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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1372529
審判番号 不服2020-11664  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-21 
確定日 2021-04-20 
事件の表示 特願2015-198668「極低温流体混合物で基板を処理するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日出願公開,特開2016- 86157,請求項の数(22)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年10月6日(パリ条約による優先権主張:2014年10月6日,2015年3月31日,アメリカ合衆国)の出願であって,令和元年6月7日付けで拒絶理由が通知され,同年12月10日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,令和2年4月16日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がされ,同年9月1日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定(令和2年4月16日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし22に係る発明は,以下の引用文献1ないし3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-26327号公報
2.特開2004-31924号公報
3.特開2003-59889号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし22に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明22」という。)は,令和元年12月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,及び,本願発明13は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
マイクロ電子基板を処理する方法であって,
真空処理チャンバ内に,前記マイクロ電子基板を受容するステップであって,前記真空処理チャンバは,入口および出口を有する流体膨張部材を有し,前記真空処理チャンバは,圧力が35Torr以下であり,前記マイクロ電子基板は,該マイクロ電子基板と前記流体膨張部材の前記出口との間に2mmから50mmの範囲のギャップ距離を提供するように配置される,ステップと,
前記流体膨張部材の前記入口に,加圧され冷却された流体混合物を供給するステップであって,前記流体混合物は,アルゴンおよび窒素の少なくとも一つを含み,前記流体混合物は,前記流体膨張部材の前記入口に供給される際,温度が70Kから270Kの範囲であり,供給圧力により,1重量%未満の液体を含む気相となる,ステップと,
前記流体膨張部材の前記出口を介して,前記真空処理チャンバ内で前記加圧され冷却された流体混合物を膨張させ,ガスクラスタのジェットを生成するステップであって,前記ガスクラスタのジェットの少なくとも一部は,前記マイクロ電子基板にわたって横方向に流れ,前記マイクロ電子基板と接触する,ステップと,
前記横方向に流れるガスクラスタのジェットを用いて,前記マイクロ電子基板から対象物を除去するステップと,
を有する方法。」

「【請求項13】
マイクロ電子基板を処理する方法であって,
35Torr以下のチャンバ圧力を有する処理チャンバ内に前記マイクロ電子基板を受容するステップであって,前記真空処理チャンバは,入口および出口を有する流体膨張部材を有し,前記マイクロ電子基板は,該マイクロ電子基板と前記出口の間に2mmから50mmの範囲のギャップ距離を提供するように配置される,ステップと,
前記流体膨張部材の前記入口に,加圧され冷却された流体混合物を供給するステップであって,前記流体混合物は,前記入口に供給される際に,温度が70Kから270Kの範囲であり,前記流体混合物は,水素,ネオン,およびヘリウムの少なくとも一つと,窒素およびアルゴンの少なくとも一つとを含む,ステップと,
前記流体膨張部材の前記出口を介して,前記処理チャンバ内で前記流体混合物を膨張させ,ガスクラスタのジェットを生成するステップであって,前記ガスクラスタのジェットの少なくとも一部は,前記マイクロ電子基板にわたって横方向に流れ,前記マイクロ電子基板と接触する,ステップと,
前記ガスクラスタのジェットを用いて,前記マイクロ電子基板から対象物を除去するステップと,
を有する方法。」

なお,本願発明2ないし12,及び,本願発明14ないし22は,それぞれ,本願発明1,及び,本願発明13を減縮した発明である。

第4 引用文献,引用発明
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
付着物の付着した被処理体の表面から付着物を除去する洗浄方法において,
被処理体の表面及び付着物の少なくとも一方に対して,エッチング処理を含む前処理を行う工程と,
被処理体の置かれる処理雰囲気よりも圧力の高い領域から,前記被処理体の表面に露出している膜に対して反応性を持たない洗浄用ガスを処理雰囲気に吐出し,断熱膨張により前記洗浄用ガスの原子または分子の集合体であるガスクラスターを生成させる工程と,
前記前処理の行われた被処理体の表面に,洗浄用ガスのガスクラスターを照射して,付着物を除去する工程と,を含むことを特徴とする洗浄方法。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は,被処理体の表面に付着したパーティクルなどの付着物を除去する洗浄方法,処理装置及び前記方法の記憶された記憶媒体に関する。」

