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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W |
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管理番号 | 1372568 |
審判番号 | 不服2020-6192 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-07 |
確定日 | 2021-04-20 |
事件の表示 | 特願2018-159878「識別ユニットに加入者情報をダウンロードする方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月24日出願公開、特開2019- 13017、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)9月1日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年9月15日 欧州特許庁)を国際出願日とする特願2017-514698号の一部を、平成30年8月29日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 8月29日 上申書の提出 令和 元年10月 4日付け 拒絶理由通知書 令和 元年12月16日 意見書、手続補正書の提出 令和 2年 1月 9日付け 拒絶査定 令和 2年 5月 7日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提 出 令和 2年11月11日付け 拒絶理由通知書(当審) 令和 3年 2月 4日 意見書、手続補正書の提出の提出 第2 本願発明について 本願の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和3年2月4日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし9は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 セルラネットワーク(3)内で遠隔供給サーバ(5)へのアクセスが制限されたモードで動作する無線通信装置(2)に接続された識別ユニット(1)に加入者情報をダウンロードする方法であって、 前記セルラネットワーク(3)は、少なくとも1つのパケットゲートウェイノード(4)を備え、 前記パケットゲートウェイノード(4)には供給データベース(10)を備えた少なくとも1つの前記遠隔供給サーバ(5)が接続されており、 前記無線通信装置(2)は、基本パケットベース通信プロトコル手段をさらに備え、 前記識別ユニット(1)は、前記基本パケットベース通信プロトコル手段をアクセスするための高度パケットベース通信プロトコル手段を含むコントローラを備え、 前記高度パケットベース通信プロトコル手段は、前記セルラネットワーク(3)に暗号符号化による安全なパケットを供給し、 前記方法は、 -要請を前記高度パケットベース通信プロトコル手段により、前記基本パケットベース通信プロトコル手段を介して前記識別ユニット(1)から前記セルラネットワーク(3)へ送信するステップと、 前記セルラネットワーク(3)からの応答メッセージを受信して、加入者情報に対応する受信データに基づいて識別記録を生成し、前記識別ユニット(1)の記憶手段(6)に格納するステップとを備えることを特徴とする方法。 【請求項2】 前記要請は、認証識別子と1つの遠隔供給サーバ(5)に関係するアクセス情報(8)とを含み、 前記方法はさらに、 -前記セルラネットワーク(3)において前記要請を前記識別ユニット(1)から受信するステップと、 -前記セルラネットワーク(3)において前記アクセス情報(8)に従って前もって構成した接続トンネル(9)を用いて、前記要請を前記パケットゲートウェイノード(4)から前記アクセス情報(8)によって指定された前記遠隔供給サーバ(5)に転送するステップと、 -前記要請を受信して、前記遠隔供給サーバ(5)において、前記認証識別子に基づいて前記供給データベース(10)内の加入者情報を決定するステップと、 -前記加入者情報が検出されたとき、加入者情報に対応するデータを含む応答メッセージを前記前もって構成した接続トンネル(9)を介して前記識別ユニット(1)に提供するステップとを含む請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記アクセス情報(8)は、前記識別ユニット(1)の前記記憶手段(6)に格納され、前記アクセス情報(8)は更に、前記パケットゲートウェイノード(4)に位置する複数のアクセスポイント(4a,4b)の1つを指定し、前記指定されたアドレスポイント(4a)は、前記接続トンネル(9)によって前記遠隔供給サーバ(5)をアクセスするのに供される請求項2に記載の方法。 【請求項4】 前記アクセス情報(8)は、同一アクセスポイント名(APN)を持つ、前記セルラネットワーク(3)とは異なる他のセルラネットワークからも前記アクセスポイント(4a,4b)を介して前記遠隔供給サーバ(5)へのアクセスが許可されるのに適合している請求項3に記載の方法。 【請求項5】 前記指定されたアクセスポイント(4a)は、1を越えるセルラネットワーク(3)によって前記遠隔供給サーバ(5)へのアクセスを許可するよう構成されている請求項3に記載の方法。 【請求項6】 前記識別ユニット(1)は、開始時に少なくとも1つの初期識別記録を含み、前記初期識別記録は前記遠隔供給サーバ(5)のアクセスに供される請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。 【請求項7】 前記無線通信装置(2)は、前記識別ユニット(1)の前記記憶手段(6)に格納された第1識別記録によって表わされる第1加入者情報下で前記セルラネットワーク(3)内で動作し、前記方法は、 前記生成された識別記録を第2識別記録として格納した後、前記第1加入者情報下の前記セルラネットワーク(3)内での動作を前記第2識別記録によって表わされる前記セルラネットワーク(3)内での動作に切替えるステップを含む請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。 