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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G07G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G07G
管理番号 1372742
異議申立番号 異議2020-700902  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-26 
確定日 2021-04-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6699474号発明「売上データ処理装置、プログラム、及び、表示方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6699474号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6699474号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成28年9月14日に出願され、令和2年5月7日に特許権の設定登録がされ、同年5月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?5に係る特許に対し、令和2年11月26日に、特許異議申立人中島健(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6699474号の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
表示部を備えた売上データ処理装置であって、
売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段と、
前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、前記取引形態受付手段により前記所定の取引形態とする旨の指定が受け付けられた場合であって、かつ、前記商品リストに前記所定の取引形態に対応させて消費税率の値を変更すべき消費税課税対象商品が含まれている場合に、該消費税課税対象商品に対応付けて前記商品リストに表示されている税込価格を、消費税率に前記所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える、
ことを特徴とする売上データ処理装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記税込価格を置き換えた場合には、前記消費税課税対象商品毎に当該消費税課税対象商品が前記税込価格の置き換え対象とされたか否かが識別可能なように、前記商品リストを表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の売上データ処理装置。
【請求項3】
前記所定の取引形態は、持ち帰り取引である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の売上データ処理装置。
【請求項4】
表示部を備えた売上データ処理装置のコンピュータを、
売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段、
前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付手段、
として機能させ、
前記表示制御手段は、前記取引形態受付手段により前記所定の取引形態とする旨の指定が受け付けられた場合であって、かつ、前記商品リストに前記所定の取引形態に対応させて消費税率の値を変更すべき消費税課税対象商品が含まれている場合に、該消費税課税対象商品に対応付けて前記商品リストに表示されている税込価格を、消費税率に前記所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項5】
表示部を備えた売上データ処理装置が実行する表示方法であって、
売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御ステップと、
前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付ステップと、
を有し、
前記表示制御ステップは、前記取引形態受付ステップで前記所定の取引形態とする旨の指定が受け付けられた場合であって、かつ、前記商品リストに前記所定の取引形態に対応させて消費税率の値を変更すべき消費税課税対象商品が含まれている場合に、該消費税課税対象商品に対応付けて前記商品リストに表示されている税込価格を、消費税率に前記所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える、
ことを特徴とする表示方法。」

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、以下の甲第1?7号証(以下「甲1?7」ということがある。)を提出するとともに、以下の申立理由1及び2により請求項1?5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

1 申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件発明1、4、5は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。したがって、本件発明1、4、5に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 申立理由2(特許法第29条第2項)
本件発明1、4、5は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明に基いて、本件発明2、3は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明と甲3?甲5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明1?5に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
なお、特許異議申立書の37?38ページ の3-6(2)項の「・請求項2について」及び「・請求項3について」では、「甲2ないし甲5記載の周知事項」と記載されているが、「甲3ないし甲5記載の周知事項」の誤記と認められる。

3 証拠方法
(1)甲第1号証
PosBill ePOS-Software Hospitality
User manual c PosBill,2014
(PosBill Corporation作成によるPosBill ePOS-ソフトウェア ホスピタリティのユーザーマニュアル)

(2)甲第2号証
OPERATION MANUAL
SX-7000/7500 SX-8000/8500 SX-700/800 Jan.23.2004 Uniwell
(Uniwell Corporation作成によるレジスターシステムの操作マニュアル)

(3)甲第3号証
特開2015-138353号公報

(4)甲第4号証
特開2003-303374号公報

(5)甲第5号証
特開平7-168976号公報

(6)甲第6号証
インターネット検索サイトGoogleの検索結果画面のWebページ
(https://www.google.com/search?q=PosBill_Vl5_Manual_Hospitali ty_EN.pdf&source=lnt&tbs=cdr%3A1%2Ccd_min%3A%2Ccd_max%3A9%2F14%2F2016&tbm=)

(7)甲第7号証
インターネット検索サイトGoogleの検索結果画面のWebページ
(https://www.google.com/search?tbs=cdr%3A1%2Ccd_max%3A9%2F14%2F2016&ei=_QCIX87qKs-Er7wP75mL6Ac&q=manual-sx7k8k.pdf&oq=manual-sx7k8k.pdf&gs_lcp=CgZwc3ktYWIQA1DckQpY3JEKYI6aCmgAcAB4AIABoAGIAaABkgEDMC4xmAEAoAECoAE8qgEHZ3dzLXdpesABAQ&sclient=psy-ab&ved=OahUKEwi03fyikLbsAhVPwosBHe_MAnOQ4dUDCAO&uact=5)

第4 申立理由についての判断
1 各甲号証の記載事項等
(1)甲1の記載事項等
(1-1)甲1の記載事項
甲1は、甲6に示すように、インターネット検索サイトGoogleにおいて2014年12月3日に公開されたものと推認できるから、本件の出願日(2016年9月14日)前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものと認められる。そして、甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている(以下翻訳文を示す。□枠は申立人が付与したものであるところ、摘記箇所を行数ではなく□枠で表すことがある。また行数は図の部分を含まないものとする。以下同様。)。
ア 8ページ全文







