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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1372416
審判番号 不服2019-12189  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-13 
確定日 2021-04-13 
事件の表示 特願2016-544321「Diameter負荷および過負荷情報ならびに仮想化のための方法、システムおよびコンピュータ読取可能媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月26日国際公開、WO2015/041750、平成28年11月24日国内公表、特表2016-536939、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)7月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年9月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 7月 9日付け :拒絶理由通知書
平成30年12月14日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 1月 4日付け :拒絶理由通知書
平成31年 4月15日 :意見書の提出
平成31年 4月26日付け :拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 元年 9月13日 :審判請求書の提出
令和 2年10月 6日付け :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」とい う。)通知書
令和 3年 1月 7日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成31年 4月26日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本願請求項1ないし15に係る発明は、以下の引用文献AないしDに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.米国特許出願公開第2012/0300615号明細書
B.樋口 毅 他、「待機用リソース制御方式の検討」、電子情報通信学会
2010年通信ソサイエティ大会講演論文集2、2010年8月31日、p.368
C.米国特許出願公開第2011/0023029号明細書
D.特表2011-521334号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。

1.(進歩性)本願請求項1ないし15に係る発明は、以下の引用文献1ないし6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2012/0300615号明細書(原査定の文献A)
2.特開2013-98597号公報
3.国際公開第2013/041128号
4.樋口 毅 他、「待機用リソース制御方式の検討」、電子情報通信学会 2010年通信ソサイエティ大会講演論文集2、2010年8月31日、p.368(原査定の文献B)
5.米国特許出願公開第2011/0023029号明細書(原査定の文献C)
6.特表2011-521334号公報(原査定の文献D)

第4 本願発明
本願請求項1ないし15に係る発明は、令和3年1月7日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1ないし15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は、以下のとおりの発明である(補正箇所に下線を付した)。

