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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1372080 |
審判番号 | 不服2020-6296 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-08 |
確定日 | 2021-03-11 |
事件の表示 | 特願2017- 60757「貼り合わせウェーハの製造方法及び貼り合わせウェーハ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月18日出願公開、特開2018-164006〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年3月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 2月20日 :手続補正書、上申書の提出 令和 元年12月 9日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 2月10日 :意見書の提出 令和 2年 2月27日付け:拒絶査定 令和 2年 5月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和 2年 5月 8日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和 2年 5月 8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法において、 前記ベースウェーハとして、エピタキシャルウェーハを用いるものとし、 該エピタキシャルウェーハはデバイス構造の一部として使用されるものであり、 該エピタキシャルウェーハのエピタキシャル層を形成する前の洗浄を枚葉式スピン洗浄により行うことによって、ウェーハ支持具との接触を、エピタキシャル成長を行わない領域のみにすることを特徴とする貼り合わせウェーハの製造方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1-3の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法において、 前記ボンドウェーハ及び前記ベースウェーハの少なくとも一方として、エピタキシャルウェーハを用いるものとし、 該エピタキシャルウェーハのエピタキシャル層を形成する前の洗浄を枚葉式スピン洗浄により行うことを特徴とする貼り合わせウェーハの製造方法。 【請求項2】 前記ベースウェーハとして、前記エピタキシャルウェーハを用いることを特徴とする請求項1に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。 【請求項3】 ベースウェーハ上に直接あるいは絶縁膜を介して薄膜が貼り合わせられている貼り合わせウェーハであって、 前記ベースウェーハがエピタキシャル層を有するエピタキシャルウェーハであり、 前記ベースウェーハの外周部上面のうち前記薄膜が形成されていない部分であるテラス部において、前記エピタキシャル層の成長に起因する凸欠陥であるエピタキシャル欠陥が存在しないものであることを特徴とする貼り合わせウェーハ。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ボンドウェーハ」と「ベースウェーハ」との「貼り合わせ」について、上記のとおり「直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせ」を「絶縁膜を介して貼り合わせ」に限定し、「エピタキシャルウェーハ」について、上記のとおり「前記ボンドウェーハ及び前記ベースウェーハの少なくとも一方」を「ベースウェーハ」に限定し、「エピタキシャルウェーハ」の「洗浄」について、上記のとおり限定を付加する補正を含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものに該当する。なお、請求項2、3は削除を目的とするものであり、同条同項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2003-204048号公報(平成15年7月18日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。) 「【0026】図1(a)ないし(h)は、イオン注入剥離法によるSOIウエーハの製造方法の一例を工程順に示した概略図である。この製造方法においては、まず、図1(a)のように、少なくとも一主面が平坦化及び鏡面化されたボンドウエーハ1とベースウエーハ2を準備する。このとき、本発明では、ベースウエーハ2として、エピタキシャルウエーハ、FZウエーハ、窒素ドープウエーハ、水素アニールウエーハ、イントリンシックゲッタリングウエーハ、窒素ドープアニールウエーハ、及び全面N領域のウエーハから成る群から選択された1種のシリコンウエーハを用いる。これらのシリコンウエーハは、いずれも表面上にCOPが存在しないか、低減されたウエーハとなっている。 【0027】ここで、本発明で使用される上記シリコンウエーハのいくつかを説明すると、FZウエーハとは、FZ法(Floating Zone melting method)により製造された単結晶棒から得られたウエーハのことであり、COPが存在しないウエーハである。 【0028】エピタキシャルウエーハは、シリコン単結晶基板上にエピタキシャル層を形成させたウエーハであり、エピタキシャル層にはCOPは存在しないため、これをベースウエーハとして用いれば、ベースウエーハのCOPがSOI層のCOPとして検出されると言ったようなことは無くなる。」 「【0037】そして、上記のようなボンドウエーハ1とベースウエーハ2を用意した後、これらのウエーハのうち少なくとも一方に絶縁膜3を形成する。図1(b)では、ボンドウエーハ1の方に酸化膜を形成している。形成させる絶縁膜3の厚さは特に限定されないが、本発明では、厚さが0.4μm以下の非常に薄い絶縁膜を形成しても良い。すなわち、製造されたSOIウエーハの絶縁膜やSOI層の厚さが薄いと、ベースウエーハの表面上に存在するCOPもSOI層のCOPとして検出してしまうが、本発明では、ベースウエーハとして表面付近にCOPが存在しないか、著しく減少しているシリコンウエーハを用いるので、形成する絶縁膜の厚さを0.4μm以下(さらには0.1μm以下)としても、完成後のSOI層の検査でベースウエーハのCOPがほとんど検出されることのないSOIウエーハとすることができる。 