「【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態:シリコン基板]
本発明の洗浄方法の第1の実施の形態について,図1?図5を参照して説明する。始めに,この洗浄方法が適用されるウエハWの構成及び当該洗浄方法の概略について説明する。このウエハWは,図1に示すように,シリコン(Si)により構成されており,例えば凹部である溝5と凸部であるライン6とからなるパターン7が表面に形成されている。そして,この洗浄方法は,後述するように,前記ライン6の倒れやウエハWの表面の膜荒れといったウエハWに対するダメージの発生を抑制しながら,図2に示すようなウエハW表面の付着物10を容易に除去できるように構成されている。
<途中省略>
【0020】
続いて,ガスクラスターを用いて,ウエハWの表面から付着物10を除去する。このガスクラスターは,ウエハWの置かれる処理雰囲気よりも圧力の高い領域から処理雰囲気にガスを供給して,断熱膨張によりガスの凝縮温度まで冷却することによって,ガスの原子または分子が集合体として寄り集まって生成する物質である。図5には,ガスクラスターを発生させるためのノズル23の一例を示している。このノズル23は,上下方向に伸びると共に下端部が開口するように概略円筒形状に形成された圧力室32と,この圧力室32の下端部に接続され,圧力室32の下端周縁部から当該圧力室32の中央部に向かって周方向に亘って水平に縮径してオリフィス部32aをなすと共に,このオリフィス部32aから下方に向かうにつれて拡径するガス拡散部33と,を備えている。前記オリフィス部32aにおける開口径及びオリフィス部32aと載置台22上のウエハWとの間の離間距離は,夫々例えば0.1mm及び6.5mm程度となっている。このノズル23の上端側には,圧力室32内に例えば二酸化炭素(CO_(2))ガスを供給するためのガス供給路34が接続されている。
【0021】
そして,処理雰囲気における処理圧力を例えば1?100Pa程度の真空雰囲気に設定すると共に,ノズル23に対して例えば0.3?2.0MPa程度の圧力で二酸化炭素ガスを供給する。この二酸化炭素ガスは,処理雰囲気に供給されると,急激な断熱膨張により凝縮温度以下に冷却されるので,互いの分子同士がファンデルワールス力により結合して,集合体であるガスクラスターとなる。この時,ガス供給路34やノズル23の下方側におけるガスクラスターの流路には,当該ガスクラスターをイオン化するためのイオン化装置が設けられておらず,従ってガスクラスターは,図5に示すように,非イオン化の状態でウエハWに向かって垂直に照射される。
【0022】
ウエハWの表面の付着物10は,既述のように前処理により当該ウエハWとの間の付着力が極めて弱くなっていて,下地膜12の表面とわずかに接触した状態となっている。そのため,ウエハW上の付着物10にガスクラスターが衝突すると,図5に示すように,このガスクラスターの吐出圧力により付着物10がウエハWの表面から吹き飛ばされて除去される。この時,ガスクラスターは,下地膜12と反応性を持たない二酸化炭素ガスにより構成されている。また,ガスクラスターをイオン化せずに,非イオン化の状態でウエハWに照射している。そのため,既述の前処理によって露出しているウエハWの表面部である下地膜12は,ガスクラスターの照射によって削り取られたり,または当該下地膜12の内部に形成された電気配線がチャージアップしたりなどといったダメージが起こらないか,あるいは当該ダメージが極めて低いレベルに抑えられる。従って,ガスクラスター照射後のウエハWの表面は,自然酸化膜11の表面に倣ったままの状態となる。
【0023】
こうしてウエハWの面内に亘ってガスクラスターが照射されるように,ウエハWをノズル23に対して相対的に水平方向に移動させると,面内に亘って付着物10が除去されて洗浄処理が行われる。尚,既述のフッ化水素の蒸気により溶解した自然酸化膜11の副生成物として,水が発生する場合には,ウエハWを後述する温調機構によって加温することで水の残留を抑制することができる。
【0024】
続いて,ウエハWに対して既述のフッ化水素水溶液の蒸気を供給する装置やガスクラスターを照射する装置を含めた処理装置について,以下に説明する。始めに,フッ化水素の蒸気をウエハWに供給する装置について図6を参照して説明する。この装置には,ウエハWを載置する載置台41が内部に設けられた処理容器42と,この処理容器42内にフッ化水素水溶液の蒸気を供給するための前処理機構である気化器43と,が設けられて前処理モジュールをなしている。図6中44はウエハWの搬送口,45は載置台41上のウエハWの表面においてフッ化水素の蒸気の凝縮を抑えるためのヒーターである。
【0025】
載置台41上のウエハWに対向するように,処理容器42の天井面には,気化器43から伸びるガス供給路46の一端側が接続されており,このガス供給路46から例えば窒素(N_(2))ガスなどのキャリアガスと共にフッ化水素の蒸気がウエハWに供給されるように構成されている。図6中V及びMは夫々バルブ及び流量調整部である。
処理容器42の床面には,当該処理容器42内の雰囲気を排気するための排気口51が例えば複数箇所に形成されており,この排気口51から伸びる排気路52には,バタフライバルブなどの圧力調整部53を介して真空ポンプ54が接続されている。
そして,この処理容器42では,気化器43において蒸発したフッ化水素水溶液の蒸気がキャリアガスにより載置台41上のウエハWに対して供給されると,既述のように自然酸化膜11が溶解する。
【0026】
次に,ウエハWに対してガスクラスターを照射する装置について,図7を参照して説明する。この装置には,図7に示すように,ウエハWを内部に収納して付着物10の除去処理を行うための洗浄処理室21が設けられており,この洗浄処理室21内には,ウエハWを載置するための載置台22が配置されている。洗浄処理室21の天井面における中央部には,上方側に向かって円筒状に突出する突出部21aが形成されており,この突出部21aには既述のノズル23がガスクラスターの生成機構として設けられている。このノズル23は,この例では鉛直方向下方側を向いている。図7中40は搬送口であり,Gはこの搬送口40の開閉を行うゲートバルブである。
【0027】
例えば搬送口40に寄った位置における洗浄処理室21の床面には,ここでは図示を省略するが,載置台22に形成された貫通口を貫通するように配置された支持ピンが設けられている。そして,載置台22に設けられた図示しない昇降機構及び前記支持ピンの協働作用によって,載置台22に対してウエハWを昇降させて,洗浄処理室21の外部の図示しないウエハ搬送アームとの間においてウエハWを受け渡すように構成されている。洗浄処理室21の床面には,当該洗浄処理室21内の雰囲気を真空排気するための排気路24の一端側が接続されており,この排気路24の他端側にはバタフライバルブなどの圧力調整部25を介して真空ポンプ26が接続されている。
【0028】
載置台22は,当該載置台22上のウエハWに対して面内に亘ってノズル23が相対的に走査されるように,洗浄処理室21内において水平方向に移動自在に構成されている。具体的には,載置台22の下方における洗浄処理室21の床面には,X軸方向に沿って水平に伸びるX軸レール27と,当該X軸レール27に沿って移動自在に構成されたY軸レール29と,が設けられている。そして,既述の載置台22は,Y軸レール29の上方に支持されている。尚,載置台22には,当該載置台22上のウエハWの温調を行うための図示しない温調機構が設けられている。
