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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1372019
審判番号 不服2020-9816  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-13 
確定日 2021-03-30 
事件の表示 特願2018-192782号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月14日出願公開、特開2019- 22728号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成25年12月25日に出願した特願2013-267686号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年12月3日に新たな特許出願(特願2015-236185号)と、さらにその一部を平成30年10月11日に新たな特許出願(特願2018-192782号)としたものであって、令和1年8月23日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年11月1日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和2年4月3日付け(送達日:同年4月15日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年7月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

理由1(新規性)本願の請求項1に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性)本願の請求項1に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2004-194824号公報

第3 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(A、B等の記号は、本願発明1を分説するために合議体で付した)。

「【請求項1】
A 抽選条件の成立に起因して、遊技者に付与する特典の有無又は大小を抽選する特典抽選手段と、
B 前記特典抽選手段による抽選結果を報知する特典報知手段と、
C を備えた遊技機において、
(B) 前記特典報知手段は、
B-1 予め定められた特定演出要素が、予め定められた阻害要素との間に配置される目標要素を手に入れるという目標の達成のために前記阻害要素と競い合う特定演出を実行する特定演出実行手段と、
B-2 前記特定演出の途中で、前記阻害要素の数が減少する阻害緩和演出を実行する阻害緩和演出実行手段と、
B-3 前記特定演出の後に、前記特定演出要素の目標に対する達成度により前記特典抽選手段の抽選結果を遊技者に認識させる結果演出を実行する結果演出実行手段と、
(C) を備えている遊技機。
【請求項2】
前記特典報知手段は、前記阻害緩和演出での前記阻害要素の数の減少に伴って、前記特定演出において前記目標要素を前記特定演出要素側に移動させるように構成されている、
請求項1に記載の遊技機。」

第4 引用発明
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、原出願の出願(出願日:平成25年12月25日)前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-194824号公報(平成16年7月15日出願公開、以下「引用文献1」という。)には、パチンコ遊技機に関し、図面と共に次の事項が記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様)。

(1)「【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をいわゆる第1種パチンコ遊技機に適用した実施形態例を説明する。
パチンコ遊技機1は、図1に示されるように、遊技島設備(図示省略)に固定される長方形状の外枠2と、この外枠2の前面開口部分を覆う遊技機本体3とからなる。
・・・略・・・
【0024】
また、図2に示されるように、パチンコ遊技機1の遊技盤7には、その盤面12上にほぼ円形を呈する誘導レール13によって遊技領域14が区画形成されており、この遊技領域14のほぼ中央にセンターケース15が配設されている。そして、このセンターケース15には、液晶表示器、CRT表示器等からなる図柄表示装置16が組付けられており、さらにこの図柄表示装置16には図柄表示領域17が形成されている。
・・・略・・・
【0030】
また、センターケース15の直下位置には、内部を特別図柄始動領域20とする普通電動役物18が配設されている。この普通電動役物18は、開閉翼片を備え、普通図柄X,Yの図柄内容が、上述の当り態様の場合に、この開閉翼片が所定時間拡開する。このように、普通電動役物18が拡開作動すると、開閉翼片により入賞口を兼ねた入り口の開口度が変化し、遊技球が特別図柄始動領域20を通過し易い(入賞し易い)状態となる。なお、この開閉翼片の拡開作動は、普通電動役物ソレノイド(図3参照)により作動する。また、この普通電動役物18内には、光電スイッチ、リミットスイッチ等の特別図柄始動スイッチS1(図3参照)が備えられ、特別図柄始動領域20が特別図柄始動スイッチS1を介して遊技球通過を検知すると、これを契機として、図柄表示装置16の図柄表示領域17で表示される特別図柄A,B,Cが変動開始する。なお、この特別図柄始動領域20により、本発明にかかる図柄始動領域が構成される。
・・・略・・・
【0032】
図3は、本発明にかかるパチンコ遊技機1の遊技作動を制御する制御回路を示すものである。
主制御基板60には、パチンコ遊技機1の遊技作動等を制御するための基板回路が設けられており、この基板回路上には主制御用中央制御装置CPUが配設されている。この主制御用中央制御装置CPUは、遊技に関する統括的な制御を処理実行するものであって、この主制御用中央制御装置CPUには、演算処理に用いる動作プログラムを格納する記憶装置ROMと、必要なデータを随時読み書きできる記憶装置RAMとが、データを読み書きするアドレスを指定する情報を一方的に伝えるアドレスバス(図示省略)と、データのやり取りを行うデータバス(図示省略)を介して接続され、主制御基板60の基板回路を構成している。この記憶装置ROMには、制御プログラムや、各種乱数テーブル等の固定データが格納されている。ここで、この乱数テーブルとしては、大当り特別乱数テーブル、大当り図柄乱数テーブル、ハズレ図柄乱数テーブル、リーチ乱数テーブル、リーチ図柄乱数テーブル、リーチ態様乱数テーブル、当り普通乱数テーブル、ハズレ普通図柄乱数テ
ーブル等があり、所定の要件が充足されると主制御用中央制御装置CPUが各乱数テーブルから乱数値を取得する。なお、本実施形態例にあっては、その他有利遊技行程選択乱数テーブルも格納されている。
・・・略・・・
【0041】
また、本実施形態例にあっては、0?2の3コマからなる有利遊技行程選択乱数テーブルが備えられている。かかる有利遊技行程選択乱数テーブルからは、有利遊技行程選択乱数値Gを取得する。この有利遊技行程選択乱数値Gは、有利遊技行程を実行するための有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)を選定するものである。なお、この有利遊技行程の詳細については後述する。
・・・略・・・
【0046】
上記の図柄表示制御基板62には、図柄表示装置16を駆動し、図柄表示装置16の図柄表示領域17上で表出される図柄表示態様を制御するための基板回路が設けられている。この基板回路は、図柄表示態様を制御処理する図柄制御用中央制御装置CPUに、特別図柄変動パターン、普通図柄変動パターン、さらに本発明にかかる利益配分率演出行程パターン等に関する固定データが格納されている記憶装置ROMと、必要なデータを読み書きできる記憶装置RAMと、入力ポート及び出力ポートとが接続されて構成されている。なお、前記の利益配分率演出行程パターン等は、例えばキャラクタ画像による一連の演出パターンをいい、遊技進行中に発生する遊技状態に応じて表示実行される。
・・・略・・・
【0053】
ここで、ステップ9(図4参照)の始動口処理を図5に従って説明する。
遊技者が発射ハンドル11を操作し、遊技球が発射装置(図示省略)より遊技領域14に発射され、この遊技球が特別図柄始動領域20を通過すると、特別図柄始動スイッチS1がON作動する。そして、主制御基板60の主制御用中央制御装置CPUが、特別図柄始動スイッチS1のON作動を認識すると、このON作動を契機(きっかけ)として、記憶装置RAMに累積して記憶保持される特別図柄始動記憶の数(特別図柄始動記憶数U)がU≧4であるか否かを判定する。
そして、特別図柄始動記憶数UがU≧4である場合は、特別図柄始動記憶数Uが満杯であるため、始動口処理を終了する。
【0054】
一方、特別図柄始動記憶数UがU≦3であると、U=U+1の処理を実行して特別図柄始動記憶数Uを加算し、記憶装置ROMに格納されている大当り特別乱数テーブル、大当り図柄乱数テーブル、ハズレ図柄乱数テーブル、リーチ乱数テーブル、リーチ図柄乱数テーブル、リーチ態様乱数テーブルから、大当り特別乱数値K、大当り図柄乱数値L、ハズレ図柄乱数値Ma,Mb,Mc、リーチ乱数値N、リーチ図柄乱数値Q、及びリーチ態様乱数値Pをそれぞれ取得し、取得した各乱数値を一旦、記憶装置RAMに格納する。さらに、本実施形態例にあっては、有利遊技行程選択乱数テーブルから有利遊技行程選択乱数値Gも取得する。
そして、前記各乱数値と同様に、記憶装置RAMに格納する。
【0055】
次に、現在の遊技行程が確変遊技行程であるか、又は時短遊技行程あるいは通常確率遊技行程であるかを判定する。ここで、確変遊技行程と判定した場合は、取得した大当り特別乱数値Kを判定するための高確率用判定データをセットする。この高確率用判定データは、大当り特別乱数値KがK=7,53,89,137,173,197,257,277,293,307,337,359,409,457,487,523のいずれかの場合に値が一致し、図柄生成行程で当り態様を確定表示して特別遊技作動を実行する「大当り」とする。一方、時短遊技行程あるいは通常確率遊技行程であると判定した場合は、低確率用判定データをセットする。この低確率用判定データは、大当り特別乱数値KがK=7の場合に値が一致する。
【0056】
次に、大当り特別乱数値Kが、セットした判定データと同一であるか否かを判定する。ここで、大当り特別乱数値Kが判定データと同一であると、大当りフラグをONとして始動口処理を終了する。この大当りフラグは、取得し、判定した大当り特別乱数値Kの内容が「大当り」であることを示すものである。
【0057】
一方、大当り特別乱数値Kの内容が「大当り」でない場合は、取得したリーチ乱数値Nを判定し、リーチ変動作動を実行するか否かを決める。ここで、リーチ乱数値NがN=3,17であると、リーチ変動作動を実行することとし、リーチフラグをONとした後、始動口処理を終了する。これに対し、リーチ変動作動を実行しない場合は、そのまま始動口処理を終了する。
【0058】
次に、ステップ11(図4参照)の図柄処理を図6に従って説明する。
主制御基板60の主制御用中央制御装置CPUは、特別図柄A,B,Cが変動中であるか判定し、変動中であれば所定の変動時間経過後に、変動停止コマンドを図柄表示制御基板62に出力して特別図柄A,B,Cを停止して、図柄処理を終了する。
【0059】
一方、特別図柄A,B,Cが変動中でない場合は、特別図柄始動条件が成立し、記憶装置RAMに特別図柄始動記憶が記憶保持されているか否かを判定し、記憶保持されている場合(特別図柄始動記憶数U≧1)は記憶保持した特別図柄始動記憶を記憶順に一個記憶消化し、特別図柄始動記憶数表示部19で表示する特別図柄始動記憶数Uを一個減算表示する(U=U-1)。これに対し、特別図柄始動記憶が記憶保持されていない場合(U=0)は、そのまま図柄処理を終了する。
【0060】
そして、次に主制御基板60の主制御用中央制御装置CPUは、大当りフラグがONであるか否かを判定する。ここで、大当りフラグがONであると、変動パターン選択処理に移行し、図柄生成行程における特別図柄A,B,Cの変動態様を規定する特別図柄変動パターンを決定する。また、大当りフラグがOFFであると、次にリーチフラグがONであるか否かを判定する。ここで、リーチフラグがONであると、取得したリーチ図柄乱数値Qに従ってハズレリーチ図柄を決定する。これに対し、リーチフラグがOFFであると、取得したハズレ図柄乱数値Ma,Mb,Mcに従ってハズレ図柄を決定する。そして、ハズレリーチ図柄、又はハズレ図柄を決定すると、変動パターン選択処理に移行する。
【0061】
変動パターン選択処理を終了すると、主制御基板60の主制御用中央制御装置CPUは、変動パターン選択処理によりセットした特別図柄変動パターンのデータを図柄表示制御基板62に出力する。さらに、記憶装置RAMの特別図柄始動記憶を記憶保持する始動記憶領域を順次シフトする。そしてさらに、特別図柄A,B,Cの変動時間をセットする。
【0062】
主制御基板60の主制御用中央制御装置CPUは、これまでの処理を実行すると、次に特別図柄A,B,Cを変動開始する変動開始コマンドを図柄表示制御基板62に出力する。
図柄表示制御基板62は、かかるコマンドが入力されると、記憶装置ROMや記憶装置RAMの記憶データを用いて図柄制御用中央制御装置CPUにて演算処理を行い、その結果に従って表示用ドライバを介して図柄表示装置16の図柄表示領域17で特別図柄A,B,Cの変動表示を開始して、取得した大当り特別乱数値Kの当り・ハズレ結果に従って特別図柄A,B,Cを確定表示する図柄生成行程を実行する。そして、所定の変動時間経過後に変動停止コマンドを出力して特別図柄A,B,Cを停止し、図柄処理を終了する。」

