する。
【0021】
ゼロクロス判定部14は、交流電圧検出部13によって検出される交流電源電圧Vsの値に関して、その正負が切り替わったか、つまり、ゼロクロス点に達したか否かを判定する機能を有している。ゼロクロス判定部14は、交流電源電圧Vsの極性を検出する極性検出部である。例えば、ゼロクロス判定部14は、交流電源電圧Vsが正の期間中にはコンバータ制御部18に‘1’の信号を出力し、交流電源電圧Vsが負の期間中にはコンバータ制御部18に‘0’の信号を出力する。
【0022】
負荷検出部15は、例えば不図示のシャント抵抗によって構成され、負荷Hに流れる電流を検出する機能を有している。なお、負荷Hがインバータやモータである場合、負荷検出部15によって検出した負荷電流によってモータの回転速度やモータの印加電圧を演算してもよい。また、後記する直流電圧検出部17によって検出した直流電圧とモータの印加電圧から、インバータの変調率を演算してもよい。負荷検出部15は、その検出値(電流、モータ回転数、変調率等)を昇圧比制御部16に出力する。
【0023】
昇圧比制御部16は、負荷検出部15の検出値から直流電圧Vdの昇圧比aを選定し、その選定結果をコンバータ制御部18に出力する。そしてコンバータ制御部18は、目標電圧まで直流電圧Vdを昇圧するようにMOSFET(Q1,Q2)に駆動パルスを出力して、スイッチング制御を行う。
【0024】
直流電圧検出部17は、平滑コンデンサC1に印加される直流電圧Vdを検出するものであり、その正側が配線hcに接続され、負側が配線hdに接続されている。直流電圧検出部17は、その検出値をコンバータ制御部18に出力する。なお、直流電圧検出部17の検出値は、負荷Hに印加される電圧値が所定の目標値に達しているか否かの判定に用いられる。
【0025】
コンバータ制御部18を含むブロックMは、例えば、マイコン(Microcomputer:図示せず)であり、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムを読み出してRAM(Random Access Memory)に展開し、CPU(Central Processing Unit)が各種処理を実行するようになっている。コンバータ制御部18は、電流検出部11又はシャント抵抗R1、ゲイン制御部12、ゼロクロス判定部14、昇圧比制御部16、及び直流電圧検出部17から入力される情報に基づいて、MOSFET(Q1,Q2)のオン/オフを制御する。なお、コンバータ制御部18が実行する処理については後記する。
次に、本発明の直流電源装置1の動作モードについて説明する。
【0026】
直流電源装置1の動作モードを大別すると、ダイオード整流モード、同期整流モード、部分スイッチングモード、高速スイッチングモードの4つがある。部分スイッチングモード、高速スイッチングモードは、コンバータがアクティブ動作(力率改善動作)をするモードであり、ブリッジ整流回路10に力率改善電流を通流させることで直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行うモードである。例えばインバータやモータなどの負荷が大きい場合には、直流電圧Vdを昇圧する必要がある。また、負荷が大きくなり、直流電源装置1に流れる電流が大きくなるにしたがって高調波電流も増大してしまう。そのため、高負荷の場合には、部分スイッチングモードまたは高速スイッチングモードで昇圧を行い、高調波電流の低減つまり、電源入力の力率を改善させる必要がある。
【0027】
≪ダイオード整流モード≫
ダイオード整流モードは、4つのダイオードD1?D4を用いて全波整流を行うモードである。このモードではMOSFET(Q1)およびMOSFET(Q2)はオフ状態である。
図2は、交流電源電圧Vsが正の極性の場合において、ダイオード整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示している。
図2において、交流電源電圧Vsが正の半サイクルの期間では、破線矢印で示す向きに電流が流れる。すなわち電流は、交流電源VS→リアクトルL1→寄生ダイオードD3→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→ダイオードD2→交流電源VSの順に流れる。
【0028】
図3は、交流電源電圧Vsが負の極性の場合において、ダイオード整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示している。
図3において、交流電源電圧Vsが負の半サイクルの期間では、破線矢印で示す向きに電流が流れる。すなわち電流は、交流電源VS→ダイオードD1→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→寄生ダイオードD4→リアクトルL1→交流電源VSの順に流れる。
【0029】
≪同期整流モード≫
前述のダイオード整流に対して高効率動作を行うために、交流電源電圧Vsの極性に応じてMOSFET(Q1,Q2)をスイッチング制御することにより、同期整流制御を行う。
【0030】
図4は、交流電源電圧Vsが正の極性の場合において、同期整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