イ 17ページ全文



ウ 18ページ全文


エ 19ページ全文


オ 172ページ全文


(1-2)認定事項
甲1には、摘示イ(□枠)で示された図から、フロントオフィスディスプレイを備えたPosBill POSシステムが開示されているといえるものであり、かかるPosBill POSシステムの構成について、上記(1-1)の摘示事項から、以下の事項が認定できる。
ア 摘示ウ(□枠)に示された「フロントオフィスディスプレイ」内の表示内容及び□枠の3?4行の「このエリアでは、注文されたすべてのアイテムを見ることができます。」との記載、及び□枠の14?15行の「商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力しても入力できます。」との記載から、商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力することで、注文されたすべての商品毎に商品名及びその価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示すること。また、摘示ア(□枠3行目)には「すべての商品は正味価格で表示されています。付加価値税(VAT)は正味価格に加算されます。」と記載されているチェックボックスが存在するところ、このチェックボックスにチェックを入れた状態では、上記表示される「価格」は、付加価値税が加算される前の正味価格であること。
これらの事項から、商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力することで、注文されたすべての商品毎に商品名及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示すること。
イ 摘示エ(□枠)から「フロントオフィスディスプレイ」には「テイクアウト注文表」とのアイコンが表示されているとともにその説明文として「テイクアウト注文:テイクアウト注文として商品を計上し、テイクアウトの付加価値税がアイテムに適用されます。」と記載され、摘示オの「パラメーター」の画面の□枠には「テイクアウト注文のキーは、テーブル全体ではなく、選択したアイテムにのみ適用します。」と記載されているチェックボックスが存在するとともに、該「パラメーター」の画面の下の11行目(□枠)には「テイクアウト注文キー:テイクアウト注文の付加価値税率は、選択したアイテムにのみ適用されます。」との説明文が記載されているから、このチェックボックスにチェックを入れた状態では、テイクアウト注文キーにより選択された商品にのみテイクアウト注文の付加価値税が適用されること。

(1-3)甲1に記載された発明
ア 上記(1-1)及び(1-2)によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
「フロントオフィスディスプレイを備えたPosBill POSシステムであって、
商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力することで、注文されたすべての商品毎に商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示し、
テイクアウト注文キーにより選択された商品にのみテイクアウト注文の付加価値税率が適用されるPosBill POSシステム。」

イ 上記(1-2)の認定に加え、摘示アの1行目の「1.ワンクリックでサンプルデータを生成し、プログラムのテストに使用できます。」との記載から、「PosBill POSシステム」が、コンピュータを備えること、及び該コンピュータを機能させるプログラムを備えること、並びに該プログラムが、コンピュータ を、注文されたすべての商品毎に商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示するよう機能させること、及びテイクアウト注文キーにより選択された商品にのみテイクアウト注文の付加価値税率が適用されるように機能させることは明らかであるから、甲1には、次の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。

「フロントオフィスディスプレイを備えたPosBill POSシステムのコンピュータを、
商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力することで、注文されたすべての商品毎に商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示するよう機能させ、
テイクアウト注文キーにより選択された商品にのみテイクアウト注文の付加価値税率が適用されるように機能させるプログラム。」

ウ 上記(1-2)の認定に加え、「PosBill POSシステム」を実行する表示方法が記載されていること、並びに、注文されたすべての商品毎に商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示するステップ、及びテイクアウト注文キーにより選択された商品にのみテイクアウト注文の付加価値税率が適用されるステップとを有することは明らかであるから、甲1には、次の発明(以下「甲1発明3」という。)が記載されていると認められる。

「フロントオフィスディスプレイを備えたPosBill POSシステムが実行する表示方法であって、
商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力することで、注文されたすべての商品毎に商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示するステップと、
テイクアウト注文キーにより選択された商品にのみテイクアウト注文の付加価値税率が適用されるステップと、
を有するPosBill POSシステムを実行する表示方法。」

(2)甲2の記載事項等
(2-1)甲2の記載事項
甲2は、甲7に示すように、インターネット検索サイトGoogleにおいて2004年1月23日に公開されたものと推認できるからから、 本件の出願日(2016年9月14日)前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものと認められる。そして、甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている(以下翻訳文を示す。)。

ア 8ページ1?18行













イ 9ページの□枠

ウ 17ページ の2つの□枠





エ 38ページ1?18行を添付

オ 39ページ全文

カ 40ページの□枠

キ 44ページ全文

ク 45ページの□枠

ケ 46ページ全文

コ 109ページ全文








サ 110ページ の□枠

(2-2)認定事項
甲2には、摘示ア(4?6行)の「PLUシステムでは、各アイテムにさまざまな設定を関連付けることができます。たとえば、価格、販売グループ(飲み物、食べ物)、説明、税情報、調理指示などです。PLUの販売にはさまざまな方法があり、それを以下に説明します。」との記載から、「PLUシステム」が開示されているところ、かかる「PLUシステム」の構成について、上記(2-1)の摘示事項から、以下の事項が認定できる。
ア 摘示ウの上の□枠の図から、PLUシステムは、表示部を備えること。

イ 摘示ア(3行目)の「販売する各アイテム(品目)はPLUです。」との記載、及び同(8?9行)「ハードPLUキーを押すか、商品に添付されているバーコードをスキャンすると、1つのPLUが販売されます。」との記載から、ハードPLUキーを押すか、商品に添付されているバーコードをスキャンすると、商品が販売されることが理解できる。
また、摘示イの下側の表示部を示した図の「5.00 PLU1 5.00」との記載から、販売を受け付けると、商品名がPLU1で標準価格が5.00の商品が追加されたことを表示することが理解できる。
さらに、摘示ウの上側の□枠の表示部の図には、商品名が「ハンバーガー」で標準価格が「4.00」の商品と、商品名が「無料オレンジジュース」で標準価格が「1.20」の商品が上下に並べて表示されているから、販売を受け付ける毎に商品名と標準価格が追加するように表示されることが理解できる。
加えて、摘示コ(下側の□枠)の「プログラミングによって『アドオン方式税制』または『VAT方式』によって計算されるタ税金。アドオン方式:税額は価格とは別に請求されます。VAT方式:税額は価格に含まれています。」との記載、摘示サ(2行目)の「VAT方式を使用する場合、販売に含まれるVATコンテンツが計算され、販売終了時に表示されます。」との記載から、VAT方式を使用する場合、商品の価格として、本体価格に税額を加えた税込価格が販売終了時に表示されることが理解できる。
以上のことから、ハードPLUキーを押すか、商品に添付されているバーコードをスキャンすると、商品が販売され、表示部には販売を受け付ける毎に、商品名と、VAT方式を使用する場合には本体価格に税額を加えた税込価格が追加されるようにリストが表示されること。