(2)「【0067】
次に、特別図柄A,B,Cを当り態様で確定表示する場合に実行する特別遊技作動について説明する。
特別図柄A,B,Cの組合せ態様を当り態様で確定表示すると、主制御基板60は、以下の賞球形態の特別遊技作動を行う特別遊技行程を実行する。すなわち、盤面中継基板61を介して大入賞口ソレノイドを駆動して、大入賞口23を開放する。そして、大入賞口23を遊技球が通過し、この大入賞口23内の特定領域スイッチS3やカウントスイッチS4がON作動すると、その信号を盤面中継基板61を介して主制御基板60が確認し、必要に応じて、図柄表示制御基板62や払出制御基板65に制御指令コマンドを出力する。
・・・略・・・
【0073】
次に、本発明の要部を説明する。
上述の遊技内容は、図7に示されるように、図柄生成行程等が実行される通常遊技行程と、特別遊技作動が行われる特別遊技行程とに大別される。そして、この通常遊技行程と特別遊技行程とが交互に実行される。
【0074】
さらに、通常遊技行程にあっては、有利遊技行程及び通常確率遊技行程とが実行される。さらに詳述すると、通常遊技行程の実行開始と共に、先に有利遊技行程が実行され、所定期間経過後に通常確率遊技行程が実行される。さらに、この有利遊技行程は、順次出現し、実行される確変遊技行程と時短遊技行程とで構成される。ここで、確変遊技行程の形態は、図11に示されるように、大当り確率16/953、図柄生成行程実行時間(特別図柄A,B,Cの変動時間)4秒、普通電動役物18の開放時間2秒、普通図柄X,Yの変動時間5秒という利益内容を遊技者に付与するものである。一方、時短遊技行程の形態は、大当り確率3/953、図柄生成行程実行時間4秒、普通電動役物18の開放時間2秒、普通図柄X,Yの変動時間5秒という利益内容を遊技者に付与するものである。」