【0038】絶縁膜形成後、図1(c)のように、ボンドウエーハの研磨された主面側から、例えば水素イオンを約10^(16)ないし10^(17)atoms/cm^(2)のドーズ量で注入する。これによりボンドウエーハ内部に微小気泡層4を形成する。微小気泡層4の深さは形成するSOI層の厚さに反映されるので、目標とするSOI層の厚さに応じた深さに微小気泡層4を形成すれば良い。なお、本発明では、ベースウエーハとして表面上にCOPが存在しないか著しく低減されたシリコンウエーハを用いているので、SOI層を非常に薄く形成しても、完成後のSOI層の検査でCOPがほとんど検出されることのないSOIウエーハとすることができる。従って、本発明で形成させるSOI層の厚さは、近年要求されている0.3μm以下、あるいは0.1μm以下といった極薄の厚さとなるように微小気泡層4を形成しても良い。 【0039】次に、図1(d)のように、ボンドウエーハのイオン注入した側の面とベースウエーハの研磨された主面同士を、絶縁膜(酸化膜)3を介して貼り合わせ、接合する。 【0040】貼り合わせを行った後、ボンドウエーハに形成されている微小気泡層4を境界として剥離させる。この場合、例えば、貼り合わされたウエーハに400℃ないし500℃の熱処理を加えることで、図1(e)のようにボンドウエーハを微小気泡層4で劈開することができる。なお、劈開後のボンドウエーハ側5は再研磨され、新たなボンドウエーハもしくはベースウエーハとして再利用することができる。 【0041】一方、SOI層7と絶縁膜3によりSOI構造となった貼り合わせ基板6(SOIウエーハ)は、図1(f)のように、結合強化のための結合熱処理が加えられる。そして、図1(g)、(h)のように、劈開面(剥離面)8に対して微小量研磨を行うことにより、SOIウエーハは完成する。」 (イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「ボンドウエーハの研磨された主面側から、水素イオンを注入し、ボンドウエーハ内部に微小気泡層4を形成し、ボンドウエーハのイオン注入した側の面とベースウエーハの研磨された主面同士を、絶縁膜3を介して貼り合わせを行った後、ボンドウエーハに形成されている微小気泡層4を境界として剥離させ、SOI層7と絶縁膜3によりSOI構造となった貼り合わせSOIウエーハの製造方法において、 ベースウエーハ2として、エピタキシャルウエーハを用い、 エピタキシャルウエーハは、シリコン単結晶基板上にエピタキシャル層を形成させたウエーハである、SOIウエーハの製造方法。」 イ 引用文献2 (ア)同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2005/027204号(2005年(平成17年)3月24日国際公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「図面の簡単な説明 [0023] [図1]この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法を示す工程図である。 [図2]この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの製造方法の貼り合わせ工程を示す要部拡大断面図である。 [図3]この発明の実施例1に係る貼り合わせウェーハの未貼り合わせ領域を示す平面図である。 [図4]この発明の実施例1の他の実施形態に係る貼り合わせウェーハの製造方法のうち、貼り合わせ工程を示す貼り合わせウェーハの要部拡大断面図である。 [図5]この発明の実施例2に係る貼り合わせウェーハの製造方法を示す要部工程図である。 [図6]従来手段に係る貼り合わせウェーハの製造方法の貼り合わせ工程を示す要部拡大断面図である。 [図7]従来手段に係る貼り合わせウェーハの未貼り合わせ領域を示す平面図である。」 「実施例1 [0026] まず、図1のS101工程に示すように、ボロンが所定量ドープされたp型のシリコン単結晶インゴットをCZ法により引き上げる。引き上げ速度は、1.0mm/minである。その後、シリコン単結晶インゴットに、ブロック切断、スライス、面取り、鏡面研磨などを施す。これにより、厚さ725μm、直径200mm、面方位(100)面、比抵抗10Ωcm、p型の鏡面仕上げされた活性層用ウェーハ10と支持用ウェーハ20とが、それぞれ作製される。 [0027] その後、図1のS102工程に示すように、活性層用ウェーハ10を熱酸化装置に挿入し、酸素ガス雰囲気で熱酸化処理を施す。これにより、活性層用ウェーハ10の露出面の全域に、厚さ約0.15μmのシリコン酸化膜12aが形成される。熱処理条件は1000℃、8時間である。 続いて、活性層用ウェーハ10の鏡面仕上げされた表面から所定深さ位置に、中電流イオン注入装置を使用し、50keVの加速電圧で水素をイオン注入する。これにより、活性層用ウェーハ10に、水素イオン注入領域14が形成される。このときのドーズ量は、5×10^(16)atoms/cm^(2)である。 [0028] 次に、図1のS103工程に示すように、支持用ウェーハ20を図示しない枚葉式のCVD装置に挿入し、支持用ウェーハ20の鏡面仕上げされた表面に、ボロン濃度が5×10^(18)?8×10^(18)atoms/cm^(3)のP^(+)型のエピタキシャル層40を成長させる。 すなわち、支持用ウェーハ20をエピタキシャル成長装置の反応炉に配備されたサセプタに載置する。その後、SiHCl_(3)ガス(0.1体積% H_(2)ガス希釈)にB_(2)H_(6)ガス(分圧2?4×10^(-5))を混合し、全体で80リットル/minで反応炉に供給し、支持用ウェーハ20の表面にエピタキシャル層40を成長させる。 [0029] エピタキシャル成長温度は1100℃である。エピタキシャル層40の厚さは、活性層用ウェーハ10の表面(嵌合面)の曲率に応じ、エピタキシャル成長時間を変更させることで調整する。こうして、支持用ウェーハ20の表面に、比抵抗10?15mΩcm、活性層用ウェーハ10の表面の起伏に合致した面(嵌合面)を有するエピタキシャル層40が成長される。エピタキシャル層40を成長させることで、図1のS103工程に示すように、支持用ウェーハ20には、ウェーハ中央部が裏面の方向に突出した反りが発生する。これにより、活性層用ウェーハ10および支持用ウェーハ20の嵌合面は、それぞれ同一曲率の球面の一部により構成される。そして、活性層用ウェーハ10と支持用ウェーハ20とは互いに嵌合可能となる。 なお、支持用ウェーハ20のボロン濃度を1×10^(19)atoms/cm^(3)とし、エピタキシャル層40Aのボロン濃度をこれより低い1×10^(15)atoms/cm^(3)とした場合には、支持用ウェーハ20の反りは、ウェーハ外周部が裏面の方向に突出した形状となる。