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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02J 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H02J 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H02J |
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管理番号 | 1372508 |
審判番号 | 不服2020-4923 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-04-10 |
確定日 | 2021-04-22 |
事件の表示 | 特願2019-506501「磁束消去のための共有材料を有するインダクタシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月15日国際公開、WO2018/031547、令和 1年10月 3日国内公表、特表2019-527939、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)8月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年8月8日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 1年 9月 2日付け:拒絶理由通知書 令和 1年11月 8日 :意見書、手続補正書の提出 令和 1年12月 5日付け:拒絶査定 令和 2年 4月10日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 2年11月 4日付け:当審による最後の拒絶理由の通知 令和 3年 1月29日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本件特許出願の請求項に係る発明は、令和3年1月29日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至17に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1乃至17に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明17」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 無線共振電力伝送機のソースコイルと、 第1のエネルギー源によって発生させられる第1の振動電流によって駆動される第1のインダクタと、 第2のエネルギー源によって発生させられる第2の振動電流によって駆動される第2のインダクタと、 前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとの間に配置される磁性材料の層であって、前記第1および第2のインダクタは、それぞれがその個別の振動電流で駆動されるときに、前記第1のインダクタによって発生させられる磁束が、前記磁性材料の層内の前記第2のインダクタによって発生させられる磁束によって実質的に消去されるように構成され、前記磁性材料の層は、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタを実質的に磁気的に分断する、磁性材料の層と を備え、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタは、平衡インダクタであり、前記第1および第2のインダクタは、前記無線共振電力伝送機の前記ソースコイルに結合される、システム。 【請求項2】 前記第1および第2のインダクタは、それぞれ、第1および第2のE字形コアの中に配置される、請求項1に記載のシステム。 【請求項3】 前記第1および第2のインダクタと組み合わせた前記磁性材料層は、前記システムの動作中の第1および第2のインダクタの個別のインダクタンスを決定する、請求項2に記載のシステム。 【請求項4】 消去後の前記第1および第2のインダクタからの前記消去された磁束の正味量は、前記第1のインダクタを通した前記振動電流および前記第2のインダクタを通した前記振動電流が実質的に等しいときに、前記磁性材料層の一部では実質的にゼロである、請求項1に記載のシステム。 【請求項5】 前記無線共振電力伝送機は、充電プラットフォームの一部を形成する、請求項1に記載のシステム。 【請求項6】 前記第1および第2のインダクタは、個別の平面巻線を備える、請求項1に記載のシステム。 【請求項7】 前記磁性材料の層は、さらなる回路構成要素と共有される、請求項1に記載のシステム。 【請求項8】 第1のインダクタと第2のインダクタとの間に磁性材料の層を配置することにより前記磁性材料の層と前記第1および第2のインダクタと無線共振電力伝送機のソースコイルとを備えるシステムを形成することであって、前記第1のインダクタは、第1のエネルギー源に電気的に結合され、前記第2のインダクタは、第2のエネルギー源に電気的に結合され、前記磁性材料の層は、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタを実質的に磁気的に分断し、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタは、平衡インダクタである、ことと、 前記第1のインダクタによって発生させられる第1の磁束が、前記第2のインダクタによって発生させられる第2の磁束によって消去されるように、振動電流で前記第1および第2のインダクタを駆動することと を含み、前記第1および第2のインダクタと組み合わせた前記磁性材料層は、前記第1および第2のインダクタの動作中の第1および第2のインダクタの個別のインダクタンスを決定し、前記第1および第2のインダクタは、前記無線共振電力伝送機の前記ソースコイルに結合される、方法。 