【請求項8】 前記方法は、 第2加入者情報下のセルラネットワーク(3)内の動作に切替えた後、以下のいずれかのイベントを検出すると前記第1加入者情報下の動作に戻る請求項7に記載の方法。 -タイマーの満了 -マニュアルコマンドの入力、および/又は -信号品質インジケータの所定閾値への到達。 【請求項9】 前記無線通信装置(2)は、インバンドモデム機能を提供するよう構成され、前記識別ユニット(1)の前記コントローラは、割当て通信チャネル(7)ベース通信のために前記インバンドモデム機能をアクセスするよう構成され、前記方法は; 前記要請を、前記割当て通信チャネル(7)を使用して前記インバウンドモデム機能の手段により前記識別ユニット(1)から前記セルラネットワーク(3)へ導くステップを備えた請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。」 第3 引用発明について 1.引用例1について 原査定の拒絶の理由に引用された欧州特許出願公開第2747466号明細書(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。) (1) 「[0031] According to preferred embodiments of the invention the secure element 20 is configured as an eUICC or UICC with a SIM application running thereon, i.e. a secure element that can be mounted in the mobile terminal 12 and used in cellular communications systems for unique and secure subscriber identification as well as for the provision of different special functions and valueadded services.(略) [0032] As already mentioned above, the mobile terminal 12 is configured to communicate via the air interface (or radio link) with a cellular communications network or public land mobile network (PLMN) 30,preferably operated by a mobile network operator (MNO) according to the GSM standard, as well as other mobile terminals connected therewith.(略) [0035] As can be taken from the enlarged view of the secure element 20 in figure 1, the secure element 20 preferably comprises a central processing unit (CPU) 22.(略) [0036] Moreover, the secure element 20 preferably comprises a memory unit 26, which preferably is implemented as a non-volatile, rewritable flash memory.(略) [0038](略)Especially in this preferred embodiment it is conceivable that the first subscription profile SUB1 is merely a provisional subscription profile only providing for basic services that allow the secure element 20 and mobile terminal 12 to communicate with the subscription management backend system 40 and to download a more complete subscription profile providing for additional services, such as the second subscription profile SUB2 shown in figure 1. As a provisional subscription profile, such as the first subscription profile SUB1 shown in figure 1, generally provides only a limited functionality, the user of the mobile terminal 12 generally will be enticed to change to a more complete subscription profile providing for additional services, such as the second subscription profile SUB2 shown in figure 1.」 (当審訳: [0031] 本発明の好ましい実施形態によれば、セキュアエレメント20は、SIMアプリケーションが実行されているeUICC又はUICCとして構成され、すなわち、移動端末12に取り付けられ、さまざまな特別な機能や付加価値サービスの提供のためだけでなく、一意で安全な加入者識別のためにセルラ通信システムで使用されるセキュアエレメントである。(略) [0032] すでに上で述べたように、移動端末12は、エアインターフェース(又は無線リンク)を介して、セルラ通信ネットワーク又はパブリックランド移動ネットワーク(PLMN)30と通信するように構成され、好ましくは、それに接続された他の移動端末と同様に、GSM規格に従って、移動ネットワーク事業者(MNO)によって操作される。(略) [0035] 図1のセキュアエレメント20の拡大図から見ることができるように、セキュアエレメント20は、好ましくは、中央処理装置(CPU)22を備える。