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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1372236
審判番号 不服2019-12922  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-27 
確定日 2021-03-17 
事件の表示 特願2016-507688「細胞分取のための自動セットアップ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月16日国際公開、WO2014/169231、平成28年 7月21日国内公表、特表2016-521362〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)4月11日(パリ条約による優先権主張 2013年4月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年2月27日付けで拒絶理由が通知され、同年6月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月22日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和元年5月24日付けで拒絶査定されたところ、同年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において令和2年5月19日付けで拒絶理由が通知され、同年8月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明13」という。)は、令和2年8月20日付け手続補正書により補正(本件補正)された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される発明であり、そのうち独立形式請求項の本願発明1、7及び8は以下のとおりの発明である。

(本願発明1)
「 【請求項1】
検出フィールドでフロー経路の1つまたは複数の画像を捕捉するように構成された画像センサと、
動作可能に結合されたメモリを有するプロセッサと
を備えるフローサイトメータであって、
前記プロセッサは、
捕捉画像における前記フロー経路内のフローストリームの有無を判断し、
前記フローストリームが前記捕捉画像に存在しないことが予想される、ユーザにより入力された命令を受け取り、前記命令は、前記検出フィールドにフローストリームを形成することなく前記フローストリームが廃液容器に誘導されることを有し、
前記捕捉画像からフローストリームが前記フロー経路内に存在すると判断された場合に警告を生成する
ように構成されていることを特徴とするフローサイトメータ。」

(本願発明7)
「 【請求項7】
検出フィールドでフローサイトメータのフロー経路の1つまたは複数の画像を捕捉するステップと、
捕捉画像における前記フロー経路内のフローストリームの有無を判断するステップと、
前記フローストリームが前記捕捉画像に存在しないことが予想される、ユーザにより入力された命令を受け取るステップと、
前記捕捉画像からフローストリームが前記フロー経路内に存在すると判断された場合に警告を生成するステップと
を含んでおり、
前記命令は、前記検出フィールドにフローストリームを形成することなく前記フローストリームが廃液容器に誘導されることを有することを特徴とする方法。」

(本願発明8)
「 【請求項8】
フローサイトメータの試料ポートに試料を注入するステップを含み、前記フローサイトメータは、動作可能に結合されたメモリを有するプロセッサを備えるシステムを備え、
前記システムは、検出フィールドにおけるフローサイトメータのフロー経路の1つまたは複数の画像を捕捉するステップを行うように自動化され、
捕捉画像における前記フロー経路内のフローストリームの有無を判断するステップと、
前記フローストリームが前記捕捉画像に存在しないことが予想される、ユーザにより入力された命令を受け取るステップと、
前記捕捉画像からフローストリームが前記フロー経路内に存在すると判断された場合に警告を生成するステップと
を含んでおり、
前記命令は、前記検出フィールドにフローストリームを形成することなく前記フローストリームが廃液容器に誘導されることを有することを特徴とする方法。」

第3 当審の拒絶理由通知書の概要
当審の拒絶の理由である、令和2年5月19日付け拒絶理由通知の理由は、概略、次のとおりのものである。

「(新規事項)令和元年9月27日付け手続補正書でした補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、「翻訳文等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。


令和元年9月27日付け手続補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記フローストリームが前記捕捉画像に存在しないことが予想されるデータ信号を有してユーザにより入力された前記フローサイトメータのパラメータを評価し、前記ユーザにより入力されたパラメータと前記捕捉画像とが一致しない場合に示す警告を生成する」とあるものを、
「前記フローストリームが前記捕捉画像に存在しないことが予想される、ユーザにより入力された命令を受け取り、前記捕捉画像からフローストリームが前記フロー経路内に存在すると判断された場合に警告を生成する」と補正する補正事項を含むものである。
・・・
6 してみると、請求項1に係る上記補正事項は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものに該当するから、翻訳文等の記載した事項の範囲内においてなされたものではない。
また、請求項8及び請求項9においても、請求項1と同様の補正をしているから、請求項8及び請求項9に係る補正事項も、請求項1に係る補正事項と同様の理由により、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものに該当するから、翻訳文等の記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