【請求項9】 消去後の前記第1および第2のインダクタからの前記消去された磁束の正味量は、前記第1のインダクタを通した前記振動電流および前記第2のインダクタを通した前記振動電流が実質的に等しいときに、前記磁性材料層の一部では実質的にゼロである、請求項8に記載の方法。 【請求項10】 前記第1および第2のインダクタは、それぞれ、第1および第2のE字形コアの中に配置される、請求項8に記載の方法。 【請求項11】 前記無線共振電力伝送機は、充電プラットフォームの一部を形成する、請求項8に記載の方法。 【請求項12】 前記第1および第2のインダクタは、個別の平面巻線を備える、請求項8に記載の方法。 【請求項13】 前記磁性材料の層は、さらなる回路構成要素と共有される、請求項8に記載の方法。 【請求項14】 無線共振電力伝送機のソースコイルと、 第1の振動電流によって駆動される第1のインダクタと、 第2の振動電流によって駆動され、前記第1のインダクタから実質的に分断される第2のインダクタと、 前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとの間に配置される磁性材料の層であって、前記第1および第2のインダクタがそれらの個別の振動電流で駆動されるときに、前記第1のインダクタによって発生させられる磁束は、前記磁性材料の層内の前記第2のインダクタによって発生させられる磁束によって実質的に消去され、前記磁性材料の層は、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタを実質的に磁気的に分断する、磁性材料の層と を備え、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタは、平衡インダクタであり、前記第1および第2のインダクタは、前記無線共振電力伝送機の前記ソースコイルに結合される、システム。 【請求項15】 前記第1および第2のインダクタは、それぞれ、第1および第2のE字形コアの中に配置される、請求項14に記載のシステム。 【請求項16】 消去後の前記第1および第2のインダクタからの前記消去された磁束の正味量は、前記第1のインダクタを通した前記振動電流および前記第2のインダクタを通した前記振動電流が実質的に等しいときに、前記磁性材料層の一部では実質的にゼロである、請求項14に記載のシステム。 【請求項17】 前記第1および第2のインダクタと組み合わせた前記磁性材料層は、前記システムの動作中の第1および第2のインダクタの個別のインダクタンスを決定する、請求項14に記載のシステム。」 第3 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 当審での拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-258395号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0001】 本発明は、インターリーブ方式のPFC回路に使用するチョークコイルであって、2つのコイル巻線を有していて、実質的に独立した2つのチョークコイルとして動作できるインターリーブ用PFCチョークコイルに関する。 (中略) 【0003】 図13はインターリーブ方式のPFC回路の1例であり、チョークコイルL1、スイッチング素子S1及びダイオードD1からなる回路と、チョークコイルL2、スイッチング素子S2及びダイオードD2からなる回路とを位相をずらして並列に接続した構成を有している。出力側には負荷RLOADと並列にリプル除去用のコンデンサCOUTが接続されている。入力電圧VINは例えば商用電源であるAC100Vを全波整流した波形である。」 イ.「【0019】 図1乃至図8に示すように、インターリーブ用PFCチョークコイルは、第1及び第2の磁気コアとしてのE型コア1,2と、第3の磁気コアとしてのI型コア3と、2つの巻枠部41,51を有するボビン4と、各巻枠部41,51に巻回される第1及び第2コイル巻線61,62とを備えている。」 ウ.「【0024】 そして、一方の巻枠部41の内周部(つまり内側貫通孔)46にE型コア1の中脚部11が、他方の巻枠部51の内周部(つまり内側貫通孔)にE型コア2の中脚部21がそれぞれ挿入され、コア配置空間5にI型コア3が配設される。 【0025】 図9のように、第1及び第2コイル巻線61,62を施したボビン4に各コア1,2,3を組み付けた状態では、E型コア1,2はI型コア3を挟んで外側脚部12,22が相互に突き合わされている。つまり、I型コア3の一方の面に外側脚部12が当接、接合し、他方の面に外側脚部22が当接、接合している。また、各々の中脚部11,21とI型コア3との間にはギャップG1,G2が設けられている。」 エ.「【0027】 第1コイル巻線61と第2コイル巻線62に流れる電流方向は、図10(A)に示すように、同一方向に設定する。