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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01G
管理番号 1372122
審判番号 不服2020-10297  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-22 
確定日 2021-03-30 
事件の表示 特願2016- 51337「積層セラミックキャパシタ及びその実装基板」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 2日出願公開、特開2017- 45977、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月15日(パリ条約による優先権主張2015年8月26日、韓国)の出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。
令和 1年10月25日付け:拒絶理由通知
令和 2年 1月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月16日付け:拒絶査定
令和 2年 7月22日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の下記の請求項に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1、2、5、6、8、11-14、16-18
・引用文献等 1、3、5

・請求項 3、4、10、15
・引用文献等 1-3、5

・請求項 7、9、19
・引用文献等 1-5

引用文献等一覧
1.特開2015-023287号公報
2.特開2015-088747号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2014-123696号公報
4.特開2013-055321号公報(周知技術を示す文献)
5.特開平02-086109号公報(新たに引用した文献;周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明18」という。)は、令和2年7月22日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし18は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数の誘電体層が積層され、前記複数の誘電体層を介して交互に配置され、セラミック本体の実装面と対向する面に露出する第1及び第2内部電極を含む活性領域を含むセラミック本体と、
前記第1内部電極において前記セラミック本体の実装面に露出するように延長されて形成され、前記セラミック本体の長さ方向に沿って互いに離隔するように配置される第1及び第2リード部と、
前記第2内部電極において前記セラミック本体の実装面に露出するように延長されて形成され、前記第1及び第2リード部の間に配置される第3リード部と、
前記セラミック本体の実装面に前記セラミック本体の長さ方向に沿って互いに離隔するように配置され、前記第1及び第2リード部とそれぞれ接続される第1及び第2外部電極と、
前記セラミック本体の実装面に前記第1及び第2外部電極の間に配置され、前記第3リード部と接続される第3外部電極と、
前記セラミック本体の実装面と対向する面に配置される絶縁層と、を含み、
前記第1内部電極は前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、前記セラミック本体の長さ方向の両面及び実装面から離隔する第1本体部を含み、
前記第2内部電極は前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、前記セラミック本体の長さ方向の両面及び実装面から離隔する第2本体部を含み、
前記第1本体部の一面の全体が前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、
前記第2本体部の一面の全体が前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、
前記複数の誘電体層と前記絶縁層が異なる物質で形成され、前記絶縁層が前記セラミック本体の実装面と対向する面の全体をカバーし、エポキシを含む、積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記複数の誘電体層及び内部電極がセラミック本体の幅方向に積層される、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記第1から第3リード部の幅が前記第1から第3外部電極の幅よりそれぞれ狭く形成される、請求項1または2に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記第1から第3外部電極は、前記第1から第3リード部において前記セラミック本体の実装面に露出する部分をそれぞれすべて覆うように形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記第1から第3リード部の一部が前記第1から第3外部電極によって覆われずに前記セラミック本体の実装面に露出するように形成され、
前記第1及び第3外部電極の間、及び前記第2及び第3外部電極の間に第1及び第2絶縁部が配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
前記第1及び第2リード部と前記第3リード部が内部電極の積層方向に沿って重ならない、請求項5に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
前記第1及び第2リード部の一部と前記第3リード部の一部が内部電極の積層方向に沿って重なる、請求項5に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記第1及び第2リード部の間のギャップの長さが前記第3リード部の長さより大きい、請求項5から7のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
前記第1及び第2リード部の間のギャップの長さが前記第3リード部の長さより小さい、請求項5から7のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
幅方向に両側にそれぞれ配置されたカバー層をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
前記第1から第3外部電極は、前記セラミック本体の実装面において前記セラミック本体の幅方向の両面の一部まで延長される、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
前記第1及び第2外部電極は、前記セラミック本体の実装面において前記セラミック本体の長さ方向の両面の一部までそれぞれ延長される、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項13】
前記第1及び第2絶縁部は、前記セラミック本体の実装面において前記セラミック本体の幅方向の両面の一部まで延長される、請求項5に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項14】
前記外部電極は、導電層と、前記導電層を覆うニッケルめっき層と、前記ニッケルめっき層を覆うすずめっき層と、を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項15】
上部に第1から第3電極パッドを有する基板と、
前記第1から第3電極パッド上に第1から第3外部電極がそれぞれ配置される請求項1に記載の積層セラミックキャパシタと、を含む、積層セラミックキャパシタの実装基板。
【請求項16】
複数の誘電体層、及び前記複数の誘電体層を介して交互に配置される第1及び第2内部電極を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の実装面に露出し、セラミック本体の長さ方向に沿って互いに離隔するように配置される第1及び第2リード部、及び前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、前記セラミック本体の長さ方向の両面及び実装面から離隔する第1本体部を含む第1内部電極と、
前記セラミック本体の実装面に露出し、セラミック本体の長さ方向に沿って前記第1及び第2リード部の間に配置される第3リード部、及び前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、前記セラミック本体の長さ方向の両面及び実装面から離隔する第2本体部を含む第2内部電極と、
前記セラミック本体の実装面に前記セラミック本体の長さ方向に沿って互いに離隔するように配置され、前記第1及び第2リード部とそれぞれ接続される第1及び第2外部電極と、
前記セラミック本体の実装面に前記第1及び第2外部電極の間に配置され、前記第3リード部と接続される第3外部電極と、
前記セラミック本体の実装面と対向する面に配置される絶縁層と、を含み、
前記第1本体部の一面の全体が前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、
前記第2本体部の一面の全体が前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、
前記複数の誘電体層と前記絶縁層が異なる物質で形成され、前記絶縁層が前記セラミック本体の実装面と対向する面の全体をカバーし、エポキシを含む、積層セラミックキャパシタ。
【請求項17】
前記第1及び第3外部電極の間に配置される第1絶縁部、及び前記第2及び第3外部電極の間に配置される第2絶縁部をさらに含む、請求項16に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項18】
前記第1及び第2リード部の間のギャップの長さが前記第3リード部の長さより小さい、請求項17に記載の積層セラミックキャパシタ。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。)
「【0024】
図1及び図2を参照すると、本実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、セラミック本体110と、上記セラミック本体の内部に形成される内部電極121、122と、上記セラミック本体にそれぞれ形成される絶縁層141、142、143、144と、外部電極131、132、133と、を含むことができる。
【0025】
本実施形態において、セラミック本体110は、幅方向に対向する第1の面1及び第2の面2と、上記第1の面及び第2の面を連結し長さ方向に対向する第3の面3及び第4の面4と、上記第1の面及び第2の面を連結し厚さ方向に対向する第5の面5及び第6の面6と、を有することができる。」

