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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1372262
審判番号 不服2019-16858  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-13 
確定日 2021-03-18 
事件の表示 特願2018- 73059「加熱蒸散用水性殺虫剤組成物、及び加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月 5日出願公開、特開2018-104475〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年2月29日(優先権主張 2015年3月5日(JP)日本国、2015年6月8日(JP)日本国)を国際出願日として出願した特願2017-503460号の一部を平成30年4月5日に新たな出願としたものであって、平成30年4月5日に上申書が提出され、令和1年5月7日付け拒絶理由通知に対して令和1年7月8日受付け意見書が提出されるとともに同年同月9日受付け手続補足書が提出された後、同年9月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和1年12月13日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって、
メトフルトリンを0.1?3.0質量%と、これの感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノアルキルエーテルを10?70質量%と、水とを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。」

第3 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由1は、本願発明は、次に示す引用文献1?3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないというものである。
<引用文献一覧>
1.特開2005-095107号公報
2.中国特許出願公開第102742572号明細書
3.特開2012-176947号公報

第4 当審の判断
1 引用文献1に記載された発明を引用発明とする原査定の拒絶の理由1について
(1)引用文献1の記載事項
本願の優先日前に頒布された引用文献1には、以下の事項が記載されている。
記載事項(1-1)
「【請求項1】
殺虫成分として、一般式(I)
【化1】

(式中、X及びYは同一又は相異なって水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はトリフルオロメチル基を表し、Zは水素原子、メチル基又はメトキシメチル基を表す)で表されるフッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物から選ばれた1種又は2種を含む薬液が収容された薬液容器、該薬液を吸液する吸液芯、及び該吸液芯を加熱して薬液を蒸散させる発熱体を備え、前記発熱体を構成する中空筒状の放熱筒体内壁の高さを8?12mm、かつ表面部の温度を120?150℃とし、しかもこの放熱筒体内壁に対向して位置する前記吸液芯の受熱部先端上方の中空筒状部分の体積が300mm^(3)?800mm^(3)になるようにしたことを特徴とする加熱蒸散装置。
【請求項2】
薬液が、殺虫成分を0.2?2.0重量%、100?180℃の加熱温度で蒸散する界面活性剤を10?80重量%、及び水を18?88重量%含有する水性薬液であることを特徴とする請求項1に記載の加熱蒸散装置。」

記載事項(1-2)
「【背景技術】
【0002】
従来より、蚊成虫の駆除を目的として薬剤を加熱蒸散させる方式としては、いわゆる蚊取り線香や電気蚊取りマットのほか、液体式電気蚊取り(リキッド)が使用されている。……。リキッドは、製剤化に用いる溶剤が有機溶剤か水であるかによって油性リキッドもしくは水性リキッドに区別されているが、近年、火気に対する安全性や環境に対する配慮から水性リキッドが増えつつある。そして、その殺虫成分としては、電気蚊取りマットと同様、長年にわたりフラメトリン、アレスリン及びプラレトリンが主流を占めてきた。
最近、新しいピレスロイド系殺虫成分としてトランスフルトリンやメトフルトリンが導入され、リキッドへの適用も検討されている。」

記載事項(1-3)
「【0007】
本発明で用いられる殺虫成分は、一般式(I)
【化2】

(式中、X及びYは同一又は相異なって水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はトリフルオロメチル基を表し、Zは水素原子、メチル基又はメトキシメチル基を表す)で表されるフッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物から選ばれた1種又は2種であり、従来のフラメトリン、アレスリン及びプラレトリンに比べて蒸気圧が高く、蚊、ハエ、ゴキブリなどの害虫に対する基礎殺虫効力も優れている。
いずれの殺虫成分にも、酸成分の不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在するが、それらの各々や任意の混合物も本発明に包含されることはもちろんである。
【0008】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、2,3,5,6-テトラフルオロベンジル-クリサンテマート(以後、化合物Aと称す)、2,3,5,6-テトラフルオロベンジル-2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Bと称す)、2,3,5,6-テトラフルオロベンジル-2,2-ジメチル-3-(2,2-ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート(トランスフルトリン:以後、化合物Cと称す)、4-メチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル-クリサンテマート(以後、化合物Dと称す)、4-メチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル-2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Eと称す)、4-メチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル-2,2-ジメチル-3-(2,2-ジフルオロビニル)シクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Fと称す)、4-メトキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル-クリサンテマート(以後、化合物Gと称す)、4-メトキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル-2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(メトフルトリン:以後、化合物Hと称す)、及び4-メトキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル-2,2-ジメチル-3-(2-クロロ-2-トリフルオロメチルビニル)シクロプロパンカルボキシレート(以後、化合物Iと称す)をあげることができる。
【0009】
本発明では、薬液中の殺虫成分濃度は、0.2?2.0重量%の範囲に設定される。0.2重量%未満であると当然のことながら殺虫効力が不足し、一方2.0重量%を超えると殺虫成分の蒸散性能を安定化させるのが難しくなる傾向がある。
【0010】
本発明の加熱蒸散装置に供される薬液は、水性薬液であっても、油性薬液であってもよいが、引火性の問題を解消できる点で水性薬液が好ましい。
水性薬液は、殺虫成分を0.2?2.0重量%、100?180℃の加熱温度で蒸散する界面活性剤を10?80重量%、好ましくは45?70重量%、及び水を18?88重量%、好ましくは28?53重量%含有してなり、可溶化状を呈するものが適している。界面活性剤としては、非イオン型のものが好ましく、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、多価アルコール部分エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ヘキサンジオールやペンタンジオールなどのアルカンジオールなどをあげることができる。特に好ましい具体例を示せば、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルがあげられる。」

記載事項(1-4)
「【0017】
かかる本発明の加熱蒸散装置を用いて防除しえる害虫としては、各種の有害昆虫、ダニ類等をあげることができ、特に有害飛翔性昆虫、すなわち、アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ、チカイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、ユスリカ類、イエバエ類、チョウバエ類、ノミバエ類、アブ類、ブユ類、ヌカカ類などがあげられる。」

記載事項(1-5)
「【実施例1】
……。
【0020】
化合物Hを0.5重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを70重量%、安定剤としてのBHTを0.2重量%、及び精製水を含有する60日用の水性薬液(2)45mLを内容積50mLのプラスチック製薬液容器1に収容し、中栓4を介して吸液芯3を装填した。なお、吸液芯3としては、タルク粉43重量部、生コークス粉30重量部、木粉6重量部、クレー19重量部、澱粉2重量部からなる粉体に水を加え混練、加圧押出し、風乾後、1000℃で焼成したもの(直径7mm、長さ64mmの丸棒)を用いた。
薬液容器1を加熱蒸散装置に取り付けるにあたり、吸液芯3は物理的に折れる心配がなく、吸液芯3と放熱筒体内壁6の間隙は1.5mmで、中空筒状部11の体積は470mm^(3)であった。
この加熱蒸散装置を6畳の部屋の中央に置き通電使用したところ、60日間(約700時間)にわたり安定した蒸散性能を示し、蚊に刺されることはなかった。」

