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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B22D
管理番号 1371683
異議申立番号 異議2020-700053  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-30 
確定日 2020-12-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6563571号発明「金型の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6563571号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。 特許第6563571号の請求項1、2、3に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6563571号の請求項1ないし3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年8月23日に出願され、令和元年8月2日にその特許権の設定登録がされ、同年8月21日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての主な手続きの経緯は、次のとおりである。
令和2年 1月30日 :特許異議申立人・株式会社不二製作所(以下、「異議申立人A」という。)による請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立て
同 年 2月18日 :特許異議申立人・西谷敬之(以下、「異議申立人B」という。)による請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立て
同 年 4月21日付け:取消理由通知書
同 年 6月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同 年 7月20日 :異議申立人Aによる意見書の提出
同 年 同月27日 :異議申立人Bによる意見書の提出
同 年 8月20日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同 年10月22日 :特許権者による意見書の提出

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
(1)訂正事項1
特許権者は、特許請求の範囲の請求項1に「(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、」と記載されているのを、「試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、」に訂正することを請求する。
(2)訂正事項2
特許権者は、特許請求の範囲の請求項2に「(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、(C)前記ショットピーニング処理後に、窒化処理を行う工程と、」と記載されているのを、「試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、」に訂正することを請求する。
なお、訂正前の請求項2-3は、請求項3が、訂正の請求の対象である請求項2の記載を引用する関係にあるから、当該訂正は、一群の請求項2-3について請求されたものである。
(3)訂正事項3
特許権者は、特許請求の範囲の請求項3に「前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmである請求項2記載の金型の製造方法。」と記載されているのを、「試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、を有し、 前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmであり、前記窒化処理の方法がガス軟窒化法であることを特徴とする金型の製造方法。」に訂正することを請求する。
なお、訂正後の請求項3に係る訂正は、請求項2との引用関係を解消することを含むものであるところ、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項2とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
(4)訂正事項4及び6
特許権者は、明細書の段落【0015】及び【0020】に「(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、」と記載されているのを、「試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、」に訂正することを請求する。
なお、訂正事項4及び6に係る明細書の訂正は、請求項1について請求されたものである。
(5)訂正事項5
特許権者は、明細書の段落【0016】に「(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、(C)前記ショットピーニング処理後に、窒化処理を行う工程と、を有することを特徴とするものである。さらに、前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmであることが好ましい。」と記載されているのを、「試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、を有することを特徴とするものである。さらに、本発明の金型の製造方法は、試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、を有し、前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmであり、前記窒化処理の方法がガス軟窒化法であることを特徴とするものである。」に訂正することを請求する。
なお、訂正事項5に係る明細書の訂正は、一群の請求項2-3について請求されたものである。
(6)訂正事項7
特許権者は、明細書の段落【0021】に「(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、(C)前記ショットピーニング処理後に、窒化処理を行う工程と、を有することを特徴とするものである。」と記載されているのを、「試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、を有することを特徴とするものである。さらに、本発明の金型の製造方法は、試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、を有し、前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmであり、前記窒化処理の方法がガス軟窒化法であることを特徴とするものである。」に訂正することを請求する。
なお、訂正事項7に係る明細書の訂正は、一群の請求項2-3について請求されたものである。

2.訂正の目的の適否
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に係る特許発明では、試打ち工程との関係について特定されていないのに対し、訂正後の請求項1は、「(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程」と「(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程」が、試打ち前であることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項2に係る特許発明では、試打ち工程との関係について特定されていないのに対し、訂正後の請求項2は、「(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程」と「(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程」が試打ち前であり、「(C)前記ショットピーニング処理後に、窒化処理を行う工程」が試打ち後であることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項3に係る特許発明では、「窒化処理工程」を有することのみを特定していたのに対し、訂正後の請求項3は、「窒化処理の方法がガス軟窒化法であること」として窒化処理の方法を限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正前の請求項3に「前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmである請求項2記載の金型の製造方法」と記載されているのを、訂正後の請求項3では、「試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、を有し、前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmであり、前記窒化処理の方法がガス軟窒化法であることを特徴とする金型の製造方法」とする訂正は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項2の記載を引用する形式であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
(4)訂正事項4?7
訂正事項4?7に係る明細書の段落【0015】、【0016】、【0020】及び【0021】についての訂正は、訂正事項1?3に係る特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために訂正したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

3.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の段落【0021】には、「このように、ショットピーニング後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行うことにより、金型寿命を延ばすことができ、試打ち時には、窒化処理のような金型表面を硬くすることは行わずに、ショットブラスト処理と、その後のショットピーニング処理で、微細クラックの発生を防止し、試打ち後に窒化処理を施すことが必要である。」との記載がなされていることから、訂正事項1に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであることは明らかである。
また、訂正事項1は、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の段落【0021】には、上記(1)のとおりの記載があることから、訂正事項2に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであることは明らかである。
また、訂正事項2は、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3
「窒化処理の方法がガス軟窒化法であること」への訂正について、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の段落【0028】には、「窒化処理の条件としては、前記鋼材を窒化処理することができ、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、ガス軟窒化法が好ましい。」との記載がなされており、また、段落【0043】には、「(実施例4)下記表4記載の条件で、SKD61熱処理材の鋼材を処理した。また、下記表4記載の条件で、処理後の鋼材に対し、上記熱疲労試験を行い、表面状態の写真を撮影した。なお、窒化処理の条件は、ガス軟窒化法で行い、窒化処理による硬化層の深さ(表面硬化層深さ)が50μmとなる窒化処理を行った。」との記載がなされていることから、訂正事項3に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであることは明らかである。
また、訂正事項3は、発明特定事項を限定するものであり、かつ、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4?7
訂正事項4?7に係る明細書の段落【0015】、【0016】、【0020】及び【0021】についての訂正は、訂正事項1?3に係る特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために訂正したものであるところ、上記(1)?(3)と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

4.小括
上記のとおり、訂正事項1?7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ請求項に付された番号に従い、「本件特許発明1」等という。)は、令和2年6月15日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1-3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
試打ち前に、
(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、
を有することを特徴とする金型の製造方法。
【請求項2】
試打ち前に、
(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、
(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、
を有することを特徴とする金型の製造方法。
【請求項3】
試打ち前に、
(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、
(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、
を有し、
前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmであり、前記窒化処理の方法がガス軟窒化法であることを特徴とする金型の製造方法。」