「【0028】
本発明の一実施形態によれば、セラミック本体の第1の面1は、回路基板の実装領域に配置される実装面となることができる。」

「【0030】
本発明の一実施形態によれば、上記セラミック本体110は、複数の誘電体層111が積層されて形成されることができる。上記セラミック本体110を構成する複数の誘電体層111は焼結された状態で、隣接する誘電体層間の境界は確認できないほどに一体化されている。」

「【0033】
本発明の一実施形態によれば、セラミック本体110の内部には第1及び第2の内部電極121、122が配置されることができる。」

「【0035】
本発明の一実施形態によれば、第1の極性の第1の内部電極121と第2の極性の第2の内部電極122を一対とし、一つの誘電体層111を介してy‐方向に対向するように配置されることができる。」

「【0045】
本発明の一実施形態によれば、第1の内部電極は、2つの引出部121a、121bを有することができる。
【0046】
上記第1の内部電極の2つの引出部121a、121bは、所定の間隔をおいて配置され、セラミック本体の第1の面1に露出することができる。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、上記第1の内部電極の第1の引出部121aはセラミック本体の第1の面1に露出すると共に第3の面3に露出し、第1の内部電極の第2の引出部121bはセラミック本体の第1の面1に露出すると共に第4の面4に露出することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、第2の内部電極は、1つの引出部122aを有することができる。
【0049】
上記第2の内部電極の第3の引出部122aは、上記セラミック本体の第3の面3及び第4の面4と所定の間隔をおいて配置され、セラミック本体の第1の面1に露出することができる。」

