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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1372581 |
審判番号 | 不服2019-12475 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-09-20 |
確定日 | 2021-04-01 |
事件の表示 | 特願2018-133164「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月11日出願公開、特開2018-158588〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年8月25日を出願日とする特願2011-183330(以下「第1原出願」という。)の一部を平成25年7月19日に新たな特許出願とした特願2013-150268号の一部をさらに平成26年6月26日に新たな特許出願とした特願2014-131755号の一部をさらに平成27年8月7日に新たな特許出願とした特願2015-157177号の一部をさらに平成28年6月10日に新たな特許出願とした特願2016-115917号の一部をさらに平成28年11月4日に新たな出願とした特願2016-216030号の一部をさらに平成30年7月13日に新たな出願としたものであって、平成31年3月19日付けで拒絶理由が通知され、令和1年5月29日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月14日付けで拒絶査定(発送日:同年6月25日、以下「原査定」という。)がなされた。 これに対して同年9月20日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和1年5月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、つぎのとおりのものである。 「【請求項1】 画像形成機能を有する装置本体の筐体と、 前記筐体の正面側に配置された操作部と、 を備え、 前記操作部は、操作パネルおよび前記を囲む外枠部分を含み、 前記筐体の正面は、 前記操作部の下方の領域に、同一の色彩で形成された一定の幅の部分を有し、 前記一定の幅の部分の幅は、前記操作部の幅より小さく、前記操作パネルの幅に略等しい、画像形成装置。」 なお本願明細書には、上記「外枠部分」の記載はなく、同「操作部」と同「操作パネル」の記載はあるものの両者の区別についての説明はされていないが、本願明細書段落【0032】に【符号の説明】として「操作パネル(操作部)」は符号113として記載されており、本願図1(B)をみると符号113が付された部材には外枠状のものが見て取れ、当審では、当該外枠状のものを「外枠部分」、当該外枠状のものに囲まれた部分を「操作パネル」、「外枠部分」と「操作パネル」を合わせたものを「操作部」であると解して(下記符号113の部材拡大図参照。)検討をすすめる。 本願図1(B)は以下のものである。 上記図1(B)の符号113の部材拡大図(下記「外枠部分」、「操作パネル」、「操作部」の表記は当審で付加した。) 第3 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献 1.引用文献 “KONICA MINOLTA bizhub C652/C552/C452 カタログ”[online]、コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社、2010年 2月、[平成31年 3月19日検索]、インターネット、<URL:https://www.konicaminolta.jp/business/products/copiers/color/bizhub_c652_c552/pdf/bizhub_c652_c552_c452.pdf>(以下、「引用文献」という。) 2.原査定の理由において引用され、第1原出願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献には、つぎの事項が記載されている。 (1)引用文献の第04ページ(引用文献の1枚目を第01ページとし、2枚目以降は各ページの左下、右下のいずれかに記載されている表示「02 bizhub C652/C552/C452」等に示されている数字をページ数とする。例えば「02 bizhub C652/C552/C452」又は「03 bizhub C652/C552/C452」の表示に基づいてそれぞれ「第02ページ」、「第03ページ」という。)3行目左上の「オフィスのための複合機bizhub C652シリーズ」との記載から、引用文献には「複合機bizhub 652」が記載されているといえる。(下線は強調のために当審で付した。以下同じ。) (2)引用文献の第04ページには、「カラー液晶コントロールパネル」との表題とともに「指やタッチペンで直接画面に触れて操作できるタッチパネル式の8.5型WVGA(800×480ドット)大型カラー液晶を採用しました。」との記載と「カラー液晶コントロールパネル」の画像が記載されており、上記画像をみると、カラー液晶コントロールパネルとはタッチパネル式の大型カラー液晶を外枠で囲んだものを含むものであることが見て取れる。 