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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C12N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C12N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C12N
審判 全部申し立て 2項進歩性  C12N
管理番号 1372703
異議申立番号 異議2020-700011  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-10 
確定日 2021-02-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6553104号発明「タンパク質の産生のための修飾ポリヌクレオチド」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 令和 2年 8月24日付け訂正請求において、特許第6553104号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項7について訂正することを認める。 特許第6553104号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6553104号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成25年 3月 9日(パリ条約による優先権主張 2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 4月 2日 (US)アメリカ合衆国、2012年 5月17日 (US)アメリカ合衆国、2012年 5月17日 (US)アメリカ合衆国、2012年 7月 5日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 8月10日 (US)アメリカ合衆国、2012年 9月 4日 (US)アメリカ合衆国、2012年 10月 3日 (US)アメリカ合衆国、2012年 10月11日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年12月14日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2015-504563号の一部を平成29年 2月 2日に新たな特許出願とされたものであって、令和 1年 7月12日にその特許権の設定登録がされ、同年 7月31日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?7に係る特許について、令和 2年 1月10日に特許異議申立人 亀崎伸宏により特許異議の申立てがされ、当審において同年 5月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年 8月24日に意見書の提出及び訂正の請求があり、同年10月13日付けで特許法第120条の5第5項に規定された通知書を特許異議申立人に送付したところ、同年11月18日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和 2年 8月24日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。
特許請求の範囲の請求項7に、「より低いレベルの検出可能なIFN-αまたはTNF-αをもたらす」と記載されているのを、「より低いレベルの検出可能なIFN-αをもたらす」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、新規事項追加の有無、独立特許要件
(1)訂正の目的の適否
上記訂正事項は、訂正前の請求項7に、「IFN-αまたはTNF-α」と択一的に記載されているのを、「IFN-α」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
上記訂正事項は、「IFN-αまたはTNF-α」と択一的に記載されているのを、「IFN-α」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(3)新規事項追加の有無
上記訂正事項は、「IFN-αまたはTNF-α」と択一的に記載されているのを、「IFN-α」に限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項7について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?7に係る発明(以下、「本件発明1?7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】複数の脂質ナノ粒子を含む組成物であって、前記複数の脂質ナノ粒子はポリヌクレオチドを封入しており、前記ポリヌクレオチドは、
(a)1-メチル-シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンからなり、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームと、
(b)コザック配列を含む5’UTRと、
(c)少なくとも1つの5’キャップ構造と、
(d)3’UTRと、
(e)結合ヌクレオシドの3’尾部配列とを含み、
哺乳類細胞に投与されると、前記ポリヌクレオチドは、シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、コードされたポリペプチドの発現を増加させる組成物。
【請求項2】前記複数の脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質、PEG化脂質、コレステロール、およびリン脂質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】前記カチオン性脂質は、DLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200、DLin-MC3-DMA、DODMA、DSDMA、またはDLenDMAである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】前記複数の脂質ナノ粒子は、80nm?160nmの平均粒径、0.02?0.2の平均PDI、および10?20の平均脂質:ポリヌクレオチド比(重量/重量)を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】前記結合ヌクレオシドの3’尾部配列は、160個のヌクレオチドのポリA尾部およびポリA?G四重項のうちから選択される、請求項1?4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】前記少なくとも1つの5’末端キャップが、キャップ0、キャップ1、ARCA、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、および2-アジド-グアノシンのうちから選択される、請求項1?5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】末梢血単核細胞に投与されると、前記ポリヌクレオチドは、ウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、より低いレベルの検出可能なIFN-αまたはTNF-αをもたらす、請求項1?6のいずれか一項に記載の組成物。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して、当審が令和 2年 5月19日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)本件特許明細書には、1-メチルーシュードウリジンを含むポリヌクレオチドが、シュードウリジンを含む対応のポリヌクレオチドと比較して、発現を増加させる例がいくつか記載されているが、シュードウリジンを含む対応のポリヌクレオチドと比較して、低下した発現を示す例や同程度の発現を示す例が記載されている。
具体的には、本件特許明細書の表104、106、109、122、124、129、137?139には、1-メチルーシュードウリジン修飾のみを含むポリヌクレオチドが、シュードウリジン修飾のみを含む対応のポリヌクレオチドと比較して、発現を増加させる例が記載されているが、表107には、1-メチルーシュードウリジン修飾とシュードウリジン修飾が同程度の発現の例が、表111、113には、1-メチルーシュードウリジン修飾のみを含むポリヌクレオチドが、シュードウリジン修飾のみを含む対応のポリヌクレオチドと比較して、得られる翻訳産物の収率が低いことが、表180には、1-メチルーシュードウリジン修飾のみを含むポリヌクレオチドが、シュードウリジン修飾のみを含む対応のポリヌクレオチドと比較して、産生されるタンパク質が大幅に低下したことが記載されている。
そして、本件特許明細書には、請求項1に記載の特徴(a)?(e)を有するポリヌクレオチドであれば、シュードウリジンを含む対応のポリヌクレオチドと比較して、必ず発現を増加させることができるとの理論的根拠も示されておらず、また、そのことが本件出願時の技術常識であったとは認められない。
ゆえに、本件発明1のポリヌクレオチドには無限に近い数のポリヌクレオチドが含まれ、その中には、シュードウリジンを含む対応のポリヌクレオチドよりも発現が増加しないかむしろ低下するポリヌクレオチドが相当の割合で含まれるが、それらの中から所望の発現量増加をもたらすポリヌクレオチドを選択し、それを封入した脂質ナノ粒子を含む組成物を得るためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を必要とするものと認められるから、請求項1?7に係る発明について、発明の詳細な説明が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。
また、上記のような本件特許明細書の記載、及び、出願時の技術常識を考慮すると、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項1?7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
したがって、請求項1?7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)本件特許明細書の実施例69の表105には、1-メチルーシュードウリジン修飾のみを含むポリヌクレオチドを用いた場合のTNF-αの発現を調べた例が記載されているが、1-メチルーシュードウリジンの代わりにウリジンを含むポリヌクレオチドを用いた場合の例が記載されていないので、本件特許明細書の記載からでは、「末梢血単核細胞に投与されると、前記ポリヌクレオチドは、ウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、より低いレベルの検出可能なIFN-αまたはTNF-αをもたらす」ことを確認できない。
そして、本件特許明細書には、請求項1に記載の特徴(a)?(e)を有するポリヌクレオチドであれば、ウリジンを含む対応のポリヌクレオチドと比較して、必ずより低いレベルの検出可能なIFN-αまたはTNF-αをもたらすことができるとの理論的根拠も示されておらず、また、そのことが本件出願時の技術常識であったとは認められないから、請求項7に係る発明について、発明の詳細な説明が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。
また、上記のような本件特許明細書の記載、及び、出願時の技術常識を考慮すると、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
したがって、請求項7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 当審の判断
(1)取消理由(1)について
本件特許明細書の表107には、1-メチルーシュードウリジン修飾とシュードウリジン修飾が同程度の発現の例が、表111、113には、1-メチルーシュードウリジン修飾のみを含むポリヌクレオチドが、シュードウリジン修飾のみを含む対応のポリヌクレオチドと比較して、得られる翻訳産物の収率が低いことが、表180には、1-メチルーシュードウリジン修飾のみを含むポリヌクレオチドが、シュードウリジン修飾のみを含む対応のポリヌクレオチドと比較して、産生されるタンパク質が大幅に低下したことが記載されており、また、特許異議申立人が提出した令和 2年11月18日付け意見書に添付された甲第4号証(国際公開第2012/045075号)には、1-メチルーシュードウリジン修飾がシュードウリジン修飾と比較してポリペプチドの発現を増加させない例(例3、図4E)が記載されている。
しかしながら、本件特許明細書の表104、106、109、122、124、129、137?139、163、183及び184には、1-メチルーシュードウリジン修飾のみを含むポリヌクレオチドが、シュードウリジン修飾のみを含む対応のポリヌクレオチドと比較して、発現を増加させる例が数多く記載されているから、本件発明の詳細な説明には、1-メチル-シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンからなり、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドが、哺乳類細胞に投与されると、シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、コードされたポリペプチドの発現を増加させることを当業者が容易に理解することができる程度に記載されているといえるので、本件発明1?7は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
また、本件発明の詳細な説明には、1-メチル-シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンからなり、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドを製造する方法、該製造されたポリヌクレオチドについて、コードされたポリペプチドの発現量を調べる方法が具体的に記載されているから、当業者であれば、本件発明の詳細な説明の記載に従って、1-メチル-シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンからなり、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドを製造し、その中から、哺乳類細胞に投与されると、シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、コードされたポリペプチドの発現を増加させるポリヌクレオチドを取得することに、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験を行う必要があると認められないから、本件発明1?7について、発明の詳細な説明が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
したがって、本件発明の詳細な説明の記載は、取消理由(1)により特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできないし、また、本件特許請求の範囲の記載は、取消理由(1)により特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。

(2)取消理由(2)について
本件特許明細書の実施例57の表80には、0%修飾のG-CSF mRNA、すなわち修飾されていないウリジンを含むG-CSF mRNAを用いた場合の末梢血単核細胞(PBMC)でのIFN-αの発現を調べた実験結果が示されており、表80に示された実験結果からすると、5-メチルシトシン(5mC)とシュードウリジンで完全に修飾した場合(100%修飾)は、IFN-α発現に関して、修飾されていないウリジンの場合(0%修飾)よりも発現量は低くなっているるものと認められる。
一方、本件特許明細書の実施例69の表105には、G-CSF mRNAを1-メチル-シュードウリジンで完全に修飾した場合、5-メチルシトシン(5mC)とシュードウリジンで完全に修飾した場合の末梢血単核細胞内でのIFN-αの発現を調べた実験結果が示されており、表105に示された実験結果からすると、1-メチル-シュードウリジンのみで修飾した場合のIFN-α発現は、5-メチルシトシン(5mC)とシュードウリジンで修飾した場合のIFN-α発現よりも低くなっているから、表80に示された実験結果を考慮すると、本件発明の詳細な説明には、1-メチル-シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンからなり、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドが、末梢血単核細胞に投与されると、ウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、より低いレベルの検出可能なIFN-αをもたらすことを当業者が容易に理解することができる程度に記載されているといえるので、本件発明7について、発明の詳細な説明が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえ、また、本件発明7は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
なお、本件訂正請求により、訂正前の請求項7から「TNF-α」は削除された。
したがって、本件発明の詳細な説明の記載は、取消理由(2)により特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできないし、また、本件特許請求の範囲の記載は、取消理由(2)により特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要及び証拠方法
特許異議申立人が、訂正前の請求項1?7に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の概要及び証拠方法は、次のとおりである。
(1)理由1:特許法第29条第1項第3号
ア 甲第1号証に対する新規性欠如
甲第1号証には、修飾されたmRNAを細胞に導入すること、修飾されたmRNAとして「シュードウリジン」修飾されたmRNAが記載されており(記載事項(甲1-1))、前記「シュードウリジン」が、1-メチルーシュードウリジンを指すこと(記載事項(甲1-7))、前記RNAが5’UTR、3’UTR、コザック配列、キャップヌクレオチド、ポリA配列を含むことが記載されている(記載事項(甲1-3)、(甲1-6))。また、甲第1号証には、前記RNAが脂質ナノ粒子に封入されることが記載されている(記載事項(甲1-2)、(甲1-8)、(甲1-9))。
そして、「哺乳類細胞に投与されると、前記ポリヌクレオチドは、シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、コードされたポリペプチドの発現を増加させる」という機能的特徴は、1-メチルーシュードウリジンの存在が本来的にもたらすものであるから、本件発明1?2、5?7は、甲第1号証に記載されたものであるから、本件特許発明1?2、5?7は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。

イ 甲第2号証に対する新規性の欠如
甲第2号証には、「シュードウリジン」を含むRNAが記載されており(記載事項(甲2-1))、前記「シュードウリジン」が、1-メチルーシュードウリジンを指すこと(記載事項(甲2-5))、5’UTR、3’UTR、コザック配列、キャップヌクレオチド、ポリA配列を含むことが記載されている(記載事項(甲2-10)、(甲2-3))。また、甲第2号証には、該RNAが脂質ナノ粒子に封入されることが記載されている(記載事項(甲2-14)、(甲2-7)、(甲2-8)、(甲2-9)、(甲2-11))。
そして、「哺乳類細胞に投与されると、前記ポリヌクレオチドは、シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、コードされたポリペプチドの発現を増加させる」という機能的特徴は、1-メチルーシュードウリジンの存在が本来的にもたらすものであるから、本件発明1、7は、甲第2号証に記載されたものであるから、本件特許発明1、7は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。

(2)理由2:特許法第29条第2項
RNAのような核酸を細胞内に導入する場合に、コードするポリペプチドの発現を高めることは当該技術分野における一般的な課題であるから、当業者は「U」ヌクレオチドを1-メチルーシュードウリジンに置換してmRNAを修飾することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、甲第3号証には、哺乳動物細胞中にRNAのような核酸を導入する手段として、陽イオン性脂質及び結合脂質を含む核酸粒子が記載されており(記載事項(甲3-1)、(甲3-6))、甲第1号証または甲第2号証に記載の組成物において、甲第3号証に記載されているような脂質ナノ粒子を複数用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明1?7は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから、本件発明1?7は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

(3)理由3及び4:特許法第36条第4項第1号及び特許法第36条第6項第1号
ア 本件発明1のポリヌクレオチドは、そのオープンリーディングフレーム以外の領域は任意の種類の修飾もしくは非修飾ヌクレオチドから構成されることができるが、実際に技術的効果が本件発明1のこのような要件により達成されるかどうか、例えば上記領域が任意の数の5-メチルシトシンを含むことができるか等については、本件特許明細書からは不明であり、そのような修飾は発現における効果を変え得るから、上記領域において任意の修飾を有する膨大な数のポリヌクレオチドの中から、所望の発現量増加をもたらすポリヌクレオチドを選択し、それを封入した脂質ナノ粒子を含む組成物を得るためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を必要とする。
したがって、本件発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1?7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、また、本件発明1?7は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

イ 本件発明1において、「哺乳類細胞」は具体的に特定されておらず、哺乳類細胞には数多くの種類の細胞が含まれるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、一部の哺乳類細胞が記載されているだけで、いずれの哺乳類細胞であっても「コードされたポリペプチドの発現を増加させる」という特徴が達成されることは示されておらず、哺乳類細胞に核酸を導入した場合、コードされるタンパク質の発現が細胞の種類によって変動し得ることは、本願出願時の技術常識であるから、任意の哺乳類細胞に対して、所望の発現量増加をもたらすポリヌクレオチドを選択し、それを封入した脂質ナノ粒子を含む組成物を得るためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を必要とする。
したがって、本件発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1?7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、また、本件発明1?7は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

(4)証拠方法
ア 甲第1号証:米国特許出願公開第2011/0143397号明細書
イ 甲第2号証:国際公開第2007/024708号
ウ 甲第3号証:国際公開第2011/000107号

2 甲号証の記載
甲第1号証?甲第3号証には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているので、日本語訳で摘記する。)。

(1)甲第1号証:米国特許出願公開第2011/0143397号明細書

(甲1-1)「1.第一の分化した状態または表現型を呈するヒトまたは動物の細胞を、第二の分化した状態または表現型を呈する細胞へ再プログラム化するための方法であって、第一の分化した状態を呈する細胞に少なくとも1つの再プログラム化因子をコードする修飾されたmRNA分子を含む精製されたRNA調製物を導入することと、該細胞が第二の分化した状態を呈する条件下で細胞を培養することとを含む、方法。
2.前記修飾されたmRNA分子は、シュードウリジン(Ψ)、5-メチルシトシン(m^(5)C)、5-メチルウリジン(m^(5)U)、2’-O-メチルウリジン(Umまたはm^(2’-O)U)、2-チオウリジン(s^(2)U)、およびN6-メチルアデノシン(m^(6)A)からなる群から選択される少なくとも1つの修飾されたヌクレオシドを、その対応する修飾されていない通常のヌクレオシドの少なくとも一部の替わりに含む、請求項1に記載の方法。」(請求項1?2)

(甲1-2)「[0034]しかしながら、本発明は、利用される形質移入方法の性質によって限定されない。実際、mRNA分子を細胞にインビトロまたはインビボで送達することのできる公知のまたは将来特定される任意の形質移入プロセスが熟慮され、これには、培養物中のまたは生命支持培地中の細胞が、単離された細胞または真核生物の組織もしくは臓器を含む細胞を含むのであろうと、該細胞に該mRNAを送達する方法、あるいは、ヒト、動物、植物、または真菌などの生物体における細胞に該mRNAをインビボで送達する方法が含まれる。いくつかの実施態様において、形質移入試薬は、脂質(例えば、リポソーム、ミセルなど)を含む。いくつかの実施態様において、形質移入試薬は、ナノ粒子またはナノチューブを含む。いくつかの実施態様において、形質移入試薬は、陽イオン性化合物(例えば、ポリエチレンイミン、またはPEI)を含む。いくつかの実施態様において、形質移入方法は、該mRNAを細胞に(例えば、電気穿孔法によって)送達するために電流を用いる。いくつかの実施態様において、形質移入方法は、微粒子銃法を用いて、該mRNAを細胞に送達する(例えば、「遺伝子銃」または「微粒子銃粒子送達システム」)。」([0034])

(甲1-3)「[0036]本発明は、用いられるmRNAの特定の化学的形態に限定されないが、ある形態のmRNAは、より効率的な結果を生じ得る。しかしながら、いくつかの好ましい実施態様において、mRNAは、(例えば、シュードウリジン(Ψ)、5-メチルシトシン(m^(5)C)、5-メチルウリジン(m^(5)U)、2’-O-メチルウリジン(Umまたはm^(2’-O)U)、2-チオウリジン(s^(2)U)、およびN6-メチルアデノシン(m^(6)A)からなる群から選択される)少なくとも1つの修飾されたヌクレオシドを、対応する修飾されていない通常のヌクレオシドの少なくとも一部の替わりに含む(いくつかの好ましい実施態様において、実質的にすべての対応する修飾されていないA、C、G、またはTの通常のヌクレオシドの替わりに少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド)。いくつかの実施態様において、mRNAは、ポリアデニル化されている。いくつかの好ましい実施態様において、mRNAは、インビトロで転写される(IVT)RNAのポリアデニル化によって調製され、該方法は、ポリ(A)ポリメラーゼ(例えば、酵母RNAポリメラーゼまたは大腸菌ポリ(A)ポリメラーゼ)を用いてIVT RNAを接触させることを含む。いくつかの実施態様において、mRNAは、ポリ(A)末端をコードするDNAテンプレートを用いることによって、IVTの間にポリアデニル化される。RNAがポリ(A)ポリメラーゼを用いて、またはDNAテンプレートのIVTの間にポリアデニル化されるかどうかにかかわらず、いくつかの好ましい実施態様において、mRNAは、ポリA末端(例えば、50?200ヌクレオチド、例えば、好ましくは100?200、150?200ヌクレオチド、または150ヌクレオチド超を有するポリA末端)を含むが、いくつかの実施態様において、より長いまたはより短いポリA末端が用いられる。いくつかの実施態様において、本方法において用いられるmRNAがキャッピングされる。細胞における発現の効率性を最大化するために、大部分のmRNA分子がキャップを含有することが好ましい。いくつかの好ましい実施態様において、mRNAは、本方法において用いられるmRNA分子は、キャッピング酵素系の存在下で、キャッピングされていない一次RNAをインキュベートすることによって、インビトロで合成される。いくつかの好ましい実施態様において、mRNAは、キャッピング酵素反応において用いられる一次RNAは、合成されるべきRNAをコードするDNA分子のインビトロでの転写(IVT)によって合成される。合成されるべきRNAをコードするDNAは、RNAポリメラーゼプロモーターを含有し、これに、RNAポリメラーゼが結合して、そこから転写を開始する。また、mRNA分子がしばしば、翻訳開始コドンの前および翻訳されていない翻訳終止コドンの後に配置される異なる配列の領域を有することは、当該技術分野において公知である。それぞれ、5プライム非翻訳領域(5’UTR)および3プライム非翻訳領域(3’UTR)と呼ばれるこれらの領域は、mRNAの安定性、mRNAの局在、およびそれらの結合したmRNAの翻訳効率に影響を及ぼし得る。アルファグロビンおよびベータグロビンについてのものなど、ある5’UTRおよび3’UTRは、mRNAの安定性およびmRNAの発現を改良することが公知である。したがって、いくつかの好ましい実施態様において、再プログラム化因子(例えば、iPSC誘導因子)をコードするmRNAは、該細胞においてより大きなmRNA安定性およびより高いmRNA発現を結果として生じる5’UTRおよび/または3’UTR(例えば、アルファグロビンまたはベータグロブンの5’UTRおよび/または3’UTR、例えば、アフリカツメガエルまたはヒトのアルファグロブリンまたはベータグロブリンの5’UTRおよび/または3’UTR、あるいは、例えば、タバコエッチ病ウイルス(TEV)の5’UTR)を呈する。」([0036])

(甲1-4)「[0109]「キャップ」または「キャップヌクレオチド」は、好適な反応条件下でキャッピング酵素系によって基質として用いられ、かつそれにより一次RNA転写産物をもしくは5’-二リン酸を有するRNAを含むキャッピングされていないRNAの5’-端に結合するヌクレオシド-5’-三リン酸を意味する。そのように該RNAに結合するヌクレオチドは、本明細書で「キャップヌクレオチド」とも呼ばれる。「キャップヌクレオチド」は、その5’端を通じて一次RNA転写産物の5’端に結合するグアニンヌクレオチドである。その5’端に結合したキャップヌクレオチドを有するRNAは、「キャッピングされたRNA」または「キャッピングされたRNA転写産物」または「キャッピングされた転写産物」と呼ばれる。共通のキャップヌクレオシドは、7-メチルグアノシンまたはN^(7)-メチルグアノシン(時々、「標準キャップ」と呼ばれる)であり、「m^(7)G」として指定された構造を有し、この場合、キャッピングされたRNAまたは「m^(7)GキャッピングされたRNA」は、m^(7)G(5’)ppp(5’)N_(1)(pN)_(x)-OH(3’)として、またはより単純にはm^(7)GpppN_(1)(pN)_(x)もしくはm^(7)G[5’]ppp[5’]Nとして指定された構造を有し、この中で、m^(7)Gは、7-メチルグアノシンキャップヌクレオシドを表し、pppはキャップヌクレオシドの5’炭素と一次RNA転写産物の第一のヌクレオチドの間の三リン酸架橋を表し、N_(1)(pN)_(x)-OH(3’)は、一次RNA転写産物を表し、このうち、N_(1)は、最も5’のヌクレオチドであり、「p」はリン酸基を表し、「G」は、グアノシンヌクレオシドを表し、「m^(7)」は、グアニンの7位におけるメチル基を表し、および「[5’]」は、「p」がキャップヌクレオチドのリボースとmRNA転写産物の第一のヌクレオシド(「N」)に結合する位置を示す。この「標準的なキャップ」に加えて、種々の他の天然および合成のキャップ類似体が、当該技術分野において公知である。いかなるキャップヌクレオチドを有するRNAも、「キャッピングされたRNA」と呼ばれる。キャッピングされたRNAは、生物試料から自然に生じることができ、または5’三リン酸基を有するRNAの、もしくは5’二リン酸基を有するRNAの、キャッピング酵素系(例えば、ワクシニアキャッピング酵素系または出芽酵母キャッピング酵素系)を用いたインビトロでのキャッピングによって得られることができる。あるいは、キャッピングされたRNAは、RNAポリメラーゼプロモーターを含有するDNAテンプレートのインビトロでの転写(IVT)によって得られることができ、この中で、GTPに加えて、IVT反応は、当該技術分野において公知の方法を用いて(例えば、AMPLICAP(商標)T7キャッピングキットまたはMESSAGEMAX(商標)T7 ARCA-CAPPED MESSAGE転写キット、EPICENTRE、またはCellScriptを用いて)、ジヌクレオチドキャップアナログ(例えば、m^(7)GpppGキャップアナログ、またはN^(7)-メチル、2’-O-メチル-GpppG ARCAキャップアナログ、またはN^(7)-メチル、3’-O-メチル-GpppG ARCAキャップアナログ)も含有する。」([0109])

(甲1-5)「[0116]「修飾されたヌクレオチドでキャッピングされたRNA」は、キャッピング酵素系と修飾されたキャップヌクレオチドとを用いて合成された、キャッピングされたRNA分子であり、この中で、その5’末端におけるキャップヌクレオチドは、修飾されたキャップヌクレオチドを、またはジヌクレオチドキャップアナログがキャップヌクレオチドにおける化学的修飾を含有する修飾されたジヌクレオチドキャップアナログを含有するインビトロでの転写反応において同時転写的に合成されるキャッピングされたRNAを含む。いくつかの実施態様において、修飾されたジヌクレオチドキャップアナログは、反逆方向キャップアナログまたはARCAである(Grudzien et al. 2004, Jemielity et al. 2003, Grudzien-Nogalska et al. 2007, Peng et al. 2002, Stepinski et al. 2001)。」([0116])

(甲1-6)「[0121]「iPS細胞誘導因子」または「iPSC誘導因子」は、単独で、または他の再プログラム化因子との組み合わせで用いて、体細胞からのiPS細胞の作製を生じるタンパク質、ポリペプチド、または他の生体分子である。iPS細胞誘導因子の例には、OCT4、SOX2、c-MYC、KLF4、NANOG、およびLIN28が挙げられる。iPS細胞誘導因子には、完全長のポリペプチド配列またはその生物学的に活性のある断片が含まれる。同様に、iPS細胞誘導因子をコードするmRNAは、完全長のポリペプチドまたはその生物学的に活性のある断片をコードし得る。例示的なiPS誘導因子についての配列をコードするmRNAを図25(KLF4およびLIN28)、図26(cMYCおよびNANOG)、および図27(OCT4およびSOX2)において示す。ある実施態様において、本発明は、これらの図に示される配列または類似の配列を採用し、これには、これらのmRNA配列に結合した、5’および3’UTR配列、コザック配列、IRES配列、キャップヌクレオチド、ならびに/または本明細書で説明される実験において用いられるポリ(A)配列のいずれかを呈するオリゴリボヌクレオチド、あるいは当該技術分野で一般的に公知でありかつ細胞における個々のmRNA分子の翻訳を最適化して、本明細書に説明される方法を達成するために細胞における該分子の安定性を改良する目的のために、これらのタンパク質をコードするmRNA配列に結合することによって、本明細書で用いられる配列の替わりに用いられることのできるオリゴリボヌクレオチドを追加的に含むmRNA分子が含まれる。」([0121])

(甲1-7)「[0140]「シュードウリジン」は、別の実施態様において、m^(1)acp^(3)Ψ(1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン)を指す。別の実施態様において、該用語は、m^(1)Ψ(1-メチルシュードウリジン)を指す。別の実施態様において、該用語は、Ψm(2’-O-メチルシュードウリジン)を指す。別の実施態様において、該用語は、m^(5)D(5-メチルジヒドロウリジン)を指す。別の実施態様において、該用語は、m^(3)Ψ(3-メチルシュードウリジン)を指す。別の実施態様において、該用語は、さらに修飾されていないシュードウリジン部分を指す。別の実施態様において、該用語は、先のシュードウリジンのいずれかの一リン酸、二リン酸、または三リン酸を指す。別の実施態様において、該用語は、当該技術分野で公知の任意の他のシュードウリジンを指す。各可能性は、本発明の個別の実施態様を表す。」([0140])

(甲1-8)「[0177]別の実施態様において、本発明の方法はさらに、接触の工程の前に、RNA分子、オリゴリボヌクレオチド分子、またはポリリボヌクレオチド分子を形質移入試薬と混合することを含む。別の実施態様において、本発明の方法はさらに、形質移入試薬とともにRNA分子、オリゴリボヌクレオチド分子、またはポリリボヌクレオチド分子を投与することを含む。別の実施態様において、形質移入試薬は、陽イオン性脂質試薬である(実施例6)。」([0177])

(甲1-9)「[0200]別の実施態様において、本発明のRNA分子またはリボヌクレオチド分子は、ナノ粒子に封入される。ナノ粒子封入のための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、Bose S, et al (Role of Nucleolin in Human Parainfluenza Virus Type 3 Infection of Human Lung Epithelial Cells. J. Virol. 78:8146. 2004)、Dong Y et al. Poly(d,l-lactide-co-glycolide)/montmorillonite nanoparticles for oral delivery of anticancer drugs. Biomaterials 26:6068. 2005)、Lobenberg R. et al (Improved body distribution of 14C-labelled AZT bound to nanoparticles in rats determined by radioluminography. J Drug Target 5:171. 1998)、Sakuma SR et al (Mucoadhesion of polystyrene nanoparticles having surface hydrophilic polymeric chains in the gastrointestinal tract. Int J Pharm 177:161. 1999)、Virovic L et al. Novel delivery methods for treatment of viral hepatitis: an update. Expert Opin Drug Deliv 2:707.2005)、およびZimmermann E et al., Electrolyte-and pH-stabilities of aqueous solid lipid nanoparticle (SLN) dispersions in artificial gastrointestinal media. Eur J Pharm Biopharm 52:203.2001)において説明される。各方法は、本発明の個別の実施態様を表す。」([0200])

(甲1-10)「実施例5 修飾されたヌクレオシド用いたRNA分子のインビトロでの合成:材料および実験方法
[0282]インビトロで転写されるRNA
[0283]インビトロでの転写アッセイ(MessageMachineキットおよびMegaScriptキット; Ambion,)を用いて、以下の長いRNAを、説明される通りT7 RNAポリメラーゼ(RNAP)によって生じた(Kariko et al, 1998, Phosphate-enhanced transfection of cationic lipid-complexed mRNA and plasmid DNA. Biochim Biophys Acta 1369, 320-334)(注記:テンプレートの名称は、カッコの中に示されており、RNAの名称中の数は長さを指定する):RNA-1866(Nde Iで線形化されたpTEVluc)は、ホタルルシフェラーゼをコードし、50nt長のポリA末端である。RNA-1571(Ssp Iで線形化されたpSVren)は、ウミシイタケルシフェラーゼをコードする。RNA-730(Hind IIIで線形化されたpT7T3D-MART-l)は、ヒトメラノーマ抗原MART-Iをコードする。RNA-713(EcoR Iで線形化されたpTIT3D-MART-l)は、MART-1のアンチセンス配列に相応し、RNA497(Bgl IIで線形化されたpCMV-hTLR3)は、hTLR3の部分的5’断片をコードする。RNA分子の配列は、以下のとおりである:
RNA-I866: (配列番号1)
ggaauucucaacacaacauauacaaaacaaacgaaucucaagcaaucaagcauucuacuucuauugcagcaauuuaaaucauuucuuuuaaagcaaaagcaauuuucugaaaauuuucaccauuuacgaacgauagccauggaagacgccaaaaacauaaagaaaggcccggcgccauucuauccucuagaggauggaaccgcuggagagcaacugcauaaggcuaugaagagauacgcccugguuccuggaacaauugcuuuuacagaugcacauaucgaggugaacaucacguacgcggaauacuucgaaauguccguucgguuggcagaagcuaugaaacgauaugggcugaauacaaaucacagaaucgucguaugcagugaaaacucucuucaauucuuuaugccgguguugggcgcguuauuuaucggaguugcaguugcgcccgcgaacgacauuuauaaugaacgugaauugcucaacaguaugaacauuucgcagccuaccguaguguuuguuuccaaaaagggguugcaaaaaauuuugaacgugcaaaaaaaauuaccaauaauccagaaaauuauuaucauggauucuaaaacggauuaccagggauuucagucgauguacacguucgucacaucucaucuaccucccgguuuuaaugaauacgauuuuguaccagaguccuuugaucgugacaaaacaauugcacugauaaugaauuccucuggaucuacuggguuaccuaaggguguggcccuuccgcauagaacugccugcgucagauucucgcaugccagagauccuauuuuuggcaaucaaaucauuccggauacugcgauuuuaaguguuguuccauuccaucacgguuuuggaauguuuacuacacucggauauuugauauguggauuucgagucgucuuaauguauagauuugaagaagagcuguuuuuacgaucccuucaggauuacaaaauucaaagugcguugcuaguaccaacccuauuuucauucuucgccaaaagcacucugauugacaaauacgauuuaucuaauuuacacgaaauugcuucugggggcgcaccucuuucgaaagaagucggggaagcgguugcaaaacgcuuccaucuuccagggauacgacaaggauaugggcucacugagacuacaucagcuauucugauuacacccgagggggaugauaaaccgggcgcggucgguaaaguuguuccauuuuuugaagcgaagguuguggaucuggauaccgggaaaacgcugggcguuaaucagagaggcgaauuaugugucagaggaccuaugauuauguccgguuauguaaacaauccggaagcgaccaacgccuugauugacaaggauggauggcuacauucuggagacauagcuuacugggacgaagacgaacacuucuucauaguugaccgcuugaagucuuuaauuaaauacaaaggauaucagguggcccccgcugaauuggaaucgauauuguuacaacaccccaacaucuucgacgcgggcguggcaggucuucccgacgaugacgccggugaacuucccgccgccguuguuguuuuggagcacggaaagacgaugacggaaaaagagaucguggauuacguggccagucaaguaacaaccgcgaaaaaguugcgcggaggaguuguguuuguggacgaaguaccgaaaggucuuaccggaaaacucgacgcaagaaaaaucagagagauccucauaaaggccaagaagggcggaaaguccaaauuguaaaauguaacucuagaggauccccaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaca。
RNA-1571: (配列番号2)
ggcuagccaccaugacuucgaaaguuuaugauccagaacaaaggaaacggaugauaacugguccgcaguggugggccagauguaaacaaaugaauguucuugauucauuuauuaauuauuaugauucagaaaaacaugcagaaaaugcuguuauuuuuuuacaugguaacgcggccucuucuuauuuauggcgacauguugugccacauauugagccaguagcgcgguguauuauaccagaccuuauugguaugggcaaaucaggcaaaucugguaaugguucuuauagguuacuugaucauuacaaauaucuuacugcaugguuugaacuucuuaauuuaccaaagaagaucauuuuugucggccaugauuggggugcuuguuuggcauuucauuauagcuaugagcaucaagauaagaucaaagcaauaguucacgcugaaaguguaguagaugugauugaaucaugggaugaauggccugauauugaagaagauauugcguugaucaaaucugaagaaggagaaaaaaugguuuuggagaauaacuucuucguggaaaccauguugccaucaaaaaucaugagaaaguuagaaccagaagaauuugcagcauaucuugaaccauucaaagagaaaggugaaguucgucguccaacauuaucauggccucgugaaaucccguuaguaaaaggugguaaaccugacguuguacaaauuguuaggaauuauaaugcuuaucuacgugcaagugaugauuuaccaaaaauguuuauugaaucggacccaggauucuuuuccaaugcuauuguugaaggugccaagaaguuuccuaauacugaauuugucaaaguaaaaggucuucauuuuucgcaagaagaugcaccugaugaaaugggaaaauauaucaaaucguucguugagcgaguucucaaaaaugaacaaaugucgacgggggccccuaggaauuuuuuagggaagaucuggccuuccuacaagggaaggccagggaauuuucuucagagcagaccagagccaacagccccaccagaagagagcuucaggucugggguagagacaacaacucccccucagaagcaggagccgauagacaaggaacuguauccuuuaacuucccucagaucacucuuuggcaacgaccccucgucacaauaaagauaggggggcaacuaaagggaucggccgcuucgagcagacaugauaagauacauugaugaguuuggacaaaccacaacuagaaugcagugaaaaaaaugcuuuauuugugaaauuugugaugcuauugcuuuauuuguaaccauuauaagcugcaauaaacaaguuaacaacaacaauugcauucauuuuauguuucagguucagggggaggugugggagguuuuuuaaagcaaguaaaaccucuacaaaugugguaaaaucgauaaguuuaaacagauccagguggcacuuuucggggaaaugugcgcggaaccccuauuuguuuauuuuucuaaauacauucaaauauguauccgcucaugagacaauaacccugauaaaugcuucaauaau。
RNA-730: (配列番号3)
Gggaauuuggcccucgaggccaagaauucggcacgaggcacgcggccagccagcagacagaggacucucauuaaggaagguguccugugcccugacccuacaagaugccaagagaagaugcucacuucaucuaugguuaccccaagaaggggcacggccacucuuacaccacggcugaagaggccgcugggaucggcauccugacagugauccugggagucuuacugcucaucggcuguugguauuguagaagacgaaauggauacagagccuugauggauaaaagucuucauguuggcacucaaugugccuuaacaagaagaugcccacaagaaggguuugaucaucgggacagcaaagugucucuucaagagaaaaacugugaaccugugguucccaaugcuccaccugcuuaugagaaacucucugcagaacagucaccaccaccuuauucaccuuaagagccagcgagacaccugagacaugcugaaauuauuucucucacacuuuugcuugaauuuaauacagacaucuaauguucuccuuuggaaugguguaggaaaaaugcaagccaucucuaauaauaagucaguguuaaaauuuuaguagguccgcuagcaguacuaaucaugugaggaaaugaugagaaauauuaaauugggaaaacuccaucaauaaauguugcaaugcaugauaaaaaaaaaaaaaaaaaaaacugcggccgca。
RNA-713: (配列番号4)
Gggaauaagcuugcggccgcaguuuuuuuuuuuuuuuuuuuuaucaugcauugcaacauuuauugauggaguuuucccaauuuaauauuucucaucauuuccucacaugauuaguacugcuagcggaccuacuaaaauuuuaacacugacuuauuauuagagauggcuugcauuuuuccuacaccauuccaaaggagaacauuagaugucuguauaaauucaagcaaaagugugagagaaauaauuucagcaugucucaggugucucgcuggcucuuaaggugaauaaggugguggugacuguucugcagagaguuucucauaagcagguggagcauugggaaccacagguucacaguuuuucucuugaagagacacuuugcugucccgaugaucaaacccuucuugugggcaucuucuuguuaaggcacauugagugccaacaugaagacuuuuauccaucaaggcucuguauccauuucgucuucuacaauaccaacagccgaugagcaguaagacucccaggaucacugucaggaugccgaucccagcggccucuucagccgugguguaagaguggccgugccccuucuugggguaaccauagaugaagugagcaucuucucuuggcaucuuguagggucagggcacaggacaccuuccuuaaugagaguccucugucugcuggcuggccgcgugccucgugccgaauu。
RNA-497: (配列番号5)
Gggagacccaagcuggcuagcagucauccaacagaaucaugagacagacuuugccuuguaucuacuuuugggggggccuuuugcccuuugggaugcugugugcauccuccaccaccaagugcacuguuagccaugaaguugcugacugcagccaccugaaguugacucagguacccgaugaucuacccacaaacauaacaguguugaaccuuacccauaaucaacucagaagauuaccagccgccaacuucacaagguauagccagcuaacuagcuuggauguaggauuuaacaccaucucaaaacuggagccagaauugugccagaaacuucccauguuaaaaguuuugaaccuccagcacaaugagcuaucucaacuuucugauaaaaccuuugccuucugcacgaauuugacugaacuccaucucauguccaacucaauccagaaaauuaaaaauaaucccuuugucaagcagaagaauuuaaucacauua。
[0284]修飾されたRNAを得るために、転写反応を、塩基性NTPのうちの1(または2)と、修飾されたヌクレオチド5-メチルシチジン、5-メチルウリジン、2-チオウリジン、N6-メチルアデノシン、またはシュードウリジンの対応する三リン酸誘導体(複数可)との置き換えで組み立てた(TriLink, San Diego, CA)。各転写反応において、4のヌクレオチドすべてまたはそれらの誘導体は、7.5ミリモル濃度(mM)の濃度で存在した。選択された実験において、示されるように、6mMのm7GpppGキャップアナログ(New England BioLabs, Beverly, MA)もキャッピングされたRNAを得るために含まれた。ORN5およびORN6を、DNAオリゴデオキシヌクレオチドテンプレートおよびT7 RNAP(Silencer(登録商標)siRNA構築キット, Ambion)を用いて生じた。
結果
[0285]免疫原性に及ぼすヌクレオシド修飾の効果をさらに試験するために、インビトロでの系を、シュードウリジンまたは修飾されたヌクレオシドを用いたRNA分子を製造するために開発した。4つのヌクレオチド三リン酸(NTP)のうちの1つまたは2つを、対応するヌクレオシド修飾されたNTPと置換するインビトロでの転写反応を実施した。長さ0.7?1.9kbに及びかつ修飾されたヌクレオシドのうちの0、1つ、または2つの種類のいずれかを含有する異なる一次配列を有するいくつかのRNAセットを転写した。修飾されたRNAは、変性ゲル電気泳動法における該RNAの移動度に関して該RNAの修飾されていない対応物とは区別できず、該RNAが、無傷であり、それ以外は修飾されていないことを示した(図7のA)。この手順は、T7、SP6、およびT3ファージポリメラーゼのうちのいずれかと効率よく作用し、それゆえ、広範な種々のRNAポリメラーゼに汎化可能である。
[0286]これらの発見は、修飾されたヌクレオシドを用いたRNA分子の製造のための新規のインビトロでの系を提供する。」([0282]?[0286]、実施例5)

(甲1-11)「実施例34 RNA免疫原性および翻訳効率に及ぼす追加的なヌクレオシド修飾の効果の試験
[0378]追加のヌクレオシド修飾を、実施例5および10において先に説明された方法を用いて、インビトロで転写されるRNAへと導入し、免疫原性翻訳効率に及ぼすその効果を、実施例4?11および12?18においてそれぞれ説明される通り試験する。ある追加的な修飾は、免疫原性を低下させ、翻訳を亢進することが見いだされている。これらの修飾は、本発明の方法および組成物の追加的な実施態様である。
[0379]試験される修飾には、例えば、m^(1)A、m^(2)A、Am、ms^(2)m^(6)A、i^(6)A、ms^(2)i^(6)A、io^(6)A、ms^(2)i0^(6)A、g^(6)A、t^(6)A、ms^(2)t^(6)A、m^(6)t^(6)A、hn^(6)A、ms^(2)hn^(6)A、Ar(p)、I、m^(1)I、m^(1)Im、m^(3)C、Cm、S^(2)C、ac^(4)C、f^(5)c、m^(5)Cm、ac^(4)Cm、k^(2)c、m^(1)G、m^(2)G、m^(7)G、Gm、m^(2)_(2)G、m^(2)Gm、m^(2)_(2)Gm、Gr(p)、yW、o_(2)yW、OHyW、OHyW^(*)、imG、mimG、Q、oQ、galQ、manQ、preQ_(0)、preQ_(1)、G^(+)、D、m^(5)Um’、m^(1)Ψ、Ψm、S^(4)U、・m^(5)s^(2)U’、S^(2)Um、’acp^(3)U・、ho^(5)u.、mo^(5)U・、cmo^(5)U・、mcmo^(5)U、chm^(5)U、mchm^(5)U・、mcm^(5)U、mcm^(5)Um、mcm^(5)s^(2)U、nm^(5)s^(2)U、mnm^(5)U、mnm^(5)s^(2)U、mnm^(5)se^(2)U、ncm^(5)U、ncm^(5)Um、cmnm^(5)U、cmnm^(5)Um、cmnm^(5)s^(2)U、m^(6)_(2)A、Im、m^(4)C、m^(4)Cm、hm^(5)C、m^(3)U、m^(1)acp3Ψ、cm^(5)U、m^(6)Am、m^(6)_(2)Am、m^(2,7)G、m^(2,2,7)G、m^(3)Um、m^(5)D、m^(3)Ψ、f^(5)Cm、m^(1)Gm、m^(1)Am、τm^(5)U、τm^(5)s^(2)U、imG-14、imG2、およびac^(6)Aが含まれる。」([0378]?[0379]、実施例34)

(2)甲第2号証:国際公開第2007/024708号

(甲2-1)「[001]本発明は、シュードウリジンまたは修飾されたヌクレオシドを含む、RNA分子、オリゴリボヌクレオチド分子、およびポリリボヌクレオチド分子、それらを含む遺伝子療法ベクター、それらの合成方法、ならびに遺伝子置換、遺伝子療法、遺伝子転写サイレンシング、および治療用タンパク質の該分子を含む組織へのインビボでの送達のための方法も提供する。本発明は、RNA分子、オリゴリボヌクレオチド分子、およびポリリボヌクレオチド分子の免疫原性を低下させる方法も提供する。」([001])

(甲2-2)「[007]別の実施態様において、本発明は、シュードウリジンまたは修飾されたヌクレオシドを含むインビトロで転写されるRNA分子を提供する。別の実施態様において、本発明は、シュードウリジンまたは修飾されたヌクレオシドを含むインビトロで合成されたオリゴリボヌクレオチドを提供し、この中で、修飾されたヌクレオシドは、m^(5)C、m^(5)U、m^(6)A、s^(2)U、Ψ、または2’-O-メチル-Uである。」([007])

(甲2-3)「[0051]別の実施態様において、RNA分子、オリゴリボヌクレオチド分子、またはポリリボヌクレオチド分子はさらに、ポリ-A末端を含む。別の実施態様において、RNA分子、オリゴリボヌクレオチド分子、またはポリリボヌクレオチド分子は、ポリーA末端を含まない。各可能性は、本発明の個別の実施態様を表す。」([0051])

(甲2-4)「[0052]別の実施態様において、RNA分子、オリゴリボヌクレオチド分子、またはポリリボヌクレオチド分子はさらに、m7GpppGキャップを含む。別の実施態様において、RNA分子、オリゴリボヌクレオチド分子、またはポリリボヌクレオチド分子は、m7GpppGキャップを含まない。各可能性は、本発明の個別の実施態様を表す。」([0052])

(甲2-5)「[0056]「シュードウリジン」は、別の実施態様において、m^(1)acp^(3)Ψ(1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン)を指す。別の実施態様において、該用語は、m^(1)Ψ(1-メチルシュードウリジン)を指す。別の実施態様において、該用語は、Ψm(2’-O-メチルシュードウリジン)を指す。別の実施態様において、該用語は、m^(5)D(5-メチルジヒドロウリジン)を指す。別の実施態様において、該用語は、m^(3)Ψ(3-メチルシュードウリジン)を指す。別の実施態様において、該用語は、さらに修飾されていないシュードウリジン部分を指す。別の実施態様において、該用語は、先のシュードウリジンのいずれかの一リン酸、二リン酸、または三リン酸を指す。別の実施態様において、該用語は、当該技術分野で公知の任意の他のシュードウリジンを指す。各可能性は、本発明の個別の実施態様を表す。」([0056])

(甲2-6)「[0070]他の実施態様において、修飾されたヌクレオシドは、m^(1)A(1-メチルアデノシン)、m^(2)A(2メチルアデノシン)、Am(2’-O-メチルアデノシン)、ms^(2)m^(6)A(2-メチルチオ-N^(6)-メチルアデノシン)、i^(6)A(N^(6)-イソペンテニルアデノシン)、mszi^(6)A(2-メチルチオ-N^(6)イソペンテニルアデノシン)、io^(6)A(N^(6)-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン)、ms^(2)io^(6)A(2-メチルチオ-N^(6)-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン)、g^(6)A(N^(6)-グリシニルカルバモイルアデノシン)、t^(6)A(N^(6)-トレオニルカルバモイルアデノシン)、ms^(2)t^(6)A(2-メチルチオ-N^(6)-トレオニルカルバモイルアデノシン)、m^(6)t6A(N^(6)-メチル-N^(6)-トレオニルカルバモイルアデノシン)、hn^(6)A(N^(6)ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン)、ms^(2)hn^(6)A(2-メチルチオ-N^(6)-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン)、Ar(p)(2’-O-リボシルアデノシン(リン酸))、I(イノシン)、m^(1)I(1-メチルイノシン)、m^(1)Im(1,2’-O-ジメチルイノシン)、m^(3)C(3-メチルシチジン)、Cm(2’-O-メチルシチジン)、S^(2)C(2チオシチジン)、ac^(4)C(N^(4)-アセチルシチジン)、f^(5)C(5-ホルミルシチジン)、m^(5)Cm(5,2’-O-ジメチルシチジン)、ac^(4)Cm(N^(4)-アセチル-2’-O-メチルシチジン)、k^(2)C(リシジン)、m^(1)G(1-メチルグアノシン)、m^(2)G(N^(2)-メチルグアノシン)、m^(7)G(7-メチルグアノシン)、Gm(2’-O-メチルグアノシン)、m^(2)_(2)G(N2,N2-ジメチルグアノシン)、m^(2)Gm(N2,2’-O-ジメチルグアノシン)、m^(2)_(2)Gm(N^(2),N^(2),2’-O-トリメチルグアノシン)、Gr(p)(2’-O-リボシルグアノシン(リン酸))、yW(ワイブトシン)、o_(2)yW(ペルオキシワイブトシン)、OHyW(ヒドロキシワイブトシン)、OHyW^(*)(未修飾ヒドロキシワイブトシン)、imG(ワイオシン)、mimG(メチルワイオシン)、Q(ケウオシン)、oQ(エポキシケウオシン)、galQ(ガラクトシル-ケウオシン)、manQ(マンノシルケウオシン)、preQ_(0)(7-シアノ-7-デアザグアノシン)、preQ_(1)(7-アミノメチル-7-デアザグアノシン)、G^(+)(アルカエオシン(archaeosine))、D(ジヒドロウリジン)、m^(5)Um(5,2’-O-ジメチルウリジン)、S^(4)U(4-チオウリジン)、m^(5)s^(2)U(5-メチル-2-チオウリジン)、s^(2)Um(2-チオ-2’-O-メチルウリジン)、acp^(3)U(3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン)、ho5U(5-ヒドロキシウリジン)、mo^(5)U(5-メトキシウリジン)、cmo^(5)U(ウリジン5-オキシ酢酸)、mcmo^(5)U(ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル)、chm^(5)U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン))、mchm^(5)U(5(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル)、mcm^(5)U(5-メトキシカルボニルメチルウリジン)、mcm^(5)Um(5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン)、mcm^(5)s^(2)U(5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン)、nm^(5)s^(2)U(5-アミノメチル-2-チオウリジン)、mnm^(5)U(5-メチルアミノメチルウリジン)、mnm^(5)s^(2)U(5メチルアミノメチル-2-チオウリジン)、mnmse^(2)U(5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン)、ncm^(5)U(5-カルバモイルメチルウリジン)、ncm^(5)Um(5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン)、cmnm^(5)U(5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン)、cmnm^(5)Um(5-カルボキシメチルアミノメチル-2’--メチルウリジン)、cmnm^(5)s^(2)U(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン)、m^(6)_(2)A(N^(6),N^(6)-ジメチルアデノシン)、Im(2’-O-メチルイノシン)、m^(4)C(N^(4)-メチルシチジン)、m^(4)Cm(N^(4),2’-O-ジメチルシチジン)、hm^(5)C(5-ヒドロキシメチルシチジン)、m^(3)U(3-メチルウリジン)、cm^(5)U(5-カルボキシメチルウリジン)、m^(6)Am(N^(6),2’-Oジメチルアデノシン)、m^(6)_(2)Am(N^(6),N^(6),2’-O-トリメチルアデノシン)、m^(2,7)G(N^(2),7-ジメチルグアノシン)、m^(2,2,7)G(N^(2),N^(2),7-トリメチルグアノシン)、m^(3)Um(3,2’-O-ジメチルウリジン)、m^(5)D(5-メチルジヒドロウリジン)、f^(5)Cm(5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン)、m^(1)Gm(1,2’-O-ジメチルグアノシン)、m^(1)Am(1,2’-O-ジメチルアデノシン)、τm^(5)U(5-タウリノメチルウリジン)、τm^(5)s^(2)U(5-タウリノメチル-2-チオウリジン)、imG-14(4-デメチルワイオシン)、imG2(イソワイオシン)、またはac^(6)A(N^(6)-アセチルアデノシン)である。各可能性は、本発明の個別の実施態様を表す。」([0070])

(甲2-7)「[0084]本明細書に提供されるいくつかの発現研究において、翻訳を、Lipofectin(登録商標)(Gibco BRL, Gaithersburg, MD, USA)と複合体形成したRNAから測定し、マウスの尾静脈に注射した。脾臓溶解産物において、シュードウリジン修飾したRNAは、修飾されていないRNAよりも優位に効率的に翻訳された(図12B)。本明細書で利用される条件下で、本発明の形質移入ベースの方法の効率は、形質移入試薬が組織に浸透する能力と相関しており、該効果が脾細胞においてなぜ最も顕著であったかについての説明を提供する。脾臓血流は開放系であり、血液含有量は、リンパ球系細胞を含む赤脾髄要素および白脾髄要素と直接接触する。」([0084])

(甲2-8)「[0094]別の実施態様において、本発明の方法はさらに、接触の工程の前に、RNA分子、オリゴリボヌクレオチド分子、またはポリリボヌクレオチド分子を形質移入試薬と混合することを含む。別の実施態様において、本発明の方法はさらに、形質移入試薬とともにRNA分子、オリゴリボヌクレオチド分子、またはポリリボヌクレオチド分子を投与することを含む。別の実施態様において、形質移入試薬は、陽イオン性脂質試薬である(実施例3)。」([0094])

(甲2-9)「[00118]別の実施態様において、本発明のRNA分子またはリボヌクレオチド分子は、ナノ粒子に封入される。ナノ粒子封入のための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、Bose S, et al (Role of Nucleolin in Human Parainfluenza Virus Type 3 Infection of Human Lung Epithelial Cells. J. Virol. 78:8146. 2004)、Dong Y et al. Poly(d,l-lactide-co-glycolide)/montmorillonite nanoparticles for oral delivery of anticancer drugs. Biomaterials 26:6068. 2005)、Lobenberg R. et al (Improved body distribution of 14C-labelled AZT bound to nanoparticles in rats determined by radioluminography. J Drug Target 5:171. 1998)、Sakuma SR et al (Mucoadhesion of polystyrene nanoparticles having surface hydrophilic polymeric chains in the gastrointestinal tract. Int J Pharm 177:161. 1999)、Virovic L et al. Novel delivery methods for treatment of viral hepatitis: an update. Expert Opin Drug Deliv 2:707.2005)、およびZimmermann E et al., Electrolyte-and pH-stabilities of aqueous solid lipid nanoparticle (SLN) dispersions in artificial gastrointestinal media. Eur J Pharm Biopharm 52:203.2001)において説明される。各方法は、本発明の個別の実施態様を表す。」([00118])

(甲2-10)「実施例2:修飾されたヌクレオシド用いたRNA分子のインビトロでの合成:材料および実験方法
インビトロで転写されるRNA
[00187]インビトロでの転写アッセイ(MessageMachineキットおよびMegaScriptキット; Ambion,)を用いて、以下の長いRNAを、説明される通りT7 RNAポリメラーゼ(RNAP)によって生じた(Kariko et al, 1998, Phosphate-enhanced transfection of cationic lipid-complexed mRNA and plasmid DNA. Biochim Biophys Acta 1369, 320-334)(注記:テンプレートの名称は、カッコの中に示されており、RNAの名称中の数は長さを指定する):RNA-1866(Nde Iで線形化されたpTEVluc)は、ホタルルシフェラーゼをコードし、50nt長のポリA末端である。RNA-1571(Ssp Iで線形化されたpSVren)は、ウミシイタケルシフェラーゼをコードする。RNA-730(Hind IIIで線形化されたpT7T3D-MART-l)は、ヒトメラノーマ抗原MART-Iをコードする。RNA-713(EcoR Iで線形化されたpTIT3D-MART-l)は、MART-1のアンチセンス配列に相応し、RNA497(Bgl IIで線形化されたpCMV-hTLR3)は、hTLR3の部分的5’断片をコードする。RNA分子の配列は、以下のとおりである:
[00188]RNA-I866:
ggaauucucaacacaacauauacaaaacaaacgaaucucaagcaaucaagcauucuacuucuauugcagcaauuuaaaucauuucuuuuaaagcaaaagcaauuuucugaaaauuuucaccauuuacgaacgauagccauggaagacgccaaaaacauaaagaaaggcccggcgccauucuauccucuagaggauggaaccgcuggagagcaacugcauaaggcuaugaagagauacgcccugguuccuggaacaauugcuuuuacagaugcacauaucgaggugaacaucacguacgcggaauacuucgaaauguccguucgguuggcagaagcuaugaaacgauaugggcugaauacaaaucacagaaucgucguaugcagugaaaacucucuucaauucuuuaugccgguguugggcgcguuauuuaucggaguugcaguugcgcccgcgaacgacauuuauaaugaacgugaauugcucaacaguaugaacauuucgcagccuaccguaguguuuguuuccaaaaagggguugcaaaaaauuuugaacgugcaaaaaaaauuaccaauaauccagaaaauuauuaucauggauucuaaaacggauuaccagggauuucagucgauguacacguucgucacaucucaucuaccucccgguuuuaaugaauacgauuuuguaccagaguccuuugaucgugacaaaacaauugcacugauaaugaauuccucuggaucuacuggguuaccuaaggguguggcccuuccgcauagaacugccugcgucagauucucgcaugccagagauccuauuuuuggcaaucaaaucauuccggauacugcgauuuuaaguguuguuccauuccaucacgguuuuggaauguuuacuacacucggauauuugauauguggauuucgagucgucuuaauguauagauuugaagaagagcuguuuuuacgaucccuucaggauuacaaaauucaaagugcguugcuaguaccaacccuauuuucauucuucgccaaaagcacucugauugacaaauacgauuuaucuaauuuacacgaaauugcuucugggggcgcaccucuuucgaaagaagucggggaagcgguugcaaaacgcuuccaucuuccagggauacgacaaggauaugggcucacugagacuacaucagcuauucugauuacacccgagggggaugauaaaccgggcgcggucgguaaaguuguuccauuuuuugaagcgaagguuguggaucuggauaccgggaaaacgcugggcguuaaucagagaggcgaauuaugugucagaggaccuaugauuauguccgguuauguaaacaauccggaagcgaccaacgccuugauugacaaggauggauggcuacauucuggagacauagcuuacugggacgaagacgaacacuucuucauaguugaccgcuugaagucuuuaauuaaauacaaaggauaucagguggcccccgcugaauuggaaucgauauuguuacaacaccccaacaucuucgacgcgggcguggcaggucuucccgacgaugacgccggugaacuucccgccgccguuguuguuuuggagcacggaaagacgaugacggaaaaagagaucguggauuacguggccagucaaguaacaaccgcgaaaaaguugcgcggaggaguuguguuuguggacgaaguaccgaaaggucuuaccggaaaacucgacgcaagaaaaaucagagagauccucauaaaggccaagaagggcggaaaguccaaauuguaaaauguaacucuagaggauccccaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaca(配列番号1)。
[00189]RNA-1571:
ggcuagccaccaugacuucgaaaguuuaugauccagaacaaaggaaacggaugauaacugguccgcaguggugggccagauguaaacaaaugaauguucuugauucauuuauuaauuauuaugauucagaaaaacaugcagaaaaugcuguuauuuuuuuacaugguaacgcggccucuucuuauuuauggcgacauguugugccacauauugagccaguagcgcgguguauuauaccagaccuuauugguaugggcaaaucaggcaaaucugguaaugguucuuauagguuacuugaucauuacaaauaucuuacugcaugguuugaacuucuuaauuuaccaaagaagaucauuuuugucggccaugauuggggugcuuguuuggcauuucauuauagcuaugagcaucaagauaagaucaaagcaauaguucacgcugaaaguguaguagaugugauugaaucaugggaugaauggccugauauugaagaagauauugcguugaucaaaucugaagaaggagaaaaaaugguuuuggagaauaacuucuucguggaaaccauguugccaucaaaaaucaugagaaaguuagaaccagaagaauuugcagcauaucuugaaccauucaaagagaaaggugaaguucgucguccaacauuaucauggccucgugaaaucccguuaguaaaaggugguaaaccugacguuguacaaauuguuaggaauuauaaugcuuaucuacgugcaagugaugauuuaccaaaaauguuuauugaaucggacccaggauucuuuuccaaugcuauuguugaaggugccaagaaguuuccuaauacugaauuugucaaaguaaaaggucuucauuuuucgcaagaagaugcaccugaugaaaugggaaaauauaucaaaucguucguugagcgaguucucaaaaaugaacaaaugucgacgggggccccuaggaauuuuuuagggaagaucuggccuuccuacaagggaaggccagggaauuuucuucagagcagaccagagccaacagccccaccagaagagagcuucaggucugggguagagacaacaacucccccucagaagcaggagccgauagacaaggaacuguauccuuuaacuucccucagaucacucuuuggcaacgaccccucgucacaauaaagauaggggggcaacuaaagggaucggccgcuucgagcagacaugauaagauacauugaugaguuuggacaaaccacaacuagaaugcagugaaaaaaaugcuuuauuugugaaauuugugaugcuauugcuuuauuuguaaccauuauaagcugcaauaaacaaguuaacaacaacaauugcauucauuuuauguuucagguucagggggaggugugggagguuuuuuaaagcaaguaaaaccucuacaaaugugguaaaaucgauaaguuuaaacagauccagguggcacuuuucggggaaaugugcgcggaaccccuauuuguuuauuuuucuaaauacauucaaauauguauccgcucaugagacaauaacccugauaaaugcuucaauaau(配列番号2)。
[00190]RNA-730:
Gggaauuuggcccucgaggccaagaauucggcacgaggcacgcggccagccagcagacagaggacucucauuaaggaagguguccugugcccugacccuacaagaugccaagagaagaugcucacuucaucuaugguuaccccaagaaggggcacggccacucuuacaccacggcugaagaggccgcugggaucggcauccugacagugauccugggagucuuacugcucaucggcuguugguauuguagaagacgaaauggauacagagccuugauggauaaaagucuucauguuggcacucaaugugccuuaacaagaagaugcccacaagaaggguuugaucaucgggacagcaaagugucucuucaagagaaaaacugugaaccugugguucccaaugcuccaccugcuuaugagaaacucucugcagaacagucaccaccaccuuauucaccuuaagagccagcgagacaccugagacaugcugaaauuauuucucucacacuuuugcuugaauuuaauacagacaucuaauguucuccuuuggaaugguguaggaaaaaugcaagccaucucuaauaauaagucaguguuaaaauuuuaguagguccgcuagcaguacuaaucaugugaggaaaugaugagaaauauuaaauugggaaaacuccaucaauaaauguugcaaugcaugauaaaaaaaaaaaaaaaaaaaacugcggccgca(配列番号3)。
[00191]RNA-713
Gggaauaagcuugcggccgcaguuuuuuuuuuuuuuuuuuuuaucaugcauugcaacauuuauugauggaguuuucccaauuuaauauuucucaucauuuccucacaugauuaguacugcuagcggaccuacuaaaauuuuaacacugacuuauuauuagagauggcuugcauuuuuccuacaccauuccaaaggagaacauuagaugucuguauaaauucaagcaaaagugugagagaaauaauuucagcaugucucaggugucucgcuggcucuuaaggugaauaaggugguggugacuguucugcagagaguuucucauaagcagguggagcauugggaaccacagguucacaguuuuucucuugaagagacacuuugcugucccgaugaucaaacccuucuugugggcaucuucuuguuaaggcacauugagugccaacaugaagacuuuuauccaucaaggcucuguauccauuucgucuucuacaauaccaacagccgaugagcaguaagacucccaggaucacugucaggaugccgaucccagcggccucuucagccgugguguaagaguggccgugccccuucuugggguaaccauagaugaagugagcaucuucucuuggcaucuuguagggucagggcacaggacaccuuccuuaaugagaguccucugucugcuggcuggccgcgugccucgugccgaauu(配列番号4)。
[00192]RNA-497:
Gggagacccaagcuggcuagcagucauccaacagaaucaugagacagacuuugccuuguaucuacuuuugggggggccuuuugcccuuugggaugcugugugcauccuccaccaccaagugcacuguuagccaugaaguugcugacugcagccaccugaaguugacucagguacccgaugaucuacccacaaacauaacaguguugaaccuuacccauaaucaacucagaagauuaccagccgccaacuucacaagguauagccagcuaacuagcuuggauguaggauuuaacaccaucucaaaacuggagccagaauugugccagaaacuucccauguuaaaaguuuugaaccuccagcacaaugagcuaucucaacuuucugauaaaaccuuugccuucugcacgaauuugacugaacuccaucucauguccaacucaauccagaaaauuaaaaauaaucccuuugucaagcagaagaauuuaaucacauua(配列番号5)。
[00193]修飾されたRNAを得るために、転写反応を、塩基性NTPのうちの1(または2)と、修飾されたヌクレオチド5-メチルシチジン、5-メチルウリジン、2-チオウリジン、N^(6)-メチルアデノシン、またはシュードウリジンの対応する三リン酸誘導体(複数可)との置き換えで組み立てた(TriLink, San Diego, CA)。各転写反応において、4のヌクレオチドすべてまたはそれらの誘導体は、7.5ミリモル濃度(mM)の濃度で存在した。選択された実験において、示されるように、6mMのm7GpppGキャップアナログ(New England BioLabs, Beverly, MA)もキャッピングされたRNAを得るために含まれた。ORN5およびORN6を、DNAオリゴデオキシヌクレオチドテンプレートおよびT7 RNAP(Silencer(登録商標)siRNA構築キット, Ambion)を用いて生じた。
結果
[00194]免疫原性に及ぼすヌクレオシド修飾の効果をさらに試験するために、インビトロでの系を、シュードウリジンまたは修飾されたヌクレオシドを用いたRNA分子を製造するために開発した。4つのヌクレオチド三リン酸(NTP)のうちの1つまたは2つを、対応するヌクレオシド修飾されたNTPと置換するインビトロでの転写反応を実施した。長さ0.7?1.9kbに及びかつ修飾されたヌクレオシドのうちの0、1つ、または2つの種類のいずれかを含有する異なる一次配列を有するいくつかのRNAセットを転写した。修飾されたRNAは、変性ゲル電気泳動法における該RNAの移動度に関して該RNAの修飾されていない対応物とは区別できず、該RNAが、無傷であり、それ以外は修飾されていないことを示した(図2のA)。この手順は、T7、SP6、およびT3ファージポリメラーゼのうちのいずれかと効率よく作用し、それゆえ、広範な種々のRNAポリメラーゼに汎化可能である。
[00195]これらの発見は、修飾されたヌクレオシドを用いたRNA分子の製造のための新規のインビトロでの系を提供する。」([00187]?[00195]、実施例2)

(甲2-11)「実施例21:EPO-ΨmRNA送達方法のさらなる改良
ナノ粒子複合体形成
[00269]ポリマーおよびΨmRNA溶液を混合して、複合体を形成する。種々の製剤条件を試験し最適化する:(1)22nm未満のポリエチレンイミン(PEI)/mRNA複合体を、25容積のmRNAを水中の1容積のPEIに、15分間混合せずに添加することによって作製する。(2)12×150nmの平均寸法を有する桿状ポリ-L-リシン-ポリエチレングリコール(PLL-PEG)を、9容積のmRNAを、酢酸対イオン緩衝液における1容積のCK_(30)-PEG_(10k)にボルテックスをかけながらの緩徐な添加によって合成する。(3)生分解性遺伝子担体ポリマーの合成のために、無水ポリアスパラギン酸コエチレングリコール(PAE)を、無水N-(ベンジルオキシカルボニル)無水L-アスパラギン酸およびエチレングリコールの開環重縮合によって合成する。次に、アスパラギン酸の枝分かれしたアミンを脱保護し、塩化水素による酸性化によってプロトン化し、mRNAと縮合する。(4)ナノ粒子の最後の発生のために、酢酸アンモニウムとしての一定分量のストックのCK_(30)PEG_(10k)(1.25mL;6.4mg/mL)をシリコン処理したエッペンドルフチューブに加える。次に、mRNAをCK_(30)PEG_(10k)(11.25mLの無RNaseH_(2)Oにおける2.5mg)に1?2分間かけて緩徐に添加する。15分後、無RNaseH_(2)Oにおいて1:2に希釈する。
気管内送達
[00270]マウスを麻酔チャンバーにおける3%ハロタン(70%N_(2)O+30%O_(2))で麻酔し、鼻用円錐体を用いて操作の間、1%ハロタン(70%N_(2)O+30%O_(2))で維持する。気管を露出させ、50μLのmRNA複合体を150μの気体とともに肺へと気管を通じて、27G1/2’’針を有する250μLのハミルトン注射器(Hamilton, Reno, NV)を用いて注入する。
結果
[00271]気管内(i.t.)経路を介して投与されるΨmRNAの送達および発現の効率性を改良するために、ΨmRNAをナノ粒子に封入する。ナノ粒子包装は、ポリ-L-リシンおよびポリエチレングリコールを含む化学物質を用いて、(例えば)DNAを濃縮し、核膜孔よりも小さな粒子へと該DNAを封入することを包含する。RNAを4の異なるナノ粒子製剤(PEI、PLL、PAE、およびCK_(30)PEG_(10k))へと包装し、ΨmRNA送達の効率性を、ルシフェラーゼをコードするΨmRNAと比較し、(Luc-ΨmRNA)と比較する。送達動態および用量反応を次に、EPO-ΨmRNAを用いて特徴づける。」([00269]?[00271]、実施例21)

(甲2-12)「実施例31:RNA免疫原性および翻訳効率に及ぼす追加的なヌクレオシド修飾の効果の試験
[00290]追加のヌクレオシド修飾を、実施例2および17おいて先に説明された方法を用いて、インビトロで転写されるRNAへと導入し、免疫原性翻訳効率に及ぼすその効果を、実施例1?8および9?15においてそれぞれ説明される通り試験する。ある追加的な修飾は、免疫原性を低下させ、翻訳を亢進することが見いだされている。これらの修飾は、本発明の方法および組成物の追加的な実施態様である。
[00291]試験される修飾には、例えば、m^(1)A、m^(2)A、Am、ms^(2)m^(6)A、i^(6)A、ms^(2)i^(6)A、io^(6)A、ms^(2)i0^(6)A、g^(6)A、t^(6)A、ms^(2)t^(6)A、m^(6)t^(6)A、hn^(6)A、ms^(2)hn^(6)A、Ar(p)、I、m^(1)I、m^(1)Im、m^(3)C、Cm、S^(2)C、ac^(4)C、f^(5)c、m^(5)Cm、ac^(4)Cm、k^(2)c、m^(1)G、m^(2)G、m^(7)G、Gm、m^(2)_(2)G、m^(2)Gm、m^(2)_(2)Gm、Gr(p)、yW、o_(2)yW、OHyW、OHyW^(*)、imG、mimG、Q、oQ、galQ、manQ、preQ_(0)、preQ_(1)、G^(+)、D、m^(5)Um’、m^(1)Ψ、Ψm、S^(4)U、・m^(5)s^(2)U’、S^(2)Um、’acp^(3)U・、ho^(5)u.、mo^(5)U・、cmo^(5)U・、mcmo^(5)U、chm^(5)U、mchm^(5)U・、mcm^(5)U、mcm^(5)Um、mcm^(5)s^(2)U、nm^(5)s^(2)U、mnm^(5)U、mnm^(5)s^(2)U、mnm^(5)se^(2)U、ncm^(5)U、ncm^(5)Um、cmnm^(5)U、cmnm^(5)Um、cmnm^(5)s^(2)U、m^(6)_(2)A、Im、m^(4)C、m^(4)Cm、hm^(5)C、m^(3)U、m^(1)acp3Ψ、cm^(5)U、m^(6)Am、m^(6)_(2)Am、m^(2,7)G、m^(2,2,7)G、m^(3)Um、m^(5)D、m^(3)Ψ、f^(5)Cm、m^(1)Gm、m^(1)Am、τm^(5)U、τm^(5)s^(2)U、imG-14、imG2、およびac^(6)Aが含まれる。」
([00290]?[00291]、実施例31)

(甲2-13)「2.ポリAテールをさらに含む、請求項1に記載のメッセンジャーRNA。」(請求項2)

(甲2-14)「7.前記メッセンジャーRNAがナノ粒子に封入されている、請求項1に記載のメッセンジャーRNA。」(請求項7)

(3)甲第3号証:国際公開第2011/000107号

(甲3-1)「1.以下を含む、核酸-脂質粒子:
(a)核酸;
(b)該粒子中に存在する総脂質の約50mol%?約65mol%を構成する陽イオン性脂質;
(c)該粒子中に存在する総脂質の約25mol%?約45mol%を構成する非陽イオン性脂質;および
(d)粒子中に存在する総脂質の約5mol%?約10mol%を構成する、粒子の凝集を阻害する結合脂質。
2.前記核酸が、干渉RNAを含む、請求項1記載の核酸-脂質粒子。」(請求項1?2)

(甲3-2)「5.前記siRNAの二本鎖領域中のヌクレオチドの一つまたは複数が、修飾ヌクレオチドを含む、請求項3記載の核酸-脂質粒子。」(請求項5)

(甲3-3)「27.前記陽イオン性脂質が、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、またはそれらの混合物を含む、請求項1?26のいずれか一項記載の核酸-脂質粒子。」(請求項27)

(甲3-4)「29.前記非陽イオン性脂質が、リン脂質である、請求項1?27のいずれか一項記載の核酸-脂質粒子。
30.前記非陽イオン性脂質が、リン脂質とコレステロールまたはコレステロール誘導体との混合物を含む、請求項1?27のいずれか一項記載の核酸-脂質粒子。」(請求項29?30)

(甲3-5)「37.粒子の凝集を阻害する前記結合脂質が、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを含む、請求項1?36のいずれか一項記載の核酸-脂質粒子。」(請求項37)

(甲3-6)「46.前記核酸が、前記核酸-脂質粒子に完全に封入されている、請求項1記載の核酸-脂質粒子。
47.請求項1記載の核酸-脂質粒子および薬学的に許容されうる担体を含む、薬学的組成物。
48.細胞を請求項1?46のいずれか一項記載の核酸-脂質粒子と接触させる工程を含む、該細胞に核酸を導入するための方法。
49.前記細胞が固形腫瘍中にある、請求項48記載の方法。
50.前記固形腫瘍が哺乳動物中にある、請求項49記載の方法。」(請求項46?50)