「【0051】
上記第1の内部電極の2つの引出部121a、121bはそれぞれ第2の内部電極の引出部122aと所定の間隔Gをおいて離隔することができる。」

「【0054】
本発明の一実施形態によれば、上記第1及び第2の内部電極121、122の端部は、セラミック本体110の第3の面3及び第4の面4に露出することができる。上記セラミック本体の第3の面3及び第4の面4に絶縁層が形成されることにより、内部電極間の短絡を防止することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、上記第1及び第2の内部電極121、122は、セラミック本体110の第2の面2のみにマージン部があり、上記第3の面3及び第4の面4にはマージン部がないように形成されることができる。」

「【0068】
より具体的には、セラミック本体110の第1の面1に露出した第1の内部電極121の第1の引出部121aと連結されるように第1の外部電極131が配置され、セラミック本体110の第1の面1に露出した第1の内部電極の第2の引出部121bと連結されるように第2の外部電極132が配置されることができる。」

「【0070】
また、上記セラミック本体110の第1の面1に引き出された第2の内部電極122の第3の引出部122aと連結されるように第3の外部電極133が形成されることができる。」

「【0073】
上記セラミック本体110の第1の面1に形成された第1の絶縁層141は第1及び第3の外部電極131、133の間に形成され、第2の絶縁層142は第2及び第3の外部電極132、133の間に形成されることができる。」




以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献の記載箇所を示す。)。
「幅方向に対向する第1の面1及び第2の面2と、上記第1の面及び第2の面を連結し長さ方向に対向する第3の面3及び第4の面4と、上記第1の面及び第2の面を連結し厚さ方向に対向する第5の面5及び第6の面6とを有し、第1の面1が実装面となり、複数の誘電体層111が積層されて形成されるセラミック本体110と(【0025】、【0028】、【0030】)、
セラミック本体110の内部には第1及び第2の内部電極121、122が、第1の内部電極121と第2の内部電極122を一対とし誘電体層111を介して配置され(【0033】、【0035】)、
第1の内部電極は、長さ方向に所定の間隔をおいて配置されセラミック本体110の第1の面1に露出した第1の引出部121a及び第2の引出部121bを有し(【0045】-【0047】、図2)、
第2の内部電極は、セラミック本体の第1の面1に露出した第3の引出部122aを有し(【0048】、【0049】)、
第1の内部電極の2つの引出部121a、121bはそれぞれ第2の内部電極の引出部122aと所定の間隔Gをおいて離隔しており(【0051】)、
第1及び第2の内部電極121、122の端部は、セラミック本体110の第3の面3及び第4の面4に露出し、セラミック本体110の第3の面3及び第4の面4に絶縁層が形成され(【0054】)、
第1及び第2の内部電極121、122は、セラミック本体110の第2の面2のみにマージン部があり、第3の面3及び第4の面4にはマージン部がないように形成され(【0055】)、
セラミック本体110の第1の面1に露出した第1の引出部121aと連結されるように第1の外部電極131が配置され、セラミック本体110の第1の面1に露出した第2の引出部121bと連結されるように第2の外部電極132が配置され(【0068】)、
セラミック本体110の第1の面1に引き出された第3の引出部122aと連結されるように第3の外部電極133が形成され(【0070】)、
セラミック本体110の第1の面1の第1及び第3の外部電極131、133の間に第1の絶縁層141が形成され、第2及び第3の外部電極132、133の間に第2の絶縁層142が形成された(【0073】)、
積層セラミックキャパシタ100(【0024】)。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0015】
セラミック本体110は、相対する厚さ方向の第1主面S1及び第2主面S2、第1主面S1と第2主面S2を連結し、相対する幅方向の第3側面S5及び第4側面S6、及び相対する長さ方向の第1側面S3及び第2側面S4を有することができる。
【0016】
以下では、本実施形態において、積層セラミックキャパシタ100の実装面は、セラミック本体110の第1主面S1と定義して説明する。」

「【0035】
本実施形態において、第1内部電極120は、長さ方向に離隔され、セラミック本体10の第1主面S1に露出する第1及び第2リード部121、122を有し、第1及び第2側面S3、S4から一定距離離隔されて形成されることができる。
【0036】
また、第2内部電極130は、セラミック本体110の第1主面S1に露出し、第1及び第2リード部121、122の間に第1及び第2リード部121、122とそれぞれ一定距離離隔されて形成された第3リード部131を有し、第1及び第2側面S3、S4から一定距離離隔されるように配置されることができる。」



