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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1372639
審判番号 不服2020-1082  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-27 
確定日 2021-04-20 
事件の表示 特願2015-160450「ホウ素除去方法及びホウ素除去装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月23日出願公開、特開2017- 39062、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年 8月17日を出願日とする出願であって、平成31年 4月16日付けで拒絶理由が通知され、令和 1年 6月21日付けで意見書が提出され、同年10月11日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、令和 2年 1月27日付けで本件拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1、2、4?11、13及び14に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同請求項3及び12に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2?4に記載された事項及び本願出願日における周知技術(引用文献5?7参照)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開平10-314798号公報
引用文献2.台湾実用新案登録第M475458号公報
引用文献3.特開2005-7388号公報
引用文献4.特開昭59-012400号公報
引用文献5.特開平11-315005号公報
引用文献6.特開2001-198581号公報
引用文献7.特開2001-079564号公報

第3 本願発明
本願請求項1?12に係る発明は、令和 2年 1月27日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明12」という。)。
「【請求項1】
ホウ素含有水をホウ素濃度が2,000mg/L以上の濃縮水とホウ素濃度が10mg/L以下の非濃縮水とに分離する濃縮工程と、前記濃縮水にアルミニウム化合物を添加することなくカルシウム化合物を添加して不溶性析出物が分散した反応液を形成させる反応工程と、前記反応液を脱水ろ液と脱水汚泥とに分離する汚泥脱水工程と、前記脱水ろ液の一部又は全量を前記非濃縮水と混合して混合液を得る混合工程と、前記脱水ろ液のうち前記混合工程に導入されなかった脱水ろ液の残部を前記濃縮工程へと導入する工程とを含み、
前記反応工程でカルシウム化合物を添加後、pHを8?10に調整する工程を含み、前記反応工程における前記反応液の液温が40℃以下であることを特徴とするホウ素除去方法。
【請求項2】
前記濃縮水が、ホウ素含有水を蒸発濃縮したものである請求項1に記載のホウ素除去方法。
【請求項3】
前記濃縮水が、ホウ素含有水をアニオン交換樹脂、希土類元素の含水酸化物を担持した造粒体、N-メチルグルカミン基を導入したイオン交換樹脂、または、N-メチルグルカミン基を導入した繊維状吸着材の群から選択される1種または2種以上の吸着材に接触させて、前記ホウ素含有水からホウ素を吸着除去し、ホウ素を吸着した前記吸着材から酸またはアルカリでホウ素を溶離させたものである、請求項1に記載のホウ素除去方法。
【請求項4】
前記濃縮水のアルミニウム濃度が、1,000mg/L以下であることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載のホウ素除去方法。
【請求項5】
前記反応工程で添加するカルシウム化合物の添加量が、前記濃縮水に存在するホウ素に対して質量比でCa/B=0.5?5.0の範囲である、請求項1?4のいずれか一項に記載のホウ素除去方法。
【請求項6】
前記混合工程に導入する前記脱水ろ液の水量が以下の式で表せる範囲内である請求項1?5のいずれか一項に記載のホウ素除去方法。
A×(B-10)/(2,000-B)?A×B/(500-B)
(ただし、Aは非濃縮水水量、Bは混合液ホウ素濃度(求める水質により任意に設定))
【請求項7】
前記脱水汚泥のホウ素含有率が、4%以上であることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載のホウ素除去方法。
【請求項8】
ホウ素含有水をホウ素濃度が2,000mg/L以上の濃縮水とホウ素濃度が10mg/L以下の非濃縮水とに分離する濃縮装置と、前記濃縮水にカルシウム化合物を添加して不溶性析出物が分散し、pHを8?10、液温を40℃以下とした反応液を形成させる反応槽と、前記反応液を脱水ろ液と脱水汚泥とに分離する汚泥脱水機と、前記脱水ろ液の一部又は全量を前記非濃縮水と混合して混合液を得る混合槽と、前記脱水ろ液のうち前記混合槽に導入されなかった脱水ろ液の残部を前記濃縮装置へと導入する機構とを備えたホウ素除去装置。
【請求項9】
前記濃縮装置が、蒸発濃縮装置である請求項8に記載のホウ素除去装置。
【請求項10】
前記濃縮装置が、アニオン交換樹脂、希土類元素の含水酸化物を担持した造粒体、N-メチルグルカミン基を導入したイオン交換樹脂、または、N-メチルグルカミン基を導入した繊維状吸着材の群から選択される1種または2種以上の吸着材を充填した吸着塔であり、前記吸着材に吸着したホウ素を溶離薬剤で溶離して前記濃縮液を得る、請求項8に記載のホウ素除去装置。
【請求項11】
前記濃縮装置の前段にホウ素含有水のpHを調整するpH調整槽を有し、前記混合槽に導入されなかった脱水ろ液の残部を前記濃縮装置へと導入する機構は、前記pH調整槽に前記脱水ろ液の残部を導入するものである請求項8?10のいずれか一項に記載のホウ素除去装置。
【請求項12】
前記反応槽及び混合槽の少なくとも一方は、pH調整剤を導入する機構を有する請求項8?11のいずれか一項に記載のホウ素除去装置。」

