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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1372710
異議申立番号 異議2019-700898  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-14 
確定日 2021-03-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6511615号発明「レジンプレミックスおよびポリウレタンフォーム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6511615号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6511615号の請求項1ないし2に係る特許に対する申立を却下する。 特許第6511615号の請求項3ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6511615号(請求項の数4。以下、「本件特許」という。)は、平成26年11月28日を出願日とする特許出願(特願2014-242325号)に係るものであって、平成31年4月19日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和1年5月15日である。)。
その後、令和1年11月14日に、本件特許の全請求項(請求項1?4)に係る特許に対して、特許異議申立人である堀江玲子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
手続の経緯は以下のとおりである。

(1)特許異議申立の経緯
手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年11月14日 特許異議申立書
令和2年 1月17日付け 取消理由通知書
同年 3月11日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 3月23日 通知書(申立人あて)
同年 4月22日 意見書(申立人)
同年 7月22日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 9月25日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年10月19日 通知書(申立人あて)
同年11月20日 意見書(申立人)

(2)証拠方法
ア 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
(ア)特許異議申立書に添付した証拠
・甲第1号証:特開2014-118424号公報
(イ)令和2年4月22日に提出した意見書に添付した証拠
・甲第2号証:特開2014-101426号公報
・甲第3号証:特開2012-131897号公報
(ウ)令和2年11月20日に提出した意見書に添付した証拠
・甲第4号証:特開2013-119607号公報
(以下、「甲第1号証」?「甲第4号証」を「甲1」?「甲4」という。)

第2 訂正の適否についての判断
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和2年9月25日に訂正請求書を提出し、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1?4について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。また、本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件明細書等」という。)。
なお、令和2年3月11日提出の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項3に「請求項1または2に記載のポリオール組成物と、
触媒と、
発泡剤と
を含むことを特徴とする、レジンプレミックス。」とあるのを、
「ポリオール組成物と、
触媒と、
発泡剤と
を含み、
前記ポリオール組成物は、
ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオール成分と、
難燃剤と
を含み、
前記難燃剤が、下記式(1)で示される化合物であり、
前記難燃剤の含有量が、400ppm以上1500ppm以下であることを特徴とする、レジンプレミックス。
【化1】

(式中、R^(1)は、互いに同一または相異なって、水素原子または炭素数1?20の炭化水素基を示し、X^(-)は、アニオンを示す。ただし、R^(1)同士が、互いに結合して環構造を形成してもよい。)」に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の明細書の発明の名称に「ポリオール組成物、レジンプレミックスおよびポリウレタンフォーム」とあるのを、「レジンプレミックスおよびポリウレタンフォーム」に訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の明細書の発明の詳細な説明の段落【0188】に「実施例13?実施例18」と記載されているのを、「実施例13?15、参考例16、実施例17?実施例18」に訂正し、同【0195】に記載されている表2中に「実施例16」と記載されているのを、「参考例16」に訂正し、及び同【0201】に「実施例13?実施例16」と記載されているのを、「実施例13?15、参考例16」に訂正する。

(6)明細書の訂正に係る請求項について
訂正事項4及び5は、請求項1及び2に関する訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、訂正事項4及び5は請求項1?4について請求されたものであることは明らかであり、請求項1?4はいずれも本件訂正の請求の対象となっているから、訂正事項4及び5に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

(7)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1について、請求項2?4はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、明細書に係る訂正事項4及び5は、請求項1?4について請求されたものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

2 判断
(1)訂正事項1及び2について
訂正事項1及び2による訂正は、請求項1及び2を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲の拡張・変更に該当せず、さらに、新規事項の追加に当たらないことは明らかである。

(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3における「請求項1または2に記載のポリオール組成物」と記載されているように請求項1または2の記載を引用する記載を請求項1または2の記載を引用しないものとする訂正と、訂正前の請求項1における難燃剤の含有量が「400ppm以上20000ppm」であった範囲を、「400ppm以上1500ppm以下」に限定する訂正である。
これらの訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

イ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加
訂正事項3による訂正は、上記アで述べたように、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。また、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の段落【0086】には、「ポリオール組成物における難燃剤の含有量は、質量基準として、・・・さらに好ましくは、1500ppm以下」と記載されているから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であるといえる。

(3)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4による訂正は、訂正事項1及び2の訂正により、請求項1及び2に記載されたポリオール組成物が削除されたため、発明の名称からポリオール組成物を削除する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする。

イ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加
訂正事項4による訂正が、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加に当たらないことは明らかである。

(4)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5による訂正は、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の段落【0195】の表2において、ポリオール組成物中の難燃剤の量が2693ppmである「実施例16」が、特許請求の範囲の訂正事項3による減縮の訂正により発明の実施例ではなくなったため、「参考例16」と訂正し、これに伴い、同【0188】の「実施例13?実施例18」という記載を、「実施例13?15、参考例16、実施例17?実施例18」に訂正し、及び同【0201】の「実施例13?実施例16」という記載を、「実施例13?15、参考例16」に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする。

イ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加
訂正事項5による訂正は、訂正事項3の訂正に伴う訂正であるから、上記(2)イで述べたとおり、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であるといえる。

(5)訂正事項のまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1?5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3及び4号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第3 特許請求の範囲の記載
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6511615号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?4に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1?4に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
ポリオール組成物と、
触媒と、
発泡剤と
を含み、
前記ポリオール組成物は、
ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオール成分と、
難燃剤と
を含み、
前記難燃剤が、下記式(1)で示される化合物であり、
前記難燃剤の含有量が、400ppm以上1500ppm以下であることを特徴とする、レジンプレミックス。
【化1】

(式中、R^(1)は、互いに同一または相異なって、水素原子または炭素数1?20の炭化水素基を示し、X^(-)は、アニオンを示す。ただし、R^(1)同士が、互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項4】
請求項3に記載のレジンプレミックスと、
ポリイソシアネート成分と
を反応させることにより得られることを特徴とする、ポリウレタンフォーム。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)令和2年7月22日付け取消理由通知(決定の予告)
ア 取消理由1(新規性)
令和2年3月11日にした訂正請求により訂正された請求項1?4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、令和2年3月11日にした訂正請求により訂正された請求項1?4に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲2:特開2014-101426号公報
甲3:特開2012-131897号公報

(2)令和2年1月17日付け取消理由通知
ア 取消理由2(新規性)(令和2年1月17日付け取消理由通知では、「取消理由1」と記載したが、ここでは「取消理由2」と記載する。)
本件訂正前の請求項1?4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?4に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

甲1:特開2014-118424号公報

2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書でした申立の理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1?4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?4に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(取消理由2と同旨)

(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1?4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?4に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

甲1:特開2014-118424号公報

(3)申立理由3(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?4の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、概略、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1?4に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

請求項1には、難燃剤として用いられている化合物が式(1)で記載され、そのうち、「X^(-)は、アニオンを示す」と記載されているところ、発明の詳細な説明の段落【0076】には、「式(1)において、X^(-)は、アニオンを示し、好ましくは、ヒドロキシアニオン(水酸化物イオン)、アルコキシアニオン(アルコキシド)、カルボキシアニオン、スルホニルアニオン、炭酸水素アニオン、ハロゲン化物イオンを示す。」と記載されているが、実施例で効果が確認されているのは塩化物イオン(Cl^(-))のみである。
一般にアニオンの種類により、化合物の安定性や塩基性に影響することは周知であるから、請求項1に記載された式(1)において、本件発明の課題が解決できるといえるものではない。

第5 当審の判断
当審は、請求項1及び2に係る特許については、特許異議申立を却下することとし、また、当審が通知した取消理由1及び2及び申立人がした申立理由1?3によっては、いずれも、本件発明3及び4に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 申立ての却下
上記第2及び第3で示したとおり、請求項1及び2は、本件訂正により適法に削除されており、請求項1及び2に対する異議申立ては、その対象を欠く不適法なものであって、その治癒ができないものであるから、特許法第120条の8で準用する特許法第135条の規定により請求項1及び2についての申立てを却下する。

2 取消理由について
(1)取消理由1について
取消理由1のうち甲3に記載された発明であると判断したのは、令和2年3月11日にした訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明である。そして、上記「第2」で述べたとおり、請求項1及び2は削除されたから、取消理由1のうち甲3を引用した場合はその理由がなくなったことは明らかである。
したがって、ここでは取消理由1のうち甲2を引用した請求項3及び4に係る理由について述べる。

ア 甲号証の記載事項について
(ア)甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記(A)工程と(B)工程とを経てなることを特徴とするポリアルキレングリコールの製造方法。
(A)工程;下記一般式(1)で示されるイミノホスファゼニウム塩1モルに対して活性水素化合物0.2?10000モルを混合し、減圧下にて脱水を行うことにより活性種を生成する工程。
【化1】

(上記一般式(1)中、R_(1)及びR_(2)は、各々独立して、水素原子又は炭素数1?20の炭化水素基を表す。なお、R_(1)とR_(2)が互いに結合して環構造を形成していても良いし、R_(1)同士又はR_(2)同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。X^(-)はヒドロキシアニオン、炭素数1?4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2?5のアルキルカルボキシアニオン、または炭酸水素アニオンを表す。)
(B)工程;(A)工程により得られた活性種1モルに対して、アルキレンオキシド20?20000モルを用い、該活性種を構成するイミノホスファゼニウムイオン1モルに対して水分量が4.0モル以下となる反応条件下でアルキレンオキシドの開環重合反応を行う工程。
【請求項2】
該(A)工程を減圧度0.1kPa?6.65kPa、温度70?150℃の条件下にて、該活性種を構成するイミノホスファゼニウムイオン1モルに対して水分量が2.5モル以下となるまで継続することを特徴とする請求項1に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項3】
該(B)工程におけるアルキレンオキシドが、水分量が10?90ppmのアルキレンオキシドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。」

(2b)「【0007】
そこで、本発明は、イミノホスファゼニウム塩と活性水素化合物を減圧下で脱水して得られる活性種を用いてポリアルキレングリコールを製造する際に、高い反応活性で、効率的にポリアルキングリコールを製造する方法を提供することを効果・目的とするものである。」

(2c)「【0026】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法は、(B)工程として、(A)工程により得られた活性種1モルに対して、アルキレンオキシド20?20000モルを用い、該活性種を構成するイミノホスファゼニウムイオン1モルに対して水分量が4.0モル以下となる反応条件下でアルキレンオキシドの開環重合反応を行うものである。ここで、水分量が活性種を構成するイミノホスファゼニウムイオン1モルに対して4.0モルを越える場合、アルキレンオキシドの開環重合反応時に活性種の失活が起こりやすく、生産効率に劣るものとなる。
・・・
【0029】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法においては、少なくとも該(A)工程と該(B)工程とを経てなるものであれば、回収工程等の付加的工程を経てなるものであってもよい。」

(2d)「【0030】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法により得られるポリアルキレングリコールは、水酸基価の異なるポリアルキレングリコールとすることが可能であり、得られるポリアルキレングリコールの水酸基価に特に制限は無く、その中でも、5?500mgKOH/gの範囲が好ましく、特に10?170mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0031】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法により得られるポリアルキレングリコールは、ポリウレタン原料、ポリエステル原料、界面活性剤原料、潤滑剤原料等に有用である。特に各種イソシアネート化合物と反応させることにより、断熱材等に使用される硬質フォームや、自動車のシート・クッション、寝具等に使用される軟質フォーム、接着剤、塗料、シーリング材、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーへの展開が期待される。
【発明の効果】
【0032】
接着剤、塗料、シーリング材、エラストマー、床材などのポリウレタン樹脂、或いは硬質、軟質及び半硬質ポリウレタンフォーム用原料、その他界面活性剤、サニタリー製品、潤滑油などの広範な分野において使用することができる有用なポリアルキレングリコールを効率よく製造することが可能となった。」

(2e)「【0032】
・・・
【実施例】
・・・
【0038】
合成例1(テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド(((Me_(2)N)_(2)C=N)_(4)P^(+)・OH^(-))の2-プロパノール溶液の合成)
温度計、滴下ロート、冷却管及びテフロン(登録商標)製撹拌翼を付した2lの4つ口フラスコに窒素雰囲気下で五塩化リン(アルドリッチ製)96g(0.46mol)を採った。以後の操作はすべて窒素雰囲気下で行った。800mlの脱水トルエン(和光純薬製)を加えてスラリー溶液とした。このスラリー溶液を水浴にて15℃に冷却し、内温を20℃とした後、強撹拌下に1,1,3,3-テトラメチルグアニジン345g(2.99mol)を滴下ロートから3時間かけて滴下した。反応液中には多量の白色スラリーが生成していた。滴下終了後、水浴をはずして室温まで昇温し、更にこのスラリー溶液を100℃に昇温した後、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン107g(0.92mol)を1時間かけて滴下した。その後100℃で14時間加熱撹拌して白色のスラリー溶液を得た。80℃まで冷却した後、反応液に250mlのイオン交換水を加え、30分撹拌した。撹拌を止めるとスラリーは全て溶解し、油水分離した。得られた溶液を分液ロートに移し、水相を回収した。水相のNMR測定から、水相中にはハロゲン化イミノホスファゼニウムであるテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムクロリドが97%の収率で生成していた。
【0039】
得られた水相を100mlのジクロロメタンで2回抽出した。水相のNMR測定から、この抽出によりテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムクロリドの99%以上がジクロロメタン相に抽出された。得られたジクロロメタン溶液を100mlの水で水洗した。水洗後の水相及び有機相のNMR測定の結果、ジクロロメタン中にはテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムクロリドが94.6%残存し、2.4%が水相にロスした。この結果、ジクロロメタン溶液530g中に222gのテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムクロリドが溶解していた。
【0040】
このジクロロメタン溶液を温度計、滴下ロート、冷却管及びテフロン(登録商標)製撹拌翼を付した2リットルの四つ口フラスコに移液し、溶解度パラメータが11.5(cal/cm^(3))^(1/2)である2-プロパノール900gを加えた後、常圧下で温度を80℃から100℃に昇温し、ジクロロメタンを除去した。溶液重量の61重量%(905g)の溶媒を除去した結果、ガスクロマトグラフィーによる分析よりジクロロメタンは検出限界以下であり、カールフィシャー水分測定の結果、系中の水分量は1.1wt%であった。
【0041】
この溶液を撹拌しながら内部温度を60℃に放冷した。冷却後、水酸化カリウム32g(テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムクロリドに対して1.1mol当量)を加えて60℃で3時間反応した。3時間後のイオン交換率は99.5%であった。温度を25℃まで冷却し、析出している副生塩を濾過により除去したところ538gの2-プロパノール溶液を得た。この溶液中にはイミノホスファゼニウム塩であるテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドが214g溶解しており、濃度39.8重量%の2-プロパノール溶液を得た。テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドの収率は92.1%であった。
【0042】
^(1)H-NMR測定結果(重溶媒:CDCl_(3),内部標準:テトラメチルシラン):化学シフト 2.83ppm(メチル基)。
【0043】
GC-MS(FAB+)測定結果:m/z=487(テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムカチオンに一致した)。」

