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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1372381 |
審判番号 | 不服2020-8007 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-10 |
確定日 | 2021-04-13 |
事件の表示 | 特願2015-139739「偏光フィルム用硬化型接着剤組成物、偏光フィルムおよびその製造方法、光学フィルムならびに画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月26日出願公開、特開2017- 21240、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続等の経緯 特願2015-139739号(以下「本件出願」という。)は、平成27年7月13日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和 元年 5月 8日付け:拒絶理由通知書 令和 元年 9月11日提出:意見書 令和 元年 9月11日提出:手続補正書 令和 2年 2月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 2年 6月10日提出:審判請求書 令和 2年 6月10日提出:手続補正書 令和 2年11月27日付け:拒絶理由通知書 令和 3年 1月29日提出:意見書 令和 3年 1月29日提出:手続補正書 第2 本件発明 本件出願の請求項1?19に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明19」という。)は、令和3年1月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるところ、本件発明1は、以下のとおりのものである。 「 偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光フィルムであって、 前記透明保護フィルムは、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有する環状オレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂またはこれらの混合体であり、 前記接着剤層が、偏光フィルム用硬化型接着剤組成物の硬化物層により形成されたものであり、 前記偏光フィルム用硬化型接着剤組成物が、酸無水物基およびアルコキシシラン基を有する化合物、ならびに活性エネルギー線硬化性成分を含有することを特徴とする偏光フィルム。」 なお、本件発明2?16は、本件発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加したものである。また、本件発明17は本件発明1?16いずれかの製造方法の発明である。加えて、本件発明18は本件発明1?16いずれかの偏光フィルムを具備する「光学フィルム」の発明であり、本件発明19は本件発明1?16いずれかの偏光フィルム又は本件発明18の光学フィルムを具備する「画像表示装置」の発明である。 第3 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明 1 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開平8-302325号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。 (1)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、高温下又は高温高湿下においても凝集力及び接着力の経時変化が小さく、かつ、曲面接着力にも優れた新規な粘着剤組成物に関するものであり、特に光学フィルムと基材との接着に適した粘着剤組成物に関するものである。 ・・・省略・・・ 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭62-30233号公報開示の技術では、アクリル系重合体とシラン系化合物との結合力が弱いために接着力の向上は少なく、又、凝集力等の経時的変化の小さい粘着剤組成物を得るという点ではまだまだ満足のいくものではない。又、特開昭61-7369号公報開示の技術においては、グリシジル基と水酸基含有アクリル系樹脂との反応が遅く、常温では硬化し難いのが欠点であり、仮に硬化を促進させるために塩基性触媒を使用すると耐水性及び耐湿性が極端に低下してしまう。【0005】更に、特開平1-158087号公報開示技術においては、上記の常温硬化性が改善され、経時的にも耐水性、耐湿性の低下しない粘着剤組成物が得られているものの、より粘着力が要求される曲面の被着体、例えば、被着体として曲面が選ばれるラベル用途や光学用途(光学フィルムとガラス基材の接着用途)におけるフィルム型液晶あるいは曲面を有する液晶表示体等の曲面部分への粘着性能については、上記公報も含めて、何ら考慮されておらず、延いては該粘着剤組成物の使用用途にも制約を受けることになる。この点について本発明者が詳細に検討した結果、粘着剤用途の多様化を考えると、上記技術では充分な粘着性は得られず、充分といえるほど満足した粘着剤組成物を得るにはまだまだ改良の余地が残されている。 【0006】そこで上述の背景に基づき、高温下又は高温高湿下においても凝集力及び接着力の経時変化が小さく、かつ、被着体として曲面が選ばれるラベル用途や曲面を有するフィルム型液晶あるいは液晶表示体等の曲面の被着体への粘着力(曲面接着力)にも優れた粘着剤組成物の開発が望まれている。特に、偏光板、位相差板、楕円偏光板等の光学用途においてはその適用頻度も高く、かかる粘着剤組成物が大いに活用され得る状況にある。 