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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1372993
審判番号 不服2020-8439  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-17 
確定日 2021-04-27 
事件の表示 特願2017-504876「拡散板」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月15日国際公開、WO2016/143350、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2017-504876号(以下「本件出願」という。)は、平成28年3月10日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年3月12日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和元年 8月16日付け:拒絶理由通知書
令和元年10月23日提出:意見書
令和2年 3月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年 6月17日提出:審判請求書
令和2年12月16日付け:拒絶理由通知書
令和3年 2月16日提出:意見書
令和3年 2月16日提出:手続補正書


第2 本件発明
本件出願の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明8」という。)は、令和3年2月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるところ、本件発明1?本件発明4は、それぞれ、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
主面に2種類以上のレンズ機能を有する複数の微細構造体が配列された、所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一な拡散板であって、
前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦400[μm^(2)]を満たし、
当該拡散板は透過型の拡散板であり、
前記複数の微細構造体は凸形状であり、
前記複数の微細構造体の凸面の頂点の前記主面からの最大高さと最小高さとの差をΔH[μm]、前記微細構造体の屈折率をn、入射光の波長をλ[nm]としたとき、
0.2≦ΔH×(n-1)×1000/λ
の関係を満たす
ことを特徴とする拡散板。」

「 【請求項2】
主面に2種類以上のレンズ機能を有する複数の微細構造体が配列された、所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一な拡散板であって、
前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦400[μm^(2)]を満たし、
当該拡散板は透過型の拡散板であり、
前記複数の微細構造体は凹形状であり、
前記複数の微細構造体の凹面の頂点の前記主面からの最大深さと最小深さとの差をΔD[μm]、前記微細構造体の屈折率をn、入射光の波長をλ[nm]としたとき、
0.2≦ΔD×(n-1)×1000/λ
の関係を満たす
ことを特徴とする拡散板。」

「 【請求項3】
主面に2種類以上のレンズ機能を有する複数の微細構造体が配列された、所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一な拡散板であって、
前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦400[μm^(2)]を満たし、
当該拡散板は反射型の拡散板であり、
前記複数の微細構造体は凸形状であり、
前記複数の微細構造体の凸面の頂点の前記主面からの最大高さと最小高さとの差をΔH [μm]、入射光の波長をλ[nm]としたとき、
0.1≦ΔH×1000/λ
の関係を満たす
ことを特徴とする拡散板。」

「 【請求項4】
主面に2種類以上のレンズ機能を有する複数の微細構造体が配列された、所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一な拡散板であって、
前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦400[μm^(2)]を満たし、
当該拡散板は反射型の拡散板であり、
前記複数の微細構造体が凹形状であり、
前記複数の微細構造体の凹面の頂点の前記主面からの最大深さと最小深さの差をΔD[μm]、入射光の波長をλ[nm]としたとき、
0.1≦ΔD×1000/λ
の関係を満たす
ことを特徴とする拡散板。」

なお、本件発明5?本件発明8は、本件発明1?本件発明4に対してさらに他の発明特定事項を付加したものである。


第3 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特表2004-505306号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。なお、「I. 発明の分野」等の項目以外の箇所に付された下線は、当合議体が付したものであり、発明の認定等に用いた箇所を示す。

