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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01J
管理番号 1371679
異議申立番号 異議2019-700717  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-10 
確定日 2020-12-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6482013号発明「構造体およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6482013号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4?14〕、〔15、16〕及び〔17、18〕について訂正することを認める。 特許第6482013号の請求項1ないし18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第6482013号の請求項1?18に係る特許についての出願は、平成29年11月6日を国際出願日とする日本語特許出願であって、平成31年2月22日にその特許権の設定登録がされ、平成31年3月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許の全請求項(請求項1?18)に係る特許に対し、特許異議申立人 高橋 恒(以下、「異議申立人」という。)より、令和1年9月10日に特許異議の申立てがされたものであり、その後の経緯は次のとおりである。
令和1年12月27日付け: 取消理由通知書
令和2年 3月 5日 : 意見書の提出及び訂正の請求(特許権者)
同年 4月13日 : 意見書の提出(異議申立人)
同年 6月30日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
同年 8月27日 : 意見書の提出及び訂正の請求(特許権者)
なお、令和2年8月27日の訂正の請求に対して、異議申立人から意見書の提出はされなかった。

第2 訂正の適否についての判断

令和2年8月27日に特許権者より請求された訂正(以下、「本件訂正」という。)は適法になされたものと判断する。
以下、その理由につき詳述する。
なお、先になされた令和2年3月5日付けの訂正の請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
1 訂正の内容
本件訂正は、一群の請求項1?14のうちの請求項1、4?14について及び他の一群の請求項15?18について請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に従うものであるところ、その訂正の内容(訂正事項)は、次のとおりである。
なお、本件訂正後の請求項17、18について、特許権者は、当該請求項に係る訂正が認められる場合には、一群の請求項15?18の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。

(1) 一群の請求項1、4?14に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のとおり訂正する(当審注:下線は訂正箇所を示す。以下、同じ。)。当該訂正後の請求項1の記載を引用する請求項11?14も同様に訂正する。
「【請求項1】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の前記表面の上に配置され前記下地の前記表面からの距離が互いに異なる2以上の粒子を含み、前記膜は、複数の微結晶を含む、
ことを特徴とする構造体。」

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4の記載を以下のとおり訂正する。当該訂正後の請求項4の記載を引用する請求項11?14も同様に訂正する。
「【請求項4】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材は、下地と、前記下地の上に配置された膜とを含み、前記膜は、複数の微結晶を含み、前記膜は、前記下地の上に配置された第1膜と、前記第1膜の上に配置された第2膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された第1粒子と、前記第1膜と前記第2膜との間に配置された第2粒子とを含み、前記2次元状に配置された第1粒子は、前記第1膜を介して相互に離隔して配置され、かつ、前記第1膜によって覆われている、
ことを特徴とする構造体。」

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5の記載を以下のとおり訂正する。当該訂正後の請求項5の記載を引用する請求項11?14も同様に訂正する。
「【請求項5】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材は、下地と、前記下地の上に配置された膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された粒子を含み、前記2次元状に配置された粒子は、前記膜を介して相互に離隔して配置され、かつ、前記膜によって覆われ、
前記膜は、複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々は、前記膜の前記複数の微結晶の少なくとも1つに接している、
ことを特徴とする構造体。」

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6の記載を以下のとおり訂正する。当該訂正後の請求項6の記載を引用する請求項11?14も同様に訂正する。
「【請求項6】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記被覆膜は、複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の前記表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された粒子を含む、
ことを特徴とする構造体。」

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7の記載を以下のとおり訂正する。当該訂正後の請求項7の記載を引用する請求項11?14も同様に訂正する。
「【請求項7】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記被覆膜の不活性ガスの含有率は、前記固定部材における不活性ガスの含有率よりも高い、
ことを特徴とする構造体。」

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8の記載を以下のとおり訂正する。当該訂正後の請求項8の記載を引用する請求項11?14も同様に訂正する。
「【請求項8】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記被覆膜は、複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記被覆膜の原子量または分子量は、前記固定部材の原子量または分子量よりも大きい
ことを特徴とする構造体。」

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9の記載を以下のとおり訂正する。当該訂正後の請求項9の記載を引用する請求項10?14も同様に訂正する。
「【請求項9】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記被覆膜は、複数の微結晶を含み、前記被覆膜の前記複数の微結晶の粒界に不活性ガスが存在する、
ことを特徴とする構造体。」

(2) 一群の請求項15?18に係る訂正
ア 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項15の記載を以下のとおり訂正する。当該訂正後の請求項15の記載を引用する請求項16も同様に訂正する。
「【請求項15】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子を互いに離隔するように形成する第1工程と、
前記複数の粒子を覆うように複数の微結晶を含む膜を形成する第2工程と、を含み、
前記第1工程および前記第2工程を含む処理を繰り返す、
ことを特徴とする構造体の製造方法。」

イ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項17の記載を以下のとおり訂正する。当該訂正後の請求項17の記載を引用する請求項18も同様に訂正する。
「【請求項17】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子を互いに離隔するように形成する第1工程と、
前記複数の粒子を覆うように複数の微結晶を含む膜を形成する第2工程と、を含み、
前記第1工程では、スパッタリング法によって前記複数の粒子を形成し、前記第2工程では、スパッタリング法によって前記膜を形成し、
前記第1工程および前記第2工程を含む処理を繰り返す、
ことを特徴とする構造体の製造方法。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 一群の請求項1、4?14に係る訂正について
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明において、「固定部材」について「下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の前記表面の上に配置され前記下地の前記表面からの距離が互いに異なる2以上の粒子を含み、前記膜は、複数の微結晶を含む」なる発明特定事項を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、それにより実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
更に、当該発明特定事項は、願書に添付した明細書における、「固定部材10は、例えば、下地2と、下地2の上に配置された膜4とを含みうる。」(【0012】)、「膜4は、高融点材料、例えば、融点が1400℃以上の材料で構成されうる。膜4は、複数の微結晶を含みうるが、非晶質であってもよい。」(【0014】)、「複数の粒子3は、下地2の表面に接触するように下地2の表面に沿って2次元状に配置された粒子3’を含みうる。」(【0017】)、「構造体1の製造方法は、図3Aに例示されるように、各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子3を互いに離隔するように形成し、個々の粒子3を島状に配置する第1工程と、図3Bに例示されるように、複数の粒子3をそれぞれ覆うように膜4を形成する第2工程とを含みうる。ここで、第1工程および第2工程を含む処理を複数回にわたって実施することによって図3C、図3Dに例示されるように積層され、その結果、図1Aに例示されるように、下地2の表面からの距離が互いに異なる複数の粒子3を有する構造体1を得ることができる。」(【0018】)等の記載から導かれるものであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項4に係る発明において、「前記下地の上に配置された膜」について「前記膜は、複数の微結晶を含み、前記膜は、前記下地の上に配置された第1膜と、前記第1膜の上に配置された第2膜とを含み」なる発明特定事項を付加し、また、「各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子」について「前記下地の表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された第1粒子と、前記第1膜と前記第2膜との間に配置された第2粒子とを含み、前記2次元状に配置された第1粒子は、前記第1膜を介して相互に離隔して配置され、かつ、前記第1膜によって覆われている」なる発明特定事項を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、それらにより実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
更に、これらの発明特定事項は、願書に添付した明細書における、上記【0012】、【0014】及び【0018】(上記ア参照。)等の記載から導かれるものであるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項5が本件訂正前の請求項4の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式のものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、本件訂正前の請求項5が引用する本件訂正前の請求項4における「前記表面に沿って」を「前記下地の前記表面に沿って」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、これらの訂正は実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないこと、及び、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであることは明らかである。

エ 訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項6に係る発明において、「被覆膜」について「前記被覆膜は、複数の微結晶を含み」なる発明特定事項を付加し、「固定部材」について「下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み」なる発明特定事項を付加し、また、「複数の粒子」について「前記下地の前記表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された粒子を含む」なる発明特定事項を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、それらにより実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
更に、それらの発明特定事項は、願書に添付した明細書における、上記【0012】及び【0017】(上記ア参照。)の記載並びに「被覆膜8は、複数の微結晶を含みうるが、非晶質であってもよい。」(【0037】)等の記載から導かれるものであるから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。