(2f)「【0044】
実施例1
(A)工程として、攪拌翼を付した0.2リットルの耐圧ガラス製オートクレーブに、合成例1で得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液0.17g(0.13mmol)、および活性水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)8.7g(8.7mmol)を加え活性種の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温80℃、0.5kPaの減圧下、2時間で溶媒及び副生する水の除去を行った。この際の系内の水分量は190ppmであった(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して1.3モルに相当。)。
【0045】
その後、(B)工程として、系内の内温を90℃とし、含水量60ppmのプロピレンオキシド55g(活性種1モルに対して1.5モルに相当。)を反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、9時間、プロピレンオキシドの開環重合反応を行った。その際の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して2.8モルであった。
【0046】
次いで、0.5kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行い、無色無臭のポリアルキレングリコール60.9gを得た。プロピレンオキシドの反応量は52gであり、反応活性は740g/(mol・min)と高いものであった。詳細を表1に示す。
【0047】
実施例2
(A)工程における内温80℃、圧力0.5kPa、2時間の代わりに、内温100℃、圧力3kPa、2時間とし、系内の水分量を470ppm(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して1.7モルに相当。)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、無色無臭のポリアルキレングリコール60.8gを得た。その際の(B)工程の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して3.1モルであった。
【0048】
プロピレンオキシドの反応量は52gであり、反応活性は740g/(mol・min)と高いものであった。詳細を表1に示す。
【0049】
実施例3
(A)工程として、攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、合成例1で調製したテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液3.3g(2.6mmol)、および活性水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え活性種の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温90℃とし、0.5kPaの減圧下、2時間で溶媒及び副生水の除去を行った。この際の系内の水分量は190ppmであった(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して0.7モルに相当。)。
【0050】
その後、(B)工程として、系内の内温を90℃とし、水分量50ppmのプロピレンオキシド880g(活性種1モルに対して1.1モルに相当。)を反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、8時間、プロピレンオキシドの開環重合反応を行った。その際の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して1.8モルであった。
【0051】
そして、無色無臭のポリアルキレングリコール1047gを得た。プロピレンオキシドの反応量は870gであり、反応活性は697g/(mol・min)と高いものであった。詳細を表1に示す。
【0052】
実施例4
(A)工程として、攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、合成例1で調製したテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液2.2g(1.7mmol)、および活性水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え活性種の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温90℃とし、1kPaの減圧下、3時間で溶媒及び副生水の除去を行った。この際の系内の水分量は280ppmであった(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して1.6モルに相当。)。
【0053】
その後、(B)工程として、系内の内温を110℃とし、水分量50ppmのプロピレンオキシド880g(活性種1モルに対して1.4モルに相当。)を反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、5.9時間、プロピレンオキシドの開環重合反応を行った。その際の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して3.0モルであった。
【0054】
そして、無色無臭のポリアルキレングリコール1053gを得た。プロピレンオキシドの反応量は878gであり、反応活性は1280g/(mol・min)と高いものであった。詳細を表1に示す。
【0055】
実施例5
(A)工程として、攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、合成例1で調製したテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液1.7g(1.3mmol)、および活性水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え活性種の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とし、0.2kPaの減圧下、2時間で溶媒及び副生水の除去を行った。この時の系内の水分量は93ppmであった(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して0.7モルに相当。)。
【0056】
その後、(B)工程として、系内の内温を130℃とし、水分量50ppmのプロピレンオキシド880g(活性種1モルに対して1.8モルに相当。)を反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、4.8時間、プロピレンオキシドの開環重合反応を行った。その際の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して2.5モルであった。
【0057】
そして、無色無臭のポリアルキレングリコール1054gを得た。プロピレンオキシドの反応量は871gであり、反応活性は2340g/(mol・min)と高いものであった。詳細を表1に示す。
・・・
【0064】
比較例4
(A)工程における脱水後の系内の水分量を400ppm(テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して3.0モルに相当。)とし、(B)工程における反応時間を16時間とした以外は、実施例4と同様の操作を行い、無色無臭のポリアルキレングリコール1044gを得た。
【0065】
(B)工程における反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して4.8モルであった。プロピレンオキシドの反応量は869gであり、反応活性は530g/(mol・min)と低いものであった。詳細を表2に示す。」

イ 甲号証に記載された発明について
(ア)甲2
甲2には、甲2の特許請求の範囲の記載(摘記(2a))並びに実施例1?5及び比較例4の記載(摘記(2e)及び(2f))からみて、以下の発明が記載されているといえる。

「攪拌翼を付した0.2リットルの耐圧ガラス製オートクレーブに、濃度39.8重量%のテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液0.17g(0.13mmol)、および活性水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)8.7g(8.7mmol)を加え活性種の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温80℃、0.5kPaの減圧下、2時間で溶媒及び副生する水の除去を行い、この際の系内の水分量は190ppmであり(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して1.3モルに相当。)、その後、系内の内温を90℃とし、含水量60ppmのプロピレンオキシド55g(活性種1モルに対して1.5モルに相当。)を反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、9時間、プロピレンオキシドの開環重合反応を行い、その際の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して2.8モルであり、次いで、0.5kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行い、プロピレンオキシドの反応量は52gであり、反応活性は740g/(mol・min)である60.9gの無色無臭のポリアルキレングリコール」(以下「甲2発明1-1」という。)

「攪拌翼を付した0.2リットルの耐圧ガラス製オートクレーブに、濃度39.8重量%のテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液0.17g(0.13mmol)、および活性水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)8.7g(8.7mmol)を加え活性種の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温100℃、3kPaの減圧下、2時間で溶媒及び副生する水の除去を行い、この際の系内の水分量は470ppmであり(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して1.7モルに相当。)、その後、系内の内温を90℃とし、含水量60ppmのプロピレンオキシド55g(活性種1モルに対して1.5モルに相当。)を反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、9時間、プロピレンオキシドの開環重合反応を行い、その際の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して3.1モルであり、次いで、0.5kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行い、プロピレンオキシドの反応量は52gであり、反応活性は740g/(mol・min)である60.8gの無色無臭のポリアルキレングリコール」(以下「甲2発明1-2」という。)

「攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、濃度39.8重量%のテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液3.3g(2.6mmol)、および活性水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え活性種の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温90℃とし、0.5kPaの減圧下、2時間で溶媒及び副生水の除去を行い、この際の系内の水分量は190ppmであり(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して0.7モルに相当。)、その後、系内の内温を90℃とし、水分量50ppmのプロピレンオキシド880g(活性種1モルに対して1.1モルに相当。)を反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、8時間、プロピレンオキシドの開環重合反応を行い、その際の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して1.8モルであり、プロピレンオキシドの反応量は870gであり、反応活性は697g/(mol・min)である1047gの無色無臭のポリアルキレングリコール」(以下「甲2発明1-3」という。)

「攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、濃度39.8重量%のテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液2.2g(1.7mmol)、および活性水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え活性種の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温90℃とし、1kPaの減圧下、3時間で溶媒及び副生水の除去を行い、この際の系内の水分量は280ppmであり(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して1.6モルに相当。)、その後、系内の内温を110℃とし、水分量50ppmのプロピレンオキシド880g(活性種1モルに対して1.4モルに相当。)を反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、5.9時間、プロピレンオキシドの開環重合反応を行い、その際の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して3.0モルであり、プロピレンオキシドの反応量は878gであり、反応活性は1280g/(mol・min)である1053gの無色無臭のポリアルキレングリコール」(以下「甲2発明1-4」という。)

「攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、濃度39.8重量%のテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液1.7g(1.3mmol)、および活性水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え活性種の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とし、0.2kPaの減圧下、2時間で溶媒及び副生水の除去を行い、この時の系内の水分量は93ppmであり(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して0.7モルに相当。)、その後、系内の内温を130℃とし、水分量50ppmのプロピレンオキシド880g(活性種1モルに対して1.8モルに相当。)を反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、4.8時間、プロピレンオキシドの開環重合反応を行い、その際の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して2.5モルであり、プロピレンオキシドの反応量は871gであり、反応活性は2340g/(mol・min)である1054gの無色無臭のポリアルキレングリコール」(以下「甲2発明1-5」という。)

「攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、濃度39.8重量%のテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド溶液2.2g(1.7mmol)、および活性水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え活性種の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温90℃とし、1kPaの減圧下、3時間で溶媒及び副生水の除去を行い、この際の系内の水分量は400ppmであり(活性種を構成するテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して3.0モルに相当。)、その後、系内の内温を110℃とし、水分量50ppmのプロピレンオキシド880g(活性種1モルに対して1.4モルに相当。)を反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、16時間、プロピレンオキシドの開環重合反応を行い、その際の反応系内の水分量は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムイオン1モルに対して4.8モルであり、プロピレンオキシドの反応量は869gであり、反応活性は530g/(mol・min)である1044gの無色無臭のポリアルキレングリコール」(以下「甲2発明1-6」という。)

また、本件特許明細書等の【0025】によると、特許請求の範囲に記載されたポリアルキレングリコールは、ポリウレタン原料として用いられるものであり、イソシアネート化合物と反応させて硬質または軟質フォームにされるものであるから、甲2には、次の発明が記載されているといえる。

「甲2発明1-1?1-5のポリアルキレングリコールを含むポリウレタン原料」(以下「甲2発明2」という。)

「甲2発明2と各種イソシアネート化合物とを反応させて得られた、硬質フォームまたは軟質フォーム。」(以下「甲2発明3」という。)

ウ 技術常識について
甲2に記載された発明の技術常識が記載されているといえる甲3及び甲4には、以下の事項が記載されている。
(ア)甲3
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記の(A)?(C)工程を経てなることを特徴とするポリアルキレングリコールの製造方法。
(A)工程;下記一般式(1)に示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩と活性水素化合物によりポリアルキレングリコール製造用活性種を調製した後、アルキレンオキシドの重合反応を行い、ポリアルキレングリコール(I)を製造する工程。
【化1】

(ここで、R_(1)、R_(2)は、各々独立して、水素原子又は炭素数1?20の炭化水素基を表す。R_(1)とR_(2)が互いに結合して環構造を形成していても良いし、R_(1)同士又はR_(2)同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。X^(-)は、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、炭素数1?4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2?5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭化水素アニオンを表す。)
(B)工程;(A)工程により製造したポリアルキレングリコール(I)100重量部に対して3?12重量部の水存在下で、該(A)工程において用いた該上記一般式(1)で示されるイミノ含有ホスファゼニウム塩1モルに対して、無機酸及び有機酸から選ばれた少なくとも1種の酸を1.5モルを超え3.5モル以下の割合で混合し、ポリアルキレングリコール(II)とする工程。
(C)工程;(B)工程により得られたポリアルキレングリコール(II)に対して、固体酸:固体塩基=2:1?8:1からなる吸着剤を接触した後、減圧処理により水の除去を行い、その後、イミノ基含有ホスファゼニウム塩及び吸着剤を除去し、イミノ基含有ホスファゼニウム塩の残存量50ppm以下、pH5.5?8.0のポリアルキレングリコールとする工程。」

(3b)「【背景技術】
【0002】
ポリアルキレングリコールは、ポリウレタンや界面活性剤の原料として有用であり、工業的規模で製造されている。その一般的な製造方法としては、水酸化カリウム(以下、KOHと記すこともある。)を触媒として用い多官能の活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加重合し製造する方法が知られており、該製造方法は、付加重合により粗製ポリアルキレングリコールを製造する重合工程と、粗製ポリアルキレングリコールに酸を添加しKOHを中和した後、脱水乾燥して析出する塩をろ過により除去する精製工程からなるものである。
【0003】
しかし、KOH触媒を用いポリアルキレングリコールを製造した場合、ポリアルキレングリコールの分子量の増加とともに末端に不飽和基を持つモノオールが副生することが知られており、該モノオールを多量に含有するポリアルキレングリコールを原料としてポリウレタンを製造した際に、該ポリウレタンは硬度や耐久性が低下するものとなり、その使用が制限されている。
【0004】
そこで、高分子量かつモノオール量の少ないポリアルキレングリコールを製造する方法が種々検討され、特定のホスファゼン化合物を触媒に用いる方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。このホスファゼン化合物を触媒に用いると、ポリアルキレングリコールの生産性も大幅に向上するが、ポリウレタン原料として使用するには、触媒の除去が必須である。触媒除去の方法としては、1)粗ポリアルキレングリコールに酸化合物を添加して触媒を中和後、吸着剤で処理する方法、2)粗ポリアルキレングリコールを水洗後、水相を分離する方法、3)粗ポリアルキレングリコールをイオン交換樹脂と接触させる方法、等が提案され(例えば特許文献2参照。)、なかでも、大型分子であるホスファゼン化合物の除去には、特定の細孔径と比表面積を持つ固体酸を吸着剤として使用することが提案されている(例えば特許文献3参照。)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述したように、触媒の種類やサイズによって触媒除去方法は異なり、特許文献4には、得られるポリアルキレングリコールから触媒を除去する方法について詳細な記載はなされておらず、特にポリアルキレングリコールと高い親和性を持つイミノ基含有ホスファゼニウム塩を除去するには大量の吸着剤を必要とするため、簡便で効率のよく精製されたポリアルキレングリコールを製造する方法が望まれている。
【0008】
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、イミノ基含有ホスファゼニウム塩を用いてポリアルキレングリコールを製造するに際し、粗製ポリアルキレングリコールを特定の条件下で酸と接触した後に、特定の吸着剤で処理、回収することにより、活性種残存量が低く、ウレタン化反応性に優れるポリアルキレングリコールが簡便で効率よく製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。」

(3c)「【0045】
そして、本発明の製造方法によれば、ポリイソシアネート化合物と反応しイソシアネート基末端プレポリマーを製造する際に悪影響を及ぼすイミノ基含有ホスファゼニウム塩の残存量が50ppm以下、好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下のポリアルキレングリコールを効率的に製造することが可能となる。」

(イ)甲4
(4a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の(A)?(E)工程を経てなることを特徴とするポリアルキレングリコールの製造法。
(A)工程;下記一般式(1)に示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩と活性水素化合物によりポリアルキレングリコール製造用活性種を調製した後、アルキレンオキシドの重合反応を行う工程。
【化1】

(ここで、R_(1)、R_(2)は、各々独立して、水素原子又は炭素数1?20の炭化水素基を表し、また、R_(1)とR_(2)が互いに結合して環構造を形成していても良いし、R_(1)同士又はR_(2)同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。X^(-)は、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2?5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンを表す。)
(B)工程;(A)工程により得られたポリアルキレングリコール100重量部に対して、0.5?12重量部の水性媒体と、(A)工程で用いたイミノ含有ホスファゼニウム塩1モルに対して0.5モル以上3.5モル未満の2価以上の無機酸とを混合する工程。
(C)工程;(B)工程で得られた混合物から水性媒体を除去し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を析出し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を分離、回収する工程。
(D)工程;(C)工程で回収されたイミノ基含有ホスファゼニウム化合物100重量部に対して10?100000重量部のアルコール溶媒及び、(B)工程で用いた2価以上の無機酸1モルに対して0.5モル以上3.5モル未満に相当する塩基性化合物を混合し、生成する析出物を除去し、イミノ基含有ホスファゼニウム塩を回収する工程。
(E)工程;(D)工程で精製されたイミノ基含有ホスファゼニウム塩を(A)工程におけるイミノ基含有ホスファゼニウム塩として循環する工程。」

(4b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、イミノ基含有ホスファゼニウム塩と活性水素含有化合物よりなる活性種を用いるポリアルキレングリコールの製造法に関するものであり、さらに詳細には、イミノ基含有ホスファゼニウム塩よりなるポリアルキレングリコール製造用活性種を用いアルキレンオキシドの重合反応の後、2価以上の無機酸で処理を行うことにより、ポリアルキレングリコール重合活性種及び/又はその原材料であるイミノ基含有ホスファゼニウム塩を効率よく分離・回収する方法、さらに回収されたイミノ基含有ホスファゼニウム化合物を再利用することにより効率よくポリアルキレングリコールを製造する方法に関するものである。」

