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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1372067
審判番号 不服2019-15566  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-20 
確定日 2021-03-11 
事件の表示 特願2017-90104号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-148579号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成26年11月17日に出願された特願2014-233122号(当該出願を以下、「もとの出願」という。)の一部を平成29年4月28日に新たな特許出願としたものであって、平成30年8月29日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年4月1日付けで更に拒絶の理由(最後)が通知され、令和1年6月4日に意見書及び手続補正書が提出され提出されたところ、同年8月9日付けで、同年6月4日付け手続補正書でした補正が却下されるとともに拒絶査定がなされた。これに対し同年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対して、令和2年6月23日付けで当審において拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年8月28日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?Lは、本願発明を分説するため当審で付与した。)。

(本願発明)
「【請求項1】
A 遊技に関する情報を表示可能な表示手段と、
B 遊技の進行に関する制御を行う制御手段と、
C 遊技者が操作可能な発射操作手段と、
D 前記発射操作手段が操作された場合に遊技球を発射する発射手段と、
E 前記発射手段によって発射された遊技球を検出する遊技球検出手段と、
F 前記遊技球検出手段とは別に設けられ、遊技者が遊技に関する設定の変更を行う設定変更手段と、
G を備えた弾球遊技機であって、
H 遊技の進行停止中に客待ち演出開始条件が成立した場合に客待ち演出を実行させ、該客待ち演出の実行中に前記遊技球検出手段による検出が行われた場合に該客待ち演出を強制的に終了させる客待ち演出制御手段を備え、
I 前記制御手段は、前記客待ち演出の実行中に前記設定変更手段が操作された場合、遊技に関する設定の変更を可能とし、
J 前記表示手段は、前記客待ち演出の実行中に前記設定の変更が可能であることを示す設定可能表示を表示可能であるとともに、前記遊技球検出手段による検出が行われて該客待ち演出が強制的に終了した後も前記設定可能表示を引き続き表示可能であり、
K 前記遊技球検出手段による検出が行われて前記客待ち演出が強制的に終了した後も前記設定変更手段による設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とすること
L を特徴とする弾球遊技機。」

3 拒絶の理由の概要
当審拒絶理由の概要は、
令和1年11月20日に提出された手続補正書により補正がされた請求項1-2に係る発明は、もとの出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

引用文献1:特開2005-288020号公報
引用文献2:特開2013-223570号公報

4 引用文献に記載された事項
(1) 引用文献1
当審拒絶理由に引用され、もとの出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1には、「弾球遊技機」の発明に関し、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

ア 「【0023】
次に、本発明の実施例により発明の実施の形態を説明する。
[実施例]
図1に示すように、弾球遊技機の一種であるパチンコ機50は、長方形の外枠51と前面枠52とからなる筐体にて構成の各部を保持する構造である。
・・・
【0025】
ガラス枠60の下方には上皿55が配され、前面枠52に対して開放可能に取り付けられている。上皿55の前面部にはプッシュスイッチの操作ボタン75(操作手段に該当)が設置されている。
【0026】
上皿55の下方にては下皿63が前面枠52に固定され、下皿63の右側には発射ハンドル64が取り付けられている。発射ハンドル64を時計回りに回動操作すれば発射装置(図示略)が稼働して、上皿55から供給された遊技球を遊技盤10に向けて発射する。
・・・
【0029】
遊技領域13の中央部にはセンターケース14が装着されており、そのセンターケース14にて取り囲まれるようにして図柄表示装置15(全体の図示は省略)のLCDパネル15aが配されている。」

イ 「【0036】
主制御装置30は搭載しているプログラムに従って動作して、上述の検出信号などに基づいて遊技の進行に関わる各種のコマンドを生成して払出制御装置32、発射制御装置34(払出制御装置332経由)、サブ統合基板90及び図柄制御装置40(サブ統合基板90経由)に出力したり、また普通電動役物22を開閉する普通役物ソレノイド、大入賞口25を開閉するための大入賞口ソレノイド、大入賞口25内の特定領域を開閉するVソレノイド等の動作を制御する。
・・・
【0040】
図柄制御装置40は図柄表示装置15と一体化されており、図柄制御装置40は、サブ統合基板90(主制御装置30)から送られてくるコマンドに応じて図柄表示装置15の表示を制御する。図柄表示装置15は画像表示装置に該当し、図柄制御装置40は画像制御装置として機能する。
【0041】
サブ統合基板90は、主制御装置30から送信されてくるデータ及びコマンドを受信し、それらを図柄制御装置40、音制御用及びランプ制御用のデータに振り分けて、各制御部位に送信する。・・・
【0042】
また、サブ統合基板90は、操作ボタン75の操作信号が入力される。詳細は後述するが、サブ統合基板90は、操作ボタン75の操作信号に応じてスピーカ5の音量を変更するので、音声制御装置に該当する。」