(3)「【0078】
ここでさらに、本発明は、実行される有利遊技行程が多種多様である点を特徴としている。本実施形態例にあっては、予め三つの有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)が主制御基板60の記憶装置ROMに備えられ、かかる有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)から一の有利遊技行程パターンが選定され、選定された有利遊技行程パターンに従って、有利遊技行程が実行される。
【0079】
各有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)に従って実行される有利遊技行程についてそれぞれ詳述すると、有利遊技行程パターン▲1▼に従って実行される有利遊技行程は、有利遊技行程実行開始から計数される図柄生成行程実行回数が200回に達すると実行終了する。以下、有利遊技行程が終了することとなる図柄生成行程実行回数(200回)を消滅条件図柄生成行程総数という。
【0080】
また、図12に示されるように、有利遊技行程パターン1(○付き数字)にかかる確変遊技行程には、50回の部分消滅条件図柄生成行程数が割り当てられており、確変遊技行程の実行開始から計数された図柄生成行程実行回数が50回に達すると終了する。そして、その後実行開始される時短遊技行程には、150回の部分消滅条件図柄生成行程数が割り当てられており、確変遊技行程終了時から計数された図柄生成行程実行回数が150回に達すると終了する。ここで、各部分消滅条件図柄生成行程数は、確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(50回)と時短遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(150回)との和が消滅条件図柄生成行程総数(200回)となるように値が設定され、割り当てられている。
【0081】
さらに、有利遊技行程パターン1(○付き数字)にあっては、消滅条件図柄生成行程総数に対する確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数の割合である利益配分率は、(50/200)×100=25%となる。また時短遊技行程の利益配分率は75%となる。
【0082】
また、有利遊技行程パターン2(○付き数字)に従って実行される有利遊技行程は、消滅条件図柄生成行程総数が200回であると共に、確変遊技行程には100回の部分消滅条件図柄生成行程数が割り当てられており、有利遊技行程パターン2(○付き数字)における確変遊技行程の利益配分率は(100/200)×100=50%である。また、時短遊技行程には100回の部分消滅条件図柄生成行程数が割り当てられており、有利遊技行程パターン2(○付き数字)における時短遊技行程の利益配分率は(100/200)×100=50%である。なお、有利遊技行程パターン1(○付き数字)と同様に、各部分消滅条件図柄生成行程数は、確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(100回)と時短遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(100回)との和が消滅条件図柄生成行程総数(200回)となるように値が設定され、割り当てられている。
【0083】
さらに、有利遊技行程パターン3(○付き数字)に従って実行される有利遊技行程は、消滅条件図柄生成行程総数が200回であると共に、確変遊技行程には150回の部分消滅条件図柄生成行程数が割り当てられており、有利遊技行程パターン3(○付き数字)における確変遊技行程の利益配分率は(150/200)×100=75%である。また、時短遊技行程には50回の部分消滅条件図柄生成行程数が割り当てられており、有利遊技行程パターン3(○付き数字)における時短遊技行程の利益配分率は(50/200)×100=25%である。また、各部分消滅条件図柄生成行程数は、確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(150回)と時短遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(50回)との和が消滅条件図柄生成行程総数(200回)となるように値が設定され、割り当てられている。
【0084】
したがって、主制御基板60の記憶装置ROMに備えられている有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)は、互いに利益配分率が異なる内容となっている。
【0085】
なお、主制御基板60の主制御用中央制御装置CPUは、遊技進行に伴って生成される図柄生成行程の実行回数を計数し、主制御基板60の記憶装置RAMに累積的に記憶してその数を保持する。そして、累積的に記憶保持した図柄生成行程実行回数が、前記の部分消滅条件図柄生成行程数に達すると確変遊技行程又は時短遊技行程を終了する。また、有利遊技行程実行開始から計数した図柄生成行程実行回数が消滅条件図柄生成行程総数に達すると、有利遊技行程を終了する。
ここで、累積保持される図柄生成行程実行回数により、本発明にかかる消滅条件単位が構成される。この消滅条件単位としては、有利遊技行程実行開始から計測される時間であっても良い。また、有利遊技行程実行開始から計測される発射球数、賞球数、普通電動役物の開放回数等であっても良い。
【0086】
そして、図12に示されるように、始動口処理(図5参照)で取得された有利遊技行程選択乱数値GがG=0であると、記憶装置ROMに格納されている有利遊技行程パターン1(○付き数字)が選定され、この有利遊技行程パターン1(○付き数字)に従って有利遊技行程が実行される。また、取得された有利遊技行程選択乱数値GがG=1であると、有利遊技行程パターン2(○付き数字)が選定され、取得された有利遊技行程選択乱数値GがG=2であると、有利遊技行程パターン3(○付き数字)が選定される。
・・・略・・・
【0089】
ところで、上述の有利遊技行程の実行開始前、すなわち特別遊技行程中にあっては、本発明にかかる利益配分率演出行程が図柄表示領域17で表示実行される。この、利益配分率演出行程は、後述の一連の演出表示により、特別遊技行程後に実行される有利遊技行程の利益配分率を確定表示するものである。
【0090】
すなわち、図8aに示されるように、白組と赤組とに分かれた2チームが綱引きゲームをするキャラクタ画像30と、「0」、「100」、「200」の目盛りが付された横長帯状の選択指標31と、この選択指標31上に表出される矢印型の指標素子32が表出される。そして、図8bに示されるように、選択指標31上で指標素子32が横方向に不規則に移動表示される。さらにこの移動表示される指標素子32と同期して、キャラクタ画像30が綱引きゲームを展開する。
【0091】
そして、例えば、始動口処理(図5参照)で、G=1の有利遊技行程選択乱数値Gが取得されていると、所定時間経過後に、指標素子32が選択指標31の「100」の目盛り位置で停止表示され、これと共に、キャラクタ画像30が綱引きゲームを終了する。ここで、キャラクタ画像30における「白組」側の選択指標31で表示される着色領域Fが、確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数を示し、他側の領域Sが時短遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数を示している。
【0092】
そして、表示内容が切り替わり、「確変100回 50%」「時短100回 50%」と表示されて、実行される有利遊技行程の利益配分率が確定表示される。
【0093】
また、始動口処理(図5参照)で、G=0の有利遊技行程選択乱数値Gが取得されていると、図9aに示されるように、利益配分率演出行程が実行開始され、図9bに示されるように、指標素子32が移動表示されると共に、キャラクタ画像30により綱引きゲームが展開され、図9cに示されるように、指標素子32が選択指標31の「50」の目盛り位置で停止表示される。そして、表示内容が切り替わり、図9dに示されるように、「確変50回 25%」「時短150回75%」と確定表示される。
【0094】
さらに、始動口処理(図5参照)で、G=2の有利遊技行程選択乱数値Gが取得されていると、図10aに示されるように、利益配分率演出行程が実行開始され、図10bに示されるように、指標素子32が移動表示されると共に、キャラクタ画像30により綱引きゲームが展開され、図10cに示されるように、指標素子32が選択指標31の「150」の目盛り位置で停止表示される。そして、表示内容が切り替わり、図10dに示されるように、「確変150回 75%」「時短50回 50%」と確定表示される。
【0095】
このように、選定された有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)に対応して、複数の利益配分率演出行程パターンから一の利益配分率演出行程パターンを選定し、遊技者の獲得し得る利益の多少に大きく関与する利益配分率が決定されるまでの過程を演出表示する利益配分率演出行程を表示実行して視覚を通じて、利益配分率を報知する構成とすることにより、遊技者の期待感、緊張感をより一層刺激することが可能となる。また、選択指標31と選択素子32とを用いて利益配分率を示すことにより、選定された有利遊技行程の形態を視覚を通じて明確に報知することが可能となる。さらに、遊技機の演出が充実するため、興趣性も向上することとなる。なお、利益配分率演出行程は、特別遊技作動終了直後に実行開始しても良い。」

