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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1372214
審判番号 不服2019-16310  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-03 
確定日 2021-04-07 
事件の表示 特願2016- 8456「フローティング・グラフィカルユーザインターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日出願公開、特開2017- 4491、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月12日に出願した特願2015-119252号の一部を平成28年1月20日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 2月21日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 9月24日付け:拒絶査定
令和 元年12月 3日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

令和 2年11月30日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 3年 1月 7日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、令和3年1月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される発明であり、それらのうちの本願発明1,6は、それぞれ以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
ヘッドマウント・ディスプレイによって提示される仮想空間中で仮想オブジェクトを制御する方法であって、
前記仮想空間は、第1仮想オブジェクトと第2仮想オブジェクトとを含み、
前記仮想空間中で、前記第1仮想オブジェクトと前記第2仮想オブジェクトとを含む視野を定義するステップと、
ヘッドマウント・ディスプレイの動きを検出する検出ステップと、
検出された前記動きに基づいて前記仮想空間中で前記視野を移動させる視野移動ステップと、
前記視野の移動に基づいて、前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを基本的に固定する一方、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定する仮想オブジェクト移動ステップと、を含み、
前記仮想オブジェクト移動ステップでは、前記視野の移動に伴い、前記仮想空間中で固定した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における左右方向で前記視野の外に位置するとき、前記第1仮想オブジェクトの前記少なくとも一部が前記視野内に戻るよう前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを移動させ、前記仮想空間中で固定した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における上下方向で前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを固定したままとする一方、前記第2仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定したままとする、方法。」
「【請求項6】
ヘッドマウント・ディスプレイによって提示される仮想空間中で仮想オブジェクトを制御する方法であって、
前記仮想空間は、第1仮想オブジェクトと第2仮想オブジェクトとを含み、
前記仮想空間中で、前記第1仮想オブジェクトと前記第2仮想オブジェクトとを含む視野を定義するステップと、
前記第1仮想オブジェクトを前記視野内の初期状態の位置に対応する前記仮想空間中の位置に配置し、前記仮想空間中の前記第1仮想オブジェクトの移動速度ベクトルVを0に初期化する初期化ステップと、
ヘッドマウント・ディスプレイの動きを検出するステップと、
検出された前記動きに基づいて前記仮想空間中で前記視野を移動させる視野移動ステップと、
前記視野の移動に基づいて、前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを前記移動速度ベクトルVで移動させる一方、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定する仮想オブジェクト移動ステップと、を含み、
前記仮想オブジェクト移動ステップでは、前記視野の移動に伴い、前記移動速度ベクトルVを0に初期化した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における左右方向で前記視野の外に位置するとき、前記第1仮想オブジェクトの前記少なくとも一部が前記視野内に戻るよう前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを移動させ、前記移動速度ベクトルVを0に初期化した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における上下方向で前記視野の外に位置するとき、前記移動速度ベクトルVの値を0のままとする一方、前記第2仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定したままとし、
前記視野内の前記第1仮想オブジェクトの位置が前記視野内の前記初期状態の位置と一致した場合、前記移動速度ベクトルVが0に再初期化され、
前記第1仮想オブジェクトの前記少なくとも一部が前記視野内に戻るよう前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを移動させることは、前記移動させられた視野の中で前記第1仮想オブジェクトが前記初期状態の位置に戻るような値を前記移動速度ベクトルVとして設定することを含む、
方法。」

また、本願発明2?5は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明7,8は、方法の発明である本願発明1?6のいずれかの方法に対応するプログラム又は装置の発明である。

第3 原査定の概要
原査定(令和元年9月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1?8に係る発明は、引用文献1?5に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1 特開2014-153645号公報
2 特開2001-70632号公報
3 特開2014-23719号公報
4 特開2008-125617号公報
5 特開平7-271546号公報

