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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01Q
管理番号 1372748
異議申立番号 異議2020-700953  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-03 
確定日 2021-03-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第6705116号発明「RFタグ用アンテナ及びその製造方法、並びにRFタグ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6705116号の請求項1、3ないし5、7ないし17に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6705116号の請求項1乃至17に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)2月8日(優先権主張 平成27年2月10日、平成27年6月23日)を国際出願日とする特願2016-574787号の一部を平成29年11月22日に新たな特許出願としたものであって、令和2年5月18日にその特許権の設定登録がされ、令和2年6月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年12月3日に特許異議申立人 石井 悠太は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6705116号の請求項1乃至17の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1乃至17に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項1乃至17の特許に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」乃至「本件発明17」といい、総称して「本件発明」ともいう。)。

「【請求項1】
第1主面、及び前記第1主面の反対側の第2主面を有する第1絶縁基材と、
前記第1主面に設けられた第1導波素子と、
前記第2主面に設けられた第2導波素子と、
前記第2導波素子に一端が電気的に接続された給電部と、
前記第1導波素子に一端が電気的に接続され、前記第2導波素子に他端が電気的に接続された短絡部と、を備え、
前記第1絶縁基材、前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部及び前記短絡部により、読取装置から送信された電波を受信する板状逆Fアンテナが構成され、
前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成される、RFタグ用アンテナ。
【請求項2】
前記給電部が前記第1絶縁基材の側面に設けられ、前記短絡部が前記第1絶縁基材の前記側面に設けられた、請求項1に記載のRFタグ用アンテナ。
【請求項3】
前記第1絶縁基材が誘電体である、請求項1または2に記載のRFタグ用アンテナ。
【請求項4】
前記第1絶縁基材は、長辺と短辺と高さとを有する直方体形状の誘電体からなり、
前記給電部と前記第1導波素子との間において、前記第1絶縁基材の短辺側の第1主面に、ICチップを載置するICチップ載置部が設けられた、請求項1から3のいずれか1項に記載のRFタグ用アンテナ。
【請求項5】
前記第1絶縁基材の前記第1主面に設けられた前記第1導波素子は、前記第1絶縁基材の前記第1主面の形状に沿った長方形状に形成され、
前記第1絶縁基材の前記第2主面に設けられた前記第2導波素子は、前記第1絶縁基材の前記第2主面の形状に沿った長方形状に形成され、
前記第1導波素子の短辺側の端部に凹部が切欠され、前記凹部に前記ICチップ載置部が形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のRFタグ用アンテナ。
【請求項6】
前記給電部および前記短絡部は、それぞれ矩形状で形成され、
前記第1絶縁基材の短辺側の側面に平行に設けられる、請求項1から5のいずれか1項に記載のRFタグ用アンテナ。
【請求項7】
前記第1導波素子及び第2導波素子は同一形状であり、前記第1導波素子及び第2導波素子の側辺の長さの合計はλ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8(λ:前記電波の波長)のいずれかに等しい、請求項1から6のいずれか1項に記載のRFタグ用アンテナ。
【請求項8】
前記誘電体の誘電率が1以上5以下である、請求項3または4に記載のRFタグ用アンテナ。
【請求項9】
前記誘電体が発泡スチロールである、請求項3、4、および8のいずれか1項に記載のRFタグ用アンテナ。
【請求項10】
前記第1絶縁基材は、RFタグを取り付ける位置における被取付物の表面形状に応じた形状を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載のRFタグ用アンテナ。
【請求項11】
前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部及び前記短絡部は、可撓性を有する絶縁性のシート上に形成されている、請求項1から10のいずれか1項に記載のRFタグ用アンテナ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のRFタグ用アンテナと、
前記電波に基づいて動作するICチップと、を備え、
前記共振回路は、前記インダクタパターンのインダクタンスLa、前記コンデンサの静電容量Ca及び前記ICチップの内部の容量Cbを考慮して設定された共振周波数を有する、RFタグ。
【請求項13】
前記共振回路の共振周波数fは、式(1)により与えられる、請求項12に記載のRFタグ。

(式中、Laはインダクタパターンのインダクタンス、Caは第1導波素子、第2導波素子及び第1絶縁基材により構成されるコンデンサの容量、CbはICチップの内部の容量をあらわす。)
【請求項14】
請求項12または13に記載のRFタグと、
導体と、を含み、
前記第1導波素子及び/又は前記第2導波素子が前記導体に電気的に接続し、前記導体が前記第1導波素子及び/又は第2導波素子とともに前記電波を受信する、RFタグ付き導体。
【請求項15】
前記RFタグは、前記給電部を前記導体の端部側に設置することを特徴とする、請求項14に記載のRFタグ付き導体。
【請求項16】
前記第1導波素子及び/又は第2導波素子が第3絶縁基材を介して前記導体に接触し、前記導体が前記第1導波素子及び/又は第2導波素子とともに前記電波を受信する、請求項14または15に記載のRFタグ付き導体。
【請求項17】
請求項12または13に記載のRFタグと、
前記RFタグと通信可能な読取装置と、を含む、RFタグシステム。」


第3 申立ての理由の概要
特許異議申立人 石井 悠太(以下、「申立人」という。)は、以下の甲第1号証乃至甲第12号証を証拠として提出し、申立ての理由として、以下の申立理由を主張している。
甲第1号証:特開2012-253700号公報
甲第2号証:特開2005-228908号公報
甲第3号証:国際公開第2014/195678号
甲第4号証:門田 和博、「アンテナとタグの間の通信を視覚化して把握する 回路・システム・3D電磁界シミュレータによるRFID設計」、Interface、CQ出版社、2004年12月号、2004.12.01、103?104ページ
甲第5号証:S.C.Q.Chen,V.Thomas, ”Optimization of inductive RFID technology”,IEEE,2001
甲第6号証:特許第3781109号公報
甲第7号証:特開2007-142688号公報
甲第8号証:特開2009-231870号公報
甲第9号証:特開2006-93990号公報
甲第10号証:特開2006-157905号公報
甲第11号証:特開2014-153808号公報
甲第12号証:(財)日本規格協会、「JIS工業用語大辞典 第3版」、1991年11月20日

以下、「甲第1号証」乃至「甲第12号証」を、それぞれ、「甲1」乃至「甲12」という。

申立理由
本件特許の請求項1、3、8、10、11に係る発明は、甲1に記載された発明、及び、甲2に記載の技術、甲3に記載の技術、甲4及び甲7に記載の技術、甲5に記載の技術、甲6に記載の技術、又は、甲2?甲7に記載されている周知技術、に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項4、5に係る発明は、甲1?7、及び甲8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項7に係る発明は、甲1?7、及び甲9に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項9に係る発明は、甲1?7、及び甲10に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項12?17に係る発明は、甲1?7、及び甲11に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本件特許の請求項1、3?5、7?17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。


第4 甲1?甲7の記載
1 甲1の記載事項(下線は、当審で付与。)及び甲1発明
(1)「【請求項1】
第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する誘電体ブロックと、前記誘電体ブロックの第1主面に設けられた放射導体と、前記誘電体ブロックの第2主面に設けられたグランド導体と、高周波信号を処理する無線IC素子と前記放射導体及び前記グランド導体とを接続する給電導体と、前記放射導体と前記グランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイスであって、
少なくとも前記放射導体、前記グランド導体、前記給電導体及び前記短絡導体は、それぞれ平板状をなす金属導体として構成されており、
前記金属導体は、放射導体部分が前記誘電体ブロックの第1主面に配置され、前記グランド導体部分が前記誘電体ブロックの第2主面に配置され、前記給電端子部分が主として前記誘電体ブロックの側面に配置され、前記短絡導体部分が主として前記誘電体ブロックの側面に配置されていること、
を特徴とする無線通信デバイス。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信デバイス、特にRFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線通信デバイス、その製造方法及び無線通信デバイス付き金属物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の情報管理システムとして、リーダライタと、物品に付されたRFIDタグ(無線通信デバイスとも称する)とを非接触方式で通信し、所定の情報を伝達するRFIDシステムが実用化されている。このRFIDシステムとしては、13MHz帯の高周波を用いたHF帯、900MHz帯の高周波を用いたUHF帯が一般的に使用されている。通常、HF帯に使用される無線ICタグではコイル状のアンテナが用いられており、UHF帯で使用される無線ICタグではダイポール型アンテナ、ループ型アンテナや逆F型アンテナなど各種のアンテナが用いられている。」