図4において、交流電源電圧Vsが正の半サイクルの期間では、破線矢印で示す向きに電流が流れる。すなわち電流は、交流電源VS→リアクトルL1→MOSFET(Q1)→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→ダイオードD2→交流電源VSの順に流れる。このとき、MOSFET(Q2)は常時オフ、MOSFET(Q1)は常時オン状態である。仮にMOSFET(Q1)がオン状態で無い場合には、前述のダイオード整流動作のように電流はMOSFET(Q1)の寄生ダイオードD3を流れる。しかし通常、MOSFETの寄生ダイオードの順方向電圧降下が大きいため、大きな導通損失が発生してしまう。そこで、MOSFET(Q1)をオンさせて、MOSFET(Q1)のオン抵抗の部分に電流を流すことで、導通損失の低減を図ることが可能である。これが、いわゆる同期整流制御の原理である。なお、MOSFET(Q1)のオン動作開始のタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が負から正に切り替わるゼロクロスのタイミングから行う。MOSFET(Q1)のオフさせるタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が正から負に切り替わるタイミングである。
図5は、交流電源電圧Vsが負の極性の場合において、同期整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
【0031】
図5において、交流電源電圧Vsが負の半サイクルの期間では、破線矢印で示す向きに電流が流れる。すなわち、交流電源VS→ダイオードD1→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→MOSFET(Q2)→リアクトルL1→交流電源VSの順に電流が流れる。このとき、MOSFET(Q1)は常時オフ、MOSFET(Q2)は常時オン状態である。なお、MOSFET(Q2)のオン動作開始のタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が正から負に切り替わるゼロクロスのタイミングから行う。MOSFET(Q2)のオフさせるタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が負から正に切り替わるタイミングである。
以上のように直流電源装置を動作させることで、高効率動作が可能となる。
【0032】
図6(a)?(d)は、同期整流時における、交流電源電圧Vsと回路電流isとMOSFETの駆動パルスの波形図である。
図6(a)は交流電源電圧の瞬時値vsの波形を示し、図6(b)は回路電流isの波形を示している。図6(c)はMOSFET(Q1)の駆動パルス波形を示し、図6(d)はMOSFET(Q2)の駆動パルス波形を示している。
図6(a)に示すように交流電源電圧の瞬時値vsは、略正弦波状の波形である。
図6(c)に示すようにMOSFET(Q1)の駆動パルスは、交流電源電圧Vsの極性が正のときにHレベル、負のときにLレベルとなる。
【0033】
図6(d)に示すようにMOSFET(Q2)の駆動パルスは、MOSFET(Q1)の駆動パルスとは反転しており、交流電源電圧Vsの極性が正のときにLレベル、負のときにHレベルとなる。
図6(b)に示すように、回路電流isは、交流電源電圧Vsが所定振幅に達した場合、つまり交流電源電圧Vsが直流電圧Vdに対して大きい場合に流れる。
【0034】
≪高速スイッチング動作≫
次に直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行う高速スイッチング動作について説明する。
【0035】
この動作モードでは、あるスイッチング周波数でMOSFET(Q1,Q2)をスイッチング制御して、リアクトルL1を介して回路を短絡させ(以降、力率改善動作と呼ぶ)、回路に短絡電流(以降、力率改善電流と呼ぶ)を通流させることで、直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行う。まず、力率改善電流を通流させた場合の動作について説明する。
【0036】
交流電源電圧Vsが正のサイクルで同期整流を行った場合、電流の流れは図4の通りであり、MOSFET(Q1,Q2)の動作については前記した通りである。このとき、図6(b)に示したように、電源電圧に対して回路電流isは歪んでいる。これは、電流が流れるタイミングが交流電源電圧Vsに対して直流電圧Vdが小さくなった場合のみであることと、リアクトルL1の特性から生じるものである。
そこで、複数回に亘って回路に力率改善電流を通流させ、回路電流を正弦波に近づけることで力率の改善を行い、高調波電流を低減する。
【0037】
図7は、電源電圧が正のサイクルでMOSFET(Q2)をオンさせた場合に流れる力率改善電流ispの経路を示した図である。
短絡電流ispの経路としては、交流電源VS→リアクトルL1→MOSFET(Q2)→ダイオードD2→交流電源VS、の順である。このとき、リアクトルL1には、以下の式(1)で表されるエネルギが蓄えられる。このエネルギが平滑コンデンサC1に放出されることで、直流電圧Vdが昇圧される。