(1)「【発明の詳細な説明】
【0001】
I. 発明の分野
本発明は、平坦であるかまたは彎曲していてもさしつかえない1つまたは複数の表面が、制御された角度範囲にわたる、有効視野にかけて制御可能な強度変化をもつ分散(本明細書では“拡散”または“散乱”とも称される)を入射ビームにおこさせ得る微細構造分布をもつ基板からなる光デバイスを開示する。本明細書において、前記デバイスは“構造化スクリーン”あるいは単に“スクリーン”と称される。
【0002】
本発明の構造化スクリーンは、一般に2つの大きなカテゴリー、すなわち拡散スクリーン及び表示スクリーンに属する複数の用途を有する。さらに詳しくは、構造化スクリーンの用途には、特定の視野角にわたり一様な照明を与えるための、写真カメラ用集光スクリーンと組み合わされるかまたはそのような集光スクリーンとしての、照明の一様化、並びに、スタンドアローン装置としてあるいは必要な別のハードウエアと組み合わされる、バックライト型ディスプレイ、液晶フラットパネルディスプレイ及びその他のタイプのディスプレイにおける用途があるが、これらには限定されない。
【0003】
構造化スクリーンを用い得る機器の例には、写真カメラ、コンピュータスクリーン、テレビジョンセット、投影スクリーン、セルラー電話、及び汎用映像表示装置があるが、これらには限定されない。」

(2)「【0096】
V. 実施例
以下の、限定的ではない実施例は、上述した技法を用いる構造化スクリーンの設計を示す。それぞれの実施例において、1つまたは複数のスクリーン面の構造は、観察者の一般的位置である、遠距離場での光分散(散乱)パターンの正確な整形(制御)を可能にするように、十分な精度をもって個々の位置のそれぞれで制御される。特に、散乱面は詳細に知られるから、回折方程式を用いて散乱面の光学的挙動を確実にモデル化することができ、したがって期待されるスクリーン性能をスクリーン製造に関わる公差とともに決定できる。
【0097】
上で論じたように、散乱パターンを適切に調整するためには、基本的に局所及び大局的成分に分離することができる、いくつかの自由度を利用する必要がある。スクリーン自体は、全体として作用して所望の散乱パターンを生成する微細素子(微細構造)からなる。それぞれの微細構造は一組のパラメータで定めることができる。局所成分がある。例えばマイクロレンズの場合には、局所パラメータは、曲率半径、円錐定数、直径等とすることができる。大局的パラメータは、局所パラメータがしたがわなければならない(確率密度関数のような)規則及びそれぞれの微細構造の互いに対する空間的位置を定める。
【0098】
やはり上で論じたように、微細構造の空間的配列及び位置を定めるためには、それぞれの微細構造の中心及び大局的原点を定める、便宜的におかれた座標系を採用できる。大局的成分はこの座標系に対して定められる。それぞれの微細構造の原点において、微細構造を数学的に定めるに必要な基準を与える局所座標系を関連付けることもできる。スクリーンによりつくられる散乱パターンを事実上無制限に整形できるのは、局所及び大局的成分によるものである。
【0099】
以下の実施例は、スクリーンの散乱パターンへの様々な大局的及び局所パラメータの効果を示す。詳しくは、実施例1は散乱パターンの形状における局所自由度の重要性を示し、実施例2及び3は1つまたは複数のスクリーン面上の微細構造の縦方向オフセット及び全体的空間配置をそれぞれ扱い、実施例4はスクリーンパラメータのランダム化を扱う。最後に、実施例5及び6は拡散スクリーン及び表示スクリーンの製造への本発明の例証的適用を提示する。
【0100】
様々な実施例の構造化スクリーンに対する指定は、それぞれの指定が対応する構造に関して、実施例の最後に見られるスクリーン設計表で述べられる。
【0101】
実施例1
微細構造形状の効果
本実施例は、光分散パターンの調整におけるそれぞれの微細構造の形状の重要性を示す。
【0102】
初めに発明者等は、パラメータの内のいくつかはランダムな変数である、1つまたはそれ以上のパラメータの関数として表わすことができる形状をもつ同一の微細構造の規則的アレイを考察する。例えば球面形状の微細構造は、R-(R^(2)-r^(2))^(1/2)で与えられるサグ関数を有する。ここでRは曲率半径を表わし、rは原点から径方向の位置を表わす。この定義にしたがえば、アレイは曲率半径が可能な限り可変の球面マイクロレンズからなる。それぞれの微細構造の寸法はスクリーン全面で同じであり、よってランダム性の存在は、特定のパラメータ、すなわち球面マイクロレンズの曲率半径に限定される。
【0103】
初めに、2から4μmの波長範囲の赤外領域での動作のためにシリコンでつくられたスクリーンを考察する。図26は、直径が100μmの球面マイクロレンズのアレイに関する遠距離場散乱プロファイルを示す。マイクロレンズのサグは10μmに固定されている。
【0104】
ここで球面レンズを別の全く異なる形状をもつ、例えば三角錐の微細構造で置き換えれば、図27に示される散乱パターンが見られる。それぞれの微細構造は、底辺が100μmで深さが10μmの等稜三角錐であること、すなわち基本寸法は球面マイクロレンズアレイの基本寸法と同じであることに注意されたい。アレイは三角溝回折格子によく似ているから、2つの主回折次数に対応する2つの別々の強度ピークが観察される。
【0105】
別の例として、曲率半径R=100μm及び円錐定数κ=-2をもつ双曲面プロファイルを考察する。これらのパラメータにより、直径が100μmのマイクロレンズのサグはやはり10μmとなる。図28に示されるように、全体的な散乱プロファイルは球面マイクロレンズで観察された散乱プロファイル(図26参照)と同様であるが、パターンの両縁端におけるピーク強度増大が顕著である。
【0106】
図26から図28に示される微細構造形状の効果は、開口数が大きくなるとともにさらに劇的にさえなり得る。
【0107】
微細構造形状の効果のまた別の例として、400nmから700nmの間で動作するように設計されたアクリル樹脂のスクリーンを考察する。スクリーンは、直径が50μmの球面マイクロレンズの規則的アレイからなる。図29及び30は、そのようなアレイに関し、2つのマイクロレンズ深さ、すなわち図29では12μm、図30では20μmについての散乱プロファイルを示す。これらの図からわかるように、マイクロレンズ深さによりスクリーンの散乱パターンの整形に対する別のパラメータが与えられる。