上記「カラー液晶コントロールパネル」の画像は次のものである。 (3)引用文献の第01ページには、「複合機bizhub C652」の画像が掲載されており、同画像及び引用文献の第04ページの「ブラック&ホワイトのスタイリッシュボディ」との表題とともに「オフィスインテリアとの調和を追求したシンプルなフォルムと、斬新なブラック&ホワイトのボディーカラーを採用。裏面の配線もスッキリ隠せるのでオフィスの中心に設置しても違和感がなく、複合機による最適配置にも柔軟に対応した美しいレイアウトが可能です。表のホワイトライン部には情報を光で知らせる機能を持たせていますので、出力中やデータ受信中など離れたところからでも複合機の状態が分かります。」との記載がされている。 ここで、上記「複合機bizhub C652」の画像をみると「カラー液晶コントロールパネル」が取り付けられた箱状の物体がみてとれ、以下この物体を「本体筐体」という。 複合機bizhub C652は、本体筐体と本体筐体の正面側(画像の視点側。)にカラー液晶コントロールパネルを備え、上記本体筐体正面の上記「カラー液晶コントロールパネル」の下方の領域に、上下に伸びた長方形状の部分と該長方形状の部分の一部から左側に突出した部分からなるホワイトライン部が配置され、前記ホワイトライン部の上下に伸びた長方形状の部分の幅は、カラー液晶コントロールパネル及びタッチパネル式の大型カラー液晶の幅より小さいことが見て取れる。 上記「複合機bizhub C652」の画像は次のものである。 3.引用文献記載の発明 以上によれば、引用文献には、つぎの発明が記載されているものと認められる。 「本体筐体と本体筐体の正面側にカラー液晶コントロールパネルを備え、 上記カラー液晶コントロールパネルはタッチパネル式の大型カラー液晶を外枠で囲んだものを含むものであり、 上記本体筐体正面の上記カラー液晶コントロールパネルの下方の領域に、上下に伸びた長方形状の部分と該長方形状の部分の一部から左側に突出した部分からなるホワイトライン部が配置され、前記ホワイトライン部の上下に伸びた長方形状の部分の幅はカラー液晶コントロールパネル及びタッチパネル式の大型カラー液晶の幅より小さい複合機bizhub C652」 第4 当審の判断 1.本願発明1と引用発明との対比 引用発明の「タッチパネル式の大型カラー液晶」、「外枠」、「カラー液晶コントロールパネル」はそれぞれ、本願発明1の「操作パネル」、「外枠部分」、「操作部」に相当する。 「複合機」とは、プリンター、コピー機、ファックス機の機能を兼ね備えた装置のことを指すことは、技術常識に照らして明らかであるから、引用発明の「複合機bizhub C652」は、本願発明1の「画像形成装置」に相当する。 上記の検討のとおり、引用発明の「複合機bizhub C652」は画像形成ができるものであり、技術常識に照らして、引用発明において画像形成が「本体筐体」でなされることも明らかであるから、「複合機bizhub C652」の「本体筐体」は、本願発明1の「画像形成機能を有する装置本体の筐体」に相当する。 引用発明の「本体筐体の正面側」に「備え」られる「カラー液晶コントロールパネル」は、本願発明1の「筐体の正面側に配置された操作部」に相当する。 引用発明の「カラー液晶コントロールパネルはタッチパネル式の大型カラー液晶を外枠で囲んだものを含むものであ」ることは、本願発明1の「操作部は、操作パネルおよび前記操作パネルを囲む外枠部分を含」むことに相当する。 引用発明の「ホワイトライン部の上下に伸びた長方形状の部分」は、上記「複合機bizhub C652」の画像を参照すると「同一の色彩で形成され」ており、その長方形状の部分は「一定の幅」であるので、引用発明の「本体筐体正面の上記カラー液晶コントロールパネルの下方の領域に、上下に伸びた長方形状の部分」「からなるホワイトライン部が配置され」ていることは、本願発明1の「前記筐体の正面は、操作部の下方の領域に、同一の色彩で形成された一定の幅の部分を有し」ていることに相当する。 引用発明の「ホワイトライン部の上下に伸びた長方形状の部分の幅」が「カラー液晶コントロールパネル」(本願発明1の「操作部」に相当。)の幅より小さいことは、本願発明1の「前記一定の幅の部分の幅は、前記操作部の幅より小さ」いことに相当する。 2.一致点・相違点 前記「1.」の検討をふまえれば、本願発明1と引用発明とは、つぎの一致点で一致し、各相違点で相違するものである。 <一致点> 「画像形成機能を有する装置本体の筐体と、 前記筐体の正面側に配置された操作部と、 を備え、 前記操作部は、操作パネルおよび前記を囲む外枠部分を含み、 前記筐体の正面は、 前記操作部の下方の領域に、同一の色彩で形成された一定の幅の部分を有し、 前記一定の幅の部分の幅は、前記操作部の幅より小さい、画像形成装置。」 <相違点> 相違点 本願発明1の「一定の幅の部分の幅」は「操作パネルの幅に略等しい」のに対して、引用発明の「ホワイトライン部の上下に伸びた長方形状の部分」の幅は「タッチパネル式の大型カラー液晶」(本願発明1の「操作パネル」に相当。)の幅より小さい点。 3.相違点についての当審の判断 審判請求人は、審判請求書において「本願において「一定の幅の部分」の幅の大きさを、操作パネルの幅に略等しくすることで、操作パネルがどの範囲に存在するかという情報を与えることが可能となります。 