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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1372600
審判番号 不服2019-10392  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-06 
確定日 2021-03-29 
事件の表示 特願2014- 1054「ブロー成形方法、複合プリフォーム、複合容器およびプラスチック製部材」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月16日出願公開、特開2015-128857〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月7日の出願であって、平成29年11月27日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月29日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月29日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年11月1日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年4月19日付けで平成30年11月1日に提出された手続補正書による手続補正を却下する旨の決定がされると共に拒絶査定がされ、令和1年8月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、同年12月18日に上申書が提出されたものである。

第2 令和1年8月6日に提出された手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年8月6日に提出された手続補正書による手続補正を却下する。

[理由]
1 令和1年8月6日に提出された手続補正書による手続補正の内容
令和1年8月6日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成30年3月29日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項8の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項8の記載への補正を含むものである。なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項8
「【請求項8】
複合プリフォームにおいて、
プラスチック材料製の射出成形品であるプリフォームと、
プリフォームの外側を取り囲むように設けられたプラスチック製部材とを備え、
プラスチック製部材は、プリフォームの外側に接着されることなく密着されていることを特徴とする複合プリフォーム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項8
「【請求項8】
複合プリフォームにおいて、
プラスチック材料製の射出成形品であるプリフォームと、
プリフォームの外側を取り囲むように設けられた貼り合わせ部のない筒状の熱可塑性樹脂を含む多層構造のプラスチック製部材とを備え、
プラスチック製部材は、プリフォームの外側に接着されることなく密着されていることを特徴とする複合プリフォーム。」

2 本件補正の適否
(1)本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項8については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項8に係る発明の発明特定事項である「プラスチック製部材」について、「貼り合わせ部のない筒状の熱可塑性樹脂を含む多層構造の」ものと限定するものであり、しかも、本件補正前の特許請求の範囲の請求項8に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項8に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の請求項8については、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。

(2)独立特許要件の検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項8に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、検討する。

ア 引用文献2に記載された事項等
(ア)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特公昭62-5779号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「ボトルの製造方法」に関して、おおむね次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

・「特許請求の範囲
1 ポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソンの少なくとも胴壁部に、ガスバリヤー性で、かつ熱収縮性のプラスチツクフイルムよりなるチユーブを緩挿し、次いで少なくとも該胴壁部を延伸温度に加熱し、該加熱に伴って該チユーブを熱収縮により少なくとも該胴壁部外面に密着せしめ、その後、2軸延伸-吹込成形を行なうことを特徴とする、少なくとも肩部および胴部外面に該ガスバリヤー性プラスチツクフイルムが被着したポリエチレンテレフタレートボトルの製造方法。」(第1ページ第1欄第1ないし12行)

・「第1図において1はポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソンであつて、通常射出成形によつて形成される。2はガスバリヤー性プラスチツクフイルム(例えば厚さ10?50μmのポリ塩化ビニリデン系フイルム;単位厚さの炭酸ガス、酸素ガス等に対するバリヤー性がポリエチレンテレフタレートの夫より大きいプラスチツクのフイルム)よりなるチユーブであって、例えばインフレーシヨン法によつて形成された継目無しの長尺チユーブを、パリソン1の胴壁部1aの高さにほぼ等しい長さに切断したものである。その内径は胴壁部1aの外径より若干大きい。
第1図はチユーブ2を倒立したパリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿し、ネツクリング1b上に載置した状態を示す。次にこのパリソン1を延伸-吹込成形のため延伸温度すなわち約80?100℃の範囲内の所定温度に、赤外線照射あるいはオーブン通過等によつて加熱する。このさいチユーブ2は熱収縮して、第2図に示すように、パリソン1の胴壁部1aの外面に密着する。チユーブの内径を初めから胴壁部1aの外径に実質的に等しくしておいて、薄いプラスチツクフイルムよりなつていて撓み易いチユーブを胴壁部に密挿することは極めて困難である。しかし以上に述べたように緩挿することは、チユーブが撓み易い場合であっても、比較的容易である。次いで常法により、このチユーブ2が密着したパリソン1を2軸延伸-吹込成形を行なつて、第3図に示すようなボトル3を形成する。
そのさいチユーブ2も同時に変形し、チユーブ2を形成するプラスチツクフイルム2’が、ボトル3の比較的薄肉の(通常約0.2?0.3mm)胴部3aおよび肩部3bに密着した状態で該部を被覆する。」(第2ページ第3欄第9行ないし第4欄第1行)