7 よって、請求項1、8及び9に係る上記補正事項は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてなされたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものでない。」

第4 翻訳文等の記載
翻訳文等には、「警告」に関連する記載として、以下の記載がある。なお下線は、当審により付与した。

(翻訳1)特許請求の範囲
「【請求項1】
フローサイトメータの検出フィールドでフローストリームの1つまたは複数の画像を捕捉するように構成された画像センサと、
プロセッサと動作可能に結合されたメモリを有するプロセッサであって、前記メモリは、前記フローストリームの1つまたは複数の特性を決定し、前記フローストリームの前記1つまたは複数の特性に対応するデータ信号を生成するという、その上に格納された命令を含む、プロセッサと
を備えるシステムであって、
前記プロセッサは、前記データ信号に応答して前記フローサイトメータの1つまたは複数のパラメータを自動的に調整するように構成され、
前記プロセッサは、
a)前記1つまたは複数の画像から前記フローストリームの空間位置を決定し、前記フローストリームの前記空間位置に対応するデータ信号を生成するか、
b)前記1つまたは複数の画像から前記フローストリームの物理的寸法を決定し、前記フローストリームの前記物理的寸法に対応するデータ信号を生成するか、または、
c)前記捕捉画像における前記フローストリームの有無を判断し、前記フローストリームが前記捕捉画像に存在することが予想されるかどうかを判断するために前記フローサイトメータのパラメータを評価し、前記予想されたパラメータと前記捕捉画像が一致しない場合に示す警告を生成する
ように構成されていることを特徴とするシステム。
・・・
【請求項9】
前記予想されたパラメータと前記捕捉画像とが一致しないという前記警告は、ノズルの詰まりを示すことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
フローサイトメータの1つまたは複数のパラメータを調整するための方法であって、
検出フィールドでフローサイトメータのフローストリームの1つまたは複数の画像を捕捉するステップと、
前記検出フィールドにおける前記フローストリームの1つまたは複数の特性を決定するステップと、
前記フローストリームの前記1つまたは複数の特性に対応するデータ信号を生成するステップと、
前記データ信号に応答して前記フローサイトメータの1つまたは複数のパラメータを調整するステップと
を含む、方法であり、
a)前記検出フィールドにおける前記フローストリームの空間位置を決定し、前記フローストリームの前記空間位置に対応するデータ信号を生成するステップ、または、
b)前記検出フィールドにおける前記フローストリームの物理的寸法を決定し、前記フローストリームの前記物理的寸法に対応するデータ信号を生成するステップ、または、
c)前記捕捉画像における前記フローストリームの有無を判断し、前記フローストリームが前記捕捉画像に存在することが予想されるかどうかを判断するために前記フローサイトメータのパラメータを評価し、前記予想されたパラメータと前記捕捉画像が一致しない場合に示す警告を生成するステップ
を含むことを特徴とする方法。
・・・
【請求項14】
前記予想されたパラメータと前記捕捉画像とが一致しないという警告の生成は、ノズルの詰まりを示すことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
フローサイトメータの1つまたは複数のパラメータを調整するための方法であって、
フローサイトメータの試料ポートに試料を注入するステップを含み、前記フローサイトメータは、プロセッサと動作可能に結合されたメモリを有するプロセッサを備えるシステムを備え、前記システムは、
検出フィールドで前記試料を含むフローサイトメータのフローストリームの1つまたは複数の画像を捕捉するステップと、
前記検出フィールドにおける前記フローストリームの1つまたは複数の特性を決定するステップと、
前記フローストリームの前記1つまたは複数の特性に対応するデータ信号を生成するステップと、
前記データ信号に応答して前記フローサイトメータの1つまたは複数のパラメータを調整するステップと
を行うように自動化され、
前記プロセッサは、前記データ信号に応答して前記フローサイトメータの1つまたは複数のパラメータを自動的に調整するように構成される、方法であり、
a)前記1つまたは複数の画像から前記フローストリームの空間位置を決定し、前記フローストリームの前記空間位置に対応するデータ信号を生成するステップ、または、
b)前記1つまたは複数の画像から前記フローストリームの物理的寸法を決定し、前記フローストリームの前記物理的寸法に対応するデータ信号を生成するステップ、または、
c)前記捕捉画像における前記フローストリームの有無を判断し、前記フローストリームが前記捕捉画像に存在することが予想されるかどうかを判断するために前記フローサイトメータのパラメータを評価し、前記予想されたパラメータと前記捕捉画像が一致しない場合に示す警告を生成するステップ
を含むことを特徴とする方法。」

