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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G09F
管理番号 1372691
異議申立番号 異議2020-700021  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-16 
確定日 2021-02-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6545456号発明「表示灯」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6545456号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,〔2-6〕について訂正することを認める。 特許第6545456号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6545456号(請求項の数5。以下,「本件特許」という。)に係る出願は,平成26年12月17日(優先権主張 平成26年3月24日)に出願されたものであって,令和1年6月28日に特許権の設定登録がされたものである。
その後,同年7月17日に本件特許について特許掲載公報の発行がされたところ,令和2年1月16日に特許異議申立人(以下,「申立人」という。)により請求項1に係る特許について特許異議の申立てがされ,同年4月22日付けで特許権者に取消理由が通知され,同年7月31日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下,当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされ,同年9月11日に申立人より意見書が提出された。

2 本件訂正の適否についての判断
(1)本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし6について訂正することを求めるというものであるところ,本件訂正は,次の訂正事項からなる。
ア 訂正事項1
訂正前の請求項1に「発光表示部とを有し,」及び「光拡散手段が設けられている」とあるのを,それぞれ「発光表示部と,前記本体部の前端側から外方に張り出すように設けられて,前記防災機器を前記取付面に取り付けるための取付部とを有し,」及び「光拡散手段が設けられており,前記取付部が前記取付面の背面側に配置された取付状態において前記発光表示部が前記取付面から突出しないように構成されている」に訂正する。

イ 訂正事項2
請求項2に「前記光拡散手段は,前記発光表示部の背面側に,前記発光源側に向けて突出する複数の凸部であることを特徴とする請求項1記載の表示灯。」とあるのを,「取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯であって,発光源を収容する本体部と,前記発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部とを有し,前記発光表示部は,リング状に形成されると共に,リング状の発光表示部に囲まれた部位に,押ボタンと押ボタン格納部と発信機本体部を有する発信機が収容され,かつ,前記発光表示部には,前記発光源の光を拡散させる光拡散手段が設けられており,前記光拡散手段は,前記発光表示部の背面側に,前記発光源側に向けて突出する複数の凸部であることを特徴とする表示灯。」に訂正する。(訂正事項2に伴って,請求項2の記載を引用する形式で記載された請求項3についても同じ訂正がなされることになる。)

ウ 訂正事項3
請求項4に「前記光拡散手段は,前記発光表示部の背面側に設けられた湾曲面部によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の表示灯。」とあるのを,「取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯であって,発光源を収容する本体部と,前記発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部とを有し,前記発光表示部は,リング状に形成されると共に,リング状の発光表示部に囲まれた部位に,押ボタンと押ボタン格納部と発信機本体部を有する発信機が収容され,かつ,前記発光表示部には,前記発光源の光を拡散させる光拡散手段が設けられており,前記光拡散手段は,前記発光表示部の背面側に設けられた湾曲面部によって構成されていることを特徴とする表示灯。」に訂正する。

エ 訂正事項4
請求項5に「前記発信機の前面部が前記発光表示部よりも奥側に位置するようになっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表示灯。」とあるのを,「取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯であって,発光源を収容する本体部と,前記発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部とを有し,前記発光表示部は,リング状に形成されると共に,リング状の発光表示部に囲まれた部位に,押ボタンと押ボタン格納部と発信機本体部を有する発信機が収容され,かつ,前記発光表示部には,前記発光源の光を拡散させる光拡散手段が設けられており,前記発信機の前面部が前記発光表示部よりも奥側に位置するようになっていることを特徴とする表示灯。」に訂正する。

オ 訂正事項5
「前記発信機の前面部が前記発光表示部よりも奥側に位置するようになっていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の表示灯。」なる請求項6を新設する。

(2)訂正の目的について
訂正事項1は,請求項1に係る発明について,本件訂正前には,防災機器を取付面に取り付けるための構造としてどのようなものを用いるのかは任意であったものを,「本体部の前端側から外方に張り出すように設けられ」,「取付状態」において「取付面の背面側に配置され」る「取付部」を用いるものに減縮するとともに,本件訂正前には,「取付状態」において発光表示部が取付面から突出するのか否かは任意であったものを,「発光表示部が取付面から突出しない」ものに減縮する訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
訂正事項2及び3は,本件訂正前には,請求項1の記載を引用する形式で記載されていた請求項2及び4について,それぞれ引用関係を解消し,独立形式の記載に改める訂正であるから,同項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当する。
訂正事項4及び5は,請求項1ないし4の記載を択一的に引用する形式で記載された本件訂正前の請求項5のうち,請求項1の記載を引用する部分について,引用形式を解消し,独立形式の記載に改めて,訂正後の請求項5とするとともに,本件訂正前の請求項5のうち,残余の部分(請求項2ないし4の記載を引用する部分)を,訂正後の請求項6とする訂正であるから,同項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当する。
したがって,本件訂正は,同項ただし書の規定に適合する。