(4c)「【背景技術】
【0002】
ポリアルキレングリコールは、ポリウレタンや界面活性剤の原料として有用であり、工業的規模で製造されている。その一般的な製造方法としては、水酸化カリウム(以下、KOHと記すこともある。)を触媒として用い多官能の活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加重合する方法が知られており、該製造方法は、付加重合により粗製ポリアルキレングリコールを製造する重合工程と、粗製ポリアルキレングリコールに酸を添加しKOHを中和した後、脱水乾燥して析出する塩をろ過により除去する精製工程からなるものである。
【0003】
しかし、KOH触媒を用いポリアルキレングリコールを製造した場合、ポリアルキレングリコールの分子量の増加とともに末端に不飽和基を持つモノオールが副生することが知られており、該モノオールを多量に含有するポリアルキレングリコールをポリウレタン原料として用いた場合、得られるポリウレタンは、硬度や耐久性が低いものとなり、その使用は制限されたものとなる。
【0004】
そこで、高分子量かつモノオール量の少ないポリアルキレングリコールを製造する方法が種々検討され、特定のホスファゼン化合物を触媒に用いる方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。そして、このホスファゼン化合物を触媒として用い、ポリアルキレングリコールを生産した場合、その生産性は大幅に向上する反面、このホスファゼン化合物は高価であることから、反応系より触媒の除去・回収を行うことが必要であった。
【0005】
その際の触媒除去の方法としては、1)粗ポリアルキレングリコールに酸化合物を添加して触媒を中和後、吸着剤で処理する方法、2)粗ポリアルキレングリコールを水洗後、水相を分離する方法、3)粗ポリアルキレングリコールに水を加えた後、イオン交換樹脂と接触させる方法、等(例えば特許文献2参照。)が提案され、なかでも、大型分子であるホスファゼン化合物の除去には、特定の細孔径と比表面積を持つ固体酸を吸着剤として使用すること(例えば特許文献3参照。)、が提案されている。触媒の回収方法としては、粗ポリアルキレングリコールを酸化合物と接触させ、脱水乾燥後析出するホスファゼニウム化合物を分離回収する方法(例えば特許文献4参照。)等が提案されている。」

(4d)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
イミノ基含有ホスファゼニウム塩は塩基性のため、ポリアルキレングリコール中に残存すると、ポリウレタンとした際の成形性や物性に悪影響を及ぼす恐れがある。しかし、特許文献5には、触媒の分離、回収方法については言及されていない。また、イミノ基含有ホスファゼニウム塩は高価である。これらのことから、アルキレンオキシドの重合反応により得た粗製ポリアルキレングリコールからイミノ基含有ホスファゼニウム塩を効率よく分離・回収する方法、さらに回収されたイミノ基含有ホスファゼニウム化合物を再利用して、ポリアルキレングリコールを製造する方法が望まれている。」

(4e)「【0047】
本発明の製造方法により得られたポリアルキレングリコールとしては、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の残存量の低いポリアルキレングリコールとすることが好ましく、そのイミノ基含有ホスファゼニウム化合物の残存量が50ppm以下のものが好ましく、特に20ppm以下、さらに10ppm以下のポリアルキレングリコールとすることが好ましく、その際には、例えば(C)工程の後、任意に活性炭、セルライト、活性白土、ゼオライト、固体酸または固体塩基等による吸着処理、水洗、イオン交換樹脂によるイオン交換などにより残留するイミノ基含有ホスファゼニウム化合物の除去・低減を実施することも可能である。」

(4f)「【実施例】
【0051】
以下に本発明の実施例を示し、本発明の態様を明らかにするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、得られたポリアルキレングリコールは以下に示す方法により評価した。
【0052】
?ポリアルキレングリコールの水酸基価および総不飽和度の測定?
JIS K 1557記載の測定法に準拠し測定した。
【0053】
合成例1(イミノ基含有ホスファゼニウム塩の調製)
?イミノ基含有ホスファゼニウム塩化物塩の合成?
攪拌翼を付した500mlの4つ口フラスコを窒素雰囲気とし、五塩化リン11.5g(55mmol)とトルエン225mlを加え、-20℃で攪拌した。フラスコ内を-20℃に維持したまま、テトラメチルグアニジン65g(550mmol)を滴下し、-20℃で1時間攪拌を継続した。さらに、110℃に昇温し15時間攪拌を行った。得られた白色懸濁液を濾過し、濾物として白色固体を得た。この白色固体をアセトンに溶解し、濾過を行い、無色透明の濾液を得た。得られた濾液を濃縮し、目的とするテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドの粗生成物を白色固体として得た。
【0054】
得られた粗生成物をクロロホルムと水で分液抽出した。クロロホルム相を濃縮し、目的とするテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド25.5g(48.5mmol;収率88%)を白色固体として得た。
【0055】
?イミノ基含有ホスファゼニウム塩の合成?
磁気回転子を備えた300mlのシュレンクフラスコにテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド21g(40mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気下とした。そこへ水酸化カリウム2.2g(40mmol)、エタノール80mlを加え、室温中で1時間撹拌した。反応終了後に得られる白色固体を含む懸濁液を濾紙を付した漏斗を用い、減圧下にて濾過を行った。濾液側に目的とするテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド(一般式(1)におけるR_(1)がメチル基、
R_(2)がメチル基、X^(-)がヒドロキシアニオンに相当するイミノ基含有ホスファゼニウム塩)のエタノール溶液が得られ、濾物側に副生塩である塩化カリウムが得られた。
【0056】
得られたテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド-エタノール溶液にイオン交換水80mlを加え、減圧下溶媒除去を行い、40mlになるまで濃縮し、さらにイオン交換水80mlを加え、減圧下溶媒除去を行い、40mlになるまで濃縮し、イミノ基含有ホスファゼニウム塩水溶液を得た。このイミノ基含有ホスファゼニウム塩の純度は99.6%、水溶液濃度は50重量%であった。
【0057】
実施例1
(A工程)
撹拌翼を備えた2リットルのオートクレーブに、合成例1により得られたイミノ基含有ホスファゼニウム塩水溶液(50重量%;テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド)4.0gおよび活性化水素化合物として3官能性のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え、オートクレーブ内を窒素雰囲気下とし、内温を80℃とし、0.2kPaの減圧下で溶媒及び副生水の除去を行い、ポリアルキレングリコール製造用活性種の調製を行った。
【0058】
その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温90℃を維持しながら8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温90℃を維持しながら6時間開環重合反応を行った。そして0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去を行い、ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールブロック共重合体1200gを得た。
【0059】
(B工程)
窒素雰囲気下、得られたポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールブロック共重合体に対して5重量%に相当するイオン交換水、用いたテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1molに相当するリン酸(3重量%の水溶液の形態)を添加し(その際の水分量はポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して7重量部であった。)、85℃で3時間の中和反応を行い、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物とした。
【0060】
(C工程)
中和反応終了後に、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(酸化防止剤)をポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールブロック共重合体に対して750ppm添加し、昇温及び減圧をしながら脱水を開始し、最終的に120℃、5kPaの条件で3時間減圧脱水操作を行い、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を析出させ、さらに、窒素により減圧から大気圧状態にした。そして、5Aろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、保持粒子7μ)により加圧ろ過を行い、ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールブロック共重合体Aとイミノ基含有ホスファゼニウム化合物の分離・回収を行った。
【0061】
回収したイミノ基含有ホスファゼニウム化合物100重量部に対し、ジエチルエーテル(和光純薬製試薬特級)300重量部を加え洗浄し、乾燥させた。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の回収率は71%と高いものであった。
【0062】
また、得られたポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールブロック共重合体
Aは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.025meq./gを有するものであった。
【0063】
(D工程)
磁気回転子を付した50mlのシュレンクフラスコに、回収したイミノ基含有ホスファゼニウム化合物1.4g(2.4mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ、水酸化ナトリウム0.096g(2.4mmol)、イソプロパノール10mlを加え、室温中で3時間撹拌した。反応終了後に得られる白色固体を含む懸濁溶液が得られた。この懸濁溶液を濾過し、目的とするイミノ基含有ホスファゼニウム塩(一般式(1)におけるR1がメチル基、R2がメチル基、X-がヒドロキシアニオンに相当する塩基性イミノホスファゼニウム塩)と副生塩などの不純物とを分離した。濾液側から得られる生成物を分析した結果、イミノ基含有ホスファゼニウム塩の回収率は96.6%であった。
【0064】
(E工程)
回収したイミノ基含有ホスファゼニウム塩を用いて、アルキレンオキシドの重合を行った。撹拌翼を備えた2リットルのオートクレーブに、回収したイミノ基含有ホスファゼニウム塩水溶液(50重量%;テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド)2.4gおよび活性化水素化合物として3官能性のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価160mgKOH/g)105g(105mmol)を加え、オートクレーブ内を窒素雰囲気下とし、内温を80℃とし、0.2kPaの減圧下で溶媒及び副生水の除去を行い、ポリアルキレングリコール製造用活性種の調製を行った。
【0065】
その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド528gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温90℃を維持しながら開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド126gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温90℃を維持しながら開環重合反応を行った。そして0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去を行い、ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールブロック共重合体750gを得た。得られたポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールブロック共重合体A’は、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./gを有するものであり、回収する前のホスファゼニウム塩を触媒として得られたポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールブロック共重合体Aとほぼ同一の物性である。」

エ 対比・判断
(ア)本件発明3について
a 甲2発明2との対比
甲2発明2は、上記イ(ア)で述べたとおり、「甲2発明1-1?1-5のポリアルキレングリコールを含むポリウレタン原料」である。
まず、甲2発明2のうち、甲2発明1-1を引用した場合について対比する。

(a)甲2発明1-1を引用した甲2発明2について
i 対比
本件発明3の「難燃剤」は「下記式(1)で示される化合物」そのものであるから、甲2発明2が引用する甲2発明1-1の「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」は、本件発明3の「下記式(1)で示される化合物」及び「難燃剤」に相当する。
甲2発明2が引用する甲2発明1-1の「無色無臭のポリアルキレングリコール」は、ポリアルキレン部位を有する多官能のアルコールであることから、本件発明3「ポリオキシアルキレンポリオール及びポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオール成分」に相当する。
甲2発明2が引用する甲2発明1-1の「無色無臭のポリアルキレングリコール」は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド等を用いて製造したポリアルキレングリコールであることからみて、これらの混合物であるから、本件発明3の「ポリオール組成物」に相当する。
甲2発明2の「ポリウレタン原料」は、レジンであるポリウレタンの原料であるから、本件発明3の「レジンプレミックス」に相当する。

そうすると、本件発明3と甲2発明2は、
「ポリオール組成物
を含み、
前記ポリオール組成物は、
ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオール成分と、
難燃剤と
を含み、
前記難燃剤が、下記式(1)で示される化合物である、レジンプレミックス。(式(1)は省略する。)」の点で一致する。

そして、本件発明3と甲2発明2は、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明3は「難燃剤」の含有量が「400ppm以上1500ppm以下である」のに対し、甲2発明2は含有量が明らかでない点

<相違点2>
本件発明3は「触媒と発泡剤」を含むことを特定しているのに対し、甲2発明2は「触媒と発泡剤」を含むかどうかについて不明である点

ii 判断
まず、相違点1である、甲2発明2が引用する甲2発明1-1の「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」の含有量について検討する。
甲2の実施例1には、重合開始剤の調整時に「濃度39.8重量%のテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」を0.17g使用し、その後プロピレンオキシドとエチレンオキシドを供給して開環重合反応を行い、「無色無臭のポリアルキレングリコール」60.9gを得たことが記載されている。
甲2の実施例1において使用する「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」は重合開始剤(触媒)であり、重合反応時に分解するものでないことが当業者に自明である。そして、実施例1において、重合開始剤の調整時に配合した「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」は固体であるから、気体を除去した際に除去されるものではなく、「無色無臭のポリアルキレングリコール」中に残存しているものといえる。
そうすると、甲2発明1-1の無色無臭のポリアルキレングリコール中の「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」の含有量(ppm)を実施例1の使用量に基づき計算すると、1109ppm(0.17×0.398/(0.17+60.9)×1,000,000)となる。

しかしながら、この含有量は、あくまで、ポリオキシプロピレンオキシドを製造したときの生成物中に含まれる「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」の含有量である。

ここで、甲2には、本発明のポリアルキレングリコールの製造方法により得られるポリアルキレングリコールは、フォームが例示されるポリウレタン原料に有用であることが記載されている(摘記(2d))が、製造されたポリアルキレングリコールを、精製等の後処理を行わず、そのままポリウレタン原料に用いることの明示はない。逆に、回収工程等の付加的工程を経てなるものであってもよいことが記載されている(摘記(2c))。

そして、甲2に記載された発明の技術常識であるといえる甲3には、概略、特許請求の範囲に、甲2に記載されたイミノホスファゼニウム塩と同じ触媒を用いたポリアルキレングリコールの製造方法が記載され(摘記(3a))、その背景技術に、水酸化カリウムを触媒として製造したポリアルキレングリコールは精製することが記載され(摘記(3b))、また、ホスファゼン化合物を触媒として製造したポリアルキレングリコールは、ポリウレタン原料として使用するには触媒の除去が必須であることが記載されている(摘記(3b))。
また、同じく甲4には、概略、特許請求の範囲に、甲2に記載されたイミノホスファゼニウム塩と同じ触媒を用いたポリアルキレングリコールの製造方法において、イミノホスファゼン化合物を分離、回収することが記載され(摘記(4a))、その背景技術に、ホスファゼン化合物は高価であるから、反応系より触媒を除去・回収することが必要であることが記載され(摘記(4c))、実施例において、ホスファゼン化合物の回収率は71%であることが記載されているが、ホスファゼン化合物を回収した後のポリアルキレングリコールをそのままポリウレタンの原料に用いることについての明示はない。逆に、触媒を吸着処理すること等によりホスファゼニウム化合物の残存量を50ppm以下とすることが好ましいことが記載されている(摘記(4e))。

以上、甲2の記載や技術常識を勘案すると、当業者であれば、甲2発明1-1のポリアルキレングリコールをそのままポリウレタンの原料に使用するとはいえず、何らかの後工程を経ることにより、ホスファゼニウム化合物の含有量を減少させたポリアルキレングリコールをポリウレタンの原料に使用することが適切であるといえる。

そうすると、甲2発明2であるポリウレタン原料に含まれるポリオキシアルキレングリコールは、甲2発明1-1であるポリアルキレングリコールにテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドが1109ppm含有するものではなく、後工程により含有量を減少させたものであるといえ、その含有量は1109ppmより少ないといえ、400?1500ppmの範囲であるとする理由はない。

そうすると、相違点1は実質的な相違点であり、相違点2について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2発明1-1を引用する甲2発明2ではない。

(b)甲2発明1-2?1-5を引用した甲2発明2について
i 対比
甲2発明1-2?1-6は、「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」を使用し、また、「無色無臭のポリアルキレングリコール」が得られ、さらに、「無色無臭のポリアルキレングリコール」は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド等を用いて製造したポリアルキレングリコールであり、両者は混合物であることは、甲2発明1-1と同じである。
そうすると、本件発明3と甲2発明1-2?1-6を引用した甲2発明2は、上記(a)iで述べた点で一致し、相違点1及び相違点2と同じ点で相違する。(一致点及び相違点の記載は省略する。)

ii 判断
上記(a)iiで述べたように、甲2発明1-2?1-6について、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドの含有量を計算すると、それぞれ、「1111ppm」、「1252ppm」、「830ppm」、「641ppm」及び「838ppm」となるが、上記(a)iiで検討したとおり、甲2発明2であるポリウレタン原料に含まれるポリオキシアルキレングリコールにおけるテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドの含有量は、甲2発明1-2?1-6において計算された配合量ではなく、後工程により含有量を減少させたものであるといえ、その含有量が400?1500ppmの範囲であるとする理由はない。

そうすると、相違点1は実質的な相違点であり、相違点2について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2発明1-2?1-6を引用する甲2発明2ではない。

