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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01Q
管理番号 1372620
審判番号 不服2019-7292  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-04 
確定日 2021-03-31 
事件の表示 特願2015-529119「複数プローブの検出及び作動」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月 6日国際公開、WO2014/033451、平成27年 9月10日国内公表、特表2015-526739〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)8月28日(パリ条約による優先権主張 2012年8月31日 英国)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月29日付けで拒絶理由が通知され、同年12月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年5月14日付けで拒絶理由が通知され、同年9月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年1月31日付けで拒絶査定されたところ、令和元年6月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後、当審において令和2年3月27日付けで拒絶理由が通知され、同年9月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は、令和2年9月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
複数のプローブの位置を検出する方法であって、
a.第1の入力光線を第1の光学装置に向けるステップと、
b.前記第1の光学装置を用いて前記第1の入力光線を複数の出力光線に変換するステップと、
c.各出力光線を検知光線及び前記検知光線に関連付けられた参照光線に分割するステップと、
d.前記検知光線のそれぞれを対物レンズを介して前記プローブのうちの関連付けられた1つに同時に向けて、反射光線を生成するステップと、
e.各反射光線をその関連付けられた参照光線に結合して、インターフェログラムを生成するステップと、
f.各インターフェログラムを測定して、前記プローブのうちの関連付けられた1つの前記位置を特定するステップと、
を含み、
前記検知光線のそれぞれは前記対物レンズに入射する際に互いに非平行であり、
各反射光線を関連付けられた参照光線と結合して、インターフェログラムを生成するステップは、各反射光線を前記対物レンズによって集めるステップと、各反射光線を関連付けられた参照光線と共に、センサレンズを有するセンサに向けるステップとを含み、
前記センサは各インターフェログラムを測定して、前記プローブのうちの関連付けられた1つの前記位置を特定し、
前記センサレンズは、前記対物レンズの焦点面に配置されている前記プローブの像を形成し、
前記センサレンズは、前記反射光線および前記参照線を、それぞれがプローブに対応する一連のスポットに集束させる、
方法。」


第3 拒絶の理由
令和2年3月27日付けで当審が通知した拒絶理由のうち本願発明に関するものは、次のとおりのものである。
本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:鳥居昭宏『干渉計を用いたAFMエンコーダ』,電学論C,122巻 12号,2061-2066ページ(2002年)
引用文献2:国際公開第2012/059828号
引用文献3:特表2012-511715号公報
引用文献4:特表2011-522273号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

(引1a)「提案するAFMエンコーダは図1の構造である。本論文で使用する座標軸は図1で示した方向とする。すなわち、基準スケールの変位(χ 方向)をAFMカンチレバーの変形量(z方向)として検出する。」(2062頁左欄下から12-9行)

(引1b)「複数のAFMカンチレバーの変形量を検出するためには、光学系に工夫が必要である。AFMカンチレバーの変形量の検出法は光てこ法と光干渉法に大別されるが、前者はAFMカンチレバーの変形量の検出に数cmから数十cm程度の光路が必要となり、小型化の妨げになる。そこで、本研究では光干渉法を用いて2本のAFMカンチレバーの変形量を検出する。構成を図2に示す。ここでは複数のAFMカンチレバーの変形量を検出する光学系を模式的に示している。基本的構成はマイケルソン干渉計である。複数のAFMカンチレバーの変形を検出するために、光源にはライン状に集光する赤色半導体レーザを用いる。レーザ光をライン状に集光させることにより、複数のAFMカンチレバーの変形量の同時計測が容易になる。レーザから照射されたレーザ光は、ビームスプリッタにおいて参照光と物体光に2分割される。参照光は参照面として用いられる全反射ミラーによって反射され、物体光はAFMカンチレバーによって反射される。AFMカンチレバーには、カンチレバーアレイを用いる。ライン状に集光したレーザ光を個々のカンチレバーが反射する。半導体レーザはライン状に集光するため参照光はライン状の光であるが、信号光であるAFMカンチレバーからの反射光はカンチレバーアレイの配列を反映した離散的な光である。この参照光と物体光はビームスプリッタで干渉して、受光器として用いられるフォトダイオードアレイの各感光部に入射する。」(2062頁右欄17行-2063頁左欄7行)

(引1c)「



(2)引用文献1に記載された発明
ア 上記(引1b)には、「複数のAFMカンチレバー」及び「2本のAFMカンチレバー」が記載されているが、これらは同じものを指していることから、「複数のAFMカンチレバー」として整理した。

イ 上記(引1b)より、「光源」として用いる「赤色半導体レーザ」は、「ライン状に集光する」ものであるから、「赤色半導体レーザ」は、「ライン状に集光」された光を出力するものである。そして、引用文献1の「赤色半導体レーザ」は、「複数のAFMカンチレバーの変形を検出するため」のものであって、「複数のAFMカンチレバーの変形量の同時計測」を「容易に」するものであるから、引用文献1の「光源」として用いる「赤色半導体レーザ」は、「複数のAFMカンチレバー」の「変形量」を同時に検出するために、「ライン状に集光」されたレーザ光を出力するものである。

ウ 上記(引1c)より、「赤色半導体レーザ」より「ライン状に集光されたレーザ光」である「レーザから照射されたレーザ光」及び「ビームスプリッタにおいて」「2分割」された「参照光と物体光」は平行ではない光である点が見て取れる。

エ 以上、上記ア?ウを踏まえると、上記(引1b)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「複数のAFMカンチレバーの変形量を検出するAFMカンチレバーの変形量の検出法において、
光干渉法を用いて複数のAFMカンチレバーの変形量を検出する基本的構成はマイケルソン干渉計であり、
光源として用いる赤色半導体レーザは、複数のAFMカンチレバーの変形量を同時に検出するために、ライン状に集光されたレーザ光を出力し、
レーザから照射されたレーザ光は、ビームスプリッタにおいて参照光と物体光に2分割され、
レーザから照射されたレーザ光、参照光及び物体光は平行ではない光であり、
参照光は参照面として用いられる全反射ミラーによって反射され、
物体光はAFMカンチレバーによって反射され、
ライン状に集光したレーザ光を個々のカンチレバーが反射し、
参照光と物体光はビームスプリッタで干渉して、受光器として用いられるフォトダイオードアレイの各感光部に入射する
複数のAFMカンチレバーの変形量を検出するAFMカンチレバーの変形量の検出法。」

