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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01M |
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管理番号 | 1372358 |
審判番号 | 不服2020-12562 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-09-08 |
確定日 | 2021-04-14 |
事件の表示 | 特願2016-88491「エンジン装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月2日出願公開、特開2017-198124、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願(以下、「本願」という。)は、平成28年4月26日に出願され、令和元年9月4日付け(発送日:同年9月11日)で拒絶理由が通知され、令和元年12月27日に意見書の提出及び手続補正がされ、令和2年6月3日付け(発送日:同年6月10日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和2年9月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和元年12月27日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 エンジンの左右一側面に設けた排気マニホールドに過給機の排気側入口が接続されたエンジン装置において、 前記排気マニホールド上方に前記過給機が配置されており、 前記過給機に潤滑油を注油する注油管が、前記エンジンの左右他側面から前記左右一側面に向かって前記エンジンの前後一側面を経由して配管されるとともに、前記エンジンの前記左右一側面において前記排気マニホールドの前後一側方から前記排気マニホールドの外側を通って前記排気マニホールド上方に向けて配管されており、 前記排気マニホールドは、底面部を二股状に構成しており、前記過給機からの潤滑油を抽出する戻り管が前記排気マニホールドの底面部における二股部分の間を通って下方に向けて配管されていることを特徴とするエンジン装置。 【請求項2】 前記戻り管の前記過給機とは反対側の端部は、弾性を有する弾性配管部材を介してシリンダブロックに連結されることを特徴とする請求項1に記載のエンジン装置。 【請求項3】 前記排気マニホールドがシリンダヘッド側面に設置されるとともに、吸気マニホールドがシリンダヘッド上面に設置されており、 前記過給機の吸気側出口が、シリンダヘッド側に向けて延設されるとともに、吸気中継管を介して、前記吸気マニホールド上面に設けられる吸気入口に連通されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン装置。 【請求項4】 前記吸気マニホールドは前記シリンダヘッド上面の弁腕室を覆うヘッドカバーに一体的に構成されるとともに、ブローバイガスを吸気系に還元するブローバイガス還元装置が前記ヘッドカバーにおける前記弁腕室上方に突設されており、 前記ブローバイガス還元装置が前記過給機と前記吸気マニホールドとの間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のエンジン装置。 【請求項5】 L字状に屈曲した形状を有する吸気管が前記過給機の吸気側入口に連結され、前記ブローバイガス還元装置の左右一側面に設けたブローバイガス導出口に接続したガス管路が前記吸気管の中途部に連結され、 前記吸気管の下流側部分が前後方向に配管されるとともに前記吸気管の上流部分が左右方向に配管されて前記左右他側面側へ延設されており、 前後方向に配管された前記ガス管路が、前記ブローバイガス導出口から前記吸気管との接続部に向けて上方に傾斜するとともに前記吸気中継管の下側で交差して配管されていることを特徴とする請求項4に記載のエンジン装置。」 第3 原査定の拒絶理由 原査定の拒絶理由の概要は以下のとおりである。 本願の下記の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1 ・引用文献等 1 ・請求項 2 ・引用文献等 1 ・請求項 3-5 ・引用文献等 1-6 <引用文献等一覧> 1.特開2003-56352号公報 2.特開2010-216315号公報 3.特開2008-180134号公報 4.特開2013-133796号公報 5.特開2005-220883号公報 6.特許第3417116号公報 第4 引用文献、引用発明 1 原査定の拒絶の理由に引用した特開2003-56352号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「自動車用ターボチャージャ付エンジン」に関して、図面(特に図5及び図6を参照。)とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用ターボチャージャ付エンジンの改良に関するものである。」 (2)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記公報に記載されたエンジンでは、エンジン本体の車両後方側において限られたスペースにターボチャージャを設置しているため、そのレイアウトの自由度が著しく制限されるという問題がある。すなわち、上記エンジン本体の車両後方側には、エンジンの駆動力を前輪に伝達するドライブシャフトや、マスタバック等からなる補機類等が配設されており、これらに干渉しないように上記ターボチャージャをレイアウトしなければならないため、その自由度が極めて小さいという問題があった。