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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61J
管理番号 1372725
異議申立番号 異議2020-700822  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-22 
確定日 2021-03-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第6685972号発明「錠剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6685972号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6685972号(以下「本件特許」という。)の請求項1?2に係る特許についての出願は、平成25年7月16日(優先権主張 平成24年7月19日 日本国)を国際出願日とする特願2014-525818号の一部を平成29年7月10日に新たな特許出願としたものであって、令和2年4月3日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年10月22日に特許異議申立人 鈴木啓文(以下「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされた。


2 本件発明
本件特許の請求項1?2に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。

「【請求項1】
第1の面と、該第1の面と反対側の第2の面とを有する錠剤において、
前記第1の面のみに割線を有し、
前記第1の面における前記割線の一方側に第1の符号が印刷されており、
前記第1の面における前記割線の他方側に第2の符号が印刷されており、
前記第2の面における前記割線に対向する対応部位の前記一方側に前記第2の符号が印刷されており、さらに、
前記第2の面における前記対応部位の前記他方側に前記第1の符号が印刷されている、
錠剤。
【請求項2】
前記第1の符号及び前記第2の符号は、文字である、請求項1に記載の錠剤。」


3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として
甲1号証:平野和裕外4名、「半分に分割された錠剤の持参薬確認に及ぼす影響」、医療薬学、2010年36巻4号、p.252-261(以下「甲1」という。)

並びに従たる証拠として
甲2号証:特開2011-20325号公報(以下「甲2」という。)
甲3号証:特開2012-126735号公報(以下「甲3」という。)
甲4号証:木下教之外2名、「錠剤本体への製品名印字 使いやすい,優しいくすりを目指して」、ファルマシア、2007年第43巻、第8号、P.795?797(以下「甲4」という。)
甲5号証:特開平7-179333号公報(以下「甲5」という。)
甲6号証:特開2011-173932号公報(以下「甲6」という。)
甲7号証:国際公開第2010/032717号(以下「甲7」という。)

を提出し、さらに、甲1の内容を説明するための補助資料として
参考文献1:ディオバン錠20mg、ディオバン錠40mg、ディオバン錠80mg、及びディオバン錠160mgの添付文書
参考文献2:アーチスト錠1.25mg、アーチスト錠2.5mg、アーチスト錠10mg、及びアーチスト錠20mgの添付文書
参考文献3:文化遺産オンライン、「エンボッシング・モールス電信機」、[2020年9月9日検索]、インターネットURL:https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/145204

を提出し、本件特許の請求項1?2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、それらの特許は取り消されるべきものである旨主張する。


4 甲各号証の記載事項
(1)甲1には、次の記載がある。
ア 「佐賀大学医学部附属病院(以下,当院と略す)においても,2005年4月からすべての入院患者を対象に,医事課窓口での入院手続きの直後に,持参薬の確認を行っている.持参薬の確認は,最終的には会社コードと会社独自の製品コードからなる識別コード(日本製薬団体連合会(以下,日薬連と略す),「錠剤・カプセル剤等の会社コード」一覧表,平成15年11月7日,http://www.fpmaj.gr.jp/jisyu/jisyu_syosai 151107.htm)で行うが,識別コードから容易に鑑別できる錠剤でも,半分に分割された錠剤(以下,半切錠と略す)では識別コードの一部や全部が欠けて不明となり,鑑別困難となる場合がある.」(252ページ右欄第1-12行)

イ 「そこで,今回,半切錠の識別性についての問題点を明らかにするために,薬価収載医薬品(以下,市販薬と略す)すべての割線付錠剤について,半切錠の識別性を調査した.さらに,当院の入院時持参薬中の半切錠の鑑別性についても検討を行ったので報告する.」(253ページ左欄4-8行)

ウ 「添付文書の性状・外形に記載された錠剤の図から,割線と識別コードを構成する会社コードおよび製品コードとの位置関係(以下,印字型と略す)を調査し,印字型を分類した.」(253ページ左欄下から4-7行)

エ 「片面だけ割線がある錠剤は,割線がある面を表面(以下,オモテと略す),割線のない面を裏面(以下,ウラと略す)とした.」(253ページ左欄下から1-3行)