【数1】

【0038】
交流電源電圧Vsが負のサイクルで同期整流を行った場合の電流の流れは図5の通りであり、MOSFET(Q1,Q2)の動作については前記の通りである。
【0039】
図8は、電源電圧が負のサイクルでMOSFET(Q1)をオンさせて力率改善電流ispを通流させた場合の経路を示した図である。
電流の経路としては、交流電源VS→ダイオードD1→MOSFET(Q1)→リアクトルL1→交流電源VSの順となる。このときも、前記したようにリアクトルL1にエネルギが蓄えられ、そのエネルギによって直流電圧Vdが昇圧される。
【0040】
図9(a)?(d)は、力率改善電流を2回通流させた場合(2ショットと呼ぶ)における、交流電源電圧Vsと回路電流isとMOSFETの駆動パルスの波形図である。
図9(a)は交流電源電圧の瞬時値vsの波形を示し、図9(b)は回路電流isの波形を示している。図9(c)はMOSFET(Q1)の駆動パルス波形を示し、図9(d)はMOSFET(Q2)の駆動パルス波形を示している。
図9(a)に示すように交流電源電圧の瞬時値vsは、略正弦波状の波形である。
【0041】
図9(c)に示すようにMOSFET(Q1)の駆動パルスは、交流電源電圧Vsの極性が正のときにHレベルとなり、更に所定タイミングで2回のLレベルのパルスとなる。交流電源電圧Vsの極性が負のときにLレベルとなり、更に所定タイミングで2回のHレベルのパルスとなる。
【0042】
図9(c)に示すようにMOSFET(Q2)の駆動パルスは、MOSFET(Q1)の駆動パルスとは反転している。これは、力率改善動作と同期整流を組み合わせて行っているためである。例えば交流電源電圧Vsが正の極性の場合において、MOSFET(Q2)がオンして力率改善動作を行う。その後MOSFET(Q1)がオフした後、MOSFET(Q2)がオンしている区間は同期整流動作となる。このように、力率改善動作と同期性流動作を組み合わせることで、力率改善を行いつつ高効率動作が可能である。
【0043】
図9(b)に示すように、回路電流isは、交流電源電圧Vsが正極性かつ、MOSFET(Q2)の駆動パルスがHレベルになったときに立ち上がり、交流電源電圧Vsが負極性かつ、MOSFET(Q1)の駆動パルスがHレベルになったときに立ち上がる。これにより、力率が改善される。
【0044】
例えば交流電源電圧Vsが正の場合、力率改善動作中の電流経路は、図7のようになる。MOSFET(Q2)がオフしてMOSFET(Q1)がオンとなって同期整流動作に切り替わったときの電流経路は、図4のようになる。
【0045】
なお、この力率改善動作と前述したダイオード整流動作を組み合わせてもよい。すなわち、交流電源電圧Vsが正の極性の場合、力率改善動作中の電流経路は、図7のようになる。MOSFET(Q2)がオフした後、寄生ダイオードD3がオンとなってダイオード整流動作に切り替わったときの電流経路は、図2のようになる。
【0046】
図10(a)?(d)は、高速スイッチングを行った場合の交流電源電圧Vsと回路電流isとMOSFETの駆動パルスの波形図である。
図10(a)は交流電源電圧の瞬時値vsの波形を示し、図10(b)は回路電流isの波形を示している。図10(c)はMOSFET(Q1)の駆動パルス波形を示し、図10(d)はMOSFET(Q2)の駆動パルス波形を示している。
図10(a)に示すように交流電源電圧の瞬時値vsは、略正弦波状の波形である。
【0047】
高速スイッチング動作においては、例えば電源電圧が正の極性の場合、力率改善動作時には、MOSFET(Q2)をオン、MOSFET(Q1)をオフ状態とすることで、力率改善電流ispを通流させる。次にMOSFET(Q2)をオフ状態にし、MOSFET(Q1)をオン状態にする。このように、このように力率改善動作の有無に応じてMOSFET(Q1,Q2)のオン、オフを切り替えているのは、同期整流を行っているためである。単純に高速スイッチング動作を行うためには、MOSFET(Q1)は常時オフ状態で、MOSFET(Q2)を一定周波数でスイッチング動作を行えばよい。
【0048】
しかし、このとき、MOSFET(Q2)オフ時にMOSFET(Q1)もオフ状態であると、電流はMOSFET(Q1)の寄生ダイオードD3を流れることになる。前記したように、この寄生ダイオードは特性が悪く、電圧ドロップが大きいために、導通損失が大きくなってしまう。そこで本発明では、MOSFET(Q2)オフ時には、MOSFET(Q1)をオン状態にして同期整流を行うことで、導通損失を低減しているのである。
直流電源装置1に流れる回路電流is(瞬時値)は、以下の式(2)で表すことができる。
【数2】

【0049】
さらに、この式(2)を書き換えると、以下の式(3)となる。
【数3】

【0050】
式(4)は、回路電流is(瞬時値)と、回路電流実効値Isとの関係を示すものである。なお、is(瞬時値)はシャント抵抗R1にて検出した値であり、回路電流実効値Isは、電流検出部11にて検出した値である。
【数4】

【0051】
式(3)を変形して式(4)を代入すると、以下の式(5)となる。
【数5】

【0052】
昇圧比の逆数を右辺とすると、以下の式(6)となる。