【0029】
圧力室32の上端部には,洗浄処理室21の天井面を貫通して伸びるガス供給路34の一端側が接続されており,このガス供給路34の他端側は,バルブ36及び流量調整部35を介して,二酸化炭素の貯留されたガス源37に接続されている。前記圧力室32には,図示しない圧力計が設けられており,後述の制御部67により,この圧力計を介して当該圧力室32内に供給されるガス流量が調整されるように構成されている。尚,ウエハWから除去した付着物10が当該ウエハWに再付着することを防止するため,またパターン7へのダメージをできるだけ小さくするため,更には溝5の底面に付着した付着物10を除去しやすくするために,載置台22に対するノズル23の角度や距離を図示しない駆動部により調整するようにしても良い。後述するように,前処理においてガスクラスターを照射する場合においても,同様にノズル23の角度や距離を調整するようにしても良い,
【0030】
続いて,処理容器42及び洗浄処理室21を備えた処理装置の全体の構成について,図8を参照して説明する。この処理装置には,例えば25枚のウエハWが収納された密閉型の搬送容器であるFOUP1を載置するための搬入出ポート60が横並びに例えば3箇所に設けられており,これら搬入出ポート60の並びに沿うように,大気搬送室61が設けられている。この大気搬送室61内には,ウエハWを搬送するための多関節アームにより構成されたウエハ搬送機構61aが常圧搬送機構として設けられている。また,大気搬送室61の側方側には,ウエハWの向きの調整及び位置合わせを行うためのアライメント室62が設けられており,この大気搬送室61の側方側には,前記アライメント室62に対向するように,既述の処理容器42が接続されている。また,大気搬送室61における搬入出ポート60の反対側の面には,常圧雰囲気と大気雰囲気との間で雰囲気の切り替えを行うためのロードロック室63が気密に接続されている。この例では,ロードロック室63は,横並びに2箇所に設けられている。
【0031】
大気搬送室61から見た時に,ロードロック室63,63よりも奥側には,真空雰囲気にてウエハWの搬送を行う真空搬送機構である搬送アーム64aの設けられた真空搬送室64が気密に接続されており,この真空搬送室64には,既述の洗浄処理室21が気密に設けられている。また,真空搬送室64には,ウエハWにパターン7を形成するためのプラズマエッチング処理の行われるエッチング処理室65と,フォトレジストマスクのプラズマアッシング処理の行われるアッシング処理室66と,が夫々気密に接続されている。尚,この真空搬送室64に,付着物10を除去した後の処理である例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)処理などを行う処理チャンバーを気密に接続しても良い。
【0032】
この処理装置には,装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部67が設けられており,この制御部67のメモリ内には,以上説明した前処理及び洗浄処理に加えて,エッチング処理及びアッシング処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは,ウエハWに対する処理に対応した装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており,ハードディスク,コンパクトディスク,光磁気ディスク,メモリカード,フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部68から制御部67内にインストールされる。
【0033】
この処理装置では,搬入出ポート60にFOUP1が載置されると,ウエハ搬送機構61aによりウエハWが当該FOUP1から取り出される。このウエハWには,例えば既述のパターン7に対応するようにパターニングされたフォトレジストマスクが表面に積層されている。次いで,アライメント室62においてウエハWのアライメントが行われた後,このウエハWは大気雰囲気に設定されたロードロック室63に搬入される。そして,ロードロック室63内の雰囲気が真空雰囲気に切り替えられた後,ウエハWは搬送アーム64aによりエッチング処理室65及びアッシング処理室66をこの順番で搬送されて,既述のパターン7の形成及びアッシング処理がこの順序で行われる。次いで,ウエハWは,ロードロック室63及び大気搬送室61を介して処理容器42内に搬送されて既述の前処理が行われた後,洗浄処理室21に搬入されてガスクラスターの照射処理が行われる。その後,処理済みのウエハWは,ロードロック室63及び大気搬送室61を介して元のFOUP1に戻される。
【0034】
上述の実施の形態によれば,ウエハWの表面に付着した付着物10を除去するにあたり,ウエハWに対して前処理としてフッ化水素の蒸気の供給を行い,ウエハWの表面の自然酸化膜11を溶解させている。そのため,付着物10は,ウエハWの表面とわずかにだけ接触した状態となり,当該表面との付着力が極めて弱くなる。従って,この付着物10に対して二酸化炭素ガスからなるガスクラスターを照射することにより,当該付着物10を容易に除去できる。そのため,既述のように微細なパターン7の形成されたウエハWであっても,例えばガスクラスターの照射速度を抑えて付着物10を除去できるので,例えばライン6の倒れなどといったダメージの発生を抑制できる。
【0035】
この時,二酸化炭素ガスは,ウエハWの下地膜12に対して反応性を持っていない。また,ガスクラスターをイオン化せずにウエハWに照射している。そのため,ウエハWにガスクラスターを照射した時に,当該ウエハWの表面が荒れたり,あるいは物理的に削れたりするダメージの発生が抑えられる。また,ガスクラスターをイオン化していないので,例えば既述の洗浄処理室21にはガスあるいはガスクラスターをイオン化する装置が不要になり,そのため装置のコストを抑えることができる。
【0036】
また,処理容器42内においてウエハWをフッ化水素の蒸気の雰囲気中に暴露しているので,前処理によりウエハWの全面に対して付着物10の付着力を一度に低下させている。そのため,例えば従来の反応性ガスのガスクラスターだけを用いて付着物10を除去していた例と比べて,短時間で面内に亘って均一に処理できるので,スループットを高めることができる。更に,前処理とガスクラスターの照射とを組み合わせることにより,ガスやガスクラスター,あるいは薬液だけを用いて付着物10の除去を行う場合と比べて,ガスや薬液の使用量を抑えることができる。この時,前処理及びガスクラスターの照射のいずれの工程においても,ウエハWに対して薬液を供給していないので,廃液処理に要するコストを抑えることができる。
【0037】
既述の前処理を行うことによって,ウエハWの表面が導電性を持たない自然酸化膜11から導電性を持つ下地膜12となり,いわば当該表面が導電性を持つようになる。そのため,付着物10と自然酸化膜11とが既述の物理的な固着力に加えて例えば静電気力により互いに吸着している場合であっても,前処理により当該静電気力がなくなるか弱くなるので,付着物10がウエハWから除去されやすくなる。また,自然酸化膜11と付着物10とが互いに化学的に結合している場合であっても,当該結合している自然酸化膜11をエッチングしていることから,既述のように付着物10を容易に除去できる。」