(3)「【0015】
(無線通信デバイスの概略説明)
まず、本発明に係る無線通信デバイスについてその概略を説明する。この無線通信デバイスは、誘電体ブロックに取り付けた逆Fアンテナを備えている。逆Fアンテナは、モノポール型アンテナである放射導体を90°に折り曲げ、さらにその給電点の近傍に短絡導体を設けることによってインピーダンスの整合を図ったアンテナであり、モノポール型アンテナやループ型アンテナに比べて小型化、薄型化が可能である。
【0016】
前記逆F型アンテナは、主に放射素子として機能する放射導体と、該放射導体に対向配置されたグランド導体と、高周波信号を処理する無線通信素子と放射導体及びグランド導体とを接続する給電導体と、放射導体とグランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される。放射導体は誘電体ブロックの第1主面に設けられ、グランド導体は誘電体ブロックの第2主面に設けられ、給電導体及び短絡導体が主として誘電体ブロックの側面に設けられている。
【0017】
誘電体ブロックとしては、セラミックや樹脂あるいは紙などを素材とすることができ、特に、ガスボンベのような湾曲面に貼着される無線通信デバイスの場合、可撓性を有することが好ましい。可撓性を有する誘電体ブロックとしては、例えば、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂のような弾性素材(エラストマ)を用いることができる。なお、平面に貼着される無線通信デバイスの場合、必ずしも可撓性を有する必要はなく、セラミックやエポキシ樹脂などの硬質素材を用いることができる。また、誘電体ブロックは第1主面及び第2主面を有する直方体形状であることが好ましいが、これに限定するものではない。平面視で楕円形状や円形状であってもよい。誘電体ブロックは全体が均一な材料で形成されている必要はなく、様々な誘電率を有する誘電体を組み合わせてもよく、内部に空洞を有していてもよい。
【0018】
前記逆F型アンテナにおいて、少なくとも放射導体、グランド導体、給電導体及び短絡導体は、平板状をなす金属導体として構成され、該金属導体は誘電体ブロックに巻き付けられている。具体的には、放射導体部分が誘電体ブロックの第1主面に配置され、グランド導体部分が誘電体ブロックの第2主面に配置され、給電端子部分が主として誘電体ブロックの側面に配置され、短絡導体部分が主として誘電体ブロックの側面に配置される。
【0019】
平板状をなす金属導体は、誘電体ブロックに巻き付けることができるように折り曲げ加工が可能な金属薄板を使用することが好ましい。金属薄板は、硬質なものであってもよいが、特に、ガスボンベのような湾曲面に貼着される無線通信デバイスの場合、可撓性を有することが好ましい。また、金属導体として、金属フープ材のような金属薄板を単独で用いてもよいが、PETなどの基材フィルムに金属箔(銅箔やアルミ箔)をラミネートしたもの、導電性薄膜を成膜したものを用いてもよい。金属材料としては銅や銀を主成分とする比抵抗の小さな材料を好適に用いることができる。」

(4)「【0022】
無線通信デバイスにあっては、無線IC素子が搭載されている。この無線IC素子は、信号処理回路やメモリ回路などを有しており、基本的には半導体集積回路チップとして構成されていることが好ましい。無線IC素子としては、ベアチップであってもよく、パッケージICとして構成されていてもよい。無線IC素子は、給電導体に接続され、給電導体に直接的に搭載(即ち、金属導体に搭載)されていてもよく、あるいは、高周波線路を介して給電導体に接続されていてもよい。即ち、無線IC素子は誘電体ブロックに取り付けられていてもよく、あるいは、他の基板に設けられていてもよい。また、無線IC素子は半導体集積回路チップを整合回路や共振回路を有する給電回路基板に搭載されたものであってもよい。」

(5)「【0025】
前記無線通信デバイスは、主としてUHF帯のRFIDシステムに用いられるが、サイズなどに応じてHF帯やそれ以下の周波数帯のRFIDシステムに用いることができ、あるいは、UHF帯よりも高周波側の帯域を利用したRFIDシステムに用いることも可能である。」

(6)「【0027】
(第1実施例、図1?図4参照)
第1実施例である無線通信デバイス1Aは、図1(A)に示すように、金属導体10と無線IC素子50とを備えている。金属導体10にて上段に水平に位置する放射導体11と下段に水平に位置するグランド導体12が構成され、さらに、放射導体11及びグランド導体12のそれぞれの側部が折り曲げられて互いに対向する給電導体13,14が構成され、放射導体11とグランド導体12との側部が折り曲げた状態で連結された短絡導体15が構成されている。
【0028】
無線IC素子50は、RF信号を処理するもので、給電導体13,14に接合されている。即ち、無線IC素子50の一対の入出力電極(図示せず)が給電導体13,14の対向する部分に接合されている。この接合は、半田バンプなどによる電気的な直接結合(DC接続)であるが、電磁界結合であってもよい。
【0029】
ここで、無線通信デバイス1Aの構成をその製造方法とともに説明する。まず、図2に示す誘電体ブロック30及び支持フィルム20の表面に設けた金属導体10を準備する。金属導体10は、前述のように、放射導体11、グランド導体12、給電導体13,14及び短絡導体15が展開状態で形成されている。給電導体13,14には無線IC素子50が既に接合されている。これらの各部材の材料は前述のものが使用されている。
【0030】
ここで、誘電体ブロック30の上面から側面及び下面にわたって金属導体10を保持した支持フィルム20を巻き付けるようにして接着する。このとき、放射導体11は誘電体ブロック30の上面に位置し、給電導体13,14及び短絡導体15は主として誘電体ブロック30の側面に位置し、グランド導体12は誘電体ブロック30の下面に位置する。接着剤は支持フィルム20の裏面に塗布されているが、誘電体ブロック30の表面に塗布されていてもよく、あるいは両面接着テープを使用してもよい。なお、金属導体10がその折曲げ形状を保持できる材料で形成されていれば、接着剤は必ずしも必要ではない。
【0031】
以上のごとく製造された無線通信デバイス1Aは図3に示す外観をなしている。無線IC素子50は金属導体10の外側に接合されている。本無線通信デバイス1Aにあっては、図1(B)の等価回路に示す逆F型アンテナとして機能する。ここで、給電導体13,14と短絡導体15と放射導体11の一部とグランド導体12の一部とでループ電流経路iが形成される。また、逆F型アンテナとしての有効長さはLである。
【0032】
前記ループ電流経路iは、無線IC素子50と放射導体12とのインピーダンスの整合に寄与する。そして、放射導体12の幅寸法や長さ、給電導体13,14及び短絡導体15の接続位置、給電導体13,14及び短絡導体15の幅寸法や長さ、放射導体11とグランド導体12との間隔などで、共振周波数や共振抵抗、動作帯域などのアンテナ特性が規定される。
【0033】
本無線通信デバイス1Aは、図3に示すように、金属物品61の表面に貼着されて使用される(無線通信デバイス付き金属物品とも称することができる)。この場合、グランド導体12が金属物品61に直接電気的に接続されることになり、放射特性としては金属物品61の法線方向に指向性が生じ、RFIDシステムのリーダライタとの通信が可能である。
【0034】
また、無線通信デバイス1Aは、図4に示すように、樹脂製の保護ケース60に収容した状態で金属物品61の表面に接着剤62を介して貼着されてもよい(無線通信デバイス付き金属物品とも称することができる)。この場合、グランド導体12は金属物品61に対して保護ケース60の底部60a及び接着剤62を介して容量結合することになる。この容量は使用周波数において電気的に直結する容量であればよい。
【0035】
この無線通信デバイス付き金属物品にあっては、保護ケース60を使用することで、無線通信デバイス1Aの耐環境性が良好なものとなる。なお、図3及び図4では、金属物品61を本無線通信デバイス1Aの補助的な放射素子として使用する形態を示しているが、本無線通信デバイス1Aは金属と結合させることなく、単独でもリーダライタと比較的短い距離ではあるが通信が可能である。」