また、エンジン本体に近接した位置においてその車両後方側に、排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒が直結的に配設されている場合には、この排気ガス浄化触媒と干渉しないように上記ターボチャージャを配設することが特に困難であるという問題があった。 【0004】本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ターボチャージャを他の部材に干渉させることなく最適位置に配設することができる自動車用ターボチャージャ付エンジンを提供することを目的としている。」 (3)「【0013】 【発明の実施の形態】図1?図4は、本発明の実施形態に係る自動車用ターボチャージャ付エンジンが配設された自動車のエンジンルームを示している。このエンジンルーム内には、クランク軸が車軸方向を向くようにエンジン本体1が横置き式に搭載されるとともに、その一端部(エンジンルームの左側端部)にトランスミッション2が設置されている。また、上記エンジンルーム内には、エンジン本体1の燃焼室内に吸気を案内する吸気系が主としてエンジン本体1の車両前方側に配設されるとともに、上記燃焼室内から導出された排気ガスを案内する排気系がエンジン本体1の車両後方側に配設されている。」 (4)「【0017】また、上記排気系には、エンジン本体1の排気ポートから導出された排気ガスを案内する排気マニホールド13と、この排気マニホールド13を介して供給された排気ガスにより駆動されるターボチャージャ6のタービン14と、このタービン14の設置部から下方側に延びる排気通路15と、上記タービン14に近接した位置において排気通路15に配設された直結タイプの排気ガス浄化触媒16とが配設されている。 【0018】上記排気マニホールド13は、エンジン本体1の上部後面、つまりシリンダヘッド17の車体後方側の壁面に形成された各排気ポートに接続されて車体の後方側に延びる水平部と、この水平部の後端部から上方側に延びる鉛直部とからなっている。そして、上記排気マニホールド13の上端部にターボチャージャ6のタービン14が載置されることにより、上記ターボチャージャ6のタービンシャフト6aが上記排気ポートの開口位置よりも上方側に位置するようにターボチャージャ6が配設されている(図5参照)。 【0019】上記ターボチャージャ6は、エンジン本体1のクランク軸方向に配設されたブロア7およびタービン14と、このブロア7およびタービン14の間に配設された軸受部18とを有し、上記ブロア7がトランスミッション2側、つまり図2および図3に示す実施形態では、エンジンルーム内の左側に設置されるとともに、タービン14がエンジンルーム内の右側に設置されている。 【0020】また、エンジン本体1のクランク軸方向から見て、上記エンジン本体1の後部下方に設置されたドライブシャフト19の上方側に上記ターボチャージャ6が配設されるとともに、このターボチャージャ6よりも低く、かつ上記ドライブシャフト19よりも高い位置に排気ガス浄化触媒16が配設されている。 【0021】上記ターボチャージャ6の軸受部18には、図5および図6に示すように、エンジン本体1の車両前方側に配設されたオイルフィルタ20からオイル供給通路21を介して導出されたオイルが供給されるとともに、上記軸受部18から導出されたオイルがリターン通路22を介してエンジン本体1のシリンダヘッド17内に導出されるようになっている。 【0022】上記オイル供給通路21は、トランスミッション2の設置部の上方を通って、上記オイルフィルタ20の上端部と、ターボチャージャ6の軸受部18の上端部とを接続するように配管されている。また、上記オイルリターン通路22は、ターボチャージャ6の軸受部18の下端部と、シリンダヘッド17の後部壁面とを接続するように配管されている。 【0023】上記エンジン本体1は、クランク軸方向に沿って4個のシリンダボア23a?23dが形成されたシリンダブロック24と、その上端部に取り付けられたシリンダヘッド17と、その上部を覆うように設置されたシリンダヘッドカバー25と、シリンダブロック24の下端部を覆うように設置されたオイルパン26とを有している。上記シリンダヘッド17およびシリンダブロック24には、シリンダボア23a?23dの上方に設置された動弁機構(図示せず)に供給されたオイルをオイルパン26内に導出するオイルリターンホール27,28が上下に連通するように形成されている。 【0024】上記オイルリターンホール27,28は、エンジン本体1の気筒列方向の中間位置CLを挟んでその左右に設置され、エンジンルームの上方側から見て左側に位置するオイルリターンホール27は、図6に示すように、トランスミッション2側の端部、つまりエンジンルームの左側端部に設けられたシリンダボア23aとこれに隣接するシリンダボア23bとの間に形成され、エンジンルームの上方側から見て右側に位置するオイルリターンホール28は、エンジンルームの右側端部に設けられたシリンダボア23dとこれに隣接するシリンダボア23cとの間に形成されている。 【0025】そして、上記オイルリターン通路22が、エンジン本体1の中間位置CLよりもトランスミッション2の設置部側に配設されたオイルリターンホール27の上端部に接続されることにより、ターボチャージャ6の軸受部18から導出されたオイルが上記オイルリターンホール27内に導入されてオイルパン26内に案内されるようになっている。」 前記(1)ないし(4)に摘記した事項並びに図5及び6の図示内容から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。なお、本願発明の定義(本願明細書の段落【0019】を参照。)に倣い、エンジンの出力軸に沿う両側部を左右、冷却ファンの配置側を前側、フライホイル配置側を後側、排気マニホールド配置側を左側(一方の側部側、燃料噴射ポンプ装置配置側を右側(他方の側部側)と称し、これらを便宜的に、エンジンにおける四方の位置関係の基準とした。 