• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1371980
審判番号 不服2020-651  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-17 
確定日 2021-03-10 
事件の表示 特願2017-524394「PUCCH上でのエレベーションPMI報告」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日国際公開、WO2016/074542、平成29年12月14日国内公表、特表2017-537541〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2015年(平成27年)9月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年11月10日 中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 7月11日 :手続補正書の提出
平成30年 9月 5日 :手続補正書の提出
平成31年 4月23日付け :拒絶理由通知書
令和 1年 8月 7日 :意見書の提出
令和 1年 9月 6日付け :拒絶査定
令和 2年 1月17日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1-15に係る発明は、令和2年1月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
ユーザ機器(UE)におけるワイヤレス通信の方法であって、
基地局から基準信号(RS)を受信することと、
前記RSに基づいて、前記基地局の第1のプリコーディング構成を示す第1のチャネル状態情報(CSI)インジケータを決定すること、前記第1のプリコーディング構成は、信号電力を改善することまたはエレベーション次元における干渉を低減することのうちの少なくとも1つを行うように最適化され、前記第1のCSIインジケータは、少なくともエレベーションプリコーディング行列インジケータ(E-PMI)を含む、と、
前記RSに基づいて、前記基地局の第2のプリコーディング構成を示す第2のCSIインジケータを決定すること、前記第2のプリコーディング構成は、前記信号電力を改善することまたはアジマス次元における干渉を低減することのうちの少なくとも1つを行うように最適化され、前記第2のCSIインジケータは、少なくともアジマスプリコーディング行列インジケータ(A-PMI)を含む、と、
前記基地局に、少なくとも前記第1のCSIインジケータおよび前記第2のCSIインジケータを含む第1のCSI報告を送信することと
を備える、方法。」

なお、令和2年1月17日付け手続補正による特許請求の範囲の補正は、請求項15について、「・・・コンピュータ実行可能コードを記憶するコンピュータ可読媒体。」とあったものを、「・・・コンピュータ実行可能コードを記憶する、コンピュータ可読媒体。」と補正するものであり、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものである。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」、「2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、請求項1に対して下記引用文献1が引用されている

引用文献1.国際公開第2014/142514号

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用発明等

原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2014/142514号(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「


(当審訳:
[1]以下の説明は、無線通信システムに関し、特に、チャネル状態情報を報告する方法及び装置に関する。)

(イ)「

(中略)


(当審訳:
[108]移動通信システムにおいて参照信号(RS)はその目的によって2種類に大別できる。その一つは、チャネル情報の取得のために用いられるRSであり、もう一つは、データ復調のために用いられるRSである。前者は、端末が下りチャネル情報を取得するためのRSであるため、広帯域に送信されなければならず、特定サブフレームで下りデータを受信しない端末であっても、当該RSを受信及び測定可能でなければならない。このようなRSは、ハンドオーバーなどのための測定などのためにも用いられる。後者は、基地局が下りデータを送る時、当該リソースで併せて送るRSであり、端末は当該RSを受信することによってチャネル推定ができ、データを復調することができる。このようなRSは、データの送信される領域で送信されなければならない。
(中略)
[115]LTE-Aシステムで新しく導入されるRSは、大きく、2種類に分類できる。その一つは、送信ランク、変調及びコーディング技法(Modulation and Coding Scheme;MCS)、プリコーディング行列インデックス(Precoding Matrix Index;PMI)などの選択のためのチャネル測定目的のRSであるチャネル状態情報-参照信号(Channel State Information RS;CSI-RS)であり、もう一つは、最大8個の送信アンテナを通して送信されるデータを復調するための目的のRSである復調-参照信号(DeModulation RS;DM RS)である。
)

(ウ)「



(当審訳:
[162]端末は、CRS及び/又はCSI-RSを用いて下りリンクチャネルに対する推定及び/又は測定を行うことができる。端末によって基地局にフィードバックされるチャネル情報(CSI)は、ランク指示子(RI)、プリコーディング行列インデックス(PMI)及びチャネル品質指示子(CQI)を含むことができる。)