「 【請求項1】
ネットワーク仮想化を管理するために過負荷情報を使用するための方法であって、
ハードウェアプロセッサを含む、電気通信ネットワーク内の仮想ネットワークを管理するための仮想化オーケストレータ(VO)で、
Diameter過負荷情報を受信することと、
受信されたDiameter過負荷情報に基づいて、行なうべきネットワーク仮想化動作を判断することと、
前記Diameter過負荷情報により示された過負荷に応答して、1つ以上のネットワーク仮想化モジュールを用いる電気通信ネットワークにおいて、1つ以上の追加の仮想スイッチを用いることにより、前記Diameter過負荷情報によって示される過負荷を緩和するための追加のリソースを使用するように前記電気通信ネットワークを管理するための前記ネットワーク仮想化動作を行なうこととを含む、方法。
【請求項2】
Diameter過負荷情報を受信することは、複数のDiameterクライアントと複数のDiameterサーバとの間の通信を容易にするためのDiameterエージェントからネットワーク負荷および過負荷情報を受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Diameter過負荷情報を受信することは、ポリシーおよび課金規則機能(PCRF)プラグインモジュール、クラウド管理プラグイン、または情報収集モジュールのうちの少なくとも1つから情報を直接受信することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Diameter過負荷情報を受信することは、属性値ペア(AVP)またはDiameterメッセージを含む情報を受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
行なうべきネットワーク仮想化動作を判断することは、前記受信されたDiameter過負荷情報および前記電気通信ネットワークの現在のネットワークトポロジーのステータスを解析して、前記Diameter過負荷情報および前記現在のネットワークトポロジーのステータスに基づいて行なわれるべきネットワーク仮想化動作を特定するために、規則エンジンを使用することを含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
行なうべきネットワーク仮想化動作を判断することは、ネットワーク仮想化動作規則を提供するための規則データベース、ネットワーク状態情報を維持するための状態データベース、およびネットワークトポロジ情報を維持するためのトポロジデータベースのうちの少なくとも1つからの情報を使用することを含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
行なうべきネットワーク仮想化動作を判断することは、電気通信ネットワーク内から収集された情報を使用することを含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
行なうべきネットワーク仮想化動作を判断することは、前記電気通信ネットワークの外部のエンティティから受信された情報を使用することを含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記電気通信ネットワーク内で収集された情報を使用することは、イベントインターフェイスを介して収集された関連付けられたネットワークからの情報、PCRFプラグインを介して送信されたネットワーク性能インジケータ、およびインターフェイスモジュールを介して収集された情報のうちの少なくとも1つを使用することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ネットワーク仮想化を管理するために過負荷情報を使用するためのシステムであって、
電気通信ネットワーク内の仮想ネットワークを管理するための仮想化オーケストレータ(VO)を含み、前記VOは、
Diameter過負荷情報を受信するためのネットワークインターフェイスと、
受信されたDiameter過負荷情報に基づいてネットワーク仮想化動作を判断し、前記Diameter過負荷情報により示された過負荷に応答して、1つ以上のネットワーク仮想化モジュールを用いる電気通信ネットワークにおいて、1つ以上の追加の仮想スイッチを用いることにより、前記Diameter過負荷情報によって示される過負荷を緩和するための追加のリソースを使用するように前記電気通信ネットワークを管理するための前記ネットワーク仮想化動作を行なうための規則エンジンとを含む、システム。
【請求項11】
前記規則エンジンは、ネットワーク仮想化モジュールを介して前記ネットワーク仮想化動作を行なう、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記仮想化オーケストレータは、複数のDiameterクライアントと複数のDiameterサーバとの間の通信を容易にするためのDiameterノードから前記Diameter過負荷情報を受信する、請求項10または請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記Diameter過負荷情報は、属性値ペア(AVP)を含む情報を含む、請求項10?12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
受信されたDiameter過負荷情報は、Diameterメッセージを含む、請求項10?12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
請求項1?9のいずれかに記載の方法をコンピュータのプロセッサに実行させる、コンピュータプログラム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用発明、周知技術1、2、引用文献6
(1)引用文献1記載事項
下記の引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、強調のために当審で付加したものである。以下、同様。)。

ア 段落[0069]
「[0069]FIG. 13 is a diagram of one embodiment of the epc implemented in the cloud computing system. The epc control plane entities (MME, PCRF, HSS) 1307 and the control plane parts of the gateways (S-GW-C, P-GW-C) 1307, i.e. the parts that handle GTP signaling, are implemented in the cloud computing system 1301 as part of the OpenFlow controller 1305. The control plane entites 1307 and the OpenFlow controller 1305 are packaged as VMs. The application programming interface (API) between the OpenFlow
controller 1305 and the control plane entities 1307 can be a remote procedure call (RPC) interface or similar interface. This implementation technology is favorable for scalable management of the control plane entities within the cloud, since it allows execution of the control plane entities 1307 and the controller 1305 to be managed separately according to demand. The cloud manager 1303 can be a VM or an application executed within the cloud computing system 1301.」
(当審仮訳:[0069]図13は、クラウドコンピューティングシステムで実装されるEPCの一実施形態の図である。EPC制御プレーン・エンティティ(MME, PCRF, HSS)1307とゲートウェイ(S-GW-C, P-GW-C)1307の制御プレーン部分、即ち、GTPシグナリングを処理する部分は、オープンフローコントローラ1305の一部をクラウドコンピューティングシステム1301において実施されるようにする。制御プレーンエンティティ1307とオープンフローコントローラ1305は、VMとしてパッケージされている。オープンフローコントローラ1305と制御プレーンエンティティ1307との間のアプリケーションプログラミングインタフェース(API)、リモートプロシージャコール(RPC)インターフェースまたは同様のインターフェースとすることができる。この実装技術は、クラウド(cloud)内における制御プレーンエンティティのスケーラブルな管理のために好適である、制御プレーンエンティティ1307及び制御部1305の実行を可能にする要求に応じて別々に管理することができるためである。クラウドマネージャ1303は、VMまたはクラウドコンピューティングシステム1301内で実行されるアプリケーションとすることができる。)

