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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E02B |
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管理番号 | 1371744 |
異議申立番号 | 異議2020-700921 |
総通号数 | 256 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-04-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-11-27 |
確定日 | 2021-03-17 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6713342号発明「ジャケット構造体の据え付け方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6713342号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6713342号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成28年5月6日に出願され、令和2年6月5日にその特許権の設定登録がされ、令和2年6月24日に特許掲載公報が発行された。その後、令和2年11月27日に特許異議申立人 中川 賢治(以下「申立人」という。)より、請求項1ないし5に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第6713342号の請求項1ないし5の特許に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、本件発明1ないし5をまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 1 本件発明1 「【請求項1】 複数の接続部を有するジャケット構造体を、前記接続部のそれぞれと、地盤に打設された複数本の杭の対応するそれぞれの杭の上端部とを固定して据え付けるジャケット構造体の据え付け方法において、 クレーンを用いて前記ジャケット構造体を下方移動させて、1つの前記接続部と既に地盤に打設されている1本の杭の気中にある上端部とを最初に嵌合状態にすることにより、前記ジャケット構造体を、最初に嵌合状態にした1本の前記杭を利用して所定の平面位置に位置決めした後、前記杭が嵌合されていない前記接続部に、対応する残りの前記杭を挿通させて前記地盤に後打ちして、すべての前記接続部と対応する前記杭の上端部とを位置決めし、それぞれの前記接続部と対応するそれぞれの前記杭の上端部とを固定することを特徴とするジャケット構造体の据え付け方法。」 2 本件発明2 「【請求項2】 最初に嵌合状態にした前記接続部とは別の1つの接続部と、最初に嵌合状態にした前記杭とは別の既に地盤に打設されている1本の杭の気中にある上端部とを2番目に嵌合状態にすることにより、前記ジャケット構造体を、最初および2番目に嵌合状態にした2本の前記杭で前記所定の平面位置に位置決めする請求項1に記載のジャケット構造体の据え付け方法。」 3 本件発明3 「【請求項3】 前記ジャケット構造体の前記所定の平面位置への位置決めに使用した前記杭を仮杭とし、その後の工程で前記仮杭を除去して前記ジャケット構造体を支持する本杭に入れ替える請求項1または2に記載のジャケット構造体の据え付け方法。」 4 本件発明4 「【請求項4】 複数の接続部を有するジャケット構造体を、前記接続部のそれぞれと、地盤に打設された複数本の杭の対応するそれぞれの杭の上端部とを固定して据え付けるジャケット構造体の据え付け方法において、 前記複数本の杭を地盤に打設しておき、これら打設してある複数本の杭の気中にある上端部とそれぞれの前記接続部の少なくとも一方に、ガイド部材を設けておき、クレーンを用いて前記ジャケット構造体を下方移動させて、1つの前記接続部と1本の前記杭の気中にある上端部とを対応する前記ガイド部材によって誘導して最初に嵌合状態にして、次いで、最初に嵌合状態にした前記接続部とは別の1つの前記接続部と、最初に嵌合状態にした前記杭とは別の1本の前記杭の気中にある上端部とを対応する前記ガイド部材によって誘導して2番目に嵌合状態にすることにより、前記ジャケット構造体を、最初および2番目に嵌合状態にした2本の前記杭で所定の平面位置に位置決めした後、残りの前記接続部と残りの前記杭の上端部とを対応する前記ガイド部材によって誘導して嵌合させた状態にしてすべての前記杭の上端部と対応する前記接続部とを位置決めした後、それぞれの前記接続部と対応するそれぞれの前記杭の上端部とを固定することを特徴とするジャケット構造体の据え付け方法。」 5 本件発明5 「【請求項5】 それぞれの前記杭の上端が同じ高さ位置にあり、前記ジャケット構造体を前記クレーンによって吊り下げる前に予めそれぞれの前記接続部に前記ガイド部材を設けて、それぞれの前記ガイド部材の下端の高さ位置を異ならせておく請求項4に記載のジャケット構造体の据え付け方法。」 第3 申立理由の概要 申立人が申立書において主張する申立理由の要旨は、次のとおりである。 (進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 第4 証拠について 1 証拠一覧 申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。 甲第1号証: 特開2004-183324号公報 (平成16年7月2日公開、申立書に添えて提出) 甲第2号証: 特開2004-44199号公報 (平成16年2月12日公開、申立書に添えて提出) 甲第3号証: SCOPE NEWS Vol.30、 一般財団法人 港湾空港総合技術センター (2013年8月発行、申立書に添えて提出) 甲第4号証: 特開2015-151848号公報 (平成27年8月24日公開、申立書に添えて提出) 2 各証拠の記載 (1)甲第1号証 ア 記載事項 甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。 (ア)発明の属する技術分野 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は多数の鉛直杭で上部工を支持した岸壁等の既設杭桟橋の上部工を解体撤去し、新規な上部工に置替えた桟橋の改修構造とその改修工法に関する。」 (イ)従来技術、及び発明が解決しようとする課題 「【0002】 【従来技術】 高度経済成長期に数多く構築された既設杭桟橋は、永年に渡って厳しい海気象に曝されてきたため、老朽化しているものがあり更新の時期にきているものが多い。 ・・・・(中略)・・・・ 【0006】 一方、桟橋を構成する杭は電気防食や塗装によって維持管理が適切になされていると比較的健全性を保っている場合がある。特に没水部分や土中部分についてはあまり劣化していない場合が多い。 【0007】 このようなケースでは既設杭桟橋の更新において、既設杭を有効活用して上部工のみ改修する方が改修コスト、工期短縮の面で有利となる。 【0008】 従来技術において、直立杭と斜杭により支持された海洋構造物において、上部工のみを取替える補修方法が特開平9-170219号公報に開示されている。この補修方法は杭の干満帯若しくは飛沫帯に相当する部位を切断して老朽化した上部工(構造物)を撤去するとともに、実質的に同一構造の上部工を予めプレキャスト部材として製作しておき、切断された杭の上部に固設するものである。直立杭と上部工は上部工の下部に設けた鞘管を杭に嵌合してグラウト結合し、斜杭と上部工は斜杭上端に継ぎ足し管を固着し上部工にコンクリート結合する手段とされている。 【0009】 【特許文献1】 特開平9-170219号公報 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 本発明が対象とする鉛直杭で支持された既設杭桟橋の改修工法において、前記特開平9-170219号公報に開示されている従来技術を適用することが考えられる。 【0011】 しかし、前記従来技術は比較的少ない本数の杭で支持された上部工で構成されるドルフィン等には実現可能と思われるが、数十本におよぶ多数の杭で支持された既設杭桟橋に適用する場合、切断された既設杭は平面ずれや傾きがあるため、数十本におよぶ全ての杭に上部工の鞘管を嵌合することが困難である課題がある。 【0012】 本発明は、上記課題を解消し多数の鉛直杭で支持された既設杭桟橋に適用でき、改修コストを低減し、短工期で施工可能とし、且つ桟橋の性能を向上した既設杭桟橋の改修構造および改修工法を提供することを目的とするものである。」 (ウ)課題を解決するための手段、及び作用 「【0014】 本発明は、多数の鉛直杭で上部工を支持した既設杭桟橋の上部工直下にて杭を切断して上部工を撤去した後、残された杭上に既設の上部工に替わるジャケットを設置した桟橋改修構造であって、陸上製作された前記ジャケットは鋼製の縦梁と横梁からなる格子状のデッキの格点下方に所定長さの鋼管製のレグが突出し、このレグ内周と杭外周の隙間にグラウト材が注入されていることを特徴とする。 ・・・・(中略)・・・・ 【0016】 また、デッキの格点下方に設けたレグの長さをLWL(Low Water Level)以下まで延在させ、且つ残された杭内にコンクリートを充填して杭を補強することが出来る。 ・・・・(中略)・・・ 【0018】 また、本発明は、既設杭桟橋の改修工法において、 ▲1▼既設杭桟橋の上部工直下にて杭を切断して上部工を撤去し、 ▲2▼残された杭の配置を測量し、 ▲3▼縦梁と横梁の格点を前記杭の配置と合致するようにした格子状のデッキの格点下方に前記杭に嵌挿可能なレグを設けたジャケットを陸上にて製作しておき、 ▲4▼前記ジャケットを現地に輸送し、 ▲5▼前記杭の少なくとも3箇所の杭上端に着脱可能なガイド部材を仮装着し、 ▲6▼前記ジャケットを吊り上げ、ガイド部材を装着した杭に対応するジャケットのレグを嵌挿して位置決めしながら他のレグを全ての杭に嵌挿し、 ▲7▼前記ガイド部材を取外した後、レグ内周と杭外周の隙間にグラウト材を注入し、既設杭桟橋の杭を切断して残された杭上に既設の上部工に替わるジャケットを設置することを特徴とする既設杭桟橋の改修工法である。 ・・・・(中略)・・・・ 【0020】 【作用】 前記の構成において、撤去した上部工に替えて鋼製の縦梁と横梁からなる格子状のデッキの格点下方に所定長さの鋼管レグが突出したジャケットを使用したのは、鉄筋コンクリート製上部工に較べて鋼製ジャケットの方が軽量で施工性、経済性および桟橋の強度設計面で有利なためである。 ・・・・(中略)・・・・ 【0027】 また、本発明の既設杭桟橋の改修工法においては、杭を切断して上部工を撤去した後、陸上製作した前記の如く構成したジャケットを現地輸送して、残された杭の少なくとも3箇所の杭に仮装着した着脱可能なガイド部材を利用してジャケットを位置決めして全てのレグを杭に嵌挿可能としている。前記ガイド部材はジャケットの設置後、回収して次のジャケット設置に再利用される。」 (エ)発明の実施の形態 「【0042】 以下、本発明に係る既設杭桟橋の改修工法について説明する。図5(a)、(b)、図6(a)、(b)、は本工法の工程を示したものである。 【0043】 ▲1▼先ず、既設杭桟橋の上部工直下にて杭1をガス切断機等によって切断する。この作業において杭1の切断が進行したら既設の上部工19をクレーン20で吊り保持しておく。改修しようとする範囲の全ての杭1と上部工19の切断が完了したら、上部工19をクレーン20で吊り上げ撤去する。(図5a) 【0044】 ▲2▼上部工19を撤去した後、または撤去前に各杭1の配置(上端の法線方向と直角方向間隔および傾斜)を測量する。 【0045】 ▲3▼前記測量の結果得られた杭1の配置に基づいてジャケット2を設計し、陸上にて製作する。ジャケット2の設計にあたっては、縦梁3と横梁4の格点6を前記測量結果の各杭配置と合致するようにし、該格子状のデッキ5の格点6下方に前記杭1に余裕を持って嵌挿可能なサイズの鋼管等のレグ7を突設したものとする。ジャケット2は斜めブレース21や水平ブレース22等でトラス構造にした方が望ましく、レグ7を含めた細部は前記のように構成する。 【0046】 ▲4▼陸上にて製作した前記ジャケット2を台船等に搭載して現地に海上輸送する。 【0047】 ▲5▼ジャケット2を杭上に設置する前に、前記上部工19を撤去して残された杭1の、少なくとも3箇所の杭上端に着脱可能なガイド部材23を仮装着し、これ以外の杭1には杭上端に蓋14を被せておく。前記少なくとも3箇所のガイド部材23を装着する杭1は図5、図6に示すように改修しようとする範囲(ブロック)のできるだけ外側の杭1を選択した方がジャケット2の位置決めを正確に行える。また、ガイド部材23はいずれか1本の高さを高くしておいた方が望ましい。 【0048】 ガイド部材23は例えば図8に示すように、杭1の外径D2と同じ鋼管23cの下側に杭1の内径より僅かに小径D1で下方を先細テーパ状にした挿入鋼管23aを固定し、前記鋼管の上部には上方を短辺とした十字状のテーパ材23bを固定したものとする。前記挿入鋼管23aは杭1の頭部に挿入した状態でぐらついたり落下しないような長さとする。 【0049】 ▲6▼次に、図5(b)に示すようにジャケット2をクレーン20で水平に吊り上げ、ガイド部材23を装着した杭1に対応するジャケット2のガイドレグ7aを嵌挿し、ジャケット2の他のレグ位置を対応する杭1の上方に位置決めしながら他の全てのレグ7を杭1に嵌挿する。また、1本のガイド部材23を高くしておくと、ジャケット2の嵌挿作業において先ず高くしたガイド部材23に対応するガイドレグ7aを僅かに嵌挿した状態でジャケット2を旋回調整して位置決めしてから、他のガイド部材23にレグ7を容易に嵌挿することが出来る。なお、各レグ7とガイドレグ7aの下端をラッパ管11状に広げておくと嵌挿作業を容易に出来る。 【0050】 ガイド部材23を装着した杭1に対応するジャケット2のガイドレグ7aを嵌挿すると、ジャケット2の他のレグ7全ては自動的に対応する杭1に嵌挿される。また、ジャケット2はレグ7を杭1に嵌挿する際にガイドレグ7a以外のレグ7は上部に設けた支持材12が杭上端に支持されて自動的に所定高さに設置される。 【0051】 ▲7▼杭上にジャケット2の設置が完了したら図6(a)に示すように、ガイド部材23を取り外し、杭上端に蓋14を被せる(詳細は図10b参照)。杭上にジャケット2を設置した後、レグ下端部にシール材24を装着する。シール材24は筒状の袋をレグ7の下端と杭1間にそれぞれバンド25で固定して装着するが、該シール材24は予めレグ7側に装着しておいてもよい。シール材24の装着が済んだら、レグ7内周と杭外周の隙間にモルタル等のグラウト材8を注入する。グラウト材8の注入作業は、注入管を前記隙間に差し込んで行うか、または予めレグ7の下部に設けておいたグラウト配管を利用する。グラウト材8が硬化すれば杭1とジャケット2は固定される。 なお、回収したガイド部材23は次の桟橋改修の際に再利用する。」 (オ)【図1】 図1には、次の図示がある。 「【図1】 」 図1の「L.W.L.」について、上記(ウ)の段落【0016】に「LWL(Low Water Level)」と記載されていることから、図1中で「L.W.L」より高い位置に示される「H.W.L」は、High Water Levelを示すことが、読み取れる。 また、図1より、杭1とジャケット2との固定は、杭1のうち上方の部分で行われることが、看て取れる。 (カ)【図5】 図5には、次の図示がある。 「【図5】 」 図5(a)より、既設杭桟橋の上部工直下にて切断し、上部工19を撤去する際、杭1の切断は、H.W.Lより上で行われることが、看て取れる。 図5(b)より、ジャケット2の嵌挿入作業においては、クレーン20で吊り下げたジャケット2を下降させて、上端がH.W.Lより上にあるガイド部材23及び杭1に、レグ7を嵌挿することが、看て取れる。 