(略) [0036] さらに、セキュアエレメント20は、好ましくは、メモリユニット26を含み、これは、好ましくは、不揮発性の書き換え可能なフラッシュメモリとして実装される。(略) [0038](略)特にこの好ましい実施形態では、第1の加入者プロファイルSUB1は、セキュアエレメント20及び移動端末12が加入者管理バックエンドシステム40と通信し、図1に示される第2の加入者プロファイルSUB2などの追加のサービスを提供するためのより完全な加入者プロファイルをダウンロードすることを可能にする基本サービスのみを提供する暫定加入者プロファイルであると考えられる。図1に示される第1の加入者プロファイルSUB1などの暫定加入者プロファイルは一般に限定された機能のみを提供するので、移動端末12のユーザは、一般に、図1に示される第2の加入者プロファイルSUB2などの追加のサービスを提供する、より完全な加入者プロファイルに変更するように促される。) (2)「[0041] In step S1 of figure 2, which could be triggered by the secure element 20 requesting a new subscription profile from the subscription management backend system 40, the secure element 20 authenticates itself vis-a-vis(当審注:aはグレイヴ・アクセントを付したa)the subscription management server 42 of the subscription management backend system 40. (略) As used herein “downloading a subscription profile” can have the meaning of a complete exchange of an old subscription profile with a new subscription profile, the addition of a new subscription profile besides an already existing subscription profile as well as a partial exchange of an existing subscription profile with a new version of the existing subscription profile. (略) [0046](略)To this end, these data elements are preferably concatenated and the resulting data string is encrypted using the configuration key Kconf resulting in the encrypted message C=ENC(IDse?Kses?HWconf, Kconf) where the symbol ? denotes the concatenation operation and ENC( . . . , Kconf) denotes an encryption operation using the configuration key Kconf.(略)Preferably, this message containing the identification element IDse in the clear and the encrypted message C is send to the subscription management server 42 in step 55 of figure 2.(略) [0049] In order to determine an appropriate subscription provisioning server, a database, such as the database 43 shown in figure 1, could be in communication with the subscription management server 42 or implemented thereon, wherein a multitude of different identification elements of secure elements, such as the identification element IDse of the secure element 20, are linked to one or more appropriate subscription provisioning servers, respectively.(略) [0061] In step S11 of figure 2 the subscription management server 42 transmits the encrypted version of the message M to the secure element 20 via the mobile terminal 12.(略)From the decrypted message M the secure element 20 extracts the operating system OS, the one or more applications APPS as well as the subscription credentials CREDS of the subscription profile SUB selected by the user of the mobile terminal 12 in step S9 of figure 2.」 (当審訳: [0041] 図2のS1において、セキュアエレメント20は、加入者管理バックエンドシステム40から新しい加入者プロファイルを要求することによってトリガーされ、セキュアエレメント20は、加入者管理バックエンドシステム40の加入者管理サーバ42に対してそれ自体を認証する。