オ 訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項7が本件訂正前の請求項6の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式のものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当し、また、それにより実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないこと、及び、当該訂正が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであることは明らかである。

カ 訂正事項6について
訂正事項6は、本件訂正前の請求項8が本件訂正前の請求項6または7の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消するとともに、本件訂正前の請求項6のみの発明特定事項をすべて付加して独立形式のものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び同第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項6は、本件訂正前の請求項8に係る発明において、「被覆膜」について「前記被覆膜は、複数の微結晶を含み」なる発明特定事項を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、更に、当該発明特定事項は、願書に添付した明細書における、上記【0037】(上記エ参照。)の記載等の記載から導かれるものであるから、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。
そして、これらの訂正は実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないこと、及び、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであることは明らかである。

キ 訂正事項7について
訂正事項7は、本件訂正前の請求項9が本件訂正前の請求項6乃至8いずれか1項の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消するとともに、本件訂正前の請求項6のみの発明特定事項をすべて付加して独立形式のものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び同第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、それにより実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないこと、及び、当該訂正が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであることは明らかである。

(2) 一群の請求項15?18に係る訂正について
ア 訂正事項8について
訂正事項8は、本件訂正前の請求項15に係る発明において、「膜」について「複数の微結晶を含む膜」なる発明特定事項を付加し、また、「前記第1工程および前記第2工程を含む処理を繰り返す」なる発明特定事項を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、それにより実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
更に、これらの発明特定事項は、願書に添付した明細書における、上記【0014】及び【0018】(上記(1)ア参照。)等の記載から導かれるものであるから、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。

イ 訂正事項9について
訂正事項9は、本件訂正前の請求項17が本件訂正前の請求項15を引用する本件訂正前の請求項16の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式のものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項9は、本件訂正前の請求項17が引用する本件訂正前の請求項15における「膜」について「複数の微結晶を含む膜」なる発明特定事項を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、更に、当該発明特定事項は、願書に添付した明細書における、上記【0014】(上記(1)ア参照。)等の記載から導かれるものであるから、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。
そして、これらの訂正は実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないこと、及び、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであることは明らかである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。
また、本件訂正後の請求項17、18については、特許権者の求めに応じ、別の訂正単位とすることを認める。
よって、標記結論のとおり、本件特許第6482013号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1、4?14〕、〔15、16〕及び〔17、18〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の本件発明

上記「第2」のとおり本件訂正は適法になされたものと認められるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?18に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明18」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の前記表面の上に配置され前記下地の前記表面からの距離が互いに異なる2以上の粒子を含み、前記膜は、複数の微結晶を含む、
ことを特徴とする構造体。
【請求項2】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材が複数の微結晶を含み、前記複数の微結晶の粒界に不活性ガスが存在する、
ことを特徴とする構造体。
【請求項3】
前記固定部材における前記不活性ガスの含有率は、0.5原子%以上である、
ことを特徴とする請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材は、下地と、前記下地の上に配置された膜とを含み、前記膜は、複数の微結晶を含み、前記膜は、前記下地の上に配置された第1膜と、前記第1膜の上に配置された第2膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された第1粒子と、前記第1膜と前記第2膜との間に配置された第2粒子とを含み、前記2次元状に配置された第1粒子は、前記第1膜を介して相互に離隔して配置され、かつ、前記第1膜によって覆われている、
ことを特徴とする構造体。
【請求項5】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材は、下地と、前記下地の上に配置された膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された粒子を含み、前記2次元状に配置された粒子は、前記膜を介して相互に離隔して配置され、かつ、前記膜によって覆われ、
前記膜は、複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々は、前記膜の前記複数の微結晶の少なくとも1つに接している、
ことを特徴とする構造体。
【請求項6】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記被覆膜は、複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の前記表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された粒子を含む、
ことを特徴とする構造体。
【請求項7】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記被覆膜の不活性ガスの含有率は、前記固定部材における不活性ガスの含有率よりも高い、
ことを特徴とする構造体。
【請求項8】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記被覆膜は、複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記被覆膜の原子量または分子量は、前記固定部材の原子量または分子量よりも大きいことを特徴とする構造体。
【請求項9】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記被覆膜は、複数の微結晶を含み、前記被覆膜の前記複数の微結晶の粒界に不活性ガスが存在する、
ことを特徴とする構造体。
【請求項10】
前記被覆膜における前記不活性ガスの含有率は、0.5原子%以上である、
ことを特徴とする請求項9に記載の構造体。
【請求項11】
前記複数の粒子の各々が1000nm以下の寸法を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項12】
前記複数の粒子の各々が100nm以下の寸法を有する、
ことを特徴とする請求項11に記載の構造体。
【請求項13】
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項14】
前記複数の粒子において、隣接する粒子の間の距離が、1nm以上かつ10nm以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項15】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子を互いに離隔するように形成する第1工程と、
前記複数の粒子を覆うように複数の微結晶を含む膜を形成する第2工程と、
を含み、
前記第1工程および前記第2工程を含む処理を繰り返す、
ことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項16】
前記第1工程では、スパッタリング法によって前記複数の粒子を形成し、前記第2工程では、スパッタリング法によって前記膜を形成する、
ことを特徴とする請求項15に記載の構造体の製造方法。
【請求項17】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子を互いに離隔するように形成する第1工程と、
前記複数の粒子を覆うように複数の微結晶を含む膜を形成する第2工程と、を含み、
前記第1工程では、スパッタリング法によって前記複数の粒子を形成し、前記第2工程では、スパッタリング法によって前記膜を形成し、
前記第1工程および前記第2工程を含む処理を繰り返す、
ことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項18】
前記第1工程では、スパッタリング法によって前記複数の粒子を形成し、前記第2工程では、スパッタリング法によって前記膜を形成し、
下地をスパッタリング装置に搬入した後、前記下地を前記スパッタリング装置から搬出することなく、前記下地に対して前記処理を繰り返す、
ことを特徴とする請求項17に記載の構造体の製造方法。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について

1 取消理由の概要
本件訂正前(令和2年3月5日付けの訂正後)の請求項1、4、6及び11?18に係る発明に対して、当審が令和2年6月30日付けで特許権者に通知した取消理由(進歩性欠如)の要旨は、次のとおりである。
本件訂正前の請求項1、4、6及び11?18に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内において頒布された下記引用例1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1、4、6及び11?18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである(以下、「取消理由1」という。)。

引用例1:特開平5-117844号公報(甲第4号証)

2 取消理由1(進歩性欠如)についての当審の判断
(1) 引用例1の記載事項
引用例1には、以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 真空雰囲気中で、第1の試料を蒸着する工程と、第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタする工程とを繰り返し行い、基板上に第1の試料層に超微粒子状の第2の試料が分散された任意の厚さの超微粒子分散膜を形成させることを特徴とする超微粒子分散膜の製法。」

イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は触媒、電極の作製に有利に適用できる超微粒子分散膜製法に関する。」

ウ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】機能性材料として100Å以下の超微粒子の分散膜を利用する場合、100Å以下の粒子の物性はその粒径によって大きく変化する。そのため、これら粒子の物性機能を十分引き出すには粒径のそろえた分散膜製造が必要である。」

エ 「【0010】本発明において、基板としてはSiO_(2),TiO_(2),SnO_(2)などの光学的に透明な材料が使用され、第1の試料としては基板材料としてあげた同じ材料が使用される。また、第2の試料としてはAu,Ag,Cuなどの可視光域に吸収端を有する金属、CdS,CuClなどの可視光域に吸収端を有する半導体が使用される。」

オ 「【0011】第1の試料の蒸着はイオンビームスパッタ、マグネクトロンスパッタ、真空蒸着などいずれの蒸着法で行ってもよい。」(当審注:当該「マグネクトロンスパッタ」は「マグネトロンスパッタ」の誤記と認められる。以下、同じ。)

