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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1372268
審判番号 不服2020-4658  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-06 
確定日 2021-03-18 
事件の表示 特願2018-148642「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 1日出願公開、特開2018-169157〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月23日に出願された特願2014-149706号(以下、「原出願」という。)の一部を平成30年8月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年7月24日 拒絶理由の通知(特許法第50条の2の通知を伴うもの)
令和1年9月26日 意見書、手続補正書の提出
令和2年1月8日 補正の却下の決定
令和2年1月8日 拒絶査定
令和2年4月6日 審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年4月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年4月6日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は次のように補正された(下線部は補正箇所を示す。)。

「【請求項1】
内箱と外箱との間に真空断熱パネルと発泡断熱材とが設けられた幅方向より上下方向に長い縦長のキャビネットと、前記内箱の内側に形成された貯蔵室を冷却する冷凍サイクルとを備え、
前記真空断熱パネルは、前記キャビネットの背面壁に設けられ、前記外箱の背板及び前記内箱の背板に面接触する幅方向より上下方向に長い縦長の背面真空断熱パネルを有し、
前記背面真空断熱パネルと前記内箱の背板との間に前記キャビネットの背面壁と左右側壁とで形成された角部に開口し、上下方向の寸法が幅方向の寸法に比べて大きい凹部が形成され、前記凹部に前記発泡断熱材が充填されている冷蔵庫。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の本件出願当初の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
内箱と外箱との間に真空断熱パネルと発泡断熱材とが設けられたキャビネットと、前記内箱の内側に形成された貯蔵室を冷却する冷凍サイクルとを備え、
前記真空断熱パネルは、前記キャビネットの背面壁に設けられ、前記外箱の背板及び前記内箱の背板に面接触する背面真空断熱パネルを有し、
前記背面真空断熱パネルと前記内箱の背板との間に前記キャビネットの背面壁と左右側壁とで形成された角部に開口し、上下方向の寸法が幅方向の寸法に比べて大きい凹部が形成され、前記凹部に前記発泡断熱材が充填されている冷蔵庫。」

なお、令和1年9月26日提出の手続補正書でした補正は、令和2年1月8日付けの補正の却下の決定により却下された。

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1を特定するために必要な事項である「キャビネット」及び「背面真空断熱パネル」に対してそれぞれ、「幅方向より上下方向に長い縦長」であることの限定を新たに付加する補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである、そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明 本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例である特開2014-6039号公報には、「断熱箱体」に関して図面とともに以下の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付加した。以下同様。)。

