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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F04D
管理番号 1372396
審判番号 不服2020-8211  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-12 
確定日 2021-04-13 
事件の表示 特願2016- 4372「ターボ圧縮機、これを備えたターボ冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月20日出願公開、特開2017-125434、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月13日の出願であって、令和元年10月21日付けの拒絶理由の通知に対し、令和元年12月23日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和2年3月30日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して令和2年6月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.引用文献2に記載された発明を主引用発明とした場合
本願の請求項1、3-4に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献4-5、8に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.引用文献3に記載された発明を主引用例用とした場合
本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献3に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項2-4に係る発明は、以下の引用文献3に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献6-7に記載された周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-256884号公報
2.特表2014-501377号公報
3.特開2002-339757号公報
4.特開2015-6072号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2006-336515号公報(周知技術を示す文献)
6.特開平8-326690号公報(周知技術を示す文献)
7.特開平6-280596号公報(周知技術を示す文献)
8.特開2005-163643号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、令和2年6月12日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を圧縮するターボ圧縮機であって、
回転軸と、
前記回転軸の中間部に同軸的に設けられて前記回転軸を回転駆動する電動機と、
前記回転軸の一端に固定されて圧縮部を構成するインペラと、
前記電動機と前記インペラとの間で前記回転軸を軸支する第1の軸受と、
前記回転軸の他端を軸支する第2の軸受と、を備え、
前記第1の軸受が転がり軸受であり、前記第2の軸受が滑り軸受であり、
前記転がり軸受は前記回転軸の軸方向の移動を許容しないことを特徴とするターボ圧縮機。
【請求項2】
前記滑り軸受に軸支される前記回転軸のジャーナル部の外径を、前記回転軸の基本外径よりも太くした請求項1に記載のターボ圧縮機。
【請求項3】
前記第2の軸受を潤滑する潤滑油の粘度範囲を、VGグレード100?220の範囲に設定した請求項1または2に記載のターボ圧縮機。
【請求項4】
最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を圧縮する請求項1から3のいずれかに記載のターボ圧縮機と、
前記ターボ圧縮機によって圧縮された前記低圧冷媒を凝縮させる凝縮器と、
膨張した前記低圧冷媒を蒸発させる蒸発器と、
を具備してなることを特徴とするターボ冷凍装置。」

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下、同様。)。

(1)「【0017】
[0021]図1は、通常の商用設定の、建物12内にある加熱、換気、空調(heating, ventilation and air conditioning(HVAC))システム10の例示の一環境を示す。システム10は、建物12を冷却するのに使用することができる冷却された液体を供給することができる蒸気圧縮システム14を含むことができる。・・」

(2)「【0018】
[0022]図2および3は、HVACシステム10内で使用することができる例示の蒸気圧縮システム14を示す。蒸気圧縮システム14は、圧縮機32から始まり、復水器34と、膨張弁(複数可)または膨張デバイス(複数可)36と、液体冷却装置または蒸発器38とを含む回路を通るように冷媒を循環させることができる。・・蒸気圧縮システム14内で冷媒として使用することができる流体の一部の例として、例えばR-410A、R-407、R-134a、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、アンモニア(NH3)のような「自然」冷媒、R-717、二酸化炭素(CO2)、R-744といったようなハイドロフルオロカーボン(HFC)ベースの冷媒、または、ハイドロカーボンベースの冷媒、水蒸気、あるいは、他の任意適切なタイプの冷媒がある。例示の一実施形態では、蒸気圧縮システム14は、可変速駆動装置(VSD)52、動力装置50,圧縮機32、復水器34、膨張弁または膨張デバイス36、および/あるいは蒸発器38の各々のうちの1つまたは複数を使用することができる。」

(3)「【0019】
[0023]圧縮機32と共に使用される動力装置50は可変速駆動装置(VSD)52によって動力供給され得るか、または、交流(AC)電源または直流(DC)電源によって直接に動力供給され得る。」

(4)「【0020】
[0024]圧縮機32は、冷媒蒸気を圧縮し、排出通路を介してその蒸気を復水器34まで送出する。圧縮機32は例示の一実施形態では遠心圧縮機であってよい。・・」