(3)新規事項の追加について
ア 訂正事項1によって請求項1に追加されることとなる限定事項は,願書に添付された明細書(以下,願書に添付された明細書を「本件明細書」といい,本件訂正前の願書に添付された特許請求の範囲,願書に添付された明細書,及び願書に添付された図面をあわせて「本件明細書等」という。)の【0015】,【0017】,【0018】等に記載された事項から導き出される事項であるから,訂正事項1による訂正は,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
なお,申立人は,意見書において,訂正事項1による訂正後の請求項1は,発光表示部が取付面と面一で突出しない構成を含むと解されるのに対して,本件明細書(【0018】,【0030】)には,発光表示部が取付面から大きく突出しない構成しか記載されていないから,本件訂正は新規事項を追加するものであり,訂正要件を満足しない旨,主張する。
そこで検討すると,本件明細書の【0018】には,「発光表示部11は,図3に示すように,表示灯1の設置状態において壁面5より大きく突出しないようになっており,従来の一般的な膨出型の表示灯のように側方から物がぶつかって破損することがない。」と記載され,【0030】には,「また,表示灯1 は壁面5 から大きく突出する部分がなく,従来の一般的な膨出型の表示灯1のように側方から物がぶつかって破損することがない。」と記載されているところ,これらの記載から,設置状態において,発光表示部11を壁面5(取付面)より大きく突出しないように構成することによって,側方から物がぶつかっても破損することがないようにするという技術思想が把握される。
ここで,発光表示部11が壁面5から大きく突出するのでなければ,たとえ両者が面一となるように構成されていたり,発光表示部11の先端が壁面5より背面側に位置するように構成されていたりしても,側方から物がぶつかっても破損することがないという効果が得られることは明らかである。
また,発光表示部が取付面から突出しないように構成されているとの構成を具備することによって,側方から物がぶつかっても破損することがないという本件明細書に記載された効果とは異なる効果を奏するものとも認められない。
そうすると,請求項1に係る発明において,発光表示部が取付面から突出しないように構成されているとの発明特定事項を追加することが,当業者によって,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって,申立人の主張は採用できない。

イ 訂正事項2ないし5による訂正後の請求項2ないし6に係る発明は,それぞれ,訂正前の請求項2に係る発明,訂正前の請求項3に係る発明,訂正前の請求項4に係る発明,訂正前の請求項1を引用する請求項5に係る発明,及び請求項2ないし4の記載を引用する請求項5に係る発明であり,新たな発明特定事項は付加されていないから,訂正事項2ないし5が,願書に添付された特許請求の範囲,明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

ウ 以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。

(4)特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
訂正事項1による訂正後の請求項1に係る発明は,訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を全て具備し,これに限定を加えたものであるから,訂正事項1は特許請求の範囲を実質的に拡張し,又は変更するものではない。
また,訂正事項2ないし5による訂正後の請求項2ないし6に係る発明と訂正前の請求項2ないし5に係る発明との間で,発明特定事項に差違はないから,訂正事項2ないし5は特許請求の範囲を実質的に拡張し,又は変更するものではない。
したがって,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

(5)小括
本件訂正前の請求項2ないし5は,本件訂正により訂正される請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する形式で記載されたものであるから,請求項1ないし5は一群の請求項を構成する。ここで,訂正後の請求項2ないし6について,特許権者は,当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めているところ,前記2ないし4のとおり,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正後の請求項1,〔2ないし6〕について訂正することを認める。

3 本件特許の請求項1に係る発明
前記2で述べたとおり,本件訂正は認められるから,本件特許の請求項1に係る発明は,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認められる。

「取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯であって,
発光源を収容する本体部と,前記発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部と,前記本体部の前端側から外方に張り出すように設けられて,前記防災機器を前記取付面に取り付けるための取付部とを有し,
前記発光表示部は,リング状に形成されると共に,リング状の発光表示部に囲まれた部位に,押ボタンと押ボタン格納部と発信機本体部を有する発信機が収容され,
かつ,前記発光表示部には,前記発光源の光を拡散させる光拡散手段が設けられており,前記取付部が前記取付面の背面側に配置された取付状態において前記発光表示部が前記取付面から突出しないように構成されていることを特徴とする表示灯。」(以下,「本件訂正発明」という。)

4 取消理由通知により通知された取消理由の概要
本件訂正前の請求項1に係る特許に関して,令和2年4月22日付けで通知された取消理由は,概略次のとおりである。
(1)甲1を主引例とする取消理由(進歩性欠如)
本件特許の請求項1に係る発明は,甲1発明と甲3技術若しくは第2周知技術(甲3,甲7ないし9)とに基づいて,又は,甲1発明と第1周知技術(周知例:甲4ないし6)と甲3技術若しくは第2周知技術とに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(以下,「取消理由1」という。)

(2)甲2を主引例とする取消理由(進歩性欠如)
本件特許の請求項1に係る発明は,甲2発明と第1周知技術と甲3技術又は第2周知技術とに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(以下,「取消理由2」という。)

取消理由1及び2において引用された引用例及び例示された周知例は次のとおりである。
甲1:意匠登録第1460558号公報
甲2:特開2011-86224号公報
甲3:特開2011-165114号公報
甲4:特開2010-167068号公報
甲5:特開2005-141536号公報
甲6:特開2005-196742号公報
甲7:特開2005-18174号公報
甲8:特開平5-346768号公報
甲9:特開2003-36488号公報

5 取消理由1について
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1は,本件特許の優先権主張の日より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって,当該甲1には,次の記載がある。
(ア) 「【意匠に係る物品の説明】本物品は,消火栓格納箱若しくは消火栓格納箱の付近に設置され,消火栓格納箱の位置及び自動火災報知設備の発信機の位置を示すための表示灯である。本物品は,分解参考斜視図及び使用状態参考横断面図に示す如く,中央部に発信機を取り付けるための略矩形状の開口を有し,赤色に着色された半透明部材から成る環状の表示灯本体と,表示灯本体に着脱自在に螺着され,表示灯本体を消火栓格納箱等へ取り付けるための環状の取り付け部材と,表示灯本体と取り付け部材との間に挟持固定され,発光ダイオード(LEDランプ)を等角度ごとに取り付けた環状の基板とから構成されており,表示灯本体の環状空間に配置された発光ダイオードの光を正面及び周囲に環状に放射するようにしたものである。本物品は,使用状態参考横断面図に示す如く,例えば,表示灯本体と取り付け部材とで消火栓格納箱の正面板(火報扉)を挟み込むことによって消火栓格納箱の前面に取り付けられており,表示灯本体の内方には自動火災報知設備の発信機が取り付けられる。本物品は,使用状態参考図に示す如く,環状に発光させることによって視認性の向上を図れる。また,本物品は,その中央部に発信機を取り付けられるため,本物品及び発信機の設置に必要な面積を,表示灯と発信機を別々の位置に設置していた従来のものに比較して小さくすることができる。
【意匠の説明】右側面図は左側面図と同一にあらわれるため省略する。底面図は平面図と同一にあらわれるため省略する。」

