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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61J 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 A61J 審判 全部申し立て 特174条1項 A61J 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61J 審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 A61J |
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管理番号 | 1371700 |
異議申立番号 | 異議2019-701005 |
総通号数 | 256 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-04-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-12-10 |
確定日 | 2021-01-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6529259号発明「薬品秤量装置、薬品秤量システム、薬品秤量プログラム、記録媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6529259号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり請求項〔1?4〕、〔5,6〕について訂正することを認める。 特許第6529259号の請求項1?6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6529259号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成25年4月15日(優先権主張 平成24年4月13日)を国際出願日とする出願であって、令和元年5月24日に特許権の設定登録がなされ、令和元年6月12日に特許掲載公報が発行されたところ、令和元年12月10日に特許異議申立人原谷理恵子(以下、「申立人」という。)により全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 そして、当審において令和2年2月6日付けで取消理由を通知したところ、その指定期間内である令和2年4月11日に特許権者より意見書が提出された。 その後、当審において令和2年7月10日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、その指定期間内である令和2年9月11日に特許権者より意見書と訂正請求書が提出され、申立人より令和2年10月28日に意見書が提出された。 以下、令和2年9月11日提出の訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、これに係る訂正を「本件訂正」という。 第2 本件訂正の可否 1.本件訂正の内容 本件訂正の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正を求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「前記制御手段は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合に、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」の記載を、「前記制御手段は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?4も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5における「前記制御工程は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合に、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」の記載を、「前記制御工程は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取工程による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取工程により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)。 2.本件訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、秤量手段による処方薬品の秤量が完了した場合の制御手段による制御について、訂正前に「次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」とされていたのを、「次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない」と訂正することにより、制御手段による制御内容を具体的に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1に係る訂正は、段落【0058】?【0079】及び図5に記載された実施例に基づき、制御手段による制御内容を限定するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、秤量手段による処方薬品の秤量が完了した場合の制御手段による制御について、訂正前に「次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」とされていたのを、「次の前記収容薬品情報読取工程による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取工程により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない」と訂正したものである。 訂正事項2に係る訂正は、請求項5の「薬品容器に記録された収容薬品を識別する収容薬品識別情報を含む収容薬品情報を前記薬品容器から読み取る収容薬品情報読取工程と、・・・前記制御工程は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取り」との記載によれば、「収容薬品情報の読み取り」は、「収容薬品情報読取工程」で行われるところ、誤って記載された「収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取り」との記載を、「収容薬品情報読取工程による前記収容薬品情報の読み取り」と正しく改めると共に、制御工程における制御内容を具体的に限定したものであるから、誤記の訂正及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2に係る訂正は、誤記を改めると共に、段落【0058】?