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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1372488
審判番号 不服2020-3261  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-10 
確定日 2021-03-26 
事件の表示 特願2017-180107「伝票処理装置、伝票処理方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月11日出願公開、特開2019- 57026〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は,平成29年9月20日の出願であって,平成30年12月10日に手続補正がなされ,令和1年7月19日付けで拒絶理由通知がされ,令和1年9月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,令和1年12月20日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされたが,これに対し,令和2年3月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 令和2年3月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年3月10日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.本件補正について

(1)本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線は,補正箇所である。)

「伝票に光線を照射し、前記伝票に設けられたバーコードから識別情報を読み取る読取手段と、
使用者からの撮影指示に応答し、撮影手段に前記伝票の撮影を実施させる撮影制御手段と、
前記撮影制御手段によって前記伝票の撮影画像が取得された際に、前記読取手段に前記伝票への光線の照射を開始させることで前記識別情報の読み取りを実施させる読取制御手段と、
前記読取制御手段によって前記識別情報の読み取りに成功したことを条件に、前記伝票の撮影画像を、前記識別情報と対応付けて所定の記録手段に記録する記録制御手段と、
を備えたことを特徴とする伝票処理装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の,令和1年9月6日にされた手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「伝票に光線を照射し、前記伝票に設けられたバーコードから識別情報を読み取る読み取り手段と、
前記伝票を撮影する撮影手段と、
使用者からの情報取得指示に応答し、前記読み取り手段による前記識別情報の読み取りと、前記撮影手段による前記伝票の撮影と、を実施する情報取得制御手段と、
前記識別情報の取得に成功したことを条件に、前記伝票の撮影画像を、取得された識別情報と関係付けて所定の記録手段に記録する記録制御手段と、を備え、
前記情報取得制御手段は、前記読み取り手段による前記識別情報の読み取りよりも前記撮影手段による前記伝票の撮影を先に実施する、
ことを特徴とする伝票処理装置。」

(3)補正事項

本件補正は以下の補正事項を含むものである。

ア 補正事項1

本件補正前の請求項1の
「読み取り手段」
を,本件補正後の請求項1の
「読取手段」
とする補正。

イ 補正事項2

本件補正前の請求項1の
「前記伝票を撮影する撮影手段」
を削除する補正。

ウ 補正事項3

本件補正前の請求項1の
「使用者からの情報取得指示に応答し、前記読み取り手段による前記識別情報の読み取りと、前記撮影手段による前記伝票の撮影と、を実施する情報取得制御手段」であって,「前記情報取得制御手段は、前記読み取り手段による前記識別情報の読み取りよりも前記撮影手段による前記伝票の撮影を先に実施する」
を,本件補正後の請求項1の
「使用者からの撮影指示に応答し、撮影手段に前記伝票の撮影を実施させる撮影制御手段と、
前記撮影制御手段によって前記伝票の撮影画像が取得された際に、前記読取手段に前記伝票への光線の照射を開始させることで前記識別情報の読み取りを実施させる読取制御手段」
とする補正。

エ 補正事項4

本件補正前の請求項1の
「前記識別情報の取得に成功したことを条件に、前記伝票の撮影画像を、取得された識別情報と関係付けて所定の記録手段に記録する記録制御手段」
を,本件補正後の請求項1の
「前記読取制御手段によって前記識別情報の読み取りに成功したことを条件に、前記伝票の撮影画像を、前記識別情報と対応付けて所定の記録手段に記録する記録制御手段」
とする補正。

2.補正の適否

(1)補正の目的について

ア 補正事項1について

本件補正前の請求項1の「読み取り手段」を,本件補正後の請求項1の「読取手段」とする補正は,誤記の訂正を目的とするものである。

イ 補正事項2について

本件補正後の請求項1にも「撮影手段」という語はあるが,この「撮影手段」は,「伝票処理装置」によって「伝票の撮影を実施させ」られるものであり,「伝票処理装置」が備えるものであるとはいえない。
したがって,補正事項2は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。

また,補正事項2は,請求項の削除,誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものでないから,特許法第17条の2第5項第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものでもない。

