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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
管理番号 1372722
異議申立番号 異議2020-700269  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-16 
確定日 2021-03-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6590596号発明「ロール製品パッケージ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6590596号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6590596号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6590596号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成27年8月31日の出願であって、令和元年9月27日に特許権の設定登録がされ、令和元年10月16日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年4月16日:特許異議申立人村上清子(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和2年6月9日付け:取消理由通知
令和2年8月6日:特許権者による意見書の提出
令和2年8月28日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和2年10月28日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和2年12月21日:申立人による意見書の提出


第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
令和2年10月28日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6590596号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

(訂正事項)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「前記把持部には指掛け穴が形成されており、」とあるのを、
「前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴が形成されており、」に訂正する。(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?5についても同様に訂正する。)

ここで、訂正前の請求項1?5は、請求項2?5が、本件訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1?5〕について請求されている。

2 訂正の適否
(1)訂正の目的
上記訂正事項は、請求項1において、本件訂正前の「指掛け穴」について、「ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の1つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記(1)のとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるので、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、本件特許明細書の【0012】及び図1の記載、及びロール製品パッケージにおいて二個の指掛け穴を設ける場合、横方向に沿って並ぶ位置に設けることが明らかであることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。


第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の2plyのシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してなり、
前記包装袋は筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された把持部と、を有し、
前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴が形成されており、
前記ロール製品の巻長が63?103m、コアを含む1個の前記ロール製品の質量が200?370gであり、
(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25?80(g/(g/m^(2)))であり、
前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが25?45度であり、
前記長辺同士の間隔Wが105?134mmであるロール製品パッケージ。
【請求項2】
前記ロール製品の巻き硬さが1.0?3.0mmである請求項1記載のロール製品パッケージ。
【請求項3】
前記フィルムの坪量が13?39g/m^(2)である請求項1又は2記載のロール製品パッケージ。
【請求項4】
(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.035?0.13(mm/(g/m^(2)))である請求項1?3のいずれか一項記載のロール製品パッケージ。
【請求項5】
前記シートの1枚当たりの坪量が13g/m^(2)を超え17g/m^(2)以下である請求項1?4のいずれか一項記載のロール製品パッケージ。」


第4 当審の判断
1 取消理由の概要
令和2年8月28日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

(サポート要件)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


(1)本件官能評価における「フィルムの強さ」の評価方法について
本件明細書の段落【0038】には、「フィルムの強さ」について「トイレットロールを包装後のパッケージにおいて、フィルムの破れの有無を評価した。」と記載されていることからすると,「フィルムの強さ」とは、包装袋のフィルムの破れの有無によって評価されたものと理解される。また、本件発明の課題及び効果の一つは、ロール製品パッケージを持ち運ぶ際に包装袋のフィルムが破れにくいという点にあることからすると、「フィルムの破れ」とは、ロール製品パッケージの運搬時の破れを意味するものと認められる。
そして、本件官能評価は、本件ロール製品パッケージを使用して行われたものであるところ、本件ロール製品パッケージは、ロール製品を筒状のガゼット袋から構成された包装袋で収納したもので本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された一つの指掛け穴の把持部(段落【0034】、【図1】、【図3】?【図5】)を有しているものと認められ,このような持手部のあるロール製品パッケージにおいて指掛孔け穴に指を挿入して運搬した際の包装袋のフイルムの破れの有無や程度を評価したものと理解することができる。