第4 取消理由の概要
訂正後の請求項1-3に係る特許に対して、当審が令和2年8月20日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.請求項1に係る発明は、異議申立人Aの甲第1号証(以下、「引用文献1」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2.請求項2に係る発明は、引用文献1及び異議申立人Bの甲第6号証(以下、「引用文献10」という。)に記載された発明並びに2つの周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3.請求項3に係る発明は、引用文献1及び引用文献10に記載された発明並びに3つの周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第5 引用文献の記載
1.引用文献1の記載及び引用発明
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献1(特開昭63-207563号公報、異議申立人Aの甲第1号証)には、以下の事項が記載されている。
(1)請求項1
「(1)放電加工による金型の加工表面に対して該加工表面の変質層よりも高い硬度の不定形の研削材を噴射する第1工程と、前記金型の母材よりも高い硬度の球形の研掃材を噴射する第2工程とから成る放電加工による金型の研掃方法。」
(2)公報第1ページ右下欄第10-15行
「【産業上の利用分野】
本発明は放電加工による金型の研掃方法に関し、より詳しくは放電加工による金型表面の硬化層等の変質層の除去と加工表面の面粗さを改善し、ピーニングにより疲労強度を増加するための研掃方法に関する。」
(3)公報第2ページ右上欄第6-13行
「【目的】
本発明は上記した従来の完全な手作業を自動化すると共に、約20分という短時間に前記金型の変質層の除去と加工表面の研磨を行い10μ(Rmax)以下の表面粗さに加工し、同時にピーニングによる効果で、寿命を機械彫りの金型以上にすることのできる研掃方法を提供することを目的とするものである。」
(4)公報第2ページ左下欄第10行-右下欄第1行
「【作用】
従って本発明によれば、放電加工による金型の加工表面の変質層よりも高い硬度の不定形の研削材の噴射により、前記変質層が殆ど除去され、ついで、第2工程の球形の研掃材または該研掃材に第1工程の研削材を50%以下混合した混合物の噴射によって、加工表面の変質層が完全に除去されると共に面粗さが改善され、光沢面程度の研磨が行われると同時に被加工材たる金型の疲労強度が増加する。」
(5)公報第2ページ右下欄第2行-第3ページ左下欄第7行
「【実施例】
図は本願第1発明の方法を実施するための装置の全体を示すもので、10は直圧ブラスト室で圧縮空気により研削材が回収タンク41から圧送され、前記圧縮空気を分岐導入したノズルから圧縮空気と共に研削材が金型、実施例においてはアルミダイカスト金型の加工表面に噴射される。11は重力ブラスト室で、研掃材は重力によりノズルへ移送され、ノズルから圧縮空気と共に被加工表面に噴射される。前記直圧ブラスト室10及び重力ブラスト室11は、それぞれエアシリンダ16で開閉する入口および出口の扉12、13により密閉可能に構成され、モータ14により回転駆動される回転テーブルと複数本のノズルを内部に備え、これらのノズルをモータ15により往復揺動運動させながらローラコンベアから成るコンベアライン30上を直圧ブラスト室10から重力ブラスト室11方向へ移送されてくる放電加工により成形された金型に対して研削材および研掃材から成る噴射材を噴射させて、変質層の除去及び研磨加工を行う。
本願第1発明の研掃方法において、先ず、第1工程として、被加工材が直圧ブラスト室10の入口12から該室10へ搬入され、該入口が閉じられると、直圧ブラスト室10において、直径5mmのノズル3本が研削効果を高めるよう被加工材の硬化変質層よりも硬度の高い、比較的粒度の大きい不定形の研削材たとえば#46?#80(590?125μ)の白色溶融アルミナ質(WA)ト粒を空気圧力4?5kg/cm^(2)、噴射距離150?200mmにおいて約15分間、ノズルを揺動させながら該室10内で回転するテーブル上の被加工材たる金型の加工表面に噴射し、加工表面の変質層を除去する。
前記WAト粒はカッ色溶融アルミナ質(A)ト粒、所謂アランダムあるいはカーボランダム等所定の硬度を有する他の研削材で代用することができる。
ついで、前記WAト粒が噴射された被加工材たる金型は、直圧ブラスト室10の出口13が開放されて、該部からコンベアライン30上を移送され入口12を開放している重力ブラスト室11内へ搬入され、前記入口12が閉じると、第2工程として回転するテーブル上の、前記加工表面に対して、直径4mmのノズル3本が#80?#150(297?44μ)の粒径のスチールビーズを約5分間、空気圧力4?5kg/cm^(2)、噴射距離150?200mmにおいてノズルを揺動させながら噴射しピーニング処理を施す。
研掃材はスチールボールに限らず、消耗度を考慮しなければセラミックビーズ、ガラスビーズが代用可能である。前記スチールビーズ等の研掃材は球形でかつ、放電による高温度が材料内部に伝わっておらず従って、金属組織に変化を生じていない前記第1工程で除去された変質層の下層に位置する金型の母材の硬度よりも高い硬度(HRC60?65)である。かようなスチールビーズの噴射により被加工材に作用する圧縮残留応力により被加工材の疲労強度を向上させる等のピーニング効果を与え同時に加工表面の研掃、研磨を行う。」

上記(1)ないし(4)から、引用文献1には、放電加工による金型の研掃方法であり、金型表面の硬化層等の変質層の除去と加工表面の面粗さを改善し、ピーニングにより疲労強度を増加し、寿命を機械彫りの金型以上にすることのできる研掃方法を提供するものであることが理解できる。
また、(1)、(5)から、引用文献1の金型の研掃方法は、放電加工により成形された金型の加工表面に対して不定形の研削材を噴射し、加工表面の変質層を除去する第1工程と、これについで、加工表面に対してスチールビーズ(球形の研掃材)を噴射しピーニング処理を施す第2工程とを有することが理解できる。

よって、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「放電加工により成形された金型の加工表面に対して不定形の研削材を噴射し、加工表面の変質層を除去する第1工程と、
ついで、前記加工表面に対して球形の研掃材を噴射しピーニング処理を施す第2工程と、
から成る放電加工による金型の研掃方法。」

2.引用文献3の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献3(特開2004-148362号公報、異議申立人Aの甲第2号証)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項6】
鋼材からなる鋳造用金型の少なくともキャビティ面に対してショットピーニング処理および窒化処理を施すことによって、前記キャビティ面の最大高さを16μm以下とするとともに、圧縮残留応力を1000MPaよりも大きくすることを特徴とする鋳造用金型の表面処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の表面処理方法において、ショットピーニング処理を施した後に窒化処理を行うことを特徴とする鋳造用金型の表面処理方法。」、
「【0018】
鋳造用金型の素材である鋼材の好適な例としては、SKD材が挙げられる。この場合、窒化層の厚みを0.03mm以上として、キャビティ面のビッカース硬度を700以上とすることが好ましい。」

3.引用文献4の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献4(特開2008-223122号公報、異議申立人Aの甲第3号証)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
C:0.32?0.42%,Si:0.80?1.20,Mn:0.50以下,P:0.030以下,S:0.020以下,Cr:4.50?5.50,Mo:1.00?1.50,V:0.30?1.15,他は,Fe及び不可避的不純物を含有するHV450?520の鋼を素材とする熱間金型用合金鋼たる被処理材に対し,硬さがHV550?1100の粒子と高圧気体の固気2相混合流体をノズルより前記被処理材の表面にアークハイトが0.10mmN?0.19mmNとなるように噴射し,該被処理材の表面に沿って均一に塑性歪みを付与してナノ結晶組織を生成することを特徴とする熱間金型用合金鋼の熱疲労き裂の抑止方法。
・・・
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により前記ナノ結晶組織が生成された前記被処理材に対し,プラズマにより窒化処理を施すことを特徴とする熱間金型用合金鋼の熱疲労き裂の抑止方法。」、
「【0045】
このようなプラズマ窒化法としてイオン窒化又はラジカル窒化が考えられるが,イオン窒化は,金型の表層がスパッタリングによって除去されつつ,表面に膜状の5?15μmの窒化物層が形成されるために,図4(b)に示すようにナノ結晶化した表層が除去されてしまいヒートクラックの発生及び成長を抑制する効果が消失してしまう。一方,ラジカル窒化は,図4(c)に示すように,金型の表層がスパッタリングによって除去されることがなく,かつ表面に窒化物層を形成することもないので,ナノ結晶化した表層を維持したまま80?100μm程度の窒素拡散層を形成して,窒化処理を行うことができる。」

