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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 F24F 審判 全部申し立て 2項進歩性 F24F 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) F24F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 F24F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 F24F 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 F24F |
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管理番号 | 1372693 |
異議申立番号 | 異議2019-700893 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-11-12 |
確定日 | 2021-02-19 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6527495号発明「空気調和システムおよび空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6527495号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-6〕について訂正することを認める。 特許第6527495号の請求項1?6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6527495号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成24年10月17日に出願された特願2012-229402号の一部を、平成27年9月9日に新たな特願2015-177193号とし、さらに、その一部を平成28年10月5日に新たな特許出願としたものであって、令和元年5月17日にその特許権の設定登録がされ、令和元年6月5日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 ・令和元年11月12日に特許異議申立人である松本 征二(以下、「申立人A」という。)による請求項1?6に係る特許に対する特許異議の申立て(以下、「申立A」という。) ・令和元年12月5日に特許異議申立人である吉田 真理奈(以下、「申立人B」という。)による請求項1?6に係る特許に対する特許異議の申立て(以下、「申立B」という。) ・令和2年2月5日付けで取消理由通知 ・令和2年3月27日に特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 ・令和2年4月6日付けで令和2年3月27日提出の訂正請求書について手続補正指令(方式) ・令和2年5月7日(受付日:令和2年5月8日)に特許権者による訂正請求書についての手続補正書の提出 ・令和2年6月15日に申立人Aによる意見書の提出 ・令和2年6月19日に申立人Bによる意見書の提出 ・令和2年8月7日付けで取消理由通知(決定の予告) ・令和2年10月7日に特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 ・令和2年10月29日付けで訂正拒絶理由通知 ・令和2年11月25日に特許権者による意見書及び令和2年10月7日提出の訂正請求書についての手続補正書の提出 ・令和2年12月24日に申立人Aによる意見書の提出 ・令和2年12月28日に申立人Bによる意見書の提出 なお、令和2年3月27日提出の訂正請求書による訂正請求については、令和2年10月7日提出の訂正請求書(以下、単に「訂正請求書」という。)による訂正請求がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の請求について 1 令和2年11月25日提出の手続補正書による補正について (1)補正の適否の判断 ア 訂正事項1の補正について 訂正事項1の補正は、請求項1に追加する記載について、 「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が第1の所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」とあったのを、 「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」と補正するものである。 そこで、訂正事項1の補正が訂正請求書の要旨を変更するものであるか検討すると、訂正請求書には、「訂正事項1は、段落0089,0090,0101,0102,0139,0140に基づくものである」(4頁14?15行)と記載されているところ、本件特許の願書に添付した明細書の段落0087?0090、0095、0101、0102、0139及び0140の記載(下記4(1)イを参照。)によれば、空調運転を勧める報知を行う条件である「所定温度」という記載はあるが、「第1の所定温度」という記載は見当たらないので、「前記所定温度」と記載する意図があったことは明らかであり、「第2の所定温度」との区別のために誤って記載したものと認められる。 そうすると、訂正事項1の補正は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1において、「第1の所定温度」との誤記を本来記載すべき「前記所定温度」に正すものであり、軽微な瑕疵の補正と認められるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。 イ 訂正事項2の補正について 訂正事項2の補正は、請求項2に追加する記載について、 「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が第1の所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」とあったのを、 「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」と補正するものである。 そこで、訂正事項2の補正が訂正請求書の要旨を変更するものであるか検討すると、訂正請求書には、「訂正事項2は、段落0089,0090,0101,0102,0139,0140に基づくものである」(5頁11?12行)と記載されているところ、本件特許の願書に添付した明細書の段落0087?0090、0095、0101、0102、0139及び0140の記載(下記4(1)イを参照。)によれば、熱中症の警戒が必要である旨の報知を行う条件である「所定温度」という記載はあるが、「第1の所定温度」という記載は見当たらないので、「前記所定温度」と記載する意図があったことは明らかであり、「第2の所定温度」との区別のために誤って記載したものと認められる。 そうすると、訂正事項2の補正は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2において、「第1の所定温度」との誤記を本来記載すべき「前記所定温度」に正すものであり、軽微な瑕疵の補正と認められるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。 ウ 訂正事項3の補正について 訂正事項3の補正は、請求項4に追加する記載について、 「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が第1の所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」とあったのを、 「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」と補正するものである。 そこで、訂正事項3の補正が訂正請求書の要旨を変更するものであるか検討すると、訂正請求書には、「訂正事項3は、段落0089,0090,0101,0102,0139,0140に基づくものである」(7頁24?25行)と記載されているところ、上記アの訂正事項1の補正についての検討を踏まえると、訂正事項3の補正は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項4において、「第1の所定温度」との誤記を本来記載すべき「前記所定温度」にするものであり、軽微な瑕疵の補正と認められるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。 エ 訂正事項4の補正について 訂正事項4の補正は、請求項5に追加する記載について、 「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が第1の所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」とあったのを、 「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」と補正するものである。 そこで、訂正事項4の補正が訂正請求書の要旨を変更するものであるか検討すると、訂正請求書には、「訂正事項4は、段落0089,0090,0101,0102,0139,0140に基づくものである」(8頁21?22行)と記載されているところ、上記イの訂正事項2の補正についての検討を踏まえると、訂正事項4の補正は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項5において、「第1の所定温度」との誤記を本来記載すべき「前記所定温度」にするものであり、軽微な瑕疵の補正と認められるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。 (2)小括 したがって、令和2年11月25日提出の手続補正書による補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、これを認める。 2 訂正の請求の趣旨 令和2年11月25日提出の手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を求めるものである。 3 本件訂正の内容 本件訂正の内容は以下の訂正事項1?4のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に記載の「空気調和システム」において、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行うことを特徴とする空気調和システム。」を「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始することを特徴とする空気調和システム。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に記載の「空気調和システム」において、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知することを特徴とする空気調和システム。」を「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知し、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始することを特徴とする空気調和システム。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に記載の「空気調和機」において、「空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行う機能とを備えたことを特徴とする空気調和機。」を「空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する機能とを備えたことを特徴とする空気調和機。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に記載の「空気調和機」において、「空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知する機能とを備えたことを特徴とする空気調和機。」を「空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知し、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する機能とを備えたことを特徴とする空気調和機。」に訂正する。 4 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「空気調和システム」において、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」という特定事項を、訂正前の請求項1に記載された特定事項の内容を変更することなく、付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 特許明細書等の段落0087?0090、0095、0101、0102、0139及び0140には、以下の記載がある(下線は当審で付したものである。)。 「【0087】 実施の形態2の空気調和機は、運転の停止中にも人検知機能を働かせ、在室者が居て、室内の温度湿度が熱中症に罹る恐れのあるレベルに達しているにもかかわらず、空気調和機の運転が為されないときに、空調運転を勧めるメッセージを発するものである。メッセージは在室者に音声、ブザー、表示などで行い、更に、他室の同居人に伝えるものでも良く、更には、電話やインターネットを介して、訪問介護業者、ヘルパー、係り付けの病院に通報するものでも良い。 【0088】 このようにすることで、都会地に多い、窓を開けても風が入らない住居、又は防犯上窓を開けられない住居に住む人の、熱中症に罹る恐れを少なくできる。また、人の居る位置と太陽光が差込む位置が一致している場合は、空気調和機の運転を勧める報知を行う室内の温湿度を前記のレベルより、低温側、低湿側に変更する。これにより、日差しの影響を緩和し、体感温度が高くならないように維持して、熱中症に罹る人を減らすことができる。 【0089】 更に、室内の温度湿度が熱中症に罹る恐れのあるレベルから更に、所定の温度差、湿度差以上に高温高湿側に変化したときには、空気調和機を強制的に冷房又は除湿運転し、室内の温湿度を熱中症の恐れの少ないレベルまで下げる。また、室内の温度湿度が熱中症に罹る恐れのあるレベルに達してから所定の時間を経過しても空気調和機の運転が開始されないときにも、空気調和機を強制的に冷房又は除湿運転し、室内の温湿度を熱中症の恐れの少ないレベルまで下げる。 【0090】 これにより、体が不自由で一人では位置を変えられない人や熟睡中で日差しの中に寝ていることに気が付かない場合でも、室内の温湿度の更なる高温高湿への変化や、所定時間にわたって熱中症に罹る恐れのある温度が続いた場合には、空気調和機が冷房又は、除湿運転を開始し、室内の温湿度を下げ、熱中症に罹る人を減らすことができる。」 「【0095】 実施の形態の空気調和機では、空気調和機が使用者の意図的な停止、または、制御上の停止である場合も、例えば、室温が30℃で湿度が65%を超えたときに、空気調和機の運転を勧めるメッセージを使用者に報知する。報知の方法は、表示やブザー、音声などその方法は問わない。また、伝送線、無線により、他室に居る同居者に報知するようにするのも良く、更に、インターネットを介して、訪問介護業者などに報知することでも良い。」 「【0101】 また、実施の形態の空気調和機は、室内温度または/および室内湿度が前記所定の範囲または前記変更した所定の範囲から更に高温側または/および高湿側に所定温度差以上または/および所定湿度差以上逸脱した場合、または、前記所定の範囲または前記変更した所定の範囲からの逸脱が所定時間以上継続した場合、該空気調和機の冷房運転または除湿運転を開始する。 【0102】 これにより、報知に誰も気づかなかった場合でも、その状態から、空気調和機が運転しない時間が、例えば、1時間以上続いた場合は、空気調和機の運転を強制的に開始する。 こうすることにより、使用者が、熱中症の危険な状態に陥るのを防ぐことができる。また、報知後も室温湿度の上昇が続き、室温湿度が、例えば、高温高湿側に所定温度差以上または/および所定湿度差以上逸脱した場合、空気調和機の運転を強制的に開始する。」 「【0139】 また、本実施例の空気調和機によれば、室内温度または/および室内湿度が前記所定の範囲または前記変更した所定の範囲から更に高温側または/および高湿側に所定温度差以上または/および所定湿度差以上逸脱した場合、または、前記所定の範囲または前記変更した所定の範囲からの逸脱が所定時間以上継続した場合、該空気調和機の冷房運転または除湿運転を開始する。 【0140】 これにより、報知に誰も気づかなかった場合でも、その状態から、空気調和機が運転しない時間が、例えば、1時間以上続いた場合は、空気調和機の運転を強制的に開始する。 こうすることにより、使用者が、熱中症の危険な状態に陥るのを防ぐことができる。また、報知後も室温湿度の上昇が続き、室温湿度が、例えば、高温高湿側に所定温度差以上または/および所定湿度差以上逸脱した場合、空気調和機の運転を強制的に開始する。」 そして、訂正事項1は、これら記載に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、上記アのとおり「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2)訂正事項2?4について 訂正事項2?4は、訂正事項1と同様の内容であるから、上記(1)の検討を踏まえると、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 5 一群の請求項について 訂正前の請求項1?3は、請求項3が、請求項1又は2を引用する関係にあり、訂正される請求項1又は2に連動して訂正されるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 また、訂正前の請求項4?6は、請求項6が、請求項4又は5を引用する関係にあり、訂正される請求項4又は5に連動して訂正されるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。 6 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、結論のとおり本件訂正を認める。 第3 訂正後の本件発明 令和2年11月25日付け手続補正書により補正された本件訂正後における本件特許の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明6」という。)は、それぞれ本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始することを特徴とする空気調和システム。 【請求項2】 室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知し、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始することを特徴とする空気調和システム。 【請求項3】 前記空気調和機は湿度を検知する湿度計測手段を有し、 前記所定温度は前記湿度計測手段が検知した湿度が低下するにしたがって上昇することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和システム。 