【数6】

【0053】
さらに、MOSFETのデューティdは、式(7)のように表すことが可能である。
【数7】

【0054】
以上より、式(6)に示したKp×Isを制御することで、交流電源電圧Vsの実効値のa倍に昇圧可能であり、そのときのMOSFETのデューティd(通流率)は、式(7)で与えることができる。
【0055】
図11は、電源電圧半サイクル(正の極性)における、MOSFET(Q2)とMOSFET(Q1)の駆動パルスのオン・デューティの関係を示した図である。図11の縦軸はオン・デューティを示し、横軸は正の極性の電源電圧の半サイクル分の時間を示している。
【0056】
破線で示したMOSFET(Q1)の駆動パルスのオン・デューティは、交流電源電圧Vsと比例している。2点鎖線で示したMOSFET(Q2)の駆動パルスのオン・デューティは、1.0からMOSFET(Q1)の駆動パルスのオン・デューティを減算したものとなる。
【0057】
図11において、式(7)で示したように、回路電流isが大きくなるほど力率改善電流を流すためにスイッチング動作を行うMOSFET(Q2)の駆動パルスのデューティdは小さくなり、逆に回路電流isが小さいほどMOSFET(Q2)の駆動パルスのデューティdは大きくなる。同期整流を行う側のMOSFET(Q1)の駆動パルスのデューティdは、MOSFET(Q2)の駆動パルスのデューティdとは逆特性となる。
【0058】
なお、実際には上下短絡を回避するためにデッドタイムを考慮する必要がある。図12は、電源電圧半サイクル(正の極性)における、デッドタイムを考慮したMOSFET(Q2)の駆動パルスのオン・デューティを実線で追記した図である。図12の縦軸はオン・デューティを示し、横軸は交流電源電圧Vsの正極性の半サイクル分の時間を示している。
このように、所定のデッドタイムを付与すると、MOSFET(Q2)の駆動パルスのデューティは、このデッドタイム分だけ小さくなる。
【0059】
図13は、交流電源電圧Vsの瞬時値vsと、回路電流is(瞬時値)との関係を示した図である。実線は交流電源電圧Vsの瞬時値vsを示し、破線は回路電流isの瞬時値を示している。図13の横軸は正の極性の電源電圧の半サイクル分の時間を示している。
【0060】
図13に示すように、高速スイッチング制御により、交流電源電圧Vsの瞬時値vsと回路電流is(瞬時値)とは両方とも略正弦波状となり、よって力率を改善することができる。
MOSFET(Q2)のデューティdQ2を、以下の式(8)に示す。
【数8】

【0061】
MOSFET(Q1)のデューティdQ1を、以下の式(9)に示す。
【数9】

【0062】
また、電源電圧と電流の関係をみると、回路電流isは正弦波状に制御されているため、力率は良い状態である。なお、これはリアクトルL1のインダクタンスが小さく電源電圧に対して電流の位相遅れが無い状態を想定している。仮に、リアクトルL1のインダクタンスが大きく、電流位相が電圧位相に対して遅れる場合には、電流位相を考慮してデューティdを設定すればよい。
【0063】
図14は、交流電源電圧Vsが正極性の場合に、リアクトルL1による電流位相の遅れ分を考慮した場合のMOSFET(Q2)のデューティを示した図である。図14の縦軸はMOSFET(Q2)のデューティを示し、横軸は正の極性の電源電圧の半サイクル分の時間を示している。
【0064】
実線は、リアクトルL1による電流位相の遅れ分を考慮しない場合のMOSFET(Q2)のデューティを示している。破線は、リアクトルL1による電流位相の遅れ分を考慮した場合のMOSFET(Q2)のデューティを示している。このように制御することにより、リアクトルL1のインダクタンスが大きい場合であっても、電流を正弦波状に制御可能である。
【0065】
以上、高速スイッチングと同期整流を組み合わせて実施する場合について説明を行ってきた。なお、前述したように高速スイッチングとダイオード整流を組み合わせてもよい。すなわち、交流電源電圧Vsが正の極性の場合、MOSFET(Q1)を常時オフ状態で、MOSFET(Q2)のみ高速スイッチングを行う。このように制御を行っても力率の改善効果を得ることができる。
【0066】
≪部分スイッチング動作≫
前記したように、高速スイッチング動作を行うことで回路電流isを正弦波に成形することができ、高力率を確保することができる。しかし、スイッチング周波数が大きければ大きいほどスイッチング損失は大きくなる。
【0067】
回路の入力が大きいほど、高調波電流も増大するので、特に高次の高調波電流の規制値を満足することが難しくなるため、入力電流が大きいほど高力率を確保する必要がある。逆に入力が小さい場合には高調波電流も小さくなるので必要以上に力率を確保する必要が無い場合がある。つまり、言い換えると負荷条件に応じて効率を考慮しつつ最適な力率を確保することで高調波電流を低減すればよいと言える。
そこで、スイッチング損失の増大を抑えつつ、力率を改善する場合には部分スイッチング動作を行えばよい。
【0068】
