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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61B
審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  A61B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61B
管理番号 1371663
異議申立番号 異議2019-700334  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-24 
確定日 2020-12-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6410980号発明「結び目をつける作業が不要な縫合糸及びそれを含むキット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6410980号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6410980号の請求項1-7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6410980号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、2012年(平成24年)12月24日(パリ条約による優先権主張2011年12月27日、韓国)に出願した特願2016-148772号の一部を平成30年5月10日に新たな特許出願としたものであって、平成30年10月5日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、平成31年4月24日に特許異議申立人医療法人社団翔友会(以下、「申立人1」という。)及び特許異議申立人アイサポート ピーティーイー リミテッド(以下、「申立人2」という。)によりそれぞれ請求項1ないし7(全請求項)に対して特許異議の申立てがされ、令和1年6月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和1年9月25日に本件特許の特許権者から意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、申立人1から令和1年11月8日に、申立人2から令和1年11月28日に、それぞれ意見書が提出され、令和1年12月10日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和2年1月16日に本件特許の特許権者から意見書及び手続補正書が提出され、令和2年2月18日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和2年5月19日に本件特許の特許権者から意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、申立人1から令和2年7月14日に、申立人2から令和2年8月4日に、それぞれ意見書が提出された。
なお、令和1年9月25日付けの訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容について
令和2年5月19日付けの訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第6410980号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正する」ことを求めるものであり、その内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記縫合糸は、
中央部と、
第1末端部及び第2末端部と、
前記中央部及び前記第1末端部の間の第1抵抗部、及び、前記中央部及び前記第2端部の間の第2抵抗部と、を含み、
前記第1抵抗部は、
前記中央部と前記第1末端部を接続する第1本体部と、
前記第1本体部の第1分岐点から分岐して延在する第1逆とげと、を含み、
前記第2抵抗部は、
前記中央部と前記第2末端部を接続する第2本体部と、
前記第2本体部の第2分岐点から分岐して延在する第2逆とげと、を含み、
前記第1分岐点から前記縫合糸支持体の方に延在する前記第1本体部と、前記第1逆とげとがなす角は、鋭角であり、
前記第2分岐点から前記縫合糸支持体の方に延在する前記第2本体部と、前記第2逆とげとがなす角は、鋭角であり、」
と記載されているのを、
「前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記縫合糸は、前記空洞の底面の2か所から前記縫合糸支持体の外部に延在し、」
と記載されているのを、
「前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の下端側から外部に向かって延在し、」
に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「前記縫合糸支持体は、底面から上方に切開された部分である少なくとも一つの間隙を含み、」
と記載されているのを、
「前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に
「前記縫合糸支持体の横断面の幅は、底面から上面に近づくほど減少する、」
と記載されているのを、
「前記縫合糸支持体の横断面の幅は、下端から上端に近づくほど減少し、」 に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に
「縫合糸。」
と記載されているのを、
「前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなり、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される、縫合糸。」
に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2に
「前記縫合糸は、
中央部と、
第1末端部及び第2末端部と、
前記中央部及び前記第1末端部の間の第1抵抗部、及び、前記中央部及び前記第2末端部の間の第2抵抗部と、を含み、
前記第1抵抗部は、
前記中央部と前記第1末端部を接続する第1本体部と、
前記第1本体部の第1分岐点から分岐して延在する第1逆とげと、を含み、
前記第2抵抗部は、
前記中央部と前記第2末端部を接続する第2本体部と、
前記第2本体部の第2分岐点から分岐して延在する第2逆とげと、を含み、
前記第1分岐点から前記縫合糸支持体の方に延在する前記第1本体部と、前記第1逆とげとがなす角は、鋭角であり、
前記第2分岐点から前記縫合糸支持体の方に延在する前記第2本体部と、前記第2逆とげとがなす角は、鋭角であり、」
と記載されているのを、
「前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、」
に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項2に
「前記第1末端部と前記第2末端部は、分離され、」
と記載されているのを、
「前記前半部の第二の末端と前記後半部の第二の末端は、分離され、」
に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項2に
「前記縫合糸支持体の横断面の幅は、底面から上面に近づくほど減少する、」
と記載されているのを、
「前記縫合糸支持体の横断面の幅は、下端から上端に近づくほど減少し、」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項2に
「縫合糸。」
と記載されているのを、
「前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される、縫合糸。」
に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項3に
「前記中央部は、前記空洞の内部に位置する、」
と記載されているのを、
「前記前半部の第一の末端及び前記後半部の第一の末端は、前記空洞の内部に位置する、」
に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項4に
「前記縫合糸支持体は、底面から上方に切開された部分である少なくとも一つの間隙を含む、」
と記載されているのを、
「前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、」
に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項2又は3に記載の縫合糸。」
と記載されているのを、
「前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなる、請求項2又は3に記載の縫合糸。」
に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項5に
「前記中央部は、逆とげを含まない、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の縫合糸。」
と記載されているのを、
「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の底面側から外部に向かって延在し、
前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の底面から上面の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、
前記縫合糸支持体の横断面の幅は、底面から上面に近づくほど減少し、
前記縫合糸支持体の上面は、尖っておらず、
前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなり、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用され、
前記前半部の両端及び前記後半部の両端は、逆とげを含まない、縫合糸。」
に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項7に
「前記縫合糸支持体は、底面から上面までを貫通する連通孔を含む、」
と記載されているのを、
「前記縫合糸支持体は、下端から上端までを貫通する連通孔を含む、」
に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の縫合糸。」
と記載されているのを、
「請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の縫合糸。」
に訂正する。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、明細書において縫合糸支持体が設けられている側の縫合糸の末端を「第1末端」、縫合糸支持体が設けられていない側の縫合糸の末端を「第2末端」として説明していることに整合させるため、請求項1の「縫合糸」、「縫合糸支持体」及び「逆とげ」の関係を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記縫合糸は、前記空洞の底面の2か所から前記縫合糸支持体の外部に延在し、」 という記載を「前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の下端側から外部に向かって延在し、」と訂正することにより、請求項1の記載と明細書の【0029】及び図3(c)の記載との整合をとるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1の「前記縫合糸支持体は、底面から上方に切開された部分である少なくとも一つの間隙を含み、」という記載を「前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、」と訂正することにより、請求項1の記載と明細書の【0017】及び図1の記載との整合をとるものであり、また、「間隙」が「縫合糸支持体の側壁」に存在することを限定したものであるので、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項1の「前記縫合糸支持体の横断面の幅は、底面から上面に」という記載を「前記縫合糸支持体の横断面の幅は、下端から上端に」と訂正することにより、請求項1の他の部分に記載されている「縫合糸支持体」の「下端」及び「上端」との関係において不合理を生じている記載を明確にするものである。
また、訂正前の請求項1の「近づくほど減少する、」という記載を「近づくほど減少し、」と訂正することにより、訂正前の「減少する、」という語句が、本来その意であることが当初明細書や当初特許請求の範囲等の記載や技術常識等から明らかな誤りであり、その意味内容の語句に正すために、「減少し、」に誤記を訂正したものであるので、訂正事項4は、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、明細書の【0002】、【0018】、【0028】、図1及び図3の記載に基づいて、請求項1において、「前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部であり、前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなり、顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用され」るという記載を追加することによって、訂正前の請求項1に係る発明における「縫合糸」をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、明細書において縫合糸支持体が設けられている側の縫合糸の末端を「第1末端」、縫合糸支持体が設けられていない側の縫合糸の末端を「第2末端」として説明していることに整合させるため、請求項2の「縫合糸」、「縫合糸支持体」及び「逆とげ」の関係を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項6は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項2の「前記第1末端部と前記第2末端部は、分離され、」 という記載を「前記前半部の第二の末端と前記後半部の第二の末端は、分離され、」と訂正することにより、訂正事項6との整合をとるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項7は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項2の「前記縫合糸支持体の横断面の幅は、底面から上面に」という記載を「前記縫合糸支持体の横断面の幅は、下端から上端に」と訂正することにより、請求項2の他の部分に記載されている「縫合糸支持体」の「下端」及び「上端」との関係において不合理を生じている記載を明確にするものである。
また、訂正前の請求項2の「近づくほど減少する、」という記載を「近づくほど減少し、」と訂正することにより、訂正前の「減少する、」という語句が、本来その意であることが当初明細書や当初特許請求の範囲等の記載や技術常識等から明らかな誤りであり、 その意味内容の語句に正すために、「減少し、」に誤記訂正したものであるので、訂正事項8は、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は、明細書の【0002】、図1及び図3の記載に基づいて、請求項2において、「前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用され」るという記載を追加することによって、訂正前の請求項2に係る発明における「縫合糸」をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(10)訂正事項10について
訂正事項10は、訂正前の請求項3の「前記中央部は、前記空洞の内部に位置する、」という記載を「前記前半部の第一の末端及び前記後半部の第一の末端は、前記空洞の内部に位置する、」と訂正することにより、訂正事項6との整合をとるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項10は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(11)訂正事項11について
訂正事項11は、訂正前の請求項4の「前記縫合糸支持体は、底面から上方に切開された部分である少なくとも一つの間隙を含む、」という記載を「前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、」と訂正することにより、請求項2の記載と明細書の【0017】及び図1の記載との整合をとるものであり、また、「間隙」が「縫合糸支持体の側壁」に存在することを限定したものであるので、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項11は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(12)訂正事項12について
訂正事項12は、明細書の【0018】の記載に基づいて、請求項4において、「前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなる」という記載を追加することによって、訂正前の請求項4に係る発明における「縫合糸」をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(13)訂正事項13について
訂正事項13は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1乃至請求項4を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、訂正後の請求項1の記載を引用しないものとし、訂正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を独立形式請求項へ改めるための訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正前の請求項5は少なくとも請求項1の記載を引用する従属項であるところ、訂正後の請求項5は、「中央部」という記載を含まず、「前半部の両端のうちの第一の末端」及び「後半部の両端のうちの第一の末端」並びに「前記前半部の両端のうちの第二の末端」及び「前記後半部の両端のうちの第二の末端という記載を含むものに変更されている。
さらに、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項5の記載において、「中央部」は、縫合糸支持体が設けられない側の「前半部の両端のうちの第二の末端」及び「後半部の両端のうちの第二の末端」に対応するところ、「逆とげ」を含まない箇所を「中央部」から「前半部の両端」及び「後半部の両端」に変更することは、「前半部の両端のうちの第二の末端」及び「後半部の両端のうちの第二の末端」のみならず、「前半部の両端のうちの第一の末端」及び「後半部の両端のうちの第一の末端」が「逆とげ」を含まないことをさらに特定するものである。
したがって、訂正事項13は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項13は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(14)訂正事項14について
訂正事項14は、訂正前の請求項7の「前記縫合糸支持体は、底面から上面までを貫通する連通口を含む、」を「前記縫合糸支持体は、下端から上端までを貫通する連通口を含む、」と訂正することにより、請求項1,2又は4に記載されている「縫合糸支持体」の「下端」及び「上端」との関係において不合理を生じている記載を明確にするものであるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項14は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(15)訂正事項15について
訂正事項15は、上記訂正事項13に伴い、訂正前の請求項7が、訂正前の請求項5及び訂正前の請求項5を引用する請求項6を引用する記載であったものを、訂正後の請求項5及び訂正後の請求項5を引用する請求項6を引用しない記載へ改めるための訂正であるので、訂正事項15は、特許請求の範囲を減縮しようとするものに該当する。
また、訂正事項15は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