この場合には、支持用ウェーハ20の裏面を貼り合わせ面として貼り合わせる(図4)。また、エピタキシャル層40は、支持用ウェーハ20ではなく、活性層用ウェーハ10の表面に成長させてもよい。こうすれば、活性層13のCOPなどの結晶欠陥を低減化することもできる。 [0030] 続いて、図1のS104工程に示すように、シリコン酸化膜12aの表面とエピタキシャル層40の表面とを貼り合わせ面(重ね合わせ面)とし、例えば真空装置内で公知の治具により、活性層用ウェーハ10と支持用ウェーハ20とを貼り合わせて貼り合わせウェーハ30を作製する。このとき、活性層用ウェーハ10と支持用ウェーハ20との接合部分のシリコン酸化膜12aが、埋め込みシリコン酸化膜(絶縁膜)12bとなる。 この貼り合わせ時、両ウェーハ10,20の貼り合わせ面は、互いに嵌合可能な嵌合面である。そのため、貼り合わせウェーハ30の中央部だけでなくウェーハ外周部でも、両貼り合わせ面が重なり合う(図2,図3)。その結果、貼り合わせウェーハ30の外周部の未貼り合わせ領域101の幅104が2mm以下と、従来の場合の2?3mmに比べて縮小し、ボイドの発生が抑制される。よって、貼り合わせウェーハ30のうち、デバイスが形成される平坦度適用領域103を、従来より1?3%程度拡大することができる。その結果、貼り合わせSOIウェーハの歩留りが大きくなり、以降のウェーハ加工時におけるチッピング、ウェーハ剥がれを低減することができる。なお、ここでいう未貼り合わせ領域101の幅104とは、貼り合わせウェーハ30の半径方向における未貼り合わせ領域101の長さをいう。 [0031] それから、図1のS105工程に示すように、貼り合わせウェーハ30を図示しない剥離熱処理装置に挿入し、500℃の炉内温度、窒素ガスの雰囲気で熱処理する。熱処理時間は30分間である。この熱処理により、支持用ウェーハ20の貼り合わせ界面に活性層13を残し、活性層用ウェーハ10が水素イオン注入領域14から剥離する。剥離後の活性層用ウェーハ10は、その後の支持用ウェーハ20用のシリコンウェーハとして再利用することも可能である。 剥離後、図1のS106工程に示すように、貼り合わせウェーハ30に対して、窒素ガスの雰囲気で1150℃、2時間の貼り合わせ熱処理を施す。これにより、活性層用ウェーハ10と支持用ウェーハ20との貼り合わせ強度が増強される。 次いで、図1のS107工程に示すように、活性層13の表面に研磨装置による研磨を施す。こうして、スマートカット法を利用し、厚さ約0.2μmの活性層13を有した貼り合わせSOIウェーハ(貼り合わせウェーハ)が作製される。」 (イ)上記(ア)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「活性層用ウェーハ10の表面から所定深さ位置に、水素をイオン注入し、活性層用ウェーハ10に、水素イオン注入領域14を形成し、支持用ウェーハ20の表面にエピタキシャル層40を成長させ、活性層用ウェーハ10に形成されたシリコン酸化膜12aの表面とエピタキシャル層40の表面とを貼り合わせ面(重ね合わせ面)とし、活性層用ウェーハ10と支持用ウェーハ20とを貼り合わせ、支持用ウェーハ20の貼り合わせ界面に活性層13を残し、活性層用ウェーハ10が水素イオン注入領域14から剥離させる、貼り合わせウェーハの製造方法。」 ウ 周知技術 (ア)周知技術1 a 本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-50746号公報(平成14年2月15日出願公開。以下「周知例1」という。)には、次の記載がある。 「【0012】次に図1に示す半導体装置の製造工程例を図3をもとに説明する。P型導電型である半導体支持基板1上に膜厚が0.2μmから0.5μmである埋込酸化膜2が形成され、さらにこの埋込酸化膜2の上に膜厚が0.2μmから0.5μmのP型シリコン活性層3を有する貼り合わせSO1基板を用意する。この埋込酸化膜2の厚さは必要とされる絶縁膜耐圧、シリコン活性層3の厚さは必要とされるソース・ドレイン間の耐圧により決まる。また半導体支持基板1とシリコン活性層3は、入力保護素子及び内部回路の特性に合わせ、異なる濃度の基板を用いて構わない。またシリコン活性層3の導電型はN型でも構わない。さらにシリコン活性層3と半導体支持基板1が同導電型で基板濃度も等しい場合はSIMOX基板を用いても構わない。 【0013】このSO1基板にフォトレジスト12をコートし、後に半導体支持基板1に入力保護素子を形成する領域のパターニングを施す(図3(a))。このレジストパターン12をマスク材としてRIE異方性ドライエッチでシリコン活性層3を埋込酸化膜2が露出するまでエッチングする(図3(b))。さらにこのフォトレジスト12をマスク材として、RIE異方性ドライエッチにより埋込酸化膜2をエッチングする。このときエッチングは途中で止め、埋込酸化膜12に一部が残るようにする(図3(c))。このエッチング残りの埋込酸化膜が0.05μmから0.1μmまでになるようにエッチングを行うのが好ましい。その後、フォトレジスト12を除去したのち、例えばバッファードフッ酸を用いて等方性ウエットエッチングを行い、残りの埋込酸化膜を取り除き、半導体支持基板1の表面を露出させる(図3(d))。このように埋込酸化膜除去に異方性ドライエッチ及び等方性ウェットエッチを用いることで、半導体支持基板1にダメージを与えることなく、保護素子を形成する領域を形成することができ、また埋込酸化膜2の横方向のエッチングを極力抑えることでシリコン活性層3の剥がれを防ぐことができる。 【0014】次に熱酸化を行い、シリコン活性層3及び半導体支持基板1に熱酸化膜13を形成する。この熱酸化膜厚はおよそ0.01μmから0.04μmである。この熱酸化膜の上に、減圧CVD法で多結晶シリコン7を堆積させる(図3(e))。この時多結晶シリコンは、ウエットエッチングによる埋込酸化膜2の横方向エッチで形成された庇形状部分下にも回り込んで堆積する。ここの多結晶シリコン7の膜厚は、シリコン活性層1から半導体支持基板3までの深さと同等とする。その後RIE異方性ドライエッチで多結晶シリコン膜をその下の熱酸化膜が露出するまでエッチングすることで、シリコン活性層と半導体支持基板の段差部側壁に多結晶シリコンのサイドスペーサーを形成する(図3(D)。この時異方性エッチングの反応ガスはSF6が望ましい。これらの工程により半導体支持基板開口部形成で生じた段差形状を改善することができる。上記の工程のあとは、従来のバルクシリコン基板にMOSトランジスタを形成する工程を、シリコン活性層3及び半導体支持基板1に施すことにより、図1に示すような構成が完成する。