イ 段落[0070]
「[0070]The cloud manager 1303 monitors the central processor unit (CPU) utilization of the epc control plane entities 1307 and the control plane traffic between the epc control plane entities 1307 within the cloud. It also monitors the control plane traffic between the end user devices (UEs) and E-NodeBs, which do not have control plane entities in the cloud computing system 1301, and the epc control plane entities 1307. If the epc control plane entities 1307 begin to exhibit signs of overloading,
such as the utilization of too much CPU time, or the queueing up of too much traffic to be processed, the overloaded control plane entity 1307 requests that the cloud manager 1303 start up a new VM to handle the load. Additionally, the epc control plane entities 1307 themselves can issue event notifications to the cloud manager 1303 if they detect internally that they are beginning to experience overloading.」
(当審仮訳:[0070]クラウドマネージャ1303は、制御プレーン・エンティティ1307の中央処理ユニット(CPU)利用、クラウド内のEPCの制御プレーンエンティティ1307との間で制御プレーントラフィックを監視する。これは、また、エンドユーザ装置(UE)とE-NodeBは、クラウドコンピューティングシステム1301における制御プレーンエンティティを有していないが、制御プレーン・エンティティ1307との間の制御プレーンのトラフィックを監視する。EPC制御プレーンエンティティ1307は、例えば、過度のCPUの利用率、または、あまりに多くのトラフィックの待
ち行列化といった、過負荷の兆候を示し始める場合、過負荷状態にある制御プレーンエンティティ1307は、負荷を処理するためにクラウドマネージャ1303が新たなVMを起動することを要求する。加えて、EPC制御プレーンエンティティ1307は、それら自身が過負荷を経験し始めていることを内部的に検出する場合、クラウドマネージャ1303にイベント通知を発行することができる。)

ウ 段落[0071]
「[0071]The cloud manager 1303 also provides reliability and failover by restarting a VM for a particular control plane entity 1307 or function if any of the epc control plane entities 1307 should crash. During this restart process the cloud manager can collect diagnostic data, save any core files of the failed epc control plane entity, and inform the system administrators that a failure occurred. The control plane entities 1307 maintains the same protocol interface between themselves as in the 3GPP epc architecture shown in FIG. 8.」
(当審仮訳:[0071] クラウドマネージャ1303はまた、任意のEPC制御プレーンエンティティ1307がクラッシュした場合、特定の制御プレーンエンティティ1307又は機能のためのVMを再起動することにより、信頼性およびフェイルオーバを提供する。この再起動処理中に、クラウドマネージャは、診断データを収集し、故障したEPC制御プレーンエンティティの任意のコアファイルを保存し、障害が発生したことをシステム管理者に通知することができる。制御プレーンエンティティ1307は、図8に示す3GPP EPCアーキテクチャにおいてそれ自体との間に同じプロ
トコルインタフェースを維持する。)

エ 図13




(2)引用発明
上記(1)を参照すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考として、括弧内に、摘記箇所に対応する段落番号を示す。以下同様。)。