4 一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて
訂正前の請求項1ないし7は、請求項5ないし7が請求項1を引用するものであるから、請求項1及び請求項5ないし7が一群の請求項を構成し、また、請求項3ないし7が請求項2を引用するものであるから、請求項2ないし7が一群の請求項を構成している。そして、共通する請求項5ないし7を有するこれらの一群の請求項は組み合わせられるので、請求項1ないし7が一群の請求項である。
そして、本件訂正は、訂正前の請求項5の引用関係を解消することを目的とし、特許権者は、訂正後の請求項5及び6については別の訂正単位とすることを求めているところ、訂正後の請求項6が訂正後の請求項5を引用するものであるから、訂正後の請求項5及び請求項6が一群の請求項を構成し、訂正後の請求項6、7が訂正後の請求項1を引用するものであるから、訂正後の請求項1、6、7が一群の請求項を構成し、さらに、訂正後の請求項3、4、6、7が訂正後の請求項2を引用するものであるから、訂正後の請求項2ないし4、6、7が一群の請求項を構成している。そして、共通する訂正後の請求項6を有するこれらの一群の請求項は組み合わせられるので、訂正後の請求項1ないし7が一群の請求項である。
したがって、訂正後の請求項5及び6については、別の訂正単位とすることは認められない。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の下端側から外部に向かって延在し、
前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、
前記縫合糸支持体の横断面の幅は、下端から上端に近づくほど減少し、
前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなり、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される、縫合糸。
【請求項2】
一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記前半部の第二の末端と前記後半部の第二の末端は、分離され、
前記縫合糸支持体の横断面の幅は、下端から上端に近づくほど減少し、
前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される、縫合糸。
【請求項3】
前記前半部の第一の末端及び前記後半部の第一の末端は、前記空洞の内部に位置する、請求項2に記載の縫合糸。
【請求項4】
前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、
前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなる、請求項2又は3に記載の縫合糸。
【請求項5】
一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の底面側から外部に向かって延在し、
前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の底面から上面の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、
前記縫合糸支持体の横断面の幅は、底面から上面に近づくほど減少し、
前記縫合糸支持体の上面は、尖っておらず、
前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなり、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用され、
前記前半部の両端及び前記後半部の両端は、逆とげを含まない、縫合糸。
【請求項6】
前記縫合糸支持体の形状は、切頭円錐状または切頭角錐状である、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の縫合糸。
【請求項7】
前記縫合糸支持体は、下端から上端までを貫通する連通孔を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の縫合糸。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して、当審が令和1年6月25日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由通知」という。)の要旨は、次のとおりである。
なお、当該取消理由通知は、申立人1及び2の申し立てた全ての申立理由を含むものである。
(1)請求項1ないし5に係る発明は、文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)ア 請求項1ないし5に係る発明は、文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、請求項1ないし7に係る発明は、文献1に記載された発明、文献2及び文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 請求項1ないし7に係る発明は、文献3に記載された発明、文献2及び文献4に記載された技術的事項、及び文献1,5-7に例証された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 請求項2ないし7に係る発明は、文献2に記載された発明,文献2及び4に記載された技術的事項、及び文献1,5-7に例証された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項2ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)請求項1ないし7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)請求項1ないし7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(5)請求項1ないし7に係る特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(6)請求項1ないし7に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。

2 各文献の記載
(1)文献1
ア 文献1:米国特許出願公開第2004/0030354号明細書(異議申立人医療法人社団翔友会の甲第1号証、以下「文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。なお、日本語訳は異議申立人医療法人社団翔友会が提出した「甲第1号証 部分訳文」を援用した。
「[0001] This invention relates generally to a device and method for anchoring tissue within a body and, more particularly, to a suture anchor for use in surgical procedures requiring attachment of tissue, such as ligaments, tendons and the like, to other, preferably harder or more fibrous, tissue, such as a bone surface.」
(日本語訳:[0001]本発明は、一般に身体内に組織を固定するための装置および方法に関し、より詳細には、靭帯、腱などの組織を骨表面などのような他の、好ましくはより堅い又はより繊維性の組織に取り付けることを必要とする外科手術に使用するための縫合糸アンカーに関する。)

「[0006] For the foregoing reasons, there is a need for an improved suture anchor for use in surgical procedures. The new suture anchor should eliminate the need for tying the suture to hold the tissue against the bone or other tissue surface. The method for using the suture anchor in surgical applications should allow a surgeon to approximate tissue to the bone or tissue surface in an efficient manner. A particularly useful new suture anchor would be used in surgical applications where space is limited such as microsurgery, endoscopic surgery or arthroscopic surgery.」
(日本語訳:[0006] 前述の理由から、外科手術で使用するための改良された縫合糸アンカーが必要とされている。新しい縫合糸アンカーは、組織を骨または他の組織表面に対して保持するために結合糸を結ぶ必要性を排除するはずである。外科用途において縫合糸アンカーを使用する方法は、外科医が効率的な方法で組織を骨または組織表面に近づけることを可能にするはずである。特に有用な新しい縫合糸アンカーは、顕微手術、内視鏡手術または関節鏡手術のようにスペースが限られている手術用途に使用されるであろう。)

「[0007] According to the present invention, a suture anchor is provided for approximating tissue to bone or other tissue. The suture comprises an anchor member adapted to fixedly engage the bone for securing the anchor member relative to the bone. A plurality of sutures are mounted to the proximal end of the anchor member so that the sutures extend outwardly from the anchor member. Each suture has a sharp pointed distal end for penetrating the tissue and a plurality of barbs extending from the periphery of the body. The barbs permit movement of the sutures through the tissue in a direction of movement of the pointed end and prevent movement of the sutures relative to the tissue in a direction opposite the direction of movement of the pointed end.」
(日本語訳:[0007] 本発明によれば、組織を骨または他の組織に近づけるための縫合糸アンカーが提供される。縫合糸は、アンカー部材を骨に対して固定するために骨に固定的に係合するようになっているアンカー部材を含む。縫合糸がアンカー部材から外側に延びるように、複数の縫合糸がアンカー部材の近位端に取り付けられている。各縫合糸は、組織を貫通するための鋭いとがった遠位端と、身体の周囲から延びる複数のとげとを有する。とげは、尖端の移動方向に組織を通る縫合糸の移動を可能にし、尖端の移動方向と反対の方向に組織に対する縫合糸の移動を防止する。)

「[0019] As used herein, the term “tissue” includes tendons, ligaments, cartilage, muscle, skin, organs, and other soft tissue. The term “bone” includes bone, cartilage, tendon, ligament, fascia, and other connective or fibrous tissue suitable for anchor for a suture.」
(日本語訳:[0019] 本明細書において、用語「組織」は、腱、靭帯、軟骨、筋肉、皮膚、 器官、および他の軟組織を含む。用語「骨」は、骨、軟骨、腱、靭帯、筋膜、および縫合糸の固定に適した他の結合組織または線維組織を含む。)

「[0021] Referring now to the drawings, wherein like reference numerals designate corresponding or similar elements throughout the several views, there is shown in FIG. 1 a suture anchor for use according to the present invention and generally designated at 30. The suture anchor 30 includes an anchor portion 32 and a suture portion 34. The anchor portion 32 comprises an elongated body 36 having a distal pointed tip 38 which serves as a leading end of the suture anchor 30 when the suture anchor is inserted into bone. A blind bore 40, or opening, is formed at the proximal end 41 of the anchor portion 32. A crossbar 42 integral with the anchor body 36 spans the-opening 40 for threadably receiving the suture portion 34 at the proximal end of the anchor portion 32.」
(日本語訳:[0021] ここで図面を参照すると、いくつかの図を通して同様の参照番号は対応するまたは類似の 要素を示す。図1は、本発明に従って使用される縫合糸アンカーを全体的に30で示す。 縫合糸アンカー30は、アンカー部32と縫合糸部34とを含む。アンカー部32は、縫合糸アンカーが骨内に挿入されたときに縫合糸アンカー30の先端として機能する遠位尖端38を有する細長い本体36を含む出口のない穴40または開口部が、アンカー部32の近位端41に形成されている。アンカー本体36と一体のクロスバー42は、アンカー部32の近位端で縫合糸部34をねじ込み式に受容するために開口部40に架け渡されている。)

「[0022] The anchor portion 32 is shown as having a circular cross-section, although other cross-sectional shapes could be utilized without departing from the present invention. As shown in FIG. 1, ridges 44, or barbs, may be formed on the outer surface of the anchor portion 32 which allow movement of the anchor portion 32 through bone in one direction but which resist the withdrawal of the anchor portion 32 after the anchor portion has been implanted in the bone.」
(日本語訳:[0022] アンカー部32は円形の断面を有するように示されているが、本発明から逸脱することなく他の断面形状を利用することができる。図1に示すように、アンカー部32の外面には、骨を通る一方向へのアンカー部32の移動を可能にするが、アンカー部32が骨の中に埋め込まれた後のアンカー部32の引き抜きに抵抗する隆起部44またはとげが形成され得る。)

「[0024] The suture portion 34 of the suture anchor 30 has an elongated body 46 and a plurality of barbs 48 disposed along the length of the body 46. First and second ends 50, 52 of the suture body 46 terminate in points 54, 56 for penetrating tissue. The body 46 of the suture portion 34 is, in one embodiment, circular in cross section. Suitable diameters for the body 46 range from about 0.001 mm to about 5.0 mm. The body 46 of the suture portion 34 could also have a non-circular cross-sectional shape which would increase the surface area of the body 46 and facilitate the formation of multiple barbs 48. The length of the suture portion 34 can vary depending on several factors, including the desired surgical application, the type of tissue to be approximated to the bone, the location of the bone, and the like. A suture portion 34 of proper length is selected for achieving suitable results in a particular application.」
(日本語訳:[0024] 縫合糸アンカー30の縫合糸部34は、細長い本体46と、本体46の長さに沿って配置された複数のとげ48とを有する。機合糸本体46の第1および第2の端部50、52は、組織を貫通するための点54、56で終結している。縫合糸部34の本体46は、一実施形態では、断面が円形である。本体46の適切な直径は、約0.001mmから約5.0mmの範囲である。縫合糸部34の本体46はまた、本体46の表面積を増大させ、そして複数のとげ48の形成を容易にする、非円形の断面形状を有し得る。縫合糸部34の長さは、所望の外科的用途、骨に接近させるべき組織の種類、骨の位置などを含むいくつかの要因に応じて変わり得る。特定の用途において適切な結果を達成するために、適切な長さの縫合糸部34が選択される。)

「[0025] The plurality of barbs 48 is axially-spaced along the body 46 of the suture portion 34. The barbs 48 are oriented in one direction facing toward the first end 50 of the suture body 46 for a first portion 58 of the length of the suture portion 34 and in an opposite direction facing the second end 52 of the suture body 46 for a second portion 60 of the suture portion 34. The point on the suture body 46 where the barbs 48 change direction is preferably positioned adjacent the crossbar 42 at the proximal end of the anchor body 36. The barbs 48 are yieldable toward the body 46. The barbs 48 on each portion 58, 60 of the suture body 46 are oriented so as to allow movement of the suture portion 34 through the tissue in one direction along with the corresponding end 50, 52 of the suture portion 34. The barbs 48 are generally rigid in an opposite direction to prevent the suture body 46 from moving in the tissue in the opposite direction.」
(日本語訳:[0025] 複数のとげ48は、縫合糸部34の本体46に沿って軸方向に間隔を置いて配置されている。とげ48は、縫合糸部34の長さの第1の部分58については縫合糸本体46の第1の端部50に面する一方向に向けられ、また、縫合糸部34の第2の部分60については縫合糸本体46の第2の端部52に面する反対方向に向けられる。 縫合糸本体46におけるとげ48の向きが変わる箇所は、アンカー本体36の近位端において、クロスバー42に隣接して位置決めされることが好ましい。とげ48は、本体46に向かって曲げることができる。縫合糸本体46の各部分58、60上のとげ48は、縫合糸部34の対応する端部50、52と共に、一方向に組織を通って縫合糸部34が動くことができるように配向されている。とげ48は、縫合糸本体46が組織内を反対方向に移動するのを防止するために、反対方向に概して剛性である。)

「[0026] The barbs 48 can be arranged in any suitable pattern, for example, in a helical pattern as shown in FIG. 1. The number, configuration, spacing and surface area of the barbs 48 can vary depending upon the tissue in which the suture portion 34 is used, and depending on the composition and geometry of the suture body 46. The proportions of the barbs 48 may remain relatively constant while the overall length and spacing of the barbs 48 are determined by the tissue being approximated to the bone. For example, if the suture portion 34 is intended to be used in tendon, the barbs 48 can be made relatively short and more rigid to facilitate entry into this rather firm, fibrous tissue. If the suture portion 34 is intended for use in soft tissue, such as fat, the barbs 48 can be made longer and spaced farther apart to increase the holding ability in the soft tissue. Moreover, the ratio of the number of barbs 48 on the first portion 58 of the suture body 46 to the number of barbs 48 on the second portion 60, and the lengths of each portion 58, 60, can vary depending on the surgical application and needs.」
(日本語訳:[0026] とげ48は、任意の適切なパターンで、例えば、図1に示されるようにらせんパターンで配置することができる。とげ48の数、構成、間隔、および表面積は、縫合糸部34が使用される組織に応じて、ならびに縫合糸本体46の組成および幾何学的形状に応じて異なり得る。とげ48の割合は、比較的一定のままであり得るが、とげ48の全長および間隔は、骨に接近している組織によって決定される。例えば、縫合糸部34が腱に使用されることを意図される場合、とげ48は、このかなり堅い繊維状組織への進入を容易にするために比較的短くかつより硬く作られ得る。緑合糸部34が脂肪などの軟組織での使用を意図している場合、とげ48はより長く作られ得、そして軟組織における保持能力を増大させるためにより遠くに離間され得る。さらに、縫合糸本体46の第1の部分58のとげ48の数と第2の部分60のとげ48の数との比、および各部分58、60の長さは、外科手術の用途及びニーズに応じて変わり得る。)