2 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

(引2a)「[044] Figure 11-14 show a preferred embodiment hybrid staking where the MEMS sensor array 110 and the optoelectronics readout 15 are coupled to a device. Specifically, in this preferred embodiment, the MEMS sensor array 110 includes a substrate 118, preferably made of Si, having a via 119 aligning with each grating 116 of a cantilever 115 coupled to the substrate 118 and, at least one photodetector 17 coupled to substrate 118 such that refracted orders, preferably the 0^(th) refracted order 304 and 1^(st) refracted order 306 shown here, of laser 300 light can be detected (hereinafter called a "MEMS optoelectronics chip" (also sometimes called a " MEMS Chip and Optoelectronics chip).. Most preferably, the via and photodetectors have protective layer 121 which is transparent and preferably a thin silicon dioxide or glass layer. While any laser source may be used, in this preferred embodiment, a VCSEL is chosen as the laser 300 source and flipchip bonded to the MEMS sensor array 110 such that the laser light may pass through the via 119. Additionally in this preferred embodiment, an electromagnet activation chip including an electromagnet 30 created on a silicon on insulator (SOI) layer 122 is coupled to the MEMS optoelectronics chip either permanently or preferably using removable coupling devices such as mechanical guides so that the electromagnet activation chip may activate cantilever of MEMS optoelectronics chip to detect fluids and moieties in fluids. As shown in the preferred embodiment in figure 15, the via 119 may be made into an array 1119 where a number of light sources may be used; for example, a single laser may be used for the vias 119 of the entire via array 1119, a single laser may be used create an array of laser beams; for example using a diffractive optical element 305 (see figure 16 below), or may be used for each via such as a VCSEL.
[045] in preferred embodiment shown in Figure 16, the DOE is a diffractive optical element 305 that can create an array of laser beams (i.e., fan-out grating). Figure 16 is similar figure 4 but further preferably includes a band pass filter 215 and a display unit 1000.
[046] In the preferred embodiment shown in Figure 17, optical readout is not integrated with MEMS sensor and uses more conventional optical elements such as lenses and diffraction gratings to direct the light beam reflected from the MEMS cantilevers onto a single photodetector that is placed at the Fourier plane. While not required, more preferably the laser 300 light is expanded using a beam expander 312 which couples to a diffractive optical element 305 before passing though conventional lens such as a first lens 310 to the sensor array 1 10 with refracted order passing though conventional lens such as a second lens 330 to the photodetector (PD) 17. Experimental results performed both in air and liquid for a preferred embodiment where 9 resonant cantilevers are monitored using a single photodetector using the setup illustrated in this figure. .」(当審訳:「[044]図11から図14は、メムスセンサアレイ110と光電子読み出し15が装置に結合された、好ましい実施形態に係るハイブリッドステーキングを示す。特に、この好ましい実施形態では、メムスセンサアレイ110は基板118を備える。基板118は、好ましくはシリコンからなり、基板118に結合されたカンチレバーの各格子116と整列されたビア119と、基板118に結合された少なくとも1つの光センサ17とを有する。回折次数は、ここに図示されるように、レーザ光の第0回折次数304及び第1回折次数306を検出することができる(後述する「メムス光電子チップ」(「メムスチップ及び光電子チップ」とも呼ばれる。))。ビア及び光センサが、透明で、好ましくは薄い二酸化シリコン又はガラスの層である保護層121を有するのが最も好ましい。どのようなレーザ源が使用されるとしても、この好ましい実施形態では、VCSELがレーザ源300として選択され、レーザ光がビア119を通過するようにしてメムスセンサアレイ110にフリップチップボンドされる。また、この好ましい実施形態では、シリコンオンインシュレータ(SOI)層122に生成された電磁石30を有する電磁駆動チップが、永久に、又は、好ましくはメカニカルガイド等の移動可能な結合装置を使用するメムス光電子チップに結合され、電磁石駆動チップがメムス光電子チップのカンチレバーを駆動して液体及び液体中の成分を検出する。図15の好ましい実施形態に示すように、ビア119はアレイ1119内に形成してもよく、そこでは多数の光源を使用してもよい。例えば、1つのレーザを全ビアアレイ1119のビア119のために使用してもよく、1つのレーザを、回折光学要素305(図16参照)を使用する等により、レーザビームのアレイを生成するのに使用してもよいし、VCSEL等の各ビアのために使用してもよい。
[045]図16の好ましい実施形態では、DOEは、レーザビームのアレイ(例えば、ファンアウト格子)を生成することができる回折光学要素305である。図16は、図4と同様であり、さらに好ましくは、バンドパスフィルタ215及びディスプレイユニット1000を備える。
[046]図17に示す好ましい実施形態では、光学読み出しはメムスセンサとは一体化されておらず、レンズや、フーリエ平面に配置される単一の光センサ上のメムスカンチレバーから反射した光ビームを方向付ける回折格子等の従来の光学要素を使用している。必要ではないが、レーザ光300は、光センサ(PD)17への第2レンズ330等の従来のレンズを通過する回折次数を備えたセンサアレイ110への第1レンズ310等の従来のレンズを通過する前に回折光学要素305に結合されるビームエクスパンダ312を使用して広げられる。実験結果は好ましい実施形態のために気体及び液体の両方で行い、9つの応答カンチレバーがこの図に示す機構を使用する単一の光センサによってモニタされた。」)

上記(引2a)より、引用文献2には、以下の技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されている。