従って上記構成は、操作部へのアクセスを容易にするための重要な要素であり、単なるデザイン性等によるものではありません。 引用文献1(審判註:本審決における「引用文献」のこと。)には、画像形成装置の装置本体の筐体の正面であって、操作部の下方の領域に、同一の色彩で形成された一定の幅の部分を有している構成が開示されていると看取できますが、上述いたしました本願請求項1に記載の重要な構成要件(特に、一定の幅の部分の幅は、操作部の幅より小さく、操作パネルの幅に略等しい点)について、何ら記載も示唆もありません。 引用文献1では、操作部の下方の領域に、白色(同一の色彩)で形成された一定の幅の部分を有していますが、これは操作部へのアクセスを容易にするために設けたものではなく、単に装置の端部に同一の色彩で形成された一定の幅の部分を設けたものです。その根拠として引用文献1の3ページ下段に示された写真において、bizhub c652では本体右側に接続されたオプション機器の右側端部にも同様に同一の色彩で形成された一定の幅の部分を設けています。よって、引用文献からでは、当業者であっても、本願請求項1に係る発明に容易に想到することはできません。」と主張している。 上記の審判請求人の「操作部へのアクセスを容易にするための重要な要素」との主張や、本願の明細書の「筐体正面の操作部の下方の領域に、同一の色彩で形成された一定の幅の部分が目印となり、装置全体のデザインコンセプトを損なうことなく、操作部の位置を明確することができる。」(段落【0009】)との説明からみて、本願発明の効果は「操作部の位置を明確することができる」ことであると解される。 これに対して、上記第3 2.(3)で示したとおり、引用文献の第04ページの「ブラック&ホワイトのスタイリッシュボディ」との表題とともに「表のホワイトライン部には情報を光で知らせる機能を持たせていますので、出力中やデータ受信中など離れたところからでも複合機の状態が分かります。」との記載からみて、引用発明の「ホワイトライン部」は情報を知らせる機能を有する部位を示すために形成されていることが理解できるし、上記「複合機bizhub C652」の画像をみても、カラー液晶コントロールパネルの下方の領域に配置されたホワイトライン部によって、カラー液晶コントロールパネル(本願発明1の「操作部」に相当。)の位置を認識しやすくなる効果を奏することは当業者であれば容易に理解できるものというべきであるから、引用発明の「ホワイトライン部」が、本願発明1と同様にカラー液晶コントロールパネル(本願発明1の「操作部」に相当。)が配置されている位置を含めて、ユーザに情報を知らせる機能を有する部位を示すことができる効果を有するものであることが当業者にとって容易に理解できるものというべきである。 審判請求人の上記「操作パネルの幅に略等しくすることで、操作パネルがどの範囲に存在するかという情報を与えることが可能とな」るとの主張は、「操作部」ではなく、「操作パネルがどの範囲に存在するか」を問題としているとも見受けられるのでそれについて検討すると、上記符号113の部材拡大図には、操作パネルのサイズと操作部のサイズが大差なく描画されていることを勘案すると、操作部の位置がわかれば操作パネルの位置もおのずとわかるので、上記「操作部」ではなく、「操作パネルがどの範囲に存在するか」を問題とすることに格別の技術的意義があるとは解されない。 また、相違点に係る本願発明1の発明特定事項である「(操作部の下方の領域に、同一の色彩で形成された)一定の幅の部分の幅は」、「操作パネルの幅に略等しい」点について、本願明細書には「操作位置ライン101の幅は問わないが、図示の如く操作パネル113の設置幅に略等しい幅とすると違和感がなく好ましい。」(段落【0022】)と記載されているように、「操作パネル113」と「操作位置ライン101」の幅(サイズ)を揃えて違和感をなくすということは、デザイン的な意図をもってなされたものと解される。 他方、近接する複数の部材の幅を揃えればデザイン上の統一感を形成できることは、デザインする際の常套テクニックというべきものであることに照らせば、本願発明1の相違点に係る構成は、引用発明から容易に想到し得たものであるというべきである。 よって、上記相違点は、当業者が容易に想到し得るものである。 また、本願発明1の効果も、引用発明や上記デザイン上の常套手段を勘案すれば、予測し得る程度のものである 4.以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第5 むすび 前記のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、前記の結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-01-19 |
結審通知日 | 2021-01-26 |
審決日 | 2021-02-09 |
出願番号 | 特願2018-133164(P2018-133164) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上田 正樹 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 畑井 順一 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 吉田 隆彦 |