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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F16L
審判 全部申し立て 2項進歩性  F16L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F16L
管理番号 1372751
異議申立番号 異議2020-700941  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-02 
確定日 2021-04-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6709080号発明「発泡管継手」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6709080号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6709080号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成28年3月2日に出願され、令和2年5月26日にその特許権の設定登録がされ、令和2年6月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年12月2日に特許異議申立人である奥村一正(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
本体部と、該本体部の開口部に一体に形成された受口部と、を有し、熱可塑性樹脂からなる発泡性樹脂を発泡させて前記本体部と前記受口部とが一体的に形成された発泡管継手であって、
前記発泡管継手の外面にゲート部を有し、
前記本体部における本体肉厚部は、独立気泡率が90%以上、かつ発泡倍率が1.2倍?2.0倍、かつ前記ゲート部からの距離が大きくなるほど低密度であり、
前記受口部の独立気泡率は、90%以上、かつ発泡倍率が1.0倍以上であることを特徴とする発泡管継手(ただし、非発泡樹脂と発泡樹脂を積層したものを除く。)。
【請求項2】
前記本体部の表層の気泡数が1個/mm^(2)以上40個/mm^(2)未満であることを特徴とする請求項1に記載の発泡管継手。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が硬質塩化ビニル樹脂であり、
前記本体部における見かけ密度が0.8?1.0g/cm^(3)であり、前記受口部における見かけ密度が1.0?1.2g/cm^(3)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡管継手。」

第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、下記の甲第1号証ないし甲第5号証(以下「甲1」ないし「甲5」という。)を提出し、概略次の申立理由1ないし4を主張している。

(証拠方法)
甲1:特開平7-217934号公報
甲2:実願平5-28768号(実開平6-87496号)のCD-RO
M
甲3:特公昭48-37348号公報
甲4:特開平11-201383号公報
甲5:特開2001-304461号公報
なお、甲2に関して、特許異議申立書には、「実開平6-87496号公報」と記載されているが、特許異議申立書に添付されているのは、実願平5-28768号(実開平6-87496号)のCD-ROMの写しであることから、実際に添付されている証拠を甲2とした(実開平6-87496号公報は、実願平5-28768号(実開平6-87496号)のCD-ROMの記載内容のうち、実用新案登録請求の範囲、図面、図面の簡単な説明だけが記載されたものである。)。
また、甲3に関して、特許異議申立書には、「特公昭48-37348号公告」と記載されているが、「特公昭48-37348号公報」の誤記と認める。

1 申立理由1(進歩性)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 申立理由2(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。

3 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。

4 申立理由4(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。

第4 各甲号証の記載
1 甲1について
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。


「【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
〔実施例1:請求項1記載の発明の実施例〕図1は、本発明の排水管の一例を示す断面図である。図1に示す本発明排水管10は、平均発泡倍率が2?7倍の発泡塩化ビニル樹脂(PVC)11によって構成されている。この排水管10は、内周面および外周面を加熱することにより、内周側および外周側のスキン層12および13がそれぞれ形成されている。内周面のスキン層12は、厚さが0.2?0.5mm程度になっており、外周面のスキン層13は、厚さが0.2?1.0mm程度になっている。
【0015】内周面及び外周面のスキン層12、13は、叙上のように、発泡塩化ビニル樹脂(PVC)11の内外周面を加熱により形成してもよく、発泡性塩化ビニル樹脂を押し出す際に内外周面を急冷することによって発泡を抑制することにより形成してもよく、いずれにしてもスキン層12、13は或る程度は発泡されていて完全な非発泡ではない。発泡塩化ビニル樹脂11は、端面から内部に水が浸透しないように、独立気泡型が使用される。」


「【0018】〔実施例3:請求項3記載の発明の実施例〕図3は本発明の排水管用管継手の一例を示す断面図である。図3に示す本発明管継手20は、硬質塩化ビニル樹脂(PVC)管21の内周面に、平均発泡倍率が2?7倍の発泡塩化ビニル樹脂(PVC)層22が設けられて、この発泡塩化ビニル樹脂層22によって管継手20の内周部分が形成されている。発泡塩化ビニル樹脂層22は、両端部に排水管10が挿入される挿し口がそれぞれ形成されており、各挿し口の内周面は、各端面開口から内奥部にかけて直径が順次小さくなったテーパー状になっている。発泡塩化ビニル樹脂層22の長手方向の中央部には、内方へと突出するリブ22bが全周にわたって設けられており、挿し口内に挿入される排水管10の端面が突き当てられるようになっている。発泡塩化ビニル樹脂層22の内周面には、厚さが0.2?0.5mm程度のスキン層22aが全周にわたって形成されている。
【0019】この発泡塩化ビニル樹脂層22も、端面からの水の浸透を防止するために、独立気泡型が使用されている。」


「【0023】このような管継手20の成形方法としては、硬質塩化ビニル樹脂の部分と発泡塩化ビニル樹脂の部分とを2層射出成形して成形してもよいし、一旦射出成形された非発泡の硬質塩化ビニル樹脂製の管継手(JIS K 6739に規定されている「排水用硬質塩化ビニル管継手」など)や管の外周または内周に発泡層を射出成形することによって成形することもできる。いずれの場合でも硬質塩化ビニル樹脂の部分と発泡塩化ビニル樹脂の部分との一体化のために両層間に接着剤(図示省略)を介在させて製造してもよい。」