こうすることで同図(B)のようにコイル分離用コアとして機能するI型コア3を通る第1コイル巻線61による磁束φ1と第2コイル巻線62による磁束φ2とが逆向きで打ち消し合う関係となり、I型コア3に磁束が集中することはない。また、E型コア1,2の両方の中脚部11,21を通って大きく回ろうとする磁束はギャップG1,G2が存在するため殆ど発生しない。」 「【図1】 ![]() 」 「【図10】 ![]() 」 「【図13】 ![]() 」 上記イによれば、「第1及び第2の磁気コアとしてのE型コア1,2と、第3の磁気コアとしてのI型コア3と、2つの巻枠部41,51を有するボビン4と、各巻枠部41,51に巻回される第1及び第2コイル巻線61,62とを備え」た「インターリーブ用PFCチョークコイル」について記載されている。 上記アによれば、「インターリーブ方式のPFC回路」は「チョークコイルL1」「からなる回路と」「チョークコイルL2」「からなる回路とを」「並列に接続」すること、及び、「入力」が「商用電源である」ことが記載されている。また、上記イによれば、「インターリーブ用PFCチョークコイル」は、コイル部品として「第1及び第2コイル巻線61,62」を備えることが記載されており、上記アによれば、「2つのコイル巻線」は、「実質的に独立した2つのチョークコイルとして動作できる」ものであるから、第1及び第2コイル巻線61,62は各々、チョークコイルL1,L2に対応したものであるといえる。そうすると、第1及び第2コイル巻線61,62は各々商用電源に接続されると共に互いに並列に接続されているといえる。 上記ウによれば、「一方の巻枠部41の内周部にE型コア1の中脚部11が、他方の巻枠部51の内周部にE型コア2の中脚部21がそれぞれ挿入され」「E型コア1,2はI型コア3を挟んで相互に突き合わされ」ることが記載されている。 上記エによれば、「第1コイル巻線61と第2コイル巻線62に流れる電流方向」を「同一方向に設定する」「ことで」「コイル分離用コアとして機能するI型コア3を通る第1コイル巻線61による磁束φ1と第2コイル巻線62による磁束φ2とが逆向きで打ち消し合う関係」となることが記載されている。 したがって、上記アないしエの記載事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「第1及び第2の磁気コアとしてのE型コア1,2と、第3の磁気コアとしてのI型コア3と、2つの巻枠部41,51を有するボビン4と、各巻枠部41,51に巻回される第1及び第2コイル巻線61,62とを備えたインターリーブ用PFCチョークコイルであって、 第1及び第2コイル巻線61,62は各々商用電源に接続されると共に互いに並列に接続され、 一方の巻枠部41の内周部にE型コア1の中脚部11が、他方の巻枠部51の内周部にE型コア2の中脚部21がそれぞれ挿入され、E型コア1,2はI型コア3を挟んで相互に突き合わされ、 第1コイル巻線61と第2コイル巻線62に流れる電流方向を同一方向に設定することで、コイル分離用コアとして機能するI型コア3を通る第1コイル巻線61による磁束φ1と第2コイル巻線62による磁束φ2とが逆向きで打ち消し合う関係となる、 インターリーブ用PFCチョークコイル。」 2.引用文献2について 当審での拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平7-263254号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「【0002】 【従来の技術】電子機器の小型,薄型化要求に伴い、電源回路に用いるチョークコイル、トランス等のインダクタの小型,薄型化が進められている。焼結フェライトコアに巻線を施した巻線方式のインダクタは小型化に限界があり、巻線の代わりに平面状コイルを用いる方式の開発が進められている。」 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)本願発明1と引用発明との対比 ア.引用発明の「第1及び第2コイル巻線61,62」は、本願発明1の「第1のインダクタ」「第2のインダクタ」に相当し、引用発明の「商用電源」は、本願発明1の「第1のエネルギー源」に相当すると共に「第2のエネルギー源」に相当する。そして、引用発明の「第1及び第2コイル巻線61,62は各々商用電源に接続されると共に互いに並列に接続され」た「インターリーブ用PFCチョークコイル」は、並列に接続された各コイル巻線61,62に対し商用電源から所定周波数の振動電流が供給されるものであるから、本願発明1の「第1のエネルギー源によって発生させられる第1の振動電流によって駆動される第1のインダクタと、第2のエネルギー源によって発生させられる第2の振動電流によって駆動される第2のインダクタと、」を備えた「システム」に相当する。 ただし、本願発明1が、「無線共振電力伝送機のソースコイル」を備えた「システム」であって、「前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタは、平衡インダクタであり、前記第1および第2のインダクタは、前記無線共振電力伝送機の前記ソースコイルに結合され」ているのに対し、引用発明は、そのような特定を有していない点で相違する。 イ.