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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1371973
審判番号 不服2019-13284  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-04 
確定日 2021-03-10 
事件の表示 特願2016-568115「マイクロニードルシステムおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日国際公開、WO2015/117938、平成29年 3月23日国内公表、特表2017-507766〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)年2月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年(平成26年)2月10日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成30年5月15日付けの拒絶理由通知に対し、同年8月24日付けで意見書及び手続補正書が提出され、次いで、同年11月28日付けの拒絶理由通知に対し、平成31年3月1日付けで意見書が提出されたが、令和1年5月31日付けで拒絶査定がされ、その後、同年10月4日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成30年8月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
マイクロニードルシステム(10)の製造方法であって、
それぞれ3つのアパーチャ(22)によって画成される複数の格子ノード(42)と、ウェブ格子ウェッジ(51)とを備えるウェブ格子(41)が、ボード(21)から作られ、
針形先端(56)を備えるウェブ格子ウェッジ(51)は、少なくとも3つの異なる方向から各アパーチャ(22)内へと突出し、
少なくとも、アパーチャ(22)内へと突出するすべてのウェブ格子ウェッジ(51)は、開口部(31)を作るためにラム(72)によって曲げられ、それらの針形先端(56)は、ウェブ格子(41)の平面に対して垂直方向に向けられる、
前記方法。」


第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由(平成30年11月28日付けで通知した理由)の概要は、本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2に記載された発明及び引用文献3?5に記載の周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1:特表2000-512529号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2013/0158482号明細書
引用文献3:米国特許出願公開第2003/0181936号明細書
引用文献4:米国特許出願公開第2013/0218083号明細書
引用文献5:米国特許出願公開第2004/0115167号明細書


第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1
引用文献1には、次の記載がある(下線は理解のため当審で付した。以下同じ。)。
1a:第2頁第1行?第6頁第3行
「【特許請求の範囲】
・・・
2.体表面の角質層に穿孔して、薬剤を導入することができ、又は、薬剤を回収することができる通路を形成するための装置(2)にして、
シート(6)であって、それを介して備えられた複数個の開口部(8)のところに有しており、該開口部(8)のうちの少なくとも一つは、それの周囲に沿って置かれ且つ前記シート(6)から下方に延出している複数個のブレード(4)を有しており、また、前記シート(6)は前記装置(2)を前記体表面に係留するためのアンカー(50、68、74、82)を有している前記シート(6)、
を有している装置。
・・・
24.体表面の角質層に穿孔するための装置(2)を作り出すための方法にして、該方法は、
シート(6)の第1の側部(49)にフォトレジストの層を適用することと;
マスクパターンを介して前記フォトレジストの層を露出させて複数個のブレード(4)を作り出すことと;
前記フォトレジスト及び前記シート(6)の露出された複数部分をエッチングして該シート(6)を介して前記複数個のブレード(4)と開口部(8)とを作り出すことと;
前記複数個のブレード(4)が前記シート(6)から下側に延在するように前記開口部(8)を介して該複数個のブレード(4)に孔をあけることと;
前記角質層を穿孔するための前記装置(2)を放出装置(10、88、98、104)又はサンプリング装置(10、88、98、104)に組み込むことと、 を有している方法。
・・・
27.請求項24の方法において、前記穴あけ工程は、
前記複数個のブレード(4)に対応する複数個の開口部(56)と前記シート(6)の開口部を有するダイス(52)に該シート(6)を置くことと;
前記シート(6)に対して実質的に垂直であるように前記開口部(56)を介して前記複数個のブレード(4)を、前記ダイス(52)の該複数個の開口部(56)及び前記シート(6)の前記複数個の開口部(8)に対応する複数個の突起(58)を有するポンチ(54)で曲げること;
を有している方法。」

1b:第9頁第5行?第10頁第5行
「発明の記載
本発明は、経皮流動を高めるのに、また、皮膚の炎症を最小にしつつ該皮膚への取り付けを改良するのに適した再現できる高生産量で低価格の装置を提供することである。一般に、該装置は、従来技術の装置よりもより効果的に皮膚に取り付けられる構造体を有している。本発明は皮膚を穿孔し、また、係留するための複数個のマイクロブレードを有している。代表的には、該ブレードは約0.4mmよりも短い長さと一層小さな厚み及び幅とを有している。・・・本発明の多くの異なる局面においては、装置は、これらに限定されるわけではないが、マイクロブレードの少なくともあるものから延在しているとがった先又はさかとげのごとき延長部を有することと、前記マイクロブレードの少なくともあるものを通って垂直に延在している開口部を有することと、前記マイクロブレードの一側を除いて装置の皮膚接触面の表面積全体を接着剤で基本的に覆うことと、複数個のマイクロブレードの残部に対して90°の角度で該複数個のマイクロブレードのうちの少なくともあるものを指向させることと、該複数個のマイクロブレードの残部に対して約1°から約89°の範囲内の角度で該複数個のマイクロブレードのうちの少なくともあるものを指向させることと、装置を体表面に対してより形がなじむようにするシートを介して複数個の第2の開口部を提供することとを含む複数個のやり方のうちのいずれかで体表面に係留されている。…」