オ 「市販の割線付錠剤1,235品目の印字型をオモテ全表示型(A型),両面全表示型(B型),オモテ分離型(C型),オモテ分離ウラ追加型(D型)およびウラ印字型(E型)の5種に分類することができた(表2).」(254ページ右欄第6-9行)




キ 「割線付錠剤の印字パターンは統一されておらず,オモテとウラに印字した両面印字型,オモテだけに印字したオモテ印字型およびウラだけに印字したウラ印字型の3型に大別でき,さらに両面印字型とオモテ印字型について,半切錠に識別コード全体が残る全表示型とそれ以外の型の2種に細分類することができた(表2).
全表示型のA型およびB型は,割線に沿って分割された半切錠の各々に会社コードと製品コードのすべてを含み,半切錠1個で鑑別できる理想的な印字型であるが,市販のわずか3.8%にすぎなかった(図1(a)).」(258ページ左欄第4行-右欄4行)

これらの記載等より、以下のa?dのことがいえる。
a 上記ア?ウ、オ?カによれば、甲1は、半切錠の識別性についての問題点を明らかにするために、割線付錠剤のうち識別コードを有するものにつき、割線と識別コードを構成する会社コードおよび製品コードとの位置関係を調査し、A型?E型の5種に分類して、各類型について分析を行ったものである。

b 上記エによれば、割線付錠剤は表面と裏面とを有し、片面だけ割線がある錠剤については、割線がある面を「オモテ」と、割線のない面を「ウラ」と、それぞれ称している。

c 上記カによれば、上記aにおける「5種」のうち、B型は、両面全表示型とされ、その具体的形態は、オモテと、該オモテと反対側のウラを有する錠剤であって、オモテ及びウラに割線を有し、オモテの割線の上とウラの割線の下に会社コードを、オモテの割線の下とウラの割線の上に製品コードを印字したものである。
ここで、当該B型は、「オモテの割線」、「ウラの割線」との記載のとおり、錠剤のオモテ、ウラにそれぞれ割線を有する形態である。
また、割線の「上」や割線の「下」との表現は、当該B型の定義と併せて記載された「半切イメージ」の図に照らせば、当該図を記載した紙面における、割線からみて「上」側及び「下」側を意味することは明らかであって、普遍的な表現として、割線の「一方側」、割線の「他方側」といいかえることができるというべきである。そして、該「半切イメージ」の図と定義の説明、及び錠剤を2つに割りやすくするという割線の機能とを併せみれば、オモテの割線とウラの割線とは、通常は同一の方向に設けられるものといえる。

d 上記カによれば、上記aにおける「5種」のうち、D型は、オモテ分離ウラ追加型とされ、その具体的形態は、オモテと、該オモテと反対側のウラを有する、片面だけ割線がある錠剤であって、オモテの割線の上に会社コードを、オモテの割線の下に製品コードを、さらにウラに規格量や会社ロゴを印字したものである。
ここでの「上」、「下」との表現についても、上記cと同様といえる。

そこで、D型に着目して、上記a、b、dを総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1D発明」という。)が記載されているといえる。

「オモテと、該オモテと反対側のウラを有する錠剤であって、
前記オモテのみに割線を有し、
前記オモテにおける前記割線の一方側に会社コードが印字されており、
前記オモテにおける前記割線の他方側に製品コードが印字されており、
前記ウラに規格量や会社ロゴが印字されている、
錠剤。」

また、B型に着目して、上記a?cを総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1B発明」という。)が記載されているといえる。

「オモテと、該オモテと反対側のウラを有する錠剤であって、
前記オモテ及び前記ウラに、同一の方向に設けられた割線を有し、
前記オモテにおける前記割線の一方側と前記ウラにおける前記割線の他方側に会社コードが印字されており、
前記オモテにおける前記割線の他方側と前記ウラにおける前記割線の一方側に製品コードが印字されている、
錠剤。」