「 EPC制御プレーンエンティティ(MME, PCRF, HSS)1307とゲートウェイ(S-GW-C, P-GW-C)の制御プレーン部分1307は、オープンフローコントローラ1305の一部をクラウドコンピューティングシステム1301において実施され([0069])、
制御プレーンエンティティ1307とオープンフローコントローラ1305は、VMとしてパッケージされ([0069])、
クラウドマネージャ1303は、制御プレーンエンティティ1307の中央処理ユニット(CPU)利用、クラウド内のEPCの制御プレーンエンティティ1307との間で制御プレーントラフィックを監視し([0070])、
EPC制御プレーンエンティティ1307は、例えば、過度のCPUの利用率、または、あまりに多くのトラフィックの待ち行列化といった、過負荷の兆候を示し始める場合、過負荷状態にある制御プレーンエンティティ1307は、負荷を処理するためにクラウドマネージャ1303が新たなVMを起動することを要求し([0070])、
EPC制御プレーンエンティティ1307は、それら自身が過負荷を経験し始めていることを内部的に検出する場合、クラウドマネージャ1303にイベント通知を発行し([0070])、
クラウドマネージャ1303はまた、任意のEPC制御プレーンエンティティ1307がクラッシュした場合、特定の制御プレーンエンティティ1307又は機能のためのVMを再起動することにより、信頼性およびフェイルオーバを提供する([0071])、
方法。」

(3)周知技術1について
引用文献2(段落[0047]-[0048]、[0077]等を参照)、引用文献3(第21頁第33行から第22頁第30行、第25頁第26行から第26頁第3行,Fig.6等を参照)に記載されているように、オープンフローにDiameterプロトコルを適用したシステムは周知技術(以下、周知技術1という。)である。

(4)周知技術2について
引用文献4(第3欄などを参照),引用文献5(要約などを参照)に記載されているように、収集した負荷情報に基づいて、仮想化を行うか否かを判断することは周知技術(以下、周知技術2という。)である。

(5)引用文献6について 引用文献6(要約、段落[0002]、[0016]-[0020]などを参照)には、ダイアメータプロトコルによって過負荷情報を交換すること、また、ダイアメータのプロトコル要素にはAVP(属性値ペア)が含まれることが記載されている。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「クラウドマネージャ1303」は、「制御プレーンエンティティ1307の中央処理ユニット(CPU)利用、クラウド内のEPCの制御プレーンエンティティ1307との間で制御プレーントラフィックを監視し」ており、「EPC制御プレーンエンティティ1307は、例えば、過度のCPUの利用率、または、あまりに多くのトラフィックの待ち行列化といった、過負荷の兆候を示し始める場合、過負荷状態にある制御プレーンエンティティ1307は、負荷を処理するためにクラウドマネージャ1303が新たなVMを起動することを要求し」ている。
ここで、「クラウドマネージャ1303」が「CPUの利用」や「制御プレーントラフィック」を監視することにより取得する、過度のCPUの利用率、または、あまりに多くのトラフィックの待ち行列化といった過負荷の兆候を示す情報は、過負荷状態を示す情報であるから、過負荷情報といえる。
また、クラウドマネージャ1303が負荷を処理するための新たなVMの起動は、仮想化されたネットワークのVM(仮想マシン)を管理することであるといえる。
したがって、引用発明の「制御プレーンエンティティ1307の中央処理ユニット(CPU)利用、クラウド内のEPCの制御プレーンエンティティ1307との間で制御プレーントラフィックを監視し」、「制御プレーンエンティティ1307は、過負荷が生じた場合に、クラウドマネージャ1303が負荷を処理するために新たなVMを起動するように要求する」ことは、ネットワーク仮想化を管理するために、過負荷情報を使用することであるといえるから、本願発明1の「ネットワーク仮想化を管理するために過負荷情報を使用するための方法」に相当する。

イ 引用発明の「クラウドマネージャ1303」は、クラウドコンピュータシステム1301の構成要素であり、クラウドコンピュータシステムがハードウェア演算装置(プロセッサ)により実現されることは技術常識であるから、引用発明の「クラウドマネージャ1303」にはハードウェア演算装置(プロセッサ)が含まれていることは自明である。
そして、引用発明の「クラウドマネージャ1303」は、「制御プレーン・エンティティ1307の中央処理ユニット(CPU)利用、クラウド内のEPCの制御プレーンエンティティ1307との間で制御プレーントラフィックを監視し」、「EPC制御プレーンエンティティは、クラウドマネージャ1303が負荷を処理するために新たなVMを起動することを要求」していることから、引用発明の「クラウドマネージャ1303」は、本願発明1の「ハードウェアプロセッサを含む、電気通信ネットワーク内の仮想ネットワークを管理するための仮想化オーケストレータ(VO)」に相当する。

