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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1371953
審判番号 不服2018-16715  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-14 
確定日 2021-03-10 
事件の表示 特願2015-551687「再チャージ式陰圧閉鎖療法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月10日国際公開、WO2014/107285、平成28年 3月17日国内公表、特表2016-508056〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本願は、2013年12月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年1月3日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成30年8月6日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年12月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされた。
その後、当審において令和2年1月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年4月22日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?8に係る発明は、令和2年4月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「陰圧療法を行うためのシステムにおいて、
ドレッシングと;
前記ドレッシングに陰圧を適用するポンプであって、真空室、周囲圧力室、前記真空室と前記周囲圧力室との間に配置されたピストン、前記ピストンに動作可能に係合された弾性要素、前記真空室と周囲圧力室との間のバルブであって、チャージストローク中は前記真空室から前記周囲圧力室への一方向の流れとなるように構成されたバルブ、および前記ポンプ内に液体を保持するように構成された液体フィルターを含む、ポンプと;
前記ドレッシングを前記真空室に流体的に接続するルーメンと、を含み、
前記周囲圧力室が外側の大気と流体連通する排気ポートを有しており、これにより前記周囲圧力室が周囲の大気圧を維持できることを特徴とする、システム。」

第3 当審の拒絶理由
当審の令和2年1月23日付け拒絶理由通知の請求項1に係る発明の進歩性についての拒絶理由の概要は以下のとおりである。

請求項1に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特表平11-504833号公報
2.特表2013-526373号公報

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1
(1) 当審において通知した令和2年1月23日付け拒絶理由に引用され、優先日前に頒布された刊行物である、特表平11-504833号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の技術的事項が記載されている(なお、下線は、当審で付与し、省略した箇所は「・・・」と記載している。以下同じ。)。

ア 「本発明は、請求項1の上位概念に記載する創傷の真空密封装置に関する。」(5ページ3行)

イ 「図1に装置全体の構成を示す。患者の創傷10に開多孔性の形状の安定した発泡材から成る挿入物12が挿入される。挿入物12とともに創傷10は、空気を通さないプラスチックフィルム14によって被覆される。フィルム14は創傷10の周辺にわたって広がり、かつ、該創傷の周辺で適切な接着剤16により密閉して患者の上皮に固定される。
挿入物12の中にはドレナージチューブ18の遠位端が挿入される。ドレナージチューブ18は、挿入物12の中にある該ドレナージチューブの終端に開口部を有し、この結果、該ドレナージチューブは挿入物12の多孔を介して創傷と連通している。ドレナージチューブ18は、該ドレナージチューブの外周に密閉してフィルム14の下に案内されている。
ドレナージチューブ18の近位端には容器20が接続される。容器20は、プラスチックから成り、かつ、ボトルまたは深なべ状の形状をもつ。
図1の実施例で容器20は、閉じられた深なべとして形成されている。該容器の上部覆い面には、チューブ用卵形取っ手を備えた管継手22が成形され、該管継手でドレナージチューブ18が押開される。場合によりドレナージチューブ18は一体型として管継手22に成形することができる。ドレナージチューブ18は、管継手22を介して容器20の内部空間と連通している。
さらに、容器20の内部空間にはポンプ24が配設される。ポンプ24は同様にプラスチック製であり、容器20の上部覆い面の内側に成形される。ポンプ24はシリンダ26を備えた単純なピストンポンプであり、前記シリンダ内に密封されてピストン28が移動可能になる。ピストン28を移動するために、ピストン28に取り付けたピストンロッド30が利用され、前記ピストンロッドは容器20の上部覆い面を貫通して案内され、かつ、ハンドグリップ32を備えている。ピストン28は逆止弁34を有し、この逆止弁はピストン28の低圧時に開かれる。さらにピストン28の下のシリンダ空間にはシリンダ26の壁に逆止弁36が配設され、この逆止弁が内部に向かってシリンダ26の中で開かれる。シリンダ26の外部には通路38が成形され、この通路は逆止弁36から上方へ延長し、かつ、容器20の上部覆い面の下で容器内部に対して開かれる。
・・・
創傷を処置するためにドレナージチューブ18を備えた挿入物12が創傷10の中に挿入され、かつ、薄膜14により被覆され、空気を通さないように密閉される。ポンプ24を利用して容器20が真空にされ、好ましくは約10kPaの低圧にされる。その都度、容器20内に生ずる低圧は圧力計40で読取ることができる。容器20内に支配する低圧は、ドレナージチューブ18と多孔性発泡挿入物12を介して伝わり、かつ、薄膜14の下の創傷部位が真空になる。創傷10から浸出した分泌物は、多孔性挿入物12とドレナージチューブ18とを介して容器20の中に吸引され、かつ、容器内の下方に収集される。患者が圧力計40を使用して、設定された容器20内の低圧がもはや保たれていないことを確認したとき、当該患者はポンプ24を作動させることにより低圧を再び設定値にすることができる。組込型ポンプ24を備えた容器20は、この実施態様では使い捨て商品として形成されている。容器20が創傷分泌物で一杯になったとき、または創傷処置が終了したとき、容器20はポンプ24と収集された分泌物とともに処理される。」(8ページ10行?9ページ下から2行)