第4 原査定についての当審の判断
1 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1には、以下(1a)?(1d)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。)。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】ホウ素含有水を濃縮する第一工程、第一工程からの濃縮水を多価金属イオン存在下に凝集沈殿処理する第二工程、第二工程からの処理水をホウ素吸着樹脂と接触させる第三工程から構成されることを特徴とするホウ素含有水の処理方法。」

(1b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、薬剤の使用量及び汚泥の発生量を減少し、使用する吸着樹脂の量の低減をはかり、回収水の再利用を可能とする、効率的なホウ素含有水の処理方法を提供することを目的としてなされたものである。」

(1c)「【0006】本発明方法においては、第一工程において、ホウ素含有水を濃縮する。…第一工程における濃縮倍率にも特に制限はないが、通常は数十倍の濃縮倍率として、ホウ素(Bとして)濃度が1,000mg/リットル以上となるように濃縮することが好ましい。ホウ素濃度を1,000mg/リットル以上とすることにより、第二工程において効果的に凝集沈殿処理することができる。第一工程において、濃縮水及び凝縮水としての清澄水が得られる。清澄水は純度が高いので、回収して再利用することができる。…
【0007】本発明方法においては、第二工程において、第一工程で濃縮されたホウ素含有水を、多価金属イオン存在下に凝集沈殿処理する。多価金属イオンには特に制限はなく、例えば、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン鉄イオンなどを挙げることができる。…ホウ素と多価金属イオンが共存する濃縮水のpHを調整し、多価金属イオンを不溶化し、沈殿物とすることにより、沈殿の際にホウ素を取り込んで共沈する。調整するpHの値は、多価金属イオンによって異なるので、最も沈殿しやすい最適pHを選択してpH調整することが好ましい。適当なpH範囲は、例えば、アルミニウムイオンの場合は5?8、マグネシウムイオンの場合は9.5以上、鉄イオン(3価)の場合は4以上である。濃縮水を多価金属イオンの存在下に凝集沈殿処理することにより、低濃度域では除去が困難であった水中のホウ素を除去することができる。凝集沈殿処理により生成した沈殿物は、固液分離により凝集処理水から分離することができる。使用する固液分離方法には特に制限はなく、例えば、沈殿、ろ過、膜分離などを挙げることができる。…
【0008】本発明方法においては、第二工程からの処理水をホウ素吸着樹脂と接触させることにより、水中に残存するホウ素を除去する。…第二工程からの処理水が数千mg/リットル程度のホウ素を含有する場合でも、ホウ素吸着樹脂と接触させることにより、水中のホウ素の濃度を1mg/リットル以下とすることができる。…図1は、本発明方法の一態様の工程系統図である。ホウ素含有水は蒸留塔1へ送られ、濃縮される。蒸留塔の塔頂より出る蒸気は、凝縮器2で凝縮され、凝縮水として再利用される。蒸留塔の濃縮水は、凝集沈殿槽3へ送られ、pH調整されてホウ素の相当部分が汚泥中に排出される。凝集沈殿処理した処理水は、ホウ素吸着樹脂塔4へ送られ、ホウ素が吸着除去され、ホウ素濃度1mg/リットル以下の最終処理水として放流される。

【0014】
【発明の効果】本発明方法によれば、ホウ素含有水から効率的にホウ素を除去することができ、さらに大部分の水を回収して再使用し、排水量を減少することができる。また、従来技術に比べて薬剤添加量を大幅に減少し、汚泥発生量も減少することができる。」