【請求項4】 室温を検知する室温計測手段と、 空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する機能とを備えたことを特徴とする空気調和機。 【請求項5】 室温を検知する室温計測手段と、 空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知し、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する機能とを備えたことを特徴とする空気調和機。 【請求項6】 湿度を検知する湿度計測手段を有し、 前記所定温度は前記湿度計測手段が検知した湿度が低下するにしたがって上昇することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の空気調和機。」 第4 特許異議申立理由の概要 1 申立人Aの申立理由 申立人Aは、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第9号証を提出し、令和元年11月12日提出の特許異議申立書(以下、「申立書A」という。)において、概略次の特許異議申立理由を主張する。 (1)申立理由A1 本件特許の請求項1?6に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、本件特許の請求項1?6に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、その特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 (2)申立理由A2 本件特許の請求項1?6に係る特許は、以下の理由で特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 ア 本件特許の請求項1及び4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、及び、甲第4号証或いは甲第5号証に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件特許の請求項2及び5に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、及び、甲第4号証、甲第6号証、或いは甲第7号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件特許の請求項3及び6に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、及び、甲第4号証或いは甲第7号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)申立理由A3 本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は不明確であり、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。 (4)申立理由A4 本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許の請求項1?6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、本件特許の請求項1?6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。 <証拠方法> 甲第1号証:特願2012-57562号(特開2013-190171号) 甲第2号証:特願2012-86792号(特開2013-217534号) 甲第3号証:特開2010-159887号公報 甲第4号証:「あなたの大切な人のそばに。 ダイキンらくらくエアコン ラクエア誕生」、「DAIKIN ルームエアコン新商品カタログ 2012/02」、ダイキン工業株式会社、平成24年2月 甲第5号証:特開2011-33285号公報 甲第6号証:特開2010-266318号公報 甲第7号証:特開2010-9163号公報 甲第8号証:特開平11-173640号公報 甲第9号証:特開2008-290701号公報 2 申立人Bの申立理由 申立人Bは、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第10号証を提出し、令和元年12月5日提出の特許異議申立書(以下、「申立書B」という。)において、概略次の特許異議申立理由を主張する。 (1)申立理由B1 本件特許の出願は孫出願としての分割要件を満たしていない。したがって、本件特許の請求項1?6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証(親出願の公開公報)に記載された発明であるか、又は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 (2)申立理由B2 本件特許の請求項1?6に係る発明は明確ではないから、本件特許の請求項1?6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。 (3)申立理由B3 本件特許の請求項1?6に係る発明は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件特許の請求項1?6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。 (4)申立理由B4 本件特許の請求項1?6に係る特許は、以下の理由で特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 ア 本件特許の請求項1?6に係る発明は、甲第4号証の1又は甲第4号証の2に記載された発明、甲第5号証に記載の事項及び甲第6号証?甲第10号証に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件特許の請求項1?6に係る発明は、甲第4号証の1又は甲第4号証の2に記載された発明及び甲第6号証?甲第10号証に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件特許の請求項1?6に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、甲第4号証の1又は甲第4号証の2に記載の事項及び甲第6号証?甲第10号証に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件特許の請求項1?6に係る発明は、甲第6号証に記載された発明及び甲第4号証の1又は甲第4号証の2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 <証拠方法> 甲第1号証:特開2014-81146号公報(親出願の公開公報) 甲第2号証:特許第6353817号公報(子出願の特許公報) 甲第3号証:Weblio辞書>辞書・百科事典>日本語表現辞典>ともにの意味・解説:三省堂大辞林第三版(https://www.weblio.jp/content/ともに) 甲第4号証の1:「あなたの大切な人のそばに。 ダイキンらくらくエアコン ラクエア誕生」、「DAIKIN ルームエアコン新商品カタログ 2012/02」、ダイキン工業株式会社、平成24年2月 甲第4号証の2:小林 樹,「『ダイキン、簡単操作と、体へのやさしさにこだわったエアコン「ラクエア」』,[online],2012年2月9日,家電Watch,[2019年11月5日検索],インターネット<URL:https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/510829.html> 甲第5号証:特開2002-222010号公報 甲第6号証:特開2010-159887号公報 甲第7号証:特開2010-71595号公報 甲第8号証:特開2000-346426号公報 甲第9号証:特開2010-266318号公報 甲第10号証:特開平10-154181号公報 第5 取消理由の概要 当審が令和2年8月7日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 1 取消理由1(拡大先願) 本件特許の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ順に「本件発明1」?「本件発明6」という。)は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記3(1)又は(2)の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願の日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1?6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 取消理由2(進歩性) 本件発明1?6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記3(7)?(9)の文献のいずれかに記載された発明、並びに、下記3(7)?(9)の文献に記載された事項及び下記3(3)?(6)の文献に例証される周知技術のいずれかに基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 引用文献等一覧 申立A及び申立Bの証拠方法のうち、取消理由に採用されたものは以下のとおりである。 (1)特願2012-57562号(特開2013-190171号)(申立Aの甲第1号証であって、以下、「先願1」という。) (2)特願2012-86792号(特開2013-217534号)(申立Aの甲第2号証であって、以下、「先願2」という。) (3)特開2010-159887号公報(申立Aの甲第3号証であるとともに、申立Bの甲第6号証であって、以下、「引用例3」という。) (4)特開2008-290701号公報(申立Aの甲第9号証であって、以下、「引用例4」という。) (5)特開2010-71595号公報(申立Bの甲第7号証であって、以下、「引用例5」という。) (6)特開平10-154181号公報(申立Bの甲第10号証であって、以下、「引用例6」という。) (7)「あなたの大切な人のそばに。 ダイキンらくらくエアコン ラクエア誕生」、「DAIKIN ルームエアコン新商品カタログ 2012/02」、ダイキン工業株式会社、平成24年2月(申立Aの甲第4号証であるとともに、申立Bの甲第4号証の1であって、以下、「引用例7」という。) (8)小林 樹,「『ダイキン、簡単操作と、体へのやさしさにこだわったエアコン「ラクエア」』,[online],2012年2月9日,家電Watch,[2019年11月5日検索],インターネット<URL:https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/510829.html>(申立Bの甲第4号証の2であって、以下、「引用例8」という。) (9)特開2002-222010号公報(申立Bの甲第5号証であって、以下、「引用例9」という。) 第6 当審の判断 1 取消理由1(拡大先願)について (1)先願1について ア 先願1の明細書等の記載 先願1の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「先願1の明細書等」という。)には、「空気調和システム」に関し、図面と共に以下の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を示す(以下、同様。)。 「【請求項1】 冷房運転が可能な空気調和システムにおいて、 室内温度を測定する温度検出器と、 情報を表示、音、または振動で告知する告知部と、 当該空気調和システムの制御を行うものであって、制御モードに告知モードを含む制御部を備え、 前記制御部は、前記告知モードが有効とされているときに、室内温度が所定値以上であることを前記温度検出器が測定した場合、室内温度が所定値以上であることを前記告知部に告知させることを特徴とする空気調和システム。」 「【0001】 本発明は空気調和システムに関する。」 「【0007】 本発明に係る空気調和システムは、室内温度を測定する温度検出器と、情報を表示、音、または振動で告知する告知部と、当該空気調和システムの制御を行うものであって、制御モードに告知モードを含む制御部を備え、前記制御部は、前記告知モードが有効とされているときに、室内温度が所定値以上であることを前記温度検出器が測定した場合、室内温度が所定値以上であることを前記告知部に告知させることを特徴としている。」 「【0013】 上記構成の空気調和システムにおいて、室内湿度を測定する湿度検出器を備え、前記制御部は、前記告知モードが有効とされているときに、前記湿度検出器により測定された室内湿度と、前記温度検出器により測定された室内温度が、いずれも所定値以上であった場合、そのことを前記告知部に告知させることが好ましい。 ・・・ 【発明の効果】 【0015】 本発明に係る空気調和システムでは、室内温度が所定値以上であるとき、そのことを告知部が告知するから、冷房が望ましい状況になったことを使用者が認識しやすくすることができる。」 「【0019】 空気調和機本体1はセパレート型と呼ばれるタイプのものであり、室外機10と室内機30により構成される。 ・・・ 【0023】 室内機30は、合成樹脂製部品により構成される筐体31の内部に、室内側熱交換器32、室内側送風機33などを収納している。室内側熱交換器32は、3個の熱交換器32A、32B、32Cを、室内側送風機33を覆う屋根のように組み合わせたものである。室内側送風機33はモータにクロスフローファンを組み合わせたものである。 ・・・ 【0025】 空気調和機本体1の運転制御を行う上で、各所の温度を知ることが不可欠である。この目的のため、室外機10と室内機30に温度検出器が配置される。室外機10においては、室外側熱交換器14に温度検出器21が配置され、圧縮機12の吐出部となる吐出管12aに温度検出器22が配置され、圧縮機12の吸入部となる吸入管12bに温度検出器23が配置され、膨張弁15と二方弁19の間の冷媒配管に温度検出器24が配置され、筐体11の内部の所定箇所に外気温測定用の温度検出器25が配置される。温度検出器21、22、23、24、25はいずれもサーミスタにより構成される。 【0026】 室内機30においては、室内側熱交換器32に温度検出器34が配置され、筐体31の内部の所定箇所に室内温度測定用の温度検出器35が配置される。温度検出器34、35はいずれもサーミスタにより構成される。 【0027】 室内機30は告知部36及び送受信部37を備える。告知部36は表示部を兼ねるものであり、情報を表示または音で告知する。告知に表示を用いる場合、告知部36は筐体31の正面に露出する形で配置される。この場合の告知部36は液晶パネルやLEDで表示を行う。告知が専ら音により行われる場合は、告知部36は筐体31の内部に隠れていてもよい。送受信部37はリモコン50からの信号を受信したり、リモコン50に対し信号を送信したりするためのものであり、送受信のための素子を筐体31の正面に露出させている。」 「【0043】 前述の通り、空気調和機本体1は各種の制御モードで運転されるが、その制御モードには「告知モード」が含まれる。「告知モード」とは、室内温度が所定値以上であるとき、そのことを告知部36が告知するモードのことである。告知モードでは図6に示すフローチャートに従って制御が進行する。 ・・・ 【0046】 告知モードが有効に設定された場合、制御部40は、図6のステップ#101で、温度検出器35の出力をチェックし、室内温度が所定値(例えば32℃)以上であるか、どうかを調べる。調べた結果、判定がYESであればステップ#102に進む。 【0047】 ステップ#102では告知処理ステータスが「告知」とされる。これにより告知部36は、表示または音により、室内温度が所定値以上であること、すなわちこのまま放置すると熱中症発症のおそれがあることを、液晶パネルの表示やLEDの点灯などで使用者に告知する。これを判断の一助として使用者は、空気調和機本体1の冷房運転、あるいは除湿運転を開始するか、どうかを決定し、必要な措置をとることができる。 【0048】 温度が高くても湿度が低ければ、温度と湿度が両方とも高い場合に比べ、熱中症発症の危険性は低減する。そのため、除湿運転も熱中症予防の有効な対策となる。」 「【0055】 第2実施形態の空気調和システムが第1実施形態に係る空気調和システムと異なっているのは、室内湿度を測定する湿度検出器42が室内機30に配置されている点である。 【0056】 第2実施形態の空気調和システムでは、告知モードが有効であるとき、図9のフローチャートに従って制御が進行する。 【0057】 制御部40は、図9のステップ#111で、湿度検出器42の出力をチェックし、室内湿度が所定値以上であるか、どうかを調べる。調べた結果、判定がYESであればステップ#112に進む。 【0058】 制御部40は、ステップ#112では温度検出器35の出力をチェックし、室内温度が所定値以上であるか、どうかを調べる。調べた結果、判定がYESであればステップ#113に進む。 【0059】 ステップ#113では告知処理ステータスが「告知」とされる。これにより告知部36は、表示または音により、室内湿度が所定値以上であり、室内温度も所定値以上であること、すなわちこのまま放置すると熱中症発症のおそれがあることを使用者に告知する。これを判断の一助として使用者は、空気調和機本体1の冷房運転、あるいは除湿運転を開始するか、どうかを決定し、必要な措置をとることができる。 【0060】 第2実施形態の空気調和システムでは、室内温度だけでなく、室内湿度も考慮に入れたより細やかな告知を行うので、告知を一層正確なものとすることができる。 【0061】 室内温度を測定する温度検出器35と、室内湿度を測定する湿度検出器42の一方または両方を、室内機30でなくリモコン50に配置する構成も可能である。 【0062】 第1実施形態においても第2実施形態においても、使用者が冷房運転や除湿運転を開始した後、告知モードは有効に働き続けている。すなわち、冷房運転や除湿運転を行っていても、室内温度や室内湿度が所定値を下回らなければ告知が続く。これにより使用者は、温度や湿度が下がるように設定を変えた方が良いことを認識しやすくなる。 【0063】 上記のように、冷房運転や暖房運転などを行っていない運転開始待機状態(例えば、使用者からの運転開始指示待ちの状態)だけでなく、空調運転中も告知モードにより告知することで、常に使用者の注意を喚起し、熱中症を回避しやすくすることができる。」 「【0065】 第3実施形態では、図9のフローチャートの制御フローを実行した後、図12のフローチャートに従って制御が進行する。 【0066】 制御部40は、図12のステップ#121で、室内湿度が所定値以上であり、室内温度も所定値以上である旨の告知が、所定時間以上継続しているかどうかを調べる。調べた結果、判定がYESであれば、ステップ#122に進む。 【0067】 制御部40は、ステップ#122では人体感知センサ43の出力をチェックし、人体感知センサ43が人体を感知しているか、どうかを調べる。調べた結果、判定がYESであればステップ#123に進む。 【0068】 ステップ#123では運転ステータスが「冷房運転」とされる。これにより空気調和機本体1は冷房運転を自動的に開始し、熱中症発症のおそれが低減するまで室内環境を改善する。