(翻訳2)発明の名称
「【発明の名称】細胞分取のための自動セットアップ」

(翻訳3)発明が解決しようとする課題
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この方法は、一般に、フローサイトメータが、分取した細胞を収集器に分配し、したがって、妥当な精度で対象となる細胞を分取できるようにするが、方法は、セットアップ時にかなりの量のユーザ入力を必要とする。フローストリームと収集器とは、従来通り手動で位置合わせされる。流速やシース流体組成などの流体工学パラメータは、適切なノズル直径と一致させなければならない。」

(翻訳4)図面の簡単な説明
「【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ある実施形態によるシステムの概略図について描写する。
【図2】ある実施形態による本開示の方法を実践するためのステップを示すフローチャートについて描写する。
【図3】ある実施形態による本開示の方法を実践するためのステップを示すフローチャートについて描写する。」

(翻訳5)システム
「【0024】
フローサイトメータのパラメータを調整するためのシステム
・・・
【0070】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、検出フィールドにおけるフローストリームの有無を判断するように構成することができる。対象となるシステムは、フローセルのノズルのオリフィスを出たフローサイトメータのフローストリームの画像を捕捉するように構成された画像センサと、画像センサと動作可能に結合され、検出フィールドにおけるフローストリームの有無を判断するために捕捉画像を評価するように構成されたプロセッサとを含み得る。例えば、フローセルのノズルオリフィスの捕捉画像におけるフローストリームの有無の判断は、フローセルのノズルの詰まりがあるかどうかを判断するために使用することができる。これらの実施形態では、画像センサによる捕捉画像は、プロセッサによって評価され、プロセッサによってフローストリームが画像で検出された場合、プロセッサは、フローストリームの存在を示す信号を生成するように構成される。他方では、捕捉画像を評価した後でフローストリームが捕捉画像に存在しないとプロセッサが判断した場合、プロセッサは、フローストリームの不在を示す信号を生成するように構成することができる。
【0071】
フローストリームが捕捉画像に存在しないとプロセッサが判断した場合、ある実施形態では、対象システムは、フローストリームの不在がフローサイトメータの機能障害(ノズルの詰まりなど)の結果生じたものであるとユーザに自動的に警告するように構成される。これらの実施形態では、プロセッサは、フローストリームの不在に対応するデータ信号を、フローストリームが予想されるべきであるかどうかに関するユーザからの入力と相関させる。いくつかの実施形態では、ユーザは、ノズルからのフローストリームがフローストリームを形成することなく廃液容器に誘導される「クローズドループ」構成を有するようにシステムを構成することができる。これらの実施形態では、フローストリームが予想されないため、フローサイトメータは、機能障害(例えば、ノズルの詰まり)についてユーザに警告しない。しかし、フローストリームが予想される場合(通常の使用の間など)は、プロセッサは、捕捉画像を評価した後にフローストリームが検出されなければ、機能障害についてユーザに警告するように自動化される。
・・・
【0077】
本開示のある実施形態は、図1を参照して説明することができる。本発明の実施形態を使用するフローサイトメータ100が図1に示される。上記で論じられるように、フローサイトメータ100は、フローセル104と、フローセルに流体試料(例えば、血液試料)を提供するための試料貯蔵部106と、フローセルにシース流体を提供するためのシース貯蔵部108とを含む。フローサイトメータ100は、フローストリーム中に細胞を有する流体試料をシース流体の層流と併せてフローセル104に輸送するように構成される。フローセル104内のインタロゲーションゾーン103におけるフローストリームの分析は、試料の特性を決定して分取パラメータを制御する(本明細書で説明されるように)ために使用することができる。試料インタロゲーションプロトコルは、フローストリームに照射するための光源(例えば、レーザ)112と、1つもしくは複数の検出器109(例えば、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子(CCD))または他の任意の適切なタイプの光検出デバイスとを含み得る。