(c)申立人の主張について
i 申立人の主張
令和2年11月20日に提出した意見書において、申立人は、甲4の記載をみた上で、一般的にアルキレングリコールがポリウレタン原料に用いられる場合にポリウレタン原料中の残存触媒の含有量は400ppm未満に低減されるとは限らない旨を主張している。

ii 申立人の主張の検討
甲4には、概略、特許請求の範囲に、甲2に記載されたイミノホスファゼニウム塩と同じ触媒を用いたポリアルキレングリコールの製造方法において、イミノホスファゼン化合物を分離、回収することが記載され(摘記(4a))、その背景技術に、ホスファゼン化合物は高価であるから、反応系より触媒を除去・回収することが必要であることが記載され(摘記(4c))、実施例において、ホスファゼン化合物の回収率は71%であることが記載されている。令和2年11月20日に提出した意見書の第8頁第5行?第9頁第3行に記載したとおり、甲4の実施例1において回収されなかったイミノホスファゼン化合物の含有量は、560ppmであると計算される。
この含有量について、申立人はポリアルキレングリコール組成物中の残存触媒の含有量というが、この量は、あくまで回収されなかったイミノホスファゼン化合物の含有量であり、アルキレングリコールに含まれる含有量とは直ちにはいえない。仮に、この含有量がポリアルキレングリコール組成物中の残存触媒の含有量であるとしても、上記(a)iiで述べたとおり、甲4には、触媒を吸着処理すること等によりホスファゼニウム化合物の残存量を50ppm以下とすることが好ましいことが記載されており(摘記(4e))、甲3に記載された技術常識を勘案すると、甲4に記載されたポリアルキレングリコールをそのままポリウレタンの原料に使用するとはいえず、何らかの後工程を経ることにより、ホスファゼニウム化合物の含有量を減少させたポリアルキレングリコールをポリウレタンの原料に使用することが適切であるといえる。
以上のとおりであるので、申立人の主張は採用できない。

(d)小括
したがって、本件発明3は、甲2に記載された発明ではない。

(イ)本件発明4について
a 甲2発明3との対比
甲2発明3は、「甲2発明2と各種イソシアネート化合物とを反応させて得られた、硬質フォームまたは軟質フォーム」である。
一方、本件発明4は、「本件発明3に記載のレジンプレミックスと、ポリイソシアネートとを反応させることにより得られることを特徴とする、ポリウレタンフォーム」である。
上記(ア)を参照しながら両者を対比すると、甲2発明2であるポリウレタン原料は、本件発明3のレジンプレミックスに対応するところ、両者が同じものではないことは、上記(ア)で述べたとおりである。
したがって、その余について検討するまでもなく、本件発明4は甲2発明3ではない。

よって、本件発明4は、甲2に記載された発明ではない。

オ 取消理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1によっては、本件発明3及び4に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由2、申立理由1及び2について
取消理由2、申立理由1及び2は、甲1を主引用例とする理由であるので、まとめて検討する。

ア 各甲号証の記載事項について
(ア)甲1
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】
下記一般式(1)で示されるイミノホスファゼニウム炭酸水素塩と活性水素化合物を混合し重合開始剤を調製した後、アルキレンオキシドを添加し、アルキレンオキシドの開環重合反応を行うことを特徴とするポリアルキレングリコールの製造方法。
【化1】

(式中、R_(1),R_(2)は各々独立して炭素数1?10のアルキル基、無置換の若しくは置換基を有する炭素数6?10のフェニル基又はアルキルフェニル基を表し、R_(1),R_(2)又はR_(2)同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。)
・・・
【請求項3】
活性水素化合物が、ポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項4】
アルキレンオキシドが、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドであることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のポリアルキレングリコールの製造方法。」

(1b)「【0007】
そこで、本発明は、イミノホスファゼニウム炭酸水素塩と活性水素化合物を混合して得られる重合開始剤を用いてポリアルキレングリコールを製造することにより、高い反応活性で、効率的にポリアルキングリコールを製造する方法を提供することを効果・目的とするものである。」

(1c)「【0018】
また、該重合開始剤を調製する際に用いられる活性水素化合物としては、例えばヒドロキシ化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、チオール化合物等を挙げることができ、より具体的には、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュークローズ、グルコース等のヒドロキシ化合物;エチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン等のアミン化合物;安息香酸、アジピン酸等のカルボン酸化合物;2-ナフトール、ビスフェノール等のフェノール化合物;エタンジチオール、ブタンジチオール等のチオール化合物等を挙げることができる。また、水酸基を有するポリエーテルポリオールを用いることも可能であり、例えばポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールグリセリンエーテル等を挙げることができ、この際のポリエーテルポリオールの分子量に特に制限はなく、その中でも低粘度で流動性に優れる分子量200?3000のポリエーテルポリオールが好ましい。また、これら活性水素化合物は単独でも数種類を混合して用いても良い。」

(1d)「【0025】
本発明により得られるポリアルキレングリコールは、ポリウレタン原料、ポリエステル原料、界面活性剤原料、潤滑剤原料等に有用である。特に各種イソシアネート化合物と反応させることにより、断熱材等に使用される硬質フォームや、自動車のシート・クッション、寝具等に使用される軟質フォーム、接着剤、塗料、シーリング材、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーへの展開が期待される。」

(1e)「【0026】
接着剤、塗料、シーリング材、エラストマー、床材などのポリウレタン樹脂、或いは硬質、軟質及び半硬質ポリウレタンフォーム用原料、その他界面活性剤、サニタリー製品、潤滑油などの広範な分野において使用することができる有用なポリアルキレングリコールを効率よく製造することが可能となった。
【実施例】
【0027】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
・・・
【0033】
合成例1(テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドの合成)
温度計、滴下ロート、冷却管及び磁気回転子を付した500mlの4つ口フラスコに五塩化リン24.06g(120mmol)を採り、これに200mlの脱水トルエン(和光純薬社製)を加えてスラリー溶液とした。このスラリー溶液をドライアイス-アセトンにて-30℃に冷却したクーリングバスにつけて内温を-30℃とした後、強撹拌下に1,1,3,3-テトラメチルグアニジン133.2g(1.16mol)を滴下ロートから3時間かけて滴下した。そのまま-30℃で1時間撹拌した後、クーリングバスをはずして室温までゆっくり昇温した。更にこのスラリー溶液を100℃で10時間加熱して白色のスラリー溶液を得た。室温まで冷却した後、スラリーを濾別し、濾過残渣をアセトンで洗浄した。アセトン溶液を濃縮後、クロロホルムと水を用いて抽出を行い、クロロホルム相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後クロロホルムを除去してテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド:((Me_(2)N)_(2)C=N)_(4)P^(+ )Cl^(-)を白色粉体として47.4g得た。収率は75.6%であった。
【0034】
得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドは、^(1)H-NMR、GC-MS、元素分析により同定した。
【0035】
^( 1)H-NMR(重溶媒:CDCl_(3),内部標準:テトラメチルシラン):化学シフト:2.83ppm(ホスファゼニウム塩由来のメチル基)。
【0036】
GC-MS(FAB+)測定結果:m/z=487(テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムカチオンの分子量に一致。)。
【0037】
合成例2(テトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウムクロリドの合成)温度計、滴下ロート、冷却管及び磁気回転子を付した200mlの4つ口フラスコに五塩化リン4.6g(22mmol)を採り、これに60mlの脱水トルエン(和光純薬社製)を加えてスラリー溶液とした。このスラリー溶液をドライアイス-アセトンにて-30℃に冷却したクーリングバスにつけて内温を-30℃とした後、強撹拌下に1,3-ジメチルイミダゾリジンイミン25g(220mmol)を滴下ロートから1時間かけて滴下した。そのまま-30℃で1時間撹拌した後、クーリングバスをはずして室温までゆっくり昇温した。更にこのスラリー溶液を100℃で10時間加熱して白色のスラリー溶液を得た。室温まで冷却した後、スラリーを濾別し、濾過残渣をアセトンで洗浄した。アセトン溶液を濃縮後、ジクロロメタンと水を用いて抽出を行い、ジクロロメタン相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後ジクロロメタンを除去してテトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウムクロリドを白色粉体として9.4g得た。収率は83%であった。
【0038】
^( 1)H-NMR測定結果(重溶媒:CDCl_(3),内部標準:テトラメチルシラン):化学シフト:2.91ppm(24H,メチル基)、3.39ppm(16H,メチレン基)。
【0039】
GC-MS(FAB+)測定結果:m/z=479(テトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウムカチオンに一致した)。
【0040】
合成例3(テトラキス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウムクロリドの合成)温度計、滴下ロート、冷却管及び磁気回転子を付した200mlの4つ口フラスコに五塩化リン4.6g(22mmol)を採り、これに50mlの脱水トルエン(和光純薬社製)を加えてスラリー溶液とした。このスラリー溶液をドライアイス-アセトンにて-30℃に冷却したクーリングバスにつけて内温を-30℃とした後、強撹拌下に1,3-ジイソプロピルイミダゾリジンイミン37g(220mmol)を滴下ロートから1時間かけて滴下した。そのまま-30℃で1時間撹拌した後、クーリングバスをはずして室温までゆっくり昇温した。更にこのスラリー溶液を100℃で10時間加熱して白色のスラリー溶液を得た。室温まで冷却した後、スラリーを濾別し、濾過残渣をアセトンで洗浄した。アセトン溶液を濃縮後、クロロホルムと水を用いて抽出を行い、クロロホルム相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後クロロホルムを除去してテトラキス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウムクロリドを白色粉体として11.0g得た。収率は68%であった。
【0041】
^( 1)H-NMR測定結果(重溶媒:CDCl_(3),内部標準:テトラメチルシラン):化学シフト:1.04ppm(48H,d,メチル),3.28ppm(16H,s,メチレン),4.46ppm(m,8H,メチン)。
【0042】
GC-MS(FAB+)測定結果:m/z=704(テトラキス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウムカチオンに一致した)。
【0043】
合成例4(炭酸水素イオン置換イオン交換樹脂の調製)
イオン交換樹脂(オルガノ(株)製、(商品名)アンバーライトIRA-400);Cl型)100gをカラムに充填し、1mol/lの炭酸水素ナトリウム水溶液300mlを通液して塩素イオンを炭酸水素イオンに置換した。その後、更にイオン交換水200mlを通液して炭酸水素ナトリウム水溶液をイオン交換水で置換し、炭酸水素イオン置換イオン交換樹脂を調製し、該炭酸水素イオン置換イオン交換樹脂を充填したカラム充填物を得た。
【0044】
合成例5(炭酸水素イオン置換イオン交換樹脂の調製)
合成例4と同様の操作を行った後、濾過を行い炭酸水素イオン置換イオン交換樹脂110gを調製した。
【0045】
合成例6(テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドの合成)
磁気回転子を付した300mlのシュレンクフラスコに、合成例1で得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド21g(40mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ水酸化カリウム2.2g(40mmol)、イソプロパノール80mlを加え、室温中で3時間攪拌した。反応終了後に得られる白色固体を含む懸濁溶液を、濾紙を付した漏斗を用い、減圧下にて濾過を行った。濾液側に目的とするテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドのイソプロパノール溶液が得られ、濾物側に副生塩である塩化カリウムが得られた。得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドのイソプロパノール溶液を減圧下濃縮し、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドを得た。このテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドの純度を^(1)H-NMRにより分析した結果、99%以上であった。
【0046】
調製例1
合成例1で得たテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド10.44g(20mmol)を100mlのイオン交換水に溶解した水溶液(0.2mol/l)を調製した。そして、合成例4で調製した炭酸水素イオン置換イオン交換樹脂を充填したカラム充填物に25℃で30分かけて通液し、更に200mlのイオン交換水を60分(0.2l/h)かけて通液した。通液後に得られた300mlの水溶液を減圧下で濃縮乾固してテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩を白色固体として10.44g(回収率:95.2%)得た。
【0047】
得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩は、^(1)H-NMR、GC-MS、元素分析により同定した。
【0048】
^( 1)H-NMR(重溶媒:CDCl_(3),内部標準:テトラメチルシラン):化学シフト:2.87ppm(ホスファゼニウム塩由来のメチル基)。
【0049】
GC-MS(FAB+)測定結果:m/z=487(テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムカチオンの分子量に一致。)。
【0050】
炭酸水素イオンへのイオン交換率は、イオンクロマトグラフィーにて測定した結果、99%であった。
【0051】
調製例2
合成例1で得たテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド10.44g(20mmol)を100mlのイオン交換水に溶解した水溶液(0.2mol/l)を調製した。そして、合成例4で調製した炭酸水素イオン置換イオン交換樹脂を充填したカラム充填物に25℃で3分かけて通液し、更に200mlのイオン交換水を6分(2l/h)かけて通液した。得られた300mlの水溶液を減圧下で濃縮乾固してテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩を白色固体として10.02g(回収率:91.6%)得た。
【0052】
得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩のイオン交換率は、イオンクロマトグラフィーを用いて測定した結果、98%であった。
【0053】
調製例3
合成例1で得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド10.44g(20mmol)を200mlのイオン交換水に溶解した水溶液(0.1mol/l)を調製し、合成例5で得た炭酸水素イオン置換イオン交換樹脂110gと混合した後、1時間ゆっくり撹拌してイオン交換を行った。得られた混合物をろ過後、濾液を減圧下で濃縮乾固することにより、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩を白色固体として10.41g(回収率:95%)得た。
【0054】
得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩のイオン交換率は、イオンクロマトグラフィーを用いて測定した結果、99%であった。
【0055】
調製例4
合成例2で得られたテトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウムクロリド5.14g(10mmol)を100mlのイオン交換水に溶解した水溶液(0.1mol/l)を調製した。そして、合成例4で調製した炭酸水素イオン置換イオン交換樹脂を充填したカラム充填物に25℃で30分かけて通液し、更に200mlのイオン交換水を60分(0.2l/h)かけて通液した。得られた300mlの水溶液を減圧下で濃縮乾固してテトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩を白色固体として5.3g(回収率:98.1%)得た。
【0056】
^( 1)H-NMR測定結果(重溶媒:CDCl_(3),内部標準:テトラメチルシラン):化学シフト:2.91ppm(24H,メチル基)、3.39ppm(16H,メチレン基)。
【0057】
GC-MS(FAB+)測定結果:m/z=479(テトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウムカチオンに一致した)。
【0058】
得られたテトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩のイオン交換率は、イオンクロマトグラフィーを用いて測定した結果、99%であった。
【0059】
調製例5
合成例3で得られたテトラキス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウムクロリド7.40g(10mmol)を100mlのイオン交換水に溶解した水溶液(0.1mol/l)を調製した。そして、合成例4で調製した炭酸水素イオン置換イオン交換樹脂を充填したカラム充填物に25℃で30分かけて通液し、更に200mlのイオン交換水を60分(0.2l/h)かけて通液した。得られた300mlの水溶液を減圧下で濃縮乾固してテトラキス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩を白色固体として7.3g(回収率:96.5%)得た。
【0060】
^( 1)H-NMR測定結果(重溶媒:CDCl_(3),内部標準:テトラメチルシラン):化学シフト:1.04ppm(48H,d,メチル),3.28ppm(16H,s,メチレン),4.46ppm(m,8H,メチン)。
【0061】
GC-MS(FAB+)測定結果:m/z=704(テトラキス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウムカチオンに一致した)。
【0062】
得られたテトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩のイオン交換率は、イオンクロマトグラフィーを用いて測定した結果、99%であった。
【0063】
実施例1
攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、調製例1で得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩2.17g(4mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)175g(175mmol)を加え重合開始剤の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った。その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で4時間開環重合反応を行った。そして、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこない、無色無臭のポリアルキレングリコール1250gを得た。
【0064】
得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は23.8mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7100g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。
・・・
【0067】
実施例2
攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、調製例2で得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩2.17g(4mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)175g(175mmol)を加え重合開始剤の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った。その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド194gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で4時間開環重合反応を行った。そして、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこない、無色無臭のポリアルキレングリコール1242gを得た。
【0068】
得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.1mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は15重量%であった。
【0069】
実施例3
攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、調製例3で得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩2.17g(4mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)175g(175mmol)を加え重合開始剤の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った。その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド205gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温98?102℃の範囲で3時間開環重合反応を行った。そして、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこない、無色無臭のポリアルキレングリコール1252gを得た。
【0070】
得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は23.7mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7100g/mol、エチレンオキシド含有量は16重量%であった。
【0071】
実施例4
攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、調製例4で得られたテトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩2.16g(4mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)175g(175mmol)を加え重合開始剤の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った。その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温98?102℃の範囲で3時間開環重合反応を行った。そして、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこない、無色無臭のポリアルキレングリコール1258gを得た。
【0072】
得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は23.6mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7100g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。
【0073】
実施例5
攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、調製例5で得られたテトラキス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩3.02g(4mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)175g(175mmol)を加え重合開始剤の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った。その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温98?102℃の範囲で3時間開環重合反応を行った。そして、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこない、無色無臭のポリアルキレングリコール1245gを得た。
【0074】
得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.0mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。
【0075】
実施例6
攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、調製例1で得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩2.17g(4mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)87g(87mmol)を加え重合開始剤の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った。その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド950gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で4時間開環重合反応を行った。そして、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこない、無色無臭のポリアルキレングリコール1230gを得た。
【0076】
得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は11.8mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は14200g/mol、エチレンオキシド含有量は16重量%であった。
【0077】
実施例7
攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、調製例1で得られたテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩4.34g(8mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)300g(300mmol)を加え重合開始剤の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った。その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド1050gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド172gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で4時間開環重合反応を行った。そして、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこない、無色無臭のポリアルキレングリコール1510gを得た。
【0078】
得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は32.9mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は5100g/mol、エチレンオキシド含有量は11重量%であった。」

イ 甲1に記載された発明について
上記「第2」で述べたとおり、請求項1及び2は削除されたから、以下では、請求項3及び4に係る発明に対して認定した甲1発明2-1?甲1発明2-5、甲1発明3及び甲1発明4を認定する。
(ア)甲1発明2-1?甲1発明2-5
甲1には、甲1の摘記(1a)?(1e)、特に摘記(1a)及び(1e)における実施例1?3の記載から、次の発明が記載されているといえる。
「攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩2.17g(4mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)175g(175mmol)を加え重合開始剤の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行い、次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210g、194gまたは205gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃または98?102℃の範囲で4時間または3時間、開環重合反応を行った後、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこなって得た、
水酸基価は23.8mgKOH/g、24.1mgKOH/gまたは23.7mgKOH/gである、1250g、1242gまたは1252gの無色無臭のポリアルキレングリコール。」(以下「甲1発明2-1」という。)

甲1の摘記(1e)の実施例4の記載から、次の発明が記載されているといえる。
「攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、テトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩2.16g(4mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)175g(175mmol)を加え重合開始剤の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行い、次いで0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温98?102℃の範囲で3時間開環重合反応を行った後、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこなって得た、
水酸基価は23.6mgKOH/gである、1258gの無色無臭のポリアルキレングリコール。」(以下「甲1発明2-2」という。)

甲1の摘記(1e)の実施例5の記載から、次の発明が記載されているといえる。
「攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、テトラキス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリジンイミノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩3.02g(4mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)175g(175mmol)を加え重合開始剤の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行い、次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温98?102℃の範囲で3時間開環重合反応を行った後、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこなって得た、
水酸基価は24.0mgKOH/gである、1245gの無色無臭のポリアルキレングリコール。」(以下「甲1発明2-3」という。)

甲1の摘記(1e)の実施例6の記載から、次の発明が記載されているといえる。

「攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩2.17g(4mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)87g(87mmol)を加え重合開始剤の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド950gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行い、次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で4時間開環重合反応を行った後、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこなって得た、
水酸基価は11.8mgKOH/gである、1230gの無色無臭のポリアルキレングリコール。」(以下「甲1発明2-4」という。)

甲1の摘記(1e)の実施例7の記載から、次の発明が記載されているといえる。
「攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩4.34g(8mmol)および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP-1000;水酸基価168mgKOH/g)300g(300mmol)を加え重合開始剤の調製を行い、その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とした後、0.2kPaの減圧下で水分の除去を行った後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド1050gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で8時間開環重合反応を行い、次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド172gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88?92℃の範囲で4時間開環重合反応を行った後、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこなって得た、
水酸基価は32.9mgKOH/gである、1510gの無色無臭のポリアルキレングリコール。」(以下「甲1発明2-5」という。)

(イ)甲1発明3、4
甲1発明2-1?2-5は、【0025】によると、ポリウレタン原料として用いられるものであり、イソシアネート化合物と反応させて硬質または軟質フォームにされるものであるから、次の発明が記載されているといえる。
「甲1発明2-1?2-5のポリアルキレングリコールを含むポリウレタン原料」(以下「甲1発明3」という。)

「甲1発明3と各種イソシアネート化合物とを反応させて得られた、硬質フォームまたは軟質フォーム。」(以下「甲1発明4」という。)

ウ 対比・判断
(ア)本件発明3について
a 甲1発明3との対比
甲1発明3は、上記イ(イ)で述べたとおり、「甲1発明2-1?2-5のポリアルキレングリコールを含むポリウレタン原料」である。
まず、甲1発明3のうち、甲1発明2-1を引用した場合について対比する。

(a)甲1発明2-1を引用した甲1発明3について
i 対比
本件発明3の「難燃剤」は「下記式(1)で示される化合物」そのものであるから、甲1発明3が引用する甲1発明2-1の「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩」は、本件発明3の「下記式(1)で示される化合物」及び「難燃剤」に相当する。
甲1発明3が引用する甲1発明2-1の「3官能のポリアルキレングリコール」は、ポリアルキレン部位を有する多官能のアルコールであることから、本件発明3の「ポリオキシアルキレンポリオール及びポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオール成分」に相当する。
甲1発明3が引用する甲1発明2-1の「無色無臭のポリアルキレングリコール」は、ポリオールであるポリアルキレングリコールとテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウム炭酸水素塩の混合物であることからみて、本件発明3の「ポリオール組成物」に相当する。
また、甲1発明3の「ポリウレタン原料」は、レジンであるポリウレタンの原料であるから、本件発明3の「レジンプレミックス」に相当する。

そうすると、本件発明3と甲1発明3は
「ポリオール組成物
を含み、
前記ポリオール組成物は、
ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオール成分と、
難燃剤と
を含み、
前記難燃剤が、下記式(1)で示される化合物である、レジンプレミックス。(式(1)は省略する。)」点で一致する。

そして、本件発明3と甲1発明3は、以下の点で相違する。

<相違点3>
本件発明3は「難燃剤」の含有量が「400ppm以上1500ppm以下である」のに対し、甲1発明3は含有量が特定されていない点

<相違点4>
本件発明3は「触媒と発泡剤」を含むことを特定しているのに対し、甲1発明3は「触媒と発泡剤」を含むかどうかについて不明である点

ii 判断
まず、相違点3である、甲1発明3が引用する甲1発明2-1の「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」の含有量について検討する。
この含有量は、1736ppm(=2.17/(2.17+1250)×1,000,00)と計算される。

しかしながら、この含有量は、あくまで、ポリオキシプロピレンオキシドを製造したときの生成物中に含まれる「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」の含有量である。

そして、上記(1)エ(ア)a(a)iiで検討したとおり、甲1発明3であるポリウレタン原料に含まれるポリオキシアルキレングリコールにおけるテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドの含有量は、甲1発明2-1において計算された含有量ではなく、後工程により含有量を減少させたものであるといえ、その含有量が400?1500ppmの範囲であるとする理由はない。

そうすると、相違点3は実質的な相違点であり、相違点4について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明2-1を引用する甲1発明3ではない。

そして、甲1や甲2?4には、相違点3である難燃剤の含有量を本件発明3のように400?1500ppmと動機づける記載はない。

よって、本件発明3は、甲1発明2-1を引用する甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(b)甲1発明2-2?2-5を引用した甲1発明3について
i 対比
甲2発明2-2?2-5は、「テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド」を使用し、また、「無色無臭のポリアルキレングリコール」が得られ、さらに、「無色無臭のポリアルキレングリコール」は、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド等を用いて製造したポリアルキレングリコールであり、両者は混合物であることは、甲1発明2-1と同じである。
そうすると、本件発明3と甲2発明2-2?2-5を引用した甲1発明3は、上記(a)iで述べた点で一致し、相違点3及び相違点4と同じ点で相違する。(一致点及び相違点の記載は省略する。)

ii 判断
上記(a)iiで述べたように、甲1発明2-2?2-5について、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドの含有量を計算すると、それぞれ、「1717ppm」、「2426ppm」、「1764ppm」及び「2874ppm」となるが、上記(a)iiで検討したとおり、甲1発明3であるポリウレタン原料に含まれるポリオキシアルキレングリコールにおけるテトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドの含有量は、甲1発明2-2?2-5において掲載された含有量ではなく、後工程により含有量を減少させたものであるといえ、その含有量が400?1500ppmの範囲であるとする理由はない。

そうすると、相違点3は実質的な相違点であり、相違点4について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明2-2?2-5を引用する甲1発明3ではない。

そして、甲1や甲2?4には、相違点3である難燃剤の含有量を本件発明3のように400?1500ppmと動機づける記載はない。

よって、本件発明3は、甲1発明2-2?2-5を引用する甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(c)小括
したがって、本件発明3は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)本件発明4について
a 甲1発明4との対比
甲1発明4は、「甲1発明3と各種イソシアネート化合物とを反応させて得られた、硬質フォームまたは軟質フォーム」である。
一方、本件発明4は、「本件発明3に記載のレジンプレミックスと、ポリイソシアネートとを反応させることにより得られることを特徴とする、ポリウレタンフォーム」である。
上記(ア)を参照しながら両者を対比すると、甲1発明4であるポリウレタン原料は、本件発明3のレジンプレミックスに対応するところ、両者が同じものではなく、また、当業者が容易に想到できたものでないことは、上記(ア)で述べたとおりである。
したがって、その余について検討するまでもなく、本件発明4は甲1発明4ではなく、また、甲1発明4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

エ 取消理由2、申立理由1及び2についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由2、申立理由1及び2によっては、本件発明3及び4に係る特許を取り消すことはできない。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人がした申立理由について
(1)申立理由3について
ア 特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

イ 特許請求の範囲の記載
上記「第3」に記載したとおりである。

ウ 本件発明の課題について
本件発明3及び4の課題は、発明の詳細な説明の段落【0009】及び明細書全体の記載からみて、ポリウレタンフォームの硬度を維持できながら難燃性を向上させることができるポリオール組成物を含むレジンプレミックスおよびそのレジンプレミックスを用いて得られるポリウレタンフォームを提供することであると認める。

エ 判断
本件発明3及び4は、概略、ポリオール組成物と、触媒と、発泡剤とを含むレジンプレミックス及びこのレジンプレミックスとポリイソシアネート成分とを反応させたポリウレタンフォームであるところ、
前記ポリオール組成物は、ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオール成分と、式(1)で示される化合物である難燃剤を400ppm以上1500ppm以下含むものである。(式(1)の記載は省略する。)

発明の詳細な説明の【0017】及び【0018】には、発明の効果として、ポリオール組成物を含むレジンプレミックスを用いて得られるポリウレタンフォームは、硬度などの物性を維持しながら、難燃性を向上させることができることが記載され、【0062】?【0084】には、本件発明3の式(1)で示される化合物である難燃剤が具体的に記載され、特に同【0076】?【0081】には、X^(-)はアニオンを示すこと、好ましくは、ヒドロキシアニオン(水酸化物イオン)、アルコキシアニオン(アルコキシド)、カルボキシアニオン、スルホニルアニオン、炭酸水素アニオン、ハロゲン化物イオンを示すこと、さらに好ましくは、ハロゲン化物イオンが挙げられることが記載され、同【0085】?【0087】には、難燃剤の含有量は、さらに好ましくは400ppm以上であり、1500ppm以下であることが記載され、同【0087】には、難燃剤の含有量が、上記範囲内であれば、そのポリオール組成物を含むレジンプレミックスを用いて得られるポリウレタンフォームは、硬度などの物性を維持しながら、難燃性を向上させることができることが記載され、同【0092】及び【0159】には、そのポリオール組成物を含むレジンプレミックスを用いて得られるポリウレタンフォームは、硬度などの物性を維持しながら、難燃性を向上させることができることが記載されている。そして、同【0187】以降に記載された実施例では、難燃剤として、TTGPC:テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムクロライド(上記式(1)において、R^(1)がメチル基であり、X^(-)が塩化物イオンである化合物。)を用いた具体例が記載され、本件発明3及び4の課題が解決できたことが具体的なデータとともに記載されている(同【0194】及び【0195】の【表1】及び【表2】を参照)。

このように、本件の発明の詳細な説明には、本件発明3及び4のうちの具体例として、本件発明3及び4の課題が解決できたことが記載されており、また、具体的に記載がない範囲においても、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載や本願出願時の技術常識に基づき、発明の課題が解決できると認識できるということができる。
これに対して、申立人は、申立書において、単にアニオンの種類が化合物の安定性や塩基性に影響することは周知であることを述べるだけであり、具体的な反証を挙げた上で発明の課題が解決できると認識できないことを主張している訳ではない。

オ 特許法第36条第6項第1号についてのまとめ
したがって、本件発明3及び4が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえない。

(2)まとめ
以上のとおりであるから、申立人がした申立理由3によっては、本件発明3及び4に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
特許第6511615号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?4]について訂正することを認める。
請求項1及び2に係る発明の特許に対する申立を却下する。
当審が通知した取消理由及び特許異議申立人がした申立理由によっては、本件発明3及び4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明3及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
レジンプレミックスおよびポリウレタンフォーム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物、レジンプレミックスおよびポリウレタンフォームに関し、詳しくは、ポリオール組成物、そのポリオール組成物を含むレジンプレミックス、および、そのレジンプレミックスを用いて得られるポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、ポリオール成分、触媒および発泡剤を含むレジンプレミックスと、イソシアネート成分とを反応させることにより得られる。
【0003】
このようなポリウレタンフォームにおいて、難燃性が要求される場合には、通常、ポリウレタンフォームに難燃剤を含有させている。
【0004】
このような難燃剤として、有機リン系の難燃剤がよく用いられており、有機リン系の難燃剤としては、例えば、TCEP(トリス(クロロエチル)ホスフェート)、TCPP(トリス(クロロプロピル)ホスフェート)、TCP(トリクレジルホスフェート)などが
知られている。
【0005】
そして、ポリオール成分100重量部に対して、10?15重量部の有機リン系の難燃剤が配合されたレジンプレミックスと、イソシアネート成分とを反応させることにより、ポリウレタンフォームを調製することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2005-015521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されているように、ポリウレタンフォームに上記割合で難燃剤を配合すると、得られるポリウレタンフォームの硬度が低下するという不具合がある。
【0008】
一方で、ポリウレタンフォームの硬度を維持するため、ポリウレタンフォームに対する難燃剤の配合割合を減らすと難燃性の向上が不十分となる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ポリウレタンフォームの硬度を維持できながら、難燃性を向上させることができるポリオール組成物、そのポリオール組成物を含むレジンプレミックスおよびそのレジンプレミックスを用いて得られるポリウレタンフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポリオール組成物は、ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオール成分と、難燃剤とを含み、前記難燃剤が、下記式(1)で示される化合物であることを特徴としている。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R^(1)は、互いに同一または相異なって、水素原子または炭素数1?20の炭化水素基を示し、X^(-)は、アニオンを示す。ただし、R^(1)同士が、互いに結合して環構造を形成してもよい。)
また、本発明のポリオール組成物では、前記難燃剤の含有量が、5ppm以上20000ppm以下であることが好適である。
【0013】
また、本発明のポリオール組成物では、前記ポリオール成分の水酸基価が、10mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であることが好適である。
【0014】
また、本発明のレジンプレミックスは、上記のポリオール組成物と、触媒と、発泡剤とを含むことを特徴としている。
【0015】
また、本発明のレジンプレミックスでは、前記難燃剤の含有量が、5ppm以上20000ppm以下であることが好適である。
【0016】
また、本発明のポリウレタンフォームは、上記のレジンプレミックスと、ポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリオール組成物には、上記式(1)で示される化合物が、難燃剤として含有されている。
【0018】
そのため、そのポリオール組成物を含むレジンプレミックスを用いて得られるポリウレタンフォームは、硬度などの物性を維持することができながら、難燃性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリオール組成物は、ポリオール成分と、難燃剤とを含んでいる。
【0020】
ポリオール成分は、ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、好ましくは、ポリオキシアルキレンポリオールとポリマーポリオールとを含有し、より好ましくは、ポリオキシアルキレンポリオールとポリマーポリオールとからなる。
【0021】
ポリオキシアルキレンポリオールは、ポリエーテルポリオールであり、例えば、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミンなどを開始剤とする、アルキレンオキサイドの付加重合体(2種以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む)が挙げられる。
【0022】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する分子量400未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7?20)ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0023】
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0024】
低分子量ポリアミンは、アミノ基を2つ以上有する分子量400未満の化合物であって、例えば、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,3-または1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヒドラジン、o、mまたはp-トリレンジアミン(TDA、OTD)などの低分子量ジアミン、例えば、ジエチレントリアミンなどの低分子量トリアミン、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのアミノ基を4個以上有する低分子量ポリアミンなどが挙げられる。
【0025】
これら低分子量ポリアミンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0026】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどの炭素数2?12のアルキレンオキサイドが挙げられる。
【0027】
これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0028】
アルキレンオキサイドとして、好ましくは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドが挙げられ、より好ましくは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
【0029】
ポリオキシアルキレンポリオールとして、好ましくは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイド-エチレンオキサイド共重合体(ランダムおよび/またはブロック共重合体)などが挙げられる。
【0030】
ポリオキシアルキレンポリオールとしてプロピレンオキサイド-エチレンオキサイド共重合体が用いられる場合、そのエチレンオキサイド含有量は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0031】
なお、エチレンオキサイド含有量は、仕込みの配合処方から算出される(以下同様。)。
【0032】
また、ポリオキシアルキレンポリオールとしてプロピレンオキサイド-エチレンオキサイド共重合体が用いられる場合、その末端オキシエチレン基含有量は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0033】
なお、末端オキシエチレン基含有量は、仕込みの配合処方から算出される。
【0034】
ポリオキシアルキレンポリオールのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析により測定される数平均分子量(ポリエチレングリコール換算)は、例えば、400以上、好ましくは、1000以上であり、例えば、15000以下、好ましくは、10000以下である。
【0035】
また、ポリオキシアルキレンポリオールの平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、2.0以上、より好ましくは、2.5以上であり、例えば、6以下、好ましくは、4以下である。
【0036】
なお、ポリオキシアルキレンポリオールの平均官能基数は、仕込みの配合処方から算出される。
【0037】
また、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、15mgKOH/g以上、より好ましくは、20mgKOH/g以上、さらに好ましくは、25mgKOH/g以上であり、例えば、80mgKOH/g以下、好ましくは、60mgKOH/g以下、より好ましくは、50mgKOH/g以下、さらに好ましくは、30mgKOH/g以下である。
【0038】
ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価が、上記範囲内であれば、そのポリオキシアルキレンポリオールを含有するポリオール成分を含むレジンプレミックス(後述)を用いて得られるポリウレタンフォーム(後述)は、硬度などの物性を維持することができながら、難燃性を向上させることができる。
【0039】
なお、水酸基価は、JIS K-1557-1(2007年)の記載に準拠して測定される(以下同様。)。
【0040】
これらポリオキシアルキレンポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0041】
ポリマーポリオール(ビニルモノマー変性ポリオール)は、高分子量ポリオールにおいてビニルモノマーを分散重合させることにより得ることができる。
【0042】
高分子量ポリオールは、ビニルモノマーの分散媒であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析により測定される数平均分子量(ポリエチレングリコール換算)が、例えば、400以上、好ましくは、1000以上であり、また、例えば、10000以下、好ましくは、8000以下である。高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられ、好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0043】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0044】
また、ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレート、シアン化ビニル(アクリロニトリル)、シアン化ビニリデンなどが挙げられる。これらビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、スチレン、シアン化ビニル(アクリロニトリル)、スチレンおよびシアン化ビニルの併用が挙げられる。
【0045】
ポリマーポリオールに対するビニルモノマーの重合体の含有量は、例えば、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下である。
【0046】
そして、ポリマーポリオールは、高分子量ポリオール中において、ビニルモノマーを、例えば、ラジカル重合開始剤(例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリルなど)など)、さらには、必要により、分散安定化剤、連鎖移動剤などの存在下などにおいて反応させることにより得ることができる。
【0047】
より具体的には、ポリマーポリオールは、高分子量ポリオール中において上記のビニルモノマーがラジカル開始剤によって重合され、得られるポリマー微粒子が高分子量ポリオール中に分散されることにより調製される。
【0048】
ポリマー微粒子は、ビニルモノマーの重合体からなるポリマー微粒子である。
【0049】
なお、ポリマー微粒子では、重合時にビニルモノマーの少なくとも一部を高分子量ポリオールにグラフト化させることもできる。
【0050】
ポリマーポリオールのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析により測定される数平均分子量(ポリエチレングリコール換算)は、例えば、400以上、好ましくは、1000以上であり、例えば、15000以下、好ましくは、10000以下である。
【0051】
また、ポリマーポリオールの平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、2.0以上、より好ましくは、2.5以上であり、例えば、6以下、好ましくは、4以下である。
【0052】
なお、ポリマーポリオールの平均官能基数は、仕込みの配合処方から算出される。
【0053】
また、ポリマーポリオールの水酸基価は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、15mgKOH/g以上、より好ましくは、20mgKOH/g以上、さらに好ましくは、25mgKOH/g以上であり、例えば、80mgKOH/g以下、好ましくは、60mgKOH/g以下、より好ましくは、50mgKOH/g以下、さらに好ましくは、30mgKOH/g以下である。
【0054】
ポリマーポリオールの水酸基価が、上記範囲内であれば、そのポリマーポリオールを含有するポリオール成分を含むレジンプレミックス(後述)を用いて得られるポリウレタンフォーム(後述)は、硬度などの物性を維持することができながら、難燃性を向上させることができる。
【0055】
これらポリマーポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0056】
ポリオール成分がポリオキシアルキレンポリオールとポリマーポリオールとを含有する場合における、ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールの配合割合は、ポリオール成分100質量部に対して、ポリオキシアルキレンポリオールが、例えば、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、40質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、60質量部以下であり、また、ポリマーポリオールが、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、40質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、60質量部以下である。
【0057】
また、ポリオキシアルキレンポリオールとポリマーポリオールとの配合比率は、質量基準で、例えば、10/90以上、好ましくは、30/70以上、より好ましくは、40/60以上であり、また、例えば、90/10以下、好ましくは、70/30以下、より好ましくは、60/40以下である。
【0058】
ポリオール成分におけるポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールの配合割合または配合比率が、上記範囲内であれば、そのポリオール成分を含むレジンプレミックス(後述)を用いて得られるポリウレタンフォーム(後述)は、硬度などの物性を維持することができながら、難燃性を向上させることができる。
【0059】
ポリオール成分の水酸基価は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、15mgKOH/g以上、より好ましくは、20mgKOH/g以上、さらに好ましくは、25mgKOH/g以上であり、例えば、80mgKOH/g以下、好ましくは、60mgKOH/g以下、より好ましくは、50mgKOH/g以下、さらに好ましくは、30mgKOH/g以下である。
【0060】
ポリオール成分の水酸基価が、上記範囲内であれば、そのポリオール成分を含むレジンプレミックス(後述)を用いて得られるポリウレタンフォーム(後述)は、硬度などの物性を維持することができながら、難燃性を向上させることができる。
【0061】
ポリオール組成物におけるポリオール成分の含有割合は、ポリオール組成物の総量に対して、例えば、98.00質量%以上、好ましくは、99.70質量%以上、より好ましくは、99.80質量%以上、さらに好ましくは、99.90質量%以上であり、また、例えば、100質量%未満、好ましくは、99.999質量%以下、より好ましくは、99.99質量%以下、さらに好ましくは、99.98質量%以下である。
【0062】
難燃剤は、下記式(1)で示される化合物である。
【0063】
【化2】