「[0028] The barbs 48 may be formed on the surface of the suture body 46 according to any suitable method, including cutting, molding, and the like. The preferred method is cutting with acute angular cuts directly into the suture body 46 with the cut portions pushed outwardly and separated from the body 46. The depth of the barbs 48 formed in the suture body 46 depends on the diameter of the suture material and the depth of cut. Embodiments of a suitable cutting device for cutting a plurality of axially spaced barbs 48 on the exterior of suture filaments are shown and described in U.S. patent application Ser. No. 09/943,733, entitled “Method Of Forming Barbs On A Suture And Apparatus For Performing Same”, which was filed on Aug. 31, 2001, the contents of which are hereby incorporated by reference. This cutting device utilizes a cutting bed, a cutting bed vise, a cutting template, and a blade assembly to perform the cutting. When operated, the cutting device has the ability to produce a plurality of axially spaced barbs 48 in the same or random configuration and at different angles in relation to each other. Various other suitable methods of cutting the barbs 48 have been proposed including the use of a laser. The barbs 48 could also be cut manually. However, manually cutting the barbs 48 is labor intensive, decreases consistency, and is not cost effective. The suture portion 34 could also be formed by injection molding, extrusion, stamping and the like.」
(日本語訳:[0028] とげ48は、切断、成形などを含む任意の適切な方法に従って縫合糸本体46の表面上に形成され得る。好ましい方法は、切断部分が外側に押されて本体46から分離された状態で、縫合糸本体46内に直接鋭角の切り込みで切り込むことである。縫合糸本体46に形成されたとげ48の深さは、縫合糸材料の直径および切断の深さに依存する。縫合糸フィラメントの外側にある軸方向に間隔を置いて配置された複数のとげ48を切断するための適切な切断装置の実施形態は、2001年8月31日に出願された、「縫合糸上にとげを形成する方法およびそれを実施するための装置」と題する米国特許出願第09/943,733号に示され記載されている。この切断装置は、切断ベッド、切断ペッドバイス、切断テンプレート、およびブレードアセンブリを利用して切断を行う。操作されると、切断装置は、同じまたはランダムな構成で、互いに異なる角度で、軸方向に問隔を置いて配置された複数のとげ48を製造する能力を有する。レーザーの使用を含む、とげ48を切断する様々な他の適切な方法が提案されている。とげ48は手動で切断することもできる。しかしながら、とげ48を手動で切断することは労働集約的であり、一貫性を低下させ、そして費用効果的ではない。縫合糸部34はまた、射出成形、押出し成形、打ち抜き加工などによって形成することもできる。)

「[0029] Barbed sutures suitable for use according to the methods of the present invention are described in U.S. Pat. No. 5,342,376, entitled “Inserting Device for a Barbed Tissue Connector”, U.S. Pat. No. 6,241,747, entitled “Barbed Bodily Tissue Connector”, and U.S. Pat. No. 5,931,855. The contents of U.S. Pat. No. 5,342,376, U.S. Pat. No. 5,931,855 and U.S. Pat. No. 6,241,747 are hereby incorporated by reference.」
(日本語訳:[0029] 本発明の方法に従って使用するのに適したとげのある縫合糸は、「とげのある組織用コネクタのための挿入装置」と題する米国特許第5,342,376号、「とげのある体組織用コネクタ」と題する米国特許第6,241,747号、および米国特許第5,931,855号に記載されている。米国特許第5,342,376号、米国特許第5,931,855号および米国特許第6,241,747号の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。)

「[0030] The suture portion 34 is attached to the proximal end of the anchor portion 32. As seen in FIG. 1, the suture portion 34 is threaded around the crossbar 42 on the anchor body 36. It is understood that the suture portion 34 may be attached to the anchor portion 32 in a number of ways, including inserting the end of the suture body 46 into the bore 40 formed in the proximal end of the anchor body 36 and securing the suture body 46 in place with a set screw, rivet, or the like, or, wherein the material of the anchor portion 32 is metal, by swaging or crimping. The anchor portion 32 and suture portion 34 could also be formed in one piece in the manufacturing process. However, the preferred attachment of the suture portion 34 is as shown in FIG. 1 since this arrangement allows a simple, secure threading of a double-ended suture portion 34 during manufacture or prior to use. Moreover, as seen in FIG. 2, the user may selectively attach several suture portions 34 to the anchor portion 32 depending upon the surgical application.」
(日本語訳:[0030] 縫合糸部34は、アンカー部32の基端に取り付けられている。図1に示されるように、 縫合糸部34は、アンカー本体36上のクロスバー42の周りに通される。縫合糸部34は、縫合糸本体46の端部をアンカー本体36の近位端に形成された穴40に挿入すること、および縫合糸本体を固定することを含む、いくつかの方法でアンカー部32に取り付けることができる。)








イ 上記アから、文献1には、次の発明(以下「文献1発明」という。)、及び技術的事項(以下、「文献1に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
(ア)文献1発明
「一部がアンカー部32の出口のない穴40に位置する1本の縫合糸部34であって,
縫合糸部34は,互いに反対方向に傾斜したとげ48が形成された第1の部分58及び第2の部分60と,を含み,
前記縫合糸部34は,前記第1の部分58の両端のうちの一方の端部及び前記第2の部分60の両端のうちの一方の端部に具備され、
前記第1の部分58の縦軸から分岐した前記とげ48と、該分岐点から該第1の部分58の一方の端部へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記第2の部分60の縦軸から分岐した前記とげ48と、該分岐点から該第2の部分60の一方の端部へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記第1の部分58の一方の端部と前記第2の部分60の一方の端部は、前記出口のない穴40の内部に位置し、
前記第1の部分58の第1の端部50と前記第2の部分60の第2の端部52は、分離され、
前記第1の部分58及び前記第2の部分60のそれぞれは、前記アンカー部32のクロスバー42側から外部に向かって延在し、
前記アンカー部32の側壁は、前記アンカー部32のクロスバー42側から遠位尖端38側に向かい2つの隆起部44を含み、
前記アンカー部32の横断面の幅は、クロスバー42側から遠位尖端38側に向かって減少するが、一旦増加し再度減少し、
前記アンカー部32の遠位尖端38側は、尖っており、
前記アンカー部32のクロスバー42側は、前記縫合糸部34の第1の部分58の第1の端部50側の端部であり、
前記アンカー部32のクロスバー42側は、前記縫合糸部34の第2の部分60の第2の端部52側の端部であり、
前記第1の部分58の両端及び前記第2の部分60の両端は、とげを含まない、縫合糸。」

(イ)文献1に記載された技術的事項
「縫合糸部34は,互いに反対方向に傾斜したとげ48が形成された第1の部分58及び第2の部分60と,を含み,
前記第1の部分58の縦軸から分岐した前記とげ48と、該分岐点から該第1の部分58の一方の端部へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記第2の部分60の縦軸から分岐した前記とげ48と、該分岐点から該第2の部分60の一方の端部へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角である」

(2)文献2
ア 文献2:特表2010-500102号公報(異議申立人医療法人社団翔友会の甲第2号証、以下「文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「【0018】
図1は、番号10によって総称的に示される本発明によって構成された縫合糸アセンブリの側面図を示している。概観すると、縫合糸アセンブリ10は、4つの基本要素、すなわち、略直線体11、細長い柔軟体20、複数の組織係合要素30?47、および湾曲体14を備えている。さらに具体的に、縫合糸アセンブリ10は、ポリプロピレンのようなプラスチック材料から形成された細長い直線体11を備えている。この直線体11は、略尖った端12およびコネクタ端13を備えている。縫合糸アセンブリ10は、以下に述べるようにしてコネクタ13に固定される端22を有する細長い柔軟フィラメント体20をさらに備えている。柔軟体20は、以下の図4および図5においてさらに詳細に述べる複数の組織係合要素30?47をさらに支持している。ここでは、組織係合要素30?47が、それらの構造に関して実質的に互いに同一であり、柔軟体20上に受け入れられていることに留意すれば、十分である。加えて、組織係合要素30?47は、縫合糸アセンブリが組織と係合するときにその縫合糸アセンブリに方向性特性を与える略円錐状構造を備えている。図3に良好に示されるように、柔軟体20は、柔軟体20上での組織係合要素30?47の移動を制限するために、柔軟体20に作られた複数の結び目50?67をさらに画定している。柔軟体20は、湾曲体14のコネクタ16内に受け入れられる端21をさらに画定している。湾曲体14は、鋭利に尖った端15をさらに画定している。コネクタ13,16は、従来の圧着取付け法を用いることによって、柔軟体20の端22,21を固定している。本発明の縫合糸は、患者および手術に適する吸収性材料または非吸収性材料のいずれから製造されてもよい。」

「【0019】
前述したように、本発明の縫合糸アセンブリは、種々の創傷縫合手術、組織近置手術、組織支持手術、組織懸下手術、および/または組織固定手術に用いられるのに、適している。しかし、前述したように、本発明の縫合糸アセンブリは、美容整形手術中の顔面リフトまたは顔面輪郭形成を含む手術に用いられるのに、特に適している。このような美容整形手術での使用中に、組織係合要素30?47にてもたらされる方向性把持または方向性特性により、縫合糸のリフト能力および輪郭形成能力がさらに高められることになる。縫合糸の好ましい製造法によれば、縫合糸の全体が、ポリプロピレンのようなモノフィラメント材料から形成されている。代替的に、PDFのような吸収性材料が用いられてもよい。いったん皮膚下に挿入されると、組織係合要素30?47の方向性特性が、組織に対して永久的支持構造をもたらし、組織のリフトおよび輪郭形成を実現することになる。本発明の縫合糸は、どのような特定の手術での使用にも制限されないが、鼻唇線(スマイル線)のリフトおよび輪郭形成、およびリフトまたは輪郭形成を必要とする患者の顎または他の人体部分の引っ込みによく適している。本発明の縫合糸を利用する手術は、従来の美容整形外科と比較して、極めて安全であり、かつ比較的わずかな時間しか必要としない。本発明の縫合糸を利用する手術は、患者が心地よく目覚めている状態にある局部麻酔下で行うことが可能である。手術中、縫合糸は、新しい輪郭が望まれる線に沿って皮下組織内に深く挿入されることになる。通常、わずか3本の縫合糸の挿入によって、頬の輪郭を著しく持ち上げることが可能であり、正確に配置されたわずか2本の縫合糸を用いることによって、患者の顎の垂れ肉を引っ込めることが可能となる。縫合糸は、患者の額を持ち上げ、頸部組織を引っ込めるのに用いられてもよい。また、本発明の縫合糸は、どのような箇所、例えば、腰の線を引っ張るのに用いられてもよい。いったん挿入されると、患者の組織のコラーゲンが組織係合要素の周囲に形成される数ヶ月後において、組織の把持力およびリフト効果が最も大きくなる。」

「【0023】
図4は、組織係合要素30の断面図を示している。組織係合要素30?47(図1参照)が、それらの構造に関して実質的に互いに同一であることは、当業者にとって明らかだろう。従って、図4およびこの図と関連する説明は、組織係合要素31?47にも等しく適用されることが、理解されるだろう。さらに具体的に、組織係合要素30は、略切頭円錐形状であり、狭端75および張出し端77を画定している。端75は、柔軟体20にぴったりと嵌合する大きさの孔76を画定している(図2参照)。張出し端77によって、その内部78をなす空間が大きくなっている。組織係合要素30の円錐形状は、張出し端77および内部78が開いている特徴と協働して、要素30に大きな組織係合特性をもたらすことになる。前述したように、本発明の組織係合要素は、必要に応じて、射出成形技術または冷間圧造技術を用いて製造されるとよい。本発明の縫合糸アセンブリの組織係合要素を製造するのに、多くの適切な材料が用いられてもよいが、ポリプロピレンのような材料が、適切でかつ有利であることが分かっている。代替的に、吸収性材料が用いられてもよい。」

「【0032】
正面図および断面図をそれぞれ示している図12Aおよび図12Bを一緒に参照すると、組織把持要素140は、前側開口145を有する切頭円錐体141を画定している。円錐体141は、複数の細長い長孔142,143,144をさらに画定している。長孔142,143,144は、組織係合要素140の組織結合または組織係合をさらに促進することになる。」