【0079】及び図5に記載された実施例に基づき、制御内容を限定するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)独立特許要件について 本件特許異議の申立ては、訂正前の請求項1?6の全請求項について特許異議の申立てがなされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の要件(独立特許要件)については検討しない。 (4)一群の請求項に係る訂正か否かについて 訂正前の請求項2?4は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正事項1によって訂正される請求項1?4は一群の請求項である。 また、訂正前の請求項6は、請求項5を直接的に引用するものであるから、訂正事項2によって訂正される請求項5,6は一群の請求項である。 よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項ごとに請求されたものである。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?4],[5,6]について訂正を認める。 第3 本件発明 上記のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」等といい、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 薬品を秤量する秤量手段と、 処方箋に記録された複数の処方薬品を識別する処方薬品識別情報を含む処方箋情報を前記処方箋から読み取る処方箋情報読取手段と、 薬品容器に記録された収容薬品を識別する収容薬品識別情報を含む収容薬品情報を前記薬品容器から読み取る収容薬品情報読取手段と、 前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品が前記処方箋情報読取手段により読み取られた前記処方薬品識別情報が示す前記処方薬品のいずれかに該当するか否かを判断し、前記収容薬品が前記処方薬品のいずれかに該当する場合に、当該収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する制御手段と、 を備え、 前記制御手段は、 前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、 前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない、 薬品秤量装置。 【請求項2】 前記処方薬品ごとの秤量の完了を入力するための第1入力手段を備え、 前記制御手段は、前記第1入力手段による入力に応じて秤量が完了したと判断する、 請求項1に記載の薬品秤量装置。 【請求項3】 前記制御手段は、前記秤量手段による秤量値が安定した後、前記秤量手段による秤量値が0になった場合に秤量が完了したと判断する、 請求項1又は2に記載の薬品秤量装置。 【請求項4】 前記制御手段は、前記秤量手段による秤量値が安定する度に前記秤量手段による秤量結果を記録する、 請求項3に記載の薬品秤量装置。 【請求項5】 コンピュータに、 処方箋に記録された複数の処方薬品を識別する処方薬品識別情報を含む処方箋情報を前記処方箋から読み取る処方箋情報読取工程と、 薬品容器に記録された収容薬品を識別する収容薬品識別情報を含む収容薬品情報を前記薬品容器から読み取る収容薬品情報読取工程と、 前記収容薬品情報読取工程により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品が前記処方箋情報読取工程により読み取られた前記処方薬品識別情報が示す前記処方薬品のいずれかに該当するか否かを判断し、前記収容薬品が前記処方薬品のいずれかに該当する場合に、当該収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する制御工程と、 を実行させるための薬品秤量プログラムであって、 前記制御工程は、 前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取工程による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取工程により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、 前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない、 薬品秤量プログラム。 【請求項6】 請求項5に記載の薬品秤量プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」 第4 取消理由通知の概要 本件特許に対する 取消理由通知には、概ね次の取消理由が記載されている。 1.取消理由1(明確性) 請求項1(請求項5も同様)に「前記制御手段は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合に、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」と記載されているが、「読み取りを可能にする」の意味する内容が不明確であり、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである 2.取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1?6に係る発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の刊行物(甲号証)に記載された発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲号証一覧: 甲第1号証 国際公開第2006/095850号 甲第2号証 特開2005-334056号公報 甲第3号証 特開2006-92197号公報 甲第4号証 特開2010-115518号公報 以下、それぞれを「甲1」等という。 第5 取消理由通知の理由についての判断 1.取消理由1について (1)当審の判断 本件訂正により、請求項1の「前記制御手段は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合に、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」の記載は、「前記制御手段は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない、」に、また、請求項5の「前記制御工程は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合に、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」の記載は、「前記制御工程は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取工程による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取工程により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない、」にそれぞれ訂正され、取消理由で不明確であるとされた「読み取りを可能にする」の記載はなくなったので、取消理由1は理由がない。 