【0064】
(式中、R^(1)は、互いに同一または相異なって、水素原子または炭素数1?20の炭化水素基を示し、X^(-)は、アニオンを示す。ただし、R^(1)同士が、互いに結合して環構造を形成してもよい。)
上記式(1)において、R^(1)は、互いに同一または相異なって、水素原子または炭素数1?20の炭化水素基を示す。
【0065】
炭素数1?20の炭化水素基としては、例えば、炭素数1?20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6?20のアリール基、または、置換基を有していてもよい炭素数7?20のアラルキル基が挙げられ、好ましくは、炭素数1?20の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0066】
炭素数1?20の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-ブチル基、1-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-メチル-1-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、3-メチル-2-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、4-メチル-2-ペンチル基、1-ヘプチル基、3-ヘプチル基、1-オクチル基、2-オクチル基、2-エチル-1-ヘキシル基、1,1-ジメチル-3,3-ジメチルブチル基、1-ノニル基、1-デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などの炭素数1?20の鎖状飽和脂肪族炭化水素基、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などの炭素数1?20の環状飽和脂肪族炭化水素基、例えば、ビニル基、2-プロペニル基などの炭素数2?20の鎖状不飽和脂肪族炭化水素基、例えば、シクロヘキセニル基などの炭素数3?20の環状不飽和脂肪族炭化水素基などが挙げられ、好ましくは、炭素数1?20の鎖状飽和脂肪族炭化水素基が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、1,1-ジメチル-3,3-ジメチルブチル基などが挙げられ、さらに好ましくは、メチル基が挙げられる。
【0067】
置換基を有していてもよい炭素数6?20のアリール基の炭素数6?20のアリール基としては、例えば、フェニル基、2-トリル基、3-トリル基、4-トリル基、2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基、3,4-キシリル基、3,5-キシリル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2,3,4,5-テトラメチルフェニル基、2,3,4,6-テトラメチルフェニル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基などが挙げられる。
【0068】
また、置換基を有していてもよい炭素数6?20のアリール基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲノ基(例えば、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基およびヨード基など)、シアノ基、アミノ基、カルボキシ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどの炭素数1?6のアルコキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、ネオペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニルなどの炭素数1?6のアルコキシカルボニル基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオなどの炭素数1?4のアルキルチオ基など)およびアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)などが挙げられる。なお、置換基の置換位置や置換数は、任意に決定することができる。
【0069】
置換基を有していてもよい炭素数7?20のアラルキル基の炭素数7?20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、o-メチルベンジル、m-メチルベンジル、p-メチルベンジル、o-エチルベンジル、m-エチルベンジル、p-エチルベンジル、o-イソプロピルベンジル、m-イソプロピルベンジル、p-イソプロピルベンジル、2,3,4-トリメチルベンジル、3,4,5-トリメチルベンジル、2,4,6-トリメチルベンジルなどが挙げられる。
【0070】
また、置換基を有していてもよい炭素数7?20のアラルキル基の置換基としては、例えば、上記した置換基を有していてもよい炭素数6?20のアリール基の置換基が挙げられる。
【0071】
また、R^(1)同士が、互いに結合して環構造を形成してもよい。好ましくは、同一のグアニジン構造に結合しているR^(1)同士が、互いに結合して環構造を形成する。
【0072】
R^(1)同士が環構造を形成する場合、R^(1)として、例えば、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などの炭素数2?20のアルキレン基、例えば、シクロヘキシレン基などの炭素数3?20のシクロアルキレン基、例えば、ビニレン基などの炭素数2?20のアルケニレン基、例えば、シクロヘキセニレン基などの炭素数3?20のシクロアルケニレン基、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などの炭素数6?20のアリーレン基、例えば、フェニルエチレン基などの炭素数8?20のアラルキレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数2?20のアルキレン基が挙げられる。より好ましくは、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基が挙げられ、さらに好ましくは、テトラメチレン基が挙げられる。
【0073】
また、R^(1)同士が互いに結合した環構造としては、例えば、ピロリジニル基、ピロリル基、ピペリジニル基、インドリル基、イソインドリル基などが挙げられる。
【0074】
R^(1)は、好ましくは、互いに同一である。
【0075】
R^(1)として、好ましくは、炭素数1?20の脂肪族炭化水素基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1?20の鎖状脂肪族炭化水素基が挙げられ、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、とりわけ好ましくは、メチル基が挙げられる。
【0076】
また、上記式(1)において、X^(-)は、アニオンを示し、好ましくは、ヒドロキシアニオン(水酸化物イオン)、アルコキシアニオン(アルコキシド)、カルボキシアニオン、スルホニルアニオン、炭酸水素アニオン、ハロゲン化物イオンを示す。
【0077】
アルコキシアニオンとしては、例えば、メトキシド、エトキシド、n-プロポキシド、イソプロポキシド、n-ブトキシド、sec-ブトキシド、tert-ブトキシド、シクロヘキソキシド、2-ヘプトキシド、1-オクトキシド、フェノキシドなどが挙げられる。
【0078】
カルボキシアニオンとしては、例えば、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、イソ酪酸アニオン、カプロン酸アニオン、ラウリル酸アニオン、パルチミン酸アニオン、ステアリン酸アニオン、安息香酸アニオン、デシル安息香酸アニオン、ドデシル安息香酸アニオン、乳酸アニオン、リンゴ酸アニオン、酒石酸アニオン、クエン酸アニオン、リシノレイン酸アニオンなどが挙げられる。
【0079】
スルホニルアニオンとしては、例えば、p-トルエンスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン(直鎖型、分岐型を含む)、ベンゼンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなどが挙げられる。
【0080】
ハロゲン化物イオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンが挙げられ、好ましくは、塩化物イオンが挙げられる。
【0081】
X^(-)として、より好ましくは、スルホニルアニオン、ヒドロキシアニオン、ハロゲン化物イオンが挙げられ、さらに好ましくは、ハロゲン化物イオンが挙げられる。
【0082】
上記式(1)で示される化合物は、具体的には、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムクロライド、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリジリンイミノ)ホスホニウムクロライド、テトラキス(1,3-ジメチルイミダゾリジリンイミノ)ホスホニウムクロライドなどが挙げられ、好ましくは、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムクロライド、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシドが挙げられ、より好ましくは、テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムクロライドが挙げられる。
【0083】
これら上記式(1)で示される化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0084】
上記式(1)で示される化合物は、例えば、独国特許出願公開明細書DE102006010034A1号に記載のホスホニウム塩の製造方法により製造することができる。
【0085】
ポリオール組成物における難燃剤の含有割合は、ポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.0005質量部以上、好ましくは、0.002質量部以上、より好ましくは、0.003質量部以上、さらに好ましくは、0.005質量部以上、さらに好ましくは、0.010質量部以上、さらに好ましくは、0.025質量部以上、さらに好ましくは、0.035質量部以上、さらに好ましくは、0.045質量部以上、とりわけ好ましくは、0.05質量部以上であり、また、例えば、2質量部以下、好ましくは、1質量部以下、より好ましくは、0.5質量部以下、さらに好ましくは、0.3質量部以下、さらに好ましくは、0.15質量部以下、とりわけ好ましくは、0.10質量部以下である。
【0086】
また、ポリオール組成物における難燃剤の含有量は、質量基準として、例えば、5ppm以上、好ましくは、15ppm以上、より好ましくは、25ppm以上であり、さらに好ましくは、50ppm以上、さらに好ましくは、100ppm以上、さらに好ましくは、200ppm以上、さらに好ましくは、300ppm以上、さらに好ましくは、400ppm以上、とりわけ好ましくは、460ppm以上であり、また、例えば、20000ppm以下、好ましくは、3000ppm以下、より好ましくは、2000ppm以下、さらに好ましくは、1500ppm以下、さらに好ましくは、1000ppm以下、とりわけ好ましくは、500ppm以下である。
【0087】
難燃剤の含有割合または含有量が、上記範囲内であれば、そのポリオール組成物を含むレジンプレミックス(後述)を用いて得られるポリウレタンフォーム(後述)は、硬度などの物性を維持することができながら、難燃性を向上させることができる。
【0088】
そして、ポリオール組成物を得るには、上記したポリオール成分に上記した難燃剤を含有させる。難燃剤を含有させるには、ポリオール成分に難燃剤を配合する。
【0089】
これにより、本発明のポリオール組成物を得ることができる。
【0090】
そして、このようにして得られたポリオール組成物は、ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオール成分と、難燃剤とを含み、難燃剤が上記の式(1)で示される化合物である。
【0091】
また、好ましくは、ポリオール組成物は、ポリオール成分と難燃剤とからなる。
【0092】
そのため、そのポリオール組成物を含むレジンプレミックス(後述)を用いて得られるポリウレタンフォーム(後述)は、硬度などの物性を維持することができながら、難燃性を向上させることができる。
【0093】
次に、本発明のレジンプレミックスについて説明する。
【0094】
本発明のレジンプレミックスは、上記したポリオール組成物と触媒と発泡剤とを含んでいる。
【0095】
レジンプレミックスにおけるポリオール組成物の含有割合は、レジンプレミックスの総量に対して、例えば、90質量%以上、好ましくは、91.5質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、93質量%以下、より好ましくは、91.8質量%以下である。
【0096】
レジンプレミックスにおける難燃剤の含有量は、質量基準として、例えば、5ppm以上、好ましくは、15ppm以上、より好ましくは、20ppm以上、さらに好ましくは、25ppm以上であり、さらに好ましくは、50ppm以上、さらに好ましくは、100ppm以上、さらに好ましくは、200ppm以上、さらに好ましくは、300ppm以上、さらに好ましくは、400ppm以上、とりわけ好ましくは、450ppm以上であり、また、例えば、20000ppm以下、好ましくは、3000ppm以下、より好ましくは、2000ppm以下、さらに好ましくは、1500ppm以下、さらに好ましくは、1000ppm以下、とりわけ好ましくは、500ppm以下である。
【0097】
難燃剤の含有量が、上記範囲内であれば、そのレジンプレミックスを用いて得られるポリウレタンフォーム(後述)は、硬度などの物性を維持することができながら、難燃性を向上させることができる。
【0098】
触媒としては、特に制限されず、公知のウレタン化触媒が挙げられ、具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、モルフォリン類(例えば、N-メチルモルフォリンなど)などの脂肪族アミン類、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの四級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、例えば、オクタン酸錫(オクチル酸錫)、酢酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫シメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート(ジブチルチンジラウレート)、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0099】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩なども挙げられる。
【0100】
また、触媒は、市販品として入手することができ、例えば、カオーライザー No.31(アミン触媒、花王社製)、カオーライザー No.120(アミン触媒、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、花王社製)、カオーライザー No.12(アミン触媒、花王社製)、カオーライザー No.25(アミン触媒、花王社製)、DABCO 33LV(アミン触媒、トリエチレンジアミンの33質量%ジエチレングリコール溶液、エア・プロダクツジャパン社製)、Niax A-1(アミン触媒、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製(以下、「モメンティブ社製」とする。))、TOYOCAT-NCE(アミン触媒、東ソー社製)、ネオスタンU-100(有機錫触媒、ジブチル錫ジラウレート、日東化成社製)、フォーメートTK-1(有機錫触媒、三井化学社製)などが挙げられる。
【0101】
これらの触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0102】
触媒の配合割合は、ポリオール組成物のポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0103】
発泡剤としては、特に制限されず、公知の発泡剤が挙げられ、好ましくは、水が挙げられる。
【0104】
また、発泡剤としては、水と、物理発泡剤(例えば、ヒドロフルオロカーボン類、炭化水素類(例えば、シクロペンタンなど)、炭酸ガス、液化炭酸ガスなど)とを、適宜の割合で併用することができる。物理発泡剤としては、環境負荷低減の観点から、好ましくは、炭酸ガス、液化炭酸ガスが挙げられる。
【0105】
これら物理発泡剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0106】
発泡剤の配合割合は、ポリオール組成物のポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、7質量部以下である。
【0107】
発泡剤の含有割合が上記範囲であれば、優れた発泡性を得ることができる。
【0108】
また、レジンプレミックスは、必要により、架橋剤、連通化剤、整泡剤などの添加剤を含むことができる。
【0109】
架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤が挙げられ、具体的には、例えば、アルカノールアミン、3価以上のポリオール、アルキレンオキサイド付加ポリオールなどが挙げられる。
【0110】
アルカノールアミンとしては、例えば、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミンなどのトリアルカノールアミン(トリC2?4アルカノールアミン)や、ジエタノールアミンなどのジアルカノールアミン(ジC2?4アルカノールアミン)などの、ポリアルカノールアミンが挙げられ、好ましくは、ジエタノールアミンが挙げられる。
【0111】
3価以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、D-マンニトール、D-マンニットなどの水酸基を4つ以上有する多価アルコールなどが挙げられる。
【0112】
アルキレンオキサイド付加ポリオールは、上記した3価以上のポリオールにアルキレンオキサイドを付加したポリオールであり、例えば、水酸基価が200mgKOH/g以上2000mgKOH/g以下であるポリオキシアルキレンポリオールなどが挙げられる。
【0113】
架橋剤として、好ましくは、3価以上のポリオールおよび/またはアルキレンオキサイド付加ポリオールが挙げられる。
【0114】
また、3価以上のポリオールとして、好ましくは、グリセリンが挙げられ、アルキレンオキサイド付加ポリオールとして、好ましくは、アクトコールKL-210(平均官能基数3.75のポリオキシアルキレンポリオール、水酸基価(OHV)=840mgKOH/g、三井化学社製)が挙げられる。
【0115】
架橋剤の水酸基価は、例えば、200mgKOH/g以上、好ましくは、800mgKOH/g以上であり、例えば、2000mgKOH/g以下、好ましくは、1850mgKOH/g以下である。
【0116】
これら架橋剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0117】
架橋剤の配合割合は、ポリオール組成物のポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0118】
連通化剤としては、特に制限されず、公知の連通化剤が挙げられ、具体的には、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシエチレンポリオール、プロピレンオキサイド-エチレンオキサイドのランダム共重合体など)などが挙げられる。
【0119】
また、連通化剤としてポリオキシエチレンポリオールまたはプロピレンオキサイド-エチレンオキサイド共重合体が用いられる場合、そのエチレンオキサイド含有量は、例えば、50質量%超過、好ましくは、60質量%以上であり、例えば、100質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0120】
また、連通化剤は、市販品として入手することができ、例えば、アクトコールEP-505S(三井化学社製)、MF-19(三井化学社製)、エクセノール3040(旭硝子社製)、EL-985(旭硝子社製)などが挙げられる。
【0121】
これら連通化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0122】
連通化剤の配合割合は、ポリオール組成物のポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0123】
整泡剤としては、特に制限されず、公知の整泡剤が挙げられ、例えば、シリコーン整泡剤が挙げられる。
【0124】
また、整泡剤は、市販品として入手することができ、例えば、DC-6070(エア・プロダクツジャパン社製)、DC-2525(エア・プロダクツジャパン社製)、B-8715LF2(エヴォニック社製)、SZ-1966(東レ・ダウコーニング社製)、SRX-274C、SF-2969、SF-2961、SF-2962、L-5309(モメンティブ社製)、L-3601(東レ・ダウコーニング社製)、L-5307、L-3600、L-5366、SZ-1325、SZ-1328、Y-10366(モメンティブ社製)などが挙げられる。
【0125】
これら整泡剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0126】
整泡剤の配合割合は、ポリオール組成物のポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0127】
また、レジンプレミックスには、上記の添加剤以外に、さらに必要により、例えば、顔料(着色顔料)、染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、硬化促進剤、熱安定剤、光安定剤、つや消し剤、密着性付与剤、シランカップリング剤などの公知のその他の添加剤を、本発明の優れた効果を損なわない範囲において、適宜の割合で配合することができる。
【0128】
着色顔料または染料としては、例えば、耐候性の良好なカーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエローなどの有機顔料または染料などが挙げられる。
【0129】
これら着色顔料または染料は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0130】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられ、より具体的には、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン571(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)などが挙げられる。
【0131】
これら紫外線吸収剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0132】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、その他の酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を除く酸化防止剤)が挙げられる。
【0133】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、具体的には、例えば、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール(BHT)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス245、チバ・ジャパン社製)、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス259、チバ・ジャパン社製)、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010、チバ・ジャパン社製)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製)、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)(商品名:イルガノックス1098、チバ・ジャパン社製)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:イルガノックス1135、チバ・ジャパン社製)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスフォネート-ジエチルエステル(商品名:イルガノックス1222、チバ・ジャパン社製)、2,4,-ビス[(オクチルチオ)メチル]-O-クレゾール(商品名:イルガノックス1520L、チバ・ジャパン社製)、トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:イルガノックス3790、チバ・ジャパン社製)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:ADK STAB AO-80、アデカ社製)などが挙げられる。
【0134】
その他の酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4-ジt-ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:イルガフォス168、チバ・ジャパン社製)、ビス(2,4-ジt-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブPEP-24G、アデカ社製)、トリスノニルフェノールホスファイト(商品名:アデカスタブ1178、アデカ社製)、トリデシルホスファイト(商品名:アデカスタブ3010、アデカ社製)などのリン系酸化防止剤、例えば、2,5-チオフェンジイルビス(5-t-ブチルー1,3-ベンゾキサゾール)(商品名:チノパールOB、チバ・ジャパン社製)などのチオフェン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0135】
これら酸化防止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0136】
硬化促進剤としては、例えば、ジブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。
【0137】
熱安定剤としては、例えば、スルホンアミド基を含有する化合物などが挙げられる。
【0138】
スルホンアミド基を含有する化合物としては、例えば、芳香族スルホンアミド類、脂肪族スルホンアミド類などが挙げられる。
【0139】
芳香族スルホンアミド類としては、例えば、ベンゼンスルホンアミド、ジメチルベンゼンスルホンアミド、スルファニルアミド、o-およびp-トルエンスルホンアミド、ヒドロキシナフタレンスルホンアミド、ナフタレン-1-スルホンアミド、ナフタレン-2-スルホンアミド、m-ニトロベンゼンスルホンアミド、p-クロロベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0140】
脂肪族スルホンアミド類としては、例えば、メタンスルホンアミド、N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジメチルエタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド、N-メトキシメタンスルホンアミド、N-ドデシルメタンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-1-ブタンスルホンアミド、2-アミノエタンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0141】
これら熱安定剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0142】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系耐光安定剤(例えば、アデカスタブLA62、アデカスタブLA67(以上、アデカアーガス化学社製、商品名)、チヌビン765、チヌビン144、チヌビン770、チヌビン622(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)など)、ブレンド系耐光安定剤(例えば、チヌビンB75、チヌビンPUR866(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)など)などが挙げられる。
【0143】
これら光安定剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0144】
つや消し剤としては、例えば、超微粉合成シリカなどが挙げられる。
【0145】
密着性付与剤としては、例えば、リンの酸素酸またはその誘導体が挙げられる。
【0146】
リンの酸素酸としては、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸などのリン酸類、例えば、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸などの縮合リン酸類などが挙げられる。
【0147】
また、リンの酸素酸の誘導体としては、例えば、オルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウムなどのリン酸塩または縮合リン酸塩、例えば、オルトリン酸モノメチル、オルトリン酸モノエチル、オルトリン酸モノプロピル、オルトリン酸モノブチル、オルトリン酸モノ-2-エチルヘキシル、オルトリン酸モノフェニルなどのモノエステル類、例えば、オルトリン酸ジ-2-エチルヘキシル、オルトリン酸ジフェニル、オルトリン酸トリメチル、オルトリン酸トリエチル、オルトリン酸トリプロピル、オルトリン酸トリブチル、オルトリン酸トリ-2-エチルヘキシル、オルトリン酸トリフェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジ-2-エチルヘキシル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリ-2-エチルヘキシル、亜リン酸トリフェニルなどのジ、トリエステル類、または、縮合リン酸とアルコール類とから得られるモノ、ジ、トリエステル類などが挙げられる。
【0148】
これら密着性付与剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0149】
シランカップリング剤としては、例えば、構造式R-Si≡(X)_(3)またはR-Si≡(R’)(X)_(2)(式中、Rは、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基またはメルカプト基を有する有機基を示し、R’は炭素数1?4の低級アルキル基を示し、Xはメトキシ基、エトキシ基またはクロル原子を示す。)で示される。
【0150】
シランカップリング剤として、具体的には、例えば、ビニルトリクロルシランなどのクロロシラン、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジ(γ-グリシドキシプロピル)ジメトキシシランなどのエポキシシラン、例えば、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-プロピルメチルジメトキシシラン、n-(ジメトキシメチルシリルプロピル)エチレンジアミン、n-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン、例えば、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン、例えば、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシランなどのイソシアナトシランなどが挙げられる。
【0151】
これらシランカップリング剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0152】
また、さらに、公知のその他の添加剤として、例えば、鎖延長剤、消泡剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、離型剤、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを、本発明の優れた効果を損なわない範囲において、適宜の割合で配合することもできる。
【0153】
添加剤は、好ましくは、架橋剤と連通化剤と整泡剤とからなる。また、レジンプレミックスは、好ましくは、ポリオール組成物(つまり、ポリオール成分および難燃剤)と触媒と発泡剤と添加剤とからなる。
【0154】
そして、レジンプレミックスを得るには、ポリオール組成物と、触媒と、発泡剤と、必要により添加剤とを配合し、公知の方法で混合する。
【0155】
これにより、本発明のレジンプレミックスを得ることができる。
【0156】
なお、ポリオール成分および難燃剤と、触媒と、発泡剤と、必要により添加剤とを同時に配合し、ポリオール組成物と、そのポリオール組成物を含むレジンプレミックスとを同時に調製することもできる。
【0157】
なお、添加剤は、レジンプレミックスの各成分の合成時に添加してもよく、あるいは、各成分の配合時や混合時に添加してもよく、さらには、各成分の混合後に添加してもよい。
【0158】
そして、このようにして得られたレジンプレミックスは、上記したポリオール組成物と触媒と発泡剤とを含んでいる。
【0159】
そのため、そのレジンプレミックスを用いて得られるポリウレタンフォーム(後述)は、硬度などの物性を維持することができながら、難燃性を向上させることができる。
【0160】
次に、本発明のポリウレタンフォームについて説明する。
【0161】
ポリウレタンフォームは、上記のレジンプレミックスとポリイソシアネート成分とを反応させることにより得ることができる。
【0162】
ポリイソシアネート成分としては、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
【0163】
ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0164】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0165】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0166】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエート、ドデカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0167】
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネートが含まれる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H_(12)MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(H_(6)XDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0168】
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0169】
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0170】
さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
【0171】
これらポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0172】
ポリイソシアネート成分として、好ましくは、芳香族ポリイソシアネートおよびその誘導体が挙げられ、より好ましくは、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)が挙げられる。
【0173】
これらポリイソシアネート成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0174】
ポリイソシアネート成分として、さらに好ましくは、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシネートの併用が挙げられ、特に好ましくは、トリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシネートの併用が挙げられる。
【0175】
ポリイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシネートを併用する場合、トリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートの含有割合は、トリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートの総量100質量部に対して、トリレンジイソシアネートが、例えば、40質量部を超えて、好ましくは、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上であり、例えば、100質量部未満、好ましくは、90質量部以下であり、また、ジフェニルメタンジイソシアネートが、例えば、0質量部を超えて、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、60質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、40質量部以下である。
【0176】
また、ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基含有量は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、15質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、45質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0177】
レジンプレミックスに対するポリイソシアネート成分の配合割合は、例えば、イソシアネートインデックス(レジンプレミックスにおけるポリオール成分中の水酸基、架橋剤中の水酸基およびアミノ基、および、発泡剤としての水などの活性水素100に対するイソシアネート基の割合(化学量論割合))として、例えば、例えば、70以上、好ましくは、85以上であり、例えば、140以下、好ましくは、120以下である。
【0178】
そして、レジンプレミックスとポリイソシアネート成分とを反応させるとともに、例えば、スラブ方式、モールド方式、スプレー方式などの公知の発泡方式により発泡させる。これにより、ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0179】
このようにして得られるポリウレタンフォームは、原料として、上記したポリオール組成物が用いられているため、硬度などの物性を維持することができながら、難燃性を向上させることができる。
【0180】
ポリウレタンフォームの硬度(JIS K-6400(1997年)に準拠)は、例えば、50N/314cm^(2)以上、好ましくは、120N/314cm^(2)以上、より好ましくは、130N/314cm^(2)以上であり、例えば、500N/314cm^(2)以下、好ましくは、300N/314cm^(2)以下、より好ましくは、150N/314cm^(2)以下である。
【0181】
また、ポリウレタンフォームの燃焼性(後述する実施例における燃焼性の評価(燃焼試験)の記載に準拠した点数)は、例えば、7点以下、好ましくは、5点以下、より好ましくは、4点以下、さらに好ましくは、3点以下、とりわけ好ましくは、2点以下であり、通常、0点以上である。
【0182】
なお、ポリウレタンフォームとしては、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォームなどが挙げられるが、ポリオール成分が上記した水酸基価の範囲内で配合されている場合、軟質ポリウレタンフォームとなる。
【0183】
このような軟質ポリウレタンフォームは、クッション材、衝撃吸収材、吸音材、振動吸収材、体圧分散材などとして好適に用いられる。
【0184】
なお、本発明のポリオール組成物およびそのポリオール組成物を含むレジンプレミックスをポリウレタンフォームの製造に用いる場合について説明したが、本発明のポリオール組成物およびそのポリオール組成物を含むレジンプレミックスの用途は、上記に限定されず、その他のポリウレタン樹脂の製造に用いることができる。
【0185】
ポリウレタン樹脂としては、例えば、エラストマー(ポリウレタン溶液、水系ポリウレタン、熱溶融成形(スラッシュ成形、回転成形)ウレタンパウダー、熱可塑性ウレタンエラストマー(TPU)、熱硬化性ウレタンエラストマー(TSU)、スプレー成形ウレタン、溶融紡糸法もしくは乾式紡糸法弾性繊維、)、塗料(主に溶液系、粉体系硬化剤:アダクト、アロファネート、ビュレット、ウレトジオン、ポリイソシアヌレート、イミノオキサジアンジオンおよびそれらの混合物)、工業用あるいはホットメルト用接着剤、シーリング材、ゲル、シーラントなどが挙げられる。
【0186】
なお、例えば、ポリウレタン樹脂を二液硬化型ポリウレタン樹脂として製造する場合にも、必要に応じて、上記した公知のその他の添加剤を添加することができ、例えば、二液硬化型ポリウレタン樹脂を塗料として用いる場合には、着色顔料、染料、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、つや消し剤などを添加することができ、また、例えば、二液硬化型ポリウレタン樹脂を接着剤として用いる場合には、密着性付与剤、シランカップリング剤などを添加することができる。
【実施例】
【0187】
次に、本発明を、実施例、参考例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。また、以下の説明において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。なお、以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される対応する数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
<原料の説明>
TTGPC:テトラキス(1,1,3,3-テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムクロライド(上記式(1)において、R^(1)がメチル基であり、X^(-)が塩化物イオンである化合物。)
ラビトルFP-110:2,2,4,4,6,6-ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン(ホスファゼン化合物、株式会社伏見製作所製)
TCPP:トリス(クロロプロピル)ホスフェート(商品名:TMCPP、大八化学工業社製)
EP330N;アクトコールEP-330N(ポリオキシアルキレンポリオール(プロピレンオキサイド-エチレンオキサイドのブロック共重合体)、エチレンオキサイド含有量(末端オキシエチレン基含有量):15質量%、数平均分子量:5000、平均官能基数:3、水酸基価:34mgKOH/g、三井化学社製)
EP828;アクトコールEP-828(ポリオキシアルキレンポリオール(プロピレンオキサイド-エチレンオキサイドのブロック共重合体)、エチレンオキサイド含有量(末端オキシエチレン基含有量):15質量%、数平均分子量:6000、平均官能基数:3、水酸基価:28mgKOH/g、三井化学社製)
EP3033;アクトコールEP-3033(ポリオキシアルキレンポリオール(プロピレンオキサイド-エチレンオキサイドのブロック共重合体)、エチレンオキサイド含有量(末端オキシエチレン基含有量):16質量%、数平均分子量:6600、平均官能基数:4、水酸基価:34mgKOH/g、三井化学社製)
POP3628;アクトコールPOP-3628(ポリマーポリオール、水酸基価:28mgKOH/g、三井化学社製)
POP3123;アクトコールPOP-3123(ポリマーポリオール、水酸基価:23mgKOH/g、三井化学社製)
33LV;DABCO 33LV(アミン触媒、トリエチレンジアミンの33質量%ジエチレングリコール溶液、エア・プロダクツジャパン社製)
A1;Niax A-1(アミン触媒、モメンティブ社製)
No.25;カオーライザー No.25(アミン触媒、花王社製)
NCE;TOYOCAT-NCE(アミン触媒、東ソー社製)
KL210;アクトコールKL-210(架橋剤、平均官能基数:3.75、水酸基価:840mgKOH/g、三井化学社製)
DEOA;ジエタノールアミン(架橋剤、官能基数:3、水酸基価:1600mgKOH/g)
EP505S;アクトコールEP-505S(連通化剤、ポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオール(プロピレンオキサイド-エチレンオキサイドのランダム共重合体))、エチレンオキサイド含有量:70質量%、数平均分子量:3300、平均官能基数:3、水酸基価:52mgKOH/g、三井化学社製)
DC6070;DC-6070(シリコーン整泡剤、エア・プロダクツジャパン社製)
B8715LF2;B-8715LF2(シリコーン整泡剤、エヴォニック社製)
L5309;L-5309(シリコーン整泡剤、モメンティブ社製)
L3601;L-3601(シリコーン整泡剤、東レ・ダウコーニング社製)
DC2525;DC-2525(シリコーン整泡剤、エア・プロダクツジャパン社製)
TM20;コスモネートTM-20(ポリイソシアネート(2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの80:20質量比の混合物(TDI)80質量%と、ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)20質量%の混合物)、イソシアネート基含有量:45質量%、三井化学社製)
TM50;コスモネートTM-50(ポリイソシアネート(2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの80:20質量比の混合物(TDI)50質量%と、ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)50質量%の混合物)、イソシアネート基含有量:40質量%、三井化学社製)
<ポリウレタンフォームの製造>
(実施例1)
EP330N(ポリオキシアルキレンポリオール)50質量部と、POP3628(ポリマーポリオール)50質量部と、33LV(アミン触媒)0.4質量部と、A1(アミン触媒)0.08質量部と、水(発泡剤)4.6質量部と、KL210(架橋剤)1.5質量部と、EP505S(連通化剤)1.0質量部と、DC6070(整泡剤)1.0質量部と、B8715LF2(整泡剤)0.5質量部と、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスフォニウムクロライド(TTGPC)(難燃剤)0.05質量部とを配合し、それらを混合して、レジンプレミックスを調製した。
【0188】
次いで、得られたレジンプレミックスを、22±1℃に温調しておき、そこに22±1℃に温調したTM20(ポリイソシアネート)55質量部(イソシアネートインデックス:100)を加え、すぐにホモジナイザーにより5000rpmにて6秒間激しく攪拌し、直ちに予め60℃に調節した内寸400mm×400mm×100mmの金型へ注入し、蓋を閉めて発泡させた。その後、金型を60℃に保ったまま5分間硬化反応を進め、金型よりポリウレタンフォームを取り出した。これにより、軟質ポリウレタンフォームを製造した。
(実施例2?実施例5、参考例6?参考例12、実施例13?実施例15、参考例16、実施例17?実施例18および比較例1?比較例9)
表1?表3に記載の配合処方に従って、実施例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォームを製造した。
<ポリウレタンフォームの物性測定>
実施例1?実施例5、参考例6?参考例12、実施例13?実施例15、参考例16、実施例17?実施例18および比較例1?比較例9で製造したポリウレタンフォームの物性を、それぞれ、下記の測定方法で測定し、それぞれのポリウレタンフォームの密度、各物性(硬さ、伸び、引裂強度、熱圧縮永久歪み、コア部の反発弾性)および燃焼性の評価について結果を得た。
【0189】
その結果を表1?表3に示す。
<測定方法>
(1)ポリウレタンフォームの硬度(以下の表中、「25%ILD」とする。)
JIS K-6400(1997)に記載のA法に準拠して、厚さ100mmのポリウレタンフォームについて、その硬さを測定した。
(2)ポリウレタンフォームの伸び
JIS K-6400(1997)に記載の方法に準拠して、伸びを測定した。
(3)ポリウレタンフォームの引裂強度
JIS K-6400(1997)に記載の方法に準拠して、引裂強度を測定した。
(4)ポリウレタンフォームの熱圧縮永久歪み(以下の表中、「Dryset」とする。)
JIS K-6400(1997)に記載の方法に準拠して、熱圧縮永久歪みを測定した。
【0190】
なお、測定に際して、ポリウレタンフォームのコア部を50mm×50mm×25mmに切り出し、これを試験片とした。
【0191】
また、試験片を50%の厚みまで圧縮し、平行平面板にはさみ、70℃の条件下で22時間静置した。その後、試験片を取り出し、30分後にその厚みを測定し、試験前の厚みと比較して歪み率を測定した。
(5)ポリウレタンフォームのコア部の反発弾性(以下の表中、「反発弾性core」とする。)
JIS K-6400(1997)に記載の方法に準拠して、反発弾性を測定した。
(6)燃焼試験(下記の表中、「燃焼性」とする。)
FMVSS-302(2005)に記載の方法に準拠して、水平法により燃焼試験をした。
【0192】
すなわち、ポリウレタンフォームを、縦350mm、横100mm、厚さ12.7mmに切り出し、試験片とした。また、A標線を、試験片の自由端から40mmの位置に設けた。また、試験片の自由端の中心を火源として、燃焼がA標線まで達しなかった場合には、不燃性と評価し、また、A標線には達したものの、A標線に達した後の試験片の燃焼した長さが、A標線から50mm以下の場合には、自己消火性と評価した。
【0193】
そして、燃焼試験の結果について、不燃性となった場合には0点とし、自己消火性となった場合には1点とし、燃焼性(不燃性および自己消火性以外の場合)となった場合には燃焼した距離に応じて点数をつけ(A標線から51mm以上149mm以下の場合には2点、A標線から150mm以上249mm以下の場合には3点、A標線から250mmの場合には4点とした。)、燃焼試験を計4回実施しその合計値で評価した。なお、合計値が小さいほうが難燃性が良好である。
【0194】
【表1】

