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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1372296
審判番号 不服2020-11771  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-24 
確定日 2021-04-06 
事件の表示 特願2019- 36249「小売物品用アテンション及びこれを付した小売物品」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 8日出願公開、特開2019-133683、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2017年7月7日を国際出願日(優先権主張 平成28年7月14日(以下,「優先日」という。) 日本)とする特願2018-527579号の一部を,平成31年2月28日に新たな特許出願として出願されたものであって,令和1年10月29日付けで拒絶理由通知がされ,令和1年12月17日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がされたが,令和2年5月18日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和2年8月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和2年5月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1-9に係る発明は,以下の引用文献1-4に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2013-020469号公報
2.米国特許出願公開第2004/0078957号明細書
3.米国特許出願公開第2013/0050047号明細書
4.国際公開第2006/016559号

第3 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は,令和2年8月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
小売物品の金属体に接着される接着領域及び前記小売物品から突出する突出領域を有するラベル部と、
前記ラベル部に設けられたRFIDタグであって、RFICチップと、前記RFICチップに接続された整合回路と、第1アンテナ部及び第2アンテナ部を有するアンテナパターンと、を有するRFIDタグと、
を備え、
前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部は、前記RFICチップを介して互いに接続され、且つ、前記RFICチップに対して互いに非対称な形状を備え、
前記RFIDタグの前記整合回路および前記第1アンテナ部は、前記ラベル部の前記突出領域に設けられており、前記RFIDタグの前記第2アンテナ部は、前記ラベル部の前記接着領域に前記小売物品の金属体と容量結合するように対向配置して設けられ、
前記接着領域が前記小売物品の金属体に対して接着された状態のときは前記金属体をブースターアンテナとして利用し、
前記RFIDタグは、前記接着領域が前記小売物品の金属体に対して非接着の状態で通信可能に構成されている、
小売物品用アテンション。
【請求項2】
前記第1アンテナ部は、前記RFICチップの前記一端部及び前記他端部を接続するループ部であり、前記第2アンテナ部は、前記他端部の近傍から突出した引出し部である、請求項1に記載の小売物品用アテンション。
【請求項3】
前記アンテナパターンは、前記RFICチップの前記一端部及び前記他端部を接続するループ部を含まない、請求項1に記載の小売物品用アテンション。
【請求項4】
前記第1アンテナ部は、前記RFICチップの一端部から第1方向に延在し、前記第2アンテナ部は、RFICチップの他端部から前記第1方向と反対方向に第2方向に延在している、請求項1に記載の小売物品用アテンション。
【請求項5】
前記第1アンテナ部の長手方向は、前記第2アンテナ部の長手方向に対してほぼ直交方向である、請求項1に記載の小売物品用アテンション。
【請求項6】
前記RFICチップと、前記整合回路と、を含むRFICパッケージが構成され、
前記整合回路によって、通信周波数に相当する共振周波数を画定する、請求項1に記載の小売物品用アテンション。
【請求項7】
前記第1アンテナ部の電気長は、前記第2アンテナ部の電気長より短い、請求項1に記載の小売物品用アテンション。
【請求項8】
前記ラベル部は、絶縁性の粘着剤で前記小売物品に取り付けられている、請求項1に記載の小売物品用アテンション。
【請求項9】
小売物品用アテンションが取り付けられた小売物品であって、前記小売物品用アテンションは、前記小売物品の金属体に接着される接着領域及び前記小売物品から突出する突出領域を有するラベル部と、
前記ラベル部に設けられたRFIDタグであって、RFICチップと、前記RFICチップに接続された整合回路と、第1アンテナ部及び第2アンテナ部を有するアンテナパターンと、を有するRFIDタグと、
を備え、
前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部は、前記RFICチップを介して互いに接続され、且つ、前記RFICチップに対して互いに非対称な形状を備え、
前記RFIDタグの前記整合回路および前記第1アンテナ部は、前記ラベル部の前記突出領域に設けられており、前記RFIDタグの前記第2アンテナ部は、前記ラベル部の前記接着領域に前記小売物品の金属体と容量結合するように対向配置して設けられ、
前記接着領域が前記小売物品の金属体に対して接着された状態のときは前記金属体をブースターアンテナとして利用し、
前記RFIDタグは、前記接着領域が前記小売物品の金属体に対して非接着の状態で通信可能に構成されている、
小売物品用アテンションが取り付けられた小売物品。」

