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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B41J 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 B41J 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B41J 審判 一部申し立て 2項進歩性 B41J |
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管理番号 | 1372713 |
異議申立番号 | 異議2019-700253 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-04-03 |
確定日 | 2021-03-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6398783号発明「色ムラ検査方法、この色ムラ検査方法を用いたヘッド調整方法、及び、色ムラ検査装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6398783号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、〔8-12〕、13について訂正することを認める。 特許第6398783号の請求項1、2、6ないし8、11ないし13に係る特許を維持する。 特許第6398783号の請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6398783号の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成27年2月26日に出願され、平成30年9月14日にその特許権の設定登録がされ、同年10月3日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成31年 4月 3日 :特許異議申立人鈴木愛子による請求項1?4、6?8、11?13に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 1年 6月21日付け:取消理由通知書 令和 1年 8月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 1年11月15日 :特許異議申立人鈴木愛子による意見書の提出 令和 2年 1月20日付け:訂正拒絶理由通知書 令和 2年 2月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 2年 3月16日付け:却下理由通知書 令和 2年 6月29日付け:手続却下の決定 令和 2年 9月29日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和 2年10月13日付け:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 2 訂正の適否について (1)令和2年10月13日提出の訂正請求書に係る訂正請求について 令和2年10月13日提出の訂正請求書に係る訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第6398783号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?12、13について訂正することを求める。」というものである。 ア 訂正の内容 ア-1 一群の請求項1?12に係る訂正(下線は訂正箇所を示す。以下、同様。) (ア)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記被記録媒体に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」と記載されているのを、「前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」に訂正し、また、特許請求の範囲の請求項1に「前記検査パターンの所定方向における色分布情報」と記載されているのを、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」に訂正し、さらに、特許請求の範囲の請求項1に「前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する」と記載されているのを、「前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2?7も同様に訂正する。 (イ)訂正事項2 明細書の【発明の名称】に「色ムラ検出方法、この色ムラ検出方法を用いたヘッド調整方法、及び、色ムラ検査装置」と記載されているのを、「色ムラ検査方法、この色ムラ検査方法を用いたヘッド調整方法、及び、色ムラ検査装置」に訂正する。 (ウ)訂正事項3 明細書の【0007】に「前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、前記検査パターンの所定方向における色分布情報を取得する色分布取得ステップと、前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する色ムラ検出ステップと、を備えていることを特徴とするものである。」と記載されているのを、「前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得する色分布取得ステップと、前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する色ムラ検出ステップと、を備えていることを特徴とするものである。」に訂正する。 (エ)訂正事項4 明細書の【0008】に「本発明では、まず、複数の第1ノズルと複数の第2ノズルから、被記録媒体に対して、色の異なる第1インクと第2インクをそれぞれ吐出させて、検査パターンを印刷する。そして、この被記録媒体の検査パターンを読取装置で読み取る。次に、検査パターンの画像データから、その検査パターンの、所定方向における色分布情報を取得する。尚、色分布情報とは、画像を、何らかの表色系(RGB表色系やLab表色系など)で示したときの、その表色系における色の数値の分布のことを言う。本発明では、検査パターンの所定方向における色分布情報を取得し、この色分布情報に基づいて、前記所定方向において検査パターンにどのような色ムラが生じているのかを示す、色ムラに関連するパラメータを算出する。これにより、検査パターンの前記所定方向における色ムラの程度を数値的に把握できる。」と記載されているのを、「本発明では、まず、複数の第1ノズルと複数の第2ノズルから、被記録媒体の同じ領域に対して、色の異なる第1インクと第2インクをそれぞれ吐出させて、検査パターンを印刷する。そして、この被記録媒体の検査パターンを読取装置で読み取る。次に、検査パターンの画像データから、横軸を検査パターンの所定方向とし、縦軸を、検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、その検査パターンの所定方向におけるLab色分布情報を取得する。そして、この色分布情報に基づいて、前記所定方向において検査パターンにどのような色ムラが生じているのかを示す、色ムラに関連するパラメータとして、検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する。これにより、検査パターンの前記所定方向における色ムラの程度を数値的に把握できる。」に訂正する。 (オ)訂正事項5 明細書の【0069】に「但し、本発明の色分布情報は、上記のLab色分布情報に限られるものではない。」と記載されているのを、「一方、本発明の参考例において、色分布情報は、上記のLab色分布情報に限られるものではない。」に訂正する。 (カ)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (キ)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (ク)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項5に「請求項4に記載の色ムラ検査方法」と記載されているのを、「請求項1又は2に記載の色ムラ検査方法」に訂正する。 (ケ)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?4の何れかに記載の色ムラ検査方法」と記載されているのを、「請求項1又は2に記載の色ムラ検査方法」に訂正する。 (コ)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?4の何れかに記載の色ムラ検査方法」と記載されているのを、「請求項1又は2に記載の色ムラ検査方法」に訂正する。 (サ)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7の色ムラ検査方法を用いて、」とあるうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改めた上で、「前記被記録媒体に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」との記載を、「前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」に訂正し、また、特許請求の範囲の請求項8に「前記検査パターンの所定方向における色分布情報」と記載されているのを、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」に訂正し、さらに、特許請求の範囲の請求項8に「前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する」と記載されているのを、「前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する」に訂正する。 請求項8の記載を引用する請求項9?12も同様に訂正する。 (シ)訂正事項12 明細書の【0009】に「上記の色ムラ検査方法を用いて、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整する方法であって、前記色ムラ検出ステップで算出された前記パラメータに基づいて、前記被記録媒体に印刷される前記検査パターンの色ムラが小さくなるように、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整することを特徴とするものである。」と記載されているのを、「所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する色ムラ検査方法を用いて、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整する方法であって、前記色ムラ検査方法は、前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの所定方向におけるLab色分布情報を取得する色分布取得ステップと、前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する色ムラ検出ステップと、を備えており、前記色ムラ検出ステップで算出された前記パラメータに基づいて、前記被記録媒体に印刷される前記検査パターンの色ムラが小さくなるように、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整することを特徴とするものである。」に訂正する。 (ス)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項9に「前記色分布取得ステップにおいて、各検査パターンの色分布情報として、横軸を前記所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、Lab色分布情報を取得し、」と記載されているのを、「前記色分布取得ステップにおいて、前記複数の検査パターンのそれぞれの前記Lab色分布情報を取得し、」に訂正(以下「訂正事項13-1」という。)し、また、特許請求の範囲の請求項9に「前記色ムラ検出ステップにおいて、前記複数の検査パターンのそれぞれについて、Lab色分布情報から、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを検出し、」と記載されているのを、「前記色ムラ検出ステップにおいて、前記複数の検査パターンのそれぞれについて、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出し、」に訂正(以下「訂正事項13-2」という。)し、さらに、特許請求の範囲の請求項9に「前記色差のばらつきは、Lab表色系のab平面におけるプロットされた複数のデータが存在する範囲である」との記載を追加する訂正(以下「訂正事項13-3」という。)を行う。 請求項9の記載を引用する請求項11及び12も同様に訂正する。 (セ)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項10に「前記色分布取得ステップにおいて、前記検査パターンの色分布情報として、横軸を前記所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、Lab色分布情報を取得し、前記色ムラ検出ステップにおいて、前記検査パターンのLab色分布情報から、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを検出し、前記色差のばらつきが所定値を超えている場合に、」と記載されているのを、「前記色ムラ検出ステップで算出された前記色差のばらつきが所定値を超えている場合に、」に訂正し、さらに、特許請求の範囲の請求項10に「前記色差のばらつきは、Lab表色系のab平面におけるプロットされた複数のデータが存在する範囲である」との記載を追加する訂正を行う。 請求項10の記載を引用する請求項11及び12も同様に訂正する。 (ソ)別の訂正単位とする求め 訂正後の請求項8及び請求項8を引用する訂正後の請求項9?12について、特許権者は、当該請求項に係る訂正が認められる場合には、請求項1?7とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 ア-2 請求項13に係る訂正 (ア)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項13に「を有するインクジェットヘッドにおいて、」と記載されているのを、「を有するインクジェットヘッドを、」に訂正し、また、特許請求の範囲の請求項13に「前記被記録媒体に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に印刷した、検査パターン」と記載されているのを、「前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に印刷した、検査パターン」に訂正し、また、特許請求の範囲の請求項13に「色ムラを検出する装置」と記載されているのを、「色ムラを検査する装置」に訂正し、また、特許請求の範囲の請求項13に「前記検査パターンの所定方向における色分布情報」と記載されているのを、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」に訂正し、さらに、特許請求の範囲の請求項13に「前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンに生じている色ムラに関連するパラメータを算出する」と記載されているのを、「前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する」に訂正する。 (イ)訂正事項16 明細書の【発明の名称】に「色ムラ検出方法、この色ムラ検出方法を用いたヘッド調整方法、及び、色ムラ検査装置」と記載されているのを、「色ムラ検査方法、この色ムラ検査方法を用いたヘッド調整方法、及び、色ムラ検査装置」に訂正する。 (ウ)訂正事項17 明細書の【0011】に「本発明の検査装置は、」と記載されているのを、「本発明の色ムラ検査装置は、」に訂正し、また、明細書の【0011】に「を有するインクジェットヘッドにおいて、前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に印刷した、検査パターンの色ムラを検出する装置であって、前記被記録媒体の前記検査パターンを読取装置で読み取って得られた、前記検査パターンの画像データから、前記検査パターンの所定方向における色分布情報を取得し、前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンに生じている色ムラに関連するパラメータを算出する、演算装置を備えていることを特徴とするものである。」と記載されているのを、「を有するインクジェットヘッドを、前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に印刷した、検査パターンの色ムラを検査する装置であって、前記被記録媒体の前記検査パターンを読取装置で読み取って得られた、前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得し、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する、演算装置を備えていることを特徴とするものである。」に訂正する。 (エ)訂正事項18 明細書の【0027】に「色ムラ検出を行う検査装置30」と記載されているのを、「色ムラ検査を行う検査装置30」に訂正する。 (オ)訂正事項19 明細書の【0069】に「但し、本発明の色分布情報は、上記のLab色分布情報に限られるものではない。」と記載されているのを、「一方、本発明の参考例において、色分布情報は、上記のLab色分布情報に限られるものではない。」に訂正する。 イ 訂正の適否 イ-1 一群の請求項1?12に係る訂正 (ア)訂正事項1 a 訂正の目的について 訂正事項1のうち、特許請求の範囲の請求項1の「前記被記録媒体に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」と記載されているのを、「前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」に訂正し、また、特許請求の範囲の請求項1に「前記検査パターンの所定方向における色分布情報」と記載されているのを、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」に訂正し、さらに、特許請求の範囲の請求項1に「前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する」と記載されているのを、「前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する」と訂正することは、それぞれ「被記録媒体」、「検査パターン」、「色分布情報」及び「色ムラに関連するパラメータ」を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 同様に、訂正後の請求項2、5?7は、訂正後の請求項1を引用することにより、訂正後の請求項2、5?7における「被記録媒体」、「検査パターン」、「色分布情報」及び「色ムラに関連するパラメータ」を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであり、特許請求の範囲の請求項1、2、5?7の発明特定事項を、具体的に限定するものであるから、その内容を拡張し、又は変更するものには該当しないことも明らかであるから、訂正事項1は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1のうち、「前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」との記載は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0029】における「キャリッジ3とともにインクジェットヘッド5を走査方向に移動させながら、4色のノズル20の全てからそれぞれインクを吐出させて、コンポジットグレーの検査パターン40を、記録用紙100に印刷する。」との記載、及び【0063】における「色についても、4色全ての種類のノズルを使用して検査パターン40を印刷する必要もなく、ブラックとイエローなど、2色のノズルのみを使用して検査パターン40を印刷してもよい。」との記載に基づくものである。 訂正事項1のうち、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」との記載は、本件訂正前の請求項3の記載に基づくものである。 訂正事項1のうち、「前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する」との記載は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0044】における「(ヘッド調整ステップ) 以上のステップで、複数の検査パターン40のそれぞれについて、色ムラのばらつきの程度を示す前記範囲Aを検出したら、この範囲Aが最も小さい検査パターン40を選択する。」及び【0045】における「そして、この記録用紙100の検査パターン40をスキャナ33で読み取り、その画像データから、検査パターン40の、第1方向における色分布情報を取得する。そして、この色分布情報に基づいて、第1方向における色ムラに関連するパラメータ(前記の範囲A)を算出する。これにより、検査パターン40の第1方向における色ムラの程度を数値的に把握することができる。また、この色ムラ(色差のばらつき)が小さくなるようにインクジェットヘッド5の姿勢を調整することで、そのインクジェットヘッド5によって記録用紙100に印刷される画像に生じる色ムラを、効果的に抑制することができる。」との記載に基づくものである。 そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項1に係る本件特許の請求項1、2、6及び7に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項1、2、6及び7に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 本件訂正後の請求項5は、本件訂正後の請求項1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加したものである。 そして、本件訂正後の請求項1に係る発明は、後述する「5 当審の判断」及び「6 取消理由通知(決定の予告)及び令和1年6月21日付けの取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について」のとおり、特許法第36条第4項第1号、第36条第6項第1号、第36条第6項第2号、第29条第1項第3号及び第29条第2項に係る取消理由及び異議申立理由によっては、容易に発明をすることができたものとはいえない。 そうすると、本件訂正後の請求項5に係る発明が、同取消理由及び異議申立理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないとはいえない。 また、他に本件訂正後の請求項5に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって、請求項5に係る訂正は、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件を満たすものである。 特許異議申立人は、“(a)訂正前の請求項4は、「色差のばらつきを検出」と記載され、「検出」と「算出」とは異なる概念であり、(b)そもそも「ばらつき」は算出できるものではなく、(c)「色差のばらつき」が「算出」されることは明細書に記載されていない、から、訂正事項1は、訂正要件を満たさない”、旨主張する。 しかし、上記cのとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0044】及び【0045】の記載を根拠とするものであり、該記載からすれば、色ムラに関連するパラメータである範囲Aが、色差のばらつきの程度を示す数値であることが理解できるのであるから、色ムラに関連するパラメータが算出できる以上、色ムラである色差のばらつきも算出可能であることは明らかである。 してみると、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「パラメータ」を、「パラメータとして色差のばらつき」と訂正することは、「パラメータ」を客観的な数値としての「色差のばらつき」と具体的に限定するものであると認められるし、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載された事項と認められる。 そうすると、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (イ)訂正事項2 a 訂正の目的について 訂正事項2は、明細書の【発明の名称】における「色ムラ検出方法、この色ムラ検出方法を用いたヘッド調整方法、及び、色ムラ検査装置」との記載を、本件訂正前の請求項1の「色ムラ検査方法」という記載と整合を図るためのものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項2は、明細書の【発明の名称】の記載と請求項1の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項2は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項2は、明細書の【発明の名称】の記載と請求項1の記載との整合を図るための訂正であるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項2に係る本件特許の請求項1、2、6及び7に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項1、2、6及び7に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 また、上記aのとおり、訂正事項2は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるから、訂正後の請求項5に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (ウ)訂正事項3 a 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正事項1に係る訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、5?7の記載と明細書の【0007】の記載との整合を図るためのものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項3は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、5?7の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、上記(ア)bのとおり、訂正事項1が、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項3は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項3は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、5?7の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1に対応する訂正であるから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項3に係る本件特許の請求項1、2、6及び7に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項1、2、6及び7に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 また、上記aのとおり、訂正事項3は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項5に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (エ)訂正事項4 a 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正事項1に係る訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、5?7の記載と明細書の【0008】の記載との整合を図るためのものであるから、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項4は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、5?7の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、上記(ア)bのとおり、訂正事項1が、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項4は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項4は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、5?7の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1に対応する訂正であるから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項4に係る本件特許の請求項1、2、6及び7に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項1、2、6及び7に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 また、上記aのとおり、訂正事項4は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項5に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (オ)訂正事項5 a 訂正の目的について 訂正事項5は、明細書の【0069】における「但し、本発明の色分布情報は、上記のLab色分布情報に限られるものではない。」との記載を、訂正事項1に係る訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、5?7と明細書の記載との整合を図るため、訂正後の請求項1、2、5?7、8?12に包含されなくなるLab色分布情報以外の色分布情報を参考例とし、「一方、本発明の参考例において、色分布情報は、上記のLab色分布情報に限られるものではない。」と訂正するものであるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項5は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、5?7、8?12の記載と明細書の記載との整合を図るため、訂正後の請求項1、2、5?7、8?12に包含されなくなるLab色分布情報以外の色分布情報を参考例とするものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項5は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項5は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、5?7、8?12の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1に対応する訂正であるから、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項5に係る本件特許の請求項1、2、6?8、11及び12に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項1、2、6?8、11及び12に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 また、上記aのとおり、訂正事項5は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項5、9及び10に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (カ)訂正事項6 a 訂正の目的について 訂正事項6は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、当該訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項6に係る本件特許の請求項3に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項3に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (キ)訂正事項7 a 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項7は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、当該訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項7に係る本件特許の請求項4に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項4に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (ク)訂正事項8 a 訂正の目的について 訂正事項8は、本件訂正前の請求項5が本件訂正前の請求項4を引用するものであったところ、上記訂正事項1により、訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4の発明特定事項を全て有し、これに、記録媒体の「同じ領域」という限定を加えたものとなり、訂正後の請求項2は、訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4の発明特定事項を全て有し、これに、記録媒体の「同じ領域」という限定を加えたものとなった。 