(7)【図1】


(8)【図2】


上記記載において、
【0032】の「放射導体12」は、「放射導体11」の誤記と認める。
また、【0016】、【0018】に記載の「逆F型アンテナ」と【0015】の「逆Fアンテナ」は、同じアンテナを示すものであり、【0027】、【0032】の「無線IC素子50」と【0016】の「無線通信素子」は、同一の素子を示すものといえる。

以上の記載からみて、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「 リーダライタと、無線通信デバイスとを非接触方式で通信し、所定の情報を伝達するRFIDシステムにおける(【0002】)、無線通信デバイスが備えている逆Fアンテナ(【0015】)であって、
前記逆Fアンテナは、放射素子として機能する放射導体と、該放射導体に対向配置されたグランド導体と、高周波信号を処理する無線通信素子と放射導体及びグランド導体とを接続する給電導体と、放射導体とグランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成され、放射導体は誘電体ブロックの第1主面に設けられ、グランド導体は誘電体ブロックの第2主面に設けられ、給電導体及び短絡導体が誘電体ブロックの側面に設けられており(【0016】)、
前記逆Fアンテナにおいて、放射導体、グランド導体、給電導体及び短絡導体は、平板状をなす金属導体として構成され(【0018】)、
無線通信デバイス1Aは、金属導体10と無線通信素子とを備え、金属導体10にて上段に水平に位置する放射導体11と下段に水平に位置するグランド導体12が構成され、放射導体11及びグランド導体12のそれぞれの側部が折り曲げられて互いに対向する給電導体13,14が構成され、放射導体11とグランド導体12との側部が折り曲げた状態で連結された短絡導体15が構成され(【0027】)、無線通信素子は、給電導体13,14に接合され(【0028】)、放射導体11は誘電体ブロック30の上面に位置し、給電導体13,14及び短絡導体15は誘電体ブロック30の側面に位置し、グランド導体12は誘電体ブロック30の下面に位置するものであり(【0030】)、
ここで、給電導体13,14と短絡導体15と放射導体11の一部とグランド導体12の一部とでループ電流経路iが形成され(【0031】)、
前記ループ電流経路iは、無線通信素子と放射導体11とのインピーダンスの整合に寄与するものであり(【0032】)、
放射導体11の幅寸法や長さ、給電導体13,14及び短絡導体15の接続位置、給電導体13,14及び短絡導体15の幅寸法や長さ、放射導体11とグランド導体12との間隔などで、共振周波数や共振抵抗、動作帯域などのアンテナ特性が規定される(【0032】)、
UHF帯のRFIDシステムに用いられる(【0025】)無線通信デバイスが備えている逆Fアンテナ。」

2 甲2の記載事項(下線は、当審で付与。)
(1)「【0047】
図1に示すように、本実施例のRFIDシステム1は、UHF帯又はSHF帯等の周波数帯を用いてデータの交信を行うタグ2とリーダ/ライタ(又はリーダ)6とからなり、タグ2は、共振回路を構成するアンテナ3及びコンデンサ4(ICチップ5に容量が内蔵されている場合は必ずしも必要ではない。)と情報を記憶するICチップ5とを備え、リーダ/ライタ(又はリーダ)6は、タグ2のアンテナ3と交信するリーダ/ライタ用アンテナ7と、送受信信号を変換するための通信回路8aや送受信信号をデコードするための演算処理回路8b等の制御部8とを備え、タグ2は内蔵する電源又はリーダ/ライタ6から供給される電源を用いて駆動される。そして、タグ2及びリーダ/ライタ用アンテナ7の共振周波数をキャリア周波数に合わせることにより、データの交信が行われる。
【0048】
このRFIDシステム1のアンテナ(ここではタグ2用のアンテナ3)は、図2に示すように、本発明の特徴である複合材からなる磁芯材10の周囲に巻線9が巻回されて構成され、このアンテナが物品や筐体の表面、特に、金属材料を含む物品や筐体(金属物品12)上に設置される。」

(2)【図1】


(3)【図2】


以上より、甲2には、「UHF帯又はSHF帯等の周波数帯を用いてデータの交信を行うタグ2とリーダ/ライタ6との間でデータの交信を行うRFIDシステム1において、タグ2は共振回路を構成するアンテナ3及びコンデンサ4を有し、タグ2用のアンテナ3は、磁芯材10の周囲に巻線9が巻回されて構成されており、タグ2及びリーダ/ライタ用アンテナ7の共振周波数をキャリア周波数に合わせる」ことが記載されている。


3 甲3の記載事項(下線は、当審で付与。)
(1)(フロントページ)
「Abstract: A radio frequency detectable device comprising two electrically connected metallic cavity regions, the cavity regions in combination having an associated distributed inductance and distributed capacitance, wherein a first one of the cavity regions is defined between a pair of plates of relatively large plate separation and is loaded with a ferrite material, the first cavity region having a relatively large distributed inductance, and wherein a second one of the cavity regions is of relatively small plate separation and is filled with a dielectric, the second cavity region having a relatively large distributed capacitance. The second cavity region may be wound around the first cavity region to form a circuit with resonant frequency corresponding with an operating frequency of a reader.」
(当審訳:「要約:2つの電気的に接続された金属キャビティ領域を備えた無線周波数検出可能装置であって、キャビティ領域は、共同して分布インダクタンスおよび分布キャパシタンスを有し、キャビティ領域のうちの第1のキャビティ領域は、比較的大きなプレート間隔の一対のプレートの間に画定され、かつ、フェライト材料が充填され、第1のキャビティ領域は、比較的大きな分布インダクタンスを有し、キャビティ領域のうちの第2のキャビティ領域は、比較的小さいプレート間隔であり、誘電体で充填され、第2のキャビティ領域は、比較的大きい分布キャパシタンスを有する。第2のキャビティ領域は、第1のキャビティ領域の周りに廻され、リーダの動作周波数に対応する共振周波数を有する回路を形成する。」)

(2)(1ページ1行?2ページ9行)
「Radio Frequency Detectable Device

This invention relates to a device, the presence of which can be detected by the use of a radio frequency electromagnetic field.

Radio frequency (RF) security or tracking devices, sometimes referred to (and referred to herein) as tags, are used in a range of applications, for instance for security, stock control or for product tracking in a production environment. Some radio frequency tags include an antenna that is responsive to an excitation radio frequency electromagnetic field (provided by a reader/interrogator), and in response provide an output electromagnetic response signature that is detectable by the reader. In radio frequency identification, each tag may have a characteristic signature response that may be used to identify and track different stock items. In security applications, it may be sufficient for each tag to have a similar response, so that the movement of any stock item with a functioning tag past a reader may be detected. Tags on stock items that have been purchased may be rendered non-functional (for instance by mechanical damage) at the point of sale.

In some applications, passive tags are used that do not include a source of electrical power but instead derive power for the electromagnetic response from the input electromagnetic field. Such tags may include an electronic chip or circuit operable to remodulate a signal to be subsequently transmitted by the tag. In other applications, active tags that include an electrical power source may be used.

Radio frequency tags are generally configured to operate at a specific frequency, or frequency range. Some examples of frequencies that have been used in radio frequency tags are 8.2MHz and 13.56MHz for high frequency (HF) tags; and 868- 870MHz and 902-928MHz for ultra high frequency (UHF) tags.