【0108】
全サグ(全深さ)が20μmの放物面マイクロレンズ形状の場合が図31に示される。放物面プロファイルにより、球面またはその他のプロファイルと比較してかなり平坦な(したがって高利得の)散乱プロファイルの生成が可能になる。サグの最小限界では球面プロファイルと放物面プロファイルとの間にほとんど差がなく、散乱パターンは事実上同一である。しかし、マイクロレンズサグが大きくなるとともに、これら2つのプロファイルの間の違いはもはや無視できなくなり、この違いが散乱パターンに直接に反映される。
【0109】
ここで学ぶべき重要な教訓は、微細構造の形状を散乱プロファイルの形状の制御に用い得ることである。発明者等は、散乱の可変性を用いられる形状の関数として示すいくつかの例を提示した。逆の経路をたどって注目するいずれかの散乱パターンを定めること及び、最適化アルゴリズムを用いて、所望の散乱パターンを最善に近似するサグプロファイルを計算することができる。
【0110】
発明者等が示す最後の注記として、上記実施例は規則的アレイに限られているが、アレイの周期性による効果を回避するためにはランダムアレイを考慮することが一般に望ましい。ランダム化により、散乱パターンにおける大きな強度変動が最小限に抑えられる傾向がある。さらに、2つの局所周期的なパターンの重畳によるエイリアシングまたはモアレ縞のような望ましくない視覚的効果が排除される傾向もある。しかし、ランダム化が規則的アレイで観察される基本的形状を大きく変えることはない。ランダム化は基本的散乱パターンをより一様かつ堅固にするだけである。
【0111】
実施例2
縦オフセットの効果
実施例1で示したように、微細構造プロファイルが基本的に散乱パターンの形状及び発散スパンを決定する。プロファイルのランダム化は高空間周波数発振を低減し、より平滑なパターンを得るに役立つ。動作スペクトル帯に依存して、スクリーンの性能に有害なホットスポットが生じ得る(例えば図26を参照)。
【0112】
散乱パターンを一様化し、ホットスポットの影響を少なくするために役立つ別のパラメータを与えるに有用な重要要素は、マイクロレンズの縦方向オフセットすなわちピストンである。縦方向オフセットの効果は、基本的にマイクロレンズを有限の量だけその対称軸に沿って変位させることである。正味の結果は、微細構造の頂点または原点の相対位置がスクリーン上でピストンの関数として変わることである。
【0113】
この効果を示すため、発明者等は図26を生成するために用いた、すなわち直径が100μmでサグが10μmの球面マイクロレンズの、アレイを再び考察する。ピストン無し及びピストン付のスクリーンプロファイルの断面が、それぞれ図32及び図33に示される。散乱パターンへのオフセットの効果が、図26のパターンと比較されるべき、図34に示される。図34では中央のホットスポットの消失が明らかである。
【0114】
縦方向オフセットの一様化効果の一例として、図33に示した球面マイクロレンズと同じアレイであるが、この場合は赤外領域の代わりに400nmから700nmの可視領域で動作するアレイを考察する。縦方向オフセットがある場合の散乱パターンとない場合の散乱パターンが、図35にそれぞれ実線及び破線で示される。
【0115】
上記の結果はホットスポットの低減及び散乱パターンの一様化における縦方向オフセットの効果を明らかにしている。この効果をそれだけで用いるか、またはその他のランダム化と併用することにより、視覚的アーティファクトまたは激しい強度変動が最小限に抑えられた、平滑な散乱パターンを得ることができる。」
【0116】
実施例3
微細構造の空間的配置
散乱パターンに強く関連する決定的な大局的パラメータは、スクリーン上の微細構造の空間的配置である。空間的配置の主要な影響は散乱パターンの全体的な対称性に表れる。
【0117】
例えば、図36の規則的直方アレイは、マイクロレンズの局所的形状により導入される発散角に依存する、長方形に似た3次元パターンを生成する。他方で、図37の六方アレイは、マイクロレンズの形状により導入される発散角に依存して、一方向に沿って他の方向より引き伸ばされ得る六角形の散乱パターンを生成する。
【0118】
幾何学的考察の他に、全体的対称性は、どれだけのエネルギーが観測面に集中するかに影響することが主要な理由であるだけでも、多くの態様で重要である。例えば、同様の空間的伸張をもつパターンに関して、図37の六方配列は図36の直方配列より多くの光を集中させる。この結果、六方アレイによる散乱パターンは等価な直方アレイより高い利得、すなわち指定された角度範囲にわたる散乱を示す。
【0119】
利得に加えて、特定の空間的配置の実装を考察する際に入ってくる重要な製造問題もある。例えば、隅があるため、直方アレイは一般に六方アレイより深さがあり、したがって製造がより困難である。
【0120】
散乱パターンの観点から、関連する2つの第一義的要因は強度プロファイル形状及び発散角である。形状は微細構造のプロファイル(サグ関数)で制御され、一方発散角はプロファイルの傾き(サグ関数の一次導関数)で制御される。
【0121】