上記記載より、引用文献2には、次の技術が記載されている。
「セラミック本体110の実装面に対向する第2主面S2に露出することのない、第1内部電極120及び第2内部電極130。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0038】
また、露出した内部電極パターン部を酸化させることにより、内部電極を保護するための別途の構成を必要とせず、積層セラミックキャパシタの小型化が可能である。」

「【0042】
[積層セラミックキャパシタ]」

「【0072】
金属酸化物領域121a’、122a’は、第1及び第2パターン部121a、122aに含まれる金属が酸化して形成されたものであって、絶縁性を有し、金属酸化物領域121a’、122a’内部のパターンを保護する。」

「【0078】
本実施形態のように、第1及び第2内部電極121、122が誘電体層111と同じ面積を有するように形成され、第1及び第2パターン部121a、122aが前記セラミック本体の両側面及び両端面のどちらにも露出している場合、容量を増加させることができる。従来は、内部電極の保護のために、内部電極において外部電極と接続される領域を除いてはセラミック本体の外面に露出しないように内部電極パターンを形成していた。すなわち、誘電体層上の内部電極パターンの周辺にマージン部が存在していた。しかし、本発明においては、第1及び第2内部電極121、122間の電気的導通を防止するための非パターン部121b、122bを除いて誘電体層111全体に内部電極パターンを形成することにより、従来のマージン部の面積比率だけ容量を増加させることができる。つまり、従来は、外部電極との接続性確保のために第1及び第2内部電極パターンの重ならない領域のみセラミック本体の外面に露出するようにしていたが、本発明においては、第1及び第2パターン部の重なる領域がセラミック本体の外面に露出するようにすることにより、最大の容量を実現することができる。
【0079】
ただし、内部電極が外部に露出した場合、腐食によりパターン部が損傷したり、めっき工程でショートが発生することがあるため、本発明においては、露出した端部から所定の幅で金属酸化物領域121a’、122a’を形成することにより、内部電極を外部から保護する。」



上記記載より、引用文献3には、次の技術が記載されている。
「積層セラミックキャパシタにおいて、容量を増加させるために、第1及び第2内部電極121、122をセラミック本体の両側面及び両端面のどちらにも露出させ、ショートが発生することがあるため、露出した端部から所定の幅で金属を酸化して、絶縁性の金属酸化物領域121a’、122a’を形成する技術。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0034】
本実施形態において、セラミック素体110は、対向する第1面1及び第2面2と、上記第1面及び第2面を連結する第3面3、第4面4、第5面5、第6面6とを有することができる。上記セラミック素体110の形状に特に制限はないが、図示されているように第1面から第6面を有する六面体とすることができる。本発明の一実施形態によると、第3面3及び第4面4が対向し、第5面5及び第6面6が対向することができる。本発明の一実施形態によると、セラミック素体の第1面1は、回路基板の実装領域に配置される実装面になることができる。」

「【0043】
図2及び図3を参照すると、第1及び第2内部電極121、122は、互いに異なる極性の外部電極と連結されるように、それぞれ引出部121a、121b、122aを有し、これらの引出部121a、121b、122aは、それぞれセラミック素体の第1面1に露出することができる。本発明の一実施形態によると、積層セラミックキャパシタは垂直積層型であり、第1内部電極の引出部及び第2内部電極の引出部は、セラミック素体の同一面に露出することができる。」

「【0049】
本発明の一実施形態によると、第1及び第2内部電極の端部は、セラミック素体の第3面及び第4面に露出することができる。上記セラミック素体の第3面及び第4面には絶縁層が形成され、内部電極間の短絡を防止することができる。
【0050】
本発明の一実施形態によると、第1及び第2内部電極は、セラミック素体の第2面のみにマージン部が形成されているが、第3面及び第4面にはマージン部を形成しなくてもよい。また、第3面、第4面及び第1面には最小限のギャップg1、g2のみが設けられ、内部電極を形成することができる。なお、第1面でも、第1内部電極の引出部及び第2内部電極の引出部を一部重畳させることができ、最大限の面積で内部電極を形成することができる。これにより、第1及び第2内部電極の重畳領域が拡大し、高容量の積層セラミックキャパシタを形成することができる。」