カ 「【0013】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1によって説明する。図1において、1は真空容器、2はイオン銃、3はAuターゲット、4はSiO_(2)蒸発源、5はSiO_(2)基板、6は電子銃である。
【0014】1.Auターゲット3をイオン銃2によりアルゴンイオンでスパッタを行い、SiO_(2) 基板5上にAu超微粒子の粒径が20Åになるまで成膜を行った。このAuターゲット3のスパッタ条件は下記の通りである。
○ イオン銃2のイオンビーム加速電圧:1KV、同イオンビーム電流:10mA
○ SiO_(2)基板5温度:室温
○ イオンビーム入射角度(イオン銃2とAuターゲット3のなす角度):45°
○ スパッタ角度(Auターゲット3とSiO_(2)基板5のなす角度):45°
○ 作動真空度(真空容器1内圧力):2×10^(-4)Torr
【0015】2.次に、SiO_(2)蒸発源4を電子銃6の電子ビーム(電子電流100mA、電子ビーム加速電圧10KV)にて蒸発させ、膜厚200Åまで成膜し、SiO_(2)でAu超微粒子を十分に覆うようにした。
【0016】3.上記の1.,2.の操作を10回行い、膜厚2000Åの超微粒子分散膜を作成した。
【0017】Au超微粒子を真空蒸着法で作製した試粒は粒径分布が±40Å程度であったのに対し、本発明のイオンビームスパッタ法で作製したAu超微粒子分散膜試料は粒径分布は±10Åであり、粒径のそろったものであった。本発明の上記実施例で得られたSiO_(2)中のAu超微粒子の粒径分布を図2に示す。この図2と前述した図5と比較すると粒径分布において本発明方法が優れていることが明らかである。」(当審注:引用例1において、上記「1.」、「2.」、「3.」は、実際にはそれぞれ丸囲み数字の「1」、「2」、「3」である。)

キ 「【図1】



ク 「【図2】



ケ 「【図4】



(2)引用例1に記載された発明(引用1発明1及び引用1発明2)
上記(1)エによれば、基板と第1の試料は同じ材料であって、SiO_(2)、TiO_(2)、SnO_(2)等が使用されるといえ、第2の試料はAu、Ag、Cu、CdS、CuCl等が使用されるといえる。
また、上記(1)アによれば、基板上に第1の試料を蒸着する工程と、第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタする工程とを繰り返し行い形成された、第1の試料層に超微粒子状の第2の試料が分散された任意の厚さの超微粒子分散膜が記載されているといえ、上記(1)ウによれば、当該超微粒子の粒径は100Å以下であるといえる。
更に、上記(1)カによれば、基板上にまず第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタした後、第1の試料を蒸着する工程と、第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタする工程とを繰り返し行うことが把握できる。
したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用1発明1」という。)が記載されていると認められる。

「第1の試料はSiO_(2)、TiO_(2)、SnO_(2)等であり、
第2の試料はAu、Ag、Cu、CdS、CuCl等であり、
SiO_(2)、TiO_(2)、SnO_(2)等の基板上に、第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタした後、第1の試料を蒸着する工程と、第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタする工程とを繰り返し行い形成された、
第1の試料層に粒径100Å以下の超微粒子状の第2の試料が分散された任意の厚さの超微粒子分散膜。」

また、上記(1)オによれば、引用例1には更に、第1の試料の蒸着はイオンビームスパッタ、マグネクトロンスパッタ、真空蒸着などいずれの蒸着法で行ってもよいことが示されており、そうすると、引用例1には次の発明(以下、「引用1発明2」という。)も記載されていると認められる。

「第1の試料はSiO_(2)、TiO_(2)、SnO_(2)等であり、
第2の試料はAu、Ag、Cu、CdS、CuCl等であり、
第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタした後、第1の試料をイオンビームスパッタ、マグネクトロンスパッタ、真空蒸着等の方法で蒸着する工程と、
第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタする工程とを繰り返し行い、SiO_(2)、TiO_(2)、SnO_(2)等の基板上に第1の試料層に粒径100Å以下の超微粒子状の第2の試料が分散された任意の厚さの超微粒子分散膜を形成させる超微粒子分散膜の製法。」

(3) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用1発明1とを対比する。
まず、引用1発明1における「基板」及び「第1の試料層」はそれぞれ本件発明1における「下地」及び「膜」に相当するといえ、SiO_(2)、TiO_(2)、SnO_(2)はいずれも耐熱性の高い(融点1400℃以上)酸化物材料であるので、引用1発明1における「SiO_(2)、TiO_(2)、SnO_(2)等の基板」及び「基板上」の「SiO_(2)、TiO_(2)、SnO_(2)等」からなる「第1の試料層」は、本件発明1における「下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み」、「酸化物および窒化物の少なくとも1つを含」む「固定部材」に相当するといえる。
そうすると、当該「膜」に関し、両発明は少なくとも次の相違点1を有するものと認められる。
<相違点1>
本件発明1では、「前記膜は、複数の微結晶を含む」のに対し、引用1発明1では、「第1の試料層」が、複数の微結晶を含むか否か不明である点。

イ 相違点1について
相違点1について検討する。
(ア) 引用例1における、上記(1)オの「【0011】第1の試料の蒸着はイオンビームスパッタ、マグネクトロンスパッタ、真空蒸着などいずれの蒸着法で行ってもよい。」なる記載事項及び上記(1)カの「【0015】2.次に、SiO_(2)蒸発源4を電子銃6の電子ビーム(電子電流100mA、電子ビーム加速電圧10KV)にて蒸発させ、膜厚200Åまで成膜し、SiO_(2)でAu超微粒子を十分に覆うようにした。」なる記載事項等から、直ちに引用1発明1における「第1の試料層」が複数の微結晶を含むということはできず、そのようにいうに足りる本件出願当時の技術常識も見当たらないから、上記相違点1は実質的な相違点である。

(イ) 次に、相違点1の容易想到性について検討する。
引用例1には、当該「第1の試料層」が複数の微結晶を含むことについて、何らの記載も示唆もなく、また、「水素吸蔵金属元素を含む粒子」を微結晶を含む「固定部材」である「膜」で覆うことが、本件出願当時における公知技術であるというに足りる証拠も見当たらないから、引用1発明1において、「第1の試料層」を複数の微結晶を含むものとすることが、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。
一方、本件発明1は、「膜4は、複数の微結晶を含みうる。不活性ガス7は、例えば、該複数の微結晶の粒界に存在する。膜4の粒界に不活性ガスを積極的に取り込むことによって、粒界を通じて空気中の水分が構造体1の内部に侵入し、粒子3を酸化して、水素吸蔵能力を低下させることを抑制することができる。」(本件明細書の【0026】参照。)及び「また、粒界に取り込んだ不活性ガス7を除去すると、通路(空間)を発生させることができる。この通路は、構造体1に水素を吸蔵させる際、水素の通り道として機能しうる。そこで、膜4に不活性ガス7を積極的に取り込ませ、膜4における粒界の数を増加させるほど、水素は構造体1の内部にまで到達しやすくなり、水素吸蔵能力を向上させることができる。」(同【0027】参照。)という有利な効果を奏するものといえる。

ウ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用1発明1に対して進歩性が欠如するということはできない。

(4) 本件発明4について
本件発明4と引用1発明1とを対比すると、両発明は少なくとも、上記(3)アの相違点1と同様の相違点を有するものといえ、また、当該相違点に係る本件発明4の構成は上記(3)イにおける相違点1の検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。
したがって、本件発明4についても、引用1発明1に対して進歩性が欠如するということはできない。

(5)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と引用1発明1とを対比すると、両発明は少なくとも次の相違点2を有する。
<相違点2>
本件発明6は「前記固定部材を覆うように配置された被覆膜」を有し、「前記被覆膜は、複数の微結晶を含」むのに対し、引用1発明1は、当該「被覆膜」について明示していない点。

イ 相違点2について
相違点2について検討する。
(ア) 引用1発明1は、「第1の試料を蒸着する工程と、第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタする工程とを繰り返し」行っていることから、最後に形成された第1の試料層は、本件発明6の「被覆膜」に相当し、それ以前に形成された第1の試料層、すなわち、本件発明6の「固定部材」に相当するものを被覆するものであるということができる。
しかしながら、上記(3)イ(ア)のとおり、引用1発明1における「第1の試料層」が複数の微結晶を含むということはできないから、上記相違点2は実質的な相違点である。

