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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1372490
審判番号 不服2020-7486  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-02 
確定日 2021-03-26 
事件の表示 特願2018-523615「マルチプレクサ,高周波フロントエンド回路および通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日国際公開,WO2017/217197〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は,2017年(平成29年)5月23日(優先権主張 平成28年6月14日)を国際出願日とする出願であって,平成30年11月19日に手続補正がなされ,令和元年8月28日付けで拒絶理由が通知され,令和元年11月1日に手続補正がなされ,令和元年11月20日付けで拒絶理由が通知され,令和2年1月27日に手続補正がなされ,令和2年2月21日付けで拒絶査定がされ,令和2年6月2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


2.本願発明

本願の請求項4に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,令和2年1月27日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される,以下のとおりのものと認める。

「共通端子,第1入出力端子および第2入出力端子を有し,前記共通端子に接続された複数のフィルタを備えるマルチプレクサであって,
前記共通端子と前記第1入出力端子との間に配置された1以上の弾性表面波共振子で構成され,第1通過帯域を有する第1のフィルタと,
前記共通端子および前記第2入出力端子に接続され,前記第1通過帯域よりも周波数が高い第2通過帯域を有する第2のフィルタと,
前記共通端子と前記第1のフィルタとの接続経路に直列に配置されたコンデンサと,を備え,
前記コンデンサは,多層基板内の複数層で形成されている,または,前記多層基板上に配置されたチップコンデンサであり,
前記多層基板は,前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタを実装するとともに,前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとを接続する配線を含んでおり,
前記第1のフィルタの前記1以上の弾性表面波共振子では,LiTaO_(3)からなる圧電性の基板を伝搬するリーキー波が弾性表面波として利用される,又は,LiNbO_(3)からなる圧電性の基板を伝搬するラブ波が弾性表面波として利用される,
マルチプレクサ。」


3.引用例及び周知例の記載事項並びに引用発明及び周知技術の認定

(1)原査定の拒絶の理由に引用された,国際公開第2005/088835号(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審で付した。以下,同様。)。

「[0001] 本発明は,通過帯域が異なる第1,第2のフィルタを接続してなる分波器及び該分波器に用いられる弾性表面波フィルタに関し,より詳細には,温度特性が改善された構造を備える分波器及び該分波器に用いられる弾性表面波フィルタに関する。」

「[0040] 図1は,本発明の第1の実施形態に係る分波器の回路構成を示す図である。
本実施形態の分波器1は,アンテナ2に属される入力端子3を有する。入力端子3に,第1のフィルタ11と,第2のフィルタ12とが接続されている。第1のフィルタ11は,通過帯域が相対的に低く,第2のフィルタ12の通過帯域が相対的に高くされている。すなわち,分波器1では,第1のフィルタ11が送信側帯域フィルタを,第2のフィルタ12が受信側帯域フィルタを構成している。
[0041] そして,本実施形態では,第1のフィルタ11は,直列腕共振子S11?S13と,並列腕共振子P11,P12とを有するラダー型フィルタにより構成されている。さらに,並列腕共振子P11,P12とアース電位との間に,それぞれ,インダクタンス素子L11,L12が接続されている。
[0042] なお,入力端子3と直列腕共振子S11との間には,コンデンサC11が接続されている。
第2のフィルタ12は,第1のフィルタ11と同様にラダー型回路構成を有する。すなわち,第2のフィルタ12は,複数の直列腕共振子S21?S23と,並列腕共振子P21?P24とを有する。また,直列腕共振子S23に並列にインダクタンス素子L22が接続されている。」

「[0044] なお,第1のフィルタ11に接続されているコンデンサ素子C11は,整合素子である。また,上記インダクタンス素子L21及びコンデンサ素子C21及びC22は,第2のフィルタ12を第1のフィルタ11に対し整合させるために設けられている。すなわち,インダクタンス素子L21及びコンデンサ素子C21,C22は,整合回路を構成している。」


「[0052] 図4(a)及び(b)は,上記実施形態の分波器1で用いられる第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12の模式的正面断面図である。
図4(a)に示す第1のフィルタ11は,通過帯域が相対的に低い側のフィルタであり,本実施形態では,弾性表面波フィルタにより構成されている。ここでは,第1のフィルタ11は,圧電基板31上にIDT電極などの電極32を形成した構造を有する。そして,電極32を覆うように第1の温度特性改善薄膜33が形成されている。
[0053] なお,本実施形態では,圧電基板31は,LiTaO_(3)基板により構成されている。また,電極32は,Cuを主成分とする電極により構成されており,第1の温度特性改善薄膜33は,SiO_(2)により構成されている。
[0054] 図4(b)に示す第2のフィルタ12は,第2の圧電基板41上に,IDT電極などからなる電極42を形成した構造を有する。電極42を覆うように第2の温度特性改善薄膜43が形成されている。第2のフィルタ12においても,圧電基板41は,LiTaO_(3)からなり,電極42は,Cuを主成分とし,第2の温度特性改善薄膜43はSiO_(2)により構成されている。」