4.引用文献5の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献5(特開2018-41186号公報、異議申立人Aが提出した意見書に添付された参考資料1)には、以下の事項が記載されている。
「【0028】
図6は金型の設計から出荷までの一連の流れを示しており、金型は設計工程601、加工・組立工程602、試打・検査工程603を経て出荷工程604に至り、出荷される。
加工・組立工程602は、加工により金型部品を製作し、これらの金型部品により金型を組み立てる工程である。試打・検査工程603は、加工・組立工程602で製作された金型によって製品を試打し、金型及び試打した製品の寸法等を検査する工程である。出荷工程604は、出荷に際して金型の最終チェックを行う工程である。」
「図6



5.引用文献6の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献6(特開2008-56983号公報、異議申立人Aが提出した意見書に添付された参考資料2)には、以下の事項が記載されている。
「【0026】
そこで時効処理後に又はその時効処理を兼ねて(即ち時効処理と同時に)窒化処理を行い、表面のみ硬度を高める。
この窒化処理は、目的とする硬さや耐食性によって窒化深さを調整する必要がある。
また窒化処理の方法もガス窒化,ガス軟窒化,イオン窒化,塩浴窒化,ラジカル窒化等、金型に要求される特性に応じて選択することができる。」

6.引用文献7の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献7(特開2008-163431号公報、異議申立人Aが提出した意見書に添付された参考資料3)には、以下の事項が記載されている。
「【0028】
そこで時効処理後に又はその時効処理を兼ねて(即ち時効処理と同時に)窒化処理を行い、表面のみ硬度を高める。
この窒化処理は、目的とする硬さや耐食性によって窒化深さを調整する必要がある。
また窒化処理の方法もガス窒化,ガス軟窒化,イオン窒化,塩浴窒化,ラジカル窒化等、金型に要求される特性に応じて選択することができる。」、
「【0041】
時効処理後又は時効処理と同時に窒化処理を実施し、表面硬さをHV500以上とすること
窒化処理はガス窒化,ガス軟窒化,イオン窒化,塩浴窒化,ラジカル窒化等の何れでも良く、窒化によって表面硬さがHV500以上なければ母材の硬さと殆ど変わらなくなり、鏡面研磨をしても十分な仕上精度が得られない。」

7.引用文献8の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献8(特開2011-235318号公報、異議申立人Aが提出した意見書に添付された参考資料4)には、以下の事項が記載されている。
「【0018】
次に、試験片1を加熱炉内で加熱しながらアンモニアガスを炉内に導入し、試験片1の外周面をガス軟窒化処理した。図2に示すように、処理温度、窒化時間、ガスの配合比の各条件を与えて、それぞれの化合物層厚さの化合物層2を含む窒化層5(図4参照)を形成させた。なお、ガス軟窒化処理に代えて、実施例6についてはガス浸硫窒化処理、実施例7及び比較例5についてはプラズマ窒化処理した。」

8.引用文献9の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献9(“金型技術シリーズ2 ダイカスト金型”、財団法人素形材センター、平成13年3月12日、177ページ、異議申立人Bが提出した意見書に添付された甲第5号証)には、以下の事項が記載されている。
「1.4 金型の修正
金型が完成すると試作鋳造を行う.試作鋳造の目的は,種々の不具合を抽出し,量産迄にその不具合の対応をすることである.したがって,試作鋳造用の特別な条件で鋳造するのではなくできるだけ量産と同じ条件で試作鋳造を行い,その条件でも不具合のないよう金型を修正しておく必要がある.」

9.引用文献10の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献10(西、“ダイカストの欠陥・不良を考える”、ダイカスト新聞社、2017年6月10日、367ページ、異議申立人Bが提出した意見書に添付された甲第6号証)には、以下の事項が記載されている。
「5)試作鋳造
金型が完成すると試作鋳造を行う。この工程は、製品の寸法精度、健全性、金型の動作、鋳造方案、鋳造条件などを確認して、作業標準に落とし込むための重要な工程である。ただし、一般的に窒化などの表面処理は試作鋳造の後に行うことが多いため、できる限り試作鋳造は回数を少なくすることが望ましい。また、鋳造条件は量産での条件に近づけて行うが、金型の保護のために金型の予熱、潤滑・離型剤の塗布は十分に行うことが大切である。
6)表面処理
試作鋳造で発見された不具合が解消されると、最終段階としてヒートチェック、焼付き、型浸食などの金型損傷を防止する目的で窒化処理などの表面処理が行われる。窒化処理は、ダイカスト金型に最も一般的に使用される表面処理法で、窒素原子を金型表面に拡散浸透することによって、表面に硬化層を生成する方法である。処理温度が500?600℃で金型材の変態点以下であるため、歪や変形が少ない。
・・・したがって、目的によって白層の有無や拡散層の厚さを制御する処理法、処理条件を選択することが大切である。」

10.引用文献11の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献11(日原、“ダイカスト金型の熱疲労特性と寿命評価”、電気加工学会誌、2001年、35巻78号、1-11ページ、異議申立人Bが提出した意見書に添付された甲第7号証)には、以下の事項が記載されている。







11.引用文献12の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献12(八代、“金型への窒化処理技術”、素形材、Vol.52(2011)No.6、14-19ページ、異議申立人Bが提出した意見書に添付された甲第8号証)には、以下の事項が記載されている。