(4)「【図8】



(5)「【図9】



(6)「【図10】



(7)上記(2)の【0074】に、「確変遊技行程の形態は、・・・大当り確率16/953、図柄生成行程実行時間(特別図柄A,B,Cの変動時間)4秒、普通電動役物18の開放時間2秒、普通図柄X,Yの変動時間5秒という利益内容を遊技者に付与するものである。一方、時短遊技行程の形態は、大当り確率3/953、図柄生成行程実行時間4秒、普通電動役物18の開放時間2秒、普通図柄X,Yの変動時間5秒という利益内容を遊技者に付与するものである。」と記載されていることから、確変遊技は時短遊技よりも遊技者にとって有利な遊技状態であることは明らかである。

(8)上記(1)ないし(7)の記載内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、a、b等の記号については本願発明1のA、B等の記号に対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。

(引用発明)
「a 特別図柄始動領域20の遊技球通過を検知する特別図柄始動スイッチS1のON作動を認識すると(【0030】、【0053】)、大当り特別乱数値Kを取得し、さらに、有利遊技行程選択乱数値Gも取得し(【0054】)、大当り特別乱数値Kを判定するための判定データをセットし(【0055】)、次に、大当り特別乱数値Kが、セットした判定データと同一であるか否かを判定し、大当り特別乱数値Kが判定データと同一であると、判定した大当り特別乱数値Kの内容が「大当り」であることを示す大当りフラグをONとする(【0056】)主制御基板60(【0053】)を備え、有利遊技行程選択乱数値Gは、有利遊技行程を実行するための有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)を選定するものであり(【0041】)、主制御基板60の記憶装置ROMに備えられている有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)は、互いに利益配分率が異なる内容となっており(【0084】)、主制御基板60は、始動口処理で取得された有利遊技行程選択乱数値GがG=0であると、記憶装置ROMに格納されている有利遊技行程パターン1(○付き数字)を選定し、この有利遊技行程パターン1(○付き数字)に従って有利遊技行程が実行され、また、取得された有利遊技行程選択乱数値GがG=1であると、有利遊技行程パターン2(○付き数字)を選定し、取得された有利遊技行程選択乱数値GがG=2であると、有利遊技行程パターン3(○付き数字)を選定し(【0085】、【0086】)、
b 取得した大当り特別乱数値Kの当り・ハズレ結果に従って特別図柄A,B,Cを確定表示する図柄表示装置16の図柄表示領域17(【0062】)と、図柄表示装置16を駆動し、図柄表示装置16の図柄表示領域17上で表出される図柄表示態様を制御するための基板回路が設けられた図柄表示制御基板62を備え、この基板回路は、図柄表示態様を制御処理する図柄制御用中央制御装置CPUに、特別図柄変動パターンや利益配分率演出行程パターン等に関する固定データが格納されている記憶装置ROMと入力ポート及び出力ポートとが接続されて構成されており(【0046】)、利益配分率演出行程は、特別遊技行程後に実行される有利遊技行程の利益配分率を確定表示するものである(【0089】)、
c パチンコ遊技機1(【0021】)において、
b-1ないしb-3 特別遊技行程中に利益配分率演出行程が図柄表示領域17で表示実行され(【0089】)、白組と赤組とに分かれた2チームが綱引きゲームをするキャラクタ画像30と、「0」、「100」、「200」の目盛りが付された横長帯状の選択指標31と、この選択指標31上に表出される矢印型の指標素子32が表出され、選択指標31上で指標素子32が横方向に不規則に移動表示され、この移動表示される指標素子32と同期して、キャラクタ画像30が綱引きゲームを展開し(【0090】)、ここで、キャラクタ画像30における「白組」側の選択指標31で表示される着色領域Fが、確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数を示し、他側の領域Sが時短遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数を示しており(【0091】)、
例えば、G=1の有利遊技行程選択乱数値Gが取得されていると、所定時間経過後に、指標素子32が選択指標31の「100」の目盛り位置で停止表示され、これと共に、キャラクタ画像30が綱引きゲームを終了し(【0091】)、そして、表示内容が切り替わり、「確変100回 50%」「時短100回 50%」と表示されて、実行される有利遊技行程の利益配分率が確定表示され(【0092】)、ここで、各部分消滅条件図柄生成行程数は、確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(100回)と時短遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(100回)との和が消滅条件図柄生成行程総数(200回)となるように値が設定され、割り当てられており(【0082】)、
G=0の有利遊技行程選択乱数値Gが取得されていると、指標素子32が選択指標31の「50」の目盛り位置で停止表示され、そして、表示内容が切り替わり、「確変50回 25%」「時短150回75%」と確定表示され(【0093】)、ここで、各部分消滅条件図柄生成行程数は、確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(50回)と時短遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(150回)との和が消滅条件図柄生成行程総数(200回)となるように値が設定され、割り当てられており(【0080】)、
G=2の有利遊技行程選択乱数値Gが取得されていると、指標素子32が選択指標31の「150」の目盛り位置で停止表示され、そして、表示内容が切り替わり、「確変150回 75%」「時短50回 25%」と確定表示され(【0094】)、ここで、各部分消滅条件図柄生成行程数は、確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(150回)と時短遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数(50回)との和が消滅条件図柄生成行程総数(200回)となるように値が設定され、割り当てられており(【0083】)、
確変遊技は時短遊技よりも遊技者にとって有利な遊技状態である(上記(7))、
c パチンコ遊技機1(【0021】)。」

2 引用文献2について
原出願の出願(出願日:平成25年12月25日)前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2003-275401号公報(平成15年9月30日出願公開、以下「引用文献2」という。)には、「遊技機」の発明に関し、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した)。

(1)「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明を適用して好適な遊技装置の一例としてカードユニットを備えたCR機と呼ばれるパチンコ遊技機の構成例を示すもので、遊技機100に隣接してカード式球貸機(以下、カードユニットと称する)3000が併設されている。カードユニット3000にはカードリーダが内蔵され、前面パネル301にはプリペイドカードが挿入されるカード挿入口303が形成されているとともに、開閉可能な前面パネル301を施錠する施錠装置305が設けられている。
・・・略・・・
【0043】図16,図17は、センターケースC2内の変動表示装置42の表示と関連動作実行部材Y1,Y2の動作を関連させた第2実施例を示す。この実施例では、変動表示装置42の表示画面を左右に分け、例えば左側の領域を「ハズレ」領域A1、右側の領域を「当たり」領域A2としている。そして、「ハズレ」領域A1の左側上下の各隅に図柄「6」を表示し、「当たり」領域A2の右側上下の各隅に図柄「7」を表示している。また、「ハズレ」領域A1と「当たり」領域A2の境界にまたがって図柄「7」からなる選択用図柄Nが表示され、その選択用図柄Nの左右には綱引きの「綱」を模した画像が表示されている。なお、その「綱」の画像の左右端部が各関連動作実行部材Y1,Y2の「クチバシ」部に対応する位置となるようにされている。次いで、ソレノイドの駆動に伴う各関連動作実行部材Y1,Y2の揺動により、図16(b)、(c)に示すように、「ハズレ」領域A1と「当たり」領域A2の間で綱引きが行われる様子が演出される。
【0044】そして、最終的に大当りを発生させる場合には、関連動作実行部材Y2の「トリ」が綱引きに勝った状態(即ち、選択用図柄Nが「当たり」領域A2にある状態でタイムアップとなる状態)とし、図17(d)に示すように、「綱」の画像を消し、選択用図柄Nが、「当たり」領域A2の右側上下の各隅に表示された図柄「7」の間に入った状態を表示させる。次いで、図17(e)に示すように、「7」のゾロ目による大当り状態を表示させ、大当り状態が発生される。このように、変動表示装置42の表示と関連動作実行部材Y1,Y2の動きを関連させることにより、斬新な演出を行うことができる。なお、最終的にハズレとする場合には、選択用図柄Nが「ハズレ」領域A1にある状態でタイムアップとなる状態とすることもできる。」