ウ 「【0045】
次に、パチンコ機50の動作を説明する。・・・
・・・
【0052】
このようにして、大当たりか否かの当否抽選が行われ、その抽選結果を示す特別図柄(大当たり図柄又は外れ図柄)が図柄表示装置15に表示される。・・・」

エ 「【0069】
初期音量設定処理(図4)及び音量調整処理(図5)と図柄表示装置15における表示との関係を図7、図8にて説明する。・・・
・・・
【0072】
また、操作ボタン75の操作信号が無い期間が一定期間Aを経過すると、音量表示が終了する(図8I?K)。
一定期間遊技が行われていないときには、図柄表示装置15の表示がデモ表示になり(図8L)音量が初期音量にされる。デモ表示においては、図8Lに例示するとおり、操作ボタン75を押すと音量を変更できる旨が表示される。」

【図8】


オ 「【0088】
特定のリーチが出現する変動パターンを上記の特定の変動パターンとして設定した例により、図9の音量調整切替処理と図柄表示装置15における画像表示との関係を説明する。
【0089】
図10に示すように、図柄の変動表示が行われ(A、B)、期間Yを経過すると特定のリーチが始まる(C)。ここで切替処理bが行われて(S36)、操作ボタン75による表示内容の変更が可能になる。図示の例では、2種類のキャラクタC1、C2が表示され、交互に選択枠が表示されるので(C、D)、所望のキャラクタC1、C2が選択枠で囲まれたときに操作ボタン75を押せば、そのキャラクタC1、C2によるリーチ表示が行われる(E、F)。キャラクタC1、C2の選択が可能な期間は、上述の期間Yで開始し期間Xで終了し(Eでは終了している。)、以後E?Hのように進行する(言うまでもないが外れるときもある)。Gでは、操作ボタン75を1回押した時であり(現在の音量を表示)、このことから、少なくともA?Fまでは1段階目の音量で変動表示が行なわれていたことがわかる。
【0090】
図10A、Bでは画面の右上に「音量調整可能期間」と表示されているとおり、特定の変動パターンであっても、この時点ではまだ音量調整が可能である。しかし、C、Dでは「音量調整可能期間」という表示は消えている。つまり、この期間は音量調整ができない期間になっており、表示内容が変更可能な状態になっている。なお、厳密には表示内容が変更可能な時期と音量調整ができない時期とは一致せず、例えば図10Cの表示になった時点では表示内容を変更可能な期間の開始にはなっていないが(その直後になる)、音量調整はできない。」

【図10】


カ 「【0113】
例えば、実施例では音量が調整できる期間は、図柄表示装置にて「音量調整可能期間」常に表示している構成にしているが、音量表示と同様に一定期間経過後には消してもよい。また逆に、音量調整ができる期間は常に音量表示(インジケータ41)と「音量調整可能期間」を消さずに表示し続けてもよい。
【0114】
また、実施例では音量調整可能期間が特定変動の特定時以外の時であるが、デモ表示されている期間のみ音量調整が可能になるといった構成でもよい。上述したように変動表示中に音量調整する場合であると、音量表示、図柄、遊技球などを見なければならず遊技に集中できなくなってしまうおそれがあるが、デモ表示中であれば音量調整のみ行なえばよいので、通常中は遊技に集中できる。」

キ 「【0118】
・・・
【図3】実施例のパチンコ機の電気ブロック図。」

ク パチンコ機の電気ブロック図である図3より、主制御装置30、払出制御装置32、発射制御装置34、サブ統合基板90及び図柄制御装置40を備えることが看取される。

【図3】


ケ 図8Lより、「音量調整可能期間」の表示をする態様が看取される。

コ 【0072】の「デモ表示においては、図8Lに例示するとおり、操作ボタン75を押すと音量を変更できる旨が表示される。」との記載、及び図8Lの「「音量調整可能期間」の表示をする態様」より、
「デモ表示においては、「音量調整可能期間」の表示をし」との事項が導かれる。

サ 【0089】の「図10に示すように、図柄の変動表示が行われ(A、B)、」
との記載、
【0090】の「図10A、Bでは・・・「音量調整可能期間」と表示されているとおり、特定の変動パターンであっても、この時点ではまだ音量調整が可能である。」
との記載、
【0089】の「期間Yを経過すると特定のリーチが始まる(C)。」
との記載、
【0090】の「C、Dでは「音量調整可能期間」という表示は消えている。つまり、この期間は音量調整ができない期間になっており、」
との記載より、
「図柄の変動表示が行われ(【0089】、図10A、B)、特定の変動パターンであっても、この時点では画面に「音量調整可能期間」と表示されて、まだ音量調整が可能であり(【0090】、図10A、B)、期間Yを経過すると特定のリーチが始まり(【0089】、図10C)、「音量調整可能期間」という表示は消え、この期間は音量調整ができない期間になる(【0090】)」
との事項が導かれる。