第6 対比・判断
1.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「金型」が「鋼材」からなることは技術常識であるから、引用発明の「金型」は、本件特許発明1の「鋼材」に相当する。
そして、引用発明の「放電加工により成形された金型の加工表面に対して不定形の研削材を噴射」することは、金型の放電加工の後に当該金型の加工表面に対して研削材を噴射していることから、本件特許発明1の「鋼材を放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行」うことに相当し、以下同様に「加工表面の変質層を除去する」は「加工変質層を除去する」に、相当する。
また、引用発明の「ついで、」は、「第1工程」の後に行われるものであることを意味し、「第1工程」は「ショットブラスト処理」を行う工程であることから、本件特許発明1の「前記ショットブラスト処理の後に、」に相当する。
さらに、引用発明の「前記加工表面に対して球形の研掃材を噴射しピーニング処理を施す」ことは、上記第5の1.(4)の「第2工程の球形の研掃材・・・の噴射によって、加工表面の変質層が完全に除去されると共に面粗さが改善され、光沢面程度の研磨が行われると同時に被加工材たる金型の疲労強度が増加する。」及び上記第5の1.(5)の「かようなスチールビーズの噴射により被加工材に作用する圧縮残留応力により被加工材の疲労強度を向上させる等のピーニング効果を与え同時に加工表面の研掃、研磨を行う。」の記載から、本件特許発明1の「ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する」ことに相当する。
これを踏まえれば、引用発明の「第1工程」及び「第2工程」は、本件特許発明1の「(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程」及び「(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「放電加工による金型の研掃方法」は、研掃工程は金型の製造工程の一工程であるから、本件特許発明1の「金型の製造方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と引用発明とは以下の点で一致し相違する。
[一致点]
「鋼材を放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、
を有する金型の製造方法。」
[相違点1]
本件特許発明1は、試打ち前に、(A)及び(B)の二つの工程を有するのに対し、引用発明は、試打ち前に、第1工程及び第2工程の二つの工程を有するか否か不明な点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
上記第5の4.の引用文献5、上記第5の8.の引用文献9、上記第5の9.の引用文献10及び上記第5の10.の引用文献11に記載されるように、金型の製造工程において、金型が完成した後に試打ちを行うことは周知技術(以下、「周知技術A」という。)である。
上記第5の4.の引用文献5及び上記第5の9.の引用文献10にも記載されるように、試打ちとは、金型及び試打した製品の寸法精度等を確認・検査するために行うものであることが技術常識であるところ、引用発明においては、第1工程及び第2工程の処理により金型の表面形状が変形することから、これらの工程の前では金型の形状は完成しておらず、これらの工程の前に試打ちを行っても寸法精度を正しく確認・検査することはできない。そうすると、当業者であれば、これらの工程の前に試打ちを行おうと考えることはないはずである。
また、引用発明において、試打ちを行うことを阻害する要因も見当たらない。
したがって、引用発明において、当該周知技術Aに基づいて、二つの工程を経て金型が完成した後(外形寸法、表面形状が確定した後)に試打ちを行うこと、すなわち、試打ち前に、二つの工程を行うようにして上記相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件特許発明1は、引用発明及び引用文献5、9-11に記載された周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)特許権者の主張について
特許権者は、令和2年10月22日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)において、「ご指摘の通り、引用文献Aには、『試打ち』の工程の記載はあります。しかしながら、引用文献Aには、本件明細書の段落【0018】に記載されている『本発明によると、ダイカスト金型製造時の表面処理工程の改善により、金型の長寿命化を図ることができる金型の製造方法を提供することができる。』という効果に関しましては、全く開示も示唆もないものであり、動機づけがないものであります。また、本件特許発明の特徴である『試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有することを特徴とする金型の製造方法』に関しても具体的な記載はなく、本件特許発明は1 、引用文献Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないものであります。」と主張する。
なお、上記「引用文献A」は、取消理由通知(決定の予告)において「周知技術A」を示す文献に相当すると認められる。
しかしながら、上述のとおり、金型の製造工程において、金型が完成した後に試打ちを行うことは周知技術(周知技術A)であり、引用発明は、本件特許発明1の(A)、(B)の工程に対応する第1工程及び第2工程の二つの工程を有するものであるところ、これらの二つの工程は、金型の表面形状が変形を伴うものであるから、当該工程の後に金型及び製品の寸法精度等を確認・検査すべきことは明らかであり、引用発明に上記周知技術Aを適用する動機は十分にあるといえる。また、引用発明は「放電加工による金型表面の硬化層等の変質層の除去と加工表面の面粗さを改善し、ピーニングにより疲労強度を増加するための研掃方法に関する」ものであるから、引用発明に周知技術Aを適用することによって、上記「表面処理工程の改善により、金型の長寿命化を図ることができる」という効果を奏することも、当業者が予測し得た範囲内の事項である。
さらに、特許権者は、本件明細書の段落【0018】に記載されている効果を示す例として、実験例1および2を示し、実験例1および2は、表1および表2記載の条件で処理を行ったものであること、及びその結果を表2に示すものであると説明した上で、この表2の結果から「『試打ち』の前にショットプラスおよびショットピーニング処理をすることで、『ヒートクラック発生による初回溶接修理時の鋳造回数』および『ヒートクラック発生による累計溶接修理回数』が改善されていることがわかります。かかる効果は、引用文献Aから、当然に導き出せるものではなく、本件特許発明は1、引用文献Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないものであります。」との主張をする。
しかしながら、上記表2は、ショットプラス(ショットブラスト処理)およびショットピーニング処理を行ったか否かによる効果を評価したもので、当該処理を「試打ち」の前に行ったか後に行ったかとは無関係のものであるところ、上記のとおり、引用発明に周知技術Aを適用しても、「表面処理工程の改善により、金型の長寿命化を図ることができる」という効果を奏することは、当業者が予測し得た範囲内の事項であるから、上記主張は採用できない。

2.本件特許発明2について
(1)対比
本件特許発明2と引用発明とを対比すると、相当関係は上記1.(1)の通りであるから、以下の点で一致し相違する。
[一致点]
「鋼材を放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、
を有する金型の製造方法。」
[相違点2]
本件特許発明2は、試打ち前に、(A)及び(B)の二つの工程を有し、試打ち後に窒化処理を行う工程を有するのに対し、引用発明は、試打ちについて特定がなく、その後の窒化処理を行う工程を有するかも不明な点。

(2)判断
上記相違点2について検討する。
上記1.(2)に記載したとおり、金型の製造工程において、金型が完成した後に試打ちを行うことは周知技術(周知技術A)である。また、上記第5の2.の引用文献3に、金型にショットピーニング処理を施した後に窒化処理を行うことが記載され、上記第5の3.の引用文献4に、熱間金型用合金鋼たる被処理材に対し、粒子と高圧気体の固気2相混合流体を噴射し、該被処理材の表面に沿って均一に塑性歪みを付与してから、窒化処理を行うことが記載されるように、金型の製造工程において、ショットピーニング等の工程を行った後の最終段階に金型の表面強化処理として窒化処理を行うことは周知技術(以下、「周知技術B」という。)である。
また、上記第5の9.の引用文献10には「金型が完成すると試作鋳造を行う。・・・ただし、一般的に窒化などの表面処理は試作鋳造の後に行うことが多いため、できる限り試作鋳造は回数を少なくすることが望ましい。」、「試作鋳造で発見された不具合が解消されると、最終段階としてヒートチェック、焼付き、型浸食などの金型損傷を防止する目的で窒化処理などの表面処理が行われる。」と記載されており、金型が完成した後に試打ちを行うこと、及び、その試打ち後に、窒化などの表面処理を行うことが一般的に行われる工程順であることが開示されている。
ここで、引用発明と引用文献10に記載された発明とは、ダイカスト金型の製造方法という点で技術分野が関連しているとともに、金型の強度を増加させるという課題も共通している。さらに、金型の製造工程において、金型が完成した後に試打ちを行うこと、及び、最終段階に金型の表面強化処理として窒化処理を行うことは、それぞれ周知技術(周知技術A、B)であることから、引用発明に引用文献10に記載された発明を適用する動機は十分にあるといえる。
そうすると、引用発明に引用文献10に記載された発明を適用して、金型が完成する第2工程の後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行うことにより、上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件特許発明2は、引用発明、引用文献10に記載された発明及び引用文献5、9-11に記載された周知技術A、引用文献3、4に記載された周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)特許権者の主張について
特許権者は、意見書において、「本件特許発明2および3についても、上記と同様の理由から、本件特許発明は2および3、引用文献Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないものであります。」と主張する。
しかしながら、上記1.(3)及び2.(2)のとおりであるから、上記主張は採用できない。