また、訂正後の請求項1及び5の上記各記載は、図5記載のフローチャートにおけるステップS3からステップS10までの各ステップの制御内容を、明細書の段落【0058】?【0079】の記載に基いて、表現しているものと認められるから、不明確であるとはいえない。 申立人は、令和2年10月28日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)において、「訂正事項2の記載(当審注:「前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない」の記載)は、i)秤量が完了するまでの間、読み取りは実行できるが、選択処理を実行しないのか、ii)読み取りが実行できず、この結果、選択処理を実行しない(実行できない)のか、どちらを意味するのかわかりません。」(意見書2頁6?9行)と主張している。 しかし、訂正後の請求項1及び5には、「読み取りを可能にする」の記載は存在しないから、上記主張は請求項の記載に対する主張とはいえず、採用できない。 そして、図5のフローチャートの記載によれば、「処方薬品の秤量が完了した場合(ステップS7)は、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合(ステップS10)に、前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理(ステップS5)を実行可能であり、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理(ステップS5)を実行しない」ことは、当該フローチャートにおいて、ステップS7において秤量が完了するまでは、ステップS8以降に進まないように構成されていることから明らかである。 また、申立人は意見書において、「訂正事項2の「選択処理」は、訂正事項1(当審注:「前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、」)の「選択処理」の2つの条件と、時間軸的に整合していません。このため訂正事項2の「選択処理」は、物理的に成立しません」(意見書2頁下から4?2行)と主張している。 しかし、段落【0062】?【0063】及び図5のフローチャートの記載によれば、「選択処理」とはステップS5における処理であり、当該処理は前の処方薬品の秤量が完了(ステップS7)した後、収容薬品情報の読み取り(ステップS10)が行われた後に行われるものであり、訂正事項2は、ステップS7において秤量が完了するまでは、ステップS8以降に進まないように構成されていることを表現しているものと認められるから、上記申立人の主張は採用できない。 さらに、申立人は、意見書において、「本件特許明細書の段落【0068】及び本件特許図面の図5には、秤量が完了するまでの間に次の収容薬品名が読み取られる場合に、制御部11がどのように振る舞うのかについて、開示も示唆もされていません。」(意見書3頁1?3行)と主張している。 しかし、段落【0079】及び図5のフローチャートの記載によれば、秤量が完了するまでの間に次の収容薬品名が読み取りが行われたか否かはステップ10で判断するように構成されているといえるから、秤量が完了するまでの間に次の収容薬品名が読み取られる場合に、制御部11がどのように振る舞うのかについて、開示も示唆もされていないとはいえない。 (2)小括 以上のとおりであるから、訂正後の請求項1?6の記載に不明確なところはなく、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていないとはいえない。 2.取消理由2について (1)甲号証の記載について ア.甲1の記載事項及び甲1発明 甲1には次の事項が記載されている。 (ア)「図1は、本実施形態に係る薬品秤量装置を示す。この薬品秤量装置は、大略、装置本体1に、秤量部2、表示部3、記憶部4、及び、制御部5を設け、プリンタ6及びバーコードリーダー7を接続した構成である。」([0031]) (イ)「処方番号ボタンがタッチ操作されると、処理データ選択画面が表示される。ここで、「順次」ボタンがタッチ操作されると、処方データの入力があったもののうち、最も古いものが抽出される。また、「患者 ID」ボタンをタッチ操作すると、患者毎に付与された 識別番号 (ID番号)の昇順 (又は降順)で処方データを抽出することができる。「引換券番号」ボタンをタッチ操作すると、各患者に手渡された薬品引換券に付与された番号(引換券番号)に基づいて処方データを抽出することができる。「処方箋番号」ボタンをタッチ操作すると、処方箋に対して自動的に振られた番号に基づいて処方データを抽出することができる。「未処理一覧」ボタンをタッチ操作すると、監査の終了していない処方の一覧表が表示される。なお、処方番号は、処方番号ボタンを使用しなくても、直接 (画面に表示される)テンキーを操作して入力することも可能である。」([0060]) (ウ)「また、監査業務画面には、処方番号ボタンの操作により選択された処方データ(処方番.号)に基づいて、調剤すべき薬品の名称と、その用量とを一覧表示する。用量は、処方箋に記載された薬品の処方量である。例えば、1処方当たり2gのA薬品を 一週間分処方する場合、用量欄には14gが表示される。項目「目標値」をクリックすると、表示内容が「実測値」に変更され、1処方当たりの重量 (前記例では2g)が表示される。用量が表示される場合、背景色を変更する。ここでは、背景色を緑色としている。これにより、調剤者は、表示させている重量が何に関するものであるのかを一目で容易に認識することができる。したがって、限られた狭いスペースであるにも拘わらず、見やすくて、しかも見間違えることのない表示を行うことができる。」([0072]) (エ)「続いて、薬品一覧表にこれから秤量しようとする薬品名及び用量(目標値)を入力する。薬品名及び用量は、画面に疑似キーボードを表示させて入力すればよい。但し、前記処方箋番号の入力によりサーバから処方データを読み込み、自動的に薬品一覧表に表示させるようにしてもよい。)([0075]) (オ)「監査業務画面での入力が終了すれば、調剤者によって処方箋の記載内容に基づいて調剤する薬品が収容された薬瓶が選択され、バーコードリーダー7により薬瓶に貼着したバーコードが読み込まれると (ステップS4)、入力された薬品名とバーコードリーダー7によって読み取った薬品名とが合致しているか否かを判断する。合致していなければ、秤量しようとする薬品が誤っているので、図12に示すように、画面に警告メッセージを表示し、調剤者にその旨を報知する。