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アより、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「多数の杭で支持された既設杭桟橋の改修工法において、 既設杭桟橋の上部工直下にて、High Water Levelより上で杭1を切断し、上部工19を撤去した後、 各杭1の配置を測量し、測量の結果得られた杭1の配置に基づいてジャケット2を設計し、 縦梁3と横梁4の格点6を前記測量結果の各杭配置と合致するようにし、該格子状のデッキ5の格点6下方に前記杭1に嵌挿可能なサイズの鋼管等のレグ7を突設した、トラス構造のジャケット2を製作し、 製作したジャケット2を現地に海上輸送し、 少なくとも3箇所の杭1の上端にガイド部材23を仮装着し、ガイド部材23はいずれか1本の高さを高くしておき、 ジャケット2をクレーン20で水平に吊り上げ、ジャケット2を下降させて、上端がHigh Water Levelより上にあるガイド部材23及び杭1に、レグ7を嵌挿する、ジャケット2の嵌挿入作業に際しては、 先ず高くしたガイド部材23に対応するガイドレグ7aを僅かに嵌挿した状態でジャケット2を旋回調整して位置決めしてから、他のガイド部材23にレグ7を嵌挿し、 ガイド部材23を装着した杭1に対応するジャケット2のガイドレグ7aを嵌挿して、ジャケット2の他のレグ7全てを対応する杭1に嵌挿し、 杭上にジャケット2の設置が完了したら、ガイド部材23を取り外し、レグ7内周と杭外周の隙間にグラウト材8を注入して、杭1のうち上方の部分において、杭1とジャケット2とを固定する、 既設杭桟橋の改修工法。」 (2)甲第2号証 甲第2号証には、次の記載がある。 ア 段落【0002】-【0003】 「【0002】 【従来の技術】 橋脚を建設するとき、海底等の水底地盤に鉄筋コンクリートによるフーチングを構築したり、また内部にコンクリートが打設されたケーソンを設置したりするのを不要にすることで、建設工事の容易化や低コスト化を図ったものとして、ジャケット式基礎を用いる技術が知られている。 【0003】 図9は、従来のジャケット式基礎を構築する一例を示している。同図に鎖線にて示すように、杭ガイド部材2や連結部材3等によって台形形状に組立てられたジャケット構造体1は、工場にて製作されると、その後曳舟4等によって設置位置まで牽引され、設置位置に到達した後、図示しないクレーンによって吊り上げると共に、ジャケット構造体1のバランスをとりながら徐々に沈め、位置決めするため海底地盤6に予め立設された仮杭5の上にセットされる。この場合、ジャケット構造体1は、仮杭5に対し全体が水平にしてセットされる。 このように、仮杭5の上にジャケット構造体1がセットされた後、ジャケット構造体1の杭ガイド部材2を介し直杭及び斜杭が海底地盤に打ち込まれてジャケット構造体1が固定されることでジャケット式基礎が構成され、その上に橋脚が立設されることとなる」 イ 【図9】 図9には、次の図示がある。 「【図9】 」 (3)甲第3号証 甲第3号証には、次の記載がある。 第7頁 「精度が問われる打設・据付作業」と題された欄 「ジャケットの据付は、予め現地に打設した先行杭(直杭4本)にジャケットのレグ(脚)をはめ込む作業になります。鋼管杭の外径は1.6mで、レグの内径は1.7m(最小部)。杭とレグのクリアランスは10cmと狭いので、直杭の打設精度を高めることが、ジャケット据付管理に直接影響するので重要となりました。 「ジャケット据付はレグと鋼管杭の相対位置が目視で確認できないので、レグ内に設置したカメラ映像等の据付システムにより据付状況を確認しています。また据付後の後打杭(斜杭4本)の施工はフライング打設となるため、杭頭部の偏心荷重、レグ材の損傷防止等を考慮した慎重な管理が要求されました。最終的には20基のJKT据付と後打杭の打設にトラブルもなく、無事完了しています」(TE 鈴木さん) 「ジャケット据付(340t)、大口径鋼管杭(1,600mm)打設等には大型作業船が必要になり、他地域の工事と取り合いになることも多々ありました。海上工事特有の工程遅延でもあれば、他の工事との調整しなければならないので、工程管理は特に厳しいものがあります」(調査役 中嶋さん)」 (4)甲第4号証 甲第4号証には、次の記載がある。 ア 段落【0004】-【0009】 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上記したように、杭基礎構造は、基礎杭の上端面に架台の脚部を載置して使用される。そのため、基礎杭の上端面と架台の脚部の位置は、概ね一致しなければならず、隣接する基礎杭間の間隔と、隣接する架台の脚部間の間隔は、概ね同一にしなければならない。 しかしながら、実際には、基礎杭を振動や圧力を加えることによって地中に基礎杭の一部を圧入するため、基礎杭の位置と架台の脚部の位置にずれが生じる。そのため、このような場合には、基礎杭と架台の脚部の間にアタッチメント等の調整器具を用いて位置関係を調整する必要があった。また、アタッチメント等の調整器具を設置する工程が余分に必要となるともに、アタッチメント等の調整器具を設置する分、製造コストが嵩むという問題があった。 