Some radio frequency tags, for example certain UHF tags, include an antenna for converting the incident electromagnetic field into an electrical signal, for example for powering an associated electronic circuit, and for converting an electrical signal in the tag into the response signature. In HF tags, a resonant circuit is typically used, in which an inductive coil antenna is connected in parallel with a capacitor to form an inductor/capacitor (LC) resonator with a natural frequency that corresponds to the frequency of operation. This parallel arrangement of the inductance and capacitance results in the voltage across the inductor and capacitor being at a maximum at the resonant frequency, with the current at a minimum. The impedance of the parallel LC circuit is at a maximum at the resonant frequency. The value of the resonant frequency f_(r) for an LC resonator is given by the well known formula:

The inductance L of the coil and the capacitance C of the thin film capacitor are therefore selected accordingly to give a resonant frequency at the frequency of operation of the tag.」
(当審訳:「無線周波数検出装置

本発明は、無線周波数電磁界を用いて存在を検出することができる装置に関する。

無線周波数(RF)セキュリティまたは追跡装置は、しばしば、(かつ、本明細書では)タグと呼ばれる、生産環境におけるセキュリティ、在庫管理、または製品追跡などの、ある範囲の用途で使用される。ある無線周波数タグは、(リーダ/質問器によって提供される)励起無線周波数電磁界に応答し、それに応答して、リーダによって検出可能な出力電磁応答シグネチャを提供するアンテナを含む。無線周波数識別では、各タグは、異なる在庫商品を識別し追跡するために使用され得る特徴的なシグネチャ応答を有し得る。セキュリティ用途では、各タグが同様の応答を有するだけで十分であり、その結果、リーダを通過した機能タグを有する任意の在庫商品の移動を検出することができる。購入された在庫商品上のタグは、販売時点で(例えば機械的損傷によって)機能しないようにされ得る。

いくつかの用途では、電力源を含まないが、代わりに入力電磁界から電磁応答のための電力を導出するパッシブタグが使用される。そのようなタグは、タグによって続いて送信される信号を再変調するように動作可能な電子チップまたは回路を含み得る。他の用途では、電源を含むアクティブタグが使用されてもよい。

無線周波数タグは、一般に、特定の周波数または周波数範囲で動作するように構成される。無線周波数タグにおいて使用されてきた周波数のいくつかの例は、高周波数(HF)タグの場合、8.2MHzおよび13.56MHzであり;超高周波(UHF)タグについては、868?870MHzおよび902?928MHzである。

いくつかの無線周波数タグ、例えば、あるUHFタグは、入射電磁界を電気信号に変換するためのアンテナ、例えば、関連する電子回路に給電するためのアンテナ、及び、タグ内の電気信号を応答シグネチャに変換するアンテナを含む。HFタグでは、典型的には、誘導コイルアンテナがキャパシタと並列に接続され、動作周波数に対応する固有周波数を有するインダクタ/キャパシタ(LC)共振器を形成する共振回路が使用される。インダクタンスおよびキャパシタのこの並列配置は、インダクタおよびキャパシタにわたる電圧が共振周波数で最大となり、電流は最小となる。並列LC回路のインピーダンスは、共振周波数で最大である。LC共振器の共振周波数f_(r)の値は、周知の式によって与えられる:

したがって、コイルのインダクタンスLおよび薄膜キャパシタのキャパシタンスCは、タグの動作周波数で共振周波数を与えるように適宜選択される。」)

(3)(3頁18?27行)
「According to the invention, there is provided a radio frequency detectable device comprising two electrically connected metallic cavity regions, the cavity regions in combination having an associated distributed inductance and distributed capacitance, wherein a first one of the cavity regions is defined between a pair of plates of relatively large plate separation and is loaded with a ferrite material, the first cavity region having a relatively large distributed inductance, and wherein a second one of the cavity regions is of relatively small plate separation and is filled with a dielectric, the second cavity region having a relatively large distributed capacitance. The second cavity region may be wound around the first cavity region to form a circuit with resonant frequency corresponding with an operating frequency of a reader.」
(当審訳:「本発明によれば、2つの電気的に接続された金属キャビティ領域を備えた無線周波数検出可能装置が提供され、キャビティ領域は、共同して分布インダクタンスおよび分布キャパシタンスを有し、キャビティ領域のうちの第1のキャビティ領域は、比較的大きなプレート間隔の一対のプレートの間に画定され、かつ、フェライト材料が充填され、第1のキャビティ領域は、比較的大きな分布インダクタンスを有し、キャビティ領域のうちの第2のキャビティ領域は、比較的小さいプレート間隔であり、誘電体で充填され、第2のキャビティ領域は、比較的大きい分布キャパシタンスを有する。第2のキャビティ領域は、第1のキャビティ領域の周りに廻され、リーダの動作周波数に対応する共振周波数を有する回路を形成する。」)

(4)(4頁5?7行)
「The operating frequency of the tag is preferably within the HF or UHF band. The operating frequency may be, for example, approximately 8.2MHz or 13.56MHz. Alternatively, it may be approximately 868-870MHz or 902-928MHz.」
(当審訳:「タグの動作周波数はHF帯またはUHF帯内であることが好ましい。動作周波数は、例えば、約8.2MHzまたは13.56MHzとすることができる。あるいは、約868?870MHzまたは902?928MHzであってもよい。」)

(5)(5頁7?31行)
「Figure 1 shows a planar cavity 1 configured as a quarter wave resonator. It can be viewed as, effectively, a cross-sectional view of the planar cavity shown in Figure 2 and described below. In this arrangement, two adjacent substantially parallel conducting rectangular plates 5, 6 are joined at one end by a conducting wall 7, with a gap 10 therebetween. The electrical connection between the ends of the plates 5, 6 adjacent to the wall 7 means that the electrical potential at this end of the plates must be substantially equal, and therefore that no electrical field exists at this end of the plate. This results in a node 3 in the electric field 2 adjacent to the wall 7, and means that the fundamental electrical field mode is a quarter wavelength between the plates 5, 6.

The connected parallel plate structure 5, 6, 7 can be modelled as a parallel inductor and capacitor. At resonance, the electrical field between the adjacent parallel plates 5, 6 results in a capacitance, and the flow of current back and forth around the loop of the plates results in a magnetic field and therefore an inductance. The resonant frequency of the cavity 1 can thereby be determined using equation (1), based on the effective capacitance and inductance of the structure. It follows from this formula that increasing the effective capacitance or inductance will result in a reduced resonant frequency. For the basic structure of Figure 1 , the inductance and capacitance are both dependant on the geometry of the cavity, and an increase in one will tend to result in a decrease in the other. For instance, decreasing the gap between the plates results in an increase in capacitance, but decreases the effective inductance due to a decrease in the area of the inductive loop. The resonant frequency of known arrangements of this form are very high, of the order of the speed of light divided by their length (-several gigahertz for cm-sized structures), and such structures have previously been applied in microwave and millimetre wave radio filters and absorbers.」
(当審訳:「図1は、1/4波長共振器として構成された平面キャビティ1を示す。これは、図2に示され、以下に説明される平面キャビティの断面図として効果的に見ることができる。この構成において、2つの隣接する実質的に平行な導電性矩形プレート5、6は、その間に間隙10を置いて、導電性壁7によって一端が接合されている。壁7に隣接するプレート5、6の端部間の電気的接続は、プレートのこの端部の電位を実質的に等しくしなければならず、したがって、プレートのこの端部には電界が存在しないことを意味する。これは、壁7に隣接する電界2に節点3をもたらし、基本電界モードがプレート5、6、間の1/4波長であることを意味する。