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
ア 本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2013-20469号公報(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)

a 「【0012】
(第1実施例、図1?図4参照)
第1実施例である無線通信デバイス付き物品1Aは、図1に示すように、食品包装缶であって、それぞれ金属薄板からなる箱形状の容器部2と蓋部3とで構成されている。無線通信デバイス10は、樹脂フィルム11の表面にループ状導体12と平面状の結合導体13を設け、ループ状導体12の一端(第1給電部12a’)及び他端(第2給電部12b’)に無線IC素子20が結合されている。ループ状導体12は二つの整合線路12a,12bを備え、それぞれの整合線路12a,12bの基部は結合導体13に接続され、端部がそれぞれ第1給電部12a’、第2給電部12b’とされている。即ち、整合線路12a,12bと結合導体13の一辺部分13aとでループ状導体12が形成されている。
【0013】
無線IC素子20は、RF信号を処理するもので、信号処理回路やメモリ回路などを有しており、半導体集積回路チップとして構成されている。無線IC素子20としては、ベアチップであってもよく、パッケージICとして構成されていてもよい。無線IC素子20と第1及び第2給電部12a’,12b’との結合は半田バンプなどによる電気的な直接結合(DC接続)であるが、電磁界結合であってもよい。また、無線IC素子20は半導体集積回路チップを整合回路や共振回路を有する給電回路基板に搭載されたものであってもよい。
【0014】
前記無線通信デバイス10は、容器部2に蓋部3を被せた状態で、容器部2と蓋部3との合わせ目に結合導体13が両者に跨るように、非可逆性接着剤15を介して接着されている。つまり、ループ状導体12を形成した部位が包装缶の表面から起立するように折り曲げた状態で結合導体13を形成した部位が包装缶に貼り付けられている。そして、図2に示すように、結合導体13は基材としての樹脂フィルム11及び非可逆性接着剤15を介して容器部2及び蓋部3と容量結合することになる。
【0015】
本無線通信デバイス10の等価回路は、図4(A)に示すように、無線IC素子20がループ状導体12を介して結合導体13と電気的に導通状態にあり、結合導体13は容量Cを介して容器部2及び蓋部3と結合されている。無線IC素子20から所定の高周波信号が第1及び第2給電部12a’,12b’に伝達されると、ループ状導体12に電流が発生して第1及び第2給電部12a’,12b’に電位差が生じる。この電位差が結合導体13に伝達され、さらに容量Cを介して容器部2及び蓋部3に伝達され、容器部2及び蓋部3から高周波空気中に伝播される。このように、給電部12a’,12b’から供給される信号の特性(例えば、広帯域な周波数特性)をそのまま容器部2及び蓋部3から外部に放射する。容器部2及び蓋部3が外部からの高周波を受信した場合には、同様に、ループ状導体12に電流が誘起され、第1及び第2給電部12a’,12b’から無線IC素子20に電力が供給される。即ち、容器部2及び蓋部3が無線通信デバイス10の放射導体として機能し、無線IC素子20とリーダライタ30とが交信可能となる。また、ループ状導体12は無線IC素子20と放射導体(容器部2及び蓋部3)とのインピーダンスのマッチングを図っている。
【0016】
ところで、非可逆性接着剤15は、接着時においては図3(A)に示すように、密な状態で接着機能を果たし、容量Cを形成している。しかし、非可逆性接着剤15は、一度剥離されると、けば立った状態となり、図3(B)に示すように、多数の空隙15a(空気層)が生じ、仮に再接着したとしても、これらの空隙15aが消滅することはない。つまり、再接着した場合、空隙15aが介在することで容量C’に変化してしまい、図4(B)に示すように、リーダライタ30との通信が不能になる、あるいは、通信性能が低下する。通信の不能あるいは性能が低下した場合には、物品が開封されたと判定する。」