イ 上記アから、文献2には、次の発明(以下「文献2発明」という。)、及び技術的事項(以下、「文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
(ア)文献2発明
「一部が複数の組織係合要素30に設けられている内部78に位置する一本の細長い柔軟体20であって,
細長い柔軟体20は,前半部及び後半部を含み、
前記複数の組織係合要素30の一つは、前記前半部の両端のうちの一方の末端及び前記後半部の両端のうちの一方の末端に具備され、
前記前半部の他方の端21と前記後半部の他方の端22は,分離され,
前記組織係合要素30の横断面の幅は,張出し端77から狭端75に近づくほど減少し,
前記組織係合要素30の狭端75は、尖っておらず、
前記組織係合要素30は、吸収性材料からなり
顔面リフトまたは顔面輪郭形成を含む手術に用いられ、
前記前半部の両端及び前記後半部の両端は、逆とげを含まない、細長い柔軟体。」

(イ)文献2に記載された技術的事項
「組織係合要素140の側壁は、組織係合要素140の張出し端77から狭端75の方向に向かう少なくとも一つの複数の細長い長孔142,143,144を含む」

(3)文献3
ア 文献3:米国特許出願公開第2011/0238111号明細書(異議申立人アイサポート ピーティーイー リミテッドの甲第1号証、以下「文献3」という。) には、図面とともに次の記載がある。なお、日本語訳は異議申立人アイサポート ピーティーイー リミテッドが提出した「甲第1号証の翻訳文」を援用した。
「[0002] The invention relates to surgical fixation of soft tissue. More particularly, the invention relates to methods and apparatus for soft tissue repair using a looped suture construct.」
(日本語訳:[0002] 本発明は、軟部組織の外科的固定に関する。より具体的には、本発明は、ループ状の縫合糸構築体を使用する軟部組織修復のための方法および装置に関する。)

「[0031] FIG.6 shows a known suture anchor configuration wherein suture anchor 602 is pre-loaded with two sutures 606 and 616 each slidably connected to anchor 602. The slidable connection may be through an eyelet or equivalent structure in anchor 602, and allows either side of the suture to be pulled through the anchor. As shown, four free suture ends (i.e., suture ends 606a, 606b, 616a, and 616b) are available for manipulation by a surgeon. Known suture anchor 602 may be used, for example, in the known method of repairing soft tissue illustrated in FIGS. 1A-1D.」
(日本語訳:[0031] 図6は、公知の縫合糸アンカー構成を示しており、そこでは、縫合糸アンカー602が2つの縫合糸606および616を事前に装着されており、2つの縫合糸606および616は、それぞれアンカー602にスライド可能に接続されている。スライド可能な接続部は、アンカー602の中のアイレットまたは同等の構造体を通るものであることが可能であり、縫合糸のいずれかの側がアンカーを通して引っ張られることを可能にする。示されているように、4つの縫合糸自由端部(すなわち、縫合糸端部606a、606b、616a、および616b)は、外科医による操作のために利用可能である。公知の縫合糸アンカー602は、 たとえば、図1A?図1Dに図示されている軟部組織を修復する公知の方法において使用され得る。)

「[0032] FIGS.7-9 show several embodiments of suture anchor configurations according to the invention. In each configuration, a long continuous suture is slidably connected to the anchor such that a looped end extends from one side of the slidable connection, and one or two free ends of the suture extend from the other side of the slidable connection. The length of the suture depends on the surgical application. For example, in rotator cuff repair, the length of the suture may range from 10cm to 100cm. In FIG.7, suture 706 forms a looped end 706x extending from one side of slidable connection 712 of suture anchor 702, while free ends 706y and 706z extend from the other side of slidable connection 712. FIG.8 shows suture 806 slidably connected to suture anchor 802. Suture 806 has a looped end 806 x extending from one side of slidable connection 812. The two ends of suture 806 extend from the other side of the slidable connection and are either temporarily or permanently bonded to each other to form a single free end 806y for easier passage through the soft tissue to be repaired in those surgical applications requiring such a suture free end configuration. The two ends 806 y and 806z may be bonded to each other using any suitable technique known in the art. FIG.9 shows suture anchor 902 pre-loaded with suture 906 having a looped end 906 x formed on one side of slidable connection 912. As shown, suture end 906z is bonded back onto suture 906 on the same side of connection 912 as looped end 906 x. The remaining free end 906y is threaded through slidable connection 912 and extends outward on the other side of connection 912. Suture end 906z may be bonded to suture 906 using any suitable technique known in the art. In those embodiments of the invention requiring a suture anchor, the suture anchor is preferably pre-loaded (i.e., prior to implantation) with at least one suture as shown in FIGS. 7-9.」
(日本語訳:[0032] 図7?図9は、本発明による縫合糸アンカー構成のいくつかの実施形態を示している。それぞれの構成において、長い連続的な縫合糸が、アンカーにスライド可能に接続されており、ループ状の端部が、スライド可能な接続部の一方の側から延在し、縫合糸の1つまたは2つの自由端部が、スライド可能な接続部の他方の側から延在するように なっている。縫合糸の長さは、外科的用途に依存する。たとえば、回旋腱板の修復におい て、縫合糸の長さは、10cmから100cmの範囲にあることが可能である。図7では縫合糸706は、縫合糸アンカー702のスライド可能な接続部712の一方の側から 延在するループ状の端部706xを形成しており、一方、自由端部706yおよび706zが、スライド可能な接続部712の他方の側から延在している。図8は、縫合糸アンカー802にスライド可能に接続されている縫合糸806を示している。 縫合糸806は、スライド可能な接続部812の一方の側から延在するループ状の端部806xを有してい る。縫合糸806の2つの端部は、スライド可能な接続部の他方の側から延在しており、 また、一時的にまたは恒久的にいずれかに互いに結合され、そのような縫合糸自由端部構成を必要とするそれらの外科的用途において修復されることとなる軟部組織をより容易に通過できるように、単一の自由端部806yを形成している。2つの端部806yおよび806zは、当技術分野で公知の任意の適切な技法を使用して互いに結合され得る。図9は、スライド可能な接続部912の一方の側に形成されたループ状の端部906xを有する縫合糸906を事前に装着されている縫合糸アンカー902を示している。示されているように、縫合糸端部906zは、ループ状の端部906xと同じ接続912の側において、縫合糸906の上に結合されて戻されている。残りの自由端部906yは、スライド可能な接続部912を通り抜けさせられており、接続912の他方の側に外向きに延在している。縫合糸端部 906zは、 当技術分野で公知の任意の適切な技法を使用して、縫合 糸906に結合され得る。縫合糸アンカーを必要とする本発明のそれらの実施形態では、縫合糸アンカーは、好ましくは、図7~図9に示されているように、少なくとも1つの縫合糸を事前に装着されている(すなわち、植え込みの前に)。)

「[0034] Suture anchors have a generally cylindrical body that may be tapered and have one or more surface features for engaging bone or another implanted device, depending on the manner in which the suture anchor is to be implanted into bone. For example, suture anchors may be screwed, twisted, friction or press-fitted, punched, or otherwise fastened to the bone. Suture anchors can be of various lengths and may range in diameter from 1 mm to 15 mm.」
(日本語訳:[0032] 縫合糸アンカーは、テーパーを付けられ得る概して円筒形状の本体部を有しており、また、縫合糸アンカーが骨の中に植え込まれることとなる様式に応じて、骨または別の植え込まれたデバイスに係合するための1つまたは複数の表面フィーチャーを有している。たとえば、縫合糸アンカーは、骨にねじ込まれるか、ツイストされるか、摩擦フイットもしくは圧入されるか、パンチ加工されるか、または、その他の方法で締結され得る。縫合糸アンカーは、さまざまな長さのものであることが可能であり、また、直径が1mmから15mmの範囲にあることが可能である。)

「[0035] FIGS.11-13 illustrate generally some of the known suture anchor body type configurations that can be used in accordance with the invention. FIG.11 shows a threaded suture anchor 1102 having a continuous helical thread 1117 wrapping around body 1119, which tapers to a narrow point. As is known, the height and pitch of the thread can vary. Thread 1117 may be a self-tapping thread that allows anchor 1102 to be screwed directly into bone without first having to drill a pilot hole. Alternatively, thread 1117 may be conventional requiring a pre-drilled hole in the bone. FIG.12 shows a tap-in type suture anchor 1202 that can either be tapped directly into bone or into a pre-drilled hole in the bone or a hollow anchoring sleeve pre-installed in the bone. Suture anchor 1202 preferably has a plurality of prongs 1221 that engage the bone or anchoring sleeve to securely hold the anchor in place (see, e.g., U.S.Pat. No.6,143,017). Suture anchor1202may also have, for example, a plurality of suture engaging hooks 1223 for slidably connecting one or more sutures thereto. Note that hooks 1223 may also be included in other embodiments of suture anchors. FIG.13 shows a wedge-like suture anchor 1302 having a plurality of teeth for engaging bone (see, e.g., U.S. Pat. No. 7,217,279). Bone teeth 1325 are oriented longitudinally to facilitate insertion (either directly into bone or into a pilot hole in the bone) and retention of the anchor thereafter, and may vary in number, size, and location on body 1319. Although the shape of teeth 1325 is shown as basically triangular or pyramidal, other shapes are possible. Note that the embodiments of the invention requiring one or more suture anchors are not limited to the body types shown in FIGS.11-13.」
(日本語訳:[0035] 図11?図13は、一般的に、本発明にしたがって使用され得る公知の縫合糸アンカー本体部タイプ構成のうちのいくつかを図示している。図11は、本体部1119を包む連続的な螺旋状のネジ山1117を有するネジ山付きの縫合糸アンカー1102 を示しており、本体部1119は、幅の狭い先端へテーパーが付いている。知られているように、ネジ山の高さおよびピッチは変化することが可能である。ネジ山1117は、セルフタッピングのネジ山であることが可能であり、それは、最初にパイロットホールをドリル加工する必要なしに、アンカー1102が骨の中へ直接的にねじ込まれることを可能にする。代替的に、ネジ山1117は、骨の中に事前にドリル加工された孔部を必要とする従来のものであってもよい。図12は、タップインタイプ(tap-in type) の縫合糸アンカー1202を示しており、タップインタイプの縫合糸アンカー1202は、骨の中へ直接的にタッピングされるか、または、骨の中の事前にドリル加工された孔部、もしくは、骨の中に事前に据え付けられた中空のアンカー固定スリーブの中へタッピングされ得るかのいずれかである。緑合糸アンカー1202は、好ましくは、複数のプロング1221を有しており、複数のプロング1221は、骨またはアンカー固定スリーブに係合し、アンカーを適切な場所にしっかりと保持する(たとえば、米国特許第6,143,017号明細書を参照)。また、縫合糸アンカー1202は、たとえば、1つまたは複数の縫合系を縫合糸アンカー1202にスライド可能に接続するための複数の終合糸係合フック1223を有することが可能である。また、フック1223は、縫合糸アンカーの他の実施形態の中にも含まれ得るということに留意されたい。図13は、骨に係合するための複数の歯を有するくさび状の縫合糸アンカー1302を示している(たとえば、米国特許第7,217,279号明細書を参照)。骨1325は、長手方向に配向されてお り、その後のアンカーの挿入(骨の中へ直接的に、または、骨の中のパイロットホールの 中へのいずれか) および保持を促進させ、また、数、サイズ、および、本体部1319の上の場所に関して変化することが可能である。歯1325の形状は、基本的に三角形またはピラミッド形のものとして示されているが、他の形状も可能である。1つまたは複数の縫合糸アンカーを必要とする本発明の実施形態は、図11~図13に示されている本体部タイプに限定されないということに留意されたい。」

「[0037] FIGS.14-17 show various embodiments of suture anchors having suture attaching mechanisms that can be used with the invention. FIG.14 shows an embodiment of a suture anchor 1402 having an eyelet 1412 formed by a suture loop or biocompatible wire 1422 that extends longitudinally around suture anchor body 1419 in longitudinal channel 1432 (see again, e.g., U.S. Pat. No. 7,217,279). In other similar embodiments, the loop of suture or wire is disposed/secured within the body of the anchor, sometimes with a separate, insertable part. FIG.15 shows suture anchor 1502 having a suture attaching mechanism in the form of an eyelet 1512 integrally extending from a top surface of anchor body 1519, while FIG.16 shows suture anchor 1602 having a recessed eyelet 1612 within a top portion of anchor body 1619. Recessed eyelet 1602 is preferably flush with a top surface of anchor 1602 (i.e., the eyelet does not project beyond or outside the top surface).」
(日本語訳:[0037] 図14?図17は、本発明とともに使用され得る縫合糸取付けメカニズムを 有する縫合糸アンカーのさまざまな実施形態を示している。 図14は、長手方向のチャネル1432の中に縫合糸アンカー本体部1419の周りに長手方向に延在する縫合糸ループまたは生体適合性ワイヤー1422によって形成されたアイレット1412を有する縫合糸アンカー1402の実施形態を示している(たとえば、米国特許第7,217,27 9号明細書を再び参照)。他の同様の実施形態では、縫合糸またはワイヤーのループが、ときには、別々の挿入可能なパーツによって、アンカーの本体部の中に配設/固定されている。図15は、アンカー本体部1519の上部表面から一体的に延在するアイレット1512の形態の縫合糸取付けメカニズムを有する縫合糸アンカー1502を示しており、一方、図16は、アンカー本体部1619の上部部分の中に凹んだアイレット16 12を有する縫合糸アンカー1602を示している。凹んだアイレット1602は、好ましくはアンカー1602の上部表面と同一平面上にある(すなわち、アイレットは、上部表面を越えてまたは上部表面の外側に突き出ていない)。)

