接続された平行プレート構造5、6、7は、平行インダクタおよびキャパシタとしてモデル化することができる。共振時に、隣接する平行なプレート5、6の間の電界はキャパシタンスをもたらし、プレートのループの周りで前後に電流が流れる電流が、磁界、それゆえインダクタンスをもたらす。従って、キャビティ1の共振周波数は、構造の有効キャパシタンス及びインダクタンスに基づいて、式(1)を使用して決定することができる。この式から、有効キャパシタンスまたはインダクタンスを増加させることは、共振周波数を減少させることになる。図1の基本構造の場合、インダクタンスおよびキャパシタンスは両方ともキャビティの形状に依存し、一方の増加は他方を減少させる傾向がある。例えば、プレート間の間隙を減少させることは、キャパシタンスの増加をもたらすが、誘導ループの面積の減少のために実効インダクタンスを減少させる。この形態の既知の配置の共振周波数は、光の速度をその長さで割ったオーダー(cmサイズの構造体では数ギガヘルツ)で非常に高く、このような構造体は、マイクロ波およびミリメートル波の無線フィルタおよび吸収体に以前に適用されてきた。」)

(6)(7頁27行?30行)
「The resonant frequency of the device 30 was found to be 17MHz. Although this frequency does not correspond with currently used RF tag frequencies, it is suitable for a HF RF tag. The skilled person will appreciate that this approach enables an operating frequency corresponding with an existing HF or UHF tag frequency.」
(当審訳:「装置30の共振周波数は17MHzであった。この周波数は、現在使用されているRFタグ周波数と一致しないが、HF RFタグに適している。当業者は、このアプローチが既存のHFまたはUHFタグ周波数に対応する動作周波数を可能にすることを理解するであろう。」)

(7)(10頁29行?32行)
「Although example embodiments have been given with an emphasis on HF tags, it will be appreciated that the present invention may alternatively be applied to produce a UHF tag. Similarly, although embodiments have been compared to prior art security tags, it will be appreciated that in some embodiments, the tag may be an RFID tag.」
(当審訳:「例示的な実施形態はHFタグに重点を置いて示されているが、本発明は代替的にUHFタグを製造するために適用されてもよいことが理解されるであろう。同様に、実施形態は従来技術のセキュリテイタグと比較したが、いくつかの実施形態では、タグはRFIDタグであってもよいことが理解されるであろう。」)

(8)(12頁1行?13頁14行)
「CLAIMS:

1. A radio frequency detectable device comprising two electrically connected metallic cavity regions, the cavity regions in combination having an associated distributed inductance and distributed capacitance, wherein a first one of the cavity regions is defined between a pair of plates of relatively large plate separation and is loaded with a ferrite material, the first cavity region having a relatively large distributed inductance, and wherein a second one of the cavity regions is of relatively small plate separation and is filled with a dielectric, the second cavity region having a relatively large distributed capacitance.

2. The device according to claim 1 , wherein the second cavity region is wound around the first cavity region to form a circuit with resonant frequency corresponding with an operating frequency of a reader.

(中略)

8. The device of any preceding claim, wherein the operating frequency is within the HF or UHF band.

9. The device of claim 8, wherein the operating frequency is approximately 8.2MHz or 13.56MHz.

10. The device of claim 8, wherein the operating frequency is approximately 868-870MHz or 902-928MHz.

(後略)」
(当審訳:「請求の範囲:

1.2つの電気的に接続された金属キャビティ領域を備えた無線周波数検出可能装置であって、キャビティ領域は、共同して分布インダクタンスおよび分布キャパシタンスを有し、キャビティ領域のうちの第1のキャビティ領域は、比較的大きなプレート間隔の一対のプレートの間に画定され、かつ、フェライト材料が充填され、第1のキャビティ領域は、比較的大きな分布インダクタンスを有し、キャビティ領域のうちの第2のキャビティ領域は、比較的小さいプレート間隔であり、誘電体で充填され、第2のキャビティ領域は、比較的大きい分布キャパシタンスを有する、装置。

2.第2のキャビティ領域は、第1のキャビティ領域の周りに廻され、リーダの動作周波数に対応する共振周波数を有する回路を形成する、請求項1に記載の装置。

(中略)

8.動作周波数が、HF帯またはUHF帯である、先行するいずれかの請求項に記載の装置。

9.動作周波数が、約8.2MHzまたは13.56MHzである、請求項8に記載の装置。

10.動作周波数が、約868?870MHzまたは902?928MHzである、請求項8に記載の装置。

(後略)」)

(9)図1


(10)図2



(11)図3



以上の記載からみて、甲3には、「リーダによって提供される励起無線周波数電磁界に応答する、無線周波数タグのうち、UHFタグは、入射電磁界を電気信号に変換するためのアンテナ、及び、タグ内の電気信号を応答シグネチャに変換するアンテナを含み、HFタグでは、誘導コイルアンテナがキャパシタと並列に接続され、動作周波数に対応する固有周波数を有するインダクタ/キャパシタ(LC)共振器を形成する共振回路が使用される」こと、及び、「2つの電気的に接続された金属キャビティ領域を備えた無線周波数検出可能装置であって、第2のキャビティ領域は、第1のキャビティ領域の周りに廻され、リーダの動作周波数に対応する共振周波数を有する回路を形成し、接続された平行プレート構造5、6、7は、平行インダクタおよびキャパシタとしてモデル化することができ、キャビティ1の共振周波数は、構造の有効キャパシタンス及びインダクタンスに基づいて決定することができ、動作周波数はHF帯またはUHF帯である」こと、が記載されている。

4 甲4の記載事項(下線は、当審で付与。)
(1)103頁左欄7行?104頁左欄3行
「1 13.56MHz RFタグ用アンテナ
●アンテナの概要
図1のようなRFIDカードでは、エッチングやスクリーン印刷などによりアンテナ・コイルと呼ばれるパターンを形成している。このアンテナ・コイルは同じくパターンで作成されたコンデンサおよび接続される回路側のコンデンサとの共振を、13.56MHzに同調させることでリード/ライトを可能とするためのものである。
ここで、“アンテナ・コイルと呼ばれる”という表現を使ったのには理由がある。実はリーダ/ライタとタグ間の距離によって通信(信号伝搬)の方法が異なるからである。
通信方法は距離によって以下の方法に分かれる。
・リーダ/ライタとタグ間が1/2波長以下の場合
→誘導磁界による通信
・リーダ/ライタとタグ間が1/2波長以上の場合
→電波による通信
したがって、13.56MHzの1波長が22mほどであることから、近接型RFIDシステムでは携帯電話のような無線通信用アンテナの動作とは異なり、コイルの結合により通信しているということである。
●等価回路による考察
ここでRFタグの等価回路を考えてみる。図2はRFタグの等価回路で、
L:インダクタンス
R:直列抵抗
C:平行平板間のキャパシタンス
である。
この回路の共振周波数F_(0)はトムソンの式、

で表され、Q(Quality Factor)は
Q=蓄積エネルギ/損失エネルギ
で表される。」

(2)図1


(3)図2



以上の記載からみて、甲4には、「RFタグ用アンテナに関し、RFIDカードは、アンテナ・コイルと呼ばれるパターンを形成し、このアンテナ・コイルは同じくパターンで形成されたコンデンサおよび回路側のコンデンサとの共振を、13.56MHzに同調させる」ことが記載されている。


5 甲5の記載事項(下線は、当審で付与。)
(1)タイトル「OPTIMIZATION OF INDUCTIVE RFID TECHNOLOGY」
(当審訳:「誘導RFID技術の最適化」)

(2)(82頁左欄23行?右欄21行)
「II. RFID SYSTEM FUNCTIONS

The main components of a RFID system are the reader and tag. In a typical communication sequence, the reader emits a continuous radio frequency (RF) carrier sine wave. When a tag enters the RF field of the reader, the tag receives energy from the field.
After the tag has received sufficient energy, it modulates the carrier signal according to the data stored on the tag. This modulated carrier signal is resonated from the tag to the reader. The reader detects and decodes the modulated signal. Finally, information is relayed to a host computer.
In this sequence of events, the job of the reader is to:
1. Provide energy for the tag,
2. Provide a carrier signal,
3. Detect and decode the modulated signal.
The job of the tag is to:
1. Utilize the energy provided by the reader,
2. Resonate the reader carrier signal,
3. Modulate the resonated signal that is sent back to the reader.
The way in which the reader and tag accomplish these tasks is the focus of the rest of this section.