(エ)「



(当審訳:
[478]発展した3GPP LTEシステム(例えば、3GPP LTEリリース-11以降)では、AASベースの2-次元アレイアンテナ構成を仮定したMIMOシステムに対する潜在的な利得を最大化するための議論が進行中である。AASベースの2-次元アレイアンテナ構成では、垂直ドメインビームフォーミングを可変的に及び/又はUE-特定に行うことができるという点が、既存のシステムと区別される特徴である。このような垂直ビームフォーミングを適用するにあたり、既存のシステムと区別される点は、UEが自身に最適の(又は、好む)垂直ドメインビーム方向を選択して基地局に報告するということである。以下では、垂直ビームフォーミングと水平ビームフォーミングのためのPMIを報告する際にさらに考慮すべきUE動作について提案する。
[479]本発明では、PUCCHを用いたCSI報告の場合、垂直ビームフォーミングのためのPMI(V-PMI)が報告されるか否かを示す特定指示子(又は、フラグ指示子)を定義する。この特定指示子を、V-PMI報告タイプ指示子(Reporting Type Indicator;RTI)と呼ぶ。V-PMI RTIは、UEがPUCCHを介して送信するCSIに含まれてもよい。また、V-PMI RTIの値によって、UEはV-PMI報告を行っても行わなくてもよい(又は、UEがV-PMI報告を行うか行わないかによって、V-PMI RTIの値が決定されると表現することもできる。)。
[480]仮に、V-PMI RTIが第1値(又は、Onを示す値)に設定されると、V-PMI RTIの報告後にV-PMIを報告することができる。この場合、V-PMIの報告後に、H-PMIを報告することができる。又は、V-PMI及びH-PMIを同じ時点で報告することもできる。又は、V-PMIとH-PMIの一部を同じ時点で報告し、その後、H-PMIの残りの一部を報告することもできる(例えば、V-PMI及びH-PMI1を同時に報告した後、H-PMI_(2)及びCQIを同時に報告することもできる。))

上記(ア)?(エ)の記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

a 上記「(イ)段落[108]、[115]」には、「移動通信システムにおいて参照信号(RS)はその目的によって2種類に大別できる。・・・基地局が下りデータを送る時、当該リソースで併せて送るRSであり、端末は当該RSを受信することによってチャネル推定ができ、データを復調することができる。」との記載、及び「送信ランク、変調及びコーディング技法(Modulation and Coding Scheme;MCS)、プリコーディング行列インデックス(Precoding Matrix Index;PMI)などの選択のためのチャネル測定目的のRSであるチャネル状態情報-参照信号(Channel State Information RS;CSI-RS)であり、」との記載がある。
そうすると、引用例には、「基地局が下りデータを送る時、参照信号(RS)は送られ、端末は参照信号(RS)を受信する」こと、「チャネル状態情報-参照信号(Channel State Information RS;CSI-RS)は、プリコーディング行列インデックス(Precoding Matrix Index;PMI)の選択のためのチャネル測定目的のRSである」ことが記載されているといえる。

b 上記「(ウ)段落[162]」には、「端末は、CRS及び/又はCSI-RSを用いて下りリンクチャネルに対する推定及び/又は測定を行うことができる。端末によって基地局にフィードバックされるチャネル情報(CSI)は、ランク指示子(RI)、プリコーディング行列インデックス(PMI)及びチャネル品質指示子(CQI)を含むことができる。」との記載がある。
そうすると、引用例には「端末はPMIを含むCSIを基地局にフィードバックする」ことが記載されているといえる。
また、上記「(エ)段落[478]-[480]」には、「既存のシステムと区別される点は、UEが自身に最適の(又は、好む)垂直ドメインビーム方向を選択して基地局に報告するということである。」との記載、「垂直ビームフォーミングと水平ビームフォーミングのためのPMIを報告する際にさらに考慮すべきUE動作について提案する。」との記載、「PUCCHを用いたCSI報告の場合、垂直ビームフォーミングのためのPMI(V-PMI)が報告されるか否かを示す特定指示子(又は、フラグ指示子)を定義する。この特定指示子を、V-PMI報告タイプ指示子(Reporting Type Indicator;RTI)と呼ぶ。V-PMI RTIは、UEがPUCCHを介して送信するCSIに含まれてもよい。」との記載、「V-PMI RTIが第1値(又は、Onを示す値)に設定されると、V-PMI RTIの報告後にV-PMIを報告することができる。この場合、V-PMIの報告後に、H-PMIを報告することができる。又は、V-PMI及びH-PMIを同じ時点で報告することもできる。」との記載がある。ここで、「垂直ビームフォーミングと水平ビームフォーミングのためのPMIを報告する際にさらに考慮すべきUE動作について提案する。」及び、「垂直ビームフォーミングのためのPMI(V-PMI)」との記載から、H-PMIが「水平ビームフォーミングのためのPMI」であることは明らかである。また、「PUCCHを用いたCSI報告の場合、垂直ビームフォーミングのためのPMI(V-PMI)が報告される」のは基地局であるから、「端末は、PUCCHを用いたCSI報告の場合、垂直ビームフォーミングのためのPMIを報告する」ものであるといえる。
そうすると、引用例には「端末(UE)が自身に最適の(又は、好む)垂直ドメインビーム方向を選択して基地局に報告する」こと、「端末は、PUCCHを用いたCSI報告の場合、垂直ビームフォーミングのためのPMI(V-PMI)を報告する」こと、「端末は、V-PMI及びH-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)を同じ時点で報告する」ことが記載されているといえる。