1c:第14頁第8?10行(空行含む。以下同様。)
「一実施例において、マイクロブレード4(図5)も傾斜の付された(言い換えれば、角度の付された)前縁64を備えていて、該マイクロブレードを皮膚組織に押し入れるのに必要とされる挿入力を更に低減させている。…」

1d:第16頁下から2行?第17頁第6行
「…初期段階で、ブレード4はシート6の残部と同じ平面内にある。次いで、ポンチ54に備えられている突起58は開口部56に押し入れられ、かくして、シートの平面に対してある角度をなして(例えば、実質的に垂直であるように)下方にブレード4を曲げる。仕上げられた構造体は、装置2が皮膚に施される際、物質を通過させるための隣接した開口部8をブレード4に提供する。矩形開口部8が図に示されているが、本発明は、四角、三角、円形及び楕円形を含む、と言ってもそれらに限定されるわけではないが、いかなる形状の開口部の使用を含むものである。」

1e:第22頁第10?18行
「更なる実施例(図20)においては、開口部8内の複数個のブレードは開口部8’内の別の複数個のブレードに対して90°で配備されていて、2方向での係留が得られるようになっている。言い換えれば、開口部8に関連されたブレード(図示せず)は装置2の縁部76に対して平行に指向されており、開口部8’に関連されたブレード(図示せず)は装置の縁部78に対して平行に指向されている。各開口部8に関連されたブレードは各開口部8’に関連されたブレードに対していずれの角度でも指向させることができる。又は、各開口部内のブレードは開口部の垂直な側部に沿うことができる。…」

続いて、図面を参照しつつ上記の各記載について検討する。
ア)摘記事項1aの「シート(6)を介して前記複数個のブレード(4)と開口部(8)とを作り出す」(請求項24)、摘記事項1dの「初期段階で、ブレード4はシート6の残部と同じ平面内にある。」の各記載によれば、シート6から当該開口部8以外の部分としてブレード4を含む残部が作られるものといえるところ、図3を参照すれば、当該残部は格子状に形成されていることが看取できる。
ここで、以下、当該残部が成す格子における交差部分を「格子節」と称すれば、図3には、当該格子節のそれぞれが4つの開口部8によって画成される事項も図示されている。
そうすると、摘記事項1aの「方法」(請求項24)は、それぞれ4つの開口部8によって画成される複数の格子節と、ブレード4とを備える格子状の残部が、シート6から作られる事項、を含む方法といえる。
イ)摘記事項1aの「シート(6)を介して前記複数個のブレード(4)と開口部(8)とを作り出す」(請求項24)、摘記事項1bの「本発明は皮膚を穿孔し、また、係留するための複数個のマイクロブレードを有している。」、摘記事項1cの「マイクロブレード4(図5)も傾斜の付された(言い換えれば、角度の付された)前縁64を備え」の各記載を併せみれば、摘記事項1aの当該「ブレード(4)」は、マイクロブレード4であって、傾斜の付された前縁64を備えるものといえる。
また、「ブレード(4)」に関連し、図3には、マイクロブレード4が、幅方向Aで互いに向き合う2方向から各開口部8内へと突出する事項も図示されている。
ウ)摘記事項1aの「前記複数個のブレード(4)が前記シート(6)から下側に延在するように前記開口部(8)を介して該複数個のブレード(4)に孔をあける」(請求項24)、「請求項24の方法において、・・・シート(6)に対して実質的に垂直であるように前記開口部(56)を介して前記複数個のブレード(4)を、前記ダイス(52)の該複数個の開口部(56)及び前記シート(6)の前記複数個の開口部(8)に対応する複数個の突起(58)を有するポンチ(54)で曲げる」(請求項27)、摘記事項1dの「初期段階で、ブレード4はシート6の残部と同じ平面内にある。」の各記載及び図2、3、8の図示内容からみて、摘記事項1aの「方法」(請求項24)は、開口部内へと突出するすべてのマイクロブレード4は、孔を作るためにポンチ54によって曲げられ、それらの傾斜の付された前縁64は、シート6の格子状の残部の平面に対して実質的に垂直に曲げられる事項を、含むものといえる。