そして、上記記載事項ア?キに記載された事項、図面に記載された事項ク?ケ、及び記載事項及び図面から導かれる事項(以下、「認定事項」という。)コ?サを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?lは、本願発明のA?Lに概ね対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号等は、引用文献1における引用箇所を示す。)。

(引用発明)
「a 図柄表示装置15が配され(【0029】)、
大当たりか否かの当否抽選が行われ、その抽選結果を示す特別図柄(大当たり図柄又は外れ図柄)が図柄表示装置15に表示され(【0052】)、

b 主制御装置30、払出制御装置32、発射制御装置34、サブ統合基板90及び図柄制御装置40を備え(図3)、
主制御装置30は、遊技の進行に関わる各種のコマンドを生成して払出制御装置32、発射制御装置34、サブ統合基板90及び図柄制御装置40に出力したり、また普通電動役物22を開閉する普通役物ソレノイド、大入賞口25を開閉するための大入賞口ソレノイド、大入賞口25内の特定領域を開閉するVソレノイド等の動作を制御し(【0036】)、
サブ統合基板90は、主制御装置30から送信されてくるデータ及びコマンドを受信し、それらを図柄制御装置40、音制御用及びランプ制御用のデータに振り分けて、各制御部位に送信し(【0041】)、

cd 下皿63の右側には発射ハンドル64が取り付けられ、発射ハンドル64を時計回りに回動操作すれば発射装置が稼働して、遊技球を遊技盤10に向けて発射し(【0026】)、

f 操作ボタン75が設置され(【0025】)、サブ統合基板90は、操作ボタン75の操作信号が入力され、操作ボタン75の操作信号に応じてスピーカ5の音量を変更する(【0042】)、

g 弾球遊技機の一種であるパチンコ機50であって(【0023】)、

h 一定期間遊技が行われていないときには、図柄表示装置15の表示がデモ表示になり(【0072】、図8L)、
図柄表示装置15と一体化されており、サブ統合基板90(主制御装置30)から送られてくるコマンドに応じて図柄表示装置15の表示を制御する、図柄制御装置40を備え(【0040】)、

ijk デモ表示においては、「音量調整可能期間」の表示をし(【0072】、図8L、認定事項コ)、
音量が調整できる期間は、図柄表示装置15にて「音量調整可能期間」を常に表示し(【0113】)、
音量調整可能期間は特定変動の特定時以外の時であり(【0114】)、特定のリーチが出現する変動パターンを特定の変動パターンとして設定し(【0088】)、
図柄の変動表示が行われ(【0089】、図10A、B)、特定の変動パターンであっても、この時点では画面に「音量調整可能期間」と表示されて、まだ音量調整が可能であり(【0090】、図10A、B)、期間Yを経過すると特定のリーチが始まり(【0089】、図10C)、「音量調整可能期間」という表示は消え、この期間は音量調整ができない期間になる(【0090】)(認定事項サ)、

l パチンコ機50(【0023】)。」

(2) 引用文献2
当審拒絶理由に引用され、もとの出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献2には、図面と共に以下の事項が記載されている。

ア 「【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、始動入賞口への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示する表示装置を備える遊技機において、
遊技者による発射操作を検出可能な検出手段と、
前記表示装置において前記変動表示ゲームが行われていないときに表示するデモ画面の表示制御を行うデモ表示制御手段と、を備え、
前記デモ表示制御手段は、
前記変動表示ゲームが行われていない時間の長さと、前記検出手段からの検出信号と、に基づいて前記デモ画面の表示制御を行うことを特徴とする。
【0007】
ここで、遊技者による発射操作を検出可能な検出手段は、例えば、遊技者が発射操作を行うために回動させる操作部に触れたことを検出するタッチセンサの他、操作部の回動を検出するセンサ、発射装置の動作の有無を検出するセンサ、発射された遊技球を検出するセンサ、発射操作に関して発生する情報により発射操作を検出する制御装置など、遊技者による発射操作を検出できるものであれば何でも良い。」