「【0060】
洗浄処理室21にてウエハWに照射するガスクラスターには,既述の各例では二酸化炭素ガスを用いたが,ガスクラスターに使用するガスとしては,二酸化炭素ガスに代えて,ウエハWの下地膜12に対して反応性を持たない非反応性ガス例えばアルゴン(Ar)ガスや窒素(N_(2))ガスを用いても良いし,あるいはこれらガスを混合して用いても良い。この時,二酸化炭素ガスからなるガスクラスターは,ガスクラスターのサイズ,すなわちガスクラスターの運動エネルギーが前記アルゴンガスや窒素ガスよりも大きく付着物10の除去効果が大きいので,この二酸化炭素ガスを用いてガスクラスターを生成させることが好ましい。
更に,後述の実施例に示すように,前記非反応性ガスと共に,ウエハWの表面または付着物10の表面をエッチングするエッチングガスによりガスクラスターを発生させ,いわば前処理(エッチング処理)と付着物10の除去処理とを同時に行っても良い。
【0061】
また,以上の各例において,洗浄工程あるいは前処理工程においてガスクラスターをウエハWに照射するノズル23については,各々一つだけ設けたが,各々複数配置しても良い。この場合には,各々のノズル23は,例えばウエハWの上方側において,当該ウエハWの外縁と同心円状となるようにリング状に複数並べると共に,このリング状に配置した複数のノズル23からなる照射部をウエハWの中心部側から外縁部に向かって複数周に亘って配置しても良い。また,ノズル23を複数配置する場合には,ウエハWの上方側に碁盤の目状に配置しても良い。
【0062】
以上説明した処理装置としては,前処理を行う装置と二酸化炭素ガスからなるガスクラスターを照射する装置とを備えた構成を挙げたが,これら装置を互いに個別にスタンドアローンの装置として配置して,これら装置間において外部のウエハアームによりウエハWの受け渡しを行っても良い。
また,本発明は,付着物10を除去するためのガスクラスターがイオン化していても,例えば解離の程度が弱い状態でイオン化していても権利範囲に含まれる。」









