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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1372593
審判番号 不服2020-6280  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-08 
確定日 2021-04-01 
事件の表示 特願2015-199099「ファイバーストレッチャー」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日出願公開、特開2017- 72702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)10月7日に出願され、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 元年 6月13日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 9月11日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月 3日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 5月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 9月18日 :上申書の提出

第2 令和2年5月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和2年5月8日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
令和2年5月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)。

[本件補正前]
「光ファイバーの光路長を調整するファイバーストレッチャーであって、
所定方向に伸縮変位する圧電素子と、
前記圧電素子の伸縮方向に圧縮力を与えた状態で前記圧電素子を保持し、前記圧電素子の伸縮に応じて伸縮して圧電素子の伸縮変位を前記光ファイバーに伝達する機能を有する保持部材と、
前記圧電素子の伸縮変位が前記光ファイバーの長手方向の伸縮変位として伝達されるよう前記保持部材に前記光ファイバーを取り付ける取付け部と
を有することを特徴とするファイバーストレッチャー。」

[本件補正後]
「光ファイバーの光路長を調整するファイバーストレッチャーであって、
所定方向に伸縮変位する圧電素子と、
前記圧電素子の伸縮方向に圧縮力を与えた状態で前記圧電素子を保持し、前記圧電素子の伸縮に応じて伸縮して圧電素子の伸縮変位を前記光ファイバーに伝達する機能を有する保持部材と、
前記圧電素子の伸縮変位が前記光ファイバーの長手方向の伸縮変位として伝達されるよう前記保持部材に前記光ファイバーを取り付ける取付け部と
を有し、
前記保持部材は、前記圧電素子の一端面が固定される第1のヘッドピースと、前記圧電素子の他端面が固定される第2のヘッドピースと、前記第1のヘッドピースおよび前記第2のヘッドピースに架け渡されるように設けられ、前記圧電素子に圧縮力を与えるとともに前記圧電素子の伸縮変位に対応して伸縮する直線状をなす圧縮力付与部とを有することを特徴とするファイバーストレッチャー。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「保持部材」について、「前記保持部材は、前記圧電素子の一端面が固定される第1のヘッドピースと、前記圧電素子の他端面が固定される第2のヘッドピースと、前記第1のヘッドピースおよび前記第2のヘッドピースに架け渡されるように設けられ、前記圧電素子に圧縮力を与えるとともに前記圧電素子の伸縮変位に対応して伸縮する直線状をなす圧縮力付与部とを有する」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)は、上記1の[本件補正後]に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2009-60447号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審が付した。以下同様。)

(ア)「【実施例】
【0008】
図1は本発明の実施例の移相制御による通信装置の構成図で、送信部1はシングルモードレーザ発生器2にファイバ3を介して第1のカプラ4が接続され、第1のカプラ4に長尺の第1のファイバ5及び長尺の第2のファイバ6の一端がそれぞれ接続され、第2のファイバ6に移相器7が接続されて構成され、又、受信部8は第1のファイバ5及び第2のファイバ6の他端がそれぞれ接続された第2のカプラ9と、第2のカプラ9に接続された第1のパワーメータ10及び第2のパワーメータ11によって構成されている。
【0009】
そして、図2に示すように、移相器7はファイバ12、13の端部にそれぞれ固着された鍔14,15の間に圧電アクチュエータ16が固着され、この圧電アクチュエータ16に制御装置17から電圧を印可することによって伸縮又は拡大されて鍔14,15の間隔が縮小又は拡大され、それによってファイバ12,13の間に剥き出された光ファイバ18の長さが変更されることによって、光ファイバ18を通過するフォトンが180度反転されるように構成されている。」

(イ)図1は次のものである。

(ウ)図2は次のものである。

(エ)「圧電アクチュエータ16」が圧電素子を備えることは、技術常識に照らし明らかである。

(オ)「鍔14,15」が何らかの取り付け手段によって「ファイバ12、13の端部」に「固着」されていることは、技術常識に照らし明らかである。

(カ)上記記載及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(括弧書きは、参考までに、記載の根拠を示したものである。)