イ 「【0030】
本実施形態の遊技機10は前面枠12を備え、該前面枠12は本体枠(外枠)11にヒンジ13を介して開閉回動可能に組み付けられている。・・・」

ウ 「【0108】
また、特図変動表示ゲームが所定時間行われていない場合に表示装置41にデモ画面を表示可能であるが、本実施形態の遊技機では、特図変動表示ゲームが所定時間行われていない場合であってもタッチセンサ24aからの検出信号を受信した場合、すなわち遊技者の発射操作を検出した場合はデモ画面を表示しないようにしている。」

エ 「【0117】
これに対して本願発明の遊技機では、遊技者による操作部24の操作をタッチセンサ24aにより検出(t15からt18)している場合には、特図変動表示ゲームが開始されていなくてもデモ画面への切り替えを行わず(t17)、遊技者が不快な思いをすることを防止するようにしている。なお、図6に示す例では、デモ画面の表示中(t14からt16)に発射操作を検出した場合(t15)には、表示中のデモ画面の表示時間が終わるまでは当該デモ画面が表示されたままとしているが、発射操作を検出した時点でデモ画面の表示を終了するようにしても良い。」

オ 「【0407】
ここで、遊技者による発射操作を検出可能な検出手段は、例えば、遊技者が発射操作を行うために回動させる操作部24に触れたことを検出するタッチセンサの他、操作部24の回動を検出するセンサ、発射装置の動作の有無を検出するセンサ、発射された遊技球を検出するセンサ、発射操作に関して発生する情報により発射操作を検出する制御装置など、遊技者による発射操作を検出できるものであれば何でも良い。」

そして、上記記載事項ア?オに記載された事項を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載の事項」という。)が記載されていると認められる(e?lは、本願発明のE?Lに概ね対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号等は、引用文献2における引用箇所を示す。)。

(引用文献2記載の事項)
「e 遊技者による発射操作を検出可能な検出手段を備え(【0006】)、
遊技者による発射操作を検出可能な検出手段は、遊技者が発射操作を行うために回動させる操作部に触れたことを検出するタッチセンサの他、発射された遊技球を検出するセンサなど、遊技者による発射操作を検出できるものであれば良く(【0007】、【0407】)、

h-k 特図変動表示ゲームが所定時間行われていない場合に表示装置41にデモ画面を表示可能であるが、特図変動表示ゲームが所定時間行われていない場合であっても遊技者の発射操作を検出した場合はデモ画面を表示しないようにし(【0108】)、
デモ画面の表示中に遊技者による発射操作を検出した場合には、発射操作を検出した時点でデモ画面の表示を終了する(【0117】)、

l 遊技機10(【0030】)。」

5 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを分説にしたがって対比する。

(1)(構成A) 引用発明の構成aの「大当たりか否かの当否抽選」「の抽選結果を示す特別図柄」、「表示され」ること、及び「図柄表示装置15」は、それぞれ本願発明の構成Aの「遊技に関する情報」、「表示可能」なこと、及び「表示手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する構成を有する。

(2)(構成B) 引用発明の構成bの「主制御装置30」における、「遊技の進行に関わる各種のコマンドを生成して払出制御装置32、発射制御装置34、サブ統合基板90及び図柄制御装置40に出力したり、また普通電動役物22を開閉する普通役物ソレノイド、大入賞口25を開閉するための大入賞口ソレノイド、大入賞口25内の特定領域を開閉するVソレノイド等の動作を制御」すること、及び「サブ統合基板90」における、「主制御装置30から送信されてくるデータ及びコマンドを受信し、それらを図柄制御装置40、音制御用及びランプ制御用のデータに振り分けて、各制御部位に送信」することは、いずれも本願発明の構成Bの「遊技の進行に関する制御」に相当する。
そうすると、引用発明の構成bの「主制御装置30」及び「サブ統合基板90」は、本願発明の構成Bの「遊技の進行に関する制御を行う制御手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する構成を有する。

(3)(構成C、D) 引用発明の構成cdの「時計回りに回動操作す」ること、及び「発射ハンドル64」は、それぞれ本願発明の構成Cの「遊技者が操作」すること、「発射操作手段」に相当する。
また、引用発明の構成cdの「発射ハンドル64を時計回りに回動操作すれば」「稼働して、遊技球を遊技盤10に向けて発射」する「発射装置」は、本願発明の構成Dの「発射操作手段が操作された場合に遊技球を発射する発射手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成cdは、本願発明の構成C及びDに相当する構成を有する。

(4)(構成F) 引用発明の構成fの「スピーカ5の音量」は、本願発明の構成Fの「遊技に関する設定」に相当するとともに、同構成fの「操作ボタン75」は、「操作ボタン75の操作信号に応じてスピーカ5の音量を変更する」ものであるから、本願発明の構成Fの「遊技者が遊技に関する設定の変更を行う設定変更手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成fは、本願発明の構成Fと「遊技者が遊技に関する設定の変更を行う設定変更手段と」「を備え」る点で共通する。