【0006】 そこで、本発明は、基礎杭を所定の位置に正確に打設できる打設工法を提供することを目的とする。また、本発明は、基礎杭を所定の位置に正確に打設するための打設補助部材を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者は、以下のことを考察した。すなわち、架台は、脚部が複数本存在するから、基礎杭も当然複数本打設することとなる。 そこで、あらかじめ基礎杭を打設しておき、当該基礎杭に対して相対位置を規定して確実に基礎杭を打設することができれば、正確に適切な位置に基礎杭を打設することができる。すなわち、脚部の位置に合わせて各基礎杭を正確に打設できると考えた。 そこで、このような考えのもと、本発明者は、2本の筒を連結部で一体不可分に連結した打設補助部材を試作した。 そして、あらかじめ1本の基礎杭を打ち込み、当該基礎杭に筒状体を挿着した状態で、他の筒状体内に基礎杭を打設する。こうすることで、基礎杭の間隔は、連結部によって規定された間隔になるから、隣接する基礎杭間の間隔を正確に規定できると考えた。 しかしながら、基礎杭のずれは、縮小したものの、アタッチメント等の調整器具が不要になるほど、正確に基礎杭を打設することができなかった。すなわち、1本の基礎杭で筒状体を固定すると、打設の際に生じる振動や圧力によって、打設補助部材がガタ付き、基礎杭がずれてしまうという問題が生じていた。 【0008】 そこで、上記した試作の結果を踏まえて導き出された請求項1に記載の発明は、太陽電池モジュールを設置するために用いられる基礎杭を地面に打設するための基礎杭の打設工法であって、少なくとも3本以上の基礎杭を打設するための基礎杭の打設工法において、打設補助部材を使用し、前記打設補助部材は、少なくとも3つのガイド部と、当該3つのガイド部を連結する連結部を有し、前記3つのガイド部は、それぞれ前記基礎杭を挿入可能であり、少なくとも2本の基礎杭を地面に打設する基準設定工程と、前記2本の基礎杭に対して2つのガイド部を位置決めする位置決め工程と、前記3つのガイド部のうち、残りのガイド部に基礎杭を打設する打設工程をこの順に行うことを特徴とする基礎杭の打設工法である。 【0009】 本発明の工法によれば、少なくとも2本の基礎杭を地面に打設する基準設定工程と、前記2本の基礎杭に対して2つのガイド部を位置決めする位置決め工程と、前記3つのガイド部のうち、残りのガイド部に基礎杭を打設する打設工程をこの順に行う。 すなわち、本発明の工法によれば、基準工程において打設された2本の基礎杭によって、ガイド部が位置する基準位置を決めているので、打設工程において、打設補助部材は基準となる2本の基礎杭(以下、基準杭ともいう)によって所定の姿勢に保持される。そのため、たとえ打設工程において、打設対象たる基礎杭(以下、打設杭ともいう)を振動等によって打設する場合であっても、打設補助部材が大きくぐらつかない。それ故に、正確に打設杭(基礎杭)を打設することができる。つまり、本発明の工法によれば、正確に打設杭(基礎杭)の位置を規定できるので、アタッチメント等の調整器具を省略することができ、作業工程を簡略化できるとともに部品コストも低減できる。 また、本発明の工法によれば、打設補助部材におけるガイド部の位置によって打設杭(基礎杭)の打設位置が決まるので、ガイド部の位置関係を規定すれば、打設工程ごとに間隔を測量する必要がなくなり、施工速度が向上できる。すなわち、本発明の工法によれば、一本ずつ位置決めして基礎杭を打設する場合に比べて工期が短縮でき、作業コストの低減をすることができる。」 イ 【図12】 図12には、次の図示がある。 「 」 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「ジャケット2」は、本件発明1における「ジャケット構造体」に相当する。そして、甲1発明における「ジャケット2」が有する「鋼管等のレグ7」は、複数あり、「多数の杭で支持された既設杭桟橋」の「上部工直下」にて「切断」した「杭1」に「嵌挿」されることをふまえると、杭1との接続に用いられる複数の部材ということができ、本件発明1における「ジャケット構造体」が備える、「複数の接続部」に相当する。 甲1発明における「杭1」は、「多数の杭で支持された既設杭桟橋」の「上部工直下」にて「杭1を切断し、上部工19を撤去した後」の「各杭1」であり、地盤に打設された状態にあることは明らかであるから、本件発明1における「地盤に打設された複数本の杭」に相当する。 甲1発明における「既設杭桟橋の改修工法」は、「レグ7全てを対応する杭1に嵌挿」して、「杭上にジャケット2の設置が完了」したら、「杭1のうち上方の部分において、杭1とジャケット2とを固定する」ものであるから、本件発明1における、「複数の接続部を有するジャケット構造体を、接続部のそれぞれと、地盤に打設された複数本の杭の対応するそれぞれの杭の上端部とを固定して据え付けるジャケット構造体の据え付け方法」に相当する。 甲1発明において、「ジャケット2の嵌挿入作業」に際して、「ジャケット2をクレーン20で水平に吊り上げ、ジャケット2を下降させ」ることは、本件発明1において、「クレーンを用いて前記ジャケット構造体を下方移動させ」ることに相当する。 