(ア)引用例1の記載
「【0002】
従来、家庭用の冷蔵庫に用いられる断熱箱体は、左側板、右側板、天板、底板および背板を有する鋼板製の外箱と、この外箱の左側板、右側板、天板、底板および背板に対応する左側板、右側板、天板、底板および背板を有する合成樹脂製の内箱との間に形成される空間部に、発泡ウレタンからなる発泡断熱材を発泡充填して形成したものが一般的である。このような断熱箱体は、内箱の内部に前面が開口した貯蔵室を有していて、その貯蔵室は周囲が断熱壁によって囲まれた構成となっている。また、近年では、その断熱壁の断熱材の一部に真空断熱パネルを用い、断熱材として真空断熱パルと発泡断熱材を併用して、発泡断熱材の使用量を減らすようにしたものも提案されている。」
「【0007】 ・・(中略)・・【図2】冷蔵庫全体の概略構成を示す縦断側面図・・(中略)・・」
「【0008】
以下、冷蔵庫に適用した複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略する。 (第1の実施形態) 以下、第1の実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。」
「【0009】
図1および図2に示すように、断熱箱体1は、詳細は後述するが、鋼板製の外箱2と合成樹脂製の内箱3との間(の空間部)に断熱材を有して構成されており、内部に複数の貯蔵室が設けられている。具体的には、図2に示すように、断熱箱体1内には、上段から順に、冷蔵室4、野菜室5が設けられ、その下方に製氷室6と小冷凍室(図示せず)が左右に並べて設けられ、これらの下方に冷凍室7が設けられている。製氷室6内には、自動製氷装置8が設けられている。」
「【0012】
断熱箱体1内には、各貯蔵室を冷却するための冷凍サイクル16(図3参照)が組み込まれている。詳細は後述するが、冷凍サイクル16は、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室4、野菜室5)を冷却するための冷蔵用冷却器17と、冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室6、小冷凍室、冷凍室7)を冷却するための冷凍用冷却器18とを含んで構成されている。図2に示すように、断熱箱体1の下端部背面側には、機械室19が設けられている。この機械室19内に、冷凍サイクル16を構成する圧縮機20や凝縮器21(図3参照)およびこれらを冷却するための冷却ファン(図示せず)や後述する除霜水蒸発皿35などが配設されている。」
「【0023】
合成樹脂製の内箱3は、真空成形機で一体成形されたもので、外箱2の左側板50、右側板51、天板52、底板53および背板54と対応する左側板56、右側板57、天板58、底板59および背板60を有するもので、前面が開口する。底板59には、外箱2の底板53の段差部53aに対応して機械室19を形成するための段差部59aが形成されている。左側板56および右側板57の前端部には、前記外箱2の左側板50および右側板51のフランジ部50aおよび51aに挿入係合されるフランジ部56aおよび57aが形成されている。また、背板60とこれに連なる他の板たる左側板56、右側板57および天板58とのなすコーナ部には、該コーナ部よりも内箱3の内方に突出する状態になる収納凹部としての面取り部61、62および63(図1、図2および図4参照)が形成されている。そして、内箱3の背板60の左右の両側部には、基端部が面取り部61若しくは62に位置して左側板50,56間若しくは右側板51,57間に連なるようにして内箱3の内方に突出する複数の凹部64が形成されている。なお、各凹部64の先端部には、ガス抜き孔64a(図1参照)が形成されている。」
「【0026】
しかして、図1、図2および図4に示すように、外箱2の左側板50および右側板51の内面には、両面接着テープ或いはホットメルトなどの接着剤によりそれぞれ断熱材としての真空断熱パネル66および67の裏面が接着され、内箱3の天板58および底板59の外面には、両面接着テープ或いはホットメルトなどの接着剤によりそれぞれ断熱材としての真空断熱パネル68および69の表面が接着され、外箱2の背板54の内面には、両面接着テープ或いはホットメルトなどの接着剤により断熱材としての真空断熱パネル70の裏面が接着されている。そして、図1に示すように、外箱2内に内箱3を配置して、内箱3の左側板56および右側板57のフランジ部56aおよび57aを外箱2の左側板50および右側板51のフランジ部50aおよび51aに挿入係合させ、底板53を外箱2の左側板50および右側板51に取り付け、更に、背板54を外箱2の左側板50、右側板51、天板62および底板53に取り付けて、真空断熱パネル70の表面を内箱3の背板60の外面に圧接させる。」