3.本件特許発明3について
(1)対比
本件特許発明3と引用発明とを対比すると、相当関係は上記1.(1)の通りであるから、以下の点で一致し相違する。
[一致点]
「鋼材を放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、
を有する金型の製造方法。」
[相違点3]
本件特許発明3は、試打ち前に、(A)及び(B)の二つの工程を有し、試打ち後に窒化処理を行う工程を有するのに対し、引用発明は、試打ちについて特定がなく、その後の窒化処理を行う工程を有するかも不明な点。
[相違点4]
本件特許発明3は、前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmであり、前記窒化処理の方法がガス軟窒化法であるのに対し、引用発明は、窒化処理を行う工程を有するか不明な点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
ア.相違点3について
相違点3は上記2.(1)の相違点2と同じであるから、上記2.(2)判断に記載したとおり、引用発明において上記相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
イ.相違点4について
上記第5の2.の引用文献3に、鋳造用金型に関し、「窒化層の厚みを0.03mm以上」とすることが記載され、上記第5の3.の引用文献4に、熱間金型用合金鋼たる被処理材に関し、「80?100μm程度の窒素拡散層を形成して,窒化処理を行うことができる」と記載されているとおり、窒化処理において、窒化層の厚みを50μm?100μmの範囲とすること自体は、通常行われる窒化処理の窒化層の厚みと変わるところがない。
また、上記第5の5.の引用文献6、上記第5の6.の引用文献7、上記第5の7.の引用文献8、上記第5の10.の引用文献11及び上記第5の11.の引用文献12に記載されるように、金型に対する窒化処理法として、ガス軟窒化処理を用いることは周知技術(以下、「周知技術C」という。)であることから、引用発明に引用文献10に記載された窒化処理を適用するに際し、当該金型に対する窒化処理法として周知技術であるガス軟窒化法を用いること、窒素拡散層の厚さ(深さ)を50?100μmとし、相違点4に係る構成とすることに特段の困難性はない。
よって、本件特許発明3は、引用発明、引用文献10に記載された発明及び引用文献5、9-11に記載された周知技術A、引用文献3、4に記載された周知技術B、引用文献6-8、11-12に記載された周知技術Cに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)特許権者の主張について
特許権者の主張は、上記2.(3)と同様であるところ、上記1.(3)及び3.(2)のとおりであるから、上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本件特許発明1-3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1-3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
金型の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の製造方法に関し、特に、ダイカスト金型製造時の表面処理工程の改善により、金型の長寿命化を図ることができる金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストは生産性に優れ、高品質の鋳物を提供できることから、現在アルミ鋳物の大部分はダイカスト製品である。また、その製品の多くは自動車部品であり、近年の高性能化、軽量化により部品の高品質化、軽量化が求められている。そのため、ダイカスト金型にも高品質化、長寿命化が求められ、鋼材の高性能化や多くの表面処理が提案、実用化がなされている。
【0003】
また、金型の製造の工程としては、一般的に、以下の(1)?(12)の工程で行われている。
(1)設計
(2)加工データ作成
(3)荒加工
(4)仕上げ加工
(5)機械加工(マシニング加工)
(6)放電加工
(7)研磨
(8)寸法検査(金型部品)
(9)組み立て
(10)試打ち
(11)寸法検査(製品)
※必要に応じて金型修正
(12)表面処理(窒化処理など)
【0004】
かかる金型の製造方法に関して、非特許文献1には、金型寿命を左右する要因は、金型材料、熱処理、鋳造条件など多岐に渡り、金型製作時の要因についても指摘されているが、一般的に、上記のように、金型の加工には、機械加工および放電加工が用いられ、いずれの場合にも加工後には、鋼材の加工面に変質層(溶融再凝固層)が生じ、変質層除去のための研磨を行う必要がある。具体的には、上記工程のマシニング加工面あるいは放電加工面の粗さ(Rz)は、通常、5?20μm程度であり、この面を平滑にすると共に加工時の変質層を除去するため「磨き(研磨)」を行っている。また、上記の工程(7)の研磨は、現在でも多くの場合、手作業で行われており、多くの人手、時間および費用を費やしている。これは、非特許文献2?4に開示されているように、放電加工面には変質層が生じ、この変質層は局部溶解と再凝固による脆弱な層や微小クラックがあり、また引張り残留応力があることから完全に除去しないと金型寿命に悪影響を及ぼすものである。
【0005】
また、金型の加工に放電加工を使用せず、機械加工のみで加工を完了させた場合でも加工面の凹凸(ツールマーク)が残り、これがクラックの発生起点となるといわれている。さらに、引張り残留応力もあるといわれており、機械加工の場合でも加工面の研磨が必要とされている(非特許文献5)。
【0006】
さらに、上記のように、機械加工後研磨あるいは放電加工後研磨した後に試打ちを行い、製品の寸法確認ができた後に、窒化処理などの表面処理を行っている。これは、寸法確認前に窒化処理などの表面処理を行うと、製品の寸法不具合があった場合に金型の寸法修正が容易でないからである。
【0007】
また、上記工程(12)の金型表面処理については非常に多くの処理が実際に行われている。ショットピーニングによる金型表面の平滑化と圧縮残留応力が金型寿命に良好な効果をもたらすことも知られており、さらにショットピーニングと窒化処理を組み合わせる技術も提案されている。(特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日原政彦、「ダイカスト金型の寿命向上と対策」、株式会社軽金属通信ある社、平成6年9月
【非特許文献2】日原政彦、八代浩二、「ダイカスト金型鋼の寿命に関する研究」、山形県工業技術センター 研究報告、1993年、No.7、p53?59
【非特許文献3】日原政彦、萩原茂、八代浩二、佐野正明、「生産用金型の高度化・高精度化技術の開発(第3報)」、山形県工業技術センター 研究報告、1996年、No.10、p1
【非特許文献4】増井清徳、曽根匠、佐藤幸弘、南久、「金型製作における放電加工面のトラブル事例とその対策」、電気加工学会誌、2000年、Vol.34、No.76、p42?49
【非特許文献5】竹山秀彦、「大学講義 切削加工」、丸善出版、1997年、p132
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011-23531号公報
【特許文献2】特開2004-14836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
金型の製造において、従来から変質層除去のために、上記工程(7)の研磨が行われているが、研磨作業は、主に手作業で行われるため、時間と費用を費やすという問題点があった。そのため、研磨にかわる変質層の除去方法が求められていた。
【0011】
また、機械加工後研磨あるいは放電加工後研磨した後に試打ちを行っているが、試打ち時に金型に微細なクラックが入り、それが金型の寿命に悪影響を及ぼしている場合もある。そのため、試打ち時には、窒化処理のような金型表面を硬くすることなく微細クラックの発生を防止できる処理を施し、試打ち後に窒化処理を施すことが求められている。また、上記工程10の試打ちは、金型の表面処理をする前に製品の寸法検査を行い、必要な場合には金型修正をするために必要な工程であるが、この試打ちの際に微細なクラックが生じ、この微細クラックがあると窒化処理を行った後にもクラックの起点となり金型寿命に悪影響を及ぼすおそれがある。しかしながら、この試打ち時のクラックに注目して金型製造の工程に言及している事例は見当たらないのが現状である。
【0012】
さらに、特許文献1および2記載の技術は、それぞれ省力化、費用削減あるいは金型寿命延長に効果があると考えられるが、金型製造工程全体としての費用削減、工期短縮および金型の高品質化に最適とは言い難いものであった。また、高寿命の金型を低コストで製造するために、上述のように各工程で様々な工夫が行われているが、処理内容と処理工程が必ずしも明確ではなかった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、前記の従来技術の問題点を解決し、従来、問題点であると指摘されながらもその対応が十分ではなかった試打ち時の微細クラックに着目し、その前後の金型製造工程の処理内容を適切にすることにより、短工期、低コストで金型の長寿命化を図ることができる金型の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ショットブラスト処理の後にショットピーニング処理を行うことによって、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明の金型の製造方法は、
試打ち前に、
(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の金型の製造方法は、
試打ち前に、
(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、
(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、
を有することを特徴とするものである。さらに、本発明の金型の製造方法は、
試打ち前に、
(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、
(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、
を有し、
前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmであり、前記窒化処理の方法がガス軟窒化法であることを特徴とするものである。さらに好ましくは、前記窒化処理において、通常のガス窒化などにより鋼材表面に生じる所謂「白層」が生じない窒化処理が望ましい。
【0017】
さらに、本発明の金型の製造方法は、前記ショットブラスト処理が、F10?F320のアルミナあるいは炭化けい素のショット材を用い、0.2MPa?0.6MPaの空気圧で行うショットブラスト処理であり、前記ショットピーニング処理が、#120?#320相当のガラスビーズ、スチールビーズ、ジルコンビーズまたはジルコニアビーズのピーニング材を用い、0.2MPa?0.6MPaの空気圧で行うショットピーニング処理であることが好ましい。なお、本発明において、「F」および「#」は、JIS R6001によるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、ダイカスト金型製造時の表面処理工程の改善により、金型の長寿命化を図ることができる金型の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 放電加工後(試料No.1-1)の表面の写真である。
【図2】 放電加工後(試料No.1-1)の表面の断面の写真である。
【図3】 放電加工後にショットブラスト処理した後(試料No.1-2)の表面の写真である。
【図4】 放電加工後にショットブラスト処理した後(試料No.1-2)の表面の断面の写真である。
【図5】 放電加工後にショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理した後(試料No.1-3)の表面の写真である。
【図6】 放電加工後にショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理した後(試料No.1-3)の表面の断面の写真である。
【図7】 放電加工後にショットピーニング処理した後(試料No.1-4)の表面の写真である。
【図8】 放電加工後にショットピーニング処理した後(試料No.1-4)の表面の断面の写真である。
【図9】 熱疲労試験に使用する熱疲労試験機を示す図である。
【図10】 熱疲労試験における熱サイクルを示すグラフである。
【図11】 機械加工仕上げ後に、#400ペーパー仕上げを行った試験片(試験片3-1)の試験後の表面状態の写真である。
【図12】 機械加工仕上げの後に、ショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理を行った試験片試験片(3-2)の試験後の表面状態の写真である。
【図13】 機械加工仕上げ後に、#400ペーパー仕上げを行い、窒化処理無しの試験片(試験片4-1)の試験後の表面状態の写真である。
【図14】 機械加工仕上げの後に、ショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理を行い、窒化処理なしの試験片(試験片4-2)の試験後の表面状態の写真である。
【図15】 機械加工仕上げの後に、ショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理を行い、窒化処理を行った試験片(試験片4-3)の試験後の表面状態の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の金型の製造方法(金型製造における鋼材の表面処理方法)ついて具体的に説明する。
本発明の金型の製造方法は、試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有することを特徴とするものである。このように、機械加工あるいは放電加工後にショットブラスト処理、そしてショットピーニング処理を行うことで、鋼材の加工面の変質層および引張り残留応力を取り除き、表面粗さを整えると共に圧縮残留応力を付与することができ、その結果、研磨作業の時間と費用を軽減し、加えて試打ち時の微小クラックの発生を防止することができる。なお、機械加工は、オークマ株式会社製の立形マシニングセンタMB-46VA(商品名)等の機械加工機を使用して行うことができ、放電加工は、株式会社牧野フライス製作所製のEDGE3(商品名)等の放電加工機を使用して行うことができる。
【0021】
また、本発明の金型の製造方法は、試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、を有することを特徴とするものである。さらに、本発明の金型の製造方法は、試打ち前に、(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、を有し、前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmであり、前記窒化処理の方法がガス軟窒化法であることを特徴とするものである。このように、ショットピーニング後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行うことにより、金型寿命を延ばすことができ、試打ち時には、窒化処理のような金型表面を硬くすることは行わずに、ショットブラスト処理と、その後のショットピーニング処理で、微細クラックの発生を防止し、試打ち後に窒化処理を施すことが必要である。
【0022】
試打ち時に微細クラックを生じさせないことはその後の金型寿命を長く保つために重要なことであり、このためには、金型加工後に鋼材の表面変質層を除去し、クラック発生を抑制する処理を施すことが望ましい。そこで、鋭意検討した結果、変質層の除去にはショットブラストが効果的であり、表面改質と圧縮残留応力の付与にはショットピーニングが有効であることを見出したものである。その結果、本発明では、アルミダイカスト金型製造時に適切な金型表面処理を適切な工程で行うことにより、従来よりも工期を短縮し、費用を低減し、かつ長寿命な金型を提供することができるものである。
【0023】
ショットブラスト処理は、投射材(ショット材(ショットメディア))と呼ばれる粒体を加工物に衝突させる処理のことであり、一般に汚れ除去、清掃に用いられており、使用するメディアもブラスト条件も様々である。変質層の除去にはある水準の研掃力が必要であるが、あまり研掃力が強く、表面を必要以上に粗くしてしまうことは好ましくない。そのため、機械加工あるいは放電加工の仕上げ状態を考慮したショット材やショットブラスト条件を選択する必要があり、適切な条件のショットブラスト処理が必要である。また、ショットブラスト処理後のショットピーニング処理は、無数の鋼鉄あるいは非鉄金属の小さな球体を高速で金属表面に衝突させる処理のことであり、表面粗さを整え圧縮残留応力を付与するものである。この場合も、ショットブラスト処理の仕上がり状態を考慮して、最適なショット材を用いること、あるいはピーニング条件とする必要がある。
【0024】
そのため、本発明の金型の製造方法は、前記ショットブラスト処理が、F10?F320のアルミナあるいは炭化けい素のショット材を用い、0.2MPa?0.6MPaの空気圧で行うショットブラスト処理であり、前記ショットピーニング処理が、#120?#320相当のガラスビーズ、スチールビーズ、ジルコンビーズまたはジルコニアビーズのピーニング材を用い、0.2MPa?0.6MPaの空気圧で行うショットピーニング処理であることが好ましい。また、本発明の金型の製造方法は、F54?F240のアルミナあるいは炭化けい素のショット材を用い、0.3MPa?0.5MPaの空気圧で行うショットブラスト処理であり、前記ショットピーニング処理が、#120?#240のガラスビーズ、スチールビーズ、ジルコンビーズまたはジルコニアのピーニング材を用い、0.3MPa?0.5MPaの空気圧で行うショットピーニング処理であることが、より好ましい。このショットブラスト条件とすることで、金型表面の変質層の除去の作業時間がより短くなり、表面粗さを不要に粗くしないバランスで処理することができる。
【0025】
また、本発明において、ショットブラスト処理とショットピーニング処理の工程は、その順序を逆にすることは不可である。これは、下記実施例にも示しているが、鋼材の加工面へのショットピーニング処理では変質層を除去することは困難であり、また、ショットピーニング処理後にショットブラスト処理を行うとショットブラスト処理後にショットピーニング処理行った場合と比較して、鋼材を平滑面とすることは困難であるからである。
【0026】
さらに、本発明において、ショットブラスト処理とショットピーニング処理後に、窒化処理を行うこともできる。上記のように、金型加工後にショットブラスト処理を行って変質層を除去し、さらにショットピーニング処理により表面改質を行い圧縮残留応力を付与することにより、短工期、低コストで試打ち時のクラック防止効果の高い金型を提供することができ、試打ち時にクラックの発生が防止できていれば、その後の窒化処理の効果が、微細クラックのある状態で窒化処理を施した場合より大きくなる。さらにまた、窒化処理の前処理として、ショットブラスト処理による表面研掃を行うことにより表面を清浄化、活性化し、窒化処理が行われやすくすると共に、表面の極微細なクラックを除去することができ、さらにショットピーニング処理を行うことにより表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与することができる。
【0027】
また、本発明において、上記のように、これらの前処理により窒化による表面硬化による金型の長寿命化効果が一層発揮されるが、窒化処理による硬化層の深さ(表面硬化層深さ)としては、金型の耐ヒートクラック性から50?100μmが効果的であり、かつ表面に所謂白層を生じないことが好ましい。さらに、窒化処理後にショットピーニング処理を行うことにより、より大きい圧縮残留効果が付与され、金型寿命が更にのばすことができる。
【0028】
本発明において、前記窒化処理の方法としては、前記鋼材を窒化処理することができ、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、イオン窒化法、プラズマ窒化法、ガス窒化法、ガス軟窒化法等の方法を挙げることができる。また、窒化処理の条件としては、前記鋼材を窒化処理することができ、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、ガス軟窒化法が好ましい。
【0029】
また、窒化処理温度が500?600℃であり、窒化層が金型表面から50?100μmであることが好ましい。窒化処理として、鋼材の表面に、鉄と窒素の化合物(Fe4NおよびFe2?3N)、所謂「白層」を生じないように窒化の条件をコントロールすることにより、金型使用中にクラックが生じた際に再度窒化処理が可能となる。
【0030】
さらに、本発明において、前記金型(ダイカスト金型)としては、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの鋳造に用いられるダイカスト金型等を挙げることができる。かかる金型の鋼材としては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、例えば、JIS G 4404 SKD61等を挙げることができる。
【0031】
さらに、本発明において、本発明の効果が損なわれない範囲で、通常の金型の製造方法に使用できる工程を追加できる。例えば、本発明の金型製造方法中に、放電被覆あるいは酸化処理の工程を含んでいてもよい。
【0032】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
下記表1記載の条件で、SKD61熱処理材の鋼材を処理した。放電加工は、株式会社牧野フライス製作所製のEDGE3放電加工機(商品名)を用い、通常の金型製作時の放電加工条件で行った。また、処理後の鋼材の表面および断面を株式会社キーエンス製のVHX-6000デジタルマイクロスコープ(商品名)で撮影した。さらに、処理後の鋼材の表面粗さを株式会社ミツトヨ製のサーフテスト SJ-400を用いて測定し、表1に併記した。表面粗さとは、JIS B 0601:2001に規定される方法で測定したものである。
【0034】
【表1】