(2)ガゼット包装によって包装したロール製品パッケージを運搬する場合における「フィルムが破れにくい」の意義及びその場合に本件発明の課題を解決できると認識できるかについて
カゼット包装パッケージにおいて、上記の指掛け用の穴の形状や数、同部分を構成するフィルムの枚数等については、種々のものが考えられ、また、消費者がパッケージを持ち運ぼうとして指掛け用の穴に指を引っ掛ける方法にも種々のものが考えられる(例えば,二つの穴が設けられている場合には、両方の穴に二本ずつ指を引っ掛ける方法や一つの穴だけに一本の指を引っ掛ける方法等種々のものが考えられる。)ところであり、これらの各種の形態、構成や、消費者が指掛け用の穴に指を引っ掛ける方法に応じて、消費者が上記持手部の指掛け用の穴に指を引っ掛けて同商品を持った場合に、同穴の上部の指を引っ掛ける部分に同商品の質量の負荷がかかる程度や同部分の破れにくさは異なってくるものと考えられる。
そうすると、パッケージを持ち運ぶ際のガゼット包装パッケージの指掛け用の穴に指を引っ掛けた部分の破れにくさは、種々の条件に影響を受けること、本件官能評価の内容については、本件ロール製品パッケージの一つの指掛け穴の持手部を持って運搬した際の破れの有無及び程度を評価したものであることは分かるが、それ以外の条件については明らかではないことからすると、本件ロール製品パッケージの一つの指掛け穴の持手部の破れにくさのみを評価した本件官能評価の結果から、全ての指掛け穴を有するガゼット包装パッケージを運搬した場合に、指掛け穴の指を引っ掛ける部分が破れにくいとはいえない。

2 令和2年8月28日付け取消理由(決定の予告)における判断
(1)本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、以下の記載がある。
ア「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した特許文献3記載の技術は、包装袋と別体の帯状の把持部を接合したタイプに関するものであるが、包装袋の対向する上辺から上方に向かって切妻屋根型に延びて接合される把持部を設けたガゼットタイプに長巻のロール製品を包装すると、包装袋の上辺と把持部の間に荷重が掛かり、この部位のロール製品の端部が潰れる場合があった。
従って、本発明は、長巻のロール製品をガゼットタイプの包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運び易く、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難く、さらに持ち運ぶ際にフィルムが破れにくく包装袋内でロール製品を安定して保持できるロール製品パッケージの提供を目的とする。」

イ「【0012】
又、把持部4のほぼ中央に、上向きに非切抜部を有するほぼ長円のスリット状の指掛け穴2が設けられている。そして、購入者がロール製品パッケージ200を運搬する際に指掛け穴2のスリットを切抜き、非切抜部を固定端とする片部を上方に折り返すと、折り返し部がU字形に屈曲するので鋭い端面が生じず、指が痛くならない。但し、指掛け穴2の形状はこれに限定されない。例えば、特許文献1のように、指掛け穴2を2個にするなど、公知の方法を採用できる。」

ウ「【実施例】
【0034】
パルプ組成の含有率(質量%)がNBKP10%、LBKP60%、牛乳パック由来の古紙パルプ30%となるように配合した衛生薄葉紙のシートを抄造し、シートを2plyに積層して巻回し、表1に示す特性のトイレットロール製品50を製造した。なお、ロール幅(ロールの軸方向の長さ)は114mmとした。一方、表1に示す物性のポリエチレンフィルムを包装袋100として用意し、図1に示す形態でトイレットロール製品を包装してロール製品パッケージ200を得た。
【0035】
以下の評価を行った。
1)衛生薄葉紙シートの特性
乾燥時の縦方向引張り強さDMDTと乾燥時の横方向引張り強さDCDT:JIS P8113に基づいて、製品枚数(2ply)の衛生薄葉紙につき、破断までの最大荷重をN/25mmの単位で測定した。
坪量:JIS P8124に基づいて測定し、衛生薄葉紙のシート1枚当たりに換算した。
紙厚:シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、衛生薄葉紙を10枚重ねて行った。又、測定を10回繰り返して測定結果を平均した。
比容積:衛生薄葉紙のシート1枚当たりの厚さを1枚当たりの坪量で割り、単位gあたりの容積cm^(3)で表した。
【0036】
2)ロール製品の特性
巻長:実測した。測定は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
巻直径:ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定した。測定は、10個のロールについて、ロールの軸方向中央における直径を測定し、測定結果を平均した。
コアを含む1ロールの質量:コアを含む1ロールの質量を秤量した。また、ロールから全てのシートを取り除き、コアの質量を秤量した。測定は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
巻き硬さ:上述の通り測定した。
傾斜角θ:上述の通り測定した。
【0037】
3)フィルムの特性
坪量:JIS P8124に基づいて測定し、フィルム1枚当たりに換算した。
厚さと密度:JIS P 8118(1998)に準拠して測定した。なお、フィルム厚さと密度は、熊谷理機工業社製の測定機(製品名TM600)を用いて、加圧面の圧力50kPaとして測定した。
【0038】
下記の官能評価を、モニター20人によって行った。
トイレットロールの潰れにくさ:包装後のトイレットロールについて、フィルムによるロールの潰れ度合を評価した。
トイレットロールの端部の潰れにくさ:ロール製品パッケージ200の把持部4を持った1分後に、図1の長辺45,55のフィルムに接するロールの潰れ度合を評価した。
トイレットロールの柔らかさ:包装後のトイレットロールについて、包装フィルムを取り除き、トイレットロールを手で持ち、柔らかさを評価した。
シートの使用感:トイレットロールをトイレで使用したときの使用感を評価した。
フィルムの強さ:トイレットロールを包装後のパッケージにおいて、フィルムの破れの有無を評価した。
フィルムのゴワゴワ感:トイレットロールを包装後、パッケージを手で触り、フィルムのゴワゴワ感を評価した。
ペーパーホルダーへの装着性:包装後のトイレットロールについて、包装フィルムを取り除き、トイレットロールをペーパーホルダーに装着して評価した。
ロールの交換頻度:トイレットロール1本を使いきるまでの期間を評価した。
包装袋内のトイレットロールの保持性:包装袋内のトイレットロールが動かずに安定して保持されているかを目視で評価した。
評価基準は5点満点で行った。5点:大変良好である、4点:良好である、3点:実用上問題ない、2点:劣る、1点:顕著に劣る。
なお、トイレットペーパーの坪量、引張り強さ、紙厚、比容積、巻長、巻直径、質量、巻き硬さ、傾斜角θ及びフィルムの坪量、厚さ、密度の測定は、JIS-P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0039】
得られた結果を表1、表2に示す。なお、表1、表2の「包装袋内のロール製品(コアを含む)の合計質量」とは、市販品1を除いて4個のロール製品の合計質量であり、市販品1は12個のロール製品の合計質量である。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1から明らかなように、ロール製品の巻長が63?103m、コアを含む1ロールの質量が200?370g、(包装袋内の4個のロール製品の質量)/(フィルムの坪量)が25?80(g/(g/m^(2)))であり、包装袋の傾斜角θ及び間隔Wが所定の範囲である各実施例の場合、トイレットロールの使用感や柔らかさに優れると共に、1ロール当りの巻長を長くしてロールの交換頻度が少なくなった。さらに、ロール製品パッケージとしたときにフィルムの強度を保ってもロールが潰れ難く、包装袋内でロール製品を安定して保持できた。
【0043】
一方、(包装袋内の4個のロール製品の質量)/(フィルムの坪量)が80(g/(g/m^(2)))を超えた比較例1の場合、フィルムの強度が低下した。
(包装袋内の4個のロール製品の質量)/(フィルムの坪量)が25(g/(g/m^(2)))未満の比較例2の場合、フィルムがゴワゴワすると共に、トイレットロールが潰れやすかった。
ロール製品の巻長が63m未満である比較例3の場合、ロールの交換頻度が多くなった。
ロール製品の巻長が103mを超えた比較例4の場合、ロールの巻き直径が134mmを超えたためにペーパーホルダーへの装着性に劣った。
包装袋の間隔Wが105mm未満である比較例5の場合、トイレットロールの柔らかさに劣った。
包装袋の間隔Wが134mmを超えた比較例6の場合、ロールが潰れやすかった。又、比較例6の場合、ロールの巻き直径が134mmを超えたためにペーパーホルダーへの装着性に劣った。
【0044】
包装袋の傾斜角θが25度未満の比較例7の場合、パネル部41、51に係る荷重が大きくなったため、長辺45,55のフィルムに接するロールが潰れた。
包装袋の傾斜角θが45度を超えた比較例8の場合、包装袋内でトイレットロールが動いて安定性が劣った。
市販品1は、1ロール当りの巻長は25mであり、ロールの交換頻度が多くなった。また、ロールが潰れやすかった。」