「【0028】
上記断熱材として真空断熱パネル66ないし70と発泡断熱材71との併用による断熱箱体1において、図1に示すように、左側板50、56、真空断熱パネル66および発泡断熱材71aは、左側部断熱壁を構成し、右側板51、57、真空断熱パネル67および発泡断熱材71bは、右側部断熱壁を構成し、図2に示すように、天板52、58、真空断熱パネル68および発泡断熱材71cは、天部断熱壁を構成し、底板53、59、真空断熱パネル69および発泡断熱材71dは、底部断熱壁を構成し、図1および図2に示すように、背板54、60および真空断熱パネル70は、背部断熱壁を構成する。この場合、断熱箱体1において、真空断熱パネル66ないし70は、ほぼ等しい厚さ寸法に設定されており、発泡断熱材71aないし71dは、ほぼ等しい厚さ寸法に設定されているが、その発泡断熱材71aないし71dの厚さ寸法は、真空断熱パネル66ないし70の厚さ寸法と同等以下例えばほぼ等しく設定されている。」
「【0029】
また、断熱箱体1において、図1に示すように、外箱2の左側板50および背板54がなすコーナ部と、真空断熱パネル66の後面部と、板真空断熱パネル70の左側面部と、内箱3の面取り部61とで形成される空間部には、発泡断熱材71aないし71dより厚さ寸法の大なる発泡断熱材71eが充填され、右側板51および背板54がなすコーナ部と、真空断熱パネル67の後面部と、板真空断熱パネル70の右側面部と、内箱3の面取り部62とで形成される空間部には、発泡断熱材71aないし71dより厚さ寸法の大なる発泡断熱材71fが充填されている。図2に示すように、外箱2の天板52および背板54がなすコーナ部と、真空断熱パネル68の後面部と、真空断熱パネル70の上面部と、内箱3の面取り部63とで形成される空間部には、発泡断熱材71aないし71dより厚さ寸法の大なる発泡断熱材71gが充填され、底板53および背板54がなすコーナ部と、真空断熱パネル70の下面部と、段差部53aおよび59aとで形成される空間部には、発泡断熱材71aないし71dより厚さ寸法の大なる発泡断熱材71hが充填されている。そして、外箱2の背板54の内面に裏面が接着された真空断熱パネル70とこれに圧接された内箱3の背板60との間には、左側板50、56間或いは右側板51、57間を上昇する発泡断熱材が複数の凹部64内に流入することにより発泡断熱材71iが充填され(図1参照)以て、発泡断熱材71iにより真空断熱パネル70の表面が内箱3の背板60の外面(裏面)に接着される。
【0030】
上記の場合、断熱箱体1においては、左側板50、56、真空断熱パネル66および発泡断熱材71aからなる左側部断熱壁と、右側板51、57、真空断熱パネル67および発泡断熱材71bからなる右側部断熱壁と、天板52、58、真空断熱パネル68および発泡断熱材71cからなる天部断熱壁と、底板53、59、真空断熱パネル69および発泡断熱材71dからなる底部断熱壁とは、背板54、60および真空断熱パネル70からなる背部断熱壁以外の他の断熱壁たる側部断熱壁を構成するものである。そして、左側部断熱壁および右側部断熱壁では、内箱3とこれに対応する真空断熱パネル66および67の表面との間に発泡断熱材71aおよび71bが存在し、天部断熱壁および底部断熱壁では、外箱2とこれに対応する真空断熱パネル68および69の裏面との間に発泡断熱材71cおよび71dが存在するが、背部断熱壁では、内箱3とこれに対応する真空断熱パネル70の表面とが当接しており、それらの間に部分的に接着用の発泡断熱材71iが存在するのみである。従って、背部断熱壁において真空断熱パネル70の内箱3に対応する表面および外箱2に対応する裏面における発泡断熱材がない面積は、他の側部断熱壁たる左側部断熱壁、右側部断熱壁、天部断熱壁および底部断熱壁のそれよりも広くなるように設定されている。換言すれば、背部断熱壁における発泡断熱材の使用量は、他の側部断熱壁たる左側部断熱壁、右側部断熱壁、天部断熱壁および底部断熱壁の発泡断熱材の使用量よりも著しく少ないのである。」
「【0033】
また、内箱3の背板60には内方に突出する複数の凹部64を形成して、これらの凹部64に発泡断熱材を流入させて発泡断熱材71iを充填させるようにしたので、発泡断熱材71iを接着剤として利用して真空断熱パネル70を内箱3の背板60に接着することができ、従って、発泡断熱材の発泡充填前に断熱パネル70を内箱3の背板60に接着しておく必要はなくなり、組立て作業が簡単になる。この場合、凹部64の先端部にガス抜き孔64aが形成されているので、凹部64の幅(発泡断熱材が流通する溝幅)が細くても、発泡断熱材71iを充分に流入充填させることができる。」



