甲1発明において、「少なくとも3箇所の杭1の上端にガイド部材23を仮装着し、ガイド部材23はいずれか1本の高さを高くして」おいたうえで、「上端がHigh Water Levelより上にあるガイド部材23及び杭1に、レグ7を嵌挿する」際に、「先ず高くしたガイド部材23に対応するガイドレグ7aを僅かに嵌挿した状態」とすることは、「上端がHigh Water Levelより上にあるガイド部材23」の中でも「高くしたガイド部材23」は、「ガイドレグ7a」を「嵌挿」する際にはその上端が水面上に位置することが自然と解されることをふまえると、本件発明1において、「1つの前記接続部と既に地盤に打設されている1本の杭の気中にある上端部とを最初に嵌合状態にすること」に相当する。 甲1発明において、「高くしたガイド部材23に対応するガイドレグ7aを僅かに嵌挿した状態でジャケット2を旋回調整して位置決め」することは、本件発明1において、「前記ジャケット構造体を、最初に嵌合状態にした1本の前記杭を利用して所定の平面位置に位置決め」することに相当する。 甲1発明において、「他のガイド部材23にレグ7を嵌挿し、ガイド部材23を装着した杭1に対応するジャケット2のガイドレグ7aを嵌挿して、ジャケット2の他のレグ7全てを対応する杭1に嵌挿」することは、本件発明1において、「すべての前記接続部と対応する前記杭の上端部とを位置決め」することに相当する。 甲1発明において、「杭上にジャケット2の設置が完了したら、ガイド部材23を取り外し、レグ7内周と杭外周の隙間にグラウト材8を注入して、杭1のうち上方の部分において、杭1とジャケット2とを固定する」ことは、本件発明1において、「それぞれの前記接続部と対応するそれぞれの前記杭の上端部とを固定する」ことに相当する。 以上を整理すると、甲1発明と本件発明1とは、 「複数の接続部を有するジャケット構造体を、前記接続部のそれぞれと、地盤に打設された複数本の杭の対応するそれぞれの杭の上端部とを固定して据え付けるジャケット構造体の据え付け方法において、 クレーンを用いて前記ジャケット構造体を下方移動させて、1つの前記接続部と既に地盤に打設されている1本の杭の気中にある上端部とを最初に嵌合状態にすることにより、前記ジャケット構造体を、最初に嵌合状態にした1本の前記杭を利用して所定の平面位置に位置決めした後、前記杭が嵌合されていない前記接続部に、対応する残りの前記杭を挿通させて前記地盤に後打ちして、すべての前記接続部と対応する前記杭の上端部とを位置決めし、それぞれの前記接続部と対応するそれぞれの前記杭の上端部とを固定する、ジャケット構造体の据え付け方法。」 の点で一致し、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1では、ジャケット構造体を所定の平面位置に位置決めした後、「杭が嵌合されていない前記接続部に、対応する残りの前記杭を挿通させて前記地盤に後打ち」するのに対して、 甲1発明では、ジャケット2の位置決め後に、「杭が嵌合されていない前記接続部に、対応する残りの前記杭を挿通させて前記地盤に後打ち」していない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1について判断する。 ア 甲第2号証には、上記第4の2(2)に摘記したとおり、位置決めするための仮杭5の上にジャケット構造体1がセットされた後、ジャケット構造体1の杭ガイド部材2を介し直杭及び斜杭が海底地盤に打ち込まれることが、記載されている。 甲第3号証には、上記第4の2(3)に摘記したとおり、予め現地に打設した先行杭(直杭4本)にジャケットのレグ(脚)をはめ込むことでジャケットを据付けた後に、後打杭(斜杭4本)の施工を行うことが、記載されている。 そのため、上記相違点1に係る本件発明1の構成に関し、位置決めしたジャケット構造体に対して杭を後打ちすること自体は、甲第2号証、及び甲第3号証に記載されていると言うことができる。 イ しかしながら、甲1発明においては、「多数の杭で支持された既設杭桟橋の改修工法」として、「上部工19を撤去した後、各杭1の配置を測量し、測量の結果得られた杭1の配置に基づいてジャケット2を設計」し、「測量結果の各杭配置と合致」するように「格点6」を定めて「レグ7」を突設した「ジャケット2を製作」しているから、ジャケット2のレグ7を設けた箇所には既設杭桟橋の杭1が存在しており、ジャケット2に対して新たに杭を後打ちすべき箇所はないものと理解するのが自然である。そのため、たとえ位置決めしたジャケット構造体に杭を後打ちすること自体が、甲第2号証あるいは甲第3号証に記載されるように公知の技術であったとしても、甲1発明におけるジャケット2について、当該公知の技術を採用して、杭を後打ちするのに適した箇所があったということはできない。 また、甲1発明は、上記第4の2(1)ア(ア)に摘記した段落【0007】及び【0012】の記載にも示されるとおり、「既設杭桟橋の更新において、既設杭を有効活用して上部工のみ改修する方が改修コスト、工期短縮の面で有利となる。」という認識の下で、「多数の鉛直杭で支持された既設杭桟橋に適用でき、改修コストを低減し、短工期で施工可能とし、且つ桟橋の性能を向上した既設杭桟橋の改修構造および改修工法を提供すること」を目的としたものであるから、ジャケット2が利用する既設杭桟橋の杭1が多数存在するにもかかわらず、杭1の位置に対応しない箇所にレグ7を増設して、後打ちする杭を追加する動機があったということもできない。 