【0007】 【課題を解決するための手段】しかるに、本発明者はかかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、エポキシ基と反応する官能基を含有するアクリル系樹脂(A)、エポキシ基と反応する官能基を有するシラン系化合物(B)、エポキシ基を少なくとも2個以上有する化合物(C)及び架橋剤(D)を含有してなる粘着剤組成物が、上記課題を解決することを見いだし本発明を完成した。 ・・・省略・・・ 【0046】保護層としては従来から知られているセルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルエーテルケトン系フィルム、ポリスルホン系フィルム等が挙げられるが、好適には三酢酸セルロースフィルム等のセルロースアセテート系フィルムが用いられる。 ・・・省略・・・ 【0048】・・・省略・・・保護層と偏光フィルム又は位相差フィルムの積層に関しては、天然あるいは合成ゴム、アクリル系樹脂、ブチラール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を主成分とする接着剤ないし粘着剤等を用いて、風乾法、化学硬化法、熱硬化法、熱溶融法等により接着せしめることができる。」 (2)「【0050】 【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。 実施例1 アクリル酸n-ブチル:アクリル酸=95:5(重量比)の配合物100部を重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイドを0.1部添加してトルエン中で重合し、アクリル系共重合物溶液を得た。該共重合物溶液に、該共重合物溶液の固形分100部に対して、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物(商品名:GF-20、Wacker-Chemie GmbH製)1.0部、グリセロールジグリシジルエーテル1.0部、架橋剤としてイソシアネート系化合物のコロネートL(日本ポリウレタン社製)1.0部を添加し、充分混合して粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物について、接着力、凝集力及び曲面接着力の評価を行った。尚、接着力、凝集力及び曲面接着力の評価方法は下記に示す通りである。 ・・・省略・・・ 【0054】又、得られた粘着剤組成物を厚さ1.1mmのガラス板上にアプリケーターを用いて乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃2分間乾燥して粘着性板を得、一方、膜厚30μmのポリビニルアルコール偏光フィルム(平均重合度1700、平均ケン化度99モル%、4倍延伸)の両側を厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムで積層した偏光板(ポリビニルアルコール偏光フィルムの延伸軸方向を45度傾けて150mm×200mmに切断)を作製し、この片面に上記粘着性板を積層し、ローラーで押圧してガラス積層偏光板を製造した。該偏光板について、下記の如くサイクル試験及びショック試験を行い、試験後の剥離の大きさ(mm)を測定し、以下の基準で評価した。 ・・・省略・・・ 【0062】実施例2 アクリル酸n-ブチル:アクリル酸=95:5(重量比)の配合物100部を3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物(商品名:GF-20、Wacker-Chemie GmbH製)1.0部の存在下で、重合開始剤としての過酸化ベンゾイルを0.1部添加してトルエン中で重合し、共重合物溶液を得た。該共重合物溶液に、該共重合物溶液の固形分100部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル1.0部及び架橋剤としてイソシアネート系化合物のコロネートL(日本ポリウレタン社製)1.0部を添加し、充分混合して粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物について実施例1と同様に接着力、凝集力及び曲面接着力を評価した。又、該粘着剤組成物を用いて実施例1と同様にして得られる偏光板、位相差板、楕円偏光板についても上記方法により剥離の大きさ(mm)及び光学特性変化を評価した。 【0063】実施例3 実施例1において、アクリル系共重合物の組成をアクリル酸n-ブチル:アクリル酸:メタクリル酸ヒドロキシエチル=95:3:2(重量比)に代え、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物(商品名:GF-20、Wacker-Chemie GmbH製)を3-メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物に代えた以外は同様に行い、得られた粘着剤組成物について実施例1と同様にして接着力、凝集力及び曲面接着力を評価した。又、該粘着剤組成物を用いて実施例1と同様にして得られる偏光板、位相差板、楕円偏光板についても上記方法により剥離の大きさ(mm)及び光学特性変化を評価した。 【0064】実施例4 実施例1において、更にトリエチレンジアミンを1.0部添加した以外は同様に行い、得られた粘着剤組成物について実施例1と同様に接着力、凝集力及び曲面接着力を評価した。又、該粘着剤組成物を用いて実施例1と同様にして得られる偏光板、位相差板、楕円偏光板についても上記方法により剥離の大きさ(mm)及び光学特性変化を評価した。 【0065】実施例5 実施例1において、更にN-ステアリルジエタノールアミンを1.0部添加した以外は同様に行い、得られた粘着剤組成物について実施例1と同様に接着力、凝集力及び曲面接着力を評価した。