」(図1)




」(図3)

(2)上記(1)の記載から認められること
ア (1)イ、オから、管継手20では、硬質塩化ビニル樹脂管21と発泡塩化ビニル樹脂層22とが積層されていると認められる。

イ (1)イ、オから、発泡塩化ビニル樹脂層22の長手方向の中央部は、両端に開口していると認められる。

ウ (1)イ、オから、発泡塩化ビニル樹脂層22では、長手方向の中央部と挿し口とが一体的に形成されていると認められる。

(3)甲1に記載された発明及び技術的事項
(1)ア、エから、甲1には、以下の技術的事項(以下「甲1事項A」という。)が記載されていると認められる。
「平均発泡倍率が2?7倍の発泡塩化ビニル樹脂11によって構成されている排水管10において、
排水管10の内周面および外周面に形成されたスキン層12、13は、発泡されていて完全な非発泡ではなく、
発泡塩化ビニル樹脂11は、独立気泡型が使用される点。」

また、(1)イ、オ及び(2)アないしウから、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「発泡塩化ビニル樹脂層22が設けられた管継手20であって、
発泡塩化ビニル樹脂層22の長手方向の中央部は両端に開口し、
発泡塩化ビニル樹脂層22は、両端部に排水管10が挿入される挿し口がそれぞれ形成されており、
発泡塩化ビニル樹脂層22では、前記中央部と挿し口とが一体的に形成され、
発泡塩化ビニル樹脂層22の前記中央部には、内方へと突出するリブ22bが全周にわたって設けられており、
発泡塩化ビニル樹脂層22は、独立気泡型が使用され、
発泡塩化ビニル樹脂層22の平均発泡倍率は、2?7倍であり、
硬質塩化ビニル樹脂管21と発泡塩化ビニル樹脂層22とが積層されている、管継手20。」

また、(1)ウから、甲1には、以下の技術的事項(以下「甲1事項B」という。)が記載されていると認められる。
「硬質塩化ビニル樹脂の部分と発泡塩化ビニル樹脂の部分とを有する管継手20を射出成形によって成形する点。」

2 甲2について
(1)甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。


「 【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案排水ますは、
上向きの受口、横向きの受口、下向きの受口が設けられた排水ますにおいて、少なくとも1個の受口の管壁は、その中途部が球殻状に膨出され、この受口内に短管が挿入され、短管の外面は球殻状受口の管壁内面に適合する球面とされていることを特徴とするものである。」


「 【0006】
本考案排水ますは、ポリエチレン、ポリプロピレン、硬質塩化ビニル樹脂、FRPのような合成樹脂を単独、或いは、適宜組み合わせた材料により製造されるのが、軽量であって耐腐食性が大であり、コストが安く好ましい。例えば、上向きの受口、横向きの受口、下向きの受口が設けられた排水ますの本体をFRPで成形し、受口内に挿入する短管を硬質塩化ビニル樹脂製としてもよい。
【0007】
又、材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂を使用した場合には、重量軽減及び材料節約の為に1.2倍?3倍程度の低発泡体を使用するのが好ましい。」


「 【0010】
【実施例】
次に、本考案の実施例を、図面を参照しながら説明する。
図1は本考案排水ますの一例の使用状態を示す断面図である。
図1において、1は本考案排水ますであり、低発泡のポリエチレンを使用して射出成形法により一体成形されている。
【0011】
11は上向きの受口、12、12は相互に直交する横向きの受口、13は下向きの受口であり、下向きの受口13は、その中途部が球殻状に膨出され、下向きの受口13内に短管131が挿入され、短管131の外面は球殻状受口の管壁内面に適合する球面とされており、短管131の球面は下向きの受口13の球殻状管壁内を矢印a方向に摺動できるようになっている。短管131も低発泡のポリエチレンを使用して射出成形法により成形されている。
【0012】
〔実施例の作用〕
次に、図1に示す本考案排水ます1の作用について説明する。
本考案排水ます1の上向きの受口11に図示しない点検掃除管を挿入接続し、横向きの受口12、12に図示しない宅地内排水管を挿入接続し、下向きの受口13の短管131内にドロップ管2の上端を挿入接続する。
ドロップ管2は短管131と一体に下向きの受口13内を揺動でき、ドロップ管2の中心軸B-Bは、本考案排水ます1の上向きの受口11及び下向きの受口13を通る中心軸A-Aに対して約30度傾斜できる。」




」(図1)


(2)上記(1)の記載から認められること
ア (1)ウ、エから、排水ます1は、上向きの受口11、横向きの受口12、12、下向きの受口13に一体に形成された本体部を有し、本体部の開口に受口11、12、12、13が形成されていると認められる。