また図1において入力保護素子をN型MOSトタンジスタ11としたが、ダイオードを保護素子として用いても構わない。」 b 本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-256649号公報(平成24年12月27日出願公開。以下「周知例2」という。)には、次の記載がある。 「【0036】 このような製造工程で得られた図2に示す半導体ウエハ10は、第1導電型層(P型半導体層102)の上に第2導電型層(N型半導体層104)が形成された半導体基板12、半導体基板12上に形成された絶縁層106、及び絶縁層106上に形成された半導体層(SOI層108)を有するSOI基板を備える。 この半導体ウエハ10は、平面視において、第1導電型層(P型半導体層102)の面積をS1とし、第2導電型層(N型半導体層104)の面積をS2としたとき、S2/S1が80%以上であることにより特定される。」 「【0073】 (第2の実施の形態) 第2の実施の形態の半導体装置100は、バルクPFET領域70及びバルクNFET領域80を有する点を除いて、基本的には第1の実施の形態と同様である。 以下、第1の実施の形態の相違点を詳述する。 【0074】 図9は、第2の実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。図10は、第2の実施の形態の半導体装置の構成を示す平面図である。また、図11は、第2の実施の形態の半導体装置のレイアウト配置の一例を示す図である。 第2の実施の形態の半導体装置100は、半導体基板、第1素子分離絶縁層、第2素子分離絶縁層、第1導電型の第1トランジスタ、第2導電型の第1トランジスタ、第2導電型の第2トランジスタ、第1バックゲートコンタクト、及び第2バックゲートコンタクトを備える。 【0075】 半導体基板12は、第1導電型層(P型半導体層102)の上に形成された第2導電型層(N型半導体層104)を有する。第2素子分離層(素子分離層110c)は、半導体基板12に埋め込まれていて、下端がP型半導体層102に達しており、SOI領域60とバルク領域(バルクPFET領域70)とを分離する。SOI領域60は、半導体基板12上に形成された絶縁層(絶縁層106)及び絶縁層106上に形成された半導体層(SOI層108)をさらに有する。第1素子分離絶縁層(素子分離層110a)は、SOI領域60に位置している半導体基板12に埋め込まれ、下端がP型半導体層102に達しており、第1素子領域(PFET領域40)と第2素子領域(NFET領域30)とを分離する。 【0076】 第1導電型の第1トランジスタ(P型トランジスタ130b)は、PFET領域40に位置し、SOI層108に形成されたチャネル領域120bを備える。第2導電型の第1トランジスタ(N型トランジスタ130a)は、NFET領域30に位置し、SOI層108に形成されたチャネル領域120aを備える。第1バックゲートコンタクト(バックゲートコンタクト134b)は、第1素子領域(PFET領域40)に位置する第2導電型層(SOI層108)に接続する。第2バックゲートコンタクトは、第2素子領域(NFET領域30)に位置する第2導電型層(SOI層108)に接続する。 【0077】 また、第1導電型の第2トランジスタ(P型トランジスタ130c)は、バルクPFET領域70に位置し、第2導電型層(Nウェル152)上に形成される。 このような半導体装置100は、第2導電型層(N型半導体層104)の第2導電型の不純物濃度が10^(18)atoms/cm^(3)以上であり、第1導電型のトランジスタ(P型トランジスタ130b)が形成されている半導体層(SOI層108)における第2導電型の不純物濃度が、PFET領域40に位置する第2導電型層(N型半導体層104)の第2導電型の不純物濃度の1/10以下により特定される。 【0078】 また、第2の実施の形態の半導体装置100は、図9に示す以下の構成をさらに備えてもよい。すなわち、本実施の形態の半導体装置100は、バルクPFET領域70及びバルクNFET領域80から構成されるバルク領域、及び基板コンタクト領域50をさらに備える。 バルク領域において、半導体基板12に埋め込まれており、第3素子領域(バルクPFET領域70)と第4素子領域(バルクNFET領域80)とは第3素子分離絶縁層(素子分離層110d)により分離される。 【0079】 バルクPFET領域70には、P型トランジスタ130cが形成される。P型トランジスタ130cは、Nウェル152上に形成されたゲート絶縁層122c及びゲート電極124c、ゲート電極124cの両側であって、Nウェル152の表面近傍に形成されたP型拡散領域116c及びP型エクステンション領域156cを備える。ゲート電極124cの両壁上にはスペーサ126cが形成される。P型エクステンション領域156cにはコンタクト128cが接続される。また、Nウェル152とP型半導体層102との間にNウェル150(第2導電型のウェル)が形成される。また、本実施の形態では、バルクPFET領域70(バルク領域)に位置する第2導電型層は、Nウェル152でもよいが、SOI領域60に位置するN型半導体層104と同一でもよい。本実施の形態では、同一であるとは、同じ導電型の不純物及び同じ傾向の濃度プロファイルを有することを意味する。」 c 上記a、bから、以下の技術的事項は周知であるものと認められる。 「SOI基板において、半導体支持基板(ベースウェーハ)のバルク領域にデバイスを形成すること。」 (イ)周知技術2 a 同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2000-31071号公報(平成12年1月28日出願公開。以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 「【発明の属する技術分野】本発明はシリコンエピタキシャルウェーハの製造に用いられる半導体製造装置とこれを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法に関し、特にエピタキシャル成長前後の徹底した微粒子の付着防止により高品質のエピタキシャル層を得る技術に関する。」 「【0010】シリコンエピタキシャルウェーハの製造においては、突起状欠陥や積層欠陥のない高品質なシリコンエピタキシャル層を形成し、かつエピタキシャル成長後にはピットを発生させないような高度な製造方法が要望されている。本発明は、この要望に対して有効な対策となり得る半導体製造装置と、これを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを目的とする。」 「【0015】 【発明の実施の形態】本発明では、まずエピタキシャル成長を行う前にオゾン添加水を用いた洗浄(以下、O_(3 )水洗浄と称する。)