(5)(構成G、L) 引用発明の構成g及びlの「パチンコ機50」は、「弾球遊技機の一種である」から、本願発明の構成G及びLの「弾球遊技機」に相当する。
してみると、引用発明の構成g及びlは、それぞれ本願発明の構成G及びLに相当する構成を有する。

(6)(構成H) 引用発明の構成hの「図柄表示装置15の表示がデモ表示にな」ることは、本願発明の構成Hの「客待ち演出を実行」することに相当する。
また、引用発明の構成hの「遊技が行われていない」こと、及び「一定期間」は、それぞれ本願発明の構成Hの「遊技の進行停止中」、及び「客待ち演出開始条件」に相当するので、引用発明の構成hの「一定期間遊技が行われていないとき」は本願発明の構成Hの「遊技の進行停止中に客待ち演出開始条件が成立した場合」に相当する。
そして、引用発明では、「図柄制御装置40」が「サブ統合基板90(主制御装置30)から送られてくるコマンドに応じて図柄表示装置15の表示を制御する」のだから、引用発明の「図柄制御装置40」、「サブ統合基板90」、及び「主制御装置30」が、本願発明の「客待ち演出制御手段」に相当するものといえる。
してみると、引用発明の構成hは、本願発明の構成Hと「遊技の進行停止中に客待ち演出開始条件が成立した場合に客待ち演出を実行させ」「る客待ち演出制御手段を備え」る点で共通する。

(7)(構成I) 引用発明の構成fの「サブ統合基板90は」「操作ボタン75の操作信号に応じてスピーカ5の音量を変更」することは、本願発明の構成Iの「前記制御手段は」「遊技に関する設定の変更を」することに相当する。
また、引用発明の構成ijkの「デモ表示において」、及び「音量が調整できる」ことは、それぞれ本願発明の構成Iの「客待ち演出の実行中」、及び「遊技に関する設定の変更を可能と」することに相当する。
そして、引用発明の構成ijkにおいては「デモ表示においては、「音量調整可能期間」を表示」するものであり、当該「音量調整可能期間」の表示に関しては、同構成ijkのとおり「音量が調整できる期間は」「常に表示」されるものであるから、同構成ijkの「デモ表示において」「「音量調整可能期間」を表示」するときに、同構成fの「操作ボタン75の操作信号が入力され」た場合(本願発明の構成Iの「前記設定変更手段が操作された場合」に相当)には、実際に「音量が調整できる」(遊技に関する設定の変更を可能とする)ものといえる。そうすると、引用発明の構成ijkの「音量が調整できる期間は、図柄表示装置15にて「音量調整可能期間」を常に表示し」「デモ表示において」「「音量調整可能期間」を表示」することは、本願発明の構成Iの「前記客待ち演出の実行中に前記設定変更手段が操作された場合、遊技に関する設定の変更を可能と」することに相当する。
してみると、引用発明の構成ijkは、本願発明の構成Iに相当する構成を有する。

(8)(構成J)
ア 引用発明の構成ijkの「図柄表示装置15にて「音量調整可能期間」を」「表示」することは、本願発明の構成Hの「前記表示手段は」「設定可能表示を表示可能」とすることに相当し、同構成ijkの「デモ表示において」「「音量調整可能期間」を表示」することは、本願発明の構成Hの「客待ち演出の実行中に前記設定の変更が可能であることを示す設定可能表示を表示」することに相当する。

イ 次に、本願発明の「前記遊技球検出手段による検出が行われて該客待ち演出が強制的に終了した後も前記設定可能表示を引き続き表示可能」との事項について、本願の明細書を参照すると、【0149】?【0150】に以下のとおり記載されている。
「【0149】
通常遊技の画面に復帰する契機は、遊技者が球貸ボタン15aを操作したことや、遊技者が実際に遊技球を打ち出して、最初の遊技球が特定地点通過検出センサ47を通過したことであってもよい。これら通常遊技の画面に復帰する契機を複数備え、状況に応じて使い分けてもよい。
【0150】
また、遊技球が始動入賞して特別図柄の変動が開始するまでの間や通常遊技の画面に復帰した後、所定期間は、設定可能報知を表示したままとする(図8A参照)。これにより、打出しを開始した直後は音量の調整やキャラクタの選択が行える。」
そうすると、本願発明の構成Hの「前記設定可能表示を引き続き表示」とは、設定可能表示を際限なく表示し続ける必要はなく、打ち出しを開始した直後の音量の調節を可能とする程度の期間において表示をし続けていればよいものと解するのが妥当である。