(5)「【0024】
[0028]図6に示されるように、代替の冷却システム176は、冷却システム76と同様に、電動機固定子88を冷却し、さらには、図5の動力装置ハウジング82に類似する動力装置ハウジング182の内部で蒸気相部分108を循環させる。しかし、動力装置ハウジング82の外部にある容器94内で二相冷却流体を分離すること(図5)の代わりに、二相冷却流体はライン116を介して、カバー118を通って動力装置ハウジング182内に直接に搬送されることから、それによりコンパートメント133が画定されることになる。言い換えると、二相冷却流体を蒸気相部分と液相部分とに分離することが動力装置ハウジング182内に組み込まれる。したがって、動力装置ハウジング182内部に二相冷却流体が導入されると、液相部分98が開口部120付近のカバー118の下側で収集され、開口部120に到達するような液相部分の高さになるまで蓄積される。一実施形態では、導管またはライン116は、全体とは言わないまでも、少なくとも部分的に動力装置ハウジングの内部にあってよい。液相部分が開口部120に到達すると、液相部分は、絞りデバイス80を通って蒸発器38まで延在するライン124内に誘導される。このような構成により、液相部分が動力装置ハウジング182のキャビティ内部を循環することが防止され、それにより、液相部分に接触する場合には損傷する可能性があるような高速で回転する構成要素に接触することも防止される。蒸気相部分108は動力装置ハウジング182のキャビティ内部を循環し、開口部126、ならびに、軸128と軸受130との間の空隙、電動機回転子129と電動機固定子88との間の空隙、動力装置ハウジング182の内部の別の構成要素間の空隙を通過する。蒸気相部分108が動力装置ハウジング182内の種々の開口部および軸受間(または、軸受付近)ならびに別の場所を循環して動力装置ハウジングの内部を冷却すると、蒸気相部分はカバー118の実質的に反対側にあるコンパートメント134に到達し、ライン136を介して動力装置ハウジングから流出して蒸発器38まで搬送される。さらに、コンパートメント134は、軸128とラビリンスシール132との間の圧縮ステージから漏洩するガスも収集する。」

(6)「【0025】
[0029]図6に類似する図7に示されるように、冷却システム276は、反対側にある翼車278、280を有する遠心圧縮機などの多段圧縮機232の動力装置250に連結される。」

(7)記載事項(1)-(4)及び図1-6の図示内容によると、動力装置50及び圧縮機32は、冷媒であるハイドロフルオロオレフィン(HFO)を圧縮するものであるいえる。

(8)記載事項(5)及び図6の図示内容によると、電動機回転子129及び電動機固定子88は軸128の中間部に同軸的に設けられており、軸128を回転駆動するものといえる。

(9)記載事項(6)及び図7の図示内容によると、遠心圧縮機は翼車を有するから、翼車は遠心圧縮機を構成するものといえる。すると、図6に図示された軸128の一端に固定されたものも翼車であって、遠心圧縮機を構成しているといえる。そして、記載事項(4)によれば、遠心圧縮機は「圧縮機32」であるから、図6に図示された翼車は軸128の一端に固定されて圧縮機32を構成しているといえる。

(10)記載事項(5)及び図6の図示内容によると、一方の軸受130が電動機回転子129及び電動機固定子88と翼車との間で軸128を軸支し、他方の軸受130が軸128の他端を軸支しているといえる。

(11)図6の図示内容によると、一方の軸受130及び他方の軸受130はともに転がり軸受であるといえる。

したがって、前記引用文献2の記載事項(1)?(11)及び図面の図示内容を総合すると、前記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)を圧縮する動力装置50及び圧縮機32であって、
軸128と、
前記軸128の中間部に同軸的に設けられて前記軸128を回転駆動する電動機回転子129及び電動機固定子88と、
前記軸128の一端に固定されて圧縮機32を構成する翼車と、
前記電動機回転子129及び電動機固定子88と前記翼車との間で前記軸128を軸支する一方の軸受130と、
前記軸128の他端を軸支する他方の軸受130と、を備え、
前記一方の軸受130と前記他方の軸受130とがともに転がり軸受である、動力装置50及び圧縮機32。」

2.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、背景技術の欠点を回避し、電気的なターボ圧縮機を内燃機関の過給空気供給部内で排ガスターボ過給機に対して直列に運転し、かつターボ圧縮機の迂回のためのバイパス通路を不要にすることである。」

(2)「【0007】
【発明の実施の形態】図1には、本発明に基づく過給空気圧縮機の第1実施例が示してある。過給空気圧縮機1は電動モータ及び過給空気の圧縮のための圧縮機部分を有している。」