イ 上記アから、文献3には、次の発明(以下「文献3発明」という。)が記載されていると認められる。
「一部が縫合糸アンカー902に設けられている接続部912の内部に位置する一本の縫合糸906であって,
縫合糸906は,前半部及び後半部を含み、
縫合糸アンカー902は、前半部の両端のうち一方の端及び前記後半部の両端部のうち一方の端に具備され、
前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸アンカー902の前記接続部912側の下端側から外部に向かって延在し、
前記前半部の一方の端及び前記後半部の一方の端は、前記接続部912の内部に位置し、
前記前半部の自由端部906yと後半部のループ状の端部906xは、分離され、
前記縫合糸アンカー902の横断面の幅は、前記接続部912側の下端から上端に向かって途中から減少し、
前記縫合糸アンカー902の上端は、尖っておらず、
前記縫合糸アンカー902の前記接続部912側の下端は、前記縫合糸906の前半部の自由端部906y側の端部であり、
前記縫合糸アンカー902の前記接続部912側の下端は、前記縫合糸906の後半部のループ状の端部906x側の端部であり、
前記前半部の両端及び前記後半部の両端は、逆とげを含まない、縫合糸。」

(4)文献4
ア 文献4:特開平08-52154号公報(異議申立人アイサポート ピーティーイー リミテッドの甲第2号証,以下「文献4」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「【0013】
【実施例】図1を参照すると、本発明の縫合糸アンカーの第1の態様が示されている。アンカーはアンカー本体1を有し、この本体1は縦方向に延びておりそして半径方向に延びるフィン2を有する。1対の直径方向に延びる対向するスロットはアンカー本体により形成され、そしてアンカー本体の1端からアンカー本体の第2端から間隔を置いた位置に縦方向に延びる。これらのスロット3はアンカー本体に沿って延びる対向する位置において1対の足4をつくる。球6はアンカーの足4により形成された通路7内に受容される。縫合糸の開口8は球6を通して形成さられており、その中に縫合糸9を受容する。球は通路7内に受容され、そして通路7の開口を拘束する半径方向内方に延びるリム10を介して所定位置に保持される。通路7の開口は球6の直径より多少狭いので、球は最初の状態で縫合糸アンカー内に保持される。通路7は、図6に示すように、アンカーの本体を完全に通して延びる。縫合糸9は球の縫合糸の開口8に通され、次いで縫合糸の両端は引き続いて縦方向の通路7を上に通され、そしてアンカーの上部に形成された開口7aを通してアンカーの上部から外に出る。」




イ 上記記載から、文献4には、次の技術的事項(以下、「文献4に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「アンカー本体1の側壁は、アンカー本体1の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つのスロット3を含む」

(5)文献5
ア 文献5:米国特許出願公開第2011/0282386号明細書(異議申立人アイサポート ピーティーイー リミテッドの甲第3号証,以下「文献5」という。)には、図面とともに次の記載がある。なお、日本語訳は異議申立人アイサポート ピーティーイー リミテッドが提出した「甲第3号証の翻訳文」を援用した。
「[0117]FIG.3 a shows a combination of a surgical needle 128 (depicted as an arrow) and a barbed suture 130 that comprises two suture bodies 135, 145 that are joined by a common junction 138 such as a knot. Both suture bodies 135, 145 comprise a plurality of unidirectionally arranged barbs 115, wherein the barbs 115 of the first suture body 135 are oriented in the direction of the second suture body 145 and the barbs 115 of the second suture body 145 are oriented in the direction of the first suture body 135. Thus, the barbed suture 130 in total comprises bidirectionally arranged barbs.
[0118]The barbed suture comprises barbed sections 120 and barbless sections 125. The barbless sections 125 are present around the common junction 138 and at the terminal sections 141, 143 of the suture 130. The terminal sections 141, 143 are attached to the surgical needle 128, preferably forming a suture loop as disclosed in FIG.3.
[0119]The common junction 138 serves advantageously as a reference or control point for the surgeon to facilitate the identification of the suture's center. Furthermore, the common junction 138 may serve as a control element to avoid an accidental sliding of the barbed suture 130 beyond its center.
[0120]FIG.3b discloses a further example of a surgical needle and a barbed suture combination. The terminal sections 141, 143 of the barbed suture 130 are attached to the surgical needles 128, 129, preferably forming a loop. The surgical needles 128, 129 may be of the same type or may stand for different needle types. With respect to further details and advantages, reference is made in its entirety to the description belonging to FIG.3a.」
(日本語訳:【0117】図3aは、外科手術用ニードル128(矢印として示されている)およびバ ープ付きの縫合糸130の組み合わせを示しており、バーブ付きの縫合糸130は、結び目などのような共通の接合部138によって接合される2つの縫合糸本体部135、145を含む。両方の縫合糸本体部135、145は、複数の単一方向に配置されたバーブ115を含み、第1の縫合糸本体部135のバーブ115は、第2の縫合糸本体部145の方向に配向されており、第2の縫合糸本体部145のバーブ115は、第1の縫合糸本体部135の方向に配向されている。したがって、バーブ付きの縫合糸130は、全体で、双方向に配置されたバーブを含む。
【0118】バーブ付きの縫合糸は、バーブ付きのセクション120とバーブなしセクション125とを含む。バーブなしセクション125は、共通の接合部138の周りに存在しており、また、縫合糸130の端末セクション141、143において存在している。端末セクション141、143は、外科手術用ニードル128に取り付けられており、好ましくは、図3に開示されているような縫合糸ループを形成する。
【0119】共通の接合部138は、有利には、外科医のための参照ポイントまたはコントロールポイントとしての役割を果たし、 縫合糸の中央の識別を促進させる。そのうえ、共通の接合部138は、コントロールエレメントとしての役割を果たし、バーブ付きの縫合糸130のその中央を超える事故的なスライディングを回避することが可能である。
【0120】図3bは、外科手術用ニードルおよびバーブ付きの縫合糸の組み合わせのさらなる例を開示している。バーブ付きの縫合糸130の端末セクション141、143は、外科手術用ニードル128、129に取り付けられており、好ましくは、ループを形成する。外科手術用ニードル128、129は、同じタイプのものであることが可能であり、または、異なるニードルタイプを表すことが可能である。さらなる詳細におよび利点に関して、全体として、図3aに属する説明が参照される。)





イ 上記アから、文献5には、次の技術的事項(以下「文献5に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「縫合糸130は,互いに反対方向に傾斜したバーブ115が形成された一方の縫合糸本体部135及び他方の縫合糸本体部145と,を含み,
前記一方の縫合糸本体部135の縦軸から分岐した前記バーブ115と、該分岐点から該一方の縫合糸本体部135の一方の端部へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記他方の縫合糸本体部145の縦軸から分岐した前記バーブ115と、該分岐点から該他方の縫合糸本体部145の一方の端部へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角である」

(6)文献6、文献7
ア 文献6:米国特許出願公開第2011/0054522号明細書(異議申立人アイサポート ピーティーイー リミテッドの甲第5号証,以下「文献6」という。)と、文献7:特表2013-502990号公報(異議申立人アイサポート ピーティーイー リミテッドの甲第6号証,以下「文献7」という。)は、ファミリー文献であり、両者には、図面とともにそれぞれ同じ内容の次の記載がある。
「【0036】Referring to FIGS. 1A and 1B, a bidirectional barbed suture 20 includes a first leg 22 having a first set of barbs 24 and a first suture needle 26 provided at the distal end of the first leg. The bidirectional barbed suture 20 includes a second leg 28 having a second set of barbs 30 and a second suture needle 32 provided at the distal end of the second leg. The first set of barbs 24 extend in an opposite direction from the second set of barbs 30. The barbed suture 20 includes a core 34, and the first and second sets of barbs 24, 30 project outwardly from the core 34. The core 34 has a central region 36 that is located and extends between the first and second sets of barbs 24, 30. Before or during a surgical procedure, the first and second legs 22, 28 of the bidirectional barbed suture 20 are passed through respective first and second openings 38A, 38B of a pledget 40. In one embodiment, the first suture needle 26 is passed through the first opening 38A of the pledget 40 and the second suture needle 32 is passed through the second opening 38B of the pledget 40. The first and second legs 22, 28 are pulled through the pledget openings so that the pledget 40 is positioned within the central region 36 of the core 34, which is between the first set of barbs 24 and the second set of barbs 30.」(文献6)

「【0020】
図1A及び1Bを参照すると、双方向性有棘縫合糸20は、棘の第一セット24を有する第一脚部22と、第一脚部の遠位端に提供された第一縫合針26と、を含む。双方向性有棘縫合糸20は、棘の第二セット30を有する第二脚部28と、第二脚部の遠位端に提供された第二縫合針32と、を含む。棘の第一セット24は、棘の第二セット30から反対方向に延びている。有棘縫合糸20は、コア34と、コア34から外側に突き出す棘の第一及び第二セット24,30と、を含む。コア34は、棘の第一セット24と第二セット30との間に配置されて、そこから延びる中央領域36を有する。外科的手技の前又はその最中に、双方向性有棘縫合糸20の第一及び第二脚部22,28は、綿撒糸40の対応する第一及び第二開口部38A,38Bを通過する。1つの実施形態では、第一縫合針26は、綿撒糸40の第一開口部38Aを通過し、並びに第二縫合針32は、綿撒糸40の第二開口部38Bを通過する。棘の第一セット24と棘の第二セット30との間にあるコア34の中央領域36内に、綿撒糸40が配置されるように、第一及び第二脚部22,28が綿撒糸開口部を通って引っ張られる。」(文献7)

イ 上記アから、文献6及び文献7には、次の技術的事項(以下「文献6、7に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「双方向性有棘縫合糸20は,互いに反対方向に傾斜した棘の第一セット24,棘の第二セット30が形成された第一脚部22及び第二脚部28と,を含み,
前記第一脚部22の縦軸から分岐した前記棘の第一セット24と、該分岐点から該第第一脚部22の一方の端部へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記第二脚部28の縦軸から分岐した前記棘30と、該分岐点から該第二脚部28の一方の端部へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角である」

3 当審の判断
(1)特許法第29条第1項3号について
ア 請求項1に係る発明について
(ア)対比
請求項1に係る発明と文献1発明を対比する。
後者の「アンカー部32」は,前者の「縫合糸支持体」に相当し,以下同様に,「出口のない穴40」は「空洞」に,「縫合糸部34」は「縫合糸」に,「とげ48」は「逆とげ」に、「第1の部分58」は「前半部」に,「第2の部分60」は「後半部」に,「一方の端部」は「第一の末端」に,「アンカー部32のクロスバー42側」は「縫合糸支持体の下端」に、「アンカー部32の遠位尖端38側」は「縫合糸支持体の上端」に、「縫合糸部34の第1の部分58の第1の端部50側」は「縫合糸の前半部の第二の末端側」に、「縫合糸部34の第2の部分60の第2の端部52側」は「縫合糸の後半部の第二の末端側」に、それぞれ相当する。
そうすると、両発明は、以下の一致点1-1で一致し、以下の相違点1-1ないし1-4で相違する。
<一致点1-1>
「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の下端側から外部に向かって延在し、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部である、縫合糸。」

<相違点1-1>
「縫合糸支持体の側壁」に関して,前者は,「前記縫合糸支持体の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含」むのに対して,後者は,そのような間隙を含まない点。
<相違点1-2>
「縫合糸支持体の横断面の幅」及び「縫合糸支持体の上端」に関して,前者は,それぞれ「下端から上端に近づくほど減少し」及び「尖っておらず」であるのに対して,後者は,そうでない点。
<相違点1-3>
前者は、「前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料から」なるものであるのに対して、後者は、そのような特定がない点。
<相違点1-4>
前者は、「顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される」ものであるのに対して、後者は、そのような特定がない点。

(イ)判断
そして、上記相違点1-1ないし1-4は、単なる設計事項、周知・慣用技術の付加・置換、及び技術常識でもないので、実質的な相違点であると認められる。したがって、請求項1に係る発明は、文献1発明ではない。