(1d)「【図1】



(2)前記(1)(1a)、(1c)、(1d)によれば、引用文献1には「ホウ素含有水の処理方法」が記載されており、当該「ホウ素含有水の処理方法」は、ホウ素含有水を濃縮する第一工程、第一工程からの濃縮水を多価金属イオン存在下に凝集沈殿処理する第二工程、第二工程からの処理水をホウ素吸着樹脂と接触させる第三工程から構成されるものであることが分かる。
すなわち、前記「ホウ素含有水の処理方法」は、第一工程においてホウ素含有水を濃縮するものであり、第一工程における濃縮倍率としては、ホウ素(Bとして)濃度が1,000mg/リットル以上となるように濃縮することが好ましいものであり、第一工程においては、濃縮水及び凝縮水としての清澄水が得られ、清澄水は純度が高いので、回収して再利用することができるものである。
また、前記「ホウ素含有水の処理方法」は、第二工程において、第一工程で濃縮されたホウ素含有水を、多価金属イオン存在下に凝集沈殿処理するものであり、多価金属イオンには特に制限はなく、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン鉄イオンなどを挙げることができるものであり、ホウ素と多価金属イオンが共存する濃縮水のpHを調整し、多価金属イオンを不溶化し、沈殿物とすることにより、沈殿の際にホウ素を取り込んで共沈するものであり、調整するpHの値は、多価金属イオンによって異なるので、最も沈殿しやすい最適pHを選択してpH調整することが好ましく、適当なpH範囲は、アルミニウムイオンの場合は5?8、マグネシウムイオンの場合は9.5以上、鉄イオン(3価)の場合は4以上であるものであり、その上、凝集沈殿処理により生成した沈殿物は、固液分離により凝集処理水から分離することができ、使用する固液分離方法には、沈殿、ろ過、膜分離などを挙げることができるものである。
更に、前記「ホウ素含有水の処理方法」は、第二工程からの処理水をホウ素吸着樹脂と接触させることにより、水中に残存するホウ素を除去するものであり、第二工程からの処理水が数千mg/リットル程度のホウ素を含有する場合でも、ホウ素吸着樹脂と接触させることにより、水中のホウ素の濃度を1mg/リットル以下とすることができるものである。
そして、前記「ホウ素含有水の処理方法」においては、ホウ素含有水は蒸留塔へ送られて濃縮され、蒸留塔の塔頂より出る蒸気は凝縮器で凝縮され、凝縮水として再利用されるものであり、蒸留塔の濃縮水は、凝集沈殿槽へ送られ、pH調整されてホウ素の相当部分が汚泥中に排出され、凝集沈殿処理した処理水は、ホウ素吸着樹脂塔へ送られ、ホウ素が吸着除去され、ホウ素濃度1mg/リットル以下の最終処理水として放流されるものであり、その上、前記「ホウ素含有水の処理方法」は、ホウ素含有水から効率的にホウ素を除去することができ、さらに大部分の水を回収して再使用し、排水量を減少することができ、従来技術に比べて薬剤添加量を大幅に減少し、汚泥発生量も減少することができるものである。

(3)前記(2)によれば、引用文献1には、
「ホウ素含有水を濃縮する第一工程、第一工程からの濃縮水を多価金属イオン存在下に凝集沈殿処理する第二工程、第二工程からの処理水をホウ素吸着樹脂と接触させる第三工程から構成される、ホウ素含有水の処理方法であって、
第一工程における濃縮倍率としては、ホウ素(Bとして)濃度が1,000mg/リットル以上となるように濃縮することが好ましく、第一工程においては、濃縮水及び凝縮水としての清澄水が得られ、清澄水は純度が高いので、回収して再利用することができるものであり、
第二工程において、第一工程で濃縮されたホウ素含有水を、多価金属イオン存在下に凝集沈殿処理するものであり、多価金属イオンには特に制限はなく、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン鉄イオンなどを挙げることができ、ホウ素と多価金属イオンが共存する濃縮水のpHを調整し、多価金属イオンを不溶化し、沈殿物とすることにより、沈殿の際にホウ素を取り込んで共沈するものであり、調整するpHの値は、多価金属イオンによって異なるので、最も沈殿しやすい最適pHを選択してpH調整することが好ましく、適当なpH範囲は、アルミニウムイオンの場合は5?8、マグネシウムイオンの場合は9.5以上、鉄イオン(3価)の場合は4以上であるものであり、
凝集沈殿処理により生成した沈殿物は、固液分離により凝集処理水から分離することができ、使用する固液分離方法には、沈殿、ろ過、膜分離などを挙げることができるものであり、
更に、第二工程からの処理水をホウ素吸着樹脂と接触させることにより、水中に残存するホウ素を除去するものであり、第二工程からの処理水が数千mg/リットル程度のホウ素を含有する場合でも、ホウ素吸着樹脂と接触させることにより、水中のホウ素の濃度を1mg/リットル以下とすることができるものであり、
ホウ素含有水は蒸留塔へ送られて濃縮され、蒸留塔の塔頂より出る蒸気は凝縮器で凝縮され、凝縮水として再利用され、蒸留塔の濃縮水は、凝集沈殿槽へ送られ、pH調整されてホウ素の相当部分が汚泥中に排出され、凝集沈殿処理した処理水は、ホウ素吸着樹脂塔へ送られ、ホウ素が吸着除去され、ホウ素濃度1mg/リットル以下の最終処理水として放流され、
ホウ素含有水から効率的にホウ素を除去することができ、さらに大部分の水を回収して再使用し、排水量を減少することができ、従来技術に比べて薬剤添加量を大幅に減少し、汚泥発生量も減少することができる、ホウ素含有水の処理方法。」
の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているといえる。
また、引用文献1には、
「引用1発明のホウ素含有水の処理方法に用いられるホウ素含有水の処理装置であって、蒸留塔、凝縮器、凝集沈殿槽及びホウ素吸着樹脂塔を有する、ホウ素含有水の処理装置。」
の発明(以下、「引用1’発明」という。)が記載されているといえる。

2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
(ア)本願発明1と引用1発明とを対比すると、引用1発明における「濃縮水」及び「凝縮水」は、それぞれ、本願発明1における「濃縮水」及び「非濃縮水」に相当し、引用1発明における「ホウ素含有水を濃縮する第一工程」は、本願発明1における「ホウ素含有水を」「濃縮水と」「非濃縮水とに分離する濃縮工程」に相当し、引用1発明における「第一工程からの濃縮水を多価金属イオン存在下に凝集沈殿処理する第二工程」は、本願発明1における「前記濃縮水に」「カルシウム化合物を添加して不溶性析出物が分散した反応液を形成させる反応工程」に相当し、引用1発明において、「凝集沈殿処理により生成した沈殿物」を「固液分離により凝集処理水から分離する」ことは、本願発明1における「前記反応液を脱水ろ液と脱水汚泥とに分離する汚泥脱水工程」に相当し、引用1発明における「ホウ素含有水の処理方法」は、本願発明1における「ホウ素除去方法」に相当する。

(イ)前記(ア)によれば、本願発明1と引用1発明とは、
「ホウ素含有水を濃縮水と非濃縮水とに分離する濃縮工程と、前記濃縮水にカルシウム化合物を添加して不溶性析出物が分散した反応液を形成させる反応工程と、前記反応液を脱水ろ液と脱水汚泥とに分離する汚泥脱水工程とを含むホウ素除去方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:本願発明1は、「濃縮水」が「ホウ素濃度が2,000mg/L以上の」ものであり、「非濃縮水」が「ホウ素濃度が10mg/L以下の」ものであるのに対して、引用1発明は、「濃縮水」が「ホウ素(Bとして)濃度が1,000mg/リットル以上」のものであり、「非濃縮水」のホウ素濃度は明らかでない点。

・相違点2:本願発明1は、「反応工程」が、「アルミニウム化合物を添加することなくカルシウム化合物を添加」するものであるのに対して、引用1発明においては、「多価金属イオンには特に制限はなく、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン鉄イオンなどを挙げることができ」る点。

・相違点3:本願発明1は、「ホウ素除去方法」が、「前記脱水ろ液の一部又は全量を前記非濃縮水と混合して混合液を得る混合工程」「を含」む、との発明特定事項を有するのに対して、引用1発明は前記発明特定事項を有しない点。

・相違点4:本願発明1は、「ホウ素除去方法」が、「前記脱水ろ液のうち前記混合工程に導入されなかった脱水ろ液の残部を前記濃縮工程へと導入する工程とを含」む、との発明特定事項を有するのに対して、引用1発明は前記発明特定事項を有しない点。

・相違点5:本願発明1は、「ホウ素除去方法」が、「前記反応工程でカルシウム化合物を添加後、pHを8?10に調整する工程を含み、前記反応工程における前記反応液の液温が40℃以下である」、との発明特定事項を有するのに対して、引用1発明は前記発明特定事項を有しない点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記ア(イ)の相違点3から検討すると、前記1(1)(1b)によれば、引用1発明は、薬剤の使用量及び汚泥の発生量を減少し、使用する吸着樹脂の量の低減をはかり、回収水の再利用を可能とする、効率的なホウ素含有水の処理方法を提供することを目的とするものであって、引用1発明の「濃縮工程」において得られる「非濃縮水」は純度が高いので、回収して再利用することができるものであり、具体的には、蒸留塔の塔頂より出る蒸気は凝縮器で凝縮され、「非濃縮水」として再利用されるものであり、これにより、引用1発明は、大部分の水を回収して再使用し、排水量を減少することができるものである。