「[0058] (実施例1)
図1に示した実施形態の分波器1を以下の要領で作製した。なお,第1のフィルタ11が送信側フィルタ,第2のフィルタ12が受信側フィルタである。送信側のフィルタ帯域は1850?1910MHzであり,受信側フィルタの通過帯域は1930?1990MZzであるシステムに用いられるものである。
[0059] 上記システムでは,送信側帯域フィルタの通過帯域と,受信側帯域フィルタの通過帯域の周波数間隔は20MHzと非常に狭い。従って,第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12のいずれにおいても急峻なフィルタ特性が要求されるとともに,良好な周波数温度依存性が必要である。
[0060] 特に,送信側フィルタとなる第1のフィルタ11は,受信側のフィルタ12の通過帯域を減衰域とする必要があるため,第1のフィルタ11の通過帯域の高域側における急峻性を高め,かつ通過帯域の高域側の温度依存性を改善することが強く求められる。
[0061] 他方,受信側フィルタである第2のフィルタ12については,第1のフィルタ11の通過帯域を減衰期とする必要があるので,第2のフィルタ12の通過帯域の低域側における急峻性を高めるとともに,通過帯域の低域側の温度依存性を改善することが求められる。なお,第1,第2のフィルタ11,12を構成している直列腕共振子及び並列腕共振子としては,図6に示す電極構造を有する弾性表面波共振子を用いた。図6に示す電極構造51は,IDT電極52と,IDT電極52の両側に配置された反射器53,54とを有する。圧電基板上にこの電極構造51が形成され,1つの弾性表面波共振子が構成される。図1に示したように,第1のフィルタ11は,直列腕共振子S11?S13及び並列腕共振子P11,P12を,第2のフィルタ12は,直列腕共振子S21?S23及び並列腕共振子P21?P24を有する。これらの直列腕共振子S11?S13,S21?S23及び並列腕共振子P11,P12,P21?P24が,上記弾性表面波共振子によりそれぞれ構成されている。」

「[0066] なお,本実施例において,第1,第2のフィルタ11,12は,同一の36度X伝搬のLiTaO_(3)基板を用いて,単一のチップ部品として構成されている。すなわち,1つのLiTaO_(3)基板上に,第1の回路構成が設けられている。従って,単一のチップ部品として構成されているため,分波器1の小型化を図ることが可能とされている。」

「[0076] なお,本実施例では,圧電基板として,36度LiTaO_(3)基板が用いられたが,例えば,42度LiTaO_(3)基板などの他のカット角のLiTaO_(3)基板が用いられてもよい。さらに,LiTaO_(3)基板と同様の効果が得られるとして知られているLiNbO_(3)基板などが用いられてもよい。」

上記によれば,引用例1には,

「分波器1であって,
アンテナ2に属される入力端子3を有し,入力端子3に,第1のフィルタ11と,第2のフィルタ12とが接続され,第1のフィルタ11は,通過帯域が相対的に低く,第2のフィルタ12の通過帯域が相対的に高くされており,第1のフィルタ11が送信側帯域フィルタを,第2のフィルタ12が受信側帯域フィルタを構成しており,
第1のフィルタ11は,直列腕共振子S11?S13と,並列腕共振子P11,P12とを有するラダー型フィルタにより構成され,
入力端子3と直列腕共振子S11との間には,コンデンサC11が接続され,
コンデンサ素子C11は,整合素子であり,
第1のフィルタ11は,圧電基板31上にIDT電極などの電極32を形成した構造を有し,圧電基板31は,LiTaO_(3)基板により構成され,
第1のフィルタ11が送信側フィルタ,第2のフィルタ12が受信側フィルタであり,
第1のフィルタ11は,直列腕共振子S11?S13及び並列腕共振子P11,P12を有し,これらの直列腕共振子S11?S13及び並列腕共振子P11,P12が,弾性表面波共振子によりそれぞれ構成され,
第1,第2のフィルタ11,12は,同一の36度X伝搬のLiTaO_(3)基板を用いて,単一のチップ部品として構成されており,
圧電基板として,LiNbO_(3)基板などが用いられてもよい
分波器1。」