第4 引用文献、引用発明等
1 原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。)。
(1)「【0022】
以下、本発明の画像表示装置および画像表示装置の表示制御方法の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)の概略構成を示す図、図2は、図1に示す画像表示装置の制御ユニットの概略構成図、図3は、図2に示す駆動信号生成部の駆動信号の一例を示す図である。また、図4は、図1に示す画像表示装置の画像形成部の概略構成を示す模式図、図5は、図4に示す画像形成部の光スキャナーの平面図、図6は、図5に示す光スキャナーの断面図(X軸に沿った断面図)である。また、図7は、観察者の頭部の動きを説明するための図、図8は、図1に示す画像表示装置の作用(虚像の表示位置の変化)を説明するための図、図9は、図7(a)に示す観察者の頭部の動きと虚像の表示位置との関係を説明するための図、図10は、虚像を表示可能な領域の画角を説明するための図、図11は、図1に示す画像表示装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0023】
なお、図1、図7および図9では、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を図示しており、その図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「-側」とする。また、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」という。ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述する画像表示装置1を観察者の頭部Hに装着した際に、ある基準時において、X軸方向が頭部Hの上下方向、Y軸方向が頭部Hの左右方向、Z軸方向が頭部Hの前後方向となるように設定されている。また、X軸、Y軸およびZ軸は、後述する画像表示装置1を観察者の頭部Hに装着した際に、ある基準時において、X軸方向が虚像の表示面(画面)の縦方向(垂直走査方向)、Y軸方向が虚像の表示面の横方向(水平走査方向)、Z軸方向が虚像の表示面に対して垂直な方向となるように設定されている。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の画像表示装置1は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型画像表示装置)であって、観察者の頭部Hに装着して使用され、観察者に虚像による画像を外界像と重畳した状態で視認させるものである。この画像表示装置1は、フレーム2と、フレーム2に支持された制御ユニット3および画像形成部4とを備える。」

(2)「【0091】
本実施形態では、反射部44は、ハーフミラーであり、外界光を透過させる機能(可視光に対する透光性)をも有する。すなわち、反射部44は、光走査部42で走査された信号光(走査光)を反射させるとともに、使用時において反射部44の外側から観察者の眼に向かう外界光を透過させる機能を有する。これにより、観察者は、外界像を視認しながら、信号光により形成された虚像(画像)を視認することができる。すなわち、シースルー型のヘッドマウントディスプレイを実現することができる。」

(3)「【0096】
まず、検知部35について説明する。検知部35は、頭部Hの動き(検知情報)として、頭部Hの所定軸周りの角速度を検知する。これにより、検知部35が観察者の頭部Hの向きの変化を検知することができる。そのため、制御部33が観察者の頭部Hの向きの変化に基づいて第1状態から第2状態へ切り換えることができる。また、検知部35は、頭部Hの互いに交差する方向の3つの軸周り(例えば、X軸、Y軸およびZ軸)の角速度をそれぞれ検知するものであることが好ましい。これにより、頭部Hの様々の軸周りの角速度を検出することができる。」

(4)「【0098】
(第1状態) 第1状態では、図8(a)に示すように、虚像Gの表示位置を基準位置に設定する。このとき、図示の例では、外界の対象物V_(1)、V_(2)を有する外界像が虚像Gと重畳して観察者に視認される。ここで、対象物V_(2)は、領域Sの右側に位置している。なお、本実施形態では、基準位置を虚像Gを表示可能な領域Sの中央としているが、基準位置は、領域Sの中央に限定されず、例えば、領域Sの中央からずれていてもよい。
【0099】
(第2状態) 第2状態では、図8(b)に示すように、虚像Gの表示位置を基準位置から変更(移動)する。このとき、図示の例では、頭部HのX軸周りの回転後の領域S’の中心に対象物V_(2)を位置するように、外界の対象物V_(1)、V_(2)を有する外界像が虚像Gと重畳して観察者に視認される。
【0100】
また、制御部33は、第2状態において、検知部35が検知した動きと逆方向(図8(b)では、左方向)となる位置に虚像Gの表示位置を変更する。これにより、第2状態において、虚像Gが外界像と一体化されたような表示を行うことができる。また、頭部を動かした際に、虚像Gが観察者の視認したい外界像を遮らないように表示を行うことができる。
【0101】
このような第1状態から第2状態への切り換えの後、所定時間経過後に、図8(c)に示すように、虚像Gの表示位置を基準位置に戻す。すなわち、制御部33は、第1状態から第2状態へ切り換えの後、所定時間経過後に、第2状態から前記第1状態へ切り換える。このとき、制御部33は、虚像Gの表示位置が基準位置に漸近するように第2状態から第1状態へ切り換えることが好ましい。これにより、虚像Gの表示位置が第2状態から第1状態へ変化する際に観察者が感じる違和感を低減することができる。」