ウ 引用発明の「クラウドマネージャ1303」は、「制御プレーンエンティティ1307の中央処理ユニット(CPU)利用、クラウド内のEPCの制御プレーンエンティティ1307との間で制御プレーントラフィックを監視し」ており、過負荷が生じた場合においても監視は行われているから、過負荷情報を受信しているといえる。
本願明細書の【0003】には、「Diameterとは、コンピュータネットワーク用の認証、認可およびアカウンティング(authentication, authorization and accounting:AAA)プロトコルであり、RADIUSの後継版である。」と記載され、本願明細書の【0012】には、「「負荷情報」および「過負荷情報」という用語は同意語であり、Diameterノードまたはノード群が現在動作している負荷レベル、レート、スループットまたは容量を示す情報を指す。」と記載されていることからすると、本願発明1の「Diameter過負荷情報」は、AAAプロトコルの一種であるDiameterを使用するノード(Diameterノード(群))の負荷レベル等の情報といえる。
一方、引用文献1には、「Diameter」プロトコルについて言及がなく、「Diameter」プロトコルの使用が自明ともいえない。
よって、引用発明の「制御プレーンエンティティ1307の中央処理ユニット(CPU)利用、クラウド内のEPCの制御プレーンエンティティ1307との間で制御プレーントラフィックを監視」することと、本願発明1の「Diameter過負荷情報を受信すること」とは、「過負荷情報を受信すること」である点で共通している。

エ 引用発明の「過負荷状態のEPC制御プレーンエンティティ1307」は、「過負荷の兆候を示し始める場合」に、「負荷を処理するために、クラウドマネージャ1303が新たなVMを起動すること」を要求しているから、「クラウドマネージャ1303」は、過負荷状態に応答して、負荷を処理するために新たなVMを起動しているといえる。
そして、引用発明の「EPC制御プレーンエンティティ1307」は、「ゲートウェイ(SC-GW-C,P-GW-C)」が含まれており、「EPC制御プレーンエンティティ1307」はVMとしてパッケージされるものであるから、引用発明の「EPC制御プレーンエンティティ1307」には、ゲートウェイがVMとしてパッケージされており、VMとしてパッケージされるゲートウェイは、仮想リソースといいうるものである。
したがって、引用発明の「新たなVMを起動すること」は、追加の仮想ゲートウェイを起動して負荷を処理することであるといえ、VMを用いていることから、引用発明のネットワークは、1つ以上のネットワーク仮想化モジュールを用いる電気通信ネットワークであるといえる。
よって、引用発明の「過負荷状態のEPC制御プレーンエンティティ1307」が、「過負荷の兆候を示し始める場合」に、「負荷を処理するために、クラウドマネージャ1303が新たなVMを起動すること」は、本願発明1の「前記Diameter過負荷情報により示された過負荷に応答して、1つ以上のネットワーク仮想化モジュールを用いる電気通信ネットワークにおいて、1つ以上の追加の仮想スイッチを用いることにより、前記Diameter過負荷情報によって示される過負荷を緩和するための追加のリソースを使用するように前記電気通信ネットワークを管理するための前記ネットワーク仮想化動作を行なう」ことと、「過負荷情報により示された過負荷に応答して、1つ以上のネットワーク仮想化モジュールを用いる電気通信ネットワークにおいて、1つ以上の追加の仮想リソースを用いることにより、過負荷情報によって示される過負荷を緩和するための追加のリソースを使用するように前記電気通信ネットワークを管理するための前記ネットワーク仮想化動作を行なう」点で共通している。