エ「【図1】



オ「【図3】



カ「【図4】



キ「【図5】




(2)当審の判断
ア 本件訂正により、本件発明1は、「前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の1つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴が形成されて」いるものに限定された。
イ 本件発明が解決しようとする課題は、「長巻のロール製品をガゼットタイプの包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運び易く、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難く、さらに持ち運ぶ際にフィルムが破れにくく包装袋内でロール製品を安定して保持できるロール製品パッケージの提供」すること(【0005】)である。
ウ そして、本件特許明細書には、具体的に、「持ち運ぶ際にフィルムが破れにく」いこと、すなわち「フィルムの強さ」(【0038】)を評価したロール製品パッケージとして実施例1?17が記載されており、実施例1?17は、上記課題を解決すると理解できる。
エ 一方、持ち運ぶ際のロール製品パッケージの指掛け用の穴の破れにくさは、穴の形状や数等の種々の条件に影響を受けることが技術常識であるところ、実施例1?17は、「図1で示す形態でトイレットロール製品に包装し」た(【0034】)ものであって、【0012】の「把持部4のほぼ中央に、上向きに非切抜部を有するほぼ長円のスリット状の指掛け穴2が設けられている。」の記載を参酌すると、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の1つのスリット状の指掛け穴のロール製品パッケージである。
したがって、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の1つのスリット状の指掛け穴のロール製品パッケージは、上記課題を解決すると理解される。
オ また、上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴のものは、その作用から当然に指が引っ掛けられる程度の大きさであること、上向きに非切抜部を有するものであるから、指を引っ掛けた際のロール製品パッケージへの荷重は、指掛部の上側の略直線状の部分に集中することを考えると、1つの指掛け穴の中央において指掛け穴の上下を連結したものと同程度であると考えられるから、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の1つのスリット状の指掛け穴と比較して、持ち運ぶ際の指掛け用の穴が破れにくいといえる。
カ 以上のとおりであるから、本件発明1の「前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の1つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴が形成されて」いるものは、上記課題を解決すると理解できる。
以上のとおりであるから、本件発明1は、本件特許明細書の詳細な説明に記載したものである。
また、本件発明2?5は、本件発明1を引用し、さらに限定を付加するものであるから、本件発明1?5は、本件特許明細書の詳細な説明に記載したものである。

2 令和2年8月28日付け取消理由(決定の予告)に採用しなかった異議申立理由について
(1)申立人は、以下の取消理由について主張している。
ア(進歩性)請求項1?5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2?7号証に記載の事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

イ(実施可能要件)本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。


<刊行物>
甲第1号証:特開2015-101388号公報
甲第2号証:特開2011-189965号公報
甲第3号証:特開2004-269010号公報
甲第4号証:特開2009-202931号公報
甲第5号証:特開2005-153959号公報
甲第6号証:登録実用新案第3016715公報
甲第7号証:大王製紙株式会社、「elleair エリエール Full Line-up Autumn 2015」のカタログ、2015年7月、p.16

(実施可能要件)について
本件特許明細書において、具体的にフィルムの破れに関して評価したのは、「フィルム強さ」(【0038】)のみであるところ、当該「フィルム強さ」が持ち運ぶ際に破れにくいことを表しているとは、理解できない。
仮に、「フィルム強さ」が持ち運ぶ際に破れにくいことを表しているとしても、【表1】及び【表2】の「フィルム強さ」の評価が、持ち運ぶ際の破れにくさをどのように表しているのかが理解できない。
したがって、本件特許明細書には、本件発明1?5において、持ち運ぶ際に破れにくいロール製品パッケージについて、当業者が実施できる程度に記載されていない。


(2)当審の判断
ア 本件発明1の進歩性について
(ア)甲第1号証の記載
甲第1号証には、図面と共に以下の記載がある。(「・・・」は省略を意味する。)
・「【請求項1】
フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙のシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品が2plyの場合、巻長が65?95m、コアを除く1ロールの質量が200?350g、巻き硬さが1.0?3.0mmであり、前記ロール製品が1plyの場合、巻長が125?185m、コアを除く1ロールの質量が250?430g、巻き硬さが0.5?2.5mmであり、
前記フィルムの坪量が25?45g/m^(2)であるロール製品パッケージ。
【請求項2】
前記ロール製品が2plyの場合、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.020?0.100(mm/(g/m^(2)))であり、前記ロール製品が1plyの場合、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.015?0.080(mm/(g/m^(2)))である請求項1記載のロール製品パッケージ。
・・・
【請求項7】
前記ロール製品が4個収納されてなる請求項1?6のいずれかに記載のロール製品パッケージ。」
・「【0002】 トイレットペーパー等の包装袋として、ポリエチレン等の筒状フィルムにガセットを対称的に折り込んで本体とし、その上部を平面状に折り畳んで持手部を構成したものが用いられている(特許文献1)。持手部には購入者が運搬するための指掛け穴が備えられている。又、上記した包装袋の本体と別体の帯状の持手部を、包装袋の上面を跨いで、両端部をそれぞれ本体の対向する側面に接合したものが用いられている(特許文献2)。
一方、近年、トイレットペーパー等のロール製品を従来に比べてより長く巻き取り、1個のロール当りの有効使用量を多くし、持ち運び時及び保管時のコンパクト化を図ったものが販売されている。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した長巻のロール製品は1個のロール当りの重量が大きいため、ロール製品を包装したパッケージを消費者が持ち運ぶ際、持ち手部や包装袋の底面に荷重がかかる。そこで、包装袋の本体や持ち手部等の強度を確保するために、包装袋を厚くすることが考えられる。ところが、包装袋を厚くして強度を高くすると、ロール製品を包装した際、ロール製品を締め付ける力が増してロールが潰れやすくなったり、フィルムがゴワゴワしてフィルムの触感が悪くなるという問題がある。また、ロールが潰れにくくなるようにロールを固く巻くと、ロールを持った時の柔らかさが劣るという問題がある。
従って、本発明は、長巻のロール製品を包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運ぶ際に破れにくくてゴワゴワせず、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難いロール製品パッケージの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のロール製品パッケージは、フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙のシートを巻いたロール製品を複数個収納してなり、前記ロール製品が2plyの場合、巻長が65?95m、コアを除く1ロールの質量が200?350g、巻き硬さが1.0?3.0mmであり、前記ロール製品が1plyの場合、巻長が125?185m、コアを除く1ロールの質量が250?430g、巻き硬さが0.5?2.5mmであり、前記フィルムの坪量が25?45g/m^(2)である。」
・「【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、長巻のロール製品を包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運ぶ際に破れにくくてゴワゴワせず、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難いロール製品パッケージが得られる。」
・「【0010】
ロール製品6は、衛生薄葉紙のシートを巻いてなり、例えばトイレットペーパーのロール体である。ロール製品が2plyの場合、巻長が65?95m、コア(芯)を除く質量が200?350g、巻き硬さが1.0?3.0mmである。ロール製品が1plyの場合、巻長が125?185m、コアを除く質量が250?430g、巻き硬さが0.5?2.5mmである。
【0011】
ロール製品6の巻長が上記下限値未満であると、1ロール当りの巻長が短くなり、ロールの交換頻度が多くなったり、保管時の省スペース化が図れない。ロール製品6の巻長が上記上限値を超えるものは、巻直径(ロールの外径)が従来のロール製品より大きくなり過ぎ、トイレットペーパーホルダー等に収まり難くなる。ロール製品が2plyの場合、巻長は70?95mであることが好ましい。ロール製品が1plyの場合、巻長は140?185mであることが好ましい。 ロール製品6のコアを除く質量が上記下限値未満のものは、1ロール当りの巻長が短くなり、ロールの交換頻度が多くなったり、保管時の省スペース化が図れない。ロール製品6のコアを除く質量が上記上限値を超えるものは、巻長が長すぎて巻直径(ロールの外径)が従来のロール製品より大きくなり過ぎ、トイレットペーパーホルダー等に収まり難くなる。