そうすると、引用する請求項を、訂正前の請求項1?4から、訂正後の請求項1又は2に訂正する訂正事項8は、実質的に、訂正前の請求項5に記録媒体の「同じ領域」という限定を付加する訂正と認められる。 したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項8は、実質的に、訂正前の請求項5に記録媒体の「同じ領域」という限定を付加する訂正と認められる。 そして、訂正事項8の被記録媒体の「同じ領域」との限定は、上記(ア)cで説示したとおりであるから、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件訂正後の請求項5は、本件訂正後の請求項1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加したものである。 そして、本件訂正後の請求項1に係る発明は、後述する「5 当審の判断」及び「6 取消理由通知(決定の予告)及び令和1年6月21日付けの取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について」のとおり、特許法第36条第4項第1号、第36条第6項第1号、第36条第6項第2号、第29条第1項第3号及び第29条第2項に係る取消理由及び異議申立理由によっては、容易に発明をすることができたものとはいえない。 そうすると、本件訂正後の請求項5に係る発明が、同取消理由及び異議申立理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないとはいえない。 また、他に本件訂正後の請求項5に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって、請求項5に係る訂正は、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件を満たすものである。 (ケ)訂正事項9 a 訂正の目的について 訂正事項9は、本件訂正前の請求項6が本件訂正前の請求項1?4を引用するものであったところ、上記訂正事項1により、訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4の発明特定事項を全て有し、これに、記録媒体の「同じ領域」という限定を加えたものとなり、訂正後の請求項2は、訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4の発明特定事項を全て有し、これに、記録媒体の「同じ領域」という限定を加えたものとなった。 そうすると、引用する請求項を、訂正前の請求項1?4から、訂正後の請求項1又は2に訂正する訂正事項9は、実質的に、訂正前の請求項6に記録媒体の「同じ領域」という限定を付加する訂正と認められる。 したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項9は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項9は、実質的に、訂正前の請求項6に記録媒体の「同じ領域」という限定を付加する訂正と認められる。 そして、訂正事項9の被記録媒体の「同じ領域」との限定は、上記(ア)cで説示したとおりであるから、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項9に係る本件特許の請求項6に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項6に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (コ)訂正事項10 a 訂正の目的について 訂正事項10は、本件訂正前の請求項7が本件訂正前の請求項1?4を引用するものであったところ、上記訂正事項1により、訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4の発明特定事項を全て有し、これに、記録媒体の「同じ領域」という限定を加えたものとなり、訂正後の請求項2は、訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4の発明特定事項を全て有し、これに、記録媒体の「同じ領域」という限定を加えたものとなった。 そうすると、引用する請求項を、訂正前の請求項1?4から、訂正後の請求項1又は2に訂正する訂正事項10は、実質的に、訂正前の請求項7に記録媒体の「同じ領域」という限定を付加する訂正と認められる。 したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項10は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項10は、実質的に、訂正前の請求項7に記録媒体の「同じ領域」という限定を付加する訂正と認められる。 そして、訂正事項10の被記録媒体の「同じ領域」との限定は、上記(ア)cで説示したとおりであるから、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項10に係る本件特許の請求項7に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項7に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (サ)訂正事項11 a 訂正の目的について 訂正事項11は、訂正前の請求項8に「請求項1?7の色ムラ検査方法を用いて、」とあるところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式に改めるための訂正であり、訂正後の請求項9?12は、訂正後の請求項8を引用することにより、請求項1?7を引用しないものとなるから、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項11は、訂正前の請求項8の「前記被記録媒体に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」と記載されているのを、「前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」に訂正し、また、訂正前の請求項8に「前記検査パターンの所定方向における色分布情報」と記載されているのを、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」に訂正し、さらに、訂正前の請求項8に「前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する」と記載されているのを、「前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する」と訂正することは、それぞれ「被記録媒体」、「検査パターン」、「色分布情報」及び「色ムラに関連するパラメータ」を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 同様に、訂正後の請求項9?12は、訂正後の請求項8を引用することにより、訂正後の請求項9?12における「被記録媒体」、「検査パターン」、「色分布情報」及び「色ムラに関連するパラメータ」を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項11は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであり、特許請求の範囲の請求項8?12の発明特定事項を、具体的に限定するものであるから、その内容を拡張し、又は変更するものには該当しないことも明らかであるから、訂正事項11は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項11のうち、「所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する色ムラ検査方法を用いて、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整する方法であって、色ムラ検査方法は、前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置でみ取る読取ステップと、前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、前記検査パターンの所定方向における色分布情報を取得する色分布取得ステップと、前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する色ムラ検出ステップと、を備えており、前記色ムラ検出ステップで算出された前記パラメータに基づいて、前記被記録媒体に印刷される前記検査パターンの色ムラが小さくなるように、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整することを特徴とするヘッド調整方法」との記載は、訂正前の請求項8に「請求項1?7の色ムラ検査方法を用いて、」とあるところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式に改めることによる、訂正前の請求項1の記載に基づくものである。 訂正事項11のうち、「前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」との記載は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0029】における「キャリッジ3とともにインクジェットヘッド5を走査方向に移動させながら、4色のノズル20の全てからそれぞれインクを吐出させて、コンポジットグレーの検査パターン40を、記録用紙100に印刷する。」との記載、及び【0063】における「色についても、4色全ての種類のノズルを使用して検査パターン40を印刷する必要もなく、ブラックとイエローなど、2色のノズルのみを使用して検査パターン40を印刷してもよい。」との記載に基づくものである。 訂正事項11のうち、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」との記載は、本件訂正前の請求項3の記載に基づくものである。 訂正事項11のうち、「前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する」との記載は、本件訂正前の請求項4の記載に基づくものである。 そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項11に係る本件特許の請求項8、11及び12に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項8に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 本件訂正後の請求項8は、本件訂正後の請求項1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加し、「ヘッド調整方法」としたものである。そして、本件訂正後の請求項9及び10は、本件訂正後の請求項8を引用するものである。 そして、本件訂正後の請求項1に係る発明は、後述する「5 当審の判断」及び「6 取消理由通知(決定の予告)及び令和1年6月21日付けの取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について」のとおり、特許法第36条第4項第1号、第36条第6項第1号、第36条第6項第2号、第29条第1項第3号及び第29条第2項に係る取消理由及び異議申立理由によっては、容易に発明をすることができたものとはいえない。 そうすると、本件訂正後の請求項9及び10に係る発明が、同取消理由及び異議申立理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないとはいえない。 また、他に本件訂正後の請求項9及び10に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって、請求項9及び10に係る訂正は、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)に適合するものである。 (シ)訂正事項12 a 訂正の目的について 訂正事項12は、訂正事項11に係る訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の請求項8?12の記載と明細書の【0009】の記載との整合を図るためのものであるから、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項12は、訂正後の特許請求の範囲の請求項8?12の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、上記(サ)bのとおり、訂正事項11が、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項12は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項12は、訂正後の特許請求の範囲の請求項8?12の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項11に対応する訂正であるから、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項12に係る本件特許の請求項8、11及び12に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項8、11及び12に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 上記aのとおり、訂正事項12は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項9及び10に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (ス)訂正事項13 a 訂正の目的について 訂正事項13のうち、訂正事項13-1は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9において「各検査パターンの色分布情報として、横軸を前記所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、Lab色分布情報」と記載されていたものを、訂正前の特許請求の範囲の請求項9が引用する請求項8に「横軸を所定方向とし、縦軸を、検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした」と限定する上記訂正事項11に係る訂正と整合をとり、かつ、訂正前の「色分布情報」が複数の各検査パターンに共通のものであるのか否か定かでなかったところ、「複数の検査パターンのそれぞれの色分布情報」と明瞭な記載とするものであるから、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 訂正事項13のうち、訂正事項13-2は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9において、「前記色ムラ検出ステップにおいて、前記複数の検査パターンのそれぞれについて、Lab色分布情報から、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを検出し、」と記載されていたものを、訂正前の特許請求の範囲の請求項9が引用する請求項8が請求項1を引用するものについて独立形式に改めた上記訂正事項11に係る訂正と整合を図るためのものであるから、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 訂正事項13のうち、訂正事項13-3は、「色差のばらつき」を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 同様に、訂正後の請求項11及び12は、訂正後の請求項9を引用することにより、上記訂正事項11に係る訂正と整合をとり、訂正前の「色分布情報」を明瞭な記載とし、訂正前の「色差のばらつき」を具体的に限定するものであるから、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」及び第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項13-1は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項9、11及び12において整合を図るものであって、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 訂正事項13-2は、上記訂正事項11に係る訂正に伴い、本件訂正後の請求項8と請求項9、11及び12との整合をとるための訂正であるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 訂正事項13-3は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであり、特許請求の範囲の請求項9、11及び12の発明特定事項を、具体的に限定するものであるから、その内容を拡張し、又は変更するものには該当しないことも明らかであるから、訂正事項13は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項13-1は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項9、11及び12において整合を図るための訂正であるから、訂正事項13-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 訂正事項13-2は、本件訂正後の請求項8と請求項9、11及び12との整合をとるための訂正であるから、訂正事項13-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 訂正事項13-3は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0041】における「図6(c)のab平面において、プロットされた複数のデータが存在する範囲Aが小さいほど、その元となる検査パターン40内での色差のばらつき、即ち、色ムラは小さいと判断できる。即ち、上記範囲Aが、本発明における、「検査パターン40の色ムラに関連するパラメータ」である。」との記載、及び【0054】における「Lab色分布情報の、ab平面における複数のデータの、前記直線方向における範囲Bを算出する。範囲Bが小さいほど、シアンの色相方向における色差のばらつきが小さくなる。即ち、この範囲Bが、シアンに起因する色差のばらつきの程度を示す。尚、範囲Bが、本発明における「色ムラに関連するパラメータ」に相当する。」との記載に基づくものであるから、訂正事項13-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項13に係る本件特許の請求項11及び12に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項11及び12に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 本件訂正後の請求項8は、本件訂正後の請求項1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加し、「ヘッド調整方法」としたものである。そして、本件訂正後の請求項9は、本件訂正後の請求項8を引用するものである。 そして、本件訂正後の請求項1に係る発明は、後述する「5 当審の判断」及び「6 取消理由通知(決定の予告)及び令和1年6月21日付けの取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について」のとおり、特許法特許法第36条第4項第1号、第36条第6項第1号、第36条第6項第2号、第29条第1項第3号及び第29条第2項に係る取消理由及び異議申立理由によっては、容易に発明をすることができたものとはいえない。 そうすると、本件訂正後の請求項9に係る発明が、同取消理由及び異議申立理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないとはいえない。 また、他に本件訂正後の請求項9に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって、請求項9に係る訂正は、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)に適合するものである。 (セ)訂正事項14 a 訂正の目的について 訂正事項14のうち、訂正前の請求項10に「前記色分布取得ステップにおいて、前記検査パターンの色分布情報として、横軸を前記所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、Lab色分布情報を取得し、前記色ムラ検出ステップにおいて、前記検査パターンのLab色分布情報から、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを検出し、前記色差のばらつきが所定値を超えている場合に、」と記載されているのを、「前記色ムラ検出ステップで算出された前記色差のばらつきが所定値を超えている場合に、」と、上記訂正事項11に係る訂正に伴う訂正であるから、訂正事項14は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項14のうち、訂正前の請求項10に記載された「色差のばらつき」を「前記色差のばらつきは、Lab表色系のab平面におけるプロットされた複数のデータが存在する範囲である」と訂正することは、「色差のばらつき」を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正後の請求項11及び12は、訂正後の請求項10を引用することにより、訂正後の請求項11及び12の「色差のばらつき」をより具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項14は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであること及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであり、特許請求の範囲の請求項8の発明特定事項を、具体的に限定するものであるから、その内容を拡張し、又は変更するものには該当しないことも明らかであるから、訂正事項14は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項14のうち、「前記色ムラ検出ステップで算出された前記色差のばらつきが所定値を超えている場合に、」と、上記訂正することは、上記訂正事項11に伴う訂正であって、実質的な内容の変更を伴うものではない。 また、訂正事項14のうち、「前記色差のばらつきは、Lab表色系のab平面におけるプロットされた複数のデータが存在する範囲である」との記載は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0041】における「図6(c)のab平面において、プロットされた複数のデータが存在する範囲Aが小さいほど、その元となる検査パターン40内での色差のばらつき、即ち、色ムラは小さいと判断できる。即ち、上記範囲Aが、本発明における、「検査パターン40の色ムラに関連するパラメータ」である。」との記載、及び【0054】における「Lab色分布情報の、ab平面における複数のデータの、前記直線方向における範囲Bを算出する。範囲Bが小さいほど、シアンの色相方向における色差のばらつきが小さくなる。即ち、この範囲Bが、シアンに起因する色差のばらつきの程度を示す。尚、範囲Bが、本発明における「色ムラに関連するパラメータ」に相当する。」との記載に基づくものである。 そうすると、訂正事項14は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項14に係る本件特許の請求項11及び12に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項11及び12に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 本件訂正後の請求項8は、本件訂正後の請求項1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加し、「ヘッド調整方法」としたものである。そして、本件訂正後の請求項10は、本件訂正後の請求項8を引用するものである。 そして、本件訂正後の請求項1に係る発明は、後述する「5 当審の判断」及び「6 取消理由通知(決定の予告)及び令和1年6月21日付けの取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について」のとおり、特許法特許法第36条第4項第1号、第36条第6項第1号、第36条第6項第2号、第29条第1項第3号及び第29条第2項に係る取消理由及び異議申立理由によっては、容易に発明をすることができたものとはいえない。 そうすると、本件訂正後の請求項10に係る発明が、同取消理由及び異議申立理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないとはいえない。 また、他に本件訂正後の請求項10に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって、請求項10に係る訂正は、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)に適合するものである。 (ソ)一群の請求項について 訂正前の請求項1乃至12について、請求項2乃至12は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1乃至12に対応する訂正後の請求項1乃至12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 イ-2 一群の請求項13に係る訂正 (ア)訂正事項15について a 訂正の目的について 訂正事項15のうち、特許請求の範囲の請求項13の「を有するインクジェットヘッドにおいて、前記インクジェットヘッドを」及び「色ムラを検出する装置」と記載されているのを、「を有するインクジェットヘッドを、」及び「色ムラを検査する装置」と訂正すること(以下「訂正事項15-1」という。)は、明らかな誤記を正しい記載に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項15のうち、特許請求の範囲の請求項13の「前記被記録媒体に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」と記載されているのを、「前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」に訂正し、また、特許請求の範囲の請求項13に「前記検査パターンの所定方向における色分布情報」と記載されているのを、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」に訂正し、さらに、特許請求の範囲の請求項13に「前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する」と記載されているのを、「前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する」と訂正すること(以下「訂正事項15-2」という。)は、それぞれ「被記録媒体」、「検査パターン」、「色分布情報」及び「色ムラに関連するパラメータ」を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項15-1は、特許請求の範囲の請求項13の誤記を正しい記載に訂正するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであり、また、訂正事項15-2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであり、特許請求の範囲の請求項13の発明特定事項を、具体的に限定するものであるから、その内容を拡張し、又は変更するものには該当しないことも明らかであるから、訂正事項15は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項15-1の「を有するインクジェットヘッドを、」及び「色ムラを検査する装置」との記載は、誤記を正しい記載に訂正するものである。 訂正事項15-2のうち、「前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に印刷した、検査パターン」との記載は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0029】における「キャリッジ3とともにインクジェットヘッド5を走査方向に移動させながら、4色のノズル20の全てからそれぞれインクを吐出させて、コンポジットグレーの検査パターン40を、記録用紙100に印刷する。」との記載、及び【0063】における「色についても、4色全ての種類のノズルを使用して検査パターン40を印刷する必要もなく、ブラックとイエローなど、2色のノズルのみを使用して検査パターン40を印刷してもよい。」との記載に基づくものである。 訂正事項15-2のうち、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」との記載は、本件訂正前の請求項3の記載に基づくものである。 訂正事項15-2のうち、「前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する」との記載は、本件訂正前の請求項4の記載に基づくものである。 そうすると、訂正事項15は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項15に係る本件特許の請求項13に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項13に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (イ)訂正事項16 a 訂正の目的について 訂正事項16は、明細書の【発明の名称】における「色ムラ検出方法、この色ムラ検出方法を用いたヘッド調整方法、及び、色ムラ検査装置」との記載を、本件訂正前の請求項1の「色ムラ検査方法」という記載と整合を図るためのものであるから、訂正事項16は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項16は、明細書の【発明の名称】の 記載と請求項1の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項16は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項16は、明細書の【発明の名称】の 記載と請求項1の記載との整合を図るための訂正であるから、訂正事項16は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項16に係る本件特許の請求項13に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項13に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (ウ)訂正事項17 a 訂正の目的について 訂正事項17は、明細書の【0011】における「本発明の検査装置は、」との記載を、本件訂正前の請求項13の「色ムラ検査装置」との記載に基づいて、「本発明の色ムラ検査装置は、」と訂正するものであるから、訂正事項17は、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項17は、訂正事項15に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、訂正事項17は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項17は、明細書の誤記を正しい記載に訂正するものであり、また、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項17は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項17は、明細書の誤記を正しい記載に訂正するものであり、また、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項15に対応する訂正であるから、訂正事項17は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項17に係る本件特許の請求項13に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項13に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (エ)訂正事項18 a 訂正の目的について 訂正事項18は、明細書の【0027】における「色ムラ検出を行う検査装置30」との記載を、本件訂正前の請求項13の「色ムラ検査装置」との記載に基づいて、「色ムラ検査を行う検査装置30」と訂正するものであるから、訂正事項18は、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項18は、明細書の誤記を正しい記載に訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項18は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項18は、明細書の誤記を正しい記載に訂正するものであるから、訂正事項18は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項18に係る本件特許の請求項13に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項13に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (オ)訂正事項19 a 訂正の目的について 訂正事項19は、明細書の【0069】における「但し、本発明の色分布情報は、上記のLab色分布情報に限られるものではない。」