湿度が下がっただけでも室内環境は改善されるところから、自動的に開始されるのは除湿運転であることとし、室内湿度のみならず室内温度までも下げるため冷房運転に切り替えるかどうかは使用者の選択に委ねることとしてもよい。 【0069】 第3実施形態では、空気調和領域に人がいない限り自動的に冷房運転や除湿運転を開始することはないので、無駄に電力を消費することがなく、省エネルギーを達成することができる。」 「【0071】 本発明の空気調和システムの第4実施形態を図13に基づき説明する。第4実施形態がそれ以前の実施形態と異なっているのは、空気調和機本体1から告知部をなくし、リモコン50の表示部52のみに告知部としての機能を持たせた点である。 ・・・ 【0074】 また、室内機30に告知部を復活し、リモコン50と室内機30の両方で告知を行うようにしてもよい。」 「【0076】 第1から第4までのすべての実施形態で、一般的なリモートコントローラ50を遠隔操作装置として使用したが、無線通信機能(赤外線通信や電波通信)を備えた機器であれば、空気清浄機や加湿器などの機器であっても遠隔操作装置として使用することができる。 ・・・ 【0078】 携帯電話やスマートフォンなど、無線で情報を授受する携帯情報端末に専用のアプリケーションをインストールし、これらを遠隔操作装置として使用することも可能である。これらの機器であれば、表示はもちろんのこと、音や振動で告知を行うことも容易である。これらの機器は、身につけたりバッグに入れるなど、使用者と共にあることが多いので、告知がより伝わりやすい。」 また、図6、9及び12の記載を以下に示す。 「 」 イ 先願1の明細書等の記載から認められること (ア)上記アの請求項1、段落0001、0007、0013、0015、0055、0060及び0071並びに図1?3、7及び8の記載によれば、先願1の明細書等には空気調和システムが記載されている。 (イ)上記アの段落0019、0023及び0025?0027並びに図1?3、7及び8の記載によれば、空気調和システムは、室内温度を測定する温度検出器35を有する空気調和機本体1を備えている。 (ウ)上記アの段落0007、0027、0043、0046、0047、0059、0063及び0074並びに図6及び9の記載によれば、空気調和システムは、冷房運転や暖房運転などを行っていない運転開始待機状態において、温度検出器35により測定される室内温度が、熱中症発症のおそれがある所定値以上であるとき、熱中症発症のおそれがあることを室内の使用者に向けて音で告知するものである。 (エ)上記アの段落0074、0076及び0078並びに図3?6及び8の記載と、上記(ウ)を合わせみると、空気調和システムは、熱中症発症のおそれがあることの告知を、専用のアプリケーションをインストールした携帯電話やスマートフォン等の携帯情報端末を用いて、音で行うものである。 (オ)上記アの段落0055?0059及び図7?9の記載と、上記(ウ)を合わせみると、空気調和システムは、室内湿度を測定する湿度検出器42を有し、前記湿度検出器42が検知した室内湿度が所定値以上であり、室内温度も所定値以上であるとき、熱中症発症のおそれがあることを使用者に向けて告知するものである。 (カ)上記アの段落0065?0069及び図12の記載と、上記(オ)を合わせてみると、空気調和システムは、室内湿度が所定値以上であり、室内温度も所定値以上であるときに行われる熱中症発症のおそれがある旨の告知が、所定時間以上継続しており、人体感知センサ43が人体を感知しているときに、空気調和機本体1は冷房運転を自動的に開始するものである。 (キ)上記(イ)の空気調和機本体1は、その制御部40が上記(ウ)?(カ)の機能を有している。 ウ 先願1の明細書等に記載された発明 上記ア及びイを総合して整理すると、先願1の明細書等には、次の事項からなる発明が記載されていると認める。 (ア)先願発明1-1 「室内温度を測定する温度検出器35を有する空気調和機本体1を備え、 冷房運転や暖房運転などを行っていない運転開始待機状態において、 前記温度検出器35により測定される室内温度が、熱中症発症のおそれがある所定値以上であるとき、 熱中症発症のおそれがあることを室内の使用者に向けて音で告知するとともに、 専用のアプリケーションをインストールした携帯電話やスマートフォン等の携帯情報端末を用いて、上記の告知を音で行い、 上記の告知が所定時間以上継続しており、人体感知センサ43が人体を感知しているときに、前記空気調和機本体1は冷房運転を自動的に開始する 空気調和システム。」(以下「先願発明1-1」という。) (イ)先願発明1-2 「先願発明1-1において、 室内湿度を測定する湿度検出器42を有し、 前記湿度検出器42が検知した室内湿度が所定値以上であり、室内温度も所定値以上であるとき、 熱中症発症のおそれがあることを使用者に向けて告知するようにした、 空気調和システム。」(以下「先願発明1-2」という。) (ウ)先願発明1-3 「室内温度を測定する温度検出器35と、 冷房運転や暖房運転などを行っていない運転開始待機状態において、 前記温度検出器35により測定される室内温度が、熱中症発症のおそれがある所定値以上であるとき、 熱中症発症のおそれがあることを室内の使用者に向けて音で告知するとともに、 専用のアプリケーションをインストールした携帯電話やスマートフォン等の携帯情報端末を用いて、上記の告知を音で行い、 上記の告知が所定時間以上継続しており、人体感知センサ43が人体を感知しているときに、冷房運転を自動的に開始する機能を備えた空気調和機本体1。」(以下「先願発明1-3」という。) (エ)先願発明1-4 「先願発明1-3において、 室内湿度を測定する湿度検出器42を有し、 前記湿度検出器42が検知した室内湿度が所定値以上であり、室内温度も所定値以上であるとき、 熱中症発症のおそれがあることを使用者に向けて告知するようにした、 空気調和機本体1。」(以下「先願発明1-4」という。) (2)先願2について ア 先願2の明細書等の記載 先願2の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「先願2の明細書等」という。)には、「空気調和機」に関し、図面と共に以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、冷房運転等を行う空気調和機に関する。」 「【0004】 したがって、室内温度や室内湿度が高い状態であっても、ユーザがコントローラに対して運転開始操作を行わない場合、空気調和機の運転が開始されない。そのため、ユーザが熱中症等になることがある。 【0005】 そこで、本発明は、運転停止時において、運転開始を促す報知を行う空気調和機を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 第1の発明に係る空気調和機は、室内温度を検出する温度検出手段と、室内湿度を検出する湿度検出手段とを備えており、運転停止時において、前記温度検知手段で検出された室内温度及び/又は前記湿度検知段で検出された室内湿度に基づいて、運転開始を促す報知が自動的に行われるお知らせモードを有している。 【0007】 この空気調和機では、室内が室内温度及び/又は室内湿度を低下させる必要のある状態になった場合に、運転開始を促す報知が自動的に行われる。したがって、室内温度及び/又は室内湿度が高い状態で長時間継続されるのを抑制できるので、ユーザが熱中症等になることを防止できる。 【0008】 ここで、本発明には、室内温度及び室内湿度に基づいて運転開始を促す報知が行われる場合と、室内温度に基づいて運転開始を促す報知が行われる場合と、室内湿度に基づいて運転開始を促す報知が行われる場合を含む。」 「【0018】 この空気調和機では、室内温度及び/又は室内湿度が、強制運転が開始される範囲の近くに所定時間ある場合に、運転開始を促す報知が行われる。したがって、室内温度及び/又は室内湿度が、報知が必要となる前に報知を行って、室内温度及び/又は室内湿度を低下させることが必要なことをユーザに知らせることができる。」 「【0046】 第1の発明では、室内が室内温度及び/又は室内湿度を低下させる必要のある状態になった場合に、運転開始を促す報知が自動的に行われる。したがって、室内温度及び/又は室内湿度が高い状態で長時間継続されるのを抑制できるので、ユーザが熱中症等になることを防止できる。 【0047】 第2の発明では、室内ファンが駆動されて室内機の内部に空気が流れた状態での室内温度及び/又は室内湿度に基づいて運転開始を促す報知を行うかを判定するので、室内温度検出手段や室内湿度検出手段が室内機の内部にあって運転停止時において室内機の内部に熱がこもった場合でも、室内温度及び/又は室内湿度を適正に検出できる。」 「【0051】 第6の発明では、室内温度及び/又は室内湿度が、強制運転が開始される範囲の近くに所定時間ある場合に、運転開始を促す報知が行われる。したがって、室内温度及び/又は室内湿度が、報知が必要となる前に報知を行って、室内温度及び/又は室内湿度を低下させることが必要なことをユーザに知らせることができる。」 「【0067】 <空気調和機1の全体構成> 図1に示すように、本実施形態の空気調和機1は、室内に設置される室内機2と、室外に設置される室外機3とを備えている。そして、空気調和機1は、圧縮機10と、四方弁11、室外熱交換器12と、膨張弁(減圧機構)13と、室内熱交換器14とを接続した冷媒回路を備えている。冷媒回路において、圧縮機10の吐出口に四方弁11を介して室外熱交換器12が接続され、その室外熱交換器12に膨張弁13が接続される。そして、 膨張弁13に室内熱交換器14の一端が接続され、その室内熱交換器14の他端に四方弁11を介して圧縮機10の吸込口が接続される。 ・・・ 【0071】 室内機2内には、室内熱交換器14に対向した室内ファン16が配置される。室内機2の吹出口には、上下方向について吹き出し方向を変更する上下フラップ17が配置される。そして、室内機2には、報知を行う報知手段18が配置される。図1に示すように、室内機2に、室内温度を検出する室内温度センサ(室内温度検出手段)21と、室内湿度を検出する室内湿度センサ(室内湿度検出手段)22が取付けられる。 【0072】 図2に示すように、空気調和機1の制御部には、圧縮機10と、四方弁11、膨張弁13と、室内ファン16を駆動するモータ16aと、上下フラップ17を駆動するモータ17aと、報知手段18と、室内温度センサ21と、室内湿度センサ22と、コントローラ30とが接続される。したがって、制御部は、コントローラ30からの指令(運転開始操作や室内温度の設定温度等)や、室内温度センサ21で検知される室内温度や、室内湿度センサ22で検知される室内湿度に基づいて、空気調和機1の運転や報知手段18での報知を制御する。」 「【0079】 お知らせモードでは、室内が高温状態や高湿状態である場合に、室内温度及び室内湿度に基づいて、強制運転が自動的に開始される。したがって、お知らせモードに切り換えた場合、室内が高温状態や高湿状態になったときに、ユーザがコントローラ30に対して運転開始操作を行わなかった場合でも、強制運転が自動的に開始されて、室内温度及び室内湿度が低下する。」 「【0084】 図4は、お知らせモードにおける判定図の一例であるが、この判定図には、高温ゾーンと、モニタリングゾーンと、待機ゾーンとが設定される。高温ゾーンは、室内が高温状態や高湿状態であって、室内温度や室内湿度を低下させる必要がある領域である。待機ゾーンは、高温ゾーンに遠い領域であり、室内温度や室内湿度を低下させる必要がない領域である。モニタリングゾーンは、高温ゾーンに近い領域であり、室内温度や室内湿度が高温ゾーンに変化しやすい領域である。 【0085】 図4の判定図において、A点?F点は、下記の室内温度及び室内湿度である点を示す。 ・A点:室内温度が27度であり、室内湿度が100%である点 ・B点:室内温度が27度であり、室内湿度が70?80%の間のy1である点 ・C点:室内温度が33度であり、室内湿度が30%である点 ・D点:室内温度が28度であり、室内湿度が100%である点 ・E点:室内温度が28度であり、室内湿度が70?80%の間のy2である点 ・F点:室内温度が34度であり、室内湿度が30?40%の間のy3である点 【0086】 そして、A点とB点とC点を接続した線l_(1)が、待機ゾーンとモニタリングゾーンの間の線であって、D点とE点とF点を接続した線l_(2)が、モニタリングゾーンと高温ゾーンとの間の線である。したがって、図4の判定図に示すように、待機ゾーンは、線l_(1)の左下の領域であって、高温ゾーンは、線l_(2)の右上の領域(室内温度及び室内湿度が線l_(2)上にある場合を含む)であって、モニタリングゾーンは、高温ゾーンと待機ゾーンとに挟まれた領域(室内温度及び室内湿度が線l_(1)上にある場合を含む)である。 【0087】 よって、空気調和機1の運転停止時において、お知らせモードに切り換えた場合、室内温度及び室内湿度が、高温ゾーン、モニタリングゾーン及び待機ゾーンの各ゾーンにある場合で運転動作が異なる。そこで、お知らせモードに切り換えられた後の各ゾーンでの運転動作について説明する。 【0088】 室内温度及び室内湿度が高温ゾーンにある場合には、室内温度や室内湿度を低下させる必要があるため、運転開始を促す報知が行われる。 ・・・ 【0092】 次に、空気調和機1のお知らせモードにおける制御について、図5を参照しつつ説明する。 【0093】 まず、空気調和機1の運転停止時において、コントローラ30のモード切換部50(図3(b)参照)によって、お知らせモードに切り換えられる(ステップS1)。ここでは、お知らせモードに切り換えられたときの室内温度及び室内湿度が待機ゾーン(図4参照)にある場合について説明する。 【0094】 お知らせモードにおいて、室内温度センサ21で検出された室内温度及び室内湿度センサ22で検出された室内湿度が、モニタリングゾーンにあるかを判断する(ステップS2)。室内温度及び室内湿度が待機ゾーンから高温ゾーンに変化する場合には、待機ゾーンからモニタリングゾーンに変化した後で、高温ゾーンに変化すると考えられる。したがって、ステップS2では、室内温度及び室内湿度がモニタリングゾーンにあるかに基づいて、室内温度及び室内湿度が、冷房運転を開始する必要のある高温ゾーンに近付いたかを判断する。 【0095】 そして、室内温度及び室内湿度がモニタリングゾーンにあると判断した場合には(ステップS2:YES)、室内ファン16を駆動して、送風運転を開始する(ステップS3)。室内温度及び室内湿度が高温ゾーンの近くのモニタリングゾーンにある場合、送風運転を開始することで、室内機2の内部に空気が流れるので、室内温度及び室内湿度が適正に検出できる。 【0096】 一方、室内温度及び室内湿度がモニタリングゾーンにないと判断した場合には(ステップS2:NO)、室内温度及び室内湿度が待機ゾーンにあるので、室内温度及び室内湿度がモニタリングゾーンにあるかの判断を継続する(ステップS2)。 【0097】 そして、ステップS3で送風運転を開始した後、室内温度センサ21で検出された室内温度及び室内湿度センサ22で検出された室内湿度が、モニタリングゾーンにあるかを判断する(ステップS4)。室内温度及び室内湿度がモニタリングゾーンにあると判断した場合には(ステップS4:YES)、室内温度及び室内湿度が高温ゾーンの近くのモニタリングゾーンにあるので、室内温度及び室内湿度が適正に検出できるように、送風運転を継続する(ステップS3)。 【0098】 一方、室内温度及び室内湿度がモニタリングゾーンにないと判断した場合には(ステップS4:NO)、送風運転を開始した後で、室内温度及び室内湿度が待機ゾーンまたは高温ゾーンに変化したと考えられる。したがって、室内温度及び室内湿度が待機ゾーンにあるかを判断する(ステップS5)。そして、室内温度及び室内湿度が待機ゾーンにあると判断した場合には(ステップS4:YES)、室内温度及び室内湿度が高温ゾーンに近いモニタリングゾーンから、待機ゾーンに変化したので、送風運転を停止する(ステップS6)。その後、ステップS2に移行して、室内温度及び室内湿度がモニタリングゾーンにあるかを判断する。一方、室内温度及び室内湿度が待機ゾーンにないと判断した場合には(ステップS5:NO)、室内温度及び室内湿度が高温ゾーンにあって、室内温度及び室内湿度を低下させる必要があるので、運転開始を促す報知を開始する(ステップS7)。 【0099】 <本実施形態の空気調和機の特徴> 本実施形態の空気調和機1では、室内が室内温度及び室内湿度を低下させる必要のある状態になった場合に、報知手段18により運転開始を促す報知が自動的に行われる。したがって、室内温度及び室内湿度が高い状態で長時間継続されるのを抑制できるので、ユーザが熱中症等になることを防止できる。」 「【0108】 〔第2実施形態〕 次に、図6を参照しつつ、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の空気調和機は、第1実施形態の空気調和機と、お知らせモードで運転開始を促す報知が行われる時期が異なっている。なお、その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。 【0109】 第2実施形態の空気調和機において、運転開始を促す報知を行うかを判定する判定図は、第1実施形態の空気調和機における判定図(図4)と同一である。 【0110】 そして、第1実施形態の空気調和機では、お知らせモードにおいて、室内温度及び室内湿度が高温ゾーンにある場合に運転開始を促す報知が行われるのに対し、第2実施形態の空気調和機では、お知らせモードにおいて、室内温度及び室内湿度が高温ゾーンにある場合に運転開始を促す報知が行われると共に、室内温度及び室内湿度がモニタリングゾーンに所定時間ある場合に運転開始を促す報知が行われる。」 「【0118】 また、本実施形態の空気調和機では、室内ファン16が駆動された後に、室内温度及び室内湿度がモニタリングゾーンに所定時間ある場合に、運転開始を促す報知が行われる。したがって、室内温度及び室内湿度が、報知が必要となる前に報知を行って、室内温度及び室内湿度を低下させることが必要なことをユーザに知らせることができる。」 また、図4及び図5の記載を以下に示す。 「 」 イ 先願2の明細書等の記載から認められること (ア)上記アの段落0001、0004?0007、0067、0072、0087、0092、0093及び0099並びに図1の記載によれば、先願2の明細書等には空気調和機が記載されている。 (イ)上記アの段落0006、0071及び0072並びに図1及び2の記載によれば、空気調和機は、室内温度を検出する室内温度センサ21及び室内湿度を検出する室内湿度センサ22を有している。 (ウ)上記アの段落0004?0008、0046、0047、0072、0084?0088及び0092?0099並びに図4及び5の記載によれば、空気調和機は、空気調和機1の運転停止時において、室内温度センサ21で検出された室内温度及び室内湿度センサ22で検出された室内湿度がユーザが熱中症等になるのを防止するのに室内温度や室内湿度を低下させる必要がある領域である高温ゾーンにある場合を、室内温度は室内湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む線l_(2)で定められた室内温度及び室内湿度の各所定値以上であるかにより判定し、高温ゾーンにある場合に、運転開始を促す報知を報知手段18によりユーザに行うようにしたものである。 (エ)上記アの段落0018、0051、0079、0108?0110及び0118の記載によれば、空気調和機は、室内が高温状態や高湿状態である場合に、強制運転が自動的に開始されるようにしたものである。 ウ 先願2の明細書等に記載された発明 上記ア及びイを総合して整理すると、先願2の明細書等には、次の事項からなる発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されていると認める。 「室内温度を検出する室内温度センサ21及び室内湿度を検出する室内湿度センサ22を有する空気調和機1であって、 前記空気調和機1の運転停止時において、 前記室内温度センサ21で検出された室内温度及び前記室内湿度センサ22で検出された室内湿度がユーザが熱中症等になるのを防止するのに室内温度や室内湿度を低下させる必要がある領域である高温ゾーンにある場合を、室内温度は室内湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む線l_(2)で定められた室内温度及び室内湿度の各所定値以上であるかにより判定し、 高温ゾーンにある場合に、運転開始を促す報知を報知手段18によりユーザに行うようにし、 室内が高温状態や高湿状態である場合に、強制運転が自動的に開始されるようにした 空気調和機1。」 (3)本件発明1についての検討 ア 先願発明1-1による場合 (ア)対比 本件発明1と先願発明1-1とを、対比する。 ・後者の「室内温度」は、前者の「室温」に相当し、以下同様に、「測定する」は「検知する」に、「温度検出器35」は「室温計測手段」に、「空気調和機本体1」は「空気調和機」に、「前記温度検出器35により測定される室内温度」は「前記室温計測手段が検知した室温」に、「熱中症発症のおそれがあることを室内の使用者に向けて音で告知する」は「空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行う」に、「専用のアプリケーションをインストールした携帯電話やスマートフォン等の携帯情報端末を用いて、上記の告知を音で行う」は「インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い」に、「空気調和システム」は「空気調和システム」に、それぞれ相当する。 ・後者の「冷房運転や暖房運転などを行っていない運転開始待機状態」は、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時」に相当する。 また、後者の「熱中症発症のおそれがある所定値」は、前者の「所定温度」に相当し、後者の「前記温度検出器35により測定される室内温度が、熱中症発症のおそれがある所定値以上であるとき」は前者の「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき」に相当する。 そして、後者の「冷房運転や暖房運転などを行っていない運転開始待機状態において、前記温度検出器35により測定される室内温度が、熱中症発症のおそれがある所定値以上であるとき、熱中症発症のおそれがあることを室内の使用者に向けて音で告知するとともに、専用のアプリケーションをインストールした携帯電話やスマートフォン等の携帯情報端末を用いて、上記の告知を音で行」う態様は、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行」う態様に相当する。 ・後者の「上記の告知が所定時間以上継続しており、人体感知センサ43が人体を感知しているときに、前記空気調和機本体1は冷房運転を自動的に開始する」ことは、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」ことに、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」という限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と先願発明1-1との間に、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する空気調和システム。」 [相違点1-1-1] 本件発明1では、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」のに対して、先願発明1-1では、「上記の告知が所定時間以上継続しており、人体感知センサ43が人体を感知しているときに、前記空気調和機本体1は冷房運転を自動的に開始する」ようにした点。 (イ)判断 上記相違点1-1-1について検討する。 先願発明1-1は、「上記の告知が所定時間以上継続しており、人体感知センサ43が人体を感知しているとき」という条件を満たすことによって「前記空気調和機本体1は冷房運転を自動的に開始する」ものであり、1つの条件を満たすことで空気調和機本体1が冷房運転を自動的に開始するものである。 これに対して、上記相違点1-1-1に係る本件発明1の構成は、「前記空気調和機の空調運転停止時において」、「前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき」という条件と、「前記空気調和機の空調運転停止時において」、「前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき」という条件との論理和の結果、すなわち、2つの条件の少なくとも一方が満たされることに応じて、「前記空気調和機の運転を強制的に開始する」ものであり、より確実に熱中症の防止を図ることができるものといえる。 そして、上記相違点1-1-1に係る本件発明1の構成は、本件特許の出願前の技術常識及び申立A及び申立Bにおける他の各甲号証(申立Aの甲第2号証並びに申立Bの甲第1号証及び甲第2号証を除く。)の記載を考慮しても、本件特許の出願前に周知技術又は慣用技術であったとは認められない。 そうすると、上記相違点1-1-1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は先願発明1-1と実質的に同一ではない。 イ 先願発明2による場合 (ア)対比 本件発明1と先願発明2とを、対比する。 ・後者の「室内温度」は、前者の「室温」に相当し、以下同様に、「検出する」は「検知する」に、「室内温度センサ21」は「室温計測手段」に、「空気調和機1」は「空気調和機」に、「前記室内温度センサ21で検出された室内温度」は「前記室温計測手段が検知した室温」に、それぞれ相当する。 ・後者の「前記空気調和機1の運転停止時」は、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時」に相当する。 また、後者の「前記室内温度センサ21で検出された室内温度及び前記室内湿度センサ22で検出された室内湿度がユーザが熱中症等になるのを防止するのに室内温度や室内湿度を低下させる必要がある領域である高温ゾーンにある場合を、室内温度は室内湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む線l_(2)で定められた室内温度及び室内湿度の各所定値以上であるかにより判定し、高温ゾーンにある場合」は、室内温度センサ21で検出された室内温度が、ユーザが熱中症等になるのを防止するのに室内温度や室内湿度を低下させる必要がある領域である高温ゾーンで規定される室内温度の所定値以上である場合が含まれるから、前者の「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき」に相当する。 さらに、後者の「報知手段18」は、高温ゾーンにある場合に、運転開始を促す報知を行う手段であるところ、注意喚起を行う報知をする際に、音声やブザーを用いることは本件特許の出願前に技術常識であるから、後者の「運転開始を促す報知を報知手段18によりユーザに行う」ことは、前者の「空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行う」ことに相当する。 そして、後者の「前記空気調和機1の運転停止時において、前記室内温度センサ21で検出された室内温度及び前記室内湿度センサ22で検出された室内湿度がユーザが熱中症等になるのを防止するのに室内温度や室内湿度を低下させる必要がある領域である高温ゾーンにある場合を、室内温度は室内湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む線l_(2)で定められた室内温度及び室内湿度の各所定値以上であるかにより判定し、高温ゾーンにある場合に、運転開始を促す報知を報知手段18によりユーザに行う」態様は、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行」う態様に、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行」うという限りにおいて一致する。 ・後者の「室内が高温状態や高湿状態である場合に、強制運転が自動的に開始されるようにした」ことは、運転開始を促す報知をユーザに行った後に、さらに室内が高温側の所定温度以上の状態になったときに行われることは明らかであるから、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」ことに、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」という限りにおいて一致する。 ・後者の「空気調和機1」は、その運転に用いられる室内温度センサ及び室内湿度センサ22の他に、高温ゾーンにある場合に、運転開始を促す報知を報知手段18をさらに備えると共に、制御部において室内温度センサ21で検出された室内温度及び室内湿度センサ22で検出された室内湿度がユーザが熱中症等になるのを防止するのに室内温度や室内湿度を低下させる必要がある領域である高温ゾーンにある場合に、運転開始を促す報知を報知手段18により行うための機能を特別に備えるのであるから、空気調和システムを構成しているものといえる。 そうすると、本件発明1と先願発明2との間に、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行い、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する空気調和システム。」 [相違点1-2-1] 本件発明1では、「インターネットを介して空調運転を勧める報知を行」うのに対して、先願発明2では、運転開始を促す報知をインターネットを介して行うことは特定されていない点。 [相違点1-2-2] 本件発明1では、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」のに対して、先願発明2では、「室内が高温状態や高湿状態である場合に、強制運転が自動的に開始されるようにした」点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 [相違点1-2-1について] 空気調和システム(空気調和機)において、異常の報知をインターネットを介して行うことは、引用例3(特に、段落0061)、引用例4(特に、段落0045及び0063)、引用例5(特に、段落0015、0045及び0047)及び引用例6(特に、0031?0033及び0063)に記載されているように、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という。)であり、上記相違点1-2-1は、周知技術1の付加であって、新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差といえる。 [相違点1-2-2について] 先願発明2は、「室内が高温状態や高湿状態である場合」という条件を満たすことによって「強制運転が自動的に開始されるようにした」ものであり、1つの条件を満たすことで空気調和機1が強制運転を自動的に開始するものである。 これに対して、上記相違点1-2-2に係る本件発明1の構成は、「前記空気調和機の空調運転停止時において」、「前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき」という条件と、「前記空気調和機の空調運転停止時において」、「前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき」という条件との論理和の結果、すなわち、2つの条件の少なくとも一方が満たされることに応じて、「前記空気調和機の運転を強制的に開始する」ものであり、より確実に熱中症の防止を図ることができるものといえる。 そして、上記相違点1-2-2に係る本件発明1の構成は、本件特許の出願前の技術常識、周知技術1の例証である引用例3?6の記載並びに申立A及び申立Bにおける他の各甲号証(申立Aの甲第1号証、申立Bの甲第1号証及び甲第2号証を除く。)の記載を考慮しても、本件特許の出願前に周知技術又は慣用技術であったとは認められない。 そうすると、上記相違点1-2-2は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は先願発明2と実質的に同一ではない。 (4)本件発明2についての検討 ア 先願発明1-1による場合 (ア)対比 本件発明2と先願発明1-1とを対比すると、後者の「熱中症発症のおそれがある所定値」は、前者の「熱中症の警戒が必要な所定温度」に相当し、同様に、「熱中症発症のおそれがあることを室内の使用者に向けて音で告知する」ことは「熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知する」ことに相当する。 そして、上記(3)ア(ア)の対比の検討を踏まえると、本件発明2と先願発明1-1との間に、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知し、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する空気調和システム。」 [相違点2-1-1] 本件発明2では、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」のに対して、先願発明1-1では、「上記の告知が所定時間以上継続しており、人体感知センサ43が人体を感知しているときに、前記空気調和機本体1は冷房運転を自動的に開始する」ようにした点。 (イ)判断 上記相違点2-1-1は、上記相違点1-1-1と同様である。 したがって、上記(3)ア(イ)の検討を踏まえると、上記相違点2-1-1は実質的な相違点であり、本件発明2は先願発明1-1と実質的に同一ではない。 イ 先願発明2による場合 (ア)対比 本件発明2と先願発明2とを、上記(3)イ(ア)の対比の検討を踏まえて対比する。 後者の「前記室内温度センサ21で検出された室内温度及び前記室内湿度センサ22で検出された室内湿度がユーザが熱中症等になるのを防止するのに室内温度や室内湿度を低下させる必要がある領域である高温ゾーンにある場合を、室内温度は室内湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む線l_(2)で定められた室内温度及び室内湿度の各所定値以上であるかにより判定し、高温ゾーンにある場合」は、前者の「前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき」に相当する。 また、後者の「運転開始を促す報知を報知手段18によりユーザに行う」ことは、前者の「熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知する」ことに相当する。 そうすると、前者の他の構成は本件発明1と同様であるから、本件発明2と先願発明2との間に次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知し、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する空気調和システム。」 [相違点2-2-1] 本件発明1では、「熱中症の警戒が必要である旨」を「インターネットを介して報知」するのに対して、先願発明2では、運転開始を促す報知をインターネットを介して行うことは特定されていない点。 [相違点2-2-2] 本件発明2では、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」のに対して、先願発明2では、「室内が高温状態や高湿状態である場合に、強制運転が自動的に開始されるようにした」点。 (イ)判断 事案に鑑み、上記相違点2-2-2について検討する。 上記相違点2-2-2は、上記相違点1-2-2と同様である。 したがって、上記(3)イ(イ)の検討を踏まえると、上記相違点2-2-2は実質的な相違点であり、本件発明2は先願発明2と実質的に同一ではない。 (5)本件発明3についての検討 ア 先願発明1-2による場合 (ア)対比 先願1の明細書等の段落0048には、室内温度が高くても室内湿度が低ければ、室内温度と室内湿度が両方とも高い場合に比べ、熱中症発症の危険度は低減する記載、すなわち熱中症発症の恐れがある室内温度は、室内湿度が低下するにしたがって上昇する旨の記載がされており、引用発明1-2の室内温度の所定値は、室内湿度が低下するにしたがって上昇するように設定されることは明らかである。 そうすると、本件発明3と先願発明1-2とを、上記(3)ア(ア)の対比の検討又は上記(4)ア(ア)の対比の検討を踏まえて対比すると、両者は上記相違点1-1-1又は上記相違点2-1-1で相違する。 (イ)判断 上記(3)ア(イ)の検討又は上記(4)ア(イ)の検討を踏まえると、上記相違点1-1-1又は上記相違点2-1-1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明3は、引用発明1-2と実質的に同一ではない。 イ 先願発明2による場合 (ア)対比 本件発明3と先願発明2とを、上記(3)イ(ア)の対比の検討又は上記(4)イ(ア)の検討を踏まえて対比する。 後者の「室内温度を検出する室内温度センサ21及び室内湿度を検出する室内湿度センサ22を有」し、「前記室内温度センサ21で検出された室内温度及び前記室内湿度センサ22で検出された室内湿度がユーザが熱中症等になるのを防止するのに室内温度や室内湿度を低下させる必要がある領域である高温ゾーンにある場合を、室内温度は室内湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む線l_(2)で定められた室内温度及び室内湿度の各所定値以上であるかにより判定」することは、「室内温度は室内湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む線l_(2)で定められた室内温度」を用いて高温ゾーンにある場合を判定しているから、前者の「前記空気調和機は湿度を検知する湿度計測手段を有し、前記所定温度は前記湿度計測手段が検知した湿度が低下するにしたがって上昇する」ことに相当する。 そうすると、本件発明3と先願発明2とを、上記(3)イ(ア)の対比の検討又は上記(4)イ(ア)の対比の検討を踏まえて対比すると、両者は上記相違点1-2-1及び上記相違点1-2-2で相違し、又は、上記相違点2-2-1及び上記相違点2-2-2で相違する。 (イ)判断 上記(3)イ(イ)の検討又は上記(4)イ(イ)の検討を踏まえると、上記相違点1-2-2及び上記相違点2-2-2は実質的な相違点である。 したがって、本件発明3は、先願発明2と実質的に同一ではない。 (6)本件発明4?6についての検討 本件発明4?6は、それぞれ本件発明1?3とは、発明の対象が「空気調和機」であること以外は同様の内容である。 一方、先願発明1-3及び先願発明1-4は、それぞれ先願発明1-1及び先願発明1-2とは、発明の対象が「空気調和機本体1」であること以外は同様の内容である。 また、先願発明2は、発明の対象が「空気調和機1」である。 したがって、上記(3)?(5)の検討を踏まえると、本件発明4?6は、先願発明1-3、先願発明1-4又は先願発明2と実質的に同一ではない。 (7)まとめ したがって、本件特許の請求項1?6に係る特許は、取消理由1によっては特許法第29条の2の規定に違反してされたものとはいえないから、取り消すことはできない。 2 取消理由2(進歩性)について (1)引用文献について ア 引用例7及び引用例8について (ア)引用例7には、ダイキンのエアコン「ラクエア」について、「夏の高温時の対策として、温度と湿度を見張る。 高温防止機能「高温パトロール」モード」という記載の項目において、次の記載がある。 「夏場の暑い日など、室内が高温高湿になり過ぎると、音声でお知らせしたり、自動で冷房運転を行います。シニアをはじめ、赤ちゃんなどにとって、安心の機能です。」、 「高温をエアコンが検知」、 「選べる高温防止設定」、 「音声お知らせ機能」、 「高温を検知したら音声でお知らせします。」、 「気温が高くなっています。 冷房運転を開始して下さい。」、 「高温時自動冷房」、 及び「高温を検知したら自動で冷房運転を開始します。」という記載、 並びに、「室温が低くても湿度が高いと注意。」という記載と「高温高湿の注意エリア」という記載が付された温度と湿度の関係図。 (イ)引用例8には、ダイキンのエアコン「ラクエア」について、次の記載がある。 「このほか、室内が高温・高湿度になるのを防ぐため、「高温パトロール」モードを搭載した。夏の暑い日などにエアコンを運転せずにいた場合、室温と湿度の上昇を検知して、設定に応じて音声で知らせるか、または自動的に冷房運転を開始する。エアコンの付け忘れで室内が危険な状態になるのを防ぎ、シニアや赤ちゃんがいる部屋でも安心して使えるという。」、 「温度と湿度を見張って、室内の高温対策」、 「高温をエアコンが検知」、 「選べる高温防止設定」、 「音声お知らせ機能」、 「高温を検知したら音声でお知らせします。」、 「気温が高くなっています。 冷房運転を開始して下さい。」、 「高温時自動冷房」、 及び「高温を検知したら自動で冷房運転を開始します。」、 「「高温パトロール」モードでは、ユーザー自身では気づきにくい室温と湿度の上昇を検知。夏は室温が低くても、湿度が高ければ熱中症に注意しなければならない」という記載、 並びに、「室温が低くても湿度が高いと注意。」という記載と「高温高湿の注意エリア」という記載が付された温度と湿度の関係図。 (ウ)引用発明7及び引用例7の記載事項 a 上記(ア)によれば、引用例7には、以下の発明(以下、「引用発明7」という。)が記載されていると認める。 「室内の温度及び湿度を見張る手段を有するエアコンであって、 シニアや赤ちゃんがいる部屋で、エアコンを運転せずにいた場合、 見張った室内の温度及び湿度が高温高湿の注意エリアにあることを、室内の温度は湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む境界線で定められた温度及び湿度の各所定値以上であるかにより検知し、 高温高湿の注意エリアにあることを検知したら、選ばれた高温防止設定に応じて、冷房運転を開始することを勧める報知を音声で室内に向けて行う、又は、自動で冷房運転を開始する エアコン。」 b また、引用例7には、以下の事項(以下、「引用例7の記載事項」という。)が記載されていると認める。 「エアコンにおいて、室内の温度及び湿度を見張る手段を有し、シニアや赤ちゃんがいる部屋で、エアコンを運転せずにいた場合、見張った室内の温度及び湿度が高温高湿の注意エリアにあることを、室内の温度は湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む境界線で定められた温度及び湿度の各所定値以上であるかにより検知し、高温高湿の注意エリアにあることを検知したら、選ばれた高温防止設定に応じて、冷房運転を開始することを勧める報知を音声で室内に向けて行う、又は、自動で冷房運転を開始すること。」 (エ) 引用発明8及び引用例8の記載事項 上記(イ)によれば、引用例8には、上記引用発明7と同じ発明(以下、「引用発明8」という。)が記載され、上記引用例7の記載事項と同じ事項(以下、「引用例8の記載事項」という。)が記載されていると認める。 イ 引用例9について (ア)引用例9の記載 引用例9には、「遠隔監視システム」に関し、図面と共に以下の記載がある。 「【請求項1】住宅(3)に設置される設備機器(35)に内蔵あるいは接続され、前記設備機器(35)のセンサー(35a,35b)又は別途設けられるセンサー(71,72)から得られる情報を発信することができる設備機器コントローラ(31)と、 前記設備機器(35)のユーザーあるいは前記ユーザーの関係者が使用する情報端末機器(41,32)と、 前記住宅(3)の外部にあり、通信網(50,51)を介して前記設備機器コントローラ(31)及び前記情報端末機器(41,32)に接続され、前記センサー(35a,35b,71,72)からの情報に基づく通報を前記情報端末機器(41,32)に対して行う管理サーバ(21)と、を備えた遠隔監視システム。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、遠隔監視システム、特に、住宅に設置される設備機器に関する遠隔監視システムに関する。 【0002】 【従来の技術】エアコン等の空調機や給湯器といった設備機器は、広く一般住宅や集合住宅、ホテル、工場内施設など(以下、住宅という。)に普及している。これらの設備機器は、メーカーから購入され、通常ユーザーがそれぞれ運転制御を行っている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】このような設備機器を電話回線などを用いて住宅外からコントロールする技術がある。設備機器を電話回線につないでおき、住宅の外部からプッシュ信号などによって設備機器を遠隔コントロールする技術である。 【0004】しかし、このような従来の技術では、スイッチのON/OFFやエアコンの温度設定など簡単なコントロールが主体である。また、ユーザーが所有する知識や情報に基づくコントロールは可能であるが、複雑な制御や多くのデータを必要とする制御は極めて困難である。 【0005】さらに、上記のような従来の技術では、ユーザーが自分の判断で設備機器を操作することはできるが、設備機器や設備機器の周辺の状態を把握することは難しく、そのような状態の認識に基づいて適切な設備機器の操作を行うことは困難である。 【0006】本発明の課題は、設備機器をより適切に操作することのできる設備機器等の遠隔監視システムを提供することにある。」 「【0010】なお、センサーの具体例としては、空調機などの設備機器が備える温度センサー、湿度センサー、フィルタセンサー、設備機器とは別に用意されるCCDカメラやマイクロフォン、揮発性有機化学物質(VOC)の量を検知するVOCセンサーなどが挙げられる。」 「【0023】 【発明の実施の形態】<システムの概要>本発明の一実施形態に係るシステムを図1に示す。このシステムは、各住宅3内の設備機器を遠隔監視したり遠隔制御したりする有料のサービスシステムであって、管理センター2を運営する事業者によって提供されるものである。 【0024】本システムは、主として、事業者により運営される管理センター2内の管理サーバ機器21と、各住宅3に設置される設備機器コントローラ31とから構成される。事業者は、住宅3の設備機器35の遠隔監視や遠隔制御を望むユーザーを有料で登録し、年会費などによりシステムを運営する。 【0025】<管理センター2内の構成>管理サーバ機器21は、管理センター2内に設置されており、管理センター2のLANを介してデータベース22や接続装置23とつながっている。管理サーバ機器21は、接続装置23及び通信網50を介して、各ユーザーの住宅3内にある設備機器コントローラ31と通信可能である。通信網50は、専用回線、公衆回線、インターネットなど通信が可能な接続手段であり、有線であっても無線であってもよい。 【0026】管理サーバ機器21には、ウェブサーバ、認証サーバ、課金サーバなどが含まれる。ウェブサーバは、インターネット51を介してユーザー等が持つ携帯端末機器41や情報端末機器32に対して種々の情報を発し、またインターネット51を介して携帯端末機器41等から送信されたデータを受け取る。認証サーバは、各ユーザーの住宅3の設備機器コントローラ31から送られてくる情報を認証し、データベース22に情報を住宅3別に蓄積させる。課金サーバは、登録内容(契約内容)に応じて各ユーザーに対する課金の管理を行う。 【0027】データベース22には、登録時に入力された顧客情報、課金の状態を示す課金情報、設備機器コントローラ31から送られてくる設備機器35の運転状態を含む機器運転情報、携帯端末機器41や情報端末機器32に対してインターネット上で提供するコンテンツを集めたコンテンツメニューなどの各種情報が記憶される。 【0028】<ユーザーの住宅3内の構成>このシステムに登録したユーザーは、住宅3内に設備機器コントローラ31を設置する。設備機器コントローラ31は、ユーザーに販売あるいは貸与され、設備機器35と有線または無線で接続される。管理サーバ機器21と設備機器コントローラ31との通信は、どちらからでも開始・切断ができるようにされている。なお、設備機器コントローラ31は、いずれかの設備機器35に内蔵されるものであってもよい。 【0029】また、設備機器コントローラ31は、管理センターアドレス情報をデータとして有している。設備機器コントローラ31がインターネットによって管理センター2と接続される場合には、このデータ(管理センターアドレス)が用いられる。」 「【0034】<他のサービス>本システムでは、上記のようなユーザーのウェブブラウザからの設備機器35の遠隔監視・遠隔操作のサービスの他に、種々のサービスをオプションで用意している。 【0035】(1)温度情報の監視に基づくサービス 本サービスは、独居老人と別居している親族が独居老人の健康状態を気にかけているケースを想定したサービスである。このサービスをオプションとして選択すると、空調機等の設備機器35のユーザーである老人の親族の住宅6にある情報端末機器32(あるいは親族が持つ携帯端末機器41)に対して、所定時に管理サーバ機器21からレポートが送信される(図2参照)。 【0036】具体的には、設備機器コントローラ31に組み込まれた監視制御プログラムが連続的に温度センサー35a(図1参照)からの検知結果を監視している。そして、設備機器コントローラ31は、検知結果が予め時刻毎に設定されている(ユーザーあるいはその親族によって設定されている)温度範囲を外れていたときに、室温が設定範囲内になるように自動で運転を行わせる。このような設備機器35の自動運転(自動制御)によっても一定時間後に目的の温度にならないときには、設備機器コントローラ31から管理サーバ機器21へと通報が行われ、管理サーバ機器21から老人や親族が持つ情報端末機器32、携帯端末機器41に対して遠隔操作や部屋の確認を促す電子メールが送られる。また、設備機器コントローラ31は、監視制御プログラムが正常に動作していることを証明するため、一日一回定刻に管理サーバ機器21へとレポートを送信する。 【0037】さらに、契約内容によっては、設備機器コントローラ31による自動運転によっても一定時間後に目的の温度にならないときに、管理センター2のスタッフから老人宅3へ電話をかけて老人の安否を確認したり、別居の親族に電話連絡を行ったりするサービスも受けることができる。 【0038】これらのサービスにより、別居の親族は、独居老人の生活が温熱環境に関して問題ないことを確認することができ、安心を得ることができる。また、上記のサービスオプションは、乳幼児のいるユーザーに使ってもらうことも可能である。この場合には、図3に示すように乳幼児(子供)を住宅3に残したまま一時的に外出しているユーザー(親)に対して、住宅3内の温度が所定範囲から外れたときに、ユーザーの携帯端末機器41に緊急レポートを送信することによって乳幼児の危険をユーザーに知らせると共に、設備機器コントローラ31を介して設備機器35を遠隔操作して温度を所定範囲内に戻すようにする。このような管理サーバ機器21によるレポート送信や設備機器35の遠隔制御によって、乳幼児が健康上問題のある温度に長く放置される恐れが少なくなる。」 (イ)引用例9の記載から認められること a 上記(ア)の請求項1、段落0001?0006、0010及び0035並びに図1の記載によれば、引用例9には住宅に設置される空調機に関する遠隔監視システムが記載されている。 b 上記(ア)の請求項1、段落0010、0035及び0036並びに図1の記載によれば、遠隔監視システムは、室温を検知する温度センサー35aを有する空調機を備えている。 c 上記(ア)の段落0035?0038及び図1の記載によれば、遠隔監視システムは、温度センサー35aが検知した室温が所定範囲から外れたとき、インターネットを介してユーザーの携帯端末機器41に緊急レポートを送信することによって乳幼児の危険をユーザーに知らせるとともに、設備機器コントローラ31を介して空調機を遠隔操作して室温を所定範囲内に戻すようにしている。 (ウ)引用発明9及び引用例9の記載事項 a 上記(ア)及び(イ)を総合して整理すると、引用例9には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明9」という。)が記載されていると認める。 「室温を検知する温度センサー35aを有する空調機を備え、 前記温度センサー35aが検知した室温が所定範囲から外れたとき、 インターネットを介してユーザーの携帯端末機器41に緊急レポートを送信することによって乳幼児の危険をユーザーに知らせるとともに、設備機器コントローラ31を介して空調機を遠隔操作して室温を所定範囲内に戻すようにする 住宅に設置される空調機に関する遠隔監視システム。」 b また、引用例9には、以下の事項(以下、「引用例9の記載事項」という。)が記載されていると認める。 「空調機に関するシステムにおいて、温度センサー35aが検知した室温が所定範囲から外れたとき、インターネットを介してユーザーの携帯端末機器41に緊急レポートを送信することによって乳幼児の危険をユーザーに知らせるとともに、設備機器コントローラ31を介して空調機を遠隔操作して室温を所定範囲内に戻すようにすること。」 (2)本件発明1についての検討 ア 引用発明7を主とした場合 (ア)対比 本件発明1と引用発明7とを対比する。 ・後者の「室内の温度」は、前者の「室温」に相当し、同様に、「エアコン」は「空気調和機」に相当する。 ・後者の「室内の温度及び湿度を見張る手段」は、少なくとも室内の温度を見張るものであるから、前者の「室温を検知する室温計測手段」に相当する。 ・後者の「シニアや赤ちゃんがいる部屋で、エアコンを運転せずにいた場合」は、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時」に相当する。 また、後者の「見張った室内の温度及び湿度が高温高湿の注意エリアにあることを、室内の温度は湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む境界線で定められた温度及び湿度の各所定値以上であるかにより検知し、高温高湿の注意エリアにあることを検知したら」は、高温高湿の注意エリアにあることを、見張った室内の温度が、室内の温度は湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む境界線で定められた温度の所定値以上である場合として検知するから、前者の「前者の「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき」に相当する。 さらに、後者の「冷房運転を開始することを勧める報知を音声で室内に向けて行う」ことは、前者の「空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行う」ことに相当する。 そして、後者の「シニアや赤ちゃんがいる部屋で、エアコンを運転せずにいた場合、見張った室内の温度及び湿度が高温高湿の注意エリアにあることを、室内の温度は湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む境界線で定められた温度及び湿度の各所定値以上であるかにより検知し、高温高湿の注意エリアにあることを検知したら、選ばれた高温防止設定に応じて、冷房運転を開始することを勧める報知を音声で室内に向けて行う、又は、自動で冷房運転を開始する」態様は、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」態様に、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行う」という限りにおいて一致する。 ・後者の「エアコン」は、その運転に用いられる室内の温度及び湿度を見張る手段の他に、冷房運転を開始することを勧める報知を音声で室内に向けて行うための報知手段を有するといえるとともに、見張った室内の温度及び湿度が高温高湿の注意エリアにあることを検知し、高温高湿の注意エリアにあることを検知したら、冷房運転を開始することを勧める報知を音声で室内に向けて行う機能を特別に備えるのであるから、空気調和システムを構成しているものといえる。 そうすると、本件発明1と引用発明7との間に、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行う空気調和システム。」 [相違点1-7-1] 本件発明1では、「インターネットを介して空調運転を勧める報知を行」うのに対して、引用発明7では、冷房運転を開始することを勧める報知をインターネットを介して行うことは特定されていない点。 [相違点1-7-2] 本件発明1では、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」のに対して、引用発明7では、高温高湿の注意エリアにあることを検知したら、自動で冷房運転を開始する選択ができるものの、そのような特定はされていない点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 [相違点1-7-1について] 上記(1)イの引用例9の記載事項及び上記1(3)イ(イ)の周知技術1はいずれも異常の報知をインターネットを介して行うことを示しているから、引用発明7に引用例9の記載事項又は周知技術1を適用することにより、上記相違点1-7-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点1-7-2について] 上記相違点1-7-2に係る本件発明1の構成は、「前記空気調和機の空調運転停止時において」、「前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき」という条件と、「前記空気調和機の空調運転停止時において」、「前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき」という条件との論理和の結果、すなわち、2つの条件の少なくとも一方が満たされることに応じて、「前記空気調和機の運転を強制的に開始する」ものであり、より確実に熱中症の防止を図ることができるものといえる。 一方、引用例9の記載事項は、空気調和機の空調運転停止時において、室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行うとともに、前記空気調和機の運転を強制的に開始するものといえるが、上記相違点1-7-2に係る本件発明1の構成に相当するものではない。 また、周知技術1も、上記相違点1-7-2に係る本件発明1の構成に相当するものではない。 また、引用例7?9以外の申立A及び申立Bにおける各甲号証(申立Aの甲第1号証及び甲第2号証並びに申立Bの甲第1号証及び甲第2号証を除く。以下、「各甲号証イ」という。)には、上記相違点1-7-2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。 さらに、上記相違点1-7-2に係る本件発明1の構成は、本件特許の出願前の技術常識を考慮しても、本件特許の出願前に周知技術又は慣用技術であったとは認められない。 そうすると、引用発明7において、上記相違点1-7-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点1-7-2に係る本件発明1の構成を備えることにより、「本発明によれば、空気調和機が、使用者の意図的な空調運転の停止、または、制御上の空調運転の停止によって停止した場合でも、熱中症等を考慮した適切な運用ができる空気調和システムおよび空気調和機を提供することができる。」(本件特許明細書の段落0016)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、引用発明7、引用例9の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明7、周知技術1及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 引用発明8を主とした場合 引用発明8は引用発明7と同内容であるから、上記アと同様の理由により、本件発明1は、引用発明8、引用例9の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明8、周知技術1及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 引用発明9を主とした場合 (ア)対比 本件発明1と引用発明9とを対比する。 ・後者の「室温」は、前者の「室温」に相当し、以下同様に、「温度センサー35a」は「室温計測手段」に、「空調機」は「空気調和機」に、「住宅に設置される空調機に関する遠隔監視システム」は「空気調和システム」に、それぞれ相当する。 ・後者の「前記温度センサー35aが検知した室温が所定範囲から外れたとき」は、前者の「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき」に相当する。 また、後者の「インターネットを介してユーザーの携帯端末機器41に緊急レポートを送信することによって乳幼児の危険をユーザーに知らせる」ことは、室温が所定温度以上であるときに乳幼児の危険がある症状が熱中症であり、熱中症を回避するための空調運転を勧める報知を意味することは明らかであるから、前者の「インターネットを介して空調運転を勧める報知を行」うことに相当する。 そして、後者の「前記温度センサー35aが検知した室温が所定範囲から外れたとき、インターネットを介してユーザーの携帯端末機器41に緊急レポートを送信することによって乳幼児の危険をユーザーに知らせるとともに、設備機器コントローラ31を介して空調機を遠隔操作して室温を所定範囲内に戻すようにする」態様は、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」態様に、「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、前記室温計測手段が検知した室温に関する所定条件を満たすとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」という限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と引用発明9との間に、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、 前記室温計測手段が検知した室温に関する所定条件を満たすとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する空気調和システム。」 [相違点1-9-1] 「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき」、「空調運転を勧める報知を行」うことに関し、本件発明1では、「前記空気調和機の空調運転停止時において」、「空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行」うのに対して、引用発明9では、「前記温度センサー35aが検知した室温が所定範囲から外れたとき、インターネットを介してユーザーの携帯端末機器41に緊急レポートを送信することによって乳幼児の危険をユーザーに知らせる」ものであり、「インターネットを介して空調運転を勧める報知を行」うといえるものの、乳幼児の危険をユーザーに知らせること(空調運転を勧める報知)を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うかは不明である点。 [相違点1-9-2] 「前記室温計測手段が検知した室温に関する所定条件を満たすとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」ことに関し、本件発明1では、「前記空気調和機の空調運転停止時において」、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」のに対して、引用発明9では、「前記温度センサー35aが検知した室温が所定範囲から外れたとき」、「設備機器コントローラ31を介して空調機を遠隔操作して室温を所定範囲内に戻すようにする」ものである点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 [相違点1-9-1について] 引用例7及び引用例8には、それぞれ上記(1)ア(ウ)のとおりの引用例7の記載事項及び引用例8の記載事項が記載されており、これらには空調運転を勧める報知を、音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うことが示されているといえる。 そうすると、引用発明9に、同じく空調運転を勧める報知を行う技術に関する引用例7の記載事項又は引用例8の記載事項を適用することにより、上記相違点1-9-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点1-9-2について] 上記相違点1-9-2に係る本件発明1の構成は、「前記空気調和機の空調運転停止時において」、「前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき」という条件と、「前記空気調和機の空調運転停止時において」、「前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき」という条件との論理和の結果、すなわち、2つの条件の少なくとも一方が満たされることに応じて、「前記空気調和機の運転を強制的に開始する」ものであり、より確実に熱中症の防止を図ることができるものといえる。 一方、引用例7の記載事項又は引用例8の記載事項は、空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行う動作と、前記空気調和機の運転を強制的に開始する選択ができる前記空気調和機の運転を強制的に開始する動作とを選択的に行うものといえ、空気調和機の運転を強制的に開始する動作を行う条件が1つであり、また、選択によっては空気調和機の運転を強制的に開始する動作が行われないから、上記相違点1-9-2に係る本件発明1の構成に相当するものではない。 また、各甲号証イには、上記相違点1-9-2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。 さらに、上記相違点1-9-2に係る本件発明1の構成は、本件特許の出願前の技術常識を考慮しても、本件特許の出願前に周知技術又は慣用技術であったとは認められない。 そうすると、引用発明9において、上記相違点1-9-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点1-9-2に係る本件発明1の構成を備えることにより、「本発明によれば、空気調和機が、使用者の意図的な空調運転の停止、または、制御上の空調運転の停止によって停止した場合でも、熱中症等を考慮した適切な運用ができる空気調和システムおよび空気調和機を提供することができる。」(本件特許明細書の段落0016)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、引用発明9、引用例7の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明9、引用例8の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2についての検討 ア 引用発明7を主とした場合 (ア)対比 本件発明2と引用発明7とを、上記(2)ア(ア)の対比の検討を踏まえて対比する。 後者の「見張った室内の温度及び湿度が高温高湿の注意エリアにあることを、室内の温度は湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む境界線で定められた温度及び湿度の各所定値以上であるかにより検知し、高温高湿の注意エリアにあることを検知したら」は、高温高湿の注意エリアにあることを、見張った室内の温度が、室内の温度は湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む境界線で定められた温度の所定値以上である場合として検知するから、前者の「前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき」に相当する。 また、後者の「冷房運転を開始することを勧める報知を音声で室内に向けて行う」ことは、前者の「熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知する」ことに相当する。 そして、後者の「シニアや赤ちゃんがいる部屋で、エアコンを運転せずにいた場合、見張った室内の温度及び湿度が高温高湿の注意エリアにあることを、室内の温度は湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む境界線で定められた温度及び湿度の各所定値以上であるかにより検知し、高温高湿の注意エリアにあることを検知したら、選ばれた高温防止設定に応じて、冷房運転を開始することを勧める報知を音声で室内に向けて行う、又は、自動で冷房運転を開始する」態様は、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知し、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」態様に、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知する」という限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明2と引用発明7との間に、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知する空気調和システム。」 [相違点2-7-1] 本件発明2では、「熱中症の警戒が必要である旨」を「インターネットを介して報知」するのに対して、引用発明7では、熱中症の警戒が必要である旨」を「インターネットを介して報知することは特定されていない点。 [相違点2-7-2] 本件発明2では、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」のに対して、引用発明7では、高温高湿の注意エリアにあることを検知したら、自動で冷房運転を開始する選択ができるものの、そのような特定はされていない点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 [相違点2-7-1について] 上記(1)イの引用例9の記載事項及び上記1(3)イ(イ)の周知技術1はいずれも異常の報知をインターネットを介して行うことを示しているから、引用発明7に引用例9の記載事項又は周知技術1を適用することにより、上記相違点2-7-1に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点2-7-2について] 上記(2)ア(イ)の相違点1-7-2についての検討を踏まえると、同様の理由により、引用発明7において、上記相違点2-7-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明2は、上記相違点2-7-2に係る本件発明2の構成を備えることにより、「本発明によれば、空気調和機が、使用者の意図的な空調運転の停止、または、制御上の空調運転の停止によって停止した場合でも、熱中症等を考慮した適切な運用ができる空気調和システムおよび空気調和機を提供することができる。」(本件特許明細書の段落0016)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明2は、引用発明7、引用例9の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明7、周知技術1及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 引用発明8を主とした場合 引用発明8は引用発明7と同内容であるから、上記アと同様の理由により、本件発明2は、引用発明8、引用例9の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明8、周知技術1及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 引用発明9を主とした場合 (ア)対比 本件発明2と引用発明9とを、上記(2)ウ(ア)の対比の検討を踏まえて対比する。 後者の「前記温度センサー35aが検知した室温が所定範囲から外れたとき、インターネットを介してユーザーの携帯端末機器41に緊急レポートを送信することによって乳幼児の危険をユーザーに知らせるとともに、設備機器コントローラ31を介して空調機を遠隔操作して室温を所定範囲内に戻すようにする」態様は、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知し、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」態様に、「前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨をインターネットを介して報知し、前記室温計測手段が検知した室温に関する所定条件を満たすとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」という限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明2と引用発明9との間に、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨をインターネットを介して報知し、 前記室温計測手段が検知した室温に関する所定条件を満たすとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する空気調和システム。」 [相違点2-9-1] 「前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を」「報知する」ことに関し、本件発明2では、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知」するのに対して、引用発明9では、「前記温度センサー35aが検知した室温が所定範囲から外れたとき、インターネットを介してユーザーの携帯端末機器41に緊急レポートを送信することによって乳幼児の危険をユーザーに知らせる」ものであり、「熱中症の警戒が必要である旨を」「インターネットを介して報知」するといえるものの、乳幼児の危険(熱中症の警戒が必要である旨)を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けてユーザーに知らせる(報知する)かは不明である点。 [相違点2-9-2] 「前記室温計測手段が検知した室温に関する所定条件を満たすとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」ことに関し、本件発明2では、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」のに対して、引用発明9では、「前記温度センサー35aが検知した室温が所定範囲から外れたとき」、「設備機器コントローラ31を介して空調機を遠隔操作して室温を所定範囲内に戻すようにする」ものである点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 [相違点2-9-1について] 引用例7及び引用例8には、それぞれ上記(1)ア(ウ)のとおりの引用例7の記載事項及び引用例8の記載事項が記載されており、これらには熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知することが示されているといえる。 そうすると、引用発明9に、同じく熱中症の警戒が必要である旨を報知する技術に関する引用例7の記載事項又は引用例8の記載事項を適用することにより、上記相違点2-9-1に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点2-9-2について] 上記(2)ウ(イ)の相違点1-9-2についての検討を踏まえると、同様の理由により、引用発明9において、上記相違点2-9-2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明2は、上記相違点2-9-2に係る本件発明2の構成を備えることにより、「本発明によれば、空気調和機が、使用者の意図的な空調運転の停止、または、制御上の空調運転の停止によって停止した場合でも、熱中症等を考慮した適切な運用ができる空気調和システムおよび空気調和機を提供することができる。」(本件特許明細書の段落0016)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明2は、引用発明9、引用例7の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明9、引用例8の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明3についての検討 ア 引用発明7を主とした場合 (ア)対比 本件発明3と引用発明7とを、上記(2)ア(ア)の対比の検討及び上記(3)ア(ア)の対比の検討を踏まえて対比する。 後者の「見張った室内の温度及び湿度が高温高湿の注意エリアにあることを、室内の温度は湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む境界線で定められた温度及び湿度の各所定値以上であるかにより検知」することは、室内の温度は湿度が低下するにしたがって上昇する関係にある線を含む境界線で定められた温度の所定値を用いているから、前者の「前記空気調和機は湿度を検知する湿度計測手段を有し、前記所定温度は前記湿度計測手段が検知した湿度が低下するにしたがって上昇する」態様を含んでいる。 そうすると、本件発明3と引用発明7とは、上記(2)ア(ア)の相違点1-7-1及び相違点1-7-2で相違し、又は、上記(3)ア(ア)の相違点2-7-1及び相違点2-7-2で相違する。 (イ)判断 上記(2)ア(イ)の判断を踏まえると、同様の理由により、引用発明7において、上記相違点1-7-2に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 また、上記(3)ア(イ)の判断を踏まえると、同様の理由により、引用発明7において、上記相違点2-7-2に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明3は、上記相違点1-7-2に係る本件発明3の構成又は上記相違点2-7-2に係る本件発明3の構成を備えることにより、「本発明によれば、空気調和機が、使用者の意図的な空調運転の停止、または、制御上の空調運転の停止によって停止した場合でも、熱中症等を考慮した適切な運用ができる空気調和システムおよび空気調和機を提供することができる。」(本件特許明細書の段落0016)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明3は、引用発明7、引用例9の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明7、周知技術1及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 引用発明8を主とした場合 引用発明8は引用発明7と同内容であるから、上記アと同様の理由により、本件発明3は、引用発明8、引用例9の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明8、周知技術1及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 引用発明9を主とした場合 (ア)対比 本件発明3と引用発明9とを、上記(2)ウ(ア)の対比の検討及び上記(3)ウ(ア)の対比の検討を踏まえて対比する。 両者は、上記(2)ウ(ア)の相違点1-9-1及び相違点1-9-2に加えて、又は、上記(3)ウ(ア)の相違点2-9-1及び相違点2-9-2に加えて、次の点で相違する。 [相違点3-9-1] 本件発明3では、「前記空気調和機は湿度を検知する湿度計測手段を有し、前記所定温度は前記湿度計測手段が検知した湿度が低下するにしたがって上昇する」のに対して、引用発明9では、そのような構成を有していない点。 (イ)判断 上記(2)ウ(イ)の判断を踏まえると、同様の理由により、引用発明9において、上記相違点1-9-2に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 また、上記(3)ウ(イ)の判断を踏まえると、同様の理由により、引用発明9において、上記2-9-2に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明3は、上記相違点1-9-2に係る本件発明3の構成又は上記相違点2-9-2に係る本件発明3の構成を備えることにより、「本発明によれば、空気調和機が、使用者の意図的な空調運転の停止、または、制御上の空調運転の停止によって停止した場合でも、熱中症等を考慮した適切な運用ができる空気調和システムおよび空気調和機を提供することができる。」(本件特許明細書の段落0016)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明3は、引用発明9、引用例7の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明9、引用例8の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明4?6についての検討 ア 引用発明7を主とした場合 本件発明4?6は、それぞれ本件発明1?3とは、発明の対象が「空気調和機」であること以外は同様の内容である。 一方、引用発明7は、「エアコン」に関する発明であり、同じく「空気調和機」を対象とするものである。 そうすると、上記(2)?(4)の本件発明1?3の検討を踏まえると、本件発明4?6は、引用発明7、引用例9の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明7、周知技術1及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 引用発明8を主とした場合 引用発明8は引用発明7と同内容であるから、上記アと同様の理由により、本件発明4?6は、引用発明8、引用例9の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明8、周知技術1及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 引用発明9を主とした場合 本件発明4?6は、それぞれ本件発明1?3とは、発明の対象が「空気調和機」であること以外は同様の内容である。 そうすると、上記(2)?(4)の本件発明1?3の検討を踏まえると、本件発明4?6は、引用発明9、引用例7の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、又は、引用発明9、引用例8の記載事項及び各甲号証イに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)まとめ したがって、本件特許の請求項1?6に係る特許は、取消理由2によっては特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、取り消すことはできない。 第7 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について 申立理由A1は、取消理由1で採用され、また、申立理由B4の理由ア?ウは、取消理由2で採用されたので、他の申立理由について以下に検討する。 1 申立理由B1(分割要件違反)について 申立人Bは、申立書Bの6頁3行?10頁21行において、概ね次の理由により本件特許の出願は分割要件を満たしておらず、本件特許の出願日は実際の出願日である平成28年10月5日となる旨を主張する。 (a)甲第2号証に係る特願2015-177193号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「子出願の当初明細書等」という。)における特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された「空気調和システム」は、明らかに、甲第1号証に係る特願2012-229402号(以下、「親出願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「親出願の当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲を超えている。 (b)本件特許の請求項1?3に記載された「空気調和システム」は、明らかに、親出願の当初明細書等に記載された事項の範囲を超えている。 (c)本件特許の請求項1、2、4及び5に記載された「ともに」は、明らかに、親出願の当初明細書等に記載された事項の範囲を超えている。 (d)本件特許の請求項2及び5に記載された「熱中症の警戒が必要である旨を……報知する」は、明らかに、親出願の当初明細書等に記載された事項の範囲を超えている。 そこで検討すると、本件特許明細書には、次の記載がある。 「【0095】 実施の形態の空気調和機では、空気調和機が使用者の意図的な停止、または、制御上の停止である場合も、例えば、室温が30℃で湿度が65%を超えたときに、空気調和機の運転を勧めるメッセージを使用者に報知する。報知の方法は、表示やブザー、音声などその方法は問わない。また、伝送線、無線により、他室に居る同居者に報知するようにするのも良く、更に、インターネットを介して、訪問介護業者などに報知することでも良い。 【0096】 また、報知するときの室温、湿度のレベルは上記の1点にとどまらず、例えば、25℃100%、35℃30%などの点も記憶しておき、室温湿度がこれらの点を結ぶ線より高温高湿側になる場合に報知動作が開始するようにしても良い。このようにすることにより、使用者や同居者、訪問介護業者などに室内が厳重警戒が必要な温湿度状態になっていることが知らされ、使用者、同居者、または、駆けつけた訪問介護スタッフが空気調和機の運転を開始することで、熱中症の予防ができる。 【0097】 このため、熱中症の予防を報知して熱中症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を提供することができる。」 「【0133】 これにより、空気調和機が使用者の意図的な停止、または、制御上の停止である場合も、例えば、室温が30℃で湿度が65%を超えたときに、空気調和機の運転を勧めるメッセージを使用者に報知する。報知の方法は、表示やブザー、音声などその方法は問わない。また、伝送線、無線により、他室に居る同居者に報知するようにするのも良く、更に、インターネットを介して、訪問介護業者などに報知することでも良い。 【0134】 また、報知するときの室温、湿度のレベルは上記の1点にとどまらず、例えば、25℃100%、35℃30%などの点も記憶しておき、室温湿度がこれらの点を結ぶ線より高温高湿側になる場合に報知動作が開始するようにしても良い。このようにすることにより、使用者や同居者、訪問介護業者などに室内が厳重警戒が必要な温湿度状態になっていることが知らされ、使用者、同居者、または、駆けつけた訪問介護スタッフが空気調和機の運転を開始することで、熱中症の予防ができる。 【0135】 このため、熱中症の予防を報知して熱中症に陥る人を少なくすることができる空気調和機を得ることができる。」 これら記載と同様の記載が、親出願の当初明細書等の段落0117?0119及び0155?0157並びに子出願の当初明細書等の段落0095?0097及び0133?0135にもある。 そして、上記(a)及び(b)の主張について、本件特許の請求項1?3に記載された「空気調和システム」は、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行う、又は、熱中症の警戒が必要である旨をインターネットを介して報知するものであるところ、空気調和機とは別に、少なくともインターネット回線による通信手段、当該通信手段により伝送された信号に基づいて空調運転を勧める報知又は熱中症の警戒が必要である旨の報知を対象者に対して表示、ブザー、音声などにより行うため報知手段を備えることは明らかであるから、親出願の当初明細書等には、「空気調和システム」が記載されているものといえる。 また、上記(d)の主張について、「また、報知するときの室温、湿度のレベルは上記の1点にとどまらず、例えば、25℃100%、35℃30%などの点も記憶しておき、室温湿度がこれらの点を結ぶ線より高温高湿側になる場合に報知動作が開始するようにしても良い。このようにすることにより、使用者や同居者、訪問介護業者などに室内が厳重警戒が必要な温湿度状態になっていることが知らされ、使用者、同居者、または、駆けつけた訪問介護スタッフが空気調和機の運転を開始することで、熱中症の予防ができる。」との記載は、親出願の当初明細書等の段落0118及び0156にも記載されているところ、この記載によれば、熱中症の予防のために使用者や同居者、訪問介護業者などに室内が厳重警戒が必要な温湿度状態になっていることが知らされるのであるから、親出願の当初明細書等には、熱中症の警戒が必要である旨を報知することが記載されているといえる。 さらに、上記(c)の主張について、「空気調和機の運転を勧めるメッセージを使用者に報知する。報知の方法は、表示やブザー、音声などその方法は問わない。また、伝送線、無線により、他室に居る同居者に報知するようにするのも良く、更に、インターネットを介して、訪問介護業者などに報知することでも良い。」との記載は、親出願の当初明細書等の段落0117及び0155にも記載されているところ、この記載によれば、報知の形態として、空気調和機の運転を勧める報知や熱中症の警戒が必要である旨の報知を、使用者等の対象者に音声、ブザーで室内に向けて行うこと、インターネットを介して行うことのいずれかに限らず、これらの組み合わせも任意に採用できるといえるから、親出願の当初明細書等には、「空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行」うこと、及び、「熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知」することが記載されているといえる。 そうすると、申立人Bの上記主張(a)?(d)の主張は何れも採用することができず、本件特許の請求項1?6に係る発明は、親出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、本件特許の出願は、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願として適法にされたものといえるから、親出願の時にしたものとみなせる。 したがって、親出願に係る甲第1号証は、本件特許の請求項1?6に係る発明を、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとする根拠とはなり得ないから、申立理由B1によって本件特許の請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由A2及び申立理由B4の理由エ(特許法第29条第2項)について (1)引用文献 ア 引用例3(特開2010-159887号公報:申立Aの甲第3号証であるとともに、申立Bの甲第6号証である。)について 引用例3には、特に段落0013、0020及び0058?0062並びに図1及び16の記載によると、以下の事項からなる発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認める。 「室温を検知する赤外線センサー3を有する空気調和装置1を備え、 前記空気調和機1の待機中、或いは空調部5の電源は入ってないが赤外線センサー3は可動させるというような留守モードにおいて、 前記赤外線センサー3が例えば100°以上の高温を検知したとき、火災などの異常を音声やブザーにより警告するとともに、ネットワークを経由して携帯電話などで使用者に通知する空気調和システム。」 イ 引用例7(申立Aの甲第4号証であるとともに、申立Bの甲第4号証の1である。)について 引用例7には、上記第6の2(1)ア(ウ)bに示したとおりの引用例7の記載事項が記載されていると認める。 ウ 引用例8(申立Bの甲第4号証の2である。)について 引用例8には、引用例7の記載事項と同じ引用例8の記載事項が記載されていると認める。 エ 特開2011-33285号公報(申立Aの甲第5号証であって、以下、「引用例10」という。)について 引用例10には、特に段落0094及び0095の記載によると、以下の事項(以下、「引用例10の記載事項」という。)が記載されていると認める。 「室内湿度が設定湿度に近づいた場合に、冷房運転を勧める旨のメッセージを表示すること。」 オ 特開2010-266318号公報(申立Aの甲第6号証であって、以下、「引用例11」という。)について 引用例11には、特に請求項7,段落0003、0026及び0028?0031並びに図5及び6の記載によると、以下の事項(以下、「引用例11の記載事項」という。)が記載されていると認める。 「温度基準WBGTが、熱中症の警戒が必要なレベルである時に、熱中症の警戒が必要である旨を音声により報知すること。」 カ 特開2010-9163号公報(申立Aの甲第7号証であって、以下、「引用例12」という。)について 引用例11には、特に段落0047、0049、0052、および0053並びに図1及び16の記載によると、以下の事項(以下、「引用例11の記載事項」という。)が記載されていると認める。 「温度センサ2を用いて求められたWBGT近似値が、熱中症の予防対策が必要なレベルである場合に、熱中症の予防対策が必要である旨をブザーで報知すること。」 (2)本件発明1についての検討 ア 対比 本件発明1と引用発明3とを対比する。 ・後者の「室温」は、前者の「室温」に相当し、以下同様に、「赤外線センサー3」は「室温計測手段」に、「空気調和装置1」は「空気調和機」に、「空気調和システム」は「空気調和システム」に、それぞれ相当する。 ・後者の「前記空気調和機1の待機中、或いは空調部5の電源は入ってないが赤外線センサー3は可動させるというような留守モード」は、前者の「前記空気調和機の空調運転停止時」に相当する。 ・後者の「前記赤外線センサー3が例えば100°以上の高温を検知したとき、火災などの異常を音声やブザーにより警告するとともに、ネットワークを経由して携帯電話などで使用者に通知する」ことは、前者の「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行」うことに、「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、所定の報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して所定の報知を行」という限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と引用発明3との間に、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、所定の報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して所定の報知を行う空気調和システム。」 [相違点1-3-1] 「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、所定の報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して所定の報知を行う」ことに関し、本件発明1では、「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行」うのに対して、引用発明3では、「前記赤外線センサー3が例えば100°以上の高温を検知したとき、火災などの異常を音声やブザーにより警告するとともに、ネットワークを経由して携帯電話などで使用者に通知する」点。 [相違点1-3-2] 本件発明1では、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」のに対して、引用発明3では、空気調和機の運転を強制的に開始するものではない点。 イ 判断 上記相違点1-3-1及び1-3-2について検討する。 引用例7、8及び10?12の記載事項は、熱中症の恐れがある場合ような空調運転を勧める状況についての技術に関するものである。 一方、引用発明3は、100°以上の高温が検知されるような火災などの異常時にその異常を報知するものであり、空調運転をするような状況ではないことから、引用発明3に引用例7、8及び10?12の記載事項を適用する動機付けは認められない。 しかも、引用例7、8及び10?12の記載事項は、何れも上記相違点1-3-2に係る本件発明1の構成を示すものではない。 また、引用例3、7、8及び10?12以外の申立A及び申立Bにおける各甲号証(申立Aの甲第1号証及び甲第2号証並びに申立Bの甲第1号証及び甲第2号証を除く。以下、「各甲号証ウ」という。)には、上記相違点1-3-2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。 