c 上記「(ア)段落[1]」には「無線通信システムに関し、特に、チャネル状態情報を報告する方法及び装置に関する。」との記載がある。
そして、上記「a」「b」にも摘記したとおり、「基地局が下りデータを送る時、端末は参照信号(RS)を受信することによってチャネル推定をする」ものであり、「端末はPMIを含むCSIを基地局にフィードバックする」もの、「端末は、PUCCHを用いたCSI報告の場合、垂直ビームフォーミングのためのPMI(V-PMI)が報告される」ものであって、端末は「V-PMI及びH-PMIを同じ時点で報告する」ものであるから、「端末がCSIを報告するものである」といえ、上記「(イ)段落[115]」、「(エ)段落[478]」によれば、「無線システム」には、「LTEシステム」が含まれるものであるから、引用発明は、「無線通信システム(LTEシステム)に関し、端末(UE)がチャネル状態情報(CSI)を報告する方法」が記載されているといえる。

以上を総合すると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 無線通信システム(LTEシステム)に関し、端末(UE)がチャネル状態情報(CSI)を報告する方法であって、
基地局が下りデータを送る時、参照信号(RS)は送られ、端末は参照信号(RS)を受信することと、
チャネル状態情報-参照信号(Channel State Information RS;CSI-RS)は、プリコーディング行列インデックス(Precoding Matrix Index;PMI)の選択のためのチャネル測定目的のRSであり、
端末はPMIを含むCSIを基地局にフィードバックすることと、
端末(UE)が自身に最適の(又は、好む)垂直ドメインビーム方向を選択して基地局に報告することと、
端末は、PUCCHを用いたCSI報告の場合、垂直ビームフォーミングのためのPMI(V-PMI)を報告することと、
端末は、V-PMI及びH-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)を同じ時点で報告する、
方法。」

第5 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

(ア)引用発明の「端末(UE)」は、本願発明の「ユーザ端末(UE)」に相当する。そして、引用発明の「端末(UE)がチャネル状態情報(CSI)を報告する方法」は、「無線通信システム(LTEシステム)」に関するもの、すなわちワイヤレス通信に関するものであるから、「端末(UE)がチャネル状態情報(CSI)を報告する方法」は「端末(UE)におけるワイヤレス通信の方法」であるといえる。
そうすると、引用発明の「無線通信システム(LTEシステム)に関し、端末(UE)がチャネル状態情報(CSI)を報告する方法」は、本願発明と「ユーザ端末(UE)におけるワイヤレス通信の方法」という点で一致する。

(イ)引用発明の「参照信号(RS)」は、少なくとも「LTEシステム」で用いられるものであり、LTEシステムにおいて、RSはReference signalの略であるといえるから、基準信号であるともいえる。
そうすると、引用発明の「参照信号(RS)」は、本願発明の「基準信号(RS)」に相当し、引用発明の「基地局が下りデータを送る時、参照信号(RS)は送られ、端末は参照信号(RS)を受信する」ことは、本願発明と「基地局から基準信号(RS)を受信する」という点で一致する。

(ウ)本願発明の「基地局の第1のプリコーディング構成を示す第1のチャネル状態情報(CSI)インジケータ」、「基地局の第2のプリコーディング構成を示す第2のチャネル状態情報(CSI)インジケータ」は、ともに基準信号(RS)に基づいて決定されるものである。そして、「第1のチャネル状態情報(CSI)インジケータ」は、少なくともエレベーションプリコーディング行列インジケータ(E-PMI)を含むものであり、「第2のチャネル状態情報(CSI)インジケータ」は、少なくともアジマスプリコーディング行列インジケータ(A-PMI)を含むものであるから、「「エレベーションプリコーディング行列インジケータ(E-PMI)」及び「アジマスプリコーディング行列インジケータ(A-PMI)」は、それぞれ基準信号(RS)に基づいて決定される」ものといえ、「エレベーションプリコーディング行列インジケータ(E-PMI)」を決定することは、「基地局の第1のプリコーディング構成を示す第1のチャネル状態情報(CSI)インジケータ」を決定すること、「アジマスプリコーディング行列インジケータ(A-PMI)」を決定することは、「基地局の第2のプリコーディング構成を示す第2のチャネル状態情報(CSI)インジケータ」を決定することであるといえる。そして、「エレベーション」とはelevation、すなわち仰角を表し、「アジマス」とはazimuth、すなわち方位を表すものである。