又、該粘着剤組成物を用いて実施例1と同様にして得られる偏光板、位相差板、楕円偏光板についても上記方法により剥離の大きさ(mm)及び光学特性変化を評価した。 【0066】実施例6 実施例1において、更に1,8-ジアザビシクロ-7-ウンデセンを1.0部及びN-ステアリルジエタノールアミンを1.0部添加した以外は同様に行い、得られた粘着剤組成物について実施例1と同様に接着力、凝集力及び曲面接着力を評価した。又、該粘着剤組成物を用いて実施例1と同様にして得られる偏光板、位相差板、楕円偏光板についても上記方法により剥離の大きさ(mm)及び光学特性変化を評価した。」 2 引用発明 引用文献1の上記1の記載に基づけば、引用文献1には、実施例1の粘着剤組成物を塗布して製造されたガラス積層偏光板として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、用語を統一して記載した。また、重合開始剤や商品名等については、記載を省略して簡潔なものとしたが、正確には、引用文献1に記載のとおりである。)。 「アクリル酸n-ブチル:アクリル酸=95:5(重量比)の配合物100部をトルエン中で重合し、アクリル系共重合物溶液を得、 アクリル系共重合物溶液に、アクリル系共重合物溶液の固形分100部に対して、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物1.0部、グリセロールジグリシジルエーテル1.0部、架橋剤としてイソシアネート系化合物のコロネートL1.0部を添加し、充分混合して粘着剤組成物を得、 得られた粘着剤組成物を厚さ1.1mmのガラス板上に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃2分間乾燥して粘着性板を得、 一方、膜厚30μmのポリビニルアルコール偏光フィルムの両側を厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムで積層した偏光板を作製し、 偏光板の片面に粘着性板を積層し、ローラーで押圧して製造した、ガラス積層偏光板。」 第4 対比・判断 1 本件発明1 (1)対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 ア 偏光子、透明保護フィルム 引用発明の「偏光板」は、「膜厚30μmのポリビニルアルコール偏光フィルムの両側を厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムで積層した」ものである。 上記構成からみて、引用発明の「ポリビニルアルコール偏光フィルム」は、本件発明1の「偏光子」に相当する。また、技術常識から、引用発明の「三酢酸セルロースフィルム」は、透明であり、「ポリビニルアルコール偏光フィルム」を保護するという機能を有することは、明らかである。 そうしてみると、引用発明の「三酢酸セルロースフィルム」は、本件発明1の「透明保護フィルム」に相当する。 イ 偏光フィルム 上記アの構成からみて、引用発明の「偏光板」は、フィルム状の偏光板である。 そうしてみると、引用発明の「偏光板」は、本件発明1の「偏光フィルム」に相当する。また、引用発明の「偏光板」と本件発明1の「偏光フィルム」は、「偏光子の少なくとも一方の面に」、「透明保護フィルムが設けられている」点で共通する。 (2)一致点及び相違点 以上より、本件発明1と引用発明とは、「偏光子の少なくとも一方の面に、透明保護フィルムが設けられている偏光フィルム。」の点で一致し、以下の点で相違するか、一応相違する。 (相違点1) 「偏光フィルム」が、本件発明1は、「偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられ」、「前記接着剤層が、偏光フィルム用硬化型接着剤組成物の硬化物層により形成されたものであり」、「前記偏光フィルム用硬化型接着剤組成物が、酸無水物基およびアルコキシシラン基を有する化合物、ならびに活性エネルギー線硬化性成分を含有する」ものであるのに対して、引用発明は、「接着剤層を介して」三酢酸セルロースフィルムが積層されているかどうかが一応明らかでなく、また、その余は、不明である点。 (相違点2) 「透明保護フィルム」が、本件発明1は、「シクロ系ないしはノルボルネン構造を有する環状オレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂またはこれらの混合体であ」るのに対して、引用発明は、「三酢酸セルロースフィルム」である点。 (3)判断 ア 新規性について 本件発明1と引用発明は、上記(2)で述べた点で相違するから、本件発明1と引用発明は、同一であるということができない。 イ 進歩性について 事案に鑑み、上記相違点1について検討する。 引用文献1の【0046】には、「保護層としては従来から知られているセルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルエーテルケトン系フィルム、ポリスルホン系フィルム等が挙げられるが、好適には三酢酸セルロースフィルム等のセルロースアセテート系フィルムが用いられる。」と記載されている。また、【0048】には、「保護層と偏光フィルム又は位相差フィルムの積層に関しては、天然あるいは合成ゴム、アクリル系樹脂、ブチラール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を主成分とする接着剤ないし粘着剤等を用いて、風乾法、化学硬化法、熱硬化法、熱溶融法等により接着せしめることができる。」と記載されている。 そして、上記の記載に接した当業者ならば、引用発明の「ポリビニルアルコール偏光フィルム」に「三酢酸セルロースフィルム」を積層するに際しては、「ポリビニルアルコール系樹脂等を主成分とする接着剤」が最適であることに直ちに気付くといえる(当合議体注:技術常識である。)。 そうしてみると、当業者が、引用発明を容易推考の出発点として、相違点1に係る構成を具備してなる本件発明1の構成に到ることはないといえる。 