上記理解に基づいて更に対比を行うと、引用発明の構成ijkは、「音量調整可能期間は特定変動の特定時以外の時であり、特定のリーチが出現する変動パターンを特定の変動パターンとして設定し、図柄の変動表示が行われ、特定の変動パターンであっても、この時点では画面に「音量調整可能期間」と表示されて、まだ音量調整が可能であり、期間Yを経過すると特定のリーチが始まり、「音量調整可能期間」という表示は消え、この期間は音量調整ができない期間にな」り、「音量が調整できる期間は、図柄表示装置15にて「音量調整可能期間」を常に表示」するのだから、「特定のリーチ」「以外の時」である「特定のリーチ」が始まるまでは常に「音量調整可能期間」との表示が表示され続けるものといえる。さらに、「リーチ」が始まる前に、客待ち表示が終了してから、図柄の変動表示が行われ、左右の図柄が停止するまでに一定の時間がかかることは技術常識であるから、引用発明の構成ijkにおいては、「デモ表示」後の打ち出しを開始した直後に音量の調節を可能とする程度の期間において「音量調整可能期間」の表示が表示され続けているといえる。
そうすると、引用発明の構成ijkの
「音量調整可能期間は特定変動の特定時以外の時であり、特定のリーチが出現する変動パターンを特定の変動パターンとして設定し、
図柄の変動表示が行われ、特定の変動パターンであっても、この時点では画面に「音量調整可能期間」と表示されて、まだ音量調整が可能であり、期間Yを経過すると特定のリーチが始まり、「音量調整可能期間」という表示は消え、この期間は音量調整ができない期間になる」ことは、本願発明の構成Jの「客待ち演出が」「終了した後も前記設定可能表示を引き続き表示可能であ」ることに相当する。

ウ してみると、引用発明の構成ijkは、本願発明の構成Jと、
「前記表示手段は、前記客待ち演出の実行中に前記設定の変更が可能であることを示す設定可能表示を表示可能であるとともに、」「該客待ち演出が」「終了した後も前記設定可能表示を引き続き表示可能であ」る点で共通する。

(9)(構成K)
本願発明の「引き続き前記設定の変更を可能とする」との事項について、本願の明細書【0149】?【0150】(上記(8)参照)の記載を参酌すると、本願発明の構成Kの「引き続き前記設定の変更を可能とする」とは、設定の変更を際限なく可能とする必要はなく、打ち出しを開始した直後の期間において設定を変更可能にし続けていればよいものと解するのが妥当である。
また、引用発明の構成ijkにおいては、「デモ表示」後の打ち出しを開始した直後に音量の調節を可能とする程度の期間において「音量調整可能期間」の表示が表示され続けていることは上記(8)にて説示のとおりであり、一方、引用発明の構成ijkによれば、「音量が調整できる期間は、図柄表示装置にて「音量調整可能期間」を常に表示」するのだから、引用発明の構成ijkの、
「音量調整可能期間は特定変動の特定時以外の時であり、特定のリーチが出現する変動パターンを特定の変動パターンとして設定し、
図柄の変動表示が行われ、特定の変動パターンであっても、この時点では画面に「音量調整可能期間」と表示されて、まだ音量調整が可能であ」ることは、本願発明の構成Kの「客待ち演出が」「終了した後も」「設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とすること」に相当する。
また、「音量」の「変更」(設定の変更)が「操作ボタン75」(設定変更手段)で行われることは上記(4)にて説示のとおりである。
してみると、引用発明の構成ijk及び構成fは、本願発明の構成Kと「客待ち演出が」「終了した後も前記設定変更手段による設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とする」点で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「A 遊技に関する情報を表示可能な表示手段と、
B 遊技の進行に関する制御を行う制御手段と、
C 遊技者が操作可能な発射操作手段と、
D 前記発射操作手段が操作された場合に遊技球を発射する発射手段と、
F′遊技者が遊技に関する設定の変更を行う設定変更手段と、
G を備えた弾球遊技機であって、
H′遊技の進行停止中に客待ち演出開始条件が成立した場合に客待ち演出を実行させる客待ち演出制御手段を備え、
I 前記制御手段は、前記客待ち演出の実行中に前記設定変更手段が操作された場合、遊技に関する設定の変更を可能とし、
J′前記表示手段は、前記客待ち演出の実行中に前記設定の変更が可能であることを示す設定可能表示を表示可能であるとともに、該客待ち演出が終了した後も前記設定可能表示を引き続き表示可能であり、
K′客待ち演出が終了した後も前記設定変更手段による設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とする
L 弾球遊技機。」