との記載を、訂正事項15に係る訂正に伴い、特許請求の範囲特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るため、訂正後の請求項13に包含されなくなるLab色分布情報以外の色分布情報を参考例とし、「一方、本発明の参考例において、色分布情報は、上記のLab色分布情報に限られるものではない。」と訂正するものであるから、訂正事項19は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項19は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項19は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aのとおり、訂正事項19は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項15に対応する訂正であるから、訂正事項19は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項19に係る本件特許の請求項13に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正後の請求項13に係る発明については、特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。 (カ)一群の請求項13に係る訂正について 以上のとおり、請求項13に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項13について訂正を認める。 ウ 訂正に係る検討のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号乃至第4号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4号及び第9項において準用する同法第126条第4項乃至第7項の規定に適合するので,本件特許請求の範囲及び明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項[1ないし7]、[8ないし12]、13について訂正することを認める。 3 訂正後の本件発明 上記「2 訂正の適否について」のとおり、本件訂正は認められるから、上記訂正請求により訂正された請求項1乃至4、6乃至8、11乃至13に係る発明(以下、順に「本件訂正特許発明1」乃至「本件訂正特許発明4」、「本件訂正特許発明6」乃至「本件訂正特許発明8」及び「本件訂正特許発明11」乃至「本件訂正特許発明13」といい、以上をまとめて「本件訂正特許発明」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、 前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、 を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する方法であって、 前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、 前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、 前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得する色分布取得ステップと、 前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する色ムラ検出ステップと、 を備えていることを特徴とする色ムラ検査方法。 【請求項2】 前記パターン印刷ステップにおいて、全ての前記第1ノズルと全ての前記第2ノズルからそれぞれインクを吐出させて、前記被記録媒体に前記検査パターンを印刷することを特徴とする請求項1に記載の色ムラ検査方法。 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項6】 前記色分布取得ステップにおいて、前記検査パターンの、前記インクジェットヘッドの前記ノズル配列方向に対応する方向における、色分布情報を取得することを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の色ムラ検査方法。 【請求項7】 前記色分布取得ステップにおいて、取得した前記色分布情報に対して、前記所定方向における移動平均処理を行うことを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の色ムラ検査方法。 【請求項8】 所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する色ムラ検査方法を用いて、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整する方法であって、 前記色ムラ検査方法は、 前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、 前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、 前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得する色分布取得ステップと、 前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する色ムラ検出ステップと、 を備えており、 前記色ムラ検出ステップで算出された前記パラメータに基づいて、前記被記録媒体に印刷される前記検査パターンの色ムラが小さくなるように、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整することを特徴とするヘッド調整方法。 【請求項11】 前記色ムラ検出ステップで算出された前記パラメータに基づいて、前記インクジェットヘッドを、前記第1ノズル及び前記第2ノズルが配置されたインク吐出面と平行な平面内で回転させて、前記インクジェットヘッドの姿勢を変更することを特徴とする請求項8?10の何れかに記載のヘッド調整方法。 【請求項12】 前記インクジェットヘッドは、前記複数の第1ノズルを有する第1ヘッドユニットと、前記複数の第2ノズルを有し、且つ、前記第1ヘッドユニットと前記ノズル配列方向と直交する方向に並んで配置される第2ヘッドユニットとを備えるものであり、 前記色ムラ検出ステップで算出された前記パラメータに基づいて、前記第1ヘッドユニットと前記第2ヘッドユニットの間の、前記ノズル配列方向における相対位置を変更することを特徴とする請求項8?10の何れかに記載のヘッド調整方法。 【請求項13】 所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッドを、前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に印刷した、検査パターンの色ムラを検査する装置であって、 前記被記録媒体の前記検査パターンを読取装置で読み取って得られた、前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得し、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する、演算装置を備えていることを特徴とする色ムラ検査装置。」 4 取消理由通知(決定の予告)及び令和1年6月21日付けの取消理由通知の概要 (1)取消理由1(サポート要件)本件特許発明1?4、6?8、11?13は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア 「検査パターン」について 本件特許発明1?4、6?8、11?13の特許請求の範囲は、「検査パターン」について、「第1のインクによる検査パターンと第2のインクによる検査パターンとが同じ領域に重ねられたパターン」以外のものも包含し、上記本件訂正特許発明の課題を解決するものとはいえないから、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。 イ 「色分布情報」について 本件特許発明1、2、6?8、11?13の特許請求の範囲は、「色分布情報」について、「Lab表色系におけるL値、a値、及び、b値」以外のものも包含し、上記本件訂正特許発明の課題を解決するものとはいえないから、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。 ウ 「色ムラに関連するパラメータ」について 本件特許発明1?4、6?8、11?13の特許請求の範囲は、「色ムラに関連するパラメータ」について、「Lab表色系のab平面におけるプロットされた複数のデータが存在する範囲」以外のものも包含し、上記本件訂正特許発明の課題を解決するものとはいえないから、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。 (2)取消理由2(新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、下記請求項に係る特許は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明に対してなされたものである。 ・請求項:1?3、6?8、13 ・刊行物:1.特開2012-6386号公報(甲第1号証) 2.特開2012-101441号公報(甲第2号証) 6.特開2009-143152号公報(甲第6号証) (3)取消理由3(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ・請求項:1?3、6?8、11?13 ・刊行物:1.特開2012-6386号公報(甲第1号証) 2.特開2012-101441号公報(甲第2号証) 3.特開平3-114761号公報(甲第3号証) 4.特開平5-42685号公報(甲第4号証) 5.特開平2009-137015号公報(甲第5号証) 6.特開2009-143152号公報(甲第6号証) 7.特開2011-218657号公報(甲第7号証) 8.特開平5-238004号公報(甲第8号証) 5 当審の判断 (1)取消理由1(特許法第36条第6項第1号)について ア 本件訂正特許発明の課題とその解決手段 本件特許明細書の【0002】、【0005】及び【0006】の記載より、本件訂正特許発明は、「色ムラの程度を効果的に検出すること」あるいは「その検出結果を用いて上記の色ムラを効果的に抑制すること」を課題とするものであって、特に、「同じ色のインクを吐出する複数のノズルの配列ピッチが均等ではなく一部において不均等になっている場合、あるいは、異なる色のインクを吐出するノズルの間で配列ピッチが一致しない場合に起因する色ムラの発生を抑制すること」を目的(課題)とするものであると認められる。 そして、本件特許明細書の【0007】?【0012】の記載より、本件訂正特許発明は、“複数の第1ノズルと複数の第2ノズルから、被記録媒体に対して、色の異なる第1インクと第2インクをそれぞれ吐出させて、検査パターンを印刷し、この被記録媒体の検査パターンを読取装置で読み取り、次に、検査パターンの画像データから、その検査パターンの、所定方向における色分布情報を取得し、この色分布情報に基づいて、前記所定方向において検査パターンにどのような色ムラが生じているのかを示す、色ムラに関連するパラメータを算出すること”を上記課題を解決するための手段とするものである。 ここで、本件訂正特許発明の「色ムラ」とは、本件特許明細書に「【0024】…本来、ノズル配列方向において同じ位置にある4色のノズル20からそれぞれ吐出された、4色のインクは、記録用紙100上において同じ位置に着弾して1つの画素を形成するのが理想である。しかし、4色のノズル20の位置が互いにずれると、それら4色のノズル20からそれぞれ吐出された4色のインクの、記録用紙100上における着弾位置がずれてしまうため、画像に色ムラが生じる。」と記載され、そして、本件訂正特許発明の「検査パターン」とは、本件特許明細書に「【0029】…キャリッジ3とともにインクジェットヘッド5を走査方向に移動させながら、4色のノズル20の全てからそれぞれインクを吐出させて、コンポジットグレーの検査パターン40を、記録用紙100に印刷する。…」及び「【0063】…色についても、4色全ての種類のノズルを使用して検査パターン40を印刷する必要もなく、ブラックとイエローなど、2色のノズルのみを使用して検査パターン40を印刷してもよい。」と記載されていることからして、本件特許明細書から把握される上記課題を解決するための手段である「検査パターン」とは、「第1のインクと第2のインクとが同じ位置に着弾することによって、第1のインクによる検査パターンと第2のインクによる検査パターンとが同じ領域に重ねられたパターン」であると認められる。 また、本件訂正特許発明の「色分布情報」とは、本件特許明細書に「【0008】…画像を、何らかの表色系(RGB表色系やLab表色系など)で示したときの、その表色系における色の数値の分布…」と記載されているものの、「【0035】…従って、検査パターン40の色分布情報を、Lab表色系におけるL値、a値、及び、b値で示したLab色分布情報とすることで、人間の目の感覚に近い色ムラの程度を、数値によって把握することができるようになる。【0036】尚、上記のRGB表色系は、スキャナ33による依存性が存在する。つまり、どのタイプのスキャナ33で画像データを取得したかによって、RGB輝度分布が多少変化する。これに対して、Lab表色系は、スキャナ33による依存性がない。即ち、どのようなスキャナ33で画像データを取得しても、Lab表色系で示したときの色分布情報は同じになる。【0037】装置依存性のあるRGB表色系でのRGB輝度情報を、装置依存性のないLab色分布情報に変換するためには、RGB→Labに変換するための変換式が必要である。この変換式は、使用するスキャナ33について事前に取得しておく。そして、検査パターン40の画像データからRGB輝度情報を取得したら、先に取得した変換式を用いて、図6(b)に示すLab色分布情報に変換する。」との記載からすると、RGB表色系の「色分布情報」の場合は、「色分布情報」から、直接、「色ムラ」を把握することはできず、変換式が必要となるものと認められる。 また、Lab表色系以外の表色系の「色分布情報」から、「人間の目の感覚に近い色ムラの程度を、数値によって把握することができるようになる」のかまでは本件特許明細書に記載されていない。 そうすると、本件特許明細書から把握される上記課題を解決するための手段である「色分布情報」とは、「Lab表色系におけるL値、a値、及び、b値」であると認められる。 また、本件訂正特許発明の「検査パターンの色ムラに関連するパラメータ」について、本件特許明細書の「【0041】…図6(c)のab平面において、プロットされた複数のデータが存在する範囲Aが小さいほど、その元となる検査パターン40内での色差のばらつき、即ち、色ムラは小さいと判断できる。即ち、上記範囲Aが、本発明における、「検査パターン40の色ムラに関連するパラメータ」である。」、「【0045】…4色のノズル20(20k,20y,20c,20m)から、記録用紙100に対して、4色のインクをそれぞれ吐出させて検査パターン40を印刷する。そして、この記録用紙100の検査パターン40をスキャナ33で読み取り、その画像データから、検査パターン40の、第1方向における色分布情報を取得する。そして、この色分布情報に基づいて、第1方向における色ムラに関連するパラメータ(前記の範囲A)を算出する。これにより、検査パターン40の第1方向における色ムラの程度を数値的に把握することができる。また、この色ムラ(色差のばらつき)が小さくなるようにインクジェットヘッド5の姿勢を調整することで、そのインクジェットヘッド5によって記録用紙100に印刷される画像に生じる色ムラを、効果的に抑制することができる。」、「【0053】次に、Lab色分布情報に基づいて、検査パターン40にどの程度の色ムラが生じているのかを検出する(S14)。図10は、第2実施形態の色ムラ検出ステップの説明図である。図10には、前記第1実施形態の図6(c)と同様、Lab色分布情報をab平面にプロットした図が示されている。図9のように、シアンのヘッドユニット61cの調整を行う場合を例に挙げて説明する。シアンのヘッドユニット61cの、搬送方向における相対位置を変化させて検査パターン40を印刷すると、検査パターン40におけるシアンの色合いが変化する。先にも説明したが、Lab表色系のab平面では、色相は、a軸からの色相角度θ(図6(c)参照)で表される。そして、シアンのヘッドユニット61cの位置を変化させると、シアン単色を示すab平面上の基準点(a1,b1)と原点を結ぶ直線の方向、即ち、シアンの色相方向に沿って、検査パターン40のab値が変化する。【0054】そこで、シアンのヘッドユニット61cの位置を調整する場合には、Lab色分布情報の、ab平面における複数のデータの、前記直線方向における範囲Bを算出する。範囲Bが小さいほど、シアンの色相方向における色差のばらつきが小さくなる。即ち、この範囲Bが、シアンに起因する色差のばらつきの程度を示す。尚、範囲Bが、本発明における「色ムラに関連するパラメータ」に相当する。」との記載からすると、本件特許明細書から把握される上記課題を解決するための手段である「検査パターンの色ムラに関連するパラメータ」とは、「検査パターンの、所定方向(第1方向)における色分布情報に基づいて算出した色差のばらつき」であると認められる。 イ 各請求項について そこで上記アの検討に照らして、各請求項について以下検討する。 (ア)「検査パターン」について 本件訂正特許発明1、2、6?8、11、12の特許請求の範囲には、「検査パターン」について、「複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷する」と記載され、また、本件訂正特許発明13の特許請求の範囲には、「複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に印刷した、検査パターンの色ムラを検査する」と記載されていることから、本件訂正特許発明1、2、6?8、11?13の「検査パターン」とは、「複数の第1ノズルと複数の第2ノズルから、被記録媒体の同じ領域に向けて第1のインクと第2のインクを吐出させて、被記録媒体に印刷」したものであると認められる。 そうすると、本件訂正特許発明1、2、6?8、11?13の特許請求の範囲には、上記アで認定した本件特許明細書から把握される上記課題を解決するための手段である「検査パターン」が記載されているのであるから、本件訂正特許発明の課題を解決する手段が反映されているといえる。 (イ)「色分布情報」について 本件訂正特許発明1、2、6?8、11?13の特許請求の範囲には、「色分布情報」について、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」と記載されていることから、本件訂正特許発明1、2、6?8、11?13の「色分布情報」とは、「横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」であると認められる。 そうすると、本件訂正特許発明1、2、6?8、11?13の特許請求の範囲には、上記イで認定した本件特許明細書から把握される上記課題を解決するための手段である「色分布情報」が記載されているのであるから、本件訂正特許発明の課題を解決する手段が反映されているといえる。 (ウ)「色ムラに関連するパラメータ」について 本件訂正特許発明1、2、6?8、11?13の特許請求の範囲には、「色ムラに関連するパラメータ」について、「検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの所定方向における色差のばらつきを算出」と記載されていることから、本件訂正特許発明1、2、6?8、11?13の「色ムラに関連するパラメータ」とは、「検査パターンのLab色分布情報に基づいて」、「検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出」したものであると認められる。 そうすると、本件訂正特許発明1、2、6?8、11?13の特許請求の範囲には、上記ウで認定した本件特許明細書から把握される上記課題を解決するための手段である「色ムラに関連するパラメータ」が記載されているのであるから、本件訂正特許発明の課題を解決する手段が反映されているといえる。 特許異議申立人は、“本件特許発明の「前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する」ことは、Lab色分布情報における各Lab値のうちのa値及びb値を用いてab平面上の2次元で算出されたもの以外のもの、例えば、各Lab値のLab値、a値、b値のいずれか1つのみを用いて1次元で算出されたものや、各Lab値のLab値、a値、b値の全てを用いて3次元で算出されたものを包含し、この場合にどのように算出が行われるのか不明であり、本件特許発明の課題を解決するものとはいえないから、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。”旨、主張する。 そこで検討すると、明細書の【0041】には、「Lab表色系は、その色空間内での2色の距離が同じであれば、人間の目でも同じ色違いに感じられるように、色空間内での2色の距離=2色の色差となるように設計されている。」と記載されていることから、本件訂正特許発明1の「色ムラに関連するパラメータ」とは、「ab平面において、プロットされた複数のデータが存在する範囲A」であると認められる。 してみると、特許異議申立人が主張する「各Lab値のL値、a値、b値のいずれか1つのみを用いて1次元で算出されたものや、各Lab値のL値、a値、b値の全てを用いて3次元で算出されたもの」ものは、「色ムラに関連するパラメータ」には該当しないのであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。 ウ 取消理由1(特許法第36条第6項第1号)についてのまとめ 上記のとおり、本件訂正特許発明1、2、6乃至8、11乃至13は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから、上記取消理由1により、本件特許請求の範囲の請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由2(特許法第29条第1項第3号)について ア 各甲号証の記載(下線は当合議体で付した。以下同様。) (ア)甲第1号証 本件特許出願前の平成24年1月12日に頒布された特開2012-6386号公報(甲第1号証)には、次の事項が記載されている。 a 「【技術分野】 【0001】 本発明は、画像処理に用いられるデータ処理装置および方法に関する。」 b 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで、上記ヘッドシェーディング技術では、記録ドット数を変調することで、インク色単位での濃度ムラを解決することはできるが、2色以上のインクで形成される色の、各吐出ノズルのインク吐出量に応じた色ムラを解決することができない。 【0006】 本発明は、インク吐出ノズルの製造ばらつき等に起因して発生する2色以上のインクで形成される色の色ムラを低減することを目的とする。」 c 「【0011】 図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタを模式的に示す図である。 図1に示すように、プリンタ100は、プリンタの構造材をなすフレーム上に記録ヘッド101?104を備える。記録ヘッド101?104はそれぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出するための複数のノズルを記録用紙106の幅に対応した範囲に配列した、いわゆるフルラインタイプのものである。それぞれのインク色のノズル列のノズル配置の解像度は1200dpiである。」 d 「【0013】 …なお、本発明を適用可能な記録装置は、以上説明したフルラインタイプの装置に限られない。例えば、記録ヘッドを記録用紙の搬送方向と交差する方向に走査して記録を行う、いわゆるシリアルタイプの記録装置にも本発明を適用できることは、以下の説明からも明らかである。」 e 「【0016】 一方、プリンタ100は、主に以下の要素を有して構成されるものである。CPU311は、ROM313やRAM312に保持されているプログラムに従い、図4以降で後述する各実施形態の処理を実行する。…」 f 「【0018】 以上説明した記録システムにおいて、複数種類のインクを用いて画像を記録する場合の、複数のノズル間のインク吐出量のばらつきに起因して生じる色ずれを低減するためのいくつかの実施形態を以下に説明する。… 【0019】 図3(a)?(c)は、この色ずれの発生を説明する図である。図21で説明した記録ヘッド102及び103のうちの一部のノズルを用いて色ずれを説明する。図3(a)において、102はシアンインク(第1のインク)を吐出する記録ヘッド、103はマゼンタインク(第2のインク)を吐出する記録ヘッドをそれぞれ示している。同図では、説明および図示の簡略化のためそれぞれの記録ヘッドにおける複数のノズルのうち8つのノズルのみが示され、また、一例として、シアンおよびマゼンタインクによってブルーを記録する場合の色ずれを説明するため2つの記録ヘッドのみが示されている。」 g 「【0023】 図3(c)は、以上のようにして得られたドットデータに基づき、それぞれの記録ヘッドから記録用紙106上にシアンおよびマゼンタのインクを吐出してブルーの画像を記録した例を示している。図3(c)において、記録用紙106における図中左側の領域には、シアンインクとマゼンタインクが重なって形成される、標準のサイズのブルーのドット10613が記録される。一方、図中右側のマゼンタの吐出量が多い4つのノズル10321に対応する領域には、次のドットが記録される。すなわち、標準のサイズのシアンドット10623と、シアンインクとマゼンタインクが重なって形成されるブルーのエリア10624とその周囲のマゼンタのエリア10625からなるドットである。」 h 「【0026】 しかしながら、ブルーエリア10624のように、異なる種類の複数のインクが重ねて形成される場合、そのエリアの光吸収特性によって観察される色は、複数のインクそれぞれのエリアの光吸収特性を合せて全体として観察される色と異なることが多い。その結果、その領域全体は目標とする標準の色からの色ずれを生じ、結果として、記録用紙106において図中左側半分の領域のブルー画像と、右側半分の領域のブルー画像は異なる色に見えることになる。」 i 「【0029】 (第1実施形態) 図4(a)は、本発明の第一の実施形態にかかる、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成を示すブロック図である。… 【0030】 図4(a)に示すように、入力部401はホストPC300から送信された画像データを入力し、画像処理部402へ渡す。画像処理部402は、入力画像データを記録ヘッドが記録可能な信号に変換する処理過程において色信号を処理する。この画像処理部402は、入力色変換処理部403、MCS(Multi Color Shading)処理部404、インク色変換処理部405、HS(Head Shading)処理部406を有する。… 【0032】 MCS(Multi Color Shading)処理部404は、入力色変換処理部403によって変換された画像データ(第1の色信号)に対して補正処理をして第2の色信号に変換する。この処理も後述するように、三次元ルックアップテーブル(補正テーブル)を用いて行う。三次元ルックアップテーブルは、3要素から構成される色信号の色立方体で構成される。この補正処理によって、出力部409における記録ヘッドのノズル間で吐出量のばらつきがあっても、それによる上述した色ずれを低減することができる。このMCS処理部404具体的なテーブルの内容およびそれを用いた補正処理については後述する。」 j 「【0045】 図5(a)および(b)は、図4(a)に示したMCS処理部404で用いるテーブルのパラメータを生成するデータ処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理部404の処理をそれぞれ示すフローチャートである。 【0046】 図5(a)に示す処理S510は、MCS処理部404で用いる三次元ルックテーブルのパラメータを生成する処理であり、ステップS502?ステップS506の各工程を有する。本実施形態では、処理S510は、プリンタの製造時やプリンタを所定期間使用したときあるいは所定量の記録を行ったときに実行される処理である。すなわち、処理S510はいわゆるキャリブレーションとしても行うことができ、これにより、ルックアップテーブルの内容であるテーブルパラメータが更新される。一方、図5(b)に示す処理S520は、プリンタで記録を行う際にその記録データ生成のために、図4(a)に示した画像処理部402によって行われる画像処理の一環としてMCS処理部404によって実行される処理である。この処理は、ステップS507およびS508の各工程を有する。なお、本発明を適用する上で、テーブルパラメータの生成処理を実行するタイミングは上記の例に限られないことは明らかである。例えば、記録を行うため処理S520を実行する際に、その前に実行するようにしてもよい。 … 【0049】 先ず、ステップS502で、MCS処理部に入力するR、G、Bの組で表される画像データのうち、上述した色ずれの傾向が大きくなる色を表すR、G、Bの組それぞれについて、図1に示した各記録ヘッドの総てのノズルからインクを吐出する。これにより、記録媒体に測定用画像(パッチ)を記録する。…」 k 「【0053】 図6(a)は、図3(a)に示した例と同様、マゼンタの記録ヘッド103のノズルのうち図中右側の4つのノズルが標準より多い吐出量となっている例を示している。この場合、図6(b)に示すブルーの測定用画像が記録される。すなわち、同図中右側の領域に色ずれを生じ、そのブルーが同左側の領域のブルーとは異なる測定用画像が記録される。 【0054】 再び図5(a)を参照すると、次のステップS503では、上述のように記録用紙106に記録された測定用画像の色を測定して色情報B[X]を得る。本実施形態では、この色測定は、図1に示したプリンタがスキャナ107を備え、このスキャナによって測定用画像を測定する。従って、このステップS503の処理は、スキャナ測定データを受ける処理を含むものである。なお、プリンタとは別体のスキャナを用いてユーザの操作によって測定を行ってもよい。また、例えば、スキャナとプリンタを信号接続しスキャナから測定結果を自動的に入力するようにしてもよい。なお、色情報B[X]は、本実施形態ではスキャナで読み込んだRGB値の組で表されるが、例えば、測色器で測定したL^(*)a^(*)b^(*)等、いずれのデータフォーマットであってもよい。 【0055】 また、本実施形態では、上記測定の解像度は600dpiである。一方、記録されるドットの解像度はノズルの解像度に対応した1200dpiである。従って、上記の色測定は、図6(b)に示す4つのノズルに対応した領域を2画素として測定する。そして、この測定の2画素に対応した領域(上述のエリア)の単位で色情報B[X]が得られる。すなわち、色情報B[X]においてXはエリアを特定する値であり、上記測定に係る2画素の測定結果の平均として得られる。図6(b)に示す例では、同図中左側の4つのノズル対応したエリアと右側の4つのノズルに対応したエリアがそれぞれ別のエリアとして色情報B[X]が取得される。 【0056】 このように、デバイス色画像データD[X]が(R、G、B)=(0、0、255)である格子点のブルーの測定用画像は、図1に示したシアンおよびマゼンタの記録ヘッド102および103における総てのノズルからそれぞれインクが吐出されて記録される。そして、4つのノズルに対応したエリア単位で色情報B[X]が取得される。図6(b)は、その一部のエリアを示しており、以下では、図中左側のエリアを第1エリア(X=1)、右側のエリアを第2エリア(X=2)とする。また、第1エリアの色情報をB[1]=(R1、G1、B1)、第2エリアの色情報をB[2]=(R2、G2、B2)とする。なお、図6(b)の右側のエリアに示す例は、マゼンタの4つのノズルが総て標準より大きな吐出量である場合を示している。なお、例えば、4つのうち3つが標準より大きな吐出量で他の1つは標準の吐出量である場合も当然あり得るものであり、その場合には、取得される第2エリアの色情報をB[2]の値も違ったものとなることはもちろんである。 【0057】 次に、図5(a)のステップS504で、目標色A=(Rt、Gt、Bt)とステップS503で取得した色情報B[X]から、各エリア[X]の色ずれ量T[X]を算出する。ここで、目標色Aは、(R、G、B)=(0、0、255)で表される同じブルーの画像データに基づき、出力部409で各色インクの標準吐出量である記録ヘッドを用いて記録された画像を、スキャナで測定することによって得られる色データである。本実施形態では、この測定した色データの解像度を上述のように300dpiとしている。このため、上述のステップS504、および後述のステップS505、ステップS506のMCS処理部のテーブルパラメータの生成処理でも300dpiの画素解像度のデータを処理する。 【0058】 すなわち、色ずれ量Tは次のように表される。 【0059】 色ずれ量T[1]=B[1]-A=(R1-Rt、G1-Gt、B1-Bt) 色ずれ量T[2]=B[2]-A=(R2-Rt、G2-Gt、B2-Bt) ここで、色ずれ量T[1]は、図6(b)に示す例において、同図中左側のエリアにおける、標準吐出量のシアンインクと標準吐出量のマゼンタインクとが重なることによるブルー色と、目標色データAが示すブルー色との差である。測定誤差等を除けば、理想的には色ずれ量T[1]は0となる。つまり、R1=Rt、G1=Gt、B1=Btの関係を満たす。」 l 「【0061】 再び図(a)5を参照すると、次のステップS505では、各エリア[X]の色ずれ量T[X]から、補正値T^(-1)[X]を算出する。本実施形態では簡単に、逆変換式として、T^(-1)[X]=-T[X] とする。従って、それぞれのエリアの補正値は、 補正値T^(-1)[1]=-T[1]=A-B[1]=(Rt-R1、Gt-G1、Bt-B1) 補正値T^(-1)[2]=-T[2]=A-B[2]=(Rt-R2、Gt-G2、Bt-B2) となる。」 m 「【0063】 次に、図5(a)のステップS506で、各エリア[X]の補正値T^(-1)[X]から、等価補正値Z^(-1)[X]を算出する。すなわち、補正値T^(-1)[X]は、測定色空間中のブルー色の補正値であるので、この補正値を元に、デバイス色空間中で同じだけデバイス色空間のブルー色を補正する等価補正値Z^(-1)[X]を算出する。ここで、等価補正値Z^(-1)[1]は、図6(b)の左側のエリアに対応し、理想的には0となるものである。一方、等価補正値Z^(-1)[2]は、図6(b)の右側のエリアに対応し、シアン色を減少させる補正値となる。」 n 「【0071】 最初にステップS507において、デバイス色画像データD[X]に対して、上述のようにして作成した、MCS処理部のテーブルパラメータである等価補正値Z^(-1)[X]を適用して補正を行う。」 o 「【0077】 図7(a)および(b)は、図5(b)のステップS508で記録された画像を説明する図である。図7(a)は、図6(a)と同様、シアンおよびマゼンタの2色の記録ヘッド102、103におけるノズルのインク吐出特性を示している。これに対して、MCS処理による補正が行われると、図7(b)の右側のエリアのマゼンタドット10626のように、シアンドットが重ならないドットが存在する。すなわち、マゼンタドット10626は、図6(b)に示すHS処理のみを施した記録結果ではシアンドットも記録されていた個所であるが、画像データD’[2]が目標色Aに対してシアン色が減少した結果、シアンのドット数が減ったことを示している。 【0078】 ここで、図7(b)に示す各記録エリアでは、記録時に吐出量のばらつきなどに起因する色ずれ量T[X]が発生する。このため、 左側のエリアの色情報≒D’[1]に対応する紙面上の色+T[1]≒A 右側のエリアの色情報≒D’[2]に対応する紙面上の色+T[2]≒A となる。ここで、D’[1]は理想的には目標色Aと同じブルー色であり、T[1]は理想的には0である。また、D’[2]は目標色Aに対してT[2]相当のシアン色が減少したブルー色であり、ここで、T[2]はシアン色を増大させるずれ量である。このようにして、左側のエリアと右側のエリアのブルー色はほぼ同じ色となり、色ずれに起因した色ムラを低減することができる。」 p 上記kより、測色器を使用した場合のステップS503では、記録用紙に記録された測定用画像の色を測色器で測定し、測定データを取得し、L^(*)a^(*)b^(*)データフォーマットの色情報B[X]を得る、ステップといえる。 これらの記載を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「画像処理に用いられるデータ処理方法であって、 インクジェットプリンタは、インクジェットプリンタの構造材をなすフレーム上に記録ヘッド101?104を備え、記録ヘッド101?104はそれぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出するための複数のノズルを記録用紙の幅に対応した範囲に配列した、いわゆるフルラインタイプのものであって、 インクジェットプリンタにおける画像処理部は、入力画像データを記録ヘッドが記録可能な信号に変換する処理過程において色信号を処理し、この画像処理部は、入力色変換処理部、MCS(Multi Color Shading)処理部、インク色変換処理部、HS(Head Shading)処理部を有し、 MCS処理部で用いる三次元ルックテーブルのパラメータを生成する処理は、ステップS502?ステップS506の各工程を有し、 ステップS502で、MCS処理部に入力するR、G、Bの組で表される画像データのうち、色ずれの傾向が大きくなる色を表すR、G、Bの組それぞれについて、各記録ヘッドの総てのノズルからインクを吐出し、記録媒体に測定用画像(パッチ)を記録し、 ステップS503では、記録用紙に記録された測定用画像の色を測色器で測定し、測定データを取得し、L^(*)a^(*)b^(*)データフォーマットの色情報B[X]を得、 ステップS504で、目標色A=(Rt、Gt、Bt)とステップS503で取得した色情報B[X]から、各エリア[X]の色ずれ量T[X]を算出し、 ステップS505では、各エリア[X]の色ずれ量T[X]から、補正値T^(-1)[X]を算出し、 ステップS506で、各エリア[X]の補正値T^(-1)[X]から、等価補正値Z^(-1)[X]を算出し、 プリンタで記録を行う際にその記録データ生成のために、MCS処理部によって実行される処理は、ステップS507およびS508の各工程を有し、 ステップS507において、デバイス色画像データD[X]に対して、上述のようにして作成した、MCS処理部のテーブルパラメータである等価補正値Z^(-1)[X]を適用して補正を行い、 ステップS508でMCS処理による補正が行われた画像が記録される、 画像処理に用いられるデータ処理方法。」 (2)甲第2号証 本件特許出願前の平成24年5月31日に頒布された特開2012-101441号公報(甲第2号証)には、次の事項が記載されている。 a 「【技術分野】 【0001】 本発明は、インクを吐出して記録媒体に画像を記録し、記録した画像の測色結果に基づいて補正データを生成するインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。」 b 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 前述したノズルの吐出特性のばらつきによって生じる記録画像の濃度ムラに対して補正を行うためには、使用する記録媒体に補正用テストパターンを記録し、補正データを生成するための濃度データを取得する必要がある。このとき、使用可能な記録媒体の大きさには制約があり、記録ヘッドの全てのノズルを補正するための濃度データを一度に取得することができない場合がある。これについて以下に説明する。 【0006】 図1は、記録ヘッドと記録媒体の模式図である。本図において、記録媒体の搬送方向をx方向、記録ヘッドのノズル列方向をy方向とする。111はインクジェット記録ヘッドであり、構成や制御の詳細は後述する。112、113は記録媒体であり、y方向の幅は扱う商材等により変更される。この記録ヘッド111は、記録媒体の幅よりも広い領域を記録可能となっている。これは、記録媒体の全域を記録する所謂「縁なし記録」を行う場合や、記録媒体の搬送条件の誤差、記録媒体の幅の製造公差などを考慮したことによる。このため、記録ヘッド111のノズル幅は、通紙可能な記録媒体の最大の幅(最大保証幅)よりも長く設計されている。 【0007】 一方、前述した理由により、記録ヘッド111のノズルに対応する画像データに対して補正を行う必要があり、補正用テストパターンを記録、測色して濃度データを得る。記録ヘッドのノズル幅が最大保証幅よりも大きい場合、一回の記録では、この最大保証幅に対応したノズル分しか濃度データを得ることができない。記録媒体の搬送条件の誤差により補正を行ったノズルと記録媒体の位置が合わない場合や、縁なし記録を行う場合を考慮すると、最大保証幅に対応したノズルにのみ補正を行うのでは不十分であるという課題がある。」 c 「【0013】 図2はカラー画像を記録可能なインクジェット記録装置を表す。図中、100はインクジェット記録装置(プリンタ)本体を示している。記録ヘッド101?104は、記録ヘッド111のうち、それぞれK(ブラック)・C(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)のインクを吐出して記録紙106に画像を記録する記録ヘッドを示している。105は、記録紙106を矢印で示すx方向に搬送するラインフィードモータであり、x方向はy方向とは交差した方向である。本実施形態において、記録ヘッド101?104は、インクを吐出する最小単位である吐出口(ノズル)をKCMYのインク別に図のy方向(所定方向)に複数配列した構成となっており、記録紙106の横幅分(y方向)の領域の記録が可能である。このような構成の記録ヘッドを、以下では「長尺ヘッド」と呼ぶ。このようなCMYKの各記録ヘッドは、一回のインク吐出によって出力画像の1ラスタ分を形成する。そして、ラインフィードモータによる記録紙の搬送に同期してインク吐出動作を繰り返すことで、一頁分の画像を記録する。」 d 「【0020】 読取部17はプリント部4でプリントされたプリンタヘッドのメンテナンス用のテストパターンを読み取る処理を行う。…」 e 「【0025】 (システム構成) 図6は本発明のシステム構成例を示す図である。図中100は、図1のインクジェット記録装置本体100であり、300はインクジェット記録装置に対してプリントデータを送るホストPCである。 … 【0027】 記録装置本体100は主に以下のブロックから構成される。CPU311は、ROM313やRAM312に保持されているプログラムに基づいて処理を実行する。… 【0028】 (メンテナンス動作) 次に本実施形態のメンテナンス動作について説明する。本実施形態におけるメンテナンス動作とは、前述した記録ヘッドの吐出量ばらつきや、後述する多次色の色ズレ、スキャナの読み取りムラ、乾燥ムラなどによる画質低下を抑制するためのものである。このため、本実施形態では、補正用テストパターンを記録し、その測色結果から補正データを生成するための濃度データを取得する。 【0029】 図7は本実施形態のメンテナンス動作の処理フローを示している。まず、ステップS701から処理がスタートする。ステップS702では、メンテナンス要件が発生しているかどうか、条件判断を行う。…メンテナンスを行う場合は、ステップS703において、図9で後述する方法で出力補正値T^(-1)[Y]を算出し、データを更新する。ステップS704では、あらかじめ決められた補正データに従った出力補正値T^(-1)[Y]を適用し、記録を行う。この出力補正値の適用例を図8に示す。」 f 「【0032】 MCS(Multi Color Shading)処理部404は、入力処理変換処理済みのデバイス色画像データに対して補正処理を行い、色ムラを低減したデバイス色画像データを出力する。」 g 「【0039】 (特徴構成:分割プリント) 次に、本発明の特徴的構成である、記録ヘッドの補正データを生成する方法について説明する。前述したように、記録ヘッドの製造公差としてノズル毎に吐出量のばらつきが生じるため、ノズル毎(吐出口毎)もしくは所定単位のノズル数毎に記録すべき画像データに対して補正を行う必要がある。本実施形態では、複数の補正用テストパターンを有するテストチャートを記録し、そのテストチャートをスキャナ等の読み取りデバイスで測色し、得られた測色結果に基づいて補正データを生成する。 【0040】 このとき、記録ヘッドと記録媒体の幅により、必要なノズル分のテストパターンが一回の記録で得られない場合がある。本実施形態の記録ヘッド111は、記録媒体の搬送誤差や縁なし記録を行うことを考慮して、記録媒体の最大通紙幅12インチよりも長い12.9インチのノズル幅を備えている。記録ヘッドの補正は、記録媒体の最大通紙幅である12インチよりも長い領域のノズルを補正する必要があるが、テストパターンは最大12インチの記録となるため、補正が必要なノズルのテストパターンを得ることができない。このような課題に対し、本発明は、記録ヘッドと記録媒体の相対位置を異ならせて、複数回の記録でテストパターンの分割プリントを行うことで、複数の補正用テストパターンに基づいて補正が必要なノズルの補正データを生成する。」 h 「【0043】 図9は、図7のステップS703の出力補正値T^(-1)[Y]を算出をする工程である。まず、ステップS901では、カウンタをクリアし、処理をスタートする。ステップS902では、メンテナンスを行う記録媒体の記録ヘッドのノズル配列方向の紙幅と、記録ヘッドのノズル幅とに基づいて、分割数Ndを決定する。この分割数Ndは、以下の式で求められる。 分割数Nd=int(記録媒体の幅/ノズル幅+1.0) (ただし、intは切捨て処理)・・・(式1) 【0044】 具体的には、5インチから12インチまでの幅の記録紙を使用する場合は、5インチ幅の記録紙の場合3回、12インチの記録紙幅場合2回となる。紙幅や搬送誤差の課題だけではなく、小さな幅の紙でも記録ヘッドのノズル幅全域をメンテナンスすることが可能である。次に、ステップS903では、指定された場所へ、ヘッドを移動させる。以降、記録媒体と記録ヘッドの相対位置をヘッドポジション(HP)と呼ぶ。3回移動を行う場合はそれぞれの位置をヘッドポジション1(HP1)、ヘッドポジション2(HP2)、ヘッドポジション3(HP3)とする。ステップS904では、一様な入力色画像データI[Y]に必要な処理を施し、補正用テストパターンを記録紙表面上に記録する。このとき、HP1で記録されたテストパターンを第1の補正用テストパターン(HP2)で記録されたテストパターンを第2の補正用テストパターンと呼ぶ。 【0045】 図10(a)に補正用テストパターンの一例を示す。RGBの色空間における8bitデータを用いて説明する。(255,255,255)は白、(255,255,0)は黄色、(255,0,255)はマゼンダ、(0,255,255)はシアンの色を示している。必要に応じて途中の階調のパターンをプリントしても良い。また、インクドットの組み合わせである2次色、3次色、4次色などの混色パッチを用いても良い。本実施形態では、インクノズルの吐出量ばらつきや変動に対応でき、かつ、必要なテストパターンのプリント量を最適化するため、1次色と2次色の例を図示する。 【0046】 ステップS905では、図3の読取部17を用いてステップS904で記録したテストチャートを読み取り、記録紙上の各エリアを測定して色情報B[Y]を得る。このとき、テストチャートを読取った値が、記録ヘッドに配列されたノズルのうち、どの位置のノズルに相当するかを解析する必要がある。…」 i 「【0052】 次に、ステップS906では、分割数と処理回数を比較し、必要な回数処理を行う。分割数Nd回の処理が終了すると、ステップS907へ進む。ステップS907では、後述する方法で、分割して取得した色情報B[Y]を結合する。そして、ステップS908では、各色情報を元に各領域のズレ量T[Y]を記録ヘッドのノズル幅全域に渡り、作成する。ステップS909では、各色情報を元に各領域の出力補正値T^(-1)[Y]をノズル幅全域に渡り、算出し、ステップS910で、決定した出力補正をメモリに格納し、終了する。 【0053】 (Y移動プリントと測定) ここで、ステップS907において、分割して取得した色情報B[Y]を結合する方法を更に詳しく説明する。図11は、記録ヘッドの位置を示すための模式図である。図11(a)は、記録ヘッド111において、y方向の位置を示している。図11(b)は、記録媒体116に対する記録ヘッド111の位置を示しており、記録ヘッドのa?c領域、b?d領域のノズルを用いて補正用テストパターンを記録するときの様子である。記録ヘッド111に配列されたノズルのうち、端部aから連続するa?c領域のノズルを第1ノズル群(第1の吐出口群)とし、このノズル群を用いて記録する位置をヘッドポジション1(HP1)とする。同様に、b?d領域のノズルを第2ノズル群(第2の吐出口群)とし、このノズル群を用いて記録する位置をヘッドポジション2とする。117はHP1で記録されたテストチャートであり、118はHP2で記録されたテストチャートである。317は、本実施形態の読取デバイスであるスキャナの相対位置を示した模式図である。y方向の位置を説明するために、スキャナ317が記録ヘッド111とx方向に隣接した図を用いている。 【0054】 図12は、それぞれのヘッドポジション(HP)でのテストチャートのテストパターンをスキャンし、濃度変換したデータを示している。横軸は、スキャナで読み込んだ記録ヘッドのy方向の位置に対応している。縦軸は濃度を示す。テストチャートにおいて、複数の色、濃度のテストパターンを記録した場合はその個数分のデータが作成される。図12(a)は、ヘッドポジション1(HP1)で記録したテストパターンの測色結果であり、第1ノズル群(第1の吐出口群)を用いて記録した濃度データである。同様に、図12(b)はヘッドポジション2(HP2)で記録したテストパターンの測色結果であり、第2ノズル群(第2の吐出口群)を用いて記録した濃度データである。それぞれに、記録ヘッド上のノズルa?dの対応位置を示す。」 j 「【0060】 図14は、本実施形態の補正の流れを説明するフローである。まず、各ヘッドポジション(HP)間の繰り返し誤差を補正するための解析・補正処理を行い、次に各ヘッドポジション(HP)間のつなぎ部分(ノズルの重複領域)に発生する色差を低減するための解析・補正処理である端部処理を行う。 … 【0062】 ヘッドポジション1(HP1)の位置で記録したパターンを読み取った濃度データをD[P1][Y](a≦Y≦c)とし、同様に、ヘッドポジション2(HP2)の位置で記録したパターンを読み取った濃度データをD[P2][Y](b≦Y≦d)とする。…」 k 「【0067】 ステップS1406において、b?c領域に発生する色差を低減させる為には、記録ヘッドの各ヘッドポジションでの濃度データを、y方向の位置に応じた比で加重平均する。」 l 「【0074】 また、本実施形態は、ロール紙を使用する場合の例を用いたが、カット紙を使用する方式であっても構わない。また、本実施形態は、記録ヘッドを走査せずに記録媒体を搬送して記録を行う方法を用いて説明したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、記録ヘッドと記録媒体が相対走査するものであればよく、記録媒体に対して記録ヘッドを走査させて記録を行う形態であってもよい。このとき、記録媒体を走査する方向は、記録ヘッドのノズルが配列する方向と交差する方向である。」 m 上記aの【0001】と上記eの【0028】とを対比すると、上記eの「メンテナンス動作」は、上記aの「インクジェット記録方法」に対応するものである。 n 上記e及び図7より、メンテナンス動作のフローは、メンテナンス要件が発生しているかどうかの条件判断を行うステップ、出力補正値T^(-1)[Y]を算出し、データを更新するステップ、出力補正値T^(-1)[Y]を適用し、記録を行うステップからなるものといえる。 o 上記h、i及び図9より、出力補正値T^(-1)[Y]を算出をする工程は、一様な入力色画像データI[Y]に必要な処理を施し、補正用テストパターンを記録紙表面上に記録するステップ、読取部を用いて記録したテストチャートをスキャナで記録紙上の各エリアを測色して色情報B[Y]を得るステップ、取得した色情報B[Y]を結合するステップ、各色情報を元に各領域のズレ量T[Y]を記録ヘッドのノズル幅全域に渡り作成するステップ、各色情報を元に各領域の出力補正値T^(-1)[Y]をノズル幅全域に渡り算出するステップ、決定した出力補正をメモリに格納し、終了するステップからなるものといえる。 p 上記i【0054】及びk【0067】より、濃度変換したデータは、テストチャートのテストパターンをスキャナで読み込んだ各記録ヘッド毎のy方向の位置に対応したものといえる。 q 上記g【0045】及び【0046】より、色情報B[Y]は、RGBデータであると認める。 これらの記載を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「インクを吐出して記録媒体に画像を記録し、記録した画像の測色結果に基づいて補正データを生成するインクジェット記録方法であって、 記録媒体と相対走査する記録ヘッド101?104は、インクを吐出する最小単位であるノズルをKCMYのインク別にy方向(所定方向)に複数配列し、記録紙の横幅分(y方向)の領域の記録が可能な「長尺ヘッド」であり、 多次色の色ズレによる画質低下を抑制するためのメンテナンス動作は、 メンテナンス要件が発生しているかどうかの条件判断を行うステップ、出力補正値T^(-1)[Y]を算出し、データを更新するステップ、出力補正値T^(-1)[Y]を適用し、記録を行うステップからなり、 前記出力補正値T^(-1)[Y]を算出するステップは、一様な入力色画像データI[Y]に必要な処理を施し、補正用テストパターンを記録紙表面上に記録するステップ、読取部を用いて記録したテストチャートをスキャナで記録紙上の各エリアを測色してRGBデータである色情報B[Y]を得るステップ、取得した色情報B[Y]を結合するステップ、各色情報を元に各領域のズレ量T[Y]を記録ヘッドのノズル幅全域に渡り作成するステップ、各色情報を元に各領域の出力補正値T^(-1)[Y]をノズル幅全域に渡り算出するステップ、決定した出力補正をメモリに格納し、終了するステップからなり、 濃度変換したデータは、テストチャートのテストパターンをスキャナで読み込んだ各記録ヘッド毎のy方向の位置に対応したものである、インクジェット記録方法。」 (3)甲第6号証 本件特許出願前の平成21年7月2日に頒布された特開2009-143152号公報(甲第6号証)には、次の事項が記載されている。 a 「【請求項12】 インクを吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジを移動させながら記録データに基づいて記録媒体にドットを記録するインクジェット記録装置の、ドットの記録位置を調整するためのレジスト調整方法であって、 前記キャリッジが移動可能な主走査領域における複数の所定の位置で前記記録ヘッドを用いてテストパッチを記録させる工程と、 前記テストパッチから、前記所定の位置のそれぞれに対応したドットの記録位置ずれ量を測定する工程と、 前記所定の位置のそれぞれに対応した前記記録位置ずれ量から、前記主走査領域における前記所定の位置とは異なる位置に対応する記録位置ずれ量を算出する工程と、 前記記録位置ずれ量に基づいて、前記主走査領域における位置に応じたレジスト調整値を求める工程と、 該レジスト調整値と前記記録データに基づいて記録媒体にドットを記録させる工程と を有することを特徴とするレジスト調整方法。」 b 「【技術分野】 【0001】 本発明は、インクを吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体に対し相対的に移動させながら、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に関する。特に、キャリッジが比較的長い記録幅を走査しながら記録を行う際の、キャリッジの位置に応じて変位するドットの記録位置ずれを補正するための機能を備えたインクジェット記録装置に関する。 … 【0003】 インクジェット記録装置では、記録ヘッドに配列する複数のノズルから吐出されたインク滴が記録媒体でドットを形成し、これらドットの記録位置や配列密度によって画像が表現される。よって、高品位な画像を実現するためには、高いドットの記録位置精度が要求される。しかしながら、記録ヘッドや記録装置においては、その製造工程上どうしてもある程度の誤差が含まれ、これら誤差はドットの記録位置ずれとなって現れる。このようなドットの記録位置ずれとしては、例えば、双方向記録時における往路走査で記録した位置と復路走査で記録した位置とのずれや、異色インク間の記録位置のずれ、などが挙げられる。前者の場合には、細かい罫線の直線性が損なわれたり、中間調において所定の濃度が表現されなかったりする。また、後者の場合には、混色で表現される文字やオブジェクトで色ずれが発生したり、所望の色相が表現されなかったりする。よって、これら記録ヘッドや記録装置間で個体差のある記録位置ずれを補正するために、インクジェット記録装置では、記録位置ずれを補正するためのモードがあらかじめ設けていることが多い。以下、このようなモードを、本明細書ではレジスト調整モードと称する。」 c 「【0010】 図22(a)のように往路走査と復路走査との間で記録位置にずれが発生していないパッチでは、読み取った濃度が最も高くなる。図22(b)や(c)のようにずれ量が大きくなるほど、記録媒体の白紙領域が増え、濃度は低く検出される。複数のパッチの中から、最も濃度が高く検出されたパッチを選択し、当該パッチを記録した際の往路走査の吐出タイミングと復路走査の吐出タイミングの関係が、両者の間でずれのない記録位置を実現するものと判断される。そして、このタイミングをレジスト調整値として記憶し、次回の双方向記録からはこのタイミングに合わせて、インクの吐出を実行する。 【0011】 また、レジスト調整値は、最も濃度が高く検出されたパッチの吐出タイミングそのものではなく、複数のパッチの検出濃度の値から、例えば図24に示すように関数による近似を行って算出されてもよいことが開示されている。 【0012】 なお、ここでは濃度が最も高く検出される状態が記録位置ずれのない状態として説明したが、無論、濃度が最も低く検知される状態が記録位置ずれのない状態であるようなドットパターンにしておくことも出来る。」 d 「【発明が解決しようとする課題】 【0017】 しかしながら、特許文献2のように紙間距離に応じて吐出タイミングを調整可能な構成を備えていても、キャリッジ自体の姿勢や記録媒体を下部から支えるプラテンの平面性に変動が生じる場合には、走査中の記録位置ずれを正確に補正することは出来なかった。インク滴が吐出されてから記録媒体に着弾するまでの時間は、上述したように紙間距離によっても決まるが、厳密には走査中のキャリッジの姿勢やプラテンの平面性のような、記録装置の本体構成にも依存する。記録ヘッドの姿勢やプラテンの平面性が不安定であると、記録媒体面に対する記録ヘッドからの吐出角度すなわちインク滴の速度成分も不安定になるので、結果的に記録媒体における記録位置をばらつかせてしまうのである。このような記録ヘッドの姿勢やプラテンの平面性は、比較的小型の記録装置であれば然程大きく変動せず、画像上の問題となることも少なかった。しかし、比較的大型の記録装置の場合にはキャリッジの走査距離も長くなるので、主走査方向にキャリッジを案内支持するためのレールや、記録媒体を下部から支えるプラテンにも、わずかな反りなどがどうしても含まれ、記録位置ずれを招致してしまうのである。 【0018】 本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。よって、その目的とするところは、記録装置の本体構成に依存して、キャリッジの位置に応じて記録位置ずれが変動する場合であっても、個々のキャリッジの位置で適切な記録位置の補正が可能なインクジェット記録装置を提供することである。」 e 「【0022】 (実施例1) 図1は、本実施例で採用するカラーインクジェット記録装置の概略構成を説明するための斜視図である。キャリッジ1は、記録データに従ってインクと(当審注:「を」の誤記と認める。)吐出する記録ヘッド201を搭載し、不図示のキャリッジモータの動力によって、主走査方向であるX方向に往復走査が可能になっている。キャリッジ1の側面には、テストパターンの検出等を行うための反射型の光学センサ30が取り付けられている。…」 f 「【0026】 図2は、本実施例のインクジェット記録装置の制御の構成を説明するためのブロック図である。コントローラ400は主制御部であり、例えばマイクロ・コンピュータ形態のCPU401、プログラムや所要のテーブルその他の固定データを格納したROM403、画像データを展開する領域や作業用の領域等を設けたRAM405を有する。…」 g 「【0032】 図3は、キャリッジ1に搭載されている光学センサ30の仕組みを説明するための模式図である。光学センサ30は、発光部11と受光部12を有し、発光部11から照射され対象物で反射した反射光を受光部12が検出する。… 【0033】 本実施例において、発光部11は白色LEDもしくはレッド、ブルーおよびグリーンの3色LEDを用いる。これは、本実施例の記録ヘッドが吐出するインク色の種類、すなわちシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックなどで記録したテストパターンの濃度を測定するためである。… 【0034】 …9はキャリッジ1に搭載された記録ヘッド201が有する記録素子群である。記録素子群9は、インクを滴として吐出する記録素子がY方向に複数配列した記録素子列を、インク色分だけX方向に並列配置して構成されている。…」 h 「【0036】 …記録素子群9のX方向に配置された2列の記録素子列によって記録媒体の同じ位置にドットを記録しようとしても、両者の吐出タイミングの差の適正値は、キャリッジ1の主走査方向の位置に応じて異なることになる。つまり、従来のようにレジスト調整を行ったとしても、調整値すなわち2列(2色)の記録素子列の吐出タイミングの差を一定にしたままでは、主走査方向において2色のドットの記録位置が一致した領域と一致しない領域とが混在し、色ずれが招致されてしまう。…」 i 「【0040】 図8は、コントローラ403が実行する、本実施例のレジスト調整モードの工程を説明するためのフローチャートである。ここでは双方向記録時の往路方向の走査と復路方向の走査の記録位置ずれ量の相対値を求める方法について説明する。 【0041】 ユーザがレジストレーション起動スイッチ427によりレジスト調整モードの開始を指定すると、まず、コントローラ403はステップS1においてテストパターンを記録するための記録媒体を給紙し、光学センサ30を用いてその幅を検知する。記録媒体が給紙された領域とプラテンが露出した領域では、発光部11から照射した光の反射光量が大きく異なるので、これを検出することによって記録媒体の有無すなわち記録媒体の幅を測定することが出来る。この際、記録媒体の白紙領域を用いて光学センサ30の感度調整を連続して行ってもよい。具体的には、キャリッジ1を光学センサ30が白紙領域を検知する位置まで移動させ、受光部12からの検出信号が所定の上限値に達するまで発光部11の発光強度を上げる。もしくは受光量から変換された信号値が上限値に達するように受光部12の検出アンプの調整を行う。 … 【0044】 続くステップS2では、給紙した記録媒体に対し、予め定められたテストパターンを記録する。 … 【0047】 再度図8を参照する。ステップS2においてテストパターンの記録が終了すると、ステップS3において、コントローラ400はキャリッジ1に記録したテストパターン上を低速走査させ、光学センサ30を用いて個々のテストパッチ13の濃度を検出する。そして、パッチ1?10の中から、最も濃度が高く検出されたパッチを選択し、当該パッチを記録した際の往路走査の吐出タイミングと復路走査の吐出タイミングの関係をレジスト調整値として記憶する。…」 … 【0049】 その後、実画像を記録する際には、ステップS3で保存したレジスト調整値を用いて、双方向記録における往路走査の記録タイミングと復路走査の記録タイミングを、主走査の各位置に応じて調整する。…」 j 「【0057】 …上記調整や上記テストパターンは、他の種類の記録位置調整にも応用することが出来る。例えば、記録ヘッドに備えられた、異なるインクを吐出する複数の記録素子列間の記録位置ずれを走査領域全域に渡って補正するために応用することも出来る。…」 k 「【0062】 よって、その周期に対応する長さのテストパッチを記録し、濃度検出する際に個々のパッチ内の移動平均をとりつつ、テストパッチのレジ調整値を近似的に求めるようにすれば、コックリングの影響が緩和されたレジ調整値を得ることが出来る。…」 l 「【0064】 …コントローラ400は個々のテストパッチ1401内の濃度変化より、上述した実施例と同様に、個々のテストパッチ1401に対応する記録位置ずれ量を求める。…」 m 「【0071】 (実施例4) 本実施例では、互いに異なる種類のインクを吐出する複数の記録素子列間の記録位置ずれを補正するためのレジスト調整方法について説明する。 【0072】 図16は、記録素子列間の記録位置にずれが生じる原理を説明するためのキャリッジ1のおよび記録ヘッド201の平面図である。…記録ヘッド201に2つの記録素子群9が左右に分かれて配置されている場合、それぞれの記録素子群の姿勢も異なる傾向を示す。」 n 「【0080】 図19は、上記3つのテストパターンを配列させて構成される本実施例のテストパターンの例を示した図である。図において、33はYとMBkの記録位置ずれ量を測定するためのテストパターン、34はPMとBの記録位置ずれ量を測定するためのテストパターン、35はMBkとPMの記録位置ずれ量を測定するためのテストパターンである。 【0081】 上記3つのテストパターンのそれぞれは、実施例2で説明したようなコックリングの影響を緩和可能なテストパターンとすることが出来る。個々のパッチについては、図22(a)?(c)で説明したようなドットパターンを採用することが可能である。この場合、例えばテストパターン33であれば、白丸ドット41をイエローで、グレー丸ドット42をマットブラックで、片方向のマルチパス記録で記録するようにすれば、上述した実施例と同じ方法で記録素子列間のレジスト調整値を検出することが出来る。 【0082】 3つのテストパターン33?35の記録と、光学センサ30によるこれらテストパターンの検出走査を実行することによって、全12列間の全走査領域に対するレジスト調整値が求められる。…」 o 上記aの特許請求の範囲の記載は、上記iの実施例に対応するものと推認できるから、上記iの「レジスト調整モードの工程」は、上記aの「レジスト調整方法」が対応するものと認められる。 これらの記載を総合すると、甲第6号証には、次の発明(以下、「引用発明6」という。)が記載されているものと認められる。 「カラーインクジェット記録装置における記録位置ずれを補正するためのモードであるレジスト調整方法であって、 カラーインクジェット記録装置は、キャリッジが、記録データに従ってインクを吐出する記録ヘッドを搭載し、キャリッジモータの動力によって、主走査方向であるX方向に往復走査が可能になっており、キャリッジの側面には、テストパターンの検出等を行うための反射型の光学センサが取り付けられており、 キャリッジに搭載された記録ヘッドが有する記録素子群は、インクを滴として吐出する記録素子がY方向に複数配列した記録素子列を、インク色分だけX方向に並列配置して構成されており、 テストパターンを記録するための記録媒体を給紙するステップ、 給紙した記録媒体に対し、予め定められたテストパターンを記録するステップ、 キャリッジに記録したテストパターン上を低速走査させ、光学センサを用いて個々のテストパッチ内の移動平均をとりつつ、個々のテストパッチの濃度を検出し、複数のパッチの中から、最も濃度が高く検出されたパッチを選択し、当該パッチを記録した際の往路走査の吐出タイミングと復路走査の吐出タイミングの関係をレジスト調整値として記憶するステップ、を有し、 実画像を記録する際には、保存したレジスト調整値を用いて、双方向記録における往路走査の記録タイミングと復路走査の記録タイミングを、主走査の各位置に応じて調整する、レジスト調整方法。」 