【0035】
図1は、放電加工後(試料No.1-1)の表面の写真であり、図2は、放電加工後(試料No.1-1)の表面の断面の写真であり、図3は、放電加工後にショットブラスト処理した後(試料No.1-2)の表面の写真であり、図4は、放電加工後にショットブラスト処理した後(試料No.1-2)の表面の断面の写真であり、図5は、放電加工後にショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理した後(試料No.1-3)の表面の写真であり、図6は、放電加工後にショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理した後(試料No.1-3)の表面の断面の写真であり、図7は、放電加工後にショットピーニング処理した後(試料No.1-4)の表面の写真であり、図8は、放電加工後にショットピーニング処理した後(試料No.1-4)の表面の断面の写真である。図1から、放電加工後の表面は粗く、図2から、処理後の鋼材の断面には白い変質層が生じていることが確認できる。また、図3および図4からショットブラスト後は表面変質層が除去され表面が滑らかになっていることが確認できる。さらに、図7と図8から、放電加工後にショットピーニングのみを施した試料の表面と断面では、表面変質層が除去されていないことが確認できる。一方、図5と図6から、放電加工後にショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理を行うことで、試料No.1-2および試料No.1-4と比較して、滑らかになっていることが確認できる。このことは、表1の表面粗さの結果からも確認できる。
【0036】
(実施例2)
下記表2記載の条件で、SKD61熱処理材の鋼材を処理した。機械加工は、オークマ株式会社製の立形マシニングセンタMB-46VA(商品名)で行った。また、処理後の鋼材の表面粗さを株式会社ミツトヨ製のサーフテスト SJ-400を用いて測定し、さらに、処理後の圧縮残留応力(MPa)をX線回折残留応力測定装置により測定して、表2に併記した。なお、表2中、ショットブラスト処理は、F240アルミナ、0.4MPaのエアー圧でブラストする条件で行い、ショットピーニング処理は、#120Zrビーズ、0.6MPaエアー圧でピーニングする条件で行った。
【0037】
【表2】