(イ) 「【正面図】



(ウ) 「【左側面図】



(エ) 「【分解参考斜視図】



(オ) 「【使用状態参考横断面図】



(カ) 「【使用状態参考図】



イ 甲1に記載された発明
前記ア(カ)から,発信機における消火栓格納箱の正面板から露出している部分が,中央に位置する黒色の小さな円形の部分と,当該円形の部分の周囲を囲む赤色の同心円状の部分とにより構成されていることが看取されるところ,前記黒色の小さな円形の部分が,火災が発生した際に押下する押しボタンであり,当該押しボタンが押下されることで,発信機が火災が発生したことを報知するための信号を発信することは,当該黒色の小さな円形の部分に「強く押す」という表示がされていることや自動火災報知設備の発信機の機能からみて自明である。
また,前記ア(オ)から,消火栓格納箱の正面板を挟み込むのが,表示灯本体の背面側の外縁部と取り付け部材の正面側の外縁部であることが看取される。
また,前記ア(オ)及び(カ)から,発光ダイオードが発した光が,表示灯本体の環状の部分を通過して,外部に放射されること,及び当該表示灯本体の環状の部分が,消火栓格納箱の正面板から突出していることが把握できる。
したがって,前記ア(ア)ないし(カ)から,甲1に次の発明が記載されていると認められる。
「消火栓格納箱に設置され,前記消火栓格納箱の位置及び自動火災報知設備の発信機の位置を示すための表示灯であって,
中央部に前記発信機を取り付けるための略矩形状の開口を有し,赤色に着色された半透明部材から成る環状の表示灯本体と,前記表示灯本体に着脱自在に螺着され,前記表示灯本体を消火栓格納箱へ取り付けるための環状の取り付け部材と,前記表示灯本体と前記取り付け部材との間に挟持固定され,発光ダイオードを等角度ごとに取り付けた環状の基板とから構成され,
前記発信機は,消火栓格納箱の正面板から露出している部分に,押しボタンと当該押しボタンの周囲を囲む赤色の同心円状の部分とを有しており,
使用状態では,前記表示灯本体の背面側の外縁部と前記取り付け部材の正面側の外縁部とで消火栓格納箱の正面板を挟み込むことによって消火栓格納箱の前面に取り付けられており,前記表示灯本体の内方には前記発信機が取り付けられて,前記表示灯本体の環状空間に配置された前記発光ダイオードが発した光が,前記表示灯本体の環状の部分を通過して,正面及び周囲に環状に放射されるよう構成され,前記表示灯本体の環状の部分が,前記消火栓格納箱の正面板から突出している,
表示灯。」(以下,「甲1発明」という。)

(2)対比
ア 技術的にみて,甲1発明の「消火栓格納箱の正面板」,「自動火災報知設備の発信機」,「表示灯」,「発光ダイオード」,「押しボタン」及び「発信機」は,本件訂正発明の「取付面」,「防災機器」,「表示灯」,「発光源」,「押ボタン」及び「発信機」にそれぞれ対応する。

イ 甲1発明の「表示灯」(本件訂正発明の「表示灯」に対応する。以下,「(2)対比」欄において,「」で囲まれた甲1発明の構成に付した()内の文言は,当該甲1発明の構成に対応する本件訂正発明の発明特定事項を表す。)は,「消火栓格納箱の位置及び自動火災報知設備の発信機」(防災機器)の位置を示すものであるところ,使用状態では,「消火栓格納箱の正面板」(取付面)を挟み込んで取り付けられている。したがって,甲1発明と本件訂正発明は,「取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯」である点で一致する。

ウ 甲1発明の「発光ダイオード」は,表示灯本体と取り付け部材との間に挟持固定された基板に取り付けられているから,表示灯本体と取り付け部材から成る部材に収容されているといえる。したがって,甲1発明の「表示灯本体」及び「取り付け部材」からなる部材は,「発光ダイオード」(発光源)を収容する本体部であるといえ,本件訂正発明の「発光源を収容する本体部」に相当する。

エ 甲1発明は,表示灯本体の環状空間に配置された「発光ダイオード」の光が表示灯本体の環状の部分を通過して正面及び周囲に環状に放射するよう構成されているから,当該「光が通過する表示灯本体の環状の部分」を,「発光ダイオード」(発光源)が発光する光を透光させて光る「発光表示部」ということができる。したがって,甲1発明の「光が通過する表示灯本体の環状の部分」は,本件訂正発明の「発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部」に相当する。

オ 甲1発明の表示灯本体の内方には「自動火災報知設備の発信機」(発信機)が取り付けられ,甲1発明は,使用状態では,表示灯本体の背面側の外縁部と取り付け部材の正面側の外縁部とで「消火栓格納箱の正面板」(取付面)を挟み込むことによって消火栓格納箱の前面に取り付けられているところ,「消火栓格納箱の正面板」(取付面)を挟み込む「表示灯本体の背面側の外縁部及び取り付け部材の正面側の外縁部」を,「自動火災報知設備の発信機」(発信機)を「消火栓格納箱の正面板」(取付面)に取り付けるための「取付部」ということができる。
したがって,甲1発明は,本件訂正発明の「防災機器を取付面に取り付けるための取付部」に相当する構成を具備している。