(イ)他方、引用1発明における「脱水ろ液」は、ホウ素吸着樹脂塔へ送られ、ホウ素が吸着除去されて、ホウ素濃度1mg/リットル以下の最終処理水として放流されるものであり、そのような「脱水ろ液」の純度は、高々放流に適する程度の純度であって、回収水として再利用できる程度の高純度ではないことが強く推認されるものである。

(ウ)そうすると、引用1発明において、回収水として再利用できる程度の高純度ではないことが強く推認される「脱水ろ液」の一部又は全量を、純度が高く、回収水として再利用される「非濃縮水」と混合して「混合液を得る混合工程」「を含」むものとすると、一旦、回収水として再利用できる程度に純度を高くした「非濃縮水」の純度を再び悪化させることとなるから、引用1発明において、「ホウ素除去方法」を、「前記脱水ろ液の一部又は全量を前記非濃縮水と混合して混合液を得る混合工程」「を含」むものとすることには、阻害要因が存するものと認められる。

(エ)そうである以上、引用1発明において、「ホウ素除去方法」を、「前記脱水ろ液の一部又は全量を前記非濃縮水と混合して混合液を得る混合工程」「を含」むものとして、前記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることは、前記阻害要因に照らすと、当業者が容易になし得る事項とはいえず、このことは、引用文献2?4の記載事項に左右されるものでもない。

(オ)したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2?7について
本願発明2?7は、いずれも直接的又は間接的に本願発明1を引用するものであって、本願発明2?7と引用1発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記(1)ア(イ)の相違点3の点で相違する。
そして、引用1発明において、「ホウ素除去方法」を、「前記脱水ろ液の一部又は全量を前記非濃縮水と混合して混合液を得る混合工程」「を含」むものとすることは、阻害要因が存するため容易想到の事項といえないことは、前記(1)イに記載のとおりであって、このことは、本願出願日における周知技術に左右されるものでもない。
そうすると、前記(1)イに記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明2?7も、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、又は、引用文献1に記載された発明、引用文献2?4に記載された事項及び本願出願日における周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本願発明8について
ア 対比
前記(1)アに記載したのと同様にして、本願発明8と引用1’発明とを対比すると、本願発明8と引用1’発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
・相違点6:本願発明8は、「ホウ素除去装置」が、「前記脱水ろ液の一部又は全量を前記非濃縮水と混合して混合液を得る混合槽」「を備え」る、との発明特定事項を有するのに対して、引用1’発明は前記発明特定事項を有しない点。

イ 判断
(ア)以下、前記アの相違点6について検討すると、前記(1)イのとおり、引用1発明において、「ホウ素除去方法」を、「前記脱水ろ液の一部又は全量を前記非濃縮水と混合して混合液を得る混合工程」「を含」むものとすることが容易想到の事項でないとしたのと同様の理由により、引用1’発明において、「ホウ素除去装置」を、「前記脱水ろ液の一部又は全量を前記非濃縮水と混合して混合液を得る混合槽」「を備え」るものとして、前記相違点6に係る本願発明8の発明特定事項を有するものとすることも、当業者が容易に想到し得る事項とはいえない。

(イ)したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明8は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本願発明9?12について
本願発明9?12は、いずれも直接的又は間接的に本願発明8を引用するものであって、本願発明9?12と引用1’発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記(3)アの相違点6の点で相違する。
そして、引用1’発明において、「ホウ素除去装置」を、「前記脱水ろ液の一部又は全量を前記非濃縮水と混合して混合液を得る混合槽」「を備え」るものとすることは、前記(3)イに記載のとおり容易想到の事項とはいえず、このことは、本願出願日における周知技術に左右されるものでもないから、前記(3)イに記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明9?12も、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、又は、引用文献1に記載された発明、引用文献2?4に記載された事項及び本願出願日における周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)小括
以上の検討のとおり、本願発明1?12を、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、又は、引用文献1に記載された発明、引用文献2?4に記載された事項及び本願出願日における周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、前記第2の原査定の拒絶の理由はいずれも理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-30 
出願番号 特願2015-160450(P2015-160450)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 岡田 隆介
金 公彦
発明の名称 ホウ素除去方法及びホウ素除去装置  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 宮崎 昭夫  
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