(イ) そして、上記(3)イ(イ)のとおり、当該相違点2に係る本件発明6の構成を容易想到の事項というに足りる証拠も見当たらず、また、本件発明6は、当該構成を具備することにより、「被覆膜8の粒界に不活性ガスを積極的に取り込むことによって、粒界を通じて空気中の水分が構造体1の内部に侵入し、粒子3を酸化して、水素吸蔵能力を低下させることを抑制することができる。」(本件明細書の【0034】参照。)及び「また、粒界に取り込んだ不活性ガス7を除去すると、通路(空間)を発生させることができる。この通路は、構造体1に水素を吸蔵させる際、水素の通り道として機能しうる。そこで、被覆膜8に不活性ガス7を積極的に取り込ませ、被覆膜8における粒界の数を増加させるほど、水素は構造体1の内部にまで到達しやすくなり、水素吸蔵能力を向上させることができる。」(本件明細書の【0035】参照。)という有利な効果を奏するものといえる。

ウ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、引用1発明1に対して進歩性が欠如するということはできない。

(6) 本件発明11?14について
本件発明11?14は、本件発明1、4及び6の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記(3)?(5)の本件発明1、4及び6についての検討と同様、引用1発明1に対して進歩性が欠如するということはできない。

(7) 本件発明15について
ア 対比
本件発明15と引用1発明2とを対比する。
まず、引用1発明2における「第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタした後、第1の試料をイオンビームスパッタ、マグネクトロンスパッタ、真空蒸着等の方法で蒸着する工程と、第2の試料を超微粒子状にイオンビームスパッタする工程とを繰り返し行い」は、本件発明15における「複数の粒子」を「形成する第1工程と、「前記複数の粒子を覆うように」「膜を形成する第2工程と、を含み、前記第1工程および前記第2工程を含む処理を繰り返す」に相当するといえる。
そうすると、当該「膜」に関し、両発明は少なくとも次の相違点1’を有するものと認められる。
<相違点1’>
本件発明15において、「第2工程」で形成される「膜」は、「複数の微結晶を含む」のに対し、引用1発明2において、「蒸着する工程」で形成される「第1の試料層」が、複数の微結晶を含むか否か不明である点。

イ 相違点1’について
相違点1’について検討すると、相違点1’は、上記(3)アの相違点1と同様の相違点であるといえ、また、当該相違点1’に係る本件発明15の構成は上記(3)イにおける相違点1の検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

ウ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明15は、引用1発明2に対して進歩性が欠如するということはできない。

(8) 本件発明16について
本件発明16は、本件発明15の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記(7)の本件発明15についての検討と同様、引用1発明2に対して進歩性が欠如するということはできない。

(9) 本件発明17について
本件発明17と引用1発明2とを対比すると、両発明は少なくとも、上記(7)アの相違点1’と同様の相違点を有するものといえ、また、当該相違点に係る本件発明17の構成は上記(7)イにおける相違点1’の検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明17は、引用1発明2に対して進歩性が欠如するということはできない。

(10)本件発明18について
本件発明18は、本件発明17の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記(9)の本件発明17についての検討と同様、引用1発明2に対して進歩性が欠如するということはできない。

3 小括
以上の検討のとおり、本件発明1、4、6及び11?18は、引用例1に記載された発明に対して進歩性が欠如するということはできないから、請求項1、4、6及び11?18に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないため、取消理由1(進歩性欠如)を理由に、取り消すことはできない。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について

1 採用しなかった特許異議申立理由の概要
異議申立人が、特許異議申立書において主張する特許異議申立理由のうち、当審が取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1) (新規性欠如)設定登録時の請求項1、4、6、8、11?17に係る発明は甲第1、2又は3号証に記載された発明であるから、請求項1、4、6、8、11?17に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである(以下、「申立理由1」という。)。

(2) (進歩性欠如)設定登録時の請求項1?18に係る発明は、甲第1、2、3又は4号証に記載された発明及び甲第1?10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである(以下、「申立理由2」という。)。

(3) (サポート要件違反)設定登録時の請求項2?18に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである(以下、「申立理由3」という。)。

2 申立理由1(新規性欠如)及び2(進歩性欠如)について
異議申立人は、甲第1?10号証(以下、単に「甲1」などという。)を提出し、甲1に記載された発明による設定登録時の請求項1、4、11?16に係る発明の新規性欠如、甲2に記載された発明による設定登録時の請求項1、6、8、11?13、15に係る発明の新規性欠如、甲3に記載された発明による設定登録時の請求項1、4、6、8、11?13、15?17に係る発明の新規性欠如の申立理由1を主張し、また、甲1に記載された発明を主たる発明とする設定登録時の請求項1?5、11?16に係る発明の進歩性欠如、甲2に記載された発明を主たる発明とする設定登録時の請求項1、6?15に係る発明の進歩性欠如、甲3に記載された発明を主たる発明とする設定登録時の請求項1?13、15?18に係る発明の進歩性欠如、甲4に記載された発明を主たる発明とする設定登録時の請求項2、3、5、7?10に係る発明の進歩性欠如(なお、甲4は上記「第4」における引用例1のことであり、請求項1、4、6、11?18に係る発明については、上記「第4」のとおり。)の申立理由2を主張する。
しかしながら、当該主張は、以下の理由により、採用することはできない。
(1) 証拠一覧
甲1:特開2006-300560号公報
甲2:特開2004-275951号公報
甲3:特開平11-133229号公報
甲4:特開平5-117844号公報
甲5:真壁 保志ほか,「Moスパッタ膜の微視的形態に関する研究」,
真空,1992年,第35巻,第6号,第559?566頁
甲6:特開平7-258845号公報
甲7:特開2009-41108号公報
甲8:特開2008-261031号公報
甲9:特開平11-242250号公報
甲10:特開平6-222411号公報

(2) 甲1?4の記載事項
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア) 「【0015】
本発明に係る水素センサの実施形態の構成について図面を参照して説明する。なお、以下の全ての図面においては図面を見やすくするために、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせて示してある。
図1と図2は本発明に係る水素センサの構成を示すもので、この水素センサAは、絶縁基板(絶縁基体)1の上面のほぼ全域に半導体層2が積層され、この半導体層2の上面にSi_(3)N_(4)からなる薄膜絶縁層3が形成されている。さらに、この薄膜絶縁層3の上面に島状に粒子が分散配置された構造の水素吸収体4が形成され、この水素吸収体4の露出した面を覆うように水素透過膜5が形成されている。また、前記半導体層2の表面上であって先の水素吸収体4の左右両側に位置するように内側電極6、6と、前記半導体層2の表面上であって先の水素吸収体4の左右両側であって先の内側電極6、6よりも更に外側に位置するように外側電極7、7が形成されている。」

(イ) 「【0017】
前記水素吸収体(水素吸排材料体)4は、Pd、Pd合金、Pt、Pt合金のいずれかからなる粒子あるいはその他の白金族元素あるいはそれらの合金元素が粒子状となって島状に分散配置された構造であることが好ましい。また、これらの金属の他に一般的に水素吸蔵合金として知られるLa、Ti、Zr、Mg、希土類金属、Ca、Vあるいはこれらを含む合金などのいずれかを用いても良いのは勿論である。ここで水素吸収体4は、上述の金属あるいは合金の水素吸排材料からなるが、これらの水素吸排材料を先の絶縁薄膜層3の上に成膜する際、後に形成する対の電極間を導通させないパターンとする必要がある。パターン形成に当たってはフォトリソ法が好適に用いられる。他の形態としては島状にとぎれとぎれの状態で粒子が分散されてなり、全体として導電性を有しない、絶縁体として機能する状態のものとすることが好ましい。図1と図2ではこの水素吸収体4を膜状として略して示した。図1と図2のパターンでは水素吸収体4が電極と離れているため、連続膜であっても本発明の効果を奏するが、水素吸収体4は拡大すると島状に粒子が分離して形成された集合体の絶縁体として機能する程度の膜厚とすることがより好ましい。例えばこの水素吸収体4は抵抗値1MΩ程度以上の絶縁体とされ、水素吸収体4はその膜厚として0.5nm?5nm程度の範囲とすることが好ましい。
【0018】
このような島状に分散した水素吸収体4は真空蒸着法、スパッタ法などの成膜法により薄膜絶縁層3の上に粒子を堆積させて成膜する場合に膜として生成される前の状態で成膜を中止することで製造することができる。例えば、Pd、Pd合金、Pt、Pt合金などはいずれも良導電性の金属材料であり、膜として生成すると導電体となるので、導電体となる前の絶縁体の状態で成膜を停止すれば複数の粒子が島状に分散配置された構造の水素吸収体3を得ることができる。従って、先に説明した膜厚の範囲に形成するならば絶縁体としての水素吸収体4を薄膜絶縁層3の上に形成することができる。この形態で水素吸収体4の縦幅は絶縁基板1の縦幅よりも若干短く、横幅は絶縁基板1の横幅の数分の1に形成されている。従って図1と図2における水素吸収体4の左右両側には半導体層2が露出されている。
【0019】
水素透過膜5は、リンを添加した二酸化珪素のターゲットなどの成膜源を予め作成しておき、スパッタ法などの成膜法により、水素吸収体4を覆うように形成されている。水素透過膜5の膜厚は、0.5nm?5nmになるようにすることが好ましい。膜厚が0.5nm以下では、可燃性ガスに対して、僅かではあるが感度を持つ可能性があり、5nm以上では、水素透過膜5を水素が透過する際の抵抗が大きくなり、それに伴って応答速度が遅くなり、水素センサとしては好ましくない。また、リンの添加量は、0.1wt%?1.0wt%の範囲であることが好ましい。リンの添加量が0.1wt%以下では、水素透過膜5を水素が透過する際の抵抗が大きくなり、それに伴って応答速度が遅くなり、水素センサとしては好ましくなく、1.0wt%以上では、スパッタ装置などの反応容器内にリンが蓄積し、容器内を汚染するという問題が生じる可能性がある。」

