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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 B23Q 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B23Q 審判 全部無効 特174条1項 B23Q 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) B23Q 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 B23Q 審判 全部無効 2項進歩性 B23Q |
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管理番号 | 1372147 |
審判番号 | 無効2019-800077 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2019-10-03 |
確定日 | 2020-09-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5700677号発明「クランプ装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯及び本件特許発明 1 手続の経緯 本件特許第5700677号についての出願は、平成15年6月2日に出願した特願2003-156187号(以下「親出願」という場合がある。)の一部を、平成20年6月19日に新たな特願2008-160212号(以下「子出願」という場合がある。)として出願し、さらにその一部を、平成23年10月6日に新たな特許出願(以下「孫出願」という場合がある。)としたものであって、平成27年2月27日にその発明について特許権の設定登録がなされた。 その後、平成27年5月19日付けで請求人株式会社コスメックにより、無効審判請求(以下「先の無効審判請求」という。)がされ、平成28年11月17日付けで被請求人(特許権者)パスカルエンジニアリング株式会社により訂正請求書が提出されたところ、平成29年2月28日付けで、訂正することを認める、審判の請求は成り立たない旨の審決がなされた。 この審決を不服として、請求人株式会社コスメックを原告、特許権者を被告として、知的財産高等裁判所に対し、審決取消訴訟(平成29年(行ケ)第10076号)が提起されたが、平成30年3月28日に、原告の請求を棄却する旨の判決がなされ、その後確定した。 そして、本件無効審判請求に係る主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年10月 3日付け 審判請求書(請求人株式会社コスメック エンジニアリング)の提出 同 年12月23日付け 審判事件答弁書の提出 令和2年 2月13日付け (口頭審尋の審理事項についての)通知書 の送付 令和2年 3月18日付け 審判事件弁駁書の提出 同 年 3月24日 口頭審尋(両当事者に対しテレビ会議 システムで実施) 同 年 6月24日付け 審尋 同 年 7月 3日 被請求人回答書の提出 同 年 7月 8日 請求人回答書の提出 第2 本件発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、先の無効審判請求において確定した、平成28年11月17日付けの訂正請求に係る訂正特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものと認める。なお、無効審判請求人は、訂正要件違反について無効理由5として主張するところ、これについては後に検討する。 また、本件発明1、3のA1?B19等の分説については、説明の便宜のために、請求人の主張のとおり付与し、以下、各分説を「構成A1」などという。 【請求項1】 A1 シリンダ穴が形成されたクランプ本体と、 A2 前記シリンダ穴に内嵌され、前記クランプ本体に進退可能に設けられた出力ロッドと、 A3 該出力ロッドの先端部に連結されワークにクランプ力を出力するクランプアームと、 A4 前記出力ロッドを退入側に駆動するクランプ用の油圧シリンダとを備え、 A5 前記クランプ本体は、その上部にフランジ部と、前記フランジ部から下方へ延びベースの収容穴に収容される部分とを有し、該フランジ部の外周部の下面には前記ベースの上面に当接する据付け面が形成され、 A6 該据付け面には、油圧ポートが設けられ、 A7 前記クランプ本体の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダを構成する前記シリンダ穴に至る油路が設けられ、 A8 該油路は、前記油圧ポートに接続された第1油路と、該第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向して前記シリンダ穴に至る第2油路とを有し、 B1 一端が前記フランジ部の外周面から突出し、他端が前記第1油路と第2油路との接続部に至る流量調整弁が、前記一端から前記他端に向かう方向が前記第2油路の前記指向方向と同じ向きになるように設けられ、 前記流量調整弁は、 B2 前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、 B3 前記クランプ本体に対して前記第2油路の前記指向方向に相対移動可能な弁体部および前記弁体部の基端に連なる前記弁体部よりも大径の軸部を有し、前記弁体部が前記弁孔に挿入された全閉状態から前記弁体部が前記弁孔から離間した全開状態に至るまで前記弁体部を移動させて前記弁体部と前記弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材と、 B4 前記油圧シリンダの油室側の小径部と、前記フランジ部の側面側の基部とを有し、前記小径部が前記フランジ部に形成された装着穴に内嵌状に螺合される弁ケースと、 B5 前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間をシールする第1シール部材と、 B6 前記弁ケースと前記装着穴との間をシールする第2シール部材とを備え、 B7 前記弁ケースの前記基部に、前記弁部材の前記軸部が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に内嵌状に螺合され、 B8 前記基部および前記軸部は前記フランジ部の側面から外側に露出し、前記基部の基端にロックナットが装着され、 B9 前記弁部材における前記軸部の基端側部分に、前記弁部材をクランプ本体に対して前記接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部に相当し、工具を係合させて前記軸部を回転させることが可能な穴が形成され、 B10 前記弁体部の外周部には、先端側ほど深さが深い、前記弁体部の軸方向に延びる溝部が形成され、 B11 前記弁部材は、前記弁体部と前記弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と、前記シリンダ穴に油圧を供給するときには前記バイパス流路を閉止し、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには前記バイパス流路を開放する逆止弁とを有し、 B12 前記バイパス流路は、前記弁体部の内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含み、 B13 前記逆止弁は、前記第1流路上に形成された弁座と、前記第1流路内に移動可能に設けられた鋼球と、前記鋼球を前記弁座側に付勢する部材とを含み、 B14 前記シリンダ穴から油圧を排出するときには、排出される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放され、 B15 前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、 B16 前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、 B17 前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、 A9/B18 前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在する(構成A9)とともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、(構成B18) B19 前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される、 A10 クランプ装置。 【請求項2】 前記クランプ本体は、水平な前記据付け面を外部のベース部材に当接させて固定され、 前記第1油路および前記第2油路は前記フランジ部に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。 【請求項3】 A1’ クランプ本体と、 A2’ 該クランプ本体に進退可能に装着された出力ロッドと、 A3 該出力ロッドの先端部に連結されワークにクランプ力を出力するクランプアームと、 A4’ 前記出力ロッドを進出側に駆動するアンクランプ用の油圧シリンダとを備え、 A5 前記クランプ本体は、その上部にフランジ部と、前記フランジ部から下方へ延びベースの収容穴に収容される部分とを有し、該フランジ部の外周部の下面には前記ベースの上面に当接する据付け面が形成され、 A6 該据付け面には、油圧ポートが設けられ、 A7’ 前記クランプ本体の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダに至る油路が設けられ、 A8’ 該油路は、前記油圧ポートに接続された第1油路と、該第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向する第2油路とを有し、 B1 一端が前記フランジ部の外周面から突出し、他端が前記第1油路と第2油路との接続部に至る流量調整弁が、前記一端から前記他端に向かう方向が前記第2油路の前記指向方向と同じ向きになるように設けられ、 前記流量調整弁は、 B2 前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、 B3 前記クランプ本体に対して前記第2油路の前記指向方向に相対移動可能な弁体部および前記弁体部の基端に連なる前記弁体部よりも大径の軸部を有し、前記弁体部が前記弁孔に挿入された全閉状態から前記弁体部が前記弁孔から離間した全開状態に至るまで前記弁体部を移動させて前記弁体部と前記弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材と、 B4 前記油圧シリンダの油室側の小径部と、前記フランジ部の側面側の基部とを有し、前記小径部が前記フランジ部に形成された装着穴に内嵌状に螺合される弁ケースと、 B5 前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間をシールする第1シール部材と、 B6 前記弁ケースと前記装着穴との間をシールする第2シール部材とを備え、 B7 前記弁ケースの前記基部に、前記弁部材の前記軸部が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に内嵌状に螺合され、 B8 前記基部および前記軸部は前記フランジ部の側面から外側に露出し、前記基部の基端にロックナットが装着され、 B9 前記弁部材における前記軸部の基端側部分に、前記弁部材をクランプ本体に対して前記接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部に相当し、工具を係合させて前記軸部を回転させることが可能な穴が形成され、 B10 前記弁体部の外周部には、先端側ほど深さが深い、前記弁体部の軸方向に延びる溝部が形成され、 B11’ 前記弁部材は、前記弁体部と前記弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と、前記シリンダ穴に油圧を供給するときには前記バイパス流路を開放し、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには前記バイパス流路を閉止する逆止弁とを有し、 B12 前記バイパス流路は、前記弁体部の内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含み、 B13 前記逆止弁は、前記第1流路上に形成された弁座と、前記第1流路内に移動可能に設けられた鋼球と、前記鋼球を前記弁座側に付勢する部材とを含み、 B14’ 前記シリンダ穴に油圧を供給するときには、供給される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放され、 B15 前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、 B16 前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、 B17 前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、 A9/B18 前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在する(構成A9)とともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、(構成B18) B19 前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される、 A10 クランプ装置。 第3 請求人の主張 1 請求の趣旨 本件特許の特許請求の範囲の請求項1、請求項2、及び請求項3に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 請求の理由 (1)無効理由1(新規事項)について 特許出願時の明細書等(甲第1?3号証)において、弁孔46としては、油路の途中部に形成され装着穴48の前端に連なる構成のみが記載されている(【0030】、【0031】、図6、7)から、出願当初の明細書等において、図6に記載されているように、クランプ本体2に凹状に形成された装着穴48の前端から、第2油路40bに向けて、当該クランプ本体に穿孔されて、直列状に連なった孔が弁孔46ということとなる。 一方、平成25年8月30日の補正(甲第34号証)を経て、平成26年4月3日の補正(甲第4号証)によって、特許請求の範囲の請求項1、3、明細書の【0010】で、「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔」(構成B2)との文言に改められたが、これらの補正の根拠について、被請求人は何ら説明していないし、そもそも弁孔の配置箇所を特定する技術的事項に関し、本件の親出願(甲第8号証)の明細書等には各補正の文言は記載されていない。 上記平成26年4月3日の補正により、構成B2の記載には、“第1油路と第2油路との接続部に形成された弁孔であって、装着穴の前端とは連ならずに、クランプ本体とは異なる別部材を用いて形成された弁孔”との技術的事項が含まれると理解できる余地があるところ、出願当初の明細書等においては、“装着穴48の前端に連なって形成された弁孔46”のみが記載されていたものであり、“第1油路と第2油路との接続部に形成された弁孔であって、装着穴の前端とは連ならずに、クランプ本体とは異なる別部材を用いて形成された弁孔”については何ら記載されていなかったから、この補正は、新たな技術的事項を導入しているといえ、新規事項の追加に該当する。 (2)無効理由2(サポート要件)について ア 弁孔のサポート要件 請求項1、3には、「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔」(構成B2)との発明特定事項があるところ、図Aや図B-1ないし図B-3の“第1油路と第2油路との接続部に形成された弁孔であって、装着穴の前端とは連ならずに、クランプ本体とは異なる別部材を用いて形成された弁孔”が包含されている。 【図A】 【図B-1】 【図B-2】 【図B-3】 しかし、出願当初の明細書等及び本件明細書等には、“装着穴48の前端に連なって形成された弁孔46”のみが記載されているだけであり、“第1油路と第2油路との接続部に形成された弁孔であって、装着穴の前端とは連ならずに、クランプ本体とは異なる別部材を用いて形成された弁孔”については記載も示唆もされていない。 さらに、“第1油路と第2油路との接続部に形成された弁孔であって、装着穴の前端とは連ならずに、クランプ本体とは異なる別部材を用いて形成された弁孔”構成を用いた場合(たとえば、図A、図B-1、図B-2の場合)、弁孔を形成するための部材の軸方向の大きさだけ、流量調整弁がクランプ本体の外側に余分に飛び出てしまうことになるので、「流量調整の為の構成を簡単化してその構成を含むクランプ本体をコンパクトにする」との本件発明の課題(【0009】)を解決することができない。また、図B-3の場合、圧油の流量を調整するという本件発明の目的(【0009】)さえ達成することができない。 したがって、請求項1、3において、“装着穴の前端に連なって形成された弁孔”であることが特定されていない「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔」(構成B2)にまで、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできないから、請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 イ 第2隙間のサポート要件 請求項1、3によれば、第2隙間について「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間」(構成B16)に形成されたものであり、「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置」(構成B19)されるものである。 被請求人は、別件侵害訴訟(甲第7号証)において、弁ケースの最先端部分が装着穴に当接している場合でも、弁ケースの先端寄り部分の外径が装着穴の内径よりも小さい場合には、弁ケースの先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成される「外周隙間」が、本件特許発明の第2隙間に該当することになるとの見解を示している。 しかしながら、本件特許発明の第2隙間に関し、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間の隙間とは、[先端隙間]であるとしか理解できない。 図Cのように、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで[外周隙間]を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”とする技術的事項については、本件明細書の発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない。 【図C】 請求項1、3において、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させずに、最先端部分の先で第1隙間と直接連通している環状の先端隙間を有するようにして、弁ケースの油圧シリンダ側の先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成された外周隙間”であることが特定されていない「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され」(構成B16)という記載にまで、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできないから、請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (3)無効理由3(実施可能要件)について ア 弁孔の実施可能要件 請求項1、3における「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔」(構成B2)との記載には、“装着穴48の前端に連なって形成された弁孔46”以外に、“第1油路と第2油路との接続部に形成された弁孔であって、装着穴の前端とは連ならずに、クランプ本体とは異なる別部材を用いて形成された弁孔”が包含されている。 ところが、下位概念であるところの“第1油路と第2油路との接続部に形成された弁孔であって、装着穴の前端とは連ならずに、クランプ本体とは異なる別部材を用いて形成された弁孔”については、本件明細書の発明の詳細な説明には一切記載されていないし、これについて、当業者が出願時の技術常識を考慮しても、実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると言えない。 また、上記下位概念の構成を用いた場合は、弁孔を形成するための部材の軸方向の大きさだけ、流量調整弁がクランプ本体の外側に余分に飛び出てしまうことになるので、「流量調整の為の構成を簡単化してその構成を含むクランプ本体をコンパクトにする」との本件発明の課題(【0009】)を解決することができないから、課題解決手段としての発明を実施できる程度に、明確かつ十分に、発明の詳細な説明に記載されているとは言えず、そもそも別部材を用いて形成された弁孔を用いた場合にコンパクト化が実現できるとする技術常識も存在しないから、請求項1ないし3に係る発明は、当業者が実施できる程度に発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 イ 第2隙間の実施可能要件 請求項1、3における「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」(構成B16及び17)との構成には、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させずに、最先端部分の先で第1隙間と直接連通している環状の先端隙間を有するようにして、弁ケースの油圧シリンダ側の先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成された外周隙間”を用いた連通構造の他、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”との連通構造を含んでいる。 ところが、下位概念であるところの“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”との連通構造については、本件明細書の発明の詳細な説明には一切記載されていないし、これについて、当業者が出願時の技術常識を考慮しても、実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると言えないから、請求項1ないし3に係る発明は、当業者が実施できる程度に発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 (4)無効理由4(明確性要件)について ア 「前記指向方向」の明確性 請求項1、3において、「・・・前記指向方向と同じ向きになるように設けられ」(構成B1)との記載があるが、この「前記指向方向」の記載の前に「指向方向」との用語はないから、「前記指向方向」が如何なる方向を指すのか明確でないから、請求項1ないし3に係る発明は明確でない。 