(略) 本明細書で使用される「加入者プロファイルのダウンロード」は、古い加入者プロファイルを新しい加入者プロファイルと完全に交換すること、既存の加入者プロファイルに加えて新しい加入者プロファイルを追加すること、及び既存の加入者プロファイルを既存の加入者プロファイルの新しいバージョンを含む加入者プロファイルとともに部分的に交換することを意味する。 (略) [0046](略)この目的のために、これらのデータ要素は好ましくは連結され、結果のデータ文字列は構成キーK_(conf)を使用して暗号化され、暗号化されたメッセージC = ENC(ID_(se)?K_(ses)?HW_(conf),K_(conf))になる。ここで、記号?は連結操作及びENC(...,K_(conf))は、構成キーK_(conf)を使用した暗号化操作を示す 。(略)好ましくは、識別要素IDseを平文で含み、暗号化されたメッセージCを含むこのメッセージは、図2のステップS5(当審注:原文の「55」は「S5」の誤記であると認められる。)で加入者管理サーバ42に送信される。(略) [0049] 図1に示されるように、適切な加入者プロビジョニングサーバを決定するために、図1に示されるデータベース43などのデータベースは加入者管理サーバ42と通信するか、又はその上に実装され、ここで、セキュアエレメント20の識別要素ID_(se)などの、セキュアエレメントの多数の異なる識別要素が、1つ又は複数の適切な加入者プロビジョニングサーバそれぞれとリンクされる。(略) [0061] 図2のS11に示すように、加入者管理サーバ42は、暗号化されたバージョンのメッセージMを移動端末12を介してセキュアエレメント20に送信する。(略)復号化されたメッセージMから、セキュアエレメント20は、オペレーティングシステムOS、1つ又は複数のアプリケーションAPPS、ならびに図2のステップS9で移動端末12のユーザによって選択された加入者プロファイルSUBの加入者資格情報CREDSを抽出する。) (3) 「Fig.1 」 (4) 「Fig.2 」 上記記載及び当業者における技術常識からみて、以下の技術的事項が記載されている。 a.上記(1)の段落[0031]の「移動端末12に取り付けられ、・・・一意で安全な加入者識別のためにセルラ通信システムで使用されるセキュアエレメントである。」との記載によれば、セキュアエレメントは移動端末12に取り付けられたセキュアエレメントといえる。 また、上記(2)の段落[0041]の「「加入者プロファイルのダウンロード」は、古い加入者プロファイルを新しい加入者プロファイルと完全に交換すること、既存の加入者プロファイルに加えて新しい加入者プロファイルを追加すること、及び既存の加入者プロファイルを既存の加入者プロファイルの新しいバージョンを含む加入者プロファイルとともに部分的に交換することを意味する。」という記載、上記(2)の段落[0061]の「加入者管理サーバ42は、暗号化されたバージョンのメッセージMを移動端末12を介してセキュアエレメント20に送信」及び「復号化されたメッセージMから、セキュアエレメント20は、・・・加入者プロファイルSUBの加入者資格情報CREDSを抽出する。」という記載及び上記(4)のFig.2によれば、引用例1のFig.2は、加入者管理サーバ42からセキュリティエレメントに加入者プロファイルSUBの加入者資格情報をダウンロードする方法であるといえる。 そして、上記(1)の段落[0032]の「移動端末12は、エアインターフェース(又は無線リンク)を介して、セルラ通信ネットワーク・・・と通信するように構成され」との記載及び上記(3)のFig.1によれば、加入者管理サーバ42と移動端末12間の通信はセルラ通信ネットワークによる通信であるといえる。 よって、引用例1には、セルラ通信ネットワークにおいて、加入者管理サーバ42から移動端末12に取り付けられたセキュリティエレメントに加入者プロファイルSUBの加入者資格情報をダウンロードする方法が記載されているといえる。 b.上記(2)の段落[0049]の「データベース43などのデータベースは加入者管理サーバ42と通信する」という記載から、加入者管理サーバ42はデータベース43と通信するといえる。 c.上記(1)の段落[0032]の「移動端末12は、エアインターフェース(又は無線リンク)を介して、セルラ通信ネットワーク・・・と通信するように構成され」との記載によれば、移動端末12はセルラ通信ネットワークと通信するための基本的な通信プロトコルで動作しているといえることから、移動端末12は基本通信プロトコル手段を備えているといえる。 d.上記(1)の段落[0035]の「セキュアエレメント20は、・・・中央処理装置(CPU)22を備える。」との記載によれば、セキュアエレメントは中央処理装置を備えている。 また、上記(1)の段落[0036]の「セキュアエレメント20は、・・・メモリユニット26を含み」との記載によれば、セキュアエレメントはメモリユニットを備えている。 よって、セキュアエレメントは中央処理装置とメモリユニットを備えている。 e.上記(2)の段落[0046]の「ENC(...,K_(conf))は、構成キーK_(conf)を使用した暗号化操作を示す」及び「暗号化されたメッセージCを含むこのメッセージは、図2のステップS5(当審注:原文の「55」は「S5」の誤記であると認められる。)で加入者管理サーバ42に送信される」という記載、及び、Fig.2のS5の記載によれば、セキュアエレメントからセルラ通信ネットワークに暗号化した信号が送信されているといえる。 f.上記(2)の段落[0046]の「暗号化されたメッセージCを含むこのメッセージは、図2のステップS5(当審注:原文の「55」は「S5」の誤記であると認められる。)で加入者管理サーバ42に送信される」という記載及び上記(4)のFig.2のS5によれば、S5において、セキュアエレメントから加入者管理サーバ42にメッセージを送信している。 また、上記(2)の段落[0061]の「図2のS11に示すように、加入者管理サーバ42は、暗号化されたバージョンのメッセージMを移動端末12を介してセキュアエレメント20に送信する。」という記載及び上記(4)のFig.2においてS5の後にS11があるという事項によれば、加入者管理サーバ42はS5の送信に対する応答として暗号化されたバージョンのメッセージMを送信しているといえる。そして、上記(2)の段落[0061]の「復号化されたメッセージMから、セキュアエレメント20は、・・・加入者プロファイルSUBの加入者資格情報CREDSを抽出する。」という記載によれば、受信し復号化されたメッセージMに基づいて加入者資格情報を抽出しているといえる。