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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C07D
管理番号 1371946
審判番号 訂正2020-390093  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-10-09 
確定日 2021-02-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6754864号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6754864号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6754864号(以下、「本件特許」ともいう。)は、2015年10月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年10月13日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2017-519685号の一部を、平成31年4月26日に新たな出願とした特願2019-85608号の請求項1?4に係る発明について、令和2年8月26日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、令和2年10月9日に本件訂正審判の請求が成されたものである。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第6754864号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
そして、その訂正の内容は、以下の訂正事項1からなるものである。

[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項4に「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル」と記載されているのを、「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド」に訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正の目的について
審判請求人は、審判請求書の6(3)ア(ア)a において、訂正事項1は特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。

(1)誤記の訂正について
ア 「誤記の訂正」を目的とする訂正が認められる前提
訂正が、誤記の訂正を目的としたものとして認められるためには、請求項中の記載が、それ自体で、又は特許がされた明細書の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まることが必要である。

イ 判断
(ア)請求項中の記載が、それ自体で、又は特許がされた明細書の記載との関係で、誤りが明らかであるかについて
訂正前の本件特許の請求項4に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項4に
「【請求項4】
N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニルまたはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む、非小細胞肺癌を処置するための医薬組成物。」と記載されている。
「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル」は、括弧の対応関係が合っておらず、また化合物を表すには不完全な記載であるため、それ自体で誤りであることは明らかである。

(イ)特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まるかについて
本件特許明細書に記載される化合物名のうち、訂正前の本件特許の請求項4に記載された「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル」を含む化合物名は、
「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド」(請求項1?3、段落0060、段落0311、段落0401、段落0413)、
「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)ブト-3-エナミド」(段落0391)、
「(E)-N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)ペント-2-エナミド」(段落0392)、
「(Z)-N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)ヘキス-3-エナミド」(段落0393)、及び
「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)プロピオンアミド」(段落0394)
の5種類であるところ、
「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド」以外のものは、いずれも比較例の化合物名として記載されている。
そして、訂正前の本件特許の請求項4に係る発明は「……、非小細胞肺癌を処置するための医薬組成物。」と記載されているところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、
「【0012】
本発明により、1つ以上のEGFR変異と関連しているいくつかの異なるがんの処置または予防のための式(I)で表されるピリミジン誘導体およびその使用を提供する。」、
「【0060】
式(I)の代表的な化合物を以下に列挙する:
……、
N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
……、またはその薬学的に許容され得る塩。」、
「【0073】
本明細書で用いる場合、用語「プロテインキナーゼ媒介性疾患」または「不適切なプロテインキナーゼ活性によって媒介される障害もしくは疾患もしくは病状」は、本明細書に記載のプロテインキナーゼによって媒介されるか、またはモジュレートされる任意の疾患状態をいう。かかる疾患状態としては、限定されないが非小細胞肺がん(NSCLC)が挙げられる。
【0074】
本明細書で用いる場合、用語「EGFR変異型媒介性疾患」または「不適切なEGFR活性によって媒介される障害もしくは疾患もしくは病状」は、EGFR変異型キナーゼ作用機序によって媒介されるか、またはモジュレートされる任意の疾患状態をいう。かかる疾患状態としては、限定されないが、NSCLC、転移性の脳のがんおよび他の充実性のがんが挙げられる。」、
「【0311】
実施例73化合物73:N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド
……」、
「【0401】
例えば、式(I)の化合物73、すなわち、N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミドは、JAK3およびすべての4つのEGFR変異型のキナーゼ活性を1mMのATP濃度で強力に阻害するが(<20nMのIC_(50))、概略ATP Km濃度でのSYKおよびKDRのキナーゼ活性の阻害は不充分であることが示された(表1?5参照)。」、及び
「【0408】
2.細胞バイアビリティアッセイ
……。
【0413】
表6は、野生型EGFR発現細胞と比較した変異型EGFR発現細胞の細胞バイアビリティを示し、各試験化合物についての変異型発現細胞に対する野生型EGFR発現細胞の選択性の比を示す。式(I)の化合物はPC9細胞において、およびH1975細胞ではさらに強力な阻害範囲(<20nMのIC_(50))を示し、このとき、エルロチニブはなんら強力な阻害を示さなかった。例えば、式(I)の化合物73、すなわち、N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミドは、PC9細胞とH1975細胞の両方において強力な阻害を示したが、H2073においては示さなかった。一方、アファチニブはH2073、PC9およびH1975において強力な阻害を示した。アファチニブとは異なり、本発明の一部のものは、細胞レベルで大きなEGFR野生型選択性を示した(例えば、……、化合物73は細胞有効能が>200倍選択的である)。」との記載がある。
これらの記載によって、「化合物73」とも称される「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド」またはその薬学的に許容される塩が、非小細胞肺癌を処置するための医薬組成物の活性成分となり得ることが示されている。

したがって、本件特許明細書又は特許請求の範囲の記載全体から、訂正前の本件特許の請求項4に記載された「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル」が、正しくは「N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド」であることが、自明な事項として定まるといえる。

(ウ)以上(ア)及び(イ)より、訂正事項1は特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正であると認められる。

2 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であることについて
訂正事項1は、訂正前の請求項4に記載された誤記の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の全てを総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許法第126条第5項の規定に適合するといえる。

3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項1は、上記1で検討したとおり、それ自体で誤りであることが明らかである訂正前の請求項4における誤記を、特許明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まる正しい記載にする訂正であるので、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。

4 独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項4に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由を見出すことはできないので、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項?第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩の、非小細胞肺癌の処置のための医薬の製造のための使用:
N-(2-(ジメチルアミノ)-5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(3-シクロプロピル-4-((ジメチルアミノ)メチル)-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(4-(アゼチジン-1-イルメチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(4-((エチル(メチル)アミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(3-シクロプロピル-4-((ジメチルアミノ)メチル)-1H-ピラゾール-1-イル)-5-メチルピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(4-(アゼチジン-1-イルメチル)-3-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-イル)-5-メチルピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、および
N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-イソプロピル-1H-ピラゾール-1-イル)-5-メチルピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド。
【請求項2】
N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミドまたはその薬学的に許容される塩の、非小細胞肺癌の処置のための医薬の製造のための使用。
【請求項3】
以下から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む、非小細胞肺癌を処置するための医薬組成物:
N-(2-(ジメチルアミノ)-5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(3-シクロプロピル-4-((ジメチルアミノ)メチル)-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(4-(アゼチジン-1-イルメチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(4-((エチル(メチル)アミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(3-シクロプロピル-4-((ジメチルアミノ)メチル)-1H-ピラゾール-1-イル)-5-メチルピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、
N-(5-(4-(4-(アゼチジン-1-イルメチル)-3-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-イル)-5-メチルピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド、および
N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-イソプロピル-1H-ピラゾール-1-イル)-5-メチルピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド。
【請求項4】
N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミドまたはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む、非小細胞肺癌を処置するための医薬組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-01-05 
結審通知日 2021-01-08 
審決日 2021-01-22 
出願番号 特願2019-85608(P2019-85608)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (C07D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 東 裕子  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 関 美祝
村上 騎見高
登録日 2020-08-26 
登録番号 特許第6754864号(P6754864)
発明の名称 EGFR変異型キナーゼ活性をモジュレートするための化合物および組成物  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
代理人 特許業務法人ユニアス国際特許事務所  

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