イ (1)イの「1.2倍?3倍程度の低発泡体」との記載から、低発泡体の発泡倍率は1.2倍?3倍程度であると認められる。

(3)甲2に記載された発明
(1)アないしエ及び(2)ア、イから、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「本体部と、該本体部の開口に形成された受口11、12、12、13と、を有し、
低発泡体を使用して射出成形により一体形成された排水ます1であって、
低発泡体の発泡倍率は1.2倍?3倍程度であり、
低発泡体の材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂を使用し、
単独の樹脂で製造される、排水ます1。」

3 甲3について
(1)甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。


「本発明は熱可塑性樹脂の低発泡射出成形品、特に発泡倍率1.2?2.5程度の均質薄肉製品を得るための低発泡射出成形方法に関するものである。」(第1欄第24行-第26行)


「従来の方法で第1図に示すような円板を、発泡剤入りポリスチレン樹脂を用いて成形した場合の一実施例について、肉厚と各部分の発泡倍率の分布状態の実測結果を第2図に示す。これを見るとt=2mmのものではゲートに近いところではほとんど発泡はしておらず、ゲートから遠ざかるに従って次第に発泡倍率は上昇しているが、その最大値は1.35位であってたいして大きくならず而かも不均一である。t=3mmのものにおいては2mmのものに比し幾らか発泡倍率は大となるが、やはり不均一である。而かるにt=5mmとなると発泡倍率は1.6?1.8程度に上昇し、その不均一の度合も小さくなってくる。」(第2欄第23行-第35行)




」(第1図)




」(第2図)

(2)甲3に記載された技術的事項
(1)アないしエから、甲3には、以下の技術的事項(以下「甲3事項」という。)が記載されていると認められる。

「熱可塑性樹脂の低発泡射出成形品において、
ゲートから遠ざかるに従って次第に発泡倍率が上昇する点。」

4 甲4について
(1)甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。


「【請求項2】開割閉合可能な複数の型からなり、閉合されたときに成形すべき管継手の外面形状に対応するキャビティを形成する射出成形用金型のキャビティ内に、キャビティを充填するのに不十分な量の、溶融した熱可塑性樹脂を射出する第1の工程と、該熱可塑性樹脂が完全に固化する前に、該熱可塑性樹脂と同種の溶融した熱可塑性樹脂及び熱分解型発泡剤とからなる樹脂組成物を、熱分解型発泡剤の分解温度より高い温度で上記キャビティ内に射出する第2の工程と、さらに同種の溶融した熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出する第3の工程とからなることを特徴とする管継手の製造方法。」


「【0022】図2は本発明2の管継手の製造方法を説明する説明図である。図2において、41は射出成形機の第1のシリンダー、42は第2のシリンダー、5は射出成形用金型のゲート(フィルムゲート)、6はキャビティ、7は塩化ビニル樹脂、8はアゾジカルボンアミド含有塩化ビニル樹脂である。
【0023】本発明2の管継手の製造方法は、まず射出成形機の第1のシリンダー41に塩化ビニル樹脂7を供給する。一方で、第2のシリンダー42にアゾジカルボンアミド含有塩化ビニル樹脂8を供給する。次いで、第1の工程で、第1のシリンダー41から射出成形用金型のゲート5を介して、キャビティ6内に、キャビティ6を充填するのに不十分な量の塩化ビニル樹脂7を射出する。塩化ビニル樹脂7は、射出成形用金型のキャビティ6に射出され、キャビティ6の壁面から固化を開始し、溶融した塩化ビニル樹脂7は、徐々にキャビティ6内部に流動してゆく。
【0024】次いで、第2の工程で、第2のシリンダー42から射出成形用金型のゲート5を介して、キャビティ6内に、塩化ビニル樹脂7が完全に固化する前に、アゾジカルボンアミド含有塩化ビニル樹脂8を射出する。すると、キャビティ6内でアゾジカルボンアミドが分解し、ゲート部を除き、塩化ビニル樹脂発泡体層の全面が塩化ビニル樹脂硬化体層により囲繞された管継手が得られる。
【0025】最後に、第3の工程で、再度、第1のシリンダー41から射出成形用金型のゲート5を介して、キャビティ6内に、塩化ビニル樹脂7を少量供給すると、ゲート5の近傍は塩化ビニル樹脂7が充填され、固化後、射出成形用金型を開割すると、塩化ビニル樹脂発泡体層の全面が塩化ビニル樹脂硬化体層により囲繞された管継手が得られる。」

(2)甲4に記載された技術的事項
(1)ア、イから、甲4には、以下の技術的事項(以下「甲4事項」という。)が記載されていると認められる。
「塩化ビニル樹脂発泡体層の全面が塩化ビニル樹脂硬化体層により囲繞された管継手を射出成形により製造する点。」

5.甲5について
(1)甲5の記載
甲5には、以下の記載がある。


「【0006】図1において、三層管1は、再生樹脂からなるコア層11と、その内外面を再生樹脂を含まない未使用樹脂からなる表面層12によって構成されている。コア層11を形成する再生樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の単一樹脂、あるいはこれらの樹脂を適宜混合した再生樹脂が挙げられる。特に、従来から上下水道用の配管材として広く使用されいる塩化ビニル樹脂管は廃棄処分が難しいが、この廃材を再利用のために本発明の再生樹脂として有効に利用できる。
【0007】また、このコア層11は独立気泡型に発泡しており、その発泡倍率が1.1?3倍に構成されている。発泡倍率が1.1未満では保温性、遮音性、結露防止性、耐衝撃性に劣り建屋内の配管材として適用性に欠け、発泡倍率が3倍を越えると剛性が低下するため外力に対して破損しやすくなりまた配管施工時の作業性が悪くなる。」