(5)「【図8】



2 上記1から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「X軸方向が虚像の表示面(画面)の縦方向(垂直走査方向)、Y軸方向が虚像の表示面の横方向(水平走査方向)となるように設定されており、観察者の頭部Hに装着して使用され、観察者が外界像を視認しながら信号光により形成された虚像(画像)を視認することができるシースルー型のヘッドマウントディスプレイの表示制御方法であって、
検知部35は、頭部Hの動き(検知情報)として、頭部Hの所定軸周りの角速度を検知し、これにより、検知部35が観察者の頭部Hの向きの変化を検知することができ、
第1状態では、虚像Gの表示位置を基準位置に設定し、このとき、外界の対象物V_(1)、V_(2)を有する外界像が虚像Gと重畳して観察者に視認され、
第2状態では、虚像Gの表示位置を基準位置から変更(移動)し、このとき、頭部HのX軸周りの回転後の領域S’の中心に対象物V_(2)を位置するように、外界の対象物V_(1)、V_(2)を有する外界像が虚像Gと重畳して観察者に視認され、虚像Gが外界像と一体化されたような表示を行うことができ、
第1状態から第2状態へ切り換えの後、所定時間経過後に、虚像Gの表示位置が基準位置に漸近するように第2状態から第1状態へ切り換える、
ヘッドマウントディスプレイの表示制御方法。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明の「ヘッドマウントディスプレイの表示制御方法」は、「観察者が外界像を視認しながら信号光により形成された虚像(画像)を視認することができ」、「虚像Gの表示位置を基準位置に設定し、このとき、外界の対象物V1、V2を有する外界像が虚像Gと重畳して観察者に視認され」るものであり、ここで、「外界像」は、「シースルー型のヘッドマウントディスプレイ」によって「視認」可能に「提示される」範囲の空間における像(実像)であって、「虚像G」の「表示位置」の「設定」は、当該空間中で行われる「制御」であるといえる。また、当該空間は「虚像G」を含み、「ヘッドマウントディスプレイ」は、当該空間中で、「虚像G」を含む「視野を定義する」といえる。
そして、引用発明の「ヘッドマウントディスプレイ」、「虚像G」は、それぞれ、本願発明1の「ヘッドマウント・ディスプレイ」、「第1仮想オブジェクト」に相当する。
以上のことから、引用発明と本願発明1の「ヘッドマウント・ディスプレイによって提示される仮想空間中で仮想オブジェクトを制御する方法」であって、「前記仮想空間は、第1仮想オブジェクトと第2仮想オブジェクトとを含み」、「前記仮想空間中で、前記第1仮想オブジェクトと前記第2仮想オブジェクトとを含む視野を定義するステップ」を含む方法とは、「ヘッドマウント・ディスプレイによって提示される空間中で仮想オブジェクトを制御する方法」であって、「前記空間は、第1仮想オブジェクトを含み」、「前記空間中で、前記第1仮想オブジェクトを含む視野を定義するステップ」を含む動作を実行する点で共通している。

(イ)引用発明では、「ヘッドマウントディスプレイ」が「観察者の頭部Hに装着して使用され」る一方、「検知部35は、頭部Hの動き(検知情報)として、頭部Hの所定軸周りの角速度を検知し、これにより、検知部35が観察者の頭部Hの向きの変化を検知することができ」るから、「ヘッドマウントディスプレイ」の「動き」を「検知する」ことが行われるものであり、ここで、引用発明の「検知」は本願発明1の「検出」に相当する。
この点について上記(ア)も踏まえると、引用発明は、本願発明1の「ヘッドマウント・ディスプレイの動きを検出する検出ステップ」に相当する「検出」動作を実行するものである。