上記記載事項より、引用文献4には、次の技術が記載されている。
「セラミック素体110の実装面に対向する第2面2にマージン部を形成した、第1及び第2内部電極。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「この実施例の積層セラミックコンデンサにおいては、前述したセラミックチップ2に相当するセラミックチップ5の材料を、内部電極3に挟まれた部分を含む内層部5aとその上下両外側の外層部5bとで互いに異ならせると共に、外層部5bの材料を内層部5aのものよりも機械的強度に優れたものとしている。」(第2頁右上欄第15行-同頁左下欄第1行)

上記記載事項より、引用文献5には、次の周知技術が記載されている。
「積層セラミックキャパシタのセラミック本体上に設ける絶縁層を、誘電体層と異なる材料で形成する技術。」

第5 対比、判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「セラミック本体110」は、「複数の誘電体層111が積層され」「内部には第1及び第2の内部電極121、122が、第1の内部電極121と第2の内部電極122を一対とし誘電体層111を介して配置され」ているので、本願発明1と「複数の誘電体層が積層され、前記複数の誘電体層を介して交互に配置され、」「第1及び第2内部電極を含む活性領域を含むセラミック本体」で共通する。
但し、第1及び第2内部電極が、本願発明1は「セラミック本体の実装面と対向する面に露出する」のに対して、引用発明は「セラミック本体110の」「実装面」(すなわち、第1の面1)に「対向する」「第2の面2」に「マージン部があ」り、そのため「第2の面2」に露出していない点で相違する。

イ 引用発明の「セラミック本体110」は、「第1の面1が実装面」である。
そうすると、引用発明の「第1の内部電極」が有する「長さ方向に所定の間隔をおいて配置されセラミック本体110の第1の面1に露出した第1の引出部121a及び第2の引出部121b」は、本願発明1の「前記第1内部電極において前記セラミック本体の実装面に露出するように延長されて形成され、前記セラミック本体の長さ方向に沿って互いに離隔するように配置される第1及び第2リード部」に相当する。

ウ 引用発明の「セラミック本体110」は、「第1の面1が実装面」である。
また、引用発明は「第1の内部電極の2つの引出部121a、121bはそれぞれ第2の内部電極の引出部122aと所定の間隔Gをおいて離隔して」いるので、「第3の引出部122a」は、「第1の引出部121a」及び「第2の引出部121b」の間に配置されている。
そうすると、引用発明の「第2の内部電極」が有する「セラミック本体の第1の面1に露出した第3の引出部122a」は、本願発明1の「前記第2内部電極において前記セラミック本体の実装面に露出するように延長されて形成され、前記第1及び第2リード部の間に配置される第3リード部」に相当する。

エ 引用発明の「セラミック本体110」は、「第1の面1が実装面」である。
また、引用発明の「第1の引出部121a及び第2の引出部121b」は「長さ方向に所定の間隔をおいて配置され」ている。
そうすると、引用発明「セラミック本体110の第1の面1に露出した第1の引出部121aと連結されるように」「配置され」た「第1の外部電極131」及び「セラミック本体110の第1の面1に露出した第2の引出部121bと連結されるように」「配置され」た「第2の外部電極132」は、本願発明1の「前記セラミック本体の実装面に前記セラミック本体の長さ方向に沿って互いに離隔するように配置され、前記第1及び第2リード部とそれぞれ接続される第1及び第2外部電極」に相当する。

オ 引用発明の「セラミック本体110」は、「第1の面1が実装面」である。
また、引用発明の「第3の引出部122a」は、「第1の引出部121a」及び「第2の引出部121b」の間に配置されているので(上記ウ)、引用発明の「セラミック本体110の第1の面1に引き出された第3の引出部122aと連結されるように」「形成され」た「第3の外部電極133」は、本願発明1の「前記セラミック本体の実装面に前記第1及び第2外部電極の間に配置され、前記第3リード部と接続される第3外部電極」に相当する。