A. The Functions of the Reader

1) Provide energy for the tag: During normal operation, the reader powers up the tag by emitting a RF field, which is a time-varying electromagnetic field in the kHz or MHz range depending on the type of RFID system. When the tag feels the effect of this RF field, it is able to generate a DC voltage across its antenna coils. A time-varying magnetic field through a surface bounded by a closed loop induces a voltage around the loop. The small antenna in the RFID tag is such a loop.」
(当審訳:「II.RFIDシステムの機能

RFIDシステムの主な構成要素は、リーダとタグである。一般的な通信シーケンスでは、リーダは連続無線周波数(RF)搬送波正弦波を放射する。タグがリーダのRFフィールドに入ると、タグはフィールドからエネルギーを受け取る。
タグが十分なエネルギーを受け取った後、タグに保存されているデータに従って搬送波信号を変調する。この変調された搬送波信号は、タグからリーダに共振される。リーダは、変調された信号を検出してデコードする。最後に、情報はホストコンピュータに中継される。
この一連のイベントでは、リーダの役割は次のとおりである。
1.タグにエネルギーを供給し、
2.搬送波信号を提供し、
3.変調信号を検出してデコードする。
タグの役割は次のとおりである。
1.リーダから提供されるエネルギーを利用し、
2.リーダの搬送波信号に共振し、
3.リーダに送り返される共振信号を変調する。
リーダとタグがこれらのタスクを実行する方法が、このセクションの残りの部分の焦点である。

A.リーダの機能

1)タグにエネルギーを供給する:通常の動作中、リーダは、RFフィールドを放出することによってタグに電力を供給し、このRFフィールドは、RFIDシステムのタイプに応じてkHz又はMHzの範囲の時間変化する電磁界である。タグがこのRFフィールドの影響を感じると、アンテナコイルの両端にDC電圧を生成することができる。閉ループで囲まれた表面を通る時間変化する磁界は、そのループの周りに電圧を誘導する。RFIDタグの小さなアンテナは、そのようなループである。」)

(3)(83頁左欄6?14行)
「2) Provide a carrier signal: The RF field emitted by the reader contains the carrier signal used by the tag to perform its functions. This carrier signal in typical high frequency RFID systems is around 13.56 MHz. The carrier signal serves both as a source of power to the tag and as the carrier signal for return data from the tag. Also, in tags that contain clocking circuitry, the carrier signal can act as a synchronized clock source.」
(当審訳:「2)搬送波信号を提供する:リーダにより放出されたRFフィールドは、その機能を実行するタグにより使用される搬送波信号を含む。典型的な高周波RFIDシステムのこの搬送波信号は、約13.56MHzである。搬送波信号は、タグヘの電源としても、タグからのデータを返すための搬送波信号としても機能する。また、クロッキング回路を含むタグでは、搬送波信号は同期クロックソースとして機能することができる。」)

(4)(83頁右欄27?39行)
「B. Issues in Reader Design and Performance

The basic layout of a typical high frequency RFID reader is shown below in Fig.2. The reader can be thought of as consisting of two sections: a transmitting section and a receiving section. The transmitting section contains the 13.56 MHz signal oscillator, the power amplifier, and the RF tuning circuits. The tuning circuits match the impedance between the antenna coil circuit and the power amplifier at 13.56 MHz. The receiving section contains an envelope detector, hi-pass filters, and amplifiers.」
(当審訳:「B.リーダの設計とパフォーマンスの問題

典型的な高周波RFIDリーダの基本的なレイアウトを下の図2に示す。リーダは、送信セクションと受信セクションの2つのセクションで構成されていると考えることができる。送信セクションには、13.56MHzの信号発振器、パワーアンプ、及び、RFチューニング回路が含まれる。チューニング回路は、13.56MHzでアンテナコイル回路とパワーアンプ間のインピーダンスを一致させる。受信セクションには、包絡線検波器、ハイパスフィルタ、及び、増幅器が含まれる。」)

(5)(84頁左欄28行?右欄最終行)
「C. The Functions of the Tag

(中略)

2) Resonate the carrier signal: When a capacitor and inductor are placed in parallel, such a circuit resonates at a frequency given by:

If the tag is receiving a signal from the reader with a frequency of 13.56 MHz, then the tag will be able to resonate the same signal back to the reader if the tag's antenna is tuned such that [2π√(LC)]^(-1)= 13.56 MHz. A sample layout of a tag antenna is shown in Fig.3, in which Antenna Pad A and Antenna Pad B are connected by a CMOS switch. When this switch is on, there is essentially a short between Antenna Pad A and Antenna Pad B, causing the total inductance seen in the antenna to be only L2. 」
(当審訳:「C.タグの機能

(中略)

2)搬送波信号を共振させる:コンデンサとインダクタを並列に配置すると、このような回路は以下の周波数で共振する。

タグが13.56MHzの周波数でリーダから信号を受信している場合、タグのアンテナが[2π√(LC)]^(-1)=13.56MHzとなるように調整されていれば、タグは同信号と共振してリーダに戻すことができる。タグアンテナのレイアウト例を図3に示し、ここでは、アンテナパッドAとアンテナパッドBがCMOSスイッチで接続されている。このスイッチがオンの場合、アンテナパッドAとアンテナパッドBの間に本質的に短絡があり、アンテナに見られる合計インダクタンスはL2のみになる。」

(6)図3


以上の記載より、甲5には、「リーダとタグからなるRFIDシステムに関して、タグがコンデンサとインダクタとを並列に配置した回路として、この回路の共振周波数が13.56MHzに調整されることにより、リーダからの搬送波信号に共振させる」ことが記載されている。


6 甲6の記載事項(下線は、当審で付与。)
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、共振回路を構成するアンテナコイルの構造及び該アンテナコイルを用いた共振周波数の調整方法に関し、特に、実装されたICチップに対して非接触でデータの読み書きを行うことを特徴とするRFID(Radio Frequency Identification)用トラスポンダのアンテナコイルの構造及び該アンテナコイルを用いた共振周波数の調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ICチップを備えたトランスポンダとリーダ/ライタ(又はリーダ)との間でデータの交信を行うRFIDシステムが普及している。このRFIDシステムは、トランスポンダ及びリーダ/ライタの各々に備えたアンテナを用いてデータの交信を行うため、トランスポンダをリーダ/ライタから数cm乃至数十cm離しても通信可能であり、また、汚れや静電気等に強いという長所から、工場の生産管理、物流の管理、入退室管理等の様々な分野に利用されるようになってきている。
【0003】
このRFIDシステムでデータの通信を行う場合、リーダ/ライタ、トランスポンダの双方のアンテナの共振周波数をある程度の精度で送信するキャリア周波数に合わせ込む必要がある。ここで、アンテナの共振周波数f0は、アンテナコイルのインダクタンスLとコンデンサのキャパシタンスCとを用いて次式のように表される。
【0004】
【数1】

【0005】
式1より、アンテナコイルのインダクタンスL又はコンデンサのキャパシタンスCのいずれかを増減させることにより共振周波数を所望の値に調整することができ、リーダ/ライタのアンテナの場合は、通常、アンテナに実装したトリマコンデンサなどにより調整が行われている。」

(2)「【0008】
ここで、従来のトランスポンダの構造について、図12及び図13を参照して説明する。図12は、従来のRFID用トランスポンダの基本構成を示す回路図であり、図13は、小型のシート(ラベル)状トランスポンダにおける共振回路のアンテナコイルとフィルムコンデンサとの位置関係を示す平面図である。
【0009】
図12に示すように、トランスポンダ2は、共振回路を構成するアンテナコイル4及びコンデンサと、データの記憶、演算を行うICチップ5とからなり、大型のトランスポンダ2の場合は部品の取り付けスペースが大きいことから、コンデンサを固定容量を形成するコンデンサ6aと容量の調整が可能なトリマコンデンサ6bとで構成し、トリマコンデンサ6bを増減させることにより共振周波数の調整を行っていた。」