よって、セキュアエレメントは加入者管理サーバ42からの応答メッセージであるメッセージMを受信し、加入者資格情報を抽出しているといえる。 よって、引用例1において、セキュアエレメントから加入者管理サーバ42にメッセージを送信し、セキュアエレメントは加入者管理サーバ42からの応答メッセージであるメッセージMを受信し、加入者資格情報を抽出しているといえる。 g.上記(1)の段落[0038]の「第1の加入者プロファイルSUB1は、セキュアエレメント20及び移動端末12が加入者管理バックエンドシステム40と通信し、・・・第2の加入者プロファイルSUB2などの追加のサービスを提供するためのより完全な加入者プロファイルをダウンロードすることを可能にする基本サービスのみを提供する暫定加入者プロファイルである・・・第1の加入者プロファイルSUB1などの暫定加入者プロファイルは一般に限定された機能のみを提供するので、移動端末12のユーザは、一般に、・・・第2の加入者プロファイルSUB2などの追加のサービスを提供する、より完全な加入者プロファイルに変更するように促される」との記載によれば、第1の加入者プロファイルSUB1は、セキュアエレメント及び移動端末12が加入者管理バックエンドシステム40と通信し、第2の加入者プロファイルSUB2などの追加のサービスを提供するためのより完全な加入者プロファイルをダウンロードすることを可能にする基本サービスのみを提供する暫定加入者プロファイルであるといえる。 以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「 セルラ通信ネットワークにおいて、加入者管理サーバ42から移動端末12に取り付けられたセキュリティエレメントに加入者プロファイルSUBの加入者資格情報をダウンロードする方法であって、 加入者管理サーバ42はデータベース43と通信し、 移動端末12は基本通信プロトコル手段を備え、 セキュアエレメントは中央処理装置とメモリユニットを備え、 セキュアエレメントからセルラ通信ネットワークに暗号化した信号が送信され、 セキュアエレメントから加入者管理サーバ42にメッセージを送信し、セキュアエレメントは加入者管理サーバ42からの応答メッセージであるメッセージMを受信し、加入者資格情報を抽出し、 第1の加入者プロファイルSUB1は、セキュアエレメント及び移動端末12が加入者管理バックエンドシステム40と通信し、第2の加入者プロファイルSUB2などの追加のサービスを提供するためのより完全な加入者プロファイルをダウンロードすることを可能にする基本サービスのみを提供する暫定加入者プロファイルである、 方法。」 2.引用例3について 当審拒絶理由通知書で引用された米国特許出願公開第2010/0255819号明細書 (以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。) (1)「[0072] In FIG. 5 three physical entities are represented: a mobile equipment or mobile terminal 522, a large capacity [0073] UICC or MegaSIM card 520 located within said mobile equipment 522 and a operation center 574 of a Mobile Network Operator (MNO). The operation center 574 is configured for exchanging information with said large capacity UICC 520 through the internet 521. Non-limiting examples of mobile networks over which Mobile Networks operators can operate are GSM, UMTS, CDMA and IMS. (略) [0076](略)The layers of the communications protocol comprise a http or https layer 542 546 over a TCP-IP layer 536 540 implemented both at the MegaSIM card 520 and at the operation center 574.」 (当審訳:[0072]図5では、3つの物理エンティティが示されている:モバイル機器又は移動端末522、[0073]前記モバイル機器522内に配置された大容量UICC又はMegaSIMカード520、及びモバイルネットワークオペレータ(MNO)のオペレーションセンタ574。オペレーションセンタ574は、インターネット521を介して前記大容量UICC520と情報を交換するように構成される。モバイルネットワークのオペレータが運用できるモバイルネットワークの非限定的な例は、GSM、UMTS、CDMA、及びIMSである。 (略) [0076](略)通信プロトコルの階層は、MegaSIMカード520とオペレーションセンタ574の両方に実装されたTCP-IP層536 540上のhttp又はhttps層542 546を含む。) (2) 「FIG.5 」 以上を総合すると、引用例3には、次の技術的事項(以下、「技術的事項3」という。)が記載されていると認められる。 「TCP通信プロトコル手段を備えるUICC(MegaSIM)。」 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 a.引用発明1の「セルラ通信ネットワーク」は、本願発明1と同様に、「セルラネットワーク」といえる。 また、引用発明1の「加入者管理サーバ42」は、加入者資格情報を提供するサーバであることから、遠隔から情報を供給するサーバといえ、本願発明1の「遠隔供給サーバ(5)」に相当する。 そして、引用発明1の「移動端末12」、「セキュリティエレメント」はそれぞれ、本願発明1の「無線通信装置(2)」、「識別ユニット」に相当し、そして、取り付けられるとは接続されることであることは明らかであるから、引用発明1の「移動端末12に取り付けられたセキュリティエレメント」は本願発明1の「無線通信装置(2)に接続された識別ユニット(1)」に相当する。 