(2)引用文献1に記載された発明
記載事項(1-5)には、実施例1として、「化合物Hを0.5重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを70重量%、安定剤としてのBHTを0.2重量%、及び精製水を含有する」水性薬液を収容した薬液容器を加熱蒸散装置に取り付けて通電使用したところ、60日間にわたり安定した蒸散性能を示し、蚊に刺されることはなかったことが記載されている。
この「化合物H」は、記載事項(1-3)(特に、段落0008)に「メトフルトリン」であることが示されており、これは、記載事項(1-1)及び記載事項(1-3)の一般式(I)で表され、記載事項(1-1)?記載事項(1-3)に加熱蒸散して用いることが記載されている殺虫成分に該当する。また、記載事項(1-5)に記載された実施例1では、「水性薬液」を加熱蒸散して用いたことにより、蚊に刺されることを防いだものと認められる。
したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」ともいう。)が記載されていると認められる。

(引用発明1)
「蚊類を防除するための加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって、
メトフルトリンを0.5重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを70重量%、安定剤としてのBHTを0.2重量%、及び精製水を含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。」

(3)本願発明と引用発明1との対比・判断
ア 本願発明と引用発明1との対比
本願発明における「これの感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノアルキルエーテル」にいう「これ」とは「メトフルトリン」を指す語と解されることから、「これの感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノアルキルエーテル」とは「メトフルトリンの感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノアルキルエーテル」の意味であると解される。
また、引用発明1に含まれる「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」は、「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「蚊類を防除するための加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって、
メトフルトリンを0.1?3.0質量%と、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルを10?70質量%と、水とを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。」である点で一致し、次の相違点(1-1)及び相違点(1-2)で一見相違する。

相違点(1-1)
加熱蒸散用水性殺虫剤組成物に含まれるジエチレングリコールモノアルキルエーテルについて、本願発明においては「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としているのに対し、引用発明1においてはその特定をしていない点。
相違点(1-2)
加熱蒸散用水性殺虫剤組成物について、本願発明では「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための」としているのに対し、引用発明1では「蚊類を防除するための」としている点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点(1-1)について
本願発明と引用発明1とは組成上の差異がないことから、含まれるジエチレングリコールモノアルキルエーテルの奏する作用は、当然、本願発明と引用発明1とで差異がないと認められる。
したがって、以下では、本願発明において「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」について「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことが、「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」の「未知の属性」の発見といえるかを検討する。

本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物並びにトランスフルトリン、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル及び水を含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散による蚊の防除効果を具体的に示す実施例及び比較例として、次のとおりの記載がある。

記載事項(本-1)
「【背景技術】
【0002】
蚊類等の飛翔害虫を防除するための飛翔害虫防除製品として、殺虫成分を含有する薬液に吸液芯を浸漬し、吸液された薬液を吸液芯の上部に導き、吸液芯を加熱することにより殺虫成分を大気中に蒸散させる方式を採用した、いわゆる「蚊取リキッド」が市販されている。蚊取リキッドの殺虫成分は、一般に、ピレスロイド系殺虫成分が使用されている。ピレスロイド系殺虫成分としては、従来は、プラレトリン、フラメトリン等が主流であったが、近年は、殺虫活性に優れたトランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン等の新しい成分が使用される傾向がある。」

記載事項(本-2)
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、蚊取リキッドが家庭での蚊類防除手段として広く浸透している現状を鑑みて、これまでの飛翔害虫防除製品に採用されている技術を見直し、鋭意検討を重ねた結果、各種界面活性剤の中でも、特に沸点が150?300℃であるグリコールエーテル系化合物が、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類に対しても特異的に有効であり、その作用を感受性低下対処助剤として活用できることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を有効に防除するために、ピレスロイド系殺虫成分と、これの感受性低下対処助剤とを含む有用な加熱蒸散用水性殺虫剤組成物、及び当該加熱蒸散用水性殺虫剤組成物を用いた加熱蒸散方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって、ピレスロイド系殺虫成分を0.1?3.0質量%と、これの感受性低下対処助剤として沸点が150?300℃である少なくとも一種のグリコールエーテル系化合物を10?70質量%と、水とを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。
(2)前記グリコールエーテル系化合物は、沸点が200?260℃である(1)に記載の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。
(3)前記グリコールエーテル系化合物は、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルである(1)又は(2)に記載の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。
(4)前記ジエチレングリコールモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである(3)に記載の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。
(5)前記ピレスロイド系殺虫成分は、トランスフルトリン、メトフルトリン、及びプロフルトリンからなる群から選択される少なくとも一種である(1)?(4)の何れか一に記載の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。
(6)前記ピレスロイド系殺虫成分は、トランスフルトリンである(5)に記載の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。
(7)(1)?(6)の何れか一に記載の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物に吸液芯の一部を浸漬し、吸液された前記加熱蒸散用水性殺虫剤組成物を吸液芯上部に導き60?130℃で加熱蒸散させる加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散方法。
(8)前記吸液芯の素材が、ポリエステル系繊維及び/又はポリアミド系繊維、或いは多孔質セラミックである(7)に記載の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散方法。」

記載事項(本-3)
「【0021】
〔実施例1〕
トランスフルトリンを0.9質量%、感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを50質量%、安定剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.1質量%、及び精製水を49質量%配合し、本発明にかかる実施例1の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物を調製した(下記表1参照)。
この加熱蒸散用水性殺虫剤組成物45mLをプラスチック製容器に充填し、中栓を介して吸液芯を装填した後、加熱蒸散装置(例えば、特許第2926172号等に開示された装置)に取り付けた。なお、吸液芯としては、ポリエステル系繊維を素材とし、直径7mm、長さ70mmの丸棒形状のものを用い、吸液芯上部の周囲に設置したリング状発熱体の設定温度を130℃とした。
……。
【0022】
〔実施例2?8、比較例1?6〕
実施例1に準じて、本発明にかかる実施例2?8の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物を調製し、これらを実施例1で使用したものと同じ加熱蒸散装置に装填して殺虫効力確認試験を実施した。また、比較のため、本発明の範囲外となる比較例1?6の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物を調製した。実施例1?8、及び比較例1?6における加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の組成、及び吸液芯の材質を下記表1に示す。
【0023】
実施例1?8は何れも、ピレスロイド系殺虫成分、沸点が150?300℃のグリコールエーテル系化合物(感受性低下対処助剤)、及び水を本発明の範囲で含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物である。これに対し、比較例1及び2は、溶剤として灯油を含む油性処方の殺虫剤組成物である。比較例1及び2の殺虫剤組成物の比重(約0.77)は、実施例1?8の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の比重(約1.0)よりも小さい。従って、殺虫剤組成物の蒸散量について、水性処方の実施例1及び2と油性処方の比較例1及び2とを対比すると、容量ベースでは両者の蒸散量は実質同一であるが、質量ベースでは水性処方の実施例1及び2の方が油性処方の比較例1及び2よりも蒸散量が大きくなる。ただし、有効成分(ピレスロイド系殺虫成分)の揮散量は、何れの処方も使用期間は60日であり、実施例1及び2と比較例1及び2とで実質的な差異はない。……。
【0024】
【表1】