(イ)図面に示されていること
a)図1、図2及び図4には、幅方向より上下方向に長い縦長である断熱箱体1が示されている。
b)図2及び図4には、幅方向より上下方向に長い縦長の真空断熱パネル70が示されている。
c)図1には、真空断熱パネル70と内箱3の背板60との間に断熱箱体1の背部断熱壁と、左側部断熱壁及び右側部断熱壁とで形成された角部に開口する凹部64が示されている。
d)図4及び図5には、上下方向の寸法が幅方向の寸法に比べて小さい凹部64が示されている。

(ウ)上記(ア)から分かること
a)段落【0009】、【0028】の記載及び図1から、断熱箱体1には、内箱3と外箱2との間に、断熱材として真空断熱パネル66ないし70と発泡断熱材71とが設けられることが分かる。
b)段落【0009】、【0012】の記載、図1及び図2から、貯蔵室が内箱3の内部に形成されており、貯蔵室を冷却するための冷凍サイクル16が断熱箱体1内に組み込まれていることが分かる。
c)段落【0026】の記載から、真空断熱パネル70は、裏面が外箱2の背板54に接着され、表面が内箱3の背板60に圧接するものであり、段落【0030】の記載から、断熱箱体1の背部断熱壁では、内箱3とこれに対応する真空断熱パネル70の表面とが当接するものであって、図1及び図4を併せみると、真空断熱パネル70は外箱2の背板54と内箱3の背板60とに面接触することが分かる。
d)段落【0029】及び【0033】の記載から、凹部64には発泡断熱材71iが充填されていることが分かる。
e)段落【0002】、【0007】及び【0008】の記載から、引用例1は全体として「冷蔵庫」に関するものであることが分かる。

(エ)引用発明
上記(ア)ないし(ウ)を総合すると、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「内箱3と外箱2との間に真空断熱パネル66ないし70と発泡断熱材71とが設けられた幅方向より上下方向に長い縦長の断熱箱体1と、内箱3の内部に形成された貯蔵室を冷却する冷凍サイクル16とを備え、
真空断熱パネル66ないし70は、断熱箱体1における背部断熱壁に設けられ、外箱2の背板54と内箱3の背板60に面接触する幅方向より上下方向に長い縦長の真空断熱パネル70を有し、
真空断熱パネル70と内箱3の背板60との間に断熱箱体1における背部断熱壁と、左側部断熱壁及び右側部断熱壁とで形成された角部に開口する上下方向の寸法が幅方向の寸法に比べて小さい凹部64が形成され、凹部64には発泡断熱材71iが充填されている冷蔵庫。」

イ 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例である実願昭54-28778号(実開昭55-1160号)のマイクロフィルムには、「冷蔵庫等の断熱箱体」に関して図面とともに以下の記載がある。