ウ 摘示エ(5?6行)の「取引用の販売方法を示すのに押すキーとしてEAT IN、TAKE OUTおよびDELIVERYがあり、これらは前面ディスプレイ上に表示され、各レシートのヘッダーとして印刷されます。」との記載、及び同(15行目)の「SP-110によりEAT IN、TAKE OUT、DELIVERYの各キーを割り当てます。」との記載から、取引用の販売方法として割り当てられたイートイン、テイクアウトおよびデリバリーの各キーが備えられること。

エ 摘示ク(1?3行)の「グループフラグ[GF-2.G,F,E]により、イートイン、テイクアウトまたはデリバリーなどの販売方法に従って、税制措置を変更できます。たとえば、税率7%は食べ物アイテムの持ち出しにのみ使用され、それ以外は常に16%です。」との記載から、グループフラグ[GF-2、G,F,E]により、イートイン、テイクアウトまたはデリバリーなどの販売方法に従って、税制措置を変更でき、たとえば、税率7%は食べ物アイテムの持ち出しのみに使用され、それ以外は常に16%であること。

オ 摘示ケには3種類のレシートが示されているところ、飲み物アイテムおよび食べ物アイテムの両方が16%の税率に基づいて税額(税1が3.31)を算出したイートインのレシートと、飲み物アイテムが16%、食べ物アイテムが7%の税率に基づいて税額(飲み物アイテム:税1が0.97、食べ物アイテム:税2が1.11)を算出したテイクアウトおよびデリバリーのレシートとが開示されており、さらに、それらのレシートの例には、税率の特定にかかる税区分であるイートインとテイクアウトおよびデリバリーがあり、イートインの場合には、それぞれの商品名、それぞれの商品の税込価格、税込価格の合計金額、本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示され、テイクアウトとデリバリーの場合には、それぞれの商品名、それぞれ商品の税込価格、税込価格の合計金額、飲み物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額及び食べ物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示されていることが理解できる。

カ 摘示カの「EAT IN/TAKE OUTの切り替えに関する注意事項
イートイン/テイクアウト/デリバリーが[SF-100.F-A、 SF-107.C-A]により価格レベルシフトにリンクしている場合、取引中のモード変更は禁止されています。
すべてのモードで同じ価格レベルが使用されている場合、取引中にイートイン、テイクアウト、デリバリーを変更できます。これは、同じ取引で価格の異なるPLUが存在しないようにするためです。
(後者の場合、最後に選択したモードがレシートヘッダーとして印刷されることに注意してください。)」との記載から、同じ取引で価格の異なるPLUが存在しないようにするために、イートイン/テイクアウト/デリバリーが価格レベルシフトにリンクしている場合、取引中のモード変更は禁止されており、すべてのモードで同じ価格レベルが使用されている場合、取引中にイートイン、テイクアウト、デリバリーを変更でき、最後に選択したモードがレシートヘッダーとして印刷されること。

(2-3)甲2に記載された発明
ア 上記(2-1)及び(2-2)によれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明1」という。)が記載されていると認められる。
「表示部を備えたPLUシステムであって、
ハードPLUキーを押すか、商品に添付されているバーコードをスキャンすると、商品が販売され、表示部には販売を受け付ける毎に、商品名と、VAT方式を使用する場合には本体価格に税額を加えた税込価格が追加されるようにリストが表示され、
さらに、取引用の販売方法として割り当てられたイートイン、テイクアウトおよびデリバリーの各キーを備え、
グループフラグ[GF-2.G,F,E]により、イートイン、テイクアウトまたはデリバリーなどの販売方法に従って、税制措置を変更でき、たとえば、税率7%は食べ物アイテムの持ち出しのみに使用され、それ以外は常に16%であり、
飲み物アイテムおよび食べ物アイテムの両方が16%の税率に基づいて税額を算出したイートインのレシートと、飲み物アイテムが16%、食べ物アイテムが7%の税率に基づいて税額を算出したテイクアウトおよびデリバリーのレシートを印刷するものであり、
レシートには、税率の特定にかかる税区分であるイートインとテイクアウトおよびデリバリーがあり、イートインの場合には、それぞれの商品名、それぞれの商品の税込価格、税込の合計価格、本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示され、テイクアウトとデリバリーの場合には、それぞれの商品名、それぞれ商品の税込価格、税込の合計金額、飲み物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額及び食べ物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示されており、同じ取引で価格の異なるPLUが存在しないようにするために、イートイン/テイクアウト/デリバリーが価格レベルシフトにリンクしている場合、取引中のモード変更は禁止されており、すべてのモードで同じ価格レベルが使用されている場合、取引中にイートイン、テイクアウト、デリバリーを変更でき、最後に選択したモードがレシートヘッダーとして印刷される、PLUシステム。」