なお、通常の2plyのトイレットペーパーの1ロール当りの巻長は25m程度、質量は90g程度である。通常の1plyのトイレットペーパーの1ロール当りの巻長は50m程度、質量は120g程度である。」
・「【0013】
包装袋2は、例えば、チューブ状フィルムの内部に複数個のロール製品6を配置し、公知の包装方法(例えば、キャラメル包装、ガゼット包装等)で包装されている。なお、図1の例では、ロール製品6は、平面上に縦2個、横2個で配置され、これを包装袋2で包装している。
ロール製品パッケージ100に収納されるロール製品6のロール数は特に制限されないが、好ましくは2?12個、より好ましくは4?8個、さらに好ましくは4?6個、最も好ましくは4個である。ロール数が少ないと、ロールを購入する頻度が多くなり面倒となる。また、ロール数が多くなると、重量が重くなるため持ち運びが大変である。
【0014】
包装袋2を構成するフィルムの坪量が25?45g/m^(2)である。
フィルムの坪量が25g/m^(2)未満であると、強度が低下し、パッケージの運搬時等に包装袋が破れる。フィルムの坪量が45g/m^(2)を超えると、強度が高くなり過ぎ、ロール製品を包装した際、ロール製品を締め付ける力が増してロール製品が潰れやすくなったり、フィルムがゴワゴワする。フィルムの坪量は、好ましくは30?45g/m^(2)、より好ましくは30?38g/m^(2)である。
フィルムの材質は制限されないが、破れにくい(伸びやすい)ポリエチレンを含む組成が好ましい。また、フィルムの片面が印刷されていても良く、印刷面(印刷層)は包装袋2の外面(消費者が手で触る面)側でもよく、内面(包装袋2内のトイレットロール等に接する面)側にあってもよい。但し、印刷層が包装袋2の外面側に位置すると、ロール製品パッケージの商品を陳列する場合、擦れ等により印刷層が傷ついたり剥がれるおそれがあることから、印刷層を包装袋2の内面に向けることが好ましい。なお、フィルムを積層(ラミ)構造とすると、印刷層の両面をフィルムで挟む構造となり、印刷層を内外面のどちらに向けても傷が付き難いが、コストアップになる。」・「【0016】
具体的には、ロール製品が2plyの場合、(巻き硬さ(mm)/フィルムの坪量(g/m^(2)))を好ましくは0.020?0.100(mm/(g/m^(2)))、より好ましくは0.040?0.070(mm/(g/m2))とする。また、ロール製品が1plyの場合、(巻き硬さ/フィルムの坪量)を好ましくは0.015?0.080(mm/(g/m^(2)))、より好ましくは0.025?0.050(mm/(g/m^(2)))とする。 巻き硬さを一定とした場合、フィルムの坪量を高くすると、(巻き硬さ/フィルムの坪量)の値は小さくなり、フィルムがロールを締め付ける強さが大きくなることを意味する。逆に、(巻き硬さ/フィルムの坪量)の値が大きくなると、フィルムの強度が弱くなることを意味する。
一方、フィルムの坪量を一定とした場合、ロールを柔らかくして巻き硬さの値が大きくなると、(巻き硬さ/フィルムの坪量)の値は大きくなり、ロールが潰れやすくなることを意味する。逆に、(巻き硬さ/フィルムの坪量)の値が小さくなると、フィルムの強度が弱くなることを意味する。
従って、(巻き硬さ/フィルムの坪量)の値を適正な範囲にすることで、ロール製品がさらに潰れにくく、かつ、フィルムの強度を適正にすることができる。
【0017】
ロール製品が2plyの場合、シートの坪量が13.1?17.0g/m^(2)であることが好ましい。ロール製品が1plyの場合、シートの1plyの坪量が16.5?21.5g/m^(2)であることが好ましい。なお、シートが複数プライの衛生薄葉紙からなる場合、シートの坪量は、シート1枚(ply)当りの坪量で表す。
シートの坪量が上記下限値未満であると、強度が低下すると共に使用感(嵩高さ)も低下することがある。シートの坪量が上記上限値を超えると、シートが固く感じて使用感が低下したり、これを長く巻いたときに巻直径が大きくなって、ペーパーホルダーに装着しにくくなることがある。なお、巻直径は100?135mmであることが好ましく、100?125mmであることがより好ましい。
ロール製品が2plyの場合、シートの坪量は好ましくは14.1?16.0g/m^(2)であり、ロール製品が1ply製品の場合、シートの坪量は好ましくは17.5?20.5g/m^(2)である。又、シートの紙厚は0.6?1.1mm/10枚、好ましくは0.6?0.8mm/10枚である。
シートの坪量及び紙厚を上記範囲に調整する方法としては、衛生薄葉紙の原紙ウェブのカレンダー条件(カレンダー処理後の紙厚及び比容積)及びエンボス条件(エンボス処理後の紙厚及び比容積)を規定する方法が挙げられる。」
・「【0024】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るロール製品パッケージ102の斜視図を示す。ロール製品パッケージ102は、4個のロール製品6を1段当り2個並べたものを2段に配置し、これを包装袋20で包装してなる。ロール製品パッケージ102は上面が略矩形の箱状をなしている。
帯状フィルムからなる持手部40は、包装袋20の上面を跨いで、自身の両端部40a、40bをそれぞれ包装袋20の対向する短辺側の側面に接合されている。又、包装袋20には横方向に延びる開封用のミシン目20mが設けられている。」
・「【0032】
【表1】