イ 「第2隙間」の明確性 本件特許発明では、「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され」(構成B16)と特定されているが、ここでいう「先端」について、弁ケースの「最先端部分」を指すのか、弁ケースの先端寄り部分(先端側のある一定の範囲)を指すのか明確でない。「先端」とは、一般的には、物の一番さきの部分を指す(甲第35、36号証、広辞苑4版、7版)から、一般用語に基づいて解釈した場合、弁ケースの先端とは、弁ケースの最先端の部分を指すことになるから、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面(テーパー内周面とストレート内周面)との間の隙間とは、図D-2の「先端隙間」を指すことになる。 【図D-2】 上記一般的な解釈とは異なり、「先端」について、弁ケースの先端寄り部分(先端側のある一定の範囲)を指すと解釈した場合には、「外周隙間」と理解できる余地がある。 このように、「先端」の意義の解釈の仕方によって、第2隙間の位置が変わってしまうから、「第2隙間」がどの箇所を示すものであるか明確でないから、請求項1ないし3に係る発明は明確でない。 ウ 「第1流路」、「第1隙間」、及び「第2隙間」の配置の明確性 請求項1、3において、「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」(構成B19)と記載されている。「前記指向方向」が、「第2油路の指向方向」のことを指すものであると善解しても、第1流路、第1隙間、及び第2隙間が、指向方向に直交する面に配置されていなければならないということになる。しかし、第1流路、第1隙間、及び第2隙間は、三次元的に一定の容積を有する空間であるから、そもそも一つの面の中に、これらを配置することは不可能である。 第1流路、第1隙間、及び外周隙間は、少なくとも一部が指向方向に直交する面を通っているものであると解釈できるものの、同一平面内に位置できるように配置されるとの構成とはなっていない。 よって、「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」(構成B19)との記載について、“第1流路、第1隙間、及び第2隙間の少なくとも一部が指向方向に直交する面を通っている”ことを意味するのか、他の意味であるのか明確でないから、請求項1ないし3に係る発明は明確でない。 エ 連通経路の明確性 請求項1、3において、「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」(構成B15ないし17)とした上で、「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」(構成B19)と特定されている。 前記ウについて、“第1流路、第1隙間、及び第2隙間の少なくとも一部が指向方向に直交する面を通っている”との意図と善解しても、「前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」(構成B17)との記載について、第1油路と第2油路とが、どのような経路を通じて、連通しているのかが明確ではないから、請求項1ないし3に係る発明は明確でない。 (5)無効理由5(訂正要件違反)について 平成28年11月17日付けの訂正請求の訂正事項3(請求項1)、訂正事項4(【0010】)、訂正事項7(請求項3)、訂正事項8(【0010】)において、「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」(構成B15ないし19及びA9)と訂正されている(甲第5号証)。 「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」(構成B16及び17)との構成には、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させずに、最先端部分の先で第1隙間と直接連通している環状の先端隙間を有するようにして、弁ケースの油圧シリンダ側の先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成された外周隙間”を用いた連通構造の他、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”との連通構造が含まれる。しかし、この連通構造については、願書に添付した明細書等に記載されておらず、技術的に自明な事項ではない。 よって、一群の請求項1-2、及び請求項3についての当該訂正によって、上記連通構造のような新たな技術的事項が導入されているから、当該訂正請求は、訂正要件に違反してなされたものである。 (6)無効理由6(分割要件違反と原出願に基づく新規性、進歩性欠如)について 本件は、孫出願であるところ、親出願(特願2003-156187号)の出願時の明細書等(甲第8号証)には、「装着穴48の前端に連なる弁孔46」(【0031】)のみが記載されており、子出願(特願2008-160212号)の出願当初の明細書等(甲第9号証)にも、上記と同内容(【0029】)のみが記載されている。したがって、親出願、子出願においては、“第1油路と第2油路との接続部に形成された弁孔であって、装着穴の前端とは連ならずに、クランプ本体とは異なる別部材を用いて形成された弁孔”については何ら記載されておらず、弁孔46の技術的構成について、拡張ないし一般化する記載も一切存在せず、技術的に自明な事項でもない。したがって、弁孔に関して、本件出願は親出願、子出願から新規事項を追加するものであり、分割要件を満たしていない。 さらに、親出願、子出願の出願当初の明細書等には、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させずに、最先端部分の先で第1隙間と直接連通している環状の先端隙間を有するようにして、弁ケースの油圧シリンダ側の先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成された外周隙間”(図6及び図7)のみが記載されており、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”とする技術的事項については、記載も示唆もされておらず、「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され」(構成B16)という記載にまで、出願当初の明細書等の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできず、技術的に自明な事項でもない。したがって、第2隙間に関して、本件出願は親出願、子出願から新規事項を追加するものであり、分割要件を満たしていない。 よって、本件出願の出願日は、現実の出願日である平成23年10月6日であるところ、親出願、子出願は公開(甲第10、11号証)されているから、新規性又は進歩性を欠く。 (7)無効理由7(本件発明1、2の進歩性欠如)について 請求項1、2に係る発明は、甲第12号証ないし甲第14号証に記載された周知発明に対して、周知技術等を適用することで、容易に発明することができたものである。 (8)無効理由8(本件発明3の進歩性欠如)について 請求項3に係る発明は、甲第12号証ないし甲第14号証に記載された周知発明に対して、周知技術等を適用することで、容易に発明することができたものである。 なお、無効理由7、8については、第1回口頭審尋調書に、両当事者の同意を得て記載されたとおりのものである。 (9)一事不再理について 上記無効理由7、8について、被請求人は一事不再理の主張をしている(下記第4の2(9))ところ、当該主張に対する請求人の弁駁は以下のとおりである。 株式会社コスメック(確定審決の請求人)と、株式会社コスメックエンジニアリング(本件の請求人)とは、別会社として存在し、電話番号も別であり(乙第3号証)、事業の目的、発行済み株式総数及び資本金も異なる(乙第4、5号証)。本店所在地は一致するものの、役員構成は異なるから、明らかに法人としての意思決定は区別されているものであり、両会社は明らかに別の法人格を有するものであるから、株式会社コスメックと請求人(株式会社コスメックエンジニアリング)とを特許法第167条における同一の当事者と解して一事不再理効を及ぼすことはできない。 また、本件無効審判では、少なくとも第1隙間及び第2隙間を有する弁ケースに関する周知技術を示す新たな証拠として、甲第22?24号証が提出されており、新たな証拠に基づいて無効審判を請求するものであるから、確定審決と同一の事実及び同一の証拠に基づくものには該当しない。 したがって、本件無効審判の請求には、特許法167条の1事不再理効が適用されないことは明らかである。 3 請求人の証拠方法 証拠方法として、請求人から、審判請求書とともに、以下の甲第1ないし36号証が提出されている。 甲第1号証:特願2011-222200号の願書及び明細書 甲第2号証:特願2011-222200号の特許請求の範囲 甲第3号証:特願2011-222200号の図面 甲第4号証:特願2011-222200号の平成26年4月3日付け 手続補正書 甲第5号証:無効2015-800126号の審決公報 甲第6号証:平成30年(ワ)第4851号の原告第1準備書面 甲第7号証:平成30年(ワ)第4851号の原告第5準備書面 甲第8号証:特願2003-156187号の願書、明細書、特許請求 の範囲及び図面 甲第9号証:特願2008-160212号の願書、明細書、特許請求 の範囲及び図面 甲第10号証:特開2004-360718号公報 甲第11号証:特開2008-304065号公報 甲第12号証:特開2001-198754号公報 甲第13号証:特開2001-107914号公報 甲第14号証:特開2000-145724号公報 甲第15号証の1:米国特許第5695177号明細書 甲第15号証の2:米国特許第5695177号明細書の翻訳 甲第16号証:特開平10-315083号公報 甲第17号証:特開平11-19836号公報 甲第18号証の1:独国特許出願公開第3433704号公報 甲第18号証の2:独国特許出願公開第3433704号公報の抄訳 甲第19号証:実公昭54-33615号公報 甲第20号証:実願昭47-69172号(実開昭49-28226号) のマイクロフィルム 甲第21号証:実公昭59-32724号公報 甲第22号証:特開昭60-85008号公報 甲第23号証:特開2002-5119号公報 甲第24号証:実公昭59-7667号公報 甲第25号証:実願昭57-66425号(実開昭58-169275 号)のマイクロフィルム 甲第26号証:実願昭53-124969号(実開昭55-41646 号)のマイクロフィルム 甲第27号証:実願昭61-42224号(実開昭62-153406 号)のマイクロフィルム 甲第28号証:実願昭54-78131号(実開昭55-177505 号)のマイクロフィルム 甲第29号証:実願昭50-54858号(実開昭51-134219 号)のマイクロフィルム 甲第30号証の1:米国特許第3086749号明細書 甲第30号証の2:米国特許第3086749号明細書の翻訳 甲第31号証の1:米国特許第3511470号明細書 甲第31号証の2:米国特許第3511470号明細書の翻訳 甲第32号証:実公昭47-30719号公報 甲第33号証:実公昭61-37842号公報 甲第34号証:特願2011-222200号の平成25年8月30日 付け手続補正書 甲第35号証:広辞苑第四版1469ページ 甲第36号証:広辞苑第七版1668ページ 第4 被請求人の主張 1 答弁の趣旨 本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の理由 (1)無効理由1について 本件出願当初の明細書に記載された課題は、 ア 弁体とその弁体を操作するための操作部の構成が複雑であり、クランプ本体のサイズをコンパクトにすることが困難、 イ 油圧の流量の微調整が困難、 ウ 油圧の流量を調整する際に操作がしにくい、 という点である。 「弁孔」を「クランプ本体」自体で形成するか、「クランプ本体」とは別の部材で構成するかという点は、上記課題の解決には直接関係するものではなく、本件出願当初の明細書に記載の発明における本質的な事項ではない。また、「弁孔」を「クランプ本体」と一体的に形成するか別部材とするかという程度のことは、当業者が適宜変更可能なものである。 よって、本件発明は、本件出願当初の明細書の記載に対して新たな技術的事項を含むものではなく、補正による新規事項の追加をいう出願人の主張は失当である。 (2)無効理由2について ア 弁孔について 「弁孔」は、その機能を発揮できるような態様で「第1油路と第2油路との接続部に形成され」(構成B2)ていれば十分であると当業者は理解でき、「弁孔」を「クランプ本体」とは別の部材で構成しても、本件発明の課題を解決できるとの認識も可能である。 「弁孔」を「クランプ本体」とは別の部材で構成しても、たとえば部材の大きさをそのままに単に分割した場合には、一体化した場合と同等のコンパクト化を実現可能であることは明らかである。また、本件発明においては、たとえば弁体部と操作部とを一体的に形成することで、構成を簡単化して装置全体をコンパクトにできているため、「弁孔」を「クランプ本体」とは別の部材で構成したことで直ちにコンパクト化が実現されていないということもできない。 よって、「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔」(構成B2)の発明特定事項が本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないとする請求人の主張は失当である。 イ 第2隙間について 特許法36条6項1号は、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」と規定しているのであり、乙第1号証の確定判決においても【0031】等を参照しているとおり、本件明細書のその他の部分を含め、発明の詳細な説明の全体の記載に基づいてサポート要件を判断すべきものである。よって、一例としての図6の構造とは異なるものを含むことを以てサポート要件違反をいう請求人の主張は的外れであり、失当である。 (3)無効理由3について 審査基準によると、「・・・物の発明については、当業者がその物を作ることができるように記載しなければならない。・・・ただし、具体的な記載がなくても、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術的常識に基づき、当業者がその物を作れる場合を除く。」とされている。請求人の指摘する両構成(構成B2の構成、及び構成B15ないし19及びA9の構成)が本件明細書の発明の詳細な説明の記載によって裏付けられるものであることは、上述のとおりであり、本件発明の実施にあたり、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を強いるものであると言うこともできないから、請求人の主張は失当である。 (4)無効理由4について ア 「指向方向」について 「前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向して・・・」(構成A8)との先行記載があり、この先行記載と「前記第2油路の前記指向方向」(構成B1)との記載から、「前記指向方向」の意味は明確であるから、請求人の主張は失当である。 イ 「第2隙間」について (ア)「第2隙間」は、「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に・・・形成され」(構成B16)るものであると同時に、「第1油路」が「前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口」(構成A9及びB18)するものであるとも規定されている。また、「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成」(構成B15)される、「第2隙間」は、「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一平面に位置できるように配置される」(構成B19)ものでもある。 以上の内容は、本件発明1、3において明記された事項であり、乙第1号証の確定判決においても、かかる事項に基づいて「第2隙間」の意味、並びに「第1流路」、「第1隙間」及び「第2隙間」の配置関係は明確であるとの前提に立って新規事項に関する判断を行なっていることは明らかであるから、請求人の主張は失当である。 (イ)請求人の「同一平面」についての主張は、誤った理解に基づくものであるから、失当である。本件特許の図6、図7の例において、「第1油路」は「先端隙間」に面するように「装着穴」の内周面に開口しておらず、また、「先端隙間」は、「弁部材」の外周面と「弁ケース」の内周面との間に形成された「第1隙間」と「前記指向方向に直交する同一平面に位置できる」ものでもないから、請求人のいう「先端隙間」が本件発明の「第2隙間」に相当し得るとする請求人の主張は失当である。 (5)無効理由5について 「前記第1シール部材に対して・・・同一面内に位置できるように配置される」(構成B15ないし19及びA9)との構成が、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは、乙第1号証の確定判決において判示されているとおりであるから、請求人の主張は失当である。 (6)無効理由6について 請求人が指摘する構成は本件明細書等に記載された事項である。図6、図7及びそれに対応する説明部分、並びに乙第1号証の確定判決においても引用された本件特許の明細書の【0031】の記載は、本件の原出願(甲第8号証)にも含まれている記載である。したがって、分割要件違反をいうこともできないから、請求人の主張は到底成り立たない。 (7)無効理由7について 本件特許についての乙第1号証の確定判決は、「相違点2のうち、『前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される』構造(以下、「本件構造」という。)については、油圧等の流体圧シリンダに用いる流量調整弁の技術分野における周知技術であると認めるに足りる証拠はなく、当業者がそのようにすることを検討するのが通常であるともいえないから、甲1発明に甲3発明を適用して、本件発明1の相違点2の構成を備えたものとすることはできない。」旨判示している。 請求人が、本件構造(構成B15ないし19及びA9に係る構造)についての証拠として提示する甲第22号証及び甲第24号証は、いずれも「バイパス流路」を開示するものではなく、本件構造が周知技術であるということはできない。 よって、乙第1号証の確定判決において判示されたとおり、本件の引用発明に甲第22号証、甲第24号証、及び周知技術を適用して、本件発明に想到することはできない。 (8)無効理由8について 上記(7)と同じく、請求人の主張は失当である。 (9)一事不再理について 乙第1号証の確定判決は、株式会社コスメックが本件特許に対して請求した先の無効審判請求(乙第2号証の審決)についての審決取消訴訟の確定判決である。本件請求人(株式会社コスメックエンジニアリング)は、株式会社コスメックのグループ会社であり(乙第3号証)、両社の代表取締役は同じである(乙第4、5号証)。すなわち、本件の請求人は、先の無効審判事件において主張立証を尽くすことができたのであり、実質的に先の審判の「当事者」というべきものである。 本件における請求人の進歩性欠如の主張は、追加の主引例を含むものの、いずれの主引例にも、「本件構造」の開示はなく、少なくともその意味において、確定審決において判断の対象とされた主引用発明を超えるものではない。 そして、本件において周知技術として提出された各証拠にも、上記「本件構造」が油圧等の流体圧シリンダに用いる流量調整弁の技術分野における周知技術であると認めるに足りるものは存在しない。 そうすると、本件審判請求の無効理由7、8は、一事不再理に反するものであり、許容されるべきものではない。 3 被請求人の証拠方法 証拠方法として、被請求人から、答弁書とともに、以下の乙第1ないし5号証が提出されている。 乙第1号証:平成29年(行ケ)第10076号の判決 乙第2号証:無効2015-800126号の審決 乙第3号証:株式会社コスメック会社案内(http://www. kosmek.co.jp/company/) 乙第4号証:株式会社コスメックの履歴事項全部証明書 乙第5号証:株式会社コスメックエンジニアリングの履歴事項全部証明書 第5 当審の判断 1 本件発明について (1)本件明細書の記載 本件明細書には、以下の記載がある。なお、以下に引用する記載は、平成28年11月17日付け訂正請求書によってなされた訂正の前後を通じて変更されていない。また、図面は、対応する記載の箇所に挿入した。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、クランプ装置に関し、特に、出力ロッドを進退駆動する油圧シリンダに給排する作動油の流量を調節可能なものに関する。 【背景技術】 【0002】 従来より、機械加工に供するワーク等のクランプ対象物を固定するクランプ装置としては、種々の型式のものが提案され、あるいは実用化されている。その中でも、クランプ本体と、このクランプ本体に進退可能に装着された出力ロッドを有し、クランプ本体内に配設された油圧シリンダにより出力ロッドを進退駆動することにより、ワーク等のクランプ対象物をクランプし、また、そのクランプ状態を解除するように構成されたものがある。 【0003】 ところで、サイズの大きなワーク等のクランプ対象物を固定する場合には、前述のクランプ装置が複数個同時に使用されて、複数箇所でクランプ対象物を固定するのが一般的である。しかし、このような場合に、例えば、複数のクランプ装置間で油圧シリンダへの作動油の供給速度(供給流量)が異なっていると、夫々のクランプ装置によりクランプ対象物をクランプするタイミングにばらつきが生じ、その間にクランプ対象物が外部からの衝撃等により所定の位置からずれたりして、サイズの大きなクランプ対象物を確実にその所定の位置に固定できなくなる虞がある。 【0004】 そこで、作動油の供給流量あるいは排出流量を調整可能なクランプ装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載のクランプ装置は、出力ロッドを所定角度回転させてこの出力ロッドの先端部に固定されたクランプアームを旋回させてから、クランプアームでクランプ対象物をクランプする、いわゆる、スイング式のクランプ装置であるが、クランプ本体にニードルバルブが上下方向に移動可能に装着されており、このニードルバルブの先端部をクランプ本体内で水平に延びる油路内に突入させることにより、油路を流れる作動油の流量を調整できる。 【0005】 特許文献2に記載のクランプ装置においては、油圧供給用の油路及び油圧排出用の油路に夫々流量調整弁が設けられており、各流量調整弁は、クランプ本体内の油路の途中部に形成された弁座と、この弁座に水平方向に対向して設けられ弁座と協働して油路を開閉する弁体としての鋼球と、クランプ本体に螺着され鋼球を下方へ押圧可能な調整スロットルとを備えている。前記調整スロットルを操作して鋼球を所定量下方へ押し下げることにより、鋼球と弁座との間の隙間を調整して、油路を流れる作動油の流量を調整できる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】米国特許第5695177号公報(第4-5頁、図3) 【特許文献2】特開2000-145724号公報(第5-6頁、図6-7) 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 前記特許文献1に記載のクランプ装置においては、水平に延びる油路に対して垂直方向にニードルバルブを突入させるために、出力ロッドの近傍部にニードルバルブが上方から装着されている関係上、作動油の流量を調整する際にニードルバルブを操作しにくいという欠点がある。 