光源からの光がインタロゲーションゾーン103の試料ストリームと交差するところでは、試料ストリーム流体によって、特に、試料ストリーム中に存在する細胞によって、レーザ光が散乱する。散乱したレーザ光の第1の部分は、試料ストリームと交差する前の方向に伝搬する(本明細書では、前方散乱光と呼ばれる)。インタロゲーションポイントで交差するレーザ光の第2の部分は、伝搬方向とは異なる角度で散乱する(本明細書では、側方散乱光と呼ばれる)。フローセル104内では、シース流体が細胞ストリームを取り囲み、組み合わされたシース流体と細胞ストリームとは、オリフィス110を有するノズル102を通じて、フローストリーム111としてフローセル104を出る。フローストリームは、液滴生成器の動作に応じて、連続的な流体フローまたは一連の液滴であり得る。
【0078】
フローストリーム111は、例えば、50μm、70μm、100μmの直径または他の任意の適切な直径を有し得るノズルオリフィス110でノズル102を出る。ノズル直径は、ストリーム寸法、液滴ブレイクオフポイントおよび落下量など、フローストリームの特性に影響を及ぼす。フローストリーム111を観察するため、任意選択により、LEDストロボ、レーザまたは他の任意の照射デバイスなどの光源112を利用することができ、試料流体ストリーム111の領域に配置することができる。カメラ113または他の画像収集デバイスを配置して、第1の検出フィールドでフローストリームの画像を捕捉することができる。いくつかの実施形態では、フローストリームは、連続的なストリームまたは一連の液滴を含み得る。フローストリームが連続的な液体フローであれば、検出フィールドでカメラによって捕捉された画像は、フローストリームの位置および/または寸法を決定するのに十分な情報をユーザまたはコントローラに提供することができる。
【0079】
この発明のいくつかの態様では、カメラ113または他の検出デバイスは、カメラ113によって収集された画像に基づいて、フローサイトメータ100の何らかの動作に影響を及ぼすことができる。コンピュータアルゴリズムを含むセットアップコントローラ114は、フローストリームの画像を受信し、フローサイトメータによって実行されるべき何らかの動作を決定することができ、有利には、手動のセットアップタスクからユーザを解放することができる。いくつかの実施形態では、ノズル開口部110の直径は、カメラ113によって捕捉されたフローストリーム111の寸法の画像分析に基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、セットアップコントローラ114は、フローサイトメータ100に動作上接続され、カメラによって受信された画像から決定されたノズル直径に基づいて、フローサイトメータにおける一連のパラメータの調整を自動的に開始することができる。パラメータは、静水圧、液滴電荷、偏向電圧、電荷補正値、液滴遅延、液滴周波数、液滴振幅および電荷位相などのいかなるフローサイトメトリパラメータも含み得る。
・・・
【0087】
この発明のいくつかの態様では、セットアップコントローラは、ノズルの詰まりと、フローストリームを生成しないように具体的に設計されたクローズドループノズルとを区別するために使用することができる。「クローズドループ」ノズルは、廃液に直接つながる管システムに接続された出力を有する。「クローズドループ」ノズルは、オープンな分取可能なストリームを作成せず、分析のためだけに使用される。このノズルと、オープンな分取可能なストリームを作成すべきであるが何らかの理由でそれができない詰まった分取ノズルとを見分けられることが重要である。いくつかの実施形態では、セットアップコントローラは、クローズドループノズルが設置された際にそれを電気的に検知する。電気的検知は、「プルアップ」抵抗回路へのグランドを提供する挿入クローズドループノズルなど、いかなる形態も取り得る。この方法でクローズドループノズルが検知される場合、カメラによるストリーム画像は予想されず、したがって、ストリーム画像が見られない場合にノズルの詰まりが誤って報告されることはない。分取ノズルの場合、ストリーム画像が予想され、その画像の領域値を使用してノズルサイズが決定され、ノズルに対する適切な機器設定値が実行される。ストリーム画像が見られず、クローズドループノズルの存在を示す電気信号が検出されない場合は、分取ノズルが設置されており、詰まっていると判断される。セットアップコントローラは、この事象における一連の動作を開始することができる。例えば、ユーザは、ノズルの詰まりについての通知を受けることができ、流体システムを一時停止するかまたは他の任意の動作を開始することができる。」