イ 請求項2に係る発明について
(ア)対比
請求項2に係る発明と文献1発明を対比する。
後者の「アンカー部32」は,前者の「縫合糸支持体」に相当し,以下同様に,「出口のない穴40」は「空洞」に,「縫合糸部34」は「縫合糸」に,「とげ48」は「逆とげ」に、「第1の部分58」は「前半部」に,「第2の部分60」は「後半部」に,「一方の端部」は「第一の末端」に,「「第1の部分58の第1の端部50側」は「前半部の第二の末端側」に、「第2の部分60の第2の端部52側」は「後半部の第二の末端側」に、アンカー部32のクロスバー42側」は「縫合糸支持体の下端」に、「アンカー部32の遠位尖端38側」は「縫合糸支持体の上端」に、それぞれ相当する。
そうすると、両発明は、以下の一致点1-2で一致し、上記相違点1-2及び1-4で相違する。
<一致点1-2>
「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記前半部の第二の末端と前記後半部の第二の末端は、分離された、縫合糸。」

(イ)判断
そして、相違点1-2及び1-4は、単なる設計事項、周知・慣用技術の付加・置換、及び技術常識でもないので、実質的な相違点であると認められるので、請求項2に係る発明は、文献1発明ではない。

ウ 請求項3に係る発明について
(ア)対比
請求項3に係る発明と文献1発明を対比する。
請求項3は請求項2を引用しているので、両者は、少なくとも上記相違点1-2及び1-4で相違する。

(イ)判断
そして、相違点1-2及び1-4は、単なる設計事項、周知・慣用技術の付加・置換、及び技術常識でもないので、実質的な相違点であると認められるので、請求項3に係る発明は、文献1発明ではない。

エ 請求項4に係る発明について
(ア)対比
請求項4に係る発明と文献1発明を対比する。
請求項4は請求項2又は3を引用しているので、一両者は、少なくとも上記相違点1-2及び1-4で相違する。

(イ)判断
そして、相違点1-2及び1-4は、単なる設計事項、周知・慣用技術の付加・置換、及び技術常識でもないので、実質的な相違点であると認められるので、請求項4に係る発明は、文献1発明ではない。

オ 請求項5に係る発明について
(ア)対比
請求項5に係る発明と文献1発明を対比する。
後者の「アンカー部32」は,前者の「縫合糸支持体」に相当し,以下同様に,「出口のない穴40」は「空洞」に,「縫合糸部34」は「縫合糸」に,「とげ48」は「逆とげ」に、「第1の部分58」は「前半部」に,「第2の部分60」は「後半部」に,「一方の端部」は「第一の末端」に,「アンカー部32のクロスバー42側」は「縫合糸支持体の底面」に、「アンカー部32の遠位尖端38側」は「縫合糸支持体の上面」に、「縫合糸部34の第1の部分58の第1の端部50側」は「縫合糸の前半部の第二の末端側」に、「縫合糸部34の第2の部分60の第2の端部52側」は「縫合糸の後半部の第二の末端側」に、それぞれ相当する。
そうすると、両発明は、以下の一致点1-3で一致し、上記相違点1-3及び1-4に加えて、以下の相違点1-1’及び相違点1-2’で相違する。

<一致点1-3>
「前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の底面側から外部に向かって延在し、
前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部であり、
前記前半部の両端及び前記後半部の両端は、逆とげを含まない、縫合糸。」

<相違点1-1’>
「縫合糸支持体の側壁」に関して,前者は,「前記縫合糸支持体の底面から上面の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含」むのに対して,後者は,そのような間隙を含まない点。
<相違点1-2’>
「縫合糸支持体の横断面の幅」及び「縫合糸支持体の上面」に関して,前者は,それぞれ「底面から上面に近づくほど減少し」、「尖っておらず」であるのに対して,後者は,そうでない点。

(イ)判断
そして、上記相違点1-1’、1-2’、1-3,1-4は、単なる設計事項、周知・慣用技術の付加・置換、及び技術常識でもないので、実質的な相違点であると認められるので、請求項5に係る発明は、文献1発明ではない。
なお、相違点1-1’と相違点1-1、相違点1-2’と相違点1-2は、相違点1-1,1-2において「下端」及び「上端」という語句が、相違点1-1’、1-2’においてそれぞれ「底面」及び「上面」に変更されているのみで、相違点としては実質的に同じである。

カ まとめ
以上から、請求項1ないし5に係る発明は、文献1発明であるとすることはできず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(2)特許法第29条第2項について
ア 文献1を主引例とする場合
(ア)請求項1に係る発明について
a 対比
上記「(1)ア(ア)対比」と同じで、上記一致点1-1で一致し、上記相違点1-1ないし1-4で相違する。

b 判断
(a)文献1発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものか否かについて
事案の関係上、まず相違点1-2について判断する。
文献1の[0022]には「図1に示すように、アンカー部32の外面には、骨を通る一方向へのアンカー部32の移動を可能にするが、アンカー部32が骨の中に埋め込まれた後のアンカー部32の引き抜きに抵抗する隆起部44またはとげが形成され得る。」と記載されている。 文献1の上記記載及び図1によれば、 文献1に記載の「アンカー部32」に2つの「隆起部44」を設けることによって「アンカー部32」が骨から引き抜かれないように固定しているものと理解される(FIG.4参照)。すなわち、「アンカー部32」の幅を「クロスバー42」が存在する面から「遠位尖端38」にかけて増減させることは、「アンカー部32」を骨から引き抜かれないように固定させるという役割を果たすものと理解される。
そうすると、文献1発明において、特に文献1のFIG.4に記載されているような使用をする場合、「アンカー部32」の形状を、その幅が「クロスバー42」が存在する部分から「遠位尖端38」近づくほど減少するように構成することは、「隆起部44」をなくすこととなり、「アンカー部32」が骨から抜けやすくなってしまうと理解されるところ、そのような設計変更を行うことは、「アンカー部32」が有する骨からの引き抜きに抵抗するという機能を阻害するものである。
したがって、文献1発明の「アンカー部32」の形状を、相違点1-2に係る請求項1に係る発明の構成に設計変更することは、「アンカー部32」の機能をなくすことにつながり、阻害要因があるというべきである。
以上から、他の相違点を検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、文献1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(b)文献1発明、文献2及び文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものか否かについて
事案の関係上、まず相違点1-2について判断する。
文献2および文献3に記載された技術的事項が、相違点1-2に係る請求項1に係る発明の構成であったとしても、上記(a)で検討したとおり、文献1発明の「アンカー部32」の機能を損なうような相違点1-2に係る請求項1に係る発明の構成の適用を文献1発明に敢えて行うことは、阻害要因があるというべきである。
したがって、文献1発明に上記文献2および3に記載された技術的事項を適用して相違点1-2に係る請求項1に係る発明の如く構成することは、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
以上から、他の相違点を検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、文献1発明、文献2及び文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)請求項2ないし4に係る発明について
a 対比
上記「(1)イ(ア)」ないし「(1)エ(ア)」の対比と同じ。

b 判断
請求項2ないし4に係る発明と文献1発明は、少なくとも上記相違点1-2で相違するので、上記「(ア)b(a)(b)」で検討したとおり、他の相違点を検討するまでもなく、請求項2ないし4に係る発明は、文献1発明に基いて、又は文献1発明、文献2及び文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ)請求項5に係る発明について
a 対比
上記「(1)オ(ア)」の対比と同じ。

b 判断
上記「(1)オ(ア)」の対比で示したように、請求項5に係る発明と文献1発明は、少なくとも相違点1-2’で相違する。また、上記したように相違点1-2と相違点1-2’は実質的に同じであるので、上記「(ア)b(a)(b)」で検討したとおり、他の相違点を検討するまでもなく、請求項5に係る発明は、文献1発明に基いて、又は文献1発明、文献2及び文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(エ)請求項6に係る発明について
a 対比
請求項6に係る発明と文献1発明を対比すると、請求項6は請求項1ないし5のいずれか一項を引用しているので、少なくとも上記相違点1-2又は上記相違点1-2’で相違する。

b 判断
上記したように相違点1-2と相違点1-2’は実質的に同じであるので、上記「(ア)b(a)(b)」で検討したとおり、他の相違点を検討するまでもなく、請求項に6係る発明は、文献1発明、文献2及び文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(オ)請求項7に係る発明について
a 対比
請求項7に係る発明と文献1発明を対比すると、請求項7は請求項1ないし4のいずれか一項を引用しているので、少なくとも上記相違点1-2で相違する。

b 判断
上記「(ア)b(a)(b)」で検討したとおり、他の相違点を検討するまでもなく、請求項に7係る発明は、文献1発明、文献2及び文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたとはいえない。

(カ)まとめ
以上から、請求項1ないし5に係る発明は、文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。また、請求項1ないし7に係る発明は、文献1に記載された発明、文献2及び文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

イ 文献3を主引例とする場合
(ア)請求項1に係る発明について
a 対比
請求項1に係る発明と文献3発明を対比する。
後者の「縫合糸アンカー902」は,前者の「縫合糸支持体」に相当し,以下同様に,「接続部912」は「空洞」に,「縫合糸906」は「縫合糸」に,「一方の端部」は「第一の末端」に,「縫合糸アンカー902の接続部912側の下端」は「縫合糸支持体の下端」に、「縫合糸906の前半部の自由端部906y側」は「縫合糸の前半部の第二の末端側」に、「縫合糸906の後半部のループ状の端部906x側」は「縫合糸の後半部の第二の末端側」に、それぞれ相当する。
そうすると、両発明は、以下の一致点3-1で一致し、以下の相違点3-1ないし3-5で相違する。
<一致点3-1>
「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の下端側から外部に向かって延在し、
前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部である、縫合糸。」

<相違点3-1>
「縫合糸の前半部及び後半部」について、前者は、「互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成され」さらに「前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であ」るのに対して、後者は、逆とげを有さない点。
<相違点3-2>
「縫合糸支持体の側壁」に関して,前者は,「前記縫合糸支持体の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含」むのに対して,後者は,そのような間隙を含まない点。
<相違点3-3>
「縫合糸支持体の横断面の幅」について、前者は、「下端から上端に近づくほど減少し」ているのに対して、後者は、そうでない点。
<相違点3-4>
前者は、「前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料から」なるものであるのに対して、後者は、そのような特定がない点。
<相違点3-5>
前者は、「顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される」ものであるのに対して、後者は、そのような特定がない点。

b 判断
事案の関係上、相違点3-1、相違点3-2、及び相違点3-5について検討する。
(a)相違点3-1について
相違点3-1に係る請求項1に係る発明の構成は、上記「文献1に記載された技術的事項」、「文献5に記載された技術的事項」、「文献6,7に記載された技術的事項」として示したように、この分野において周知技術(以下、「文献1,文献5ないし7に例示された周知技術」という。)である。
しかしながら、文献3の[0032]において「図7?図9は、本発明による縫合糸アンカー構成のいくつかの実施形態を示している。それぞれの構成において、長い連続的な縫合糸が、アンカーにスライド可能に接続されており、ループ状の端部が、スライド可能な接続部の一方の側から延在し、縫合糸の1つまたは2つの自由端部が、スライド可能な接続部の他方の側から延在するように なっている。」と記載されていることからも明らかなとおり、文献3発明は「縫合糸906」がスライドすることを前提とするものであり、仮に「縫合糸906」に逆とげが設けられる場合には、当該逆とげが「縫合糸アンカー902」の「接続部912」に引っ掛かり、「縫合糸906」のスライドが阻害されるおそれがある。
したがって、文献3発明に上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術を適用して相違点3-1に係る請求項1に係る発明の如く構成することを当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(b)相違点3-2について
本件特許の明細書の段落【0025】に「縫合糸の一方の末端に具備された縫合糸支持体は、縫合がほどけないようにする結び目の役割を行うだけではなく、縫合やリフティングを実施しながら、糸を引っ張るときに、縫合体支持体の下側末端に形成された切開された部分または開いた間隙によって、縫合体支持体が動かないように位置がしっかりと固定される。従って、リフティング効果を安定して長く持続させる。」と記載されているように、請求項1に係る発明の縫合糸支持体は、組織等をリフティングするための結び目として機能し、リフティングされる組織等が縫合体支持体の下側末端に接触する際に、下側末端に形成された間隙に組織が入り込み固定されるものと解される。
一方、文献3発明の縫合糸アンカーは、【0021】及び図1の記載から明らかなように、骨の中に埋め込まれることで固定されるものであるので、縫合糸アンカーの接続側(請求項1に係る発明の「下側末端」に相当。)に間隙を設ける必要はない。
したがって、文献2に記載された技術的事項及び文献4に記載された技術的事項が相違点3-2に係る構成に相当するものであったとしても、文献3発明に、それら技術的事項を適用する動機付けはないので、文献3発明に上記文献2,文献4に記載された技術的事項を適用して相違点3-2に係る請求項1に係る発明の如く構成することを当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(c)相違点3-5について
本件特許の明細書の段落【0025】に「縫合糸の一方の末端に具備された縫合糸支持体は、縫合がほどけないようにする結び目の役割を行うだけではなく、縫合やリフティングを実施しながら、糸を引っ張るときに、縫合体支持体の下側末端に形成された切開された部分または開いた間隙によって、縫合体支持体が動かないように位置がしっかりと固定される。従って、リフティング効果を安定して長く持続させる。」と記載されているように、請求項1に係る発明の縫合体支持体は、組織等をリフティングするための結び目として機能し、糸を引っ張るときにリフティングされる組織等が縫合体支持体の下側末端に接触するものである。
一方、文献3発明の縫合糸アンカーについて、文献3に皮膚等のリフティングに用いられるという記載や示唆はなく、また、【0021】及び図1の記載から明らかなように、骨の中に埋め込まれることで固定されるものであるので、皮膚をリフティングする(持ち上げる)ための結び目として機能するものであるといえないし、皮膚をリフティングする(持ち上げる)ための結び目として機能するように皮膚に埋め込むように用途変更することは、阻害要因があるというべきである。