(2)「【図16】



(3)「【図17】




(4)上記(1)ないし(3)の記載内容からみて、引用文献2には、以下の技術事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献2記載事項]
「遊技機100(【0013】)において、
変動表示ゲームで、変動表示装置42の表示画面を左右に分け、左側の領域を「ハズレ」領域A1、右側の領域を「当たり」領域A2とし、「ハズレ」領域A1の左側上下の各隅に図柄「6」を表示し、「当たり」領域A2の右側上下の各隅に図柄「7」を表示し、また、「ハズレ」領域A1と「当たり」領域A2の境界にまたがって図柄「7」からなる選択用図柄Nが表示され、その選択用図柄Nの左右には綱引きの「綱」を模した画像が表示され、各関連動作実行部材Y1,Y2の揺動により、「ハズレ」領域A1と「当たり」領域A2の間で綱引きが行われる様子が演出される(【0043】、【図16】、【図17】)こと。」

3 引用文献3について
原出願の出願(出願日:平成25年12月25日)前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-143195号公報(平成23年7月28日出願公開、以下「引用文献3」という。)には、「遊技機」の発明に関し、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した)。

(1)「【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその一種であるパチンコ遊技機に具体化した一実施形態を図1?図12にしたがって説明する。
パチンコ遊技機10の機体の外郭をなす外枠11の開口前面側には、各種の遊技用構成部材をセットする縦長方形の中枠12が開放及び着脱自在に組み付けられているとともに、中枠12の前面側には前枠13が開閉及び着脱自在に組み付けられている。前枠13は、図1に示すようにパチンコ遊技機10を機正面側から見た場合において、中枠12に重なるように組み付けられている。前枠13は、中央部に窓口14を有するとともに、該窓口14の下方にパチンコ遊技機10の遊技媒体となる遊技球を貯留可能な上皿15を一体成形した構成とされている。前枠13の裏面側には、機内部に配置された遊技盤YBを保護し、かつ窓口14を覆う大きさのガラスを支持する図示しないガラス支持枠が着脱及び傾動開放可能に組み付けられている。遊技盤YBは、中枠12に装着される。また、前枠13には、窓口14のほぼ全周を囲むように、図示しない発光体(ランプ、LEDなど)の発光(点灯や点滅)により発光演出を行う電飾表示部を構成する枠用ランプ部16が配置されている。また、前枠13には、各種音声を出力して音声演出を行うスピーカ17が配置されている。また、中枠12の前面側であって前枠13の下部には、上皿15から溢れ出た遊技球を貯留する下皿22が装着されている。また、中枠12の前面側であって下皿22の右方には、遊技球を遊技盤YBに発射させる際に遊技者によって回動操作される遊技球発射用の発射ハンドル23が装着されている。
・・・略・・・
【0035】
大当りAに当選した場合に付与される大当り遊技は、規定ラウンド数を「16回」に設定した「16ラウンド大当り遊技」となっている。一方、大当りB,C,Dに当選した場合に付与される大当り遊技は、規定ラウンド数を「2回」に設定した「2ラウンド大当り遊技」となっている。
・・・略・・・
【0041】
また、本実施形態のパチンコ遊技機10は、大当り遊技の終了後、大当り抽選の抽選確率状態が、高確率状態(確変状態)及び低確率状態(非確変状態)の何れかであることを示す複数(本実施形態では3つ)の演出モードを備えている。・・・
【0042】
以下、本実施形態の演出モードについて、図4を用いて詳しく説明する。
本実施形態では、演出モードMA,MB,MCからなる3つの演出モードを備えている。これらの演出モードは、大別して、「高確率潜伏モード」と「高確率確定モード」の2つに分類される。
・・・略・・・
【0046】
本実施形態において演出モードMAは、遊技中、最も滞在する可能性が高く、確変状態である可能性を最も低く設定した低期待度(確変期待度小)の演出モードとされている。一方、本実施形態において演出モードMBは、確変状態である場合のみに移行し、演出モードの中で最も大当りを期待できる高期待度(確変期待度大(確変確定))の演出モードとされている。また、本実施形態において演出モードMCは、演出モードMAよりも確変状態である可能性が高く、かつ演出モードMBよりも確変状態である可能性を低く設定した中期待度の演出モードとされている。なお、各演出モードによる期待度の変化は、大当りの種類(15ラウンド大当り、2ラウンド大当り)に応じた演出モードの移行先を定めることによって作り出される。
・・・略・・・
【0056】
各演出モードの滞在中は、その滞在中の演出モードに対応するモード報知画像が演出表示装置25に画像表示されるようになっている。具体的に言えば、本実施形態のモード報知画像は、図柄の背面に映し出される背景画像と、演出モードの種類を示す文字画像(テロップなど)から構成される。そして、各演出モードに対応する背景画像は、演出モード毎に画像内容が異なるように個別設定されており、遊技者は、背景画像の種類や文字画像から滞在中の演出モードを認識し得るようになっている。
【0057】
また、本実施形態のパチンコ遊技機10では、演出モードMCの滞在中、演出表示装置25にモード報知画像として合戦シーンが複数回の図柄変動ゲームを跨いで継続的に画像表示される。そして、その合戦における自軍の優劣が、図5(a)?(d)に示すように画像表示されるゲージMのゲージ値によって示唆される。また、本実施形態のパチンコ遊技機10では、自軍の優劣を、当該演出モードMCの遊技状態(抽選確率状態)に対応付けている。具体的に言えば、ゲージMのゲージ値が「優勢(図5(a)?(d)に示す「優」)」側を指し示すほど、高確率状態の期待度が高いことを示唆する。一方、ゲージMのゲージ値が「劣勢(図5(a)?(d)に示す「劣」)」側を指し示すほど、高確率状態の期待度が低いことを示唆する。本実施形態では、ゲージMによる演出が、高確率潜伏モード(演出モードMC)中に、抽選確率状態が低確率状態及び高確率状態の何れであるかを示唆する示唆演出となる。そして、本実施形態では、ゲージMの指し示すゲージ値が、示唆演出の演出内容となる。また、本実施形態では、演出表示装置25(画像表示部GH)が演出実行手段となる。
【0058】
図5(a)は、ゲージMのゲージ値が均等位置となっている状態を示す。この状態は、自軍と敵軍の情勢が同等であることを示しており、これに対応して高確率状態となっている可能性が、低確率状態となっている可能性と同等であることを示唆している。図5(b)は、ゲージMのゲージ値が優勢側位置となっている状態を示す。この状態は、自軍の方が敵軍よりも優勢であることを示しており、これに対応して高確率状態となっている可能性が、低確率状態となっている可能性よりも高いことを示唆している。図5(c)は、ゲージMのゲージ値が劣勢側位置となっている状態を示す。この状態は、自軍の方が敵軍よりも劣勢であることを示しており、これに対応して高確率状態となっている可能性が、低確率状態となっている可能性よりも低いことを示唆している。図5(d)は、ゲージMのゲージ値が最優勢側位置となっている状態を示す。この状態は、自軍の方が敵軍よりも圧倒的に優勢であることを示しており、これに対応して高確率状態となっている可能性が、最も高いことを示唆している。本実施形態では、抽選確率状態が高確率状態の場合に、ゲージ値が最優先側位置に到達するようになっている。すなわち、本実施形態においてゲージMのゲージ値は、抽選確率状態が低確率状態の場合、最優先側位置を指し示さないように制御されている。
【0059】
なお、ゲージMが指し示すゲージ値は、後述するように、所定条件の成立によって増減されるようになっている。そして、本実施形態では、抽選確率状態が高確率状態の場合と低確率状態の場合とで、増減の変化態様を異ならせている。具体的に言えば、抽選確率状態が高確率状態の場合には、低確率状態である場合に比して、条件成立時におけるゲージ値の増加量が多くなり易く、かつ減少量が少なくなり易くなっている。一方、抽選確率状態が低確率状態の場合には、高確率状態の場合に比して、条件成立時におけるゲージ値の増加量が少なくなり易く、かつ減少量が大きくなり易くなっている。
【0060】
ゲージMのゲージ値による抽選確率状態の示唆は、遊技者が高確率状態であるか否かを推測するための指標であって、抽選確率状態を低確率状態及び高確率状態の何れの状態とするかは大当り抽選に当選した際の抽選結果に応じて決定される。このため、ゲージMのゲージ値は、前述のように、抽選確率状態に応じて変化態様(増減)は制御されるが、優勢側位置を指し示していても低確率状態の場合も有り得れば、劣勢側位置を指し示していても高確率状態の場合も有り得る。」