「【0011】本発明の三層管継手2は、前記三層管1とほぼ同様な構成からなるものであるが、管継手2は配管同士を水密、かつ強固に接合するという機能が要求されるため、コア層2の発泡倍率を1.0?2倍の範囲とし、また表面層22の肉厚t1及びt2を管肉厚全体Tの10?35%の範囲を選択するとよい。なお、管継手2としてスリーブ型のものを例示したが、これに限らずエルボ、テーズ等の製品を製造する際にも本発明が適用できる。」




」(図2)

(2)甲5に記載された技術的事項
(1)アないしウから、甲5には、以下の技術的事項(以下「甲5事項A」という。)が記載されていると認められる。
「再生樹脂からなり、独立気泡型に発泡してなるコア層21を備える三層管継手2において、
コア層21を形成する再生樹脂として、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の単一樹脂を含み、
コア層21の発泡倍率を1.0?2倍の範囲として、
配管同士を水密、かつ強固に接合する点。」

また、(1)アから、甲5には、以下の技術的事項(以下「甲5事項B」という。)が記載されていると認められる。
「独立気泡型に発泡してなるコア層11を備える三層管1において、
発泡倍率が1.1未満では保温性、遮音性、結露防止性、耐衝撃性に劣り、発泡倍率が3倍を越えると剛性が低下するため外力に対して破損しやすくなる点。」

第5 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)甲1発明を主引用発明とした場合
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明の「発泡塩化ビニル樹脂層22の長手方向の中央部」は、本件発明1の「本体部」に、
甲1発明の「排水管10が挿入される挿し口」は、両端に開口する中央部と一体的に形成されるものであるから、本件発明1の「受口部」に、
甲1発明の「発泡塩化ビニル樹脂」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂からなる発泡性樹脂」に、
甲1発明の「リブ22b」は、発泡塩化ビニル樹脂層22の長手方向の中央部に、全周にわたって内方へと突出するように設けられたものであり、その厚さが他に箇所に比べて大きくなっていることは明らかであるから、本件発明1の「本体肉厚部」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「中央部と挿し口とが一体的に形成され」た「発泡塩化ビニル樹脂層22が設けられた」ことは、本件発明1の「本体部と、」「受口部と、を有し」、「熱可塑性樹脂からなる発泡性樹脂を発泡させて前記本体部と前記受口部とが一体的に形成された」ことに相当する。
また、甲1発明の「発泡塩化ビニル樹脂層22の平均発泡倍率は2?7倍であ」ることは、甲1発明の発泡塩化ビニル樹脂層22では中央部と挿し口とが一体的に形成されていることを踏まえると、本件発明1の「受口部の」「発泡倍率が1.0倍以上であること」に、相当する。
また、甲1発明の「発泡塩化ビニル樹脂層22の平均発泡倍率は2?7倍であ」ることは、甲1発明の、発泡塩化ビニル樹脂層22では中央部と挿し口とが一体的に形成されていること及び中央部にリブ22bが設けられていることを踏まえると、本件発明1の「前記本体部における本体肉厚部は、」「発泡倍率が1.2倍?2.0倍」であることと、本体部における本体肉厚部の発泡倍率の範囲として2倍を含むというかぎりにおいて一致している。
そして、甲1発明の「管継手20」と本件発明1の「発泡管継手」とは、「管継手」である点において一致している。

本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する一方、以下の各点で相違する。

<一致点>
「本体部と、該本体部の開口部に一体に形成された受口部と、を有し、熱可塑性樹脂からなる発泡性樹脂を発泡させて前記本体部と前記受口部とが一体的に形成された発泡管継手であって、
本体部に本体肉厚部を有し、
本体部における本体肉厚部の発泡倍率の範囲として2倍を含み、
受口部の発泡倍率が1.0倍以上である、管継手」

<相違点1>
本件発明1では、「発泡管継手の外面にゲート部を有し」、「前記本体部における本体肉厚部は、」「前記ゲート部からの距離が大きくなるほど低密度であ」るのに対して、甲1発明は、ゲート部を有するか否か不明である点。

<相違点2>
独立気泡率に関して、本件発明1では、「前記本体部における本体肉厚部は、独立気泡率が90%以上」、「前記受口部の独立気泡率は、90%以上」としているのに対して、甲1発明では「発泡塩化ビニル樹脂層22は、独立気泡型が使用され」るものの具体的な独立気泡率は不明である点。

<相違点3>
本体部における本体肉厚部の発泡倍率に関して、本件発明1では、「1.2倍?2.0倍」であるのに対して、甲1発明では「2?7倍」である点。

<相違点4>
本件発明1は、「発泡管継手(ただし、非発泡樹脂と発泡樹脂を積層したものを除く。)。」であるのに対して、甲1発明は、「硬質塩化ビニル樹脂管21と発泡塩化ビニル樹脂層22とが積層されている」「管継手20」である点。