【0025】
<殺虫効力試験>
各加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の効能を確認するため、以下に説明する殺虫効力試験を実施した。内径20cm、高さ43cmのプラスチック製円筒を2段に重ね、その上に16メッシュの金網で上下を仕切った内径20cm、高さ20cmの円筒(供試昆虫を入れる場所)をゴムパッキンを挟んで載せ、さらにその上に同径で高さ20cmの円筒を載せた。この4段重ねの円筒を台に載せた円板上にゴムパッキンを挟んで置いた。円板中央には5cmの円孔があり、この円孔の上に供試加熱蒸散装置を置き、通電してくん蒸した。通電4時間後、上部円筒に供試昆虫のネッタイシマカ雌成虫(ピレスロイド感受性タイ国DMS系統、又は感受性が低下したタイ国BS系統)約20匹を放ち、時間経過に伴い落下仰転した供試昆虫を数え、KT_(50)値を求めた。また、曝露20分後に全供試昆虫を回収して24時間後にそれらの致死率を調べた。試験結果を下記表2に示す。
【0026】
【表2】

……
【0029】
〔実施例9、比較例7〕
実施例1に準じ、トランスフルトリンを1.3質量%、感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを50質量%、安定剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.1質量%、及び精製水を48.6質量%配合し、本発明にかかる実施例9の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物を調製した。実施例9の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物は、90日用の長期使用タイプである。この加熱蒸散用水性殺虫剤組成物45mLをプラスチック製容器に充填し、中栓を介して吸液芯を装填したのち、加熱蒸散装置に取り付けた。なお、吸液芯としては、クレー、マイカ等の無機質粉体を黒鉛等の有機物質とともに混練し、直径7mm、長さ70mmの丸棒形状に成形後、焼成して得られたセラミック芯を用いた。また、吸液芯上部の周囲に設置したリング状発熱体の設定温度は128℃であった。
一方、トランスフルトリン1.69質量%(1.3w/v%)を灯油に溶解させたこと以外は実施例9と同様にして比較例7の油性処方の加熱蒸散用殺虫剤組成物を調製し、これを実施例9と同様の加熱蒸散装置に使用した。
実施例9及び比較例7の加熱蒸散装置について、以下の実地殺虫効力試験を実施した。
【0030】
<実地殺虫効力試験>
換気しない状態で6畳居室(25m^(3):2.7m×3.6m×高さ2.55m)の床にクラフト紙を敷き、中央に供試加熱蒸散装置を置いた。通電開始と同時に、供試昆虫のネッタイシマカ雌成虫(ピレスロイド感受性タイ国DMS系統、又は感受性が低下したタイ国BS系統)約100匹を放ち、時間経過に伴い落下仰転した供試昆虫を数え、KT_(50)値を求めた。また、2時間暴露後、全供試昆虫を清潔なプラスチック容器に移し、砂糖水を含ませた脱脂綿を与えた。約25℃で保存し、24時間後にそれらの致死率を調べた。試験結果を表3に示す。
【0031】
【表3】



記載事項(本-3)に示された実施例及び比較例の記載のうち、メトフルトリンを含む加熱蒸散用殺虫剤組成物の加熱蒸散による蚊の防除効果を示すものは、実施例2、6及び比較例2であり、トランスフルトリンを含む加熱蒸散用殺虫剤組成物の加熱蒸散による蚊の防除効果を示すものは、実施例1、3、4、5、9,比較例1、3、4及び7であると認められる。
トランスフルトリン、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル及び水を含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物は、本願発明の加熱蒸散用水性殺虫剤組成物とは異なるものではあるものの、本願明細書の発明の詳細な説明(特に、記載事項(本-1)及び記載事項(本-2))において、トランスフルトリンはメトフルトリンと同様の殺虫活性に優れた新しいピレスロイド系殺虫成分として記載されていることから、まず、トランスフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散による蚊の防除効果をみると、記載事項(本-3)の表2の「感受性が低下した系統」欄に記載される「[A]/[B]」と表1に記載される「蒸散量」とは、「蒸散量」の値が大きいほど「[A]/[B]」が大きくなるという関係にあり、具体的には、概ね、
[A]/[B]=2.4×「蒸散量」(質量ベース)-1.0
の関係にあることが分かる。
トランスフルトリンは、他のピレスロイド系殺虫成分に比べて非常に高い殺虫活性を有する、水に難溶性の油状物質である(必要であれば、「殺虫剤研究班のしおり」第74号,日本衛生動物学会殺虫剤研究班,10?20頁(2004年)を参照。)。トランスフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散による蒸散量が大きければ、トランスフルトリンの曝露が十分にされ、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類に対しても防除作用をある程度奏することは、技術常識に照らして明らかといえる。
一方、トランスフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物について、本願明細書の発明の詳細な説明には、「蒸散量」が等しく、かつ、「感受性低下対処助剤」の欄に記載された物質のみが異なるものの比較は記載されておらず、技術常識に照らしても、トランスフルトリンをジエチレングリコールモノアルキルエーテルと共存させれば、トランスフルトリンの曝露量が等しくても、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類に対して特異的に有効であるといえる根拠は見出せない。

メトフルトリンを含む加熱蒸散用殺虫剤組成物については、その加熱蒸散による蚊の防除効果を示すものは、実施例2、6及び比較例2(水性組成物ではなく油性組成物)の3例のみであるため、記載事項(本-3)の表2の「感受性が低下した系統」欄に記載される「[A]/[B]」と表1に記載される「蒸散量」との関係を直接論ずることはできない。
しかし、メトフルトリンは、トランスフルトリンと同様に、他のピレスロイド系殺虫成分に比べて非常に高い殺虫活性を有する、水に難溶性の油状物質である。(必要であれば、松尾憲忠 他,“新規ピレスロイド系殺虫剤メトフルトリン(SumiOne、エミネンス)の開発”,住友化学,第2005巻,第2号,4-16頁(2005年)(表題中「」は、原著では「○」中に「R」の字である。)(特に、7頁左欄13行?10頁右欄1行)、及び、氏原一哉 他,“家庭用殺虫剤メトフルトリンの開発”,日本農薬学会誌,第33巻,第2号,190-195頁(2008年)(特に、192頁左欄5行?右欄9行、194頁左欄13行?最終行)を参照。)また、本願明細書の発明の詳細な説明(特に、記載事項(本-1)及び記載事項(本-2))においても、メトフルトリンはトランスフルトリンと同様の殺虫活性に優れた新しいピレスロイド系殺虫成分として記載されている。
してみると、メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散による蚊の防除効果についても、「蒸散量」の値が大きいほど「[A]/[B]」が大きくなるという関係にあると推測されるところ、メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物について、記載事項(本-3)の表2の「感受性が低下した系統」欄に「[A]/[B]」が記載されている実施例2、6は、この推測と矛盾する結果を示すものではない。
メトフルトリンは、上記のとおり、他のピレスロイド系殺虫成分に比べて非常に高い殺虫活性を有する、水に難溶性の油状物質である。メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散による蒸散量が十分大きければ、メトフルトリンの曝露が十分にされ、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類に対しても防除作用をある程度奏することは、技術常識に照らして明らかといえる。
一方、メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物について、本願明細書の発明の詳細な説明には、「蒸散量」が等しく、かつ、「感受性低下対処助剤」の欄に記載された物質のみが異なるものの比較は記載されておらず、技術常識に照らしても、メトフルトリンをジエチレングリコールモノアルキルエーテルと共存させれば、メトフルトリンの曝露量が等しくても、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類に対して特異的に有効であるといえる根拠は見出せない。
したがって、本願発明において「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことは、メトフルトリンをジエチレングリコールモノアルキルエーテルと共存させれば、メトフルトリンの曝露量が等しくても、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類に対して特異的に有効であることを表現したものではなく、メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を含むものは、加熱蒸散による蒸散量が十分大きいことによりメトフルトリンの曝露が十分にされ、対象とする蚊類によらず防除作用を奏することを表現したものといえる。