ウ 「図4に、第1実施態様の変形として示しす第4実施態様を示す。
ピストンロッド30には、容器20の覆い面とハンドグリップ32との間にねじ圧縮ばね60が挿入され、このねじ圧縮ばねはシリンダ26内のピストン28を吸引方向に上方に引き上げる。ねじ圧縮ばね60は、容器20の内部で、ねじ圧縮ばね60の力を相殺する低圧が発生するまで、ピストン28を上方に引き上げる。これに対応するピストン28のポジションで、ねじ圧縮ばね60の力と容器20内の低圧との間に均衡状態が生ずる。装置の非密閉性のために、または流入する分泌物の体積により低圧が下がるとき、ねじ圧縮ばね60は、容器20内で再び均衡状態に対応する低圧が生じるまで、ピストン28をさらに上方に引き上げる。設定された低圧は、これにより点検または修正する必要がなく、長時間の使用時間にわたり一定に維持される。ピストン28が、該ピストンの上死点に達したとき初めてもはや低圧の縮小を相殺することができなくなる。その場合、低圧はポンプを手動操作により再び発生させなければならない。ピストン28は、低圧調整を再び自動的に機能させるために、再び該ピストンの下死点に移動させなければならない。」(11ページ17行?12ページ2行)

エ 「

」(図1)

オ 「

」(図4)

(2) 上記した摘記事項、図1及び図4の記載から、以下の点が理解できる。

ア 引用文献1における第4実施例は、図1に示される実施例の変形例であることを踏まえれば、図1の実施例の部材に対応する実施例4の部材は、図1の実施例と同じ機能を奏するものと認められる。

イ 図4より、シリンダ26内の空間は、ピストンロッド30がある空間(以下「上部空間」という。)と、ピストンロッドがない空間(以下「下部空間」という。)との組合せで構成され、上部空間と下部空間との間に、ピストン28が配置されているといえる。

ウ 上記「(1)イ」の「創傷10から浸出した分泌物は、多孔性挿入物12とドレナージチューブ18とを介して容器20の中に吸引され、かつ、容器内の下方に収集される。」との記載、並びに図1及び図4の記載から、ドレナージチューブ18は、薄膜14の下の創傷部位と下部空間とを流体的に接続していることが理解できる。

エ 上記「(1)ウ」の「ピストンロッド30には、容器20の覆い面とハンドグリップ32との間にねじ圧縮ばね60が挿入され、このねじ圧縮ばねはシリンダ26内のピストン28を吸引方向に上方に引き上げる」との記載及び図4の記載から、ねじ圧縮ばねは、ピストンロッド30を介してピストン28に動作可能に係合されているといえる。