(ウ)引用発明は、「第2状態では、虚像Gの表示位置を基準位置から変更(移動)し、このとき、頭部HのX軸周りの回転後の領域S’の中心に対象物V_(2)を位置するように、外界の対象物V_(1)、V_(2)を有する外界像が虚像Gと重畳して観察者に視認され、虚像Gが外界像と一体化されたような表示を行うことができ」、「第1状態から第2状態へ切り換えの後、所定時間経過後に、虚像Gの表示位置が基準位置に漸近するように第2状態から第1状態へ切り換える」るものである。つまり、引用発明は、「第2状態」において、「頭部HのX軸周りの回転」、すなわち「観察者」の「前記視野の移動」に基づいて、「虚像Gが外界像と一体化されたような表示を行う」、すなわち「虚像G」を「外界像」に対して「固定する」とともに、「第2状態から第1状態へ切り換える」際は、「虚像Gの表示位置が基準位置に漸近する」ようにする、すなわち「虚像G」を「外界像」に対して「移動させる」ことを行うものである。
このように、引用発明は、「前記視野の移動」に基づいて、「虚像G」を「外界像」に対して「固定する」ものであるが、「外界像」に対して「移動させる」場合もあるから、「前記視野の移動」に基づいて、「虚像G」を「外界像」に対して「基本的に固定する」ものであるといえる。
また、引用発明において「X軸」は、その方向が「虚像の表示面(画面)の縦方向(垂直走査方向)」「となるように設定されて」いるから、「虚像Gの表示位置を基準位置から変更(移動)」することが行われて「外界像と一体化されたような表示」がなされる「虚像G」は、「頭部HのX軸周りの回転」、すなわち「観察者」の「X軸周り」の「前記視野の移動」に伴い、「虚像の表示面(画面)の縦方向」と垂直な方向、すなわち「前記視野における左右方向」の所定の場所に位置することとなり、そのとき、「虚像Gの表示位置が基準位置に漸近する」ように「外界像」に対して「虚像G」を「移動させ」る、「第2状態から第1状態へ切り換え」が行われるといえる。
以上の点について上記(ア)も踏まえると、引用発明と本願発明1の「前記視野の移動に基づいて、前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを基本的に固定する一方、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定する仮想オブジェクト移動ステップ」を含み、「前記仮想オブジェクト移動ステップでは、前記視野の移動に伴い、前記仮想空間中で固定した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における左右方向で前記視野の外に位置するとき、前記第1仮想オブジェクトの前記少なくとも一部が前記視野内に戻るよう前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを移動させ、前記仮想空間中で固定した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における上下方向で前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを固定したままとする一方、前記第2仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定したままとする」方法とは、「前記視野の移動に基づいて、前記空間中で前記第1仮想オブジェクトを基本的に固定する仮想オブジェクト移動ステップ」を実行するものである点、及び、「前記仮想オブジェクト移動ステップでは、前記視野の移動に伴い、前記空間中で固定した前記第1仮想オブジェクトが前記視野における左右方向で所定の場所に位置するとき、前記空間中で前記第1仮想オブジェクトを移動させ」る点で共通している。

イ したがって、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致する。
(一致点)
「ヘッドマウント・ディスプレイによって提示される空間中で仮想オブジェクトを制御する方法であって、
前記空間は、第1仮想オブジェクトを含み、
前記空間中で、前記第1仮想オブジェクトを含む視野を定義するステップと、
ヘッドマウント・ディスプレイの動きを検出する検出ステップと、
前記視野の移動に基づいて、前記空間中で前記第1仮想オブジェクトを基本的に固定する仮想オブジェクト移動ステップと、を含み、
前記仮想オブジェクト移動ステップでは、前記視野の移動に伴い、前記空間中で固定した前記第1仮想オブジェクトが前記視野における左右方向で所定の場所に位置するとき、前記空間中で前記第1仮想オブジェクトを移動させる、方法。」

ウ また、本願発明1と引用発明とは以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は、「ヘッドマウント・ディスプレイによって提示される」「空間」が「仮想空間」であるのに対し、引用発明は、「ヘッドマウントディスプレイ」によって「観察者」が「視認」可能であるものが「外界像」の空間(実空間)である点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記仮想空間」が、「第1仮想オブジェクト」の他に「第2仮想オブジェクト」を含み、「前記仮想空間中」で「定義する」ものが「第1仮想オブジェクト」の他に「第2仮想オブジェクト」を含む「視野」であって、更に、「仮想オブジェクト移動ステップ」が、「前記仮想空間中」で「前記第2仮想オブジェクトを固定する」ものでもあるのに対し、引用発明では、「外界像」の空間が「虚像G」の他に「第2仮想オブジェクト」を含むことについての特定がない点。