(2)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1には,被処理体の表面に付着したパーティクルなどの付着物を除去する洗浄方法に関する技術が記載されていること。

b ウエハWの表面から付着物10を除去は,ガスクラスターを用いて行われるものであって,このガスクラスターは,ウエハWの置かれる処理雰囲気よりも圧力の高い領域から処理雰囲気にガスを供給して,断熱膨張によりガスの凝縮温度まで冷却することによって,ガスの原子または分子が集合体として寄り集まって生成する物質であること。

c ガスクラスターを発生させるためのノズル23の一例は,上下方向に伸びると共に下端部が開口するように概略円筒形状に形成された圧力室32と,この圧力室32の下端部に接続され,圧力室32の下端周縁部から当該圧力室32の中央部に向かって周方向に亘って水平に縮径してオリフィス部32aをなすと共に,このオリフィス部32aから下方に向かうにつれて拡径するガス拡散部33と,を備えており,前記オリフィス部32aにおける開口径及びオリフィス部32aと載置台22上のウエハWとの間の離間距離は,夫々例えば0.1mm及び6.5mm程度であり,このノズル23の上端側には,圧力室32内に例えば二酸化炭素(CO_(2))ガスを供給するためのガス供給路34が接続されていること。

d 処理雰囲気における処理圧力は,例えば1?100Pa程度の真空雰囲気に設定すると共に,ノズル23に対して例えば0.3?2.0MPa程度の圧力で二酸化炭素ガスを供給すると,この二酸化炭素ガスは,処理雰囲気に供給される際に急激な断熱膨張により凝縮温度以下に冷却されて,互いの分子同士がファンデルワールス力により結合して,集合体であるガスクラスターとなり,非イオン化の状態でウエハWに向かって垂直に照射され,ウエハW上の付着物10にガスクラスターが衝突すると,このガスクラスターの吐出圧力により付着物10がウエハWの表面から吹き飛ばされて除去されること。

e ウエハWの面内に亘ってガスクラスターが照射されるように,ウエハWをノズル23に対して相対的に水平方向に移動させると,面内に亘って付着物10が除去されて洗浄処理が行われること。

f ウエハWに対してガスクラスターを照射する装置は,以下の構造を備えること。
すなわち,ウエハWに対してガスクラスターを照射する装置が,
ウエハWを内部に収納して付着物10の除去処理を行うための洗浄処理室21と,
この洗浄処理室21内に配置された,ウエハWを載置するための載置台22と,
洗浄処理室21の天井面における中央部に形成された,上方側に向かって円筒状に突出する突出部21aであって,この突出部21aには既述のノズル23がガスクラスターの生成機構として設けられており,このノズル23は,この例では鉛直方向下方側を向いている突出部21aと,
搬送口40と,
搬送口40の開閉を行うゲートバルブGとを備えること。

g 洗浄処理室21にてウエハWに照射するガスクラスターには,既述の各例では二酸化炭素ガスを用いたが,ガスクラスターに使用するガスとしては,二酸化炭素ガスに代えて,ウエハWの下地膜12に対して反応性を持たない非反応性ガス例えばアルゴン(Ar)ガスや窒素(N_(2))ガスを用いても良いし,あるいはこれらガスを混合して用いても良いこと。

h 二酸化炭素ガスからなるガスクラスターは,ガスクラスターのサイズ,すなわちガスクラスターの運動エネルギーが前記アルゴンガスや窒素ガスよりも大きく付着物10の除去効果が大きいので,この二酸化炭素ガスを用いてガスクラスターを生成させることが好ましいこと。

(3)したがって,上記(1)及び(2)から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ウエハWを内部に収納して付着物10の除去処理を行うための洗浄処理室21と,
前記洗浄処理室21内に配置された,ウエハWを載置するための載置台22と,
前記洗浄処理室21の天井面における中央部に形成された,上方側に向かって円筒状に突出する突出部21aであって,この突出部21aにはノズル23がガスクラスターの生成機構として設けられており,当該ノズル23は,鉛直方向下方側を向いている突出部21aと,
搬送口40と,
前記搬送口40の開閉を行うゲートバルブGと
を備える装置を用いて,ウエハWの表面から付着物10を除去する方法であって,
前記ガスクラスターは,ウエハWの置かれる処理雰囲気よりも圧力の高い領域から処理雰囲気にガスを供給して,断熱膨張によりガスの凝縮温度まで冷却することによって,ガスの原子または分子が集合体として寄り集まって生成される物質であり,
前記ガスクラスターを発生させるためのノズル23は,上下方向に伸びると共に下端部が開口するように概略円筒形状に形成された圧力室32と,当該圧力室32の下端部に接続され,圧力室32の下端周縁部から当該圧力室32の中央部に向かって周方向に亘って水平に縮径してオリフィス部32aをなすと共に,このオリフィス部32aから下方に向かうにつれて拡径するガス拡散部33と,を備えており,前記オリフィス部32aにおける開口径及びオリフィス部32aと載置台22上のウエハWとの間の離間距離は,夫々0.1mm及び6.5mm程度であり,前記ノズル23の上端側には,圧力室32内に二酸化炭素(CO_(2))ガスを供給するためのガス供給路34が接続されており,
前記処理雰囲気における処理圧力は,1?100Pa程度の真空雰囲気に設定すると共に,ノズル23に対して0.3?2.0MPa程度の圧力で二酸化炭素ガスを供給することで,前記二酸化炭素ガスが,処理雰囲気に供給される際に急激な断熱膨張により凝縮温度以下に冷却されて,互いの分子同士がファンデルワールス力により結合して,集合体であるガスクラスターとなり,非イオン化の状態でウエハWに向かって垂直に照射され,ウエハW上の付着物10にガスクラスターが衝突して,当該ガスクラスターの吐出圧力により付着物10がウエハWの表面から吹き飛ばされて除去されるものであり,
前記ウエハWの面内に亘ってガスクラスターが照射されるように,ウエハWをノズル23に対して相対的に水平方向に移動させて,面内に亘って付着物10を除去する方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
洗浄ガス又は液体又はガスと液体の混合物を,微細ノズル穴を有する噴射ノズルより吹き出させて微細エアロゾルを生成し,その微細液滴又は微細固体又は気体又はそれらの2以上の混合物を被洗浄面に吹き付けるエアロゾル洗浄方法において,
エアロゾル生成ノズルを断熱化し,
該エアロゾル生成ノズル内の圧力を高く設定することで,エアロゾル生成ノズル内部をガスリッチの状態にすることを特徴とするエアロゾル洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄ガス又は液体又はガスと液体の混合物が,Ar,N_(2),He,Ne,O_(2),CO_(2),N_(2)O,H_(2)O,Kr,SF_(6),Xe,H_(2)の各単独ガス又は混合ガスであることを特徴とする請求項1に記載のエアロゾル洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄ガス又は液体又はガスと液体の混合物がAr,N_(2)の各単独ガス又は混合ガスである時に,前記エアロゾル生成ノズル内の圧力を600kPa?300kPaの範囲に制御することを特徴とする請求項1に記載のエアロゾル洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄ガス又は液体又はガスと液体の混合物がAr,N_(2)の各単独ガス又は混合ガスである時に,その流量を40SLM?20SLMの範囲とすることを特徴とする請求項1又は3に記載のエアロゾル洗浄方法。
【請求項5】
前記噴射ノズルから微細液滴又は微細固体又は気体又はそれら2以上の混合物が吹き出される洗浄室の圧力を10kPa?50Paに制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエアロゾル洗浄方法。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,エアロゾル洗浄方法及び装置に係り,特に,半導体ウェハ,光露光マスク又はレティクル,X線マスク又はレティクル,電子線(EB)マスク又はレティクル,イオンビーム(IB)マスク又はレティクル,リソグラフィ用マスク又はレティクル,フラットパネル基板,磁気ディスク基板,フライングヘッド用基板のような各種基板や,磁気ヘッド,マイクロマシン及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の表面を洗浄する際に用いるのに好適な,被洗浄物の微細構造等へダメージを与えることなく洗浄することが可能なエアロゾル洗浄方法及び装置に関する。」