オ 図4の逆止弁34の記載から、逆止弁34は、上部空間と下部空間との間にあることが看取できる。また、上記「(1)イ」の「ピストン28は逆止弁34を有し、この逆止弁はピストン28の低圧時に開かれる。」との記載及び上記「(1)ウ」の「ピストン28が、該ピストンの上死点に達したとき初めてもはや低圧の縮小を相殺することができなくなる。その場合、低圧はポンプを手動操作により再び発生させなければならない。ピストン28は、低圧調整を再び自動的に機能させるために、再び該ピストンの下死点に移動させなければならない。」との記載から、逆止弁34は、手動操作により上部空間が低圧となったときに開き、下部空間から上部空間への一方向の流れとするものであると認められる。

カ 上記「(1)イ」の「容器20が創傷分泌物で一杯になったとき、または創傷処置が終了したとき、容器20はポンプ24と収集された分泌物とともに処理される」との記載から、引用文献1の創傷の真空密封装置には、容器から分泌物が溢れ出ることを防ぎたいとの課題があるといえる。

(3) 引用発明
上記(1)及び(2)より、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「創傷の真空密封装置において、
薄膜14と、
前記薄膜14の下の創傷部位を真空とするためのポンプ24であって、下部空間と、上部空間と、上部空間と下部空間との間に配置されたピストン28と、ピストンロッド30を介してピストン28に動作可能に係合されているねじ圧縮ばね60と、下部空間と上部空間との間の逆止弁34であって、手動操作により上部空間が低圧となったときに開き、下部空間から上部空間への一方向の流れとするものである逆止弁34を含む、ポンプ24と、
前記薄膜14の下の創傷部位を前記シリンダ26の下部空間に流体的に接続するドレナージチューブ18とを含む、
創傷の真空密封装置。」

2 引用文献2
(1) 当審において通知した令和2年1月23日付け拒絶理由に引用され、優先日前に頒布された刊行物である、特表2013-526373号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。

ア 「【0002】
本開示は、概して減圧治療システムに関し、より具体的には、限定はしないが、減圧キャニスター、方法、およびシステムに関する。」

イ 「【0062】
ここで主に図9?12を、初めに図9を参照して、減圧治療を受けている患者に使用するための流体収集システムまたはサブシステム500を説明する。・・・キャニスター本体502内にはアパーチャ510が形成され、流体508を液溜め504に連通させ得る。キャニスター本体502には、1つ以上のモジュール、例えば、ポンプ512、ポンプ制御エレクトロニクス514、およびパワーユニット516が関連付けられている。」

ウ 「【0064】
流体の流入に対してポンプ512を保護するのを疎水性フィルター520が助け得る。ポンプ512は、減圧を発生させる任意の装置とし得る。ポンプ制御エレクトロニクス514は、ポンプ512を制御する任意の1つまたは複数の装置とし得る。ポンプ制御エレクトロニクス514は、限定するものではないが、プリント配線アセンブリ(PWA)または特定用途向け集積回路(ASIC)または他の制御ユニットとし得る。」

エ 「

」(図9)

(2) 引用文献2記載の技術的事項
上記(1)の摘記事項及び図9の記載から、引用文献2には、「減圧治療システムの液溜め508において、液溜め508から液体が外部に流出しないようにするための疎水性フィルタ520を設ける」ことが記載されている。

第5 対比
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「創傷の真空密封装置」は、その機能・構成等からみて、本願発明の「陰圧療法を行うためのシステム」に相当する。
以下、同様に「薄膜14」は「ドレッシング」に、「ポンプ24」は「ポンプ」に、「下部空間」は「真空室」に、「ピストン28」は「ピストン」に、「ねじ圧縮バネ60」は「弾性要素」に、「逆止弁34」は「バルブ」に、「ドレナージチューブ18」は「ルーメン」にそれぞれ相当する。
引用発明の「上部空間」と本願発明の「周囲圧力室」とは、「真空室にピストンを介して隣接する室」という点で共通する。
引用発明の「薄膜14の下の創傷部位を真空とする」態様は、本願発明の「ドレッシングに陰圧を適用する」態様に相当し、引用発明の逆止弁34が「手動操作により上部空間が低圧となったときに開き、下部空間から上部空間に下部空間への一方向の流れとする」態様は、本願発明のバルブが「チャージストローク中は前記真空室から前記周囲圧力室への一方向の流れとなる」態様にそれぞれ相当する。