「通信装置に用いられる移相器であって、(【0008】)
鍔14,15は取り付け手段によってファイバ12、13の端部にそれぞれ固着され、(上記(オ))
鍔14,15の間に圧電アクチュエータ16が固着され、(【0009】)
圧電アクチュエータ16は圧電素子を備え、(上記(エ))
この圧電アクチュエータ16に制御装置17から電圧を印可することによって伸縮又は拡大されて鍔14,15の間隔が縮小又は拡大され、それによってファイバ12,13の間に剥き出された光ファイバ18の長さが変更されることによって、光ファイバ18を通過するフォトンが180度反転されるように構成されている、(【0009】)
移相器。」

イ 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2002-76460号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「【0002】
【従来の技術】近年、この種の圧電アクチュエータの研究開発分野では、電歪効果を有するセラミックス材料と電極材料とを交互に重ねた構造の積層型圧電素子を利用し、微少変位を高速にして高応答で制御可能な性能を得ている。
【0003】ところが、こうした積層型圧電素子の単体に高電圧・高周波数の駆動電圧を印加すると、素子の伸縮に伴う慣性力で引っ張り応力が発生して素子自体が容易に破壊されてしまうため、実際に動作させるためには圧電素子に圧縮予圧荷重を与えておき、高電圧・高周波数の駆動時の引っ張り応力による破壊を防止する構造にする必要がある。」

(イ)「【0012】図1は、本発明の一実施例に係る圧電アクチュエータの基本構成を一部を断面にして示した側面図である。この圧電アクチュエータの場合、従来のように金属製のケース形バネで一軸方向に延びた積層型圧電素子1を収納する構造とは異なり、圧電素子1の両端面を板状の第1の固定部材(上面用固定部材)7及び第2の固定部材(下面用固定部材)8で挟み込んだ上、一端側に係止用梁部6aが設けられた2本のワイヤバネ6をその他端側の先端から第1の固定部材7における圧電素子1の当接部分の外方周囲における所定の2箇所に設けられた第1の穴7a、並びに第2の固定部材8における圧電素子1の当接部分の外方周囲における所定の2箇所に設けられた第2の穴8aに貫通させて所定の引っ張り荷重をかけた状態で係止用梁部6aが第1の穴7aの周囲で係止され、且つ第2の穴8aの貫通部分が固定されるることで圧電素子1における一軸方向と合致する伸縮方向に圧縮予圧荷重を付与する構造としている。」

(ウ)図1は次のものである。


ウ 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開平5-57916号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「【0002】
【従来の技術】圧電素子はチタン酸ジルコン酸鉛等の強誘電体に分極処理を施したものであり、分極方向に電圧を印加すると引張応力が生じて伸長し、分極方向と逆方向の電圧を印加すると圧縮応力が生じて圧縮される性質を有する。以上のように、圧電素子の変位は印加電圧の大きさとその方向により制御できるため、これを利用してアクチュエータとして動作させることができる。
・・・(中略)・・・
【0006】ところが、圧電素子は一般に外部から加えられた引張応力に対する耐性が弱く破壊等の事故が生じ易くなる。このような問題は、圧電素子型アクチュエータを印字ヘッドに利用する場合に限らず、ある質量を有する負荷を圧電素子型アクチュエータに接続した場合に常に生じるものである。
【0007】そこで通常は、圧電素子に予圧を与えた状態でアクチュエータとして用いている。即ち、圧電素子に対して予め圧縮応力を加えておき、負荷によって生じる引張応力と相殺させるようにしたものである。図1において、スプリング4は圧電素子に予圧を与えるため設けられたものであり、圧電素子型アクチュエータの組立を行う際、従来は、圧縮装置を用いてブロック2、3間を機械的に締めつけることにより圧電素子1に圧縮応力を加え、この状態でブロック2、3間にスプリング4を固定する作業が必要であった。」