「メムスセンサアレイ110と光電子読み出し15とが結合された装置において、
基板118に結合されたカンチレバーの各格子116と整列されたビア119と、基板118に結合された少なくとも1つの光センサ17とを有し、
1つのレーザを全ビアアレイ1119のビア119のために、回折光学要素305を使用する等により、レーザビームのアレイを生成する装置。」

3 引用文献3及び4に記載された事項
(1)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。

(引3a)「【0064】
次に、本発明による検出システム29の動作をより詳細に説明する。光源(図示せず)は、対物レンズ78によってカンチレバーの背面18bに焦点を合わせられたレーザビーム76を放射する。反射された光80a、b、cはレンズ78によって集められ、非偏光ビームスプリッタ82に向けられる。図1から分かるように、カンチレバー18bの瞬間的な傾きは、光が反射される角度に影響する。プローブの1つの位置で、反射されたビームは経路80bを進む。しかし、カンチレバー背面18bが左側に(図に対して)傾いている場合、反射されたビーム80aは反時計回りに偏向され、右側の傾きは反射されたビーム80cを時計回りに偏向する。カンチレバーの背面18bがレンズ78の焦点またはその付近に配置されるとき、反射されたビームの角度変化はレンズの後で水平方向の変位に変換される。すなわち、角度の傾きに関係なく、反射されたビーム80a、b、cは検出システムの光軸に平行に伝播し、左側の傾きは左側の水平方向の変位をもたらし、右側の傾きは中央位置に対して右側の変位を生成する。
【0065】
ビームスプリッタ82は、ビームスプリッタ82に入射する光のほぼ半分84a、b、cを90°で反射し、残りの半分86a、b、cを伝送するように構成される。伝送された成分86a、b、cは干渉計88に入力される。図2を参照して、この干渉計の動作をより詳細に説明する。ただし、要約すると、反射されたビーム86a、b、cはステージ12の上面から反射された基準ビームによって干渉される。あるいは、ステージ表面との知られている関係を有する別の固定点を使用することができる。これは、2つのビーム間の経路差の測定値およびしたがってステージ表面の上にあるカンチレバーの背面18bの瞬間的な高さの示度を提供する。このデータから、表面高さに関する情報を抽出して画像を形成することができる。
【0066】
ビームスプリッタ82から反射された成分84a、b、cは、レンズ90によってたわみ検出器28上で凝縮される。検出器28は、この実施形態では、その長さにわたって、独立した検出器領域AおよびBに分割される。これらの領域から生成された出力信号は差動増幅器92に入力され、差動増幅器92は2つのチャネル間の差動に等しい信号を出力する。反射された光80b、84bがチャネルAおよびB間で分散されるように、検出器28が集光光学系(collection optics)と位置合わせされる。カンチレバーの背面18bの左側の傾きは、検出器28からの信号がチャネルBにおいて増大し、差動増幅器92からの出力の減少をもたらすことを意味する。逆に、右側の傾きは、チャネルAが信号増加を受け、出力の増加が差動増幅器92によって生成されることを意味する。プローブが振動すると、チャネルA信号とチャネルB信号との間の差動は、増幅器92の出力で時間で変動する信号を生成する。この出力信号は、プローブの時間で変動するたわみを表す。したがって、この信号の振幅は、プローブ振動の振幅を直接示す。したがって、増幅器92の出力を、フィードバック制御装置30に供給されるフィードバック信号の基準として使用することができる。フィードバック制御装置30は、振幅信号をその設定値に維持するためにz位置決定システム24を動作させる。」

(引3b)「【0076】
図3を参照すると、図1に示す検出システム29の第1の実施形態の光学構成要素がさらに詳細に示されている。レーザ源100からの光は、第2のビームスプリッタ102によって入射ビーム76および基準ビーム104に分割される。入射ビーム76は、対物レンズ78によってカンチレバーの背面18bに焦点を合わせられる。カンチレバーからの反射の後、ビーム80は第1のビームスプリッタ82によって分割される。前に述べたように、第1の成分84はたわみ検出器90、28、92を対象とし、第2の成分86は干渉計88を対象とする。
【0077】
干渉計の内部で、カンチレバー18bから反射されたビーム86はビームスプリッタ106によって分割される。基準ビーム104は適切に配置された逆反射器108に向けられ、その後、ビームスプリッタ106に向けられる。逆反射器108は、試料の垂直(z)位置に対する固定された光経路長を提供するように位置合わせされる。ビームスプリッタ106はエネルギー吸収コーティングを有し、入射ビーム86および基準ビーム104の両方を分割して約90°の相対位相シフトを有する第1および第2のインターフェログラムを生成する。2つのインターフェログラムはそれぞれ、第1の光検出器112および第2の光検出器114で検出される。
【0078】
理想的には、光検出器信号は、90°の位相差を有する相補的な正弦信号および余弦信号である。さらに、これらの信号はdcオフセットを有さず、等しい振幅を有し、カンチレバーの位置およびレーザの波長λにのみ依存するべきである。等しい振幅を有し、直交位相である完全に調和振動していない2つの光検出器信号の結果として生じる誤差の補正を決定し適用するために、知られている方法を使用して光経路差を変化させながら光検出器112、114の出力を監視する。同様に、dcオフセットレベルも当技術分野で知られている方法に従って補正される。
【0079】
これらの光検出器信号は、専用ハードウェアとしてまたはプログラムされたコンピュータとして提供され得る従来の干渉計兼用干渉縞計数装置および干渉縞再分割装置とともに使用するのに適している。直交位相干渉縞計数装置は、λ/8の精度で、すなわち、532nmの光に対して66nmでカンチレバーの位置における変位を測定することができる。信号の逆正接に基づく、知られている干渉縞再分割技法は、ナノメートルスケールまたはそれ未満への精度の改善を可能にする。」

(2)引用文献4に記載された事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。

(引4a)「【0082】
これらの領域には広い定義が与えられ、各領域の開始は、特定の動作条件、ならびに顕微鏡および調査対象の試料のパラメータに明らかに依存する。
次いで、本発明による検出システム74の動作をより詳細に説明する。光源(図示せず)がレーザビーム76を発し、ビーム76は、対物レンズ78によりカンチレバーの後部18b上で焦点を結ぶ。反射光80a、b、cがレンズ78で収光され、非偏光ビームスプリッタ82に誘導される。図3から分かるように、カンチレバー18bの傾斜が光の反射角度に影響する。プローブが設定フィードバック位置に維持された場合、反射ビームは経路80bをたどる。一方、カンチレバーの後部18bが(図を基準として)左に傾けられた場合、反射ビーム80aは反時計方向に偏向され、右への傾斜は、反射ビーム80cを時計方向に偏向する。カンチレバーの後部18bがレンズ78の焦点または焦点の近くに位置する時には、反射ビームの角度の変動が、レンズを通った後の横方向の変位に変換される。すなわち、カンチレバーが左に傾斜すると、反射ビームの左方への横方向変位が生じ、右に傾斜すると、設定フィードバック位置に対して右への変位を生じさせる。
【0083】
ビームスプリッタ82は、入射する光の実質的に半分84a、b、cを90度反射し、残りの半分86a、b、cを透過させるように構成される。透過した成分86a、b、cは、干渉計88に入力される。この干渉計の動作については、下記で図5を参照してより詳細に説明する。要約すると、反射ビーム86a、b、cは、台12の上部表面から反射された参照ビームと干渉する。あるいは、台表面との間に既知の関係を有する別の固定点が使用されてもよい。これにより、2つのビーム間の経路の差、および、したがって、台表面上方のカンチレバーの後部18bの高さの指示が得られる。この測定された高さの変動が抽出されて、画像を形成する。
【0084】
ビームスプリッタ82から反射された成分84a、b、cは、レンズ90によってたわみ検出器28上に集光される。従来技術と同様に、検出器28は、その長さにわたって、独立した検出器領域AおよびBに分割される。これらの領域から生成される出力信号は、差動増幅器92に入力され、増幅器92は、2つのチャネル間の差に等しい信号を出力する。検出器28は、カンチレバーの後部18bが設定たわみ位置に傾けられると差動増幅器からの出力も設定点になるように、集光の光学諸特性と位置合わせされる。すなわち、反射光80b、84bは、チャネル出力の差が設定値になるようにチャネルAとBに分散される。カンチレバーの後部18bの左への傾斜は、検出器28からの信号がチャネルBで増加し、差動増幅器92からの出力の減少につながることを意味する。逆に、右への傾斜は、チャネルAが信号の増大を受け、差動増幅器92で出力の増加が生じることを意味する。フィードバックコントローラ30は、差動増幅器92から受け取られる信号をその設定点に維持するように、z方向位置決めシステム72を操作する。」

(引4b)「【0093】
図5を参照すると、検出システム74の光学構成要素をさらに詳細に示す。前出の図と同様に、共通の構成要素には同様の参照符号を付す。レーザ光源100からの光は、第2のビームスプリッタ102により、入射ビーム76と参照ビーム104に分割される。入射ビーム76は、対物レンズ78によりカンチレバーの後部18b上で焦点を結ぶ。カンチレバーで反射された後、ビーム80は、第1のビームスプリッタ82で分割される。先に述べたように、第1の成分84は、たわみ検出器90、28、92に誘導され、第2の成分86は干渉計88に誘導される。
【0094】
干渉計の内部で、カンチレバー18bから反射されたビーム86は、ビームスプリッタ106で分割される。参照ビーム104は、適切に配置された再帰反射器108に誘導され、その後ビームスプリッタ106に誘導される。再帰反射器108は、試料の垂直(z)方向位置に対して固定光路長を提供するように位置合わせされる。ビームスプリッタ106は、エネルギー吸収性の被覆がなされ、入射ビーム86と参照ビーム104の両方を分割して、ほぼ90°に等しい相対的な位相ずれを有する第1および第2のインターフェログラムを生成する。この2つのインターフェログラムは、それぞれ第1の光検出器112および第2の光検出器114で検出される。
【0095】
理想的には、光検出器信号は、90°の位相差を有する相補的な正弦信号および余弦信号である。さらに、それらの信号は、DCオフセットがなく、等しい振幅を有し、カンチレバーの位置xおよびレーザの波長λのみに依存すべきである。2つの光検出器信号が、等しい振幅で直角位相である完全な高調波でない結果生じる誤差を求め、その誤差に補正を適用するために、知られた方法を使用して光路差を変化させながら光検出器112、114の出力を監視する。同様に、DCオフセットのレベルも当技術分野で知られる方法により補正される。
【0096】
この光検出器信号は、専用ハードウェアまたはプログラムされたコンピュータとして提供されることが可能な、従来の干渉計可逆干渉縞計数装置および干渉縞再分割装置と共に使用するのに適する。直交位相の干渉縞計数装置を使用すると、カンチレバーの位置の変位をλ/8の精度、すなわち波長532nmの光の場合66nmの精度で、測定することができる。信号の逆正接に基づく知られた干渉縞再分割技術は、精度をナノメートル規模またはそれ以下まで向上することを可能にする。」

(3)周知技術について
ア 上記(引3a)より、引用文献3には、「光源は、対物レンズ78によってカンチレバーの背面18bに焦点を合わせられたレーザビーム76を放射」し、「反射された光80a、b、cはレンズ78によって集められ、非偏光ビームスプリッタ82に向けられる」構成及び「ビームスプリッタ82から反射された成分84a、b、cは、レンズ90によってたわみ検出器28上で凝縮される」構成が、(引4a)より引用文献4には、「光源がレーザビーム76を発し、ビーム76は、対物レンズ78によりカンチレバーの後部18b上で焦点を結」び、「反射光80a、b、cがレンズ78で収光され、非偏光ビームスプリッタ82に誘導される」構成及び「ビームスプリッタ82から反射された成分84a、b、cは、レンズ90によってたわみ検出器28上に集光される」構成が、それぞれ記載されている。そして、引用文献3及び4は、いずれも「カンチレバー」の変位を干渉光により計測するためのものである。
そうすると、引用文献3及び4には、いずれも、「カンチレバーの変位を計測する装置において、光源からの光がカンチレバーの後部上に焦点を結ぶように対物レンズを配置し、カンチレバーからの反射光を対物レンズにより集光する技術事項」及び「カンチレバーからの反射光を検出する検知器はレンズを有する技術事項」が記載されているから、これら技術事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)であるといえる。

イ 上記(引3b)より引用文献3には、「干渉計の内部で、カンチレバー18bから反射されたビーム86および基準ビーム104から、第1および第2のインターフェログラムが生成され、2つのインターフェログラムはそれぞれ、第1の光検出器112および第2の光検出器114で検出され、これらの光検出器信号により、カンチレバーの位置における変位を測定することができる」技術事項が、(引4b)より、引用文献4には、「干渉計の内部で、カンチレバー18bから反射されたビーム86と参照ビーム104とから第1および第2のインターフェログラムが生成され、この2つのインターフェログラムは、それぞれ第1の光検出器112および第2の光検出器114で検出され、この光検出器信号により、カンチレバーの位置の変位を測定することができる」技術事項が、それぞれ記載されている。
そうすると、引用文献3及び4には、いずれも「干渉計において、カンチレバーから反射されたビームと参照ビームとにより生成されたインターフェログラムを検知することによりカンチレバーの位置の変位を測定することができる技術」が記載されているから、該技術は周知技術(以下「周知技術2」という。)であるといえる。

第5 対比
本願発明と引用発明とを比較する。

1 引用発明の「複数のAFMカンチレバー」は、本願発明の「複数のプローブ」に相当する。そして、上記(引1a)より、「基準スケールの変位(χ 方向)をAFMカンチレバーの変形(z方向)として検出する」から、「複数のAFMカンチレバーの変形量を検出する」ことは、「複数のAFMカンチレバー」の位置を検出することであるといえる。
そうすると、引用発明の「複数のAFMカンチレバーの変形量を検出するAFMカンチレバーの変形量の検出法」は、本願発明の「複数のプローブの位置を検出する方法」に相当する。

2 引用発明は、「光源として用いる赤色半導体レーザは」、「ライン状に集光されたレーザ光を出力」するものであるから、引用発明の「赤色半導体レーザ」は、「赤色半導体レーザ」からのレーザ光を入力し、「ライン状に集光されたレーザ光を出力する」光学装置を有しているといえる。
そうすると、引用発明の「赤色半導体レーザ」が有する該光学装置及び半導体レーザからの該光学装置に入力するレーザ光は、本願発明の「光学装置」及び「第1の入力光線」に相当する。
そして、引用発明の「光源として用いる赤色半導体レーザ」が、「ライン状に集光されたレーザ光を出力」する工程の内、「赤色半導体レーザ」からの光を「ライン状に集光されたレーザ光を出力する」光学装置に入力する工程は、本願発明の「a.第1の入力光線を第1の光学装置に向けるステップ」に相当する。
また、引用発明の光学装置は、「赤色半導体レーザ」からのレーザ光を「ライン状に集光されたレーザ光」に変換するから、引用発明の「赤色半導体レーザ」からのレーザ光を「ライン状に集光されたレーザ光」に変換する工程と、本願発明の「b.前記第1の光学装置を用いて前記第1の入力光線を複数の出力光線に変換するステップ」とは、「b’.前記第1の光学装置を用いて前記第1の入力光線を出力光線に変換するステップ」である点で共通する。

3 引用発明の「参照光」及び「物体光」は、本願発明の「参照光線」及び「検知光線」に相当する。そうすると、引用発明の「レーザから照射されたレーザ光」を、「ビームスプリッタにおいて参照光と物体光に2分割」する工程と、本願発明の「c.各出力光線を検知光線及び前記検知光線に関連付けられた参照光線に分割するステップ」とは、「c’.出力光線を検知光線及び前記検知光線に関連付けられた参照光線に分割するステップ」である点で共通する。

4 引用発明の「物体光はAFMカンチレバーによって反射され」るから、引用発明の「物体光」は、「AFMカンチレバー」に向けられるものであって、「個々のカンチレバー」は、「ライン状に集光したレーザ光」を「反射」するものであるから、引用発明の「物体光」は、「ライン状に集光したレーザ光」である。そして、引用発明の「ライン状に集光されたレーザ光」は、「複数のAFMカンチレバーの変形量を同時に検出するため」のものであって、この「ライン状に集光したレーザ光を個々のカンチレバーが反射」することにより反射光が生成されるから、引用発明の「ライン状に集光されたレーザ光」である「物体光」は、「個々のカンチレバー」に同時に向けられるものである。そうすると、引用発明の「ライン状に集光されたレーザ光」である「物体光」を同時に「個々のカンチレバー」に向けて反射光を生成する工程と、本願発明の「d.前記検知光線のそれぞれを対物レンズを介して前記プローブのうちの関連付けられた1つに同時に向けて、反射光線を生成するステップ」とは、「d’.前記検知光線を前記プローブのそれぞれに同時に向けて、反射光線を生成するステップ」である点で共通する。

5 引用発明の「参照光と物体光はビームスプリッタで干渉して、受光器として用いられるフォトダイオードアレイの各感光部に入射する」ものであって、「ビームスプリッタで干渉して」「フォトダイオードアレイの各感光部に入射する」光は干渉光であって、インターフェログラムは干渉光の一形態である。また、「参照光と物体光」は、「光干渉法を用いて複数のAFMカンチレバーの変形量を検出する」ものであるから、「ビームスプリッタで干渉」する「参照光と物体光」とは、関連づけられたものであるといえる。
そうすると、引用発明の関連づけられた「参照光と物体光」とを、「ビームスプリッタで干渉」させて、「受光器として用いられるフォトダイオードアレイの各感光部に入射する」干渉光を生成する工程と、本願発明の「e.各反射光線をその関連付けられた参照光線に結合して、インターフェログラムを生成するステップ」とは、「e’.各反射光線をその関連付けられた参照光線に結合して、干渉光を生成するステップ」である点で共通する。