が記載されている。(以下,「引用発明」という。)

(2)特許第5768951号公報(以下,「周知例1」という。)には,以下の記載がある。

「【0001】
本発明は,例えばデュプレクサなどに用いられるフィルタ装置に関する。」

「【0069】
なお,本発明は送信信号と受信信号とをフィルタにより分波するデュプレクサに適用できるだけでなく,2つ以上の信号を分波するマルチプレクサにも適用できる。さらに,本発明は,送信信号同士,あるいは受信信号同士をフィルタにより分波するダイプレクサにも適用できる。各フィルタは,ラダー型弾性波フィルタのみによって構成されてもよく,あるいは縦結合共振子型弾性波フィルタのみによって構成されてもよい。また,ラダー型フィルタの共振子は,BAW共振子によって構成されてもよい。」

したがって,周知例1によれば,

「送信信号と受信信号とをフィルタにより分波するデュプレクサなどに用いられるラダー型弾性波フィルタによって構成されるフィルタ装置は,2つ以上の信号を分波するマルチプレクサや,送信信号同士,あるいは受信信号同士をフィルタにより分波するダイプレクサにも適用できる」(以下,「周知技術1」という。)

は周知である。

(3)原査定の拒絶の理由に引用された,特開2005-72805号公報(以下,「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は,通信装置等に用いられる,圧電薄膜共振子からなるフィルタを備えるデュプレクサに関するものである。」

「【0024】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について,図1ないし図5に基づいて説明すれば,以下の通りである。
【0025】
本実施の形態にかかるデュプレクサは,図1および図2に示すように,送信側端子Tx,受信側端子Rx,アンテナ端子ANTを備えている。上記デュプレクサは,アンテナ端子ANTと送信側端子Txとの間に設けられた送信側フィルタチップ(送信側フィルタ)F2,およびアンテナ端子ANTと受信側端子Rxとの間に設けられた受信側フィルタチップ(受信側フィルタ)F1を備えている。また,本実施形態のデュプレクサでは,送信側フィルタF2および受信側フィルタF1がパッケージ1に搭載されている。
【0026】
上記受信側フィルタチップF1は,長方形の基板10上に,受信側フィルタ入力パッド(受信側フィルタ入力端子)A1と,受信側フィルタ出力パッド(受信側フィルタ出力端子)A2との間に直列共振子11と並列共振子12とをラダー型に備えている。また,上記並列共振子12は,接地配線16を介して受信側フィルタ接地用電極パッド(受信側フィルタグランド端子)A3・A4に接続されている。」

「【0044】
また,図5に示すように,例えば受信側フィルタF1と,ANTとの間に,コンデンサCおよびインダクタL等からなる整合回路をパッケージ1内に形成しても,実装基板に内蔵しても,実装基板上にチップC,Lを実装してもよい。」

上記によれば,引用例2には,

「送信側端子Tx,受信側端子Rx,アンテナ端子ANTを備え,アンテナ端子ANTと送信側端子Txとの間に設けられた送信側フィルタチップ(送信側フィルタ)F2,およびアンテナ端子ANTと受信側端子Rxとの間に設けられた受信側フィルタチップ(受信側フィルタ)F1を備えているデュプレクサにおいて,
受信側フィルタチップF1は,長方形の基板10上に,受信側フィルタ入力パッド(受信側フィルタ入力端子)A1と,受信側フィルタ出力パッド(受信側フィルタ出力端子)A2との間に直列共振子11と並列共振子12とをラダー型に備えており,
受信側フィルタF1と,ANTとの間に,コンデンサCおよびインダクタL等からなる整合回路をパッケージ1内に形成しても,実装基板に内蔵しても,実装基板上にチップC,Lを実装してもよい
デュプレクサ。」

が記載されている。

(4)特開2012-80160号公報(以下,「周知例2」という。)には,

「【0027】
上記の各整合回路MN1?MN8は,インダクタやコンデンサからなるものであって,多層基板内に電極パターンで形成することもできるし,チップインダクタ素子,チップコンデンサ素子などを用いても良い。整合回路は主としてインピーダンスマッチングのために用いられるが,高周波信号の位相調整のために用いられる場合もある。
これらの整合回路は,第1,第2のローパスフィルタ回路のインダクタ用電極パターンと,積層方向に重なり合わないように構成されることが好ましい。」