加えて、引用文献1には、「酸無水物基およびアルコキシシラン基を有する化合物、ならびに活性エネルギー線硬化性成分を含有する」「偏光フィルム用硬化型接着剤組成物」は記載されておらず、示唆もない。そして、「ポリビニルアルコール偏光フィルム」と「三酢酸セルロースフィルム」の接着に、あえて紫外線効果処理が必要な「活性エネルギー線硬化性成分」を用いる必要はなく、作業工程の増大を招くことが明らかな本件特許発明1の「偏光フィルム用硬化型接着剤組成物」を採用することには、阻害要因があるといえる。 さらに進んで検討すると、引用発明の「粘着剤組成物」は、「3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物」並びに「アクリル酸n-ブチル」及び「アクリル酸」の未反応物を含有するものであるから、引用発明の「粘着剤組成物」は、酸無水物基およびアルコキシシラン基を有する化合物、ならびに活性エネルギー線硬化性成分を含有する。しかしながら、引用発明の「粘着剤組成物」は、「厚さ1.1mmのガラス板上に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃2分間乾燥して粘着性板を得」、「偏光板の片面に粘着性板を積層し、ローラーで押圧して」「ガラス積層偏光板」を「製造」するためものであり、「膜厚30μmのポリビニルアルコール偏光フィルムの両側を厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムで積層」するためのものではないから、本件発明1の「偏光フィルム用硬化型接着剤組成物」に相当しない。また、引用文献1には、引用発明の「粘着剤組成物」を、「膜厚30μmのポリビニルアルコール偏光フィルムの両側を厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムで積層」するために用いるとの記載も示唆もない。 また、偏光子の面に透明保護フィルムを接着するための偏光フィルム用硬化型接着剤組成物として、酸無水物基およびアルコキシシラン基を有する化合物、ならびに活性エネルギー線硬化性成分を含有することは、原査定で示された、特開平8-302320号(以下「引用文献2」という。)、特開平8-300544号公報(以下「引用文献3」という。)、特開2006-22154号公報(以下「引用文献4」という。)、特開平8-300543号公報(以下「引用文献5」という。)のいずれの文献にも記載されておらず、また、周知技術であるともいえない。 したがって、当業者であっても、引用文献1?5に記載された発明に基づいて上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることが、容易になし得たということはできない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明ということができない。また、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。 (5)引用文献2について 引用文献2に記載された発明を主引例とした場合も、引用文献1に記載された発明を主引例とした場合と同様である。 2 本件発明2について 本件発明2?19は、本件発明1の構成を全て具備するものであるから、本件発明2?19も、本件発明1と同じ理由により、引用文献1又は2に記載された発明ということができず、また、引用文献1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということができない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 1 原査定の拒絶の概要 原査定の拒絶の理由は、概略、理由1(新規性)本件出願の請求項1?13、17?19に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、理由2(進歩性)本件出願の請求項1?19に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 引用文献1:特開平8-302325号公報 引用文献2:特開平8-302320号公報 引用文献3:特開平8-300544号公報 引用文献4:特開2006-22154号公報 引用文献5:特開平8-300543号公報 (当合議体注:引用文献1?2は、理由1及び理由2における主引例であり、引用文献3?5は、理由2における副引例又は周知技術を示す文献である。) 2 原査定についての判断 上記第4で述べたように、本件発明1?13、17?19は、引用文献1又は2に記載された発明であるということができない。また、本件発明1?19は、拒絶査定において引用された引用文献1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第6 当合議体が通知した拒絶の理由について 令和3年1月29日にした手続補正により、当合議体が通知した拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-03-29 |
出願番号 | 特願2015-139739(P2015-139739) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B) P 1 8・ 537- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小西 隆、竹村 真一郎 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
井口 猶二 神尾 寧 |
発明の名称 | 偏光フィルム用硬化型接着剤組成物、偏光フィルムおよびその製造方法、光学フィルムならびに画像表示装置 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |