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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S |
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管理番号 | 1372602 |
審判番号 | 不服2020-1660 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-02-06 |
確定日 | 2021-03-30 |
事件の表示 | 特願2016-109835「非接触自由空間光リンク用の光電モジュール、関連するマルチチャネルモジュール、関連する相互接続システム、基板の製造及び接続方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-225631〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年6月1日(パリ条約による優先権主張2015年6月2日、仏国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年10月25日付け:拒絶理由通知書(同年10月29日発送) 平成31年 4月23日 :意見書の提出 令和 元年 9月27日付け:拒絶査定(同年10月7日送達) 令和 2年 2月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成2年2月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成2年2月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項3】 電子基板からの電気信号を自由空間内を伝播する光信号に変換する又はその逆のための光電モジュールを電子アプリケーション基板上に接続する方法であって、 前記光電モジュールが、 基材と電子回路を備え、電子アプリケーション基板とのインターフェースとして機能するための電子基板(1)と、 光電部品を制御するのに適した電子制御部品(2)であって、前記電子基板上に直接取り付けられていて且つ前記電子回路に電気的に接続されている電子制御部品と、 上面を介して光信号を送受信するのに適した光電部品(3)であって、前記電子制御部品の頂部に直接取り付けられていて且つ電子部品に電気的に接続されている光電部品と、 光信号を送信するのに適した光デバイス(9)と、 光デバイス支持体(10)であって、前記光デバイスと前記光電部品との間の機械的整列を保証するように前記電子基板上に直接取り付けられている光デバイス支持体との積層体を含み、 前記電子基板の基材の上面、又は下面、又は少なくとも一つの側面に形成された第三のグループのパターンを用いて、前記電子アプリケーション基板に対して前記光電モジュールを機械的に整列させて、整列済みの前記光電モジュールを前記電子アプリケーション基板上に直接取り付けるステップを含む方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、特許請求の範囲の請求項1及び請求項21は次のとおりである。 「【請求項1】 電子基板からの電気信号を自由空間内を伝播する光信号に変換する又はその逆のための光電モジュール(M)であって、 電子アプリケーション基板とのインターフェースとして機能するための電子基板(1)と、 光電部品を制御するのに適した電子制御部品(2)であって、前記電子基板上に直接取り付けられていて且つ電子回路に電気的に接続されている電子制御部品と、 上面を介して光信号を送受信するのに適した光電部品(3)であって、前記電子制御部品の頂部に直接取り付けられていて且つ電子部品に電気的に接続されている光電部品と、 光信号を送信するのに適した光デバイス(9)と、 光デバイス支持体(10)であって、前記光デバイスと前記光電部品との間の機械的整列を保証するように前記電子基板上に好ましくは接着又はろう付けによって直接取り付けられている光デバイス支持体との積層体を含む光電モジュール。 【請求項21】 請求項1に記載の光電モジュールを電子アプリケーション基板上に接続する方法であって、第三のグループのパターンを用いて、前記電子アプリケーション基板に対して前記光電モジュールを機械的に整列させて、整列済みの前記光電モジュールを前記電子アプリケーション基板上に直接取り付けるステップを含む方法。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の、請求項1を引用する請求項21に係る発明を独立請求項として書き改め、本件補正前の請求項21に係る発明を特定するために必要な事項である「第三のグループのパターン」について、「電子基板の基材の上面、又は下面、又は少なくとも一つの側面に形成された」との限定を付加して、本件補正後の請求項3とするものであって、補正前の請求項21に係る発明と補正後の請求項3に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項3に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)のとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1に記載された事項 (ア) 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2005-538550号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。 「【0015】 図1Aは、本発明の一実施例による1つの半導体ダイ・パッケージ10の1つの透視図であり、図1Bは、図1Aの半導体パッケージの1つの組立分解透視図である。図1Aおよび1Bを参照するに、本発明の発光ダイ・パッケージは、1つの底部ヒート・シンク20、1つの上部ヒート・シンク40、および1つのレンズ50を含む。」 「【0016】 底部ヒート・シンク20は、図2Aから2D中にさらに詳しく図示されている。図2A,2B,2Cおよび2Dは、それぞれ、図1Aの底部ヒート・シンクの1つの平面図、1つの側面図、1つの正面図、および1つの底面図を示す。さらに、図2Cもまた、底部ヒート・シンク20の正面図に加えて、1つのLEDアセンブリ60を示す。LEDアセンブリ60はまた、図1B中に図示されている。図1Aから2Dまでを参照し、底部ヒート・シンク20は、複数の電気的トレース22および24、複数の半田パッド26,32、および34、およびLEDアセンブリ60のための支持を提供する。このため、底部ヒート・シンク20はまた、1つの基板20とも言及される。これらの図中、混乱をさけるために、複数の半田パッド26,32、および34のみが代表的に参照番号で指示される。トレース22および24ならびに32,34および36は、導電材料を使って製造されうる。さらに、複数の追加的なトレースおよび接続が、基板20の上、横、または底の上に、基板20内部に層として製造可能である。トレース22および24ならびに32,34および36、およびどの他の接続も、例えば複数のバイヤ・ホールのような公知の複数の方法を使って任意の組合せで互いに接続され得る。」 「【0018】 図示された実施形態においては、基板20は、1つの上面21を有し、この上面21は電気的トレース22および24を含む。トレース22および24は、半田パッド(例えば、上部半田パッド26)から1つの取り付けパッド28までの複数の電気的接続を提供する。上部半田パッド26は、トレース22および24の部分であり、概して、基板20の複数の側に近い。上部半田パッド26は、複数の側面半田パッド32に電気的に接続されている。取り付けパッド28は、LEDアセンブリ60が取り付けけられる上面(トレース22、トレース24または両方を含む)の一部である。通常、取り付けパッド28は、概して、上面21の中心近くに位置する。本発明の別の実施形態においては、LEDアセンブリ60は他の複数の半導体回路または複数のチップによって取替えることができる。」 「【0019】 トレース22および24は、LEDアセンブリ60に半田パッド26,32、または34への電気的接続を可能にする電気的経路を提供する。したがって、トレースのいくらかは第1トレース22と呼ばれる一方、複数の他のトレースは、複数の第2トレース24と呼ばれる。図示された実施形態においては、取り付けパッド28は、第1トレース22および第2トレース24の両方の複数の部分を含む。図示された実施形態においては、LEDアセンブリ60は、取り付けパッド28の第1トレース22上に置かれ、これによって第1トレース22との接触を行う。図示された実施形態においては、LEDアセンブリ60および第2トレース24の上部は、互いに1つのボンド・ワイヤ62によって接続される。LEDアセンブリ60の構造と方向によって、複数の第1トレース22は、複数の陽極(正)接続を提供することができ、複数の第2トレース24は、LEDアセンブリ60(または逆)のための複数の陰極(負)接続を含むことができる。」 「【0020】 LEDアセンブリ60は、複数の追加的な要素を含むことができる。例えば、図1Bおよび図2Cにおいて、LEDアセンブリ60は、LEDボンド・ワイヤ62、1つのLEDサブアセンブリ64、および1つの発光ダイオード(LED)66を含めて図示されている。このようなLEDサブアセンブリ64は、この業界で公知であり、本発明を論ずる目的で図示されているが、本発明の1つの限界を示すものではない。図中、LEDアセンブリ60は、基板20にダイ取り付けされて示されている。代替的な実施形態において、取り付けパッド28は、LEDアセンブリ60のフリップ・チップ取り付けを可能にするように構成されうる。加えて、複数のLEDアセンブリが取り付けパッド28上に取り付け可能である。代替的な実施形態において、LEDアセンブリ60は複数のトレース上に取り付け可能である。フリップ・チップ技法を使用すれば、これは特に真実味を増す。」 「【0021】 …(前略)…。図1Aおよび2Aは、1つの方向付マーキング27を図示する。このような複数のマーキングは、ダイ・パッケージ10の組立後でも、ダイ・パッケージの適切な方向付けを特定するのに使用可能である。方向付けマーキング27は、1つのバイヤまたは1つのスルー・ホールではない。トレース22および24は、図示のとおり、取り付けパッド28から基板20の複数の側に伸びる。」 「【0027】 上部ヒート・シンク40は、取り付けパッド28(図2Aおよび2Cの)上に取り付けけられたLEDアセンブリ60を略囲む1つの反射面42を含みうる。上部ヒート・シンク40がダイ・パッケージ10中のLEDによって生成された熱を拡散するのに使われるとき、それは1つの外部ヒート・シンク上に1つの接着剤または半田接合によって直接”上部取り付け”され、熱を効果的に発散させ得る。…(後略)…。」 「【0028】 反射面42は、複数のサンプル光線63によって図示されるLEDアセンブリ60からの光の複数の部分を反射する。光の他の複数の部分は、サンプル光線61によって図示されるようには反射面42によって反射されない。説明用の光線61および63は、光学的技術でよく使われる光トレースを意味しない。光の効果的な反射のためには、上部ヒート・シンク40は、磨くことのできる材料、鋳造することのできる材料またはモールドすることのできる材料、またはこれらの組合せから作られることが好ましい。あるいは、高い反射率を実現するために、光学的な反射面42または全体ヒート・シンク40を、メッキするか、銀、アルミニウム、またはこの目的を果たす任意の物質のような高反射率材料で堆積することができる。このため、上部ヒート・シンク40はまた、1つの反射板40と呼ばれる。反射板40は、パッケージ10の熱的性能によって要求されるときには高熱導電性を有する材料から作られる。実施形態によって図示するように、反射板42は、例えば、反射板の水平面に関して45°の1つの角度をなす1つの平面として図示される。本発明は、説明用の実施形態に限定されるものではない。例えば、反射面42は、反射板の水平面に関して1つの異なる角度をなすようにできる。あるいは、反射板は、1つの放物線面、円錐曲線回転面またはパッケージの所望のスペクトル発光性能を満たす助けになる任意の他の形状を持つことができる。」 「【0029】 反射板40は、レンズ50を支持し、それと結合する1つの棚44を含む。LEDアセンブリ60は、例えば、軟質プラスチック・シリコーンまたはポリマのようなエンカプセレーション材料46を使ってダイ・パッケージ10(図1Aおよび1B)内にカプセル化される。エンカプセレーション材料46は、高光伝導性およびレンズ50の屈折率に整合するか近似する屈折率を有する高温ポリマが好ましい。カプセル材46は、その光伝導性または透明度を変える複数の殆どの波長によって影響されないものが好ましい。」 「【0032】 図4は、1つの外部ヒート・シンク70に結合されたダイ・パッケージ10を図示する。図4を参照するに、熱接点パッド36は、エポキシ、半田、または任意の他の熱伝導接着剤、導電接着剤、または熱電導接着剤74を使って外部ヒート・シンク70に取り付け可能である。外部ヒート・シンク70は、1つのプリント回路ボード(PCB)またはダイ・パッケージ10から熱を引出す他の構造にできる。外部ヒート・シンクは、様々な構成での複数の回路要素(示さず)または複数の熱拡散フィン72を含み得る。」 「図1A 」 「図1B 」 「図2C 」 「図3 」 (イ) 引用文献1に記載された技術的事項 a 引用文献1の【0032】の記載より、引用文献1には、「外部ヒート・シンク70に結合されたダイ・パッケージ10」が記載されており、「発光ダイ・パッケージ10」を「外部ヒート・シンク70」に「取り付け」る工程を備えていることは明らかであるから、引用文献1には、「発光ダイ・パッケージ10を外部ヒート・シンク70に結合する方法」が、記載されていると認められる。 b 引用文献1の【0019】?【0020】の記載を参酌して図2Cをみれば、図2Cから、「LEDアセンブリ60」に含まれる「1つのLEDサブアセンブリ64」は、「1つの底部ヒート・シンク20(1つの基板20)」上に直接取り付けられ、且つ「電気的トレース22」に電気的に接続されている構成がみてとれる。また、「1つの発光ダイオード(LED)66」は、「1つのLEDサブアセンブリ64」の頂部に直接取り付けられ、且つ「1つのLEDサブアセンブリ64」に電気的に接続されている構成がみてとれる。 c 引用文献1の図1A及び図1Bから、「上部ヒート・シンク40(1つの反射板40)」は、「底部ヒート・シンク20(1つの基板20)」上に直接取り付けられている構成がみてとれる。 (ウ) 上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「発光ダイ・パッケージ10を外部ヒート・シンク70に結合する方法であって、 外部ヒート・シンク70は、1つのプリント回路ボード(PCB)であり、 発光ダイ・パッケージ10は、1つの底部ヒート・シンク20、1つの上部ヒート・シンク40、および1つのレンズ50を含み、 底部ヒート・シンク20はまた、1つの基板20とも言及され、 上部ヒート・シンク40はまた、1つの反射板40と呼ばれ、 底部ヒート・シンク20は、複数の電気的トレース22および24、複数の半田パッド26,32、および34、およびLEDアセンブリ60のための支持を提供し、 LEDアセンブリ60は、LEDボンド・ワイヤ62、1つのLEDサブアセンブリ64、および1つの発光ダイオード(LED)66を含み、 1つのLEDサブアセンブリ64は、1つの底部ヒート・シンク20上に直接取り付けられ、且つ電気的トレース22に電気的に接続され、 1つの発光ダイオード(LED)66は、1つのLEDサブアセンブリ64の頂部に直接取り付けられ、且つ1つのLEDサブアセンブリ64に電気的に接続され、 LEDアセンブリ60は他の複数の半導体回路または複数のチップによって取替えることができ、 トレース22および24ならびに32,34および36は、導電材料を使って製造され、 トレース22および24は、LEDアセンブリ60に半田パッド26,32、または34への電気的接続を可能にする電気的経路を提供し、 LEDアセンブリ60は、取り付けパッド28の第1トレース22上に置かれ、これによって第1トレース22との接触を行い、 LEDアセンブリ60は、基板20にダイ取り付けされ、 上部ヒート・シンク40は、取り付けパッド28(図2Aおよび2Cの)上に取り付けけられたLEDアセンブリ60を略囲む1つの反射面42を含み、 反射板40は、レンズ50を支持し、それと結合する1つの棚44を含み、 上部ヒート・シンク40は、底部ヒート・シンク20上に直接取り付けられており、 ダイ・パッケージ10の組立後でも、ダイ・パッケージの適切な方向付けを特定するのに使用可能である1つの方向付マーキング27を含む、方法。」 イ 引用文献2 (ア) 同じく原査定に、引用文献8(周知技術を示す文献)として引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表平6?505575号公報には、次の記載がある。 「図1は、本発明による光学送信機モジュール2を有する電気信号/光学信号トランスレータの平面図である。送信機モジュール2は、少なくとも1つのレーザ源エレメント6と、その上に取り付けられた電気光学変調器8とを有する送信機モジュール基板4を有する。基板4は、シリコンまたはガリウムヒ素のような半導体及び薄膜の製造技術の基板として適当な電気的絶縁材料からなる。 レーザエレメント6は、レーザダイオードエレメントまたはレーザダイオードアレイのような小型のサブモジュールとしてパッケージされた適当な固体レーザからなる。電気光学変調器エレメント8は、電気入力信号に比例して光伝送を変化させ、電気吸収タイプの変調器のような小型のサブモジュールとしてパッケージすることができる適当な電気光学変調器からなる。 レーザエレメント6の出力レベルは、基板4上に取り付けられるフォトディテクタエレメント10によって監視されるのが有利である。フォトディテクタエレメント10は、ガリウムヒ素からつくられた光電検出器のような小型のサブモジュールとしてパッケージすることができる適当な固体光電素子からなる。」(第5頁左下欄第1行?第14行) 「本発明によれば、接着パッド32のような付加的な金属パターンは、レーザエレメント6,変調器エレメント8及びフォトディテクタエレメント10の基板4への取り付けを容易にするために基板4上につくられる。接着パッド32の上面は、はんだまたは溶接によってレーザエレメント6,変調器エレメント8及びフォトディテクタエレメント10の隣接する各下面に接着される。」(第5頁右下欄第16行?第29行) 「本発明によれば、レーザエレンメント6、変調器エレメント8及びフォトディテクタ10の基板4への位置決めは、基板に設けられた特別の整合マークを、各素子に設けられた整合マークであってそれ自体各素子の光軸と整合させる助けとなる特別の整合マークに整合させることによって助長される。 第4図は、フォトディテクタエレメント10の下の基板4の領域上の整合部分の詳細な平面図である。第5図は、本発明による整合部分を示すフォトディテクタエレメント10の底面図である。フォトディテクタエレメント10の整合は、基板4の上面に設けられた基板整合マーク34をフォトディテクタエレメント10の下面に設けられた対応する部品上の整合マーク36と整合させるによって実行される。」(第6頁左下欄第15行?第24行) (イ) 上記の記載から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。 「光電変換エレメントの回路基板への位置決めは、当該光電変換エレメントに設けられた整合マークを用いて行われること。」 (3)引用発明との対比 ア 以下、本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア) 引用発明の「発光ダイ・パッケージ10」は、本件補正発明の「光電モジュール」に相当する。 また、当該「発光ダイ・パッケージ10」は、「LEDアセンブリ60」を備えており、当該「LEDアセンブリ60」は、「底部ヒート・シンク20(1つの基板20)」が支持する「複数の電気的トレース22および24、複数の半田パッド26,32、および34」からなる「電気的経路」により「電気的接続を可能」とされている。 したがって、引用発明の「発光ダイ・パッケージ10」は、本件補正発明の「電子基板からの電気信号を自由空間内を伝播する光信号に変換する」との機能を有するといえる。 (イ) 引用発明の「外部ヒート・シンク70(プリント回路ボード(PCB))」は、本件補正発明の「電子アプリケーション基板」に相当する。 (ウ) 引用発明の「発光ダイ・パッケージ10」に含まれる、「1つの底部ヒート・シンク20(1つの基板20)」、「1つの上部ヒート・シンク40」及び「1つのレンズ50」は、それぞれ本件補正発明の「電子基板(1)」、「光デバイス支持体(10)」及び「光デバイス(9)」に相当する。 (エ) 引用発明の「1つの底部ヒート・シンク20(1つの基板20)」は、「複数の電気的トレース22および24、複数の半田パッド26,32、および34」を支持しているところ、「半田パッド34」により「外部ヒート・シンク70(プリント回路ボード(PCB))」と電気的接続を得ていることは明らかである。 したがって、引用発明の「1つの底部ヒート・シンク20(1つの基板20)」は、本件補正発明の「基材と電子回路を備え、電子アプリケーション基板とのインターフェースとして機能するための」基板といえる。 (オ) 引用発明の「LEDアセンブリ60」は、「1つのLEDサブアセンブリ64」及び「1つの発光ダイオード(LED)66」を含むところ、当該「1つの発光ダイオード(LED)66」は、本件補正発明の「光電部品」に相当する。 (カ) 引用発明の「1つのLEDサブアセンブリ64」は、「1つの底部ヒート・シンク20上に直接取り付けられ、且つ電気的トレース22に電気的に接続され」ている。 一方、本件補正発明の「電子制御部品(2)」は、「前記電子基板上に直接取り付けられていて且つ前記電子回路に電気的に接続され」ている。 ここで、上記両者の構成を対比してみれば、引用発明と本件補正発明とは、「前記電子基板上に直接取り付けられていて且つ前記電子回路に電気的に接続されている介在部品」を備える点で一致するといえる。 (キ) 引用発明の「1つの発光ダイオード(LED)66」が、その上面から光を放射していることは明らかであるから、当該「1つの発光ダイオード(LED)66」は、本件補正発明の「上面を介して光信号を送受信するのに適した」との構成を満たすといえる。 (ク) 引用発明の「1つの発光ダイオード(LED)66」は、「1つのLEDサブアセンブリ64上に直接取り付けられ、且つ1つのLEDサブアセンブリ64に電気的に接続され」ている。 一方、本件補正発明の「光電部品(3)」は、「前記電子制御部品の頂部に直接取り付けられていて且つ電子部品に電気的に接続され」ている。 ここで、上記特定事項において規定されている「電子部品」について、本件の発明の詳細な説明には、次の記載がある。 「【0025】 また、本発明に係る光電モジュールは受信器モジュールも構成し得て、電子制御部品はトランスインピーダンス増幅器であって、光電部品はフォトダイオード、特にPINフォトダイオードである。」 「【0065】 本発明に係る光電モジュールは、図4に示されるような受信器モジュールでもあり得て、この場合、光電部品3はPINフォトダイオードであり、電子部品2はフォトダイオード用のトランスインピーダンス増幅器である。」 当該記載を参酌すると、上記「電子部品」は「電子制御部品」を示すものと解することが相当である。 したがって、上記(カ)と併せてみれば、引用発明と本件補正発明とは、「前記介在部品の頂部に直接取り付けられていて且つ介在部品に電気的に接続されている光電部品」を備える点で一致するといえる。 (ケ) 引用発明の「1つのレンズ50」は、光の向きを変更する光学要素であるから、本件補正発明の「光信号を送信するのに適した」との事項を備えるものといえる。 (コ) 引用発明の「上部ヒート・シンク40(1つの反射板40)」は、「レンズ50を支持」する部材であるところ、「上部ヒート・シンク40(1つの反射板40)」と「レンズ50」とは積層された構成であって、「上部ヒート・シンク40(1つの反射板40)」は、「底部ヒート・シンク20(1つの基板20)上に直接取り付けられている」部材である。 また、「1つの発光ダイオード(LED)66」は、発光強度が最大となる光軸を有しているところ、当該発光ダイオードの上部に「レンズ50」が配置される構成であることに鑑みれば、「1つの発光ダイオード(LED)66」の光軸と「レンズ50」の光軸とは、当然に一致させられるものである。 してみると、「レンズ50」を支持する「上部ヒート・シンク40(1つの反射板40)」が、「1つの発光ダイオード(LED)66」の光軸と「レンズ50」の光軸とが一致するように位置決めされ、「底部ヒート・シンク20(1つの基板20)」上に載置されていることは、明らかである。 したがって、引用発明は、本件補正発明の「光デバイス支持体(10)であって、前記光デバイスと前記光電部品との間の機械的整列を保証するように前記電子基板上に直接取り付けられている光デバイス支持体との積層体」を含むものといえる。 (サ) 引用発明の「発光ダイ・パッケージ10」は電気的接続によって動作する部品である。 また、「発光ダイ・パッケージ10」は、「ダイ・パッケージ10の組立後でも、ダイ・パッケージの適切な方向付けを特定するのに使用可能である1つの方向付マーキング27を含む」ことから、「発光ダイ・パッケージ10」の取り付けに際して、「1つの方向付マーキング27」を用いて極性を判断し、取り付けを行っていることは明らかである。 そして、「外部ヒート・シンク70」は、「1つのプリント回路ボード(PCB)」であって、上面にプリント回路が形成されているものであり、「発光ダイ・パッケージ10」と電気的に接続されるものである。 してみると、「発光ダイ・パッケージ10」は「外部ヒート・シンク70(1つのプリント回路ボード(PCB))」上のプリント回路に、電気的に接続するように位置決めされて、取り付けられることは明らかである。 また、「発光ダイ・パッケージ10」が、光軸を有する発光装置であることからみても、「外部ヒート・シンク70(1つのプリント回路ボード(PCB))」への取り付けに際して、光軸合わせのための位置決めが行われることは明らかである。 したがって、引用発明と本件補正発明とは、「前記電子アプリケーション基板に対して前記光電モジュールを機械的に整列させて、整列済みの前記光電モジュールを前記電子アプリケーション基板上に直接取り付けるステップを含む」点で一致するといえる。 (シ) 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「電子基板からの電気信号を自由空間内を伝播する光信号に変換する又はその逆のための光電モジュールを電子アプリケーション基板上に接続する方法であって、 前記光電モジュールが、 基材と電子回路を備え、電子アプリケーション基板とのインターフェースとして機能するための電子基板(1)と、 介在部品であって、前記電子基板上に直接取り付けられていて且つ前記電子回路に電気的に接続されている介在部品と、 上面を介して光信号を送受信するのに適した光電部品(3)であって、前記介在部品の頂部に直接取り付けられていて且つ介在部品に電気的に接続されている光電部品と、 光信号を送信するのに適した光デバイス(9)と、 光デバイス支持体(10)であって、前記光デバイスと前記光電部品との間の機械的整列を保証するように前記電子基板上に直接取り付けられている光デバイス支持体との積層体 を含み、 前記電子アプリケーション基板に対して前記光電モジュールを機械的に整列させて、整列済みの前記光電モジュールを前記電子アプリケーション基板上に直接取り付けるステップを含む方法。」 <相違点1> 介在部材につき、本件補正発明が、光電部品を制御するのに適した「電子制御部品(2)」であるのに対して、引用発明では、「LEDサブアセンブリ64」であって、具体的な構成は不明である点。 <相違点2> 本件補正発明は、「前記電子基板の基材の上面、又は下面、又は少なくとも一つの側面に形成された第三のグループのパターンを用いて」、位置決めを行っているのに対して、引用発明では、「1つの方向付マーキング27」を用いて、「発光ダイ・パッケージ10」の極性を判断しているものの、位置決めについて、具体的な手段は不明である点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用文献1には、「本発明の別の実施形態においては、LEDアセンブリ60は他の複数の半導体回路または複数のチップによって取替えることができる。」(【0018】)、「このようなLEDサブアセンブリ64は、この業界で公知であり」(【0020】)と記載されている。 