ウ 補正事項3について

本件補正前の請求項1の「情報取得制御」を,本件補正後の請求項1の「撮影制御」及び「読取制御」とする補正は,限定的減縮を目的とするものであり,本件補正前の請求項1の「使用者からの情報取得指示に応答し、」「前記撮影手段による前記伝票の撮影」「を実施する情報取得制御手段」を,本件補正後の請求項1の「使用者からの撮影指示に応答し、撮影手段に前記伝票の撮影を実施させる撮影制御手段」とする補正も,本件補正前の請求項1の「前記識別情報の読み取り」「を実施する情報取得制御手段」を,本件補正後の請求項1の「前記識別情報の読み取りを実施させる読取制御手段」とする補正も,限定的減縮を目的とするものである。

本件補正前の請求項1の「前記読み取り手段による前記識別情報の読み取り」「を実施」を,本件補正後の請求項1の「前記読取手段に前記伝票への光線の照射を開始させることで前記識別情報の読み取りを実施」とする補正は,限定的減縮を目的とするものである。

本件補正前の請求項1の「前記読み取り手段による前記識別情報の読み取りよりも前記撮影手段による前記伝票の撮影を先に実施」を,本件補正後の請求項1の「前記撮影制御手段によって前記伝票の撮影画像が取得された際に、」「前記識別情報の読み取りを実施」とする補正は,限定的減縮を目的とするものである。

エ 補正事項4について

本件補正前の請求項1の「前記識別情報の取得に成功したことを条件」を,本件補正後の請求項1の「前記読取制御手段によって前記識別情報の読み取りに成功したことを条件」とする補正は,限定的減縮を目的とするものである。

本件補正前の請求項1の「関係付けて所定の記録手段に記録」を,本件補正後の請求項1の「対応付けて所定の記録手段に記録」とする補正は,限定的減縮を目的とするものである。

3.むすび

以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明

本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2 1.(2)」に記載したとおりであり,以下に再掲する。

なお,符号A-Fは,説明のために当審で付与したものであり,以下「構成A」-「構成F」という。

「【請求項1】
A 伝票に光線を照射し、前記伝票に設けられたバーコードから識別情報を読み取る読み取り手段と、
B 前記伝票を撮影する撮影手段と、
C 使用者からの情報取得指示に応答し、前記読み取り手段による前記識別情報の読み取りと、前記撮影手段による前記伝票の撮影と、を実施する情報取得制御手段と、
D 前記識別情報の取得に成功したことを条件に、前記伝票の撮影画像を、取得された識別情報と関係付けて所定の記録手段に記録する記録制御手段と、を備え、
E 前記情報取得制御手段は、前記読み取り手段による前記識別情報の読み取りよりも前記撮影手段による前記伝票の撮影を先に実施する、
F ことを特徴とする伝票処理装置。」

2.原査定における拒絶の理由

本願の請求項1ないし11に係る発明は,以下の引用文献1ないし引用文献2に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない,というものである。

引用文献1.特開2005-275530号公報
引用文献2.特開平10-240852号公報

3.引用文献の記載事項

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2005-275530号公報)には,以下の事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。)

「【0055】
(実施の形態1)
図1a、図1bは、光学的情報読取装置1の斜視図である。図2は、光学的情報読取装置1の内部の光学系2を説明するために図1の破断位置ア-アで部分的に断面を表した断側面図である。光学的情報読取装置1は、前方部にバーコード等の光学的情報の読み取りと画像情報の取得をする光学系2を配置し、後方部を操作者が把持して操作する。」