更に、引用発明1の「加入者資格情報」は、本願発明1の「加入者情報」に含まれる。 以上のことから、本願発明1の「セルラネットワーク(3)内で遠隔供給サーバ(5)へのアクセスが制限されたモードで動作する無線通信装置(2)に接続された識別ユニット(1)に加入者情報をダウンロードする方法」と、引用発明1の「セルラ通信ネットワークにおいて、加入者管理サーバ42から移動端末12に取り付けられたセキュリティエレメントに加入者プロファイルSUBの加入者資格情報をダウンロードする方法」とは、「セルラネットワークにおいて、遠隔供給サーバ(5)から、無線通信装置(2)に接続された識別ユニット(1)に加入者情報をダウンロードする方法」の点で共通する。 b.上記「a.」で説示したとおり、引用発明1の「加入者管理サーバ42」は、本願発明1の「遠隔供給サーバ(5)」に相当する。また、引用発明1の「データベース43」は加入者管理サーバ42へ必要なデータを供給するデータベースであるから、本願発明1の「供給データベース(10)」に相当する。 よって、本願発明1の「供給データベース(10)を備えた少なくとも1つの前記遠隔供給サーバ(5)」と、引用発明1の「加入者管理サーバ42はデータベース43と通信」することとは、「供給データベース(10)と通信する少なくとも1つの前記遠隔供給サーバ(5)があ」る点で共通する。 c.上記「a.」で説示したとおり、引用発明1の「移動端末12」は、本願発明1の「無線通信装置(2)」に相当する。 よって、本願発明1の「無線通信装置(2)は、基本パケットベース通信プロトコル手段をさらに備え」と、引用発明1の「移動端末12は基本通信プロトコル手段を備え」ることとは、「前記無線通信装置(2)は、基本通信プロトコル手段を備え」る点で共通する。 d.上記「a.」で説示したとおり、引用発明1の「セキュリティエレメント」は、本願発明1の「識別ユニット」に相当する。また、引用発明1の「中央処理装置」は、制御を行う装置であるから、本願発明1の「コントローラ」に相当する。引用発明1の「メモリユニット」は、本願発明1の「記憶手段(6)」に相当する。 よって、本願発明1の「前記識別ユニット(1)は、前記基本パケットベース通信プロトコル手段をアクセスするための高度パケットベース通信プロトコル手段を含むコントローラを備え、」及び「前記識別ユニット(1)の記憶手段(6)に格納する」と、引用発明1の「セキュアエレメントは中央処理装置とメモリユニットを備え」とは、「前記識別ユニット(1)は、コントローラ及び記憶手段を備え」の点で共通する。 e.上記「a.」で説示したとおり、引用発明1の「セキュリティエレメント」は、本願発明1の「識別ユニット」に相当する。 そして、本願発明1の「前記識別ユニット(1)は、前記基本パケットベース通信プロトコル手段をアクセスするための高度パケットベース通信プロトコル手段を含むコントローラを備え」及び「前記高度パケットベース通信プロトコル手段は、前記セルラネットワーク(3)に暗号符号化による安全なパケットを供給」することから、識別ユニット(1)は、セルラネットワーク(3)に暗号符号化による安全なパケットを供給している。 一方、引用発明1の「セキュアエレメントからセルラ通信ネットワークに暗号化した信号が送信され」ることは、セキュアエレメントは暗号符号化による安全な送信を供給するといえる。 よって、本願発明1の「前記識別ユニット(1)は、前記基本パケットベース通信プロトコル手段をアクセスするための高度パケットベース通信プロトコル手段を含むコントローラを備え」及び「前記高度パケットベース通信プロトコル手段は、前記セルラネットワーク(3)に暗号符号化による安全なパケットを供給」することと、引用発明1の「セキュアエレメントからセルラ通信ネットワークに暗号化した信号が送信され」ることとは、「前記識別ユニット(1)は、前記セルラネットワーク(3)に暗号符号化による安全な送信を供給」する点で共通する。 f.引用発明1の「セキュアエレメントから加入者管理サーバ42にメッセージを送信」することは、加入者資格情報を得るための送信であるから、加入者資格情報を得るための要請といえる。 また、上記「a.」で説示したとおり、引用発明1の「セキュリティエレメント」は、本願発明1の「識別ユニット」に相当し、引用発明1の「セルラ通信ネットワーク」は、本願発明1と同様に、「セルラネットワーク」といえる。 よって、本願発明1の「要請を前記高度パケットベース通信プロトコル手段により、前記基本パケットベース通信プロトコル手段を介して前記識別ユニット(1)から前記セルラネットワーク(3)へ送信するステップと、」することと、引用発明1の「セキュアエレメントから加入者管理サーバ42にメッセージを送信」することとは、「要請を前記識別ユニット(1)から前記セルラネットワーク(3)へ送信するステップ」の点で共通する。 g.引用発明1における「セキュリティエレメントは加入者管理サーバ42からの応答メッセージであるメッセージMを受信」することは、本願発明1と同様に、セキュリティエレメントはセルラ通信ネットワークからの応答メッセージを受信していることは明らかである。また、引用発明1の「加入者資格情報」は、本願発明1と同様に、加入者情報に対応する受信データに基づいて生成されているといえる。そして、本願発明1の「識別記録」も、引用発明1の「加入者資格情報」も「識別情報」といえる。 また、上記「a.」で説示したとおり、引用発明1の「セキュリティエレメント」は、本願発明1の「識別ユニット」に相当し、引用発明1の「セルラ通信ネットワーク」は、本願発明1と同様に、「セルラネットワーク」といえる。 よって、本願発明1の「前記セルラネットワーク(3)からの応答メッセージを受信して、加入者情報に対応する受信データに基づいて識別記録を生成し、前記識別ユニット(1)の記憶手段(6)に格納するステップ」と、引用発明1の「セキュアエレメントは加入者管理サーバ42からの応答メッセージであるメッセージMを受信し、加入者資格情報を抽出」することとは、「前記識別ユニット(1)は、前記セルラネットワーク(3)からの応答メッセージを受信して、加入者情報に対応する受信データに基づいて識別情報を生成するステップ」する点で共通する。 