そして、電子制御部品(IC、集積回路等)と光半導体素子とを重畳して配置することは周知技術(必要であれば、特開2008-258298号公報(原査定に引用された引用文献2)の【0020】?【0023】,図4?5、特開2006-261380号公報(原査定に引用された引用文献3)の【0020】?【0026】,図1?3、特開平11-87785号公報(原査定に引用された引用文献4)の【0011】?【0013】,図1参照)であって、引用文献1に「他の複数の半導体回路または複数のチップ」と示唆されていることに鑑みれば、引用発明の「LEDサブアセンブリ64」として「電子制御部品」を適用することは、当業者が所望によりなし得る事項である。 イ 相違点2について 位置決めに際して、位置合わせのための印(アライメントマーク、パターン等)を付加することは周知技術(必要であれば、米国特許出願公開第2005/0263841号明細書(原査定に引用された引用文献7)の【0097】?【0115】,図18?27、引用文献2(上記(2)イ)、特開2010-251536号公報(原査定に引用された引用文献9)の【0035】?【0039】,図1?2参照)であり、引用文献2では、レーザエレンメント6、変調器エレメント8及びフォトディテクタ10の基板4への位置決めを、各素子に設けられた整合マークを用いて行っている。 してみると、引用発明の「発光ダイ・パッケージ10」が有する「1つの方向付マーキング27」を用いて、「発光ダイ・パッケージ10」を「外部ヒート・シンク70(1つのプリント回路ボード(PCB))」に対して位置決めを行い、取り付けを行うことは、当業者であれば容易になし得る事項である。なお、当該「1つの方向付マーキング27」は「底部ヒート・シンク20(1つの基板20)」の上面に形成されている。 或いは、引用発明の「底部ヒート・シンク20(1つの基板20)」に、位置決め用のパターンを付加し、当該パターンを用いて、「発光ダイ・パッケージ10」を「外部ヒート・シンク70(1つのプリント回路ボード(PCB))」に対して位置決めを行い、取り付けを行うことは、当業者であれば容易になし得る事項であって、位置決め用のパターンを付加する箇所は、当業者が所望により規定し得るものである。 ウ 判断 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年2月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本願出願時の特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項21に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その「請求項1を引用する請求項21」に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項21に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4、7?9に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特表2005-538550号公報 引用文献2:特開2008-258298号公報 引用文献3:特開2006-261380号公報 引用文献4:特開平11-87785号公報 引用文献7:米国特許出願公開第2005/0263841号明細書 引用文献8:特表平6-505575号公報 引用文献9:特開2010-251536号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?4、7?9及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)、(4)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第三のグループのパターン」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-10-21 |
結審通知日 | 2020-10-26 |
審決日 | 2020-11-09 |
出願番号 | 特願2016-109835(P2016-109835) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 百瀬 正之 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 吉野 三寛 |
発明の名称 | 非接触自由空間光リンク用の光電モジュール、関連するマルチチャネルモジュール、関連する相互接続システム、基板の製造及び接続方法 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 阿部 達彦 |