さらに、上記1-3-2に係る本件発明1の構成は、本件特許の出願前の技術常識を考慮しても、本件特許の出願前に周知技術又は慣用技術であったとは認められない。 そうすると、引用発明3において、上記相違点1-3-1及び1-3-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点1-3-1及び1-3-2に係る本件発明1の構成を備えることにより、「本発明によれば、空気調和機が、使用者の意図的な空調運転の停止、または、制御上の空調運転の停止によって停止した場合でも、熱中症等を考慮した適切な運用ができる空気調和システムおよび空気調和機を提供することができる。」(本件特許明細書の段落0016)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、引用発明3、引用例7、8及び10?12の記載事項及び各甲号証ウに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2についての検討 ア 対比 本件発明2と引用発明3とを、上記(2)アの対比の検討を踏まえて対比する。 後者の「前記赤外線センサー3が例えば100°以上の高温を検知したとき、火災などの異常を音声やブザーにより警告するとともに、ネットワークを経由して携帯電話などで使用者に通知する」ことは、前者の「前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知」することに、「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、所定のメッセージを音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知する」という限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明2と引用発明9との間に、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、所定のメッセージを音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知する空気調和システム。」 [相違点2-3-1] 「前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、所定のメッセージを音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知する」ことに関し、本件発明2では、「前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知」するのに対して、引用発明3では、「前記赤外線センサー3が例えば100°以上の高温を検知したとき、火災などの異常を音声やブザーにより警告するとともに、ネットワークを経由して携帯電話などで使用者に通知する」点。 [相違点2-3-2] 本件発明2では、「前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する」のに対して、引用発明3では、空気調和機の運転を強制的に開始するものではない点。 イ 判断 上記相違点2-3-1及び2-3-2について検討する。 上記(2)イの相違点1-3-1及び1-3-2についての検討を踏まえると、同様の理由により、引用発明3において、上記相違点2-3-1及び2-3-2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明2は、上記相違点2-3-1及び2-3-2に係る本件発明1の構成を備えることにより、「本発明によれば、空気調和機が、使用者の意図的な空調運転の停止、または、制御上の空調運転の停止によって停止した場合でも、熱中症等を考慮した適切な運用ができる空気調和システムおよび空気調和機を提供することができる。」(本件特許明細書の段落0016)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明2は、引用発明3、引用例7、8及び10?12の記載事項及び各甲号証ウに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明3についての検討 (ア)対比 本件発明3と引用発明3とを、上記(2)アの対比の検討及び上記(3)アの対比の検討を踏まえて対比する。 両者は、上記(2)アの相違点1-3-1及び相違点1-3-2に加えて、又は、上記(3)アの相違点2-3-1及び相違点2-3-2に加えて、次の点で相違する。 [相違点3-3-1] 本件発明3では、「前記空気調和機は湿度を検知する湿度計測手段を有し、前記所定温度は前記湿度計測手段が検知した湿度が低下するにしたがって上昇する」のに対して、引用発明3では、そのような構成を有していない点。 (イ)判断 上記(2)イの判断を踏まえると、同様の理由により、引用発明3において、上記相違点1-3-1及び1-3-2に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 また、上記(3)イの判断を踏まえると、同様の理由により、引用発明3において、上記相違点2-3-1及び2-3-2に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明3は、上記相違点1-3-1及び1-3-2に係る本件発明3の構成又は上記相違点2-3-1及び2-3-2に係る本件発明3の構成を備えることにより、「本発明によれば、空気調和機が、使用者の意図的な空調運転の停止、または、制御上の空調運転の停止によって停止した場合でも、熱中症等を考慮した適切な運用ができる空気調和システムおよび空気調和機を提供することができる。」(本件特許明細書の段落0016)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明3は、引用発明3、引用例7、8及び10?12の記載事項及び各甲号証ウに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明4?6についての検討 本件発明4?6は、それぞれ本件発明1?3とは、発明の対象が「空気調和機」であること以外は同様の内容である。 そうすると、上記(2)?(4)の本件発明1?3の検討を踏まえると、本件発明4?6は、引用発明3、引用例7、8及び10?12の記載事項及び各甲号証ウに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)まとめ したがって、本件特許の請求項1?6に係る特許は、申立理由A2及び申立理由B4の理由エによっては特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、取り消すことはできない。 3 申立理由A3及び申立理由B2(特許法第36条第6項第2号)について (1)申立理由A3について ア 申立人Aは、申立書Aの45頁下から5行?46頁4行において、本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明では、報知を行うための具体的な構成が何ら特定されておらず、また、本件特許明細書及び図面を参酌しても、空気調和システム又は空気調和機のどの構成要素が音声やブザーを発するのか不明である旨を主張する しかしながら、本件特許の出願前の技術常識を考慮すると、空気調和システム又は空気調和機が報知を行うための報知手段を有すること、及び、報知手段が音声やブザーを発するためのスピーカ等の発音手段を有することは明らかであるから、申立人Aの上記主張は採用できない。 イ 申立人Aは、申立書Aの46頁5行?同頁12行において、本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明では、インターネットを介して報知を行うための具体的な構成が何ら特定されておらず、また、本件特許明細書及び図面を参酌しても、空気調和システム又は空気調和機のどの構成要素がインターネットを介して報知するのか不明である旨を主張する しかしながら、本件特許の出願前の技術常識を考慮すると、空気調和システム又は空気調和機がインターネットを介して報知を行うためのインターネット回線に接続して報知信号を送信するため通信手段を有することは明らかであるから、申立人Aの上記主張は採用できない。 (2)申立理由B2について ア 申立人Bは、申立書Bの10頁23行?同頁33行において、本件特許の請求項2及び5に係る発明において、インターネットを介した報知が何を報知するものであるかが何ら特定されていない、すなわち、この報知は空気調和機が設置された室内の温度が所定温度以上となったことと何ら関係しない報知を含むものと解釈されるが、そのような報知がどのような技術的意味を有しているのかを理解できず、「熱中症の警戒が必要である旨を報知する」との発明特定事項が不足していることが明らかであるから、本件特許の請求項2及び5に係る発明は明確でない旨を主張する。 しかしながら、本件特許の請求項2及び5における「熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知し、」との記載は、その文脈上、熱中症の警戒が必要である旨をインターネットを介して報知するものと認められるから、申立人Aの上記主張は採用できない。 イ 申立人Bは、申立書Bの10頁34行?同頁42行において、本件特許の請求項1及び4に係る発明には、空調運転を勧める報知をブザーで行う旨が特定されているが、人間はブザー音を空調運転を勧める報知であるととらえることができず、また、この点について明細書等に具体的な説明は何もされておらず、ブザーで空調運転を勧める報知を行うことが如何なる形態を含んでいるかが理解できないから、本件特許の請求項1及び4に係る発明は明確でなく、同様に、熱中症の警戒が必要である旨をブザーで報知することを含む本件特許の請求項2及び5に係る発明、並びに、本件特許の請求項1、2、4又は5の従属項である請求項3及び6に係る発明も明確でない旨主張する。 しかしながら、ブザー音であっても、モールス信号や救急車のサイレンのように音の長さ、音程、音質を変化させることで異常状態を表現することは可能であり、空調運転を勧める報知や熱中症の警戒が必要である旨をブザーで報知することは可能であるから、申立人Bの上記主張は採用できない。 (3)まとめ したがって、本件特許の請求項1?6に係る特許は、申立理由A3及び申立理由B2によっては特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないから、取り消すことはできない。 4 申立理由B3(特許法第36条第6項第1号)について 申立人Bは、申立書Bの10頁下から4行?11頁42行において、本件特許明細書の段落0087、0095及び0133の記載をもとに以下の主張をする。 ・本件特許明細書に記載されているのは、空気調和機の設置された室内に在室者が居ることを検知し、在室者が居る場合にのみ、空調運転を勧める音声報知とインターネット報知を行うことであるから、室内に在室者が居ることを検知せず、在室者が居ない場合であっても、空調運転を勧める音声報知とインターネット報知を行うことを包含する本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。 ・また、本件特許明細書に記載されているのは、空気調和機の設置された室内に在室者が居ることを検知し、在室者が居る場合にのみ、熱中症の警戒が必要である旨の音声報知とインターネット報知を行うことであるから、室内に在室者が居ることを検知せず、在室者が居ない場合であっても、熱中症の警戒が必要である旨の音声報知とインターネット報知を行うことを包含する本件特許の請求項2及び5に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。 ・同様に、本件特許の請求項3及び6に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。 しかしながら、室内に在室者が居るか否かにかかわらず、空調運転を勧める音声報知とインターネット報知を行うことや、熱中症の警戒が必要である旨の音声報知とインターネット報知を行うことにより、本件特許明細書に記載された「空気調和機が、使用者の意図的な空調運転の停止、または、制御上の空調運転の停止によって停止した場合でも、熱中症等を考慮した適切な運用ができる空気調和システムおよび空気調和機を提供する」(段落0012)という課題を解決することができる点では矛盾しない(室内に在室者が居ない場合に報知したとしても、報知が無駄になるだけである。)のであるから、本件特許の請求項1?6に係る発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえず、申立人Bの上記主張は採用できない。 したがって、本件特許の請求項1?6に係る特許は、申立理由B3によっては特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないから、取り消すことはできない。 5 申立理由A4(特許法第36条第4項第1号)について 申立人Aは、申立書Aの46頁下から8行?47頁1行において、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、空気調和システム又は空気調和機のどの構成要素が音声やブザーを発するのか、具体的に記載されていないとして、発明の詳細な説明は、当業者が本件特の請求項1?6に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでない旨主張する。 しかしながら、本件特許の出願前の技術常識を考慮すると、空気調和システム又は空気調和機が報知を行うための報知手段を有すること、及び、報知手段が音声やブザーを発するためのスピーカ等の発音手段を有することは明らかであるから、申立人Aの上記主張は採用できない。 また、申立人Aは、申立書Aの47頁2行?同頁8行において、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、空気調和機を備える空気調和システムに向けられたものであり、空気調和機とは別体の報知手段を備えるものも含まれ得るところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、空気調和機とは別体の報知手段を備える構成について何ら記載されておらず、空気調和機とは別体の報知手段によって具体的にどのようにして行うのかを当業者が理解できないとし、発明の詳細な説明は、当業者が本件特の請求項1?6に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでない旨主張する。 しかしながら、本件特許明細書の段落0095及び0133の記載(上記1の摘記を参照。)及び本件特許の出願前の技術常識を考慮すると、空気調和機とは別体のインターネット回線に接続された携帯電話やパソコン等の機器に対して空気調和機の通信手段からメール等の報知信号を送信し、別体の機器において受信した報知信号の内容を表示手段による表示やスピーカ等の発音手段による音声やブザーより対象者に知らせることは明らかであるから、申立人Aの上記主張は採用できない。 したがって、本件特許の請求項1?6に係る特許は、申立理由A4によっては特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないから、取り消すことはできない。 6 まとめ 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?6に係る特許は、取消理由に採用しなかった申立書A及び申立書Bに記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 第8 むすび したがって、請求項1?6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始することを特徴とする空気調和システム。 【請求項2】 室温を検知する室温計測手段を有する空気調和機を備え、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知し、 前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始することを特徴とする空気調和システム。 【請求項3】 前記空気調和機は湿度を検知する湿度計測手段を有し、 前記所定温度は前記湿度計測手段が検知した湿度が低下するにしたがって上昇すること を特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和システム。 【請求項4】 室温を検知する室温計測手段と、 空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が所定温度以上であるとき、空調運転を勧める報知を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて行うとともに、インターネットを介して空調運転を勧める報知を行い、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する機能とを備えたことを特徴とする空気調和機。 【請求項5】 室温を検知する室温計測手段と、 空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が熱中症の警戒が必要な所定温度以上であるとき、熱中症の警戒が必要である旨を音声、ブザーの少なくとも1つで室内に向けて報知するとともに、インターネットを介して報知し、前記空気調和機の空調運転停止時において、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度より高い第2の所定温度以上であるとき、または、前記室温計測手段が検知した室温が前記所定温度以上に達してから所定時間を経過しても前記空気調和機の運転が開始されないとき、前記空気調和機の運転を強制的に開始する機能とを備えたことを特徴とする空気調和機。 【請求項6】 湿度を検知する湿度計測手段を有し、 前記所定温度は前記湿度計測手段が検知した湿度が低下するにしたがって上昇すること を特徴とする請求項4または請求項5に記載の空気調和機。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-02-05 |
出願番号 | 特願2016-197501(P2016-197501) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(F24F)
P 1 651・ 121- YAA (F24F) P 1 651・ 841- YAA (F24F) P 1 651・ 851- YAA (F24F) P 1 651・ 161- YAA (F24F) P 1 651・ 536- YAA (F24F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 金丸 治之、久島 弘太郎 |
特許庁審判長 |
松下 聡 |
特許庁審判官 |
槙原 進 林 茂樹 |
登録日 | 2019-05-17 |
登録番号 | 特許第6527495号(P6527495) |
権利者 | 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社 |
発明の名称 | 空気調和システムおよび空気調和機 |
代理人 | 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 |
代理人 | 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 |