(3)【図12】


以上の記載より、甲6には、「従来技術として、ICチップを備えたトランスポンダとリーダ/ライタ(又はリーダ)との間で交信を行うRFIDシステムに関し、トランスポンダは、共振回路を構成するアンテナコイル及びコンデンサと、データの記憶、演算を行うICチップとからなり、リーダ/ライタ、トランスポンダの双方のアンテナの共振周波数を送信するキャリア周波数に合わせることが開示され、アンテナコイルのインダクタンスLとコンデンサのキャパシタンスCのいずれかを増減させることにより、アンテナのアンテナコイルとコンデンサからなる共振回路の共振周波数を調整することができる」ことが記載されている。


7 甲7の記載事項
(1)「【0002】
近年、ユビキタス社会の実現手段として、RFID(Radio Frequency Identification)の利用が活発化している。RFIDは、質問器となるリーダ/ライターと、応答器となる非接触タグとの間で無線通信を行うことで、情報のやり取りを行うものである。このように質問器と応答器とのやり取りを行う方式の一つに、電磁誘導による通信方式がある。」

(2)「【0011】
<<実施形態1>>
<実施形態1の概要>
本実施形態は、質問器と、第一非接触タグと、第二非接触タグと、からなるRFタグシステムに関するものである。
【0012】
図1は、本実施形態の概念の一例を示すものである。質問器Cからは所定の周波数を通信を行うための搬送周波数として電磁波を発生させている。そして、電磁誘導方式を用いた近接型のRFタグシステムにおいては、搬送周波数は13.56MHzを使用することがISO15693等にて定められている。一般的には、非接触タグについては、この規格によって規定されている搬送周波数を受ける場合に共振するように製造、調整等がなされている。「共振」とは、振動体に固有振動数と等しい振動が外部から加わると、振動の幅が大きくなる現象のことをいう。つまり、共振状態にあるということは、電波を一番効率よく受信している状態のことである。従って、共振状態にあるということは、誘導電圧を最も高く得ることができるため、通常、非接触タグは、質問器のアンテナと共振した場合に、その内部に有しているICチップなどを起動して、質問器と通信を行うことが可能となっている。従って、図1においては、共振周波数を搬送周波数に設定している第一非接触タグA(共振タグ)は、誘磁界内にて起電し、質問器との間で通信を行うことができる。一方、図1における第二非接触タグB(非共振タグ)のように、共振周波数を搬送周波数と異なる周波数に設定している場合には、質問器との間で共振することができないため、起電することができず、質問器と通信を行うことはできなくなる。このため、従来の質問器を用いる場合には、第二非接触タグとの間では通信を行うことができなくなる。一方、後述する本発明の質問器を用いる場合には、かかる第二非接触タグとの通信を行うことができるため、非接触タグのセキュリティを向上させることが可能となる。本実施形態における質問器は、第二非接触タグの近接を検知した場合には、質問器のアンテナと非接触タグのアンテナとの相互結合の状態を認識して、第二非接触タグとの通信を実現することが可能なように質問器を制御することを特徴とするものである。」

以上の記載より、甲7には、「質問器となるリーダ/ライターと、応答器となる非接触タグとの間で無線通信を行うRFIDシステム(RFタグシステム)に関し、搬送周波数としてISO15693等に定められている13.56MHzを使用し、非接触タグについては、この規格によって規定されている搬送周波数を受ける場合に共振するように調整されていること、及び、非接触タグは共振状態で、電波を一番効率よく受信すること、及び誘導電圧を最も高く得ることができる」ことが記載されている。


第5 周知事項について
1 甲9には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与。)。
(1)「【0002】
図11は、従来例として、携帯電話機等に用いられる板状逆Fアンテナを示している。この板状逆Fアンテナは、平面状のアンテナ素子1101と、給電線1102が給電部1105において接続されている。
【0003】
また、この板状逆Fアンテナは、アンテナ素子1101を地板1104に接地するショートスタブ1103を備えている。この板状逆Fアンテナは、アンテナ素子1101の周囲長により共振周波数が定まり、アンテナ素子1101の縦の長さ(W)と横の長さ(L)との和が、波長の1/4となる周波数で共振する。
【0004】
即ち、アンテナ素子1101の周囲長が波長の1/2となる周波数で共振する。通常、使用周波数において、自由空間で共振するようにアンテナ寸法が決定される。
一例として、自由空間におけるアンテナのVSWRの周波数特性を、図12に示している。」

(2)【図11】


甲9に記載されるように、「板状逆Fアンテナは、一般に、アンテナ素子の周囲長により共振周波数が定まり、使用周波数において、自由空間で共振するようにアンテナ寸法が決定される」こと(以下、「当審周知事項1」という。)が周知である。

2 特開2010-198373号公報には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与。)。
(1)「【0001】
本発明は、通信装置、および通信安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触式IC(Integrated Circuit)カードや、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、非接触式ICチップを搭載した携帯電話など、リーダ/ライタ(または、リーダ/ライタ機能を有する情報処理装置)と非接触式に通信可能な情報処理装置が普及している。
【0003】
リーダ/ライタと、ICカードなどの情報処理装置とは、例えば13.56MHzなど特定の周波数の磁界(搬送波)を通信に使用している。具体的には、リーダ/ライタが搬送波信号をのせた搬送波を送信し、搬送波をアンテナで受信した情報処理装置が負荷変調によって受信した搬送波信号に対する応答信号を返信することにより、リーダ/ライタと情報処理装置とは通信を行う。」

(2)「【0076】
[リーダ/ライタ104と情報処理装置500との構成]
ここで、本発明の実施形態に係る通信装置100が備えるリーダ/ライタ104の構成の一例と、情報処理装置500の構成の一例について説明する。
【0077】
図4は、本発明の実施形態に係る通信装置100が備えるリーダ/ライタ104の構成と、情報処理装置500の構成との一例を示す説明図である。ここで、図4は、情報処理装置500がICカードである場合における構成の一例を示している。」

(3)「【0088】
〔情報処理装置500の構成例〕
情報処理装置500は、搬送波を受信可能な通信アンテナ502と、受信された搬送波に基づいて搬送波信号を復調して処理し、負荷変調により応答信号を送信させるICチップ504とを備える。
【0089】
通信アンテナ502は、例えば、所定のインダクタンスをもつコイル(インダクタ)L1と、所定の静電容量をもつキャパシタC1とからなる共振回路で構成され、搬送波の受信に応じて電磁誘導により誘起電圧を生じさせる。そして、通信アンテナ502は、所定の共振周波数で誘起電圧を共振させた受信電圧を出力する。ここで、通信アンテナ502 における共振周波数は、例えば、13.56MHzなど搬送波の周波数に合わせて設定される。通信アンテナ502は、上記構成により、搬送波を受信し、また、ICチップ504が備える負荷変調部516において行われる負荷変調によって応答信号の送信を行う。
【0090】
また、通信アンテナ502を構成するコイルは、リーダ/ライタ104から送信された搬送波に限られず、磁束が通過した場合には、磁束の通過による電磁誘導により磁界を発生させる。」

(4)【図4】


上記文献に記載されるように、「所定のインダクタンスをもつコイル(インダクタ)L1と、所定の静電容量をもつキャパシタC1とからなる共振回路を構成し、電磁誘導により誘起電圧を生じさせて、搬送波を受信する」こと(以下、「当審周知事項2」という。)は、周知である。

(3)甲4の記載事項
甲4には、上記第4の4(1)で摘記した事項が記載されており、「リーダ/ライタとタグ間の通信には、誘導磁界による通信と、電波による通信があり、アンテナの動作は異なる」こと(以下、「当審周知事項3」という。)は、周知である。