請求人は審判請求書の「3.4 対比説明」の項において、「引用文献1では、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルが界面活性剤として用いられていることから、これを界面活性剤とは全く異なる「メトフルトリンの感受性低下対処助剤」とすることで、組成物の用途を「……」とすることについて、引用文献1に示唆されているとは言えない。」などと主張するが、上記のとおり、本願発明において「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことは、メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を含むものは、加熱蒸散による蒸散量が十分大きいことによりメトフルトリンの曝露が十分にされ、対象とする蚊類によらず防除作用を奏することを表現したものといえるところ、本願発明は、引用発明1と組成上の差異がないことから、当然、その加熱蒸散による蒸散量は引用発明1と等しく、対象とする蚊類に対するメトフルトリンの曝露の程度及び対象とする蚊類の防除作用も引用発明1と等しいと認められることから、相違点(1-1)に係る「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことは、「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」の「未知の属性」の発見であるということはできない。
したがって、相違点(1-1)は実質的な相違点ではない。

(イ)相違点(1-2)について
本願発明の「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための」は、引用発明1の「蚊類を防除するための」に対して、新たな用途を提供したものといえるかを検討する。
引用文献1には、「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」についての直接的記載はないが、記載事項(1-4)には、防除できる蚊類の具体例として「アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ、チカイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類」が挙げられている。
このうち、アカイエカ、チカイエカ、コガタアカイエカについては、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性の低下が日本国内でもみられることが、本願優先日及び引用文献1の公開日よりも前に頒布された文献である、富田隆史 他,“首都圏を中心としたウエストナイル熱媒介蚊の殺虫剤感受性試験:ピレスロイド剤抵抗性アカイエカ群の確認”,衛生動物,第55巻,別冊,71頁(2004年)、及び、安富和男 他,“沖縄県知念産コガタアカイエカの殺虫剤抵抗性,とくにピレスロイド剤に対する抵抗性の機構について”,衛生動物,第40巻,第4号,315-321頁(1989年)に記載されており、また、ネッタイシマカについては、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性の低下が海外でみられることが、本願優先日及び引用文献1の公開日よりも前に頒布された文献である、MILENA B.MAZZARRI, et al.,“CHARACTERIZATION OF RESISTANCE TO ORGANOPHOSPHATE, CARBAMATE, AND PYRETHROID INSECTICIDES IN FIELD POPULATIONS OF AEDES AEGYPTI FROM VENEZUELA.”,Journal of the American Mosquito Control Association., Vol.11, No.3, pp.315-322 (1995)に記載されている。
一方、引用文献1には、対象とする「蚊類」は「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」以外の蚊類に限られることを示す記載はない。
また、メトフルトリンは、上記(ア)において示したとおり、他のピレスロイド系殺虫成分に比べて非常に高い殺虫活性を有する、水に難溶性の油状物質である。メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散による蒸散量が十分大きければ、メトフルトリンの曝露が十分にされ、たとえ対象とする蚊類がピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類であっても、防除作用をある程度奏することは、技術常識に照らして明らかといえる。
したがって、引用発明1にいう「蚊類」は「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」以外の蚊類に限られるとすることはできない。

請求人は審判請求書の「3.4 対比説明」の項において、「「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」は少なくとも日本においては、ありふれた蚊類ではない。……。つまり、熱帯地域ではない日本においては、「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」は、熱帯地域のように存在しているわけではない。……。少なくとも日本においては、界面活性剤等としてジエチレングリコールモノアルキルエーテルを含有する組成物について、従来知られている用途は、「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性を有する蚊類を防除するため」の用途であり、本願発明における「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するため」という用途は、従来知られている用途とは異なる新たなものである。」などと主張する。
しかし、特許法第29条第1項各号にはいずれも「特許出願前に日本国内又は外国において……」と記載されていることからみても、「日本において従来知られている用途とは異なる用途」であれば「新たな用途」に該当すると解することはできず、請求人の上記主張は受け入れられない。
したがって、相違点(1-2)に係る「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための」としたことは、新たな用途を提供したものということはできない。
したがって、相違点(1-2)は実質的な相違点ではない。

(ウ)小括
以上、(ア)及び(イ)に示したとおり、相違点(1-1)及び相違点(1-2)はいずれも実質的な相違点ではなく、本願発明は引用発明1である。

2 引用文献2に記載された発明を引用発明とする原査定の拒絶の理由1について
(1)引用文献2の記載事項
本願の優先日前に頒布された引用文献2には、以下の事項が記載されている。(なお、原文は中国語であるので、邦訳で示す。)
記載事項(2-1)
「1.水性電熱液体蚊取りであって、以下の重量パーセントの各成分組成を特徴とする。
ピレスロイド系防蚊成分 0.1?1.8%;
グリコールエーテル系溶剤 45.0?80.0%;
酸化防止剤 0?0.6%;
共溶媒 0?0.5%;
イオン交換水 残量
2.前記ピレスロイド系防蚊成分は、25℃での蒸気圧が0.1mPaであるピレスロイド系物質の一種又は複数種を配合したものであることを特徴とする、請求項1に記載の水性電熱液体蚊取り。
3.前記ピレスロイド系防蚊成分は、メトフルトリン、トランスフルトリン、メパーフルトリン、プラレトリン、アレスリン、ジメフルトリン及びテフルメトリン、並びにそれらの光学異性体の一種又は複数種を配合したものであることを特徴とする、請求項2に記載の水性電熱液体蚊取り。
4.前記グリコールエーテル系溶剤は、20℃での蒸気圧が0.01mmHg以下であり、かつ、水と混和するアルコールエーテル類の一種又は複数種を配合したものであることを特徴とする、請求項1に記載の水性電熱液体蚊取り。
5.前記グリコールエーテル系溶剤は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びテトラエチレングリコールモノブチルエーテルの一種又は複数種を配合したものであることを特徴とする、請求項4に記載の水性電熱液体蚊取り。
6.前記酸化防止剤は、BHT、BHA又はTBHQであることを特徴とする、請求項1に記載の水性電熱液体蚊取り。
……。」(特許請求の範囲)