以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「体表面の角質層に穿孔するための装置2を作り出すための方法であって、
それぞれ4つの開口部8によって画成される複数の格子節と、マイクロブレード4とを備える格子状の残部が、シート6から作られ、
傾斜の付された前縁64を備えるマイクロブレード4が、幅方向Aで互いに向き合う2方向から各開口部8内へと突出し、
開口部内へと突出するすべてのマイクロブレード4は、孔を作るためにポンチ54によって曲げられ、それらの傾斜の付された前縁64は、シート6の格子状の残部の平面に対して実質的に垂直に曲げられる、
前記方法。」

2 引用文献2
引用文献2には、次の記載がある(括弧内に付記した邦訳は当審による。)。
2a:「[0005]・・・For example, in one embodiment, a method for forming an array of microneedles may include steps of providing a layer of material having opposed substantially planar sides, and etching the layer of material to define a plurality of microneedles. The microneedles may be formed from the layer such that bases of the microneedles are arranged at a periphery of a closed loop and each of the microneedles extends toward a center of the closed loop. Since the microneedles in this illustrative embodiment may point radially inwardly, the microneedles will generally not be parallel with each other (although some needles may be parallel with one or more other needles). This configuration has been found to make efficient use of material in the layer and provide a higher total number of microneedles for a given area than other arrangements, such as a rectangular array in which the microneedles are all parallel to each other. ・・・」
(・・・例えば、1つの実施形態において、マイクロニードルのアレイの製造方法は、実質的に平坦な逆向きの2面を有する材料の層を用意する工程、複数のマイクロニードルを画定するために材料の層をエッチングする工程を含むことができる。マイクロニードルの基部が閉ループの周囲に配置されるように、また、マイクロニードルのそれぞれが、閉ループの中心に向かって延在するように、マイクロニードルは該層から形成され得る。この例示的な実施形態では、マイクロニードルは、半径方向内側へと指向しているので、各マイクロニードルは、通常、互いに平行ではない(ただし、一または複数の他のマイクロニードルと平行なマイクロニードルもあり得る。)。この構成により、層中の材料が効率的に利用されること、また、全てのマイクロニードルが互いに平行である長方形のアレイのような他の配置と比べて、所定領域に設けられるマイクロニードルの総数が増大することが、見出された。・・・)

2b:「[0053] FIG. 22 shows schematic steps in an illustrative method for forming an array of microneedles arranged like that in FIGS. 20 and 21. In an initial step, a layer of material is provided, e.g., a layer of titanium or other suitable material or combination of materials. Next, a pattern is provided on one or both sides of the layer. In this embodiment, the pattern corresponds to a desired shape of the microneedles. The pattern may be formed in any suitable way, such as using a photolithographic process, a stamping process, or other. Next, the layer is etched, e.g., using a chemical etch or other suitable process, to form the layer into a desired arrangement. Etching may be performed from one or both sides of the layer. In this embodiment, a plurality of microneedles are formed from the layer with each microneedle having its base arranged in a periphery of a closed loop (in this case a circle) and with the penetrating portions 2 of the needles 1 extending toward a center of the closed loop. As can be seen in the third step from the left in FIG. 22, the microneedles 1 each “point” toward at least one other microneedle in the array, and the microneedles are generally not parallel with each other (although some microneedles may be parallel to one or more microneedles). ・・・ Lastly, the penetrating portions 2 of the microneedles 1 may be bent upwardly from the plane of the base and closed loop so that the penetrating portions 2 extend at an angle from the plane. In this embodiment, the penetrating portions 2 are arranged at a 90 degree angle to the plane, but other angles may be used. ・・・」
(図22は、図20及び21のように配置されたマイクロニードルのアレイを製造するための例示的な方法の概略工程を示す図である。最初の工程において、材料の層、例えば、チタンまたは他の適切な材料の層又は複数材料の組合せからなる層が用意される。次に、層の片面または両面上にパターンが設けられる。本実施形態において、このパターンは、マイクロニードルの所望の形状に対応する。パターンは、フォトリソグラフィ工程、打ち抜き工程、またはその他の工程などの任意の好適な手法で形成することができる。次に、例えば、化学的エッチングまたはその他の適切なプロセスを用いて、層はエッチングされ、所望のニードル配置が形成される。エッチングは、層の片面または両面から行うことができる。この実施形態では、複数のマイクロニードルが層から作られ、各マイクロニードルの基部は、閉ループ(この場合は円)の周囲に配置され、ニードル1の穿刺部2は、閉ループの中心に向かって延在する。図22の左から3番目のステップに示されるように、各マイクロニードル1は、アレイ内の少なくとも1つの他のマイクロニードルの方へ指向しており、各マイクロニードルは、通常、互いに平行ではない(ただし、一または複数の他のマイクロニードルと平行なマイクロニードルもあり得る。)。・・・最後に、穿刺部2が閉ループの平面からある角度で延在するように、マイクロニードル1の穿刺部2を該平面から上方に曲げることができる。本実施形態では、穿刺部2は、該平面に対し90度の角度で配置されているが、他の角度を用いてもよい。・・・)