この場合、エラー画面は赤色とすることにより強調表示すれば、調剤者は一目で薬品を取り違えたことを認識することができる。合致していれば、表示部3の表示を監査業務画面から図8に示す秤量画面に切り替える(ステップS5)。 但し、前記監査業務画面のメニューで設定を操作して 1日量設定ありを選択している場合、秤量画面に切り替える前に、一旦、図10に示す秤量確認画面を表示する。秤量確認画面には、薬品名、常用量等の薬品関連情報や、処方日数、用法、年齢、体重のほか、1日量と目標総量とを表示する。但し、設定により目標総量は表示しないようにすることができる。これにより、目標総量を調剤者に計算させて頭を働かせることによりうっかりミスの防止に役立てる。 秤量画面では、項目「薬品名(1:図面では丸付き文字))に、読み込んだバーコ一ドに基づいて、データベースを検索し、該当する薬品名を抽出して表示する。この場合、薬品の種別区分に応じて表示形態を異ならせる。例えば、普通薬であれば表示色を黒色とし、それ以外は赤色とする。また、薬品名の先頭に種別区分を表示する。さらに、毒性を有する薬品であれば、薬品名の前に(毒)の文字を表示し、表示させた薬品名の色彩を赤等で表示する。これにより、調剤者に対し、調剤する薬品の取扱いに際して注意を促すことが可能となる。」([0078]?[0080]) (カ)「項目「安定マーク(10:図面では丸付き文字)」には、秤量状態が安定することにより、「→」を表示する。このとき、音声案内やブザー音等により報知するようにしてもよい。」([0092]) (キ)「「安定」ボタンがタッチ操作されると、安定係数の設定、温度による構成の有無、トラッキングのオン/オフを設定することが可能となる。「CAL」ボタンがタッチ操作される と、天秤のキャリブレーション(校正)を行うことが可能となる。「RANGE」ボタンがタッチ操作されると、秤量可能なレンジすなわち小数点以下の表示させる桁数を変更することが可能となる。「風袋」ボタンがタッチ操作されると、天秤台2aにトレイが載置されているか否かで零点設定を変更できるようになっている。「拡張」ボタンがタッチ操作されると、秤量枠に表示した秤量値を所定時間 (ここでは、10秒間)だけさらに1桁小さい値まで表示可能となる。「中止」ボタンがタッチ操作されると、秤量が中止される。「決定」ボタンがタッチ操作されると、秤量を終了し、秤量値を最終安定値として取得する。」([0095]) (ク)「秤量画面が表示された状態で、処方箋に記載された処方量に従って、天秤台2aに(トレイに収容した)薬品を載置し、秤量を開始する。この場合、必要に応じて周囲を風防カバーで覆って空気流れの影響を排除する。天秤台2aに順次薬品を載置して行くと、秤量枠内に秤量中の重量が表示されると共に、秤量バーに秤量中の重量に応じた実測バーが異なる色で表示される。調剤者は実測バーの長さの変化に基づいて感覚的にどの程度の薬品を追加すればよいのかを認識しながら秤量を行うことができる。実測バーは、秤量値が秤量誤差範囲に入れば(秤量バーの途中に設けた目標値を示す目標値ライン近傍に到達すれば)、色が変化して調剤者に薬品の秤量が適正に行えたことを報知する。この場合、音によっても報知するのが好ましい。 そして、秤量状態が安定すれば (ステップS6)、秤量枠の左側に秤量安定マーク「→」を表示する (ステップS7)。また、秤量枠の背景の色彩を変更する。この表示は、安定して秤量されている限り維持する。秤量値が秤量誤差範囲外であるにも拘わらず、秤量状態が安定した場合(あるいは、安定して力も所定時間経過した場合、決定ボタンが操作された場合、あるいは、秤量天秤台2aから薬品を収容したトレイが取り除かれて所定時間が経過した場合)、次のような警告メッセージを表示する。すなわち、秤量誤差範囲以下であれば、図13に示す警告メッセージを表示し、秤量誤差範囲以上であれば、図14に示す警告メッセージを表示する。前者の警告メッセージが表示された場合、「はい」ボタンを操作して薬品の追加処理を行うか、「いいえ」ボタンを操作して秤量を中止する力、「キャンセル」ボタンを操作して秤量画面に戻って表示内容を確認する。後者の警告メッセージが表示された場合、「はい」ボタンを操作して秤量を中止するか、「いいえ」ボタンを操作して秤量を続行する。これは、前記薬品秤量装置によって秤量可能な重量の最大値を超えて薬品を秤量しなければならない場合に使用する。例えば、秤量可能な最大値が15gである場合、薬品を17g秤量する必要があれば、まず、最大量である15gを秤量して前記図14の警告メッセージを表示させ、「いいえ」ボタンを操作することにより残る2gを秤量すればよい。 その後、決定ボタンが操作されるか、あるいは、天秤台2aから薬品を収容したトレイが取り除かれて所定時間が経過すれば(ステップS8)、秤量枠に表示した値を最終安定値すなわち秤量値として取り込み(ステップS9)、次に説明する常用量チェック処理を実行する(ステップS10)。」([0097]?[0099]) (ケ)「以上のようにして一連の秤量が終了すれば、同じ患者について次に秤量する薬品がある場合、前記調剤設定画面で、属性クリアが「なし」に設定されていれば、秤量値が確定されると秤量値等はクリアされるが、秤量画面に患者データが表示されたままとなる。したがって、調剤者は患者データの入力を必要とすることなく続けて秤量を行うことができる。」([0108)) (コ)「 ![]() 」 (サ)「 ![]() 」 (シ)「 ![]() 」 上記(ア)?(オ)、(ク)、(ケ)の、特に下線部の記載及び(コ)?(シ)の図面の記載からすれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「薬品を秤量する秤量部と、 処方箋番号の入力によりサーバから処方データを読み込み、自動的に薬品一覧表に表示させる手段と、 バーコードリーダーにより薬瓶に貼着したバーコードが読み込む手段と、 入力された薬品名とバーコードリーダーによって読み取った薬品名とが合致しているか否かを判断し、合致していれば、表示部の表示を監査業務画面から秤量画面に切り替え、秤量画面が表示された状態で、処方箋に記載された処方量に従って、天秤台に薬品を載置し、秤量を開始する手段とを備え、 秤量が終了すれば、患者データの入力を必要とすることなく続けて秤量を行うことができる薬品秤量装置。」 イ.甲2?4の記載事項 (ア)甲2には次の事項が記載されている。 あ.「この処理は、携帯端末機3の電源が投入され、例えば、薬品チェックモードに切換えられると開始され、初期設定の後、各患者用の帳票;2次元バーコード付き注射処方箋30又は2次元バーコード付き輸液ラベル35の2次元バーコード31又は36が2次元バーコードリーダ10で読取られると(S1;Yes )、その2次元バーコード31又は36が示す処方関連情報(複数の処方薬の情報、患者基本情報、その付随情報を含む)がデータ記憶部13に記憶される(S2)。次に、前記複数の処方薬に該当する薬品のマスターデータが薬品マスターファイル6Aから読出され、処方関連情報が表示部14に表示され、このとき、前記薬品のマスターデータの中の薬品区分データと優先混合データとpHデータに基づいて、複数の処方薬が調製順に並べて表示部14に表示される(S4)。 