ウ 甲第4号証には、上記第4の2(4)に摘記した事項が記載されているが、基礎杭を正確な位置に打設するための打設補助部材に関するものであり、上記相違点1に係る本件発明1の構成を開示あるいは示唆するものではない。 エ したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至ることは、甲2号証ないし甲第4号証に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。 よって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (3)申立人の主張について 申立人は申立書において、上記相違点1に関し、ジャケット構造体の杭が嵌合されていない接続部に対応する残りの杭を後打ちすることは、甲第2号証及び甲第3号証に記載されるとおり、公知の施工方法に過ぎないから、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している(申立書第20頁第3行-第14行)。 しかしながら、甲1発明のジャケット2において、レグ7は既設杭桟橋の杭1が嵌合される箇所に設けていること、及び、既設杭桟橋の杭1が存在しない箇所に後打ち杭を増設する動機付けがないことは、上記(2)に示したとおりである。 したがって、申立人の上記主張を検討しても、相違点1について、上記(2)と異なる判断をすべき事情を見いだすことはできない。 2 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を追加したものであるところ、上記1(2)に示したとおり、本件発明1は甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2及び3も、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明4について (1)対比 本件発明4と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「ジャケット2」は、本件発明4における「ジャケット構造体」に相当する。そして、甲1発明において、「ジャケット2」が有する「鋼管等のレグ7」は、複数あり、「多数の杭で支持された既設杭桟橋」の「上部工直下」にて「切断」した「杭1」に「嵌挿」されることをふまえると、杭1との接続に用いられる複数の部材ということができ、本件発明4における「ジャケット構造体」が備える、「複数の接続部」に相当する。甲1発明における「杭1」は、「多数の杭で支持された既設杭桟橋」の「上部工直下にて、High Water Levelより上で杭1を切断し、上部工19を撤去した後」の「各杭1」であるから、本件発明4における「地盤に打設された複数本の杭」に相当する。 甲1発明における「既設杭桟橋の改修工法」は、「レグ7全てを対応する杭1に嵌挿」して、「杭上にジャケット2の設置が完了」したら、「杭1のうち上方の部分において、杭1とジャケット2とを固定する」ものであるから、本件発明4における、「複数の接続部を有するジャケット構造体を、接続部のそれぞれと、地盤に打設された複数本の杭の対応するそれぞれの杭の上端部とを固定して据え付けるジャケット構造体の据え付け方法」に相当する。 甲1発明において、「既設杭桟橋の上部工直下にて、High Water Levelより上で杭1を切断し、上部工19を撤去した後」の「少なくとも3箇所の杭1の上端にガイド部材23を仮装着」することは、本件発明4において、「前記複数本の杭を地盤に打設しておき、これら打設してある複数本の杭の気中にある上端部」に「ガイド部材を設けて」おくことに相当する。 甲1発明において、「ジャケット2の嵌挿入作業」に際して、「ジャケット2をクレーン20で水平に吊り上げ、ジャケット2を下降させ」ることは、本件発明4において、「クレーンを用いて前記ジャケット構造体を下方移動させ」ることに相当する。 甲1発明において、「少なくとも3箇所の杭1の上端にガイド部材23を仮装着し、ガイド部材23はいずれか1本の高さを高くして」おいたうえで、「上端がHigh Water Levelより上にあるガイド部材23及び杭1に、レグ7を嵌挿する」際に、「先ず高くしたガイド部材23に対応するガイドレグ7aを僅かに嵌挿した状態」とすることは、本件発明4において、「1つの前記接続部と1本の前記杭の気中にある上端部とを対応する前記ガイド部材によって誘導して最初に嵌合状態に」することに相当する。 甲1発明において、「他のガイド部材23にレグ7を嵌挿し、ガイド部材23を装着した杭1に対応するジャケット2のガイドレグ7aを嵌挿して、ジャケット2の他のレグ7全てを対応する杭1に嵌挿」することは、本件発明4において、「残りの前記接続部と残りの前記杭の上端部とを対応する前記ガイド部材によって誘導して嵌合させた状態にしてすべての前記杭の上端部と対応する前記接続部とを位置決め」することに相当する。 甲1発明において、「杭上にジャケット2の設置が完了したら、ガイド部材23を取り外し、レグ7内周と杭外周の隙間にグラウト材8を注入して、杭1のうち上方の部分において、杭1とジャケット2とを固定する」ことは、本件発明4において、「それぞれの前記接続部と対応するそれぞれの前記杭の上端部とを固定する」ことに相当する。 