記載事項(2-2)
「技術分野
[0001] 本発明は環境保護型電熱液体蚊取りに関し、日用化学品の技術分野に属し、特に水性電熱液体蚊取りおよびその調製方法に関する。
……。
背景技術
[0002] 1966年に日本が最初の電熱液体蚊取りの製品を開発して以来、多くの技術的困難性の突破によって、同時に、電熱液体蚊取りの使用が簡便であり、薬効が安定しており、安全であるなどの特徴があることによって、この薬剤形状は全世界の消費者にとって蚊の防除の四大剤型の一つになった。我が国の電熱液体蚊取りは80年代の末期に出現し、その販売額は近頃では毎年25%程度の幅で増加している。しかし、その配合はすべて油性基剤型であり、すなわちアルカン系有機物を用いて溶媒とし、炭素鎖は一般的にC13?C16、C14?C19、C16?C21に分布しており、具体的に各石油会社名が見られる。
……。
[0003] 従来の電熱液体蚊取りの配合は、アルカン溶媒、ピレスロイド、酸化防止剤及びエッセンスなどの成分を混合し、撹拌した溶媒は均一相系を形成する。ただアルカン溶媒が組成の85%以上含まれる配合には、それによる以下の欠点が存在する:
[0004] 1、アルカン系溶媒は、石油の工業精留と水素化精化により得られるが、石油価格の近年の上昇につれて企業に一定のコスト圧力を引き起こす;
[0005] 2、アルカン溶媒は、精留などにより形成しするため、その炭素鎖の分布は広がり、特にそのうち低炭素鎖アルカン系炭化水素は揮発性有機物質すなわちVOCを形成し、消費者の日常の家庭生活中に電熱液体蚊取りの加熱蒸発による家庭環境汚染を引き起こす可能性があり、消費者の健康に一定の影響を及ぼす;
[0006] 3、アルカン溶媒は直火にあたると燃焼する可燃性液体に属し、輸送、倉庫貯蔵、使用する家庭に一定の消防リスクをもたらす。
[0007] 水性電熱液体蚊取りは、油性基剤のものに代わって、上記の問題をかなりの程度回避することができる。
……。
発明の内容
[0009]以上の解決を要する技術的課題に対し、本発明の1つの目的は熱力学、安定性、均一相系、薬効の安定性、揮発の持久性、VOCが含まれず燃えることのない環境保護型の水性電熱液体蚊取りを提供することにある。」

記載事項(2-3)
「[実施例11]
0.45%のメトフルトリン、20.00%のジエチレングリコールモノブチルエーテル、40.00%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル、10.00%のテトラエチレングリコールモノブチルエーテル、0.20%のBHAを混合して均一に攪拌し、29.35%のイオン交換水を添加し、再び均一に攪拌し、半完成品を得る。45g/瓶を充填し、栓をして、芯棒を挿入して完成品を得る。測定したところ、薬効体系安定性は要求どおりであり、優れた薬効等は720hr持続した。引火点なし。」(段落0056?0057)

(2)引用文献2に記載された発明
記載事項(2-3)には、実施例11として、「0.45%のメトフルトリン、20.00%のジエチレングリコールモノブチルエーテル、40.00%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル、10.00%のテトラエチレングリコールモノブチルエーテル、0.20%のBHAを混合して均一に攪拌し、29.35%のイオン交換水を添加し、再び均一に攪拌し」て得られた半完成品を瓶に充填し、栓をして、芯棒を挿入して完成品を得たことが記載されており、この半完成品は記載事項(2-1)に記載された「水性電熱蚊取り」に対応するものであって、記載事項(2-1)及び記載事項(2-2)から、蚊を防除するための加熱蒸散用水性殺虫剤組成物を意味すると認められる。
また、記載事項(2-3)において「%」で表記された数値を合計すると「100」になることから、記載事項(2-3)における「%」は「重量%」であると認められる。
したがって、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」ともいう。)が記載されていると認められる。

(引用発明2)
「蚊類を防除するための加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって、
メトフルトリン0.45重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを20.00重量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを40.00重量%、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルを10.00重量%、BHAを0.20重量%、及びイオン交換水を29.35重量%を含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。」

(3)本願発明と引用発明2との対比・判断
ア 本願発明と引用発明2との対比
本願発明における「これの感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノアルキルエーテル」にいう「これ」とは「メトフルトリン」を指す語と解されることから、「これの感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノアルキルエーテル」とは「メトフルトリンの感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノアルキルエーテル」の意味であると解される。
また、本願発明は、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル及びBHAを含む態様を除外していない。
また、引用発明2に含まれる「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」は、「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明2とは、
「蚊類を防除するための加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって、
メトフルトリンを0.1?3.0質量%と、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルを10?70質量%と、水とを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。」である点で一致し、次の相違点(2-1)及び相違点(2-2)で一見相違する。

相違点(2-1)
加熱蒸散用水性殺虫剤組成物に含まれるジエチレングリコールモノアルキルエーテルについて、本願発明においては「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としているのに対し、引用発明2においてはその特定をしていない点。
相違点(2-2)
加熱蒸散用水性殺虫剤組成物について、本願発明では「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための」としているのに対し、引用発明2では「蚊類を防除するための」としている点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点(2-1)について
本願発明と引用発明2とは組成上の差異がないことから、含まれるジエチレングリコールモノアルキルエーテルの奏する作用は、当然、本願発明と引用発明2とで差異がないと認められる。
したがって、以下では、本願発明において「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」について「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことが、「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」の「未知の属性」の発見といえるかを検討する。

上記1(3)イ(ア)において示したとおり、本願発明において「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことは、メトフルトリンをジエチレングリコールモノアルキルエーテルと共存させれば、メトフルトリンの曝露量が等しくても、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類に対して特異的に有効であることを表現したものではなく、メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を含むものは、加熱蒸散による蒸散量が十分大きいことによりメトフルトリンの曝露が十分にされ、対象とする蚊類によらず防除作用を奏することを表現したものといえる。

請求人は審判請求書の「3.4 対比説明」の項において、「引用文献2では、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルが溶剤として用いられていることから、これを溶剤とは全く異なる「メトフルトリンの感受性低下対処助剤」とすることで、組成物の用途を「……」とすることについて、引用文献2に示唆されているとは言えない。」などと主張するが、上記のとおり、本願発明において「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことは、メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を含むものは、加熱蒸散による蒸散量が十分大きいことによりメトフルトリンの曝露が十分にされ、対象とする蚊類によらず防除作用を奏することを表現したものといえるところ、本願発明は、引用発明2と組成上の差異がないことから、当然、その加熱蒸散による蒸散量は引用発明2と等しく、対象とする蚊類に対するメトフルトリンの曝露の程度及び対象とする蚊類の防除作用も引用発明2と等しいと認められることから、相違点(2-1)に係る「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことは、「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」の「未知の属性」の発見であるということはできない。
したがって、相違点(2-1)は実質的な相違点ではない。