イ 判断
<相違点1について>
甲1発明と甲1事項Bは、硬質塩化ビニル樹脂の部分と発泡塩化ビニル樹脂の部分とを有する管継手に関する点で技術分野が共通している。
また、甲1発明と甲4事項も、硬質塩化ビニル樹脂の部分と発泡塩化ビニル樹脂の部分とを有する管継手に関する点で技術分野が共通している。
そのため、甲1発明に甲1事項Bや甲4事項を適用して、甲1発明の管継手20を射出成形により成形することは、当業者であれば容易に想到し得る。
ところで、射出成形により成形した成形品の外面にゲート部が形成されることは、例示するまでもない技術常識である。また、甲3事項に示されるように、発泡樹脂による成形品においてゲートから遠ざかるに従って次第に発泡倍率が上昇すること、すなわち、発泡樹脂による成形品においてゲート部からの距離が大きくなるほど低密度となることも技術常識である。
これらの技術常識を踏まえると、甲1発明に甲1技術事項Bや甲4事項を適用して、甲1発明の管継手20を射出成形により成形するようにすれば、管継手20の外面にゲート部が形成され、リブ22bを含む発泡塩化ビニル樹脂層22全体においてゲート部からの距離が大きくなるほど低密度となることは明らかである。
したがって、甲1発明、甲1技術事項B、甲4事項及び技術常識に基づいて相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
発泡成形品における独立気泡率を具体的にどの程度の範囲に設定するかは当業者が適宜決定し得ることであり、また、独立気泡率が高いほど発泡樹脂への水の浸み込みが抑えられることは例示するまでもない技術常識であるから、水の浸透を防止することを目的として甲1発明において中央部や挿し口を含む発泡塩化ビニル樹脂層22の独立気泡率をできるだけ高く設定して90%以上とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
したがって、甲1発明及び技術常識に基づいて相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点3について>
甲1発明と甲5事項Aは、発泡樹脂の部分を有する管継手に関する点で技術分野が共通している。
また、甲1発明の管継手20においても、配管同士を水密、かつ強固に接合することは、内在した課題であり、甲1発明に甲5事項Aを適用する動機付けが存在する。
甲1発明に甲5事項Aを適用して、リブ22bを含む発泡塩化ビニル樹脂層22全体の発泡倍率を2.0倍以下の範囲に設定することは、当業者であれば容易に想到し得る。
また、甲5事項Bに示されるように、発泡倍率が低い範囲では保温性、遮音性、結露防止性、耐衝撃性に劣ることは技術常識であるから、当該技術常識を考慮して発泡倍率の範囲の下限を1.2倍に設定することも、当業者であれば適宜なし得ることである。
したがって、甲1発明、甲5事項A及び甲5事項Bに示される技術常識に基づいて相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点4について>
第4.1(3)で示したとおり、甲1発明の管継手20には排水管10が挿入される挿し口が形成されている。そのため、甲1発明の管継手20において、排水管10の挿入に伴って管継手20に生じる負荷に耐えうるだけの強度が求められていることは明らかである。相違点4に係る構成とするためには、甲1発明において、硬質塩化ビニル樹脂管21を除去して発泡塩化ビニル樹脂層22だけからなるものとする必要があるが、硬質塩化ビニル樹脂管21を除去することは、管継手20の強度の低下をもたらすおそれがあることから、阻害事由に該当する。
そのため、甲1に甲1技術事項Bとして、「平均発泡倍率が2?7倍の発泡塩化ビニル樹脂11によって構成されている排水管10において、排水管10の内周面および外周面に形成されたスキン層12、13は、発泡されていて完全な非発泡ではなく、発泡塩化ビニル樹脂11は、独立気泡型が使用される点。」、すなわち、排水管において熱可塑性樹脂からなる発泡性樹脂のみで構成する点が記載されていても、甲1発明に甲1技術事項Bを適用する動機付けは存在しない。
さらに、本件発明1は、「ただし、非発泡樹脂と発泡樹脂を積層したものを除く。」と特定することにより、硬質塩化ビニル樹脂管21と発泡塩化ビニル樹脂層22とが積層されている甲1発明を、そもそも除外するものである。
したがって、甲1発明において、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。