一方、引用発明の「V-PMI(垂直ビームフォーミングのためのPMI)」及び「H-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)」は、プリコーディング行列インデックス(PMI)に含まれるものといえる。そして、引用発明の「チャネル状態情報-参照信号(CSI-RS)」は、プリコーディング行列インデックス(PMI)の選択のための参照信号(RS)であるから、CSI-RSは、V-PMI(垂直ビームフォーミングのためのPMI)及びH-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)の選択のための参照信号(RS)であるといえ、「V-PMI(垂直ビームフォーミングのためのPMI)及びH-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)は参照信号(RS)に基づいて決定されている」といえる。また、V-PMI(垂直ビームフォーミングのためのPMI)は、垂直方向のためのPMIであるから、仰角方向のためのPMI、すなわち「エレベーションプリコーディング行列インジケータ(E-PMI)」に相当し、H-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)は、水平方向のためのPMIであるから、方位方向のためのPMI、すなわち「アジマスプリコーディング行列インジケータ(A-PMI)」に相当するといえる。

そして、引用発明のプリコーディング行列インジケータはプリコーディング行列を示しており、引用発明の「プリコーディング行列インジケータ」の示すプリコーディング行列は、本願発明の「プリコーディング構成」に含まれる。
そうすると、上記のとおり、引用発明の「V-PMI(垂直ビームフォーミングのためのPMI)」及び「H-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)」は、基準信号(RS)に基づいて決定されるものであり、「V-PMI(垂直ビームフォーミングのためのPMI)」は、「エレベーションプリコーディング行列インジケータ(E-PMI)」といえ、「H-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)」は、「アジマスプリコーディング行列インジケータ(A-PMI)」といえるものであって、上記のとおり、「エレベーションプリコーディング行列インジケータ(E-PMI)」を決定することは、「基地局の第1のプリコーディング行列を示す第1のチャネル状態情報(CSI)インジケータ」を決定すること、「アジマスプリコーディング行列インジケータ(A-PMI)」を決定することは、「基地局の第2のプリコーディング行列を示す第2のチャネル状態情報(CSI)インジケータ」を決定することであるといえるから、引用発明の「V-PMI(垂直ビームフォーミングのためのPMI)」を決定することは、本願発明の「基地局の第1のプリコーディング構成を示す第1のチャネル状態情報(CSI)インジケータ」を決定すること、また、引用発明の「H-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)」を決定することは、本願発明の「基地局の第2のプリコーディング構成を示す第2のチャネル状態情報(CSI)インジケータ」を決定することに、それぞれ含まれる。
また、引用発明は、「端末はPMIを含むCSIを基地局にフォードバックする」、「端末(UE)が・・・垂直ドメインビーム方向を選択して基地局に報告する」、「端末は、PUCCHを用いたCSI報告の場合、垂直ビームフォーミングのためのPMI(V-PMI)を報告する」、「端末は、V-PMI及びH-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)を同じ時点で報告する」のであるから、引用発明の「端末は、基地局にCSI報告を送信する」ものといえ、本願発明の「前記基地局に、少なくとも前記第1のCSIインジケータおよび前記第2のCSIインジケータを含む第1のCSI報告を送信する」ことと、引用発明は「端末は、基地局にCSI報告を送信する」点で共通する。