(イ)相違点(2-2)について
本願発明の「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための」は、引用発明2の「蚊類を防除するための」に対して、新たな用途を提供したものといえるかを検討する。
引用文献2には、「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」についての直接的記載はないが、ネッタイシマカについて、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性の低下が海外でみられることが、本願優先日及び引用文献2の公開日よりも前に頒布された文献である、MILENA B.MAZZARRI, et al.,“CHARACTERIZATION OF RESISTANCE TO ORGANOPHOSPHATE, CARBAMATE, AND PYRETHROID INSECTICIDES IN FIELD POPULATIONS OF AEDES AEGYPTI FROM VENEZUELA.”,Journal of the American Mosquito Control Association., Vol.11, No.3, pp.315-322 (1995)、及び、Feng Cui, et al.,“Review Insecticide resistance in vector mosquitoes in China”, Pest Management Science, Vol.62, pp.1013-1022 (2006)に記載されている。
一方、引用文献2には、対象とする「蚊類」は「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」以外の蚊類に限られることを示す記載はない。
また、メトフルトリンは、上記1(3)イ(ア)において示したとおり、他のピレスロイド系殺虫成分に比べて非常に高い殺虫活性を有する、水に難溶性の油状物質である。メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散による蒸散量が十分大きければ、メトフルトリンの曝露が十分にされ、たとえ対象とする蚊類がピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類であっても、防除作用をある程度奏することは、技術常識に照らして明らかといえる。
したがって、引用発明2にいう「蚊類」は「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」以外の蚊類に限られるとすることはできない。
請求人は審判請求書の「3.4 対比説明」の項において、「「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」は少なくとも日本においては、ありふれた蚊類ではない。……。つまり、熱帯地域ではない日本においては、「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」は、熱帯地域のように存在しているわけではない。……。少なくとも日本においては、界面活性剤等としてジエチレングリコールモノアルキルエーテルを含有する組成物について、従来知られている用途は、「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性を有する蚊類を防除するため」の用途であり、本願発明における「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するため」という用途は、従来知られている用途とは異なる新たなものである。」などと主張する。
しかし、特許法第29条第1項各号にはいずれも「特許出願前に日本国内又は外国において……」と記載されていることからみても、「新たな用途」を「日本において従来知られている用途とは異なる用途」と解することはできず、請求人の上記主張は受け入れられない。
したがって、相違点(2-2)に係る「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための」としたことは、新たな用途を提供したものということはできない。
したがって、相違点(2-2)は実質的な相違点ではない。

(ウ)小括
以上、(ア)及び(イ)に示したとおり、相違点(2-1)及び相違点(2-2)はいずれも実質的な相違点ではなく、本願発明は引用発明2である。

3 引用文献3に記載された発明を引用発明とする原査定の拒絶の理由1について
(1)引用文献3の記載事項
本願の優先日前に頒布された引用文献3には、以下の事項が記載されている。
記載事項(3-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫防除成分、グリコールエーテル及び水を含有する水性害虫防除組成物と、該組成物に浸漬されるように設けられた吸液芯とを備える加熱蒸散用害虫防除材であって、グリコールエーテルの該組成物全量に対する含有量をa(重量%)とし、該芯の空隙率をb(%)としたときに、aとbとが下式を満たすことを特徴とする加熱蒸散用害虫防除材。
式:0.17≦a/b≦2.5
……。
【請求項3】
グリコールエーテルが、エチレングリコール系エーテル及びプロピレングリコール系エーテルからなる群より選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項4】
グリコールエーテルが、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びプロピレングリコールモノプロピルエーテルからなる群より選ばれる1種以上である請求項1?3いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項5】
グリコールエーテルの含有量が、組成物全量に対して10?50重量%である請求項1?4いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項6】
害虫防除成分が、ピレスロイド化合物である請求項1?5いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項7】
害虫防除成分が、式(1)

〔式中、R^(1)及びR^(2)は同一又は相異なり水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又は塩素原子を表し、R^(3)は水素原子、メチル基又はメトキシメチル基を表す。〕
で示されるエステル化合物である請求項1?6いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項8】
式(1)示されるエステル化合物が、[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メチルフェニル]メチル=2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート、(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)メチル=3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル]メチル=3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2-ジメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート及び[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル]メチル=3-(3,3,3-トリフルオロ-1-プロペニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレートからなる群より選ばれる1種以上である請求項7に記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項9】
水の含有量が、組成物全量に対して20?85重量%である請求項1?8いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
……。」

記載事項(3-2)
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安定した蒸散を可能とし、安定した害虫防除効果をあげることのできる加熱蒸散用害虫防除材及び加熱蒸散害虫防除方法を提供することを課題とする。」

記載事項(3-3)
「【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長時間にわたって安定して、水性害虫防除組成物を蒸散させることができ、安定した害虫防除効果を得ることができる。」

記載事項(3-4)
「【0010】
〔水性害虫防除組成物〕
本発明の水性害虫防除組成物(以下、本発明組成物と記す。)は、害虫防除成分、グリコールエーテル及び水を含有するものである。
本発明組成物は、例えば害虫防除成分、グリコールエーテル及び水、必要により後述のグリコール、増粘剤、界面活性剤、分散剤、安定化剤、香料、防腐剤、共力剤等を室温下又は加温下に混合、溶解することにより調製される。
【0011】
本発明に用いられる害虫防除成分としては、殺虫剤成分、忌避剤成分、昆虫成長制御剤成分等の害虫防除活性を有する化合物が挙げられる。かかる化合物としては、ピレスロイド化合物、有機リン化合物、カーバメイト化合物及びネオニコチノイド化合物が挙げられ、好ましくはピレスロイド化合物が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられるピレスロイド化合物としては、好ましくは、下式(1)

〔式中、R^(1)及びR^(2)は同一又は相異なり、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又は塩素原子を表し、R^(3)は水素原子、メチル基又はメトキシメチル基を表す。〕
で示されるエステル化合物であり、具体的には[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(以下、本化合物Aと記す。)、[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メチルフェニル]メチル=2,2-ジメチル-3-(1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(以下、本化合物Bと記す。)、(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)メチル=3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本化合物Cと記す。)、[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル]メチル=3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2-ジメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート及び[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル]メチル=3-(3,3,3-トリフルオロ-1-プロペニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレートが挙げられる。該化合物は、例えば、特開2000-63329号公報、特許第2647411号明細書、特開昭57-123146号公報、特開2001-11022号公報、特開平11-222463号公報、特開2002-145828号公報に記載される化合物であり、該公報に記載の方法により製造することができる。
該化合物には、シクロプロパン環上に存在する2つの不斉炭素原子に由来する異性体、及び二重結合に由来する異性体が存在する場合があるが、本発明には活性な異性体を任意の比率で含有するものを使用することができる。
また、本発明においては、害虫防除成分は、1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0013】
本発明組成物における害虫防除成分の含有量は、本発明組成物全量に対して、通常0.01?5重量%、好ましくは0.05?4重量%、さらに好ましくは0.1?3重量%である。
【0014】
本発明に用いられるグリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコール系エーテル、プロピレングリコール系エーテル、ジアルキルグリコール系エーテルが挙げられる。
エチレングリコール系エーテルとしては、例えば、下式(2)

〔式中、R^(4)はメチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、アリル基、フェニル基又はベンジル基を表し、nは1?10の整数のいずれかを表す。〕
で示されるグリコールエーテルが挙げられ、具体的には例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテルが挙げられる。
プロピレングリコール系エーテルとしては、例えば、下式(3)

〔式中、R^(5)はメチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基又はアリル基を表し、mは1?3の整数のいずれかを表す。〕
で示されるグリコールエーテルが挙げられ、具体的には例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
ジアルキルグリコール系エーテルとしては、例えば、下式(4)