【0195】
【表2】

【0196】
【表3】

【0197】
<表中の略号の説明>
EP:ポリオキシアルキレンポリオール(ポリエーテルポリオール)
POP:ポリマーポリオール
なお、上記の原料の説明で記載したものの説明は省略している。
【0198】
また、以下の考察において、ポリウレタンフォームへの難燃剤の含有量については、レジンプレミックス中の難燃剤量で比較する。すなわち、全実施例および全比較例において、イソシアネートインデックスは100であることから、各実施例、各参考例および各比較例のポリウレタンフォームへの難燃剤の含有量は、それぞれの実施例、参考例および比較例で原料として用いたレジンプレミックスにおける難燃剤の含有量で比較することができる。
<考察>
他の成分が同組成であるレジンプレミックスにおいて、難燃剤が458ppm含まれている実施例14のポリウレタンフォームと、難燃剤が含まれていない比較例1のポリウレタンフォームとを比較すると、実施例14のポリウレタンフォームでは、比較例1のポリウレタンフォームに比べて、その硬さ、伸びおよび熱圧縮永久歪みが向上し、その引裂強度および反発弾性は維持されている上に、その難燃性も向上していることがわかる。
【0199】
また、実施例14に対して難燃剤以外の処方を変更している実施例1?実施例5のポリウレタンフォームについても、比較例1のポリウレタンフォームと比べて、各物性はほぼ維持されているにもかかわらず、その難燃性が向上していることがわかる。
【0200】
また、ポリオール成分中のポリオキシアルキレンポリオールの含有割合を増加させポリマーポリオールの含有割合を減少させた、実施例17および実施例18のポリウレタンフォームでは、同程度の難燃剤が含まれている実施例15のポリウレタンフォームと比べると、難燃性の向上がやや十分ではないが、他の成分が同組成で難燃剤の含まれていない比較例2および比較例3と比べると、その硬さや反発弾性は維持されている上に、難燃性も向上していることがわかる。
【0201】
また、参考例6?12および実施例13?実施例15、参考例16のポリウレタンフォームでは、レジンプレミックスにおける難燃剤の含有量を9ppmから2469ppmまで変化させているが、難燃剤の含有量を増加させるとポリウレタンフォームの硬さが向上すること、および、難燃剤の含有量を9ppm程度まで減少させてもポリウレタンフォームの難燃性が向上していることがわかる。
【0202】
一方、比較例7?比較例9のポリウレタンフォームでは、難燃剤としてTCPPを18005ppm含むと、ある程度は難燃性が向上するものの、硬さが低下している。一方、TCPPの含有量を減らしていくと、硬さは向上するものの難燃性の向上が不十分になっていくことがわかる。
【0203】
また、比較例4?比較例6のポリウレタンフォームでは、難燃剤として本発明の難燃剤と化学構造が類似する環状ホスファゼン化合物のラビトルFP-110(2,2,4,4,6,6-ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン)を18005ppm含むと、難燃性は少し向上したものの、硬さが低下している。一方、ラビトルFP-110の含有量を減らしていくと、硬さは向上するものの難燃性の向上が不十分になることがわかる。
【0204】
そのため、特定の難燃剤(上記式(1)で示される化合物)を含むポリオール組成物を用いてポリウレタンフォームを製造すれば、得られるポリウレタンフォームは、その硬度などの物性を維持することができながら、その難燃性を向上させることができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
ポリオール組成物と、
触媒と、
発泡剤と
を含み、
前記ポリオール組成物は、
ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリマーポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するポリオール成分と、
難燃剤と
を含み、
前記難燃剤が、下記式(1)で示される化合物であり、
前記難燃剤の含有量が、400ppm以上1500ppm以下である
ことを特徴とする、レジンプレミックス。
【化1】

(式中、R^(1)は、互いに同一または相異なって、水素原子または炭素数1?20の炭化水素基を示し、X^(-)は、アニオンを示す。ただし、R^(1)同士が、互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項4】
請求項3に記載のレジンプレミックスと、
ポリイソシアネート成分と
を反応させることにより得られることを特徴とする、ポリウレタンフォーム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-18 
出願番号 特願2014-242325(P2014-242325)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 尾立 信広  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 橋本 栄和
佐藤 健史
登録日 2019-04-19 
登録番号 特許第6511615号(P6511615)
権利者 三井化学SKCポリウレタン株式会社
発明の名称 レジンプレミックスおよびポリウレタンフォーム  
代理人 岡本 寛之  
代理人 岡本 寛之  

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