カ 引用発明の「第1の内部電極」は、「第1の引出部121a及び第2の引出部121b」を除く部分が、実装面から離隔する本体部であるといえる。
そして、引用発明は「第1及び第2の内部電極121、122の端部は、セラミック本体110の第3の面3及び第4の面4に露出し、」「第1及び第2の内部電極121、122は、セラミック本体110の第2の面2のみにマージン部があり、第3の面3及び第4の面4にはマージン部がないように形成され」ているので、引用発明の「第1の内部電極」と本願発明1とは、「前記第1内部電極は、前記セラミック本体の実装面から離隔する第1本体部を含」むことで共通する。
但し、本願発明1は「前記第1内部電極は前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、前記セラミック本体の長さ方向の両面」「から離隔する第1本体部を含み、」「前記第1本体部の一面の全体が前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出」するのに対して、引用発明では、「第1の内部電極」は「第2の面2」のみに「マージン部があ」り、そのため「第1の内部電極」は「第2の面2」に露出していない点で相違する。

キ 引用発明の「第2の内部電極」は、「第3の引出部122a」を除く部分が、実装面から離隔する本体部であるといえる。
そして、引用発明は「第1及び第2の内部電極121、122の端部は、セラミック本体110の第3の面3及び第4の面4に露出し、」「第1及び第2の内部電極121、122は、セラミック本体110の第2の面2のみにマージン部があり、第3の面3及び第4の面4にはマージン部がないように形成され」ているので、引用発明の「第2の内部電極」と、本願発明1とは「前記第2内部電極は、前記セラミック本体の実装面から離隔する第2本体部を含」むことで共通する。
但し、本願発明1は「前記第2内部電極は前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、前記セラミック本体の長さ方向の両面」「から離隔する第2本体部を含み、」「前記第2本体部の一面の全体が前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出」するのに対して、引用発明では、「第2の内部電極」は「第2の面2」のみに「マージン部があ」り、そのため「第2の内部電極」は「第2の面2」に露出していない点で相違する。

ク 引用発明の「積層セラミックキャパシタ100」は、本願発明と「積層セラミックキャパシタ」である点で共通する。
但し、積層セラミックキャパシタについて、本願発明1は「前記セラミック本体の実装面と対向する面に配置される絶縁層」を含み、「前記複数の誘電体層と前記絶縁層が異なる物質で形成され、前記絶縁層が前記セラミック本体の実装面と対向する面の全体をカバーし、エポキシを含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

上記アないしクによれば、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
(一致点)
「複数の誘電体層が積層され、前記複数の誘電体層を介して交互に配置された第1及び第2内部電極を含む活性領域を含むセラミック本体と、
前記第1内部電極において前記セラミック本体の実装面に露出するように延長されて形成され、前記セラミック本体の長さ方向に沿って互いに離隔するように配置される第1及び第2リード部と、
前記第2内部電極において前記セラミック本体の実装面に露出するように延長されて形成され、前記第1及び第2リード部の間に配置される第3リード部と、
前記セラミック本体の実装面に前記セラミック本体の長さ方向に沿って互いに離隔するように配置され、前記第1及び第2リード部とそれぞれ接続される第1及び第2外部電極と、
前記セラミック本体の実装面に前記第1及び第2外部電極の間に配置され、前記第3リード部と接続される第3外部電極と、を含み、
前記第1内部電極は、前記セラミック本体の実装面から離隔する第1本体部を含み、
前記第2内部電極は、前記セラミック本体の実装面から離隔する第2本体部を含む、積層セラミックキャパシタ。」