b 「図1



c 「図2



イ 上記aないしcの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「樹脂フィルム11の表面にループ状導体12と平面状の結合導体13が設けられ,ループ状導体12の一端の第1給電部12a’及び他端の第2給電部12b’に無線IC素子20が結合されている無線通信デバイス10において,
ループ状導体12は二つの整合線路12a,12bを備え,それぞれの整合線路12a,12bの基部は結合導体13に接続され,端部がそれぞれ第1給電部12a’,第2給電部12b’とされており,
無線IC素子20は,RF信号を処理するもので,信号処理回路やメモリ回路などを有しており,半導体集積回路チップとして構成され,さらに,半導体集積回路チップは整合回路や共振回路を有する給電回路基板に搭載されたものであって,
無線通信デバイス10は,金属薄板からなる箱形状の容器部2と蓋部3からなる食品包装缶に,容器部2に蓋部3を被せた状態で,容器部2と蓋部3との合わせ目に結合導体13が両者に跨るように,非可逆性接着剤15を介して接着されることで,ループ状導体12を形成した部位が包装缶の表面から起立するように折り曲げた状態で結合導体13を形成した部位が食品包装缶に貼り付けられ,さらに,結合導体13は容量Cを介して容器部2及び蓋部3と結合しており,無線IC素子20から所定の高周波信号が第1及び第2給電部12a’,12b’に伝達されると,ループ状導体12に電流が発生して第1及び第2給電部12a’,12b’に電位差が生じ,この電位差が結合導体13に伝達され,さらに容量Cを介して容器部2及び蓋部3に伝達され,容器部2及び蓋部3から高周波が空気中に伝播されるものであり,
非可逆性接着剤15は,一度剥離されると,けば立った状態となり,多数の空隙15a(空気層)が生じ,仮に再接着したとしても,これらの空隙15aが消滅することはなく,再接着した場合,空隙15aが介在することで容量C’に変化してしまい,リーダライタ30との通信性能が低下することで,開封されたと判定することができる,
無線通信デバイス10。」

2 引用文献2について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,米国特許出願公開第2004/0078957号明細書(以下,これを「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア「[0033] FIG. 1 illustrates a wireless communication device 10, such as that described in the previously incorporated applications. In particular, wireless communication device 10 comprises a substrate 20, a wireless communication chip 30, and one or more tabs 40, to serve as an antenna 60 for wireless communication device 10. Tabs 40A, 40B may be constructed out of any type of material so long as the material is conductive. Such material be a ferrous material, including metal, steel, iron, or the material may be aluminum or other type of conducting material.
(当審訳:図1は,無線通信装置10を示しており,これは,先に本願に組み入れられる出願としたものに説明されているものである。具体的には,無線通信装置10は,基板20,無線通信チップ30,および1つまたは複数の無線通信装置10のアンテナ60となるタブ40を備えている。タブ40A,40Bは,材料が導電性であれば,任意の種類の材料から構成することができる。このような材料は,金属,鋼,鉄を含む鉄系材料,あるいは,アルミニウムまたは他のタイプの導電性材料であってもよい。)」