の記載があるから,周知例2には,「インダクタやコンデンサからなる整合回路は多層基板内に電極パターンで形成することも,チップ素子を用いても良いこと」が記載されている。

(5)したがって,引用例2,周知例2によれば,

「インダクタやコンデンサからなる整合回路は,多層基板内に電極パターンで形成することも,チップ素子を用いても良いこと」(以下,「周知技術2」という。)

は周知である。

(6)原査定の拒絶の理由に引用された,国際公開第2015/098756号(以下,「引用例3」という。)には,次の事項が記載されている。

「[0002] 下記の特許文献1には,支持基板上に,高音速膜,低音速膜,LiTaO_(3)膜及びIDT電極をこの順序で積層してなる弾性波装置が開示されている。特許文献1では,LiTaO_(3)膜を伝搬するリーキー波が用いられている。」

(7)原査定の拒絶の理由に引用された,国際公開第2016/052129号(以下,「引用例4」という。)には,次の事項が記載されている。

「[0061] 図10は,第5の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。弾性波装置71は,第2の空洞部及び音響反射膜を有しない。本実施形態の圧電基板5は,LiTaO_(3)(LT)からなる。弾性波装置71は,リーキー波を利用している。もっとも,圧電基板5はLiTaO_(3)以外の圧電単結晶からなっていてもよい。また,リーキー波以外の弾性波を用いてもよい。」

(8)したがって,引用例3,4によれば,

「LiTaO_(3)の圧電基板を用いる弾性波装置においてリーキー波を利用していること」(以下,「周知技術3」という。)

は周知である。

(9)原査定の拒絶の理由に引用された,国際公開第2015/025651号(以下,「引用例5」という。)には,次の事項が記載されている。

「[0009] 本発明に係るチューナブルフィルタは,圧電共振子と,上記圧電共振子に接続された帯域拡張用インダクタンスと,上記圧電共振子に接続された可変キャパシタンスと,を備え,ラブ波を利用しており,上記圧電共振子が,LiNbO_(3)基板と,LiNbO_(3)基板上に設けられたIDT電極とを有し,通過帯域および減衰域が,LiNbO_(3)基板を伝搬する遅い横波の音速を上記IDT電極の周期で定まる波長により除算して得られた値よりも低周波域にある。」

(10)原査定の拒絶の理由に引用された,特開昭63-260213号公報(以下,「引用例6」という。)には,次の事項が記載されている。

「(産業上の利用分野)
本発明はラブ波型SAW共振子,殊にラブ波についての電気機械結合係数大なるカット角を用いたLiNbO_(3)基板に金等の重い材料によるIDT電極を付着しSAWを励起する共振子に関する。」(1頁右下欄16行?2頁左上欄1行)

(11)したがって,引用例5,6によれば,

「LiNbO_(3)の圧電基板を用いる弾性波装置においてラブ波を利用していること」(以下,「周知技術4」という。)

は周知である。


4.本願発明と引用発明の対比

引用発明の「入力端子3」は,本願発明1の「共通端子」に相当する。
引用発明は,「入力端子3に,第1のフィルタ11と,第2のフィルタ12とが接続され」ているから,「第1のフィルタ11」と「第2のフィルタ12」は「前記共通端子に接続された複数のフィルタ」であるといえる。

引用発明の「第1のフィルタ11」は通過帯域が相対的に低く,「第2のフィルタ12」は通過帯域が相対的に高いから,引用発明の「第1のフィルタ11」は本願発明の「第1通過帯域を有する第1のフィルタ」に,引用発明の「第2のフィルタ12」は本願発明の「前記第1通過帯域よりも周波数が高い第2通過帯域を有する第2のフィルタ」に各々相当する。
また,「第1のフィルタ11」は,弾性表面波振動子による直列腕共振子と並列腕共振子を用いているから,「1以上の弾性表面波振動子で構成され」ているといえる。
ここで,第1のフィルタ11は,「送信側フィルタ」であるから,「入力端子3」は第1のフィルタ11の出力端子として機能し,その反対側の端子は入力端子として機能する。第2のフィルタ12は「受信側フィルタ」であるから,「入力端子3」は第2のフィルタ12の入力端子として機能し,その反対側の端子は出力端子として機能する。

引用発明のコンデンサC11は,「入力端子3と直列腕共振子S11との間」に接続されており,直列腕共振子S11は,第1のフィルタを構成するものであるから,「共通端子と前記第1のフィルタとの接続経路に直列に配置されたコンデンサ」であるといえる。