を行い、O_(3 )の強力な酸化力を利用してエピタキシャル成長前にシリコンウェーハ表面へ付着しているシリコン系微粒子Pや金属微粒子Mを除去する。O_(3 )水洗浄の原理については、たとえば日経マイクロデバイス1997年3月号p.90?95(日経BP社刊)に詳述されている。O_(3 )は、Cu^(2+)のようにH^(+ )よりも酸化還元電位が高い金属イオンがSiと共存する場合であっても、Si表面の方から優先的に電子を引き抜く。このため、金属はイオン化された状態のまま水相中に安定に存在し続け、一方のSi表面は薄い化学的シリコン酸化膜で被覆されることになる。この化学的シリコン酸化膜は、Siとその周囲に存在する金属イオンと間の電子交換を阻害し、金属イオンが金属微粒子としてエピタキシャル層の表面に付着することを防止する働きをする。」 「【0021】 【実施例】実施例1 本実施例では、本発明の半導体製造装置の一例として、前処理チャンバ、気相成長チャンバ、後処理チャンバがそれぞれ個別の搬送路を介してインライン配列された装置の構成を図1および図2を参照しながら説明する。図1の構成では、向かって左側から搬送路(T)4a、O_(3 )洗浄を行うための前処理チャンバ(PreP)1、搬送路(T)4b、気相成長チャンバ(Epi)2、搬送路(T)4c、エピタキシャルウェーハの表面を化学的シリコン酸化膜で保護するための後処理チャンバ(PostP)3、および搬送路(T)4dが、それぞれゲートバルブ6を介してインライン配列されている。各搬送路4a,4b,4c,4dはウェーハ移送手段であるハンドラ5a,5b,5c,5dを備えており、隣接するチャンバ間でウェーハを移送できるようになされている。なお、上記搬送路(T)内部の雰囲気は、米国連邦規格209Bによるクラス10、あるいはこれより高い清浄度に保つことにより、64MDRAMおよびそれ以降の世代の高集積化半導体デバイスの製造に使用可能なエピタキシャルウェーハを製造することができる。 【0022】上記前処理チャンバ(PreP)1として、たとえば枚葉式スピン洗浄機を備えたチャンバの模式的断面図を図2に示す。上記枚葉式スピン洗浄機は、円形の洗浄カップ11の内部に鏡面研磨されたシリコン単結晶基板Sを載置するためのウェーハステージ13が収容され、該ウェーハステージ13の上方にはO_(3 )水を導入するための給液管15が配され、該給液管15の末端にはノズル14が接続されている。上記ノズル14には超音波振動板16が内蔵されており、吐出される直前のO_(3 )添加水にメガソニック帯域の超音波振動が印加されるようになされている。かかる構成により、上記ウェーハステージ13を図示されない駆動手段により回転させながら、上記ノズル14から供給されるO_(3 )水を用いてシリコン単結晶基板Sのメガソニック洗浄が行われる。ウェーハステージ13の縁部から溢れたO_(3 )水は、洗浄カップ11の底面に開口されたドレイン12から排水される。」 b 同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2010/150547号(2010年(平成22年)12月29日国際公開。以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。 「技術分野 [0001] 本発明は、鏡面研磨後のシリコンウェーハの洗浄方法、およびその洗浄方法を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法に関し、特に、エピタキシャルウェーハの表面品質の確保を図ったシリコンウェーハの洗浄方法、およびエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。」 「実施例 [0046] 本発明のシリコンウェーハの洗浄方法およびエピタキシャルウェーハの製造方法の効果を確認するため、下記の試験を行った。 [0047] 本発明例として、鏡面研磨を施した直径300mmの供試ウェーハを5枚準備し、各供試ウェーハに前記図3に示す各処理を施して洗浄を行い、その後にエピタキシャル処理を施した。洗浄では、60秒のオゾンガス処理および120秒のフッ化水素蒸気処理を行い、次に、10秒のオゾン水処理および3秒の希フッ酸処理を2回繰り返し行い、再度10秒のオゾン水処理を行った後に、10秒の純水処理および25秒のスピン乾燥処理を行った。エピタキシャル処理では、原料ガスにSiHCl_(3)を用い、反応炉内温度を1130℃とし、厚さ5μmのエピタキシャル層を気相成長させた。」 c 同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2005/057640号(2005年(平成17年)6月23日国際公開。以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。 「技術分野 [0001] この発明はエピタキシャルウェーハおよびその製造方法、詳しくはシリコンウェーハの表面にエピタキシャル膜を成膜するエピタキシャルウェーハおよびその製造方法に関する。」 「実施例1 [0026] まず、この発明の実施例1を図1および図2を参照して説明する。 ここでは、シリコンウェーハの表面を撥水面、裏面も撥水面となるように洗浄した後、エピタキシャル成長によりエピタキシャル膜を成膜するエピタキシャルウェーハの製造方法について説明する。本実施例に係るエピタキシャルウェーハの製造方法は、図1に示すフローチャートに基づいて行われる。 まず、図1のS101工程に示すように、CZ(チョクラルスキー)法により育成されたシリコンインゴットからスライスした口径8インチのシリコンウェーハを準備する。 次に、図1のS102工程に示すように、スライスされたシリコンウェーハは面取り工程で、その周縁部が面取り用の砥石を用いて所定形状に面取りされる。その結果、シリコンウェーハの周縁部は、断面が所定の丸みを帯びた形状に成形される。 続く図1のS103工程に示すラッピング工程においては、ラップ盤により面取りウェーハについてのラップ加工を施す。 そして、次の図1のS104工程に示すエッチング工程では、ラップドウェーハを所定のエッチング液(混酸またはアルカリ+混酸)に浸漬し、ラップ加工での歪み、面取り工程などの歪みなどを除去する。この場合、通常片面で20μm、両面で40μm程度をエッチングする。 その後、図1のS105工程に示すように、必要に応じシリコンウェーハにドナーキラー熱処理工程を施す。 次いで、図1のS106工程に示すように、このシリコンウェーハを、両面研磨法を使用してシリコンウェーハ11の表面および裏面に鏡面研磨を施す。 そして、図1のS107工程から図1のS109工程に示す下記の第1の洗浄工程、第2の洗浄工程および第3の洗浄工程を順次実施する。 