(ウ) 「【0025】
(実施例1)
図1と図2に示す構成であって、縦3mm、横3mm、膜厚0.43mmのサファイア基板上に厚さ0.05μmのシリコンをドープしたGaN膜を形成し、その上にSi_(3)N_(4)からなる薄膜絶縁層3を形成した。この薄膜絶縁層3の上面に縦2.5mm、横1mmの長方形状のPdからなる厚さ12Åの水素吸収体4の島状の膜を形成した。この水素吸収体4の膜は薄膜絶縁層上において絶縁体であった。次に、水素吸収体4を覆うように、SiO_(2)にリンをドープした水素透過膜5を膜厚20Åで形成した。SiO_(2)に対してドープするP(リン)の量をそれぞれ0.1wt%、0.5wt%、1.0wt%として、3種類の水素透過膜を作成した。」

イ 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア) 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、金属の超微粒子の凝集を妨げて、優れた水素貯蔵性能を備える水素貯蔵材料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の水素貯蔵材料は、多孔質体と、該多孔質体の空孔内に保持された水素吸蔵能を備える金属超微粒子と、該多孔質体の表面を被覆して酸素を遮断し水素を選択的に透過する被膜とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の水素貯蔵材料は、水素吸蔵能を備える金属超微粒子が、多孔質体の空孔内に保持されているので、該金属超微粒子が相互に凝集することを防止して、該金属超微粒子の比表面積を大きくし、優れた水素貯蔵性能を得ることができる。また、本発明の水素貯蔵材料は、前記多孔質体の表面が、酸素を遮断し水素を選択的に透過する被膜により被覆されているので、水素の吸蔵/放出を妨げることなく、前記金属超微粒子の酸化を阻止することができ、繰り返し使用による水素貯蔵性能の低下を防止することができる。」

(イ) 「【0015】
前記多孔質体は、平均直径が5?200オングストロームの範囲にある空孔を備えるものであればよく、金属酸化物、ゼオライト、炭素質材料等を挙げることができる。前記金属酸化物としては、アルミナ、シリカ等を挙げることができ、前記炭素質材料等としては、活性炭、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。」

(ウ) 「【0021】
【実施例1】
本実施例では、硫酸ニッケル(NiSO_(4))結晶をエチレングリコールに溶解させた溶液(濃度0.4ミリモル/l)に、空隙率0.5(50%)、有効入口径6オングストロームの清浄なX型ゼオライトを浸漬し、該ゼオライトの空孔(平均直径9オングストローム)に該溶液を充填させた。このとき、減圧雰囲気に保持した前記ゼオライトに前記溶液を導入する差圧吸引方式を用いることにより、前記空孔に対する該溶液の充填を効率よく行うことができる。
【0022】
次に、前記溶液を、前記ゼオライトを浸漬したまま、200℃に加熱し、窒素ガス気流により生成水を除去しながら、3時間還流処理した。前記還流処理後、前記溶液から前記ゼオライトを取り出し、不活性ガス雰囲気の減圧下にて乾燥することにより、空孔内に平均粒子径5nmのNi超微粒子が保持されたゼオライトを得た。前記還流処理は、同時に超音波による撹拌を行うことにより、前記空孔内に前記Ni超微粒子が均一に保持されたゼオライトを得ることができる。
【0023】
次に、前記Ni超微粒子が保持されたゼオライトの表面に、PVD法によりPdからなる厚さ0.1μmの被膜を形成し、水素貯蔵材料を得た。前記被膜は、酸素を遮断し、水素を選択的に透過する機能を備えている。」

ウ 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア) 「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する図1に示すように、偏光子1は透光性を有するガラス等の誘電体基板(以下、単に基板という)2の少なくとも一方の主面上に偏光層3を設けたものであり、この偏光層3は基板2上に、光吸収異方性を有する(形状異方性を有する)金属粒子4aが多数分散され層状をなす島状金属薄膜層ともいうべき金属粒子層4と透光性を有する誘電体層5とが交互に複数積層されてなるものである。また、図2に示すように、上下に位置する誘電体層の組成及び屈折率を異なるようにした単位積層体Pを1層以上積層させている。」

(イ) 「【0019】金属粒子4aにはAu,Ag,Pt,Rh,Ir等の貴金属元素やCu,Fe,Ni,Cr,Al及びW等の遷移金属から選択される一種以上の金属であることが好ましく、基板2や誘電体層5との濡れ性が悪く凝集しやすい金属でしかも酸化され難く、誘電体層5中で金属粒子4aとして存在し得るものが好ましい。これらの内、特に好ましいものは、低融点なため凝集が容易で、ガラスとの濡れが悪く、しかも酸化され難いAuと、安価でガラスとの濡れ性が悪いCuである。なお、金属粒子4aは金属単体に限定されるものではなく合金でもよい。」

(ウ) 「【0032】
【実施例】次に、より具体的で好適な実施例について説明する。まず、図2における基板2として、厚さ約1mm,面積約760mm^(2) の石英ガラス基板(軟化点:1000?1200℃、屈折率1.49)を用い、この基板2上に誘電体層5としてMgO,ZnS,MgF_(2 )の薄膜層を、金属粒子層4として金(Au)の薄膜層を、交互に積層することによりAu微粒子を含むMgO層(屈折率1.7),Au微粒子を含むZnS層(屈折率2.35),Au微粒子を含むMgF_(2 )層(屈折率1.7)の3層構造を周期単位とする単位積層体Pを3層積層させた。
【0033】すなわち、基板上にマグネトロンスパッタ成膜法により真空度2.0×10^(-3)Toor 、成膜速度10.6nm/秒で膜厚30nmの第1層目の金属薄膜層であるAu薄膜層を形成し、このAu薄膜層上に真空度2.0×10^(-3)Toor 、成膜速度0.2nm/秒で膜厚982.5mの第1層目の誘電体薄膜層であるMgO薄膜層を形成する。その後、上記と同様にして第2層目の金属薄膜層であるAu薄膜層を形成し、このAu薄膜層上に真空度2.0×10^(-3)Toor 、成膜速度0.4nm/秒で膜厚1965nmの第2層目の誘電体薄膜層であるZnS薄膜層を形成する。その後、上記と同様にして第3層目の金属薄膜層であるAu薄膜層を形成し、このAu薄膜層上に真空度2.0×10^(-3)Toor 、成膜速度0.3nm/秒で膜厚982.5nmの第3層目の誘電体薄膜層であるMgF_(2 )薄膜層を形成する。
【0034】上記一連の工程を3回繰り返して、Au微粒子を含む三種類の誘電体層から成る単位積層体を3層積層させた基板体を得る。
【0035】次いで、上記基板体の熱塑性変形を行うが、石英ガラスの軟化点近傍の温度である1500℃において加熱、延伸を行い、加熱によりAu金属微粒子を凝集させてAu金属粒子とし、このAu金属粒子を延伸により形状異方性を持たせるとともに、Au金属粒子の配向化も行わせる。」