2c:Fig.22の左から3番目の図には、3以上のマイクロニードルが円形の閉ループのループ内の中心に向かって延在する事項が図示されている。

以上の記載によれば、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。
「マイクロニードルのアレイの製造方法であって、
複数のマイクロニードルが層から作られ、
各マイクロニードルの基部は、閉ループの周囲に配置され、3以上のマイクロニードルが円形の閉ループのループ内の中心に向かって延在する、
前記方法。」


第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア)引用発明の「体表面の角質層に穿孔するための装置2」は、マイクロブレード4を用いて穿孔するものであるから、本願発明の「マイクロニードルシステム(10)」に相当する。同様に、引用発明の「体表面の角質層に穿孔するための装置2を作り出すための方法」は、本願発明の「マイクロニードルシステム(10)の製造方法」に相当する。
イ)引用発明の「開口部8」は、用語の意味、機能等から見て、本願発明の「アパーチャ(22)」に相当し、以下同様に、「格子節」は「格子ノード(42)」に、「マイクロブレード4」は「ウェブ格子ウェッジ(51)」に、「格子状の残部」は「ウェブ格子(41)」に、「シート6」は「ボード(21)」に、「傾斜の付された前縁64」は「針形先端(56)」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「4つの開口部8によって画成される」事項は、“複数のアパーチャによって画成される”点で、本願発明の「3つのアパーチャ(22)によって画成される」事項と共通し、引用発明の「幅方向Aで互いに向き合う2方向から各開口部8内へと突出し」なる事項は、“複数の異なる方向から各アパーチャ(22)内へと突出し”という点で、本願発明の「少なくとも3つの異なる方向から各アパーチャ(22)内へと突出し」なる事項と共通する。
ウ)引用発明の「孔」、「ポンチ54」、「シート6の格子状の残部の平面に対して実質的に垂直に曲げられる」は、それぞれ本願発明の「開口部(31)」、「ラム(72)」、「ウェブ格子(41)の平面に対して垂直方向に向けられる」に相当する。

以上によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
マイクロニードルシステムの製造方法であって、
それぞれ複数のアパーチャによって画成される複数の格子ノードと、ウェブ格子ウェッジとを備えるウェブ格子が、ボードから作られ、
針形先端を備えるウェブ格子ウェッジは、複数の異なる方向から各アパーチャ内へと突出し、
少なくとも、アパーチャ内へと突出するすべてのウェブ格子ウェッジは、開口部を作るためにラムによって曲げられ、それらの針形先端は、ウェブ格子の平面に対して垂直方向に向けられる、
前記方法。

(相違点1)
複数の格子ノードのそれぞれが、本願発明では、「3つのアパーチャによって画成される」のに対し、引用発明では、4つのアパーチャによって画成される点。

(相違点2)
ウェブ格子ウェッジがアパーチャ内へと突出する方向に関し、本願発明では、「ウェブ格子ウェッジは、少なくとも3つの異なる方向から各アパーチャ内へと突出」するのに対し、引用発明では、ウェブ格子ウェッジは、幅方向Aで互いに向き合う2方向から各アパーチャ内へと突出する点。