(2)「【0105】
次に、演出モードMCの滞在中に、演出表示装置25で行われる遊技演出(図柄変動ゲーム、示唆演出など)の制御について詳しく説明する。
演出モードMCの滞在中は、大当り抽選の抽選結果(はずれリーチ演出の実行可否を含む)に応じた演出内容で図柄変動ゲームが実行される。そして、大当り演出用の変動パターン、及びはずれリーチ演出用の変動パターンに基づく図柄変動ゲームでは、予め定めた演出内容(リーチ演出内容)のリーチ演出が行われる。
【0106】
本実施形態において演出モードMCの滞在中に行われるリーチ演出の演出内容は、図柄変動ゲームにおいて遊技者に演出用ボタンBTを操作させる操作期間を設定するとともに、その操作期間中に演出用ボタンBTを複数回操作させることによって大当り抽選の抽選結果を導出する演出内容とされている。
・・・略・・・
【0117】
また、統括制御用CPU41aは、大当り演出用の変動パターン、又ははずれリーチ演出用の変動パターンを指示する変動パターン指定コマンドを主制御用CPU40aから入力すると、前述したリーチ演出を行わせるために各種処理を実行する。具体的に言えば、統括制御用CPU41aは、図柄変動ゲームの開始前に、リーチ演出の演出内容として敵軍兵士の人数(初期人数)を抽選で決定する。敵軍兵士の人数は、複数種類(例えば、2000人、1000人、500人、100人、50人などの5種類)用意されている。そして、統括制御用CPU41aは、敵軍兵士の人数を決定すると、その人数を統括制御用RAM41cに記憶保持するとともに、残り人数を指示する残り人数指定コマンドを表示制御用CPU42aに出力する。
【0118】
また、統括制御用CPU41aは、図柄変動ゲームの開始後、リーチ演出の開始に伴って演出用ボタンBTの操作期間を設定する。また、表示制御用CPU42aは操作期間が設定されることに合わせて、画像表示部GHに、演出用ボタンBTの操作を遊技者に促す画像(「PUSH」)を画像表示するとともに、残り人数指定コマンドで指示された敵軍兵士の人数を画像表示部GHに画像表示する。図11(a)?(c)には、図柄変動ゲームが開始してから、リーチ演出が開始する迄の演出の流れ(画像表示部GHの表示内容)を示す。
【0119】
そして、操作期間を設定した統括制御用CPU41aは、演出用ボタンBTの操作を有効に受付ける毎に、リーチ演出における敵軍兵士の残り人数を決定し、その人数を統括制御用RAM41cに記憶保持するとともに、残り人数を指示する残り人数指定コマンドを表示制御用CPU42aに出力する。なお、統括制御用CPU41aは、敵軍兵士の人数が段階的に減少するように残り人数を決定する。このため、リーチ演出中は、敵軍兵士の人数を「0(零)」にしようとするならば、演出用ボタンBTを複数回操作する必要が生じる。そして、統括制御用CPU41aは、大当りAに当選した場合のリーチ演出であれば、残り人数として最終的に「0(零)」を決定し得る。また、統括制御用CPU41aは、大当りB?Dに当選した場合のリーチ演出、及びはずれリーチの場合であれば、残り人数として「0(零)」を決定し得ない。つまり、統括制御用CPU41aは、敵軍兵士の人数が最小人数(本実施形態では「1」)に到達した段階で、以降、演出用ボタンBTの操作を有効に受付けた場合の残り人数として「1」を決定する。そして、表示制御用CPU42aは、残り人数指定コマンドで指示された敵軍兵士の人数を画像表示部GHに画像表示する。
【0120】
なお、統括制御用CPU41aは、演出用ボタンBTの操作を有効に受付ける毎に、ボタン操作音を出力させるための操作コマンドを音声・ランプ制御基板43に出力する。そして、操作コマンドを入力した音声・ランプ制御基板43のCPUは、スピーカ17を制御することにより、操作音を出力させる。
【0121】
上記の制御により、大当りAに当選した場合には、残り人数が「0(零)」に到達した段階、すなわち表示制御用CPU42aが「0(零)」を指示する残り人数指定コマンドを入力した段階で、画像表示部GHに「殲滅」の文字が画像表示される(図11(d))。なお、この場合の操作期間は、残り人数が「0(零)」となった段階で終了する。そして、図柄変動ゲームの終了によって大当り遊技(16ラウンド大当り遊技)に移行する。
【0122】
また、大当りB,C,Dに当選した場合には、操作期間の終了後、表示制御用CPU42aの制御により画像表示部GHに「敵軍増援」の文字が画像表示される(図11(e))。そして、図柄変動ゲームの終了によって大当り遊技(2ラウンド大当り遊技)に移行する。この場合、統括制御用CPU41aは、大当り遊技の終了後に演出モードMCへ再移行することから、当該演出モードMCへの移行に伴って前述同様に処理(初期値抽選など)を行う。
【0123】
また、はずれリーチの場合には、操作期間の終了後、表示制御用CPU42aの制御により画像表示部GHに「残存」の文字が画像表示される(図11(f))。そして、図柄変動ゲームの終了後、始動保留球に基づき次の図柄変動ゲームが開始する。また、はずれリーチの場合、統括制御用CPU41aは、前述した残り人数の決定とともに、演出用ボタンBTの操作を有効に受付ける毎にゲージ増加抽選を抽選確率(図9)にしたがって行う。」

(3)「【図5】



(4)「【図11】



(5)上記(2)の【0118】に、「図11(a)?(c)には、図柄変動ゲームが開始してから、リーチ演出が開始する迄の演出の流れ(画像表示部GHの表示内容)を示す」と記載されていることから、上記(4)の【図11】(a)?(c)の図示内容は、それぞれ順に、図柄変動ゲームが開始されたところ、図柄変動ゲームにおいてリーチが報知されたところ、リーチ演出が開始されたところを表していることは明らかである。また、上記(2)の【0121】に、「大当りAに当選した場合には・・・画像表示部GHに「殲滅」の文字が画像表示される(図11(d))」、【0122】に、「大当りB,C,Dに当選した場合には・・・画像表示部GHに「敵軍増援」の文字が画像表示される(図11(e))」、【0123】に、「はずれリーチの場合には・・・画像表示部GHに「残存」の文字が画像表示される(図11(f))」と記載されていることから、【図11】(d)?(f)の図示内容は、リーチ演出において抽選結果が報知されたところを表していることも明らかである。ここで、リーチ演出前の【図11】(a)及び(b)では、ゲージMが記載されている一方で、リーチ演出中の【図11】(c)?(f)では、ゲージMが記載されていないことからすれば、リーチ演出中はゲージMが表示されないと考えるのが自然である。