部分スイッチング動作とは、高速スイッチング動作のように所定周波数で力率改善動作を行うのではなく、交流電源電圧Vsの半サイクルの中で、所定の位相で複数回力率改善動作を行うことで直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行う動作モードである。高速スイッチング動作の場合と比べてMOSFET(Q1,Q2)のスイッチング回数が少ない分、スイッチング損失の低減が可能である。以下、図15を用いて部分スイッチング動作の説明を行う。
【0069】
図15(a)?(d)は、交流電源電圧Vsが正のサイクルにおける、MOSFET(Q1)の駆動パルスと交流電源電圧Vs、回路電流isの関係を示した図である。
【0070】
図15(a)は交流電源電圧の瞬時値vsを示し、図15(b)は回路電流isを示している。図15(c)はMOSFET(Q2)の駆動パルスを示し、図15(d)はMOSFET(Q1)の駆動パルスを示している。
図15(a)に示すように交流電源電圧の瞬時値vsは、略正弦波状である。
図15(b)の一点鎖線は、理想的な回路電流isを略正弦波状に示している。このとき、最も力率が改善される。
【0071】
ここで例えば、理想電流上の点P1を考えた場合、この点での傾きをdi(P1)/dtとおく。次に、電流がゼロの状態から、MOSFET(Q2)を時間ton1_Q2に亘ってオンしたときの電流の傾きをdi(ton1_Q2)/dtとおく。さらに時間ton1_Q2に亘ってオンした後、時間toff_Q2に亘ってオフした場合の電流の傾きをdi(toff1_Q2)/dtとおく。このときdi(ton1_Q2)/dtとdi(toff1_Q2)/dtとの平均値が点P1における傾きdi(P1)/dtと等しくなるように制御する。
【0072】
次に、点P1と同様に、点P2での電流の傾きをdi(P2)/dtとおく。そして、MOSFET(Q2)を時間ton2_Q2に亘ってオンしたときの電流の傾きをdi(ton2_Q2)/dtとおき、時間toff2_Q2に亘ってオフした場合の電流の傾きをdi(toff2_Q2)/dtとおく。点P1の場合と同様に、di(ton2_Q2)/dtとdi(toff2_Q2)/dtの平均値が点P2における傾きdi(P2)/dtと等しくなるようにする。以降これを繰り返していく。このとき、MOSFET(Q2)のスイッチング回数が多いほど、理想的な正弦波に近似することが可能である。
【0073】
なお、このようにMOSFET(Q1)とMOSFET(Q2)のスイッチングを相補に切り替えているのは、部分スイッチング動作と同期整流動作を組み合わせて実施しているためである。
なお、場合によっては部分スイッチング動作とダイオード整流動作を組み合わせて実施してもよい。
【0074】
≪制御モードの切り替え≫
本発明の直流電源装置1は、ダイオード整流制御と同期整流制御と部分スイッチング制御と高速スイッチング制御を実施可能である。例えば使用する機器によっては、負荷条件によって、高効率化優先の領域、昇圧と力率改善優先の領域等、求められる性能が変わる場合がある。そこで、前述した4つの制御を実施するモードを、予め決められた閾値情報を基にして選択的に切り替えることで、より最適に高効率化と高調波電流の低減を両立可能となる。
【0075】
図16は、負荷の大きさに応じた直流電源装置の動作モードの切り替えを説明した図である。この図において、第1の閾値を「閾値#1」、第2の閾値を「閾値#2」と省略して記載している。また、第1?第8の制御方法を単に「#1」から「#8」と省略して記載している。
第1制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。なお、図面では、部分スイッチング制御のことを「部分SW」と省略して記載している。
【0076】
第2制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。なお、図面では、高速スイッチング制御のことを「高速SW」と省略して記載している。
【0077】
第3制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を行うモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードと、を切り替えるというものである。
【0078】
第4制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。
【0079】
第5制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。
【0080】
第6制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。
【0081】
第7制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。
【0082】
第8制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。
【0083】
例えば、効率向上と高調波電流の低減や昇圧を主目的にするのであれば、第1?第3制御方法で切り替えればよい。また、効率はあまり優先ではなく、高調波電流の低減や昇圧を主目的にするのであれば、第4?第6制御方法等のモードで切り替えればよい。例えば、部分スイッチング動作や高速スイッチング動作と同期整流動作を組み合わせる場合は、交流電源電圧半周期の中で2つのMOSFETを制御する必要があるため、制御としては複雑になる。しかし、ダイオード整流との組み合わせであれば、半周期のうち制御するMOSFETは1つであるため、制御の簡略化にも繋がる。要するに、効率や高調波の低減や制御性など、必要に応じて最適な制御を選択すればよい。