(ア)引用例2の記載
「2.実用新案登録請求の範囲
背面の左右側縁部に注入孔を有する外箱、この外箱と嵌合し外箱との間に間隙部を形成する内箱、上記外箱の注入孔より注入され上記間隙部を充填する発泡断熱材とからなる断熱箱体において、上記注入孔に対応する部分の上記間隙部が上記注入孔より巾広の間隙部となるように、内方へ膨出させた凸部を上記内箱の左右側壁に一体形成するとともに、上記凸部の上下端面の少なくともいずれか一方を棚受用溝の一部となるようにした冷蔵庫等の断熱箱体。」(第1ページ第3ないし13行)
「 以下図示実施例についてこの考案を詳細に説明すると、(1)は鋼板製より成る外箱、(2)は合成樹脂製より成る内箱で、これは外箱(1)の前面開口部より挿入されると共に外箱(1)のフランジ部(4)に挿着している。しかして両箱体(1)(2)の間には間隙部が形成され、該間隙部は上記外箱(1)背面の左右側縁部に穿設された注入孔(5)(5’)よりフロース法にて注入発泡された硬質ウレタンフォーム断熱壁(3)で満され、全体として薄壁形の冷蔵庫箱体(10)が構成される。
(6)は上記内箱(2)の両側壁に相対向して内箱と一体に成形された一対の突起部(7)(8)より形成される棚受溝、(9)は上記注入孔(5)(5’)に対応するようこれが面する部分の上記間隙部において上記内箱(2)の両側壁を後方から前方へ向う溝状となるように内方へ膨出させた巾広の凸部で、これにより間隙部側は注入孔(5)(5’)と対応する部分が拡大された間隙部となり、また庫内側においては上記と同様の棚受溝(6’)(6’’)を形成するための突起部(8’)(7’’)として役立たせることができるものである。
なお、上記注入孔に対応する部分の間隙部は上記注入孔より巾広の間隙部となるよう凸部(9)の上下方向の巾は充分大きなものとなっている。
この考案は以上のように構成しているので、外箱背面の左右側縁部に穿設された注入孔より充填間隙部に硬質ウレタンフォーム原液をフロース法にて注入発泡させて薄壁形の断熱壁を構成する際、上記原液は注入孔に相対向する位置に形成された巾広な間隙部を通って円滑に壁の前縁部に到達し、その後順次上部に堆積して巾狭な充填間隙部に万遍に行き届く。従って、従来の断熱箱体のように、箱体の前縁部に空隙が生じ断熱箱体の性能が損なわれるという欠点を除去できる。」(第3ページ第10行ないし第5ページ第4行)













ウ 引用例3
原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例である特開2012-21665号公報には、「冷蔵庫」に関して図面とともに以下の記載がある。

(ア)引用例3の記載
「【0032】
断熱空間13を流動する発泡断熱材11は、真空断熱材12で内箱10側と外箱9側に分かれて流動する。そして、障害物の少ない内箱10と真空断熱材12との間を流動する発泡断熱材11が、障害物の多い真空断熱材12と外箱9との間を流動する発泡断熱材11に先行してフォーム成形する。その結果、外箱9と真空断熱材12との間の空気及びガスの流れが塞がれ、発泡断熱材11が充填されないで空気溜りまたはガス溜りが形成される。そこで本発明では、この問題を解決するために、ガス抜き孔16を設けている。なお、冷蔵庫に発泡断熱材を使用するときは、発泡断熱材11が安定して流れる隙間として10mmが必要なので、真空断熱材12の厚さは断熱空間13の5割位が限度となる。」
「【0035】
補強リブ19は、図1に示したように、奥行き方向に複数列、上下方向にも複数列、整列して形成されている。補強リブ19の奥行き方向高さ(図では左右方向)は、0.5?3.0mm程度で、幅(図では上下方向)は1.0?5.0mm、長さ(図では紙面垂直方向)は5.0?30mmである。補強リブ19は、冷蔵庫としての外観意匠を損ねないようデザインされている。
【0036】
補強リブ19を設けるにあたっては、真空断熱材12と外箱9との間口寸法(D寸法)が拡大するように設ければ、発泡断熱材11の流動性が増すので好ましい。なお、補強リブ19を、図示とは異なり、側板9aのほぼ全長(図では紙面垂直方向)にわたるように形成してもよい。」