【0038】
表2の結果から、SKD61熱処理材の鋼材を機械加工した後の処理が、「機械加工後に、ショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理」した場合と「機械加工後に、ショットピーニング処理し、さらにショットブラスト処理」した場合で、表面粗さ及び残留応力に与える影響が大きく異なり、機械加工後にショットブラスト処理を行い、その後にショットピーニング処理を行った方が、表面粗さは小さく圧縮残留応力は大きくなり、鋼材の表面を改善でき、金型の長寿命化を図ることができた。
【0039】
(実施例3)
下記表3記載の条件で、SKD61熱処理材の鋼材を処理した。また、下記表3記載の条件で、処理後の鋼材に対し、下記熱疲労試験を行い、表面状態の写真を撮影した。
【0040】
(熱疲労試験)
図9は、熱疲労試験に使用する熱疲労試験機を示す図であり、図10は、熱疲労試験における熱サイクルを示すグラフである。図9(A)は加熱・加圧中の状態を示す図であり、図9(B)は冷却中の状態を示す図であり、図9中、1は加熱ヒーター、2は加熱ブロック、3は試験片、4はシリンダー、5は水槽、6はシリンダー4に連結されたロッド、2aは熱電対、矢印aは加熱・加圧時のロッド6の動き方向、矢印bは冷却加熱のロッド6の切替方向を示す。図9(A)に示すように、試験片3をロッド6の先に設置し、シリンダー4を矢印a方向に加熱・加圧する。その後、試験片3が560℃に達したら、図9(B)に示すように、試験片3を矢印b方向に回転させて水の入った水槽5で冷却する。これを図10に示すように、表中記載のサイクルの回数、繰り返し行い、表面状態の写真を撮影した。
【0041】
【表3】