イ「




3 引用文献3について
ア 本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,米国特許出願公開第2013/0050047号明細書(以下,これを「引用文献3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「[0040] The RFID antenna structure of the present invention is asymmetrical along the major axis and with multiband embodiments in which a first arm 210 is connected to a first port 230 of a load element 240 arranged in the architecture of FIGS. 3 and 4. A representative schematic architecture generalizing the embodiments in this invention is provided in FIG. 3. FIG. 4(a) shows the lumped equivalent of the FIG. 3 architecture, and FIG. 4(b) shows a top view schematic of the UHF antenna structure. A second arm 220 is connected to a second port 270 of the load element 240. The load element comprised of an impedance matching network 242 and a load circuit 260 is connected between two asymmetric patterned conductors to form the entirety of the antenna structure. The antenna structure has embodiments providing operation for a single UHF band and also for multiband operation including LF, HF, and UHF. The UHF frequency band of operation is determined from an interaction of all structures along the length of the antenna including the impedance matching network and the physical structures. When configured for LF and HF operation one or more arms contain a Faraday coil that provides a voltage drive for the load element from a varying magnetic induction field. Both arms also serve a second purpose as integral components of the UHF antenna structure. For UHF operation the load element matches the complex impedance from the patterned conductive films into the load circuit shifting the operating frequency of the antenna structure away from the self resonance frequency of basic dipole structure that includes the first and second arms.
(当審訳:本発明のRFIDアンテナ構造は,長軸に沿って非対称であって,図3及び図4のアーキテクチャで配置された負荷要素240の第1ポート230に接続されているマルチバンドの実施形態である第1のアーム210を有している。図3は,本発明の実施形態を一般化した図である。図4(a)は,図3に示すアーキテクチャの等価回路を示し,図4(b)はUHFアンテナ構造の概略的な上面図を示す。第2のアーム220は,負荷要素240の第2のポート270に接続されている。インピーダンスマッチング回路242と負荷回路260で構成される負荷要素は,アンテナ構造の全体を形成する2本の非対称性のパターン化された導体の間に接続される。このアンテナ構造体は,単一のUHF帯で動作する実施態様として,また,LF,HF,および,UHFを含むマルチバンドで動作する実施形態として提供される。UHF周波数帯域での動作は,インピーダンスマッチング回路を含めたアンテナの長さに沿った全ての構造の相互作用と,物理的な構造によって決定される。LF,HFで動作するときには,1つまたは複数のアームは,変化する誘導磁界から負荷素子に印加される駆動電圧を提供するファラデーコイルを含む。両アームは,UHFアンテナ構造の一体的な構成として第2の目的を果たす。UHF帯での動作では,負荷要素は,パターン化された導電膜からの複素インピーダンスを,アンテナ構造の動作周波数を第1および第2のアームを含む基本的なダイポール構造の自己共振周波数から離れるようにアンテナ構造の動作周波数をシフトさせる負荷回路と整合させる。)」

イ 「



4 引用文献4について
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,国際公開第2006/016559号(以下,これを「引用文献4」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「[0042] なお、スリット部は、使用するICチップとインピーダンスが巧く合うように形成されている。この場合、仮にスリット部が導電性の蓋610と重ねられた状態では、蓋の導電性の影響により実質的なインピーダンスが当初の適切な範囲からずれてしまう。その為に、例えば利用する波長が不適切な波長に変化してしまう等の不具合を招く。すなわち、このICタグのICチップとデータ通信を行おうとしてもデータ通信が巧く出来ないか又は全く出来ないことになる。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「食品包装缶」は,「金属薄板からなる箱形状の容器部2と蓋部3からなる」食品用の包装缶であるから,引用発明の「容器部2と蓋部3」は,本願発明1の「金属体」に相当し,また,引用発明の「食品包装缶」は,本願発明1の「小売物品」に相当する。
そして,引用発明は「食品包装缶」である「金属薄板からなる」「容器部2と蓋部3との合わせ目に結合導体13が両者に跨るように,非可逆性接着剤15を介して接着され」,また,「ループ状導体12を形成した部位」は「包装缶の表面から起立する」ものであり,さらに,「樹脂フィルム11の表面にループ状導体12と平面状の結合導体13」は「設けられ」るものであるから,引用発明において,「樹脂フィルム11」の「結合導体13」を形成した部位は「食品包装缶」に接着され,「ループ状導体12を形成した部位」は「食品包装缶」から突出しているものと認められる。
してみると,引用発明の「樹脂フィルム11」の「結合導体13」を形成した部位は,本願発明1の「接着領域」に相当し,引用発明の「樹脂フィルム11」の「ループ状導体12を形成した部位」は,本願発明1の「突出領域」に相当し,そして,引用発明の「樹脂フィルム11」は,本願発明1の「小売物品の金属体に接着される接着領域及び前記小売物品から突出する突出領域を有するラベル部」に相当する。