(2)甲2には、次の記載がある。
ア 「請求項1の発明は、ランダムに供給されるワークに対して印刷を行うための印刷方法であって、以下の工程を備えている。すなわち、(i)所定のエリア内に導入されたワークを撮像するワーク撮像工程。(ii)ワーク撮像工程で撮像された映像に基づいて、ワークのワーク情報を検出するワーク情報検出工程。(iii)ワーク情報検出工程で検出されたワーク情報に基づいてワークに印刷される印刷パターンを作成する印刷パターン作成工程。(iv)印刷パターン作成工程で作成された印刷パターンに基づいてワークに印刷を行う印刷工程。なお、本明細書中において、「ランダム」とは、ワークが整列せずに、向き(姿勢)がばらばらな状態を指している。」([0008])(下線は当審で付与した。以下同様。)

イ 「請求項5の発明では、請求項1において、印刷工程における印刷がインクジェット方式により印刷されている。」([0016])

ウ 「ワークWとしては、例えば、錠剤(タブレット)等の薬剤の他、ICチップ、工具のバイトチップ等が考えられる。なお、錠剤の中には、平面視円形でかつ中央に溝が形成されているものもあり、この場合には、円形であっても、錠剤自体に方向性があり、印刷位置が特定の位置に限定されるため、本発明による印刷方法が好適なワークである。」([0036])

エ 「ここで、ワーク情報は、エリアA内に配置された各ワークの位置および姿勢(平面内の向きの他、表裏の向きを含む)を含んでいる。すなわち、このステップでは、エリアAのどの位置にワークWが配置され、どの向きを向いているかなどのワーク情報が検出される。この場合に、ワークWが表裏のいずれを向いているかの情報は、例えば、ワークWの表面に溝を形成しておくようにすれば、溝の形成された側が表側であり、溝の形成されていない側が裏側となる。また、ステップS7では、ワークWの形状の一部に欠け等のある不良品が含まれていないかも併せて判断され、不良品のワークWの位置も検出される。不良品のワークWの位置情報は、後工程の制御装置に出力され、不良品のワークWは、後工程で排出される。なお、ワーク情報としては、ワークWの位置や姿勢(向き)、形状の他、ワークの種別、個数およびナンバリングを含むようにしてもよい。」([0049])

オ 「次に、ステップS8では、ステップS7で検出されたワーク情報に基づいて、各ワークW に印刷されるべき印刷パターンを作成する。このとき、まず、図7に示すように、エリアA内にランダムに配置された各ワークWに対して、それぞれのワークWのどの位置にどのような傾きで基本画像データ(図5)を印刷するかを設定する。なお、このとき、ステップS7で不良品と判断されたワークWに対して、このような設定を行わない。そして、この設定に基づいて、図8に示すような、各ワークWに対する印刷パターンを作成する。この処理は、画像処理装置15において実行される。作成された印刷パターンは、IJPコントローラ16に転送される。」([0050])

これらア?オの記載を総合すると、甲2には、「平面内の向きや表裏の向きがばらばらな状態で供給される、平面視円形でかつ表面中央に溝が形成された錠剤を撮像し、撮像された映像に基づいて、錠剤の位置、姿勢(平面内の向き等)等の情報を検出し、当該情報に基づいて錠剤に印刷される印刷パターンを作成し、印刷パターンに基づいて錠剤に平面内の向きに合わせてインクジェット印刷を行うこと。」が記載されている。

(3)甲3には、次の記載がある。
ア 「【請求項12】
マークを施された経口投与用組成物の製造方法であって、
変色誘起酸化物を経口投与用組成物に分散させる工程と、
前記経口投与用組成物の表面に、前記変色誘起酸化物の粒子を凝集させて変色させるように、波長が200nm?1100nmであり、平均出力が0.1W?50Wであるレーザー光を、前記経口投与用組成物の表面に走査させる工程と、
を含む製造方法。
・・・
【請求項23】
請求項12ないし22の何れか一項に記載の製造方法により製造された、マークが施された経口投与用組成物。
【請求項24】
前記経口投与用組成物が、錠剤又はカプセル剤である、請求項23に記載の経口投与用組成物。」([特許請求の範囲])