(6)上記(1)ないし(5)の記載内容からみて、引用文献3には、以下の技術事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献3記載事項]
「パチンコ遊技機10(【0014】)において、
演出モードMA,MB,MCからなる3つの演出モードを備えており(【0042】)、
演出モードMCの滞在中、演出表示装置25にモード報知画像として合戦シーンが複数回の図柄変動ゲームを跨いで継続的に画像表示され、その合戦における自軍の優劣が、画像表示されるゲージMのゲージ値によって示唆される演出であって、抽選確率状態が低確率状態及び高確率状態の何れであるかを示唆する示唆演出となり(【0057】)、ゲージMのゲージ値が均等位置となっている状態は、自軍と敵軍の情勢が同等であることを示しており、ゲージMのゲージ値が優勢側位置となっている状態は、自軍の方が敵軍よりも優勢であることを示しており、ゲージMのゲージ値が劣勢側位置となっている状態は、自軍の方が敵軍よりも劣勢であることを示しており、ゲージMのゲージ値が最優勢側位置となっている状態は、自軍の方が敵軍よりも圧倒的に優勢であることを示しており(【0058】)、
演出モードMCの滞在中は、大当り抽選の抽選結果(はずれリーチ演出の実行可否を含む)に応じた演出内容で図柄変動ゲームが実行され、大当り演出用の変動パターン、及びはずれリーチ演出用の変動パターンに基づく図柄変動ゲームでは、予め定めた演出内容(リーチ演出内容)のリーチ演出が行われ(【0105】)、統括制御用CPU41aは、リーチ演出の演出内容として敵軍兵士の人数(初期人数)を複数種類(例えば、2000人、1000人、500人、100人、50人などの5種類)から抽選で決定し(【0117】)、図柄変動ゲームの開始後、リーチ演出の開始に伴って演出用ボタンBTの操作期間を設定して、画像表示部GHに、演出用ボタンBTの操作を遊技者に促す画像(「PUSH」)を画像表示するとともに、敵軍兵士の人数を画像表示部GHに画像表示し(【0118】)、演出用ボタンBTの操作を有効に受付ける毎に、リーチ演出における敵軍兵士の人数が段階的に減少するように残り人数を決定し、その人数を表示制御用CPU42aに出力し、そして、表示制御用CPU42aは、残り人数指定コマンドで指示された敵軍兵士の人数を画像表示部GHに画像表示し(【0119】)、リーチ演出中はゲージMが表示されない(上記(5))こと。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明を対比する。なお、以下の見出しの(a)、(b)等は、本願発明1のA、B等の記号に対応させている。

(a)引用発明の「大当り特別乱数値Kが、セットした判定データと同一であるか否かを判定」することや、「有利遊技行程選択乱数値G」が「互いに利益配分率が異なる内容となって」いる「有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)」のどれであるかを「選定」することは、当該判定及び選定の結果に応じて、大当りの有無や利益配分率等、遊技者に付与する特典の有無や大小が決まることからすれば、本願発明1の「遊技者に付与する特典の有無又は大小を抽選する」ことに相当するといえる。そして、引用発明の「特別図柄始動領域20の遊技球通過を検知する特別図柄始動スイッチS1のON作動」は、当該スイッチS1のON作動の認識により前記判定及び選定が実行されるのであるから、本願発明1の「抽選条件の成立」に相当する。そうすると、引用発明の「主制御基板60」は、特別図柄始動スイッチS1のON作動(抽選条件の成立)に起因して、大当り特別乱数値Kがセットした判定データと同一であるか否かを判定したり、有利遊技行程選択乱数値Gが有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)のどれであるかを選定したりする(遊技者に付与する特典の有無又は大小を抽選する)ものであるから、本願発明1の「特典抽選手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成aは、本願発明1の構成Aに相当する。

(b)引用発明の「取得した大当り特別乱数値Kの当り・ハズレ結果」や「利益配分率」は、大当り特別乱数値Kがセットした判定データと同一であるか否かを判定したり、有利遊技行程選択乱数値Gが有利遊技行程パターン1?3(○付き数字)のどれであるかを選定したり(遊技者に付与する特典の有無又は大小を抽選)した結果であるから、本願発明1の「抽選結果」に相当する。そして、引用発明の「図柄表示領域17」は、取得した大当り特別乱数値Kの当り・ハズレ結果や利益配分率(抽選結果)を遊技者に報知するものといえる。
また、引用発明の「図柄表示制御基板62」は、図柄表示装置16の図柄表示領域17上で表出される図柄表示態様、例えば、特別図柄変動パターンや利益配分率演出工程パターンを制御するものであるところ、取得した大当り特別乱数値Kの当り・ハズレ結果や利益配分率(抽選結果)を図柄表示領域17上に表出される図柄表示態様により遊技者に報知するものといえる。
そうすると、引用発明の「図柄表示領域17」及び「図柄表示制御基板62」は、本願発明1の「特典報知手段」に相当するといえる。
したがって、引用発明の構成bは、本願発明1の構成Bに相当する。

(c)引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本願発明1の「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明の構成cは、本願発明1の構成Cに相当する。

(b-1)引用発明において、「白組と赤組とに分かれたキャラクタ画像30」は、横方向に不規則に移動表示される指標素子32と同期して、キャラクタ画像30が綱引きゲームを展開するものである。ここで、引用発明において、選択指標31上で指標素子32がより右側に位置する方が、「白組」側の着色領域Fが大きくなる(「赤組」側の他の領域Sが小さくなる)から、確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数が多くなること、すなわち、確変遊技の回数が多くなることは明らかである。そして、確変遊技の回数が多くなることは、確変遊技が時短遊技よりも遊技者にとって有利な遊技状態であることからすれば、遊技者にとって有利である程度が高まることにつながる。そうすると、引用発明の「赤組」の「キャラクタ画像30」は、選択指標31の右寄りに位置し、綱引きゲームに優勢であれば着色領域Fを大きく(他の領域Sを小さく)し、遊技者にとって有利である程度を高めるものであるから、本願発明1の「特定演出要素」に相当する。
同様に、引用発明において、選択指標31上で、指標素子32がより左側に位置する方が、「白組」側の着色領域Fが小さくなる(「赤組」側の他の領域Sが大きくなる)から、確変遊技行程の部分消滅条件図柄生成行程数が少なること、すなわち、確変遊技の回数が少なくなることは明らかである。そして、確変遊技の回数が少なくなることは、確変遊技が時短遊技よりも遊技者にとって有利な遊技状態であることからすれば、遊技者にとって有利である程度が低くなることにつながる。そうすると、引用発明の「白組」の「キャラクタ画像30」は、選択指標31の左寄りに位置し、綱引きゲームに優勢であれば着色領域Fを小さく(他の領域Sを大きく)し、遊技者にとって有利である程度を低くするものであるから、本願発明1の「阻害要素」に相当するといえる。
また、引用発明において、確変遊技は時短遊技よりも遊技者にとって有利な遊技状態であるから、確変遊技と時短遊技との間の利益配分率は、「確変150回 75%」「時短50回 50%」、「確変100回 50%」「時短100回 50%」、「確変50回 25%」「時短150回75%」の順に遊技者にとって有利な利益配分率である。ここで、引用発明は、白組と赤組とが確変遊技と時短遊技との間の利益配分率を綱引きゲームにより競い合うものであるから、その綱引きゲームの目標は、遊技者にとってより有利な利益配分率を得ることであるといえる。そうすると、引用発明は、赤組のキャラクタ画像30(特定演出要素)が、遊技者にとってより有利な利益配分率(目標)を得るために白組のキャラクタ画像30(阻害要素)と綱引きゲームで競い合う演出を行うものである。そして、引用発明において、綱引きゲームで競い合う演出も主制御基板60(特典抽選手段)による有利遊技行程選択乱数値Gの抽選結果であるところ、図柄表示領域17及び図柄表示制御基板62(特典報知手段)は、その抽選結果を遊技者に報知するものであって、その抽選結果に関する演出を実行するものであるともいえる。
したがって、本願発明1の構成B-1と引用発明の構成b-1とは、前記特典報知手段は、「B-1’ 予め定められた特定演出要素が、目標の達成のために前記阻害要素と競い合う特定演出を実行する特定演出実行手段と」を備えている点で共通する。