(翻訳6)方法
「【0088】
フローサイトメータのパラメータを調整するための方法
・・・
【0103】
ある実施形態による方法は、図2に示されるステップの組合せで概説される。この発明のステップは、いかなる順番でも、いかなる組合せでも起こり得る。例えば、図2では、実験的なセットアップは、所望の分取タスクに適切なノズルの設置を含み得る。フローストリームが開始され、カメラ1によってフローストリームの画像が収集される。ノズル開口部は、フローストリームの画像から決定することができ、いかなる数のパラメータも、この値に基づいて自動的に決定および設定することができる。レーザは、第1のカメラからの信号に従って自動的に大ざっぱに位置合わせすることができる。フローストリームがカメラ2を流れ過ぎると同時に、第2の画像を捕捉することができる。カメラ1およびカメラ2からの2つの画像は、XY平面におけるフローストリームの正確な局在化を実現することができる。この情報に基づいてレーザを自動的に精密に配置することができ、この情報に基づいて収集器を自動的に配置することができる。いくつかの実施形態では、レーザの精密な位置合わせは、収集器の位置合わせを容易にすることができる。
・・・
【0118】
さらなる他の実施形態では、方法は、検出フィールドでフローストリームの画像を捕捉するステップと、検出フィールドにおけるフローストリームの有無を判断するステップと、判断されたフローストリームの有無に応答してフローサイトメータの1つまたは複数のパラメータを調整するステップとを含み得る。上記で論じられるように、フローセルのノズルオリフィスの捕捉画像におけるフローストリームの有無を判断するための対象方法は、フローセルのノズルの詰まりがあるかどうかを判断するために使用することができる。これらの実施形態では、画像センサによる捕捉画像が評価され、フローストリームが画像で検出された場合、フローストリームの存在を示すデータ信号が生成される。他方では、捕捉画像を評価した後でフローストリームが捕捉画像に存在しないと判断された場合、フローストリームの不在を示すデータ信号が生成される。
【0119】
フローストリームが捕捉画像に存在しない場合、ある実施形態では、方法は、フローストリームの不在がフローサイトメータの機能障害(ノズルの詰まりなど)の結果生じたものであるとユーザに自動的に警告するステップを含み得る。これらの実施形態では、フローストリームの不在に対応するデータ信号は、フローストリームが予想されるべきであるかどうかに関するユーザからの入力と相関させる。いくつかの実施形態では、ユーザが、「クローズドループ」構成を有するようにシステムを構成した場合、フローストリームは予想されない。これらの実施形態では、フローストリームが予想されないため、フローサイトメータは、機能障害(例えば、ノズルの詰まり)についてユーザに警告しない。
【0120】
図3は、本開示のある実施形態によるフローサイトメータの1つまたは複数のパラメータを調整するための方法を示すフローチャートについて描写する。上記で要約されるように、方法は、検出フィールドでフローサイトメータのフローストリームの1つまたは複数の画像を捕捉するステップを含む。ある例では、画像は、2つ以上の検出フィールド(3つ以上など、4つ以上の検出フィールドを含む)で捕捉することができる。いくつかの実施形態では、方法は、フローストリームの有無を判断するステップを含む。フローストリームが不在であると判断され、フローストリームが予想される場合(通常の使用の間など)、可能な機器の機能障害(例えば、ノズルの詰まり)に関する警告をユーザに伝えることができる。他の実施形態では、方法は、フローストリームの空間位置を決定するかまたはフローストリームの物理的寸法を決定するステップを含む。ある例では、方法は、最初に、フローストリームが1つまたは複数の捕捉画像に存在するかを判断し、次に、フローストリームの空間位置を決定するステップを含む。他の例では、方法は、フローストリームが1つまたは複数の捕捉画像に存在するかを判断し、次に、フローストリームの物理的寸法を決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、捕捉画像からのフローストリームの物理的寸法に基づいて、フローサイトメータの物理的特性を決定するステップを含む。例えば、フローセルのノズルオリフィスは、捕捉画像からのフローストリームの物理的寸法に基づいて決定することができる。
・・・
【0122】
上記で論じられるように、対象方法は、人間の介入またはユーザによる手動入力があったとしてもほとんどない状態で、フローストリームの1つまたは複数のパラメータに対応するデータ信号に応答して調整が行われるように、完全に自動化することができる。」