(イ)図1は次のものである。


エ 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2008-99399号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「【背景技術】
【0002】
何かを「動かせる」ための機構であるアクチュエータは、各種産業機械、自動車、航空機、医療関連機器を始め、身の回りの電気製品に至るまで、あらゆるものに利用されている。アクチュエータは、例えば、産業機構においてはソレノイドやエアバルプ等、パソコンにおいてはハードディスクドライブに対して読み取りおよび書き込みを行うための磁気チップを移動させる移動機構等、また、携帯電話においては振動を発生するバイブレーションモータ等として利用されている。アクチュエータとしては現在、コイル中に流れる電流によって生じた磁界と永久磁石との間で発生する吸引力あるいは斥力である「電磁力」を利用したものが最も多用されている。・・・(中略)・・・
【0004】
ところで、圧電素子は一般的にセラミック材料からなるため、陶器のように脆性を有しており、圧縮に対しては強いが引張に対しては弱い。このため、圧電素子をアクチュエータとして用いる場合には、圧電素子から生じる力に対して1/5?1/2程度の圧縮力を与えておくことが要求される。圧電素子に圧縮力を与える与圧構造としては、図5に示すように、圧電素子Aの伸縮方向一端部および他端部にそれぞれ当接するように設けられたヘッドピースB、C間に、あらかじめ引張力を作用させて伸長させた状態の蛇腹部材Dを架設しておき、蛇腹部材Dの元に戻ろうとする収縮力を利用したものが知られている(例えば非特許文献1参照)。」

(イ)図5は次のものである。

(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。

ア 本件補正発明の「光ファイバーの光路長を調整するファイバーストレッチャーであって、」との特定事項について
(ア)本件補正発明の「光ファイバー」について
引用発明の「ファイバ12,13の間に剥き出された光ファイバ18」との特定事項から、「ファイバ12、13」は、「光ファイバ18」を含むものであって、「光ファイバ18」を被覆する構造を備えたものである。そうすると、引用発明の「光ファイバ18」及び「ファイバ12,13」はそれぞれコアとクラッドからなる導波路構造を備えるものと理解できるところ、このようなものは技術常識に照らし、光ファイバーと呼べるものである。
よって、引用発明の「光ファイバ18」及び「ファイバ12,13」は、本件補正発明の「光ファイバー」に相当する。

(イ)本件補正発明の「ファイバーストレッチャー」について
引用発明の「移相器」は、「光ファイバ18」の「長さ」を「変更」するものであるから、「光ファイバ18」の光路長を調整するものであるといえる。よって、引用発明の「移相器」は、本件補正発明の「ファイバーストレッチャー」に相当する。

(ウ)したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備える。

イ 本件補正発明の「所定方向に伸縮変位する圧電素子と、」との特定事項について
引用発明の「圧電アクチュエータ16」は「制御装置17から電圧を印可することによって伸縮又は拡大されて鍔14,15の間隔が縮小又は拡大され」るものであるから、「圧電アクチュエータ16」の動力源である「圧電素子」は、上記間隔が規定される方向、すなわち所定方向に伸縮変位するものであるといえる。
よって、引用発明の「圧電素子」は、本件補正発明の「圧電素子」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備える。

ウ 本件補正発明の「前記圧電素子の伸縮方向に圧縮力を与えた状態で前記圧電素子を保持し、前記圧電素子の伸縮に応じて伸縮して圧電素子の伸縮変位を前記光ファイバーに伝達する機能を有する保持部材と、」との特定事項について
引用発明は「圧電アクチュエータ16に制御装置17から電圧を印可することによって伸縮又は拡大されて鍔14,15の間隔が縮小又は拡大され、それによってファイバ12,13の間に剥き出された光ファイバ18の長さが変更される」ものであるから、引用発明の「鍔14,15」は、「圧電アクチュエータ16」の動力源である「圧電素子」の伸縮変位を「光ファイバ18」に伝達する機能を有するといえる。
そして、引用発明においては「鍔14,15の間に圧電アクチュエータ16が固着され」ているのであるから、「鍔14,15」からなる部材は、本件補正発明の「保持部材」に相当する。
したがって、引用発明は、上記特定事項のうち「圧電素子の伸縮変位を前記光ファイバーに伝達する機能を有する保持部材と、」との特定事項を備える。