【0008】 一方、特許文献2に記載のクランプ装置においては、弁体としての鋼球を別部材の調整スロットルで下方へ押圧して、鋼球を弁座から水平方向に離隔させて流量を調整するため、必然的に部品数が多くなって作動油の流量調整の為の構成が複雑になるし、このような構成を含むクランプ本体のサイズをコンパクトにすることが困難な場合もある。また、鋼球を、弁座に接近/離隔する方向と交差する方向へ押圧して、鋼球と弁座との間の隙間を調整するように構成されているが、このような構成では、鋼球を弁座側へ直接移動させる場合に比べて作動油の流量の微調整が困難である。さらに、この調整スロットルは出力ロッドの近傍部に上方から装着されるため、特許文献1のクランプ装置と同様に操作性の面で不利な場合がある。 【0009】 本発明の目的は、作動油の流量を容易且つ確実に微調整可能に構成すること、流量調整の為の構成を簡単化してその構成を含むクランプ本体をコンパクトにすること、作動油の流量を調整するために操作される部材の操作性を向上させること、等である。」 イ 「【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、クランプ本体に対して相対移動可能な弁部材を備え、弁体部と弁孔との隙間を調整することで流量を調節することができるため、油圧の流量を容易且つ確実に調整できる。」 【図1】 【図2】 ウ 「【実施例1】… 【0015】 図1、図2に示すように、クランプ装置1は、クランプ本体2と、このクランプ本体2に進退可能に装着された出力ロッド3と、この出力ロッド3の先端部に連結されワークWにクランプ力を出力するクランプアーム4と、出力ロッド3を退入側へ駆動するクランプ用の油圧シリンダ5と、出力ロッド3を進出側へ駆動するクランプ解除用の油圧シリンダ6と、出力ロッド3の進退動作の一部をクランプ本体2に対する回転動作に変換する変換機構7とを備えている。そして、複数のクランプ装置1によりワークWを固定するように構成されている。 【0016】 まず、クランプ本体2について説明する。 クランプ本体2は、その上部に据付け用フランジ部2fを有し、この据付け用フランジ部2fの外周部の下面には水平な据付け面2bが形成されている。クランプ本体2は、据付け用フランジ部2fから下方へ延びる下半部がベース10の収容穴に収容され、据付け面2bをベース10を上面に当接させた状態で、図示しない複数のボルトによりベース10に固定されている。 【0017】 クランプ本体2の内部には、出力ロッド3のロッド部3aが挿通されるロッド挿通孔11と、2つのシリンダ穴12、13とが上から順に直列的に形成されている。ロッド挿通孔11の上端付近部には、切削屑等の異物がクランプ本体2内に侵入するのを防ぐダストシール14が装着されている。クランプ本体2の下端部には、シリンダ穴13を下方から塞ぐキャップ部材15が装着されている。 図1?図3に示すように、クランプ本体2の内部には、油圧シリンダ5、6の油室20、22に接続された油路40、41が設けられ、クランプ本体2の後端部には、図示外の油圧供給源から油路40、41に油圧を供給する油圧ポート21、23が設けられている。さらに、クランプ本体2には、これら油路40、41を流れる油圧の流量を夫々調節可能な後述の流量調整弁42、43が左右に並べて設けられている。」 【図3】 【図4】 【図5】 エ 「【0018】 次に、出力ロッド3について説明する。 図1?図5に示すように、出力ロッド3は、上側2/3部分のロッド部3aと、このロッド部3aの下端に連なりロッド部3aよりもやや大径の筒部3bと、筒部3bの下端に連なる環状のピストン部3cとを一体形成したものである。ロッド部3aはロッド挿通孔11に摺動自在に挿通されており、ロッド部3aとロッド挿通孔11との間にはシール部材16が装着されている。ロッド部3aの上端部にはクランプアーム4が装着されナット17で固定されている。筒部3bは、シリンダ穴12に摺動自在に内嵌され、一方、ピストン部3cは、シリンダ穴13に摺動自在に内嵌されている。 【0019】 クランプアーム4は、出力ロッド3の回転動作に連動して旋回し、出力ロッド3の退入動作の際にワークWに当接してワークWをクランプする。図2に示すように、クランプアーム4の先端部の下面部には、クランプ状態でワークWに当接してワークWにクランプ力を出力する出力部4aが設けられている。 【0020】 次に、油圧シリンダ5、6について説明する。 出力ロッド3を下方へ駆動するクランプ用の油圧シリンダ5は、シリンダ穴12、13と、出力ロッド3のピストン部3cと、ピストン部3cの上側に形成された油室20とを備えている。前記油室20は、クランプ本体2に形成された油路40及び油圧ポート21に接続されており、図示外の油圧供給源から、据付け面2bに形成された油圧ポート21、油路40を介して油室20に油圧が供給されると、油室20に出力ロッド3を下方へ駆動するクランプ力が発生する。 【0021】 一方、出力ロッド3を上方へ駆動するクランプ解除用の油圧シリンダ6は、シリンダ穴13と、出力ロッド3のピストン部3cと、筒部3bの内側及びピストン部3cの下側に形成された油室22とを備えている。油室22は、クランプ本体2に形成された油路41及び据付け面2bに形成された油圧ポート23に接続されており、図示外の油圧供給源から油圧ポート23、油路41を介して油室22に油圧が供給されると、油室22に出力ロッド3を上方へ駆動するクランプ解除力が発生する。 【0022】 ところで、図1?図3に示すように、クランプ本体2内に設けられた油路40、41には、夫々油路40、41を流れる油圧の流量を調整可能な流量調整弁42、43が設けられている。複数のクランプ装置1でワークWを固定する場合に、複数のクランプ装置1の出力ロッド3の退入速度をほぼ等しくして、複数のクランプ装置1によりほぼ同時にワークWをクランプすることができるように、流量調整弁42、43により油圧シリンダ5、6に供給される作動油の流量を調整するようになっている。 【0023】 2つの流量調整弁42、43は夫々同じ構成を有するため、クランプ用の油圧シリンダ5の油圧系に設けられた流量調整弁42について以下説明する。」 【図6】 【図7】 【図8】 【図9】 オ 「【0024】 図6?図9に示すように、流量調整弁42は、クランプ本体2の据付け用フランジ部2fの側壁部に横向き水平に形成された装着穴48(ネジ孔に相当する)に螺着された筒状の弁ケース45と、油路40の途中部に形成され装着穴48の前端に連なる弁孔46と、弁ケース45に前後方向(出力ロッド3の長手方向と交差する方向)に移動可能に螺着された弁部材47とを備えている。 【0025】 弁ケース45は、前側の小径部45aと後側の断面六角形状の基部45bとを有し、小径部45aが装着穴48に内嵌状に螺合されるとともに、小径部45aと基部45bとの間の段部がクランプ本体2の後面部に当接している。装着穴48は油圧ポート21と第1油路40aにより接続され、一方、弁孔46は、その穴径が装着穴48よりも小さく形成され、この弁孔46に油圧シリンダ5の油室20に連なる第2油路40bが接続されている。 【0026】 弁部材47は、先端部に形成された筒状の弁体部47aと、この弁体部47aの基端に連なり弁体部47aよりもやや大径の軸部47bとを有する。軸部47bの基端側部分の外周部にはネジ部が形成されており、軸部47bが弁ケース45に内嵌状に螺合されて、弁部材47は、クランプ本体2に固定された弁ケース45に対して前後に相対移動可能に装着されている。図6?図8に示すように、軸部47bの基端側部分には、前方へ延びる六角穴47c(操作部に相当する)が形成されており、この六角穴47cに六角レンチ等の工具を係合させて軸部47bを回転させて、弁部材47を前後に移動させることができる。尚、基部45bの基端には抜け止め用のロックナット49も装着されている。 【0027】 弁体部47aは、弁孔46に前後摺動自在に挿入可能であり、弁体部47aには、装着穴48と弁孔46との間の段部に係合してそれ以上の弁体部47aの前方への移動を係止する係止部50が形成されている。 【0028】 図6、図7、図9に示すように、弁体部47aの外周部の上端部には、先端側ほど溝の深さが深い切欠状(正面視V字状)の溝部47dが形成されている。弁体部47aが最も後側の位置にある全開状態(図6参照)と、弁体部47aが最も前側の位置にある全閉状態(図7参照)の間で、弁体部47aを前後に移動させると、弁体部47aと弁孔46との間の隙間が変化してその間を流れる作動油の流量が調整される。さらに、弁体部47aの溝部47dにより、弁体部47aと弁孔46との間の隙間、つまり、油圧の流路面積を細かく調節することができるため、その隙間を流れる作動油の流量の微調整を容易に行うことができる。 【0029】 さらに、弁部材47には、前記の弁体部47aと弁孔46との隙間をバイパスするバイパス流路51、52と、バイパス流路51を油室20に油圧を供給する方向にのみ閉止する逆止弁53が設けられている。バイパス流路51は、弁体部47aの内側に前後に延びるように形成され、バイパス通路52は、バイパス通路51の基端から放射状に径方向外側へ延びるように形成されている。 【0030】 逆止弁53は、バイパス流路51の基端部に形成された弁座55と、この弁座55と協働してバイパス流路51を閉止する鋼球56と、この鋼球56を前方へ付勢するコイルバネ57とを有する。軸部47bには、バイパス流路51、52に連通して後方へ延びる鋼球収容孔58が形成されており、鋼球56は鋼球収容孔58と弁座55とに亙って前後方向へ移動可能に構成されている。鋼球収容孔58にはコイルバネ57も配設されており、鋼球56はコイルバネ57により弁座55側へ付勢されている。 【0031】 従って、油圧ポート21から油室20に油圧を供給する場合には、鋼球56が弁座55に密着してバイパス流路51が閉止されているため、油圧は弁体部47aと弁孔46との隙間のみを流れることになる。一方、油室20から油圧を排出する場合には、図7の鎖線で示すように、油圧により鋼球56が後方へ押圧されてバイパス流路51が開放されるため、前記隙間に加えてバイパス流路51、52からも油圧が油圧ポート21へ流れることになる。」 カ 「【0039】 次に、クランプ装置1の作用について説明する。 ワークWをクランプする場合には、図1のクランプ解除状態から、図示外の油圧供給源から油圧ポート21を介して油圧を供給する。その際、油圧は流量調整弁42を通って油路40を流れ油室20へ供給されることになる。このとき、流量調整弁42において、バイパス流路51は逆止弁53により閉止されるため、油圧は弁体部47aと弁孔46の間の隙間を流れることになる。ここで、弁部材47を前後方向に移動させて前記隙間を適切に調整しておくことで、油路40を流れる油圧が所定の流量に調整される。 【0040】 油路40を介してクランプ用の油圧シリンダ5の油室20に油圧が供給されると、油室20に発生したクランプ力により出力ロッド3のピストン部3cが下方へ駆動される。このとき、変換機構7により出力ロッド3の進退動作の一部がクランプ本体2に対する回転動作に変換され、出力ロッド3がクランプ本体2に対して回転しつつ下方へ退入する。この出力ロッド3の回転動作に連動して、クランプアーム4も平面視で時計回りの方向に90度旋回して、クランプアーム4の出力部4aがワークWの上側に位置する。 【0041】 クランプアーム4が所定位置まで旋回した後は、出力ロッド3が直線的に退入し、図2に示すように、クランプアーム4の出力部4aがワークWに当接して、出力部4aからクランプ力がワークWに出力されてワークWがクランプされる。 【0042】 ここで、複数のクランプ装置1によりワークWが固定されるが、各々の油圧シリンダ5の油室20に供給される油圧を流量調整弁42により適切な流量に調整することができるため、ワークWをクランプする際に、複数のクランプ装置1において、ほぼ同時にクランプアーム4を旋回させ、続けて、同時に出力部4aをワークWに当接させることができ、ワークWを所定の位置に確実にクランプできるようになる。 【0043】 一方、図2のクランプ状態を解除する場合には、クランプ用の油圧シリンダ5の油室20から油圧を排出するとともに、クランプ解除用の油圧シリンダ6の油室22に油圧を供給する。まず、クランプ用の油室20から排出される油圧は、油路40及び流量調整弁42を介して油圧ポート21へ流れるが、流量調整弁42において、第1油路40aの油圧により鋼球56が後方へ移動して逆止弁53がバイパス流路51を開放するため、油圧がバイパス流路51、52を通って迅速に油圧ポート21へ排出される。 【0044】 一方、クランプ解除用の油圧ポート23からは、油路41及び流量調整弁43を介してクランプ解除用の油室22へ油圧が供給される。この場合は、前述のクランプ時と同様に、流量調整弁43において、バイパス流路51は逆止弁53により閉止されるため、油圧は弁体部47aと弁孔46の間の隙間を流れることになり、油路41を流れる油圧が所定の流量に調整される。 【0045】 そして、油室22に発生したクランプ解除力によりピストン部3cが上方へ駆動される。このとき、出力ロッド3が直線的に所定量進出した後、変換機構7により出力ロッド3の進出動作の一部がクランプ本体2に対する回転動作に変換され、出力ロッド3がクランプ本体2に対して回転しつつ上方へ進出する。この出力ロッド3の回転動作に連動して、クランプアーム4も平面視で反時計回りの方向に90度旋回して、図1に示すクランプ解除状態となる。 【0046】 以上説明したクランプ装置1によれば、次のような効果が得られる。 1)流量調整弁42、43において、弁部材47を弁孔46に対して接近/離隔する方向に移動させて、弁体部47aを弁孔46内に突入させることにより、弁体部47aと弁孔46との間の隙間を調節して、油路40を流れる作動油の流量を調整することができる。つまり、弁体部47aを有する弁部材47を直接弁孔46に接近/離隔する方向に移動させることができ、作動油の流量を容易に且つ確実に調整できるし、流量調整弁42、43の部品数を少なくしてその構成を簡単化することも可能である。 【0047】 2)弁体部47aには、油圧を微調整するための切欠状の溝部47dが設けられ、この溝部47dは先端側ほど溝の深さが深く形成されているため、弁体部47aを弁孔46に挿入したときの弁体部47aの突入量を調整することで、油路40を流れる作動油の流量を微調整することができる。 【0048】 3)弁部材47の内部に、隙間をバイパスするバイパス流路51を一方向にのみ閉止する逆止弁53が設けられているため、油圧シリンダ5、6に油圧を供給する場合にはその流量を調整し、逆に油圧を排出する場合には、流量を調整することなく迅速に油室20、22から排出するように構成できる。さらに、逆止弁53を流量調整弁42、43とは別に設ける場合に比べてクランプ装置1をコンパクトにすることができる。 【0049】 次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。」 【図11】 キ 「【0052】 3]図11に示すように、油圧を排出する場合の流量のみを調整する流量調整弁42Bに本発明を適用することもできる。この流量調整弁42Bにおいては、弁部材81の内部に、油室20から油圧ポート21へ油圧を排出する方向にのみバイパス流路51を閉止する逆止弁82が設けられている。 【0053】 逆止弁82は、バイパス流路83のうちの放射状に延びるバイパス流路84との接続部よりもやや前側の部分に形成された弁座85と、この弁座85と協働してバイパス流路83を閉止する鋼球86と、この鋼球86を後方へ付勢するコイルバネ87とを有する。 【0054】 従って、油圧ポート21から油室20に油圧を供給する場合には、油圧により鋼球86が後方へ押圧されてバイパス流路83が開放されるため、油圧は、弁体部81aと弁孔46との隙間に加えてバイパス流路83、84からも油室20へ流れ、流量が調整されることなく迅速に油室20に流れ込む。一方、油室20から油圧を排出する場合には、鋼球86が弁座85に密着してバイパス流路83が閉止されているため、油圧は弁体部81aと弁孔46との隙間のみを流れることになり、油圧が所定の流量に調整される。」 (2)本件発明の概要 上記(1)の記載によると、本件発明について以下のとおり認められる。 ア 本件発明は、出力ロッドを進退駆動する油圧シリンダに給排する作動油の流量を調整可能なクランプ装置に関する(【0001】)。 イ 従来、機械加工に供するワーク等のクランプ対象物を固定するクランプ装置には、クランプ本体とクランプ本体に進退可能に装着された出力ロッドとを有し、クランプ本体内に配設された油圧シリンダで出力ロッドを進退駆動することにより、クランプ対象物をクランプしたり、そのクランプ状態を解除したりするものがある(【0002】)。 クランプ対象物が大きい場合は、一般に、このようなクランプ装置を複数個同時に使用し、複数個所でクランプ対象物を固定するが、これら複数のクランプ装置間で油圧シリンダへの作動油の供給速度(供給流量)が異なると、それぞれのクランプ装置でクランプ対象物をクランプするタイミングにばらつきが生じ、その間にクランプ対象物が外部からの衝撃などによって所定の位置からずれてしまい、クランプ対象物を所定の位置に確実に固定できなくなるおそれがあるので、作動油の供給流量又は排出流量を調整可能なクランプ装置が提案されている(【0003】、【0004】)。 そのようなクランプ装置には、特許文献1(米国特許第5695177号明細書、甲第15号証の1)に記載されたクランプ装置のように、クランプ本体にニードルバルブを上下方向に移動可能に装着し、ニードルバルブの先端部をクランプ本体内で水平に延びる油路内に突入させて、油路を流れる作動油の流量を調整できるようにしたものがある(【0004】)。 また、特許文献2(特開2000-145724号公報、甲第14号証)に記載されたクランプ装置のように、油圧供給用の油路及び油圧排出用の油路のそれぞれに流量調整弁を設け、各流量調整弁はクランプ本体内の油路の途中部に形成された弁座と、弁座に水平方向に対向して設けられ、弁座と協働して油路を開閉する弁体としての鋼球と、クランプ本体に螺着され鋼球を下方へ押圧可能な調整スロットルとを備えるものとし、調整スロットルを操作して鋼球を所定量下方へ押し下げることにより鋼球と弁座との間の隙間を調整して、油路を流れる作動油の流量を調整できるようにしたものもある(【0005】)。 ウ 特許文献1に記載されたクランプ装置は、水平に延びる油路に対して垂直方向にニードルバルブを突入させるため、出力ロッドの近傍部にニードルバルブが上方から装着されるので、作動油の流量を調整するニードルバルブが操作しにくいという欠点がある(【0007】)。 エ 特許文献2に記載されたクランプ装置は、(問題1)弁体としての鋼球を別部材の調整スロットルで下方に押圧して弁座から水平方向に離隔させて流量を調整するので、必然的に部品数が多くなって作動油の流量調整のための構成が複雑になり、この複雑な構成を含むクランプ本体をコンパクトにすることが困難である、(問題2)鋼球が弁座に対して移動する方向と交差する方向に鋼球を押圧して鋼球と弁座との間の隙間を調整するので、鋼球を弁座側へ直接移動させる場合に比べて作動油の流量の微調整が困難である、(問題3)調整スロットルが出力ロッドの近傍部に上方から装着されるので、操作性の面で不利がある、といった問題がある(【0008】)。 オ 本件発明は、(課題1)作動油の流量を容易かつ確実に微調整可能にすること、(課題2)流量調整のための構成を簡単化して、その構成を含むクランプ本体をコンパクトにすること、(課題3)作動油の流量を調整するための操作部材の操作性を向上させること、などを目的とするものである(【0009】)。 カ 本件発明は、前記オの目的を達成するために、本件訂正後の請求項1?請求項3に記載された構成を備えるものであり、(効果1)弁体部を有する弁部材を直接弁孔に接近したり弁孔から離隔したりする方向に移動させることができるので、作動油の流量を容易にかつ確実に調整できるし、流量調整弁の部品数を減らして構成を簡単にすることができる(【0011】、【0046】)、(効果2)弁体部に切り欠き状の溝部が設けられ、その溝は弁体部の先端側が深くなっているので、弁体部の弁孔への挿入量を調整することで、油路を流れる作動油の流量を微調整することができる(【0047】、【0052】?【0054】)、(効果3)弁部材の内部に、隙間をバイパスするバイパス流路を一方向にのみ閉止する逆止弁が設けられているので、油圧シリンダに油圧を供給(油圧シリンダから油圧を排出)する場合にはその流量を調整し、逆に油圧シリンダから油圧を排出(油圧シリンダに油圧を供給)する場合には迅速に排出(供給)することができる(【0048】)、(効果4)弁部材の内部に、隙間をバイパスするバイパス流路を一方向にのみ閉止する逆止弁が設けられているので、逆止弁を流量調整弁とは別に設ける場合に比べてクランプ装置をコンパクトにすることができる(【0048】)、という効果を奏する。 2 無効理由4(明確性要件)について 請求人は、本件発明1ないし3の「第2隙間」が明確に特定されないことも含めた前提に立って無効理由を主張するので、まず無効理由4(明確性要件)から検討する。 (1)請求人の主張の概要及び明確性の判断枠組み 請求人は、本件発明が明確でないとして、以下のア?エを主張する。 ア 「前記指向方向」の明確性 請求項1、3の構成B1において、「・・・前記指向方向と同じ向きになるように設けられ」との記載があるが、この「前記指向方向」の記載の前に「指向方向」との用語はないから、「前記指向方向」が如何なる方向を指すのか明確でない。 イ 「第2隙間」の明確性 本件特許発明の構成B16では、「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され」と特定されているが、ここでいう「先端」について、弁ケースの「最先端部分」を指すのか、弁ケースの先端寄り部分(先端側のある一定の範囲)を指すのか明確でない。「先端」とは、一般的には、物の一番さきの部分を指す(甲第35、36号証、広辞苑4版、7版)から、一般用語に基づいて解釈した場合、弁ケースの先端とは、弁ケースの最先端の部分を指すことになるから、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面(テーパー内周面とストレート内周面)との間の隙間とは、図D-2(上記第3の2(4)イ)の「先端隙間」を指すことになる。上記一般的な解釈とは異なり、「先端」について、弁ケースの先端寄り部分(先端側のある一定の範囲)を指すと解釈した場合には、弁ケースの外周側の部分(「外周隙間」)と理解できる余地がある。 このように、「先端」の意義の解釈の仕方によって、第2隙間の位置が変わってしまうから、「第2隙間」がどの箇所を示すものであるか明確でない。 ウ 「第1流路」、「第1隙間」、及び「第2隙間」の配置の明確性 請求項1、3の構成B19において、「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」と記載されている。「前記指向方向」が、「第2油路の指向方向」のことを指すものであると善解しても、第1流路、第1隙間、及び第2隙間が、指向方向に直交する面に配置されていなければならないということになる。しかし、第1流路、第1隙間、及び第2隙間は、三次元的に一定の容積を有する空間であるから、そもそも一つの面の中に、これらを配置することは不可能である。 第1流路、第1隙間、及び外周隙間は、少なくとも一部が指向方向に直交する面を通っているものであると解釈できるものの、同一平面内に位置できるように配置されるとの構成とはなっていない。 