(3)「【0008】・・図1から明らかなように、圧縮機ケーシング2内で圧縮機羽根車3が空気入口21に関して同心的に軸51に配置されている。圧縮機羽根車3は平らな下面33を有しており、該下面が底壁24に向けられている。軸51が底壁24を貫通して電動モータに通じている。圧縮機羽根車3の上面(上面側)が、自体公知の形式で、3次元に構造化された羽根の形の圧縮機構造体31を備えており、圧縮機構造体の、カバー壁23に向かって突出する最も外方の縁部がホッパー形のカバー壁23の内面輪郭に適合せしめられている。空気入口21から、過給空気のための流過通路が、カバー壁23の内面に沿って開口27まで延びており、そこから流過通路は渦巻室25の内室9を経て、空気出口22に接続されている。流過通路の、カバー壁23の内面に沿って開口27まで延びる区分が、圧縮区分(圧縮領域)8を形成している。図2から明瞭にわかるように、過給空気圧縮機1の運転中には、回転する圧縮機羽根車3の羽根(成形羽根部分)31が流過通路の圧縮区分8内に係合して、即ち入り込んでいる。この場合に羽根31の、カバー縁部に向けられた上方の縁部32が極めて小さなギャップ(間隙)によってカバー部分23から離されており、該ギャップがちょうど羽根31とカバー壁23との接触を確実に回避できる大きさである。運転中に空気入口21から圧縮区分8内に達する過給空気が、回転する羽根31によって加速され、かつこれにより生じる遠心力によって開口27まで次第に圧縮される。圧縮された過給空気が開口27を通って渦巻室25内に、かつそこから空気出口22に達する。」

(4)「【0009】電動モータがステータ4及びロータ5を有している。ステータ4が、圧縮機ケーシング2の底壁24に装着された閉じたケーシング41及び、ケーシング41内に配置された不動の電磁石42を有している。電動モータのロータ5が、図示の実施例では、いわゆる内部回転子として構成されている。ロータ5をベル形ロータとして形成することも可能であり、この場合、ロータがステータの周囲に同心的に配置される。ロータ5はケーシング41内に回転運動可能に支承されていて、磁石回転子52を有しており、磁石回転子が軸51の周囲に同心的に配置されており、軸51がステータ4のケーシング41内に回転運動可能並びに軸線方向移動可能に支承されている。」

(5)「【0011】軸51が、本発明に基づく過給空気圧縮機1では回転運動可能及び軸方向移動可能に支承されている。このために、スラスト玉軸受11を用いてあり、該スラスト玉軸受がケーシング41の、圧縮機ケーシング2に向けられた壁43に配置されており、さらに壁43内に配置された滑り軸受17及びケーシング41の、圧縮機ケーシング2とは逆の側の壁44に配置された滑り軸受19を用いてある。スラスト玉軸受11が玉案内を備えた玉ブッシュの形式で形成されている。玉案内が第1の案内部分(軌道輪)14及び、該第1の案内部分14に対して軸方向移動可能な第2の案内部分15を有している。第1の案内部分14と第2の案内部分15との間に、複数の玉13を次のように収容してあり、即ち、玉13が直接に軸51上を転動するようになっている。・・実施例に示した軸受の代わりに、もちろん他の軸受を使用することもできる。重要なことは、軸を回転運動可能にかつ軸方向移動可能に支承することである。」

(6)「【0015】排ガスターボ過給機60の圧縮機61が、最初の遅れの後に次第に圧縮された過給空気を過給空気圧縮機1に供給しはじめると、過給空気圧縮機の空気入口21が圧力室26内の空気圧力に対して高圧で負荷され、これによって圧縮機羽根車3が第2の作業位置から底壁24に向かって第1の作業位置へ押し戻される。これによって圧縮機羽根車3の羽根31が部分的に圧縮区分8から離され、即ち圧縮区分8内から外側へ移される。電磁石に電圧が印加されている限り、リラクタンス力が磁石回転子52を対称的な位置に保つ。電磁石が遮断されると、最終的に、空気入口21を通って流入する過給空気が圧縮機羽根車3を静止位置に押し戻す(図1)。該運動は、必要に応じて戻しばね(図示せず)によって助成されてよく、該戻しばねが例えばケーシング壁43とロータ5との間に挿入されてよい。過給空気圧縮機1を、重力が図1の回転軸線10の方向で上方から下方に向かって作用するように配置してある場合には、圧縮機羽根車3の戻し運動は、ロータ5と圧縮機羽根車3とから形成されたユニットの重力によっても助成される。圧縮機羽根車3の第1の作業位置へ、かつそこから静止位置への移動によって、羽根31が次第に圧縮区分8から離され、有利には完全に離され、その結果、過給空気が圧縮機ケーシング2内の流過通路を実質的に妨げられることなく、図1に矢印で示すように流過する。過給空気圧縮機1は有利にはスライド式に遮断されてよく、換言すれば、電磁石に印加される電圧が次第に減少せしめられる。これによって、排ガスターボ過給機が回転数の増大に伴って次第に内燃機関の過給量を増大する。」