したがって、個々のプロファイルが適切に定められた平滑パターンに関してランダム化されて、所望の発散角を与える限り、微細構造の特定の寸法及び分布を問題にすべきではない。しかし、視覚的システムでは、散乱パターンでは明白でなく、投影像と離散個別微細構造の存在により生じるサンプリング効果との間の相互作用を表わす、微細構造の空間的配置にともなう付加的効果がある。
【0122】
上記の相互作用の簡単な例が、市販デジタルカメラで撮られた空間周波数の高い構造をもつ写真で容易に見てとれる、エイリアシングである。別の効果は、やはり一定のサンプリングと投影された画像における色分布の結果として生じる、色帯の出現である。遠距離場におけるスクリーン性能とは無関係に、散乱素子が十分に小さくない限り、サンプリングによる効果は生じ得るし、これを処理する必要がある。
【0123】
上記の効果を完全に排除するための1つの方法は、微細構造の規則的な空間的配置を放棄したスクリーン構造を用いることである。これは、微細構造が局所パラメータ及び空間的境界の両者によって特徴づけられるスクリーン構造を採用することにより達成でき、ここで空間的境界は微細構造を囲む、閉じた線である。例えば、直方アレイに対して境界は矩形であり、一方ハニカム配列に対して境界は六角形である。
【0124】
1次元においては、直径が可変の円柱を用いることで規則的な空間的配置を回避することができる。2次元では、最も一般的な形態において、境界を多角形状の連続線とすることができる。スクリーン全面に微細構造の境界を定める多角形状の連続線の完全集合は一般に(ただし必須である必要はない)、図38に示されるように、最密充填形態で配置されることになろう。別の、規則的な空間的配置を回避し、実装がより簡単である可能な配置では、図39に示すようなマイクロレンズのモザイク分布をなす矩形またはその他の形状につくられたセルが採用される。モザイクすなわち一般的な多角形境界の特有の利点は、2つまたはそれ以上のスクリーンアレイを傾けて配置してより大きなスクリーンを構成することにより生じる欠陥の影響が低減されることである。
【0125】
実施例4
ランダム化プロセス
スクリーン上の微細構造の周期的繰返しによるアーティファクトの存在を回避するに特に有効な方法は、所望に応じて、局所パラメータまたは大局的パラメータのいずれかに、あるいは局所パラメータ及び大局的パラメータのいずれにも適用できる、ランダム化を用いることである。
【0126】
いかなる乱数の集合も、パラメータの許容範囲においてある指定された値を選択する確率を基本的に定める、確率分布関数(PDF)を満足する。簡単であり、ほとんどのコンピュータで利用できることから、好ましいPDFは一様PDFである。この場合、許容範囲のパラメータのそれぞれの値に等しい確率が割り当てられる。スクリーンの個々の微細構造のそれぞれの形状を正確に定めることができるのであれば、ランダム化に用いられるべき特定のPDFを少数の特定のタイプに限定する必要はなく、任意の形とすることができる。さらに、所望の散乱パターン特性に依存して、相異なるパラメータに相異なるPDFを適用することができる。
【0127】
特定のPDF割当ての効果の簡単な例として、最大サグが5から15μmの範囲にあり、縦方向オフセットが±2μmの範囲において一様PDFでランダム化された値に等しい、直径が100μmの球面マイクロレンズのランダムアレイの場合を考察する。
【0128】
したがって、マイクロレンズ自体のランダム化に利用できるパラメータは、それぞれのマイクロレンズの曲率半径及び最大サグだけである。しかし、適用されるべきPDFの特定の関数形に加えて、PDFが曲率半径または最大レンズサグのいずれに適用されるかに依存する、ランダム化を達成するための2つの相異なる手順がある。サグは曲率半径に直接に関連するので、PDFも同様に関連することになろう。
【0129】
上記の効果の一例が図40及び図41に示される。パラメータに一様PDFを適用して変化させた結果が、サグへの一様PDF適用に対するパターンが実線で表わされ、曲率半径への一様PDF適用に対するパターンが破線で表わされている、図42の散乱パターンに示される。本図からわかるように、サグに一様分布を適用すると、散乱パターンはより大きな角度範囲にわたって分散する傾向がある。このより大きな角散乱は、サグに一様分布を適用した場合には、深いサグをもつレンズユニットの数が多くなることから生じている。
【0130】
散乱の仕様によっては、一様分布に加えて別の確率分布関数を用いることが望ましいこともある。例えば、ガウス分布により、指定された平均値の周りにパラメータ(例えばサグまたは半径)を集中させることができる。利用できるPDFのタイプには制限がなく、いくつかの拘束が所望のシステム性能により課せられるだけである。一様分布は、主としてその単純さにより、ほとんどの用途で選択される分布となる傾向がある。注目する多くの事例において、一様分布はシステム要件を満たすに十分である。しかし、必要に応じて任意のPDFを実施できることにより、散乱パターンを調整するために重要な自由度が得られる。」