(b-3)上記(b)で説示したとおり、引用発明の「利益配分率」は、本願発明1の「抽選結果」に相当する。また、引用発明における、「目盛り位置」は、その停止位置により「確変150回 75%」「時短50回 50%」、「確変100回 50%」「時短100回 50%」、又は、「確変50回 25%」「時短150回75%」のどれであるかが決まるものであるから、本願発明1の「前記特定演出要素の目標に対する達成度」に相当するといえる。そうすると、引用発明は、目盛り位置(前記特定演出要素の目標に対する達成度)により利益配分率(抽選結果)を遊技者に認識させる演出を行うものである。そして、引用発明の図柄表示領域17及び図柄表示制御基板62(特典報知手段)は、その確定表示を遊技者に報知するものであって、その確定表示に関する演出を実行するものであるともいえる。
したがって、引用発明の構成b-3は、本願発明1の構成B-3に相当する。

(2)上記(1)からみて、本願発明1と引用発明とは、
「A 抽選条件の成立に起因して、遊技者に付与する特典の有無又は大小を抽選する特典抽選手段と、
B 前記特典抽選手段による抽選結果を報知する特典報知手段と、
C を備えた遊技機において、
(B) 前記特典報知手段は、
B-1’ 予め定められた特定演出要素が、目標の達成のために前記阻害要素と競い合う特定演出を実行する特定演出実行手段と、
B-3 前記特定演出の後に、前記特定演出要素の目標に対する達成度により前記特典抽選手段の抽選結果を遊技者に認識させる結果演出を実行する結果演出実行手段と、
(C) を備えている遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](構成B-1)
本願発明1では、「予め定められた阻害要素との間に配置される目標要素を手に入れる」ことが「目標」であるのに対して、
引用発明では、白組と赤組とに分かれたキャラクタ画像30(特定演出要素と阻害要素)の間に配置される指標素子32が存在するものの、指標素子32自体は手に入れる対象ではないから、指標素子32を手に入れることが目標であるとはいえず、当該指標素子32の停止位置に応じた利益配分率を遊技者にとってより有利なものとすることが目標である点。

[相違点2](構成B-2)
本願発明1では、「前記特定演出の途中で、前記阻害要素の数が減少する阻害緩和演出を実行する阻害緩和演出実行手段」を備えるのに対して、
引用発明では、綱引きゲームによる利益配分率演出の途中で、白組のキャラクタ画像30(阻害要素)の数が減少しない点。

(3)相違点についての判断
ア 相違点1について
引用文献2記載事項には、関連動作実行部材Y2が、関連動作実行部材Y1との間に配置される選択用図柄Nを手に入れるために前記関連動作実行部材Y1と綱引きで競い合う演出が記載されているといえる。
しかしながら、引用発明では、綱引きゲームにより指標素子32を横方向に移動表示させて、その停止した目盛り位置に応じて利益配分率が決まるものであるのに対して、引用文献2記載事項では、綱引きゲームにより選択用図柄Nを入手するものであって、両者はゲームの形態が全く異なるから、引用発明に引用文献2記載事項を組み合わせることはできない。

そうすると、引用発明において、引用文献2記載事項を参酌したとしても、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

イ 相違点2について
相違点2に係る本願発明1の「前記阻害要素の数が減少する阻害緩和演出」は、「特定演出の途中で」実行されるものであるところ、その「特定演出」とは、「予め定められた特定演出要素が、予め定められた阻害要素との間に配置される目標要素を手に入れるという目標の達成のために前記阻害要素と競い合う」演出のことである。すなわち、「阻害緩和演出」は、「特定演出要素」が「阻害要素」と競い合う「特定演出」の途中で実行される演出である。
ここで、引用文献3記載事項には、演出用ボタンBTの操作により敵軍兵士の人数を減少させ、敵軍兵士の人数を画像表示部GHに画像表示するリーチ演出と、自軍と敵軍の情勢の優劣に応じてゲージMのゲージ値の位置を変動させる示唆演出とを実行することが記載されている。しかしながら、引用文献3記載事項には、リーチ演出中はゲージMが表示されないことも記載されている。そうすると、リーチ演出における敵軍兵士の人数の画像表示はゲージMではなく、リーチ演出は示唆演出とは異なる演出であって、示唆演出の途中で実行されるものではないことは明らかである。
したがって、引用発明において、引用文献3記載事項を参酌したとしても、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(4)効果について
また、本願発明1は、「前記阻害要素の数が減少する阻害緩和演出」を実行することで、阻害要素の阻害の程度が緩和しているように遊技者に見せることが可能となるため、特定演出要素が目標を達成する可能性が高まる印象を遊技者に与えることが可能であるという、引用発明及び引用文献2、3記載事項が有さない効果を奏する。

(5)まとめ
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2、3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)引用文献2をいわゆる主引用発明とした場合について
引用文献2に記載された発明を本願発明1と対比した場合、少なくとも構成B-2(「前記特定演出の途中で、前記阻害要素の数が減少する阻害緩和演出を実行する阻害緩和演出実行手段」)が相違点(上記相違点2と同じ)になると認められるところ、上記(3)イと同じ理由により、引用文献2に記載された発明において、引用文献3記載事項を参酌したとしても、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

2 本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3記載事項に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
(1)原査定では、引用発明の「指標素子32」が本願発明の「目標要素」に相当するとしたが、上記第5の1(2)で説示したとおり、引用発明では、指標素子32自体は手に入れる対象ではないため、指標素子32を手に入れることが目標であるとはいえないことから、本願発明1と引用発明とが上記相違点1を有することは明らかである。

(2)また、上記第2で示したとおり、原査定は、本件補正前の本願の請求項1に係る発明は引用発明であるか、又は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとしたが、本件補正により、補正前の「阻害緩和演出」が「前記阻害要素の数が減少する阻害緩和演出」と限定されたことに伴い、本願発明1と引用発明とが上記相違点2を有することは明らかである。

(3)そして、それら相違点1及び2についての判断は、上記第5の1(3)で説示したとおりである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-09 
出願番号 特願2018-192782(P2018-192782)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
P 1 8・ 113- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永田 美佐  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 島田 英昭
小島 寛史
発明の名称 遊技機  
代理人 松浦 弘  
代理人 軸見 可奈子  

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