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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
管理番号 1372668
異議申立番号 異議2019-700848  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-24 
確定日 2021-01-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6506461号発明「導電性粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6506461号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6506461号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6506461号の請求項1?3の特許についての出願は、平成30年10月29日(優先権主張 平成30年2月1日)に出願され、平成31年4月5日にその特許権の設定登録がされ、同年4月24日に特許掲載公報が発行された。その後、令和元年10月24日に、全請求項に対して、特許異議申立人である千阪実木より本件特許異議の申立てがされた。
本件特許異議申立事件における手続の経緯は、次のとおりである。
令和 2年 2月 7日付け:取消理由通知
同年 4月 9日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 5月20日 :意見書の提出(特許異議申立人)
同年 7月21日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 9月15日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年11月 2日 :意見書の提出(特許異議申立人)
なお、令和2年4月9日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否

1 訂正の内容
令和2年9月15日にされた訂正の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3に訂正することを求めるものであり、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する訂正前の請求項〔1-3〕を訂正の単位として請求されたものである。
そして、当該訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容(訂正事項)は、特許請求の範囲の請求項1に、「前記粘着剤層は、アクリル共重合体と、金属フィラーとを含有し、下記式(1)により算出したa値が0以上であり、」と記載されているのを、「前記粘着剤層は、アクリル共重合体と、金属フィラーとを含有し、下記式(1)により算出したa値が0以上30以下であり、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3も同様に訂正する。)、というものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記の訂正事項は、本件訂正前の請求項1?3に対して、a値の上限値(30以下)を付加するものであり、当該上限値は、本件特許明細書【0020】の「特に好ましい上限は30」という記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 本件訂正についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正は適法にされたものであり認容し得るものであるから、本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明3」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
導電性基材と、前記導電性基材の少なくとも一方の面に配置された粘着剤層とを有する導電性粘着テープであって、
前記粘着剤層は、アクリル共重合体と、金属フィラーとを含有し、下記式(1)により算出したa値が0以上30以下であり、
前記粘着剤層の厚み(D)に対する体積基準の累積分布が70%となるときの金属フィラーの粒子径(d70)の比(d70/D)が0.9以上である
ことを特徴とする導電性粘着テープ。
a値=(25×M)+{22×(d70/D)}-3×(d70-d40)-18 (1)
M:前記粘着剤層の体積に対する前記金属フィラーの金属量(体積%)
D:前記粘着剤層の厚み(μm)
d40:体積基準の累積分布が40%となるときの前記金属フィラーの粒子径(μm)
d70:体積基準の累積分布が70%となるときの前記金属フィラーの粒子径(μm)
【請求項2】
粘着剤層の厚み(D)が30μm以下であることを特徴する請求項1記載の導電性粘着テープ。
【請求項3】
体積基準の累積分布が70%となるときの金属フィラーの粒子径(d70)と、体積基準の累積分布が40%となるときの金属フィラーの粒子径(d40)との差(d70-d40)が40μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性粘着テープ。」

第4 取消理由について

1 取消理由の概要
令和2年7月21日付けの取消理由通知(決定の予告)において指摘した取消理由は、要するに、本件発明1?3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明にあたる、後記の甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(特許法第113条第2号)、という進歩性の欠如に関するものであった。
以下、当該取消理由の妥当性について検討をする。

2 甲第1号証とその記載事項
特許異議申立人が提出した甲第1号証(以下、単に「甲1」という。)は、本件特許の優先日前に出願公開された、特開2013-245234号公報であり、その【実施例】には、以下の記載がある(なお、下線は当審が付したもの)。
・「【実施例】
【0043】
以下に実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
(アクリル系粘着剤組成物の調整)
[アクリル系粘着剤組成物1の調製]
冷却管、撹拌機、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器にn-ブチルアクリレート75.0質量部、2-エチルヘキシルアクリレート19.0質量部、酢酸ビニル3.9部、アクリル酸2.0部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部と重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.1質量部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、窒素置換後、80℃で12時間重合し、質量平均分子量60万のアクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体溶液の固形分100質量部に対し、重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学(株)製、ペンセルD-135、軟化点135℃)10質量部、不均化ロジングリセリンエステル(荒川化学(株)製、スーパーエステルA-100、軟化点100℃)10質量部を配合し、酢酸エチルで樹脂固形分濃度を45質量%に調整して、アクリル系粘着剤組成物1を調整した。
・・・
【0052】
[粒子分散型導電性粘着剤組成物Gの作成]
前記アクリル系粘着剤組成物1 100質量部(固形分45質量部)に対して、福田金属箔粉工業社製銅粉CU-HWQ10μm(d50:10.0μm、d85:13.0μm、タップ密度:4.7g/cm^(3)、超高圧旋回水アトマイズ極微粉末)22.5質量部、架橋剤バーノックNC40(DIC社製のイソシアネート系架橋剤、固形分40質量%)2質量部を配合し、酢酸エチルで固形分濃度を47質量%に調整し、分散攪拌機で10分混合して粒子分散型導電性粘着剤Gを作成した。
・・・
【0057】
(実施例1)
[導電性粘着シートの作成]
粒子分散型導電性粘着剤組成物Aをニッパ社製剥離フィルム「PET38×1 A3」上に乾燥後の粘着剤層の厚さが10μmになるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた後、厚さ9μmの電解銅箔(CF-T9FZ-SV、福田金属箔粉工業社製)の両面に貼り合わせたのち、40℃で48時間養生して、実施例1の導電性粘着シートを作成した。
・・・
【0066】
(実施例10)
粒子分散型導電性粘着剤組成物Aの代わりに粒子分散型導電性粘着剤組成物Gを用いた以外は実施例1と同様に実施例10の導電性粘着シートを作成した。
・・・
【0074】
(評価)
実施例1?12、比較例1?3で作成した導電性粘着シートについて、粘着シート厚み、導電性、接着力、生産性を評価した。
・・・
【0081】
[粒子径]
導電性粒子の粒子径は、島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定器SALD-3000で、分散媒にイソプロパノールを使用して測定した。
・・・
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

・・・
【0086】
上記表から明らかなとおり、本願発明の実施例1?12の粘着シートは、薄型であっても良好な接着性、導電性を有し、塗工スジや沈降が生じにくく、生産性にも優れるものであった。一方、比較例1?5の粘着シートは、これら導電性や生産性を兼備するものではなかった。」
また、甲1の【0016】には、導電性粒子の含有量について、次のように記載されている。
・「【0016】
導電性粘着剤層中の導電性粒子の含有量としては、特に限定されるものではないが、導電性粘着剤層中の10?65質量%が好ましく、さらに好ましくは20?50質量%であり、より好ましくは22?41質量%であり、28?38質量%が最も好ましい。導電性粒子の含有量を上記範囲にすることで、導電性・接着性・生産性を両立しやすくなる。」

3 甲1発明の認定
甲1の【実施例】には、「実施例10」(【0066】)として、アクリル系共重合体を有するアクリル系粘着剤組成物1(【0044】)に対して、福田金属箔粉工業社製銅粉CU-HWQ10μm(d50:10.0μm、d85:13.0μm、タップ密度:4.7g/cm^(3)、超高圧旋回水アトマイズ極微粉末)を配合した粒子分散型導電性粘着剤G(【0052】)を、剥離フィルムに塗工後乾燥させて、厚さ7μmの粘着剤層を得て、これを厚さ9μmの電解銅箔の両面に貼り合わせて作成した導電性粘着シート(【0057】及び【0084】【表2】)が記載されているから、甲1には、当該実施例10に係る次の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されているといえる。
・「厚さ9μmの電解銅箔と、前記電解銅箔の両面に貼り合わせた厚さ7μmの粘着剤層とを有する導電性粘着シートであって、
前記粘着剤層は、アクリル系共重合体と、福田金属箔粉工業社製銅粉CU-HWQ10μm(d50:10.0μm、d85:13.0μm、タップ密度:4.7g/cm^(3)、超高圧旋回水アトマイズ極微粉末)とを含有するもの。」