「【0057】
光学系2は、撮像部9として、画像取得対象に照明光を投光する照明LED10と画像取得対象からの反射光を結像する結像レンズ11と結像された像を長方形の面上に配列された受光素子で電気信号に変換するエリアセンサ12と、撮像する位置を示す指標光線を照射する指標光線照射部13として、指標光の光源となる半導体レーザ14と半導体レーザ14からのレーザ光を回折してH字型の指標パタン15に光線を形成する回折素子16から構成される。
【0058】
指標パタン15の光線の射出方向は結像レンズ11の瞳とエリアセンサ12の撮像エリアの中心を結ぶ受光軸(イ)に平行で近接し、H字型の指標パタン15の幅方向の広がり角は撮像部9の視野(ウ)の横方向の広がり角と略同じであり、画像取得対象に照射されたH字型の指標パタン15は常に中心が撮像部9の視野(ウ)の中心に近接し、H字型の指標パタン15の幅は視野(ウ)の横方向長さと略一致して、撮像部9の撮像位置と横方向の撮像範囲を指示する。光学的情報読取装置1内にあるプリント基板上に構成された制御回路17は、CPU、メモリ素子等を備え、書き込まれたプログラムに従い撮像部9や指標光線照射部13の駆動制御とエリアセンサ12で変換された電気信号の2値化や2値化された画像情報からバーコード等の光学的情報を抽出して復号化を行ったり、取得した画像を記憶部としてのメモリ素子に記憶を行ったり、液晶表示画面5などの動作制御を行う。」

「【0060】
光学的情報読取装置1を記録媒体18に対向させトリガースイッチ7を押すことで読取開始信号が入力されると、制御回路17は、指標光線照射部13の、指標光の光源となる半導体レーザ14点灯させ、回折素子16によりレーザ光をH字型の指標パタン15に形成させる。
【0061】
半導体レーザ14は、撮像部9の照明LED10を点灯してエリアセンサ12が露光する間は消灯され、エリアセンサ12が露光していない間に点灯される。エリアセンサ12は繰り返し露光して結像レンズ11によって結像された像を電気信号に変換して画像データを繰り返し取得する。
【0062】
光学的情報読取装置1を動かして、H字型の指標パタン15の中央のラインをバーコード19の長手方向の中心軸に合わせ、バーコード19の輪郭がH字型の指標パタン15の両端のラインに合わせられた時、撮像部9の視野(ウ)の中央にバーコード19が位置し、さらに、結像レンズ11の合焦点位置近くに記録媒体18が位置する時、取得した画像を2値化してバーコード19を抽出して複合化(当審注:「復号化」の誤記であると認められる。)する。復号化が成功すると、指標光線照射部13と撮像部9の駆動を止めてバーコード19の読み取りを終え、読み取った情報をメモリ素子に記憶させ、読み取りが成功したことを表示ランプ3を点灯して知らせ、液晶表示画面5に、読み取ったバーコード19の情報と、取得した画像情報のあらかじめ設定された所定領域の画像情報を表示する。」

「【0065】
また、バーコードが読み取れる範囲では、結像レンズ11の合焦点位置近くに記録媒体18が位置しており、撮像部9はピントのあった画像を記憶することがきる。光学的情報読取装置1は、液晶表示画面5に署名20の画像を表示して、取得した画像を記憶するかどうかの入力待ちの状態となる。表示された署名20の画像がきれいであるときメインスイッチ6の所定のスイッチを押して、取得した画像をメモリ素子への記憶を指示する。」

「【0067】
このように、光学的情報の読み取り完了と同時にエリア画像の取得と記憶を行うことで、例えば、記録媒体18が荷物の送り状である時、取得した受け取りの署名20の画像情報に読み取ったバーコード19の送り状管理番号情報を略一括で取得、読み取りができるので、一対一対に関連づけて管理させ易い。」

「【0097】
(実施の形態3)
図8a、図8bは、光学的情報読取装置37の斜視図である。図9は、光学的情報読取装置37の内部の光学系38を説明するために図8aの破断位置(エ)-(エ)で部分的に断面を表した断側面図である。図10は、図9の矢印(オ)方向をみて光学系38の一部を表した矢視図である。図11は、図9の矢印(カ)方向をみて光学系38の一部を表した矢視図である。」

「【0099】
光学系はレーザ光を走査させてバーコード等の光学的情報の読み取りを行うためのバーコード読取部45と画像情報の取得をするための撮像部46から構成される。バーコード読取部45は、レーザ光を照射する半導体レーザ47と半導体レーザ47からのレーザ光を集光してビームに形成するビーム形成レンズ48と、ビームに形成されたレーザ光を反射させ、軸49の回りに揺動してレーザ光の走査を行う走査ミラー50と、走査ミラー50で走査されたレーザ光を反射させて進行方向を変える固定ミラー51と、レーザ光をあてたバーコード等の光学的情報からの反射光を集光する受光レンズ52と集光された反射光を受光して電気信号に変換するフォトトランジスタ53から構成される。」