(3)「【0140】
【表1】
スクリーン設計表
・・・省略・・・
【表3】
・・・省略・・・



(当合議体注:「微細構造サグ範囲」の「10?10μm」は、誤記ではなく、10μm(一定)であることを示している。)

(4)図34


(5)図40


(6)図41


2 引用発明
(1)引用文献1において、【0111】?【0115】に記載された実施例2は、球面マイクロレンズの直径は100μmであり、縦方向のオフセットがある場合の構造化スクリーンであるところ、実施例2に対応するスクリーン設計表は、【0140】の【表3】の図34のとおりであり、実施例2の構造化スクリーンに対応する散乱パターンの図は、【0140】の【表3】の図34とは別の図として図示された図34である。
(2)上記【0140】の【表3】の図34の記載において、「アレイ」は、引用文献1の【0111】?【0115】等の記載により、「マイクロレンズ」「アレイ」を意味し、「空間的配置」は、引用文献1の【0116】?【0124】等の記載により、「マイクロレンズ」の「空間的配置」を意味し、「微細構造」は、引用文献1の【0111】?【0115】等の記載により、「マイクロレンズ」を意味し、「PDF」は、引用文献1の【0125】?【0130】等の記載により、「確率分布関数」を意味する。
(3)上記の実施例2の構造化スクリーンに対応する散乱パターンが図示された図34の記載から、所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一であることが看取できる。
(4)そうしてみると、引用文献1には、実施例2の構造化スクリーンとして、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 マイクロレンズアレイであって、
マイクロレンズアレイタイプは円柱型であり、マイクロレンズの空間的配置は最密充填であり、マイクロレンズの直径は100μmであり、マイクロレンズのプロファイルは球面であり、マイクロレンズのサグ範囲は10?10μmであり、マイクロレンズの全アレイ深さ範囲は10μmであり、マイクロレンズのランダム化確率分布関数は規則的アレイであり、縦方向オフセットは±2μmであり、オフセットランダム化確率分布関数は一様であり、波長範囲は0.4?0.7μmであり、
所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一である、
構造化スクリーン。」

第4 対比・判断
1 引用文献1を主引例とした場合
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

(ア)微細構造体
引用発明の「構造化スクリーン」は、「マイクロレンズアレイタイプは円柱型であり、マイクロレンズの空間的配置は最密充填であり、マイクロレンズの直径は100μmであり、マイクロレンズのプロファイルは球面であり、マイクロレンズのサグ範囲は10?10μmであり、マイクロレンズの全アレイ深さ範囲は10μmであり、マイクロレンズのランダム化確率分布関数は規則的アレイであり、縦方向オフセットは±2μmであり、オフセットランダム化確率分布関数は一様であり、波長範囲は0.4?0.7μmであ」る。
上記構成からみて、引用発明の「マイクロレンズ」及び「マイクロレンズアレイ」は、それぞれ、本件発明1の「微細構造体」及び「複数の微細構造体」に相当する。
また、引用発明の「マイクロレンズ」は、技術的にみて、レンズ機能を有し、引用発明の「マイクロレンズ」は、凸形状であるといえる。そうしてみると、引用発明の「マイクロレンズアレイ」は、本件発明1の「複数の微細構造体」の「レンズ機能を有する」及び「凸形状であり」との要件を満たす。