〔式中、R^(6)及びR^(7)は同一又は相異なり、メチル基、エチル基又はブチル基を表し、mは前記と同じ意味を表す。〕
で示されるグリコールエーテルが挙げられ、具体的には例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
本発明においては、本発明組成物中での安定性の点から、好ましくはエチレングリコール系エーテルが用いられる。また、エチレングリコール系エーテルにおいては、害虫防除成分及び水との溶解性の点で、好ましくはエチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルが用いられる。
なお、本発明においては、グリコールエーテルは、1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0015】
本発明組成物におけるグリコールエーテルの含有量a(重量%)は、本発明組成物全量に対して通常10?50重量%、好ましくは10?45重量%、さらに好ましくは15?40重量%である。
【0016】
本発明組成物における水の含有量は、本発明組成物全量に対して、通常20?85重量%、好ましくは40?80重量%、さらに好ましくは50?75重量%である。
【0017】
本発明組成物において、グリコールエーテルと水との重量比は通常1:0.4?1:8.5の範囲、好ましくは1:1?1:8.5の範囲、さらに好ましくは1:1.4?1.3.6の範囲である。」

記載事項(3-5)
「【0043】
本発明により防除できる害虫としては、例えば昆虫やダニ等の節足動物が挙げられ、具体的には例えば以下の害虫等が挙げられる。
……
【0045】
双翅目害虫:アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、シナハマダラカ、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)等のハマダラカ類、ユスリカ類、イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、タネバエ、タマネギバエ等のハナバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ノミバエ類、アブ類、ブユ類、サシバエ類、ヌカカ類等」

記載事項(3-6)
「【0061】
製造例4
本化合物A0.15部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル29.85部及び水70部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(4)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(4)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が50%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(4)を得た。」

記載事項(3-7)
「【0076】
次に試験例を示す。
なお、以下の試験例においては、本化合物A、B及びCとして、以下の化合物をそれぞれ使用した。
本化合物A:[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル]メチル=(1R)-トランス-2,2-ジメチル-3-((Z)-1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート
本化合物B:[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メチルフェニル]メチル=(1R)-トランス-2,2-ジメチル-3-((Z)-1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート
本化合物C:(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)メチル=(1R)-トランス-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート
【0077】
試験例1
害虫防除材(1)に、図1に示すリング状ヒーターを設置して、吸液型加熱蒸散害虫防除装置を得た。図1に示すリング状ヒーター2に通電し、吸液芯の頂部周囲面を130℃に加熱した。加熱方法は、8時間連続加熱したあと、16時間加熱を止め、再び8時間連続加熱し、これを繰り返した。加熱開始後1、7及び14日目において、1時間あたりの本化合物Aの蒸散量を測定した。害虫防除材(1)の代わりに、害虫防除材(2)、(3)、(4)及び(5)、並びに、比較防除材(1)及び(2)を用いて、同様の試験を行い、本化合物Aの蒸散量を測定した。
なお、本化合物Aの蒸散量は、ヒーター全体にガラスファネルをかぶせ、ファネルに接続したシリカゲルカラムにより空気を吸収捕集し、その後、シリカゲルカラムをクロロホルムで抽出し、抽出液を濃縮したのち、ガスクロマトグラフにて内部標準法により本化合物Aを定量分析して求めた。
結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
試験例2
害虫防除材(5)に、図1に示すリング状ヒーターを設置して、吸液型加熱蒸散害虫防除装置を得た。図1に示すリング状ヒーター2に通電し、吸液芯の頂部周囲面を130℃に加熱した。4時間後、加熱を止め、該吸液型加熱蒸散害虫防除装置を、3.0m×4.0m×2.3mの直方体の試験室内(28m^(3))の床中央部に設置した。再度加熱し、加熱後すぐに、アカイエカ雌成虫約100匹を室内に放った。放虫後、一定時間後にノックダウンしたアカイエカの数を調査し、得られたデータからKT50(供試虫の50%がノックダウンするのに要する時間)を求めた。害虫防除材(5)の代わりに、害虫防除材(6)及び(7)、並びに、比較防除材(3)を用いて、同様の試験を行い、KT50を求めた。
結果を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
試験例3
害虫防除材(8)に、図1に示すリング状ヒーターを設置して、吸液型加熱蒸散害虫防除装置を得た。図1に示すリング状ヒーター2に通電し、吸液芯の頂部周囲面を130℃にて加熱した。20時間後、加熱を止め、該吸液型加熱蒸散害虫防除装置を、3.0m×4.0m×2.3mの直方体の試験室内(28m^(3))の床中央部に設置した。再度加熱し、加熱後すぐにアカイエカ雌成虫約100匹を室内に放った。放虫後、60分後にノックダウンしたアカイエカの数を調査し、60分後のノックダウン率を求めた。
害虫防除材(8)の代わりに、害虫防除材(9)及び(13)、並びに、比較防除材(1)を用いて、同様の試験を行い、60分後のノックダウン率を求めた。
結果を表4に示す。
【0082】
【表4】



(2)引用文献3に記載された発明
記載事項(3-1)?記載事項(3-4)には、特定構造を有するピレスロイド化合物である害虫防除成分、グリコールエーテル及び水を含有する加熱蒸散用害虫防除組成物が記載されている。
記載事項(3-7)には、「本化合物A」が「[2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル]メチル=(1R)-トランス-2,2-ジメチル-3-((Z)-1-プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート」であることが記載されており、これは記載事項(3-1)?記載事項(3-4)に記載された特定構造を有するピレスロイド化合物に属するメトフルトリンに該当する。(必要であれば、上記記載事項(1-3)、松尾憲忠 他,“新規ピレスロイド系殺虫剤メトフルトリン(SumiOne、エミネンス)の開発”,住友化学,第2005巻,第2号,4-16頁(2005年)(表題中「」は、原著では「○」中に「R」の字である。)(特に、7頁左欄13行?10頁右欄1行)、及び、氏原一哉 他,“家庭用殺虫剤メトフルトリンの開発”,日本農薬学会誌,第33巻,第2号,190-195頁(2008年)(特に、192頁左欄5行?右欄9行、194頁左欄13行?最終行)を参照。)
記載事項(3-5)には、記載事項(3-1)?記載事項(3-4)に記載された加熱蒸散用害虫防除組成物により防除できる害虫の具体例として、アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、シナハマダラカ、ガンビエハマダラカ等のハマダラカ類が挙げられ、記載事項(3-6)には、記載事項(3-7)に示された「本化合物A」0.15部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル29.85部及び水70部を混合し、攪拌することにより、液状組成物を得たことが記載されており、記載事項(3-7)には、記載事項(3-6)で得た組成物を、アカイエカ雌成虫に対して、加熱蒸散して防除作用を確認したことが記載されている。
また、記載事項(3-6)において「部」で表記された数値を合計すると「100」になることから、記載事項(3-6)における「部」は「重量%」であると認められる。
したがって、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」ともいう。)が記載されていると認められる。

(引用発明3)
「蚊類を防除するための加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって、
メトフルトリン0.15重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル29.85重量%及び水70重量%を含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。」