エ 本件補正発明の「前記圧電素子の伸縮変位が前記光ファイバーの長手方向の伸縮変位として伝達されるよう前記保持部材に前記光ファイバーを取り付ける取付け部とを有し、」との特定事項について
引用発明の「取り付け手段」は「鍔14,15」と「ファイバ12、13の端部」を「それぞれ固着」するものであるから、「鍔14,15」に伝達された「圧電素子」の伸縮変位を、「光ファイバ18」の「長さ」方向の伸縮変位、すなわち長手方向の伸縮変位として、伝達するものである。
よって、引用発明の「取り付け手段」は、本件補正発明の「取付け部」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備える。

オ 本件補正発明の「前記保持部材は、前記圧電素子の一端面が固定される第1のヘッドピースと、前記圧電素子の他端面が固定される第2のヘッドピースと、前記第1のヘッドピースおよび前記第2のヘッドピースに架け渡されるように設けられ、前記圧電素子に圧縮力を与えるとともに前記圧電素子の伸縮変位に対応して伸縮する直線状をなす圧縮力付与部とを有する」との特定事項について
引用発明は「鍔14,15の間に圧電アクチュエータ16が固着され」るものであるから、引用発明の「鍔14,15」は「圧電素子」の一端面及び他端面を固定するものであるといえる。
よって、引用発明の「鍔14,15」は、本件補正発明の「第1のヘッドピース」及び「第2のヘッドピース」に相当する。
したがって、引用発明は、上記特定事項のうち「前記保持部材は、前記圧電素子の一端面が固定される第1のヘッドピースと、前記圧電素子の他端面が固定される第2のヘッドピースと、を有する」との特定事項を備える。

カ 本件補正発明の「ファイバーストレッチャー」との特定事項について
上記ア(イ)に記載のとおり、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備える。

キ 以上ア?カにより、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致している。

[一致点]
「光ファイバーの光路長を調整するファイバーストレッチャーであって、
所定方向に伸縮変位する圧電素子と、
圧電素子の伸縮変位を前記光ファイバーに伝達する機能を有する保持部材と、
前記圧電素子の伸縮変位が前記光ファイバーの長手方向の伸縮変位として伝達されるよう前記保持部材に前記光ファイバーを取り付ける取付け部と
を有し、
前記保持部材は、前記圧電素子の一端面が固定される第1のヘッドピースと、前記圧電素子の他端面が固定される第2のヘッドピースと、を有するファイバーストレッチャー。」

他方、本件補正発明と引用発明は、次の点で相違する。

[相違点]
保持部材について、本件補正発明は、「前記第1のヘッドピースおよび前記第2のヘッドピースに架け渡されるように設けられ、前記圧電素子に圧縮力を与えるとともに前記圧電素子の伸縮変位に対応して伸縮する直線状をなす圧縮力付与部」を有し、それ故、「前記圧電素子の伸縮方向に圧縮力を与えた状態で前記圧電素子を保持し、前記圧電素子の伸縮に応じて伸縮」するものであるのに対し、引用発明は、上記「圧縮力付与部」に相当する部材を有しない点

(4)判断
ア 相違点について
(ア)引用文献2ないし4に例示されるように、圧電素子は引張力に対する耐性が弱いことから、引張力による圧電素子の破壊を防止することは広く知られた周知の課題であり、引張力による圧電素子の破壊を防止するために、圧電素子を固定するための部材(以下「固定部材」という。)を圧電素子の両端部にそれぞれ配置し、該固定部材間に直線状のバネ部材を架け渡すことで、固定部材から圧電素子に圧縮力を付与しつつ、圧電素子から生じた伸縮変位力を固定部材に伝達する構成は周知(以下「周知の構成」という。)であるといえる。