次に、この処方用に取揃えた薬品の2次元バーコード8が2次元バーコードリーダ10で読取られると(S5;Yes )、この2次元バーコード8が示す薬品情報と処方関連情報とに基づいて、この取揃えた薬品が処方薬であるか否か自動的にチェックされる(S6)。また、2次元バーコード8が2次元バーコードリーダ10で読取られない場合、次にチェック予定の薬品が2次元バーコード8がない薬品である場合には(S7;Yes )、その薬品の画像データが画像データファイル7Aから読出されて、薬品の画像が表示部14に表示され(S8)、この取揃えた薬品が処方薬であるか否か手動によりチェックすることができる(S9)。前記薬品が処方薬でない場合には、薬品不一致の旨が表示、音声、ランプ等で報知され(S10)、エラー処理(S11)の後、S5へリターンする。」(【0065】?【0066】) い.「そして、携帯端末機3では、先ず、2次元バーコードリーダ10により2次元バーコード付き帳票30,35から読取った2次元バーコード31,36が示す複数の処方薬とその数量をデータ記憶部13に記憶して表示部14に表示させ、その表示を見て処方薬とその数量を容易に確認することができ、次に、患者別の各回の処方用に取揃えた複数の薬品の容器に表示された2次元バーコード8を2次元バーコードリーダ10で読取る毎に、その2次元バーコード8が示す薬品情報と、データ記憶部13に記憶している複数の処方薬の情報に基づいて、その薬品が処方薬であるか否か簡単に且つ確実にチェックすることができる。」(【0070】) (イ)甲3には次の事項が記載されている。 「まず、薬剤士は、薬品照合処理で得られた薬品を調合(計量)する作業を行う。 薬剤士は、タグリーダ20で処方箋のICタグから処方情報を読み取る(図7)。既に前の処理でタグリーダ20に処方情報が読み取られている場合には省略してもよい。そして、薬剤士は、計量器60とタグリーダ20とを無線で接続させ、計量器60による計量を始める。薬品が用量の誤差範囲になった場合には、表示部23に「OK」が表示される。何種類かの薬品を調合する場合も、上述と同様に行えばよい。 以上の処理により、薬品の計量間違いを無くすことができる。」(【0039】) (ウ)甲4には次の事項が記載されている。 「まず、バーコードを取得する(S401)。この例では、バーコードとして薬品コードを用いているが、バーコードから薬品コードを特定するようにしてもよい。次に、薬品コードをキーとして処方箋情報記憶部内を検索する(S402)。適合するレコードが存在しなかった場合には、処方外警告処理(S403)を行う。適合するレコードが存在する場合には、当該レコードの処理フラグを取得し、判定する(S404)。「処理済」の場合には、二重調剤警告処理(S405)を行う。「未処理」の場合には、適合処理(S406)を行う。」(【0035】) 上記(ア)あ.及び(イ)の特に下線部の記載からすれば、下記事項は本件特許の優先日前の周知技術(以下、「周知技術1」という。)であったといえる。 「読み取り手段を用いて、処方箋情報を処方箋から読み取ること。」 上記(ア)あ.及びい.並びに(ウ)の特に下線部の記載からすれば、下記事項は本件特許の優先日前の周知技術(以下、「周知技術2」という。)であったといえる。 「調剤過誤防止のため、読み取り手段により読み取られた薬品容器の薬品が、読み取り手段により読み取られた処方薬品のいずれかに該当するか否か判断すること。」 (2)当審の判断 ア.本件特許発明1について (ア)対比 以下、本件特許発明1と甲1発明を対比する。 あ.甲1発明の「秤量部」は、機能及び構成上、本件特許発明1の「秤量手段」に相当する。 い.甲1発明の「処方データ」には、薬品名及び用量(すなわち、 処方薬品を識別する処方薬品識別情報を含む処方箋情報)が含まれており、「薬品一覧表」には複数の処方薬品が表示されるようになっているから、甲1発明の「処方箋番号の入力によりサーバから処方データを読み込み、自動的に薬品一覧表に表示させる手段」と、本件特許発明1の「処方箋に記録された複数の処方薬品を識別する処方薬品識別情報を含む処方箋情報を前記処方箋から読み取る処方箋情報読取手段」とは、「処方箋に記録された複数の処方薬品を識別する処方薬品識別情報を含む処方箋情報を読み取る処方箋情報読取手段」である点で一致する。 う.甲1発明の「バーコード」には薬品名の情報(すなわち、収容薬品を識別する収容薬品識別情報を含む収容薬品情報)が記載されており、当該バーコードは、薬瓶(薬品容器)に貼着されるものであり、当該薬瓶に記録されているといえるから、甲1発明の「バーコードリーダーにより薬瓶に貼着したバーコードが読み込む手段」は、本件特許発明1の「薬品容器に記録された収容薬品を識別する収容薬品識別情報を含む収容薬品情報を前記薬品容器から読み取る収容薬品情報読取手段」に相当する。 え.甲1発明の「入力された薬品名」及び「バーコードリーダーによって読み取った薬品名」は、機能及び構成上、本件特許発明1の「処方薬品識別情報」及び「収容薬品識別情報」に相当する。また、秤量対象を選択しなければ秤量を開始することはできないから、甲1発明の「秤量を開始する」ことは、「秤量対象として選択する」ことを含み、甲1発明の「手段」は、実行するにあたり何らかの制御を必要とするから、明記はなくとも「制御手段」であるといえる。 してみれば、甲1発明の「入力された薬品名とバーコードリーダーによって読み取った薬品名とが合致しているか否かを判断し、合致していれば、表示部の表示を監査業務画面から秤量画面に切り替え、秤量画面が表示された状態で、処方箋に記載された処方量に従って、天秤台に薬品を載置し、秤量を開始する手段」と、本件特許発明1の「前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品が前記処方箋情報読取手段により読み取られた前記処方薬品識別情報が示す前記処方薬品のいずれかに該当するか否かを判断し、前記収容薬品が前記処方薬品のいずれかに該当する場合に、当該収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する制御手段」とは、「収容薬品情報読取手段により読み取られた収容薬品識別情報が示す収容薬品が処方箋情報読取手段により読み取られた処方薬品識別情報が示す処方薬品に該当するか否かを判断し、収容薬品が処方薬品に該当する場合に、収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する制御手段」である点で一致する。 してみれば、本件特許発明1と甲1発明は、次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】 「薬品を秤量する秤量手段と、 処方箋に記録された複数の処方薬品を識別する処方薬品識別情報を含む処方箋情報を読み取る処方箋情報読取手段と、 薬品容器に記録された収容薬品を識別する収容薬品識別情報を含む収容薬品情報を前記薬品容器から読み取る収容薬品情報読取手段と、 前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品が前記処方箋情報読取手段により読み取られた前記処方薬品識別情報が示す前記処方薬品に該当するか否かを判断し、前記収容薬品が前記処方薬品に該当する場合に、当該収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する制御手段と、 を備える、 薬品秤量装置。」 