【0084】
なお、制御切り替えのトリガとなる閾値情報としては、例えばカレントトランス11で検出した回路電流がある。或いは負荷検出部15にて検出した負荷情報を用いてもよい。負荷情報として例えば、負荷Hがモータやインバータの場合はモータ電流、モータ回転数、変調率、或いは直流電圧等を用いればよい。
【0085】
更に、第1,第2,第4,第5制御方法のように2つのモードの間で制御を切り替える場合は閾値情報は1つ(第1の閾値情報)であればよい。第3、第6、第7、第8制御方法のように3つのモードの間で切り替える場合には、閾値情報は2つ(第1の閾値情報と第2の閾値情報)用意する。更に、第1の閾値情報と第2の閾値情報は負荷の大きさに関連されている。つまり、第1の閾値情報は、第2の閾値情報よりも大きいという関係がある。
【0086】
例えば、第3制御方法では、第1の閾値未満の領域では同期整流動作で動作させ、第1の閾値以上・第2の閾値未満の領域では同期整流動作+部分スイッチング動作で動作させ、第2の閾値以上の領域では同期整流動作+高速スイッチング動作で動作させる。その他のモードに関しても同様である。
【0087】
また、第3,第6?第8制御方法のように部分スイッチング動作中から高速スイッチング動作に切り替える場合に、直流電圧が変動する場合がある。これを回避するために、部分スイッチングの動作から高速スイッチングへの切り替えの瞬間に、部分スイッチング動作時の電流に対して高速スイッチング動作時の電流のピークが小さくなるようにオン時間を調整して切り替える。
【0088】
図17は、部分スイッチングから高速スイッチングへ切り替える場合の電流波形を説明した図である。
図17(a)は、部分スイッチング制御時の交流電源電圧の瞬時値vsと入力電流Isとを模式的に示している。
図17(b)は、高速スイッチング制御に切り替えたときの交流電源電圧の瞬時値vsと入力電流isとを模式的に示している。このときの電流isのピークは、図17(a)に示した電流isのピークよりも小さくなっている。このようにオン時間を調整して切り替えることで直流電圧の変動を抑えることが可能である。これは、部分スイッチングに対して高速スイッチング時は力率が良いため電流は小さくなる。つまり、部分スイッチングの電流振幅と同じになるように切り替えてしまうと、直流電圧が昇圧されすぎてしまうためである。これにより、直流電圧Vdの変動を抑えることが可能である。
【0089】
同様に、高速スイッチングから部分スイッチングへの切り替え時には、先程とは逆に電流の振幅が大きくなるようにオン時間を調整して切り替えることで、逆に直流電圧の低下を防ぐことが可能である。
更に、各制御の切り替えは電源電圧ゼロクロスのタイミングで行うことで安定的に制御の切り替えを行うことができる。
【0090】
<空気調和機と直流電源装置の動作>
図18は、本実施形態における空気調和機の室内機、室外機、およびリモコンの正面図である。
【0091】
図18に示すように、空気調和機Aは、いわゆるルームエアコンであり、室内機100と、室外機200と、リモコンReと、不図示の直流電源装置(図1参照)とを備えている。室内機100と室外機200とは冷媒配管300で接続され、周知の冷媒サイクルによって、室内機100が設置されている室内を空調する。また、室内機100と室外機200とは、通信ケーブル(図示せず)を介して互いに情報を送受信するようになっている。更に室外機200には配線(図示せず)で繋がれており室内機100を介して交流電圧が供給されている。直流電源装置は、室外機200に備えられており、室内機100側から供給された交流電力を直流電力に変換している。
【0092】
リモコンReは、ユーザによって操作されて、室内機100のリモコン送受信部Qに対して赤外線信号を送信する。この赤外線信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマ、運転モードの変更、停止要求などの指令である。空気調和機Aは、これら赤外線信号の指令に基づいて、冷房モード、暖房モード、除湿モードなどの空調運転を行う。また、室内機100は、リモコン送受信部QからリモコンReへ、室温情報、湿度情報、電気代情報などのデータを送信する。
【0093】
空気調和機Aに搭載された直流電源装置の動作の流れについて説明する。直流電源装置は、高効率動作と力率の改善による高調波電流の低減と直流電圧Vdの昇圧を行うものである。そして、動作モードとしては前記のように、ダイオード整流動作、同期整流動作、高速スイッチング動作、部分スイッチング動作の4つの動作モードを備えている。
【0094】
例えば負荷Hとして空気調和機Aのインバータやモータを考えた場合、負荷が小さく、効率重視の運転が必要であれば、直流電源装置を同期整流モードで動作させるとよい。
【0095】