この後、図1のS110工程に示すように、平坦化されたシリコンウェーハの表面にシリコンのエピタキシャル膜を成長させる。すなわち、原料ガスであるトリクロルシランを、キャリアガスであるH_(2)ガスと必要に応じたドーパントガスとともに反応炉へ導入し、1000?1200℃の高温に熱せられたシリコンウェーハ上に、原料ガスの熱分解または還元によって生成されたシリコンを、反応速度0.5?6.0μm/分で成長させる。 最後に、図1のS111工程に示すように、エピタキシャル成長の後処理洗浄工程を行う。具体的には、エピタキシャル成長前の第1の洗浄工程と同じRCA洗浄(SC-1液による洗浄およびSC-2液による洗浄)である。 以上の工程により、エピタキシャルウェーハを完成させる。 [0027] 次に、図2を参照して、第2の洗浄工程および第3の洗浄工程について詳細に説明する。 第1の洗浄工程は、まず、シリコンウェーハの表裏面をSC-1液(アルカリ洗浄)で洗浄し、この後、SC-2液(酸洗浄)で洗浄する工程である。 SC-1液は、アンモニア水溶液:過酸化水素水:水=1:5:50の比(容量比)で作製し、50?85℃で洗浄する。このSC-1洗浄により、シリコンウェーハの表裏面に付着したパーティクルが除去される。 また、SC-2液は、塩酸水溶液:過酸化水素水:水=1:1:100?1:1:5の比(容量比)で作製し、常温(室温)?70℃で洗浄する。このSC-2洗浄により、シリコンウェーハの表裏面の金属不純物が除去される。 [0028] 次に、図2に示すように、シリコンウェーハの表裏面について第2および第3の洗浄工程を実施する。これらの工程は、図5に示す枚葉式の洗浄装置を用いて実施する。 図5に示す枚葉式の洗浄装置には、シリコンウェーハ11の表面をブラシ洗浄するためのスポンジブラシ13と、シリコンウェーハ11の表面または裏面に純水を供給する純水供給管14、16と、シリコンウェーハ11の表面または裏面にHF溶液を供給するHF溶液供給管15、17などを備えている。また、シリコンウェーハ11のエッジ部分を固定するエッジチャック12が設けられている。バキュームチャック方式ではシリコンウェーハの裏面を吸着する際にその裏面に汚れを生じさせる。しかし、エッジチャック12であれば、チャックとの接触部分がシリコンウェーハ11のエッジ部であるため、シリコンウェーハ11の表裏面を汚染させることはない。さらに、シリコンウェーハ11の周囲にはカバー18が設けられている。」 「 」 上記図5から、枚葉式の洗浄装置において、エッジチャック12との接触を、シリコンウェーハ11のエピタキシャル膜を成長させない領域のみにすることが見てとれる。 d 上記a-cから、以下の技術的事項は周知であるものと認められる。 「エピタキシャルウェーハの製造方法において、エピタキシャル成長前に枚葉式スピン洗浄により洗浄を行うこと。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「貼り合わせSOIウエーハの製造方法」は、本件補正発明の「貼り合わせウェーハを製造する方法」に対応する。 (イ)引用発明1の「ボンドウエーハ」は、本件補正発明の「ボンドウェーハ」に相当し、引用発明1では、「水素イオンを注入し、ボンドウエーハ内部に微小気泡層4を形成」する工程を有し、「微小気泡層4」は水素イオンが注入された層であることから、本件補正発明と引用発明1とは、「ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成」する点で一致する。 (ウ)引用発明1の「ベースウエーハ」、「絶縁膜3」、「SOI層7」は、それぞれ、本件補正発明の「ベースウェーハ」、「絶縁膜」、「薄膜」に相当し、引用発明1は、「ボンドウエーハのイオン注入した側の面」と「ベースウエーハ」の表面とを「絶縁膜3を介して貼り合わせを行った後、ボンドウエーハに形成されている微小気泡層4を境界として剥離させ、SOI層7と絶縁膜3によりSOI構造となった貼り合わせSOIウエーハの製造方法」であることから、本件補正発明と引用発明1とは、「前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法」である点で一致する。 (エ)引用発明1では、「ベースウエーハ2として、エピタキシャルウエーハを用い」るものであることから、本件補正発明と引用発明1とは、「前記ベースウェーハとして、エピタキシャルウェーハを用いるもの」である点で一致する。 イ 上記アから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法において、 前記ベースウェーハとして、エピタキシャルウェーハを用いるものとする、貼り合わせウェーハの製造方法。」 (相違点) (相違点1) 本件補正発明では、ベースウェーハとして用いる「該エピタキシャルウェーハはデバイス構造の一部として使用されるもの」であるのに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。 (相違点2) 本件補正発明では、「エピタキシャル層を形成する前の洗浄を枚葉式スピン洗浄により行うことによって、ウェーハ支持具との接触を、エピタキシャル成長を行わない領域のみにする」のに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。 ウ 本件補正発明と引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2の「貼り合わせウェーハの製造方法」は、本件補正発明の「貼り合わせウェーハを製造する方法」に対応する。 (イ)引用発明2の「活性層用ウェーハ10」、「水素イオン注入領域14」は、それぞれ、本件補正発明の「ボンドウェーハ」、「イオン注入層」に相当し、本件補正発明と引用発明2とは、「ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成」する点で一致する。 (ウ)引用発明2の「支持用ウェーハ20」、「シリコン酸化膜12a」、「活性層13」は、それぞれ、本件補正発明の「ベースウェーハ」、「絶縁膜」、「薄膜」に相当し、引用発明2は、「活性層用ウェーハ10」の「水素をイオン注入」した表面と「支持用ウェーハ20」の表面とを「シリコン酸化膜12a」とを介して貼り合わせた後、「活性層13を残し、活性層用ウェーハ10が水素イオン注入領域14から剥離させる、貼り合わせウェーハの製造方法」であることから、本件補正発明と引用発明2とは、「前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法」である点で一致する。 (エ)引用発明2では、「支持用ウェーハ20の表面にエピタキシャル層40を成長させ」るものであるところ、引用発明2の「エピタキシャル層40」を有する「支持用ウェーハ20」は、本件補正発明の「エピタキシャルウェーハ」に相当するといえるから、本件補正発明と引用発明2とは、「前記ベースウェーハとして、エピタキシャルウェーハを用いるもの」である点で一致する。 エ 上記ウから、本件補正発明と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法において、 前記ベースウェーハとして、エピタキシャルウェーハを用いるものとする、貼り合わせウェーハの製造方法。」 (相違点) (相違点3) 本件補正発明では、ベースウェーハとして用いる「該エピタキシャルウェーハはデバイス構造の一部として使用されるもの」であるのに対し、引用発明2では、そのような特定はなされていない点。 (相違点4) 本件補正発明では、「エピタキシャル層を形成する前の洗浄を枚葉式スピン洗浄により行うことによって、ウェーハ支持具との接触を、エピタキシャル成長を行わない領域のみにする」のに対し、引用発明2では、そのような特定はなされていない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1、3について 相違点1、3について、まとめて検討する。 上記(2)ウ(ア)cのとおり、SOI基板において、半導体支持基板(ベースウェーハ)のバルク領域にデバイスを形成することは周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。 してみれば、引用発明1、2は、SOI基板に関するものであるから、引用発明1、2において、周知技術1に基づき、それぞれ、「ベースウエーハ2」、「支持用ウェーハ20」として用いるエピタキシャルウェーハのバルク領域にデバイスを形成することは、当業者が適宜なし得たことである。 イ 相違点2、4について 相違点2、4について、まとめて検討する。 上記(2)ウ(イ)dのとおり、エピタキシャルウェーハの製造方法において、エピタキシャル成長前に枚葉式スピン洗浄により洗浄を行うことは周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。 してみれば、引用発明1、2は、エピタキシャルウェーハを用いるものであるから、引用発明1、2において、周知技術2に基づき、それぞれ、「エピタキシャル層を形成」する前、「エピタキシャル層40を成長」する前に、枚葉式スピン洗浄により洗浄を行うことは、当業者が適宜なし得たことである。 また、上記引用文献6の図5及び段落[0028]の記載から、引用文献6には、枚葉式の洗浄装置において、エッジチャックやバキュームチャック(ウェハ支持具に対応)を、エピタキシャル成長を行わない領域のみに接触させるようにすることが記載されていると認められ、引用発明1、2において、それぞれ、「エピタキシャル層」、「エピタキシャル層40」のエピタキシャル成長を行う領域に汚れなどが生じないように、ウェハ支持具との接触を、エピタキシャル成長を行わない領域のみにするものとすることは、当業者が当然に行う事項に過ぎない。 ウ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、「3.3 本願発明の進歩性について ・・・(略)・・・ (3) しかしながら、そもそも引用文献4-6には、エピタキシャル層を形成する前に枚葉式スピン洗浄を行うことは記載されているものの、そのエピタキシャル層を貼り合わせに用いること(エピタキシャルウェーハを貼り合わせSOIウェーハ作製用の材料ウェーハとして使用すること)については、記載も示唆もされておりません。従って、いくつかある公知の洗浄方法の中から、引用文献4-6に記載の枚葉式スピン洗浄を選択し、引用文献1-3に記載のエピタキシャル層を形成する前の洗浄に適用する動機がありません。 (4)また、補正後の請求項1に係る発明は、上記のように「エピタキシャル層を形成する前の洗浄を枚葉式スピン洗浄により行うことによって、ウェーハ支持具との接触を、エピタキシャル成長を行わない領域のみにする」ことを特徴としています。このことについて、引用文献1-6のいずれにも記載も示唆もされておりません。従って、もし引用文献1-3に記載された発明に引用文献4-6に記載された発明を組み合わせることができたとしても、本願発明に容易に想到することはできません。さらに、本願発明は上記の有利な効果を奏します。 (5)さらに、補正後の請求項1に係る発明は、上記のように「ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを絶縁膜を介して貼り合わせた後、…(略)… 前記ベースウェーハとして、エピタキシャルウェーハを用いるものとし、該エピタキシャルウェーハはデバイス構造の一部として使用されるもの」であることを特徴としています。すなわち、本願発明のエピタキシャルウェーハは、埋め込み絶縁膜層の下地のエピタキシャル層をデバイス構造の一部として使用する場合を想定しています(本願明細書[0029]段落)。 これに対し、引用文献1では単にCOPが存在しないウェーハの一例としてエピタキシャルウェーハを挙げており(引用文献1[0016]段落)、引用文献2ではベースウェーハに反り(変形)を発生させるためにエピタキシャル層を成長させています(引用文献2[0012]段落)。いずれの場合においても、目的が本願発明とは異なっており、本願発明のようにエピタキシャルウェーハをデバイス構造の一部として使用することの記載はありません。すなわち、作製される貼り合わせSOIウェーハの一部であるエピタキシャルウェーハを、どの様な目的(用途)に対して使用するかという根本的な技術思想において、本願発明と引用文献1-2は全く相違しています。また、引用文献3はボンドウェーハにエピタキシャルウェーハを用いており(引用文献3[0046]段落、図7)、ベースウェーハにエピタキシャルウェーハを用いる本願発明とは明らかに異なっています。そのため、引用文献3においても、本願発明のようにエピタキシャルウェーハをデバイス構造の一部として使用するものではありません。 従って、本願発明を得るために引用文献1-3に記載された発明に引用文献4-6に記載された発明を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得るものではありません。 (6) 以上のことから、補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1-6に対して進歩性を有します。」と主張している。 