イ-1.甲第1号証に基づく新規性欠如について (ア)本件訂正特許発明1について a 対比 後者の「記録ヘッド101?104」の「ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出するための複数のノズル」は、「記録用紙の幅に対応した範囲に配列した、いわゆるフルラインタイプのもの」であるから、各色(ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))の複数のノズル各々が、「所定のノズル配列方向に沿って配列され」ていて、各色(ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))の複数のノズルは互いに、「ノズル配列方向と直交する方向において」、他の色の複数のノズルと、「並ぶ位置」に、「ノズル配列方向に沿って配列され」ていることは明らかである。 そうすると、後者の「インクジェットプリンタの構造材をなすフレーム上に」「備え」られた「記録ヘッド101?104」は、前者の「所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッド」に相当する。 後者の「データ処理方法」は、「各記録ヘッドの総てのノズルからインクを吐出し、記録媒体に測定用画像(パッチ)を記録し」、「記録用紙に記録された測定用画像の色を測定して、測色器で測定したL^(*)a^(*)b^(*)データフォーマットの色情報B[X]を得」、「取得した色情報B[X]から、各エリア[X]の色ずれ量T[X]を算出」するステップを包含するものであるから、後者の「記録媒体に(記録した)測定用画像(パッチ)」は、前者の「被記録媒体に形成したパターン」に相当する。また、上記「ア (ア)o」に示すように、「色ずれ」は「色ムラ」の原因の一つであって、インクジェット記録装置の分野において、両者は、同義の概念とみなし得ることが技術常識でもあるから、後者の「「取得した色情報B[X]から、各エリア[X]の色ずれ量T[X]を算出」するステップ」は、前者の「被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する方法」に相当する。 後者の「インクジェットプリンタ」は、「フルラインタイプ」であるものの、記録に際しては、記録用紙とインクジェットプリンタを構成する記録ヘッド101?104が相対移動することとなるのは明らかである。そうすると、後者の「MCS処理部に入力するR、G、Bの組で表される画像データのうち、色ずれの傾向が大きくなる色を表すR、G、Bの組それぞれについて、各記録ヘッドの総てのノズルからインクを吐出し、記録媒体に測定用画像(パッチ)を記録」する「ステップS502」は、前者の「前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップ」に相当する。 後者の「記録用紙に記録された測定用画像の色を測色器で測定」するステップは、前者の「パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップ」に相当する。 後者の「測定データ」は、測定用画像の色を測色器で測定し取得したものであるから、前者の「画像データ」に相当する。 後者の「色情報B[X]」は、「記録用紙に記録された測定用画像の色を測色器で測定し」て得られる色情報であって、その[X]は、上記「ア (ア)k」に示すように、エリアを特定する値であって、後者の「色情報B[X]」は、所定方向における色情報といえるから、前者の「色分布情報」に相当する。そうすると、後者の「ステップS503」における「L^(*)a^(*)b^(*)データフォーマットの色情報B[X]を得」るステップは、前者の「前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、Lab色情報を取得するステップ」に相当する。 後者の「ステップS504」は、「目標色A=(Rt、Gt、Bt)とステップS503で取得した色情報B[X]から、各エリア[X]の色ずれ量T[X]を算出」するものであって、上述のように、色ずれと色ムラとは、同義の概念であるから、後者の「色ずれ量T[X]」は、前者の「検査パターンの色ムラに関連するパラメータ」に相当する。 そうすると、後者の「ステップS504」は、前者の「前記色情報を取得するステップで取得された、前記検査パターンのLab色情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、色差を算出する色ムラ検出ステップ」に相当する。 よって、本件訂正特許発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、次の相違点で相違する。 [一致点] 「所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、 前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、 を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する方法であって、 前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、 前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、 前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、Lab色情報を取得するステップと、 前記色情報を取得するステップで取得された、前記検査パターンのLab色情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、色差を算出する色ムラ検出ステップと、 を備えていることを特徴とする色ムラ検査方法。」 [相違点1] 本件訂正特許発明1の「検査パターンの所定方向におけるLab色分布情報」が、「縦軸を、検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」であって、 「色ムラ検出ステップ」が、「検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの所定方向における色差のばらつきを算出する」ものであるのに対し、引用発明1の「色情報B[X]」は、各エリア[X]のRGB測定データからL^(*)a^(*)b^(*)データフォーマットで取得したものであるものの、測定用画像の所定方向の色分布情報とはいえない点。 b 判断 以上のとおり、本件訂正特許発明1と引用発明1とは、相違点1において相違するものであって、本件訂正特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。 (イ)本件訂正特許発明2、6乃至8、13について 本件訂正特許発明2、6及び7は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明8は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加し、「ヘッド調整方法」としたものである。 本件訂正特許発明13は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」を、「色ムラを検査する装置」とカテゴリーを変更したものである。 そうすると、本件訂正特許発明2、6乃至8、13と引用発明1とは、少なくとも上記相違点1において相違するものである。 したがって、本件訂正特許発明2、6乃至8、13は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。 イ-2.甲第2号証に基づく新規性欠如について (ア)本件訂正特許発明1について a 対比 本件訂正特許発明1と引用発明2とを対比すると、 後者の「記録ヘッド101?104」の「インクを吐出する最小単位であるノズル」は、「KCMYのインク別にy方向(所定方向)に複数配列した構成」であるから、「記録ヘッド101?104」の各ノズルは、「所定のノズル配列方向に沿って配列され、インクをそれぞれ吐出する複数のノズル」といえ、「記録ヘッド101?104」の各ノズルは互いに、「ノズル配列方向と直交する方向において」、他の記録ヘッドのノズルと、「並ぶ位置」に、「ノズル配列方向に沿って配列され」ていることは明らかである。 そうすると、後者の「記録ヘッド101?104」は、前者の「所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッド」に相当する。 後者の「記録ヘッド101?104」は、「記録媒体と相対走査」し、「記録紙の横幅分(y方向)の領域の記録が可能な「長尺ヘッド」であるから、前者の「被記録媒体に対してノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、複数の第1ノズルと複数の第2ノズルから、前記被記録媒体に向けて第1のインクと第2のインクを吐出させ」る「インクジェットヘッド」に相当する。 後者の「インクジェット記録方法」は、「インクを吐出して記録媒体に画像を記録し、記録した画像の測色結果に基づいて補正データを生成」し、「多次色の色ズレによる画質低下を抑制するためのメンテナンス動作」を行うものであるから、前者の「被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する方法」に相当する。 後者の「補正用テストパターン」は、前者の「検査パターン」に相当するから、後者の「補正用テストパターンを記録紙表面上に記録するステップ」は、前者の「被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップ」に相当する。 後者の「読取部を用いて記録したテストチャートを読み取りスキャナで」「測色」することは、前者の「パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップ」に相当する。 後者の「色情報B[Y]」は、「記録紙上の各エリアを測色して」得られる色情報であって、その[Y]は、エリアを特定する値であるから、後者の「色情報B[Y]」は、「所定方向における」色情報、すなわち、前者の「所定方向におけ色分布情報」に相当する。そして、後者の「色情報B[Y]」は、スキャナで読み取った「テストチャート」をスキャナで読み取るだけで得られるものではないことは技術常識であって、「テストチャート」と「色情報B[Y]」との間には、前者の「検査パターンの画像データ」が介在していることは明らかである。 そうすると、後者の「色情報B[Y]を得る」「ステップ」は、前者の「前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、前記検査パターンの所定方向における色分布情報を取得する色分布取得ステップ」に相当する。 後者の「取得した色情報B[Y]を結合するステップ、各色情報を元に各領域のズレ量T[Y]を記録ヘッドのノズル幅全域に渡り作成するステップ」は、上記イ-1(ア)で述べたように、色ずれと色ムラとは、同義の概念であるから、後者の「ズレ量T[Y]」は、前者の「検査パターンの色ムラに関連するパラメータ」に相当する。 そうすると、後者の「取得した色情報B[Y]を結合するステップ、各色情報を元に各領域のズレ量T[Y]を記録ヘッドのノズル幅全域に渡り作成するステップ」は、前者の「前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する色ムラ検出ステップ」に相当する。 よって、本件訂正特許発明1と引用発明2とは、以下の点で一致し、次の相違点で相違する。 [一致点] 【請求項1】 所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、 前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、 を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する方法であって、 前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体のに向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、 前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、 前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、前記検査パターンの前記所定方向における色分布情報を取得する色分布取得ステップと、 前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する色ムラ検出ステップと、 を備えている色ムラ検査方法。 [相違点2-1] 本件訂正特許発明1の「検査パターンの画像データ」は、被記録媒体の「同じ領域」に向けて第1のインクと第2のインクを吐出させて、印刷したものを読み取ったものであるのに対し、引用発明2は、各記録ヘッド毎のy方向の位置に対応した各色情報である点。 [相違点2-2] 本件訂正特許発明1の「検査パターンの所定方向におけるLab色分布情報」が、「横軸を検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」であって、「色ムラ検出ステップ」が、「検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの所定方向における色差のばらつきを算出する」ものであるのに対し、引用発明2の色情報B[Y]は、RGBデータである点。 b 判断 以上のとおり、本件訂正特許発明1と引用発明2とは、相違点2-1及び相違点2-2において相違するものであって、本件訂正特許発明1は、甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。 (イ)本件訂正特許発明2、6乃至8、13について 本件訂正特許発明2、6及び7は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明8は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加し、「ヘッド調整方法」としたものである。 本件訂正特許発明13は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」を、「色ムラを検査する装置」とカテゴリーを変更したものである。 そうすると、本件訂正特許発明2、6乃至8、13と引用発明2とは、少なくとも上記相違点において相違するものである。 したがって、本件訂正特許発明2、6乃至8、13は、甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。 イ-3.甲第6号証に基づく新規性欠如について (ア)本件訂正特許発明1について 本件訂正特許発明1と引用発明6とを対比すると、 後者の「インクを滴として吐出する記録素子」が「ノズル」を有することは明らかであるから、後者の「インクを滴として吐出する記録素子がY方向に複数配列した記録素子列」は、前者の「所定のノズル配列方向に沿って配列され、インクをそれぞれ吐出する複数のノズル」に相当する。 後者の「記録ヘッド」は、「Y方向に複数配列した記録素子列を、インク色分だけX方向に並列配置して構成される記録素子群を有する」ものであって、「ノズル配列方向と直交する方向においてある色の複数のノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記ある色のインクとは異なる色のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル」を有するといえる。そうすると、後者の「記録ヘッド」は、前者の「所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッド」に相当する。 後者の「カラーインクジェット記録装置」の「記録ヘッドが有する記録素子群」は、「インクを滴として吐出する記録素子がY方向に複数配列した記録素子列を、インク色分だけX方向に並列配置して構成され」、「主走査方向であるX方向に往復走査」して記録するものであるから、前者の「インクジェットヘッド」と、後者の「記録ヘッド」とは、「インクジェットヘッドを被記録媒体に対してノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、複数の第1ノズルと複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて第1のインクと第2のインクを吐出させ」る点で共通する。 後者の「予め定められたテストパターンを記録するステップ」は、前者の「被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップ」に相当する。 後者の「光学センサを用いて」「個々のテストパッチの濃度を検出」することは、前者の「パターン印刷ステップで被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップ」に相当する。 後者の「個々のテストパッチの濃度」は、光学センサにより検出されるものであるから、前者の「前記読み取りステップで得られた前記検査パターンの画像データ」に相当する。 後者の「レジスト調整値」は、往路走査と復路走査との吐出タイミングを調整するものであるから、当該「レジスト調整値」を算出するにあたって検出する「個々のテストパッチの濃度」は、走査方向の濃度であることは明らかである。そして、個々のテストパッチは、カラーインクジェット記録装置により記録されるものであるから、「個々のテストパッチの濃度」から「所定方向の色分布情報」を取得しているといえる。 そうすると、後者の「キャリッジに記録したテストパターン上を低速走査させ、個々のテストパッチの濃度を検出」することは、前者の「前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、前記検査パターンの所定方向における色分布情報を取得する色分布取得ステップ」に相当する。 上記ア(3)cより、後者の検出されるテストパターンの濃度は、記録位置ずれに基づいて濃度変化するもの、すなわち、色ムラが発生するものといえ、そして、後者の「複数のパッチの中から、最も濃度が高く検出されたパッチを選択し、当該パッチを記録した際の往路走査の吐出タイミングと復路走査の吐出タイミングの関係」である「レジスト調整値」は、検出したテストパッチの濃度に基づいて算出されたものであるから、後者の「レジスト調整値」は、前者の「前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータ」に相当し、後者の「レジスト調整方法」が「色ムラ検出ステップ」を有することは明らかである。 後者の「レジスト調整方法」は、「テストパターンを記録するステップ」及び「テストパッチ内の移動平均をとりつつ濃度を検出し、…レジスト調整値として記憶するステップ」とを包含するものであるから、後者の「レジスト調整方法」は、前者の「被記録媒体に形成したパターンの色ムラ検査方法」に相当する。 よって、本件訂正特許発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、次の相違点で相違する。 [一致点] 所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、 前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、 を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する方法であって、 前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、 前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、 前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、前記検査パターンの前記所定方向における色分布情報を取得する色分布取得ステップと、 前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとした色ムラ検出ステップと、 を備えている色ムラ検査方法。 [相違点3] 本件訂正特許発明1の「検査パターンの所定方向におけるLab色分布情報」が、「横軸を検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」であって、「色ムラ検出ステップ」が、「検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの所定方向における色差のばらつきを算出する」ものであるのに対し、引用発明3のそのようなものではない点。 b 判断 以上のとおり、本件訂正特許発明1と引用発明6とは、相違点3において相違するものであって、本件訂正特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。 (イ)本件訂正特許発明2、6乃至8、13について 本件訂正特許発明2、6及び7は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明8は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加し、「ヘッド調整方法」としたものである。 本件訂正特許発明13は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」を、「色ムラを検査する装置」とカテゴリーを変更したものである。 そうすると、本件訂正特許発明2、6乃至8、13と引用発明6とは、少なくとも上記相違点3において相違するものである。 したがって、本件訂正特許発明2、6乃至8、13は、甲第6号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。 ウ 理由2(特許法第29条第1項第3号)についてのまとめ 上記のとおり、本件訂正特許発明1、2、6乃至8及び13は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないから、上記取消理由2により、本件特許請求の範囲の請求項1、2、6乃至8及び13に係る特許を取り消すことはできない。 (3)取消理由3(進歩性)について ア 各甲号証の記載 上記(2)アに加えて、 (ア)甲第3号証 本件特許出願前の平成3年5月15日に頒布された特開平3-114761号公報(甲第3号証)には、次の事項が記載されている。 a 「2.特許請求の範囲 (1)互いに異なる色に対応した複数のマルチヘツドによってカラー画像を記録する記録手段、 前記複数のマルチヘツドの少なくとも2つを用いて混色した画像を形成させ、形成された画像の濃度ムラを検出する検出手段、 該検出手段の検出に応じて前記記録手段を制御する制御手段とを有することを特徴とするカラー画像記録装置。」(1欄4?12行) b 〔産業上の利用分野〕 本発明は、カラー画像記録装置に関し、特にメルチヘツド(取消理由通知書注:「マルチヘツド」の誤記と認める。)によってカラー画像を記録するカラー画像記録装置に関する。」(1欄18行?2欄1行) c 「このように、2色以上のヘツドでカラー画像を形成する際には、それぞれのヘツドのむらのパターンによって濃度むらが強調されたり、色むらが生じたりして、単色印字のむらパターンからは予想できないほどのむらが生じる場合があった。 本発明はかかる点に鑑み、色むらを低減し、より良好にカラー画像を記録できるようにしたカラー画像記録装置を提供することを目的とする。」(3欄18行?4欄5行) d 「第1図は本発明第1の実施例のブロツク図である。21a,21b,21cは、それぞれシアン、マゼンタ、イエローの3色の画像信号、22a,22b,22cはそれぞれ各色用のむら補正テーブル、23a,23b,23cは、それぞれ各色用の補正後画像信号、31a,31b,31cは2値化回路、24a,24b,24cは、それぞれ各色の256ノズルのインクジエツトヘツド、25はレツド(R),グリーン(G),ブルー(B)3色のフイルターを有するCCDを具備する読取部、26a,26b,26cは読取部25から出力される信号で、それぞれR,G,Bの読取信号、32はR,G,B信号を一時記憶するRAM27はR,G,B信号をもとにむら補正データを演算するCPU、28a,28b,28cはそれぞれCPU27から出力されるシアン,マゼンタ,イエロー用のむら補正データ、29a,29b,29cは各色層むら補正RAM、30a,30b,30cは各色層のむら補正信号である。」(4欄20行?5欄16行) e 「むら補正テーブル22a?22cは、それぞれのヘツドのむらを補正するのに必要な補正直線の選択信号を記憶している。すなわち、0?60の61種類の値を持つむら補正信号を256ノズル(即ちヘツド24a?24cは256ノズルを有する)分記憶しており、入力する画像信号と同期してむら補正信号30a?30cを出力する。」(6欄9?15行) f 「次にむら補正のデータの作成方法を説明する。 まず図示しない制御信号により、むら補正テーブル22a?22cをすべて傾き1.0の直線とし、むら補正を全く行わない状態とする(第7図ステツプ41)。続いて図示しない信号源からむら補正用パターンを出力し、ヘツド24a?24cにより該むら補正用パターンを印字出力する(第7図ステツプ42)。むら補正用パターンは任意のものを任意の種類選択すればよいが、本実施例ではシアン、マゼンタ、イエローの各単色のほかに、これらのうち2色を混色させたレツド、グリーン、ブルーを加え、合計6色の均一パターンとする。 出力されたパターンは、読取部25で読取られ、該読取部25からの3色の読取信号26a?26cはRAM32に一旦記憶される(第7図ステツプ43)。読取部25のCCDはヘツドの記録密度と同じ読取密度であり、本実施例の場合は400dpiである。また、本実施例ではCCDの画素数は少なくともヘツドのノズル数256より多くなっている。従ってこの読取りにより、6色の均一パターンにおけるむらパターンの3色分解信号が得られる。 … 第6図は、このようにして得られた6色のむらパターンの3色分解信号である。ここでシアンパターンにおいて、1ノズル目で印字された画素のR読取り出力をR_(C1)、G読取出力をG_(C1)、B読取出力をB_(C1)とすると、シアンパターンを読取ったときには、R_(C1)?R_(C256)、G_(C1)?G_(C256)、B_(C1)?B_(C256)のデータが読取られることになる。同様に、マゼンタパターンを読取ったときには、R_(M1)?R_(M256)、G_(M1)?G_(M256)、B_(M1)?B_(M256)、イエローパターンを読取ったときには、R_(Y1)?R_(Y256)、G_(Y1)?G_(Y256)、B_(Y1)?B_(Y256)、レツドパターンを読取ったときには、R_(R1)?R_(R256)、G_(R1)?G_(R256)、B_(R1)?B_(R256)、グリーンパターンを読取ったときには、R_(G1)?R_(G256)、G_(G1)?G_(G256)、B_(G1)?B_(G256)、ブルーパターンを読取ったときには、R_(B1)?R_(B256)、G_(B1)?G_(B256)、B_(B1)?B_(B256)のデータが読取られる。 読取部のR,G,Bフイルターの特性は既知であり、その特性とRAM32に記憶されたR_(C1),G_(C1),B_(C1)をもとにCPU27で演算を施せば、ヘツドの第1ノズルでシアンパターンを印字した時の色度L^(*)ab_(C1)が求められる。同様にして、R_(M1),G_(M1),B_(M1)から第1ノズルでマゼンタパターンを印字したときの色度L^(*)ab_(M1)が、R_(Y1),G_(Y1),B_(Y1)からL^(*)ab_(Y1)が、という様に演算が行われ、結局、第1ノズルで6色のパターンを印字した時の色度L^(*)ab_(C1),L^(*)ab_(M1),L^(*)ab_(Y1),L^(*)ab_(R1),L^(*)ab_(G1),L^(*)ab_(B1),が求められる(第7図ステツプ44)。 一方、CPU27内のROM101には6色の出カバターンの色度の理想値が記憶されており、これらをL^(*)ab_(C0),L^(*)ab_(M0),L^(*)ab_(Y0),L^(*)ab_(R0),L^(*)ab_(G0),L^(*)ab_(B0)とする。 続いて、各テストパターンの色度の測定値と理想値との色差を求める。 たとえば、シアンパターンでは色差ΔE^(*)ab_(C1)は((取消理由通知書注:「続いて、各テストパターンの色度の測定値と理想値との色差を求める。」に続く行と認める。)) となり、同様にして、マゼンタ、イエロー、レツド、グリーン、ブルーの各テストパターンでの色差ΔE^(*)ab_(M1),ΔE^(*)ab_(Y1),ΔE^(*)ab_(R1),ΔE^(*)ab_(G1),ΔE^(*)ab_(B1)が求まる(第7図ステツプ45)。 次に、各テストパターンでの色差の自乗平均 を求める(第7図ステツプ46)。 そして、このΔE^(*)ab_(1)が最小になる様にC,M,Yの信号を補正する(第7図ステツプ47)。 具体的には、以下のような処理が行われる。各パツチの色度においてC,M,Yの信号を微小量変化させた時のL^(*)abの変化量を実験的に求め、多項式又はLUTの形で記憶しておく。これをもとに、C,M,Yの信号を微小量変化させたときのL^(*)abを演算で求め、これを用いてΔE^(*)ab_(1)を演算する。そして、ΔE^(*)ab_(1)が最小になるようなC,M,Y信号の補正量を求める。さらにその補正量に応じたむら補正テーブルの補正直線の選択信号を求める(第7図ステツプ48)。 以上の演算を第1ノズルから、第256ノズルまで行い(第7図ステツプ49)、各ノズルに対する補正テーブルの選択信号を求め、これを、第1図29a?29cのむら補正RAMに記憶させる(第7図ステツプ50)。 以上の様に本実施例に依れば、このような補正データに従って各色信号の補正を行えば、各ノズルごとに色度が理想値になるように補正されるため、混色させた色についてもむらの補正が可能となり、さらに、複数のパターンについて平均的に補正されるため、特定の混色パターンで予想外にむらが目立つという問題を解決することができる。 本実施例においては、むら補正用パターンの出力及び読取りは、サービスマンが行っても、ユーザーが行っても良く、さらに機械が自動的に行うように構成されていてもよい。また、3色のフイルターを具備したCCDにより原稿を読取りカラープリンターで画像出力するような装置においては、その原稿読取装置を本発明の読取部として用いることができる。」(7欄1行?11欄18行) g 「また、マルチヘツドは画像幅と同じ幅をもつフルマルチヘツドでも、セミマルチヘツドをシリアルスキヤンするものであってもかまわない。」(13欄8?10行) h 上記f 及び第7図より、むら補正のデータの作成は、信号源からシアン、マゼンタ、イエローの各単色のほかに、これらのうち2色を混色させたレツド、グリーン、ブルーを加えた合計6色のノズル毎のむら補正用パターンを出力し、ヘツド24a?24cにより該むら補正用パターンを印字出力するステツプ、出力されたパターン(R_(C1)?R_(C256)、G_(C1)?G_(C256)、B_(C1)?B_(C256))を読取部で読取り、該読取部からの読取信号をRAMに一旦記憶するステツプ、読取部のR,G,Bフイルターの特性、RAMに記憶された読取信号をもとにCPUにて演算を施し、パターンを印字した時の色度L^(*)abを求めるステツプ、各テストパターンの色度L^(*)abの測定値と理想値との色差を求めるステツプ、色差の自乗平均(ΔE^(*)ab_(1))を求めるステツプ、色差の自乗平均(ΔE^(*)ab_(1))が最小になる様にC,M,Yの信号の補正量を求めるステツプ、その補正量に応じたむら補正テーブルの補正直線の選択信号を求めるステツプ、以上の演算を第1ノズルから、第256ノズルまで行うステツプ、各ノズルに対する補正テーブルの選択信号を求め、これをむら補正RAMに記憶させるステツプ、からなるものといえる。 i 上記fより、作成されたむら補正のデータにより各色信号の補正を行うことは、特定の混色パターンで予想外にむらが目立つという問題を解決し、色むらを低減するという本願発明の課題を解決するものであるから、むら補正のデータの作成による色むら低減方法といえる。 これらの記載を総合すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「互いに異なる色に対応した複数のマルチヘツドによってカラー画像を記録する記録手段、前記複数のマルチヘツドの少なくとも2つを用いて混色した画像を形成させ、形成された画像の濃度ムラを検出する検出手段、該検出手段の検出に応じて前記記録手段を制御する制御手段とを有するカラー画像記録装置におけるむら補正のデータの作成による色むら低減方法であって、 信号源からシアン、マゼンタ、イエローの各単色のほかに、これらのうち2色を混色させたレツド、グリーン、ブルーを加えた合計6色のノズル毎のむら補正用パターンを出力し、ヘツド24a?24cにより該むら補正用パターンを印字出力するステツプ、出力されたパターン(R_(C1)?R_(C256)、G_(C1)?G_(C256)、B_(C1)?B_(C256))を読取部で読取り、該読取部からの読取信号をRAMに一旦記憶するステツプ、読取部のR,G,Bフイルターの特性、RAMに記憶された読取信号をもとにCPUにて演算を施し、パターンを印字した時の色度L^(*)abを求めるステツプ、各テストパターンの色度L^(*)abの測定値と理想値との色差を求めるステツプ、色差の自乗平均(ΔE^(*)ab_(1))を求めるステツプ、色差の自乗平均(ΔE^(*)ab_(1))が最小になる様にC,M,Yの信号の補正量を求めるステツプ、その補正量に応じたむら補正テーブルの補正直線の選択信号を求めるステツプ、以上の演算を第1ノズルから、第256ノズルまで行うステツプ、各ノズルに対する補正テーブルの選択信号を求め、これをむら補正RAMに記憶させるステツプ、からなる、むら補正のデータを作成し、 該むら補正のデータにより各色信号の補正を行う、むら補正のデータの作成による色むら低減方法。」 (イ)甲第4号証 本件特許出願前の平成5年2月23日に頒布された特開平5-42685号公報(甲第4号証)には、次の事項が記載されている。 a 「【請求項1】 複数の記録素子を具えた記録ヘツドを用い、複数の記録色で記録を行う記録装置において、 前記記録ヘッドによって記録された画像を読取るための読取り手段と、 該読取り手段が読取ったデータの濃度レベルを前記複数の記録色のそれぞれに応じて変更するための濃度変更手段と、 該濃度変更手段によって変更されたデータに基づいて、前記記録ヘッドにおける複数の記録素子各々によって記録される濃度を補正するための濃度むら補正手段と、 を具えたことを特徴とする記録装置。」 b 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は記録装置に関する。」 c 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、例えば異なる色の複数のインクによって記録を行う記録装置において上述のような濃度むら補正を行う場合、読取りデータの濃度レベルが各色毎に異なるのが一般的である。このため、この読取りデータに表われる濃度むらの程度は色毎に異なったものとなる。従ってこの読取りデータに基づいて各色について同一の補正を行うと、補正の程度が異なり、一部の色について濃度むらが解消しきれないことがある。 【0008】これに対して、色毎に補正の態様を異ならせることが考えられるが、この場合、この補正のための構成が煩雑になるという問題がある。 【0009】なお、以上説明した問題は、インクジェット方式の記録装置に限らず、複数の記録素子を具えた記録ヘッドを有し、複数の記録色によって記録を行う記録装置に共通の問題であり、このような記録装置としては、例えば熱転写方式の記録装置等がある。 【0010】本発明は、上述の問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、複数の記録色で記録を行う記録装置において、簡潔な構成で各記録色の濃度むらを解消することが可能な記録装置を提供することにある。」 d 「【0044】図8は本発明の第1実施例にかかる濃度むら補正処理のフローチャートである。 【0045】例えば、ユーザーが記録画像に濃度むらが発生していると判断すると、操作部(図示せず)内の濃度むら補正ボタンを押下する(ステップS1)。これに応じてプリンタ部44は図9に示すような濃度むら測定用のパターンを記録出力する(ステップS2)。 【0046】次に、ユーザーはこのテストパターンの記録サンプルを、図9に示すように、記録サンプルに対して記録ヘッド32が移動した方向に対して、CCD5の主走査が垂直な関係となるように原稿台に置く(ステップS3)。そして再度濃度むら補正ボタンを押下する(ステップS4)。 【0047】これに応じてCPUは、その読取る色に対応したA/D変換器のレファレンス電圧を設定する(ステップS5)。つまり、A/D変換回路201のレファレンス電圧が通常の読取り時のまま、すなわち、レファレンス電圧を一定のままでA/D変換を行うと、図10(A)に示すように、同じ濃度によって記録されたパターンを読んでも、その読取りデータの濃度レベルは、記録色によって異なる。各記録色の濃度むらの程度(濃度の変化幅)が等しくても、例えばイエロー(Y)の場合、読取りデータの濃度レベルは相対的に低くなるので、濃度むらの程度は他の色に比べて小さく読取られる。このため、各色について同じ濃度むら補正のアルゴリズムで補正を行う構成にあっては、イエローの場合、補正の度合いが小さくなる。そして、この結果、濃度むらが完全に解消されず、記録される画像において他の色との混色の場合にイエローの濃度むらがめだつことになる。 【0048】そこで、A/D変換回路201のレファレンス電圧を記録色に応じて変化さえることにより、どの記録色についても濃度むらの程度が等しくなるようにする(図10(B))。そして、その結果、各記録色に関する濃度むら補正のアルゴリズムを等しくでき、濃度むら補正処理のための回路構成を簡潔なものとすることができる。 【0049】上記レファレンス設定後、ステップS6で、CCD5のシェーディング補正用の動作、すなわち、まず、ランプを消した状態でCCDからの読取りを行い、その各画素の値が黒レベルになるように黒補正値を決め、次にランプを点灯し、白色板を読取り、白補正値を決める動作をした後、CCD5の主走査を行って、最初にブラックのテストパターンを読取る(ステップS7、以下、2回目以降はシアン,マゼンタ,イエローと順次行う)。 【0050】この読取りの結果について、各回路200?204の処理を施した後、濃度むら測定回路209による処理を行い、SRAM136に格納する(ステップS8)。すなわち、ステップS8では、図5に示す各回路131,132,133,134および135によって各吐出口に対応した読取りデータのサンプリング数分の平均値を求め、この結果をSRAM136に格納する。 【0051】次に、各吐出口毎に、CCD5の各素子に対応する読取り画素の前後1画素を含めた3画素の移動平均Dnを求める(ステップS9)。なお、この場合の平均は、例えば前後4画素を含む計9画素の平均であってもよく、さらに各画素に重み付けを施してもよい。そして、ステップS9で求めた3画素平均の平均値を求める(ステップS10)。さらに、ステップS9で求めた各3画素平均とステップS10で求めた値の比率α_(n)[%](nは吐出口番号、1以上128以下)を求める(ステップS11)。以上述べたステップS9からS11までの処理を図9に示すテストパターンの1から4について行う(ステップS12)。 【0052】次に、各パターンにおけるαnの平均値α_(n(ave))を求め(ステップS13)、求めたα_(n(ave))と現在の濃度補正テーブル番号Tiより、新たな補正テーブル番号Ti+1を次のように求める(ステップS14)。 【0053】 【数1】 Ti+1(n)=Ti(n)+(α_(n(ave))-100) (1) 新たに求めたテーブル番号Ti+1(n)をSRAM136に書き込む(ステップS15)。 【0054】以上述べたステップS5からS15までの処理を各色について行う(ステップS16)。なお、テストパターンを読取る際には、ブラック,シアン,マゼンタ,イエローの各パターンに対応して、それぞれ補色の関係にあるグリーン,レッド,グリーン,ブルーのフィルター出力をサンプリングする(ただし、ブラックにzついてはグリーン以外でも可能)。 【0055】以上から明らかなように、本実施例ではヘッドの経時変化に起因した濃度むら発生に対処するため、上記の処理によって、SRAM136のテーブルデータを更新する。」 e 上記dより、濃度むら補正処理は、ユーザーが記録画像に濃度むらが発生していると判断すると、操作部内の濃度むら補正ボタンを押下するステップ、これに応じてプリンタ部濃度むら測定用のパターンを記録出力するステップ、次に、ユーザーはこのテストパターンの記録サンプルを、記録サンプルに対して記録ヘッドが移動した方向に対して、CCDの主走査が垂直な関係となるように原稿台に置くステップ、そして再度濃度むら補正ボタンを押下するステップ、これに応じてCPUは、その読取る色に対応したA/D変換器のレファレンス電圧を設定するステップ、CCDのシェーディング補正用の動作、すなわち、まず、ランプを消した状態でCCDからの読取りを行い、その各画素の値が黒レベルになるように黒補正値を決めるステップ、次にランプを点灯し、白色板を読取り、白補正値を決める動作をした後、CCDの主走査を行って、最初にブラックのテストパターンを読取るステップ、この読取りの結果について、各回路の処理を施した後、濃度むら測定回路による処理を行い、SRAMに格納するステップ、各吐出口毎に、CCDの各素子に対応する読取り画素の前後1画素を含めた3画素の移動平均Dnを求めるステップ、求めた3画素平均の平均値を求めるステップ、各3画素平均と3画素平均の平均値の比率α_(n)[%](nは吐出口番号、1以上128以下)を求めるステップ、テストパターンの1から4について行うステップ、各パターンにおけるα_(n)の平均値α_(n(ave))を求めるステップ、求めたα_(n(ave))と現在の濃度補正テーブル番号Tiより、新たな補正テーブル番号Ti+1を求めるステップ、新たに求めたテーブル番号Ti+1(n)をSRAMに書き込むステップ、からなるものといえる。 f 甲第4号証の記録装置は、上記eの濃度むら補正処理を行うことにより、複数の記録色で記録を行う記録装置において、簡潔な構成で各記録色の濃度むらを解消するという課題を解決するものであるから、濃度むら補正処理方法の発明が記載されているものと認められる。 これらの記載を総合すると、甲第4号証には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。 「複数の記録素子を具えた記録ヘッドを用い、複数の記録色で記録を行う記録装置において、 前記記録ヘッドによって記録された画像を読取るための読取り手段と、 該読取り手段が読取ったデータの濃度レベルを前記複数の記録色のそれぞれに応じて変更するための濃度変更手段と、 該濃度変更手段によって変更されたデータに基づいて、前記記録ヘッドにおける複数の記録素子各々によって記録される濃度を補正するための濃度むら補正手段と、 を具えた記録装置の濃度むら補正処理方法であって、 濃度むら補正処理方法は、ユーザーが記録画像に濃度むらが発生していると判断すると、操作部内の濃度むら補正ボタンを押下するステップ、これに応じてプリンタ部濃度むら測定用のパターンを記録出力するステップ、次に、ユーザーはこのテストパターンの記録サンプルを、記録サンプルに対して記録ヘッドが移動した方向に対して、CCDの主走査が垂直な関係となるように原稿台に置くステップ、そして再度濃度むら補正ボタンを押下するステップ、これに応じてCPUは、その読取る色に対応したA/D変換器のレファレンス電圧を設定するステップ、CCDのシェーディング補正用の動作、すなわち、まず、ランプを消した状態でCCDからの読取りを行い、その各画素の値が黒レベルになるように黒補正値を決めるステップ、次にランプを点灯し、白色板を読取り、白補正値を決める動作をした後、CCDの主走査を行って、最初にブラックのテストパターンを読取るステップ、この読取りの結果について、各回路の処理を施した後、濃度むら測定回路による処理を行い、SRAMに格納するステップ、各吐出口毎に、CCDの各素子に対応する読取り画素の前後1画素を含めた3画素の移動平均Dnを求めるステップ、求めた3画素平均の平均値を求めるステップ、各3画素平均と3画素平均の平均値の比率α_(n)[%](nは吐出口番号、1以上128以下)を求めるステップ、テストパターンの1から4について行うステップ、各パターンにおけるα_(n)の平均値α_(n(ave))を求めるステップ、求めたα_(n(ave))と現在の濃度補正テーブル番号Tiより、新たな補正テーブル番号Ti+1を求めるステップ、新たに求めたテーブル番号Ti+1(n)をSRAMに書き込むステップ、からなる濃度むら補正処理方法。」 (ウ)甲第5号証 本件特許出願前の平成21年6月25日に頒布された特開2009-137015号公報(甲第5号証)には、次の事項が記載されている。 a 「【請求項1】 記録媒体を所定の搬送方向へ搬送する搬送体と、 前記記録媒体又は前記搬送体に液滴を吐出して記録可能な液滴吐出ヘッドと、 前記液滴吐出ヘッドが記録した縞状のテストパターンを読み取る読み取り手段と、 前記読み取り手段がテストパターンを読み取った読み取りパターンと縞状の基準パターンとからモワレパターンを生成し、そのモワレパターンのモワレ周期から前記搬送方向に対する前記液滴吐出ヘッドの傾きを検出する検出手段と、 を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。」 b 「【技術分野】 【0001】 本発明は、液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの傾き検出方法に関する。」 c 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明は、テストパターンを読み取る読み取り手段が低解像度であっても、テストパターンのドットピッチを測定して記録媒体の搬送方向に対する液滴吐出ヘッドの傾きを検出する構成に比して、液滴吐出ヘッドの傾きを精度よく検出することを目的とする。」 d 「【0023】 このインクジェット記録ヘッド20Y?20Kは、記録媒体Pの搬送方向の下流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色の順で並列に並べられており、その各色に対応したインク滴を、圧電方式によって、ノズル面に形成された複数のノズルから吐出し、画像を記録する構成となっている。なお、インクジェット記録ヘッド20Y?20Kにおいてインク滴を吐出させる構成は、圧電方式に限られず、サーマル方式等の他の方式によって吐出させる構成であっても良い。」 e 「【0044】 本実施形態に係るインクジェット記録装置10は、インクジェット記録ヘッド20Y?20Kが、記録媒体Pへインク滴を吐出して、インクジェット記録ヘッド20Y?20Kの傾きを検出するためのテストパターンを記録することが可能とされている。」 f 「【0048】 インクジェット記録ヘッド20Y?20Kの下流側には、図1及び図2に示すように、液滴吐出ヘッドが記録した縞状のテストパターンを読み取る読み取り手段の一例としてのイメージセンサ40が設けられている。」 g 「【0051】 インクジェット記録装置10は、図2に示すように、記録媒体Pの搬送方向に対するインクジェット記録ヘッド20Y?20Kの傾きをそれぞれ調整可能な調整機構42、記録媒体Pの搬送方向に対するイメージセンサ40の傾きを調整可能な調整機構43を備えている。 【0052】 調整機構42は、インクジェット記録ヘッド20Y?20Kの一端部をそれぞれ回転可能に支持する支持部42Aと、支持部42Aを回転中心としてインクジェット記録ヘッド20Y?20Kの他端部をそれぞれ変位させるためのボールねじ42Bと、インクジェット記録ヘッド20Y?20Kの他端部をボールねじ42Bへ付勢する付勢部材42Cと、を備えている。」 h 「【0058】 イメージセンサ40には、読み取り手段がテストパターンを読み取った読み取りパターンと縞状の基準パターンとからモワレパターンを生成し、そのモワレパターンの縞模様の周期から液滴吐出ヘッドの傾きを検出する検出手段の一例として、制御部44が接続されている。制御部44は、イメージセンサ40が読み取った読み取りパターンと、基準パターンとを演算してモワレパターンを生成する。」 i 「【0061】 図4に示すように、インクジェット記録ヘッド20Y?20Kが傾くと、記録される画像において、記録媒体Pの搬送方向に直交する直交方向における幅が小さくなる。なお、図4において点線で示す画像Gは、インクジェット記録ヘッド20Y?20Kが記録媒体Pの搬送方向に対して直交する場合に記録される画像を示し、二点鎖線で示す画像Gは、インクジェット記録ヘッド20Y?20Kが記録媒体Pの搬送方向に対して傾いた場合に記録される画像を示す。」 j 「【0064】 また、図6?図8に示すように、インクジェット記録ヘッド20Y?20Kの傾きが大きくなるほど、テストパターンの複数の線の間隔が狭くなり、モワレパターンのモワレの周期が短くなり、モアレのピーク数が多くなる。」 k 上記a及びgより、「インクジェット記録装置」及び「インクジェット記録ヘッド」は、それぞれ、「液滴吐出装置」及び「液滴吐出ヘッド」に対応していることは明らかである。 l 上記a及びjより、ヘッドの傾きに比して、モアレパターンのモアレ周期が変わるから、搬送方向に対する液滴吐出ヘッドの傾きは、吐出面と平行な面内での傾きといえる。 これらの記載を総合すると、甲第5号証には、次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。 「記録媒体を所定の搬送方向へ搬送する搬送体と、 前記記録媒体又は前記搬送体に液滴を吐出して記録可能な液滴吐出ヘッドと、 前記液滴吐出ヘッドが記録した縞状のテストパターンを読み取る読み取り手段と、 前記読み取り手段がテストパターンを読み取った読み取りパターンと縞状の基準パターンとからモワレパターンを生成し、そのモワレパターンのモワレ周期から、吐出面と平行な面内での前記液滴吐出ヘッドの傾きを検出する検出手段と、を備え、 液滴吐出装置は、記録媒体の搬送方向に対する複数の液滴吐出ヘッドの傾きをそれぞれ調整可能な調整機構を備えている、液滴吐出装置。」 (エ)甲第7号証 本件特許出願前の平成23年11月4日に頒布された特開2011-218657号公報(甲第7号証)には、次の事項が記載されている。 a 「【技術分野】 【0001】 本発明は、記録媒体にインクを吐出して画像を記録する画像記録装置の画像濃度調整方法に関する。」 b 「【発明が解決しようとする課題】 【0013】 前述した記録濃度を調整するために記録ヘッドの駆動電圧を変更すると、その駆動電圧が変更された記録素子から吐出されるインク滴の飛翔速度も変化する。インク滴の飛翔速度が変化すると記録媒体上にインク滴が着弾するタイミングも変化するため、インク滴の着弾位置が搬送方向で前後にずれ、再度インク吐出タイミングを調整する必要が出る。このようにインク吐出タイミング調整と濃度調整は互いに影響を及ぼしあう関係にある。 【0014】 このように従来の画像調整方法においては、インク吐出タイミング調整後に記録濃度調整を行うと、記録ヘッドから吐出され記録媒体上に着弾されたドットの位置が搬送方向にずれてしまい、記録された画像の品質が低下するという問題がある。 【0015】 反対に、記録濃度調整後にインク吐出タイミング調整を行った場合について説明する。 まず、図6(a)に示すように、ノズル列17aとノズル列17bの各ノズルの位置が1/2ピッチずれて配置された高い解像度の画像を記録する方式において、濃度調整用パターンを記録する。この時には、まだ、インク吐出タイミング調整が行われていない状態であるため、本来であれば、タイミング調整で解決されていたはずの着弾位置ずれが含まれ、各々ドットが理想的な格子上からずれた位置に記録される。 【0016】 このような位置ずれが生じていたパターンで記録濃度調整後に、インク吐出タイミングの調整を行い、記録ドット位置が正しい格子上に記録されると、記録ドットの配列が変わってしまうことから、再び均一な濃度から濃淡が発生する状態となる。 【0017】 そこで本発明は、適正なインク吐出タイミングにより記録された調整パターンに対して、インクの濃度調整した後にインク吐出タイミングの確認及び調整が行われる画像記録装置の画像濃度調整方法を提供することを目的とする。」 c 「【0024】 図1(a)に示すように、画像記録装置1は、インクを吐出する記録ユニット10と、記録画像を撮影する撮影機構11と、記録ユニット10を制御する制御部12と、記録媒体3を画像記録装置1に供給する供給機構21と、記録媒体3を搬送する搬送機構20と、記録媒体3を画像記録装置1から排出する排出機構22とで構成される。 【0025】 画像記録装置1は、記録ユニット10を具備する。 記録ユニット10は、図1(a)に示すように、記録媒体3の搬送方向上流側から配置されるKインク記録ヘッド列13、Cインク記録ヘッド列14、Mインク記録ヘッド列15及び、Yインク記録ヘッド列16で構成される。」 d 「【0033】 また、インク吐出タイミング調整値の算出した後に、濃度調整用パターンを記録媒体3に記録し、その濃度調整用パターンを撮影する。撮影した濃度調整用パターンは、外部制御部2において、画像処理し、各記録ヘッド17の濃度調整値(電圧補正値)を算出する。外部制御部2は、算出した濃度調整値を制御部12に設定した後、先に算出したインク吐出タイミング調整値と濃度調整値を反映して、再度、タイミング調整用パターンを記録し、タイミング調整が必要か否かを判定する。 … 【0035】 本実施形態で用いるインク吐出タイミング調整用パターンは、例えば、記録媒体上で搬送方向に沿うように記録された同じ間隔のドット画像或いは、全ノズルから同時にインク滴を吐出させた記録ノズル列と平行な複数の線分である。」 これらの記載を総合すると、甲第7号証には、次の発明(以下、「引用発明7」という。)が記載されているものと認められる。 「適正なインク吐出タイミングにより記録された調整パターンに対して、インクの濃度調整した後にインク吐出タイミングの確認及び調整が行われる画像記録装置の画像濃度調整方法であって、 画像記録装置は、録媒体の搬送方向上流側から配置されるKインク記録ヘッド列、Cインク記録ヘッド列、Mインク記録ヘッド列及び、Yインク記録ヘッド列で構成されるインクを吐出する記録ユニットと、記録画像を撮影する撮影機構と、記録ユニットを制御する制御部と、記録媒体を画像記録装置に供給する供給機構と、記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体を画像記録装置から排出する排出機構とで構成され、 インク吐出タイミング調整用パターンは、全ノズルから同時にインク滴を吐出させた記録ノズル列と平行な複数の線分である、画像記録装置の画像濃度調整方法。」 (オ)甲第8号証 本件特許出願前の平成5年9月17日に頒布された特開平5-238004号公報(甲第8号証)には、次の事項が記載されている。 a 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、複数の記録ヘッドが記録媒体に対して相対的に走査しながら画像記録を行う記録方法及び装置及びその記録物に関するものである。」 b 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、このように複数の記録ヘッドを有する記録装置では、記録ヘッドの相互の位置合わせを精度良く行わなければならないという問題がある。 【0006】従来より、4色分の記録ヘッドを所定の間隔を空けて主走査方向に配して、各記録ヘッドより吐出されるインクを重ね打ちしてフルカラーでの画像記録を可能にした装置が実用化されている。この場合、記録ヘッド相互の位置合わせは、これら記録ヘッドのそれぞれを支持しているホルダの位置精度のみで決定されていた。ところが、このような複数の記録ヘッドを千鳥状に並べる場合、それがフルカラー記録装置に用いられた場合には、記録ヘッドの数は各色ごとに2個ずつ必要となり最低でも8個の記録ヘッドが必要になる。また、前述の多値記録を行う場合は、最小でも8個、多くの場合には12個の記録ヘッドを用いることになり、単独のホルダで全ての記録ヘッドの位置決めをしようとするとホルダが大型化する。また、千鳥状に記録ヘッドを並べる場合には、ホルダの形状も複雑になってしまい、このようなホルダの形状精度や取り付け精度を上げることは困難であった。 【0007】このような記録ヘッドの位置合せが正確に行われない場合には、次のような問題点が発生する。 (1)フルカラーによる記録のためでなく、1回の走査で記録する記録幅を広げる目的で、記録ヘッドをそのノズル方向に並べた場合には、単一色に対応した各記録ヘッドの相対位置ずれが、線の曲り、歪や不連続線となって記録画像上に表れる。 (2)フルカラー記録のために、複数の記録ヘッドをそのノズル方向に並べた場合には、各色に対応した記録ヘッドの位置ずれが各色ラインにおける色ずれとなって表れる。 (3)前述した複数ドットで1画素を形成する多値記録における記録ヘッドの位置ずれは、色みの違いとなって表れ、色再現性や均一性を損なうことになる。 (4)記録ヘッドの高さ方向に位置ずれが発生すると、シリアルスキャン方式でのラインとラインのつなぎ目部分で記録ドットが重なり、一定のピッチの黒スジが表れる。 【0008】上述したいずれの場合も、記録された画像品位の低下を招いていた。 【0009】本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、複数の記録ヘッドによる記録位置を簡単に調整でき、高品位の画像を記録できる記録方法及び装置及びその記録物を提供することを目的とする。」 c 「【0014】図1は本発明の一実施例のシリアルタイプのインクジェット記録装置の記録部の斜視図である。 【0015】図1において、キャリッジ9はベルト16に固定され、キャリッジモータ13の回転に応じて矢印A及びA’方向に走査する。このキャリッジ9には、ヘッド部12及びインクカートリッジ等が載置されており、このヘッド部12にはシアン,マゼンタ,イエロー,ブラックの各色に対応したインクジェットヘッド(記録ヘッド)が、図2に示すように複数個設けられている。11C?11Bkは各色に対応したインクカートリッジであり、インクの供給はこれらインクカートリッジ11から不図示のインクタンクを経由して各色に対応した記録ヘッドに送られる。」 d 「【0021】図2において、100,200,300のそれぞれは、第1,第2,第3の記録部である。101,201,301のそれぞれは、各シアンヘッド100C,200C,300C,各マゼンタヘッド100M,200M,300M,各イエローヘッド100Y,200Y,300Y及び各ブラックヘッド100Bk,200Bk,300Bkを、それぞれ1個ずつ搭載したヘッドホルダで、それぞれ回動中心軸102,202,302を有している。この内、回動中心102はヘッド部12に固定されているが、回動中心202,302のそれぞれは各支持フレーム203,303によって支持されている。これら支持フレーム203,303は不図示のガイド溝によってガイドされ、図中、矢印C,C’方向に自在に移動できるように構成されている。 【0022】215,315のそれぞれは、各支持フレーム203,303を矢印C,C’に移動させるためのアクチュエータで、例えば段階的に直線移動する駆動源であるリニアステップアクチュエータ等が用いられる。このリニアステップアクチュエータは、ステッピングモータの出力軸の回転を直線運動に変えるものであり、構造としては、モータロータ内部と出力軸に台形ネジを形成したものが一般的である。このようなリニアステップアクチュエータは、主にフロッピーディスク等の読書きヘッドの送り用として用いられることが多い。216,316は先に説明した出力軸であり、その先端は支持フレーム203,303に回転可能に接続されている。 【0023】従って、図4に示す制御部401からの信号によりアクチュエータ215,315が作動すると、出力軸216,316がC,C’方向に移動し、これに接続された支持フレーム203,303も同様にC,C’方向に移動する。これによりヘッドホルダ101,201,301もC,C’方向に移動する。105,205,305は、それぞれヘッドホルダ101,201,301を図中上方へ押し上げる板ばねである。110,210,310のそれぞれは、アクチュエータ215,315のそれぞれと同様のアクチュエータであり、各出力軸111,211,311の先端がそれぞれ対応する各ヘッドホルダ101,201,301に接している。これら出力軸111,211,311のそれぞれと、対応する各板ばね105,205,305とで各記録部100,200,300を挾持することで、ヘッドホルダ101,201,301が固定される。そして、アクチュエータ110,210,310が制御部401からの信号によって作動し、出力軸111,211,311がC,C’方向に移動することにより、ヘッドホルダ101,201,301がそれぞれの回動中心102,202,302を軸として時計回り或いは反時計回りに回動する。 【0024】尚、各記録部100,200,300に搭載された4つの記録ヘッドの相互位置関係は、各ヘッドホルダ101,201,301の精度で保障されている。」 e 「【0027】次に、図2、図3、図4を参照しながら、図5?図8のフローチャートに従って各記録部100,200,300相互の位置関係を調整する方法の一例を述べる。この方法では、各記録部の内の1つの記録ヘッドによる記録結果を検出することによって各記録部の位置補正を行っている。以下の説明では、シアンヘッド100C,200C,300Cによる記録結果を用いて位置補正を行う場合について説明するが、本発明はこのシアン色ヘッドによる記録の場合に限定されないことはもちろんである。。 【0028】まず、ステップS1でキャリッジモータ13の駆動を開始し、キャリッジ9の走査を開始する。ステップS2で、図3に示すように第1の記録部100のシアンヘッド100CによってラインL_(1)上にパターンP_(1)を記録する。ステップS3で、この記録されたパターンP_(1)をCCDセンサ(検出部)20で読み取る。こうしてステップS4でパターンP_(1)の記録が終了するまでステップS2、S3を繰返し実行し、パターンP_(1)の記録が終了するとステップS5に進み、記録されたパターンP_(1)の右端部の位置を記憶し、キャリッジ9をホーム位置方向に戻す。次にステップS6に進み、記録材送り用モータ17を駆動して、記録材22をB方向にヘッド100Cによる記録幅分の距離H0だけ搬送する。 【0029】次にステップS7に進み、再びキャリッジ9の走査を開始し、ステップS8?S10で、図3に示すように、ラインL_(2)上にパターンP_(1)と同じ記録タイミングでシアンヘッド100CによりパターンP_(2)を記録する。そして、このパターンP_(2)を図1に示すCCDセンサ20によって読込み、ステップS5で検出されて記憶されているパターンP_(1)の下端とパターンP_(2)の上端とのズレT_(1)を検出する(ステップS11)。このズレT_(1)の検出は、CCDセンサ20を搬送しているキャリッジモータ13の駆動ステップ数に応じて、又はCCDセンサ20の読取り画素位置によって検出される。こうしてズレ量T_(1)が検出され、このズレT_(1)は第1の記録部100の記録材22の搬送方向に対する傾きに相当している。従って、ステップS12において、このズレT_(1)を補正する方向(この場合は図2で時計回り方向)に第1の記録部100を回動させるべく、アクチュエータ110を作動させて出力軸111をC方向に所定量動かす。これにより、第1の記録部100の傾きが補正されたので、次に第2,第3の記録部200,300の傾きの補正と高さの補正を行う。」 f 上記d及び図2より、各シアンヘッド,各マゼンタヘッド,各イエローヘッド及び各ブラックヘッドの個々のヘッドは記録ヘッドといい、ヘッドホルダに搭載されているといえる。 これらの記載を総合すると、甲第8号証には、次の発明(以下、「引用発明8」という。)が記載されているものと認められる。 「シリアルタイプのインクジェット記録装置における、各記録部相互の位置関係を調整する方法であって、 インクジェット記録装置には、キャリッジがベルトに固定され、キャリッジモータの回転に応じて走査し、このキャリッジには、ヘッド部及びインクカートリッジ等が載置されており、このヘッド部にはシアン,マゼンタ,イエロー,ブラックの各色に対応したインクジェットヘッド(記録ヘッド)が、複数個設けられており、 キャリッジモータの駆動を開始し、キャリッジの走査を開始するステップ、 第1の記録部のシアンヘッドによってラインL_(1)上にパターンP_(1)を記録するステップ、 この記録されたパターンをCCDセンサ(検出部)で読み取るステップ、 記録されたパターンの右端部の位置を記憶し、キャリッジをホーム位置方向に戻すステップ、 記録材送り用モータを駆動して、記録材をヘッドによる記録幅分の距離だけ搬送するステップ、 再びキャリッジの走査を開始し、ラインL_(2)上にパターンP_(1)と同じ記録タイミングでシアンヘッドによりパターンP_(2)を記録するステップ、 パターンP_(2)をCCDセンサによって読込み、パターンP_(1)の下端とパターンP_(2)の上端とのズレT_(1)を検出するステップ、 ズレT_(1)を補正する方向に記録部を時計回り或いは反時計回りに回動させるべく、アクチュエータを作動させて出力軸を所定量動かすステップ、 からなる各記録部相互の位置関係を調整する方法。」 イ-1.甲第1号証を主引例とした場合の進歩性欠如について (ア)本件訂正特許発明1について 上記(2)イ-1(ア)aの通り、本件訂正特許発明1と引用発明1とは、上記相違点1で相違する。 ここで、引用発明3には、上記相違点1のうち、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの色出力とした、前記検査パターンの前記所定方向における色分布情報と、検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する色ムラ検出ステップは示されているものの、 「縦軸を、検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」及び「検査パターンの所定方向における色差のばらつきを算出する」ことまでは記載されていない。 また、特許異議申立人の提出したいずれの証拠をみても、上記相違点1に係る本件訂正特許発明1の構成は記載されていないし、また、設計的事項といえる理由もない。 してみると、本件訂正特許発明1は、甲第1号証を主引例とし、特許異議申立人の提出したその他の証拠を考慮したとしても,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (イ)本件訂正特許発明2、6乃至8、11乃至13について 本件訂正特許発明2、6及び7は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明8は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加し、「ヘッド調整方法」としたものである。 本件訂正特許発明11及び12は、本件訂正特許発明8を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明13は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」を、「色ムラを検査する装置」とカテゴリーを変更したものである。 そうすると、本件訂正特許発明2、6乃至8、11乃至13と引用発明1とは、少なくとも上記相違点1において相違するものである。 したがって、本件訂正特許発明2、6乃至8、11乃至13は、上記(ア)と同様の理由により、甲第1号証を主引例とし、特許異議申立人の提出したその他の証拠を考慮したとしても,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 イ-2.