イ 上記(1-2)の認定に加え、摘示イ(6?7行)の「2.置数キーを使用してPLUの数量を入力します。小数点数量の入力がプログラミング[PF-02.D]により許容されます。」との記載から、「PLUシステム」が、コンピュータを備えること、及び該コンピュータを機能させるプログラムを備えることは明らかであること、並びに、該プログラムが、コンピュータ を、商品名と、VAT方式を使用する場合には本体価格に税額を加えた税込価格が追加されるようにリストが表示するように機能させこと、イートイン、テイクアウトおよびデリバリーの各キーとして機能させること、及び最後に選択したモードがレシートヘッダーとして印刷されるように機能することは明らかであるから、甲2には、次の発明(以下「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。
「表示部を備えたPLUシステムのコンピュータを、
ハードPLUキーを押すか、商品に添付されているバーコードをスキャンすると、商品が販売され、表示部には販売を受け付ける毎に、商品名と、VAT方式を使用する場合には本体価格に税額を加えた税込価格が追加されるようにリストが表示するように機能させ、
さらに、取引用の販売方法として割り当てられたイートイン、テイクアウトおよびデリバリーの各キーとして機能させ、
グループフラグ[GF-2.G,F,E]により、イートイン、テイクアウトまたはデリバリーなどの販売方法に従って、税制措置を変更でき、たとえば、税率7%は食べ物アイテムの持ち出しのみに使用され、それ以外は常に16%であり、
飲み物アイテムおよび食べ物アイテムの両方が16%の税率に基づいて税額を算出したイートインのレシートと、飲み物アイテムが16%、食べ物アイテムが7%の税率に基づいて税額を算出したテイクアウトおよびデリバリーのレシートを印刷するものであり、
レシートには、税率の特定にかかる税区分であるイートインとテイクアウトおよびデリバリーがあり、イートインの場合には、それぞれの商品名、それぞれの商品の税込価格、税込の合計価格、本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示され、テイクアウトとデリバリーの場合には、それぞれの商品名、それぞれ商品の税込価格、税込の合計金額、飲み物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額及び食べ物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示されており、同じ取引で価格の異なるPLUが存在しないようにするために、イートイン/テイクアウト/デリバリーが価格レベルシフトにリンクしている場合、取引中のモード変更は禁止されており、すべてのモードで同じ価格レベルが使用されている場合、取引中にイートイン、テイクアウト、デリバリーを変更でき、最後に選択したモードがレシートヘッダーとして印刷されるように機能する、プログラム。」

ウ 上記(1-2)の認定に加え、「PLUシステム」を実行する表示方法が記載されていること、並びに、商品名と、VAT方式を使用する場合には本体価格に税額を加えた税込価格が追加されるようにリストを表示するステップを有すること、取引用の販売方法として割り当てられたイートイン、テイクアウトおよびデリバリーの各キーを備え、グループフラグ[GF-2.G,F,E]により、イートイン、テイクアウトまたはデリバリーなどの販売方法に従って、たとえば、税率7%は食べ物アイテムの持ち出しのみに使用され、それ以外は常に16%に税制措置を変更できるステップを有することは明らかであるから、甲2には、次の発明(以下「甲2発明3」という。)が記載されていると認められる。
「表示部を備えたPLUシステムが実行する表示方法であって、
ハードPLUキーを押すか、商品に添付されているバーコードをスキャンすると、商品が販売され、表示部には販売を受け付ける毎に、商品名と、VAT方式を使用する場合には本体価格に税額を加えた税込価格が追加されるようにリストを表示するステップと、
取引用の販売方法として割り当てられたイートイン、テイクアウトおよびデリバリーの各キーを備え、グループフラグ[GF-2.G,F,E]により、イートイン、テイクアウトまたはデリバリーなどの販売方法に従って、たとえば、税率7%は食べ物アイテムの持ち出しのみに使用され、それ以外は常に16%に税制措置を変更できるステップと、
を有し、
飲み物アイテムおよび食べ物アイテムの両方が16%の税率に基づいて税額を算出したイートインのレシートと、飲み物アイテムが16%、食べ物アイテムが7%の税率に基づいて税額を算出したテイクアウトおよびデリバリーのレシートを印刷するものであり、
レシートには、税率の特定にかかる税区分であるイートインとテイクアウトおよびデリバリーがあり、イートインの場合には、それぞれの商品名、それぞれの商品の税込価格、税込の合計価格、本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示され、テイクアウトとデリバリーの場合には、それぞれの商品名、それぞれ商品の税込価格、税込の合計金額、飲み物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額及び食べ物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示されており、同じ取引で価格の異なるPLUが存在しないようにするために、イートイン/テイクアウト/デリバリーが価格レベルシフトにリンクしている場合、取引中のモード変更は禁止されており、すべてのモードで同じ価格レベルが使用されている場合、取引中にイートイン、テイクアウト、デリバリーを変更でき、最後に選択したモードがレシートヘッダーとして印刷される、表示方法。」

(3)甲3の記載事項等
(3-1)甲3の記載事項
本件の出願前に頒布された刊行物である甲3には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置及びプログラムに関する。」


「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、返品処理を実行したことを管理して、顧客の携帯端末に対して、返品処理をしたことが視認できる電子レシートデータを送信可能な情報処理装置及びプログラムを提供することである。」


「【0010】
図1は、実施形態にかかる電子レシートシステムの構成全体を示す構成図である。図1に示すように、電子レシートシステムは、POS(Point of Sales)端末1と、ストアサーバ2と、電子レシートサーバ3と、電子レシート管理サーバ4と、携帯端末7とを有する。」


「【0101】
図12において、表示部73は、電子レシート情報として、店名ロゴ731、当該取引が決済された日時732、取引番号733、取引番号や取引情報等をシンボル化した二次元コード734、購入した商品の商品名735、商品の価格737、小計金額739、税額740、合計金額741等を表示する。携帯端末7を携帯した顧客は、携帯端末7の表示部73に表示された電子レシート情報を閲覧して、内容を確認することができる。」


「【0106】
図13に、ステップS84で生成した電子レシート情報を受信した携帯端末7の表示部73に表示された電子レシート情報の一例を示す。図13において、図12で説明した表示項目に加え、返品した商品の商品情報に取消線742が表示される。図13の例では、商品Bの商品情報に取消線742が表示されている。この表示を見た顧客は、商品Bが返品処理されていることを目視で確認することができる。なお、商品が返品されていることを示す印として、取消線以外に、返品商品の商品情報の色を変えたり、網掛けしたり、返品したことが分かる印を表示したりしてもよい。」

カ 以下の図面が示されている。


(4)甲4の記載事項等
(4-1)甲4の記載事項
本件の出願前に頒布された刊行物である甲4には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レストラン、居酒屋あるいはホテル等において、客から受けた注文を管理する注文データ管理装置に関する。」