【相違点1】 処方箋情報読取手段に関し、本件発明は、処方箋情報を処方箋から読み取るのに対して、甲1発明は、処方箋番号の入力によりサーバーから読み取る点。 【相違点2】 収容薬品が処方薬品に該当するか否かの判断に関し、本件発明は、収容薬品が処方箋情報読取手段から読み取られた処方薬品のいずれかに該当するか否かを判断しているのに対して、甲1発明は、収容薬品が処方箋情報読取手段から読み取られた処方薬品のうち入力された処方薬品に該当するか否かを判断している点。 【相違点3】 制御手段に関し、本件発明は、秤量手段による処方薬品の秤量が完了した場合は、次の収容薬品情報読取手段による収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取手段により読み取られた収容薬品識別情報が示す収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しないのに対し、甲1発明は、処方箋に記載された処方量に従って、天秤台に薬品を載置し、秤量する点。 (イ)判断 事案に鑑み、まず【相違点3】について検討する。 甲1の上記(1)ア.(ウ)?(オ),(ケ)及び図3の記載を参照すれば、甲1発明は、監査業務画面において、調剤者が、一覧表示された処方箋の記載内容に基いて、調剤する薬品が収容された薬瓶を選択し、秤量を行うようになっている。 よって、処方薬品を秤量する順序は、薬品一欄表の順序に従ったものとなる。 一方、本件特許発明1は、秤量手段による処方薬品の秤量が完了した場合は、次の収容薬品情報読取手段による収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取手段により読み取られた収容薬品識別情報が示す収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であるから、前の処方薬品の秤量が終了した後、次の収容薬品の読み取りが可能であり、当該次の収容薬品の読み取りが行われた場合には、当該収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択処理するようになっている。 また、秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、(次の)選択処理を実行しないようになっている。 よって、本件特許発明1は、秤量対象となる処方薬品の順番が定められることなく任意に調剤者が選択した処方薬品の秤量を行えば、調剤者が選択した順序で調剤を行うことが可能であり、また、1つの処方薬品の秤量が完了するまでは次の処方薬品の秤量が行われない。 そして、上記のような構成の相違に基づき、本件特許発明1は引用発明と比較して、収容薬品を任意の順番で行うことができ、かつ選択した収容薬品の秤量が終わるまでは次の収容薬品の秤量を行わないので、誤った薬品を秤量手段に乗せてしまうという人為的ミスの発生を抑止できるという、特有の作用効果を奏するものと認められる。 したがって、上記【相違点3】に係る本件特許発明1の構成を引用発明から容易に発明をすることができたと言うことはできない。 また、上記相違点3に係る本件特許発明1の構成は、甲2ないし4から導き出せる周知技術1及び2から容易に発明できるものではない。 申立人は、意見書において、今回の訂正による本件発明は、「処方箋に記録された複数の処方薬品」を処理していく上で、「読み取り」、「選択」、「秤量」の各処理を処方薬品ごとに繰り返す(ループ)という状態の変化(制御手段の状態の変化)を表した発明にすぎず、今回の訂正によるものと、今回の訂正前のものとで、実質的相違はない旨主張している(上記意見書の3頁11?4頁1行参照。)。 しかし、本件訂正により訂正された上記相違点3に係る構成を備えることにより、本件特許発明1は、引用発明との比較において、上記したような特有の作用効果を奏することが明らかとなったのであるから、本件特許発明1は、申立人が主張するように単に制御手段の状態の変化を表した発明にすぎないと言うことはできず、当該特有の作用効果を奏する構成が明らかとなった以上、訂正前のものと実質的相違はないとはいえない。 以上のとおりであるから、上記【相違点1】及び【相違点2】について検討するまでもなく、本件特許発明1は引用発明及び周知技術から容易に発明をすることができたとはいえないし、他に容易性を根拠づける証拠も見当たらない。 イ.本件特許発明2?4について 本件特許発明2?4は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明2?4は本件特許発明1に対する理由と同様の理由により、引用発明及び周知技術1,2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 ウ.請求項5,6について 請求項5,6は、請求項1と発明の対象が、「装置」であるか、「プログラム」又は「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」であるかの点で相違するにすぎず、内容は実質的に同一である。 よって、本件特許発明5,6は、上記本件特許発明1に対する理由と同様の理由により、引用発明及び周知技術1,2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (3)小活 以上のとおり、本件請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるとはいえない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断 1.サポート要件について 申立人は、訂正前の請求項1の「前記制御手段は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合に、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」及び請求項5の「前記制御工程は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合に、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」の記載は、「前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した」ときに、「前記収容薬品情報の読み取りを可能に」し、「前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了」するまでは、「前記収容薬品情報の読み取りを」不可にする(以下、「本件構成2」という。)と解釈した上で、本件構成2は、本件特許明細書のどこにも記載されていないから特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張している(特許異議申立書10頁15行?11頁24行参照。)