《引用発明》 「エンジン本体1の左右一側面に設けた排気マニホールド13にターボチャージャ6のタービン14入り口が接続された自動車用ターボチャージャ付エンジンにおいて、 前記排気マニホールド13上方に前記ターボチャージャ6が配置されており、 前記ターボチャージャ6にオイルを注油するオイル供給通路21が、前記エンジン本体1の左右他側面から前記左右一側面に向かって前記エンジン本体1の前後一側面を経由して配管されるとともに、前記エンジン本体1の前記左右一側面において前記排気マニホールド13の前後一側方から前記排気マニホールド13の外側を通って前記排気マニホールド13の上方に向けて配管されており、 前記ターボチャージャ6からのオイルを抽出するオイルリターン通路22が前記排気マニホールド13の側方を通って下方に向けて配管されているエンジン装置。」 第5 対比、判断 1 本願発明1について (1)対比 引用発明の「エンジン本体1」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願発明1の「エンジン」に相当し、以下同様に、「排気マニホールド13」は「排気マニホールド」に、「ターボチャージャ6」は「過給機」に、「タービン14」は「排気側」に、「自動車用ターボチャージャ付エンジン」は「エンジン装置」に、「オイル」は「潤滑油」に、「オイル供給通路21」は「注油管」に、「オイルリターン通路22」は「戻り管」に、それぞれ相当する。 以上を踏まえると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。 《一致点》 「エンジンの左右一側面に設けた排気マニホールドに過給機の排気側入り口が接続されたエンジン装置において、 前記排気マニホールド上方に前記過給機が配置されており、 前記過給機に潤滑油を注油する注油管が、前記エンジンの左右他側面から前記左右一側面に向かって前記エンジンの前後一側面を経由して配管されるとともに、前記エンジンの前記左右一側面において前記排気マニホールドの前後一側方から排気マニホールドの外側を通って前記排気マニホールド上方に向けて配管されているエンジン装置。」 《相違点》 本願発明1においては、「前記排気マニホールドは、底面部を二股状に構成しており、前記過給機からの潤滑油を抽出する戻り管が前記排気マニホールドの底面部における二股部分の間を通って下方に向けて配管されている」のに対し、引用発明においては、前記排気マニホールド13は、底面部を二股状に構成しているかどうか不明であり、前記ターボチャージャ6からのオイルを抽出するオイルリターン通路22が前記排気マニホールド13の側方を通って下方に向けて配管されている点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 引用発明において、オイルリターン通路22は、排気マニホールドの側方を通ってエンジン本体1のシリンダヘッド17内に導出されるようになっており(引用文献1の段落【0021】、【0022】及び図5を参照。)、それにより、引用文献1の段落【0038】に記載される効果を奏するものである。 しかるに、それを、相違点に係る本願発明1のように「前記排気マニホールドの底面部における二股部分の間を通って下方に向けて配管されている」ものとすることには動機がない。また、そのようにすることにより引用文献1の効果を損なうものであるから、むしろ阻害要因があるというべきである。 そうすると、引用発明に基づいて、相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者といえども容易とはいえない。 また、引用文献2ないし6にも、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項について記載も示唆もされていない。 そして、本願発明1は、ターボ過給機60からの潤滑油を抽出する潤滑油戻り管53が排気マニホールド7底面における二股部分に沿って配管されているので、潤滑油戻り管65をエンジン1の左側面に近接してコンパクトに配管できる(段落【0074】参照。)という格別の作用効果を奏することができるものである。 してみると、引用発明に基いて本願発明1を発明することは当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、引用文献2ないし6にも、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項について記載も示唆もされていないのであるから、引用発明にこれらの記載事項を考慮したとしても、本願発明1は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)小括 したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし引用文献6記載事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし5について 本願発明2ないし5は、本願発明1の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものであるから、上記本願発明1についての判断と同様の理由により、引用発明及び引用文献2ないし6記載事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし5は、引用発明及び引用文献2ないし6記載事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-03-30 |
出願番号 | 特願2016-88491(P2016-88491) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F01M)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 池田 匡利、小林 勝広、西中村 健一 |
特許庁審判長 |
北村 英隆 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 鈴木 充 |
発明の名称 | エンジン装置 |
代理人 | 渡辺 隆一 |