(7)記載事項(2)及び図1-3の図示内容によると、過給空気圧縮機1は過給空気を圧縮するものといえる。

(8)記載事項(4)及び図1-2の図示内容によると、電動モータのロータ5は回転運動可能であって、ロータ5が有する磁石回転子52が軸51の周囲に同心的に配置され、軸方向において当該磁石回転子が軸51の中間に位置しているから、前記電動モータは、軸51の中間部に同軸的に設けられて前記軸51を回転駆動するものといえる。

(9)記載事項(3)及び図1-2の図示内容によると、圧縮機羽根車3は軸51の一端に固定され、圧縮機羽根車3の羽根31が回転することによって過給空気を圧縮しているから、圧縮機羽根車3は軸51の一端に固定されて圧縮部を構成しているといえる。
(なお、図1の「軸51」に対する軸方向の「圧縮機羽根車3」の位置と、図2の「軸51」に対する軸方向の「圧縮機羽根車3」の位置とが異なっており、「圧縮機羽根車3」が「軸51」に対して動いているように看取されるが、図2の「軸51」の長さが図1のものに比べて明らかに短いこと、また、「圧縮機羽根車3」が「軸51」に固定されていなければ「軸51」の軸方向の移動とともに「圧縮機羽根車3」を移動させることができないことを考慮すると、図1又は図2の図示内容に誤記があるものと認められる。)

(10)記載事項(5)及び図1-2の図示内容によると、スラスト玉軸受11がロータ5と圧縮機羽根車3との間にあり軸51を回転運動可能に支承しているから、スラスト玉軸受11は電動モータと圧縮機羽根車3との間で軸51を軸支するものといえる。

(11)記載事項(5)及び図1-2の図示内容によると、滑り軸受19が、ケーシング41の圧縮機ケーシング2とは逆の側の壁44に配置されているから、滑り軸受19は軸51の他端を軸支するものといえる。

(12)記載事項(5)及び図1-2の図示内容によると、スラスト玉軸受11は軸51を軸方向移動可能に支承するものといえる。

したがって、前記引用文献3の記載事項(1)?(12)及び図面の図示内容を総合すると、前記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「過給空気を圧縮する過給空気圧縮機1であって、
軸51と、
前記軸51の中間部に同軸的に設けられて前記軸51を回転駆動する電動モータと、
前記軸51の一端に固定されて圧縮区分8を形成する圧縮機羽根車3と、
前記電動モータと前記圧縮機羽根車3との間で前記軸51を軸支するスラスト玉軸受11と、
前記軸51の他端を軸支する滑り軸受19と、を備え、
前記スラスト玉軸受11が転がり軸受であり、前記滑り軸受19が滑り軸受であり、
前記スラスト玉軸受11は前記軸51を軸方向移動可能に支承する、過給空気圧縮機1」

3.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0023】
本発明の解決しようとする課題は、軸電圧を低減し、軸受電食の発生を抑制することにより長寿命・高信頼性の回転電機、回転負荷結合体及び回転負荷結合体を具備する空気調和機を提供することである。」

(2)「【0039】
図1は、本発明の実施例における回転電機21の断面を示した構造図である。本実施例では、電気機器としてのエアコン用に搭載され、送風ファンを駆動するためのブラシレス回転電機である回転電機の一例を挙げて説明する。また、本実施例では、回転子が固定子の内周側に回転自在に配置されたインナロータ型の回転電機の例を挙げて説明する。」