(4)甲4には、次の記載がある。
ア 「2 錠剤本体への印字技術及び方法
現在,錠剤についての製品名,識別コードの印字表示は,糖衣錠,フィルムコート錠はPAD印字やグラビア印字で表示されている.一方,国内市場において経口剤製剤の6割以上を占める素錠はほとんどが白色錠であり,識別性の観点からは印字表示が最も有効であると考えられているが,実際は刻印で表示しているのが現状である.その理由は,グラビア印字技術を用いての素錠への製品名表示,識別コード印字表示は,錠剤表面に存在する微粉等による印字のかすれ等の問題があり,印字が非常に困難である.そのため素錠は,刻印で表示されている.今後,糖衣錠,フィルムコート錠のみならず,医療過誤の観点からも素錠への製品名印字表示の動きも加速されることが予測されることから,素錠への印字技術の開発は必須であると考えられる.
現在,素錠への印字を可能とする印字技術としては,非接触印字であるIJP(ink jet printer;インクジェットプリンター)が検討されつつある.医薬品に適用可能な可食用インク開発も行われており,将来的には素錠へのIJPによる印字が可能となるだろう.IJPによる印字は,デザインや印字色についてすべてパソコン上での操作で決定することが可能であり,操作性も非常に簡便である.近い将来,飲み忘れや服用間違いの防止を目的に,病院や薬局で患者さん一人一人の要望に応えテーラーメードデザインを施すといった,そんな日がくるかもしれない.」(797ページ第7-21行)

(5)甲5には、次の記載がある。
ア 「なお、本発明は必ずしも前記実施例のものに限定されないのは勿論であり、例えば、図12或いは図13に示すようなものであってもよい。すなわち、図12の錠剤1は、面取傾斜部7を曲面形状にしたものである。また、図13に示す錠剤1は、片面だけに筋入割線部5と面取傾斜部7を形成したものである。」([0015])

(6)甲6には、次の記載がある。
ア 「一つの連結部には一つの割線がつけてある。割線は割溝と表現されることもあるが、本明細書では割溝も含めて「割線」と総称する。錠剤に割線をつけること、およびその一般的形状は既にこの分野の技術常識となっている。したがって、患者や薬剤師らが錠剤全体を困難なく分割できるものである限り本発明における割線の形状は特に限定されず、当業者であれば技術常識に基づき容易に形成することができる。具体的には上記特許文献中に開示された割線の形状を例示することができる。例えば、連結部の形状が平面的なものであれば、割線はその両面にあっても片面のみにあってもよい。また、連結部が円柱状の場合には、割線はその全周に付けることができる。」([0012])

(7)甲7には、次の記載がある。
ア 「図10(a)のようなフィルムコーティング割線錠剤100」([0005])




ウ 甲7の図10(a)から、錠剤の互いに対向する曲面の一方のみに割線を設けた錠剤が看取される。


5 甲2?7号証から把握される周知技術
(1)上記4(2)?(4)の記載事項によれば、錠剤に表示される文字や図柄をインクジェット印刷、レーザーマーキングやパッド印刷等によって形成することは周知の技術であるといえる。
(2)上記4(5)?(7)の記載事項によれば、錠剤の互いに対向する平面又は曲面のいずれか一方のみに割線を設けることは周知の技術であるといえる。


6 当審の判断
(1)本件発明について
ア 本件発明と甲1D発明との対比・判断
(ア)対比
甲1D発明の「オモテ」、「ウラ」は、本件発明の「第1の面」、「第2の面」にそれぞれ相当する。
ここで、「印字」とは、「1 タイプライターやパソコンのプリンターなどで、紙などに文字や符号を打ち出すこと。また、その文字や符号。2 印章の文字。」(デジタル大辞泉(小学館))を意味する語であり、「印刷」とは、「原稿に従って印刷版を作り、その版面にインクなどをつけて文字・図形を多数の紙や布などに刷りうつすこと。また、その技術。」(同)を意味する語であることから、文字や符号を打ち出す、すなわち印刷することを意味する「印字」は、その対象が文字や符号に限られない「印刷」の一形態であるといえる。そうすると、甲1D発明の「会社コードが印字されて」、「製品コードが印字されて」及び「規格量や会社ロゴが印字されて」いる点は、本件発明の「符号が印刷されて」いる点に相当する。
そして、甲1D発明において、オモテにおける割線の一方側に印字された「会社コード」は、本件発明において「第1の面における前記割線の一方側」に印刷された「第1の符号」に相当する。
また、甲1D発明において、オモテにおける割線の他方側に印字された「製品コード」は、本件発明において「第1の面における前記割線の他方側」に印刷された「第2の符号」に相当する。