(イ)上記(ア)によれば、引用発明に触れた当業者であるなら、引用発明の「圧電素子」について上記周知の課題を認識できると考えられるところ、引用発明において、引張力による「圧電素子」の破壊を防止するために、上記周知の構成を採用することは当業者が容易に想到し得たものである。そして、引用発明に上記周知の構成を適用するにあたり、「圧電アクチュエータ16」から発生した伸縮変位を伝達する部材が「鍔14,15」であることを踏まえれば、引用発明の「鍔14,15」は圧電素子を固定するための部材といえ、上記周知の構成の固定部材に相当するから、「鍔14,15」に直線状のバネ部材を架け渡すことで、「鍔14,15」から「圧電素子」に圧縮力を付与しつつ、「圧電素子」から生じた伸縮変位を「鍔14,15」に伝達するように構成することは、当業者にとって適宜採用しうる事項である。そして、このように構成すれば、引用発明に採用される直線状のバネ部材は、本件補正発明の「圧電素子に圧縮力を与えるとともに前記圧電素子の伸縮変位に対応して伸縮する直線状をなす圧縮力付与部」に相当することになる。

(ウ)よって、引用発明に引用文献2ないし4に記載された周知技術を採用することで、相違点に係る構成を得ることに困難はない。

イ 以上によれば、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果は、引用発明、引用文献2ないし4に記載された周知技術から予測し得る程度のものであって格別なものということはできない。

エ 請求人の主張について
(ア)請求人は令和2年5月8日に提出された審判請求書の「(i)請求項1に係る発明について」において、本件補正発明は「保持部材が第1のヘッドピースと第2のヘッドピースとの間に圧縮力付与部材がかけ渡された剛性が高い構造であるため」、引用発明のように「圧電素子16の出力変位の直進性が損なわれた場合に鍔14と鍔15の間にずれが生じやすいという問題が生じず、ファイバーストレッチャーの変位の直進性を確保して光ファイバーの光路長の調整精度を高くすることができ」る旨主張するとともに、令和2年9月18日に提出された上申書の「2.前置報告書に対する反論」において、本件補正発明は、圧電素子が単独では「直進性」が損なわれた場合であっても、「圧縮力付与部が、ヘッドピースにかけ渡されるように、直線状に圧電素子と並行に設けられた直線状をなす点」と「当該圧縮力付与部は剛性を有し、比較的強度が高く、耐候性や耐食性に優れたもの、例えば、インバー合金、スーパーインバー合金、炭素繊維、あるいはステンレス鋼で構成される点」から、「圧縮力付与部によりファイバーストレッチャーの出力変位の「直進性」が確保され」る旨主張する。

(イ)上記主張について検討する。
請求人は、本件補正発明は引用発明とは異なり、「保持部材が第1のヘッドピースと第2のヘッドピースとの間に圧縮力付与部材がかけ渡された剛性が高い構造である」旨を主張するが、引用発明に引用文献2ないし4に記載された周知技術を採用した結果、上記ア(イ)に記載したように、引用発明は「鍔14,15」にバネ部材が架け渡された構造となり、当該構造は、請求人の主張する上記「剛性が高い構造」と同様の構造を備えることになるから、本件補正発明の効果は、引用発明に上記周知技術を適用することで奏されるものであって、格別のものということはできない。
また、上記上申書で主張する効果については、本件補正発明は「当該圧縮力付与部は剛性を有し、比較的強度が高く、耐候性や耐食性に優れたもの、例えば、インバー合金、スーパーインバー合金、炭素繊維、あるいはステンレス鋼で構成される点」が特定されていないことから、請求項の記載に基づくものとは認められない。

(ウ)したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(5)小括
以上によれば、本件補正発明は、引用発明、引用文献2ないし4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年5月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、令和元年9月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1の[本件補正前]に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、本願の出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
というものである。

引用文献1?4は、上記第2[理由]2(2)の引用文献1?4と同じ。

3 進歩性について
(1)引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「保持部材」について、「前記保持部材は、前記圧電素子の一端面が固定される第1のヘッドピースと、前記圧電素子の他端面が固定される第2のヘッドピースと、前記第1のヘッドピースおよび前記第2のヘッドピースに架け渡されるように設けられ、前記圧電素子に圧縮力を与えるとともに前記圧電素子の伸縮変位に対応して伸縮する直線状をなす圧縮力付与部とを有する」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-01-22 
結審通知日 2021-01-26 
審決日 2021-02-12 
出願番号 特願2015-199099(P2015-199099)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸 智史  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 瀬川 勝久
佐藤 洋允
発明の名称 ファイバーストレッチャー  
代理人 高山 宏志  
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