(甲3-7)「本発明の脂質粒子(例えばSNALP)は、典型的には約30nm?約150nm、約40nm?約150nm、約50nm?約150nm、約60nm?約130nm、約70nm?約110nm、約70nm?約100nm、約80nm?約100nm、約90nm?約100nm、約70?約90nm、約80nm?約90nm、約70nm?約80nm、または約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、もしくは150nmの平均直径を有し、実質的に無毒である。加えて核酸は、本発明の脂質粒子中に存在する場合、水溶液中でヌクレアーゼによる分解に耐性である。核酸-脂質粒子およびそれらの調製方法は、例えば、米国特許出願公開第20040142025号および同第20070042031号に開示されており、それらの開示は、全ての目的のために全体として本明細書に参照により組み入れられる。」([0063])

(甲3-8)「本発明の脂質粒子は、典型的には、活性剤または治療剤、陽イオン性脂質、非陽イオン性脂質、および粒子の凝集を阻害する結合脂質を含む。いくつかの態様では、活性剤または治療剤は、脂質粒子中の活性剤または治療剤が水溶液中で例えばヌクレアーゼまたはプロテアーゼによる酵素的分解に耐性であるように、脂質粒子の脂質成分内に完全に封入される。他の態様では、本明細書記載の脂質粒子は、ヒトなどの哺乳動物に対して実質的に無毒である。本発明の脂質粒子は、典型的には、約30nm?約150nm、約40nm?約150nm、約50nm?約150nm、約60nm?約130nm、約70nm?約110nm、または約70?約90nmの平均直径を有する。本発明の脂質粒子は、また典型的には、約1:1?約100:1、約1:1?約50:1、約2:1?約25:1、約3:1?約20:1、約5:1?約15:1、または約5:1?約10:1の脂質:治療剤(例えば脂質:核酸)比(質量/質量比)を有する。」([0199])

3 当審の判断
(1)理由1:特許法第29条第1項第3号
ア 甲第1号証に対する新規性欠如
甲第1号証には、mRNAの修飾基の列挙記載の中に1-メチル-シュードウリジンが含まれている記載があるにとどまり、1-メチル-シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンからなり、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドが、哺乳類細胞に投与されると、シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、コードされたポリペプチドの発現を増加させることは記載も示唆もされていない。
また、実施例5(記載事項(甲1-10))は、1-メチル-シュードウリジンを含むポリヌクレオチドを合成した実施例ではなく、また、実施例34(記載事項(甲1-11))は、多数のヌクレオシド修飾の1つとして、1-メチル-シュードウリジンが記載されているにすぎず、しかも、「・・・試験する。・・・ことが見いだされている。」と記載されているように、実際にこれらのヌクレオシド修飾を含むポリヌクレオチドを製造したデータを伴うものではなく、コードされたポリペプチドの発現を増加させることなどは把握し得ないから、本件発明1が、甲第1号証に発明として記載されているとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、ということはできない。本件発明2、5?7は、本件発明1を更に特定するものであるから、同様である。

イ 甲第2号証に対する新規性の欠如
甲第2号証には、mRNAの修飾基の列挙記載の中に1-メチル-シュードウリジンが含まれている記載があるにとどまり、1-メチル-シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンからなり、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドが、哺乳類細胞に投与されると、シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、コードされたポリペプチドの発現を増加させることは記載も示唆もされていない。
また、実施例2(記載事項(甲2-10))は、1-メチル-シュードウリジンを含むポリヌクレオチドを合成した実施例ではなく、また、実施例31(記載事項(甲2-12))は、多数のヌクレオシド修飾の1つとして、1-メチル-シュードウリジンが記載されているにすぎず、しかも、「・・・試験する。・・・ことが見いだされている。」と記載されているように、実際にこれらのヌクレオシド修飾を含むポリヌクレオチドを製造したデータを伴うものではなく、コードされたポリペプチドの発現を増加させることなどは把握し得ないから、本件発明1が、甲第2号証に発明として記載されているとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、ということはできない。本件発明7は、本件発明1を更に特定するものであるから、同様である。

(2)理由2:特許法第29条第2項
RNAのような核酸を細胞内に導入する場合に、コードするポリペプチドの発現を高めることは当該技術分野における一般的な課題であったとしても、甲第1号証または甲第2号証の記載から、ウリジンを1-メチルーシュードウリジンに置換してmRNAを修飾することにより、1-メチル-シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンからなり、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドが、哺乳類細胞に投与されると、シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、コードされたポリペプチドの発現を増加させることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
また、甲第3号証には、哺乳動物細胞中にRNAのような核酸を導入する手段として、陽イオン性脂質及び結合脂質を含む核酸粒子が記載されているにとどまり、甲第3号証の記載事項を参照しても、甲第1号証または甲第2号証の記載に基づき、ウリジンを1-メチルーシュードウリジンに置換してmRNAを修飾することにより、1-メチル-シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンからなり、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドが、哺乳類細胞に投与されると、シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、コードされたポリペプチドの発現を増加させることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
したがって、本件発明1?7は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

(3)理由3及び4:特許法第36条第4項第1号及び特許法第36条第6項第1号
ア 理由アについて
本件発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識から、当業者であれば、オープンリーディングフレーム以外の領域を、修飾されていないヌクレオチドで構成することも可能であり、その場合にはポリペプチド発現における1-メチルーシュードウリジンの効果を著しく損なう蓋然性は低いことを理解することができ、また、本件発明の詳細な説明(段落【0236】?【0237】)には、オープンリーディングフレーム以外の領域を、修飾ヌクレオチドで構成することが記載されているが、当業者であれば、本件発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識から、ポリペプチド発現における1-メチルーシュードウリジンの効果を損なわない範囲内で、オープンリーディングフレーム以外の領域を構成するヌクレオチドを適宜定めることができるから、本件発明1?7について、発明の詳細な説明が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえ、また、本件発明1?7は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
したがって、本件発明の詳細な説明の記載は、理由アにより特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできないし、また、本件特許請求の範囲の記載は、理由アにより特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。

イ 理由イについて
本件発明の詳細な説明の記載には、哺乳類細胞として、「細胞は、哺乳類細胞、細菌性細胞、植物、微生物、藻類および真菌細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、細胞は、ヒト、マウス、ラット、ヤギ、ウマ、ウサギ、ハムスター、またはウシ細胞等であるが、これらに限定されない、哺乳類細胞である。さらなる実施形態において、細胞は、HeLa、NS0、SP2/0、KEK 293T、Vero、Caco、Caco-2、MDCK、COS-1、COS-7、K562、ジャーカット、CHO-K1、DG44、CHOK1SV、CHO-S、Huvec、CV-1、Huh-7、NIH3T3、HEK293、293、A549、HepG2、IMR-90、MCF-7、U-20S、Per.C6、SF9、SF21、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられるが、これらに限定されない株化細胞に由来し得る。・・・・・・本発明の方法によってトランスフェクトされる一次および二次細胞を多様な組織から得ることができ、培養下で維持され得るすべての細胞型を含むが、これらに限定されない。例えば、本発明の方法によってトランスフェクトされ得る一次および二次細胞には、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞(例えば、乳腺上皮細胞、腸上皮細胞)、内皮細胞、グリア細胞、神経細胞、血液の形成要素(例えば、リンパ球、骨髄細胞)、筋肉細胞、およびこれらの体細胞型の前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。また、一次細胞を同種または別の種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、トリ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)の供与体から得ることもできる。」と記載されている(【0826】?【0828】)ように、哺乳類細胞として様々な細胞が挙げられることが記載されており、また、1-メチルーシュードウリジンを含むポリヌクレオチドを導入した哺乳類細胞として、末梢血単核細胞(実施例69)、HeLa細胞(実施例69、81、90、119、120)、マウス(実施例70、91、105)、等の複数の哺乳類細胞が具体的に記載されているから、本件発明の詳細な説明の記載は、具体的に記載されている哺乳類細胞以外の哺乳類細胞についても、同様の結果が得られることを当業者が容易に理解することができる程度に記載されているといえるので、本件発明1?7について、発明の詳細な説明が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえ、また、本件発明1?7は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
したがって、本件発明の詳細な説明の記載は、理由イにより特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできないし、また、本件特許請求の範囲の記載は、理由イにより特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由で通知した理由及び特許異議申立の理由によっては、本件特許発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の脂質ナノ粒子を含む組成物であって、前記複数の脂質ナノ粒子はポリヌクレオチドを封入しており、前記ポリヌクレオチドは、
(a)1-メチル-シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンからなり、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームと、
(b)コザック配列を含む5’UTRと、
(c)少なくとも1つの5’キャップ構造と、
(d)3’UTRと、
(e)結合ヌクレオシドの3’尾部配列とを含み、
哺乳類細胞に投与されると、前記ポリヌクレオチドは、シュードウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、コードされたポリペプチドの発現を増加させる組成物。
【請求項2】
前記複数の脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質、PEG化脂質、コレステロール、およびリン脂質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カチオン性脂質は、DLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200、DLin-MC3-DMA、DODMA、DSDMA、またはDLenDMAである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記複数の脂質ナノ粒子は、80nm?160nmの平均粒径、0.02?0.2の平均PDI、および10?20の平均脂質:ポリヌクレオチド比(重量/重量)を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記結合ヌクレオシドの3’尾部配列は、160個のヌクレオチドのポリA尾部およびポリA?G四重項のうちから選択される、請求項1?4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの5’末端キャップが、キャップ0、キャップ1、ARCA、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、および2-アジド-グアノシンのうちから選択される、請求項1?5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
末梢血単核細胞に投与されると、前記ポリヌクレオチドは、ウリジン、シチジン、アデノシンおよびグアノシンを含むヌクレオチドからなるオープンリーディングフレームを有する対応するポリヌクレオチドに対して、より低いレベルの検出可能なIFN-αをもたらす、請求項1?6のいずれか一項に記載の組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-10 
出願番号 特願2017-17429(P2017-17429)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C12N)
P 1 651・ 113- YAA (C12N)
P 1 651・ 537- YAA (C12N)
P 1 651・ 121- YAA (C12N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川合 理恵  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 長井 啓子
高堀 栄二
登録日 2019-07-12 
登録番号 特許第6553104号(P6553104)
権利者 モデルナティエックス インコーポレイテッド
発明の名称 タンパク質の産生のための修飾ポリヌクレオチド  
代理人 中村 美樹  
代理人 本田 淳  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 中村 美樹  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
代理人 本田 淳  

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