(3)本願発明と引用発明3との対比・判断
ア 本願発明と引用発明3との対比
本願発明における「これの感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノアルキルエーテル」にいう「これ」とは「メトフルトリン」を指す語と解されることから、「これの感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノアルキルエーテル」とは「メトフルトリンの感受性低下対処助剤としてジエチレングリコールモノアルキルエーテル」の意味であると解される。
また、引用発明3に含まれる「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」は、「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明3とは、
「蚊類を防除するための加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって、
メトフルトリンを0.1?3.0質量%と、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルを10?70質量%と、水とを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物。」である点で一致し、次の相違点(3-1)及び相違点(3-2)で一見相違する。

相違点(3-1)
加熱蒸散用水性殺虫剤組成物に含まれるジエチレングリコールモノアルキルエーテルについて、本願発明においては「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としているのに対し、引用発明3においてはその特定をしていない点。
相違点(3-2)
加熱蒸散用水性殺虫剤組成物について、本願発明では「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための」としているのに対し、引用発明3では「蚊類を防除するための」としている点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点(3-1)について
本願発明と引用発明3とは組成上の差異がないことから、含まれるジエチレングリコールモノアルキルエーテルの奏する作用は、当然、本願発明と引用発明3とで差異がないと認められる。
したがって、以下では、本願発明において「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」について「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことが、「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」の「未知の属性」の発見といえるかを検討する。

上記1(3)イ(ア)において示したとおり、本願発明において「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことは、メトフルトリンをジエチレングリコールモノアルキルエーテルと共存させれば、メトフルトリンの曝露量が等しくても、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類に対して特異的に有効であることを表現したものではなく、メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を含むものは、加熱蒸散による蒸散量が十分大きいことによりメトフルトリンの曝露が十分にされ、対象とする蚊類によらず防除作用を奏することを表現したものといえる。

請求人は審判請求書の「3.4 対比説明」の項において、「引用文献3では、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルに関し、どのような属性を有する成分であるか明示されていないが、ジエチレングリコールモノブチルエーテルは、従来、界面活性剤として用いられていた成分であることから、これを界面活性剤とは全く異なる「メトフルトリンの感受性低下対処助剤」とすることで、組成物の用途を「……」とすることについて、引用文献3に示唆されているとは言えない。」などと主張するが、上記のとおり、本願発明において「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことは、メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物であって「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を含むものは、加熱蒸散による蒸散量が十分大きいことによりメトフルトリンの曝露が十分にされ、対象とする蚊類によらず防除作用を奏することを表現したものといえるところ、本願発明は、引用発明3と組成上の差異がないことから、当然、その加熱蒸散による蒸散量は引用発明3と等しく、対象とする蚊類に対するメトフルトリンの曝露の程度及び対象とする蚊類の防除作用も引用発明3と等しいと認められることから、相違点(3-1)に係る「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」を「メトフルトリンの感受性低下対処助剤として」としたことは、「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」の「未知の属性」の発見であるということはできない。
したがって、相違点(3-1)は実質的な相違点ではない。

(イ)相違点(3-2)について
本願発明の「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための」は、引用発明3の「蚊類を防除するための」に対して、新たな用途を提供したものといえるかを検討する。
引用文献3には、「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」についての直接的記載はないが、記載事項(3-5)には、防除できる害虫の具体例として「アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、、シナハマダラカ、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)等のハマダラカ類、」が挙げられている。
このうち、アカイエカ、コガタアカイエカについては、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性の低下が日本国内でもみられることが、本願優先日及び引用文献3の公開日よりも前に頒布された文献である、富田隆史 他,“首都圏を中心としたウエストナイル熱媒介蚊の殺虫剤感受性試験:ピレスロイド剤抵抗性アカイエカ群の確認”,衛生動物,第55巻,別冊,71頁(2004年)、及び、安富和男 他,“沖縄県知念産コガタアカイエカの殺虫剤抵抗性,とくにピレスロイド剤に対する抵抗性の機構について”,衛生動物,第40巻,第4号,315-321頁(1989年)に記載されており、また、ネッタイシマカについて、ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性の低下が海外でみられることが、本願優先日及び引用文献3の公開日よりも前に頒布された文献である、MILENA B.MAZZARRI, et al.,“CHARACTERIZATION OF RESISTANCE TO ORGANOPHOSPHATE, CARBAMATE, AND PYRETHROID INSECTICIDES IN FIELD POPULATIONS OF AEDES AEGYPTI FROM VENEZUELA.”,Journal of the American Mosquito Control Association., Vol.11, No.3, pp.315-322 (1995)、及び、Feng Cui, et al.,“Review Insecticide resistance in vector mosquitoes in China”, Pest Management Science, Vol.62, pp.1013-1022 (2006)に記載されている。
一方、引用文献3には、対象とする「蚊類」は「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」以外の蚊類に限られることを示す記載はない。
また、メトフルトリンは、上記1(3)イ(ア)において示したとおり、他のピレスロイド系殺虫成分に比べて非常に高い殺虫活性を有する、水に難溶性の油状物質である。メトフルトリンを含む加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散による蒸散量が十分大きければ、メトフルトリンの曝露が十分にされ、たとえ対象とする蚊類がピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類であっても、防除作用をある程度奏することは、技術常識に照らして明らかといえる。
したがって、引用発明3にいう「蚊類」は「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」以外の蚊類に限られるとすることはできない。

請求人は審判請求書の「3.4 対比説明」の項において、「「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」は少なくとも日本においては、ありふれた蚊類ではない。……。つまり、熱帯地域ではない日本においては、「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類」は、熱帯地域のように存在しているわけではない。……。少なくとも日本においては、界面活性剤等としてジエチレングリコールモノアルキルエーテルを含有する組成物について、従来知られている用途は、「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性を有する蚊類を防除するため」の用途であり、本願発明における「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するため」という用途は、従来知られている用途とは異なる新たなものである。」などと主張する。
しかし、特許法第29条第1項各号にはいずれも「特許出願前に日本国内又は外国において……」と記載されていることからみても、「日本において従来知られている用途とは異なる用途」であれば「新たな用途」に該当すると解することはできず、請求人の上記主張は受け入れられない。
したがって、相違点(3-2)に係る「ピレスロイド系殺虫成分に対する感受性が低下した蚊類を防除するための」としたことは、新たな用途を提供したものということはできない。
したがって、相違点(3-2)は実質的な相違点ではない。

(ウ)小括
以上、(ア)及び(イ)に示したとおり、相違点(3-1)及び相違点(3-2)はいずれも実質的な相違点ではなく、本願発明は引用発明3である。

第5 むすび
本願請求項1に係る発明は、前記第4 1に示したとおり、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
本願請求項1に係る発明は、前記第4 2に示したとおり、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
本願請求項1に係る発明は、前記第4 3に示したとおり、引用文献3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-01-08 
結審通知日 2021-01-12 
審決日 2021-01-29 
出願番号 特願2018-73059(P2018-73059)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西澤 龍彦  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 村上 騎見高
齊藤 真由美
発明の名称 加熱蒸散用水性殺虫剤組成物、及び加熱蒸散用水性殺虫剤組成物の加熱蒸散方法  
代理人 沖中 仁  

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