6 引用発明は「光干渉法を用いて複数のAFMカンチレバーの変形量を検出する」ものであるから、「受光器として用いられるフォトダイオードアレイの各感光部に入射する」干渉光を測定し、「各感光部」に関連づけられた「AFMカンチレバーの変形量を検出する」ものである。
そうすると、引用発明の「受光器として用いられるフォトダイオードアレイの各感光部に入射する」干渉光を測定し、「各感光部」に関連づけられた「AFMカンチレバーの変形量を検出する」工程と、本願発明の「f.各インターフェログラムを測定して、前記プローブのうちの関連付けられた1つの前記位置を特定するステップ」とは、「f’.各干渉光を測定して、前記プローブのうちの関連付けられた1つの前記位置を特定するステップ」である点で共通する。

7 引用発明の「物体光は平行ではない光であ」るから、本願発明の「前記検知光線のそれぞれは前記対物レンズに入射する際に互いに非平行であ」ることと、「前記検知光線は非平行であ」る点で共通する。

8 引用発明の「フォトダイオードアレイ」は、本願発明の「センサ」に相当する。そして、引用発明は、「参照光と物体光はビームスプリッタで干渉して、受光器として用いられるフォトダイオードアレイの各感光部に入射する」から、引用発明の関連づけられた「参照光と物体光」とを、「ビームスプリッタで干渉」させて、「受光器として用いられるフォトダイオードアレイの各感光部に入射する」干渉光を生成する工程と、本願発明の「各反射光線を前記対物レンズによって集めるステップと、各反射光線を関連付けられた参照光線と共に、センサレンズを有するセンサに向けるステップとを含」む「各反射光線を関連付けられた参照光線と結合して、インターフェログラムを生成するステップ」とは、「各反射光線を関連付けられた参照光線と共に、センサに向けるステップを含」む「各反射光線を関連付けられた参照光線と結合して、干渉光を生成するステップ」で共通する。
そして、引用発明の「フォトダイオードアレイ」は、「各感光部に入射する」干渉光を測定し、「各感光部」に関連づけられた「AFMカンチレバーの変形量を検出する」ものであるから、本願発明の「前記センサは各インターフェログラムを測定して、前記プローブのうちの関連付けられた1つの前記位置を特定」することとは、「前記センサは各干渉光を測定して、前記プローブのうちの関連付けられた1つの前記位置を特定」することで共通する。

9 以上1?8より、本願発明と引用発明との間には、以下の一致点と相違点がある。

(一致点)
「複数のプローブの位置を検出する方法であって、
a.第1の入力光線を第1の光学装置に向けるステップと、
b’.前記第1の光学装置を用いて前記第1の入力光線を出力光線に変換するステップと、
c’.出力光線を検知光線及び前記検知光線に関連付けられた参照光線に分割するステップと、
d’.前記検知光線を前記プローブのそれぞれに同時に向けて、反射光線を生成するステップと、
e’.各反射光線をその関連付けられた参照光線に結合して、干渉光を生成するステップと、
f’.各干渉光を測定して、前記プローブのうちの関連付けられた1つの前記位置を特定するステップと、
を含み、
前記検知光線の非平行であり、
各反射光線を関連付けられた参照光線と結合して、干渉光を生成するステップは、各反射光線を関連付けられた参照光線と共に、センサに向けるステップを含み、
前記センサは各干渉光を測定して、前記プローブのうちの関連付けられた1つの前記位置を特定する
方法。」

(相違点)
(相違点1)「b’.前記第1の光学装置を用いて前記第1の入力光線を出力光線に変換するステップ」、「c’.出力光線を検知光線及び前記検知光線に関連付けられた参照光線に分割するステップ」及び「d’.前記検知光線を前記プローブのそれぞれに同時に向けて、反射光線を生成するステップ」が、本願発明は、「b’.」のステップが、「前記第1の光学装置を用いて前記第1の入力光線を複数の出力光線に変換するステップ」であり、「d’.」のステップが、「c’.」のステップで、「b’.」のステップで変換された「複数の出力光線」の各々を分割した「検知光線のそれぞれを」「前記プローブのうちの関連付けられた1つに同時に向け」るものであるのに対し、引用発明は、「c’.」及び「b’.」のステップが、「赤色半導体レーザ」が有する光学装置が「ライン状に集光されたレーザ光を出力」するものであって、「d’.」のステップが、「ライン状に集光したレーザ光」を「c’.」のステップで「ビームスプリッタに」よって分割した「物体光」を、「個々のカンチレバー」に向けるものである点。

(相違点2)各反射光線を関連付けられた参照光線と結合して生成される干渉光が、本願発明は「インターフェログラム」であるのに対し、引用発明は「干渉光」である点。

(相違点3)「d’.前記検知光線を前記プローブのそれぞれに同時に向けて、反射光線を生成するステップ」及び「e’.各反射光線をその関連付けられた参照光線に結合して、干渉光を生成するステップ」が、本願発明は、「d’.」のステップが、「前記検知光線のそれぞれを対物レンズを介して前記プローブのうちの関連付けられた1つに同時に向けて、反射光線を生成」し、「e’.」のステップが、「各反射光線を前記対物レンズによって集めるステップ」を含み、「e’.」のステップにおける「各反射光線」が「関連付けられた参照光線と共に」「向け」られる「センサ」が「センサレンズを有」しており、「前記センサレンズは、前記対物レンズの焦点面に配置されている前記プローブの像を形成し、前記センサレンズは、前記反射光線および前記参照線を、それぞれがプローブに対応する一連のスポットに集束させる」ものであるのに対し、引用発明は、「対物レンズ」や「センサレンズ」に関する特定がない点。