引用発明の「圧電基板31」は,「LiTaO_(3)基板」であり,「圧電基板として,LiNbO_(3)基板などが用いられてもよい」のであるから,「LiTaO_(3)からなる圧電性の基板,又は,LiNbO_(3)からなる圧電性の基板」であるといえる。

引用発明は,「入力端子3に,第1のフィルタ11と,第2のフィルタ12とが接続され」ているから,第1のフィルタ11と第2のフィルタ12は配線により接続されていることが明らかであり,かつ,「第1,第2のフィルタ11,12は,同一の36度X伝搬のLiTaO_(3)基板を用いて,単一のチップ部品として構成され」ているから,「LiTaO_(3)基板は,前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタを実装するとともに,前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとを接続する配線を含んで」いるといえる。

したがって,本願発明と引用発明は,

「共通端子,第1端子および第2端子を有し,前記共通端子に接続された複数のフィルタを備える回路であって,
前記共通端子と前記第1端子との間に配置された1以上の弾性表面波共振子で構成され,第1通過帯域を有する第1のフィルタと,
前記共通端子および前記第2端子に接続され,前記第1通過帯域よりも周波数が高い第2通過帯域を有する第2のフィルタと,
前記共通端子と前記第1のフィルタとの接続経路に直列に配置されたコンデンサと,を備え,
基板は,前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタを実装するとともに,前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとを接続する配線を含んでおり,
前記第1のフィルタの前記1以上の弾性表面波共振子では,LiTaO_(3)からなる圧電性の基板,又は,LiNbO_(3)からなる圧電性の基板が利用される,
回路。」

で一致し,下記の点で相違する。

相違点1

本願発明は,基板及びコンデンサが,「多層基板内の複数層で形成されている,または,前記多層基板上に配置されたチップコンデンサであ」るのに対し,引用発明は,基板が多層基板であるか不明であって,どのようなコンデンサであるか限定されていない点。

相違点2

本願発明は,弾性表面波共振器が,「LiTaO_(3)からなる圧電性の基板を伝搬するリーキー波が弾性表面波として利用される,又は,LiNbO_(3)からなる圧電性の基板を伝搬するラブ波が弾性表面波として利用される」のに対し,引用発明は,LiTaO_(3)基板により構成されている圧電基板31,又はLiNbO_(3)からなる圧電性の基板上にIDT電極を形成した構造を有しているが,どのような波が利用されているか不明である点。

相違点3

本願発明は,マルチプレクサであって,第1端子が第1入出力端子であり,第2端子が第2入出力端子であるのに対し,引用発明は,デュプレクサであって,第1端子が入力端子であり,第2端子が出力端子である点。


5.当審の判断

上記相違点について検討する。

相違点1について

基板として多層基板を用いることは文献を挙げるまでもない周知技術であり,「インダクタやコンデンサからなる整合回路は,多層基板内に電極パターンで形成することも,チップ素子を用いても良いこと」は周知技術2として周知であるから,引用発明の整合回路であるコンデンサC11を多層基板内の複数層で形成されている,または,前記多層基板上に配置されたチップコンデンサとすることは,当業者が容易に想到しうるものである。

相違点2について

弾性表面波においてLiTaO_(3)基板を用いてリーキー波を利用した共振器,LiNbO_(3)基板を用いてラブ波を用いた共振器は,いずれも周知技術3,4として周知であるから,引用発明のLiTaO_(3)基板を用いた弾性表面波共振器において,リーキー波が弾性表面波として利用されること,LiNbO_(3)基板を用いた弾性表面波共振器において,ラブ波が弾性表面波として利用されること,は当業者が容易に想到しうることである。

相違点3について

送信信号と受信信号とをフィルタにより分波するデュプレクサなどに用いられるフィルタ装置は,2つ以上の信号を分波するマルチプレクサや,送信信号同士,あるいは受信信号同士をフィルタにより分波するダイプレクサにも適用できることは,周知技術1として周知であるから,引用発明をマルチプレクサに用い,送信フィルタの端子と受信フィルタの端子を,それぞれ送信信号や受信信号を送受信する送受信端子とすることは当業者が容易に想到しうることである。

そして,本願発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる範囲のものである。
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。


6.むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-01-07 
結審通知日 2021-01-12 
審決日 2021-02-04 
出願番号 特願2018-523615(P2018-523615)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 麻川 倫広  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 丸山 高政
吉田 隆之
発明の名称 マルチプレクサ、高周波フロントエンド回路および通信装置  
代理人 傍島 正朗  
代理人 吉川 修一  
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