(相違点1)
第1及び第2内部電極が、本願発明1は「セラミック本体の実装面と対向する面に露出する」のに対して、引用発明は「第2の面2」に露出していない点。
(相違点2)
本願発明1は「前記第1内部電極は前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、前記セラミック本体の長さ方向の両面」「から離隔する第1本体部を含み、」「前記第1本体部の一面の全体が前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出」するのに対して、引用発明は「第1の内部電極」が「第2の面2」に露出していない点。
(相違点3)
本願発明1は「前記第2内部電極は前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、前記セラミック本体の長さ方向の両面」「から離隔する第2本体部を含み、」「前記第2本体部の一面の全体が前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出」するのに対して、引用発明は「第2の内部電極」が「第2の面2」に露出していない点。
(相違点4)
本願発明1は「前記セラミック本体の実装面と対向する面に配置される絶縁層」を含み、「前記複数の誘電体層と前記絶縁層が異なる物質で形成され、前記絶縁層が前記セラミック本体の実装面と対向する面の全体をカバーし、エポキシを含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1ないし3についてまとめて検討する。
引用文献3には、積層セラミックキャパシタにおいて、容量を増加させるために、第1及び第2内部電極121、122をセラミック本体の両側面及び両端面のどちらにも露出させ、ショートが発生することがあるため、露出した端部から所定の幅で金属を酸化して、絶縁性の金属酸化物領域121a’、122a’を形成する技術が記載されている(上記「第4 3」)。
そうすると、引用文献3の第1及び第2内部電極121、122は、ショートが発生することを防止するため、端部から所定の幅で絶縁されているので、該所定の幅で絶縁された領域は、容量の増加に寄与しない領域であることは明らかである。よって、引用文献3の第1及び第2内部電極121、122は、セラミック本体の実装面と対向する面に露出しているものとはいえない。
さらに、引用文献3の段落【0038】には、「また、露出した内部電極パターン部を酸化させることにより、内部電極を保護するための別途の構成を必要とせず、積層セラミックキャパシタの小型化が可能である。」と記載されているのであるから、引用文献3の第1及び第2内部電極121、122をセラミック本体の実装面と対向する面に露出させることは、これに伴い、絶縁層を配置するなどの別途の構成が必要となるから、阻害要因がある。
そして、引用文献2、4、5にも、セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、セラミック本体の長さ方向の両面から離隔する本体部を含み、本体部の一面の全体がセラミック本体の実装面と対向する面に露出する内部電極は記載されていない。また、積層セラミックキャパシタにおいて、そのような内部電極は周知技術であるともいえない。
したがって、上記相違点1ないし3に係る構成は、引用発明、引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

よって、相違点4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし15について
本願発明2ないし15は、本願発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明16について
(1)対比
上記「1 (1)対比」を踏まえると、本願発明16と引用発明との間には、次の相違点があり、その他の点で一致する。
(相違点5)
本願発明16は第1内部電極が、「前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、前記セラミック本体の長さ方向の両面」「から離隔する第1本体部を含」み、「前記第1本体部の一面の全体が前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出」するのに対して、引用発明は「第1の内部電極」が「第2の面2」に露出していない点。
(相違点6)
本願発明16は第2内部電極が、「前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出し、前記セラミック本体の長さ方向の両面」「から離隔する第2本体部を含」み、「前記第2本体部の一面の全体が前記セラミック本体の実装面と対向する面に露出」するのに対して、引用発明は「第2の内部電極」が「第2の面2」に露出していない点。
(相違点7)
本願発明16は「前記セラミック本体の実装面と対向する面に配置される絶縁層」を含み、「前記複数の誘電体層と前記絶縁層が異なる物質で形成され、前記絶縁層が前記セラミック本体の実装面と対向する面の全体をカバーし、エポキシを含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点5、相違点6に係る構成は、上記相違点2、3に係る構成と同様であるから、上記「1 (2)相違点についての判断」と同様に、上記相違点5、6に係る構成は、引用文献2ないし5に記載されておらず、また周知技術であるとも認められない。
よって、本願発明16は、相違点7について判断するまでもなく、当業者であっても引用発明、及び引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明17及び18について
本願発明17及び18は、本願発明16の発明特定事項を全て含む発明であるから、本願発明16と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし18は、第1本体部及び第2本体部が、「セラミック本体の実装面と対向する面に露出する」という事項を有するものとなっている。そして、当該事項が、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし5に基づいて、容易になし得たものとはいえないことは、前記「第5」「1 (2)相違点についての判断」に記載したとおりである。
したがって、本願発明1ないし18は、当業者であっても、原査定で引用された引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものではない。
よって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-10 
出願番号 特願2016-51337(P2016-51337)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 晃洋  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
赤穂 嘉紀
発明の名称 積層セラミックキャパシタ及びその実装基板  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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