「【0010】本発明は、注文データ管理装置において、メニュー内容の変更に伴って発生した携帯型入力端末機のキー割付の変更点を注文入力担当であるフロア側作業者がすみやかに認識できるようにし、メニュー変更直後の注文入力処理においても、その作業を混乱なくすみやかに行えるようにすることを目的とする。」


「【0022】図7は、入力端末機2でのメニュー変更で出力される本発明の対象である変更点確認用メニューシートの出力例を示している。メニュー変更を行なうため、データ制御装置に新しいメニューが送られてくると、新しいメニューのキー位置とあらかじめ退避していた変更前のキー情報との比較を行い、割り付けられているメニューコードが変更されたり、同じメニューコードでも表示名称が変わったメニューについてのキー位置を変更箇所として特定する。次に新しいメニュー情報にしたがって、メニューシートデータを作成するが、このとき、運用において使用するメニューシートとは別に、前記の特定された変更個所について、印字色(赤色印字)を変えるか、もしくは、図7に例示するような反転印字(白抜き印字)を行うようにした変更点確認用メニューシートが作成される。さらに、データ制御装置において、店舗で使用しているメニューシートの各パターンと使用している入力端末機の種類を自動的に判断し、店舗において使用されている入力端末機の各パターンについての変更点確認用メニューシートが用意する。」

エ 以下の図面が示されている。


(5)甲5の記載事項等
(5-1)甲5の記載事項
本件の出願前に頒布された刊行物である甲5には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、単体の電子式キャッシュレジスタ、若しくは複数台の商品販売登録用端末を伝送路を介して上位コンピュータに接続し、この上位コンピュータにより各商品販売登録用端末での商品登録をまとめて管理するようにしたPOS(販売時点情報管理)システム等の商品販売登録データ処理装置に係わり、特に一旦成立した取引の内容訂正を可能ならしめた商品販売登録データ処理装置に関する。」


「【0010】そこで本発明は、一旦成立した取引の内容訂正を客から求められた場合に簡単なキー操作によって短時間で修正することができ、キャッシャの負担を軽減できるとともに、修正後の取引内容でレシートを再発行することができ、客へのサービス性を向上できる商品販売登録データ処理装置を提供しようとするものである。
【0011】また本発明は、上記目的に加えて他の商品販売登録用端末から発行されたレシートの取引内容も容易に修正することができ、作業効率をより向上できる商品販売登録データ処理装置を提供しようとするものである。」


「【0096】そこで、キャッシャは締めキーK8を操作して訂正終了を宣言する。そうすると、取引バッファ32a内の商品販売登録データ及び商品値引登録データに基づいて取引計データが訂正された後、図14に示すように訂正後の取引内容を示す画面が表示されるとともに、図11(b)に示すレシートR2が再発行される。なお、この再発行レシートR2には、「(再発行)」なる文字が印刷されるとともに、今回の訂正によって発生したデータにマーク“*”が印刷されて、他のデータと区別されている。」

エ 以下の図面が示されている。

2 申立理由1について
2-1 甲1に記載された発明を主の発明とする場合
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
ア 後者の「フロントオフィスディスプレイ」は、前者の「表示部」に相当し、POS(Point of sale)は、販売時点情報管理を意味するものであって、売上データの処理をすることは明らかであるから、後者の「フロントオフィスディスプレイを備えたPosBill POSシステム」は、前者の「表示部を備えた売上データ処理装置」に相当する。

イ 後者の「商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力することで、注文されたすべての商品の商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示する」ことは、前者の「売上登録する」ことに相当する。
後者の「注文されたすべての商品」は、「付加価値税が加算される」ものであるところ、摘示ウの「フロントオフィスディスプレイ」内に示された各商品の「付加価値税」が、飲み物や食べ物といった日常品に課税されるものであり、消費税であることは一般常識的に明らかであるから、後者の「注文されたすべての商品」は、前者の「消費税課税対象商品」に相当し、後者の「商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力する」ことは、前者の「消費税課税対象商品の指定を受け付ける」ことに相当する。
後者の「商品毎に商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリスト」は、一取引における商品リストといえるから、後者の「注文されたすべての商品毎に商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリスト」は、前者の「一取引における商品リスト」に相当し、後者の「付加価値税が加算される前の正味価格が示され」ることと、前者の「消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように」することとは「価格と対応付けて追加されるように」の点で共通する。
また、後者において「リストをフロントオフィスディスプレイに表示」するために、表示制御手段を備えることは明らかである。
そうすると、後者の「商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力することで、注文されたすべての商品毎に商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示し」との構成と、前者の「売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段」を備える構成とは、「売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段」を備える構成の点で共通する。
ウ 後者の「選択された商品にのみテイクアウト注文の付加価値税率が適用される」「テイクアウト注文キー」は、前者の「前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付手段」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲1発明1とは、
「表示部を備えた売上データ処理装置であって、
売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段と、
前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付手段と、
を備える売上データ処理装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
本件発明1は、「消費税課税対象商品の価格」が、「消費税率に所定の値が適用された税込価格」であり、「表示制御手段」が、「前記取引形態受付手段により前記所定の取引形態とする旨の指定が受け付けられた場合であって、かつ、前記商品リストに前記所定の取引形態に対応させて消費税率の値を変更すべき消費税課税対象商品が含まれている場合に、該消費税課税対象商品に対応付けて前記商品リストに表示されている税込価格を、消費税率に前記所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える」構成であるのに対し、
甲1発明1は、「消費税課税対象商品の価格」が、「付加価値税が加算される前の正味価格」であり、「表示制御手段」が、かかる「置き換える」構成が特定されていない点。