しかしながら、上記(2)ア(イ)、イ(イ)のとおり、引用発明1、2は、それぞれ、「エピタキシャル層を形成」、「エピタキシャル層40を成長」させることで、エピタキシャルウェーハを製造し、エピタキシャルウェーハを貼り合わせSOIウェーハ作製用の材料ウェーハとして使用するものであり、上記イのとおり、周知技術2は、エピタキシャルウェーハの製造方法において、エピタキシャル層を形成する前に枚葉式スピン洗浄により洗浄を行うものであることから、引用発明1、2及び周知技術2は、エピタキシャルウェーハを製造する技術で共通性があり、引用発明1、2のそれぞれに周知技術2を適用する動機付けは存在する。 また、上記イのとおり、引用文献6には、枚葉式の洗浄装置において、エッジチャックやバキュームチャック(ウェハ支持具に対応)が、エピタキシャル成長を行わない領域のみに接触することが示されている。 さらに、上記アのとおり、SOI基板において、半導体支持基板(ベースウェーハ)のバルク領域にデバイスを形成することは周知技術であり、引用発明1、2のSOI基板を、周知技術1のように使用することは、当業者が適宜なし得たことである。 よって、請求人の上記主張を採用することはできない。 (5)判断についてのまとめ 以上のとおりであるから、引用発明1において、上記周知技術1、2に基づいて、相違点1、2に係る本件補正発明の構成、それぞれを想到することは、当業者が容易になし得たことである。 加えて、引用発明2において、上記周知技術1、2に基づいて、相違点3、4に係る本件補正発明の構成、それぞれを想到することは、当業者が容易になし得たことである。 また、上記相違点1、2及び上記相違点3、4を総合的に勘案しても、本件補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 したがって、本件補正発明は、引用発明1及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもの、引用発明2及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和 2年 5月 8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-3に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1-3に記載された発明及び引用文献4-6に記載された技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2003-204048号公報 引用文献2:国際公開第2005/027204号 引用文献3:特開2004-247609号公報 引用文献4:特開2000-31071号公報 引用文献5:国際公開第2010/150547号 引用文献6:国際公開第2005/057640号 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2、4-6及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「ボンドウェーハ」と「ベースウェーハ」との「貼り合わせ」について、「直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせ」と選択可能にし、「エピタキシャルウェーハ」について、「前記ボンドウェーハ及び前記ベースウェーハの少なくとも一方」と選択可能にし、「エピタキシャルウェーハ」に係る限定事項を削除したものであり、本件補正発明と引用発明1、2との一致点及び相違点は、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおりである。 そうすると、本願発明と引用発明1、2とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 (引用発明1との対比) (一致点) 「ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法において、 前記ボンドウェーハ及び前記ベースウェーハの少なくとも一方として、エピタキシャルウェーハを用いるものとする、貼り合わせウェーハの製造方法。」 (相違点) (相違点5) 本願発明では、「該エピタキシャルウェーハのエピタキシャル層を形成する前の洗浄を枚葉式スピン洗浄により行う」のに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。 (引用発明2との対比) (一致点) 「ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法において、 前記ボンドウェーハ及び前記ベースウェーハの少なくとも一方として、エピタキシャルウェーハを用いるものとする、貼り合わせウェーハの製造方法。」 (相違点) (相違点6) 本願発明では、「該エピタキシャルウェーハのエピタキシャル層を形成する前の洗浄を枚葉式スピン洗浄により行う」のに対し、引用発明2では、そのような特定はなされていない点。 相違点5、6について、まとめて検討すると、前記第2の[理由]2(4)イに記載したとおり、引用発明1、2において、周知技術2に基づき、それぞれ、「エピタキシャル層を形成」する前、「エピタキシャル層40を成長」する前に、枚葉式スピン洗浄により洗浄を行うことは、当業者が適宜なし得たことである。 以上のとおりであるから、引用発明1において、上記周知技術2に基づいて、相違点5に係る本願発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たことである。 加えて、引用発明2において、上記周知技術2に基づいて、相違点6に係る本願発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本願発明は、引用発明1及び引用文献4-6に記載された周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもの、引用発明2及び引用文献4-6に記載された周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-12-23 |
結審通知日 | 2021-01-05 |
審決日 | 2021-01-20 |
出願番号 | 特願2017-60757(P2017-60757) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宇多川 勉 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
▲吉▼澤 雅博 脇水 佳弘 |
発明の名称 | 貼り合わせウェーハの製造方法及び貼り合わせウェーハ |
代理人 | 小林 俊弘 |
代理人 | 好宮 幹夫 |