以上のことから、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「 セルラネットワークにおいて、遠隔供給サーバ(5)から、無線通信装置(2)に接続された識別ユニット(1)に加入者情報をダウンロードする方法であって、 供給データベース(10)と通信する少なくとも1つの前記遠隔供給サーバ(5)があり、 前記無線通信装置(2)は、基本通信プロトコル手段を備え、 前記識別ユニット(1)は、コントローラ及び記憶手段を備え、 前記識別ユニット(1)は、前記セルラネットワーク(3)に暗号符号化による安全な送信を供給し、 前記方法は、 要請を前記識別ユニット(1)から前記セルラネットワーク(3)へ送信するステップと、 前記識別ユニット(1)は、前記セルラネットワーク(3)からの応答メッセージを受信して、加入者情報に対応する受信データに基づいて識別情報を生成するステップとを備える方法。」 (相違点) 1.本願発明1では、「セルラネットワーク(3)内で遠隔供給サーバ(5)へのアクセスが制限されたモードで動作する無線通信装置(2)」であるのに対し、引用発明では「第1の加入者プロファイルSUB1は、セキュアエレメント及び移動端末12が加入者管理バックエンドシステム40と通信し、第2の加入者プロファイルSUB2などの追加のサービスを提供するためのより完全な加入者プロファイルをダウンロードすることを可能にする基本サービスのみを提供する暫定加入者プロファイルである」が、当該発明特定事項が特定されていない点。 2.遠隔供給サーバ(5)について、本願発明1では「前記セルラネットワーク(3)は、少なくとも1つのパケットゲートウェイノード(4)を備え」、「前記パケットゲートウェイノード(4)には供給データベース(10)を備えた少なくとも1つの前記遠隔供給サーバ(5)が接続されて」いるのに対し、引用発明1では、加入者管理サーバ42はデータベース43と通信するが、当該発明特定事項が特定されていない点。 3.本願発明1では「無線通信装置(2)は、基本パケットベース通信プロトコル手段」を備えているのに対し、引用発明1では、移動端末12は基本通信プロトコル手段を備えているが、パケット通信プロトコル手段とは特定していない点。 4.本願発明1では、「識別ユニット(1)は、前記基本パケットベース通信プロトコル手段をアクセスするための高度パケットベース通信プロトコル手段を含むコントローラを備え」、「前記高度パケットベース通信プロトコル手段は、前記セルラネットワーク(3)に暗号符号化による安全なパケットを供給」し、「要請を前記高度パケットベース通信プロトコル手段により、前記基本パケットベース通信プロトコル手段を介して前記識別ユニット(1)から前記セルラネットワーク(3)へ送信する」のに対し、引用発明1では、セキュアエレメントは中央処理装置を備え、セキュアエレメントからセルラ通信ネットワークに暗号化した信号が送信され、セキュアエレメントから加入者管理サーバ42にメッセージを送信しているが、当該発明特定事項が特定されていない点。 5.本願発明1では、「加入者情報に対応する受信データに基づいて識別記録を生成し、前記識別ユニット(1)の記憶手段(6)に格納する」のに対し、引用発明1では、セキュアエレメントは中央処理装置とメモリユニットを備え、セキュアエレメントは加入者資格情報を抽出しているが、メモリユニットに記憶する点が特定されていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 引用発明1においてパケットゲートウェイノードについて特定されていないことから、「前記セルラネットワーク(3)は、少なくとも1つのパケットゲートウェイノード(4)を備え」、「前記パケットゲートウェイノード(4)には供給データベース(10)を備えた少なくとも1つの前記遠隔供給サーバ(5)が接続されて」いることは、記載も示唆もされていない。 また、技術的事項3においても、「前記セルラネットワーク(3)は、少なくとも1つのパケットゲートウェイノード(4)を備え」、「前記パケットゲートウェイノード(4)には供給データベース(10)を備えた少なくとも1つの前記遠隔供給サーバ(5)が接続されて」いることは行われておらず、本願優先日前において周知技術でもない。 したがって、上記相違点1、3ないし5について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び技術的事項3に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2ないし9について 本願発明2ないし9も、本願発明1の「前記セルラネットワーク(3)は、少なくとも1つのパケットゲートウェイノード(4)を備え」及び「前記パケットゲートウェイノード(4)には供給データベース(10)を備えた少なくとも1つの前記遠隔供給サーバ(5)が接続されており」という発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び技術的事項3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 原査定の概要 原査定(令和2年1月9日付け拒絶査定)の理由の概要は、本願の発明の詳細な説明の[0047]に記載されている「トランスポートレイヤセキュリティ(TLS)」は、原出願の出願当初の明細書又は図面には記載されたものではないから、本願は分割要件を満たしていないとした上で、本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 ・請求項 1-13 ・引用文献等 1又は2 <引用文献等一覧> 1.欧州特許出願公開第2747466号明細書 2.特表2017-528087号公報 第6 原査定についての判断 まず、令和2年5月7日の手続補正により、発明の詳細な説明の段落[0047]は削除されていることから、本願は分割要件を満たしている。 そこで、本願の出願日は平成27年9月1日(優先日 平成26年9月15日)と認められる。 したがって、原査定で引用された特表2017-528087号公報(以下、「引用例2」という。)は本願出願後に公開された文献であることから、引用例2は特許法第29条第2項の規定に適用できない。 また、令和3年2月4日にされた手続補正により、補正後の請求項1ないし9に係る発明は、「前記セルラネットワーク(3)は、少なくとも1つのパケットゲートウェイノード(4)を備え」及び「前記パケットゲートウェイノード(4)には供給データベース(10)を備えた少なくとも1つの前記遠隔供給サーバ(5)が接続されており」という発明特定事項を備えるものとなったが、当該発明特定事項は、上記第4で説示したとおり引用例1及び引用例3には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし9は、当業者であっても、引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 4.