(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「内箱3」は、本願補正発明における「内箱」に相当し、以下同様に、「外箱2」は「外箱」に、「真空断熱パネル66ないし70」は「真空断熱パネル」に、「発泡断熱材71」は「発泡断熱材」に、「断熱箱体1」は「キャビネット」に、「内箱3の内部」は「内箱の内側」に、「貯蔵室」は「貯蔵室」に、「冷凍サイクル16」は「冷凍サイクル」に、「断熱箱体1における背部断熱壁」は「キャビネットの背面壁」に、「外箱2の背板54」は「外箱の背板」に、「内箱3の背板60」は「内箱の背板」に、「真空断熱パネル70」は「背面真空断熱パネル」に、「左側部断熱壁及び右側部断熱壁」は「左右側壁」に、「角部」は「角部」に、「凹部64」は「凹部」に、「発泡断熱材71i」は「発泡断熱材」に、「冷蔵庫」は「冷蔵庫」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「断熱箱体1における背部断熱壁と、左側部断熱壁及び右側部断熱壁とで形成された角部に開口する凹部64」と、本願補正発明における「キャビネットの背面壁と左右側壁とで形成された角部に開口し、上下方向の寸法が幅方向の寸法に比べて大きい凹部」とは、「キャビネットの背面壁と左右側壁とで形成された角部に開口する凹部」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「内箱と外箱との間に真空断熱パネルと発泡断熱材とが設けられた幅方向より上下方向に長い縦長のキャビネットと、前記内箱の内側に形成された貯蔵室を冷却する冷凍サイクルとを備え、
前記真空断熱パネルは、前記キャビネットの背面壁に設けられ、前記外箱の背板及び前記内箱の背板に面接触する幅方向より上下方向に長い縦長の背面真空断熱パネルを有し、
前記背面真空断熱パネルと前記内箱の背板との間に前記キャビネットの背面壁と左右側壁とで形成された角部に開口し、凹部が形成され、前記凹部に前記発泡断熱材が充填されている冷蔵庫。」

[相違点]
「凹部」に関して、本願補正発明においては「上下方向の寸法が幅方向の寸法に比べて大きい」のに対して、引用発明においては「上下方向の寸法が幅方向の寸法に比べて小さい」点。

以下、相違点について検討する。

[相違点について]
上記引用例2には、発泡断熱材の注入孔に対応する部分の間隙部が、注入孔より上下方向にわたって巾広のものとすることにより、充填間隙部に円滑に発泡断熱材となる硬質ウレタンフォーム原液が行き届くことについて記載されており、
また、引用例3には、真空断熱材12と外箱9との間口寸法(D寸法)が拡大するように設ければ、発泡断熱材11の流動性が増すことについて記載されているから、冷蔵庫の内箱と外箱との間に発泡断熱材を注入するにあたって、発泡断熱材の注入口に対する充填間隙部の寸法を拡大あるいは巾広にすることにより発泡断熱材の充填を円滑に行うことは周知技術(以下、「周知技術」という。)である。
また、引用例2には、全体として薄壁形の冷蔵庫箱体とすることが記載されており、外形がコンパクトで貯蔵室の容積が大きい薄壁形の冷蔵庫箱体を提供することは他に例を挙げるまでもなく周知の課題(以下、「周知の課題」という。)である。
また、引用例1における「【0033】・・・凹部64の先端部にガス抜き孔64aが形成されているので、凹部64の幅(発泡断熱材が流通する溝幅)が細くても、発泡断熱材71iを充分に流入充填させることができる。」の記載は、凹部64の幅を広くすることを格別排除していない。
そうすると、引用発明において、冷蔵庫の内箱と外箱との間に発泡断熱材を充填する技術分野であることにおいて共通する周知技術を適用して、凹部64の断熱箱体1における背部断熱壁と、左側部断熱壁及び右側部断熱壁とで形成された角部へ開口する部分に発泡断熱材71iを円滑に充填するために開口する部分の寸法を拡大あるいは巾広とすることに困難性はなく、その際に、周知の課題に照らして、薄壁形とするべく内箱3と外箱2との間の間隙を大きくせずに、拡大あるいは巾広とする向きを上下方向として、凹部64の上下方向の寸法を幅方向の寸法に比べて大きくすることにより上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明による効果は、全体として見ても引用発明及び周知技術から予測される範囲内であって格別顕著なものではない。