(相違点3)
本願発明1は、「検出された前記動きに基づいて前記仮想空間中で前記視野を移動させる視野移動ステップ」を含むのに対し、引用発明はそのような動作を行うステップを含むものではない点。

(相違点4)
本願発明1では、「前記仮想オブジェクト移動ステップ」において「前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを移動させ」る条件とする、「前記第1仮想オブジェクト」の「前記視野における左右方向」における位置が、「前記第1仮想オブジェクト」の「少なくとも一部」が「前記視野における左右方向で前記視野の外に位置するとき」であり、また、「前記第1仮想オブジェクトを移動させ」る態様が、「前記第1仮想オブジェクトの前記少なくとも一部が前記視野内に戻るよう」にするものであるのに対し、引用発明では、「虚像Gの表示位置が基準位置に漸近するように第2状態から第1状態へ切り換える」ことを開始する条件とする「虚像Gの表示位置」についての特定がなく、「基準位置に漸近するように第2状態から第1状態へ切り換える」態様についての特定もない点。

(相違点5)
本願発明1は、「前記仮想空間中で固定した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における上下方向で前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを固定したままとする一方、前記第2仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定したままとする」ものであるのに対し、引用発明は、「観察者に視認され」る「外界像」の「上下方向」における「虚像Gの表示位置」を条件とする処理を行うことについて特定されるものではない点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点5について先に検討する。
引用発明では、上記(1)ア(ウ)のとおり、「頭部HのX軸周りの回転」に伴い、「虚像G」は「前記視野における左右方向」の所定の場所に位置することとなるものであるが、その「方向」が「虚像の表示面の横方向(水平走査方向)となるように設定され」た「Y軸」周りの「頭部H」の「回転」(見上げるように首を動かす動作等)も当然に想定され、その「回転」が行われた場合は、「虚像G」は「視野における上下方向」の所定の場所に位置することとなる。
しかしながら、ヘッドマウントディスプレイにおいて、視野の移動に伴って、仮想オブジェクトが視野の左右方向又は上下方向の所定の場所に位置することとなったときの仮想オブジェクトをどのように移動させるかにつき、左右方向の場合と上下方向の場合とで異ならせ、左右方向の場合は空間中で仮想オブジェクトを移動させ、上下方向の場合は空間中で仮想オブジェクトを固定したままとすることは、原査定で引用された引用文献1?5のいずれにも記載されておらず、本願の原出願日前において周知技術であるともいえない。
そうすると、相違点5に係る「前記仮想空間中で固定した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における上下方向で前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを固定したままとする一方、前記第2仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定したままとする」との構成は、当業者であっても引用文献1?5に記載された発明に基づいて容易に想到し得るものではない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1?5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?8について
本願発明2?5は、いずれも本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は、「前記移動速度ベクトルVを0に初期化した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における上下方向で前記視野の外に位置するとき、前記移動速度ベクトルVの値を0のままとする一方、前記第2仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定したままとし」との発明特定事項を含んでいるところ、当該発明特定事項は相違点5に実質的に対応している。
本願発明7,8は、本願発明1?6に対応するプログラム又は装置の発明である。
したがって、本願発明2?8も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1?5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
令和3年1月7日付け手続補正により、本願発明1?8は、それぞれ相違点5に係る発明特定事項に対応する構成を(実質的に)有するものとなっており、上記第5のとおり、引用文献1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定(上記第3)を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
1 当審が令和2年11月30日付けで通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。
(1)理由1(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が次の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1の記載によれば、請求項1に係る発明には、「第1仮想オブジェクト」(これは、発明の詳細な説明における「ウィジェット201」に対応する。)について、「視野の移動」を開始してから「前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が第1方向で前記視野の外に位置する」状態に至る過程において、「前記仮想空間内で前記第1仮想オブジェクトを移動させる」場合が含まれることになり、また、「前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が第2方向で前記視野の外に位置する」状態に至る過程において、「前記仮想空間内で前記第1仮想オブジェクトを移動させる」場合が含まれることになるが、それらの場合については、いずれも、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
請求項6にも請求項1と同様の記載がある。