「【0005】
このうち,従来のエアロゾル吹付けによる洗浄では,図1(全体図)及び図2(要部詳細図)に示す如く,アルゴン(Ar)ガス又は窒素(N_(2))ガス又は各ガスの混合ガスを,例えばヘリウム(He)クライオ冷凍機36を用いた熱交換機38で冷却して,エアロゾル生成ノズル(以下,単にエアロゾルノズルとも称する)20のノズル孔20Aから真空の洗浄室42内に噴出し,噴出す際の断熱膨張により更に冷却させて微細エアロゾル22を形成し,ウェハ10等の被洗浄物の表面に該エアロゾル22を衝突させて洗浄する方式を採っている。」

「【0016】
又,前記洗浄ガス又は液体又はガスと液体の混合物を,Ar,N_(2),He,Ne,O_(2),CO_(2),N_(2)O,H_(2)O,Kr,SF_(6),Xe,H_(2)の各単独ガス又は混合ガスとしたものである。
【0017】
又,前記洗浄ガス又は液体又はガスと液体の混合物がAr,N_(2)の各単独ガス又は混合ガスである時に,前記エアロゾル生成ノズル内の圧力を600kPa?300kPaの範囲に制御して,アルゴン及び窒素が,気体と液体の間の状態となるようにしたものである。アルゴン及び窒素は,温度100Kでは,200kPa以下で液体になり,700kPa以上で完全に気体となる。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】低温に冷却した洗浄ガスをノズルから吹き出してエアロゾルとし,被洗浄物に衝突させて洗浄する低温エアロゾル洗浄方法において,
1つの冷却系統で冷却した洗浄ガスを,複数の洗浄室に交互に供給して,各洗浄室で交互に洗浄することを特徴とする低温エアロゾル洗浄方法。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,低温エアロゾル洗浄方法及び装置に係り,特に,半導体製造工程でのウェハ洗浄に用いるのに好適な,低温に冷却した洗浄ガスをノズルから吹き出してエアロゾルとし,被洗浄物に衝突させて洗浄する低温エアロゾル洗浄方法及び装置に関する。」

「【0015】このようなアルゴンエアロゾル洗浄装置においては,図2に示す如く,洗浄室42が2つ設けられた2洗浄室型モデル,あるいは,1洗浄室型モデルのいずれにおいても,各洗浄室42毎にアルゴンエアロゾル24を生成するために,アルゴンガスを液化点近傍の温度(90K-100K程度)まで冷却するHe冷凍機36を用いた熱交換器38設置し,又,洗浄に使用したアルゴンガス等(パージガス66や加速ガス58を含む)を排気する大容量の排気ポンプ40が設置されている。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「ウエハW」は,本願発明1の「マイクロ電子基板」に相当する。

b 引用発明は,「処理雰囲気における処理圧力は,1?100Pa程度の真空雰囲気に設定」されるものであるから,引用発明の「洗浄処理室21」は,本願発明1の「真空処理チャンバ」に相当する。

c 引用発明の「ガスクラスターを発生させるためのノズル23」は,本願発明1の「入口および出口を有する流体膨張部材」に相当する。

d 引用発明の「ノズル23に対して0.3?2.0MPa程度の圧力で二酸化炭素ガスを供給すること」と,本願発明1の「前記流体膨張部材の前記入口に,加圧され冷却された流体混合物を供給するステップ」とは,「前記流体膨張部材の前記入口に,加圧された流体物を供給するステップ」である点で一致する。