【図1】(a)」



【図2】」



【図9】」

(2)上記引用文献1の特に下線部の記載より,上記引用文献1の実施の形態1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

なお,符号a-hは,説明のために当審で付与したものであり,以下「構成a」-「構成h」という。

「a 光学的情報読取装置であって,バーコードの情報の読み取りと画像の取得をする光学系を備え,
b 光学系は,撮像部から構成され,
c 制御回路は,撮像部の駆動制御,バーコードの光学的情報を抽出して復号化,取得した画像を記憶部としてのメモリ素子に記憶を行い,
d 記録媒体に対向させトリガースイッチを押すことで読取開始信号が入力され,
e 画像を取得し,
f バーコードを抽出して復号化し,復号化が成功すると,バーコードの読み取りを終え,読み取った情報をメモリ素子に記憶させ,
g 画像をメモリ素子へ記憶し,
h 光学的情報の読み取り完了と同時に画像の記憶を行うことで,記録媒体が荷物の送り状である時,取得した画像に読み取ったバーコードの情報を略一括で取得,読み取りができるので,一対一対に関連づけて管理させ易い,
a 光学的情報読取装置。」

また,上記引用文献1の実施の形態3には,次の技術的事項も記載されていると認められる。

なお,符号iは,説明のために当審で付与したものであり,以下「構成i」という。

「i レーザ光を走査させてバーコード等の光学的情報の読み取りを行うためのバーコード読取部と画像の取得をするための撮像部を備える光学的情報読取装置。」

4.対比・判断

(1)構成Aについて

引用発明の「荷物の送り状」は,本願発明の「伝票」に相当する。
構成a,hによれば,引用発明の「バーコードの情報」は,「荷物」を「識別」するための「情報」であることは明らかである。
また、構成aによれば,引用発明の「光学系」は,「バーコードの情報の読み取り」をしている。
したがって,引用発明の,「荷物の送り状」の「バーコード」から「バーコードの情報の読み取り」「をする光学系」と,本願発明の「読み取り手段」とは,下記の点で相違するものの,“伝票に設けられたバーコードから識別情報を読み取る読み取り手段”である点で共通する。

(2)構成Bについて

構成a,b,hによれば,引用発明の,「荷物の送り状」の「画像」を「取得」する「光学系」の「撮像部」は,本願発明の「伝票を撮影する撮影手段」に相当する。

(3)構成Cについて

構成a,d,e,fによれば,引用発明の「読取開始信号」は,「トリガースイッチを押すことで」「入力され」るものであるから,操作者からの指示に応答したものといえるものであり,また,「読取開始信号が入力され」ることによって,「光学系」による「バーコードの情報の読み取り」と,「光学系」による「荷物の送り状」の「画像の取得」とが実施されているといえるから,引用発明の「読取開始信号」は,本願発明の「情報取得指示」に相当する。
そして,構成a,cによれば,引用発明の「制御回路」は,「バーコードの光学的情報を抽出して復号化」することによって,「光学系」による「バーコードの情報の読み取り」を実施し,また,「撮像部の駆動制御」をすることによって,「光学系」による「画像の取得」を実施しているといえる。
したがって,上記(1),(2)の検討結果を踏まえると,引用発明の,「トリガースイッチを押すことで読取開始信号が入力され」,「バーコードの光学的情報を抽出して復号化」し,「撮像部の駆動制御」をする「制御回路」は,本願発明の「使用者からの情報取得指示に応答し、前記読み取り手段による前記識別情報の読み取りと、前記撮影手段による前記伝票の撮影と、を実施する情報取得制御手段」に相当する。