エ 甲4の記載事項
上記「第4」2(1)と同様である。

(3)甲1?4に記載された発明
ア 甲1に記載された発明(甲1発明1及び甲1発明2)
上記(2)ア(ウ)の記載事項から、甲1の実施例1には、
「サファイア基板、サファイア基板上に形成したシリコンドープのGaN膜、GaN膜の上に形成したSi_(3)N_(4)からなる薄膜絶縁層、薄膜絶縁層の上面に形成した縦2.5mm、横1mm、厚さ12ÅのPdからなる水素吸収体の島状の膜、水素吸収体の島状の膜を覆うリンドープのSiO_(2)からなる水素透過膜を有する水素センサ。」(以下、「甲1発明1」という。)
及び
「サファイア基板上にシリコンドープのGaN膜を形成し、GaN膜の上にSi_(3)N_(4)からなる薄膜絶縁層を形成し、薄膜絶縁層の上面に縦2.5mm、横1mm、厚さ12ÅのPdからなる水素吸収体の島状の膜を形成し、水素吸収体の島状の膜を覆うようにリンドープのSiO_(2)からなる水素透過膜を形成することを含む水素センサの製造方法。」(以下、「甲1発明2」という。)
が記載されているということができる。

イ 甲2に記載された発明(甲2発明1及び甲2発明2)
上記(2)イ(ウ)の記載事項から、甲2の実施例1には、
「ゼオライトの空孔(平均直径9オングストローム)内に保持された平均粒子径5nmのNi超微粒子、Ni超微粒子が保持されたゼオライトの表面にPVD法により形成されたPdからなる厚さ0.1μmの被膜を有する水素貯蔵材料。」(以下、「甲2発明1」という。)
及び
「ゼオライトの空孔(平均直径9オングストローム)内に保持される平均粒子径5nmのNi超微粒子を形成し、Ni超微粒子が保持されたゼオライトの表面にPdからなる厚さ0.1μmの被膜をPVD法により形成することを含む水素貯蔵材料の製造方法。」 (以下、「甲2発明2」という。)
が記載されているということができる。

ウ 甲3に記載された発明(甲3発明1及び甲3発明2)
上記(2)ウ(ウ)の記載事項から、甲3の実施例には偏光子(発明の名称参照。)に関し、
「石英ガラス基板と、基板上にAu微粒子を含むMgO層(屈折率1.7)、Au微粒子を含むZnS層(屈折率2.35)、Au微粒子を含むMgF_(2 )層(屈折率1.7)の3層構造を周期単位とする単位積層体Pを3層積層させた偏光子。」(以下、「甲3発明1」という。)
及び
「石英ガラス基板を準備する工程と、マグネトロンスパッタ成膜法により基板上に誘電体層としてMgO,ZnS,MgF_(2 )の薄膜層を、金属粒子層として金(Au)の薄膜層を、交互に積層する工程と、石英ガラスの軟化点近傍の温度である1500℃において加熱、延伸を行い、加熱によりAu金属微粒子を凝集させてAu金属粒子とする工程を有する偏光子の製造方法。」(以下、「甲3発明1」という。)
が記載されているということができる。

エ 甲4に記載された発明(甲4発明)
甲4は上記「第4」における引用例1のことであるから、甲4には、上記「第4」2(1)において認定した引用1発明1(以下では、「甲4発明」ということとする。)が記載されているということができる。

(4) 甲1発明1に基づく本件発明1?5、11?14の新規性及び進歩性について
ア 本件発明1と甲1発明1の対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「Pdからなる水素吸収体の島状の膜」は、上記(2)ア(ア)等の記載事項から「島状に粒子が分散配置された構造」であるので、本件発明1における「水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子」に相当するといえ、また、甲1発明1における「GaN膜」及び「SiO_(2)からなる水素透過膜」は、本件発明1における「固定部材」の下地」及び「膜」にそれぞれ相当するといえる。
そして、両発明は少なくとも次の相違点Aを有するものと認められる。
<相違点A>
本件発明1において、当該「固定部材」である「膜」が「複数の微結晶」を含むのに対し、甲1発明1における「SiO_(2)からなる水素透過膜」が複数の微結晶を含むか否か不明である点。

イ 相違点Aについて
相違点Aについて検討する。
(ア) 上記(2)ア(イ)の【0019】の記載事項における、「SiO_(2)からなる水素透過膜」が「スパッタ法などの成膜法」で形成されるという記載事項から、直ちに当該「SiO_(2)からなる水素透過膜」が複数の微結晶を含むということはできないから、相違点Aは実質的な相違点である。

(イ) 次に、相違点Aの容易想到性について検討する。
甲1発明1における当該「SiO_(2)からなる水素透過膜」が、複数の微結晶を含むことについては、甲1に何らの記載も示唆もされておらず、甲2?10を子細にみても、「水素吸蔵金属元素を含む粒子」を微結晶を含む「固定部材」である「膜」で覆うことについて教示する記載を認めることはできない。そうである以上、甲1?10の記載事項に基づいて、当該相違点Aに係る本件発明1の構成を容易想到の事項ということはできない。そして、本件発明1は、「第4」2(3)イ(イ)に記載のとおり、複数の微結晶を含む「膜」とすることにより、上記の有利な効果を奏するものといえる。

ウ 本件発明2及び4について
また、本件発明2及び4と甲1発明1との対比においても、少なくとも、上記アの相違点Aと同様の相違点が存するものといえ、また、当該相違点に係る本件発明の構成は上記イにおける相違点Aの検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

エ 本件発明3、5、11?14について
更に、本件発明3、5、11?14は、本件発明1、2又は4の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記ア?ウの検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

オ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1?5、11?14は、甲1発明1に対して新規性及び進歩性が欠如するということはできない。

(5) 甲1発明2に基づく本件発明15及び16の新規性及び進歩性について
ア 本件発明15について
本件発明15と甲1発明2とを対比すると、両発明は少なくとも、上記(4)アの相違点Aと同様の相違点を有するものといえ、また、当該相違点に係る本件発明15の構成は上記(4)イにおける相違点Aの検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

イ 本件発明16について
また、本件発明16は、本件発明15の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記アの検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

ウ 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明15及び16は、甲1発明2に対して新規性及び進歩性が欠如するということはできない。

(6) 甲2発明1に基づく本件発明1及び6の新規性及び進歩性について
ア 本件発明1と甲2発明1の対比
本件発明1と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1における「Ni超微粒子」は、本件発明1における「水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子」に相当し、また、甲2発明1における「ゼオライト」は本件発明1における「固定部材」に相当するといえるものの、両発明は少なくとも次の相違点Bを有するものと認められる。
<相違点B>
本件発明1において、「固定部材」が「下地」及び「膜」からなるのに対し、甲2発明1における「ゼオライト」は多孔質体であって「下地」及び「膜」からなるものではない点。

イ 相違点Bについて
相違点Bは実質的な相違点であることは明らかであるので、相違点Bの容易想到性について検討する
上記(2)イ(ア)の記載事項によれば、甲2に記載された水素貯蔵材料の発明は、「水素吸蔵能を備える金属超微粒子」を「多孔質体の空孔内に保持」することで、「金属の超微粒子の凝集」を妨げるという課題を解決するものであるから、当該「多孔質体」は必須の手段であることが理解できる。
そうすると、甲2発明1において、当該「多孔質体」に相当する「ゼオライト」はその主体となるものであるから、それに代えて、当該「多孔質体」とは異なる相違点Bに係る「下地」及び「膜」を採用すると、甲2発明1自体が成立しないこととなるため、当該採用には阻害要因が存するものというべきである。
また、甲1、3?10の記載事項をみても、当該相違点Bに係る本件発明1の構成を容易想到とするに足りる記載は見当たらない。

ウ 本件発明6について
また、本件発明6と甲2発明1との対比においても、両発明は少なくとも、上記アの相違点Bと同様の相違点を有するものといえ、また、当該相違点に係る本件発明6の構成は上記イにおける相違点Bの検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

エ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1及び6は、甲2発明1に対して新規性及び進歩性が欠如するということはできない。