甲第2号証を主引例とした場合の進歩性欠如について (ア)本件訂正特許発明1について 上記相違点2-1について検討すると、引用発明3のヘッドは、「互いに異なる色に対応した複数のマルチヘッド」であって、インクジェットヘッドの技術分野において、「マルチヘッド」といえば、所定の配列方向に沿って互いに異なる色に対応した複数のノズルが配列され、同じ領域に対して前記複数のノズルからインクを吐出するようにすることは技術常識といえる事項であるから、上記相違点2-1に係る本件訂正特許発明1のように、被記録媒体の「同じ領域」に向けて第1のインクと第2のインクを吐出するようにすることは、引用発明3及び上記技術常識より、当業者が容易になし得ることである。 ここで、引用発明3には、上記相違点2-2のうち、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの色出力とした、前記検査パターンの前記所定方向における色分布情報と、検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する色ムラ検出ステップは示されているものの、「縦軸を、検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」及び「検査パターンの所定方向における色差のばらつきを算出する」ことまでは記載されていない。 また、特許異議申立人の提出したいずれの証拠をみても、上記相違点2-2に係る本件訂正特許発明1の構成は記載されていないし、また、設計的事項といえる理由もない。 してみると、本件訂正特許発明1は、甲第2号証を主引例とし、特許異議申立人の提出したその他の証拠を考慮したとしても,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (イ)本件訂正特許発明2、3、6乃至8、11乃至13について 本件訂正特許発明2、3、6及び7は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明8は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加し、「ヘッド調整方法」としたものである。 本件訂正特許発明11及び12は、本件訂正特許発明8を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明13は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」を、「色ムラを検査する装置」とカテゴリーを変更したものである。 そうすると、本件訂正特許発明2、3、6乃至8、11乃至13と引用発明2とは、少なくとも上記相違点2-2において相違するものである。 したがって、本件訂正特許発明2、3、6乃至8、11乃至13は、上記(ア)と同様の理由により、甲第2号証を主引例とし、特許異議申立人の提出したその他の証拠を考慮したとしても,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 イ-3.甲第3号証を主引例とした場合の進歩性欠如について (ア)本件訂正特許発明1について 本件訂正特許発明1と引用発明3とを対比すると、 前者の「インクジェットヘッド」と後者の「マルチヘッド」とは、「第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッド」である点で一致する。 後者の「マルチヘッド」は上記のとおりであり、また、後者の「ヘッド24a?24cにより該むら補正用パターンを印字出力するステップ」は、「信号源からシアン、マゼンタ、イエローの各単色のほかに、これらのうち2色を混色させたレッド、グリーン、ブルーを加えた合計6色のむら補正用パターンを出力」するものであるから、後者の「信号源からシアン、マゼンタ、イエローの各単色のほかに、これらのうち2色を混色させたレッド、グリーン、ブルーを加えた合計6色のむら補正用パターンを出力し、ヘッド24a?24cにより該むら補正用パターンを印字出力するステップ」は、前者の「インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップ」に相当する。 後者の「色むら低減方法」における「出力されたパターン(R_(C1)?R_(C256)、G_(C1)?G_(C256)、B_(C1)?B_(C256))を読取部で読取」ることは、前者の「パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップ」に相当する。 後者の読取部で読取る「出力されたパターン(R_(C1)?R_(C256)、G_(C1)?G_(C256)、B_(C1)?B_(C256))」は、第1ノズルから第256ノズルから出力されたパターンであって、上記ア(ア)fを参酌すると、「横軸を検査パターンの所定方向とし、縦軸を検査パターンの色出力」とした出力パターンといえる。そして、一般に「色度L^(*)ab」が色の分布情報であることは明らかなことであるから、後者の「(出力されたパターン(R_(C1)?R_(C256)、G_(C1)?G_(C256)、B_(C1)?B_(C256))を読取部で読取り、)読取部からの読取信号をRAMに一旦記憶するステップ、読取部のR,G,Bフィルターの特性、RAMに記憶された読取信号をもとにCPUにて演算を施し、パターンを印字した時の色度L^(*)abを求めるステップ」は、前者の「読取ステップで得られた検査パターンの画像データから、前記検査パターンの所定方向における色分布情報を取得する色分布取得ステップ」に相当する。 そうすると、後者の「各テストパターンの色度L^(*)abの測定値と理想値との色差」は、前者の「色分布取得ステップで取得された、検査パターンの色分布情報に基づいて、検査パターンの色ムラに関連するパラメータ」に相当するから、後者の「色むら低減方法」は、「色分布取得ステップで取得された、検査パターンの色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する色ムラ検出ステップ」を有するといえる。 してみると、前者の「色ムラ検査方法」と、後者の「色むら低減方法」とは、「被記録媒体に形成したパターンの色むらを検査する方法」との概念で共通する。 よって、本件訂正特許発明1と引用発明3とは、以下の点で一致し、次の相違点で相違する。 [一致点] 第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、 前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、 を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する方法であって、 前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体のに向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、 前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、 前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの色出力とした、前記検査パターンの前記所定方向における色分布情報を取得する色分布取得ステップと、 前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する色ムラ検出ステップと、 を備えている色ムラ検査方法。 [相違点4-1] インクジェットヘッドが、本件訂正特許発明1が、「所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され」、前記第1のインクとは異なる色の「第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズル」と、を有し、被記録媒体の「同じ領域」に向けて第1のインクと第2のインクを吐出させるものであるのに対し、引用発明3は、そのようなものであるのか定かでない点。 [相違点4-2] 本件訂正特許発明1が、「縦軸を、検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの所定方向におけるLab色分布情報」を取得するものであるのに対し、引用発明3は、そのようなものであるのか定かでない点。 [相違点4-3] 本件訂正特許発明1が、「検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつき」を算出するものであるのに対し、引用発明3は、そのようなものであるのか定かでない点。 上記相違点4-1について検討すると、引用発明3のヘッドは、「互いに異なる色に対応した複数のマルチヘッド」であって、インクジェットヘッドの技術分野において、「マルチヘッド」といえば、所定の配列方向に沿って複数のノズルが配列されていることは技術常識といえる事項であって、引用発明3のヘッドは、そのようなマルチヘッドが互いに異なる色に対応して複数設けられているのであるから、上記相違点4-1に係る本件訂正特許発明1のように、インクジェットヘッドを「所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され」、前記第1のインクとは異なる色の「第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズル」とし、以て、被記録媒体の「同じ領域」に向けて第1のインクと第2のインクを吐出するようにすることは、引用発明3及び上記技術常識より、当業者が容易になし得ることである。 しかし、特許異議申立人の提出したいずれの証拠をみても、上記相違点4-2及び相違点4-3に係る本件訂正特許発明1の構成は記載されていないし、また、設計的事項といえる理由もない。 してみると、本件訂正特許発明1は、甲第3号証を主引例とし、特許異議申立人の提出したその他の証拠を考慮したとしても,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (イ)本件訂正特許発明2、6乃至8、11乃至13について 本件訂正特許発明2、6及び7は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明8は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加し、「ヘッド調整方法」としたものである。 本件訂正特許発明11及び12は、本件訂正特許発明8を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明13は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」を、「色ムラを検査する装置」とカテゴリーを変更したものである。 そうすると、本件訂正特許発明2、6乃至8、11乃至13と引用発明3とは、少なくとも上記相違点4-2及び4-3において相違するものである。 したがって、本件訂正特許発明2、6乃至8、11乃至13は、上記(ア)と同様の理由により、甲第3号証を主引例とし、特許異議申立人の提出したその他の証拠を考慮したとしても,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 イ-4.甲第6号証を主引例とした場合の進歩性欠如について (ア)本件訂正特許発明1について 上記(2)イ-2(ア)aの通り、本件訂正特許発明1と引用発明6とは、少なくとも上記相違点3で相違する。 ここで、引用発明3には、上記相違点3のうち、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの色出力とした、前記検査パターンの前記所定方向における色分布情報と、検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する色ムラ検出ステップは示されているものの、「縦軸を、検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報」及び「検査パターンの所定方向における色差のばらつきを算出する」ことまでは記載されていない。 また、特許異議申立人の提出したいずれの証拠をみても、上記相違点3に係る本件訂正特許発明1の構成は記載されていないし、また、設計的事項といえる理由もない。 してみると、本件訂正特許発明1は、甲第6号証を主引例とし、特許異議申立人の提出したその他の証拠を考慮したとしても,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (イ)本件訂正特許発明2、6乃至8、11乃至13について 本件訂正特許発明2、6及び7は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明8は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」にさらなる限定を付加し、「ヘッド調整方法」としたものである。 本件訂正特許発明11及び12は、本件訂正特許発明8を引用し、さらなる限定を付加したものである。 本件訂正特許発明13は、本件訂正特許発明1の「色ムラ検査方法」を、「色ムラを検査する装置」とカテゴリーを変更したものである。 そうすると、本件訂正特許発明2、6乃至8、11乃至13と引用発明6とは、少なくとも上記相違点6において相違するものである。 したがって、本件訂正特許発明2、6乃至8、11乃至13は、上記(ア)と同様の理由により、甲第6号証を主引例とし、特許異議申立人の提出したその他の証拠を考慮したとしても,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 ウ 理由3(特許法第29条第2項)についてのまとめ 上記のとおり、本件訂正特許発明1、2、6乃至8、11乃至13は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。 よって、上記取消理由3により、本件特許請求の範囲の請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許を取り消すことはできない。 6 令和1年6月21日付けの取消理由通知で採用しなかった異議申立理由及び訂正により取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由について (1)令和1年6月21日付けの取消理由通知で採用しなかった異議申立理由及び訂正により取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由 ア 理由1(明確性要件) (ア-1)理由1-1 請求項1乃至4、6乃至8、13に係る特許は、「色ムラに関連するパラメータ」について、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (ア-2)理由1-2 請求項1乃至4、6乃至8、11乃至13に係る特許は、「検査パターン」について、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (イ)理由2(実施可能要件) (イ-1)理由2-1 請求項1乃至4、6乃至8、13に係る特許は、「色ムラに関連するパラメータ」について、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (イ-2)理由2-2 請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許は、「Lab色分布情報」について、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 なお、訂正により取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由とは、上記理由1及び理由2のうち、請求項13に係る特許についての理由をさす。 (2)当審の判断 ア 理由1(明確性要件) (ア-1)理由1-1 本件訂正請求により、請求項1、2、6乃至8、13に係る特許は、「色ムラに関連するパラメータ」について、具体的に「検査パターンの所定方向における色差のばらつき」と特定された。 そして、請求項1、2、6乃至8、13に係る特許は、前記「検査パターンの所定方向における色差のばらつき」を算出することにより、色ムラを検出することを特定した。 してみると、請求項1、2、6乃至8、13に係る特許は、「色ムラに関連するパラメータ」について、具体的に特定され、かつ、色ムラを検出するための算出に用いることが特定されたのであるから、請求項1、2、6乃至8、13に係る特許について、その特許請求の範囲の「色ムラに関連するパラメータ」が不明確とはいえない。 (ア-2)理由1-2 本件訂正請求により、請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許は、「検査パターン」について、「被記録媒体の同じ領域に向けて第1のインクと第2のインクを吐出させ」たものであることが具体的に特定された。 してみると、請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許は、「検査パターン」について、いわゆる二次色の検査パターンであることが特定されたのであるから、請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許について、その特許請求の範囲の「検査パターン」が不明確とはいえない。 (イ)理由2-1及び理由2-2(実施可能要件) 本件訂正請求により、請求項1、2、6乃至8、13に係る特許は、「色ムラに関連するパラメータ」について、具体的に「検査パターンの所定方向における色差のばらつき」と特定された。 そして、請求項1、2、6乃至8、13に係る特許は、前記「検査パターンの所定方向における色差のばらつき」を算出することにより、色ムラを検出することを特定した。 さらに、請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許は、「色分布情報」について「Lab色分布情報」と特定された。 これに対し、本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、 「【0040】 (色ムラ検出ステップ) 次に、検査装置30により、図6(b)のLab色分布情報に基づいて、各検査パターン40にどの程度の色ムラが発生しているのかを検出する(S4)。図6(c)は、Lab色分布情報を、ab平面で示した図である。図6(b)の第1方向におけるLab色分布情報の複数のデータを、横軸をa値、縦軸をb値としてプロットすることにより、図6(c)に示す、ab平面色分布を取得する。尚、図6(c)において、θで示される角度は色相角度といい、0度が赤方向、90度が黄方向、180度が緑方向、270度が青方向というように、色の色相が角度θで表現される。また、径方向は色の彩度を示し、外側に向かうほど色が鮮やかであり、中心に向かうほど色がくすむことを示している。 【0041】 先にも述べたが、Lab表色系は、その色空間内での2色の距離が同じであれば、人間の目でも同じ色違いに感じられるように、色空間内での2色の距離=2色の色差となるように設計されている。そこで、図6(c)のab平面において、プロットされた複数のデータが存在する範囲Aが小さいほど、その元となる検査パターン40内での色差のばらつき、即ち、色ムラは小さいと判断できる。即ち、上記範囲Aが、本発明における、「検査パターン40の色ムラに関連するパラメータ」である。 【0042】 ? 範囲Aの算出は、検査装置30の演算装置31により、例えば、以下のようにして行う。まず、a座標とb座標について、それぞれ、ab平面でプロットするデータの平均値am、bmを取得する。その上で、ab平面上の複数個のデータ(ax,bx)のそれぞれについて、平均点(am,bm)との距離、即ち、[(ax-am)2+(bx-bm)2]1/2を算出する。そして、複数個のデータについての上記距離の最大値を、データが存在する範囲Aとする。」 と記載され、「色ムラに関連するパラメータ」について、「ab平面において、プロットされた複数のデータが存在する範囲Aが小さいほど、その元となる検査パターン40内での色差のばらつき、即ち、色ムラは小さいと判断できる。即ち、上記範囲Aが、本発明における、「検査パターン40の色ムラに関連するパラメータ」である。」と記載されていることから、請求項1、2、6乃至8、13に係る特許は、「色ムラに関連するパラメータ」について、当業者が実施できる程度に記載されているといえる。 また、発明の詳細な説明には、「Lab色分布情報」を用いた色ムラ検出方法が記載されていることから、請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許は、「Lab色分布情報」について、当業者が実施できる程度に記載されているといえる。 したがって、本件訂正特許発明1、2、6乃至8、11乃至13は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないとはいえないから、異議申立理由の上記理由3により、本件特許請求の範囲の請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許を取り消すことはできない。 7 まとめ 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、2、6乃至8、11乃至13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項3及び4は、本件訂正請求により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議申立てについて、請求項3及び4に係る申立ては、申立ての対象が存在しなくなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 色ムラ検査方法、この色ムラ検査方法を用いたヘッド調整方法、及び、色ムラ検査装置 【技術分野】 【0001】 本発明は、インクジェットプリンタの技術分野において、特に、色ムラ検出、及び、その色ムラ検出に基づいたヘッド調整方法に関する。 【背景技術】 【0002】 2色以上のインクを使用して被記録媒体にカラー画像を形成する、カラーインクジェットプリンタの分野において、印字品質の低下する要因の1つとして、画像の色ムラがある。色ムラの発生要因としては、例えば、2色のインクをそれぞれ吐出する2種類のノズルの位置が、正規の位置関係に対してずれている場合が挙げられる。即ち、2種類のノズルからそれぞれ吐出された2色のインクの着弾位置がずれることにより、その部分の色が、他の画像部分と異なることによって、画像に色ムラが発生する。例えば、(1)インクジェットヘッドが正規の位置に対して傾いて取り付けられている場合、(2)同じ色のインクを吐出する複数のノズルの配列ピッチが均等ではなく一部において不均等になっている場合、あるいは、(3)異なる色のインクを吐出するノズルの間で配列ピッチが一致しない場合などに、上記の色ムラが生じ得る。 【0003】 この点、特許文献1には、テストパターンを印刷して、そのテストパターンの読取データに応じて、ヘッドの傾き等の調整を行う方法が開示されている。インクジェットヘッドの傾き等によって、異なる色のインクの着弾位置がずれたときには、インクの重なり度合いが変化して、異なる色が発生する(本文献では、「にじみ」と称している)。特許文献1では、テストパターンの各領域に対して、上記の「にじみ」を検出し、その「にじみ」の位置に応じた点数を決定する。テストパターンの全ての領域についての上記点数を合計することで、ヘッドがどの程度傾いているのか等を判断し、その判定結果に応じてヘッドの調整を行う。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2010-214629号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 特許文献1では、ノズルの配列ピッチが全て等しい場合は、上記(1)に起因する色ムラの発生を抑制することは可能となる。しかしながら、実際の製造ばらつき等も考慮して、一部のノズルで配列ピッチが異なっている場合、即ち、上記(2)と(3)に起因する色ムラの発生を抑制することは考慮されていない。上記特許文献1の方法は、異なる色間での着弾位置の相対的な位置ズレを検出するものであって、位置ズレによってもたらされる色ムラの程度を検出するものではない。 【0006】 本発明の目的は、色ムラの程度を効果的に検出することである。あるいは、その検出結果を用いて上記の色ムラを効果的に抑制することである。 【課題を解決するための手段及び発明の効果】 【0007】 本発明の色ムラ検査方法は、所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検出する方法であって、 前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得する色分布取得ステップと、前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する色ムラ検出ステップと、を備えていることを特徴とするものである。 【0008】 本発明では、まず、複数の第1ノズルと複数の第2ノズルから、被記録媒体の同じ領域に対して、色の異なる第1インクと第2インクをそれぞれ吐出させて、検査パターンを印刷する。そして、この被記録媒体の検査パターンを読取装置で読み取る。次に、検査パターンの画像データから、横軸を検査パターンの所定方向とし、縦軸を、検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、その検査パターンの所定方向におけるLab色分布情報を取得する。そして、この色分布情報に基づいて、前記所定方向において検査パターンにどのような色ムラが生じているのかを示す、色ムラに関連するパラメータとして、検査パターンの所定方向における色差のばらつきを算出する。これにより、検査パターンの前記所定方向における色ムラの程度を数値的に把握できる。 【0009】 本発明のヘッド調整方法は、所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する色ムラ検査方法を用いて、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整する方法であって、前記色ムラ検査方法は、前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得する色分布取得ステップと、前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する色ムラ検出ステップと、を備えており、前記色ムラ検出ステップで算出された前記パラメータに基づいて、前記被記録媒体に印刷される前記検査パターンの色ムラが小さくなるように、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整することを特徴とするものである。 【0010】 上記の色ムラ検査方法では、被記録媒体に印刷した検査パターンの、色ムラに関するパラメータを算出するため、検査パターンの色ムラの程度を数値的に把握できる。そこで、本発明では、上記色ムラ検査方法で算出されたパラメータに基づいて、色ムラが小さくなるように、インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整する。これにより、被記録媒体に印刷される画像に生じる色ムラを効果的に抑制することができる。 【0011】 本発明の色ムラ検査装置は、所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッドを、前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に印刷した、検査パターンの色ムラを検査する装置であって、 前記被記録媒体の前記検査パターンを読取装置で読み取って得られた、前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得し、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する、演算装置を備えていることを特徴とするものである。 【0012】 本発明によれば、被記録媒体に印刷された検査パターンの画像データから、その検査パターンの、所定方向における色分布情報を取得する。さらに、取得した検査パターンの色分布情報から、検査パターンの色ムラに関連するパラメータを算出する。これにより、検査パターンの所定方向における色ムラの程度を数値的に把握できる。 【図面の簡単な説明】 【0013】 【図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。 【図2】インクジェットヘッドの姿勢調整機構を示す図である。 【図3】インクジェットプリンタと検査装置を含む、プリンタ検査システムの構成を概略的に示すブロック図である。 【図4】第1実施形態の色ムラ検査、及び、ヘッド調整についてのフローチャートである。 【図5】第1実施形態のパターン印刷ステップの説明図である。 【図6】第1実施形態の色分布取得ステップ及び色ムラ検出ステップの説明図である。 【図7】第2実施形態に係るプリンタの概略構成図である。 【図8】第2実施形態の色ムラ検査、及び、ヘッド調整についてのフローチャートである。 【図9】第2実施形態のパターン印刷ステップの説明図である。 【図10】第2実施形態の色ムラ検出ステップの説明図である。 【発明を実施するための形態】 【0014】 (第1実施形態) 次に、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。尚、以下の説明では、図1の紙面手前側を「上」、紙面向こう側を「下」とそれぞれ定義する。 【0015】 (プリンタの構成) 図1に示すように、インクジェットプリンタ1(本発明の液体吐出装置)は、プラテン2と、キャリッジ3と、インクジェットヘッド5と、カートリッジホルダ6と、搬送機構7と、制御装置8等を備えている。 【0016】 プラテン2の上面には、記録用紙100が載置される。キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2つのガイド部材10,11に沿って図1の左右方向(以下、走査方向ともいう)に往復移動可能に構成されている。キャリッジ3には無端ベルト13が連結され、キャリッジ駆動モータ14によって無端ベルト13が駆動されることで、キャリッジ3は走査方向に移動する。 【0017】 インクジェットヘッド5は、キャリッジ3に搭載され、キャリッジ3とともに走査方向に移動可能である。また、カートリッジホルダ6には、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクをそれぞれ貯留する4つのインクカートリッジ12が着脱自在に装着されている。インクジェットヘッド5は、カートリッジホルダ6と、4本のチューブ16を介して接続されており、4つのインクカートリッジ12から4色のインクがそれぞれ供給される。 【0018】 尚、以下の説明において、プリンタ1の構成要素のうち、ブラック(K)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)のインクにそれぞれ対応するものについては、その構成要素を示す符号の後に、どのインクに対応するかが分かるように、適宜、ブラックを示す“k”、イエローを示す“y”、シアンを示す“c”、マゼンタを示す“m”の何れかの記号を付す。例えば、インクカートリッジ12kとは、ブラックインクを貯留するインクカートリッジ12のことを指す。 【0019】 インクジェットヘッド5は、その下面に複数のノズル20と、前記複数のノズル20内のインクにそれぞれ吐出エネルギーを与えるアクチュエータ(図示省略)とを有する。尚、複数のノズル20が形成されたインクジェットヘッド5の下面(図1の紙面向こう側の面)を、以下、「インク吐出面」ともいう。複数のノズル20は、搬送方向に沿って配列されており、4色のインクにそれぞれ対応した、走査方向に並ぶ4列のノズル列21(21k,21y,21c,21m)を構成している。尚、4列のノズル列21の間で、ノズル配列方向におけるノズル20の位置は互いに一致している。そして、インクジェットヘッド5は、上記のアクチュエータを制御して、インクカートリッジ12から供給されたインクを各ノズル20から吐出させる。 【0020】 尚、キャリッジ3は2つのガイド部材10,11に取り付けられているが、このキャリッジ3が、本来取り付けられるべき正規な姿勢に対して少し傾いて取り付けられていると、インクジェットヘッド5のノズル配列方向が、記録用紙100の搬送方向に対して傾いてしまう。後でも説明するが、このノズル配列方向の傾きによって、4色のノズル20の間の搬送方向における位置関係がずれるため、記録用紙100に印刷した画像にムラを生じさせる要因の1つとなる。そこで、キャリッジ3には、水平面内においてインクジェットヘッド5を回転させることにより、インクジェットヘッド5の姿勢を調整する姿勢調整機構が設けられている。この姿勢調整機構の構成は特に限定されないが、以下にその構成の一例を挙げる。 【0021】 図2は、インクジェットヘッド5の姿勢調整機構22を示す図である。キャリッジ3を走査方向に案内する2つのガイド部材10,11には、ガイドレール10a,11aがそれぞれ設けられている。キャリッジ3の下面側(図2の紙面向こう側)には、搬送方向上流側のガイドレール10aに対して摺動する2つの摺動部23a,23bと、搬送方向下流側のガイドレール11aに対して摺動する2つの摺動部24a,24bを有する。搬送方向上流側の2つの摺動部23a,23bは、それぞれ、バネ25によってガイドレール10aに付勢されて押し付けられている。一方、搬送方向下流側の2つの摺動部24a,24bのうち、一方の摺動部24aはキャリッジ3に固定されている。他方の摺動部24bは、カム26によってキャリッジ3に対して搬送方向に移動可能に構成されている。また、カム26は、図示しないダイヤルを操作することにより回転される。ダイヤルを操作してカム26を回転させることで、2つの摺動部24a,24bの間の、搬送方向における位置が変化する。これにより、キャリッジ3全体が水平面内で回転することになり、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド5の姿勢が調整される。 【0022】 図1に示すように、搬送機構7は、前後方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18,19を有する。2つの搬送ローラ18,19は、搬送モータ18(後で説明する図3参照)によって同期して駆動される。