(1-2)判断
本件発明1と甲1発明1との間には、上記相違点が存在するから、本件発明1は甲1発明1であるとはいえない。

(2)本件発明4について
(2-1)対比
本件発明4と甲1発明2とを対比すると上記(1)(1-1)の対比に加えて、以下のことがいえる。
後者の「PosBill POSシステムのコンピュータ」は、前者の「売上データ処理装置のコンピュータ」に相当する。
後者の「商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力することで、注文されたすべての商品毎に商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示するよう機能させ」るとの構成と、前者の「売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段」「として機能させる」との構成とは、「売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段」「として機能させる」との構成で共通する。
後者の「テイクアウト注文キーにより選択された商品にのみテイクアウト注文の付加価値税率が適用されるように機能させる」との構成は、前者の「前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付手段、として機能させる」との構成に相当する。
後者の「プログラム」は、前者の「プログラム」に相当する。

そうすると、本件発明4と甲1発明2とは、
「表示部を備えた売上データ処理装置のコンピュータを、
売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段、
前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付手段、
として機能させるプログラム。」
の点で一致し、上記(1)(1-1)で述べた相違点で相違する。

(2-2)判断
本件発明4と甲1発明2との間には、上記相違点が存在するから、本件発明1は甲1発明2であるとはいえない。

(3)本件発明5について
(3-1)対比
本件発明5と甲1発明3とを対比すると上記(1)(1-1)の対比に加えて、以下のことがいえる。
後者の「PosBill POSシステムが実行する表示方法」は、前者の「売上データ処理装置が実行する表示方法」に相当する。
後者の「商品番号(PLU)をテンキーパッドで直接入力することで、注文されたすべての商品毎に商品名、及び付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示するステップ」と、前者の「売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御ステップ」とは、「売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御ステップ」の点で共通する。
後者の「テイクアウト注文キーにより選択された商品にのみテイクアウト注文の付加価値税率が適用されるステップ」は、前者の「前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付ステップ」に相当する。
そうすると、本件発明5と甲1発明3とは、
「表示部を備えた売上データ処理装置が実行する表示方法であって、
売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御ステップと、
前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付ステップと、
を有する表示方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点’>
「表示制御ステップ」に関し、
本件発明5は、「前記取引形態受付ステップで前記所定の取引形態とする旨の指定が受け付けられた場合であって、かつ、前記商品リストに前記所定の取引形態に対応させて消費税率の値を変更すべき消費税課税対象商品が含まれている場合に、該消費税課税対象商品に対応付けて前記商品リストに表示されている税込価格を、消費税率に前記所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える」のに対し、
甲1発明3は、かかる「置き換える」構成が特定されていない点。

(3-2)判断
本件発明5と甲1発明3との間には、上記相違点’が存在するから、本件発明5は甲1発明3であるとはいえない。

2-2 甲2に記載された発明を主の発明とする場合
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
ア 後者の「表示部」は、前者の「表示部」に相当し、後者の「PLUシステム」は、摘示アの「販売する各アイテム(品目)はPLUです。」との記載から、前者の「売上データ処理装置」に相当する。

イ 後者の「税額」は、飲み物や食べ物といった日常品に課税されるものであり、消費税の税額であることは一般常識的に明らかであるから、後者の「商品」は、前者の「消費税課税対象商品」といえる。後者の「ハードPLUキーを押すか、商品に添付されているバーコードをスキャンする」構成は、前者の「売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける」構成に相当する。
後者の「VAT方式を使用する場合に」おける「本体価格に税額を加えた税込価格」は、前者の「消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格」に相当する。
後者の「リスト」は、「表示部には販売を受け付ける毎に」「表示され」るものであるから、前者の「一取引における商品リスト」に相当する。
そうすると、後者の「ハードPLUキーを押すか、商品に添付されているバーコードをスキャンすると、商品が販売され、表示部には販売を受け付ける毎に、商品名と、VAT方式を使用する場合には本体価格に税額を加えた税込価格が追加されるように表示され」との構成は、前者の「売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段」に相当する。

ウ 後者の「取引用の販売方法として割り当てられたイートイン、テイクアウトおよびデリバリーの各キー」は「グループフラグ[GF-2.G,F,E]により、イートイン、テイクアウトまたはデリバリーなどの販売方法に従って、税制措置を変更でき」るものであるから、前者の「前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付手段」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲2発明1とは、
「表示部を備えた売上データ処理装置であって、
売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段と、
前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付手段と、
を備える売上データ処理装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A>
本件発明1は、「前記表示制御手段は、前記取引形態受付手段により前記所定の取引形態とする旨の指定が受け付けられた場合であって、かつ、前記商品リストに前記所定の取引形態に対応させて消費税率の値を変更すべき消費税課税対象商品が含まれている場合に、該消費税課税対象商品に対応付けて前記商品リストに表示されている税込価格を、消費税率に前記所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える」構成であるのに対し、
甲2発明1は、「飲み物アイテムおよび食べ物アイテムの両方が16%の税率に基づいて税額を算出したイートインのレシートと、飲み物アイテムが16%、食べ物アイテムが7%の税率に基づいて税額を算出したテイクアウトおよびデリバリーのレシートを印刷するものであり、
レシートには、税率の特定にかかる税区分であるイートインとテイクアウトおよびデリバリーがあり、イートインの場合には、それぞれの商品名、それぞれの商品の税込価格、税込の合計価格、本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示され、テイクアウトとデリバリーの場合には、それぞれの商品名、それぞれ商品の税込価格、税込の合計金額、飲み物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額及び食べ物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示されており、同じ取引で価格の異なるPLUが存在しないようにするために、イートイン/テイクアウト/デリバリーが価格レベルシフトにリンクしている場合、取引中のモード変更は禁止されており、すべてのモードで同じ価格レベルが使用されている場合、取引中にイートイン、テイクアウト、デリバリーを変更でき、最後に選択したモードがレシートヘッダーとして印刷される」構成である点。