e 引用発明の「前記処理雰囲気における処理圧力は,1?100Pa程度の真空雰囲気に設定すると共に,ノズル23に対して0.3?2.0MPa程度の圧力で二酸化炭素ガスを供給することで,前記二酸化炭素ガスが,処理雰囲気に供給される際に急激な断熱膨張により凝縮温度以下に冷却されて,互いの分子同士がファンデルワールス力により結合して,集合体であるガスクラスターとなり,非イオン化の状態でウエハWに向かって垂直に照射され」る工程と,本願発明1の「前記流体膨張部材の前記出口を介して,前記真空処理チャンバ内で前記加圧された流体物を膨張させ,ガスクラスタのジェットを生成するステップ」とは,「前記流体膨張部材の前記出口を介して,前記真空処理チャンバ内で前記加圧された流体物を膨張させ,ガスクラスタのジェットを生成するステップ」である点で一致する。

f 引用発明の「ウエハW上の付着物10にガスクラスターが衝突して,当該ガスクラスターの吐出圧力により付着物10がウエハWの表面から吹き飛ばされて除去される」工程と,本願発明1の「前記ガスクラスタのジェットを用いて,前記マイクロ電子基板から対象物を除去するステップ」とは,「前記ガスクラスタのジェットを用いて,前記マイクロ電子基板から対象物を除去するステップ」である点で一致する。

g そうすると,本願発明1と引用発明の一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「マイクロ電子基板を処理する方法であって,
真空処理チャンバ内に,前記マイクロ電子基板を受容するステップであって,前記真空処理チャンバは,入口および出口を有する流体膨張部材を有する,ステップと,
前記流体膨張部材の前記入口に,加圧された流体混合物を供給するステップと,
前記流体膨張部材の前記出口を介して,前記真空処理チャンバ内で前記加圧された流体物を膨張させ,ガスクラスタのジェットを生成するステップと,
前記ガスクラスタのジェットを用いて,前記マイクロ電子基板から対象物を除去するステップと,
を有する方法。」

<相違点>
・相違点1:本願発明1では,ガスクラスタのジェットの生成が,
「前記真空処理チャンバは,圧力が35Torr以下であり,前記マイクロ電子基板は,該マイクロ電子基板と前記流体膨張部材の前記出口との間に2mmから50mmの範囲のギャップ距離を提供するように配置され」,前記流体膨張部材の前記入口に,「冷却された流体混合物を供給するステップであって,前記流体混合物は,アルゴンおよび窒素の少なくとも一つを含み,前記流体混合物は,前記流体膨張部材の前記入口に供給される際,温度が70Kから270Kの範囲であり,供給圧力により,1重量%未満の液体を含む気相となる」という条件のもとで行われているのに対して,
引用発明は,「前記処理雰囲気における処理圧力は,1?100Pa程度の真空雰囲気に設定」され,「オリフィス部32aと載置台22上のウエハWとの間の離間距離は,・・・6.5mm程度であり」,「前記ノズル23の上端側には,圧力室32内に二酸化炭素(CO_(2))ガスを供給するためのガス供給路34が接続されて」いるものである点。

・相違点2:本願発明1では,「前記ガスクラスタのジェットの少なくとも一部は,前記マイクロ電子基板にわたって横方向に流れ,前記マイクロ電子基板と接触する」のに対して,引用発明では,「前記二酸化炭素ガスが,処理雰囲気に供給される際に急激な断熱膨張により凝縮温度以下に冷却されて,互いの分子同士がファンデルワールス力により結合して,集合体であるガスクラスターとなり,非イオン化の状態でウエハWに向かって垂直に照射され」るものであって,「前記ウエハWの面内に亘ってガスクラスターが照射されるように,ウエハWをノズル23に対して相対的に水平方向に移動させて,面内に亘って付着物10を除去する」ものである点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
・相違点1について
引用文献1ないし3のいずれにも,ガスクラスタのジェットの生成を,「供給圧力により,1重量%未満の液体を含む気相となる」条件で行うことは記載されておらず,また,このような構成が周知技術であったとも認められない。
そして,本願発明1は,このような構成を備えることにより,本願明細書の【0006】に記載された「サブ100nmの粒子に対する粒子除去効率の改善により,大きな(例えば100nmを超える)粒子の除去効率を低下させずに,および/または粒子の除去中にマイクロ電子基板特徴物に損傷を与えずに,予測できない結果が得られる」という格別の効果を奏するものと認められる。
すなわち,上記相違点1について本願発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たことではない。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は,引用発明及び引用文献2,3に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2ないし12について
本願発明2ないし12も,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明13について
(1)対比
本願発明13と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「ウエハW」は,本願発明13の「マイクロ電子基板」に相当する。

b 引用発明は,「処理雰囲気における処理圧力は,1?100Pa程度の真空雰囲気に設定」されるものであるから,引用発明の「洗浄処理室21」は,本願発明13の「真空処理チャンバ」に相当する。

c 引用発明の「ガスクラスターを発生させるためのノズル23」は,本願発明13の「入口および出口を有する流体膨張部材」に相当する。

d 引用発明の「ノズル23に対して0.3?2.0MPa程度の圧力で二酸化炭素ガスを供給すること」と,本願発明13の「前記流体膨張部材の前記入口に,加圧され冷却された流体混合物を供給するステップ」とは,「前記流体膨張部材の前記入口に,加圧された流体物を供給するステップ」である点で一致する。