イ 引用発明の「無線IC素子20」は,「RF信号を処理する」「半導体集積回路チップ」であるから,本願発明1の「RFICチップ」に相当する。また,引用発明の「整合回路」は,「半導体集積回路チップ」(「無線IC素子20」)と同じ「給電回路基板」に設けられており,「無線IC素子20」と接続されていることは明らかであるから,本願発明1の「前記RFICチップに接続された整合回路」に相当する。
また,引用発明の「ループ状導体12」及び「結合導体13」と,本願発明1の「第1アンテナ部」及び「第2アンテナ部」とは,各々,後記の点で相違するものの,“第1の導体”及び“第2の導体”の点では共通する。
そして,引用発明の「ループ状導体12」及び「結合導体13」は,「樹脂フィルム11の表面に」「設けられる」ものであって,また,「無線IC素子20」は「ループ状導体12」と「結合される」ものであるから,「樹脂フィルム11」の表面に「無線IC素子20」及び「整合回路」が設けられていることは明らかである。
してみると,引用発明の「ループ状導体12」,「結合導体13」,「無線IC素子20」及び「整合回路」を合わせたものと,本願発明1の「前記ラベル部に設けられたRFIDタグであって、RFICチップと、前記RFICチップに接続された整合回路と、第1アンテナ部及び第2アンテナ部を有するアンテナパターンと、を有するRFIDタグ」とは,“前記ラベル部に設けられたRFIDタグであって,RFICチップと,前記RFICチップに接続された整合回路と,第1の導体及び第2の導体を有する導体パターンと,を有するRFIDタグ”の点で共通する。

ウ 引用発明は「樹脂フィルム11」の「ループ状導体12を形成した部位が包装缶の表面から起立する」ものである。また,引用発明の「無線IC素子20」は,「ループ状導体12」の「端部」に設けられるものであり,「包装缶の表面から起立」しているものと認められ,さらに,「整合回路」は「無線IC素子20」と同じ「給電回路基板」に搭載されるものであるから,「樹脂フィルム11」の「整合回路」がある部位もまた「包装缶の表面から起立」しているものと認められる。
一方,引用発明の「樹脂フィルム11」の「結合導体13」を形成した部位は「食品包装缶」に接着され,「結合導体13は容量Cを介して容器部2及び蓋部3と結合され」るものである。
してみると,引用発明と本願発明1とは,“前記RFIDタグの前記整合回路および前記第1の導体は,前記ラベル部の前記突出領域に設けられており,前記RFIDタグの前記第2の導体は,前記ラベル部の前記接着領域に前記小売物品の金属体と容量結合するように対向配置して設けられ”る点では共通する。

エ 引用発明は,「無線通信デバイス10」を「食品包装缶に貼り付け」,「無線IC素子20から所定の高周波信号が第1及び第2給電部12a’,12b’に伝達されると,ループ状導体12に電流が発生して第1及び第2給電部12a’,12b’に電位差が生じ,この電位差が結合導体13に伝達され,さらに容量Cを介して容器部2及び蓋部3に伝達され,容器部2及び蓋部3から高周波が空気中に伝播され」るものであり,「容器部2及び蓋部3」をアンテナとして利用しているものと認められることから,引用発明と本願発明1とは,後記の点で相違するものの,“前記接着領域が前記小売物品の金属体に対して接着された状態のときは前記金属体をアンテナとして利用”する点では共通する。

オ 引用発明の「無線通信デバイス10」は,「樹脂フィルム11」,「ループ状導体12」,「結合導体13」,「無線IC素子20」及び「整合回路」を備え,「食品包装缶」に接着されるものであるから,本願発明1の「小売物品用アテンション」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,以下の一致点と相違点とがある。