(1-2)判断
本件発明1と甲2発明1との間には、上記相違点Aが存在するから、本件発明1は甲2発明1であるとはいえない。

(2)本件発明4について
(2-1)対比
本件発明4と甲2発明2とを対比すると上記(1)(1-1)の対比に加えて、以下のことがいえる。
後者の「PLUシステムのコンピュータ」は、前者の「売上データ処理装置のコンピュータ」に相当する。
後者の「商品名と、VAT方式を使用する場合には本体価格に税額を加えた税込価格が追加されるようにリストが表示するように機能させ」るとの構成は、前者の「売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段」「として機能させる」との構成に相当する。
後者の「取引用の販売方法として割り当てられたイートイン、テイクアウトおよびデリバリーの各キーとして機能させ」との構成は、前者の「前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付手段、として機能させる」との構成に相当する。
後者の「プログラム」は、前者の「プログラム」に相当する。
そうすると、本件発明4と甲2発明2とは、
「表示部を備えた売上データ処理装置のコンピュータを、
売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御手段、
前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付手段、
として機能させる、プログラム。」
の点で一致し、上記(1)(1-1)で述べた相違点Aで相違する。

(2-2)判断
本件発明4と甲2発明2との間には、上記相違点Aが存在するから、本件発明4は甲2発明2であるとはいえない。

(3)本件発明5について
(3-1)対比
本件発明5と甲2発明3とを対比すると上記(1)(1-1)の対比に加えて、以下のことがいえる。
後者の「PLUシステムが実行する表示方法」は、前者の「売上データ処理装置が実行する表示方法」に相当する。
後者の「ハードPLUキーを押すか、商品に添付されているバーコードをスキャンすると、商品が販売され、表示部には販売を受け付ける毎に、商品名と、VAT方式を使用する場合には本体価格に税額を加えた税込価格が追加されるようにリストを表示するステップ」は、前者の「売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品の価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御ステップ」に相当する。
後者の「取引用の販売方法として割り当てられたイートイン、テイクアウトおよびデリバリーの各キーを備え、グループフラグ[GF-2.G,F,E]により、イートイン、テイクアウトまたはデリバリーなどの販売方法に従って、たとえば、税率7%は食べ物アイテムの持ち出しのみに使用され、それ以外は常に16%に税制措置を変更できるステップ」は、前者の「前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付ステップ」に相当する。
そうすると、本件発明5と甲2発明3とは、
「表示部を備えた売上データ処理装置が実行する表示方法であって、
売上登録する消費税課税対象商品の指定を受け付ける毎に該指定を受け付けた消費税課税対象商品の価格と対応付けて追加されるように、一取引における商品リストを前記表示部に表示させる表示制御ステップと、
前記一取引での取引形態を所定の取引形態とする旨の指定を受け付ける取引形態受付ステップと、
を有する表示方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A’>
「表示制御ステップ」に関し、
本件発明5は、「前記取引形態受付ステップで前記所定の取引形態とする旨の指定が受け付けられた場合であって、かつ、前記商品リストに前記所定の取引形態に対応させて消費税率の値を変更すべき消費税課税対象商品が含まれている場合に、該消費税課税対象商品に対応付けて前記商品リストに表示されている税込価格を、消費税率に前記所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える」のに対し、
甲2発明3は、「飲み物アイテムおよび食べ物アイテムの両方が16%の税率に基づいて税額を算出したイートインのレシートと、飲み物アイテムが16%、食べ物アイテムが7%の税率に基づいて税額を算出したテイクアウトおよびデリバリーのレシートを印刷するものであり、
レシートには、税率の特定にかかる税区分であるイートインとテイクアウトおよびデリバリーのいずれかと、イートインの場合には、それぞれの商品名、それぞれの商品の税込価格、税込の合計価格、本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示され、テイクアウトとデリバリーの場合には、それぞれの商品名、それぞれ商品の税込価格、税込の合計金額、飲み物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額及び食べ物に対する本体価格の合計金額と税額の合計金額が表示されており、同じ取引で価格の異なるPLUが存在しないようにするために、イートイン/テイクアウト/デリバリーが価格レベルシフトにリンクしている場合、取引中のモード変更は禁止されており、すべてのモードで同じ価格レベルが使用されている場合、取引中にイートイン、テイクアウト、デリバリーを変更でき、最後に選択したモードがレシートヘッダーとして印刷される」構成である点。

(3-2)判断
本件発明5と甲2発明3との間には、上記相違点A’が存在するから、本件発明5は甲2発明3であるとはいえない。

3 申立理由2について
3-1 甲1に記載された発明を主の発明とする場合
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると上記(1)(1-1)で述べた一致点で一致し、相違点で相違する。

(1-2)判断
上記相違点について検討する。
甲1発明1は、「付加価値税が加算される前の正味価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示」するものであって、甲1全体を通してみても、付加価値税対象商品が付加価値税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加されるように、フロントオフィスディスプレイに表示することは記載も示唆もされていないから、上記相違点に係る本件発明1の「消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格と対応付けて追加される」構成、及び「所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える」構成には至らない。
仮に、税込価格をリストに表示することが周知・慣用技術であるとして、甲1発明1の「テイクアウト注文キーにより選択された商品にのみテイクアウト注文の付加価値税率が適用される」との構成から、テイクアウト注文の付加価値税を含む税込価格が示されたリストをフロントオフィスディスプレイに表示することは可能であっても、前記リストに所定の取引形態に対応させて付加価値税率の値を変更すべき商品が含まれている場合に、該商品に対応付けて前記リストに表示されている所定の前記取引形態の付加価値税を含む税込価格を、付加価値税率に前記所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える構成、すなわち、上記相違点に係る本件発明1の「前記商品リストに前記所定の取引形態に対応させて消費税率の値を変更すべき消費税課税対象商品が含まれている場合に、該消費税課税対象商品に対応付けて前記商品リストに表示されている税込価格を、消費税率に前記所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える」との構成に至るものではない。
また、甲3?甲5は、商品購入の取消、メニューの変更等に合わせて、訂正箇所を携帯端末やレシートに表示するものであって、上記相違点に係る本件発明1の構成は開示されていない。
したがって、上記相違点に係る本件発明1の構成を、甲1発明1から容易想到ということはできない。
そして、本件発明1は、本件明細書の段落【0065】に記載されているように、「受け付けられた取引形態に応じて税率が変わる商品が商品リストに含まれているときに、取引形態の変更により、どのような税率が適用されるようになるのかを分かり易くすることができる。」との格別な効果を奏するものである。