よって、構成B19の記載について、「第1流路、第1隙間、及び第2隙間の少なくとも一部が指向方向に直交する面を通っている」ことを意味するのか、他の意味であるのか明確でない。 エ 連通経路の明確性 請求項1、3の構成B15ないし17において、「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」とした上で、構成B19において「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」と特定されている。 前記ウについて、“第1流路、第1隙間、及び第2隙間の少なくとも一部が指向方向に直交する面を通っている”との意図と善解しても、構成B17の「前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」との記載について、第1油路と第2油路とが、どのような経路を通じて、連通しているのかが明確ではない。 オ 明確性の判断枠組み 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 これを踏まえて以下、検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の請求項1、3には、以下の特定がされている。 ア 「該油路は、前記油圧ポートに接続された第1油路と、該第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向して前記シリンダ穴に至る第2油路とを有し、 一端が前記フランジ部の外周面から突出し、他端が前記第1油路と第2油路との接続部に至る流量調整弁が、前記一端から前記他端に向かう方向が前記第2油路の前記指向方向と同じ向きになるように設けられ、」(構成A8及びB1) イ 「前記バイパス流路は、前記弁体部の内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含み、 前記逆止弁は、前記第1流路上に形成された弁座と、前記第1流路内に移動可能に設けられた鋼球と、前記鋼球を前記弁座側に付勢する部材とを含み、 前記シリンダ穴から油圧を排出するときには、排出される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放され、」(構成B12ないし14) ウ 「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」(構成B15ないし19及びA9) (3)判断 ア 「前記指向方向」について 上記(2)アのとおり、請求項1、3の構成A8には、「該第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向して前記シリンダ穴に至る第2油路とを有し」との特定があることから、第2油路は出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向していることが特定されているところ、その直後の構成B1において、「・・・流量調整弁が、前記一端から前記他端に向かう方向が前記第2油路の前記指向方向と同じ向きになるように設けられ」と特定されている。 そうすると、構成B1の「前記指向方向」は第2油路についてのものであるから、構成A8で特定する第2油路の指向方向と同じ方向を意味し、出力ロッドの移動方向に直交する方向であることは明らかであり、不明確とはいえない。 イ 「第2隙間」について 上記(2)ウのとおり、請求項1、3の構成B16には、第2隙間について、「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され」との特定があるところ、「先端」は、「物の一番さきの部分。はし。」(甲第35、36号証)を意味する語である。ここでいう一番さきの部分は、「部分」であるから、範囲があることを許容するものであって、必ずしも、物の最も先の特定の一点のみを指すものではない。 また、構成B1の記載からみて、流量調整弁は第2油路の指向方向と同じ向きに設けられているから、弁ケースの先端を含む範囲は、当該指向方向に延びる範囲といえる。 そして、請求項1、3の構成A9及びB18の「前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し」との特定事項を踏まえれば、第1油路が装着穴の内周面に開口しており、その第1油路に第2隙間が面していることが理解できる。 そうすると、これらの事項を合わせみれば、「第2隙間」が、弁ケースの油圧シリンダの油室側の先端を含む前記指向方向に延びる範囲と、装着穴の内周面との間の隙間であることは明らかであり、不明確とはいえない。 【図6に基づく第2隙間の説明図】 ウ 「第1流路」、「第1隙間」、及び「第2隙間」の配置について 上記(2)ウのとおり、請求項1、3の構成B19には、「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」ことが特定されている。ここで、「指向方向に直交する同一面内に位置できる」との特定から、バイパス流路の第1流路、第1隙間、第2隙間の三者が、指向方向に直交する面であって共通する一面内に位置することが可能であること、すなわち、上記バイパス流路の第1流路、第1隙間、第2隙間の三者の空間の全てが、指向方向に直交する方向において完全に重なることを意味するのではなく、それら三者の一部が、指向方向に直交する方向において重なる面(断面)を有することが可能であればよいことが特定されていると理解できる(下記同一面内の参考図を参照。)。 そうすると、「第1流路」、「第1隙間」、及び「第2隙間」の配置が不明確とはいえない。 【同一面内の参考図】 エ 連通経路 上記(2)ウのとおり、請求項1、3の構成B17には、「前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」との特定がある。 この特定は、第1油路、第2油路、バイパス流路の3つの油路又は流路が、第1隙間および第2隙間と連通関係にあることを特定するものであり、このような連通関係にある限りにおいて、どのような経路を通じて連通しているのかまで、具体的に特定しようとするものでないことは明らかである。 加えて、上記(2)イのとおり、構成B12で「前記バイパス流路は、前記弁体部の内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含み」との特定もなされているから、当業者であれば、油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに第2隙間に面するように装着穴の内周面に開口する「第1油路」、第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向して前記シリンダ穴に至る「第2油路」、および弁体部の内部に流量調整弁の一端から他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含むものである「バイパス流路」の3つの油路又は流路が、第1シール部材に対して油圧シリンダの油室側において弁部材の外周面と弁ケースの内周面との間に形成される「第1隙間」、および弁ケースの油圧シリンダの油室側の先端と装着穴の内周面との間に形成される「第2隙間」と連通関係にあることを理解することができる。 そうすると、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとまではいえない。 (4)小括 したがって、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえないから、特許法第123条第1項第4号の無効理由を有するとはいえない。 3 無効理由1(新規事項)について (1)請求人の主張の概要及び新規事項の判断枠組み 請求人は、特許出願時の明細書等(甲第1?3号証)について、以下のア及びイのように主張している。 ア 弁孔46としては、油路の途中部に形成され装着穴48の前端に連なる構成のみが記載されている(【0030】、【0031】、図6、7)から、出願当初の明細書等において、図6に記載されているように、クランプ本体2に凹状に形成された装着穴48の前端から、第2油路40bに向けて、当該クランプ本体に穿孔されて、直列状に連なった孔が弁孔46ということとなる。 イ 一方、平成25年8月30日の補正(甲第34号証)を経て、平成26年4月3日の補正(甲第4号証)によって、特許請求の範囲の請求項1、3、明細書の【0010】で、「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔」(構成B2)との文言に改められたが、当該構成B2の記載には、“第1油路と第2油路との接続部に形成された弁孔であって、装着穴の前端とは連ならずに、クランプ本体とは異なる別部材を用いて形成された弁孔”(以下“クランプ本体とは別部材の弁孔”という。)との技術的事項が含まれると理解できる余地があるところ、出願当初の明細書等においては、上記アの“装着穴48の前端に連なって形成された弁孔46”(以下“クランプ本体と一体の弁孔”という。)のみが記載されていたものであり、“クランプ本体とは別部材の弁孔”については何ら記載されていなかったから、この補正は、新たな技術的事項を導入しているといえ、新規事項の追加に該当する。 ウ 新規事項の判断枠組み 特許請求の範囲等の補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならないところ(特許法17条の2第3項)、上記の「最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項」とは、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項を意味し、当該補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は「明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。 これを踏まえて以下、検討する。 (2)出願当初の明細書等(甲第1?3号証)の記載 本件特許に係る出願(特願2011-222200号)の願書に最初に添付された明細書(甲第1号証)、特許請求の範囲(甲第2号証)及び図面(甲第3号証)の、「弁孔」に関する記載は以下のとおりである。 ア 「【0030】 2つの流量調整弁42、43は夫々同じ構成を有するため、クランプ用の油圧シリンダ5の油圧系に設けられた流量調整弁42について以下説明する。 図6?図9に示すように、流量調整弁42は、クランプ本体2の据付け用フランジ部2fの側壁部に横向き水平に形成された装着穴48(ネジ孔に相当する)に螺着された筒状の弁ケース45と、油路40の途中部に形成され装着穴48の前端に連なる弁孔46と、弁ケース45に前後方向(出力ロッド3の長手方向と交差する方向)に移動可能に螺着された弁部材47とを備えている。 【0031】 弁ケース45は、前側の小径部45aと後側の断面六角形状の基部45bとを有し、小径部45aが装着穴48に内嵌状に螺合されるとともに、小径部45aと基部45bとの間の段部がクランプ本体2の後面部に当接している。装着穴48は油圧ポート21と第1油路40aにより接続され、一方、弁孔46は、その穴径が装着穴48よりも小さく形成され、この弁孔46に油圧シリンダ5の油室20に連なる第2油路40bが接続されている。」 イ 図6、7には、クランプ本体2に、装着穴48が水平方向に形成されていること、第1油路40aが左斜め下方から装着穴48に向けて連通すること、第2油路40bが、装着穴48に連なって形成された、装着穴48よりも小径の弁孔46の前端(右端)に向けて、水平方向に右方から連通することが看取される。 ウ 特許請求の範囲には、「弁孔」についての特定はない。 (3)補正された事項 ア 本件特許に係る出願について、平成25年8月30日に提出された手続補正書(甲第34号証)により、特許請求の範囲の「弁孔」の特定事項に関してなされた補正は以下のとおりである。 請求項1、3及び【0010】に、「前記第1油路と前記第2油路との交差部に形成された弁孔と、」との事項の加入。 イ 平成26年4月3日に提出された手続補正書(甲第4号証)により、特許請求の範囲の「弁孔」の特定事項に関してなされた補正は以下のとおりである。 請求項1、3及び【0010】において、「前記第1油路と前記第2油路との交差部に形成された弁孔と、」を、「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、」に変更。 (4)判断 上記補正について検討する。 上記(2)イから、第1油路40aが左斜め下方から装着穴48に向けて連通すること、第2油路40bが、装着穴48に連なって形成された、装着穴48よりも小径の弁孔46の前端(右端)に向けて、水平方向に右方から連通することが看取されるところ、上記(2)アから、弁孔46は油路40の途中部に形成されるものであることが記載されているから、弁孔46は第1油路40aと第2油路40bとからなる油路40の途中部にあるもの、すなわち、弁孔46の位置において油路が接続されるものであり、左斜め下方からの装着穴48に向けた方向の第1油路40aと、水平方向の第2油路40bとが、弁孔の位置において交差していることが理解できる。 そうすると、平成25年8月30日の補正により、本件特許に係る出願当初の明細書等の上記(3)アの請求項1に、「前記第1油路と前記第2油路との交差部に形成された弁孔と、」との事項を加入した点は、出願当初の明細書等に記載された事項を請求項1に加入したに過ぎない。また、平成26年4月3日の補正(上記(3)イ)についても、弁孔の位置は、第1油路40aと第2油路40bとが接続する位置にあるのであるから、出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものに過ぎない。 そもそも、本件特許に係る出願当初の特許請求の範囲では、上記(2)ウのとおり、弁孔についての特定は何らなされておらず、したがって、弁孔を如何に形成するか、すなわち、クランプ本体と一体的に形成されるものか、異なる別部材として形成されるものかについては、何ら特定をしていなかったものである。また、出願当初の明細書等には、上記(2)ア、イのとおり、クランプ本体2に設けられる装着穴48は、油圧ポート21と第1油路40aにより接続され、一方、弁孔46は、その穴径が装着穴48よりも小さく形成され、この弁孔46に油圧シリンダ5の油室20に連なる第2油路40bが接続されていることが記載されるのみであり、弁孔をクランプ本体と別部材として形成することについての記載はない。一方、出願当初の明細書全体の記載を見渡しても、弁孔をクランプ本体2と一体に形成しなければならない積極的な理由も見当たらない。 そして、補正によって特定された上記(3)の各事項は、図6等に記載された事項をそのまま特定したものであって、請求人の主張するようなクランプ本体とは別部材とした弁孔を含むことを特定しようとしたものではないことは明らかであるところ、出願当初と、平成25年8月30日及び平成26年4月3日の補正後とで、特許請求の範囲の記載には、「弁孔」が一体であるか別体であるかについての特定の有無等の事情については何ら変わりがない。そうすると、仮に、請求人の言うように、補正された特許請求の範囲に記載された「弁孔」にクランプ本体とは別部材で形成されるものが含まれるとするならば、そのような構成は、補正前から内在していたものと認められるから、請求人の主張は失当である。 (5)小括 したがって、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をしてなされた特許出願に対してなされたものとはいえないから、特許法第123条第1項第1号の無効理由を有するとするとはいえない。 4 無効理由2(サポート要件)について (1)請求人の主張の概要及びサポート要件の判断枠組み 請求人は、本件発明が、本件特許明細書等に記載された発明ではないとして、以下のア、イの主張をする。 ア 弁孔のサポート要件 請求項1、3の構成B2の「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔」との発明特定事項には、図Aや図B-1ないし図B-3(上記第3の2(2)ア)の“クランプ本体とは別部材の弁孔”が包含されている。 しかし、出願当初の明細書等及び本件明細書等には、“クランプ本体と一体の弁孔”のみが記載され、“クランプ本体とは別部材の弁孔”については記載も示唆もされていない。さらに、“クランプ本体とは別部材の弁孔”の構成を用いた場合、弁孔を形成するための部材の軸方向の大きさだけ、流量調整弁がクランプ本体の外側に余分に飛び出てしまうことになるので、「流量調整の為の構成を簡単化してその構成を含むクランプ本体をコンパクトにする」との本件発明の課題(【0009】)を解決することができない。 したがって、請求項1、3の構成B2において、“クランプ本体と一体の弁孔”であることが特定されていない「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔」にまで、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。 イ 第2隙間のサポート要件 請求項1、3の構成B16によれば、第2隙間について「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間」に形成されたものであり、構成B19によれば、「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置」されるものである。 被請求人は、別件侵害訴訟(甲第7号証)において、弁ケースの最先端部分が装着穴に当接している場合でも、弁ケースの先端寄り部分の外径が装着穴の内径よりも小さい場合には、弁ケースの先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成される「外周隙間」が、本件特許発明の第2隙間に該当することになるとの見解を示している。 しかしながら、本件特許発明の第2隙間に関し、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間の隙間とは、[先端隙間]であるとしか理解できない。 図C(上記第2の2(2)イ)のように、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで[外周隙間]を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”とする技術的事項については、本件明細書の発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない。 請求項1、3の構成B16において、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させずに、最先端部分の先で第1隙間と直接連通している環状の先端隙間を有するようにして、弁ケースの油圧シリンダ側の先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成された外周隙間”であることが特定されていない「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され」という記載にまで、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。 ウ サポート要件の判断枠組み 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。 これを踏まえて以下、検討する。 (2)特許請求の範囲及び明細書等の記載 ア 弁孔について (ア)特許請求の範囲の請求項1、3の構成B2には、弁孔に関し、「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、」と特定されている。 (イ)本件明細書の段落【0023】ないし【0025】(上記第5の1(1))には、弁孔に関する記載がある。 (ウ)図6、7(上記第5の1(1))から、クランプ本体2に、装着穴48が水平方向に形成されていること、第1油路40aが左斜め下方から装着穴48に向けて連通すること、第2油路40bが、装着穴48に連なって形成された、装着穴48よりも小径の弁孔46の前端(右端)に向けて、水平方向に右方から連通することが看取される。 イ 第2隙間について (ア)特許請求の範囲の請求項1、3の構成B15ないし19及びA9には、第2隙間に関し、「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」と特定されている。 (イ)本件明細書には、上記ア(イ)の記載の他、段落【0026】、【0029】及び【0031】(上記第5の1(1))の記載がある。 (ウ)図6(上記第5の1(1))から、流量調整弁(前開状態)の断面図として、流量調整弁42の弁ケース45が、クランプ本体2の装着穴48に螺合されるとともに、当該螺合された箇所(45aの引き出し線の付された箇所)よりも右方(弁孔46及び第2油路40bの側)において小径となっており、装着穴48の円筒状の箇所(53の引き出し線の付された位置付近)における内周面と弁ケース45の外周面との間に隙間が存在すること、クランプ本体2の内部に設けられた第1油路40aは、当該隙間に面するように装着穴48の円筒状の箇所における内周面に開口していることが看取される。 また、弁部材47が、弁ケース45の内周面に螺合し、当該螺合された箇所よりも右方において、弁部材47の外周面に設けられた凹部に、弁ケースの内周面に接するようシール部材(太線でハッチングされた部材)が設けられており、当該シール部材の凹部よりも右方において、弁部材47は小径となって延在し、弁ケース45の内周面と弁部材47の外周面との間には隙間が存在するとともに、当該小径となっている部位の内部には、バイパス流路51が設けられているとともに、当該小径となっている部位の基端(左方)付近には、パイパス流路51と連通し、径方向に延びるバイパス流路52が設けられていること、バイパス流路52と、装着穴48の内周面と弁ケース45の外周面との間の隙間と、弁ケース45の内周面と弁部材47の外周面との間の隙間とが、弁ケースが螺合される方向(図における水平方向)に直交する同一の面内に位置することが看取される。 (エ)図7(上記第5の1(1))から、流量調整弁(前閉状態)の断面図として、弁部材47が図中右方に移動しており、図6における弁ケース45の内周面と弁部材47の外周面との間の隙間は存在しないことが看取される。 (3)判断 ア 弁孔のサポート要件について 上記(2)ア(ア)のとおり、特許請求の範囲の請求項1、3の構成B2には、「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、」との特定がなされているところ、明細書には上記(2)ア(イ)のとおり、弁孔46は油路40の途中部に形成されるものであること(【0024】)について記載があるとともに、図面(上記(2)ア(ウ))から、弁孔46の位置において油路が接続されるものであり、左斜め下方からの装着穴48に向けた方向の第1油路40aと、水平方向の第2油路40bとが、弁孔の位置において交差していることが理解できる。 そうすると、特許請求の範囲に記載された「弁孔」についての構成B2の特定事項が、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであることは明らかである。 