引用発明の「第3の磁気コアとしてのI型コア3」は、本願発明1の「磁性材料の層」に相当し、引用発明の「一方の巻枠部41の内周部にE型コア1の中脚部11が、他方の巻枠部51の内周部にE型コア2の中脚部21がそれぞれ挿入され、E型コア1,2はI型コア3を挟んで相互に突き合わされ」ることは、引用文献1の図1及び10の記載も参照すれば、E型コア1,2に配置されたコイル巻線61,62の間にI型コア3を配置することであるから、当該I型コア3は本願発明1の「前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとの間に配置される磁性材料の層」に相当する。 ウ.引用発明の「第1コイル巻線61と第2コイル巻線62に流れる電流方向を同一方向に設定することで、コイル分離用コアとして機能するI型コア3を通る第1コイル巻線61による磁束φ1と第2コイル巻線62による磁束φ2とが逆向きで打ち消し合う関係となる」ことは、各コイル巻線61,62に流れる電流によって生じる磁束が互いに打ち消し合うことによってI型コアでの磁束が実質的に消去されているといえ、また、I型コア3での磁束が実質的に消去されることにより、各コイル巻線61,62間が実質的に磁気的に分断されているといえるから、本願発明1の「前記第1および第2のインダクタは、それぞれがその個別の振動電流で駆動されるときに、前記第1のインダクタによって発生させられる磁束が、前記磁性材料の層内の前記第2のインダクタによって発生させられる磁束によって実質的に消去されるように構成され、前記磁性材料の層は、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタを実質的に磁気的に分断する」 ことに相当する。 エ.そうすると、本願発明1と引用発明とは、 「第1のエネルギー源によって発生させられる第1の振動電流によって駆動される第1のインダクタと、 第2のエネルギー源によって発生させられる第2の振動電流によって駆動される第2のインダクタと、 前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとの間に配置される磁性材料の層であって、前記第1および第2のインダクタは、それぞれがその個別の振動電流で駆動されるときに、前記第1のインダクタによって発生させられる磁束が、前記磁性材料の層内の前記第2のインダクタによって発生させられる磁束によって実質的に消去されるように構成され、前記磁性材料の層は、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタを実質的に磁気的に分断する、磁性材料の層と を備えたシステム」。 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 本願発明1が、「無線共振電力伝送機のソースコイル」を備えた「システム」であって、「前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタは、平衡インダクタであり、前記第1および第2のインダクタは、前記無線共振電力伝送機の前記ソースコイルに結合され」ているのに対し、引用発明は、そのような特定を有していない点。 (2)本願発明1と引用発明との相違点についての判断 引用文献1に記載の発明は、インターリーブ方式のPFC回路に使用するチョークコイルに関するものであってワイヤレス給電分野への適用を想定していないため、引用文献1に記載の発明において、無線共振電力伝送機のソースコイルを備え、該ソースコイルに対してチョークコイルを結合したシステムとすることの動機付けが存在せず、当業者といえども、引用文献1に記載の発明に基づいて相違点に係る構成を容易に想到することはできない。 なお、引用文献2にも相違点に係る構成は記載されていない。 (3)小括 よって、本願発明1は引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 2.本願発明2乃至5及び7について 請求項1の従属請求項である請求項2乃至請求項5及び請求項7は、本願発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記判断と同様の理由により、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 3.本願発明8について 本願発明8も相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 4.本願発明9乃至11及び13について 請求項8の従属請求項である請求項9乃至請求項11及び請求項13は、本願発明8の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記判断と同様の理由により、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 5.本願発明14について 本願発明14も相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 6.本願発明15乃至17について 請求項14の従属請求項である請求項15乃至請求項17は、本願発明14の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記判断と同様の理由により、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 7.本願発明6及び12について 当審での拒絶の理由に引用された引用文献2には、チョークコイルとして平面状コイルを用いる技術事項が記載されている。 