(2)一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「ネットワーク仮想化を管理するために過負荷情報を使用するための方法であって、
ハードウェアプロセッサを含む電気通信ネットワーク内の仮想ネットワークを管理するための仮想化オーケストレータ(VO)で、
過負荷情報を受信することと、
前記過負荷情報により示された過負荷に応答して、1つ以上のネットワーク仮想化モジュールを用いる電気通信ネットワークにおいて、1つ以上の追加の仮想リソースを用いることにより、前記過負荷情報によって示される過負荷を緩和するための追加のリソースを使用するように前記電気通信ネットワークを管理するための前記ネットワーク仮想化動作を行なう、方法。」

[相違点1]
受信する過負荷情報について、本願発明1が、「Diameter過負荷情報」であるのに対し、引用発明の過負荷の兆候を示す情報は、「Diameter過負荷情報」との特定がされていない点。

[相違点2]
本願発明1が、仮想化オーケストレータ(VO)が、「行なうべきネットワーク仮想化動作を判断」しているのに対して、引用発明のクラウドマネージャ1303が、「行うべきネットワーク仮想化動作を判断」していることが明記されていない点。
[相違点3] 本願発明1が、「前記Diameter過負荷情報」により示された過負荷に応答して、一つ以上の追加の「仮想スイッチ」を用いることにより、過負荷を緩和するための追加のリソースを使用するように仮想化動作を行っているのに対して、引用発明が「過負荷情報」により示された過負荷に応答して、一つ以上の追加の「仮想ゲートウェイ」を用いることにより、過負荷を緩和するための追加のリソースを使用するように仮想化動作を行っている点。

(3)判断
事案に鑑みて、相違点3について、先に検討する。
引用文献1-6には、「前記Diameter過負荷情報」により示された過負荷に応答して、一つ以上の追加の「仮想スイッチ」を用いることにより、過負荷を緩和するための追加のリソースを使用するように仮想化動作を行う構成は、記載されておらず、当該構成は、本願の優先日前において、周知技術であるともいえない。
なお、周知技術1又は引用文献6に記載されているように、オープンフローにDiameterプロトコルを適用したシステム、及び、ダイアメータ(Diameter)プロトコルによって過負荷情報を交換することが本願優先日前における周知技術であるとしても、「スイッチ」を仮想化の対象としていない引用発明に当該周知技術(Diameterプロトコル)を適用した場合、直ちには「仮想スイッチ」を用いる構成とはならないし、また、引用発明において、「仮想ゲートウェイ」に替えて、又は「仮想ゲートウェイ」に加えて、「仮想スイッチ」を用いて過負荷を緩和するように構成を変更すべき動機付けも存在しない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし9及び15について
本願発明2ないし9及び15は、いずれも請求項1を引用しており、本願発明2ないし9及び15も、相違点3に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1-6に基いて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明10ないし14について
本願発明10は、本願発明1に対応するシステムの発明であり、相違点3に係る本願発明1の構成と同様の構成(「前記Diameter過負荷情報」により示された過負荷に応答して、一つ以上の追加の「仮想スイッチ」を用いることにより、過負荷を緩和するための追加のリソースを使用するように仮想化動作を行う構成)を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1-6に基いて容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明11-14は、いずれも本願発明10を引用しており、相違点3に係る本願発明1と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1-6に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
本願発明1-15は、いずれも、上記相違点3に係る本願発明1の構成又は当該構成に対応するシステムの構成を備えるものとなり、上記引用文献A-D(当審拒絶理由における、引用文献1及び4ないし6に相当)には、上記相違点3に係る本願発明1の構成又は当該構成に対応するシステムの構成のいずれも記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であるともいえないから、上記引用文献A-Dに基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-23 
出願番号 特願2016-544321(P2016-544321)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 玉木 宏治  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 林 毅
太田 龍一
発明の名称 Diameter負荷および過負荷情報ならびに仮想化のための方法、システムおよびコンピュータ読取可能媒体  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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