カ 「環状」であるとは,「リング状」であることにほかならないから,甲1発明の「光が通過する表示灯本体の環状の部分」(発光表示部)は,「リング状に形成され」ている。
また,甲1発明では,使用状態で,前記「光が通過する表示灯本体の環状の部分」を有する表示灯本体の内方に「発信機」が取り付けられているから,「光が通過する表示灯本体の環状の部分」(リング状の発光表示部)に囲まれた部位に,「発信機」(発信機)が収容されているといえる。
さらに,使用状態で甲1発明の表示灯本体の内方に取り付けられる「発信機」(発信機)は,消火栓格納箱の正面板から露出している部分に,「押しボタン」(押ボタン)と当該押しボタンの周囲を囲む赤色の同心円状の部分とを有しているところ,当該「押しボタンの周囲を囲む赤色の同心円状の部分」は,本件訂正発明の「押ボタン格納部」に相当する。
以上によれば,本件訂正発明と甲1発明は,「発光表示部は,リング状に形成されると共に,リング状の発光表示部に囲まれた部位に,押ボタンと押ボタン格納部を有する発信機が収容され」る点で共通する。

キ 前記アないしカに照らせば,本件訂正発明と甲1発明は,
「取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯であって,
発光源を収容する本体部と,前記発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部と,前記防災機器を前記取付面に取り付けるための取付部とを有し,
前記発光表示部は,リング状に形成されると共に,リング状の発光表示部に囲まれた部位に,押ボタンと押ボタン格納部を有する発信機が収容される表示灯。」
である点で一致し,次の点で相違する又は一応相違する。

相違点1-1:
本件訂正発明では,「取付部」が,「本体部」の前端側から外方に張り出すように設けられ,取付状態において,「取付部」が「取付面」の背面側に配置され,「発光表示部」が取付面から突出しないように構成されているのに対して,
甲1発明では,「表示灯本体の背面側の外縁部と取り付け部材の正面側の外縁部」が,「表示灯本体及び取り付け部材からなる部材」に設けられ,使用状態では,「表示灯本体の背面側の外縁部と取り付け部材の正面側の外縁部」が「消火栓格納箱の正面板」を挟み込み,「光が通過する表示灯本体の環状の部分」は,消火栓格納箱の正面板から突出している点。

相違点1-2:
本件訂正発明のリング状の発光表示部に囲まれた部位に収容される発信機は,発信機本体部を有するのに対して,
甲1発明の表示灯本体の内方に取り付けられた発信機が,発信機本体部を有するのか否かが定かでない点。

相違点1-3:
本件訂正発明では,「発光表示部」に,発光源の光を拡散させる光拡散手段が設けられているのに対して,
甲1発明では,「光が通過する表示灯本体の環状の部分」に,そのような光拡散手段が設けられていることは特定されていない点。

(3)判断
ア 相違点1-1について検討する。
甲2,3,5ないし9のいずれにも,相違点1-1に係る本件訂正発明のように,防災機器を取付面に取り付けるための取付部を,発光源を収容する本体部の前端側から外方に張り出すように設け,取付状態において,取付部を取付面の背面側に配置し,発光表示部が取付面から突出しないように構成することは,記載も示唆もされていない。
また,甲4について,その【0004】には,「また,特許文献1に示すように,発信機の前面部分が前面パネルより突出していると,例えば病院等の狭い廊下に設置されたような場合において,医療機器の運搬時等に当該発信機の突出部分に物が衝突するおそれがある。そこで,発信機においても警告灯と同様に,発信機の前面パネルからの突出量をできるだけ抑制することが望まれる。」と記載され,【0017】には「本発明は上述のように構成したので,発信機等の機器の前後方向の厚さが製造メーカ毎に異なっても,機器の前面と前面パネルが略面一となるように機器を容易に取り付けることができるので,消火栓格納箱を狭い場所に設置した場合等に機器の破損を効果的に防止することができる。」と記載され,【0036】ないし【0038】には,「図2及び図4に示す発信機5を前面パネル9に装着するには,まず,発信機5の裏面5bに後面支持板用ガイド基板17を図2に示すように,押しボタン機構部5cが中央開口部17a内に位置するように装着し,発信機5の雄螺子16,16をスリット21b,21d内に挿通し,これら雄螺子16,16端部にワッシャWを介してナット22,22をねじ込んで,当該後面支持用ガイド基板17を上記発信機5裏面5bに固定する。・・・その後,上記ガイド基板17のガイド板18a,18bが上記前面パネル9裏面9aのL型アングル14,14の支持板14b,14b間に位置するように,上記発信機5の前面5a’を上記パネル9の透孔11に宛がい,さらに図4に示すように,上記発信機5の前面5a’の位置が上記前面パネル9の前面9a’と面一(又は略面一)となるように当該発信機5の前後方向の位置を調節し,上記前面5a’と上記前面9a’が面一となる位置において,雄螺子20,20をワッシャWを介して,上記支持板14b,14bのスリット15,15から上記ガイド基板17のガイド板18a,18bの透孔19a,19bに挿通し,ナット22,22を上記雄螺子20,20端部にねじ込むことで,上記発信機5を上記支持板14b,14bに固定する(図4参照)。・・・ これにより,発信機5の前面5a’が上記前面パネル9の前面9a’と面一(又は略面一)となった状態で,当該発信機5を前面パネル9に装着することができる。」と記載されている。これらの記載を含む甲4の記載から,取付状態において,発信機が取付面から突出しないように構成する技術を把握することができるものの,甲4に記載された発信機は,表示灯を有するものではなく,発光源や発光表示部を有していないから,発光源を収容する本体部の前端側から外方に張り出すように取付部を設けたものでも,取付状態において,発光表示部が取付面から突出しないように構成したものでもない。
また,申立人が提出した甲10ないし13を含め,防災機器を取付面に取り付けるための取付部を,発光源を収容する本体部の前端側から外方に張り出すように設け,取付状態において,取付部を取付面の背面側に配置し,発光表示部が取付面から突出しないように構成した表示灯が,本件特許の優先権主張の日より前に周知であったことを示す証拠は見当たらない。
そして,本件訂正発明は,相違点1-1に係る発明特定事項を具備することにより,側方から物がぶつかって破損することがないという本件明細書の【0030】に記載された効果を奏するものである。
そうすると,相違点1-2及び相違点1-3について検討するまでもなく,本件訂正発明は,甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

