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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47J
管理番号 1372474
審判番号 不服2020-7024  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-22 
確定日 2021-04-13 
事件の表示 特願2015- 83166「抽出式飲料製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日出願公開、特開2016-202215、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月15日の出願であって、平成30年12月12日付けで拒絶理由が通知され、平成31年4月3日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年8月9日付けで拒絶理由が通知され、令和1年10月1日に意見書が提出されたが、令和2年2月27日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して、令和2年5月22日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
[理由1](進歩性)
この出願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<引用文献等>
刊行物1:特開昭63-31625号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成31年4月3日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるところ、そのうち請求項1に記載された発明は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
抽出液路を有する成分抽出機構と、
前記成分抽出機構を収容する筐体と、
前記筐体から離間して配設されると共に貯液空間が前記抽出液路に連通するタンクと、
前記タンクを着脱自在に載置するタンク載置台と
を備え、
前記タンクは、側壁部と、前記側壁部から下方に向けて面一に延びる延設部とを有し、
前記タンク載置台は、前記タンクが載置された状態において側面が前記延設部により覆われる台座部を有する、成分抽出式飲料製造装置。」

第4 刊行物、引用発明等
1.刊行物1について
原査定の拒絶の理由において引用された刊行物1には、「飲料抽出機」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

(1)刊行物1の記載
1a)「2.特許請求の範囲
給水タンクと、この給水タンクと連通して設けられた通水路と、この通水路の途中に設けられ、かつ通水路内の一部の水を加熱して沸騰させ、その際の沸騰蒸気圧によって熱湯を上記通水路より吐出する加熱装置と、上記通水路に設けられ沸騰時に上記通水路から上記給水タンクへの逆流を妨げる逆流防止手段と、底壁に抽出口を有して上記通水路の吐出し口の下方に出入れ自在に設けられ、この吐出し口からの熱湯を受けるとともに、被抽出材料を予め計量して封入したフィルタバッグが出入れ自在に収納されるバッグ収納器と、このバッグ収納器の下方に設けられて抽出飲料を受けるボトルとを具備し、上記通水路の吐出し口から断続的に吐出される熱湯を、上記フィルタバッグに透過させて上記ボトル内に飲料を得ることを特徴とする飲料抽出機。」(第1ページ左欄第4ないし20行)

1b)「(実施例)
以下、本発明の一実施例を第1図から第6図を参照して説明する。
図中11は耐熱性合成樹脂製の基台状をなすケース本体で、その一端側上面には上向きのタンク支持筒12が一体に突設されているとともに、他端側には保温板露出用開口13が形成されている。
そして、タンク支持筒12はガラス、または合成樹脂製でしかも透明または不透明の給水タンク14が着脱可能に差込んで支持されている。なお、15は給水タンク14の上端開口を着脱可能に塞いで取付けられるタンク蓋である。また、第1図中14aは給水タンク14の出口14bに内装した上下動自在な止水弁である。
給水タンク14には通水路16が連通して設けられている。通水路16は、給水タンク14の出口14bが挿脱可能に嵌入される供給管17と、この管17に継手18を介して接続された加熱管19と、この加熱管19の他端に接続された給湯管20と、この給湯管20の先端に設けた吐出し口21とを備えて形成されている。供給管17、継手18、および加熱管19はいずれも上記ケース本体11内に配設されている。給湯管20は、ケース本体11の上壁を貫通する縦部分と、この部分の上端に連なるとともに先端に上記吐出し口21が設けられた横部分とからなる。そして、吐出し口21はその開口を下に向けているとともに、上記ケース本体11の開口13の略中央に対向している。なお、給湯管20の縦部分は継手21aを介して第2図中矢印で示すように回動可能になっている。また、第1図中22は上記出口14bの外周面に装着したOリングで、これは給水管17の内面に接してタンク取付け部の液密を図っている。
このような通水路16にはその一部の水を加熱して沸騰させて、その際の沸騰圧により熱湯を通水路16の吐出し口21から噴出する加熱装置23が設けられている。」(第3ページ左下欄第4行ないし第4ページ左上欄第1行)

1c)「まず、ケース本体11上の給水タンク14に抽出しようとする所定量の水(二杯分の水)を収納する。なお、給水タンク14をケース本体11から外した状態で上記の水の供給をした場合には、その後に、給水タンク14をケース本体11のタンク支持筒12に嵌め込んで支持する。そうすると、給水タンク14内に収納された水の一部が逆流防止手段30を通って通水路16内に自然に供給される。」(第5ページ左上欄第8ないし16行)

1d)




1e)上記1d)の第1図から、ケース本体11が加熱装置23を収容することが看取できる。(なお、第1図に示された給湯装置23は、加熱装置23の誤記と認める。)