e 引用発明の「前記処理雰囲気における処理圧力は,1?100Pa程度の真空雰囲気に設定すると共に,ノズル23に対して0.3?2.0MPa程度の圧力で二酸化炭素ガスを供給することで,前記二酸化炭素ガスが,処理雰囲気に供給される際に急激な断熱膨張により凝縮温度以下に冷却されて,互いの分子同士がファンデルワールス力により結合して,集合体であるガスクラスターとなり,非イオン化の状態でウエハWに向かって垂直に照射され」る工程と,本願発明13の「前記流体膨張部材の前記出口を介して,前記処理チャンバ内で前記流体物を膨張させ,ガスクラスタのジェットを生成する,ステップ」とは,「前記流体膨張部材の前記出口を介して,前記処理チャンバ内で前記流体物を膨張させ,ガスクラスタのジェットを生成する,ステップ」である点で一致する。

f 引用発明の「ウエハW上の付着物10にガスクラスターが衝突して,当該ガスクラスターの吐出圧力により付着物10がウエハWの表面から吹き飛ばされて除去される」工程と,本願発明13の「前記ガスクラスタのジェットを用いて,前記マイクロ電子基板から対象物を除去するステップ」とは,「前記ガスクラスタのジェットを用いて,前記マイクロ電子基板から対象物を除去するステップ」である点で一致する。

g そうすると,本願発明13と引用発明の一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「マイクロ電子基板を処理する方法であって,
処理チャンバ内に前記マイクロ電子基板を受容するステップであって,前記真空処理チャンバは,入口および出口を有する流体膨張部材を有する,ステップと,
前記流体膨張部材の前記入口に,加圧された流体物を供給する,ステップと,
前記流体膨張部材の前記出口を介して,前記処理チャンバ内で前記流体物を膨張させ,ガスクラスタのジェットを生成する,ステップと,
前記ガスクラスタのジェットを用いて,前記マイクロ電子基板から対象物を除去するステップと,
を有する方法。」

<相違点>
・相違点3:本願発明13では,ガスクラスタのジェットの生成が,
真空処理チャンバのチャンバ圧力が「35Torr以下」であり,「前記マイクロ電子基板は,該マイクロ電子基板と前記出口の間に2mmから50mmの範囲のギャップ距離を提供するように配置され」,前記流体膨張部材の前記入口に,「冷却された流体混合物を供給するステップであって,前記流体混合物は,前記流体膨張部材の前記入口に供給される際,温度が70Kから270Kの範囲であり,前記流体混合物は,水素,ネオン,およびヘリウムの少なくとも一つと,窒素およびアルゴンの少なくとも一つとを含む」という条件のものとで行われているのに対して,
引用発明は,「前記処理雰囲気における処理圧力は,1?100Pa程度の真空雰囲気に設定」されるものであり,「オリフィス部32aと載置台22上のウエハWとの間の離間距離は,・・・6.5mm程度であり」,「前記ノズル23の上端側には,圧力室32内に二酸化炭素(CO_(2))ガスを供給するためのガス供給路34が接続されて」いるものである点。

・相違点4:本願発明13では,「前記ガスクラスタのジェットの少なくとも一部は,前記マイクロ電子基板にわたって横方向に流れ,前記マイクロ電子基板と接触する」のに対して,引用発明では,「前記二酸化炭素ガスが,処理雰囲気に供給される際に急激な断熱膨張により凝縮温度以下に冷却されて,互いの分子同士がファンデルワールス力により結合して,集合体であるガスクラスターとなり,非イオン化の状態でウエハWに向かって垂直に照射され」るものであって,「前記ウエハWの面内に亘ってガスクラスターが照射されるように,ウエハWをノズル23に対して相対的に水平方向に移動させて,面内に亘って付着物10を除去する」ものである点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
・相違点3について
上記第4の1(2)gのとおり,引用文献1には,「ガスクラスターに使用するガスとしては,二酸化炭素ガスに代えて,ウエハWの下地膜12に対して反応性を持たない非反応性ガス例えばアルゴン(Ar)ガスや窒素(N_(2))ガスを用いても良いし,あるいはこれらガスを混合して用いても良いこと」が,記載されている。
また,上記第4の2のとおり,引用文献2には,エアロゾル洗浄を,洗浄ガス又は液体又はガスと液体の混合物として,Ar,N_(2),He,Ne,O_(2),CO_(2),N_(2)O,H_(2)O,Kr,SF_(6),Xe,H_(2)の各単独ガス又は混合ガスを用いて行うことが記載されている。
しかしながら,引用文献1ないし3のいずれにも,対象物を除去する際に使用するガスクラスタのジェットの生成を,「水素,ネオン,およびヘリウムの少なくとも一つと,窒素およびアルゴンの少なくとも一つとを含む」流体混合物を用いて行う構成は記載されておらず,また,周知技術であったとも認められない。
そして,本願発明13は,このような構成を備えることにより,本願明細書の【0087】に記載された「GCJスプレーの質量および/または速度を変化させる」ことができるという格別の効果を奏するものと認められる。
すなわち,上記相違点3について本願発明13の構成を採用することは当業者が容易になし得たことではない。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明13は,引用発明及び引用文献2,3に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 本願発明14ないし22について
本願発明14ないし22も,本願発明13と同一の構成を備えるものであるから,本願発明13と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1ないし22は,当業者が引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-31 
出願番号 特願2015-198668(P2015-198668)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西村 治郎平野 崇堀江 義隆  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 加藤 浩一
井上 和俊
発明の名称 極低温流体混合物で基板を処理するシステムおよび方法  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
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