第6 当審の判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明とを対比する。

ア 甲1発明の「リーダライタ」、「放射導体」、「グランド導体」、「給電導体」、「短絡導体」は、それぞれ、本件発明1の「読取装置」、「第1導波素子」、「第2導波素子」、「給電部」、「短絡部」に相当する。

イ 甲1発明の「逆Fアンテナ」は、放射導体、グランド導体、給電導体及び短絡導体を平板状をなす金属導体として構成されるものであるから全体として「板状」であり、RFICシステムの無線通信デバイスで用いられるアンテナであるから、「RFタグ用アンテナ」である。

ウ 甲1発明の「逆Fアンテナ」は、「通信し、所定の情報を伝達するRFICシステム」で用いられる無線通信デバイスが備えるアンテナであり、UHF帯のRFIDシステムで用いられるから、「読取装置から送信された電波を受信する」ことは、明らかである。

エ 誘電体は絶縁性材料の一つであるから、甲1発明の「誘電体ブロック」は、本件発明1の「第1絶縁基材」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「 第1主面、及び前記第1主面の反対側の第2主面を有する第1絶縁基材と、
前記第1主面に設けられた第1導波素子と、
前記第2主面に設けられた第2導波素子と、
前記第2導波素子に一端が電気的に接続された給電部と、
前記第1導波素子に一端が電気的に接続され、前記第2導波素子に他端が電気的に接続された短絡部と、を備え、
前記第1絶縁基材、前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部及び前記短絡部により、読取装置から送信された電波を受信する板状逆Fアンテナが構成される、
RFタグ用アンテナ。」

で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本件発明1は、「前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成される」ことが特定されているのに対して、甲1発明では、当該事項について特定されていない点。


(2)判断
ア 甲1発明に甲2に記載される技術を適用することについて
当審周知事項1によれば、逆Fアンテナは、放射導体11の周囲長を、使用周波数において共振するように決定するものであるから、甲1発明における「逆Fアンテナ」は放射導体11での共振を利用したアンテナであり、当審周知事項3における、電波による通信を行うアンテナといえる。
一方、甲2に記載される技術は、磁芯材の周囲に巻線が巻回されて構成されるアンテナ3とコンデンサによる共振回路の共振周波数をキャリア周波数に合わせることにより、キャリア周波数を受信するタグ2であり、磁芯材の周囲に巻線が巻回されて構成されるアンテナは、一般にコイルと称されるものであるから、当審周知技術2の、コイル(インダクタ)とキャパシタによる共振を利用して、電磁誘導により誘起電圧を生じさせて、搬送波を受信するものであって、当審周知事項3における、誘導磁界による通信を行うものである。
そうすると、甲1の逆Fアンテナを用いた電波の受信と、甲2のアンテナとコンデンサによる共振回路を用いた搬送波の受信とは、その動作原理が異なるものであり、導電素子での共振現象により電波を受信する甲1発明の逆Fアンテナにおいて、甲2に記載される技術を適用して、「前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路を構成」することの、必然性がなく、適用する動機付けがあるとはいえない。

イ 甲1発明に甲3に記載される技術を適用することについて
甲3に記載される技術は、誘導コイルアンテナがキャパシタと並列に接続された共振回路、又は、平行インダクタおよびキャパシタとしてモデル化することができるキャビティ領域を用いた回路により、励起無線周波数電磁界に応答するものであり、当審周知技術2の、コイル(インダクタ)とキャパシタによる共振を利用して、電磁誘導により誘起電圧を生じさせて、搬送波を受信するものであって、当審周知事項3における、誘導磁界による通信を行うものである。
そうすると、甲1の逆Fアンテナを用いた電波の受信と、甲3に記載される技術とは、その動作原理が異なるものであり、導電素子での共振現象により電波を受信する甲1発明の逆Fアンテナにおいて、甲3に記載される技術を適用して、「前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路を構成」することの、必然性がなく、適用する動機付けがあるとはいえない。

ウ 甲1発明に甲4及び甲7に記載される技術を適用することについて
甲4に記載される技術は、アンテナ・コイルとコンデンサとの共振を用いて、13.56MHzの電波を受信するものであるから、当審周知技術2の、電磁誘導に基づく、アンテナとコンデンサによる共振を利用したアンテナであり、当審周知事項3における、誘導磁界による通信を行うものである。
また、甲7には、非接触タグが、搬送波周波数を受ける場合に共振するように調整されていることが記載されるものであり、板状逆Fアンテナを構成する、「前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成される」ことは、記載されていない。
そうすると、甲1の逆Fアンテナを用いた電波の受信と、甲4に記載される技術とは、その動作原理が異なるものであり、甲7の記載を考慮しても、導電素子での共振現象により電波を受信する甲1発明の逆Fアンテナにおいて、甲4に記載される技術を適用して、「前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路を構成」することの、必然性がなく、適用する動機付けがあるとはいえない。

エ 甲1発明に甲5に記載される技術を適用することについて
甲5に記載される技術は、コンデンサとインダクタとを並列に配置した回路により、搬送波信号に共振させるものであるから、当審周知技術2の、電磁誘導に基づく、インダクタとコンデンサによる共振を利用したものであり、当審周知事項3における、誘導磁界による通信を行うものである。
そうすると、甲1の逆Fアンテナを用いた電波の受信と、甲5に記載される技術とは、その動作原理が異なるものであり、導電素子での共振現象により電波を受信する甲1発明の逆Fアンテナにおいて、甲5に記載される技術を適用して、「前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路を構成」することの、必然性がなく、適用する動機付けがあるとはいえない。

オ 甲1発明に甲6に記載される技術を適用することについて
甲6に記載される技術は、アンテナコイル及びコンデンサで構成される共振回路の共振周波数をキャリア周波数に合わせるものであるから、当審周知技術2の、電磁誘導に基づく、アンテナコイルとコンデンサによる共振を利用したアンテナであり、当審周知事項3における、誘導磁界による通信を行うものである。
そうすると、甲1の逆Fアンテナを用いた電波の受信と、甲6に記載される技術とは、その動作原理が異なるものであり、導電素子での共振現象により電波を受信する甲1発明の逆Fアンテナにおいて、甲6に記載される技術を適用して、「前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路を構成」することの、必然性がなく、適用する動機付けがあるとはいえない。

カ 甲1発明に甲2?甲7に記載される技術を適用することについて
上記したように、甲2?甲6は、いずれも、誘導磁界による通信を行うものであり、甲1の、逆Fアンテナにおける、放射導体11の寸法による共振を利用した、電波による通信を行うアンテナとは、動作原理が異なるものである。
また、甲7には、非接触タグが、搬送波周波数を受ける場合に共振するように調整されていることが記載されるものである。
したがって、甲2?甲7に記載される技術を、甲1発明に適用する動機付けがあるとはいえない。

キ また、板状逆Fアンテナを構成する、「前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成される」ことは、甲8?甲12に記載されるものではなく、当業者に自明な事項ともいえない。

ク 以上より、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲2に記載の技術、甲3に記載の技術、甲4及び甲7に記載の技術、甲5に記載の技術、甲6に記載の技術、又は、甲2?甲7に記載されている周知技術、に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


2 本件発明3?5、7?17について

本件発明3?5、7?17は、いずれも、直接的または間接的に、請求項1を引用するものであるから、上記1の相違点を含むものである。
そして、上記1のように、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び甲2?甲12に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明3?5、7?17は、甲1に記載された発明、及び甲2?12に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第7 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、3?5、7?17に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3?5、7?17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。



 
異議決定日 2021-03-18 
出願番号 特願2017-224429(P2017-224429)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H01Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久々宇 篤志  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 谷岡 佳彦
衣鳩 文彦
登録日 2020-05-18 
登録番号 特許第6705116号(P6705116)
権利者 株式会社フェニックスソリューション
発明の名称 RFタグ用アンテナ及びその製造方法、並びにRFタグ  
代理人 特許業務法人 クレイア特許事務所  

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