4 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 主要構成について
甲1発明における「厚さ9μmの電解銅箔電解銅箔」、「電解銅箔の両面に貼り合わせた厚さ7μmの粘着剤層」、「導電性粘着シート」、「アクリル系共重合体」及び「福田金属箔粉工業社製銅粉CU-HWQ10μm」はそれぞれ、本件発明1における「導電性基材」、「導電性基材の少なくとも一方の面に配置された粘着剤層」、「導電性粘着テープ」、「アクリル共重合体」及び「金属フィラー」に相当するものである。
イ 「d70/D」値について
甲1発明における「D」値(粘着剤層の厚み)は、7μmである。他方、甲1発明における「d70」値は不明であるが、d50=10.0及びd85=13.0であるから、当該「d70」値が、これらの間(10.0<d70<13.0)にあることは明らかである。
したがって、甲1発明における「d70/D」値は、10/7(約1.4)以上であり、本件発明1が規定する「0.9以上」という要件を満足するものといえる。
ウ 一致点・相違点
そうすると、両者は、次の一致点及び相違点を有するものということができる。
・一致点
「導電性基材と、前記導電性基材の少なくとも一方の面に配置された粘着剤層とを有する導電性粘着テープであって、
前記粘着剤層は、アクリル共重合体と、金属フィラーとを含有し、
前記粘着剤層の厚み(D)に対する体積基準の累積分布が70%となるときの金属フィラーの粒子径(d70)の比(d70/D)が0.9以上である」点。
・相違点
本件発明1は、a値=(25×M)+{22×(d70/D)}-3×(d70-d40)-18という式により算出したa値が0以上30以下であるのに対して、甲1発明は、当該a値を明示していない点。
(2) 相違点についての検討
甲1発明におけるa値は、本件発明1が規定する「0以上30以下」という要件を満たすものと考えることはできず、これを容易想到の事項ということもできない。
その理由は以下のとおりである。
ア 上記a値を算出するには、「M」値(粘着剤層の体積に対する金属フィラーの金属量(体積%))、「d70」値、「D」値及び「d40」値が必要となるところ、上記(1)イのとおり、甲1発明における「D」値は、7であり、「d70」値は、10.0<d70<13.0であることが分かるものの、「d40」値及び「M」値は不明である。
イ そこで、まず、甲1発明における「d40」値についてみるため、甲1発明において使用されている「福田金属箔粉工業社製銅粉CU-HWQ10μm(d50:10.0μm、d85:13.0μm、タップ密度:4.7g/cm^(3)、超高圧旋回水アトマイズ極微粉末)」の粒度分布について考えると、当該「CU-HWQ10μm」は、旋回水ジェットを用いた高圧水アトマイズ法により製造されたものであるところ、一般に、当該方法によれば、粒度分布の幅が狭い金属粉末を効率よく製造することができることが知られているから(福田金属箔粉工業株式会社が出願人となっている国際公開第00/38865号や特開2004-269956号公報を参酌した。)、当該「CU-HWQ10μm」の粒度分布の幅は狭く、その「d40」値は、その「d50」値(10.0μm)に比較的近い数値であると考えるのが合理的である。
参考までに、特許異議申立人が甲第2号証として提出した、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布計による下記測定結果をみてみる。

当該測定結果によると、当該測定に供された「CU-HWQ10μm」の「d40」値は、8.482<d40<9.250であることが分かる。ただし、当該測定に供された「CU-HWQ10μm」は、その「d50」値が「9.681」であり、「d85」値が14.27<d85<15.56であるから、厳密には、甲1に記載された上記「福田金属箔粉工業社製銅粉CU-HWQ10μm(d50:10.0μm、d85:13.0μm、タップ密度:4.7g/cm^(3)、超高圧旋回水アトマイズ極微粉末)」とは異なるものである。
しかしながら、両者は同じ製品カテゴリーのものである以上、粒度分布において大きな差が存するものとは考えにくいことから、この測定結果からみても、甲1発明のものの「d40」値は、上記したとおり、10μmに比較的近い数値、具体的には、8?10μm程度であると考えるのが合理的である。
ウ 次に、甲1発明における「M」値について考えると、甲1の【0084】【表2】の実施例10の欄には、接着剤の導電性粒子含有量[質量%]は、「32.9」と記載されているから、甲1発明において、粘着剤層の総質量に対する金属フィラーの金属量は、32.9質量%であることが分かる。
そして、粘着剤層中には、当該金属フィラー以外にアクリル共重合体等を含有するところ、当該アクリル共重合体等の含有量は、67.1質量%ということになる。
そうすると、銅の密度(8.96g/cm^(3))、及び、粘着剤層中のアクリル共重合体等の密度を少なめにみて1g/cm^(3)程度と考えると、「M」値は、おおよそ5.2(=100*(32.9/8.96)/{67.1/1+(32.9/8.96)})となる(なお、実際のアクリル共重合体等の密度は1g/cm^(3)よりも大きいことが予想されるから、当該「M」値は、5.2を上回ると推認することができる。)。
したがって、質量%を体積%に単位換算した甲1発明の「M」値は、5.2を上回ると解するのが合理的である。
エ 上記ア?ウからすると、甲1発明におけるa値は、本件発明1が規定する上限値30を優に超えるもの(約130超)であることが分かる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、上記a値が異なるものであるから、上記相違点は、実質的な相違点である。
オ そこで、さらに、当該相違点に係る本件発明1の構成の容易想到性について検討を進めると、甲1の【0016】には、導電性粘着剤層中の導電性粒子の含有量につき、導電性粘着剤層中の10?65質量%が好ましいことが記載され、さらに、同【0083】【表1】には、実施例1、4、5にみられるように、金属粉の種類や粘着剤層厚みは一定とし、導電性粒子(金属粉)の含有量のみを増減させた具体例が記載されているから、甲1発明において、金属粉の種類や粘着剤層厚みはそのままに、その導電性粒子(金属粉)の含有量のみを、上記【0016】記載の教示に従って、10質量%としてみることは、当業者にとって容易なことというべきである。
しかしながら、この場合、上記ウと同様に、当該質量%を、体積%である「M」値に換算してみると、当該「M」値は、粘着剤層中のアクリル共重合体等の密度を少なく見積もって1g/cm^(3)程度としたときには、「約1.2」となり、同アクリル共重合体等の密度を多く見積もって2g/cm^(3)程度としたときには、「約2.4」となるから、甲1発明において、その導電性粒子(金属粉)の含有量のみを10質量%とした場合においても、そのa値は、本件発明1が規定する上限値を超えるものとなってしまう。
そして、本件発明1においては、上記a値の上限を30とすることにより、導電性粘着テープの電磁波シールド性及び導電性と、粘着性能のバランスとがとれた導電性粘着テープが得られた(本件明細書【0020】)という格別顕著な作用効果を奏するものであって、そのことは、実施例において確認されているといえる。
したがって、上記相違点に係る本件発明1の構成を容易想到の事項ということはできない。
(3) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明に対して進歩性を欠如するということはできない。