(翻訳7)付記
「【0142】
添付の請求項にもかかわらず、本明細書に記載される本開示は、以下の付記によっても定義される。
・・・
64.検出フィールドでフローサイトメータのフローストリームの1つまたは複数の画像を捕捉するステップと、
フローストリームが捕捉画像に存在しないと判断するステップと、
フローストリームが捕捉画像に存在することが予想されるかどうかを判断するため、ユーザによって入力されたフローサイトメータのパラメータを評価するステップと、
フローサイトメータの機能障害を示すユーザへの警告を生成するステップと
を含む方法。
65.機能障害はノズルの詰まりである付記64に記載の方法。
66.検出フィールドは、フローストリームのブレイクオフポイントの上流のフローストリームを含む付記64に記載の方法。
67.検出フィールドにおけるフローストリームは連続的である付記64に記載の方法。
68.フローサイトメータが開口されたフローセルのノズルオリフィスを備えることを入力するステップをさらに含む付記64に記載の方法。
・・・
116.フローサイトメータを構成するためのシステムであって、
プロセッサと動作可能に結合されたメモリを有するプロセッサを備え、メモリは、その上に格納された命令を含み、命令は、
検出フィールドでフローサイトメータのフローストリームの1つまたは複数の画像を捕捉するための命令と、
フローストリームが捕捉画像に存在しないと判断するためのアルゴリズムと、
フローストリームが捕捉画像に存在することが予想されるかどうかを判断するため、ユーザによって入力されたフローサイトメータのパラメータを評価するためのアルゴリズムと、
フローサイトメータの機能障害を示すユーザへの警告を生成するための命令と
を含むシステム。
117.機能障害はノズルの詰まりである付記116に記載のシステム。
118.検出フィールドは、フローストリームのブレイクオフポイントの上流のフローストリームを含む付記116に記載のシステム。
119.検出フィールドにおけるフローストリームは連続的である付記116に記載のシステム。
120.入力されたパラメータは、フローサイトメータが開口されたフローセルのノズルオリフィスを有することを示すことを含む付記116に記載のシステム。」