(イ)一致点
そうすると、両者は、
「第1の面と、該第1の面と反対側の第2の面とを有する錠剤において、
前記第1の面のみに割線を有し、
前記第1の面における前記割線の一方側に第1の符号が印刷されており、
前記第1の面における前記割線の他方側に第2の符号が印刷されており、
前記第2の面に符号が印刷されている、
錠剤。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(ウ)相違点
[相違点1]
第2の面に印刷されている符号に関して、本件発明では、前記第2の面における前記割線に対向する対応部位の前記一方側に前記第2の符号が印刷されており、さらに、前記第2の面における前記対応部位の前記他方側に前記第1の符号が印刷されているのに対し、甲1D発明では、第1の符号及び第2の符号に相当する「会社コード」及び「製品コード」とは異なる符号である「規格量」や「会社ロゴ」が印字されている点。

(エ)判断
上記相違点1について判断する。
甲1D発明は、オモテにおける割線の一方側に会社コードが印字され、当該割線の他方側に製品コードが印字されるとともに、割線のないウラには規格量や会社ロゴが印字されているものであり、全体として、会社コード、製品コードに加えて、これらとは別な情報である規格量や会社ロゴを表示するように設定されたものである。すなわち、オモテの割線で分割された上下の印刷スペースと、割線のないウラの印刷スペースの3箇所に3種類以上の情報を分配したものと理解されるところ、そうしたものについて、同じ情報をオモテ・ウラの両方に重複して印字したり、印字箇所を関係づけたりしようという発想や動機づけは生じ得ない。
加えて、上記4(1)に摘記したとおり、甲1は、すべての割線付錠剤について、識別コードを有する割線付錠剤を割線と識別コードの位置関係でA?E型に分類したものであり、A?E型以外の類型の存在を示唆するような記載はみられない。したがって、甲1に接した当業者は、甲1の記載事項に基づいて、錠剤への印字の形態として、上記A?E型以外の新たな類型を想到しようとする動機づけも見出せない。
そして、甲2?7には、第1の面のみに割線を有する錠剤において、本件発明のように、「前記第1の面における前記割線の一方側に第1の符号が印刷されており、前記第1の面における前記割線の他方側に第2の符号が印刷されており、前記第2の面における前記割線に対向する対応部位の前記一方側に前記第2の符号が印刷されており、さらに、前記第2の面における前記対応部位の前記他方側に前記第1の符号が印刷されている」という印刷形態とする点は開示されていない。
よって、上記相違点1における本件発明に係る構成は、甲1D発明並びに甲1?7に記載された技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、上記相違点1における本件発明の発明特定事項により、本件発明は、錠剤が割線の位置において分割されたときにいずれの分割片においても第1の符号と第2の符号との両符号がそれぞれ印刷されている状態となるという顕著な作用効果を奏するものである。