(4)審判請求書における主張について
審判請求人は、「補正した本願請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は、幅方向より上下方向に長い縦長の背面真空断熱パネルが設けられた幅方向より上下方向に長い縦長のキャビネットを有する冷蔵庫において、背面真空断熱パネルと内箱の背板との間にキャビネットの背面壁と左右側壁とで形成された角部に開口し、上下方向の寸法が幅方向の寸法に比べて大きい凹部が形成され、凹部に発泡断熱材が充填されている点を特徴とします。
このような本願発明では、発泡断熱材が凹部全体に充填されやすくなるため、キャビネットに占める発泡断熱材を抑えつつ、凹部に充填された発泡断熱材によって背板と背面真空断熱パネルとを確実に接着固定することができる。
また、キャビネットの壁厚の薄型化を図るとキャビネットの強度が低下しやすく、特に、縦長の背面真空断熱パネルが設けられた縦長のキャビネットを有する冷蔵庫では、キャビネットの背面壁の上部が前方へ折れ曲がる前屈変形を起こしやすくなります。本願発明では、幅方向より上下方向に長い縦長の背面真空断熱パネルに対して凹部の形状に対応する上下方向に長い発泡断熱材が形成されるため、背面壁の前屈変形を効果的に抑えることができます。
つまり、本願発明では、上記凹部がキャビネットの背面壁と左右側壁とで形成された角部に開口しており、上記凹部の形状に対応する上下方向に長い発泡断熱材が、当該角部に設けられた上下方向に延びる発泡断熱材に連結されています。そのため、縦長の背面真空断熱パネルは、キャビネットの背面壁と左右側壁とで形成された角部に設けられた発泡断熱材と上記凹部に対応する上下方向に長い発泡断熱材が接着固定されることで補強され、前方へ折れ曲がりにくくなり、その結果、キャビネットの背面壁の前屈変形を効果的に抑えることができます。」(審判請求書第4ページ第22行ないし第5ページ第15行)と主張している。

上記主張について検討すると、上記主張における「幅方向より上下方向に長い縦長の背面真空断熱パネルに対して凹部の形状に対応する上下方向に長い発泡断熱材が形成されるため、背面壁の前屈変形を効果的に抑えることができます。」、「縦長の背面真空断熱パネルは、キャビネットの背面壁と左右側壁とで形成された角部に設けられた発泡断熱材と上記凹部に対応する上下方向に長い発泡断熱材が接着固定されることで補強され、前方へ折れ曲がりにくくなり、その結果、キャビネットの背面壁の前屈変形を効果的に抑えることができます。」という効果について、出願当初の明細書に記載されたものではないし、格別なものでない。
さらに、上下方向に長い凹部、ひいては上下方向に長い凹部に対応する発泡断熱材の上下方向及び幅方向の具体的寸法や比率が本願補正発明において特定されるのではなく、ただ、凹部に関して、上下方向が幅方向の寸法に比べて大きいというのみであるから、必ずしも上記請求人の主張のとおりの効果が得られるとは認められない。
よって、上記請求人の主張は採用できない。

(5)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

本願発明は、本願の出願日前に頒布された下記引用例1に記載された発明及び引用例2及び3に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用例一覧>
1.特開2014-6039号公報
2.実願昭54-28778号(実開昭55-1160号)のマイクロフィルム
3.特開2012-21665号公報

3 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし3の記載事項は、前記第2 2(2)に記載したとおりである。

4 判断
本願発明は、前記第2 2で検討した本願補正発明から、「キャビネット」及び「背面真空断熱パネル」について、それぞれから「幅方向より上下方向に長い縦長」であることの限定を省いたものであって、本願発明の発明特定事項を全て含んだものに相当する本願補正発明が、第2 2(3)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-12-25 
結審通知日 2021-01-12 
審決日 2021-01-29 
出願番号 特願2018-148642(P2018-148642)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
P 1 8・ 575- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯星 潤耶  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 松下 聡
山田 裕介
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 中村 哲士  
代理人 有近 康臣  
代理人 富田 克幸  
代理人 蔦田 正人  
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