・「場合により、チユーブ2を2重又は3重に形成してもよい。」(第2ページ第4欄第7及び8行)

・「低コストかつ高い生産性で、ガスバリヤー性の優れたポリエチレンテレフタレートボトルを製造することができるという効果を奏する。」(第2ページ第4欄第25ないし28行)

・「



(イ)引用発明
引用文献2に記載された事項を整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「チューブ2が密着した有底パリソン1において、
射出成形によって形成されるポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソン1と、
継目無しのポリ塩化ビニリデン系のガスバリヤー性プラスチックフィルムよりなるチューブ2とを備え、
チューブ2は、有底パリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿され、約80?100℃の範囲内の所定温度に加熱され、熱収縮されることにより、有底パリソン1の胴壁部1aの外面に密着されているチューブ2が密着した有底パリソン1。」

イ 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明における「チューブ2が密着した有底パリソン1」は本願補正発明における「複合プリフォーム」に相当する。
引用発明における「射出成形によって形成されるポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソン1」は本願補正発明における「プラスチック材料製の射出成形品であるプリフォーム」に相当する。
引用発明における「継目無しのポリ塩化ビニリデン系のガスバリヤー性プラスチックフィルムよりなるチューブ2」は、「有底パリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿」されるものであるから、本願補正発明における「プリフォームの外側を取り囲むように設けられた貼り合わせ部のない筒状の熱可塑性樹脂を含む多層構造のプラスチック製部材」と、「プリフォームの外側を取り囲むように設けられた貼り合わせ部のない筒状の熱可塑性樹脂を含むプラスチック製部材」という限りにおいて一致する。
引用発明における「チューブ2」は、「加熱され、熱収縮されることにより、有底パリソン1の胴壁部1aの外面に密着されている」ものであるが、「約80?100℃の範囲内」というポリエチレンテレフタレートの融点(高分子の分子量や結晶化度などにより若干変化するものの約260℃)及びポリ塩化ビニリデンの融点(同じく約212℃)より低い加熱温度からみて、「チューブ2」が「有底1の胴壁部1aの外面」に接着されないことは明らかであるし、そもそも、「チューブ2」が「接着」されるとは特定されていないから、引用発明における「有底パリソン1の胴壁部1aの外面に密着されているチューブ2が密着した有底パリソン1」は本願補正発明における「プラスチック製部材」が「プリフォームの外側に接着されることなく密着されている」「複合プリフォーム」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「複合プリフォームにおいて、
プラスチック材料製の射出成形品であるプリフォームと、
プリフォームの外側を取り囲むように設けられた貼り合わせ部のない筒状の熱可塑性樹脂を含むプラスチック製部材とを備え、
プラスチック製部材は、プリフォームの外側に接着されることなく密着されている複合プリフォーム。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点>
「プラスチック製部材(チューブ2)」に関して、本願補正発明においては、「多層構造の」と特定されているのに対し、引用発明においては、そのようには特定されていない点。

ウ 判断
そこで、上記相違点について、検討する。
引用文献2に「チユーブ2を2重又は3重に形成してもよい。」(第2ページ第4欄第7及び8行)と記載されていることから、引用発明において、「チューブ2」は「2重又は3重」、すなわち多層構造に形成されているといえ、上記相違点は実質的な相違点であるとはいえない。

仮に、上記相違点が実質的なものであるとしても、引用文献2に「チユーブ2を2重又は3重に形成してもよい。」と記載されているから、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるし、また、プリフォームの外表面を覆うフィルムを多層とすることは周知技術(必要であれば、原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2009-241979号公報の下記の記載を参照。)であることからも、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、「プラスチック製部材の種類や形状を適宜選択することにより、複合容器に様々な機能や特性を付与することができる」(本願明細書の【0029】)という本願補正発明の効果は、引用文献2の「低コストかつ高い生産性で、ガスバリヤー性の優れたポリエチレンテレフタレートボトルを製造することができるという効果を奏する。」(第2ページ第4欄第25ないし28行)及び特開2009-241979号公報の「ゆえに、本願発明によって得られる延伸フィルム被覆容器は、ガスバリア性、ヘイズが従来品と同等の機能を有し、かつスジの発生が抑制され、鮮明性に優れることが明らかである。」(【0073】)という記載から当業者が予測可能なものであるから、本願補正発明は、引用発明及び周知技術からみて格別顕著な効果を奏するものであるとはいえない。