また、特許請求の範囲において、“クランプ本体とは別部材の弁孔”については、明細書等に直接的な記載や示唆がないところ、明細書の記載を総合的にみれば、“クランプ本体とは別部材の弁孔”であるか否かにかかわらず、特許請求の範囲に特定された構成全体によって、(課題1)作動油の流量を容易かつ確実に微調整可能にすること、(課題2)流量調整のための構成を簡単化して、その構成を含むクランプ本体をコンパクトにすること、(課題3)作動油の流量を調整するための操作部材の操作性を向上させること、などの課題(上記第5の1(2)オ)を解決し得ると当業者は理解できるものである。 請求人は、“クランプ本体とは別部材の弁孔”では、「流量調整の為の構成を簡単化してその構成を含むクランプ本体をコンパクトにする」(【0009】)という課題を解決しないなどと主張しているが、当該課題は、弁部材の内部に逆止弁を設けることにより、逆止弁を流量調整弁とは別に設ける場合に比べてコンパクトにする(上記第5の1(2)カの(効果4))ように解決されるものであり、弁孔の具体的な構成により解決される課題ではないから、請求人の主張は失当である。 イ 第2隙間のサポート要件について (ア)上記2(3)イに述べたとおり、「第2隙間」は、弁ケースの油圧シリンダの油室側の先端を含む指向方向に延びる範囲と、装着孔の内周面との間の隙間であることが明らかであるところ、これを踏まえて以下検討する。 (イ)上記(2)イ(ア)のとおり、特許請求の範囲の請求項1、3の構成B15ないし19及びA9には、「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」との特定がなされているところ、明細書には上記(2)イ(イ)のとおり、弁ケース45が、装着穴48に螺着された筒状のものであること、弁部材47は、先端部に形成された筒状の弁体部47aと、この弁体部47aの基端に連なり弁体部47aよりもやや大径の軸部47bとを有するものであること、軸部47bが弁ケース45に内嵌状に螺合されて、弁部材47は、クランプ本体2に固定された弁ケース45に対して前後に相対移動可能に装着されていることについて記載があり、加えて、油圧の流路として、弁体部47aと弁孔46との隙間だけではなく、バイパス流路51もあることを前提として、そのバイパス流路51が閉止されている際に、油圧は弁体部47aと弁孔46との隙間のみを流れることを説明する記載(【0031】)があるとともに、図面(上記(2)イ(ウ))から、弁部材47の内部のバイパス流路51と、装着穴48の内周面と弁ケース45の外周面との間の隙間と、弁ケース45の内周面と弁部材47の外周面との間の隙間との位置関係が把握できるとともに、その位置関係が変化することが理解できる。すなわち、弁部材47の内部のバイパス流路51と、装着穴48の内周面と弁ケース45の外周面との間の隙間と、弁ケース45の内周面と弁部材47の外周面との間の隙間とが、弁ケースが螺合される方向(図6における水平方向)に直交する同一の面内に位置し得ることが理解できる。 (ウ)そうすると、特許請求の範囲に記載された「第2の隙間」についての特定事項が、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであることは明らかである。 また、特許請求の範囲の請求項1、3に係る発明は、請求項1、3に特定された事項を全て備えることによって、上記第5の1(2)オの課題を解決していることは明らかである。 (エ)請求人は、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させずに、最先端部分の先で第1隙間と直接連通している環状の先端隙間を有するようにして、弁ケースの油圧シリンダ側の先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成された外周隙間”であることが特定されていない構成B16の「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され」という記載にまで、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない旨、無効理由として主張している。しかし、請求人の当該主張は、「第2隙間」が“第1隙間と直接連通している環状の先端隙間”であると解釈することを前提とするところ、上記(ア)のとおり、本件発明の「第2隙間」は、弁ケースの油圧シリンダの油室側の先端を含む指向方向に延びる範囲と、装着孔の内周面との間の隙間をいうものであり、請求人の上記の主張は、前提となる「第2隙間」の解釈を誤っているから、採用できない。 (4)小括 したがって、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえないから、特許法第123条第1項第4号の無効理由を有するとするとはいえない。 5 無効理由3(実施可能要件)について (1)請求人の主張の概要及び実施可能要件の判断枠組み 請求人は、本件明細書は、本件発明を実施できる程度に明確かつ十分な程度に記載されていないとして、以下のア、イを主張する。 ア 弁孔の実施可能要件 請求項1、3の構成B2における「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔」との記載には、“クランプ本体と一体の弁孔”以外に、“クランプ本体とは別部材の弁孔”が包含されている。 ところが、下位概念であるところの“クランプ本体とは別部材の弁孔”については、本件明細書の発明の詳細な説明には一切記載されていないし、これについて、当業者が出願時の技術常識を考慮しても、実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると言えない。 また、上記下位概念の構成を用いた場合は、弁孔を形成するための部材の軸方向の大きさだけ、流量調整弁がクランプ本体の外側に余分に飛び出てしまうことになるので、「流量調整の為の構成を簡単化してその構成を含むクランプ本体をコンパクトにする」との本件発明の課題(【0009】)を解決することができないから、課題解決手段としての発明を実施できる程度に、明確かつ十分に、発明の詳細な説明に記載されているとは言えず、そもそも別部材を用いて形成された弁孔を用いた場合にコンパクト化が実現できるとする技術常識も存在しない。 イ 第2隙間の実施可能要件 請求項1、3の構成B16及び17における「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」との構成には、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させずに、最先端部分の先で第1隙間と直接連通している環状の先端隙間を有するようにして、弁ケースの油圧シリンダ側の先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成された外周隙間”を用いた連通構造の他、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”との連通構造を含んでいる。 ところが、下位概念であるところの“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”との連通構造については、本件明細書の発明の詳細な説明には一切記載されていないし、これについて、当業者が出願時の技術常識を考慮しても、実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると言えない。 ウ 実施可能要件の判断枠組み 物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号)、物の発明について実施可能要件を充足するか否かについては、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるか否かによるというべきであって、所期の作用効果を奏することを裏付ける記載の有無いかんにより実施可能要件の充足性が直ちに左右されるものではない。 これを踏まえて以下、検討する。 (2)特許請求の範囲及び明細書等の記載 弁孔に関して、特許請求の範囲、明細書、図面には、上記4(2)アのとおりの記載がある。また、第2隙間に関して、上記4(2)イのとおりの記載がある。 (3)判断 ア 弁孔の実施可能要件について 上記(2)のとおり、特許請求の範囲の請求項1、3の構成B2には、「前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、」との特定がなされているところ、明細書には、弁孔46は油路40の途中部に形成されるものであることについて記載があるとともに、図面から、弁孔46の位置において油路が接続されるものであり、左斜め下方からの装着穴48に向けた方向の第1油路40aと、水平方向の第2油路40bとが、弁孔の位置において交差していることが開示されていると理解できる。 そうすると、特許請求の範囲に記載された「弁孔」についての特定事項について、明細書に実施例として具体的に開示されているものであり、当業者であれば、特許請求の範囲の請求項1、3の構成B2の弁孔の特定事項について、特段の試行錯誤もなく実施可能であることは理解できる。 また、特許請求の範囲において、請求人が指摘する弁孔をクランプ本体と別体にすることについては、特許請求の範囲に特定されていない事項であるところ、明細書の実施可能要件は、特許請求の範囲に含まれ得る全ての場合についての具体的な開示までを厳格に求めるものではなく、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるか否かによって判断されるべきものである。 そして、上記のとおり、特許請求の範囲の請求項1、3の構成B2に特定された「弁孔」については、明細書に実施例として具体的な記載があり、これについて、特段の試行錯誤もなく実施可能であるのだから、仮に請求項1、3の構成B2の弁孔に、クランプ本体と別体とするものが含まれ得るとしても、明細書等にその具体的な実施例等の記載がないからといって、直ちに実施可能要件を充足しないということはできないから、上記判断を左右するものではない。 イ 第2隙間の実施可能要件について 上記2(3)イに述べたとおり、「第2隙間」は、弁ケースの油圧シリンダの油室側の先端を含む指向方向に延びる範囲と、装着孔の内周面との間の隙間であることが明らかであるところ、上記4(3)イに説示したとおり、特許請求の範囲の請求項1、3の構成B15ないし19及びA9に係る事項は、発明の詳細な説明に記載された事項である。 そうすると、特許請求の範囲の請求項1、3の構成B15ないし19及びA9に記載された「第2の隙間」についての特定事項については、明細書に実施例として具体的に開示されているものであり、当業者であれば、特許請求の範囲の請求項1、3の弁孔の特定事項について、特段の試行錯誤もなく実施可能であることは明らかである。 また、特許請求の範囲において、請求人が指摘する“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”との連通構造については、特許請求の範囲に特定されていない事項であるところ、明細書の実施可能要件は、特許請求の範囲に含まれ得る全ての場合についての具体的な開示までを厳格に求めるものではなく、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるか否かによって判断されるべきものである。 そして、上記のとおり、特許請求の範囲の請求項1、3の構成B15ないし19及びA9に特定された「第2隙間」については、明細書に実施例として具体的な記載があり、これについて、特段の試行錯誤もなく実施可能であるのだから、請求人の主張するように、仮に請求項1、3に、「第2隙間」について、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”との連通構造のものが含まれ得るとしても、明細書等にその具体的な実施例等の記載がないからといって、それが直ちに実施可能要件を充足しないということはできないから、上記判断を左右するものではない。 (4)小括 したがって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえないから、特許法第123条第1項第4号の無効理由を有するとするとはいえない。 6 無効理由5(訂正要件違反)について (1)請求人の主張の概要 請求人は、平成28年11月17日付け訂正請求書によってなされた訂正について、以下のアないしウのように主張している。 ア 訂正事項3(請求項1)、訂正事項4(【0010】)、訂正事項7(請求項3)、訂正事項8(【0010】)において、構成B15ないし19及びA9のように訂正されている(甲第5号証)。 イ 構成B16及び17の「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」との構成には、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させずに、最先端部分の先で第1隙間と直接連通している環状の先端隙間を有するようにして、弁ケースの油圧シリンダ側の先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成された外周隙間”を用いた連通構造の他、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”との連通構造が含まれる。しかし、この連通構造については、願書に添付した明細書等に記載されておらず、技術的に自明な事項ではない。 ウ よって、当該訂正によって、上記連通構造のような新たな技術的事項が導入されているから、当該訂正請求は、訂正要件に違反してなされたものである。 以下、これについて検討する。 (2)訂正の内容 平成28年11月17日付け訂正請求書によってなされた訂正のうち、訂正事項3、7は、それぞれ請求項1、請求項3についての訂正であり、訂正事項4、8は、それぞれ明細書の発明の詳細な説明の記載を、請求項1、3についての訂正に整合させるものである。 ア 訂正事項3 本件特許の特許請求の範囲の請求項1において、「前記シリンダ穴から油圧を排出するときには、排出される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放される、クランプ装置。」を、 「前記シリンダ穴から油圧を排出するときには、排出される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放され、前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される、クランプ装置。」(構成B14ないし19並びにA9及び10)と訂正する。 イ 訂正事項4 本件特許の明細書の【0010】に「請求項1のクランプ装置は、シリンダ穴が形成されたクランプ本体と、前記シリンダ穴に内嵌され、前記クランプ本体に進退可能に設けられた出力ロッドと、該出力ロッドの先端部に連結されワークにクランプ力を出力するクランプアームと、前記出力ロッドを退入側に駆動するクランプ用の油圧シリンダとを備え、前記クランプ本体は、その上部にフランジ部を有し、該フランジ部の外周部の下面には据付け面が形成され、該据付け面には、油圧ポートが設けられ、前記クランプ本体の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダを構成する前記シリンダ穴に至る油路が設けられ、該油路は、前記油圧ポートに接続された第1油路と、該第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向して前記シリンダ穴に至る第2油路とを有し、一端が前記フランジ部の外周面から突出し、他端が前記第1油路と第2油路との接続部に至る流量調整弁が、前記一端から前記他端に向かう方向が前記第2油路の前記指向方向と同じ向きになるように設けられ、前記流量調整弁は、前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、前記クランプ本体に対して前記第2油路の前記指向方向に相対移動可能な弁体部および前記弁体部の基端に連なる前記弁体部よりも大径の軸部を有し、前記弁体部が前記弁孔に挿入された全閉状態から前記弁体部が前記弁孔から離間した全開状態に至るまで前記弁体部を移動させて前記弁体部と前記弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材とを備え、前記弁体部の外周部には、先端側ほど深さが深い、前記弁体部の軸方向に延びる溝部が形成され、前記弁部材は、前記弁体部と前記弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と、前記シリンダ穴に油圧を供給するときには前記バイパス流路を閉止し、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには前記バイパス流路を開放する逆止弁とを有し、前記バイパス流路は、前記弁体部の内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含み、前記逆止弁は、前記第1流路上に形成された弁座と、前記第1流路内に移動可能に設けられた鋼球と、前記鋼球を前記弁座側に付勢する部材とを含み、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには、排出される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放されることを特徴としている。」と記載されているのを、 「請求項1のクランプ装置は、シリンダ穴が形成されたクランプ本体と、前記シリンダ穴に内嵌され、前記クランプ本体に進退可能に設けられた出力ロッドと、該出力ロッドの先端部に連結されワークにクランプ力を出力するクランプアームと、前記出力ロッドを退入側に駆動するクランプ用の油圧シリンダとを備え、前記クランプ本体は、その上部にフランジ部と、前記フランジ部から下方へ延びベースの収容穴に収容される部分とを有し、該フランジ部の外周部の下面には前記ベースの上面に当接する据付け面が形成され、該据付け面には、油圧ポートが設けられ、前記クランプ本体の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダを構成する前記シリンダ穴に至る油路が設けられ、該油路は、前記油圧ポートに接続された第1油路と、該第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向して前記シリンダ穴に至る第2油路とを有し、一端が前記フランジ部の外周面から突出し、他端が前記第1油路と第2油路との接続部に至る流量調整弁が、前記一端から前記他端に向かう方向が前記第2油路の前記指向方向と同じ向きになるように設けられ、前記流量調整弁は、前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、前記クランプ本体に対して前記第2油路の前記指向方向に相対移動可能な弁体部および前記弁体部の基端に連なる前記弁体部よりも大径の軸部を有し、前記弁体部が前記弁孔に挿入された全閉状態から前記弁体部が前記弁孔から離間した全開状態に至るまで前記弁体部を移動させて前記弁体部と前記弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材と、前記油圧シリンダの油室側の小径部と、前記フランジ部の側面側の基部とを有し、前記小径部が前記フランジ部に形成された装着穴に内嵌状に螺合される弁ケースと、前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間をシールする第1シール部材と、前記弁ケースと前記装着穴との間をシールする第2シール部材とを備え、前記弁ケースの前記基部に、前記弁部材の前記軸部が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に内嵌状に螺合され、前記基部および前記軸部は前記フランジ部の側面から外側に露出し、前記基部の基端にロックナットが装着され、前記弁部材における前記軸部の基端側部分に、前記弁部材をクランプ本体に対して前記接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部に相当し、工具を係合させて前記軸部を回転させることが可能な穴が形成され、前記弁体部の外周部には、先端側ほど深さが深い、前記弁体部の軸方向に延びる溝部が形成され、前記弁部材は、前記弁体部と前記弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と、前記シリンダ穴に油圧を供給するときには前記バイパス流路を閉止し、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには前記バイパス流路を開放する逆止弁とを有し、前記バイパス流路は、前記弁体部の内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含み、前記逆止弁は、前記第1流路上に形成された弁座と、前記第1流路内に移動可能に設けられた鋼球と、前記鋼球を前記弁座側に付勢する部材とを含み、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには、排出される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放され、前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置されることを特徴としている。」と訂正する。 ウ 訂正事項7 本件特許の特許請求の範囲の請求項3において、「前記シリンダ穴に油圧を供給するときには、供給される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放される、クランプ装置。」を、 「前記シリンダ穴に油圧を供給するときには、供給される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放され、前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される、クランプ装置。」(構成B14’ないし19並びにA9及び10)と訂正する。 エ 訂正事項8 本件特許の明細書の【0010】に「請求項3のクランプ装置は、クランプ本体と、該クランプ本体に進退可能に装着された出力ロッドと、該出力ロッドの先端部に連結されワークにクランプ力を出力するクランプアームと、前記出力ロッドを進出側に駆動するアンクランプ用の油圧シリンダとを備え、前記クランプ本体は、その上部にフランジ部を有し、該フランジ部の外周部の下面には据付け面が形成され、該据付け面には、油圧ポートが設けられ、前記クランプ本体の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダに至る油路が設けられ、該油路は、前記油圧ポートに接続された第1油路と、該第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向する第2油路とを有し、一端が前記フランジ部の外周面から突出し、他端が前記第1油路と第2油路との接続部に至る流量調整弁が、前記一端から前記他端に向かう方向が前記第2油路の前記指向方向と同じ向きになるように設けられ、前記流量調整弁は、前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、前記クランプ本体に対して前記第2油路の前記指向方向に相対移動可能な弁体部および前記弁体部の基端に連なる前記弁体部よりも大径の軸部を有し、前記弁体部が前記弁孔に挿入された全閉状態から前記弁体部が前記弁孔から離間した全開状態に至るまで前記弁体部を移動させて前記弁体部と前記弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材とを備え、前記弁体部の外周部には、先端側ほど深さが深い、前記弁体部の軸方向に延びる溝部が形成され、前記弁部材は、前記弁体部と前記弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と、前記シリンダ穴に油圧を供給するときには前記バイパス流路を開放し、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには前記バイパス流路を閉止する逆止弁とを有し、前記バイパス流路は、前記弁体部の内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含み、前記逆止弁は、前記第1流路上に形成された弁座と、前記第1流路内に移動可能に設けられた鋼球と、前記鋼球を前記弁座側に付勢する部材とを含み、前記シリンダ穴に油圧を供給するときには、供給される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放されることを特徴としている。」