(3)「【0043】
回転子2の軸1には、軸1を支持する出力軸側の玉軸受14及び反出力軸側の含油軸受5が取り付けられている。出力軸側の玉軸受14は、複数の鉄ボールを有した円筒形状のベアリングであり、出力軸側の玉軸受14の内輪側が軸1に固定されている。図1では、軸1がブラシレス回転電機本体から突出した側となる出力軸側において、出力軸側の玉軸受14が軸1を支持し、その反対側(反出力軸側)において、反出力側の含油軸受5が軸1を支持している。
【0044】
そして、これらの出力軸側の玉軸受14及び反出力軸側の含油軸受5は、それぞれ導電性を有した金属製のブラケットにより、出力軸側の玉軸受14及び反出力軸側の含油軸受5の外輪側が固定されている。図1では、出力軸側の玉軸受14が出力軸側の金属ブラケット13により固定され、反出力軸側の含油軸受5が反出力軸側の金属の金属ブラケット6により固定されている。以上のような構成により、軸1が出力軸側の玉軸受14及び反出力側の含油軸受5に支承され、回転子2が回転自在に回転する。」

(4)「【0051】
次に、本回転電機のより詳細な構成について説明する。まず、本回転電機は、上述したように、軸1が出力軸側の玉軸受14及び反出力軸側の含油軸受5で支持されるとともに、それぞれの出力軸側の玉軸受14及び反出力軸側の含油軸受5もブラケットにより固定され、支持されている。さらに本実施例では、それぞれ出力軸側の玉軸受14及び反出力軸側の含油軸受5が、導電性を有した金属製のブラケットにより固定されるような構成としている。すなわち、本実施例では、予め鋼板で加工され寸法精度の良好な導電性のブラケットを出力軸側の玉軸受14及び反出力軸側の含油軸受5の固定に採用している。特に、回転電機の高出力化が要求される場合には、このような構成とすることがより好ましい。」

(5)「【0059】
さらに、第一の導通端子19へは、ブラケット接続部3の一方端を接続する。このブラケット接続部3は、絶縁性の樹脂7の内部において、ブラケットのつば部6bから本回転電機の外周方向へと延伸され、本回転電機の外周近辺から軸1とほぼ平行して出力軸側へとさらに延伸している。そして、ブラケット接続部3の他方端は、第二の導通端子20へと接続されている。」

(6)「【0061】
このような構成により、出力軸側の金属ブラケット13と反出力軸側の金属ブラケット6との2つのブラケットは、第一の導通端子19、第二の導通端子20、ブラケット接続部3これらを介して電気的に接続される。また、出力軸側の金属ブラケット13および反出力軸側の金属ブラケット6は、絶縁性の樹脂7により固定子鉄心9と絶縁された状態で、この2つのブラケットが電気的に接続される。
【0062】
このようにして、玉軸受14の外輪とすべり軸受である含油軸受5とが導通し、含油軸受5が軸1と導通することによって、玉軸受14の外輪と内輪とを電気的に短絡させたに等しい構成となるため、玉軸受14の外輪と内輪との間の軸電圧に起因する電位差は、電気的な短絡回路の両端電圧値程度まで降下することとなり、電食の発生は抑制される。」

第5 対比・判断
1.引用発明2に基く進歩性について
(1)本願発明1について
ア.対比
まず、本願発明1と引用発明2とを対比・判断する。

引用発明2の「動力装置50」と「圧縮機32」とを組み合わせたものは、本願発明1の「ターボ圧縮機」に相当する。すると、引用発明2の「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)を圧縮する動力装置50及び圧縮機32」と、本願発明1の「最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を圧縮するターボ圧縮機」とは、「冷媒を圧縮するターボ圧縮機」である点で共通する。
引用発明2の「軸128」は、本願発明1の「回転軸」に相当する。引用発明2の「電動機回転子129」と「電動機固定子88」とを組み合わせたものは、本願発明1の「電動機」に相当する。また、引用発明2の「圧縮機32」、「翼車」、「一方の軸受130」、「他方の軸受130」は、それぞれ本願発明1の「圧縮部」、「インペラ」、「第1の軸受」、「第2の軸受」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明2とは、
「冷媒を圧縮するターボ圧縮機であって、
回転軸と、
前記回転軸の中間部に同軸的に設けられて前記回転軸を回転駆動する電動機と、
前記回転軸の一端に固定されて圧縮部を構成するインペラと、
前記電動機と前記インペラとの間で前記回転軸を軸支する第1の軸受と、
前記回転軸の他端を軸支する第2の軸受と、を備え、
前記第1の軸受が転がり軸受である、ターボ圧縮機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1は、「最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を圧縮するターボ圧縮機」であって、「第2の軸受が滑り軸受であ」るのに対して、引用発明2は、「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)を圧縮する動力装置50及び圧縮機32」であるものの、前記「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」が最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒であるのか明らかでなく、また、他方の軸受が「転がり軸受」であって「滑り軸受」ではない点。