5 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明に対して進歩性を欠如するものではない。

6 まとめ
以上の検討のとおり、本件発明1?3は、甲1発明に対して進歩性を欠如するということはできないから、上記取消理由によって、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。

第5 上記取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について

特許異議申立人は、特許異議申立理由として、上記のとおり検討した甲1発明に対する進歩性欠如のほかに、新規性欠如についても主張するが、本件発明と甲1発明との間に実質的な相違点が存在することは、上記第4の4(2)エのとおりであるから採用できない。
また、特許異議申立人は、令和2年11月2日提出の意見書において、進歩性欠如に関して、本件発明におけるa値は、その技術的意義が不明であるため重要ではなく、導電性粒子の含有量、導電性粒子の粒子径、粘着剤層厚さ及び粒子径と粘着剤層厚さの関係性に技術的意義があるものと認識すべきであるから、甲1には導電性、接着性、生産性を最適化する動機付け及び手段の開示があることに照らすと、甲1の記載に接した当業者が当該関係性を調整し、その結果a値を0以上30以下とすることは、容易になし得る事項である旨主張する。
しかしながら、本件発明においてa値の技術的意義は不明とはいえないし(本件明細書【0020】)、また、甲1発明において、導電性粒子の含有量を調整するだけでは本件発明が規定するa値の範疇に入らないことは、上記第4の4(2)オのとおりであるし、本件発明のa値の範囲のものとするためには、調整すべき他の因子が多岐にわたることを考えると、当該a値の範囲内の値のものとすることがたやすいことともいえないから、本件発明におけるa値の技術的意義が仮にないとしても、当該a値に係る本件発明の構成を、甲1発明における導電性粒子の含有量などの最適化の結果と捉えて、単なる設計的事項とすることはできない。
したがって、上記主張を採用することもできない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本件の請求項1?3に係る特許について、上記取消理由及び特許異議申立理由により、これらを取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材と、前記導電性基材の少なくとも一方の面に配置された粘着剤層とを有する導電性粘着テープであって、
前記粘着剤層は、アクリル共重合体と、金属フィラーとを含有し、下記式(1)により算出したa値が0以上30以下であり、
前記粘着剤層の厚み(D)に対する体積基準の累積分布が70%となるときの金属フィラーの粒子径(d70)の比(d70/D)が0.9以上である
ことを特徴とする導電性粘着テープ。
a値=(25×M)+{22×(d70/D)}-3×(d70-d40)-18(1)
M:前記粘着剤層の体積に対する前記金属フィラーの金属量(体積%)
D:前記粘着剤層の厚み(μm)
d40:体積基準の累積分布が40%となるときの前記金属フィラーの粒子径(μm)
d70:体積基準の累積分布が70%となるときの前記金属フィラーの粒子径(μm)
【請求項2】
粘着剤層の厚み(D)が30μm以下であることを特徴する請求項1記載の導電性粘着テープ。
【請求項3】
体積基準の累積分布が70%となるときの金属フィラーの粒子径(d70)と、体積基準の累積分布が40%となるときの金属フィラーの粒子径(d40)との差(d70-d40)が40μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性粘着テープ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-01-13 
出願番号 特願2018-203148(P2018-203148)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 澤村 茂実  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 日比野 隆治
門前 浩一
登録日 2019-04-05 
登録番号 特許第6506461号(P6506461)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 導電性粘着テープ  
代理人 虎山 滋郎  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
代理人 虎山 滋郎  
代理人 特許業務法人安富国際特許事務所  
代理人 田口 昌浩  
代理人 田口 昌浩  
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