(4)構成Dについて

引用発明の「メモリ素子」は,本願発明の「所定の記録手段」に相当する。
構成c,f,gによれば,引用発明の「制御回路」は,「バーコード」の「復号化が成功すると」,「画像」と,「バーコードの情報」とを「メモリ素子へ記憶」しているので,「バーコード」の取得が成功したことを条件に,「画像」と,「バーコードの情報」とを「メモリ素子へ記憶」しているといえる。
ここで,構成hによれば,引用発明は,「画像」と「バーコードの情報」とを,「一対一対に関連づけて管理」しているから,「画像」と「バーコードの情報」とを「一対一対に関連づけて」「メモリ素子へ記憶」しているのは明らかである。
したがって,上記(3)の検討結果を踏まえると,引用発明の,「画像」と「バーコードの情報」とを,「一対一対に関連づけて管理」し,「バーコード」の「復号化が成功すると」,「画像」と,「バーコードの情報」とを「メモリ素子へ記憶」する「制御回路」は,本願発明の「識別情報の取得に成功したことを条件に、前記伝票の撮影画像を、取得された識別情報と関係付けて所定の記録手段に記録する記録制御手段」に相当する。

(5)構成Eについて

構成c,e,f,hによれば,引用発明の「制御回路」は,「撮像部」による「画像」の取得をしてから,「バーコードの読み取り」をしているので,「バーコードの読み取り」よりも「撮像部」による「画像」の取得を先に実施しているといえる。
したがって,上記(3)の検討結果を踏まえると,引用発明の,「撮像部」による「画像」の取得をしてから,「バーコードの読み取り」をする「制御回路」は,本願発明の,「読み取り手段による前記識別情報の読み取りよりも前記撮影手段による前記伝票の撮影を先に実施する」「情報取得制御手段」に相当する。

(6)構成Fについて

構成aによれば,引用発明の「バーコードの情報の読み取りと画像の取得」は,本願発明の「処理」に相当する。
したがって,引用発明の,「荷物の送り状」の「バーコードの情報の読み取りと画像情報の取得をする」「光学的情報読取装置」は,本願発明の「伝票処理装置」に対応する。

したがって,本願発明と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「伝票に設けられたバーコードから識別情報を読み取る読み取り手段と、
前記伝票を撮影する撮影手段と、
使用者からの情報取得指示に応答し、前記読み取り手段による前記識別情報の読み取りと、前記撮影手段による前記伝票の撮影と、を実施する情報取得制御手段と、
前記識別情報の取得に成功したことを条件に、前記伝票の撮影画像を、取得された識別情報と関係付けて所定の記録手段に記録する記録制御手段と、を備え、
前記情報取得制御手段は、前記読み取り手段による前記識別情報の読み取りよりも前記撮影手段による前記伝票の撮影を先に実施する、
ことを特徴とする伝票処理装置。」

(相違点)
バーコードから識別情報を読み取る読み取り手段について,本願発明は,「伝票に光線を照射」する「読み取り手段」であるのに対して,引用発明は,そのようなことをしないものである点。

(2)相違点についての判断
構成iによれば,引用文献1には,「レーザ光を走査させてバーコード等の光学的情報の読み取りを行うためのバーコード読取部」「を備える光学的情報読取装置」という技術的事項が記載されており,当該「レーザ光を走査させてバーコード等の光学的情報の読み取りを行うためのバーコード読取部」は,本願発明の「伝票に光線を照射し、前記伝票に設けられたバーコードから識別情報を読み取る読み取り手段」に相当する。

バーコードの読み取りをどのように行うかについては,使用する状況等に応じて設計者が適宜選択し得るものであるところ,引用発明に当該技術的事項を適用して,引用発明を,「バーコードの情報の読み取り」「をする光学系」の代わりに,「レーザ光を走査させてバーコード等の光学的情報の読み取りを行うためのバーコード読取部」を備えるように構成することは,必要に応じて当業者が適宜なし得る事項である。
そして,本願発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献1に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

したがって,本願発明は,引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

上記のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-12-18 
結審通知日 2021-01-19 
審決日 2021-02-05 
出願番号 特願2017-180107(P2017-180107)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 塚田 肇
山澤 宏
発明の名称 伝票処理装置、伝票処理方法及びプログラム  

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