しかしながら、引用文献2にも上記[相違点]に係る構成は開示されていないから、本願発明1の従属請求項である本願発明6及び本願発明8の従属請求項である本願発明12についても、引用文献1に記載の発明、及び引用文献2に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定(令和1年12月5日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。 本件出願の請求項1、3乃至10、12乃至16、18及び19に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2015/129915号(以下、「引用文献A」という。)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献Aには、給電用コイル101、102(本願発明1の無線共振電力伝送機のソースコイルに相当)を備えた非接触給電装置であって、フィルタ回路111に備えられたインダクタ1110、1112を給電用コイル101、102に接続することが記載されている(段落[0278]及び図209参照)。 しかしながら、引用文献Aには、「インダクタコイル1110、1112は、フィルタ回路111に電流が流れた場合に発生する磁束が互いに打消し合わないように配線されている」と記載されており(段落[0279]参照)、本願発明1に記載のように、「前記第1および第2のインダクタは、それぞれがその個別の振動電流で駆動されるときに、前記第1のインダクタによって発生させられる磁束が、前記磁性材料の層内の前記第2のインダクタによって発生させられる磁束によって実質的に消去される」ものではなく、「磁性材料の層は、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタを実質的に磁気的に分断する」との記載もない(なお、下線は当審で付与した)。また、引用発明Aにおいて上記本願発明1のような構成とする動機付けも見いだせない。 よって、本願発明1乃至17は、上記引用文献Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1.特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項について 当審では、請求項1乃至3、5及び6、9、11乃至13、16及び17、19について、上記引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができず、また、請求項1乃至6、9乃至13、16乃至19について、上記引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、更に、請求項7及び14について、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との拒絶理由を通知した。 しかしながら、令和3年1月29日の手続補正により補正された請求項1、8、14は、それぞれ「無線共振電力伝送機のソースコイル」を備えた「システム」であること、「前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタは、平衡インダクタ」であり、「前記第1および第2のインダクタは、前記無線共振電力伝送機の前記ソースコイルに結合され」る構成を有するものとなっており、上記「第4 対比・判断」に記載のとおり、本願発明1乃至17は、上記引用文献1に記載された発明と同一ではなく、また、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。したがって、この拒絶の理由は解消した。 2.特許法第36条第6項第1号について 当審では、請求項1、9、16に記載の「前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタは、並列に接続される」という点について、第1のインダクタと第2のインダクタを並列接続することは、発明の詳細な説明に記載されたものではないとの拒絶の理由を通知しているが、令和3年1月29日の手続補正において、「前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタは、平衡インダクタであ」ると補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由(上記「第5」参照)によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-04-09 |
出願番号 | 特願2019-506501(P2019-506501) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H02J)
P 1 8・ 113- WY (H02J) P 1 8・ 121- WY (H02J) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大濱 伸也 |
特許庁審判長 |
井上 信一 |
特許庁審判官 |
赤穂 嘉紀 山本 章裕 |
発明の名称 | 磁束消去のための共有材料を有するインダクタシステム |
代理人 | 飯田 貴敏 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 山本 健策 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 石川 大輔 |