負荷が大きくなり、昇圧と力率の確保とが必要であれば、直流電源装置に高速スイッチング動作を行わせるとよい。また空気調和機Aの定格運転時のように、負荷としてはそれほど大きくないが昇圧や力率の確保が必要な場合には、部分スイッチング動作を行わせるとよい。なお、部分スイッチングと高速スイッチング時にはダイオード整流と同期整流のどちらを組み合わせてもよい。
【0096】
図19は、負荷の大きさに応じて直流電源装置1の動作モードと空気調和機Aの運転領域を切り替える様子を説明した概要図である。
負荷に、閾値#1,#2を設けて、かつ機器として空気調和機Aを考えた場合、負荷が小さい中間領域において、直流電源装置は同期整流を行い、定格運転時には部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行い、必要に応じて高速スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。
【0097】
定格運転よりも更に負荷が大きい低温暖房運転領域などにおいて、直流電源装置1は高速スイッチングを行い、必要に応じて部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。
【0098】
以上のように、直流電源装置は、空気調和機Aの運転領域に応じた最適な動作モードに切り替えることで、高効率動作を行いつつ、高調波電流の低減を行うことが可能である。
【0099】
なお、負荷Hがインバータやモータなどの場合、負荷の大きさを決めるパラメータとして、インバータやモータに流れる電流、インバータの変調率、モータの回転速度が考えられる。また、直流電源装置に通流する回路電流isで負荷Hの大きさを判断してもよい。また、直流電圧で負荷の大きさを判断してもよい。
【0100】
例えば負荷の大きさが閾値#1以下ならば、直流電源装置は同期整流を行い、閾値#1を超えたならば部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。または負荷の大きさが閾値#2を超えたならば、直流電源装置は高速スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行い、閾値#2を以下ならば部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。
【0101】
以上のように直流電源装置は、負荷の大きさに応じた最適な動作モードに切り替えることで、高効率動作を行いつつ、高調波電流の低減を行うことが可能である。
【0102】
本実施形態では、MOSFET(Q1,Q2)としてスーパージャンクションMOSFETを使用した例を説明した。このMOSFET(Q1,Q2)としてSiC(Silicon Carbide)-MOSFETやGaN(Gallium nitride)を用いたスイッチング素子を用いることで、更なる高効率動作を実現することが可能である。
【0103】
このように、本実施形態の直流電源装置を空気調和機Aに備えることで、エネルギ効率(つまり、APF)が高く、また、信頼性を高めることができる。空気調和機以外の機器に本実施形態の直流電源装置を搭載しても、高効率かつ信頼性を高めることが可能である。
【0104】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0105】
更に、MOSFET(Q1,Q2)として高速trrタイプの素子を用いているが、具体的にtrrを300ns以下の素子を用いることで高効率動作が可能である。
【0106】
また、MOSFET(Q1,Q2)のオン抵抗に関しても小さいほど同期整流の効果が高まる。具体的にはオン抵抗が0.1Ω以下とすることで高効率動作が可能である。
ブリッジ整流回路10は、MOSFET(Q1,Q2)の寄生ダイオードとダイオードD1,D2の構成に限られず、MOSFET(Q1,Q2)にそれぞれダイオードを並列接続し、これにダイオードD1,D2を組み合わせて構成してもよい。
【0107】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスクなどの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0108】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 直流電源装置
10 整流回路
11 電流検出部
R1 シャント抵抗
12 ゲイン制御部
13 交流電圧検出部
14 ゼロクロス判定部
15 負荷検出部
16 昇圧比制御部
17 直流電圧検出部
18 コンバータ制御部 (制御手段)
19 電源回路
Vs 交流電源
C1 平滑コンデンサ
D1 ダイオード (第1のダイオード)
D2 ダイオード (第2のダイオード)
D3 ダイオード (第3のダイオード)
D4 ダイオード (第4のダイオード)
ha,hb,hc,hd 配線
L1 リアクトル
Q1 MOSFET (第1のスイッチング素子)
Q2 MOSFET (第2のスイッチング素子)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、