〈一致点〉
「小売物品の金属体に接着される接着領域及び前記小売物品から突出する突出領域を有するラベル部と,
前記ラベル部に設けられたRFIDタグであって,RFICチップと,前記RFICチップに接続された整合回路と,第1の導体及び第2の導体を有する導体パターンと,を有するRFIDタグと,
を備え,
前記RFIDタグの前記整合回路および前記第1の導体は,前記ラベル部の前記突出領域に設けられており,前記RFIDタグの前記第2の導体は,前記ラベル部の前記接着領域に前記小売物品の金属体と容量結合するように対向配置して設けられ,
前記接着領域が前記小売物品の金属体に対して接着された状態のときは前記金属体をアンテナとして利用する,
小売物品用アテンション。」

〈相違点1〉
「第1の導体及び第2の導体」が,本願発明1では「第1アンテナ部及び第2アンテナ部」であって,また,「前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部は、前記RFICチップを介して互いに接続され、且つ、前記RFICチップに対して互いに非対称な形状を備え」ているのに対して,引用発明では「ループ状導体12」及び「結合導体13」がアンテナとは特定されておらず,また,「無線IC素子20」を介して接続されていないので「無線IC素子20」に対して非対象でもない点。

〈相違点2〉
「アンテナ」が,本願発明1では「ブースターアンテナ」であるのに対して,引用発明ではその旨の特定がされていない点。

〈相違点3〉
本願発明1では「前記RFIDタグは、前記接着領域が前記小売物品の金属体に対して非接着の状態で通信可能に構成されている」のに対して,引用発明では非接着の状態では通信可能か不明な点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み相違点1について検討する。
引用文献2,3(上記第4 2,3)には,2つのアンテナを,RFICチップを介して互いに接続し,且つ,前記RFICチップに対して互いに非対称とすることが記載されている。
しかしながら,引用発明は,「無線通信デバイス10」を「食品包装缶」に,「非可逆性接着剤15を介して接着され」た状態では,「容器部2及び蓋部3から高周波」を「空気中に伝播」でき,一方,「非可逆性接着剤15」が,「一度剥離されると」「無線通信デバイス10」と「リーダライタ30との通信性能が低下する」ことで,開封を判定するものであるから,「ループ状導体12」及び「結合導体13」をアンテナとする理由が存在しない。また,仮に,非接着時にもリーダライタと通信の必要があるとしても,「ループ状導体12」及び「結合導体13」のいずれをもアンテナとする理由は認められない。
また,引用発明においては「ループ導体12」は「二つの整合線路12a,12bを備え,それぞれの整合線路12a,12bの基部は結合導体13に接続され.端部がそれぞれ第1給電部12a’,第2給電部12b’とされ」,「第1給電部12a’及び」「第2給電部12b’に無線IC素子20が結合され」るものであるから,「整合線路12a,12b」によって,「結合導体13」及び「無線IC素子20」との整合をとっているものと認められる。してみると,「ループ状導体12」と「結合導体13」を「無線IC素子20」を介した構成とすると,「結合導体13」及び「無線IC素子20」との整合がとれるか不明であって,引用文献1において「ループ状導体12」と「結合導体13」を「無線IC素子20」を介して接合させる理由が存在しない。
したがって,本願発明1の相違点に係る構成が,引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づき当業者が容易に構成し得たものであるとはいえない。
以上のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本願発明1が引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8は,本願発明1を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明9について
本願発明9は,「小売物品」に本願発明1の「小売物品用アテンション」が取り付けられるとして限定したものに過ぎないことから,同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 原査定について
<特許法29条2項について>
審判請求時の補正により,本願発明1ないし9は上記第3に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用発明(上記第4の引用文献1)及び引用文献2ないし4に記載の技術事項に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-19 
出願番号 特願2019-36249(P2019-36249)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山澤 宏
小林 秀和
発明の名称 小売物品用アテンション及びこれを付した小売物品  
代理人 山尾 憲人  
代理人 岡部 博史  
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