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(新規性)、理由2(進歩性) ・請求項 10 ・引用文献等 1、3 ・請求項 11 ・引用文献等 1又は1、3 ●理由3(サポート要件)、理由4(明確性) 1. ・請求項 4、6?9 請求項4に「前記アクセス情報(8)は、少なくとも1つのセルラネットワーク(3)の一部である1を越える指定されたアクセスポイント(4a)の手段によって前記遠隔供給サーバ(5)へのアクセスを許可するのに適合している」と記載されているが、この記載では「1つのセルラネットワーク(3)で2つの指定されたアクセスポイント(4a)の手段によって遠隔供給サーバ(5)へのアクセスを許可する」と読み取れるが、2つのアクセスポイントによって1つの遠隔供給サーバ(5)にアクセスとはどのようなケースを想定しているか不明確であり、また、「前記アクセス情報(8)は、・・・適合している」とはどのような情報と規定しているのか不明確である。 よって、請求項4の記載ではアクセス情報(8)がどのような情報を特定しているのか不明確である。 請求項4を引用している請求項についても同様の不備がある。 したがって、請求項4、6?9に係る発明が不明確である。(明確性) 2. ・請求項 7?9 請求項7に「前記無線通信装置(2)は、前記識別ユニット(1)の前記記憶手段(6)に格納された第1識別記録によって表わされる第1加入者情報下で前記セルラネットワーク(3)内で動作し、」と記載されている。一方、請求項7が引用している請求項6に「前記識別ユニット(1)は、開始時に少なくとも1つの初期識別記録を含み、前記初期識別記録は前記遠隔供給サーバ(5)のアクセスに供される」と記載されており、「第1識別記録」と「初期識別記録」との関係が不明瞭である。 請求項7を引用している請求項についても同様の不備がある。 したがって、請求項7?9に係る発明が不明確である。(明確性) 3. ・請求項 9 請求項9に「前記要請を、・・・導くステップ」と記載されているが、要請を導くとはどのような動作を意図しているのか不明瞭である。 したがって、請求項9に係る発明が不明確である。(明確性) 4. ・請求項 11 請求項11に「前記無線通信装置(2)は、請求項10に記載の識別ユニット(1)に接続されるよう構成され」と記載されているが、請求項10に記載の識別ユニット(1)の構成は無線通信装置(2)の構成を特定するものではない。 したがって、「前記無線通信装置(2)は、請求項10に記載の識別ユニット(1)に接続されるよう構成され」で無線通信装置(2)のどのような構成を特定しているのか不明瞭であるから、請求項11係る発明が不明確である。(明確性) 5. ・請求項 11 請求項11に「セルラネットワーク(3)内の遠隔供給サーバ(5)」と記載されているが、発明の詳細な説明(例えば図1)において、遠隔供給サーバ(5)はセルラネットワーク(3)の外に設置されており、発明の詳細な説明には「セルラネットワーク(3)内の遠隔供給サーバ(5)」は記載されていない。 したがって、請求項11に係る発明は発明の詳細な説明に記載されていない。(サポート要件) <引用文献等一覧> 1.欧州特許出願公開第2747466号明細書(拒絶査定時の引用例1) 3.米国特許出願公開第2010/0255819号明細書 第8 当審拒絶理由についての判断 まず、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について、令和3年2月4日にされた手続補正により、請求項10及び11は削除された。よって、令和3年2月4日にされた手続補正により、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)についての当審拒絶理由は全て解消された。 次に、理由3(サポート要件)及び理由4(明確性)について、令和3年2月4日にされた手続補正により、 (1)請求項4に、「前記アクセス情報(8)は、少なくとも1つのセルラネットワーク(3)の一部である1を越える指定されたアクセスポイント(4a)の手段によって前記遠隔供給サーバ(5)へのアクセスを許可するのに適合している請求項3に記載の方法。」とあったのを、「前記アクセス情報(8)は、同一アクセスポイント名(APN)を持つ、前記セルラネットワーク(3)とは異なる他のセルラネットワークからも前記アクセスポイント(4a,4b)を介して前記遠隔供給サーバ(5)へのアクセスが許可されるのに適合している請求項3に記載の方法。」と補正した。 (2)請求項7に、「・・・請求項1乃至6のいずれか・・・」とあったのを、「・・・請求項1乃至5のいずれか・・・」と補正した。 (3)請求項9に、「・・・前記要請を、前記割当て通信チャネル(7)を使用して前記インバウンドモデム機能の手段により導く・・・」とあったのを、「・・・前記要請を、前記割当て通信チャネル(7)を使用して前記インバウンドモデム機能の手段により前記識別ユニット(1)から前記セルラネットワーク(3)へ導く・・・」と補正した。 (4)請求項10,11を削除した。 以上のとおりであるから、令和3年2月4日にされた手続補正により、理由3(サポート要件)及び理由4(明確性)についての当審拒絶理由は全て解消された。 よって、令和3年2月4日にされた手続補正により、当審拒絶理由は全て解消された。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-03-30 |
出願番号 | 特願2018-159878(P2018-159878) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W) P 1 8・ 537- WY (H04W) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 桑原 聡一 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
永田 義仁 中木 努 |
発明の名称 | 識別ユニットに加入者情報をダウンロードする方法 |
代理人 | 萩原 誠 |