イ 申立人は,甲11(特許第4113249号公報),甲12(特開平7-155396号公報)及び甲13(特開2012-98486号公報)を提出するとともに,意見書において,甲1発明において相違点1-1に係る本件訂正発明の発明特定事項を採用することは,甲4記載の技術,甲11ないし13に記載の周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得たことである旨主張する。
そこで検討すると,甲11ないし13は,いずれも,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であるところ,そのうちの甲11には,請求項1に「前面側のパネルに警告灯が設けられた消火栓格納箱において,上記警告灯のレンズを前面板が平面状の略筒形状レンズとすると共に,・・・(中略)・・・上記警告灯を,上記案内シャフトに沿ってそのレンズの前面板が上記パネルの前面と面一状態の警告灯収納位置と,上記レンズの前面板が上記パネル前面から前方側に突出した警告灯突出位置の2位置を取り得るように構成し,・・・(中略)・・・消火栓格納箱。」と記載され,【0005】及び【0006】に「ところで,特許文献1の消火栓格納箱の警告灯は筐体前面から相当程度突出しているので,例えば病院等において狭い廊下の壁に設置した場合は,各種医療機器の運搬時等に警告灯に衝突して警告灯を破損することが多いし,逆に医療機器が損傷を受けることもあった。また,体育館等に設置した場合においても,ボール等の衝突により警告灯が破損することがあった。・・・(中略)・・・また,特許文献2の消火栓格納箱では,通常時は警告灯を収納しておくことで,上記警告灯の破損等の防止はできるが,警告灯の収納時は警告灯としての機能を果たし得ないので,緊急時において警告を行うことができないという課題がある」と記載され,【0030】ないし【0031】に「そして,上記警告灯レンズ7は上記基板11と共に,上記貫通穴Pを介して上記案内シャフト13に沿って上記図2(a)の警告灯収納位置と,上記図2(b)の警告灯突出位置との間を前後方向に摺動可能に構成されている。図2(a)の警告灯収納位置においては,上記警告灯レンズ7の上記基板11の外周縁部11aが上記後方支持縁12bに当接し,このとき上記警告灯レンズ7の前面板7aの位置は,上記閉鎖パネル5の前面5a及び開閉扉9の前面(消火栓格納箱の前面)と面一(段差のない状態)となるように構成されている。・・・(中略)・・・また,図2(b)の警告灯突出位置では,上記突出縁7bの前面側が上記開口部5b周縁の上記閉鎖パネル5背面に当接する位置まで前方に摺動し,上記警告灯レンズ7の円柱部7cの大半は上記開口部5bから突出した状態となる。この位置では,上記突出縁7bが開口部5b周縁のパネル背面に当接することで,警告灯レンズ7の抜け止めがなされるように構成している。」と記載されている。
また,甲12には,請求項1に「表示灯を表示灯収納部の表面から突出自在に内設したことを特徴とする屋内消火栓箱。」と記載され,【0010】に「このような動作システムに組み込まれた屋内消火栓箱35において,制御部33に火報信号が受信されると,ソレノイド27が駆動して係合子27aをフック棒25から離反させる。すると,係合子27aと係合部25aとの係合が解除され,支持棒19がスプリング21の付勢力により移動され,表示灯23が支持棒19の移動に伴って開口13から突出されることになる。なお,この際,上述したように,表示灯23の突出に伴って,目隠し蓋15は予め連動機構により開放されている。これにより,常時は目隠し蓋15の裏側で覆われていた表示灯23が,消防法上の技術基準を満足する位置に突出されることになる。一方,火災状態が解除されると,受信機39から送られた復帰信号により,復帰用モータ31が駆動されてワイヤ29を巻き取り,表示灯23が表示灯収納部11内に引き込まれる。」と記載されている。
さらに,甲13には,【0005】及び【0006】に「表示灯910の突出は,例えば収容庫904が設置された場所によっては人や物が移動する際の邪魔になることもしばしば見受けられる。・・・(中略)・・・しかし,上述のような課題はあっても,従来の表示灯910が広く一般的に用いられているのが現状である。これは,表示灯は上述の役割を果たすために,正面からのみならず,側方に近い方向からであっても確実に認識されるように配置されなければならないからである。しかしながら,側方に近い位置に加えて,完全な側方(つまり,上述の表現を借りれば,図19に示すように,当該平面に対して0°の方向)からの視認性を確保しつつ,正面からの突出を可能な限り低減して表示灯Lを配置する手段は,本願出願人の知るかぎり未だ見出されていない。」と記載され,【0022】ないし【0025】に「次に,表示灯10について詳しく見ると,図2及び図3に示すように,円盤状の基板11の周辺領域上に4つの第1発光部12・・・12としての発光ダイオード(以下,LEDという。)と,基板11の略中央部に3つの第2発光部13・・・13としてのLEDとが配置されている。また,本実施形態では,第1発光部12・・・12と第2発光部13・・・13とは,扉部102から突出する位置に配置されている。ここで,本実施形態の第1発光部12・・・12は,その発光が,収容庫104の扉部102の平面に略平行な方向に向かうとともに互いに異なる方向に向いて発光する。・・・(中略)・・・加えて,図2に示すように,本実施形態の表示灯10は,収容庫104の前面の扉部102から長さPだけ突出している。ここで,長さPは,少なくとも収容庫104の側方(本実施形態では,図1のX方向に垂直なY方向)から表示灯10が容易に視認されるだけの長さを有している。この長さが短すぎると(あるいは,扉部102内に埋め込まれていると),側方(特に,完全な側方)からの視認が困難又は不可能になるためである。」と記載されている。
これら甲11ないし13の記載に照らせば,警告灯において,取付面から突出していると破損等の不都合があるが,取付面から突出しないよう構成すると,側方から視認し難くなり,警告灯としての機能を果たし得なくなるという課題が,本件特許の優先権主張の日より前に周知であったことを把握することができる。
しかしながら,甲11ないし13によれば,前記周知の課題を解決するために,従来は,警告灯を,取付面から突出する位置と取付面内に収納する位置とに,移動可能に構成する手段や,警告灯内に側方に向けて発光する発光部を設け,警告灯の取付面からの突出長さを前記発光部からの光を側方から容易に視認できるだけの長さとする手段を採用していたと認められるのであって,防災機器を取付面に取り付けるための取付部を,発光源を収容する本体部の前端側から外方に張り出すように設け,取付状態において,取付部を取付面の背面側に配置し,発光表示部が取付面から突出しないようにした構成が開示されているわけではない。
そして,前記アで述べたように,甲4にも,防災機器を取付面に取り付けるための取付部を,発光源を収容する本体部の前端側から外方に張り出すように設け,取付状態において,取付部を取付面の背面側に配置し,発光表示部が取付面から突出しないようにした構成が開示されていない以上,甲1発明に,甲4に記載された技術や甲11ないし13に示される周知技術を適用したとしても,相違点1-1に係る本件訂正発明の発明特定事項に至ることはない。
したがって,申立人の主張は採用できない。

(4)小括
取消理由1,すなわち申立人が主張する特許異議申立理由1によって,本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

6 取消理由2について
(1)甲2
ア 甲2の記載
甲2は,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であって,当該甲2には,次の記載がある。
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,消火栓装置等の発信機を備える防災装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,高速道路や自動車専用道路などのトンネルに設置されるトンネル消火栓装置は,・・・(中略)・・・通報装置扉が設けられ,ここに赤色表示灯,発信機,及び応答ランプを設けている。
【0003】
通報装置扉の赤色表示灯は常時点灯し,消火栓装置の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には,発信機を押して押し釦スイッチをオン操作すると,発信信号が監視室の火災受信機に送信されて火災警報が出され,これに伴い応答信号が火災受信機から送られて,応答表示灯を点灯し,発信機からの信号が外部の受信機に送信されたことを認識できるようにしている。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,このような従来の赤色表示灯,発信機,及び応答ランプを設けたトンネル用防災装置にあっては,赤色表示灯,発信機,及び応答表示灯のそれぞれの関連性が一般の利用者には判りづらいという問題がある。即ち,発信機を操作すると応答表示灯が点灯するという関連性があっても,発信機とは別の位置にある応答表示灯が点灯するという関連性が判りづらく,応答表示灯が点灯していても,発信機のスイッチ操作を念のため何回も繰り返すといった混乱した操作を招く恐れがある。・・・(中略)・・・
【0007】
本発明は,発信機の認識性を向上して,一般の人にも容易に扱え,更に,発信機操作が正しく行われたことが明確に分かるようにする防災装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
・・・(中略)・・・
【0009】
また本発明の別の形態にあっては,発信機及び応答表示灯を設けた防災装置に於いて,
発信機は,
透明な保護板と,
保護板を装置前面の取付穴に保持する透光製の枠部材と,
取付穴の背後に配置され,保護板の押し込みによりオン操作される押し釦スイッチと,
を備え,
応答表示灯を枠部材の背後に配置して枠部材をライトガイドとして光らせることを特徴とする。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,発信機に応答表示灯が内蔵されたことで,例えばトンネル消火栓装置の場合,装置前面には,設置場所を示す赤色表示灯と発信機だけが設けられ,応答表示灯は装置前面には設けられないため,発信機を他の表示灯と見誤るようなことはなく,発信機の認識性を大きく向上することができる。」

(イ) 「【0015】
図1は本発明が適用されるトンネル用防災装置として消火栓装置を示した正面図である。図1において,消火栓装置10は,消火栓側の筐体12-1と消火器側の筐体12-2に分割した構造であり,前面に化粧板14-1,14-2を装着しており,筐体12-1,12-2に対し必要な機器及び部材を組付けた後に連結固定部15で固定した状態とし,この状態でトンネル現場に搬入して架台11上に設置している。
・・・(中略)・・・
【0019】
筐体12-2の扉開口部17の右側には通報装置扉24が設けられ,ここに赤色表示灯26および発信機28を設けており,従来のように通報装置扉24に応答表示灯は設けられておらず,後の説明で明らかにするように,応答表示灯は発信機28に内蔵されている。」

(ウ) 「【0035】
図4は本発明による発信機構造の他の実施形態を断面で示した説明図である。図4において,本実施形態の発信機28は通報装置扉24に設けた取付穴72の背後に取付部材74によって押し釦スイッチ80を配置しており,押し釦スイッチ80は前部にスイッチノブ82を突出して,その外側に防水キャップ90を装着しており,また後方に端子88に接続した複数本の信号線90を引き出しており,この後方部分についても防水カバー92を装着している。
【0036】
一方,取付穴72に対しては,ゴム部材で作られた枠部材94によって有機ガラス板などを用いた保護板96を保持している。
【0037】
図5は図4の発信機操作部分を取り出して示した組立分解図である。図5において,通報装置扉24の取付穴72に対しては,透光性のゴム材料で作られた枠部材94が装着される。枠部材94は中央に操作穴95を開口したリング状の部材であり,操作穴95の裏面側の4箇所に分けてストッパ部98を形成し,ストッパ部98に対応した操作穴95の内周部分に抜止め部100を形成している。保護板96は枠部材94の抜止め部100とストッパ部98の間に挟まれて枠部材94に設置される。
・・・(中略)・・・
【0041】
再び図4を参照するに,枠部材94としてはゴム材料で作られているが,更に背後からの光を入射して全体に光ることのできるライトガイドとしての機能を備えており,このようなライトガイドとして機能させるためには例えばシリコンゴムなどの透光性のゴムを使用すればよい。
【0042】
枠部材94の背後にはリング状にライトガイド85が配置されており,ライトガイド85の下側の部分に応答表示灯84を配置している。・・・(中略)・・・
【0043】
図8は図4の実施形態について保護板を押し込んでスイッチ操作した状態を示した断面図である。図8において,枠部材94に保持されている保護板96を矢印で示すように外側から押し込むと,ストッパ部98が変形し,枠部材94から保護板96が図示のように外れ,防水キャップ86に当たり,防水キャップ86を変形して更に押し込むとスイッチノブ82に当たり,スイッチノブ82を押し込んで押し釦スイッチ80をオン操作することができる。
【0044】
押し釦スイッチ80をオン操作すると,信号線90により発信信号が外部の火災受信機に送られ,火災受信機で火災警報を出力すると同時に応答信号が返送され,これによって応答表示灯84を例えば点灯する。点灯した応答表示灯84からの光は,ライトガイド85を通って透光性ゴム材料で作られた枠部材94の背後から入射し,これによって枠部材94全体が光るようになり,押し釦スイッチ80の操作に対する確認表示が行われる。
・・・(中略)・・・
【0046】
また通常状態で応答表示灯84を常時,点灯状態とすることによって,枠部材94全体をリング状に光らせ,これによって暗いトンネルの中であっても発信機28の位置を明確に認識できるように表示することができる。」

(エ) 「【図1】

・・・(中略)・・・
【図4】



イ 甲2に記載された発明
前記ア(ウ)から,甲2に,「他の実施形態」の発信機28に内蔵された表示装置であって,枠部材94とライトガイド85と応答表示灯84と取付部材74とにより構成された表示装置に関する発明を把握することができるところ,前記ア(エ)の図4から,取付部材74がライトガイド85と応答表示灯84とスイッチノブ82とを内部に収容していること,取付部材74の前端が外方に張り出して通報装置扉24の背面側に配置されていること,及び枠部材94の一部が通報装置扉から突出していることが看取されるから,前記表示装置に関する発明の構成は次のとおりである。

「消火栓装置10に用いられ,常時,点灯状態とすることによって,暗いトンネルの中であっても発信機28の位置を明確に認識できるように表示することができる,前記発信機28に内蔵された表示装置であって,
透光性のゴム材料で作られ,背後からの光を入射して全体に光ることのできるライトガイドとしての機能を備えた,中央に操作穴95を開口したリング状の部材であり,前記消火栓装置10の通報装置扉24に設けられた取付穴72に対して装着される枠部材94と,前記枠部材94の背後に配置されたリング状のライトガイド85と,前記ライトガイド85の下側の部分に配置された応答表示灯84と,前記ライトガイド85及び前記応答表示灯84を内部に収容するとともに,前記取付穴72の背後に押し釦スイッチ80を配置する取付部材74とにより構成され,
前記取付部材は,その前端が外方に張り出して通報装置扉24の背面側に配置されており,
前記枠部材94は,その一部が通報装置扉24から突出しており,
前記押し釦スイッチ80には,その前部に,前記取付部材74内に収容されるスイッチノブ82が突出して設けられ,当該スイッチノブ82を押し込んで前記押し釦スイッチ80をオン操作すると,発信信号が外部の火災受信機に送られるよう構成されている,
表示装置。」(以下,「甲2発明」という。)

(2)対比
ア 技術的にみて,甲2発明の「通報装置扉24」,「発信機208」,「表示装置」,「応答表示灯84」,「取付部材74」,「スイッチノブ82」及び「押し釦スイッチ80」は,本件訂正発明の「取付面」,「防災機器」,「表示灯」,「発光源」,「本体部」,「押ボタン」及び「発信機本体」にそれぞれ対応する。

イ 甲2発明の「表示装置」(本件訂正発明の「表示灯」に対応する。以下,「(2)対比」欄において,「」で囲まれた甲2発明の構成に付した()内の文言は,当該甲2明の構成に対応する本件訂正発明の発明特定事項を表す。)は,常時,点灯状態とすることによって,暗いトンネルの中であっても「発信機28」(防災機器)の位置を明確に認識できるように表示するものであるところ,「通報装置扉24」(取付面)に取り付けられている。したがって,甲2発明と本件訂正発明は,「取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯」である点で一致する。

ウ 甲2発明の「取付部材74」(本体部)の内部には,「応答表示灯84」(発光源)が収容されているから,甲2発明の「取付部材74」と本件訂正発明の「本体部」は,「発光源を収容する」点で一致する。

エ 甲2発明では,ライトガイド85と枠部材94とからなる部材が,「応答表示灯84」(発光源)から入射した光を外部に向けて射出するのであるから,甲2発明の「枠部材94及びライトガイド85」が本件訂正発明の「発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部」に相当する。

オ 甲2発明の「取付部材74」(本体部)は,ライトガイド85及び応答表示灯84を内部に収容するとともに,通報装置扉24に設けられた取付穴72の背後に押し釦スイッチ80を配置する機能を有しており,かつ,その前端が外方に張り出して通報装置扉24の背面側に配置されている,「取付部材74の前端」が,「発信機28」(防災機器)を「通報装置扉24」(取付面)に取り付ける機能を有していることは明らかであるから,「取付部材74の前端」を,「取付部材74」(本体部)の前端側から外方に張り出すように設けられて,防災機器を取付面に取り付けるための部材ということができる。
したがって,甲2発明の「取付部材74の前端」が本件訂正発明の「本体部の前端側から外方に張り出すように設けられて,防災機器を取付面に取り付けるための取付部」に相当する。

カ 甲2発明の「ライトガイド85」はリング状であり,「枠部材94」(発光表示部)は中央に操作穴95を開口したリング状の部材であるから,「ライトガイド85と枠部材94とからなる部材」はリング状に形成されているといえる。
したがって,甲2発明の「ライトガイド85と枠部材94とからなる部材」と,本件訂正発明の「発光表示部」は,「リング状に形成され」ている点で一致する。