第6 判断
1 相違点1について
それぞれの格子ノードがいくつのアパーチャにより画成されるかは、ボードに対する各アパーチャの配列態様に専ら依存する事項であるところ、ボードに対し、どのようにアパーチャを配置するかは、必要とされるウェブ格子ウェッジの分布や密度等に応じて適宜に決定される設計上の選択事項にすぎない。
加えて、それぞれの格子ノードが3つのアパーチャによって画成されるように、ボードにアパーチャを千鳥状に配置することは、マイクロニードルに関する技術分野における従来周知の技術事項にすぎない(必要ならば、上記引用文献3のFIG.1、引用文献4のFIG.2、引用文献5のFIG.1等を参照。)。
そうすると、引用発明におけるアパーチャの配置に当たり、上記周知の技術を採用して相違点1における本願発明に係る特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
引用文献2には、上記引用文献2記載の技術が記載されているところ、同技術では、「各マイクロニードルの基部は、閉ループの周囲に配置され、3以上のマイクロニードルが円形の閉ループのループ内の中心に向かって延在する」というのであるから、当該「3以上のマイクロニードル」のそれぞれが、3つの異なる方向から閉ループのループ内へと突出していることは明らかである。
また、引用文献2記載の技術における「マイクロニードルのアレイ」、「マイクロニードル」、「層」、「閉ループのループ内」は、それぞれ、“マイクロニードルシステム”、“ウェブ格子ウェッジ”、“ボード”、“アパーチャ”と言い換えることができることから、引用文献2記載の技術は、“マイクロニードルシステムの製造方法であって、ウェブ格子ウェッジが、ボードから作られ、ウェブ格子ウェッジは、少なくとも3つの異なる方向からアパーチャ内へと突出する、方法”なる事項を具備する技術といえる。
そして、引用文献2記載の技術により、「層中の材料が効率的に利用されること、また、全てのマイクロニードルが互いに平行である長方形のアレイのような他の配置と比べて、所定領域に設けられるマイクロニードルの総数が増大すること」(摘記事項2a)が期待できるものである。
他方、引用文献1における「開口部(8)のうちの少なくとも一つは、それの周囲に沿って置かれ且つ前記シート(6)から下方に延出している複数個のブレード(4)を有しており、」(摘記事項1aの請求項2)、「矩形開口部8が図に示されているが、本発明は、四角、三角、円形及び楕円形を含む」(摘記事項1d)の各記載によれば、引用文献1には、円形開口部の周囲に沿って複数のブレード(ウェブ格子ウェッジ)を配置することも示唆されている。
そうすると、引用発明において、上記の示唆やマイクロブレード(ウェブ格子ウェッジ)の効率的な形成を踏まえ、開口部(アパーチャ)の形状を円形とした上で、ウェブ格子ウェッジの突出方向に関する引用文献2記載の技術を採用して、「ウェブ格子ウェッジは、少なくとも3つの異なる方向から各アパーチャ内へと突出」するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

3 効果について
本願発明の効果も、引用発明、引用文献2記載の技術及び上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものとはいえない。
なお、本願発明の効果に関し、請求人は、審判請求書において本願明細書【0030】の記載を示しつつ「ウェッジを屈曲させることにより生じる曲げ線が互いに平行にならないようにされていることにより、使用中に針が反ったり曲がったりする危険がないという、格別の効果が得られる」との主張をするが、ウェブ格子ウェッジの曲げ線が互いに平行でない点は、引用文献2記載の技術も具備するところであるから、「使用中に針が反ったり曲がったりする危険がない」という効果は、引用文献2記載の技術から当然に期待できる効果にすぎない。
さらに付言すると、引用文献1における「複数個のマイクロブレードの残部に対して90°の角度で該複数個のマイクロブレードのうちの少なくともあるものを指向させることと、該複数個のマイクロブレードの残部に対して約1°から約89°の範囲内の角度で該複数個のマイクロブレードのうちの少なくともあるものを指向させること」(摘記事項1b)、「各開口部8に関連されたブレードは各開口部8’に関連されたブレードに対していずれの角度でも指向させることができる。又は、各開口部内のブレードは開口部の垂直な側部に沿うことができる。」(摘記事項1e)の各記載によれば、引用文献1には、ウェブ格子ウェッジの曲げ線を、互いに平行でないように配置して、「2方向での係留が得られる」(摘記事項1e)事項も記載されており、当該事項からも「使用中に針が反ったり曲がったりする危険がない」という上記の効果は、当業者が予測できる程度のものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び上記周知の技術に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
別掲
 
審理終結日 2020-09-29 
結審通知日 2020-10-06 
審決日 2020-10-26 
出願番号 特願2016-568115(P2016-568115)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 直希小原 一郎久島 弘太郎  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 栗山 卓也
関谷 一夫
発明の名称 マイクロニードルシステムおよびその製造方法  
代理人 結田 純次  
代理人 竹林 則幸  

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