[相違点2]
第1の軸受である転がり軸受と回転軸との関係について、本願発明1では、「前記転がり軸受は前記回転軸の軸方向の移動を許容しない」のに対し、引用発明2では、一方の軸受が回転軸の軸方向の移動を許容するのかしないのか明らかでない点。

イ.相違点についての判断
前記相違点1について検討する。
前記引用文献4の記載事項(1)?(6)及び図1の図示内容によると、引用文献4には、電気機器としてのエアコン用に搭載され、送風ファンを駆動するためのブラシレス回転電機が、回転子2の軸1を出力軸側で支持する玉軸受14と、前記軸1を反出力軸側で支持する含油軸受5とを備え、前記玉軸受14の外輪とすべり軸受である前記含油軸受5とが金属ブラケット6、13及びブラケット接続部3を介して導通し、前記含油軸受5が軸1と導通することによって、前記玉軸受14の外輪と内輪とを電気的に短絡させる構成とすることで、前記玉軸受14における電食の発生を抑制する事項が記載されている。
前記引用文献4の記載によれば、引用文献4に記載の「ブラシレス回転電機」は、回転子2の軸1を出力軸側で支持する玉軸受14と、前記軸1を反出力軸側で支持する含油軸受5とを備えるものであって、出力軸側の玉軸受14における電食の発生を抑制するために、反出力軸側の軸受を滑り軸受とするものである。しかし、引用文献2には、電食の発生を抑制するという課題について何ら記載も示唆もされておらず、また、当該課題は引用発明2において自明な課題であるともいえない。そうすると、引用発明2と引用文献4に記載された事項とは、一方が「圧縮機32」であるのに対して他方が「送風ファンを駆動するためのブラシレス回転電機」であって前提とする構成が異なる上、共通する課題を有しているとはいえず、引用発明2に引用文献4に記載された事項を適用しようとする動機付けがあるとはいえない。
また、引用文献2の段落【0018】において例示された「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」と併記されるR-410A、R-407、R-134a、アンモニア(R-717)、二酸化炭素(R-744)等の冷媒は低圧冷媒ではないこと、また、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)であっても、本願の段落【0003】で開示されたHFO-1233zd(E)とは別のHFO-1234ze(E)やHFO-1234yfは低圧冷媒であるとはいえず、「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」であることをもって直ちにこれが低圧冷媒であるともいえないことから、引用発明2の圧縮機32が「最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を圧縮する」ことを想定されたものと解することはできない。
そうすると、仮に、引用発明2に引用文献4に記載された事項を適用しても、最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を圧縮するターボ圧縮機において、インペラ側の第1の軸受を転がり軸受とし、インペラとは反対側の第2の軸受を滑り軸受とする構成を得ることはできない。
さらに、この相違点1に係る、「最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を圧縮するターボ圧縮機」であって、「第2の軸受が滑り軸受であ」るという事項について、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3、5-8、令和元年10月21日付けの拒絶理由の通知で引用された引用文献1のいずれにも、何ら記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明2において、引用文献4に記載された事項、及び引用文献1、3、5-8に記載された事項を検討しても、前記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易であるとはいえない。

そして、本願発明1は、前記相違点1に係る事項を有することにより、最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を圧縮するターボ圧縮機において、電動機の高速回転化と電動機冷却性の低下とによる電動機から回転軸への入熱量の増大に起因する回転軸の熱伸びや、インペラ径の増大による回転振動に起因する機械損失を抑制し、ターボ冷凍装置の効率を高めることが可能になるという特有の作用効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明2、引用文献4に記載された事項、及び引用文献1、3、5-8に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。