(1-3)小括
以上のとおり、本件発明1は甲1発明1と上記相違点において相違するものであるところ、上記相違点に係る本件発明1の構成は上記(1-2)のとおり容易想到ということはできないものであるから、本件発明1は、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明1及び甲3?甲5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本件発明4について
本件発明4と甲1発明2とを対比すると上記2 2-1(3)(3-1)で述べた一致点で一致し、相違点で相違する。
そして、上記(1)(1-2)で判断したとおり、少なくとも上記相違点に係る本件発明4の構成を、甲1発明2から容易想到ということはできないものであるから、本件発明4は、甲1発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明5について
本件発明5と甲1発明3とを対比すると上記2 2-1(4)(4-1)で述べた一致点で一致し、相違点’で相違する。
そして、上記(1)(1-2)で判断したのと同様に、少なくとも上記相違点’に係る本件発明5の構成を、甲1発明3から容易想到ということはできないものであるから、本件発明5は、甲1発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-2 甲2に記載された発明を主の発明とする場合
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲2発明1とを対比すると上記3 3-2(1)(1-1)で述べた一致点で一致し、相違点Aで相違する。

(1-2)判断
相違点Aについて検討する。
相違点Aにかかる本件発明1で特定されている「前記表示制御手段は、前記取引形態受付手段により前記所定の取引形態とする旨の指定が受け付けられた場合であって、かつ、前記商品リストに前記所定の取引形態に対応させて消費税率の値を変更すべき消費税課税対象商品が含まれている場合に、該消費税課税対象商品に対応付けて前記商品リストに表示されている税込価格を、消費税率に前記所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える」との事項は、「商品リスト」に「消費税課税対象商品が消費税率に所定の値が適用された税込価格」が既に表示されている状態において、「取引形態受付手段により前記所定の取引形態とする旨の指定が受け付けられた場合」に「所定の取引形態に対応する値が適用された税込価格に置き換える」ことを意味するものであって、置き換えた後の商品リストには、異なった取引形態(イートイン、テイクアウトおよびデリバリー)に指定された商品が同一の商品リストに混在して表示することを可能としているものといえる。
これに対し、甲2発明1は、本件発明1の「取引形態受付手段」に相当する「イートイン、テイクアウトおよびデリバリーの各キー」を備えるものであるが、「飲み物アイテムおよび食べ物アイテムの両方が16%の税率に基づいて税額を算出したイートインのレシートと、飲み物アイテムが16%、食べ物アイテムが7%の税率に基づいて税額を算出したテイクアウトおよびデリバリーのレシートを印刷するもの」であって、レシートヘッダーにイートイン、テイクアウトおよびデリバリーと記載されている各レシートに、同一取引形態の商品が印刷されるものであるから、一つのレシートに異なる取引形態の商品が混在するものではない。また、甲2発明1の「同じ取引で価格の異なるPLUが存在しないようにするために、イートイン/テイクアウト/デリバリーが価格レベルシフトにリンクしている場合、取引中のモード変更は禁止されており、すべてのモードで同じ価格レベルが使用されている場合、取引中にイートイン、テイクアウト、デリバリーを変更でき最後に選択したモードがレシートヘッダーとして印刷される」との事項から、一つのレシートに異なる取引形態の商品が混在することを禁止するものといえるものであるから、甲2発明1において、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることには、阻害要因が存在するものといえる。
また、甲3?甲5は、商品購入の取消、メニューの変更等に合わせて、訂正箇所を携帯端末やレシートに表示するものであって、相違点Aに係る本件発明1の構成は開示されていない。
したがって、甲2発明1において、上記相違点Aに係る本件発明1の構成とすることを容易想到ということはできない。
そして、本件発明1は、本件明細書の段落【0065】に記載されているように、「受け付けられた取引形態に応じて税率が変わる商品が商品リストに含まれているときに、取引形態の変更により、どのような税率が適用されるようになるのかを分かり易くすることができる。」との格別な効果を奏するものである。

(1-3)小括
以上のとおり、本件発明1は甲2発明1と上記相違点Aにおいて相違するものであるところ、上記相違点Aに係る本件発明1の構成は上記(1-2)のとおり容易想到ということはできないものであるから、本件発明1は、甲2発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、甲2発明1及び甲3?甲5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本件発明4について
本件発明4と甲2発明2とを対比すると上記2 2-2(3)で述べた一致点で一致し、相違点Aで相違する。
そして、上記(1)(1-2)で判断したとおり、少なくとも上記相違点Aに係る本件発明4の構成を、甲2発明2から容易想到ということはできないものであるから、本件発明4は、甲2発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明5について
本件発明5と甲2発明3とを対比すると上記2 2-2(4)で述べた一致点で一致し、相違点A’で相違する。
そして、上記(1)(1-2)判断したのと同様に、上記相違点A’に係る本件発明5の構成を、甲2発明3から容易想到ということはできないものであるから、本件発明5は、甲2発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-03-25 
出願番号 特願2016-179572(P2016-179572)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (G07G)
P 1 651・ 121- Y (G07G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 島田 信一
出口 昌哉
登録日 2020-05-07 
登録番号 特許第6699474号(P6699474)
権利者 カシオ計算機株式会社
発明の名称 売上データ処理装置、プログラム、及び、表示方法  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  

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