【0033】
【表2】



(イ)甲1発明
甲第1号証の実施例1?6に注目すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されている。
「フィルムからなる包装袋20に、衛生薄葉紙の2plyのシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋20に包装してなり、
前記包装袋20の上面を跨いで接合された帯状フィルムからなる把持部40を有し、
前記ロール製品の巻長が66?93m、コアを除く1個の前記ロール製品の質量が226?318gであり、
前記フィルムの坪量が25.5?40.5(g/m^(2))であり
トイレットロールの巻直径が120?133mmであり、
フィルムの厚さが、29?47μmであるロール製品パッケージ。」
(ウ)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、
A 甲1発明の「コアを除く1個の前記ロール製品の質量が226?318gであ」ることは、通常コアが4g程度であることを考慮すると、本件発明1の「コアを含む1個の前記ロール製品の質量が200?370gであ」ることに相当する。
B 甲1発明の「コアを除く1個の前記ロール製品の質量が226?318gであり、」「前記フィルムの坪量が25.5?40.5(g/m^(2))」である実施例1?6は、その(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)を計算すると、25.78?40.94であるから、本件発明1の「(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25?80(g/(g/m^(2)))であるロール製品パッケージに相当する。
C 甲1発明の「トイレットロールの巻直径が120?133mmである」ことは、当該巻直径にフィルムの厚さ2枚分を足したものが長辺同士の間隔Wとほぼ同じであるから、本件発明1の「前記長辺同士の間隔Wが105?134mmである」ことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の2plyのシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してなり、
前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の1つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴が形成されており、
前記ロール製品の巻長が63?103m、コアを含む1個の前記ロール製品の質量が200?370gであり、
(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25?80(g/(g/m^(2)))であり、
前記長辺同士の間隔Wが105?134mmであるロール製品パッケージ。

<相違点1>
本件発明1は、「前記包装袋は筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された」把持部を有するのに対して、甲1発明は、包装袋20の形態が明確でない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴が形成されて」いるのに対して、甲1発明は、包装袋20の上面を跨いで接合された帯状フィルムからなる把持部40を有する点。
<相違点3>
本件発明1は、「前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが25?45度であ」るのに対して、甲1発明は、包装袋20が切妻屋根型でない点。
(エ)判断
まず、上記相違点3について検討する。
<相違点3について>
傾斜角度θについて、本件特許明細書の【0020】の「図4において、ロール製品パッケージ200を把持部4で持ち上げるのに必要な力を2Fとする。この力2Fは、長辺45,55にそれぞれ接するロール製品50の端部では、その半分の力Fとなって作用する。力Fは、パネル部41、51方向にはそれぞれ(F/sinθ)の分力として作用するから、θが大きくなるほど(F/sinθ)が小さくなり、長辺45,55に接するロール製品50の端部にかかる負荷が小さくなる。そこで、θを25度以上に規定する。
このようなことからは、θが大きいほど好ましいが、θが大きくなり過ぎると、パネル部41、51が立ち上がり過ぎ、パネル部41、51とロール製品50の上端との隙間Gが大きくなる。その結果、包装袋100内でロール製品50が動いて安定性が劣ったり、θを過剰に大きくするために包装袋100のサイズが大きくなってコストが高くなるので好ましくない。そこで、θを45度以下に規定する。」という記載から、本件発明1は、ロール製品の重量及び安定性並びにコストとの関係において、傾斜角θを25?45度としたものであると理解される。
ここで、申立人は、甲第2号証の【0024】には、「パネル部の傾斜角θが20度未満の場合、各パネル部山折り稜線43、53が側面23の上辺に近くなり、同様に山折り稜線43、53の一方を掴み難くなる傾向にある。一方、パネル部の傾斜角θが50度を越えると、ロール製品パッケージ200が縦方向に長くなり過ぎ、包装がルーズになり、運搬がし難くなる傾向にある。」という記載から、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである旨主張する。
しかし、甲第2号証には、ロール製品の重量による端部にかかる負荷を小さくするために、傾斜角を25度以上とすることは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、傾斜角θを25?45度とすることを、当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、甲第3号証?甲第7号証には、傾斜角θを25?45度とすることについて記載も示唆もないから、甲第3号証?甲第7号証を参照しても、同様である。
(オ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