(2)本願発明2-4について
請求項2-4は請求項1を引用するものであり、本願発明2-4も、本願発明1の前記相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-4は、当業者であっても、引用発明2、引用文献4に記載された事項、及び引用文献1、3、5-8に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

2.引用発明3に基く進歩性について
(1)本願発明1について
ア.対比
次に、本願発明1と引用発明3とを対比・判断する。

引用発明3の「過給空気圧縮機1」、「軸51」、「電動モータ」、「圧縮区分8」、「圧縮機羽根車3」、「スラスト玉軸受11」、「滑り軸受19」は、それぞれ本願発明1の「ターボ圧縮機」、「回転軸」、「電動機」、「圧縮部」、「インペラ」、「第1の軸受」、「第2の軸受」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明3とは、
「媒体を圧縮するターボ圧縮機であって、
回転軸と、
前記回転軸の中間部に同軸的に設けられて前記回転軸を回転駆動する電動機と、
前記回転軸の一端に固定されて圧縮部を構成するインペラと、
前記電動機と前記インペラとの間で前記回転軸を軸支する第1の軸受と、
前記回転軸の他端を軸支する第2の軸受と、を備え、
前記第1の軸受が転がり軸受であり、前記第2の軸受が滑り軸受である、ターボ圧縮機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
ターボ圧縮機が圧縮する媒体について、本願発明1は「最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒」を圧縮するのに対し、引用発明3は「過給空気」を圧縮するものの、「最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒」ではない点。

[相違点2]
第1の軸受である転がり軸受と回転軸との関係について、本願発明1では「前記転がり軸受は前記回転軸の軸方向の移動を許容しない」のに対し、引用発明3では「前記スラスト玉軸受11は前記軸51を軸方向移動可能に支承する」点。

イ.相違点についての判断
事案に鑑みて、前記相違点2について、先に検討する。
「回転軸の軸方向の移動を許容しない」転がり軸受は、本願の出願前において広く知られたものであるといえる。しかし、引用文献3は、「電気的なターボ圧縮機を内燃機関の過給空気供給部内で排ガスターボ過給機に対して直列に運転し、かつターボ圧縮機の迂回のためのバイパス通路を不要にすること」(段落【0004】)を課題とするものであって、引用文献3の段落【0011】には、スラスト玉軸受11が玉案内を備えた玉ブッシュの形式で形成され、玉案内が第1の案内部分(軌道輪)14及び該第1の案内部分14に対して軸方向移動可能な第2の案内部分15を有し、第1の案内部分14と第2の案内部分15との間に収容された複数の玉13が直接に軸51上を転動するように構成されることで、軸51を回転運動可能にかつ軸方向移動可能に支承するという事項が記載されている。このように、引用発明3は、スラスト玉軸受11が軸51を軸方向移動可能に支承することにより、作業位置と静止位置との間で圧縮機羽根車3の移動を可能とし、圧縮機羽根車3が静止位置にあるときに過給空気が圧縮機ケーシング2内の流過通路を実質的に妨げられることなく流過することで前記課題を解決するものである(段落【0015】)。すると、「回転軸の軸方向の移動を許容しない」転がり軸受が、本願の出願前において周知の事項であったとしても、引用発明3においてスラスト玉軸受11を“軸51の軸方向の移動を許容しない”ものとした場合、引用発明3の前記課題を解決することができなくなるから、引用発明3において前記周知の事項を採用することの動機付けがあるとはいえない。
そうすると、引用発明3において、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2、4-8、及び令和元年10月21日付けの拒絶理由の通知で引用された引用文献1に記載された事項を検討しても、前記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易であるとはいえない。

したがって、本願発明1は、相違点1について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明3、引用文献1-2、4-8に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。

(2)本願発明2-4について
請求項2-4は請求項1を引用するものであり、本願発明2-4も、本願発明1の前記相違点2に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-4は、当業者であっても、引用発明3、引用文献1-2、4-8に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1は当業者であっても拒絶査定において引用された引用文献2-3に記載された事項、及び引用文献4-8に記載されたような周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-24 
出願番号 特願2016-4372(P2016-4372)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F04D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田谷 宗隆  
特許庁審判長 柿崎 拓
特許庁審判官 関口 哲生
神山 貴行
発明の名称 ターボ圧縮機、これを備えたターボ冷凍装置  
代理人 藤田 考晴  
代理人 三苫 貴織  
代理人 川上 美紀  
代理人 長田 大輔  
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