と記載されているのを、 「請求項3のクランプ装置は、クランプ本体と、該クランプ本体に進退可能に装着された出力ロッドと、該出力ロッドの先端部に連結されワークにクランプ力を出力するクランプアームと、前記出力ロッドを進出側に駆動するアンクランプ用の油圧シリンダとを備え、前記クランプ本体は、その上部にフランジ部と、前記フランジ部から下方へ延びベースの収容穴に収容される部分とを有し、該フランジ部の外周部の下面には前記ベースの上面に当接する据付け面が形成され、該据付け面には、油圧ポートが設けられ、前記クランプ本体の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダに至る油路が設けられ、該油路は、前記油圧ポートに接続された第1油路と、該第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向する第2油路とを有し、一端が前記フランジ部の外周面から突出し、他端が前記第1油路と第2油路との接続部に至る流量調整弁が、前記一端から前記他端に向かう方向が前記第2油路の前記指向方向と同じ向きになるように設けられ、前記流量調整弁は、前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、前記クランプ本体に対して前記第2油路の前記指向方向に相対移動可能な弁体部および前記弁体部の基端に連なる前記弁体部よりも大径の軸部を有し、前記弁体部が前記弁孔に挿入された全閉状態から前記弁体部が前記弁孔から離間した全開状態に至るまで前記弁体部を移動させて前記弁体部と前記弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材と、前記油圧シリンダの油室側の小径部と、前記フランジ部の側面側の基部とを有し、前記小径部が前記フランジ部に形成された装着穴に内嵌状に螺合される弁ケースと、前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間をシールする第1シール部材と、前記弁ケースと前記装着穴との間をシールする第2シール部材とを備え、前記弁ケースの前記基部に、前記弁部材の前記軸部が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に内嵌状に螺合され、前記基部および前記軸部は前記フランジ部の側面から外側に露出し、前記基部の基端にロックナットが装着され、前記弁部材における前記軸部の基端側部分に、前記弁部材をクランプ本体に対して前記接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部に相当し、工具を係合させて前記軸部を回転させることが可能な穴が形成され、前記弁体部の外周部には、先端側ほど深さが深い、前記弁体部の軸方向に延びる溝部が形成され、前記弁部材は、前記弁体部と前記弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と、前記シリンダ穴に油圧を供給するときには前記バイパス流路を開放し、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには前記バイパス流路を閉止する逆止弁とを有し、前記バイパス流路は、前記弁体部の内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含み、前記逆止弁は、前記第1流路上に形成された弁座と、前記第1流路内に移動可能に設けられた鋼球と、前記鋼球を前記弁座側に付勢する部材とを含み、前記シリンダ穴に油圧を供給するときには、供給される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放され、前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置されることを特徴としている。」と訂正する。 (3)判断 訂正前の明細書及び図面には、上記4(2)ア及びイのとおりの記載が認められる。なお、【0010】の記載以外については訂正の対象となっていないから、それ以外の明細書の記載及び図面は、訂正前後で変わりはない。 そして、訂正事項3及び7に係る事項は、特許請求の範囲の請求項1、3の構成B15ないし19及びA9に、「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在するとともに前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」との特定事項を加えることにより、特許請求の範囲の減縮をしたものである。これに対して、訂正の前後で変更のない明細書には、上記4(3)イに説示するとおり、弁ケース45が、装着穴48に螺着された筒状のものであること、弁部材47は、先端部に形成された筒状の弁体部47aと、この弁体部47aの基端に連なり弁体部47aよりもやや大径の軸部47bとを有するものであること、軸部47bが弁ケース45に内嵌状に螺合されて、弁部材47は、クランプ本体2に固定された弁ケース45に対して前後に相対移動可能に装着されていることについて記載があるとともに、図面から、弁部材47の内部のバイパス流路51と、装着穴48の内周面と弁ケース45の外周面との間の隙間と、弁ケース45の内周面と弁部材47の外周面との間の隙間との位置関係が把握できるとともに、その位置関係が変化することが理解できる。すなわち、弁部材47の内部のバイパス流路51と、装着穴48の内周面と弁ケース45の外周面との間の隙間と、弁ケース45の内周面と弁部材47の外周面との間の隙間とが、弁ケースが螺合される方向(図6における水平方向)に直交する同一の面内に位置し得ることが理解できる。 そうすると、訂正事項3、7による特許請求の範囲の請求項1、3の構成B15ないし19及びA9についての特定事項は、訂正前の明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであることは明らかである。 また、訂正事項4、8に係る明細書の発明の詳細な説明についての訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴うものであるから、上記特許請求の範囲についての判断と同じである。 請求人は、構成B16及び17の「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」との構成には、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させずに、最先端部分の先で第1隙間と直接連通している環状の先端隙間を有するようにして、弁ケースの油圧シリンダ側の先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成された外周隙間”を用いた連通構造の他、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”との連通構造が含まれる。しかし、この連通構造については、願書に添付した明細書等に記載されておらず、技術的に自明な事項ではない旨、無効理由として主張する。 しかしながら、そもそも訂正前の特許請求の範囲の請求項1、3には、弁ケースの最先端部分の装着穴への当接の有無も含め、何ら特定がなかったものであって、仮に構成B16及び17の「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し」との構成に、請求人のいうように、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”との連通構造が含まれるとしても、この点については、訂正によって新たに当該連通構造が含まれることになったわけではないから、訂正要件違反の有無についての上記判断を左右するものではない。 (4)小括 したがって、平成28年11月17日付け訂正請求書によってなされた訂正は、訂正前の本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、この訂正は、訂正要件に違反するものとはいえない。 7 無効理由6(分割要件違反と原出願に基づく新規性、進歩性欠如)について (1)請求人の主張の概要 請求人は、分割要件違反を前提とする新規性及び進歩性の欠如について、以下のア及びイのように主張している。 ア 本件は孫出願であるところ、親出願(特願2003-156187号)の出願時の明細書等(甲第8号証)には、“クランプ本体と一体の弁孔”(【0031】)のみが記載されており、子出願(特願2008-160212号)の当初明細書等(甲第9号証)にも、上記と同内容(【0029】)のみが記載されている。したがって、親出願、子出願においては、“クランプ本体とは別部材の弁孔”については何ら記載されておらず、弁孔46の技術的構成について、拡張ないし一般化する記載も一切存在せず、技術的に自明な事項でもない。したがって、弁孔に関して、本件出願は親出願、子出願から新規事項を追加するものであり、分割要件を満たしていない。 イ さらに、親出願、子出願の当初明細書等には、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させずに、最先端部分の先で第1隙間と直接連通している環状の先端隙間を有するようにして、弁ケースの油圧シリンダ側の先端寄り部分の外周面と装着穴の内周面との間に形成された外周隙間”(図6及び図7)のみが記載されており、“弁ケースの最先端部分を装着穴に当接させ、弁ケースの先端寄り部分の外径を装着穴の内径よりも小さくすることで外周隙間を形成し、かつ、弁ケースの周壁に貫通孔を形成することで、第1油路、第2油路、およびバイパス油路を、第1隙間および外周隙間に連通させる”とする技術的事項については、記載も示唆もされておらず、構成B16の「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され」という記載にまで、当初明細書等の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできず、技術的に自明な事項でもない。したがって、第2隙間に関して、本件出願は親出願、子出願から新規事項を追加するものであり、分割要件を満たしていない旨、無効理由として主張するとともに、これを前提として、親出願、子出願の特許公開公報を本件特許に係る出願の前に頒布された刊行物として、新規性又は進歩性を欠くものである。 以下、これについて検討する。 (2)親出願、子出願の記載事項 子出願(特願2008-160212号)の願書に最初に添付された明細書等(甲第9号証)、及び、親出願(特願2003-156187号)の願書に最初に添付された明細書等(甲第8号証)には、以下の事項が記載されている。 ア 親出願の記載事項 (ア)「【0031】 2つの流量調整弁42、43は夫々同じ構成を有するため、クランプ用の油圧シリンダ5の油圧系に設けられた流量調整弁42について以下説明する。図6?図9に示すように、流量調整弁42は、クランプ本体2の装着穴48に螺着された筒状の弁ケース45と、油路40の途中部に形成され装着穴48の前端に連なる弁孔46と、弁ケース45に前後方向(出力ロッド3の長手方向と交差する方向)に移動可能に螺着された弁部材47とを備えている。 【0032】 弁ケース45は、前側の小径部45aと後側の断面六角形状の基部45bとを有し、小径部45aが装着穴48に内嵌状に螺合されるとともに、小径部45aと基部45b部との間の段部がクランプ本体2の後面部に当接している。装着穴48は油圧ポート21と第1油路40aにより接続され、一方、弁孔46は、その穴径が装着穴48よりも小さく形成され、この弁孔46に油圧シリンダ5の油室20に連なる第2油路40bが接続されている。」 (イ)「【0033】 弁部材47は、先端部に形成された筒状の弁体部47aと、この弁体部47aの基端に連なり弁体部47aよりもやや大径の軸部47bとを有する。軸部47bの基端側部分の外周部にはネジ部が形成されており、軸部47bが弁ケース45に内嵌状に螺合されて、弁部材47は、クランプ本体2に固定された弁ケース45に対して前後に相対移動可能に装着されている。図6?図8に示すように、軸部47bの基端側部分には、前方へ延びる六角穴47c(操作部に相当する)が形成されており、この六角穴47cに六角レンチ等の工具を係合させて軸部47bを回転させて、弁部材47を前後に移動させることができる。尚、軸部47bの基端には抜け止め用のロックナット49も装着されている。・・・ 【0035】 さらに、弁部材47は、前記の弁体部47aと弁孔46との隙間をバイパスするバイパス流路51、52と、バイパス流路51を油室20に油圧を供給する方向にのみ閉止する逆止弁53を有する。バイパス流路51は、弁体部47aの内側に前後に延びるように形成され、バイパス通路52は、バイパス通路51の基端から放射状に径方向外側へ延びるように形成されている。・・・ 【0037】 従って、油圧ポート21から油室20に油圧を供給する場合には、鋼球56が弁座55に密着してバイパス流路51が閉止されているため、油圧は弁体部47aと弁孔46との隙間のみを流れることになる。一方、油室20から油圧を排出する場合には、図7の鎖線で示すように、油圧により鋼球56が後方へ押圧されてバイパス流路51が開放されるため、前記隙間に加えてバイパス流路51、52からも油圧が油圧ポート21へ流れることになる。」 (ウ)図6、図7は、本件特許に係る図面(上記第5の1(1))と同じである。 イ 子出願の記載事項 (ア)「【0029】 2つの流量調整弁42、43は夫々同じ構成を有するため、クランプ用の油圧シリンダ5の油圧系に設けられた流量調整弁42について以下説明する。 図6?図9に示すように、流量調整弁42は、クランプ本体2の据付け用フランジ部2fの側壁部に横向き水平に形成された装着穴48(ネジ孔に相当する)に螺着された筒状の弁ケース45と、油路40の途中部に形成され装着穴48の前端に連なる弁孔46と、弁ケース45に前後方向(出力ロッド3の長手方向と交差する方向)に移動可能に螺着された弁部材47とを備えている。 【0030】 弁ケース45は、前側の小径部45aと後側の断面六角形状の基部45bとを有し、小径部45aが装着穴48に内嵌状に螺合されるとともに、小径部45aと基部45b部との間の段部がクランプ本体2の後面部に当接している。装着穴48は油圧ポート21と第1油路40aにより接続され、一方、弁孔46は、その穴径が装着穴48よりも小さく形成され、この弁孔46に油圧シリンダ5の油室20に連なる第2油路40bが接続されている。」 (イ)「【0031】 弁部材47は、先端部に形成された筒状の弁体部47aと、この弁体部47aの基端に連なり弁体部47aよりもやや大径の軸部47bとを有する。軸部47bの基端側部分の外周部にはネジ部が形成されており、軸部47bが弁ケース45に内嵌状に螺合されて、弁部材47は、クランプ本体2に固定された弁ケース45に対して前後に相対移動可能に装着されている。図6?図8に示すように、軸部47bの基端側部分には、前方へ延びる六角穴47c(操作部に相当する)が形成されており、この六角穴47cに六角レンチ等の工具を係合させて軸部47bを回転させて、弁部材47を前後に移動させることができる。尚、軸部47bの基端には抜け止め用のロックナット49も装着されている。・・・ 【0034】 さらに、弁部材47には、前記の弁体部47aと弁孔46との隙間をバイパスするバイパス流路51、52と、バイパス流路51を油室20に油圧を供給する方向にのみ閉止する逆止弁53が設けられている。バイパス流路51は、弁体部47aの内側に前後に延びるように形成され、バイパス通路52は、バイパス通路51の基端から放射状に径方向外側へ延びるように形成されている。・・・ 【0036】 従って、油圧ポート21から油室20に油圧を供給する場合には、鋼球56が弁座55に密着してバイパス流路51が閉止されているため、油圧は弁体部47aと弁孔46との隙間のみを流れることになる。一方、油室20から油圧を排出する場合には、図7の鎖線で示すように、油圧により鋼球56が後方へ押圧されてバイパス流路51が開放されるため、前記隙間に加えてバイパス流路51、52からも油圧が油圧ポート21へ流れることになる。」 (ウ)図6、図7は、本件特許に係る図面(上記第5の1(1))と同じである。 (3)判断 上記(2)ア、イの親出願、子出願の明細書及び図面の記載については、本件特許の明細書(上記第5の1(1)の【0023】ないし【0031】)及び図面の記載と実質的に変わるところがない。 上記4においてサポート要件について検討したとおり、構成B2の「弁孔」及び構成B16の「第2隙間」については、上記本件特許の明細書の【0023】ないし【0031】の記載及び図面から導き出せる事項であって、当該記載及び図面について、親出願、子出願、本件特許に係る出願の間で実質的に変わるところがないから、本件特許に係る出願が、親出願、子出願に記載のない新規事項を含むから分割要件を満たさないとする無効理由については理由がない。 そして、分割要件違反との請求人の無効理由には理由がないから、これを前提とする新規性、進歩性を欠く旨の主張についても理由がない。 (4)小括 したがって、本件特許に係る出願は、分割要件を満たさないものとはいえず、出願日は、親出願の出願日である平成15年6月2日に遡及するものであって、親出願、子出願の特許公開公報を本件特許の出願前に頒布された刊行物として、特許法第29条第1項第3号又は同第2項に違反してなされたものとはいえないから、特許法第123条第1項第2号の無効理由を有するとするとはいえない。 8 無効理由7(本件発明1、2の進歩性欠如)について (1)各書証の記載事項及び各書証記載の発明 ア 甲第12号証の記載 甲第12号証には、「ワーク固定用クランプシステム」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【0002】 【従来の技術】 従来、一般的なワーク固定用のクランプシステムにおいては、例えば、図12に示すように、ベース板200とこのベース板200に取付けられた複数の油圧式クランプ装置210が設けられ、これらクランプ装置210によりベース板200に載置されたワークWaが固定解除可能に固定され、この状態で、ワークWaに種々の機械加工等が施される。 【0003】クランプ装置210は、シリンダ本体211と、シリンダ本体211から上方へ延びるピストンロッド213とこのピストンロッド213の先端部分に固定されたアーム214を有する出力部材212と、シリンダ本体211のロッド側シリンダエンド壁を構成するとともにピストンロッド213を昇降移動可能にガイドするガイド部材215を有する。ガイド部材215に油圧配管216や油圧ホースが接続され、この油圧配管216を介してシリンダ本体211に油圧供給装置(図示略)から油圧が供給される。すると、ピストンロッド213が下降駆動され、アーム214がワークWaの被クランプ部をベース板200の受台202に押圧してクランプする。 【0004】左側のクランプ装置210は、シリンダ本体211をベース板200に形成された取付穴201に内嵌させてボルト217で固定され、右側のクランプ装置210は、シリンダ本体211とベース板200との間にベースプレート218を介在させ、このベースプレート218とともにボルト219でベース板200に固定されている。つまり、種々の厚さのベースプレートを用いることにより、ワークWaのサイズや形状で決まる被クランプ部をクランプする高さ位置をある高さ範囲で調節可能である。」 【図12】 (イ)「【0009】図16、図17のクランプシステムでは、ベース板260の縁部付近に沿って複数のクランプ装置250が並設されている。各クランプ装置250のフランジ251の下端部に1対の油圧ポート252、253が形成され、ベース板260の内部には、複数のクランプ装置250をクランプ動作させる為に、複数のクランプ装置250の一方の油圧ポート252に接続されたクランプ側油路261と、複数のクランプ装置250のクランプ状態を解除させる為に、複数のクランプ装置250の他方の油圧ポート253に接続されたアンクランプ側油路265が形成されている。」 【図16】 【図17】 (ウ)図16及び図17から、フランジ251の下端部に、ベース板260の上面に当接する据付け面が形成され、該据付け面に油圧ポート252、253が設けられている構成が看取され、フランジ251内に油圧ポート252、253から油路が設けられていることも看取される。 (エ)図17のクランプ装置250は、技術常識からみて、図12の左側のクランプ装置210のシリンダ本体211、ピストンロッド213、アーム214、シリンダ本体211をベース板200に形成された取付穴201に内嵌させる部分に、それぞれ対応する部材を同様に有するものと認められる。 (オ)図12のクランプ装置210及び図17のクランプ装置250ともに、シリンダ本体から上方へ延びるピストンロッドを油圧供給により昇降移動させてクランプを行うものであるから、前記ピストンロッドを昇降駆動するクランプ用及びアンクランプ用の油圧シリンダ及び該油圧シリンダを構成するシリンダ穴を備えていることは明らかである。 (カ)図16及び図17のクランプ装置250は、アンクランプ側油路265を備えていることから、上記油圧シリンダは、アンクランプ用としても使用されていることは明らかである。 そうすると、甲第12号証には、以下の事項が記載されているといえる。 「シリンダ穴が形成されたシリンダ本体と、 前記シリンダ穴に内嵌され、前記シリンダ本体に昇降移動可能に設けられたピストンロッドと、 該ピストンロッドの先端部に連結されワークにクランプ力を出力するアームと、 前記ピストンロッドを昇降駆動するクランプ用及びアンクランプ用の油圧シリンダとを備え、 前記シリンダ本体は、その上部にフランジ251と、前記フランジ251から下方へ延びベース板260の取付穴に内嵌させる部分とを有し、該フランジ251の下端部には前記ベース板260の上面に当接する据付け面が形成され、 該据付け面には、油圧ポート252、253が設けられ、 前記フランジ251内には、前記油圧ポート252、253から油路が設けられる、クランプ装置。」 イ 甲第13号証の記載 甲第13号証には、「クランプシリンダ」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【0007】 【発明の実施の形態】図1において、1は円筒状のシリンダチューブでアルミ押し出し又はアルミ冷間引き抜きの型材から成り、その周壁1a外周には、図2に示すようにチューブ軸線方向にセンサ取付け溝2が形成され、また、周壁1aには、チューブ軸線方向に貫通して、複数のボルト貫通孔3が形成されていると共に流体通過孔(片側配管用の軸方向孔)4a、4bが形成された断面を有する。