この搬送機構7は、搬送モータ18により2つの搬送ローラ18,19を駆動することにより、プラテン2に載置された記録用紙100を、搬送方向に搬送する。 【0023】 制御装置8は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備える。また、制御装置8は、PC等の外部装置とデータ通信可能に接続されている。ROMに格納されたプログラムに従い、ASICにより、記録用紙100への印刷等の各種処理を実行する。例えば、印刷処理においては、制御装置8は、PC等の外部装置から入力された印刷指令に基づいて、インクジェットヘッド5やキャリッジ駆動モータ14等を制御して、記録用紙100に画像等を印刷させる。具体的には、キャリッジ3とともにインクジェットヘッド5を走査方向に移動させながらインクを吐出させるインク吐出動作と、搬送ローラ18,19によって記録用紙100を搬送方向に所定量搬送する搬送動作とを、交互に行わせることにより、記録用紙への印刷を行わせる。 【0024】 (印刷画像の色ムラについて) ところで、上述したインクジェットヘッド5から4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクを吐出させて、記録用紙100にカラー画像を印刷した場合に、その画像に色ムラが生じることがある。具体的には、キャリッジ3の姿勢が、インク吐出面と平行な水平面内で傾くことにより、ノズル列21の方向が搬送方向に対して傾いてしまうと、4色のノズル20(20k,20y,20c,20m)の間で搬送方向における位置が僅かにずれてしまう。本来、ノズル配列方向において同じ位置にある4色のノズル20からそれぞれ吐出された、4色のインクは、記録用紙100上において同じ位置に着弾して1つの画素を形成するのが理想である。しかし、4色のノズル20の位置が互いにずれると、それら4色のノズル20からそれぞれ吐出された4色のインクの、記録用紙100上における着弾位置がずれてしまうため、画像に色ムラが生じる。 【0025】 そこで、本実施形態では、記録用紙100に検査パターンを印刷し、その検査パターンの色ムラが小さくなるように、インクジェットヘッド5の姿勢を最適な姿勢に調整する。より具体的には、意図的にインクジェットヘッド5の姿勢を変化させて、それぞれの姿勢のインクジェットヘッド5で、記録用紙100に検査パターンを印刷する。このようにして印刷された複数の検査パターンのそれぞれについて色ムラの程度を検出し、その検出結果から、色ムラが最も小さい検査パターンを印刷したときの姿勢となるように、インクジェットヘッド5の姿勢を調整する。 【0026】 尚、上記のインクジェットヘッド5において、1つのノズル列21の複数のノズル20の間で、ノズル20の径が僅かにばらついているなどの要因によって、複数のノズル20の間でインクの吐出量にばらつきが生じる場合がある。この吐出量ばらつきによって、記録用紙100に印刷した検査パターンには濃度ムラが生じる。そこで、事前に、各ノズル20の吐出量に補正をかけるなど、複数のノズル20の吐出量ばらつきに起因する、濃度ムラを抑制するための補正処理を行っておくことが望ましい(例えば、特開2011-131428号公報)。 【0027】 図3は、インクジェットプリンタ1と、色ムラ検査を行う検査装置30を含む、プリンタ検査システムの構成を概略的に示すブロック図である。検査装置30は、コンピュータで構成されており、CPU等からなる演算装置31と、各種データを記憶する記憶装置32とを備えている。また、この検査装置30には、画像の読取装置であるスキャナ33が接続されている。 【0028】 図4は、第1実施形態の色ムラ検査、及び、ヘッド調整についてのフローチャートである。尚、図4におけるSi(i=1,2,3・・・)はステップ番号である。図4を参照して、色ムラ検査、及び、その色ムラ検査の結果を用いたインクジェットヘッド5の傾き調整について説明する。 【0029】 (パターン印刷ステップ) まず、記録用紙100に検査パターンを印刷する(S1)。図5は、パターン印刷ステップの説明図である。図5に示すように、キャリッジ3とともにインクジェットヘッド5を走査方向に移動させながら、4色のノズル20の全てからそれぞれインクを吐出させて、コンポジットグレーの検査パターン40を、記録用紙100に印刷する。尚、検査パターン40を印刷する方法としては、1回の走査方向における移動(パス)だけで検査パターン40を印刷する方法と、複数回のパスを重ねて検査パターン40を印刷する方法があるが、複数回のパスを重ねた場合の方が、色ムラが目立ちにくい。そこで、ここでは、最も色ムラが目立つ、色ムラについて厳しい条件である、1回のパスで検査パターン40を印刷する方法をとる。 【0030】 また、このパターン印刷ステップでは、姿勢調整機構22(図2参照)により、図5(a)?(c)のように、インクジェットヘッド5の傾き姿勢を意図的に少しずつ異ならせ、複数の異なる姿勢のそれぞれについて印刷を行い、複数の検査パターン40を印刷する。 【0031】 (読取ステップ) 次に、記録用紙100に印刷した複数の検査パターン40を、検査装置30に接続されたスキャナ33で読み取る(S2)。スキャナ33で読み取られた各検査パターン40の画像データは、検査装置30に送られて、検査装置30の記憶装置32に記憶される。 【0032】 (色分布取得ステップ) 次に、検査装置30により、スキャナ33で取得された検査パターン40の画像データから、検査パターン40の、ノズル配列方向に対応した方向における色分布情報を取得する(S3)。尚、以下の説明において、記録用紙100に印刷された検査パターン40の、インクジェットヘッド5のノズル配列方向に対応する方向を第1方向、走査方向に対応する方向を第2方向と呼ぶ。また、色分布情報とは、画像内の色の分布を何らかの表色系で表現したときの、その表色系における数値の分布のことを言う。図6は、色分布取得ステップ及び色ムラ検出ステップの説明図である。 【0033】 画像の色の表現法として最も一般的に用いられているのは、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの原色を混ぜ合わせて様々な色を表現する、RGB表色系である。検査装置30は、検査パターン40の画像データから、ノズル配列方向に対応した第1方向におけるRGBでの輝度分布を取得する。即ち、スキャナ33で読み取られた画像データの各画素について、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色のそれぞれについての輝度を取得する。横軸を第1方向(ノズル配列方向)における距離、縦軸を輝度とすると、例えば、図6(a)のような分布となる。尚、図6(a)において、RGBの各曲線がフラットに近いほど、第1方向において、RGBの値が一定になっているということであり、第1方向における色ムラは小さいと言える。 【0034】 但し、RGB表色系では、RGBの輝度値の差と人間の目が感じる色差とが必ずしも一致するとは限らない。即ち、輝度値が大きく離れていても、人間の目からはそれほど大きな色違いに見えない場合がある一方で、輝度値がそれほど離れていないのに、人間の目にはかなり大きな色違いに見える場合もある。そこで、検査パターン40の色ムラを把握するための色分布情報としては、色を示す数値の差と人間が感じる色差とが、常に等しくなるような表色系を採用することが好ましい。このような表色系として、Lab表色系が知られている。 【0035】 Lab表色系は、国際照明委員会(CIE)が策定した、「CIE 1976(L*,a*,b*)色空間」(CIELABとも呼ばれる)で示す表色系である。Labの色空間は、色の明度(L)、赤と緑の間の位置(a)、青と黄色の間の位置(b)で示される、三次元空間となる。このLab表色系は、人間の視覚を近似するように設計された表色系であり、Lab色空間は、人間の目から見て同じ程度の色違いに見える色同士の距離(心理的な距離感)が均等となっている。即ち、Lab色空間内のある領域において、距離がAだけ離れた2色と、Lab色空間内の別の領域において距離がAだけ離れた2色とでは、人間が見たときの色違いの程度(色差ともいう)が同じ、ということである。従って、検査パターン40の色分布情報を、Lab表色系におけるL値、a値、及び、b値で示したLab色分布情報とすることで、人間の目の感覚に近い色ムラの程度を、数値によって把握することができるようになる。 【0036】 尚、上記のRGB表色系は、スキャナ33による依存性が存在する。つまり、どのタイプのスキャナ33で画像データを取得したかによって、RGB輝度分布が多少変化する。これに対して、Lab表色系は、スキャナ33による依存性がない。即ち、どのようなスキャナ33で画像データを取得しても、Lab表色系で示したときの色分布情報は同じになる。 【0037】 装置依存性のあるRGB表色系でのRGB輝度情報を、装置依存性のないLab色分布情報に変換するためには、RGB→Labに変換するための変換式が必要である。この変換式は、使用するスキャナ33について事前に取得しておく。そして、検査パターン40の画像データからRGB輝度情報を取得したら、先に取得した変換式を用いて、図6(b)に示すLab色分布情報に変換する。 【0038】 尚、スキャナ33の画像データから取得したそのままの、いわば、生の色分布情報は、実際には、その数値が、第1方向において非常に短い間隔で細かく変動しているのが普通である。このような変動をそのまま残しておくと、微小な間隔で上下に大きく変動している箇所がある場合に、誤った判定を行ってしまう虞もある。例えば、人間の目で見る限り、色ムラがほとんど感じられないのに、上記に微小な間隔で変動している箇所によって、大きな色差が存在すると誤って判定してしまう。 【0039】 ここで、色分布情報に存在する上記の細かい変動は、人間の目には識別できないほどの微小な間隔内での変動であるため、このような変動は平滑化して除去しても問題ない。そこで、色分布情報に対して、第1方向における移動平均処理を行うことで、色分布情報を平滑化して、上記の細かい変動を消去することが好ましい。移動平均で平均化する1つの区間の長さは、人間の目で、変動がどうにか知覚される程度の間隔であることが好ましい。人間の目視感度が、0.4?2.0サイクル/mm程度で最も高くなることが知られている(例えば、特開2006-306107の図8参照)。そこで、移動平均で平均化する1つの区間の長さは、例えば、目視感度のピークの半周期(例えば、0.7サイクル/mm)とする。 【0040】 (色ムラ検出ステップ) 次に、検査装置30により、図6(b)のLab色分布情報に基づいて、各検査パターン40にどの程度の色ムラが発生しているのかを検出する(S4)。図6(c)は、Lab色分布情報を、ab平面で示した図である。図6(b)の第1方向におけるLab色分布情報の複数のデータを、横軸をa値、縦軸をb値としてプロットすることにより、図6(c)に示す、ab平面色分布を取得する。尚、図6(c)において、θで示される角度は色相角度といい、0度が赤方向、90度が黄方向、180度が緑方向、270度が青方向というように、色の色相が角度θで表現される。また、径方向は色の彩度を示し、外側に向かうほど色が鮮やかであり、中心に向かうほど色がくすむことを示している。 【0041】 先にも述べたが、Lab表色系は、その色空間内での2色の距離が同じであれば、人間の目でも同じ色違いに感じられるように、色空間内での2色の距離=2色の色差となるように設計されている。そこで、図6(c)のab平面において、プロットされた複数のデータが存在する範囲Aが小さいほど、その元となる検査パターン40内での色差のばらつき、即ち、色ムラは小さいと判断できる。即ち、上記範囲Aが、本発明における、「検査パターン40の色ムラに関連するパラメータ」である。 【0042】 範囲Aの算出は、検査装置30の演算装置31により、例えば、以下のようにして行う。まず、a座標とb座標について、それぞれ、ab平面でプロットするデータの平均値am、bmを取得する。その上で、ab平面上の複数個のデータ(ax,bx)のそれぞれについて、平均点(am,bm)との距離、即ち、[(ax-am)2+(bx-bm)2]1/2を算出する。そして、複数個のデータについての上記距離の最大値を、データが存在する範囲Aとする。 【0043】 尚、スキャナ33で検査パターン40を読み取って得られた画像データから、Lab色分布情報を取得する処理、及び、Lab色分布情報から色ムラに関連するパラメータを算出する処理は、検査装置30の演算装置31において行われる。より具体的には、演算装置31は、検査装置30内の記憶装置32に格納された検査プログラムを実行することにより、上記の処理を行う。 【0044】 (ヘッド調整ステップ) 以上のステップで、複数の検査パターン40のそれぞれについて、色ムラのばらつきの程度を示す前記範囲Aを検出したら、この範囲Aが最も小さい検査パターン40を選択する。そして、この検査パターン40を印刷したときと同じ姿勢となるように、姿勢調整機構22によってインクジェットヘッド5を水平面内で回転させる。これにより、インクジェットヘッド5の姿勢、即ち、4色のノズル20(20k,20y,20c,20m)のノズル配列方向における位置関係が、記録用紙100に印刷される画像の色ムラが小さくなるように調整される。 【0045】 以上説明した第1実施形態では、4色のノズル20(20k,20y,20c,20m)から、記録用紙100に対して、4色のインクをそれぞれ吐出させて検査パターン40を印刷する。そして、この記録用紙100の検査パターン40をスキャナ33で読み取り、その画像データから、検査パターン40の、第1方向における色分布情報を取得する。そして、この色分布情報に基づいて、第1方向における色ムラに関連するパラメータ(前記の範囲A)を算出する。これにより、検査パターン40の第1方向における色ムラの程度を数値的に把握することができる。また、この色ムラ(色差のばらつき)が小さくなるようにインクジェットヘッド5の姿勢を調整することで、そのインクジェットヘッド5によって記録用紙100に印刷される画像に生じる色ムラを、効果的に抑制することができる。 【0046】 また、色分布取得ステップにおいて、検査パターン40の色分布情報として、Lab表色系で表したLab色分布情報を取得している。これにより、人間の目の感覚に近い色ムラの程度を、数値で把握することができる。 【0047】 以上説明した第1実施形態において、色の異なる4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクが第1インク又は第2インクに相当する。4色のインクをそれぞれ吐出する4種類のノズル20(20k,20y,20c,20m)が、第1ノズル又は第2ノズルに相当する。 【0048】 (第2実施形態) 次に、本発明の第2実施形態について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。図7は、第2実施形態に係るプリンタ51の概略平面図である。図7に示すように、第2実施形態のプリンタ51は、第1実施形態とはインクジェットヘッドの構成が少し異なる。 【0049】 インクジェットヘッド55は、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクにそれぞれ対応し、走査方向に並ぶ4つのヘッドユニット61(61k,61y,61c,61m)を備えている。各ヘッドユニット61は、搬送方向に沿って配列された複数のノズル60を有する。 【0050】 この第2実施形態のインクジェットヘッド55において、4つのヘッドユニット61の取り付け位置が搬送方向において少しずれる、あるいは、取り付け角度が正規の角度に対して傾くと、それによって4つのヘッドユニット61の間でノズル60の位置が搬送方向にずれる。つまり、4色のノズル60の位置が搬送方向にずれることになり、記録用紙100に印刷された画像には、4色のドットの着弾位置ズレによる色ムラが発生する。 【0051】 そこで、前記第1実施形態と同じように、記録用紙100に検査パターン40を印刷し、この検査パターン40の画像データから、色ムラに関連するパラメータ(色差のばらつき)を算出して、ヘッドユニット61の位置調整、及び、傾きの調整を行う。尚、4つのヘッドユニット61の調整は、4つ全てを一度に行うのではなく、1つずつ順番に行う。 【0052】 図8は、第2実施形態の色ムラ検査、及び、ヘッド調整についてのフローチャートである。また、図9は、第2実施形態のパターン印刷ステップの説明図である。まず、記録用紙100に検査パターン40を印刷する(S11)。S11では、4つのヘッドユニット61のうちの、調整対象である1つのヘッドユニット61(図9では、シアンのヘッドユニット61c)の、他の3つのヘッドユニット61に対するノズル配列方向における位置を意図的に少しずつ異ならせ、それぞれの関係で記録用紙100に印刷を行い、複数の検査パターン40を印刷する。次に、これら複数の検査パターン40のそれぞれについて、検査パターン40の読取(S12)、Lab色分布情報の取得(S13)を行う。これらのステップについては、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。 【0053】 次に、Lab色分布情報に基づいて、検査パターン40にどの程度の色ムラが生じているのかを検出する(S14)。図10は、第2実施形態の色ムラ検出ステップの説明図である。図10には、前記第1実施形態の図6(c)と同様、Lab色分布情報をab平面にプロットした図が示されている。図9のように、シアンのヘッドユニット61cの調整を行う場合を例に挙げて説明する。シアンのヘッドユニット61cの、搬送方向における相対位置を変化させて検査パターン40を印刷すると、検査パターン40におけるシアンの色合いが変化する。先にも説明したが、Lab表色系のab平面では、色相は、a軸からの色相角度θ(図6(c)参照)で表される。そして、シアンのヘッドユニット61cの位置を変化させると、シアン単色を示すab平面上の基準点(a1,b1)と原点を結ぶ直線の方向、即ち、シアンの色相方向に沿って、検査パターン40のab値が変化する。 【0054】 そこで、シアンのヘッドユニット61cの位置を調整する場合には、Lab色分布情報の、ab平面における複数のデータの、前記直線方向における範囲Bを算出する。範囲Bが小さいほど、シアンの色相方向における色差のばらつきが小さくなる。即ち、この範囲Bが、シアンに起因する色差のばらつきの程度を示す。尚、範囲Bが、本発明における「色ムラに関連するパラメータ」に相当する。 【0055】 複数の検査パターン40のそれぞれについて、ab平面における範囲Bを算出したら、上記範囲Bが最も小さい検査パターン40を選択する。そして、位置調整対象のヘッドユニット61のノズル60と、他のヘッドユニット61のノズル60とのノズル配列方向における位置関係が、選択した検査パターン40を印刷したときと同じになるように、調整対象のヘッドユニット61の位置を調整する(S15)。 【0056】 1つのヘッドユニット61の位置調整が完了したら、残りのヘッドユニット61についても、同様に、S11?S15のステップを行って、位置調整を行う。4色のヘッドユニット61の位置調整が完了したら、次に、4つのヘッドユニット61の傾き調整を行う。 【0057】 ヘッドユニット61の傾き調整は、先に説明した位置調整とほぼ同様である。即ち、調整対象である1つのヘッドユニット61の傾きを意図的に変化させ、それぞれの角度で記録用紙100に印刷を行い、複数の検査パターンを印刷する(S17)。次に、これら複数の検査パターンのそれぞれについて、検査パターンの読取(S18)、Lab色分布情報の取得(S19)を行う。さらに、Lab色分布情報に基づいて、検査パターン40にどの程度の色ムラが生じているのかを検出する(S20)。即ち、図10と同様に、Lab色分布情報の、ab平面における複数のデータの範囲Bを算出する。そして、上記範囲Bが最も小さい検査パターンを選択し、その検査パターンを印刷したときの角度となるように、ヘッドユニット61の傾きを調整する(S21)。1つのヘッドユニット61の傾き調整が完了したら、残りのヘッドユニット61についても、同様に、S17?S21のステップを行って、傾き調整を行う。そして、4つのヘッドユニット61の全てについて傾き調整が完了したら(S22:Yes)、調整作業を終了する。 【0058】 尚、4色のヘッドユニット61をどの順番で調整するかは特に限定されない。但し、ある1つのヘッドユニット61の位置を調整し、次に、別のヘッドユニット61の位置を調整したときに、後のヘッドユニット61の位置調整の影響で、先に調整したヘッドユニット61の位置が、最適なものでなくなる場合がある。そこで、ヘッドユニット61の位置ズレが、色ムラへ及ぼす影響が低いものから先に調整することが好ましい。ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色であれば、(1)イエロー、(2)シアン、(3)マゼンタ、(4)ブラックの順で調整するのがよい。 【0059】 また、図8では、ヘッドユニットの位置調整を行ってから、その後に、ヘッドユニットの傾き調整を行っているが、先に傾き調整を行って、その後に位置調整を行ってもよい。 【0060】 次に、前記第1、第2実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記第1、第2実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。 【0061】 1]前記第1、第2実施形態では、複数の検査パターン40の中で、色ムラの程度(色差のばらつき)が最も小さい検査パターン40を印刷したときと同じになるように、インクジェットヘッド5の姿勢、あるいは、ヘッドユニット61の位置を調整している。これに対して、1つの検査パターン40を印刷し、この1つの検査パターン40について色分布情報を取得し、色差のばらつき(図6(c)の範囲A、あるいは、図10の範囲B)を所定値と比較することにより、その検査パターン40の色ムラの程度を判定してもよい。 【0062】 即ち、色差のばらつき(範囲A、あるいは、範囲B)が所定値以下であれば、色ムラの程度は小さいとして、ノズル20(60)の位置を調整する作業は行わない。一方、色差のばらつきが所定値を超えている場合には、色ムラを許容できないとして、ノズル20(60)の位置を調整する調整作業を行う。 【0063】 2]前記第1、第2実施形態では、インクジェットヘッド5の全てのノズル20(60)を使用して検査パターン40を印刷しているが、一部のノズルのみを使用して検査パターン40を印刷してもよい。また、色についても、4色全ての種類のノズルを使用して検査パターン40を印刷する必要もなく、ブラックとイエローなど、2色のノズルのみを使用して検査パターン40を印刷してもよい。 【0064】 3]記録用紙100に印刷した検査パターン40に生じる色ムラは、ノズル配列方向に対応する第1方向に沿って生じるとは限らない。例えば、第1実施形態において、インクジェットヘッド5の姿勢が傾いていると、2色のノズル20の位置関係は、搬送方向だけでなく、走査方向についても変化する。従って、記録用紙100における2色のインクの着弾位置が、走査方向に対応する第2方向においてずれることも考えられる。この場合には、検査パターン40の画像データから、第2方向における色分布情報を取得し、第2方向において色ムラがどの程度生じているのかを検出するようにしてもよい。 【0065】 4]検査パターン40に生じている色ムラの検出結果に応じて、その色ムラを抑えるための方法は、前記第1実施形態のインクジェットヘッド5の姿勢調整や、前記第2実施形態のヘッドユニット61の位置調整には限られず、例えば、ノズルの吐出条件を調整してもよい。2色のノズル20(60)の走査方向における位置ズレに起因して、検査パターン40に第2方向の色ムラが生じている場合は、その色ムラに関するパラメータ(色差のばらつき)に応じて、ノズル20(60)のインク吐出タイミングを補正することにより、色ムラを抑制することが可能である。 【0066】 また、ある色のインクを吐出する複数のノズルの間で、吐出インク量がばらつくことによる色ムラについても、検出対象とすることができる。このような場合に、検査パターン40の色ムラの検出結果に応じて、各ノズルから吐出させるインクの吐出量を調整することにより、色ムラを抑制することも可能である。各ノズルのインク吐出量の調整は、例えば、ノズルからインクを吐出させるためのアクチュエータにおいて、駆動電圧や駆動波形等を変更することにより実現可能である。 【0067】 5]前記第1、第2実施形態では、検査パターン40の画像データから取得した色分布情報に移動平均処理を行っているが、検査パターン40の印字解像度やスキャナ33の解像度等の条件によって、色分布情報の変動がそれほど大きくない場合には、移動平均処理を行わなくてもよい。 【0068】 6]前記第1、第2実施形態では、検査パターン40の色分布情報として、Lab表色系で表したLab色分布情報を取得している。Lab表色系は、色空間内での2色間の距離が、人間が知覚する2色の色差と一致する均等色空間である。そのため、検査パターン40内の色ムラを数値的に示したときに、その数値の分布と、人間の目が実際に感じる色ムラとがほぼ一致することになり、人間の目の感覚に合った色ムラを把握できるという点で有利である。 【0069】 一方、本発明の参考例において、色分布情報は、上記のLab色分布情報に限られるものではない。例えば、画像データから取得したRGB輝度そのものを、色分布情報として用いることもできる。この場合、RGBの3色の輝度値の差を、色ムラに関するパラメータとして取得し、この輝度値の差に応じてヘッドの調整を行えばよい。また、XYZ表色系で示した色分布情報を取得してもよい。 【符号の説明】 【0070】 1 インクジェットプリンタ 5 インクジェットヘッド 20 ノズル 21 ノズル列 30 検査装置 31 演算装置 33 スキャナ 40 検査パターン 51 プリンタ 55 インクジェットヘッド 60 ノズル 61 ヘッドユニット (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、 前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、 を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する方法であって、 前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、 前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、 前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得する色分布取得ステップと、 前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する色ムラ検出ステップと、 を備えていることを特徴とする色ムラ検査方法。 【請求項2】 前記パターン印刷ステップにおいて、全ての前記第1ノズルと全ての前記第2ノズルからそれぞれインクを吐出させて、前記被記録媒体に前記検査パターンを印刷することを特徴とする請求項1に記載の色ムラ検査方法。 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 前記色分布取得ステップにおいて、前記Lab色分布情報の複数のデータを、横軸をa値、縦軸をb値としてプロットすることにより、ab平面色分布を取得し、 前記色ムラ検出ステップにおいて、前記検査パターンの前記ab平面色分布内で、プロットした複数のデータが存在する範囲を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の色ムラ検査方法。 【請求項6】 前記色分布取得ステップにおいて、前記検査パターンの、前記インクジェットヘッドの前記ノズル配列方向に対応する方向における、色分布情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の色ムラ検査方法。 【請求項7】 前記色分布取得ステップにおいて、取得した前記色分布情報に対して、前記所定方向における移動平均処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の色ムラ検査方法。 【請求項8】 所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッドにおいて、被記録媒体に形成したパターンの色ムラを検査する色ムラ検査方法を用いて、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整する方法であって、 前記色ムラ検査方法は、 前記インクジェットヘッドを前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に検査パターンを印刷するパターン印刷ステップと、 前記パターン印刷ステップで前記被記録媒体に印刷された検査パターンを、読取装置で読み取る読取ステップと、 前記読取ステップで得られた前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得する色分布取得ステップと、 前記色分布取得ステップで取得された、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する色ムラ検出ステップと、 を備えており、 前記色ムラ検出ステップで算出された前記パラメータに基づいて、前記被記録媒体に印刷される前記検査パターンの色ムラが小さくなるように、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整することを特徴とするヘッド調整方法。 【請求項9】 前記パターン印刷ステップにおいて、前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を異ならせて、前記被記録媒体に複数の前記検査パターンを印刷し、 前記色分布取得ステップにおいて、前記複数の検査パターンのそれぞれの前記Lab色分布情報を取得し、 前記色ムラ検出ステップにおいて、前記複数の検査パターンのそれぞれについて、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出し、 前記複数の検査パターンのうち、前記色差のばらつきが最も小さくなる検査パターンを選択し、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を、前記選択した検査パターンの印刷時と同じ条件に調整し、 前記色差のばらつきは、Lab表色系のab平面におけるプロットされた複数のデータが存在する範囲であることを特徴とする請求項8に記載のヘッド調整方法。 【請求項10】 前記色ムラ検出ステップで算出された前記色差のばらつきが所定値を超えている場合に、前記色差のばらつきが小さくなるように、前記インクジェットヘッドの前記第1ノズルと前記第2ノズルの位置関係、又は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの吐出条件を調整し、 前記色差のばらつきは、Lab表色系のab平面におけるプロットされた複数のデータが存在する範囲であることを特徴とする請求項8に記載のヘッド調整方法。 【請求項11】 前記色ムラ検出ステップで算出された前記パラメータに基づいて、前記インクジェットヘッドを、前記第1ノズル及び前記第2ノズルが配置されたインク吐出面と平行な平面内で回転させて、前記インクジェットヘッドの姿勢を変更することを特徴とする請求項8?10の何れかに記載のヘッド調整方法。 【請求項12】 前記インクジェットヘッドは、前記複数の第1ノズルを有する第1ヘッドユニットと、前記複数の第2ノズルを有し、且つ、前記第1ヘッドユニットと前記ノズル配列方向と直交する方向に並んで配置される第2ヘッドユニットとを備えるものであり、 前記色ムラ検出ステップで算出された前記パラメータに基づいて、前記第1ヘッドユニットと前記第2ヘッドユニットの間の、前記ノズル配列方向における相対位置を変更することを特徴とする請求項8?10の何れかに記載のヘッド調整方法。 【請求項13】 所定のノズル配列方向に沿って配列され、第1のインクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記ノズル配列方向と直交する方向において前記複数の第1ノズルと並ぶ位置に、前記ノズル配列方向に沿って配列され、前記第1のインクとは異なる色の第2のインクをそれぞれ吐出する複数の第2ノズルと、を有するインクジェットヘッドを、前記被記録媒体に対して前記ノズル配列方向と直交する方向に相対移動させながら、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルから、前記被記録媒体の同じ領域に向けて前記第1のインクと前記第2のインクを吐出させて、前記被記録媒体に印刷した、検査パターンの色ムラを検査する装置であって、 前記被記録媒体の前記検査パターンを読取装置で読み取って得られた、前記検査パターンの画像データから、横軸を前記検査パターンの所定方向とし、縦軸を、前記検査パターンの画素をLab表色系で表したときのL値、a値、及び、b値とした、前記検査パターンの前記所定方向におけるLab色分布情報を取得し、前記検査パターンのLab色分布情報に基づいて、前記検査パターンの色ムラに関連するパラメータとして、前記検査パターンの前記所定方向における色差のばらつきを算出する、演算装置を備えていることを特徴とする色ムラ検査装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-02-16 |
出願番号 | 特願2015-36137(P2015-36137) |
審決分類 |
P
1
652・
113-
YAA
(B41J)
P 1 652・ 537- YAA (B41J) P 1 652・ 121- YAA (B41J) P 1 652・ 536- YAA (B41J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小宮山 文男 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
清水 康司 藤本 義仁 |
登録日 | 2018-09-14 |
登録番号 | 特許第6398783号(P6398783) |
権利者 | ブラザー工業株式会社 |
発明の名称 | 色ムラ検査方法、この色ムラ検査方法を用いたヘッド調整方法、及び、色ムラ検査装置 |
代理人 | 特許業務法人梶・須原特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人梶・須原特許事務所 |