以上から、他の相違点を検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、文献3発明、文献2及び文献4に記載された技術的事項及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)請求項2に係る発明について
a 対比
請求項2に係る発明と文献3発明を対比する。
後者の「縫合糸アンカー902」は,前者の「縫合糸支持体」に相当し,以下同様に,「接続部912」は「空洞」に,「縫合糸906」は「縫合糸」に,「一方の端部」は「第一の末端」に,「縫合糸アンカー902の接続部912側の下端」は「縫合糸支持体の下端」に、「縫合糸906の前半部の自由端部906y側」は「縫合糸の前半部の第二の末端側」に、「縫合糸906の後半部のループ状の端部906x側」は「縫合糸の後半部の第二の末端側」に、それぞれ相当する。
そうすると、両発明は、以下の一致点3-2で一致し、上記相違点3-1、3-3、3-5で相違する。
<一致点3-2>
「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の第二の末端と前記後半部の第二の末端は、分離され、
前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部である、縫合糸。」

b 判断
相違点3-1及び相違点3-5については、上記(ア)b(a)及び(c)で示したとおりであるので、他の相違点を検討するまでもなく、請求項2に係る発明は、文献3発明及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ)請求項3に係る発明について
a 対比
請求項3に係る発明と文献3発明を対比すると、一致点3-2に加えて、「前記前半部の第一の末端及び前記後半部の第一の末端は、前記空洞の内部に位置する」点で一致(以下、「一致点3-3」という。)し、請求項3は請求項2を引用しているので、少なくとも上記相違点3-1及び相違点3-5で相違する。

b 判断
相違点3-1及び相違点3-5については、上記(ア)b(a)及び(c)で示したとおりであるので、他の相違点を検討するまでもなく、請求項3に係る発明は、文献3発明及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(エ)請求項4に係る発明について
a 対比
請求項4に係る発明と文献3発明を対比する。
そうすると、両発明は、上記一致点3-2又は一致点3-3で一致し、少なくとも上記相違点3-1ないし3-5で相違する。

b 判断
相違点3-1、相違点3-2及び相違点3-5については、上記(ア)b(a)ないし(c)で示したとおりであるので、他の相違点を検討するまでもなく、請求項4に係る発明は、文献3発明、文献2及び文献4に記載された技術的事項及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(オ)請求項5に係る発明について
a 対比
請求項5に係る発明と文献3発明を対比する。
後者の「縫合糸アンカー902」は,前者の「縫合糸支持体」に相当し,以下同様に,「接続部912」は「空洞」に,「縫合糸906」は「縫合糸」に,「一方の端部」は「第一の末端」に,「縫合糸アンカー902の接続部912側の下端」は「縫合糸支持体の底面」に、「縫合糸支持体の上端」は「縫合糸支持体の上面」に、「縫合糸906の前半部の自由端部906y側」は「縫合糸の前半部の第二の末端側」に、「縫合糸906の後半部のループ状の端部906x側」は「縫合糸の後半部の第二の末端側」に、それぞれ相当する。
そうすると、両発明は、以下の一致点3-1’で一致し、以下の相違点3-1’ないし3-3’及び上記相違点3-4、3-5で相違する。
<一致点3-1’>
「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の底面側から外部に向かって延在し、
前記縫合糸支持体の上面は、尖っておらず、
前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部である、縫合糸。」

<相違点3-1’>
「縫合糸の前半部及び後半部」について、前者は、「互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成され」さらに「前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であ」るのに対して、後者は、逆とげを有さない点。
<相違点3-2’>
「縫合糸支持体の側壁」に関して,前者は,「前記縫合糸支持体の底面から上面の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含」むのに対して,後者は,そのような間隙を含まない点。
<相違点3-3’>
「縫合糸支持体の横断面の幅」について、前者は、「底面から上面に近づくほど減少し」ているのに対して、後者は、そうでない点。

b 判断
相違点3-1ないし3-3と相違点3-1’ないし3-3’は、前者において「上端」及び「下端」が、後者において「上面」及び「底面」となっているだけで、実質的に同じであるので、相違点3-1’、3-2’、3-5に関する判断は、上記(ア)bにおける相違点3-1,3-2,3-5に関する判断と同様となる。
そうすると、他の相違点を検討するまでもなく、請求項5に係る発明は、文献3発明、文献2及び文献4に記載された技術的事項及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(カ)請求項6に係る発明について
a 対比
請求項6に係る発明と文献3発明を対比すると、請求項6は請求項1ないし5のいずれか一項を引用しているので、少なくとも上記相違点3-1,3-1’,3-2、3-2’、3-5で相違する。

b 判断
上記したように相違点3-1と相違点3-1’、相違点3-2と相違点3-2’は実質的に同じであるので、相違点3-1’、3-2’、3-5に関する判断は、上記(ア)bにおける相違点3-1,3-2,3-5に関する判断と同様となる。
そうすると、他の相違点を検討するまでもなく、請求項6に係る発明は、文献3発明及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、又は、文献3発明、文献2及び文献4に記載された技術的事項及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(キ)請求項7に係る発明について
a 対比
請求項7に係る発明と文献3発明を対比すると、請求項7は請求項1ないし4のいずれか一項を引用しているので、少なくとも上記相相違点3-1ないし3-5で相違する。

b 判断
上記(ア)bで検討した相違点3-1,3-2,3-5に関する判断により、他の相違点を検討するまでもなく、請求項に7係る発明は、文献3発明、文献2及び文献4に記載された技術的事項及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ク)まとめ
以上から、請求項1ないし7に係る発明は、文献3発明、文献2及び文献4に記載された技術的事項及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

ウ 文献2を主引例とする場合
(ア)請求項2に係る発明について
a 対比
請求項2に係る発明と文献2発明を対比する。
後者の「組織係合要素30」は,前者の「縫合糸支持体」に相当し,以下同様に,「内部78」は「空洞」に,「細長い柔軟体20」は「縫合糸」に,「一方の末端」は「第一の末端」に,「張出し端77」は「縫合糸支持体の下端」に、「前半部の他方の端21」は「縫合糸の前半部の第二の末端側」に、「後半部の他方の端22」は「縫合糸の後半部の第二の末端側」に、「顔面リフトまたは顔面輪郭形成を含む手術に用いられ」は「顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される」に、それぞれ相当する。
そうすると、両発明は、以下の一致点2-1で一致し、以下の相違点2-1で相違する。
<一致点2-1>
「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の第二の末端と前記後半部の第二の末端は、分離され、
前記縫合糸支持体の横断面の幅は、下端から上端に近づくほど減少し、
前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される、縫合糸。」

<相違点2-1>
「縫合糸の前半部及び後半部」について、前者は、「互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成され」さらに「前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であ」るのに対して、後者は、逆とげを有さない点。

b 判断
(a)相違点2-1について
文献2の【0019】の「・・・本発明の縫合糸アセンブリは、美容整形手術中の顔面リフトまたは顔面輪郭形成を含む手術に用いられるのに、特に適している。このような美容整形手術での使用中に、組織係合要素30?47にてもたらされる方向性把持または方向性特性により、縫合糸のリフト能力および輪郭形成能力がさらに高められることになる。・・・いったん皮膚下に挿入されると、組織係合要素30?47の方向性特性が、組織に対して永久的支持構造をもたらし、組織のリフトおよび輪郭形成を実現することになる。」と記載されていることから、「組織係合要素30?47」は、作用機能的には請求項2に係る発明の「逆とげ」に対応するものであるといえる。そうすると、上記相違点2-1に係る請求項2に係る発明の構成が、文献1,文献5ないし7に例示された周知技術であったとしても、文献2発明の組織係合要素30?47に加えてさらに当該周知技術を追加するような動機付けはない。
したがって、請求項2に係る発明は、文献2発明及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)請求項3に係る発明について
a 対比
請求項3に係る発明と文献2発明を対比すると、両発明は、上記一致点2-1に加えて、「前記前半部の第一の末端及び前記後半部の第一の末端は、前記空洞の内部に位置する、」点で一致(以下、「一致点2-2」という。)し、上記相違点2-1で相違する。

b 判断
相違点2-1については、上記(ア)bで示したとおりであるので、請求項3に係る発明は、文献2発明及び上記文献1,文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ)請求項4に係る発明について
a 対比
請求項4に係る発明と文献2発明を対比すると、両発明は、上記一致点2-1又は一致点2-2に加えて、「前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなる」点で一致(以下、「一致点2-3」という。)し、少なくとも上記相違点2-1で相違する。

b 判断
相違点2-1については、上記(ア)bで示したとおりであるので、請求項4に係る発明は、文献2発明、文献2及び4に記載された技術的事項、上記文献1及び文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(エ)請求項5に係る発明について
a 対比
請求項5に係る発明と文献2発明を対比する。
後者の「組織係合要素30」は,前者の「縫合糸支持体」に相当し,以下同様に,「内部78」は「空洞」に,「細長い柔軟体20」は「縫合糸」に,「一方の末端」は「第一の末端」に,「張出し端77」は「縫合糸支持体の下端」に、「前半部の他方の端21」は「縫合糸の前半部の第二の末端側」に、「後半部の他方の端22」は「縫合糸の後半部の第二の末端側」に、「吸収性材料」は「生体内で吸収可能な材料」に、「顔面リフトまたは顔面輪郭形成を含む手術に用いられ」は「顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される」に、それぞれ相当する。
そうすると、両発明は、以下の一致点2-4で一致し、上記相違点2-1に加え、以下の相違点2-2ないし2-4で相違する。
<一致点2-4>
「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記縫合糸支持体の横断面の幅は、底面から上面に近づくほど減少し、
前記縫合糸支持体の上面は、尖っておらず、
前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなり、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用され、
前記前半部の両端及び前記後半部の両端は、逆とげを含まない、縫合糸。」

<相違点2-2>
「縫合糸支持体の側壁」に関して,前者は,「前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の底面から上面の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含」むのに対して,後者は,そのような間隙を含まない点。
<相違点2-3>
前者は、「前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の底面側から外部に向かって延在し」ているのに対して、後者はそうでない点。
<相違点2-4>
前者は、「前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部であ」るのに対して、後者はそうでない点。

b 判断
相違点2-1については、上記(ア)bで示したとおりであるので、他の相違点について検討するまでもなく、請求項5に係る発明は、文献2発明、文献2及び4に記載された技術的事項、及び上記献1及び文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(オ)請求項6に係る発明について
a 対比
請求項6に係る発明と文献2発明を対比すると、請求項6は請求項1ないし5のいずれか一項を引用しているので、少なくとも上記相違点2-1で両者は相違する。

b 判断
相違点2-1については、上記(ア)bで示したとおりであるので、他の相違点について検討するまでもなく、請求項6に係る発明は、文献2発明、文献2及び4に記載された技術的事項、及び上記献1及び文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることだできたとはいえない。

(カ)請求項7に係る発明について
a 対比
請求項7に係る発明と文献2発明を対比すると、請求項7は請求項1ないし4のいずれか一項を引用しているので、少なくとも上記相違点2-1で両者は相違する。

b 判断
相違点2-1については、上記(ア)bで示したとおりであるので、他の相違点について検討するまでもなく、請求項7に係る発明は、文献2発明、文献2及び4に記載された技術的事項、及び上記献1及び文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(キ)まとめ
以上から、請求項2ないし7に係る発明は、文献2発明、文献2及び4に記載された技術的事項、及び上記献1及び文献5ないし7に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、請求項2ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