キ 甲2発明では,「スイッチノブ82」(押ボタン)を押し込んで「押し釦スイッチ80」(発信機本体)をオン操作すると,発信信号が外部の火災受信機に送られるから,甲2発明の「スイッチノブ82」と「押し釦スイッチ80」とからなる装置と,本件訂正発明の「押ボタンと押ボタン格納部と発信機本体を有する発信機」とは,「押ボタンと発信機本体を有する発信機」である点で共通する。
そして,甲2発明では,「スイッチノブ82」(押ボタン)が「取付部材74」(本体部)内に収容されるところ,「取付部材74内に,スイッチノブ82が収容された」甲2発明と,「リング状の発光表示部に囲まれた部位に,発信機が収容される」本件訂正発明は,「所定の部位に,発信機が収容される」点で共通する。
したがって,本件訂正発明と甲2発明は,「発光表示部は,リング状に形成されると共に,所定の部位に,押ボタンと発信機本体を有する発信機が収容され」る点で共通する。

ク 前記アないしキに照らせば,本件訂正発明と甲1発明は,
「取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯であって,
発光源を収容する本体部と,前記発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部と,前記本体部の前端側から外方に張り出すように設けられて,前記防災機器を前記取付面に取り付けるための取付部とを有し,
前記発光表示部は,リング状に形成されると共に,所定の部位に,押ボタンと発信機本体部を有する発信機が収容される表示灯。」
である点で一致し,次の点で相違する又は一応相違する。

相違点2-1:
発信機が収容される「所定の部位」が,
本件訂正発明では,リング状の発光表示部に囲まれた部位であるのに対して,
甲2発明では,取付部材74内である点。

相違点2-2:
所定の部位に収容される発信機が,
本件訂正発明では,押ボタン格納部を有するものであるのに対して,
甲2発明では,押ボタン格納部を有していないものである点。

相違点2-3:
本件訂正発明では,「発光表示部」に,発光源の光を拡散させる光拡散手段が設けられているのに対して,
甲1発明では,「ライトガイド85と枠部材94とからなる部材」に,そのような光拡散手段が設けられることは特定されていない点。

相違点2-4:
本件訂正発明では,「発光表示部」が「取付面」から突出しないように構成されているのに対して,
甲2発明では,「ライトガイド85と枠部材94とからなる部材」のうちの枠部材94の一部が「通報装置扉24」から突出している点。

(3)判断
事案に鑑みて,まず相違点2-4について検討する。
前記5(3)アで述べたように,甲1,3ないし9のいずれにも,相違点2-4に係る本件訂正発明のように,取付状態において,発光表示部が取付面から突出しないように構成することは,記載も示唆もされておらず,また,申立人が提出した甲10ないし13を含め,取付状態において,発光表示部が取付面から突出しないように構成した表示灯が,本件特許の優先権主張の日より前に周知であったことを示す証拠は見当たらない。
そして,本件訂正発明は,相違点2-4に係る発明特定事項を具備することにより,側方から物がぶつかって破損することがないという本件明細書の【0030】に記載された効果を奏するものである。
そうすると,相違点2-1ないし2-3について検討するまでもなく,本件訂正発明は,甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)小括
取消理由2,すなわち申立人が主張する特許異議申立理由2によって,本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

7 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯であって、
発光源を収容する本体部と、前記発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部と、前記本体部の前端側から外方に張り出すように設けられて、前記防災機器を前記取付面に取り付けるための取付部とを有し、
前記発光表示部は、リング状に形成されると共に、リング状の発光表示部に囲まれた部位に、押ボタンと押ボタン格納部と発信機本体部を有する発信機が収容され、
かつ、前記発光表示部には、前記発光源の光を拡散させる光拡散手段が設けられており、
前記取付部が前記取付面の背面側に配置された取付状態において前記発光表示部が前記取付面から突出しないように構成されていることを特徴とする表示灯。
【請求項2】
取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯であって、
発光源を収容する本体部と、前記発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部とを有し、
前記発光表示部は、リング状に形成されると共に、リング状の発光表示部に囲まれた部位に、押ボタンと押ボタン格納部と発信機本体部を有する発信機が収容され、
かつ、前記発光表示部には、前記発光源の光を拡散させる光拡散手段が設けられており、
前記光拡散手段は、前記発光表示部の背面側に、前記発光源側に向けて突出する複数の凸部であることを特徴とする表示灯。
【請求項3】
前記凸部は、前記発光表示部が形成するリングの径方向に延びるリブであることを特徴とする請求項2記載の表示灯。
【請求項4】
取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯であって、
発光源を収容する本体部と、前記発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部とを有し、
前記発光表示部は、リング状に形成されると共に、リング状の発光表示部に囲まれた部位に、押ボタンと押ボタン格納部と発信機本体部を有する発信機が収容され、
かつ、前記発光表示部には、前記発光源の光を拡散させる光拡散手段が設けられており、
前記光拡散手段は、前記発光表示部の背面側に設けられた湾曲面部によって構成されていることを特徴とする表示灯。
【請求項5】
取付面に取り付けられて防災機器の位置を表示する表示灯であって、
発光源を収容する本体部と、前記発光源が発光する光を透光させて光る発光表示部とを有し、
前記発光表示部は、リング状に形成されると共に、リング状の発光表示部に囲まれた部位に、押ボタンと押ボタン格納部と発信機本体部を有する発信機が収容され、
かつ、前記発光表示部には、前記発光源の光を拡散させる光拡散手段が設けられており、
前記発信機の前面部が前記発光表示部よりも奥側に位置するようになっていることを特徴とする表示灯。
【請求項6】
前記発信機の前面部が前記発光表示部よりも奥側に位置するようになっていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の表示灯。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-02 
出願番号 特願2014-255506(P2014-255506)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (G09F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金田 理香  
特許庁審判長 藤田 年彦
特許庁審判官 畑井 順一
清水 康司
登録日 2019-06-28 
登録番号 特許第6545456号(P6545456)
権利者 能美防災株式会社
発明の名称 表示灯  
代理人 石川 壽彦  
代理人 石川 壽彦  
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