イ 本件発明2?5の進歩性について
本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)と同じ理由で、本件発明2?5は、甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

実施可能要件について
本件特許明細書の段落【0038】には、「フィルムの強さ」について「トイレットロールを包装後のパッケージにおいて、フィルムの破れの有無を評価した。」と記載されていることからすると,「フィルムの強さ」とは、包装袋のフィルムの破れの有無によって評価されたものと理解される。また、本件発明の課題及び効果の一つは、ロール製品パッケージを持ち運ぶ際に包装袋のフィルムが破れにくいという点にあることからすると、「フィルムの破れ」とは、ロール製品パッケージの運搬時の破れを意味するものと認められる。
そして、【0038】に「評価基準は5点満点で行った。5点:大変良好である、4点:良好である、3点:実用上問題ない、2点:劣る、1点:顕著に劣る。」と記載され、【表1】及び【表2】の「フィルム強さ」の欄を参照すると、実施例1?17は、「フィルム強さ」が「3」以上であることから、「持ち運ぶ際にフィルムが破れにく」いという課題は、「フィルムの強さ」が「3」以上であることで解決すると理解される。
そうすると、本件特許明細書には、具体的に、「持ち運ぶ際にフィルムが破れにく」いロール製品パッケージ、すなわち「フィルムの強さ」(【0038】)が「3」以上であるロール製品パッケージとして実施例1?17が、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから。本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び異議申立の理由によっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の2plyのシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してなり、
前記包装袋は筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された把持部と、を有し、
前記把持部には、ほぼ中央に上向きに非切抜部を有するほぼ長円の一つのスリット状の指掛け穴、又は上向きに非切抜部を有して横方向に沿って並ぶ二個の指掛け穴が形成されており、
前記ロール製品の巻長が63?103m、コアを含む1個の前記ロール製品の質量が200?370gであり、
(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25?80(g/(g/m^(2)))であり、
前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが25?45度であり、
前記長辺同士の間隔Wが105?134mmであるロール製品パッケージ。
【請求項2】
前記ロール製品の巻き硬さが1.0?3.0mmである請求項1記載のロール製品パッケージ。
【請求項3】
前記フィルムの坪量が13?39g/m^(2)である請求項1又は2記載のロール製品パッケージ。
【請求項4】
(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.035?0.13(mm/(g/m^(2)))である請求項1?3のいずれか一項記載のロール製品パッケージ。
【請求項5】
前記シートの1枚当たりの坪量が13g/m^(2)を超え17g/m^(2)以下である請求項1?4のいずれか一項記載のロール製品パッケージ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-02 
出願番号 特願2015-170914(P2015-170914)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D)
P 1 651・ 536- YAA (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 米村 耕一  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 藤井 眞吾
佐々木 正章
登録日 2019-09-27 
登録番号 特許第6590596号(P6590596)
権利者 日本製紙クレシア株式会社
発明の名称 ロール製品パッケージ  
代理人 栗原 和彦  
代理人 赤尾 謙一郎  
代理人 下田 昭  
代理人 栗原 和彦  
代理人 赤尾 謙一郎  
代理人 下田 昭  

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