以上を整理すると、甲1発明と本件発明4とは、 「複数の接続部を有するジャケット構造体を、前記接続部のそれぞれと、地盤に打設された複数本の杭の対応するそれぞれの杭の上端部とを固定して据え付けるジャケット構造体の据え付け方法において、 前記複数本の杭を地盤に打設しておき、これら打設してある複数本の杭の気中にある上端部に、ガイド部材を設けておき、クレーンを用いて前記ジャケット構造体を下方移動させて、1つの前記接続部と1本の前記杭の気中にある上端部とを対応する前記ガイド部材によって誘導して最初に嵌合状態にして、残りの前記接続部と残りの前記杭の上端部とを対応する前記ガイド部材によって誘導して嵌合させた状態にしてすべての前記杭の上端部と対応する前記接続部とを位置決めした後、それぞれの前記接続部と対応するそれぞれの前記杭の上端部とを固定する、ジャケット構造体の据え付け方法。」 の点で一致し、両者は次の点で相違する。 <相違点2> 本件発明4では、1つの接続部を最初に嵌合状態にした後、「次いで、最初に嵌合状態にした前記接続部とは別の1つの前記接続部と、最初に嵌合状態にした前記杭とは別の1本の前記杭の気中にある上端部とを対応する前記ガイド部材によって誘導して2番目に嵌合状態にすることにより、前記ジャケット構造体を、最初および2番目に嵌合状態にした2本の前記杭で所定の平面位置に位置決め」しているのに対し、 甲1発明では、「いずれか1本」の「先ず高くしたガイド部材23に対応するガイドレグ7aを僅かに嵌挿」した後に、2番目に嵌合状態にする杭1とレグ7とを設けておらず、「前記ジャケット構造体を、最初および2番目に嵌合状態にした2本の前記杭で所定の平面位置に位置決め」していない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点2について判断する。 甲第4号証には、上記第4の2(4)に摘記した事項が記載されているが、基礎杭を正確な位置に打設するための打設補助部材に関し、1本の基礎杭で筒状体を固定して、他の筒状体内に基礎杭を打設すると、打設の際に生じる振動や圧力によって打設補助部材がガタ付き、基礎杭がずれてしまうという問題に対応するために、少なくとも2本の基礎杭に対して打設補助部材を固定するというものであるから、既設杭桟橋の多数の杭1に対して、杭1の配置に基づいて設計したジャケット2のレグ7を嵌挿する甲1発明とは、前提とする状況が大きく異なっており、甲1発明において、甲第4号証において解決しようとする課題が生じると認められる根拠は見いだせない。したがって、甲第4号証に記載された事項は、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明4の構成に至るためにその採用が検討されるものではない。 甲第2号証、及び甲第3号証には、それぞれ上記第4の2(2)及び(3)に摘記した事項が記載されているが、ジャケット構造体に対する杭の後打ちに関するもので、上記相違点2に係る本件発明4の構成を開示あるいは示唆するものではない。 したがって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明4の構成に至ることは、甲2号証ないし甲第4号証に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。 よって、本件発明4は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (3)申立人の主張について 申立人は申立書において、上記相違点2に関し、構造体を位置決めするに際し、2本の杭で所定の平面位置に位置決めすることは、甲第4号証にも記載されており、甲1発明において、相違点1に係る本件発明4の構成を採用することは、当業者が容易になし得た旨を主張している(申立書第26頁第1行-第27頁第2行)。 しかしながら、甲第4号証に記載の事項は、上記(2)に指摘したとおり、基礎杭を打設する際の振動による位置ずれを防止するために、打設補助部材の固定箇所を2以上とするものであるから、甲1発明において、既設杭桟橋の多数の杭1にジャケット2のレグ7を嵌合する際の嵌挿手順について、相違点2に係る本件発明4の構成を採るべきことを示唆するものではない。 したがって、申立人の上記主張を検討しても、相違点2について、上記(2)と異なる判断をすべき事情を見いだすことはできない。 4 本件発明5について 本件発明5は、本件発明4の構成を全て含み、さらに限定を追加したものであるところ、上記3(2)に示したとおり、本件発明4は甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明5も、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-03-05 |
出願番号 | 特願2016-93042(P2016-93042) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E02B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 石川 信也 |
特許庁審判長 |
森次 顕 |
特許庁審判官 |
長井 真一 有家 秀郎 |
登録日 | 2020-06-05 |
登録番号 | 特許第6713342号(P6713342) |
権利者 | 東亜建設工業株式会社 |
発明の名称 | ジャケット構造体の据え付け方法 |
代理人 | 清流国際特許業務法人 |