前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項3】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御と前記部分スイッチング制御とを除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、
前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項4】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、
前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項5】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記高速スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項6】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項7】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項8】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項9】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、
ことを特徴とする請求項4ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替え、若しくは前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替える、
ことを特徴とする請求項7ないし請求項9の何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記閾値情報として、回路電流、モータ電流、モータ回転数、変調率、直流電圧のいずれかを用いる、
ことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の直流電源装置。
【請求項13】
前記第1,第2のスイッチング素子は、スーパージャンクションMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、SiC-MOSFET、またはGaN(Gallium nitride)を用いたスイッチング素子である、
ことを特徴とする請求項2ないし請求項12の何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項14】
請求項2ないし請求項13の何れか1項に記載の直流電源装置を備えた、
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項15】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御、または、交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御、のいずれかを選択的に実施するモードに切り替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ダイオード整流制御、前記同期整流制御、前記部分スイッチング制御、および、前記高速スイッチング制御から前記ダイオード整流制御を除くもののうち、予め決められた閾値情報に基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替え、
前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替え、若しくは前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御へ切り替える場合、直流電圧の変動がなく一定になるように切り替え、
前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替えの瞬間に、部分スイッチング動作時の電流に対して高速スイッチング動作時の電流のピークが小さくなるようにオン時間を調整して切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-11-27 
出願番号 特願2015-175832(P2015-175832)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H02M)
P 1 651・ 121- YAA (H02M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 遠藤 尊志  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 山田 正文
須原 宏光
登録日 2019-02-15 
登録番号 特許第6478881号(P6478881)
権利者 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
発明の名称 直流電源装置および空気調和機  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