(翻訳8)図1


(翻訳9)図2


(翻訳10)図3


第5 判断
令和元年9月27日付けで手続補正された請求項1に記載の「前記フローストリームが前記捕捉画像に存在しないことが予想される、ユーザにより入力された命令を受け取り、前記捕捉画像からフローストリームが前記フロー経路内に存在すると判断された場合に警告を生成する」は、本件補正により「前記フローストリームが前記捕捉画像に存在しないことが予想される、ユーザにより入力された命令を受け取り、前記命令は、前記検出フィールドにフローストリームを形成することなく前記フローストリームが廃液容器に誘導されることを有し、前記捕捉画像からフローストリームが前記フロー経路内に存在すると判断された場合に警告を生成する」と補正された。
そして、本願発明1は、令和元年9月27日付け手続補正書でした「前記フローストリームが前記捕捉画像に存在しないことが予想される、ユーザにより入力された命令を受け取り、」「前記捕捉画像からフローストリームが前記フロー経路内に存在すると判断された場合に警告を生成する」と補正する補正事項を含むものである。本願発明7及び8も同様の補正事項を含むものである。
そこで、本件補正によりなされた本願発明1、7及び8に係る補正事項が、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでないか、以下、検討する。

1 翻訳文等から把握できる技術的事項について

(1)フローサイトメータ
段落【0087】、【0103】などの記載や図2のフローチャートによれば、「オープンな分取可能なストリームを作成する「分取ノズル」と、オープンな分取可能なストリームを作成せず、分析のためだけに使用される「クローズドループノズル」とのいずれかを使用するフローサイトメータにおいて、セットアップ時の分取パラメータを調整するために、前記「分取ノズル」を設置した後にフローが開始され、カメラで画像を収集し、フローストリームが画像に存在するかを判断することを含むこと」(以下「技術的事項1」という。)を読み取ることができる。

(2)フローサイトメータにおけるプロセッサの主な機能
段落【0071】、【0087】、【0119】などの記載によれば、「フローストリームが画像に存在することが予想される、「分取ノズル」を設置することがユーザにより入力された命令を受け取り、前記画像からフローストリームがフロー経路内に存在しないと判断した場合には、機能障害についての警告を生成すること」(以下「技術的事項2」という。)と、「フローストリームが画像に存在しないことが予想される、「クローズドループノズル」を設置することがユーザにより入力された命令を受け取った場合には、機能障害についての警告を生成しないこと」(以下「技術的事項3」という。)とを読み取ることができる。

(3)付記
独立形式の64.の方法及び116.のシステムについてのいずれの記載からも、「フローストリームが捕捉画像に存在することが予想され」、「フローストリームが捕捉画像に存在しないと判断」した場合、「機能障害を示すユーザへの警告を生成する」こと、すなわち技術的事項2に対応する事項について読み取ることができる。

(4)特許請求の範囲の記載
独立形式の請求項1のシステムには、プロセッサについて、
「プロセッサと動作可能に結合されたメモリを有するプロセッサであって、前記メモリは、前記フローストリームの1つまたは複数の特性を決定し、前記フローストリームの前記1つまたは複数の特性に対応するデータ信号を生成するという、その上に格納された命令を含む、」「プロセッサは、前記データ信号に応答して前記フローサイトメータの1つまたは複数のパラメータを自動的に調整するように構成され、
前記プロセッサは、
a)前記1つまたは複数の画像から前記フローストリームの空間位置を決定し、前記フローストリームの前記空間位置に対応するデータ信号を生成するか、
b)前記1つまたは複数の画像から前記フローストリームの物理的寸法を決定し、前記フローストリームの前記物理的寸法に対応するデータ信号を生成するか、または、
c)前記捕捉画像における前記フローストリームの有無を判断し、前記フローストリームが前記捕捉画像に存在することが予想されるかどうかを判断するために前記フローサイトメータのパラメータを評価し、前記予想されたパラメータと前記捕捉画像が一致しない場合に示す警告を生成する
ように構成されている」ことが特定されている。
ここで、a)?c)は、「前記データ信号に応答して前記フローサイトメータの1つまたは複数のパラメータを自動的に調整するように構成され」るものであって、「前記データ信号」は、「フローストリームの前記1つまたは複数の特性に対応するデータ信号」であるから、a)?c)は、フローストリームが存在することを前提とするものである。
この前提にたつと、c)に記載の「前記予想されたパラメータ」は、前記フローストリームが前記捕捉画像に存在することが予想されることを判断するために評価されたパラメータ、つまり、フローストリームが存在することが予想されるという判断結果を与えるパラメータであると理解できることから、独立形式の請求項1のシステム発明の記載からは、フローストリームが画像に存在することが予想される場合の警告である技術的事項2に対応する事項について読み取ることができる。
また、独立形式の請求項10、15の方法発明の記載からも、同様の理由で、技術的事項2に対応する事項について読み取ることができる。