第6 判断
上記相違点について検討する
1 相違点1について
技術事項2の「1つのレーザ」は、「全ビアアレイ1119のビア119のために、回折光学要素305を使用する等により、レーザビームのアレイ」に生成され、「全ビアアレイ1119のビア119」は、「カンチレバーの各格子116と整列され」ているから、技術事項2の「回折光学要素305」は、「1つのレーザ」から「レーザビームのアレイ」を生成し、「レーザビームのアレイ」の各レーザ光は、「カンチレバーの各格子116」に向けられるものである。そして、引用発明の「赤色半導体レーザ」が有する光学装置が出力する「ライン状に集光された光」は、「個々のカンチレバー」に向けられるものであるから、引用発明の「赤色半導体レーザ」が有する光学装置として、技術事項2の「回折光学要素305」を適用し、「赤色半導体レーザ」の光を「レーザビームのアレイ」に変換し、該「レーザビームのアレイ」のそれぞれのレーザビームを「個々のカンチレバー」に向ける構成とすることは、当業者が容易に想到できることであるといえる。

2 相違点2について
周知技術2より、「カンチレバーの位置の変位を測定する」ために「干渉計において、カンチレバーから反射されたビームと参照ビームとにより生成されたインターフェログラム」を使用することは周知であるから、引用発明の「複数のAFMカンチレバーの変形量を検出する」ための干渉光として「インターフェログラム」を使用することは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。

3 相違点3について
周知技術1より、カンチレバーの後部上に焦点を結ぶように、また、カンチレバーからの反射光を集光するように対物レンズを配置すること、及び、検知器がレンズを有することは、いずれも周知技術であって、対物レンズ及び検知器が有するレンズをどのような配置とするかは、他の構成要素の光学特性等を考慮して適宜設定されるものであって、検知器が有するレンズが、対物レンズの焦点面にあるカンチレバーの像を形成し、かつ、検知器に対し特定のスポットに収束するような配置は、検知器に効率よく集光する配置の一つであって、このような配置とすることは常套手段にすぎないから、引用発明に周知技術1を適用し、「物体光」が「AFMカンチレバー」の後部上に焦点を結び、「AFMカンチレバー」からの反射光を集光するように対物レンズを配置し、「受光器として用いられるフォトダイオードアレイ」はレンズを有するものとし、「受光器として用いられるフォトダイオードアレイ」が有するレンズを、対物レンズの焦点面にある「AFMカンチレバー」の像を形成し、「ビームスプリッタで干渉し」た「参照光と物体光」が「受光器として用いられるフォトダイオードアレイの各感光部に」収束させるものとすることは、当業者が容易に想到できることであるといえる。

4 本願発明の効果について
本願発明の効果は、引用文献1?4に記載された事項から、当業者が予測しうる範囲のものであるといえる。

5 小括
以上のことから、本願発明は、引用発明、技術事項2並びに周知技術1及び2から、当業者が容易に発明できたものであるといえる。

第7 請求人の主張について
1 意見書における請求人の主張について
令和2年9月24日に提出した意見書において請求人は、以下のとおり主張している。

「引用文献3,4には、光てこ検出器(たわみ検出器)が開示され、レンズ90によって光が光てこ検出器に凝縮されることは開示されています。しかしながら、引用文献3の図3および引用文献4の図5に記載される干渉計88はレンズを有していません。したがいまして、引用文献3,4は、干渉計の前面にレンズを配置することが周知技術であることを示すものではありません。

引用文献3,4に記載の光てこ検出器は反射光線の位置を正確に測定する必要があり、したがって、レンズ90によって光線を小さなスポットに集束させています。これにより、より正確な測定が可能となります。

干渉計88の測定原理は光てこ検出器とは異なり正確な位置測定は不要であり、したがって、センサレンズは要求されません。むしろ、プローブからの反射光線と参照光線とが各光検出器112,114で重なることが重要であり、光線が各光検出器112,114上に小さなスポットとして集束することは重要ではありません。逆に、光線を小さなスポットに集束させると、光線同士が光検出器112,114上で重ならない可能性が高まってしまいます。

本願の発明者は、複数のプローブが存在する場合にセンサレンズが特に重要であることを見いだしました。センサレンズは、プローブ(対物レンズの焦点面に配置されている)の像を形成します。また、センサレンズは、反射光線および参照光線を、それぞれプローブに対応する一連のスポットに集束させます。
センサレンズを用いることで、プローブの密度を増加できるという技術的効果が得られます。センサレンズは光線を空間的に分離するので、各光線はセンサの異なる部分に照射されます。これにより、分離されたインターフェログラムを生成して、各プローブの位置を決定することが可能となります。その結果、プローブの密度を増加させることができます。言い換えると、プローブをより密に詰めることができます。プローブが接近していても、センサレンズによって、光線がセンサの異なる位置に集束することが保証されます。
このように、複数のプローブを有する検知システムにおいて、センサの前にセンサレンズを配置することにより、相乗的な効果が得られます。」

確かに、請求人が主張するとおり、引用文献3及び4には、「干渉計88」のインターフェログラムを検知する光検出器がレンズを有する旨の特定はないが、インターフェログラムを測定するセンサにおいて、その位置上に合焦するレンズを有する構成は、下記2に示すとおり特開昭63-222208号公報(以下「参考文献1」という。)及び特表2012-515341号公報(以下「参考文献2」という。)の記載から周知の構成であるといえ、また、請求人が主張する上記効果も、当業者が予測しうる効果であるといえるから、引用発明に該周知の構成を適用し、「受光器として用いられるフォトダイオードアレイ」がレンズを有するという構成とすることは、当業者が容易に想到できたことであるといえるから、上記請求人の主張は採用されない。