2 一致点
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「陰圧療法を行うためのシステムにおいて、
ドレッシングと;
前記ドレッシングに陰圧を適用するポンプであって、真空室、真空室にピストンを介して隣接する室、前記真空室と前記真空室にピストンを介して隣接する室との間に配置されたピストン、前記ピストンに動作可能に係合された弾性要素、前記真空室と真空室にピストンを介して隣接する室との間のバルブであって、チャージストローク中は前記真空室から前記真空室にピストンを介して隣接する室への一方向の流れとなるように構成されたバルブ、を含むポンプと;
前記ドレッシングを前記真空室に流体的に接続するルーメンとを含む、システム。」
で一致し、下記の点で相違する。

3 相違点
(1) 相違点1
本願発明は、「ポンプ内に液体を保持するように構成された液体フィルタ」を備えているのに対して、引用発明は、そのように特定されたものでない点。

(2) 相違点2
「真空室にピストンを介して隣接する室」について、本願発明の「周囲圧力室」は、「周囲圧力室が外側の大気と流体連通する排気ポートを有しており、これにより前記周囲圧力室が周囲の大気圧を維持できる」ように構成されているのに対して、引用発明の「上部空間」は、排気ポートを備えているか不明であり、そのため、上部空間がその周囲の大気圧を維持できるものとなっているか明らかでない点

第6 判断
1 上記各相違点について検討する。
(1) 相違点1について
上記相違点1について検討すると、引用発明には上記「第4 1 (3)カ」のとおり容器から分泌物が溢れ出ることを防ぎたいとの課題がある。
そして、引用文献2には、引用文献1と同じ減圧治療を行う装置において、液体が装置外に流出しないように、液溜めから液体が外部に流出しないようにするための疎水性フィルタを設けることが記載されているから、引用発明において、容器から分泌物が溢れないようにするために、引用文献2に記載された技術的事項を採用し、上記、相違点1における本願発明に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(2) 相違点2について
上記相違点2について検討すると、引用文献1には、「ピストン28が、該ピストンの上死点に達したとき初めてもはや低圧の縮小を相殺することができなくなる。その場合、低圧はポンプを手動操作により再び発生させなければならない。ピストン28は、低圧調整を再び自動的に機能させるために、再び該ピストンの下死点に移動させなければならない。」との記載があり、複数回ポンプとして作動させることが記載されている。
そして、引用文献1のポンプは、ピストンを移動させることにより、下部空間の空気を、上部空間に送出している。
引用発明において、複数回ポンプとして作動させると、その度に下部空間の空気が上部空間に送出されることになるが、上部空間の空気が装置外に排気されないとすると、上部空間の圧力が高まり、ポンプとして作動しなくなるところ、たとえ引用文献1の明細書や図面に明示的な記載がなくとも、ポンプがその機能を果たすように上部空間が装置外(大気)と連通しているようになっていること、すなわち、上部空間が上部空間の周囲の大気圧を維持できるようになっていることは、当業者の技術常識である。
そうすると、引用発明において、上部空間を装置外(大気)と連通させる手段として具体的に排気ポートを備えるようにすることは、当業者の通常の創作能力の発揮により適宜採用し得る程度の設計的事項にすぎない。

(3) そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から当業者が予測できる範囲内のものである。

(4) したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲

 
審理終結日 2020-09-30 
結審通知日 2020-10-06 
審決日 2020-10-22 
出願番号 特願2015-551687(P2015-551687)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A61M)
P 1 8・ 121- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 玲子  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 莊司 英史
倉橋 紀夫
発明の名称 再チャージ式陰圧閉鎖療法  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  
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