。 しかし、本件訂正により上記本件構成2は削除されたので、上記主張は理由がないものとなった。 2.新規事項の追加について 申立人は、上記本件構成2は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されたものではないから、本件構成2を付加した平成30年10月19日付け手続補正書による補正は新たな技術的事項を導入するものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない旨主張している(特許異議申立書11頁最終行?12頁16行参照。)。 しかし、本件訂正により上記本件構成2は削除されたので、上記主張は理由がないものとなった。 3.進歩性について (1)取消理由通知で採用しなかった甲号証の記載 ア.甲5号証の記載事項 (ア)「先ず、調剤作業の前に医者から出た処方箋の記憶内容を入力器4により制御装置1に記憶させる。この状態で、次に、調剤装置2の操作ボードにおいて、調剤する対象の処方箋の呼び出し番号を呼び出すと、制御装置1から調剤装置2の制御器14に調剤に必要な条件が出力され、その内容が表示器17に表示される。調剤作業は、この表示器17に表示された処方箋の記載内容に基づいて指定薬品の薬瓶を薬品棚から取り出して行なうが、その際薬瓶16の発信器15からの信号を受信器13が受信すると、制御器14がその受信信号と登録薬品とを比較して、両者が異なる場合表示器17にエラー信号を出力する。このため、作業者は取出した薬瓶16が正しいかどうかを確実に知ることができる。」(3頁左下欄1?15行) イ.甲6号証の記載事項 (ア)「調剤記録装置は、図1に示すように、識別情報読み取り手段1、計量手段2、表示手段3、入力手段4、プリンタ5、記憶手段6と処理手段7で構成されており、通常は調剤台8に組み込んで使用する。」(【0022】) (イ)「識別情報読み取り手段1は、薬剤容器Aに付けられた識別情報を読み取るためのもので、例えば、図2に示すような、薬剤容器Aに付けられたバーコードを読み取るためのバーコードリーダー1a、また、薬剤容器Aに付けられた無線式IDタグの信号を受信するためのIDタグリーダー1b、薬剤容器に付けた磁石片の配置位置で形成した2進コードを読み取るための磁気センサなどどのようなものでもよい。」(【0023】) (ウ)「そのため、調剤者は、調剤記録装置の調剤処理を起動して処方箋を見ながら調剤を進める。」(【0038】) (エ)「まず、調剤処理を起動すると(「処理」100以下「処理」省略)、表示手段3には図5の調剤画面が表示される。このときの画面は、「薬剤名」、「計量値」欄10,11を空にした状態の初期画面が表示され、この初期画面が表示されると(110)、調剤者は薬剤容器Aをバーコードリーダー1aなどの読取手段1aに近づけ識別情報を読み取らせることができる(120)。このとき、処理手段7は識別情報を読み取ると、読み取った識別情報で薬剤マスタデータベース6bを検索して薬剤名を取得し、取得した薬剤名を調剤画面の「薬剤名」欄10に表示する(130)。薬剤名が表示されると、調剤者は、例えば図6の処方箋に書かれた薬剤の用量を電子天秤2aやメスシリンダー液量読み取り装置2b等の計量手段2を使って計量する(140)。このときの計量値は、調剤画面の「計量値」欄11に表示されるようになっており(150)、図5の調剤画面の「中止」ボタン12か「決定」ボタン13を押すまで(160,180)、計量を繰り返すことができるようになっている。そのため、計量を繰り返し行って正確な計量ができるようになっている。このとき、「中止」ボタン12を押すと(160)、薬剤名を消去し(170)、処理120へ戻ってそれ以後の処理を繰り返す。 一方、「決定」ボタン13を押すと、図5の調剤画面の「計量値」の欄11に決定した計量値を表示する(190)。例えば、図5のように、「薬剤名」欄10に「サンザイB」、「計量値」欄11に「1.80g」のように表示する。このように薬剤名と計量値が入力されると、処理手段7は用量マスタデータベース6aを検索し、入力された薬剤の用量上限の有無を検索する(200)。このとき、用量上限が登録されていると日数算出処理に進み(210)、登録されていないなら処理120へ戻り、次の薬剤のために処理を繰り返す。なお、図5の例では、サンザイBは用量上限の登録があることを示している。」(【0040】?【0041】) (オ)「 ![]() 」 ウ.甲7号証の記載事項 (ア)「また、その補充モード下の携帯情報端末40では、作業ミス防止のため、薬剤コード62の読取と容器識別コード63の読取と薬剤補充数量値の取得とが一通り行われる前に装着位置識別コード64の読取が行われたときには、注意を促すアラーム出力や遣り直しを促す案内表示などが行われるようになっている。さらに、補充モード下では、薬剤補充数量値取得のための数値入力サブプログラム実行が、薬剤コード62の読取および容器識別コード63の読取の何れかが行われたときから装着位置識別コード64の読取が行われるまでの間に限定されるとともに、その間であれば読取操作部材44の特定操作等に応じて随時行われるようになっている。」(【0024】) エ.甲8号証の記載事項 (ア)「スキャナ装置がバーコードを正常に読み取ると、スキャナ装置は読み取ったバーコードデータをPOSシステムに送信する。POSシステムは読み取りデータが送信されて受信可能であることを確認すると(ステップS22)、そのバーコードデータを受信する(ステップS24)。バーコード読み取りデータがない場合には、待ち時間をおいて(ステップS13)、バーコード読み取りデータがあるかどうかの確認を繰り返す。 受信を終えると、POSシステムはスキャナ装置に対して、制御命令コードの一つであるスキャナ読み取り禁止状態にセットする命令“a”を送信し、再び次のスキャナ読み取りデータ受信の用意ができるまで、スキャナ装置を読み取り禁止状態にする(ステップS25)。」(【0036】?【0037】) オ.甲9号証の記載事項 (ア)「タイマの32の設定時間T2はバーコード読み取り禁止時間となり、この時間によって、媒体の二重読み取りを防止している。」(3頁右下欄10?12行) (2)当審の判断 ア.甲第5号証を用いた主張について 申立人は特許異議申立書において、甲第5号証を上記周知技術2の例として甲第2号証及び甲第4号証と共に提示しているが、周知技術2の認定にあたっては、甲第2号証及び甲第4号証の採用のみで十分であることから、取消理由において、甲第5号証の例示は行わなかった。 また、上記周知技術2は、相違点2に係る構成を当業者が容易に想到できることを証明するために用いられたものであるが、上記第5の2.(2)で検討したように、相違点2については、検討するまでもなく、引用発明及び周知技術から容易に発明をすることができたのであるから、甲第5号証は例示するまでもない。 イ.甲第6号証を用いた主張について 申立人は特許異議申立書において、甲第6号証には、請求項1及び5の「前記制御手段(請求項5においては「制御工程」)は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合に、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」が記載されている旨主張している。 