1f)上記1d)の第1図から、タンク支持筒12は、給水タンク14の側面部に設けられた段差を下部より支持することが看取できる。

(2)引用発明
上記(1)からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「通水路16の途中に設けられた加熱装置23と、
加熱装置23を収容するケース本体11と、
通水路16に水を供給する給水タンク14と、
給水タンク14を嵌め込むことにより、給水タンク14の側面部に設けられた段差を下部より支持するケース本体11のタンク支持筒12と、
を備える、飲料抽出機。」

第5 対比・判断
(1)本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「通水路16」は、本願発明1における「抽出液路」に相当し、以下同様に、「加熱装置23」は「成分抽出機構」に、「ケース本体11」は「筐体11」に、「タンク支持筒12」は「タンク載置台」に、「給水タンク14」は「タンク」に、「飲料抽出機」は「成分抽出式飲料製造装置」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「加熱装置23」は、「通水路16」の途中に設けられたものであり、「加熱装置23」を主体としてみると、「加熱装置23」は「通水路16」を有するともいえる。
また、引用発明における「給水タンク14」は「通水路16」に水を供給するのであるから、給水タンク14内部の空間は、通水路16に連通することは明らかである。
さらに、引用発明における「給水タンク14」は「タンク支持筒12」に嵌め込むことにより支持されるものであり、嵌め込み構造は着脱自在であることが技術常識から明らかであるから、「タンク支持筒12」は、「給水タンク14」を着脱自在に載置するといえる。

そうすると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「抽出液路を有する成分抽出機構と、
前記成分抽出機構を収容する筐体と、
貯液空間が前記抽出液路に連通するタンクと、
前記タンクを着脱自在に載置するタンク載置台と
を備える、
成分抽出式飲料製造装置。」

[相違点1]
本願発明1においては、「タンク」は「筐体から離間して配置される」のに対して、引用発明においては、給水タンク14はケース本体11のタンク支持筒12に嵌め込みにより支持されており、ケース本体11からは離間していない点。

[相違点2]
本願発明1においては、「タンクは、側壁部と、前記側壁部から下方に向けて面一に延びる延設部とを有し、前記タンク載置台は、前記タンクが載置された状態において側面が前記延設部により覆われる台座部を有する」のに対して、引用発明においては、給水タンク14が側面部から「下方に向けて面一に延びる延設部」を有するものではなく、さらにタンク支持筒12が「側面が延設部により覆われる台座部」を有するものではない点。

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
引用発明において、給水タンク14はケース本体11のタンク支持筒12に嵌め込むことにより給水タンク14の側面部に設けられた段差が下部より支持されるものであり、給水タンク14をタンク支持筒12が下部から支持する以上、給水タンク14をケース本体11のタンク支持筒12から離間する動機付けは見出せないし、給水タンク14をケース本体11のタンク支持筒12から離間することが自明であるとも設計事項であるともいえない。
そうすると、引用発明において給水タンク14をケース本体11から離間することにより上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとはいえない。

[相違点2について]
引用発明において、給水タンク14は、その側面部から下方に向けて面一に延びる延設部を有するものではなく、さらに、タンク支持筒12は、「側面が延設部により覆われる台座部」を有するものではない。
そして、引用発明は、給水タンク14をタンク支持筒12により下部より支持するために、給水タンク14の側面部に段差を設けたものであるから、給水タンク14の側面部から下方に向けて面一となるような延設部を設けること、及びタンク支持筒12に延設部により覆われる台座部を設けることの動機付けは見出せず、そのようにすることが自明であるとも設計事項であるともいえない。
そうすると、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明2の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとはいえない。

また、成分抽出式飲料製造装置の水タンクにおいて、側壁部から下方に向けて面一に延びる延設部を設けることは本件出願前において周知技術(特開昭51-68369号公報/実願昭54-60809号(実開昭55-161420号)のマイクロフィルム等を参照。以下、「周知技術」という。)である。
しかし、当該周知技術は、タンク載置台において、水タンク側壁の延設部により覆われる台座部を設けることまでは示唆していない。
さらに、引用発明における、給水タンク14の側面部に設けられた段差がタンク支持筒12により下部より支持されるものにおいて、側面部から下方に向けて面一に延びる延設部を設けることの動機付けは見出せないから、本願発明1は、引用発明に加えて周知技術を考慮しても当業者が容易になし得たとはいえない。
そして、本願発明1の構成を採用することにより、タンク載置台400に対する着脱式タンク500の載置状態を安定させる(段落【0061】)、及び、成分抽出機構の設計の自由度を高める(段落【0004】)等の本願明細書記載の所定の効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2及び3について
本願の特許請求の範囲における請求項2及び3は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用して記載したものであるから、本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。

したがって、本願発明2及び3は、本願発明1と同様の理由で、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし3は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものでない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-26 
出願番号 特願2015-83166(P2015-83166)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久島 弘太郎八木 敬太  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 松下 聡
平城 俊雅
発明の名称 抽出式飲料製造装置  
代理人 北原 宏修  

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