よって、本件発明1は、甲1発明を主引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるから、同様に、甲1発明を主引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲2発明を主引用発明とした場合
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲2発明の「本体部」は、本件発明1の「本体部」に、
甲2発明の「受口11、12、12、13」は、本体部の開口に形成されたものであること、及び、排水ます1が射出成形により一体形成されたことを踏まえると、本件発明1の「受口部」に、
甲2発明の「低発泡体」は、その材料としてポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂が使用されているから、本件発明1の「熱可塑性樹脂からなる発泡性樹脂」に、それぞれ相当する。
また、甲2発明の「本体部と、該本体部の開口に形成された受口11、12、12、13と、を有」する「排水ます1」が「低発泡体を使用して射出成形により一体形成された」ことは、本件発明1の「熱可塑性樹脂からなる発泡性樹脂を発泡させて前記本体部と前記受口部とが一体的に形成された」ことに相当する。
また、甲2発明の「低発泡体の発泡倍率は1.2倍?3倍程度であ」ることは、甲2発明の排水ます1が低発泡体を使用して射出成形により一体形成されていることを踏まえると、本件発明1の「受口部の」「発泡倍率が1.0倍以上であること」に、相当する。
また、甲2発明の「低発泡体の発泡倍率は1.2倍?3倍程度であ」ることは、甲2発明の排水ます1が低発泡体を使用して射出成形により一体形成されていることを踏まえると、本件発明1の「前記本体部における本体肉厚部は、」「発泡倍率が1.2倍?2.0倍」であることと、本体部における発泡倍率の範囲が1.2倍以上であるかぎりにおいて一致している。
また、甲2発明の「排水ます1」は低発泡体を使用して射出成形により一体形成されたものであり、単独の樹脂で製造されることから、甲2発明の「排水ます1」は非発泡樹脂と発泡樹脂を積層したものではないといえ、本件発明1の「非発泡樹脂と発泡樹脂を積層したものを除」いたものに相当する。
そして、甲2発明の「排水ます1」は、本件発明1の「発泡管継手」と、部材であるという点において一致している。

本件発明1と甲2発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する一方、以下の各点で相違する。

<一致点>
「本体部と、該本体部の開口部に一体に形成された受口部と、を有し、熱可塑性樹脂からなる発泡性樹脂を発泡させて前記本体部と前記受口部とが一体的に形成された部材であって、
前記本体部における発泡倍率の範囲が1.2倍以上であり、
前記受口部の発泡倍率が1.0倍以上である部材(ただし、非発泡樹脂と発泡樹脂を積層したものを除く。)。」

<相違点5>
本件発明1では、「発泡管継手の外面にゲート部を有し」、「前記本体部における本体肉厚部は、」「前記ゲート部からの距離が大きくなるほど低密度であ」るのに対して、甲2発明は、ゲート部を有するか否か不明である点。

<相違点6>
本件発明1では、「本体部」に「本体肉厚部」が設けられているのに対して、甲2発明では、「本体部」に「本体肉厚部」が設けられているか否か不明である点。

<相違点7>
本体部における発泡倍率に関して、本件発明1では、本体肉厚部について「1.2倍?2.0倍」であるのに対して、甲2発明では「1.2倍?3倍程度」である点。

<相違点8>
独立気泡率に関して、本件発明1では、「前記本体部における本体肉厚部は、独立気泡率が90%以上」、「前記受口部の独立気泡率は、90%以上」としているのに対して、甲2発明では独立気泡率が具体的にどの程度であるか不明である点。

<相違点9>
本件発明1は「発泡管継手」であるのに対して、甲2発明は「排水ます」である点。

イ 判断
<相違点5について>
第4.2(3)で示したとおり、甲2発明の排水ます1は低発泡体を使用して射出成形により一体形成されたものである。
ここで、射出成形により成形した成形品の外面にゲート部が形成されることは、例示するまでもない技術常識である。また、甲3事項に示されるように、発泡樹脂による成形品においてゲートから遠ざかるに従って次第に発泡倍率が上昇すること、すなわち、発泡樹脂による成形品においてゲート部からの距離が大きくなるほど低密度となることも技術常識である。
これらの技術常識を踏まえると、甲2発明の排水ます1において、その外面にゲート部が形成され、排水ます1全体においてゲート部からの距離が大きくなるほど低密度となっていることは明らかである。
したがって、相違点5は実質的な相違点ではない。

<相違点6について>
求められる強度等に応じて各部位の厚さを設定することは、例示するまでもなく、広く知られている周知技術であって、甲2発明の排水ます1においても、本体部に肉厚を他の箇所よりも厚く構成した部分を設けることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
したがって、甲2発明及び上記周知技術に基づいて相違点6に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点7について>
甲2発明の排水ます1の発泡倍率の範囲の上限をどの程度に設定するかは、排水ます1に求められる仕様を考慮して当業者が適宜決定することである。また、甲5事項Bに示されるように、発泡倍率が大きくなるにつれて剛性が低下し外力に対して破損しやすくなることは技術常識であって、当該技術常識を考慮して発泡倍率の上限を2.0倍に設定することは、当業者にとって格別困難なことではない。
したがって、甲2発明、甲5事項Bに示される技術常識に基づいて相違点7に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点8について>
甲2には、排水ます1内部を流通する水の浸み込みを抑制することに関する示唆はない。また、甲2発明の排水ます1において、水の浸み込みを抑制する必要性があるとも認めらない。そのため、甲1において、甲1事項Aや甲1発明のように、排水管や管継手において、水の浸透を防止するために独立気泡型の発泡塩化ビニル樹脂を使用する点が記載されていても、甲2発明の排水ます1に、甲1に記載された技術的事項を適用する動機付けがない。
したがって、甲2発明において、相違点8に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。