しかし、請求項1及び5の上記記載は本件訂正により訂正されたので、上記主張は理由がないものとなった。 また、申立人は令和2年10月28日提出の意見書において、甲第6号証の記載を指摘して、訂正後の本件特許発明についても進歩性がない旨主張している(上記意見書の4頁11?14行参照。)。 しかし、甲第6号証記載の発明も上記(1)イ.(エ),(オ)の記載からすれば、調剤画面に表示した薬剤名に対応する薬剤を調剤者が秤量するようになっており、前の処方薬品の秤量が終了した後、任意に次の収容薬品の読み取りが可能であり、当該次の収容薬品の読み取りが行われた場合には、当該収容薬品と一致する処方薬品を選択処理するようになっていない。 よって、甲第6号証から相違点3に係る本件特許発明の構成を当業者が容易に発明できたとはいえない。 ウ.甲第7?9号証を用いた主張について 申立人は特許異議申立書において、請求項1及び5の「前記制御手段(請求項5においては「制御工程」)は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合に、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りを可能にする」の構成に係り、作業ミス防止のために情報の読み取りを始めとする一連の処理が行われる間、次の読み取りを不可とすることは、本件特許発明に係る出願時における周知技術である旨主張し、その例示として甲第7?9号証を例示している。 しかし、本件訂正により上記請求項1及び5の上記構成は、それぞれ「 前記制御手段は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない、」及び「前記制御工程は、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取工程による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取工程により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない、」と具体化されており、上記具体化された構成についてまで、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたと言うことはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 薬品を秤量する秤量手段と、 処方箋に記録された複数の処方薬品を識別する処方薬品識別情報を含む処方箋情報を前記処方箋から読み取る処方箋情報読取手段と、 薬品容器に記録された収容薬品を識別する収容薬品識別情報を含む収容薬品情報を前記薬品容器から読み取る収容薬品情報読取手段と、 前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品が前記処方箋情報読取手段により読み取られた前記処方薬品識別情報が示す前記処方薬品のいずれかに該当するか否かを判断し、前記収容薬品が前記処方薬品のいずれかに該当する場合に、当該収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する制御手段と、 を備え、 前記制御手段は、 前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取手段による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取手段により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、 前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない、 薬品秤量装置。 【請求項2】 前記処方薬品ごとの秤量の完了を入力するための第1入力手段を備え、 前記制御手段は、前記第1入力手段による入力に応じて秤量が完了したと判断する、 請求項1に記載の薬品秤量装置。 【請求項3】 前記制御手段は、前記秤量手段による秤量値が安定した後、前記秤量手段による秤量値が0になった場合に秤量が完了したと判断する、 請求項1又は2に記載の薬品秤量装置。 【請求項4】 前記制御手段は、前記秤量手段による秤量値が安定する度に前記秤量手段による秤量結果を記録する、 請求項3に記載の薬品秤量装置。 【請求項5】 コンピュータに、 処方箋に記録された複数の処方薬品を識別する処方薬品識別情報を含む処方箋情報を前記処方箋から読み取る処方箋情報読取工程と、 薬品容器に記録された収容薬品を識別する収容薬品識別情報を含む収容薬品情報を前記薬品容器から読み取る収容薬品情報読取工程と、 前記収容薬品情報読取工程により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品が前記処方箋情報読取工程により読み取られた前記処方薬品識別情報が示す前記処方薬品のいずれかに該当するか否かを判断し、前記収容薬品が前記処方薬品のいずれかに該当する場合に、当該収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する制御工程と、 を実行させるための薬品秤量プログラムであって、 前記制御工程は、 前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了した場合は、次の前記収容薬品情報読取工程による前記収容薬品情報の読み取りが行われた場合に、前記収容薬品情報読取工程により読み取られた前記収容薬品識別情報が示す前記収容薬品と一致する処方薬品を秤量対象として選択する選択処理を実行可能であり、 前記秤量手段による当該処方薬品の秤量が完了するまでの間は、前記選択処理を実行しない、 薬品秤量プログラム。 【請求項6】 請求項5に記載の薬品秤量プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-12-25 |
出願番号 | 特願2014-510222(P2014-510222) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(A61J)
P 1 651・ 121- YAA (A61J) P 1 651・ 55- YAA (A61J) P 1 651・ 852- YAA (A61J) P 1 651・ 851- YAA (A61J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 武内 大志、村上 勝見 |
特許庁審判長 |
内藤 真徳 |
特許庁審判官 |
井上 哲男 宮崎 基樹 |
登録日 | 2019-05-24 |
登録番号 | 特許第6529259号(P6529259) |
権利者 | 株式会社湯山製作所 |
発明の名称 | 薬品秤量装置、薬品秤量システム、薬品秤量プログラム、記録媒体 |
代理人 | 種村 一幸 |
代理人 | 種村 一幸 |