(相違点)(構成E、F、H、J、K)
本願発明は、
「前記発射手段によって発射された遊技球を検出する遊技球検出手段」を「備え」(構成E)、
「遊技者が遊技に関する設定の変更を行う設定変更手段」に関し、「前記遊技球検出手段とは別に設けられ」るものであり(構成F)、
「遊技の進行停止中に客待ち演出開始条件が成立した場合に客待ち演出を実行させ」る「客待ち演出制御手段」について、「該客待ち演出の実行中に前記遊技球検出手段による検出が行われた場合に該客待ち演出を強制的に終了させ」るものであり(構成H)、
「客待ち演出」の「終了」に関し、「前記遊技球検出手段による検出が行われて該客待ち演出が強制的に終了した」ものである(構成J、K)
のに対し、引用発明は、「遊技球検出手段」及び「遊技球検出手段」に関連する構成を備えない点。

6 相違点の検討
上記相違点について検討する。

(1) 引用文献2記載の事項は、上記「4 引用文献に記載された事項」「(2) 引用文献2」にて示すとおりである。

ア 引用文献2記載の事項の構成eの「遊技者による発射操作を検出可能な検出手段」のうち、「発射された遊技球を検出するセンサ」は、本願発明の構成Eの「発射手段によって発射された遊技球を検出する遊技球検出手段」に相当する。

イ また、引用文献2記載の事項の構成h-kの「特図変動表示ゲーム」が「行われていない」こと、「特図変動表示ゲームが所定時間行われていない場合」で「遊技者の発射操作を検出し」ないこと、及び「表示装置41にデモ画面を表示」することは、それぞれ本願発明の構成Hの「遊技の進行停止中」、「客待ち演出開始条件が成立した場合」、及び「客待ち演出を実行」することに相当するから、引用文献2記載の事項の構成h-kの「特図変動表示ゲームが所定時間行われていない場合」で「遊技者の発射操作を検出し」ない場合に「表示装置41にデモ画面を表示」することは、本願発明の構成Hの「遊技の進行停止中に客待ち演出開始条件が成立した場合に客待ち演出を実行」することに相当する。

ウ また、「遊技者による発射操作を検出可能な検出手段」が「発射された遊技球を検出するセンサ」(発射手段によって発射された遊技球を検出する遊技球検出手段)であることを前提とすると(引用文献2記載の事項の構成e参照)、引用文献2記載の事項の構成h?kの「デモ画面の表示中に遊技者による発射操作を検出した場合には、発射操作を検出した時点でデモ画面の表示を終了」することは、本願発明の構成Hの「該客待ち演出の実行中に前記遊技球検出手段による検出が行われた場合に該客待ち演出を強制的に終了」すること、同構成Jの「前記遊技球検出手段による検出が行われて該客待ち演出が強制的に終了」すること、及び同構成Kの「前記遊技球検出手段による検出が行われて前記客待ち演出が強制的に終了」することにそれぞれ相当する。

エ また、引用文献2記載の事項の構成lの「遊技機10」は本願発明の構成Lの「遊技機」に相当する。

(2) そして、引用発明と引用文献2記載の事項は、いずれも「遊技の進行停止中に客待ち演出開始条件が成立した場合に客待ち演出を実行させる」(構成H)、「遊技機」(構成L)である点で共通し、さらに、引用発明に対して引用文献2記載の事項を適用することに阻害要因がみられないことから、引用発明に引用文献2記載の事項を適用し、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することである。
また、引用発明の構成fの「操作ボタン75」(本願発明の構成Fの「遊技者が遊技に関する設定の変更を行う設定変更手段」に相当)と、引用文献2記載の事項の「遊技者による発射操作を検出可能な検出手段」である「発射された遊技球を検出するセンサ」(本願発明の構成Eの「発射手段によって発射された遊技球を検出する遊技球検出手段」に相当)とは、そもそも前者が「遊技者の操作」を検出するものであるのに対し、後者が「遊技球」を検出するものであり、両者はその検出対象を異とする関係にあるものなのだから、引用発明に引用文献2記載の事項を適用すれば、引用発明の「操作ボタン75」(遊技者が遊技に関する設定の変更を行う設定変更手段)は、引用文献2記載の事項の「発射された遊技球を検出するセンサ」(遊技球検出手段)とは当然に「別に設けられ」たものとなり、引用発明に引用文献2記載の事項を適用し、上記相違点に係る本願発明の構成Fとすることもまた、当業者が容易に想到することである。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2記載の事項から当業者が予測できるものである。