<相違点9について>
甲2発明の排水ます1を管継手に変更する必要性はなく、当業者といえども、甲2発明の排水ます1を管継手にすることは、容易であるとはいえない。
したがって、甲2発明において、相違点9に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。

よって、本件発明1は、甲2発明を主引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるから、同様に、甲2発明を主引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)小括
本件発明1ないし3は、甲1発明及び甲2発明のいずれを主引用発明とした場合でも、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 申立理由2(明確性要件)について
申立人は、特許異議申立書において、請求項1における「前記受口部の・・・発泡倍率が1.0倍以上である」という記載に関して、当該記載には、受口部の発泡倍率が1.0倍である場合が包含されるが、受口部の発泡倍率が1.0倍である場合がどのような状態であるのか不明確である旨を主張している(第12ページ第17行-第25行)。また、請求項1を引用する請求項2、3も同様である旨を主張している(第12ページ第26行)。
しかし、請求項1における「前記受口部の独立気泡率は、90%以上」との記載から、受口部で独立気泡率を定義することができること、すなわち、受口部において発泡していることが明らかであり、本件発明1では「受口部の発泡倍率が1.0倍である場合」は実質的に排除されていると解される。
そのため、本件発明1が不明確であるとはいえない。
また、本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるから、同様である。
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす。

3 申立理由3(サポート要件)について
(1)発泡倍率と独立気泡率の数値範囲について
申立人は、特許異議申立書において、請求項1では、本体肉厚部の発泡倍率が1.2倍?2.0倍、受口部の発泡倍率が1.0倍以上と規定されているが、本件特許の明細書の実施例としては、第1本体部、第2本体部及び受口部の発泡倍率がそれぞれ1.43、1.44、1.35である発泡管継手だけしか開示されておらず、本件特許の明細書の記載から、請求項1で特定された範囲まで一般化できない旨を主張している(第13ページ第2行-第15行、第20行-第21行)。また、請求項1を引用する請求項2、3も同様である旨を主張している(第13ページ第22行-第23行)。
また、申立人は、特許異議申立書において、請求項1における独立気泡率が90%以上であることについても、本件特許の明細書の記載から、請求項1で特定された範囲まで一般化できない旨を主張している(第13ページ第16行-第21行)。また、請求項1を引用する請求項2、3も同様である旨を主張している(第13ページ第22行-第23行)。
しかし、独立気泡率が高いほど水の浸み込みを抑制することができるという技術常識を踏まえると、請求項1で特定された独立気泡率の数値範囲内において、本件特許の明細書の段落【0006】に記載された「継手内部を流通する水が浸み込むことを抑制することができる発泡管継手を提供すること」との課題を解決できるものと認められるから、本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。
また、発泡倍率について具体例が1つだけしか記載されていなかったとしても、請求項1で特定された発泡倍率の数値範囲内において、上記課題を解決できると認められるから、本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。
また、本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるから、同様である。

(2)熱可塑性樹脂の種類について
申立人は、特許異議申立書において、請求項1では、発泡管継手が熱可塑性樹脂から形成される点について規定されており、あらゆる種類の熱可塑性樹脂により形成された発泡管継手が包含されるが、本件特許の明細書の実施例としては、塩化ビニル樹脂を用いて形成された発泡管継手だけしか開示されておらず、本件特許の明細書の記載から、請求項1で特定された範囲まで一般化できない旨を主張している(第13ページ第24行-第29行)。また、請求項1を引用する請求項2、3も同様である旨を主張している(第14ページ第2行)。
しかし、本件特許の明細書の段落【0019】において、
「発泡性樹脂として、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂(特に、可塑剤を実質的に含まない硬質ポリ塩化ビニル樹脂)、ABS樹脂、AES樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、アクリル樹脂などの硬質の樹脂を使用することができる。さらに、発泡性樹脂は、これらの硬質の樹脂に、発泡剤として加熱によりガスを発生させるアゾジカルボンアミド(大塚化学社製AZ-HM)や重曹などを混入したものや、高圧下で二酸化炭素や窒素などのガスを溶解させたものなどを使用することができる。」
と記載されており、本件特許の発明の詳細な説明には発泡管継手で用いる材料として塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂でもよいことが記載されている。
そして、管継手の材料として塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂が一般的に使用されていることは技術常識であり、当該技術常識を踏まえると、本件特許の発明の詳細な説明には、塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂により形成された発泡管継手も開示されていると認められる。
したがって、本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。
また、本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるから、同様である。

(3)発泡管継手の形状について
申立人は、特許異議申立書において、請求項1では、発泡管継手の形状について規定されていないため、あらゆる種類の形状の発泡管継手が包含されるが、本件特許の明細書の実施例としては、チーズ形状を有する発泡管継手だけしか開示されておらず、本件特許の明細書の記載から、請求項1で特定された範囲まで一般化できない旨を主張している(第14ページ第3行-第12行)。また、請求項1を引用する請求項2、3も同様である旨を主張している(第14ページ第14行-第15行)。
しかし、本件特許の明細書の段落【0039】において、
「発泡管継手1として、チーズ部材を対象としているが、継手形状はこれに制限されることはなく、例えばエルボ、レジューサ、バルブソケット、ニップル等を対象とすることができる。」
と記載されており、本件特許の発明の詳細な説明には発泡管継手の形状としてチーズ以外の形状でもよいことが記載されている。
そして、管継手の形状にはチーズ以外にもエルボ、レジューサ、バルブソケット、ニップル等の形状が存在することは技術常識であり、当該技術常識を踏まえると、本件特許の発明の詳細な説明には、チーズ以外の形状をした発泡管継手も開示されていると認められる。
したがって、本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。
また、本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるから、同様である。