そして、以上をまとめると、本願発明の「前記RSに基づいて、前記基地局の第1のプリコーディング構成を示す第1のチャネル状態情報(CSI)インジケータを決定すること、前記第1のプリコーディング構成は、信号電力を改善することまたはエレベーション次元における干渉を低減することのうちの少なくとも1つを行うように最適化され、前記第1のCSIインジケータは、少なくともエレベーションプリコーディング行列インジケータ(E-PMI)を含む、と、前記RSに基づいて、前記基地局の第2のプリコーディング構成を示す第2のCSIインジケータを決定すること、前記第2のプリコーディング構成は、前記信号電力を改善することまたはアジマス次元における干渉を低減することのうちの少なくとも1つを行うように最適化され、前記第2のCSIインジケータは、少なくともアジマスプリコーディング行列インジケータ(A-PMI)を含む、と、前記基地局に、少なくとも前記第1のCSIインジケータおよび前記第2のCSIインジケータを含む第1のCSI報告を送信することと」と、
引用発明の「チャネル状態情報-参照信号(Channel State Information RS;CSI-RS)は、プリコーディング行列インデックス(Precoding Matrix Index;PMI)の選択のためのチャネル測定目的のRSであり、端末はPMIを含むCSIを基地局にフィードバックすることと、端末(UE)が自身に最適の(又は、好む)垂直ドメインビーム方向を選択して基地局に報告することと、端末は、PUCCHを用いたCSI報告の場合、垂直ビームフォーミングのためのPMI(V-PMI)を報告することと、端末は、V-PMI及びH-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)を同じ時点で報告する、」は、
「前記RSに基づいて、前記基地局の第1のプリコーディング構成を示す第1のチャネル状態情報(CSI)インジケータを決定すること、前記第1のCSIインジケータは、少なくともエレベーションプリコーディング行列インジケータ(E-PMI)を含む、と、前記RSに基づいて、前記基地局の第2のプリコーディング構成を示す第2のCSIインジケータを決定すること、前記第2のCSIインジケータは、少なくともアジマスプリコーディング行列インジケータ(A-PMI)を含む、と、前記基地局に、CSI報告を送信する」点において共通する。

以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)

「 ユーザ機器(UE)におけるワイヤレス通信の方法であって、
基地局から基準信号(RS)を受信することと、
前記RSに基づいて、前記基地局の第1のプリコーディング構成を示す第1のチャネル状態情報(CSI)インジケータを決定すること、前記第1のCSIインジケータは、少なくともエレベーションプリコーディング行列インジケータ(E-PMI)を含む、と、
前記RSに基づいて、前記基地局の第2のプリコーディング構成を示す第2のCSIインジケータを決定すること、前記第2のCSIインジケータは、少なくともアジマスプリコーディング行列インジケータ(A-PMI)を含む、と、
前記基地局に、CSI報告を送信することと
を備える、方法。」

(相違点1)
「第1のプリコーディング構成」に関し、本願発明は、「信号電力を改善することまたはエレベーション次元における干渉を低減することのうちの少なくとも1つを行うように最適化され」るのに対し、引用発明では、プリコーディング行列を示すV-PMIを決定しているが、プリコーディング行列について当該事項が特定されていない点。

(相違点2)
「第2のプリコーディング構成」に関し、本願発明は、「信号電力を改善することまたはアジマス次元における干渉を低減することのうちの少なくとも1つを行うように最適化され」るのに対し、引用発明では、プリコーディング行列を示すH-PMIを決定しているが、プリコーディング行列について当該事項が特定されていない点。

(相違点3)
「CSI報告」に関し、本願発明は、CSI報告が「少なくとも前記第1のCSIインジケータおよび前記第2のCSIインジケータを含む」のに対し、引用発明では、当該事項が特定されていない点。

以下、上記各相違点について検討する。

(相違点1、2について)
引用発明の「V-PMI」、「H-PMI」は、上記「第5 (ウ)」で述べたとおり、プリコーディング行列インデックス(PMI)に含まれるものである。そしてPMIが、プリコーディング行列を決定するためのインデックスであり、PMIが示す第1のプリコーディング構成であるプリコーディング行列は、干渉を抑制するためのものであること、すなわち干渉の低減を図り送信の最適化をするためのものであることは、当該技術分野において技術常識であるから、引用発明においても、垂直ビームフォーミング及び水平ビームフォーミングのためのPMIで示されたプリコーディング行列は、エレベーション次元及びアジマス次元における干渉の低減を図り最適化されたものであることは自明である。
よって、相違点1、2は実質的な相違ではない。

(相違点3について)
CSI報告にPMIが含まれることは、上記「第4 1(ウ)」の摘記にもあるように、当該技術分野において技術常識である。そして、引用発明は、「V-PMI及びH-PMI(水平ビームフォーミングのためのPMI)を同じ時点で報告する」ものであり、同じ時点で報告する情報を1つにまとめて報告することは一般的に行われている手法であるから,引用発明において、同じ時点で報告する「V-PMI」と「H-PMI」を、1つのCSI報告に含まれるようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。
よって、相違点3は、当業者が容易になし得る事項である。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明に基づいて当業者が予測できる範囲のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-09-30 
結審通知日 2020-10-06 
審決日 2020-10-22 
出願番号 特願2017-524394(P2017-524394)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大濱 宏之  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 本郷 彰
相澤 祐介
発明の名称 PUCCH上でのエレベーションPMI報告  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡田 貴志  
代理人 井関 守三  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