【0042】
図11は、機械加工仕上げ後に、#400ペーパー仕上げを行った試験片(試験片3-1)の試験後の表面状態の写真である。浸透探傷試験により多数のクラックが生じていることが確認できた。一方、図12は、機械加工仕上げの後に、ショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理を行った試験片(試験片3-2)の試験後の表面状態の写真である。クラックは、確認できなかった。このことから、研磨処理を行った場合と比較して、本発明の金型の製造方法を実施することにより、クラックの発生を防止して鋼材の表面を改善でき、金型の長寿命化を図ることができた。
【0043】
(実施例4)
下記表4記載の条件で、SKD61熱処理材の鋼材を処理した。また、下記表4記載の条件で、処理後の鋼材に対し、上記熱疲労試験を行い、表面状態の写真を撮影した。なお、窒化処理の条件は、ガス軟窒化法で行い、窒化処理による硬化層の深さ(表面硬化層深さ)が50μmとなる窒化処理を行った。
【0044】
【表4】

【0045】
図13は、機械加工仕上げ後に、#400ペーパー仕上げを行い、窒化処理無しの試験片(試験片4-1)の試験後の表面状態の写真である。浸透探傷試験により多数のクラックが生じていることが確認できた。また、図14は、機械加工仕上げの後に、ショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理を行い、窒化処理なしの試験片(試験片4-2)の試験後の表面状態の写真である。さらに、図15は、機械加工仕上げの後に、ショットブラスト処理し、さらにショットピーニング処理を行い、窒化処理を行った試験片(試験片4-3)の試験後の表面状態の写真である。ショットブラスト後にショットピーニングを施し、更に窒化処理を施すとクラックの発生はより抑制されることが確認できた。
【0046】
(実施例5)
放電加工面をショットブラストで研掃した場合の研掃時間と表面粗さについて実験し、結果を下記表5に示す。表5中、放電加工条件は上記実施例1と同様の条件で行い、試験片は50mm×90mm×5mmtのSKD61材を使用した。ショット材が細かい場合には、表面粗さは細かいが研掃時間は長くなった。また、ショット圧が低い程表面粗さは細かくなるが時間が長くかかった。一方、ショット材が粗くなると、研掃時間は短くなるが、表面粗さは粗くなった。従って、放電加工面あるいは機械加工面の仕上がり粗さにより効率的に表面変質層を除去するためのショットブラスト条件を選定する必要がある。さらに、金型表面の要求仕上げ粗さを満足する必要がある。従来は、金型表面の粗さは平滑な方が望ましいとされていたが、近年は場合によっては金型表面に凹凸があった方が鋳物品質が良くなる例もあり、金型表面性状に対する要求は多様化している。そのため、表面を平滑に仕上げる場合には、ショット材は細かい方が望ましく、またショット圧は低い方が望ましいが、作業効率の点からはショット材がF220より低いと時間がかかり過ぎ経済的に成り立ちがたい。また、ショット圧についても同様に、0.2MPa以下であると非効率である。反対に、ショット材が粗く、ショット圧を高くすると、作業効率は上がるが下記実施例6に示すように、ショットブラスト後のショットピーニングで粗さの調整を行う事が困難な場合が生じる。通常金型全面の粗さを100μm程度以上に処理する要求はほとんどないことから、ショット材をF10より粗くする必要性はなく、またショット圧についても一般の工場で使用される空気圧である0.6MPaより大きくする必要性はない。
【0047】
【表5】

【0048】
(実施例6)
ショットブラスト面をショットピーニング処理で滑らかにした場合の実験を行い、結果を下記表6に示す。試験片は50mm×90mm×5mmtのSKD61板を使用し、その試験片にF220、F54、およびF10のアルミナを投射してショットブラスト処理を行い、さらに、その試験片に#120のジルコンビーズを60秒投射した。ピーニング圧を上げると表面粗さは小さくなるが、0.4MPa以上では、ピーニング圧を大きくしても表面粗さの低下の割合は小さくなっている。そのため、ショットピーニングの場合も、作業効率の点からはショットブラストの場合とほぼ同様のことが言え、0.2?0.6MPa、特に0.3?0.5MPaでの処理が効率的である。
【0049】
【表6】

【符号の説明】
【0050】
1 加熱ヒーター
2 加熱ブロック
2a 熱電対
3 試験片
4 シリンダー
5 水槽
6 ロッド
矢印a 加熱・加圧方向
矢印b 冷却加熱の切替方向
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試打ち前に、
(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、
を有することを特徴とする金型の製造方法。
【請求項2】
試打ち前に、
(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、
(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、
を有することを特徴とする金型の製造方法。
【請求項3】
試打ち前に、
(A)鋼材を機械加工あるいは放電加工の後に、前記鋼材の表面にショットブラスト処理を行って、加工変質層を除去する工程と、
(B)前記ショットブラスト処理の後に、ショットピーニング処理を行って、表面粗さを整えかつ圧縮残留応力を付与する工程と、を有し、
(C)前記ショットピーニング処理後に試打ちを行い、その試打ち後に、窒化処理を行う工程と、
を有し、
前記窒化処理後の前記鋼材における表面硬化層深さが、50?100μmであり、前記窒化処理の方法がガス軟窒化法であることを特徴とする金型の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-11-05 
出願番号 特願2018-155889(P2018-155889)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (B22D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 坂本 薫昭  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 青木 良憲
田々井 正吾
登録日 2019-08-02 
登録番号 特許第6563571号(P6563571)
権利者 RTM 株式会社
発明の名称 金型の製造方法  
代理人 森 俊晴  
代理人 特許業務法人小倉特許事務所  
代理人 森 俊晴  

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