(4)小括
以上から、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす。

4 申立理由4(実施可能要件)について
(1)発泡倍率と独立気泡率の数値範囲について
申立人は、特許異議申立書において、請求項1では、本体肉厚部の発泡倍率が1.2倍?2.0倍、受口部の発泡倍率が1.0倍以上、独立気泡率が90%以上と規定されているが、本件特許の明細書を参酌しても、どのようにして規定される発泡倍率や独立気泡率を達成するのか、すなわち、本件発明1の発泡管継手をどのようにして製造するのか不明である旨を主張している(第13ページ第2行-第22行)。また、請求項1を引用する請求項2、3も同様である旨を主張している(第13ページ第22行-第23行)。
しかし、発泡樹脂の発泡倍率や独立気泡率を調整する技術は本件特許の出願日前から広く知られている周知技術であり、当業者であれば、本件特許の発明の詳細な説明の記載の下、当該周知技術を踏まえて、発泡倍率や独立気泡率を上記の数値範囲となるように調整して、本件発明1の発泡管継手を製造できるものと認められる。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1の発泡管継手を実施できる程度に記載されたものである。
また、本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるから、同様である。

(2)熱可塑性樹脂の種類について
申立人は、特許異議申立書において、請求項1では、発泡管継手が熱可塑性樹脂から形成される点について規定されており、あらゆる種類の熱可塑性樹脂により形成された発泡管継手が包含されるが、本件特許の明細書の実施例としては、塩化ビニル樹脂を用いて形成された発泡管継手だけしか開示されておらず、塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を用いて発泡管継手をどのように製造するのか不明である旨を主張している(第13ページ第24行-第14ページ第1行)。また、請求項1を引用する請求項2、3も同様である旨を主張している(第14ページ第2行)。
しかし、本件特許の明細書の段落【0019】において、
「発泡性樹脂として、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂(特に、可塑剤を実質的に含まない硬質ポリ塩化ビニル樹脂)、ABS樹脂、AES樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、アクリル樹脂などの硬質の樹脂を使用することができる。さらに、発泡性樹脂は、これらの硬質の樹脂に、発泡剤として加熱によりガスを発生させるアゾジカルボンアミド(大塚化学社製AZ-HM)や重曹などを混入したものや、高圧下で二酸化炭素や窒素などのガスを溶解させたものなどを使用することができる。」
と記載されており、本件特許の発明の詳細な説明には発泡管継手で用いる材料として塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂でもよいことが記載されている。
そして、塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を使用して管継手を製造することは本件特許の出願日から広く知られた周知技術であって、当業者であれば、本件特許の発明の詳細な説明の記載の下、当該周知技術を踏まえて、塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を材料として本件発明1の発泡管継手を製造できるものと認められる。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1の発泡管継手を実施できる程度に記載されたものである。
また、本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるから、同様である。

(3)発泡管継手の形状について
申立人は、特許異議申立書において、請求項1では、発泡管継手の形状について規定されていないため、あらゆる種類の形状の発泡管継手が包含されるが、本件特許の明細書の実施例としては、チーズ形状を有する発泡管継手だけしか開示されておらず、本件特許の明細書の記載から、チーズ以外の形状を有する発泡管継手をどのようにして製造するか不明である旨を主張している(第14ページ第3行-第14行)。また、請求項1を引用する請求項2、3も同様である旨を主張している(第14ページ第14行-第15行)。
しかし、本件特許の明細書の段落【0039】において、
「発泡管継手1として、チーズ部材を対象としているが、継手形状はこれに制限されることはなく、例えばエルボ、レジューサ、バルブソケット、ニップル等を対象とすることができる。」
と記載されており、本件特許の発明の詳細な説明には発泡管継手の形状としてチーズ以外の形状でもよいことが記載されている。
そして、チーズ以外のエルボ、レジューサ、バルブソケット、ニップル等の形状の管継手の製造方法は本件特許の出願日前から広く知られている周知技術であって、当業者であれば、本件特許の発明の詳細な説明の記載の下、当該周知技術を踏まえて、チーズ以外の形状の本件発明1の発泡管継手を製造できるものと認められる。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1の発泡管継手を実施できる程度に記載されたものである。
また、本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであるから、同様である。

(4)小括
以上から、本件特許の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-03-26 
出願番号 特願2016-40401(P2016-40401)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (F16L)
P 1 651・ 537- Y (F16L)
P 1 651・ 121- Y (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤原 弘  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 槙原 進
後藤 健志
登録日 2020-05-26 
登録番号 特許第6709080号(P6709080)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 発泡管継手  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 森 隆一郎  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 佐伯 義文  

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