(イ)拡散板
引用発明の「構造化スクリーン」は、「マイクロレンズアレイであって」、「所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一である」。
引用発明の「構造化スクリーン」が板であることは自明であることと、上記(ア)及び上記の構成からみて、引用発明の「構造化スクリーン」は、本件発明1の「拡散板」に相当する。
また、通常、レンズを有する面を主面ということから、引用発明の「構造化スクリーン」は、主面に複数の「マイクロレンズ」が配列されたといえる。そうしてみると、引用発明の「構造化スクリーン」は、本件発明1の「拡散板」の「主面に」「複数の微細構造体が配列された」との要件を満たす。
さらに、上記構成からみて、引用発明の「構造化スクリーン」は、本件発明1の「拡散板」の「所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一」であるとの要件を満たす。

イ 一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明とは、
「 主面にレンズ機能を有する複数の微細構造体が配列された、所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が略均一な拡散板であって、
前記複数の微細構造体は凸形状である、
拡散板。」
の点で一致し、以下の点で相違する又は一応相違する。

(相違点1)
「複数の微細構造体」の「レンズ機能」が、本件発明1は、「2種類以上」であるのに対して、引用発明は、1種類である点。
(当合議体注:引用発明は、「マイクロレンズ」のレンズ部分の形状(直径、プロファイル等)が同じであるから、「レンズ機能」は1種類と理解するのが自然である。)

(相違点2)
「拡散板」が、本件発明1は、「透過型」であるのに対して、引用発明は、透過型であるかどうかが一応明らかでない点。

(相違点3)
「拡散板」が、本件発明1は、「前記複数の微細構造体の平均ピッチをPとし、前記複数の微細構造体の各々の正面方向の相対輝度の標準偏差をSkとするときに、P≦200[μm]かつSk≧0.005であり、P×P×Sk≦400[μm^(2)]を満た」すのに対して、引用発明は、この要件を満たさない点。
(当合議体注:引用発明は、「マイクロレンズ」のレンズ部分の形状が同じであるから、Sk=0と理解するのが自然である。)

(相違点4)
「拡散板」が、本件発明1は、「前記複数の微細構造体の凸面の頂点の前記主面からの最大高さと最小高さとの差をΔH[μm]、前記微細構造体の屈折率をn、入射光の波長をλ[nm]としたとき、0.2≦ΔH×(n-1)×1000/λの関係を満たす」のに対して、引用発明は、そのような関係を満たすかどうかが一応明らかでない点。

新規性について
本件発明1と引用発明は、少なくとも上記イで述べた相違点1及び相違点3で相違するから、本件発明1と引用発明は、同一であるということができない。

進歩性について
事案に鑑みて、相違点3について検討する。
「マイクロレンズ」の形状に関して、引用文献1の【0125】?【0130】及び図40?42には、実施例4が記載されている。そして、上記の図40及び41には、それぞれ、マイクロレンズの曲率半径が一様に分布する場合と、マイクロレンズの曲率半径が一様に分布していない場合が記載されている。
そうしてみると、引用文献1には、実施例4の図41の態様として、マイクロレンズの曲率半径が一様に分布していない態様が記載され、その場合、標準偏差Skは0よりも大きくなるといえる。
そこで、引用発明の「マイクロレンズアレイ」において、引用文献1の実施例4の図41の態様(マイクロレンズの曲率半径が一様に分布していない態様)を採用した場合について、以下、検討する。
引用発明の「マイクロレンズアレイ」において、「マイクロレンズアレイタイプは円柱型であり、マイクロレンズの空間的配置は最密充填であり、マイクロレンズの直径は100μmであ」るから、その平均ピッチPは、100μmと考えられる。そうしてみると、引用発明の「マイクロレンズアレイ」においてマイクロレンズの曲率半径が一様に分布していない態様を採用する際には、Skが0.04以下となる限度において複数種類としなければ、相違点3に係る本件発明1の「P×P×Sk≦400[μm^(2)]」を満たせないこととなる(本件発明1の構成に到らなくなる。)。
しかしながら、引用文献1の実施例4の図41の態様のSkは、引用文献1に記載されていない。引用文献1には、Skに関する記載それ自体がない。まして、引用文献1には、Skの上限値や、上記相違点3に係る、「P×P×Sk≦400[μm^(2)]」というピッチPと標準偏差Skとの関係式についても記載がなく、示唆もない。さらに、原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されている国際公開第2014/104106号(以下、同じく「引用文献2」という。)においても、上記相違点3に係るピッチPと標準偏差Skとの関係を伺わせる記載はない。加えて、上記相違点3に係るピッチPと標準偏差Skとの関係が周知技術であるともいえない。
そして、本件発明1は、相違点3に係る本件発明1の構成により、本件明細書の【0021】に記載されているような、引用文献1?2に記載された発明の構成からは予測することができない効果を奏するものと理解される。
そうしてみると、たとえ当業者であっても、引用発明の「マイクロレンズアレイ」において、引用文献1の実施例4の図41の態様(マイクロレンズの曲率半径が一様に分布していない態様)を採用したとしても、上記相違点3に係る本件発明1の「P×P×Sk≦400[μm^(2)]」の要件を満たすものとすることが、容易になし得たということはできない。
なお、本件出願の明細書では、引用文献1が先行技術文献として挙げられており、その【0046】の記載によると、引用文献1の実施例4の図41の態様のSkは0.26であり、相違点3に係る本件発明1の「P×P×Sk≦400[μm^(2)]」の要件を満たすためのSkの上限値(0.04)を大きく上回っている。