シリンダチューブのシリンダ孔5は、チューブ外形がアルミ押し出しで形成されている場合でも、冷間引き抜き加工で形成されている。(中略)7は他方のカバー部材として示すロッドカバーで、ピストンロッド44が摺動孔8内を摺動するので、耐摩耗性の高い鉄系材料、例えばダクタイル鋳鉄でパーライト系の材質から成る。図3に示すように、ロッドカバー7は、外形がシリンダチューブ1の外形よりさらにチューブ半径方向の外側に広がった略矩形を成し、その背面9から前記シリンダ孔5に嵌入される短い嵌入軸部10が突出している。背面9において、前記シリンダチューブ1の端面と対向する部分がシール面11となっている。背面9のシール面11のチューブ半径方向外側部分は、機械ベースなど固定側部材100への取付け面12となっている。シール面11と取付け面12とは同一平面を形成している。 【0008】ロッドカバー7には、その側面7aに一対の側面配管ポート15a、15bが設けてある。一方の側面配管ポート15aは、嵌入軸部10の後端面(図では下端面)に開口して前側シリンダ室P1に連通する第1連通路16aに連通している。他方の側面配管ポート15bは、シール面11に開口して前記シリンダチューブ1の一方の流体通過孔4bに連通する第2連通路16bに連通している。また、取付け面12には、各側面配管ポート15a、15bに連通する端面配管ポート17a、17bが開口している。ロッドカバー7の背面9には、さらに前記シリンダチューブ1のボルト貫通孔3と対向して所定深さの有底のめねじ孔18が形成されている。ロッドカバー7の前面(ピストンロッド44突出側)は、摺動孔8から外方へ向けて傾斜面19が形成されている。傾斜面19には、機械ベースなどの固定側部材への取付けボルト用のボルト孔20が設けてある。 ・・・ 【0010】ロッドカバー7の背面9とシリンダチューブ1の前端面(上端面)の間、及び、ヘッドカバー21とシリンダチューブ1の後端面(下端面)との間には、シール材として薄い板状のガスケット30、31が夫々介在される。ガスケット30、31は、弾性を有するゴム材料等から成るシール板の間に薄い金属板(アルミ、あるいは鋼板)を挟んで成る。ヘッドカバー21とシリンダチューブ1との間のガスケット31(図7)は、前記センサ挿通溝22、ボルト孔23、及び連絡溝26に対応する部分22E、23E、26Eが切りかかれており、嵌入軸部24の外側に嵌め込まれる。一方、ロッドカバー21とシリンダチューブ1との間のガスケット30(図6)は、めねじ孔18、第2連通孔16b、端面配管ポート17a、17b、及びボルト孔20に対応する部分18E、16bE、17aE、17bE、20Eが切り欠かれており、嵌入軸部10の外側に嵌め込まれて、シール面11のみならず、その外側の取付け面12全体に広がる大きさになっている。ロッドカバー7、シリンダチューブ1、ヘッドカバー21は、これらのガスケット30、31を挟んでヘッドカバー21のボルト孔23から4本の締結ボルト32を通し、締結ボルト32は、シリンダチューブ1のボルト貫通孔3を通って、先端のおねじ部がロッドカバー7のめねじ孔18にねじ込まれて一体に共締めされてシリンダ本体が構成され、ロッドカバー7、ヘッドカバー21とシリンダチューブ1前後端面間は、ガスケット30、31でシールされる。 【0011】シリンダ孔5には中空のピストン40が軸方向移動自在に嵌装されている。ピストン40外周には軸方向案内溝41が形成され、この案内溝41はシリンダチューブ1に取付けた半径方向のガイドピン42と係合してピストン40を回り止めして直線移動のみさせるようにしてある。ピストン40の中心孔43にピストンロッド44が回転かつ軸方向に移動するように嵌め込まれ、ピストンロッド44はロッドカバー7の摺動孔8を貫通して前方へ突出し、突出部にはクランプアーム45が一体に設けてある。ピストンロッド44には、ピストンロッド44に対するピストン40の前進端を決めるフランジ46が一体に設けてある。ピストンロッド44の後部は細い段付軸47に形成され、段付軸47には、ピストンロッド44に対するピストン40の軸方向後退端を決めるリング状の規制部材48が嵌め込まれ、直径方向の取付ピン49で一体に取付けてある。段付軸47は規制部材48より後方に突出している。 ・・・ 【0015】このようなクランプシリンダは、機械や治具ベースなどの固定側部材100にロッドカバー7のボルト孔20を利用して取付けボルト101で締め付けられる。この時、ロッドカバー7の取付け面12に、シール材を兼ねるガスケット30が広がっているので、固定側部材100との間にも前記ガスケット30が挟持される。従って、クランプシリンダでワークやパレットをクランプし、工作機械により加工されるときに、クランプシリンダに振動が作用しても、ガスケット30の弾性により、取付けボルト101の弛みが防止され、クランプ作用が確実である。また、固定側部材100と取付け面12との間がシールされることで、この部分にシールのない場合に比べて、取付け面12から加工に伴う切削液などがシリンダチューブ1の外周面を伝い落ちることが防止でき、その結果、シリンダチューブ1の外周の磁気感応センサを切削液から保護できる。また、ガスケット30が取付け面12に設けてある端面配管ポート17a、17bと固定側部材100との間をシールするため、従来のようにシールのために小さなOリングが不要である。なお、端面配管ポート17a、17bに配管部材を接続するときには、側面配管ポート15a、15bは埋栓で塞ぐが、この時には、前記ガスケット30が端面配管ポート17a、17bと配管部材との間のシールを兼用する。また、側面配管ポート15a、15bに配管する場合において、端面配管ポート17a、17bが固定側部材100と対向しない場合や、固定側部材の表 面が粗い場合などのように、前記ガスケット30で端面配管ポート17a、17bがシール不可能な取付け状態であるとき等には、端面配管ポート17a、17bは埋栓で塞がれる。 【0016】次に動作を説明する。端面配管ポート17a、17bは固定側部材100で塞がれ、側面配管ポート15a、15bから圧流体を給排するものとする。2面幅部56が係合ブッシュ57から抜け出た状態でアンクランプ角度位置Bとなっている状態(図8)から、ポート15a、第1連通路16aを介して前側シリンダ室P1に流体を供給すると、ピストン40がピストンロッド44に対して前進端から後退する。この時、2面幅部56と長孔58との円周方向の位相がずれていて(図4の二点鎖線B1)、ピストンロッド44は係止端面60と係合ブッシュ57の規制端面59とが当接して後退を阻止され、鋼球53と旋回用案内溝51との係合でクランプアーム45はアンクランプ角度位置Bからクランプ角度位置Aへ水平に旋回する。鋼球53がりん青銅の球受部材52で転動案内されているので、旋回用案内溝51内を転動するとき、転動抵抗が極めて小さく、ピストン40を移動させる流体の作動圧力を小さくできる。クランプ角度位置Aとなるとピストン40が規制部材48に当接し、2面幅部56と長孔58の両側面との位相が一致する。この状態でさらに流体作用でピストン40が後退すると、ピストンロッド44は2面幅部56が係合ブッシュ57の長孔58の対向面により旋回を阻止された状態でピストン40が規制部材48を引っ掛けることで一体に後退し、軸線方向下方に引き込まれてワークWをクランプする(図1の状態)。 【0017】2面幅部56が係合ブッシュ57の長孔58に入りこんで、クランプ角度位置Aでワークをクランプしている状態からポート15b、第2連通路16b、流体通過孔4b、連絡溝26を介して後側シリンダ室P2に圧流体を供給すると、2面幅部56と係合ブッシュ57の長孔58との係合でピストンロッド44が回転阻止されたまま、ピストン40と共に一体に軸線方向に前進(上昇)し、クランプ角度位置Aのまま、ワークWからクランプアーム45が直進して離れる。2面幅部56が係合ブッシュ57の長孔58から軸線方向に抜けるタイミングでフランジ46がロッドカバー7に当接してピストンロッド44は前進を規制され、その状態でピストン40が前進して前記旋回用案内溝51と鋼球53との係合でクランプアーム45がクランプ角度位置Aからアンクランプ角度位置Bへ水平に旋回する。」 【図1】 (イ)上記(ア)から、シリンダチューブ1は、ピストンロッド44を昇降駆動するためのクランプ用及びアンクランプ用の油圧シリンダとなっていることは明らかである。 (ウ)図1より、取り付け面12には、油圧ポートが設けられていることが看取される。 (エ)【0015】において、「端面配管ポート17a、17bに配管部材を接続するときには、側面配管ポート15a、15bは埋栓で塞ぐが、この時には、前記ガスケット30が端面配管ポート17a、17bと配管部材との間のシールを兼用する。」と記載されていることから、端面配管ポート17a、17bを使用するときは、側面配管ポート15a、15bは埋栓で塞がれる。そして、図1より、端面配管ポート17a、17bが、上記(ウ)で指摘した油圧ポートに鉛直方向に接続されていることが看取される。 (オ)図1より、ピストンロッド44の移動方向に直交する方向を指向して前記シリンダ孔5に至る水平方向に設けられた油路(水平方向油路)が看取される。 (カ)第1連通路16a、第2連通路16b、端面配管ポート17a、17b、及び水平方向油路は、ロッドカバー7の内部に形成されており、油圧ポートから油圧シリンダを構成するシリンダ孔5に至る油路であることは明らかである。 そうすると、甲第13号証には、以下の事項が記載されているといえる。 「シリンダ孔5が形成されたシリンダチューブ1と、 前記シリンダチューブの上部に取付けられたロッドカバー7と、 前記シリンダ孔5に収納され、前記シリンダチューブ1に伸縮自在に収納されたピストンロッド44と、 該ピストンロッド44の先端部に取り付けられワークWをクランプするクランプアーム45とを備え、 前記シリンダチューブ1は、前記ピストンロッド44を昇降駆動するクランプ用及びアンクランプ用の油圧シリンダとなり、 前記シリンダチューブ1は、前記ロッドカバー7から下方へ延び固定側部材100の取付穴に内嵌され、 前記ロッドカバー7の下端部には前記固定側部材100の上面にガスケット30を介して当接する取付け面12が形成され、 該取付け面12には、油圧ポートが設けられ、 前記ロッドカバー7の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダを構成する前記シリンダ孔5に至る油路が設けられ、 側面配管ポート15a、15bは塞がれて使用され、 該油路は、前記油圧ポートに鉛直方向に接続された油路としての端面配管ポート17a、17bと、該端面配管ポート17a、17bに接続されて前記ピストンロッド44の移動方向に直交する方向を指向して前記シリンダ孔5に至る水平方向油路とを有する、クランプシリンダ。」 ウ 甲第14号証の記載 甲第14号証には、「シリンダ装置」に関し、図面とともに下記の事項が記載されている。 (ア)「【0022】本実施の形態のシリンダ装置1は、図1乃至図3に示すように、ピストンロッド2が伸張するシリンダ本体3と、このシリンダ本体3に設けられるフランジ11とから構成された油圧式のシリンダ装置1である。このシリンダ装置1は、自動車の生産ラインなどに配置される治具等の装置に所定の数が上記フランジ11を介して搭載されて(ヘッドタイプ)、上記ピストンロッド2の伸縮によりクランパ5を駆動させることによりワーク品(例えば、自動車のオイル板等)を固定する、いわゆるクランプシリンダ1である。 【0023】上記シリンダ本体3は、図2及び図3に示すように、底部が閉塞された円筒状の内部空隙4を有するもので、上方側に上記フランジ11が取り付けられている。このシリンダ本体3の外周壁には、流体(油)を吸入する吸入側の流路3aと油を排出する排出側の流路3bとが形成されている。すなわち、上記シリンダ本体3の底部側に油を内部空隙4に取り入れる孔と、上記内部空隙4の上方側に油を取り出すための孔が形成され、ポンプ(図示せず)から吐出された油は、上記円筒状の端部の吸入口から吸入され、上記円筒状の内部空隙4に導入された後、上記吸入口に近接して形成される排出口から排出されるようになっている。なお、上記シリンダ本体3の開口端部には、上記フランジ11をボルトにより固定するためのボルト用の穴3cが等間隔で4個形成されている。 【0024】・・・また、このフランジ11の中央には、上記ピストンロッド2を案内する穴11cが形成されており、上記円筒状の内部空隙4に収納されたストンロッド2(当審注:「ピストンロッド2」の誤記。)が伸縮するようになっている。・・・ 【0025】上記フランジ11には、図3及び図4(b)(c)に示すように、上記シリンダ本体3の流路3a、3bに連通する流路13、14が平行状態に形成されている(図中、矢印方向参照)。このフランジの流路13、14は、このフランジ11の先端側において、このフランジ11の背面側から出入りしフランジ11の内部の直線部を通り背面側から出入りするほぼ逆U字状に形成されている。すなわち、上記フランジ11の背面側には、上記シリンダ本体3の吸入口と排出口と連続する吸入口と排出口が形成されて、上記シリンダ本体3の流路3a、3bに各々連通するようになっている。なお、このフランジ11の各吸入口と排出口には、シール部材Rが配される溝Mが形成されて、配管H1、H2のための接続ができるようになっている(図1参照)。そして、このフランジ11には、上記各流路13、14を各々開閉するチェック弁22、32とスプリング23、33及び鋼球(ボール)24、34から構成される開閉部材21、31と、これらの開閉部材21、31の開閉状態を各々調節する調整スロットル25とが配設されている。 ・・・ 【0029】次に、上記開閉部材21、31は、図5乃至図7に示すように、チェック弁22、32とスプリング23、33及び鋼球24、34から構成されている。上記鋼球24、34は、直径6mmの大きさのもので、上記スプリング23、33は伸縮状態の長さが約15mmであり、この両端部で上記大きさの鋼球24、34が配設されるようになっている。上記チェック弁22、32は、上記スプリング23、33と鋼球24、34を上記フランジの流路13、14に対して配設するために使用されるもので、上記第1の流路13a、14aの径と同じ直径8mmのほぼ筒形形状のものである。このチェック弁22、32には、内部に流体(油)を通す穴22a、32aが形成され、外部にシール部材Rを装着させるための溝22b、32bが設けられている。上記流体を通す穴22a、32aは、直径3mmの大きさのもので上記第2の流路13b、14bの径と同じ径になるように形成され、内部から筒状の外周壁に直線状に抜けるほぼT字状に形成されている。上記外周壁の左右の一方の穴は、上記規制部材27によりその移動が規制される位置決め用の穴22c、32cとして使用される。したがって、油(流体)は、上記チェック弁22、32の内部をL字状に通過するようになっている。ここで、上記チェック弁22、32の流体を通す穴22a、32aは、L字状に形成し、上記筒状の外周壁の所定箇所に位置決め用の穴22c、32cを別個に形成することも可能である。 【0030】このような構成の開閉部材21、31は、図6及び図7に示すように、吸入側(メータイン側)の流路13では、チェック弁22にスプリング23を介して鋼球24が設けられ、他方、排出側(メータアウト側)の流路14では、チェック弁32に鋼球34を介してスプリング33が設けられている。そして、上記メータイン側のチェック弁22の流体を通す穴22aの開口部には、上記スプリング23が固定される溝22dが形成されている。また、メータイン側のチェック弁22の外周には1個、メータアウト側のチェック弁32の外周には2個の外周溝22e、32eが形成されている。この外周溝22e、32eは、各々シール部材Rを配するもので、流体(油)の漏れ防止の役割を果たす。ここで、上記シール部材Rがメータイン側のチェック弁22では1個、メータアウト側のチェック弁32では2個形成されるのは、このメータアウト側では流体が上記チェック弁32の流体を通す穴23aのみならずチェック弁32の外周から外部に漏れるおそれがあるためである(図7中矢印方向)、なお、メータイン側ではメータアウト側とは流体の流れる方向が逆方向であるために、流体はチェック弁22の流体を通す穴22aを通り外周から漏れる心配はない(図6中矢印方向)。 【0031】次に、調整スロットル25は、上記開閉部材21、31の開閉状態を各々調節するもので、専用の工具で回すネジ式に構成されている。すなわち、この調整スロットル25は、頭部がドライバ等の専用の工具を回すマイナスの溝が形成されたネジ頭25aとして形成され、外周にはシール部材Rが配される溝25bとネジが形成され、先端部25cで上記鋼球24、34を押圧するようになっている。この調整スロットル25は、上記フランジ11の吸入側の流路13でも排出側の流路14でも上記構成の同じものが使用されている。 ・・・ 【0036】次に、本実施の形態のシリンダ装置1を使用して実際にクランパ5を駆動させる場合について説明する。なお、上記のように組み立てられたシリンダ装置1は、上記フランジ11の四隅の第1のボルト穴11aにボルトを介して治具等の各種の装置に装着される。 【0037】前提として、本実施の形態のシリンダ装置1の流体の流量の制御の仕方は、図8に示すように、上記安全プレート30に矢印で図示されているために、作業者は、上記表示に従って操作する。まず、一般に、研削盤のテーブル送りやフライス盤用オイルモータなどでは、メータイン側の制御を行う。このような装置の場合には、図1に示すように、安全プレート30の工具用の穴30aからドライバ等の専用の工具で調整スロットル25のネジ頭25aを回すと、調整スロットル25の開閉部材21、31に対する押圧状態を調節することにより、図示しないポンプから吐出された流体(油)の流量を調節することができる。すなわち、上記調整スロットル25により吸入側の鋼球24が押圧されると、上記フランジ11の吸入側の流路13(第2の流路13b)が開けられるために、上記シリンダ本体3の流路3aに対する流量が多くなり上記ピストンロッド2を早く押し出すこととなる。 【0038】他方、一般に、ボール盤などの負荷の変動の激しい工作機械の送りやプレス機械などでは、メータアウト側の制御を行う。このような場合には、安全プレート30の工具用の穴30aからドライバ等の専用の工具で調整スロットル25のネジ頭25aを回して、調整スロットル25の開閉部材21、31に対する押圧状態を調節する。すなわち、シリンダ本体3から流出した排出側の流路14で上記調整スロットル25により調節するので、シリンダ本体3に背圧がかかるようになり、負荷の変動の激しい箇所での使用に適することとなる。」 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図6】 【図7】 (イ)シリンダ本体3は、フランジ11から下方へ伸び治具等の装置に取付けられることは明らかである。 (ウ)図1ないし図3の記載より、フランジ11の下端部には、治具等の装置の配管H1、H2の上面に当接する据付け面が形成されていることが看取される。 (エ)据付け面に形成された溝M、Mを備える孔は、油圧ポートとして機能していることは明らかである。 (オ)シリンダ本体3が、クランプ用及びアンクランプ用の油圧シリンダとなっていることは明らかである。 (カ)図3より、シリンダ本体3及びフランジ11の内部には、油圧ポートとしての溝M、Mを備える孔から油圧シリンダを構成する内部空隙4に至る油路が設けられていることが看取される。 (キ)図4、図6、及び図7より、フランジ11において、油圧ポートとしての溝M、Mを備える孔に接続された鉛直方向油路と、該鉛直方向油路に接続されてピストンロッド2の移動方向に直交する方向を指向して内部空隙4に至る水平方向油路とが設けられていることが看取される。 (ク)上記(ア)の【0037】及び【0038】の記載から、開閉部材21、31及び調整スロットル25が、油路の開閉を調整して流量調整弁として機能していることは明らかである。 そうすると、甲第14号証には、以下の事項が記載されているといえる。 「内部空隙4が形成されたシリンダ本体3と、 前記シリンダ本体3の上部に取付けられたフランジ11と、 前記内部空隙4に収納され、前記シリンダ本体3に伸縮自在に収納されたピストンロッド2と、 該ピストンロッド2の先端に取付けられワーク品をクランプするクランパ5とを備え、 前記シリンダ本体3は、前記ピストンロッド2を昇降駆動するクランプ用及びアンクランプ用の油圧シリンダとなり、 前記シリンダ本体3は、前記フランジ11から下方へ伸び治具等の装置に取付けられ、前記フランジ11の下端部には、前記治具等の装置の配管H1、H2の上面に当接する据付け面が形成され、 該据付け面には、油圧ポートとしての溝M、Mを備える孔が設けられ、 前記シリンダ本体3及びフランジ11の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダを構成する前記内部空隙4に至る油路が設けられ、 該油路は、前記油圧ポートに接続された鉛直方向油路と、該鉛直方向油路に接続されて前記ピストンロッド2の移動方向に直交する方向を指向して前記内部空隙4に至る水平方向油路とを有し、 前記油路の開閉を調整して流量調整弁として機能する開閉部材21、31及び調整スロットル25が設けられている、シリンダ装置1。」 エ 周知発明 上記アないしウの甲第12ないし14号証に記載の事項から、請求人の主張のとおり、以下の周知発明が存することを認定できる。 「シリンダ穴が形成されたクランプ本体と、 前記シリンダ穴に収納され、前記クランプ本体に進退可能に設けられた出力ロッドと、 該出力ロッドの先端部に連結されワークにクランプ力を出力するクランプアームと、 前記出力ロッドを進入側に駆動するクランプ用及び進出側に駆動するアンクランプ用の油圧シリンダとを備え、 前記クランプ本体は、その上部にフランジ部と、前記フランジ部から下方へ延びベースの収容穴に収容される部分とを有し、該フランジ部の外周部の下面には前記ベースの上面に当接する据付け面が形成され、 該据付け面には、油圧ポートが設けられ、 前記クランプ本体の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダを構成する前記シリンダ穴に至る油路が設けられた、 クランプ装置。」 オ 甲第22号証の記載 甲第22号証には、「車輌用車高調整装置」に関し、図面とともに下記の事項が記載されている。 (ア)「導管20、21、24、25の途中にはそれぞれ絞り付き逆止弁装置49?52が設けられている。絞り付き逆止弁装置49?52はそれぞれ絞り53?56と、それらの絞りを迂回するバイパス通路57?60の途中に設けられそれぞれアクチュエータ2?5へ向うオイルの流れを自由に許すがアクチュエータ2?5より電磁切換弁43?45へ向うオイルの流れを阻止する逆止弁61?64とを有している。」(3頁右下欄20行?4頁左上欄8行) (イ)「第3図は前述の絞り付き逆止弁装置49?52の一つの具体的実施例を示す縦断面図、第4図は第3図に示された絞り付き逆止弁装置の要部を示す拡大部分断面図である。これらの図に於て、73はハウジングを示しており、該ハウジングの内部には二つの通路74及び75とこれらの通路と連通する弁室76とが郭定されている。通路74のポート77には導管20、21、24、25のそれぞれ電磁切換弁43、44、フローディバイダ23、電磁開閉弁65の側の部分が接続され、通路75のポート78には導管20、21、24、25のそれぞれアクチュエータ2?5の側の部分が接続されるようになっている。弁室76の開口部にはプラグ79がねじ込みによってハウジング73に固定されている。プラグ79は軸線80に沿って延在するようニードル81を担持している。