(7) 甲2発明1に基づく本件発明7の進歩性について
ア 対比
本件発明7と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1における「Ni超微粒子」は、本件発明7における「水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子」に相当し、甲2発明1における「ゼオライト」は、本件発明7における「固定部材」相当し、甲2発明1における「ゼオライトの表面にPVD法により形成されたPdからなる厚さ0.1μmの被膜」は、本件発明7における「固定部材を覆うように配置された被覆膜」相当するといえる。
しかしながら、両発明は少なくとも次の相違点Cを有するものと認められる。
<相違点C>
本件発明7においては、「被覆膜」の不活性ガス含有率が「固定部材」の不活性ガス含有率よりも高いのに対し、甲2発明1は、「ゼオライトの表面にPVD法により形成されたPdからなる厚さ0.1μmの被膜」及び「ゼオライト」の不活性ガス含有率について明示するものではない点。

イ 相違点Cについて
相違点Cの容易想到性について検討すると、甲1?10には、当該不活性ガス含有率については何ら記載されていないから、これらの証拠の記載事項に基づいて、甲2発明1において、当該相違点Cに係る本件発明7の構成を備えるものとすることが、当業者において容易に想到し得るものとはいい難く、一方、本件発明7は、「第4」2(5)イ(イ)に記載のとおり不活性ガスを含む「被覆膜」とすることにより、上記の有利な効果を奏するものといえる。

ウ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲2発明1に対して進歩性が欠如するということはできない。

(8) 甲2発明1に基づく本件発明8及び9の新規性及び進歩性について
ア 本件発明8と甲2発明1の対比
本件発明8と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1における「Ni超微粒子」は、本件発明8における「水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子」に相当し、甲2発明1における「ゼオライト」は本件発明8における「固定部材」相当し、甲2発明1における「ゼオライトの表面にPVD法により形成されたPdからなる厚さ0.1μmの被膜」は本件発明8における「固定部材を覆うように配置された被覆膜」相当するといえる。
しかしながら、両発明は少なくとも次の相違点Dを有するものと認められる。
<相違点D>
本件発明8では、「固定部材を覆うように配置された被覆膜」が「複数の微結晶」を含むのに対し、甲2発明1では、「ゼオライトの表面にPVD法により形成されたPdからなる厚さ0.1μmの被膜」が複数の微結晶を含むか否か不明である点。

イ 相違点Dについて
(ア) 甲2発明1における「Pdからなる厚さ0.1μmの被膜」が「PVD法」で形成されることのみをもって、直ちに当該「Pdからなる厚さ0.1μmの被膜」が複数の微結晶を含むということはできないから、相違点Dは実質的な相違点である。

(イ) 次に、相違点Dの容易想到性について検討する。
甲1?10には、「水素吸蔵金属元素を含む粒子」の「固定部材」を微結晶を含む「被覆膜」で被覆することについて何ら記載されていないから、これらの証拠の記載事項に基づいて、甲2発明1において、当該相違点Dに係る本件発明8の構成を備えるものとすることが、当業者において容易に想到し得るものとはいい難く、一方、本件発明は、「第4」2(5)イ(イ)に記載のとおり複数の微結晶を含む「被覆膜」とすることにより、上記の有利な効果を奏するものといえる。

ウ 本件発明9について
また、本件発明9と甲2発明1との対比においても、両発明は少なくとも、上記アの相違点Dと同様の相違点を有するものといえ、また、当該相違点に係る本件発明9の構成は上記イにおける相違点Dの検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

エ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明8及び9は、甲2発明1に対して新規性及び進歩性が欠如するということはできない。

(9) 甲2発明1に基づく本件発明10?14の新規性及び進歩性について
本件発明10?14は、本件発明1、6?9のいずれかの発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記(6)?(8)の検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

(10) 甲2発明2に基づく本件発明15の新規性及び進歩性について
ア 対比
本件発明15と甲2発明2とを対比すると、両発明は少なくとも次の相違点Eを有するものと認められる。
<相違点E>
本件発明15は、複数の粒子を形成する第1工程と、「微結晶を含む膜」を形成する第2工程が繰り返し行うのに対し、甲2発明2は、「Ni超微粒子が保持されたゼオライトの表面にPdからなる厚さ0.1μmの被膜をPVD法により形成」している点。

イ 相違点Eについて
相違点Eは実質的な相違点であるので、相違点Eの容易想到性について検討すると、甲2発明2における「Ni超微粒子」の形成はゼオライトに保持されるように行うものであり、また、上記「被膜」の形成は、「Ni超微粒子が保持されたゼオライトの表面」を被覆するものであるので、当該「被膜」の形成後、更に「Ni超微粒子」の形成工程と「被膜」の形成工程とを繰り返し行うことを、当業者は想定し得ないというほかない。

ウ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明15は、甲2発明2に対して新規性及び進歩性が欠如するということはできない。

(11) 甲3発明1に基づく本件発明1?13の新規性及び進歩性について
ア 本件発明1、2、4、5、6、8及び9と甲3発明1との対比
本件発明1、2、4、5、6、8及び9と甲3発明1とを対比すると、少なくとも次の相違点Fが存するものと認められる。
<相違点F>
本件発明1、2、4、5、6、8及び9はいずれも、「水素吸蔵金属元素を含む粒子」を覆う「固定部材」や「膜」又は「固定部材」を被覆する「被覆膜」が「複数の微結晶」を含んでいるのに対し、甲3発明1において、「誘電体層」が「複数の微結晶」を含むか否か不明である点。

イ 相違点Fについて
(ア) 相違点Fについて検討すると、上記(2)ウ(ウ)の【0033】の記載事項における「誘電体層」が「マグネトロンスパッタ成膜法」で形成されるという記載事項から、直ちに当該「誘電体層」が複数の微結晶を含むということはできないから、相違点Fは実質的な相違点である。

(イ) 次に、相違点Fの容易想到性について検討する。
甲1?10には、「水素吸蔵金属元素を含む粒子」を覆う「固定部材」や「膜」又は「固定部材」を被覆する「被覆膜」を微結晶を含むものとすることについて何ら記載されていないから、これらの証拠の記載事項に基づいて、当該「誘電体層」を複数の微結晶を含むものとすることが、当業者において容易に想到し得るものとはいい難く、一方、本件発明1、2、4、5、6、8及び9は、「第4」2(3)イ(イ)又は「第4」2(5)イ(イ)に記載のとおり、複数の微結晶を含む「固定部材」や「膜」又は「被覆膜」とすることにより、上記の有利な効果を奏するものといえる。

ウ 本件発明7と甲3発明1との対比
また、本件発明7と甲3発明1とを対比すると、両発明は少なくとも次の相違点Gを有するものと認められる。
<相違点G>
本件発明7は、「被覆膜」の不活性ガス含有率が「固定部材」の不活性ガス含有率よりも高いのに対し、甲3発明1は、「誘電体層」の不活性ガス含有率についての明示がない点。

エ 相違点Gについて
相違点Gの容易想到性について検討すると、甲1?10には、当該不活性ガス含有率について何ら記載されていないから、これらの証拠の記載事項に基づいて、甲3発明1において、当該相違点Gに係る本件発明7の構成を備えるものとすることが、当業者において容易に想到し得るものとはいい難く、一方、本件発明は、「第4」2(5)イ(イ)に記載のとおり不活性ガスを含む「被覆膜」とすることにより、上記の有利な効果を奏するものといえる。

オ 本件発明3、10?13について
更に、本件発明3、10?13は、本件発明1、2、4?9のいずれかの発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記ア?エの検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

カ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1?13は、甲3発明1に対して新規性及び進歩性が欠如するということはできない。

(12) 甲3発明2に基づく本件発明15?18の新規性及び進歩性について
ア 本件発明15及び17と甲3発明2との対比
本件発明15及び17と甲3発明2とを対比すると、少なくとも上記相違点Fと同様の相違点が存するものといえ、また、当該相違点に係る本件発明の構成は上記(11)イにおける相違点Fの検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

イ 本件発明16及び18について
また、本件発明16は、本件発明15の発明特定事項をすべて具備するものであり、本件発明18は、本件発明17の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記アの検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

ウ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明15?18は、甲3発明2に対して新規性及び進歩性が欠如するということはできない。