(オ)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、甲1D発明並びに甲1?7に記載された技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明と甲1B発明との対比・判断
(ア)対比
甲1B発明の「オモテ」、「ウラ」は、本件発明の「第1の面」、「第2の面」にそれぞれ相当する。
錠剤が有する割線に関して、本件発明の、「第1の面のみに割線を有」することと、甲1B発明の、オモテおよびウラに割線を有することとは、錠剤の第1の面に割線を有する点で共通する。
そして、上記ア(ア)の対比を踏まえると、甲1B発明の「会社コードが印字されて」及び「製品コードが印字されて」いる点は、本件発明の「符号が印刷されて」いる点に相当する。
また、甲1B発明において、オモテの割線とウラの割線とが同一の方向に設けられており、オモテの割線に対向する対応部位にウラの割線が存在していることを踏まえると、甲1B発明において、オモテにおける割線の他方側及びウラにおける割線の一方側に印字された「製品コード」は、本件発明において「第1の面における前記割線の他方側」と「第2の面における前記割線に対向する対応部位の前記一方側」に印刷された「第2の符号」に相当する。同様に、甲1B発明において、オモテにおける割線の一方側及びウラにおける割線の他方側に印字された「会社コード」は、本件発明において「第1の面における前記割線の一方側」と「第2の面における前記対応部位の他方側」に印刷された「第1の符号」に相当する。

(イ)一致点
そうすると、両者は、
「第1の面と、該第1の面と反対側の第2の面とを有する錠剤において、
前記第1の面に割線を有し、
前記第1の面における前記割線の一方側に第1の符号が印刷されており、
前記第1の面における前記割線の他方側に第2の符号が印刷されており、
前記第2の面における前記割線に対向する対応部位の前記一方側に前記第2の符号が印刷されており、さらに、
前記第2の面における前記対応部位の前記他方側に前記第1の符号が印刷されている、
錠剤。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(ウ)相違点
[相違点2]
錠剤が有する割線に関して、本件発明では、「第1の面のみに割線を有」するのに対し、甲1B発明では、オモテ及びウラに割線を有する点。

(エ)判断
上記相違点2について判断する。
甲1B発明は、オモテに加えウラにも割線を有する錠剤であって、その印字のスタイルも含めて設定されたひとつの類型であり、たとえ、錠剤の互いに対向する面のいずれか一方のみに割線を設けた錠剤が、それ自体は周知のものであるとしても(上記5(2)参照)、甲1B発明について、そのような片面割線の形態である他の類型(A、C?E型)との組合せを試み、ウラの割線を設けないよう改変する動機づけはなく、また、そのように割線を減らすことは、却って錠剤の分割がしにくくなることから、阻害要因があるといえる。
加えて、上記4(1)に摘記したとおり、甲1は、すべての割線付錠剤について、識別コードを有する割線付錠剤を割線と識別コードの位置関係でA?E型に分類したものであり、A?E型以外の類型の存在を示唆するような記載はみられない。したがって、甲1に接した当業者は、甲1の記載事項に基づいて、錠剤への印字の形態として、上記A?E型以外の新たな類型を想到しようとする動機づけも見出せない。
そして、甲2?7には、第1の面のみに割線を有する錠剤において、本件発明のように、「前記第1の面における前記割線の一方側に第1の符号が印刷されており、前記第1の面における前記割線の他方側に第2の符号が印刷されており、前記第2の面における前記割線に対向する対応部位の前記一方側に前記第2の符号が印刷されており、さらに、前記第2の面における前記対応部位の前記他方側に前記第1の符号が印刷されている」という印刷形態とする点は開示されていない。
よって、上記相違点2における本件発明に係る構成は、甲1B発明並びに甲1?7に記載された技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、上記相違点2における本件発明の発明特定事項により、本件発明は、錠剤の構造が簡単になるという顕著な作用効果を奏するものである。

(オ)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、甲1B発明並びに甲1?7に記載された技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件特許の請求項2に係る発明について
本件特許の請求項2に係る発明は、本件発明について、さらに発明特定事項を付加し、限定したものである。よって、本件特許の請求項2に係る発明は、上記(1)に示したとおりの理由により、甲1D発明又は甲1B発明、並びに甲1?7に記載された技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)まとめ
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1D発明又は甲1B発明、並びに甲1?7に記載された技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それらの特許は特許法第29条第2項に違反してされたものとすることはできない。


7 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1?2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-03-15 
出願番号 特願2017-134774(P2017-134774)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 立花 啓  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 栗山 卓也
内藤 真徳
登録日 2020-04-03 
登録番号 特許第6685972号(P6685972)
権利者 フロイント産業株式会社
発明の名称 錠剤  
代理人 特許業務法人藤本パートナーズ  
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