<特開2009-241979号公報の記載>
・「【0038】
(フィルムの製造方法)
本発明では、熱可塑性樹脂からなる中空ボトルの外層表面に、下記の一般式(1)で表される1,2-ジオール構造単位を有するエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが被覆密着してなるものであり、かかるフィルムは上記構造単位(1)を含有するEVOH樹脂層のみで用いることも可能だが、さらに強度を上げたり他の機能を付与したりするため、通常は他の熱可塑性樹脂と積層した多層フィルムを用いる。」

・「【0061】
実施例1
(1)フィルムの作製
・・・(略)・・・熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/変性EVOH層/接着性樹脂層(同左)/熱可塑性樹脂層(同左)の層構成(厚み80/20/40/20/80μm)の多層フィルムを共押出によって得た。
・・・(略)・・・
【0063】
(2)プリフォームの作製
熱可塑性樹脂として、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート系樹脂(ベルポリエステルプロダクツ社製『Bellpet IFG8L』)を用い、・・・(略)・・・プリフォームを射出成形した。
・・・(略)・・・
【0065】
(3)延伸ブロー
(2)で得られたプリフォームの外表面を、(1)で作製したフィルムで覆った。
かかるフィルム被覆プリフォームを、以下の条件で延伸し、・・・(略)・・・延伸フィルム被覆容器を作成した。」

・「【0073】
ゆえに、本願発明によって得られる延伸フィルム被覆容器は、ガスバリア性、ヘイズが従来品と同等の機能を有し、かつスジの発生が抑制され、鮮明性に優れることが明らかである。」

エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書第8ページ第2ないし7行において、本願発明の効果について以下を旨とする主張をする。
(a)「ブロー成形時に、プラスチック製部材の周方向の特定の箇所に力が集中することがなく、周方向均一にプラスチック製部材を延伸することができる。」
(b)「さらに、プラスチック製部材が多層構造からなることにより、例えば成形性の低いガスバリア性材料の層を成形性の良好な層で挟むことができ、成形性の低いガスバリア性材料を単層で用いる場合と比較して、成形性を高めることができる。」
そこで、検討する。
上記(a)の主張については、引用発明が「継目無し」の「長尺チユーブ」を用いるものであり、継目の無いものが継目のあるものと比べて、周方向の特定の箇所に力が集中することがなく、周方向に均一に延伸することができるという効果を奏することは、当業者に自明であり、格別顕著な効果とはいえない。
上記(b)の主張については、特開2009-241979号公報の「さらに強度を上げたり他の機能を付与したりするため、通常は他の熱可塑性樹脂と積層した多層フィルムを用いる。」(【0038】)という記載から当業者が予測可能なものにすぎず、格別顕著な効果とはいえない。
したがって、上記主張は採用できない。

オ まとめ
したがって、本願補正発明は引用発明、すなわち引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、また、本願補正発明は引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年8月6日に提出された手続補正書による手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし22に係る発明は、平成30年3月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)の【請求項8】に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項8に係る発明は、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である引用文献2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3項に該当し特許を受けることができないものであるか又は引用文献2に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献2に記載された事項等
引用文献2に記載された事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)ア(ア)及び(イ)のとおりである。

4 対比・判断
上記第2[理由]1及び2(1)のとおり、本願補正発明は本願発明の発明特定事項である「プラスチック製部材」について、「貼り合わせ部のない筒状の熱可塑性樹脂を含む多層構造の」という限定をしたものである。すなわち、本願発明は、本願補正発明から上記限定を削除したものである。
そして、上記限定により、本願補正発明と引用発明を対比した際の相違又は一応の相違である「多層構造の」という特定の有無に関する相違点が生じるものであるが、上記特定のない本願発明と引用発明との間には相違点はないことになる。
したがって、本願発明は引用発明、すなわち引用文献2に記載された発明であるし、また、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
したがって、本願発明は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 結語
上記第3のとおり、本願発明、すなわち請求項8に係る発明は、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2021-01-22 
結審通知日 2021-01-26 
審決日 2021-02-12 
出願番号 特願2014-1054(P2014-1054)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C)
P 1 8・ 113- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 祢屋 健太郎  
特許庁審判長 細井 龍史
特許庁審判官 加藤 友也
神田 和輝
発明の名称 ブロー成形方法、複合プリフォーム、複合容器およびプラスチック製部材  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  
代理人 村田 卓久  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  
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