(13) 甲4発明に基づく本件発明2、3、5、8?10の進歩性について
ア 本件発明2、5、8及び9と甲4発明との対比
本件発明2、5、8及び9と甲4発明とを対比すると、少なくとも次の相違点Hが存するものと認められる。
<相違点H>
本件発明2、5、8及び9はいずれも、「水素吸蔵金属元素を含む粒子」を覆う「固定部材」や「膜」又は「固定部材」を被覆する「被覆膜」が「複数の微結晶」を含んでいるのに対し、甲4発明は、「第1の試料層」が「複数の微結晶」を含むか否か不明である点。

イ 相違点Hについて
相違点Hの容易想到性について検討すると、上記「第4」2(3)イの相違点1についての検討及び同(5)イの相違点2についての検討のとおり、、甲4には、甲4発明における当該「第1の試料層」が複数の微結晶を含むことについて何らの記載も示唆もなく、甲1?3、5?10にも、この点に関する教示はないから、甲1?10の記載事項に基づいて、甲4発明において当該「第1の試料層」を複数の微結晶を含むものとすることが、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。そして、本件発明は、「第4」2(3)イ(イ)又は「第4」2(5)イ(イ)に記載のとおり複数の微結晶を含む「固定部材」や「膜」又は「被覆膜」とすることにより、上記の有利な効果を奏するものである。

ウ また、本件発明3は本件発明2の発明特定事項をすべて具備するものであり、本件発明10は本件発明9の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記ア及びイの検討と同様、当業者において容易に想到し得るものとはいい難い。

エ 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2、3、5、8及び9は、甲4発明に対して進歩性が欠如するということはできない。

(14) 甲4発明に基づく本件発明7の進歩性について
ア 対比
本件発明7と甲4発明とを対比すると、両発明は少なくとも次の相違点Iを有するものと認められる。
<相違点I>
本件発明7は、「被覆膜」の不活性ガス含有率が「固定部材」の不活性ガス含有率よりも高いのに対し、甲4発明はこの点を有しない点。

イ 相違点Iについて
相違点Iの容易想到性について検討すると、甲1?10には、当該不活性ガス含有率について何ら記載されていないから、これらの証拠の記載事項に基づいて、甲4発明において、当該相違点Iに係る本件発明7の構成を備えるものとすることが、当業者において容易に想到し得るものとはいい難く、一方、本件発明は、「第4」2(5)イ(イ)に記載のとおり不活性ガスを含む「被覆膜」とすることにより、上記の有利な効果を奏するものといえる。

ウ 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲4発明に対して進歩性が欠如するということはできない。

(15) 小括
以上の検討のとおり、本件発明1?18は、甲1、2、3又は4に記載された発明に対して新規性及び進歩性が欠如するということはできないから、請求項1?18に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないため、申立理由1(新規性欠如)及び申立理由2(進歩性欠如)を理由に、取り消すことはできない。

3 申立理由3(サポート要件違反)について
(1) 申立理由3(サポート要件違反)についての具体的な指摘事項は、要するに、設定登録時の請求項2?18に係る発明において、「固定部材」や「膜」が、水素吸蔵金属元素を含む粒子が水素を吸蔵して発熱した際に、凝集を防止し得る耐熱性を有する材料であることを表す事項が特定されていないため、「水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子の凝集を抑制する」(本件明細書の【0005】)という本件発明の課題を解決することができず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなるというものである。

(2) しかしながら、発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、「各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置され、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれている」(本件明細書の【0006】)及び「各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子を互いに離隔するように形成する第1工程と、前記複数の粒子を覆うように膜を形成する第2工程とを含む」(同【0007】)という、当該「水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子」が固定部材又は膜により取り囲まれ又は覆われる構造的特徴により、当該粒子間には当該固定部材又は当該膜が介在することとなり、介在物がない場合に比して、当該粒子の凝集を抑制することができ、もって本件課題の解決に至ることを理解できるのであるから、本件発明2?18は、発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者において、当該課題が解決できると認識し得る範囲内のものであるということができる。

(3) 小括
以上のとおりであるから、請求項2?18に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないため、申立理由3(サポート要件違反)を理由に、取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1?18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の前記表面の上に配置され前記下地の前記表面からの距離が互いに異なる2以上の粒子を含み、前記膜は、複数の微結晶を含む、
ことを特徴とする構造体。
【請求項2】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材が複数の微結晶を含み、前記複数の微結晶の粒界に不活性ガスが存在する、
ことを特徴とする構造体。
【請求項3】
前記固定部材における前記不活性ガスの含有率は、0.5原子%以上である、
ことを特徴とする請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材は、下地と、前記下地の上に配置された膜とを含み、前記膜は、複数の微結晶を含み、前記膜は、前記下地の上に配置された第1膜と、前記第1膜の上に配置された第2膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された第1粒子と、前記第1膜と前記第2膜との間に配置された第2粒子とを含み、前記2次元状に配置された第1粒子は、前記第1膜を介して相互に離隔して配置され、かつ、前記第1膜によって覆われている、
ことを特徴とする構造体。
【請求項5】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材は、下地と、前記下地の上に配置された膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された粒子を含み、前記2次元状に配置された粒子は、前記膜を介して相互に離隔して配置され、かつ、前記膜によって覆われ、
前記膜は、複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々は、前記膜の前記複数の微結晶の少なくとも1つに接している、
ことを特徴とする構造体。
【請求項6】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記被覆膜は、複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、前記複数の粒子は、前記下地の前記表面に接触するように前記下地の前記表面に沿って2次元状に配置された粒子を含む、
ことを特徴とする構造体。
【請求項7】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記被覆膜の不活性ガスの含有率は、前記固定部材における不活性ガスの含有率よりも高い、
ことを特徴とする構造体。
【請求項8】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記被覆膜は、複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記被覆膜の原子量または分子量は、前記固定部材の原子量または分子量よりも大きい
ことを特徴とする構造体。
【請求項9】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記被覆膜は、複数の微結晶を含み、前記被覆膜の前記複数の微結晶の粒界に不活性ガスが存在する、
ことを特徴とする構造体。
【請求項10】
前記被覆膜における前記不活性ガスの含有率は、0.5原子%以上である、
ことを特徴とする請求項9に記載の構造体。
【請求項11】
前記複数の粒子の各々が1000nm以下の寸法を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項12】
前記複数の粒子の各々が100nm以下の寸法を有する、
ことを特徴とする請求項11に記載の構造体。
【請求項13】
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項14】
前記複数の粒子において、隣接する粒子の間の距離が、1nm以上かつ10nm以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項15】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子を互いに離隔するように形成する第1工程と、
前記複数の粒子を覆うように複数の微結晶を含む膜を形成する第2工程と、を含み、
前記第1工程および前記第2工程を含む処理を繰り返す、
ことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項16】
前記第1工程では、スパッタリング法によって前記複数の粒子を形成し、前記第2工程では、スパッタリング法によって前記膜を形成する、
ことを特徴とする請求項15に記載の構造体の製造方法。
【請求項17】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子を互いに離隔するように形成する第1工程と、
前記複数の粒子を覆うように複数の微結晶を含む膜を形成する第2工程と、を含み、
前記第1工程では、スパッタリング法によって前記複数の粒子を形成し、前記第2工程では、スパッタリング法によって前記膜を形成し、
前記第1工程および前記第2工程を含む処理を繰り返す、
ことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項18】
前記第1工程では、スパッタリング法によって前記複数の粒子を形成し、前記第2工程では、スパッタリング法によって前記膜を形成し、
下地をスパッタリング装置に搬入した後、前記下地を前記スパッタリング装置から搬出することなく、前記下地に対して前記処理を繰り返す、
ことを特徴とする請求項17に記載の構造体の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-12-01 
出願番号 特願2018-562143(P2018-562143)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B01J)
P 1 651・ 113- YAA (B01J)
P 1 651・ 537- YAA (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河野 隆一朗  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 後藤 政博
村岡 一磨
登録日 2019-02-22 
登録番号 特許第6482013号(P6482013)
権利者 キヤノンアネルバ株式会社 キヤノン株式会社
発明の名称 構造体およびその製造方法  
代理人 下山 治  
代理人 木村 秀二  
代理人 木村 秀二  
代理人 下山 治  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 永川 行光  
代理人 下山 治  
代理人 大塚 康徳  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  

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