(3) そうすると、本願発明は引用発明及び引用文献2記載の事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 審判請求人の主張について
(1) 審判請求人(以下、単に「請求人」という。)は、令和2年8月28日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)の「(5)拒絶理由/進歩性について」「(5-1)引用発明」において、引用文献1について、
「図8のL→Mへの表示の移行は、遊技者による特定の操作ではなく、図8のL(デモ表示)において、遊技者が最後の設定操作から操作することなく、一定時間以上経過すると、自動的にMに移行すると、考えるのが妥当である。」
と主張している。
しかし、引用文献2記載の事項の構成h?kの「デモ画面の表示中に遊技者による発射操作を検出した場合には、発射操作を検出した時点でデモ画面の表示を終了」することは、本願発明の構成Hの「該客待ち演出の実行中に前記遊技球検出手段による検出が行われた場合に該客待ち演出を強制的に終了」するものである。してみると、仮に引用文献1の図8のL→Mへの表示の移行が、遊技者による特定の操作ではなく、図8のL(デモ表示)において、遊技者が最後の設定操作から操作することなく、一定時間以上経過すると、自動的にMに移行するものであったとしても、引用発明に引用文献2記載の事項を適用し、「客待ち演出の実行中に前記遊技球検出手段による検出が行われた場合に該客待ち演出を強制的に終了」するものとすることは、当業者が容易に想到することである。

(2) また請求人は意見書の「(5)拒絶理由/進歩性について」「(5-1)引用発明」において、引用文献1について、
「(b)また、拒絶理由通知書には記載されていないが、本願発明と引用発明とではもうひとつ大きな相違点が存在している(相違点4)。
それは、本願発明の構成Iが「客待ち演出が強制的に終了した後も前記設定変更手段による設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とする」ものであるのに対し、引用発明はそうなっていない点である。
引用文献1/図8には、「各遊技状態において設定操作が可能」である旨は記載されている。しかし、これはあくまでも各状態において少なくとも一部で可能であることを示した、言わば「点」の開示でしかない。
例えば、非遊技状態から遊技状態に切り替わるタイミング(引用文献1/図8のM→N)において「設定の変更を不能とせず、引き続き設定の変更を可能とする」という、言わば「線」の開示は一切されていない。」
と主張し、意見書において、「むしろ相違点4こそが一番の検討事項」とも主張している。
しかし、引用発明の構成ijkは、「音量調整可能期間は特定変動の特定時以外の時であり、特定のリーチが出現する変動パターンを特定の変動パターンとして設定し、図柄の変動表示が行われ、特定の変動パターンであっても、この時点では画面に「音量調整可能期間」と表示されて、まだ音量調整が可能であり、期間Yを経過すると特定のリーチが始まり、「音量調整可能期間」という表示は消え、この期間は音量調整ができない期間にな」り、「音量が調整できる期間は、図柄表示装置15にて「音量調整可能期間」を常に表示」するのだから、「特定のリーチ」「以外の時」である「特定のリーチ」が始まるまでは常に「音量調整可能期間」との表示が表示され続けるものといえる。そして当該常に「音量調整可能期間」との表示が表示され続ける状態は、審判請求人が意見書で主張する「線」の状態であるといえる。
さらに、「リーチ」が始まる前に、客待ち表示が終了してから、図柄の変動表示が行われ、左右の図柄が停止するまでに一定の時間がかかることは技術常識であるから、引用発明の構成ijkにおいては、「デモ表示」後の打ち出しを開始した直後に音量の調節を可能とする程度の期間において「音量調整可能期間」の表示が表示され続けているといえる(上記「5 本願発明と引用発明の対比」「(8)(構成J)」参照)。
一方、引用発明の構成ijkによれば、「音量が調整できる期間は、図柄表示装置にて「音量調整可能期間」を常に表示」するのだから、引用発明の構成ijkの、
「音量調整可能期間は特定変動の特定時以外の時であり、特定のリーチが出現する変動パターンを特定の変動パターンとして設定し、
図柄の変動表示が行われ、特定の変動パターンであっても、この時点では画面に「音量調整可能期間」と表示されて、まだ音量調整が可能であ」ることは、本願発明の構成Kの「客待ち演出が」「終了した後も設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とする」ことに相当する(上記「5 本願発明と引用発明の対比」「(9)(構成K)」参照)。
してみると、引用発明の構成ijkもまた本願発明と同じく、「設定の変更を不能とせず、引き続き設定の変更を可能とする」ものであり、引用発明の構成ijkも請求人が意見書でいう「線」の開示がされているものである。

したがって、請求人の意見書における主張を採用して、本願について特許をすべきものとする審決をすることはできない。

8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-12-24 
結審通知日 2021-01-05 
審決日 2021-01-19 
出願番号 特願2017-90104(P2017-90104)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻野 安人  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 小島 寛史
石井 哲
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  

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