(2)理由2(明確性)
請求項1の記載について、以下の点が不明である。
ア 「第1方向」、「第2方向」と記載されているが、それぞれどのような「方向」であるのか不明であり、両者の相互関係も不明である。
イ 「前記第1仮想オブジェクトの前記少なくとも一部が前記視野内に戻るよう前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを移動させない」と記載されているが、「移動させない」との否定的表現が用いられていることにも起因して、この記載が、「視野内に戻る」以外の態様で「第1仮想オブジェクト」を「移動させ」ることを含むのか否か、不明である。
また、請求項1に別途記載されている、「前記第2仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野の外に位置するとき、前記第2仮想オブジェクトの前記少なくとも一部が前記視野内に戻るよう前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを移動させない」との記載についても、同様の点が不明である。
ウ 「仮想空間中」と「仮想空間内」との異同が不明である。
請求項6にも上記ア?ウと同様の記載がある。

2 これに対し、令和3年1月7日に提出の手続補正書により、請求項1,6の記載が補正され、請求項1は、
「前記仮想オブジェクト移動ステップでは、前記視野の移動に伴い、前記仮想空間中で固定した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における左右方向で前記視野の外に位置するとき、前記第1仮想オブジェクトの前記少なくとも一部が前記視野内に戻るよう前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを移動させ、前記仮想空間中で固定した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における上下方向で前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを固定したままとする一方、前記第2仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定したままとする」
と記載されているものとなり、請求項6は、
「前記仮想オブジェクト移動ステップでは、前記視野の移動に伴い、前記移動速度ベクトルVを0に初期化した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における左右方向で前記視野の外に位置するとき、前記第1仮想オブジェクトの前記少なくとも一部が前記視野内に戻るよう前記仮想空間中で前記第1仮想オブジェクトを移動させ、前記移動速度ベクトルVを0に初期化した前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野における上下方向で前記視野の外に位置するとき、前記移動速度ベクトルVの値を0のままとする一方、前記第2仮想オブジェクトの少なくとも一部が前記視野の外に位置するとき、前記仮想空間中で前記第2仮想オブジェクトを固定したままとし」
と記載されているものとなった。

このように、補正後の請求項1は、「視野の移動」を開始してから「前記第1仮想オブジェクトの少なくとも一部」が「前記視野の外に位置する」状態に至る過程においては、「前記第1仮想オブジェクト」は「前記仮想空間中で固定した」状態であるとするものであり、補正後の請求項6は、同じく、「前記第1仮想オブジェクト」は「前記移動速度ベクトルVを0に初期化した」状態であるとするものであるから、いずれも、上記過程において「前記仮想空間内で前記第1仮想オブジェクトを移動させる」場合を含まないものとなっている。
よって、上記1(1)の理由1は解消した。

また、補正後の請求項1,6のそれぞれの「前記視野における左右方向」、「前記視野における上下方向」との記載は、特定される方向がいずれも明確であり、
補正後の請求項1の「前記第1仮想オブジェクトを固定したままとする」及び「前記第2仮想オブジェクトを固定したままとする」との記載、並びに、補正後の請求項6の「前記第1仮想オブジェクト」の「前記移動速度ベクトルVの値を0のままとする」及び「前記第2仮想オブジェクトを固定したままとし」との記載は、何らかの態様で「第1仮想オブジェクト」又は「第2仮想オブジェクト」を「移動させる」ことを含むものではないことが明確である。
更に、補正後の請求項1,6では、「仮想空間内」との記載は存在せず、「仮想空間中」との記載のみが存在している。
よって、上記1(2)の理由2は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1?8は、当業者が引用文献1?5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-23 
出願番号 特願2016-8456(P2016-8456)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 富澤 哲生
北川 純次
発明の名称 フローティング・グラフィカルユーザインターフェース  
代理人 宮前 徹  
代理人 山本 修  
代理人 中西 基晴  
代理人 小野 新次郎  
代理人 鳥居 健一  
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