(3)特許法第36条第6項第1号について
ア 取消理由通知において、「(1)請求項1及び2には,「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸」と記載されているが,発明の詳細な説明には,縫合糸支持体に両末端部を貫通する連通孔を形成し,この連通孔に縫合糸を通して結び目を形成することで,縫合糸を縫合糸支持体に取り付ける構成しか記載されておらず,前記請求項1,2に記載されているように,結び目を有さない構成については何ら記載されていないし,示唆もされていない。」旨指摘したが、発明の詳細な説明の【0021】には、「縫合糸支持体を縫合糸に結合する方法としては、例えば、・・・結び目50(図2a)をつけたり、あるいは熱などを加えて縫合糸が撚れた部分を形成する段階とを含み、縫合糸支持体を縫合糸から分離させない方法を使用することができるが、それに制限されるものではない。」と記載されており、縫合糸を縫合糸支持体に取り付ける構成は、必ずしも結び目に限定されることはない。したがって、「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸」は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

イ 取消理由通知において、「(2)請求項1及び2には,「前記縫合糸は、中央部と、第1末端部及び第2末端部と、前記中央部及び前記第1末端部の間の第1抵抗部、及び、前記中央部及び前記第2末端部の間の第2抵抗部と、を含み、」と記載されているが,発明の詳細な説明には,縫合糸支持体が設けられる側を「第1末端部」とし,縫合糸支持体が設けられない側を「第2末端部」と説明しているのみであって,前記請求項1,2に記載された構成については何ら記載されていないし,示唆もされていない。」旨指摘したが、本件訂正(訂正事項1,6,13)によって、縫合糸支持体が設けられる側の縫合糸の前半部の末端及び後半部の末端のそれぞれを「第一の末端」とし、また、それが設けられていない側の縫合糸の前半部の末端及び後半部の末端をそれぞれ「第二の末端」として規定するように訂正されているので、発明の詳細な説明に記載されたものである。

ウ 取消理由通知において、「 (3)(a)請求項1には,「1本の縫合糸であって、・・・前記縫合糸は、前記空洞の底面の2か所から前記縫合糸支持体の外部に延在し」と記載されているが,発明の詳細な説明には,「切頭円錐状または切頭角錐状の形状を有し,両末端部を貫通する連通孔を具備」する縫合糸支持体の構成しか記載されておらず,「縫合糸支持体の下端が面で覆われ,この面の2か所から縫合糸が延出している構成」については何ら記載されていないし,示唆もされていない。
(b)また,請求項1には,「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、・・・前記縫合糸は、前記空洞の底面の2か所から前記縫合糸支持体の外部に延在し」と記載され,請求項2には,「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、・・・前記第1末端部と前記第2末端部は、分離され、」と記載されていることから,縫合糸が縫合糸支持体の上面から底面にかけて必ずしも貫通しないものを含む記載となっているが,発明の詳細な説明には,縫合糸が縫合糸支持体の上面から底面にかけて貫通した実施例のみが記載されており,貫通しない構成については何ら記載されていないし,示唆もされていない。」旨指摘したが、(a)に関して、本件訂正(訂正事項2、訂正事項13)によって、「2か所」が削除されたため、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。
また、(b)に関し、縫合糸が縫合糸支持体の上面から底面にかけて必ずしも貫通しないものを含む記載となっている点については、単に縫合糸の前半部及び後半部につき、縫合糸支持体の下端側から外部へ向かう空間との位置関係を規定したものであり、縫合糸支持体の形状やその上端ないし上面を縫合糸が貫通するか否かを直接に規定するものではない。したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。

エ 取消理由通知において、「(4)請求項1及び2には,「前記縫合糸支持体の横断面の幅は、底面から上面に近づくほど減少する」と記載されているが,この記載では,縫合糸支持体の上端側が尖端状の形態も含まれるが,発明の詳細な説明には,「切頭円錐状または切頭角錐状の形状を有し,両末端部を貫通する連通孔を具備」する縫合糸支持体の構成しか記載されていない。」旨指摘したが、この点に関して、本件訂正(訂正事項4、5、訂正事項8,9、訂正事項13)によって、縫合糸支持体の上面又は上端が「尖っておらず」と訂正されたため、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。

オ 取消理由通知において、「(5)請求項1及び4には,「前記縫合糸支持体は、底面から上方に切開された部分である少なくとも一つの間隙を含み」と記載されているが,発明の詳細な説明には,「切開された部分」はスリット,「間隙」は切り欠きとして,それぞれ別物として説明されており,前記請求項に記載されているような,両者が一体であるかのような構成については何ら記載されていないし,示唆もされていない。」旨指摘したが、この点に関して、本件訂正(訂正事項3、11、13)によって、当該構成が発明の詳細な説明に記載された「間隙」に対応するように訂正されたため、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。

したがって、上記アないしオから、請求項1ないし7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する特許出願に対してされたものであるといえる。

(4)特許法第36第6項第2号について
ア 取消理由通知において、「(1)請求項1及び2には,「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸」と記載されているが,縫合糸支持体を縫合糸に取り付けるための具体的な手段が何ら規定されておらず,不明確である」旨指摘したが、「一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸」という限りにおいて前記記載は明確であり、必ずしも縫合糸支持体を縫合糸に取り付けるための具体的な手段の記載を必要としない。

イ 取消理由通知において、「(2)請求項1及び2には,「前記縫合糸は、中央部と、第1末端部及び第2末端部と、前記中央部及び前記第1末端部の間の第1抵抗部、及び、前記中央部及び前記第2末端部の間の第2抵抗部と、を含み、」と記載されているが,上記理由3の(2)で指摘したとおり,発明の詳細な説明と齟齬しており,不明確である。」旨指摘したが、本件訂正(訂正事項1,6,13)によって、縫合糸支持体が設けられる側の縫合糸の前半部の末端及び後半部の末端のそれぞれを「第一の末端」とし、また、それが設けられていない側の縫合糸の前半部の末端及び後半部の末端をそれぞれ「第二の末端」として規定するように訂正されているので、発明の詳細な説明と齟齬はなく,明確である。

ウ 取消理由通知において、「(3)請求項1には,「1本の縫合糸であって、・・・前記縫合糸は、前記空洞の底面の2か所から前記縫合糸支持体の外部に延在し」と記載されているが,「空洞の底面の2か所」という記載では単に場所を表すのではなく,物として存在するかのような表現となっていることから,不明確である。また,空洞の底面の2か所から縫合糸支持体の外部に延在する1本の縫合糸を取り付ける構成についても不明確である。」旨指摘したが、本件訂正(訂正事項2、訂正事項13)によって、「2か所」が削除されたため、明確となった。また、上記記載の明確性の判断において空洞の底面の2か所から縫合糸支持体の外部に延在する1本の縫合糸を取り付ける構成までは必要としない。

エ 取消理由通知において、「(4)請求項1及び2には,「前記縫合糸支持体の横断面の幅は、底面から上面に近づくほど減少する」と記載されているが,具体的にどのような形状を意味するのか不明確である。」旨指摘したが、この点に関して、本件訂正(訂正事項4、5、訂正事項8,9、訂正事項13)によって、縫合糸支持体の上面又は上端が「尖っておらず」と訂正されたため、形状が明確となった。

オ 取消理由通知において、「(5)請求項1及び4には,「前記縫合糸支持体は、底面から上方に切開された部分である少なくとも一つの間隙を含み」と記載されているが,上記理由3の(5)で指摘したとおり,発明の詳細な説明と齟齬しており,不明確である。」旨指摘したが、この点に関して、本件訂正(訂正事項3、11、13)によって、当該構成が発明の詳細な説明に記載された「間隙」に対応するように訂正されたため、明確となった。

カ 取消理由通知において、「(6)請求項3において,「前記中央部は、前記空洞の内部に位置する」と記載されているが,どのようにまたはどの程度,中央部が空洞の内部に位置しているのか不明確である。」旨指摘したが、この点に関して、本件訂正(訂正事項10)によって、「中央部」が「前半部の第一の末端及び後半部の第一の末端」に訂正され、記載自体は明確である。なお、「前半部の第一の末端及び後半部の第一の末端」がどの程度空洞の内部に位置しているか否かは、記載の明確性とは関係がない。

したがって、上記アないしカから、請求項1ないし7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36第6項第2号に規定する要件に適合する特許出願に対してされたものであるといえる。

(5)特許法第36条第4項第1号について
取消理由通知において、「上記理由3(サポート要件)の(1)ないし(5)で指摘したとおり,請求項1ないし7に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものでないので,発明の詳細な説明は,請求項に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。」旨指摘したが、上記(3)において、検討したとおり、請求項1ないし7に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであり、また、発明の詳細な説明は、請求項1ないし7に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
したがって、請求項1ないし7に係る特許は、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合する特許出願に対してされたものであるといえる。

(6)特許法第17条の2第3項について
取消理由通知において、「上記理由3(サポート要件)の(1)ないし(5)に記載した構成は,いずれも平成30年7月3日付け提出の手続補正書による補正又は平成30年8月22日付け提出の手続補正書による補正により,特許請求の範囲に追加されたものであるが,上記理由3(サポート要件)の(1)ないし(5)に記載したとおり,当初明細書に記載されておらず,自明な事項でもない。したがって,平成30年7月3日付け提出の手続補正書による補正又は平成30年8月22日付け提出の手続補正書による補正は,いずれも当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではなく,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。」旨指摘したが、上記(3)において、検討したとおり、請求項1ないし7に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであり、また、当初明細書に記載された事項、又は当初明細書の記載から自明な事項である。
したがって、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件に適合する特許出願に対してされたものであるといえる。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の下端側から外部に向かって延在し、
前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、
前記縫合糸支持体の横断面の幅は、下端から上端に近づくほど減少し、
前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の下端は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなり、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される、縫合糸。
【請求項2】
一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記前半部の第二の末端と前記後半部の第二の末端は、分離され、
前記縫合糸支持体の横断面の幅は、下端から上端に近づくほど減少し、
前記縫合糸支持体の上端は、尖っておらず、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用される、縫合糸。
【請求項3】
前記前半部の第一の末端及び前記後半部の第一の末端は、前記空洞の内部に位置する、請求項2に記載の縫合糸。
【請求項4】
前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の下端から上端の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、
前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなる、請求項2又は3に記載の縫合糸。
【請求項5】
一部が縫合糸支持体に設けられている空洞の内部に位置する1本の縫合糸であって、
前記縫合糸は、互いに反対方向に傾斜した逆とげが形成された前半部及び後半部を含み、
前記縫合糸支持体は、前記前半部の両端のうちの第一の末端及び前記後半部の両端のうちの第一の末端に具備され、
前記前半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該前半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記後半部の縦軸から分岐した前記逆とげと、該分岐点から該後半部の第一の末端へ向かって延在する該縦軸とが形成する角度は、鋭角であり、
前記前半部及び前記後半部のそれぞれは、前記縫合糸支持体の底面側から外部に向かって延在し、
前記縫合糸支持体の側壁は、前記縫合糸支持体の底面から上面の方向に向かう少なくとも一つの間隙を含み、
前記縫合糸支持体の横断面の幅は、底面から上面に近づくほど減少し、
前記縫合糸支持体の上面は、尖っておらず、
前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の前半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体の底面は、前記縫合糸の後半部の第二の末端側の端部であり、
前記縫合糸支持体は、生体内で吸収可能な材料からなり、
顔、あご、首、腹部、膣、胸及び臀部の少なくとも一の組織若しくは皮膚の垂れ下がり又はしわを除去するための施術に使用され、
前記前半部の両端及び前記後半部の両端は、逆とげを含まない、縫合糸。
【請求項6】
前記縫合糸支持体の形状は、切頭円錐状または切頭角錐状である、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の縫合糸。
【請求項7】
前記縫合糸支持体は、下端から上端までを貫通する連通孔を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の縫合糸。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-11-30 
出願番号 特願2018-91563(P2018-91563)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A61B)
P 1 651・ 121- YAA (A61B)
P 1 651・ 537- YAA (A61B)
P 1 651・ 561- YAA (A61B)
P 1 651・ 113- YAA (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 後藤 健志  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 井上 哲男
林 茂樹
登録日 2018-10-05 
登録番号 特許第6410980号(P6410980)
権利者 ワイ.ジェイコブス メディカル インコーポレーテッド
発明の名称 結び目をつける作業が不要な縫合糸及びそれを含むキット  
代理人 江口 昭彦  
代理人 きさらぎ国際特許業務法人  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 都野 真哉  
代理人 大貫 敏史  
代理人 特許業務法人青莪  
代理人 内藤 和彦  
代理人 特許業務法人青莪  

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