プラグ79とニードル81とはそれぞれ第3図で見て上方部にて互に螺合しており、これによりプラグ79及びニードル81の軸線80に沿う相対位置を調整し得るようになっている。」(4頁右下欄3行?5頁左上欄2行) 【第3図】 【第4図】 (ウ)「ニードル81の下端には実質的に円筒形を成す弁要素82がニードル81に対し相対的に往復動可能に嵌め込まれている。弁要素82はフランジ83及び半径方向に延在する複数の孔84を有している。プラグ79と弁要素82との間には圧縮コイルばね85が弾装されており、これにより弁要素82はハウジング73に固定され通路74の一部を郭定する弁座要素86に対し押し付けられている。ニードル81の下端は切頭円錐形に形成されており、これによりニードル81の下端は孔84と共働して第1図に示された絞り53?56に相当する絞り通路87を郭定している。また弁要素82の下端には円錐テーバ面88が設けられている」(5頁左上欄3行?16行) (エ)「かくして構成された絞り付き逆止弁装置に於て通路74より通路75へ向けてオイルが流れる場合には、通路74内のオイルによって円錐テーパ面88に及ぼされる力により、弁要素82が圧縮コイルばね85のばね力に抗して図にて上方へ駆動され、これにより弁要素82の先端が弁座要素86より引離されるので、通路74内のオイルは弁要素82と弁座要素86との間を経て通路75へ比較的自由に流れる。これに対し通路75より通路74へ向けてオイルが流れる場合には、弁要素82は圧縮オイルばね85のばね力によって弁座要素86に当接した状態に維持されるので、通路75内のオイルは絞り通路87に強制的に通される。」(5頁左上欄17行?右上欄10行) (オ)「尚図示の実施例に於ては、ニードル81を軸線80の周りにプラグ79に対し相対的に回転させてニードル81の下端部と孔84との相対位置を調整することにより、絞り通路87の実効通路断面積を調整することができる。」(5頁右上欄11行?15行) (カ)第3図から、プラグ79は、小径部と基部とを有していることが看取され、上記(イ)の「弁室76の開口部にはプラグ79がねじ込みによってハウジング73に固定されている。」との記載から、ハウジング73の装着孔に螺合されるものである。 (キ)第3図から、プラグ79に螺合されるニードル81の外周面とプラグ79の内周面との間をシールするシール部材(以下「第1のシール部材」という。)が看取される。また、プラグ79と装着孔との間をシールするシール部材(以下「第2のシール部材」という。)が看取される。 (ク)第3図から、プラグ79の小径部側の先端と装着穴の内周部との間に隙間が形成されているのが看取される。 カ 甲第24号証の記載 甲第24号証には、「圧力制御弁付流量調整弁」に関し、図面とともに下記の事項が記載されている。 (ア)「流体の出入りのための二つのポート2、3と、これらポート2、3を連通させる通路4とを有する本体1と、この本体1内の通路4を狭窄する絞り弁5と、この絞り弁5に対してパラレルな作用関係に配設されるチェック弁6とから成り、このチェック弁6を、前記本体1に形成した弁座16に対して所定の作用圧が与えられるように弾性力を負荷されて就座する主弁体13と、この主弁体13内に形成された副弁座17に対してこの副弁座17に就座させるに必要な程度のわずかな弾性力を負荷させた副弁体18とを以って二重弁状に構成して成る、圧力制御弁付流量調整弁。」(実用新案登録請求の範囲) (イ)「先ず、第1図において、本体1には圧縮空気の出入口用のポート2、3が設けられ、これらポート2、3を連通させる通路4内には、この通路4を狭窄する絞り弁5と、この絞り弁5に対してパラレルな作用関係のチェック弁6とが配設される。 前記絞り弁5は、前記本体1に形成した通孔7に挿通されるニードル8と、このニードル8を回動によって進退させるねじ棒9と、このねじ棒9の一端に形成したハンドル10とから成り、このハンドル10の回動によって、前記ニードル8の開度を調節した状態は、前記ねじ棒9にねじ嵌合したロックナット11を、前記本体1に向けてしめつけることによって維持されるのである。なお、12は通口であって、ニードル8と通孔7との間に形成される狭窄通路を前記通路4と連通させるものである。」(2欄37行?3欄16行) 【第1図】 (ウ)第1図から、絞り弁5を本体1に装着するために、プラグが使用されていることが、看取され、当該プラグは、小径部と基部とを有しており、本体1の装着穴に装着されていることが看取される。 (エ)第1図から、プラグの基部に絞り弁5の軸部が螺合されていること、プラグの基部の側面から絞り弁5の軸部が露出し、基部の基端で、絞り弁5にロックナット11が装着されていることが看取される。 (オ)第1図から、プラグの小径部側の先端と装着穴の内周面との間に隙間が形成されていることが看取される。 (カ)第1図から、通口12は、プラグの小径部側の先端と装着穴の内周面との間に隙間に面するように装着穴の内周面に開口していることが看取される。 (2)本件発明1と周知発明との対比 本件発明1と周知発明とを対比すると、両者は、 「A1 シリンダ穴が形成されたクランプ本体と、 A2 前記シリンダ穴に内嵌され、前記クランプ本体に進退可能に設けられた出力ロッドと、 A3 該出力ロッドの先端部に連結されワークにクランプ力を出力するクランプアームと、 A4 前記出力ロッドを退入側に駆動するクランプ用の油圧シリンダとを備え、 A5 前記クランプ本体は、その上部にフランジ部と、前記フランジ部から下方へ延びベースの収容穴に収容される部分とを有し、該フランジ部の外周部の下面には前記ベースの上面に当接する据付け面が形成され、 A6 該据付け面には、油圧ポートが設けられ、 A7 前記クランプ本体の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダを構成する前記シリンダ穴に至る油路が設けられた、 A10 クランプ装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1:クランプ装置の油路に関する部分) 本件発明1では、油路は、前記油圧ポートに接続された第1油路と、該第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向して前記シリンダ穴に至る第2油路とを有しており(構成A8)、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在する(構成A9)のに対して、周知発明の油路は、そのような構成ではない点。 (相違点2:流量調整弁について) 本件発明1では、クランプ装置内の油路の流量を調整するために、「一端が前記フランジ部の外周面から突出し、他端が前記第1油路と第2油路との接続部に至る流量調整弁が、前記一端から前記他端に向かう方向が前記第2油路の前記指向方向と同じ向きになるように設けられ、前記流量調整弁は、前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、前記クランプ本体に対して前記第2油路の前記指向方向に相対移動可能な弁体部および前記弁体部の基端に連なる前記弁体部よりも大径の軸部を有し、前記弁体部が前記弁孔に挿入された全閉状態から前記弁体部が前記弁孔から離間した全開状態に至るまで前記弁体部を移動させて前記弁体部と前記弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材と、前記油圧シリンダの油室側の小径部と、前記フランジ部の側面側の基部とを有し、前記小径部が前記フランジ部に形成された装着穴に内嵌状に螺合される弁ケースと、前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間をシールする第1シール部材と、前記弁ケースと前記装着穴との間をシールする第2シール部材とを備え、前記弁ケースの前記基部に、前記弁部材の前記軸部が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に内嵌状に螺合され、前記基部および前記軸部は前記フランジ部の側面から外側に露出し、前記基部の基端にロックナットが装着され、前記弁部材における前記軸部の基端側部分に、前記弁部材をクランプ本体に対して前記接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部に相当し、工具を係合させて前記軸部を回転させることが可能な穴が形成され、前記弁体部の外周部には、先端側ほど深さが深い、前記弁体部の軸方向に延びる溝部が形成され、前記弁部材は、前記弁体部と前記弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と、前記シリンダ穴に油圧を供給するときには前記バイパス流路を閉止し、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには前記バイパス流路を開放する逆止弁とを有し、前記バイパス流路は、前記弁体部の内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含み、前記逆止弁は、前記第1流路上に形成された弁座と、前記第1流路内に移動可能に設けられた鋼球と、前記鋼球を前記弁座側に付勢する部材とを含み、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには、排出される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放され、前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、」(構成B1ないし17)「前記第1油路は」「前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、」(構成B18)「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」(構成B19)との構成を有する流量調整弁を用いているのに対して、周知発明は、そのような流量調整弁を用いていない点。 (3)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2から検討する。 上記相違点2のうち、構成B15ないし19、すなわち「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、」「前記第1油路は」「前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」構造(以下、「本件構造」という。)は、その構成を全て備えることによって、所望の効果を奏する発明を構築していると認められる。 すなわち、本件発明は、上記第5の1(2)カに説示するとおり、(効果1)弁体部を有する弁部材を直接弁孔に接近したり弁孔から離隔したりする方向に移動させることができるので、作動油の流量を容易にかつ確実に調整できるし、流量調整弁の部品数を減らして構成を簡単にすることができる(【0011】、【0046】)、(効果2)弁体部に切り欠き状の溝部が設けられ、その溝は弁体部の先端側が深くなっているので、弁体部の弁孔への挿入量を調整することで、油路を流れる作動油の流量を微調整することができる(【0047】、【0052】?【0054】)、(効果3)弁部材の内部に、隙間をバイパスするバイパス流路を一方向にのみ閉止する逆止弁が設けられているので、油圧シリンダに油圧を供給(油圧シリンダから油圧を排出)する場合にはその流量を調整し、逆に油圧シリンダから油圧を排出(油圧シリンダに油圧を供給)する場合には迅速に排出(供給)することができる(【0048】)、(効果4)弁部材の内部に、隙間をバイパスするバイパス流路を一方向にのみ閉止する逆止弁が設けられているので、逆止弁を流量調整弁とは別に設ける場合に比べてクランプ装置をコンパクトにすることができる(【0048】)、という効果を奏するものであるところ、本件構造が一体となって効果を奏する発明を構築しているといえるから、この構成を分断して容易相当性を論じることは適当でないところ、請求人が示す各証拠(甲第12号証?甲第33号証)には、本件構造を示すものはなく、本件構造に関連する記載があるとしても、その一部を断片的に示すに過ぎないものである。 特に、請求人が、本件構造の全て又は大部分を開示する証拠として示す甲第22号証、甲第24号証を見ても、甲第22号証(上記(1)オ)は、弁要素82が弁座要素86に圧縮コイルばね85により押しつけられて、通路74から通路75に向けてオイルが流れる場合には、弁要素82が弁座要素86より引き離され、通路75から通路74に向けてオイルが流れる場合には、弁要素82が弁座要素86に当接した状態を維持するよう、逆止弁を構成するものであり、当該弁要素の内部に、ニードル81が配置されることで、ニードル81の下端が、弁要素82の孔84と共働して、絞り通路87を郭定するものであって、本件構造のような第1隙間及び第2隙間に連通するバイパス流路を有しないものである。 また、甲第24号証(上記(1)カ)は、絞り弁5とチェック弁6とがポート2、3間の経路においてパラレルに配置される圧力制御弁付流量調整弁であって、弁体部の内部にバイパス流路や逆止弁を設けること(本件発明1の構成B11)を前提としてなされるものである本件構造とは、構造が全く異なる。 そうすると、本件構造については、油圧等の流体圧シリンダに用いる流量調整弁の技術分野における周知技術であると認めるに足りる証拠はなく、当業者がそのようにすることを検討するのが通常であるともいえない。 よって、当業者といえども、周知発明を出発点として、本件構造を備える構成を容易に想到することができたということはできない。 また、本件発明2は、本件発明1の特定事項の全てを含むものであって、周知発明との対比において、上記本件発明1と同じ相違点を有するものであるから、本件発明1についての判断と同様に、本件発明2は、周知発明を出発点として、当業者が容易に想到し得るものではない。 (4)小括 そうすると、本件発明1、2は、甲第12号証ないし甲第14号証に記載された周知発明に対して、請求人の示す周知技術等を適用することで、容易に発明することができたものではなく、特許法第29条第2項に違反してなされたものとはいえないから、特許法第123条第1項第2号の無効理由を有するとするとはいえない。 9 無効理由8(本件発明3の進歩性欠如)について (1)本件発明3と本件発明1との差異 本件発明3は、出力ロッドを進出側に駆動するアンクランプ用の油圧シリンダを用い(構成A4’)、油圧シリンダに油圧を供給するときにバイパス流路を開放し、油圧シリンダから油圧を排出するときにバイパス流路を閉止する逆止弁を用いる構成(構成B11’)であり、油圧シリンダに油圧を供給するときに、供給される油圧により鋼球が弁座と反対側に押圧されてバイパス流路が開放される構成(構成B14’)となっている点で本件発明1と異なるものである。 すなわち、本件発明3は、アンクランプ用の油圧シリンダの流路に用いるものである点で本件発明1とは異なるものであり、油圧シリンダから圧油を排出するときにバイパス流路を機能させるか、供給するときに機能させるかの違いはあるが、本件発明3は、アンクランプ用の油圧シリンダから圧油を排出するとき(クランプする方向に出力ロッドが駆動されるとき)に、バイパス流路を閉止して絞り制御を行い、出力ロッドの動きを制御しようとするものである一方、本件発明1は、クランプ用の油圧シリンダの流路に用いるものであって、クランプ用の油圧シリンダに圧油を供給するとき(クランプする方向に出力ロッドが駆動されるとき)に、バイパス流路を閉止して絞り制御を行い、出力ロッドの動きを制御しようとするものであるから、出力ロッドの動作に対するバイパス流路の働きは同じものといえる。 これを踏まえて以下検討する。 (2)各書証の記載事項及び各書証記載の発明 各書証には、上記8(1)のとおりの記載があるところ、上記8(1)エのとおりの周知発明が認められる。 (3)本件発明3と周知発明との対比 本件発明3と周知発明とは、 「A1’クランプ本体と、 A2’ 該クランプ本体に進退可能に装着された出力ロッドと、 A3 該出力ロッドの先端部に連結されワークにクランプ力を出力するクランプアームと、 A4’ 前記出力ロッドを進出側に駆動するアンクランプ用の油圧シリンダとを備え、 A5 前記クランプ本体は、その上部にフランジ部と、前記フランジ部から下方へ延びベースの収容穴に収容される部分とを有し、該フランジ部の外周部の下面には前記ベースの上面に当接する据付け面が形成され、 A6 該据付け面には、油圧ポートが設けられ、 A7’ 前記クランプ本体の内部には、前記油圧ポートから前記油圧シリンダに至る油路が設けられた、 A10 クランプ装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1’:クランプ装置の油路に関する部分) 本件発明1では、油路は、前記油圧ポートに接続された第1油路と、該第1油路に接続されて前記出力ロッドの移動方向に直交する方向を指向する第2油路とを有しており(構成A8’)、前記第1油路は前記油圧ポートから前記装着穴に向かうにつれて前記油室側に近づく斜め方向に延在する(構成A9)のに対して、周知発明の油路は、そのような構成ではない点。 (相違点2’:流量調整弁について) 本件発明3では、クランプ装置内の油路の流量を調整するために、「一端が前記フランジ部の外周面から突出し、他端が前記第1油路と第2油路との接続部に至る流量調整弁が、前記一端から前記他端に向かう方向が前記第2油路の前記指向方向と同じ向きになるように設けられ、 前記流量調整弁は、 前記第1油路と前記第2油路との接続部に形成された弁孔と、 前記クランプ本体に対して前記第2油路の前記指向方向に相対移動可能な弁体部および前記弁体部の基端に連なる前記弁体部よりも大径の軸部を有し、前記弁体部が前記弁孔に挿入された全閉状態から前記弁体部が前記弁孔から離間した全開状態に至るまで前記弁体部を移動させて前記弁体部と前記弁孔との間の隙間を調節可能な弁部材と、 前記油圧シリンダの油室側の小径部と、前記フランジ部の側面側の基部とを有し、前記小径部が前記フランジ部に形成された装着穴に内嵌状に螺合される弁ケースと、 前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間をシールする第1シール部材と、 前記弁ケースと前記装着穴との間をシールする第2シール部材とを備え、 前記弁ケースの前記基部に、前記弁部材の前記軸部が前記出力ロッドの長手方向と交差する方向に内嵌状に螺合され、 前記基部および前記軸部は前記フランジ部の側面から外側に露出し、前記基部の基端にロックナットが装着され、 前記弁部材における前記軸部の基端側部分に、前記弁部材をクランプ本体に対して前記接近/離隔方向に相対移動させる為の操作部に相当し、工具を係合させて前記軸部を回転させることが可能な穴が形成され、 前記弁体部の外周部には、先端側ほど深さが深い、前記弁体部の軸方向に延びる溝部が形成され、 前記弁部材は、前記弁体部と前記弁孔との間の隙間をバイパスするバイパス流路と、前記シリンダ穴に油圧を供給するときには前記バイパス流路を開放し、前記シリンダ穴から油圧を排出するときには前記バイパス流路を閉止する逆止弁とを有し、 前記バイパス流路は、前記弁体部の内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と、前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含み、 前記逆止弁は、前記第1流路上に形成された弁座と、前記第1流路内に移動可能に設けられた鋼球と、前記鋼球を前記弁座側に付勢する部材とを含み、 前記シリンダ穴に油圧を供給するときには、供給される前記油圧により前記鋼球が前記弁座と反対側に押圧されて前記バイパス流路が開放され、 前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に第1隙間が形成され、前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され、前記第1油路、前記第2油路、および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙間に連通し、」(構成B1ないし17)「前記第1油路は」「前記第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口し、」(構成B18)「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」(構成B19)との構成を有する流量調整弁を用いているのに対して、周知発明は、そのような流量調整弁を用いていない点。 (4)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2’から検討する。 上記8(3)において述べたとおり、上記相違点2’のうち、構成B15ないし19、すなわち本件構造は、その構成を全て備えることによって、所望の効果を奏する発明を構築していると認められるから、この構成を分断して容易相当性を論じることは適当でないところ、請求人が示す各証拠は、本件構造を断片的に示すに過ぎないものであって、その全てを開示するものは示されていない。 そうすると、本件構造については、油圧等の流体圧シリンダに用いる流量調整弁の技術分野における周知技術であると認めるに足りる証拠はなく、当業者がそのようにすることを検討するのが通常であるともいえない。 よって、当業者といえども、周知発明を出発点として、本件構造を備える構成を容易に想到することができたということはできない。 (5)小括 そうすると、本件発明3は、甲第12号証ないし甲第14号証に記載された周知発明に対して、請求人の示す周知技術等を適用することで、容易に発明することができたものではなく、特許法第29条第2項に違反してなされたものとはいえないから、特許法第123条第1項第2号の無効理由を有するとするとはいえない。 (被請求人の一事不再理の主張について) なお、被請求人は、無効理由7、8に関し、一事不再理に反するものであり、許容されるべきものではない旨主張する。 しかしながら、無効理由7、8については、上記のとおり、一事不再理に反するかどうかを判断するまでもなく、本件発明1ないし3に係る特許を取り消す理由とならないものである。 第6 むすび 以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1ないし3に係る特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-07-22 |
結審通知日 | 2020-07-28 |
審決日 | 2020-08-13 |
出願番号 | 特願2011-222200(P2011-222200) |
審決分類 |
P
1
113・
55-
Y
(B23Q)
P 1 113・ 536- Y (B23Q) P 1 113・ 121- Y (B23Q) P 1 113・ 841- Y (B23Q) P 1 113・ 537- Y (B23Q) P 1 113・ 113- Y (B23Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 忠博 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
青木 良憲 見目 省二 |
登録日 | 2015-02-27 |
登録番号 | 特許第5700677号(P5700677) |
発明の名称 | クランプ装置 |
代理人 | 別城 信太郎 |
代理人 | 高橋 智洋 |
代理人 | 木原 美武 |
代理人 | 荒川 伸夫 |
代理人 | 松田 将治 |
代理人 | 西本 杏子 |
代理人 | ▲高▼山 嘉成 |
代理人 | 佐々木 眞人 |
代理人 | 深見 久郎 |