2 参考文献に記載された事項
(1)参考文献1について
参考文献1には、以下の事項が記載されている。

(参1a)「マイケルソン干渉計22は、平行光線束Llが斜めに入射されるビームスプリッタ30と、ビームスプリッタ30の上方に配設された固定鏡32と、ビ-ムスプリッタ30の側方に配設された移動鏡34とを備えている。移動体としての移動鏡34は、壁面36へ伸縮体38を介して固設されている。伸縮体38は、圧電素子40の両端面に電極膜(図示せず)を介して絶縁円板42、44が固着され、この絶縁円板42が壁面36へ固着され、絶縁円板44が移動鏡34に固着されている。ビームスプリッタ30の下方には結像レンズ46を介して光検出器48が配設されている。平行光線束L_(1)はその1部がビームスプリッタ30により反射され、固定鏡32により反射され、次いでビームスプリッタ30、結像レンズ46を通過して光検出器48の位置へ集光される。一方、平行光線束L_(1)の残部はビームスプリッタ30を透過し、移動鏡34、ビームスプリッタ30により反射され、結像レンズ46を透過して光検出器48の位置へ集光される。光検出器48により検出された光強度信号はアンプ50を通って増幅され、フィルタ52を通ってノイズが除去され、A/D変換器54によりデジタル変換されてデータ処理装置56へ供給される。一方、コントローラ58はドライバ60を介して圧電素子40へ、第2図に示す如く、ステップ状に変化する駆動電圧Vを供給する。これにより圧電素子40が偏位し、その偏位が安定した時点においてコントローラ58からA/D変換器54へ変換開始信号S_(1)が供給される。また、駆動電圧Vがステップ状に変化する間、コントローラ58からデータ処理装置56へ測定信号S_(2)が供給され、データ処理装置56はこの間A/D変換器54から定期的にデータを読み込み、メインピークMとサブピークSを検出し、メインピークMとサブピークSの間の距離Lを求め、この距離Lから上記式(1)を用いてトレンチ深さdを算出する。このdが所定範囲内にあるかどうかによりシリコンウエハー24の表面に形成された集積回路の品質管理を行う。」(3頁左上欄末行?左下欄下から3行)

(参1b)「第3図上段にはマイケルソン干渉計22への入射光線のスペクトルが示されており、下段には移動鏡34を偏位させることにより光検出器48により検出されるインタフェログラムが示されている。(A)は白色光線20自体のスペクトルであり、これをマイケルソン干渉計22へ入射させると、(A’)に示すようなインタフェログラムが測定される。」(3頁右下欄7?14行)

(2)参考文献2について
参考文献2には、以下の事項が記載されている。

(参2a)「【0031】
図1aは、表面特性測定装置100の機能図を示している。この装置は、共通の光路を共有する2つのLinnik干渉計と信号処理及び制御回路3を備える。干渉計のうちの一方は測定干渉計を形成し、他方は基準干渉計を形成する。」

(参2b)「【0037】
結合素子BS2は、光を、基準経路RPに沿って基準表面、一般的には基準ミラー12に向けて誘導すると共に、サンプル経路又は測定経路SPに沿って、サンプル支持ステージ11上に取り付けられたサンプル10の表面10’に向けて誘導する。サンプル経路に沿って誘導された光は、対物レンズL1によってサンプル表面10’上に合焦され、基準経路に沿って誘導された光はレンズL2によって基準表面12上に合焦される。サンプル表面10’によって反射された光は、サンプル経路に沿ってレンズL1を介し結合素子BS2に戻る一方、基準表面12によって反射された光は、基準経路に沿ってレンズL2を介し結合素子BS2に戻る。サンプル表面によって反射された光及び基準表面によって反射された光は干渉して、干渉信号又はインターフェログラムを生成する。
【0038】
第3のビームスプリッタBS3は、干渉信号又はインターフェログラムを測定干渉計からレンズL3に誘導し、レンズL3は、測定干渉信号又はインターフェログラムをセンサ62上に合焦する。この例では、センサは、2次元アレイの検知素子を備える2次元イメージセンサである。センサは、電荷結合素子(CCD)センサ又はCCDカメラであってもよいし、2次元CMOSイメージセンサ又は2次元CMOSカメラとしてもよい。」

(3)周知の構成について
(参1a)及び(参1b)より、参考文献1には、「ビームスプリッタ30の下方には結像レンズ46を介して光検出器48が配設され、平行光線束L_(1)はその1部がビームスプリッタ30により反射され、固定鏡32により反射され、次いでビームスプリッタ30、結像レンズ46を通過して光検出器48の位置へ集光され、平行光線束L_(1)の残部はビームスプリッタ30を透過し、移動鏡34、ビームスプリッタ30により反射され、結像レンズ46を透過して光検出器48の位置へ集光され、光検出器48によりインタフェログラム検出されるマイケルソン干渉計22。」が記載されている。
また、(参2a)及び(参2b)より、参考文献2には、「サンプル表面によって反射された光及び基準表面によって反射された光は干渉して、インターフェログラムを生成し、第3のビームスプリッタBS3は、インターフェログラムを測定干渉計からレンズL3に誘導し、レンズL3は、インターフェログラムをセンサ62上に合焦する表面特性測定装置100。」が記載されている。
参考文献1の「光検出器48」及び参考文献2の「センサ62」は、いずれも本願発明の「センサ」に相当する。そして、参考文献1の「光検出器48」及び参考文献2の「センサ62」は、いずれも「インターフェログラム」を測定するものであって、その位置上に合焦するレンズを有している。
そうすると、インターフェログラムを測定するセンサにおいて、その位置上に合焦するレンズを有する構成は周知の構成であるといえる。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-10-26 
結審通知日 2020-10-27 
審決日 2020-11-09 
出願番号 特願2015-529119(P2015-529119)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東松 修太郎萩田 裕介  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 福島 浩司
渡戸 正義
発明の名称 複数プローブの検出及び作動  
代理人 平川 明  
代理人 今堀 克彦  

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