オ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明であるということができない。また、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用文献1?2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

(2)本件発明2について
本件発明2と引用発明とを対比すると、本件発明2と引用発明とは、少なくとも上記相違点3の点で相違する。そうしてみると、上記(1)で示したのと同じ理由により、本件発明2は、引用文献1に記載された発明であるということができず、また、当業者であっても、引用文献1?2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

(3)本件発明3について
本件発明3と引用発明とを対比すると、本件発明3と引用発明とは、少なくとも上記相違点3の点で相違する。そうしてみると、上記(1)で示したのと同じ理由により、本件発明3は、引用文献1に記載された発明であるということができず、また、当業者であっても、引用文献1?2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

(4)本件発明4について
本件発明4と引用発明とを対比すると、本件発明4と引用発明とは、少なくとも上記相違点3の点で相違する。そうしてみると、上記(1)で示したのと同じ理由により、本件発明4は、引用文献1に記載された発明であるということができず、また、当業者であっても、引用文献1?2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

(5)本件発明5?8について
本件発明5?8は、本件発明1?4のうちのいずれかの構成を全て具備するものであるから、本件発明5?8も、本件発明1?4と同じ理由により、引用文献1に記載された発明であるということができず、また、当業者であっても、引用文献1?2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

2 引用文献2を主引例とした場合
引用文献2に記載された発明を主引例とした場合であっても、本件発明1と引用文献2に記載された発明とは、少なくとも上記相違点3の点で相違する。そうしてみると、上記1(1)で示したのと同じ理由により、本件発明1は、引用文献2に記載された発明であるということができず、また、当業者であっても、引用文献1?2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
本件発明2?8についても同様である。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定の拒絶の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、理由1(新規性)本件出願の請求項1?5、9に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明である、本件出願の請求項1?4、6、8、9に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、理由2(進歩性)本件出願の請求項1?9に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2004-505306号公報
引用文献2:国際公開第2014/104106号
(当合議体注:引用文献1及び引用文献2は主引例である。)

2 原査定についての判断
上記第4で述べたように、本件発明1?8は、引用文献1又は引用文献2に記載された発明であるということができない。また、上記第4で述べたように、本件発明1?8は、当業者であっても、引用文献1?2に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたということができない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第6 当合議体が通知した拒絶の理由について
令和3年2月16日に提出された手続補正書により補正されたので、当合議体が通知した拒絶の理由は解消された。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-07 
出願番号 特願2017-504876(P2017-504876)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G02B)
P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 堀井 康司  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井口 猶二
関根 洋之
発明の名称 拡散板  
代理人 家入 健  
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