2 上記補正事項について
上記1(1)?(4)のとおり、翻訳文等には、警告に関し、【0120】「フローストリームが不在であると判断され、フローストリームが予想される場合(通常の使用の間など)、可能な機器の機能障害(例えば、ノズルの詰まり)に警告をユーザに伝えることができる。」(技術的事項2)との記載があり、また、【0087】「クローズドループノズルが検知される場合、カメラによるストリーム画像は予想されず、したがって、ストリーム画像が見られない場合にノズルの詰まりが誤って報告されることはない。」(技術的事項3)との記載がある。
一方、上記補正事項は、「前記命令は、前記検出フィールドにフローストリームを形成することなく前記フローストリームが廃液容器に誘導されることを有」すること、例えばクローズドループノズルを設置することを前提にしたものであって、「捕捉画像からフローストリームが前記フロー経路内に存在すると判断された場合に警告を生成する」ものである。つまり、クローズドループノズルが検知された場合に、翻訳文等から読み取れるのは、フローストリーム画像が見られない場合に、ノズルの詰まりが誤って報告されないことが読み取れるだけで、フローストリーム画像が見られた場合に、警告を生成することは読み取れない。
そして、翻訳文等には、翻訳1?10以外のその他の記載をみても、上記補正事項について記載も示唆もなく、とりわけ、上記補正事項の「捕捉画像からフローストリームが前記フロー経路内に存在すると判断された場合に警告を生成する」ことについては、技術的事項3の警告を生成しない条件に反する事項であるから、上記補正事項が自明な事項であるとは到底いえない。
してみると、本件補正によりなされた本願発明1に係る上記補正事項は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものに該当するから、翻訳文等の記載した事項の範囲内においてなされたものではない。また、本願発明7及び8も同様の補正事項を含むものであるから、本件補正によりなされた本願発明7及び8に係る補正事項は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものに該当するから、翻訳文等の記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

3 請求人の主張について
令和2年8月20日付け意見書において、請求人は、「フローストリームの不在がユーザの関心にもたらされるいくつかの実施の形態を説明するのではなく、平成27年10月2日付けの国内書面に添付した旧請求項1における上記該当箇所(当審注:「プロセッサが、「前記フローストリームが前記捕捉画像に存在することが予想されるかどうかを判断するために前記フローサイトメータのパラメータを評価し、前記予想されたパラメータと前記捕捉画像が一致しない場合に示す警告を生成する」ように構成されていること」)は、フローストリームの存在が予想されていない(言い換えると、不在が予想されている)場合にその存在がユーザの関心にもたらされる実施の形態を説明している。」と主張しているが、上記主張については上記1の(4)で検討したとおりであり、翻訳文等には、上記補正事項の「捕捉画像からフローストリームが前記フロー経路内に存在すると判断された場合に警告を生成する」ことについて記載も示唆もなく、自明な事項でもないことから、請求人の上記主張は採用できない。

第6 まとめ
以上のとおり、令和2年8月20日付け手続補正書でした、本願発明1、7及び8に係る補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてなされたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものでない。
よって、本願は、拒絶すべきものである。



 
別掲
 
審理終結日 2020-10-19 
結審通知日 2020-10-20 
審決日 2020-11-02 
出願番号 特願2016-507688(P2016-507688)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 裕司  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
渡戸 正義
発明の名称 細胞分取のための自動セットアップ  
代理人 河野 登夫  
代理人 河野 英仁  

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